(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】かつらベースに毛髪を結ぶ方法、かつらベースにおける毛髪の結び目、及びかつら
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
A41G3/00 H
(21)【出願番号】P 2018153558
(22)【出願日】2018-08-17
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000126218
【氏名又は名称】株式会社アートネイチャー
(74)【代理人】
【識別番号】100154184
【氏名又は名称】生富 成一
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 祥剛
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209624(JP,A)
【文献】特開2007-092202(JP,A)
【文献】米国特許第03645276(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪を二つ折りにして第一のループ部と、二つの自由端部を形成し、
前記第一のループ部をかつらベースの被取付部の下方を潜らせて、前記被取付部に対して前記第一のループ部を左右方向の一方の側に配置すると共に、前記自由端部を他方の側に配置し、
前記二つの自由端部側の毛髪を前記被取付部の上方から前記第一のループ部に挿入して、第二のループ部を形成すると共に、前記第一のループ部に挿入する方向を回転軸として、前記第二のループ部を半回転以上回転させて変形ループ部を形成し、
前記二つの自由端部側の毛髪の他の部分を前記被取付部の上方から前記変形ループ部に挿入して、前記二つの自由端部を前記変形ループ部から引き抜くことにより、前記被取付部に結び目を形成する
ことを特徴とするかつらベースに毛髪を結ぶ方法。
【請求項2】
前記変形ループ部を形成するときに、前記第一のループ部に挿入する方向を回転軸として、前記第二のループ部を半回転又は1回転させる
ことを特徴とする請求項1記載のかつらベースに毛髪を結ぶ方法。
【請求項3】
前記二つの自由端部を前記変形ループ部から引き抜いた後、前記被取付部に形成された結び目を絞る
ことを特徴とする請求項1又は2記載のかつらベースに毛髪を結ぶ方法。
【請求項4】
毛髪を二つ折りにして第一のループ部と、二つの自由端部を形成し、
前記第一のループ部をかつらベースの被取付部の下方を潜らせて、前記被取付部に対して前記第一のループ部を左右方向の一方の側に配置すると共に、前記自由端部を他方の側に配置し、
前記二つの自由端部側の毛髪を前記被取付部の上方から前記第一のループ部に挿入して、第二のループ部を形成すると共に、前記第一のループ部に挿入する方向を回転軸として、前記第二のループ部を半回転以上回転させて変形ループ部を形成し、
前記二つの自由端部側の毛髪の他の部分を前記被取付部の上方から前記変形ループ部に挿入して、前記二つの自由端部を前記変形ループ部から引き抜くことにより、前記被取付部に形成された
ことを特徴とするかつらベースにおける毛髪の結び目。
【請求項5】
毛髪を二つ折りにして第一のループ部と、二つの自由端部を形成し、
前記第一のループ部をかつらベースの被取付部の下方を潜らせて、前記被取付部に対して前記第一のループ部を左右方向の一方の側に配置すると共に、前記自由端部を他方の側に配置し、
前記二つの自由端部側の毛髪を前記被取付部の上方から前記第一のループ部に挿入して、第二のループ部を形成すると共に、前記第一のループ部に挿入する方向を回転軸として、前記第二のループ部を半回転以上回転させて変形ループ部を形成し、
前記二つの自由端部側の毛髪の他の部分を前記被取付部の上方から前記変形ループ部に挿入して、前記二つの自由端部を前記変形ループ部から引き抜くことにより、前記被取付部に結び目が形成されたかつらベースを備えた
ことを特徴とするかつら。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつらに関し、特にかつらベースに毛髪を結び付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
かつらベースに毛髪を結び付けるための一般的な方法として、シングルノットと呼ばれる方法とダブルノットと呼ばれる方法がある。
シングルノットは、毛髪を二つ折りにしてループを形成し、このループに毛髪の自由端部をかつらベースにおける線状部などの被取付部を囲みながら挿入して引き抜くことにより、毛髪をかつらベースに結び付ける方法である。
ダブルノットは、毛髪を二つ折りにして第一のループを形成し、この第一のループに毛髪の自由端部側をかつらベースにおける線状部などの被取付部を囲みながら挿入して第二のループを形成し、この第二のループに毛髪の自由端部を挿入して引き抜くことにより、毛髪をかつらベースに結び付ける方法である。
【0003】
シングルノットは、結び目が小さくて目立ち難いが、直ぐにほどけるという欠点があった。一方、ダブルノットは、シングルノットよりもほどけにくい強い結び目を得ることができる。しかしながら、結び目が大きくなるため、目立ちやすくなるという欠点があった。
【0004】
かつらベースに毛髪を結び付ける技術に関する先行文献として、特許文献1に記載のかつらベースに毛髪を結び付ける方法を挙げることができる。
特許文献1に記載の方法では、ダブルノットの第二のループなどを形成した後、第二のループに挿入する方向を回転軸として、毛髪の自由端部側を一回以上回転させて第二のループに挿入する構成となっている。これにより、結び目が絞まって、結び目構造を小さくできる効果が得られるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような方法において、2本の毛片で第一ループ及び第二ループを形成する場合には、得られる結び目構造は、ダブルノットによって得られる結び目と大きく異なるものではなかった。
【0007】
このような状況において、本発明者は、毛髪をかつらベースに強く結び付けることができる結び方を鋭意研究し、ダブルノットよりも結び目が強く締まり、かつダブルノットよりも毛髪が立ち易いという効果の得られる新たな結び方を案出して、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ダブルノットよりも結び目が強く締まり、かつダブルノットよりも毛髪を立たせることができるかつらベースに毛髪を結ぶ方法、かつらベースにおける毛髪の結び目、及びかつらの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のかつらベースに毛髪を結ぶ方法は、毛髪を二つ折りにして第一のループ部と、二つの自由端部を形成し、前記第一のループ部をかつらベースの被取付部の下方を潜らせて、前記被取付部に対して前記第一のループ部を左右方向の一方の側に配置すると共に、前記自由端部を他方の側に配置し、前記二つの自由端部側の毛髪を前記被取付部の上方から前記第一のループ部に挿入して、第二のループ部を形成すると共に、前記第一のループ部に挿入する方向を回転軸として、前記第二のループ部を半回転以上回転させて変形ループ部を形成し、前記二つの自由端部側の毛髪の他の部分を前記被取付部の上方から前記変形ループ部に挿入して、前記二つの自由端部を前記変形ループ部から引き抜くことにより、前記被取付部に結び目を形成する方法としてある。
【0010】
また、本発明のかつらベースにおける毛髪の結び目は、毛髪を二つ折りにして第一のループ部と、二つの自由端部を形成し、前記第一のループ部をかつらベースの被取付部の下方を潜らせて、前記被取付部に対して前記第一のループ部を左右方向の一方の側に配置すると共に、前記自由端部を他方の側に配置し、前記二つの自由端部側の毛髪を前記被取付部の上方から前記第一のループ部に挿入して、第二のループ部を形成すると共に、前記第一のループ部に挿入する方向を回転軸として、前記第二のループ部を半回転以上回転させて変形ループ部を形成し、前記二つの自由端部側の毛髪の他の部分を前記被取付部の上方から前記変形ループ部に挿入して、前記二つの自由端部を前記変形ループ部から引き抜くことにより、前記被取付部に形成された構成としてある。
【0011】
また、本発明のかつらは、毛髪を二つ折りにして第一のループ部と、二つの自由端部を形成し、前記第一のループ部をかつらベースの被取付部の下方を潜らせて、前記被取付部に対して前記第一のループ部を左右方向の一方の側に配置すると共に、前記自由端部を他方の側に配置し、前記二つの自由端部側の毛髪を前記被取付部の上方から前記第一のループ部に挿入して、第二のループ部を形成すると共に、前記第一のループ部に挿入する方向を回転軸として、前記第二のループ部を半回転以上回転させて変形ループ部を形成し、前記二つの自由端部側の毛髪の他の部分を前記被取付部の上方から前記変形ループ部に挿入して、前記二つの自由端部を前記変形ループ部から引き抜くことにより、前記被取付部に結び目が形成されたかつらベースを備えた構成としてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ダブルノットよりも結び目が強く締まり、かつ毛髪を立たせることができるかつらベースに毛髪を結ぶ方法、かつらベースにおける毛髪の結び目、及びかつらを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るかつらベースに毛髪を結ぶ方法(第二のループ部を半回転させて変形ループ部を形成したもの)を示す説明図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るかつらベースに毛髪を結ぶ方法(第二のループ部を半回転させて変形ループ部を形成したもの)により形成された結び目の構造を示す図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係るかつらベースに毛髪を結ぶ方法(第二のループ部を1回転させて変形ループ部を形成したもの)を示す説明図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係るかつらベースに毛髪を結ぶ方法(第二のループ部を1回転させて変形ループ部を形成したもの)により形成された結び目の構造を示す図である。
【
図5】従来のダブルノットによりかつらベースに毛髪を結ぶ方法を示す説明図である。
【
図6】従来のダブルノットによりかつらベースに形成される結び目の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るかつらベースに毛髪を結ぶ方法、かつらベースにおける毛髪の結び目、及びかつらについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
まず、従来のダブルノットによるかつらベースに毛髪を結ぶ方法について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、従来のダブルノットによりかつらベースに毛髪を結ぶ方法を示す説明図であり、
図6は、従来のダブルノットによりかつらベースに形成される結び目の構造を示す図である。
【0016】
図5の(1)に示すように、毛髪100を二つ折りにして第一のループ部101と、二つの自由端部102を形成する。そして、第一のループ部101をかつらベースの被取付部200の下方を潜らせて、被取付部200に対して第一のループ部101を左右方向の一方の側に配置すると共に、自由端部102を他方の側に配置する。
【0017】
次いで、
図5の(2)に示すように、二つの自由端部102側の毛髪を被取付部200の上方から第一のループ部101に挿入して、第二のループ部103を形成する。
さらに、
図5の(3)に示すように、二つの自由端部102側の毛髪の他の部分を被取付部200の上方から第二のループ部103に挿入する。
【0018】
そして、
図5の(4)に示すように、二つの自由端部102を第二のループ部103から引き抜く。これによって、
図5の(5)に示すように、被取付部200において、結び目が形成される。
このようにして形成された結び目を、
図5の(6)に示すように被取付部200に向けて引き絞ることによって、
図6に示すような結び目(表、裏)を得ることができる。
【0019】
なお、
図5及び
図6を参照して、「下方」、「上方」、「左右方向」、「表」、及び「裏」という用語を用いて説明しているが、これらは結び方を明確に説明するために便宜上使用しているものである。すなわち、これらの用語は、かつらベースの被取付部に対する毛髪を取り付ける向きや、かつらベースの被取付部の配置方向などに対応して、変更して用いられることは言うまでもない。例えば、
図5及び
図6において、かつらベースの被取付部に対して毛髪を左側に取り付ける場合には、「下方」、「上方」は、それぞれ反対に「上方」、「下方」になり得る。また、かつらベースの被取付部を横方向に配置する場合には、「左右方向」が、「前後方向」になり得る。これは、以下の説明、及び特許請求の範囲の記載においても同様である。
【0020】
次に、本発明の第一実施形態に係るかつらベースに毛髪を結ぶ方法、及びかつらベースにおける毛髪の結び目について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るかつらベースに毛髪を結ぶ方法(第二のループ部を半回転させて変形ループ部を形成したもの)を示す説明図であり、
図2は、本実施形態に係るかつらベースに毛髪を結ぶ方法により形成された結び目の構造を示す図である。
【0021】
図1の(1)に示すように、毛髪10を二つ折りにして第一のループ部11と、二つの自由端部12を形成する。そして、第一のループ部11をかつらベースの被取付部20の下方を潜らせて、被取付部20に対して第一のループ部11を左右方向の一方の側に配置すると共に、自由端部12を他方の側に配置する。
【0022】
かつらベースの被取付部は、かつらベースにおける、毛髪が結び付けたりすることによって取り付けられる部分であり、例えば網目などを構成する線状部や、樹脂のシート状部材、人工皮膚などの面状部が含まれる。これは、第二実施形態においても同様である。
【0023】
なお、かつらベースの被取付部への毛髪の取り付けは、例えばかぎ針などを用いて行うことができる。また、被取付部が面状部である場合には、縫い針などを用いて、毛髪を面状部に縫い付けることにより、取り付けることができる。
【0024】
次いで、
図1の(2)に示すように、二つの自由端部12側の毛髪を被取付部20の上方から第一のループ部11に挿入して、第二のループ部を形成する。
このとき、第一のループ部11に挿入する方向を回転軸として、第二のループ部を回転させて変形ループ部14を形成する。その回転方向は右回転方向でも左回転方向でもよい。
【0025】
同図では、第二のループ部を半回転させて、第一のループ部11に挿入し、変形ループ部14を形成している。
さらに、
図1の(3)に示すように、二つの自由端部12側の毛髪の他の部分を被取付部20の上方から変形ループ部14に挿入する。
【0026】
そして、
図1の(4)に示すように、二つの自由端部12を変形ループ部14から引き抜く。これによって、
図1の(5)に示すように、被取付部20において、結び目が形成される。
このようにして形成された結び目を、
図1の(6)に示すように被取付部20に向けて引き絞ることによって、
図2に示すような結び目(表、裏)を得ることができる。
【0027】
このようにして得られた結び目の構造は、ダブルノットの結び目に比較して、毛髪の根本側(かつらベースにおける被取付部側)を締め付ける部分(締付部)の大きさが増大する。
このため、本実施形態のかつらベースに毛髪を結ぶ方法によれば、ダブルノットに比較して、かつらベースへの固定性に優れた強い結び目を得ることができる。また、このような結び目によれば、毛髪の根本側の周囲をより広範囲に絞ることができるため、かつらベースに対する毛髪の立ち上がりを向上させることが可能になっている。
【0028】
さらに、このような本実施形態の結び目によって作成されたかつらベースを備えたかつらは、毛髪の固定性と立ち上がりに優れたものとすることが可能である。
【0029】
次に、本発明の第二実施形態に係るかつらベースに毛髪を結ぶ方法、及びかつらベースにおける毛髪の結び目について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、本実施形態に係るかつらベースに毛髪を結ぶ方法(第二のループ部を一回転させて変形ループ部を形成したもの)を示す説明図であり、
図4は、本実施形態に係るかつらベースに毛髪を結ぶ方法により形成された結び目の構造を示す図である。
【0030】
図3の(1)に示すように、毛髪10aを二つ折りにして第一のループ部11aと、二つの自由端部12aを形成する。そして、第一のループ部11aをかつらベースの被取付部20aの下方を潜らせて、被取付部20aに対して第一のループ部11aを左右方向の一方の側に配置すると共に、自由端部12aを他方の側に配置する。
【0031】
次いで、
図3の(2)に示すように、二つの自由端部12a側の毛髪を被取付部20aの上方から第一のループ部11aに挿入して、第二のループ部を形成する。
このとき、第一のループ部11aに挿入する方向を回転軸として、第二のループ部を回転させて変形ループ部14aを形成する。その回転方向は右回転方向でも左回転方向でもよい。
【0032】
同図では、第二のループ部を一回転させて、第一のループ部11aに挿入し、変形ループ部14aを形成している。
さらに、
図3の(3)に示すように、二つの自由端部12a側の毛髪の他の部分を被取付部20aの上方から変形ループ部14aに挿入する。
【0033】
そして、
図3の(4)に示すように、二つの自由端部12aを変形ループ部14aから引き抜く。これによって、
図3の(5)に示すように、被取付部20aにおいて、結び目が形成される。
このようにして形成された結び目を、被取付部20aに向けて引き絞ることによって、
図4に示すような結び目(表、裏)を得ることができる。
【0034】
このようにして得られた結び目の構造は、第一実施形態による結び目に比較して、毛髪の根本側(かつらベースにおける被取付部側)を締め付ける部分(締付部)の大きさがさらに増大している。
このため、本実施形態のかつらベースに毛髪を結ぶ方法によれば、かつらベースへの固定性により優れた強い結び目を得ることができると共に、かつらベースに対する毛髪の立ち上がりをより向上させることが可能になっている。
【0035】
さらに、このような本実施形態の結び目によって作成されたかつらベースを備えたかつらは、より一層毛髪の固定性と立ち上がりに優れたものとすることが可能である。
【0036】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、変形ループ部を形成するときに、第一のループ部に挿入する方向を回転軸として、第二のループ部を半回転又は1回転させているが、さらに多く回転させて変形ループ部を形成するなど、適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、毛髪の固定性に優れると共に、毛髪の立ち上がりに優れたかつらを製造する場合などに好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
10、10a 毛髪
11、11a 第一のループ部
12、12a 自由端部
14、14a 変形ループ部
20、20a かつらベースにおける被取付部