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特許7125304燃料電池部材用セラミックス基板を製造する方法
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  • 特許-燃料電池部材用セラミックス基板を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】燃料電池部材用セラミックス基板を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/124 20160101AFI20220817BHJP
   B28B 11/14 20060101ALI20220817BHJP
   H01M 8/1246 20160101ALI20220817BHJP
   H01M 8/1253 20160101ALI20220817BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20220817BHJP
【FI】
H01M8/124
B28B11/14
H01M8/1246
H01M8/1253
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018155354
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020030935
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】西川 洋平
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-517208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0233542(US,A1)
【文献】特開2003-142785(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069440(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/092735(WO,A1)
【文献】特開2007-123427(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1320937(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/124
B28B 11/14
H01M 8/1246
H01M 8/1253
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスグリーンシートの1Hzでの貯蔵弾性率が5~1800MPaである状態で前記セラミックスグリーンシートの主面に刃を押し当てて前記主面における特定方向に延びる溝を形成し、溝付グリーンシートを得ることと、
前記溝付グリーンシートを脱脂した後に焼結して前記溝を有する母基板を得ることと、
記溝に沿って前記母基板を分割してセラミックス基板を得ることと、を備えた、
燃料電池部材用セラミックス基板を製造する方法。
【請求項2】
前記状態における前記セラミックスグリーンシートの環境温度は、0~50℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セラミックスグリーンシートは、アルミナ、ムライト、ジルコニア、安定化ジルコニア、及びマグネシアからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記母基板の気孔率が、0.01~10%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記セラミックス基板は、0.7mm以下の厚みを有し、かつ、平面視で900cm2以下の面積を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池部材用セラミックス基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分割のための溝を有する基板をその溝に沿って分割してセラミックス基板を製造する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数個のセラミックス基板が一体に連結された多連基板を個々の基板単位に分割して、セラミックス基板を製造する方法が記載されている。この方法において、多連基板に所定の分割溝を形成し、分割溝に対応する部位を冶具で押して曲げて亀裂を発生させ、その亀裂を分割溝に沿って進行させて、多連基板が個々の基板単位に分割される。分割溝として、多連基板における一方の端部側の溝の深さが、多連基板の中央側の溝の深さより深くなったものが形成される。
【0004】
特許文献2には、セラミックスグリーンシートを焼成して得られ、該セラミックスグリーンシートのプレス加工により形成された、断面が20°~40°の角度を成すV字形の溝よりなるブレークラインを有するセラミックス基板が記載されている。ブレークラインを形成する溝の深さが基板の厚みに対して3~25%であり、かつ、溝の底部断面形状は5μm以上の幅の非鋭角形状である。特許文献2に記載のセラミックス基板によれば、セラミックス基板の分割性が損なわれることなく、ブレークラインを形成する溝の底部に応力が集中することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-207065号公報
【文献】特開2009-255504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2において、分割のための溝の形状及び深さについては検討されているものの、分割のための溝を形成するときのセラミックスグリーンシートの状態と意図しない割れの発生との関係については具体的に検討されていない。そこで、本発明は、意図しない割れの発生を抑制する観点から有利な状態でセラミックスグリーンシートに溝を形成することを含む、セラミックス基板を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
セラミックスグリーンシートの1Hzでの貯蔵弾性率が5~1800MPaである状態で前記セラミックスグリーンシートの主面に刃を押し当てて前記主面における特定方向に延びる第一溝を形成し、溝付グリーンシートを得ることと、
前記溝付グリーンシートを脱脂した後に焼結して前記第一溝に由来する第二溝を有する母基板を得ることと、
前記第二溝に沿って前記母基板を分割してセラミックス基板を得ることと、を備えた、
燃料電池部材用セラミックス基板を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
上記の方法によれば、母基板を分割するときに意図しない割れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明に係るセラミックス基板を製造する方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
分割のための溝を有する母基板をその溝に沿って分割してセラミックス基板を得ようとするときに、母基板が溝に沿って割れずに意図しない割れ方をすることがある。例えば、セラミックスグリーンシートに分割のための溝が形成される。本発明者の検討によれば、分割のための溝を形成するときのセラミックスグリーンシートの状態が意図しない母基板の割れに影響していることが分かった。そこで、本発明者は、多大な試行錯誤を重ねた結果、母基板を分割するときに意図しない割れを抑制する観点から、分割のための溝を形成するときのセラミックスグリーンシートの有利な状態を特定し、本発明に係る方法を案出した。
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電解質シートの実施形態について説明する。なお、以下の説明は本発明を例示的に説明するものであり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0012】
図1に示す通り、本発明に係る燃料電池部材用セラミック基板の製造方法は、下記の(i)、(ii)、及び(iii)の工程を含む。
(i)セラミックスグリーンシート10の1Hzでの貯蔵弾性率が5~1800MPaである状態でセラミックスグリーンシート10の主面10aに刃を押し当てて主面10aにおける特定方向に延びる第一溝21を形成し、溝付グリーンシート11を得る。
(ii)溝付グリーンシート11を脱脂した後に焼結して第一溝21に由来する第二溝22を有する母基板15を得る。
(iii)第二溝22に沿って母基板15を分割してセラミックス基板30を得る。
【0013】
(i)の工程において第一溝21を形成するときに、セラミックスグリーンシート10の1Hzでの貯蔵弾性率が上記の範囲にあると、主面10aに押し当てられた刃によって第一溝21が適切に形成される。その結果、(iii)の工程において、第二溝22に沿って母基板15が適切に分割され、意図しない割れが発生しにくい。セラミックスグリーンシート10の主面10aに刃を押し当てるときに、セラミックスグリーンシート10の1Hzでの貯蔵弾性率は、10~1800MPaであってもよいし、20~1800MPaであってもよいし、30~1800MPaであってもよい。
【0014】
セラミックスグリーンシート10は、例えば、セラミックス原料と、微量の溶媒と、バインダー樹脂とを含んでいる。セラミックスグリーンシート10は、必要に応じて、界面活性剤及び可塑剤を含んでいてもよい。セラミックスグリーンシート10の各成分の原料及び含有量を調節することにより、セラミックスグリーンシート10の1Hzでの貯蔵弾性率を上記の範囲に調整できる。加えて、セラミックスグリーンシート10の環境温度を調節することによっても、セラミックスグリーンシート10の1Hzでの貯蔵弾性率を上記の範囲に調整できる。
【0015】
セラミックスグリーンシート10は、例えば、次のようにして作製される。セラミックス原料の粉末、溶媒、及びバインダー樹脂を混合し、必要に応じて界面活性剤及び可塑剤等の添加剤をさらに添加して、スラリーを調製する。スラリーをドクターブレード法等の方法によりポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の基材上に塗布して、塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させることによって、セラミックスグリーンシート10が得られる。
【0016】
セラミックスグリーンシート10に含まれるバインダー樹脂は、セラミックスグリーンシート10の1Hzでの貯蔵弾性率を上記の範囲に調整できる限り特に制限されない。バインダー樹脂は、例えば、エチレン系共重合体、スチレン系共重合体、(メタ)アクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、及びエチルセルロースなどのセルロース類からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0017】
セラミックスグリーンシート10におけるバインダー樹脂の含有量は、セラミックスグリーンシート10の1Hzでの貯蔵弾性率を上記の範囲に調整できる限り特に制限されない。セラミックスグリーンシート10におけるバインダー樹脂の含有量は、100質量部の原料粉末に対して、例えば、12~22質量部であり、13~21質量部であってもよく、14~20質量部でありうる。
【0018】
セラミックスグリーンシート10に含まれうる可塑剤は、セラミックスグリーンシート10の1Hzでの貯蔵弾性率を上記の範囲に調整できる限り特に制限されない。セラミックスグリーンシート10に含まれうる可塑剤は、例えば、(a)フタル酸ジブチル及びフタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル類、(b)プロピレングリコール等のグリコール類、(c)グリコールエーテル類、並びに(d)フタル酸系ポリエステル、アジピン酸系ポリエステル、及びセバチン酸系ポリエステル等のポリエステル類である。
【0019】
セラミックスグリーンシート10における可塑剤の含有量は、セラミックスグリーンシート10の1Hzでの貯蔵弾性率を上記の範囲に調整できる限り特に制限されない。セラミックスグリーンシート10における可塑剤の含有量は、100質量部の原料粉末に対して、例えば、0.5~9.0質量部であり、1.0~8.5質量部であってもよく、1.5~8.0質量部でありうる。
【0020】
(i)の工程において、例えば、1Hzでの貯蔵弾性率が5~1800MPaであるときに、セラミックスグリーンシート10の環境温度が0~50℃である。この場合、セラミックスグリーンシート10の状態を1Hzでの貯蔵弾性率が5~1800MPaである状態にするための環境を提供するのに消費されるエネルギー量を低減できる。
【0021】
セラミックスグリーンシート10に含まれるセラミックス原料は、セラミックスグリーンシート10からセラミックス基板を製造できる限り、特に制限されない。セラミックスグリーンシート10は、例えば、セラミックス原料として、アルミナ、ムライト、ジルコニア、安定化ジルコニア、及びマグネシアからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。この場合、セラミックスグリーンシート10の環境温度が0~50℃であるときに、セラミックスグリーンシート10の1Hzでの貯蔵弾性率が5~1800MPaになりやすい。
【0022】
(i)の工程において、例えば、トムソン刃によって、セラミックスグリーンシート10に対し打ち抜き加工を施すことによって、溝付グリーンシート11が得られる。この場合、トムソン刃は、セラミックスグリーンシート10から溝付グリーンシート11を打ち抜くための第一の刃と、第一溝21を形成するための第二の刃とを有する。第一の刃の高さは、第二の刃の高さよりも高い。これにより、セラミックスグリーンシート10から溝付グリーンシート11を打ち抜くことと、第一溝21の形成とが同時になされ、溝付グリーンシート11を効率良く作製できる。
【0023】
セラミックスグリーンシート10には溶媒等の成分が含まれるので、溝付グリーンシート11にも溶媒等の成分が含まれる。(ii)の工程において、溝付グリーンシート11が所定の条件で加熱されることにより、溝付グリーンシート11の溶媒等の成分が除去されて脱脂される。その後、溝付グリーンシート11がさらに加熱されて焼結され、母基板15が得られる。これにより、母基板15には、第一溝21に由来する第二溝22が形成される。溝付グリーンシート11の脱脂及び焼結のために溝付グリーンシート11が曝される環境の最高温度は、特に制限されない。この最高温度は、例えば1000℃以上であり、1200℃以上であってもよく、1300℃以上であってもよく、1400℃以上であってもよく、1500℃以上でありうる。なお、溝付グリーンシート11の脱脂は、溝付グリーンシート11の環境の温度が最高温度に到達する前に完了しうる。
【0024】
溝付グリーンシート11の脱脂及び焼結において、例えば、耐熱性を有する一対の板材の間にグリーンシート11が挟まれた状態で溝付グリーンシート11が加熱される。この場合、例えば、溝付グリーンシート11の第一溝21が形成された主面が上向き又は下向きになるように溝付グリーンシート11が配置される。板材は、例えば、20%以上の気孔率を有する多孔質体である。この場合、板材が軽くなりやすく、溝付グリーンシート11にかかる荷重が低減され、溝付グリーンシート11の変形を抑制できる。その結果、母基板15において第二溝22が適切に形成される。板材は、例えば、アルミナの多孔質体である。
【0025】
(iii)の工程において、例えば、母基板15は手作業によって分割されてもよいし、母基板15を挟むことができる冶具を用いて分割されてもよいし、アクチュエーターによって作動する工具によって分割されてもよい。例えば、母基板15の主面上の第二溝22によって隔てられた2箇所に対し、その第二溝22に沿って延びる仮想的な直線に垂直な面内において、互いに逆向きの回転モーメントを作用させることによって、第二溝22に沿って亀裂を進展させて母基板15を分割できる。逆向きの回転モーメントが作用する2つの作用点同士の間には、1つの第二溝22のみが存在していてもよいし、複数の第二溝22が存在していてもよい。逆向きの回転モーメントが作用する2つの作用点同士の間に1つの第二溝22のみが存在する場合、母基板15の分割に利用される第二溝22が1つに限定され、母基板15が割れる箇所をコントロールしやすい。逆向きの回転モーメントが作用する2つの作用点同士の間に複数の第二溝22が存在する場合、2つの作用点同士の距離が大きくなりやすく、より小さい力で母基板15を分割できる。
【0026】
母基板15の気孔率は、例えば、0.01~10%である。この場合、母基板15において意図しない割れが発生することの抑制と、母基板15の第二溝22に沿った分割のしやすさとを両立しやすい。なお、本明細書において「気孔率」は、以下のようにして決定される。母基板15を破断させ、破断面を研磨する。研磨した破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に選んだ20箇所の視野における破断面のSEM画像を取得する。所定の画像解析ソフトを用いて、各視野における破断面のSEM画像において画像の全面積に対する気孔(空孔)の面積の比率を求める。各視野における画像の全面積に対する気孔(空孔)の面積の平均値を求め、この平均値を母基板15の気孔率と決定する。
【0027】
母基板15の気孔率は、0.05~9%であってもよい。
【0028】
母基板15の厚みは、例えば、0.7mm以下である。母基板15の厚みは、例えば、0.05mm以上である。母基板15の厚みTに対する第二溝22の深さDの比(D/T)は、例えば10~90%であり、13~85%であってもよく、15~80%でありうる。
【0029】
母基板15は、例えば、平面視で2000cm2以下の面積を有する。セラミックスグリーンシートの焼結により得られる母基板は、その母基板を平面視したときの面積が大きいほど、反りの影響が出やすく、母基板の高低差が大きくなりやすいと考えられる。しかし、母基板15が平面視で2000cm2以下の面積を有していれば、母基板15の反りを抑制しやすい。母基板15は、例えば、平面視で5cm2以上の面積を有する。
【0030】
母基板15を平面視したときの形状は、特に制限されない。母基板15を平面視したときの形状は、例えば、四角形状である。母基板15を平面視したときの形状は、円状、楕円状、四角形以外の多角形状、又は不定形であってもよい。母基板15には、貫通孔が形成されていてもよい。母基板15は、平面視において、第二溝22の両端の少なくとも1つに連なるV字状の輪郭(切り欠き)を有していてもよい。この場合、V字状の輪郭に隣接した第二溝22の端に応力が集中しやすく、第二溝22の端を起点として亀裂を進展させやすい。このため、母基板15を分割しやすい。
【0031】
第二溝22は、例えば、直線状に延びている。これにより、亀裂が真っすぐ進展しやすい。製造されるべきセラミックス基板の形状によっては、母基板15において第二溝22は曲線状に延びていてもよい。母基板15において、例えば、複数の第二溝22が平行に延びていてもよく、複数の第二溝22が交差していてもよい。
【0032】
母基板15において、第二溝22は、例えば、母基板15を横切って延びている。これにより、母基板15を分割しやすい。場合によっては、第二溝22の両端の少なくとも1つは、第二溝22が延びる方向(特定方向)における母基板15の端から離れていてもよい。
【0033】
セラミック基板30は、例えば、0.7mm以下の厚みを有し、かつ、平面視で900cm2以下の面積を有する。母基板15を第二溝22に沿って分割することにより、このような寸法のセラミック基板30を高い歩留まり率で製造できる。
【0034】
セラミック基板30の厚みは、例えば、0.05mm以上である。セラミック基板30は、例えば、平面視で1cm2以上の面積を有する。セラミック基板30を平面視したときの形状は、例えば、四角形等の多角形状、円状、楕円状、又は不定形である。
【実施例
【0035】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されない。先ず、実施例及び比較例の評価方法について説明する。
【0036】
(貯蔵弾性率)
各実施例及び各比較例に係るセラミックスグリーンシートから、5mmの幅及び50mmの長さを有する試験片を切り抜いた。固体粘弾性測定装置(TA Instruments社製、製品名:RSA-G2)を用いて張力モードにて試験片の弾性率を測定した。この測定において、試験片を15mmのチャック間距離でチャックに固定し、周波数を1Hzに調節し、温度は-10℃から60℃まで5℃/分で昇温しながら、弾性率測定を行った。分割溝を形成するときのセラミックスグリーンシートの環境温度に対応する温度における試験片の貯蔵弾性率を表1に示す。
【0037】
(気孔率)
各実施例及び各比較例に係る母基板を破断させ、破断面を研磨した。その破断面をSEMによって観察し、無作為に選んだ20箇所において倍率5000倍のSEM画像を得た。各SEM画像の気孔(空孔)の面積を、画像解析ソフト(MEDIA CYBERNETICS社製、製品名:Image Pro Plus バージョン4.0)を用いて解析し、「画像の全面積に対する気孔の面積の比」を算出した。20箇所の画像のそれぞれで、画像の全面積に対する気孔の面積の比を求め、それらの平均値を母基板の気孔率と決定した。結果を表1に示す。
【0038】
<実施例1>
アルミナ粉末(日本軽金属社製、製品名:LS-130)100質量部、溶媒としてトルエン30質量部及びメチルエチルケトン30質量部、並びに分散剤としてアニオン界面活性剤(共栄社化学社製)1.5質量部を、ボールミルを用いて30時間粉砕しつつ混合した。次いで、この混合物に、バインダーとしてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、製品名:BL-1)16質量部と、可塑剤としてフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(三菱ケミカル株式会社製)4.3質量部とを添加し、さらにボールミルにより10時間混合してスラリーを得た。このスラリーを45℃で減圧(ゲージ圧:約-0.08MPa~-0.09MPa)してスラリーを濃縮した。次に、減圧を解除してジャケット温度45℃で撹拌機を10rpm(rovolutions per minute)の速度で回転させながらスラリーを脱泡し、その後撹拌機を停止してからスラリーを30分間静置して、粘度を3000mPa・s(25℃)に調整し、実施例1に係る塗工用スラリーを得た。
【0039】
実施例1に係る塗工用スラリーをドクターブレード法によって、PETフィルム上に塗工し、塗膜を形成した。この塗膜を、100℃に設定された乾燥機の内部を60分間かけて通過させて乾燥させ、875μmの厚みを有する実施例1に係るセラミックスグリーンシートを得た。
【0040】
PETフィルム上に作製された実施例1に係るセラミックスグリーンシートをPETフィルムごと所定の大きさに切断し、30℃の環境に実施例1に係るセラミックスグリーンシートを置いた。この状態で、28°の刃角を有するハーフカット用トムソン刃(周縁部の刃高:23.60mm、分割溝形成部の刃高:23.36mm)の打抜き型を用い、母基板の寸法となるように実施例1に係るセラミックスグリーンシートの周縁部を打ち抜いた。同時に、1行×2列にセラミックスグリーンシートが区分されるようにセラミックスグリーンシートに溝を形成した。その後、セラミックスグリーンシートをPETフィルムから剥離し、実施例1に係る溝付グリーンシートを得た。100枚の実施例1に係る溝付グリーンシートを作製した。
【0041】
80cm角のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:3.5mm)上に実施例1に係る溝付グリーンシートの溝が形成された主面が上向きになるように、実施例1に係る溝付グリーンシートを置き、その上に80cm角のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:3.5mm)を重しとして載置した。このような100組の積層体を準備し、それらを大気雰囲気下、1600℃で3時間加熱し、実施例1に係る溝付グリーンシートを脱脂及び焼結して、実施例1に係る母基板(幅:600mm、長さ:300mm、厚さ:700μm)を得た。
【0042】
母基板の溝が形成された主面に引張応力がかかるように母基板をたまわせ、溝に沿って母基板を分割し、実施例1に係るセラミック基板(長さ:300mm、幅:300mm、厚さ:700μm)を得た。母基板の分割において意図しない分割の発生回数を分割回数の総数で除して意図しない分割の発生率を求めた。結果を表1に示す。
【0043】
<実施例2>
8モル%のイットリアで安定化されたジルコニア(8YSZ)の粉末(東ソー社製、製品名:TZ-8YS)100質量部、溶媒としてトルエン20質量部、メチルエチルケトン30質量部、及び1-ブタノール20質量部、並びに分散剤(ビックケミー・ジャパン社製、製品名:BYK-P 105)3.2質量部を、ボールミルを用いて20時間粉砕しつつ混合した。次に、この混合物に、バインダーとしてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、製品名:BM-S)15質量部と、可塑剤としてフタル酸ポリエステル(大日本インキ化学工業社製)3.6質量部とを添加し、さらにボールミルにより20時間混合してスラリーを得た。得られたスラリーを45℃で減圧(ゲージ圧:約-0.08MPa~-0.09MPa)してスラリーを濃縮した。次に、減圧を解除してジャケット温度45℃で撹拌機を10rpmの速度で回転させながらスラリーを脱泡し、その後撹拌機を停止してからスラリーを30分間静置して、粘度を2000mPa・s(25℃)に調整し、実施例2に係る塗工用スラリーを得た。
【0044】
実施例1に係る塗工用スラリーの代わりに、実施例2に係る塗工用スラリーを用いて、実施例1と同様にして、105μmの厚みを有する実施例2に係るセラミックスグリーンシートを得た。
【0045】
PETフィルム上に作製された実施例2に係るセラミックスグリーンシートをPETフィルムごと所定の大きさに切断し、40℃の環境に実施例2に係るセラミックスグリーンシートを置いた。この状態で、45°の刃角を有するハーフカット用トムソン刃(周縁部の刃高:23.60mm、分割溝形成部の刃高:23.54mm)の打抜き型を用い、母基板の寸法となるように実施例2に係るセラミックスグリーンシートの周縁部を打ち抜いた。同時に、1行×4列にセラミックスグリーンシートが区分されるようにセラミックスグリーンシートに溝を形成した。その後、セラミックスグリーンシートをPETフィルムから剥離し、実施例2に係る溝付グリーンシートを得た。100枚の実施例2に係る溝付グリーンシートを作製した。
【0046】
30cm角のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:3mm)上に実施例2に係る溝付グリーンシートの溝が形成された主面が下向きになるように、実施例2に係る溝付グリーンシートを置いた。その上に30cm角のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:3mm)及び実施例2に係る溝付グリーンシートを交互に重ね、最上部に30cm角のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:3mm)をさらに重ねた。このような積層体を50組準備した。それらを大気雰囲気下、1350℃で2時間加熱し、実施例2に係る溝付グリーンシートを脱脂及び焼結して、実施例2に係る母基板(幅:200mm、長さ:200mm、厚さ:80μm)を得た。
【0047】
母基板の溝が形成された主面に引張応力がかかるように母基板をたまわせ、溝に沿って母基板を分割し、実施例2に係るセラミック基板(長さ:200mm、幅:50mm、厚さ:80μm)を得た。母基板の分割において意図しない分割の発生回数を分割回数の総数で除して意図しない分割の発生率を求めた。結果を表1に示す。
【0048】
<実施例3>
ムライト粉末(共立マテリアル社製、製品名:KM101)100質量部、溶媒としてトルエン20質量部及び1-メトキシ-2-プロパノール40質量部、並びに分散剤としてアニオン界面活性剤(共栄社化学社製)2.5質量部とを、ボールミルを用いて30時間粉砕しつつ混合した。次いで、この混合物に、バインダーとしてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、製品名:BL-S)18.5質量部と、可塑剤としてフタル酸ポリエステル(大日本インキ化学工業社製)2.3質量部とを添加し、さらにボールミルにより20時間混合してスラリーとした。得られたスラリーを45℃で減圧(ゲージ圧:約-0.08MPa~-0.09MPa)してスラリーを濃縮した。次に、減圧を解除してジャケット温度45℃で撹拌機を10rpmの速度で回転させながらスラリーを脱泡して、さらに撹拌機を停止してからスラリーを30分間静置して、粘度を2700mPa・s(25℃)に調整し、実施例3に係る塗工用スラリーを得た。
【0049】
実施例1に係る塗工用スラリーの代わりに、実施例3に係る塗工用スラリーを用いて、実施例1と同様にして、600μmの厚みを有する実施例3に係るセラミックスグリーンシートを得た。
【0050】
PETフィルム上に作製された実施例3に係るセラミックスグリーンシートをPETフィルムごと所定の大きさに切断し、5℃の環境に実施例3に係るセラミックスグリーンシートを置いた。この状態で、60°の刃角を有するハーフカット用トムソン刃(周縁部の刃高:23.60mm、分割溝形成部の刃高:23.08mm)の打抜き型を用い、母基板の寸法となるように実施例3に係るセラミックスグリーンシートの周縁部を打ち抜いた。同時に、1行×15列にセラミックスグリーンシートが区分されるようにセラミックスグリーンシートに溝を形成した。その後、セラミックスグリーンシートをPETフィルムから剥離し、実施例3に係る溝付グリーンシートを得た。100枚の実施例3に係る溝付グリーンシートを作製した。
【0051】
30cm角のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:3mm)上に実施例3に係る溝付グリーンシートの溝が形成された主面が下向きになるように、実施例3に係る溝付グリーンシートを置いた。その上に30cm角の4枚のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:3mm)及び実施例3に係る4枚の溝付グリーンシートを交互に重ね、最上部に30cm角のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:3mm)をさらに重ねた。このような積層体を20組準備した。それらを大気雰囲気下、1700℃で4時間加熱し、実施例4に係る溝付グリーンシートを脱脂及び焼結して、実施例4に係る母基板(幅:150mm、長さ:200mm、厚さ:500μm)を得た。
【0052】
母基板の溝が形成された主面に引張応力がかかるように母基板をたまわせ、溝に沿って母基板を分割し、実施例3に係るセラミック基板(長さ:200mm、幅:10mm、厚さ:500μm)を得た。母基板の分割において意図しない分割の発生回数を分割回数の総数で除して意図しない分割の発生率を求めた。結果を表1に示す。
【0053】
<実施例4>
10モル%のスカンジア及び1モル%のセリアで安定化されたジルコニア(10Sc1CeSZ)の粉末(第一稀元素化学工業社製)100質量部、溶媒としてトルエン30質量部及び酢酸エチル20質量部、並びに分散剤としてアニオン界面活性剤(共栄社化学社製)3.5質量部を、ボールミルを用いて15時間粉砕しつつ混合した。次いで、この混合物に、バインダーとしてアルキルメタアクリレート共重合体(日本触媒社製、数平均分子量:50,000、ガラス転位温度:10℃、固形分濃度:50質量%、固形分換算で、アミン価:8.9mgKOH/g;水酸基価:5.4mgKOH/g;酸価:0.0mgKOH/g)を固形分換算で16質量部と、可塑剤としてフタル酸ポリエステル(大日本インキ化学工業社製)2.2質量部とを添加し、さらにボールミルにより20時間混合してスラリーを得た。得られたスラリーを45℃で減圧(ゲージ圧:約-0.08MPa~-0.09MPa)してスラリーを濃縮した。次に、減圧を解除してジャケット温度45℃で撹拌機を10rpmの速度で回転させながらスラリーを脱泡し、その後撹拌機を停止してからスラリーを30分間静置して、粘度を2300mPa・s(25℃)に調整し、実施例4に係る塗工用スラリーを得た。
【0054】
実施例1に係る塗工用スラリーの代わりに、実施例4に係る塗工用スラリーを用いて、実施例1と同様にして、265μmの厚みを有する実施例4に係るセラミックスグリーンシートを得た。
【0055】
PETフィルム上に作製された実施例4に係るセラミックスグリーンシートをPETフィルムごと所定の大きさに切断し、25℃の環境に実施例4に係るセラミックスグリーンシートを置いた。この状態で、30°の刃角を有するハーフカット用トムソン刃(周縁部の刃高:23.60mm、分割溝形成部の刃高:23.44mm)の打抜き型を用い、母基板の寸法となるように実施例4に係るセラミックスグリーンシートの周縁部を打ち抜いた。同時に、2行×4列にセラミックスグリーンシートが区分されるようにセラミックスグリーンシートに格子状に溝を形成した。その後、セラミックスグリーンシートをPETフィルムから剥離し、実施例4に係る溝付グリーンシートを得た。100枚の実施例4に係る溝付グリーンシートを作製した。
【0056】
50cm角のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:2mm)上に実施例4に係る溝付グリーンシートの溝が形成された主面が下向きになるように、実施例4に係る溝付グリーンシートを置いた。その上に30cm角の3枚のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:2mm)及び実施例4に係る3枚の溝付グリーンシートを交互に重ね、最上部に30cm角のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:2mm)をさらに重ねた。このような積層体を25組準備した。それらを大気雰囲気下、1400℃で3時間加熱し、実施例4に係る溝付グリーンシートを脱脂及び焼結して、実施例4に係る母基板(幅:300mm、長さ:360mm、厚さ:200μm)を得た。
【0057】
母基板の溝が形成された主面に引張応力がかかるように母基板をたまわせ、溝に沿って母基板を分割し、実施例4に係るセラミック基板(長さ:150mm、幅:90mm、厚さ:200μm)を得た。母基板の分割において意図しない分割の発生回数を分割回数の総数で除して意図しない分割の発生率を求めた。結果を表1に示す。
【0058】
<実施例5>
MgO粉末(宇部マテリアルズ社製、製品名:UC 95HT)100質量部、溶媒としてトルエン30質量部及び1-ブタノール55質量部、並びに分散剤としてアニオン界面活性剤(共栄社化学社製)3.5質量部を、ボールミルを用いて15時間粉砕しつつ混合した。次に、この混合物に、バインダーとしてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、製品名:BL-5Z)16.5質量部と、可塑剤としてフタル酸ポリエステル(大日本インキ化学工業社製)4.2質量部とを添加し、さらにボールミルにより5時間混合してスラリーを得た。得られたスラリーを45℃で減圧(ゲージ圧:約-0.08MPa~-0.09MPa)してスラリーを濃縮した。次に、減圧を解除してジャケット温度45℃で撹拌機を10rpmの速度で回転させながらスラリーを脱泡し、その後撹拌機を停止してからスラリーを30分間静置して、粘度を2000mPa・s(25℃)に調整し、実施例5に係る塗工用スラリーを得た。
【0059】
実施例1に係る塗工用スラリーの代わりに、実施例5に係る塗工用スラリーを用いて、実施例1と同様にして、235μmの厚みを有する実施例5に係るセラミックスグリーンシートを得た。
【0060】
PETフィルム上に作製された実施例5に係るセラミックスグリーンシートをPETフィルムごと所定の大きさに切断し、15℃の環境に実施例5に係るセラミックスグリーンシートを置いた。この状態で、40°の刃角を有するハーフカット用トムソン刃(周縁部の刃高:23.60mm、分割溝形成部の刃高:23.42mm)の打抜き型を用い、母基板の寸法となるように実施例5に係るセラミックスグリーンシートの周縁部を打ち抜いた。同時に、1行×5列にセラミックスグリーンシートが区分されるようにセラミックスグリーンシートに溝を形成した。その後、セラミックスグリーンシートをPETフィルムから剥離し、実施例5に係る溝付グリーンシートを得た。100枚の実施例5に係る溝付グリーンシートを作製した。
【0061】
50cm角のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:2mm)上に実施例5に係る溝付グリーンシートの溝が形成された主面が下向きになるように、実施例5に係る溝付グリーンシートを置いた。その上に50cm角の3枚のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:2mm)及び実施例5に係る3枚の溝付グリーンシートを交互に重ね、最上部に50cm角のアルミナ多孔質シート(気孔率:35%,厚さ:2mm)をさらに重ねた。このような積層体を25組準備した。それらを大気雰囲気下、1550℃で5時間加熱し、実施例5に係る溝付グリーンシートを脱脂及び焼結して、実施例5に係る母基板(幅:150mm、長さ:150mm、厚さ:200μm)を得た。
【0062】
母基板の溝が形成された主面に引張応力がかかるように母基板をたまわせ、溝に沿って母基板を分割し、実施例5に係るセラミック基板(長さ:150mm、幅:30mm、厚さ:200μm)を得た。母基板の分割において意図しない分割の発生回数を分割回数の総数で除して意図しない分割の発生率を求めた。結果を表1に示す。
【0063】
<比較例1>
アルミナ粉末(日本軽金属社製、製品名:LS-130)100質量部、溶媒としてトルエン30質量部及びメチルエチルケトン30質量部、並びに分散剤としてアニオン界面活性剤(共栄社化学社製)1.5質量部を、ボールミルを用いて30時間粉砕しつつ混合した。次に、この混合物に、バインダーとしてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、製品名:BL-1)18質量部と、可塑剤としてフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(三菱ケミカル株式会社製)2.3質量部とを添加し、さらにボールミルにより10時間混合してスラリーを得た。得られたスラリーを45℃で減圧(ゲージ圧:約-0.08MPa~-0.09MPa)してスラリーを濃縮した。次に、減圧を解除してジャケット温度45℃で撹拌機を10rpmの速度で回転させながらスラリーを脱泡し、その後撹拌機を停止してから30分間スラリーを静置して、粘度を3000mPa・s(25℃)に調整し、比較例1に係る塗工用スラリーを得た。
【0064】
実施例1に係る塗工用スラリーの代わりに、比較例1に係る塗工用スラリーを用いて、実施例1と同様にして、875μmの厚みを有する比較例1に係るセラミックスグリーンシートを得た。
【0065】
実施例1に係るセラミックスグリーンシートの代わりに、比較例1に係るセラミックスグリーンシートを用い、かつ、20℃の環境に比較例1に係るセラミックスグリーンシートを置いた以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る母基板(幅:600mm、長さ:300mm、厚さ:700μm)を得た。実施例1に係る母基板の代わりに、比較例1に係る母基板を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係るセラミック基板(長さ:300mm、幅:300mm、厚さ:700μm)を得た。母基板の分割において意図しない分割の発生回数を分割回数の総数で除して意図しない分割の発生率を求めた。結果を表1に示す。
【0066】
<比較例2>
8YSZの粉末(東ソー社製、製品名:TZ-8YS)100質量部、溶媒としてトルエン20質量部、メチルエチルケトン30質量部、及び1-ブタノール20質量部、並びに分散剤(ビックケミー・ジャパン社製、製品名:BYK-P 105)3.2質量部を、ボールミルを用いて20時間粉砕しつつ混合した。次に、この混合物に、バインダーとしてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、製品名:BL-5Z)17.5質量部と、可塑剤としてフタル酸ポリエステル(大日本インキ化学工業社製)2.0質量部とを添加し、さらにボールミルにより20時間混合してスラリーを得た。得られたスラリーを45℃で減圧(ゲージ圧:約-0.08MPa~-0.09MPa)してスラリーを濃縮した。次に、減圧を解除してジャケット温度45℃で撹拌機を10rpmの速度で回転させながらスラリーを脱泡し、その後撹拌機を停止してからスラリーを30分間静置して、粘度を2000mPa・s(25℃)に調整し、比較例2に係る塗工用スラリーを得た。
【0067】
実施例1に係る塗工用スラリーの代わりに、比較例2に係る塗工用スラリーを用いて、実施例1と同様にして、105μmの厚みを有する比較例2に係るセラミックスグリーンシートを得た。
【0068】
実施例2に係るセラミックスグリーンシートの代わりに、比較例2に係るセラミックスグリーンシートを用い、かつ、10℃の環境に比較例2に係るセラミックスグリーンシートを置いた以外は、実施例2と同様にして比較例2に係る母基板(幅:200mm、長さ:200mm、厚さ:80μm)を得た。実施例2に係る母基板の代わりに、比較例2に係る母基板を用いた以外は、実施例2と同様にして、比較例2に係るセラミック基板(長さ:200mm、幅:50mm、厚さ:80μm)を得た。母基板の分割において意図しない分割の発生回数を分割回数の総数で除して意図しない分割の発生率を求めた。結果を表1に示す。
【0069】
<比較例3>
ムライト粉末(共立マテリアル社製、製品名:KM101)100質量部、溶媒としてトルエン30質量部及び酢酸エチル20質量部、並びに分散剤としてアニオン界面活性剤(共栄社化学社製)2.5質量部を、ボールミルを用いて30時間粉砕しつつ混合した。次に、この混合物に、バインダーとしてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、製品名:BL-S)18.5質量部と、可塑剤としてフタル酸ポリエステル(大日本インキ化学工業社製)2.3質量部とを添加し、さらにボールミルにより20時間混合してスラリーを得た。得られたスラリーを45℃で減圧(ゲージ圧:約-0.08MPa~-0.09MPa)してスラリーを濃縮した。次に、減圧を解除してジャケット温度45℃で撹拌機を10rpmの速度で回転させながらスラリーを脱泡し、その後撹拌機を停止してからスラリーを30分間静置して、粘度を2700mPa・s(25℃)に調整し、比較例3に係る塗工用スラリーを得た。
【0070】
実施例1に係る塗工用スラリーの代わりに、比較例3に係る塗工用スラリーを用いて、実施例1と同様にして、600μmの厚みを有する比較例3に係るセラミックスグリーンシートを得た。
【0071】
PETフィルム上に作製された比較例3に係るセラミックスグリーンシートをPETフィルムごと所定の大きさに切断し、-5℃の環境に比較例3に係るセラミックスグリーンシートを置いた。この状態で、60°の刃角を有するハーフカット用トムソン刃(周縁部の刃高:23.60mm、分割溝形成部の刃高:23.08mm)の打抜き型を用い、母基板の寸法となるように実施例5に係るセラミックスグリーンシートの周縁部を打ち抜いた。同時に、1行×15列にセラミックスグリーンシートが区分されるようにセラミックスグリーンシートに溝を形成した。その後、セラミックスグリーンシートをPETフィルムから剥離し、比較例3に係る溝付グリーンシート(幅:150mm、長さ:200mm、厚さ:500μm)を得た。100枚の比較例3に係る溝付グリーンシートを作製した。
【0072】
実施例3に係る母基板の代わりに、比較例3に係る母基板を用いた以外は、実施例3と同様にして、比較例3に係るセラミック基板(長さ:200mm、幅:10mm、厚さ:500μm)を得た。母基板の分割において意図しない分割の発生回数を分割回数の総数で除して意図しない分割の発生率を求めた。結果を表1に示す。
【0073】
<比較例4>
実施例4と同様にして、比較例4に係る塗工用スラリーを得た。実施例1に係る塗工用スラリーの代わりに、比較例4に係る塗工用スラリーを用いて、実施例1と同様にして、265μmの厚みを有する比較例4に係るセラミックスグリーンシートを得た。
【0074】
実施例4に係るセラミックスグリーンシートの代わりに、比較例4に係るセラミックスグリーンシートを用い、かつ、55℃の環境に比較例4に係るセラミックスグリーンシートを置いた以外は、実施例4と同様にして溝付グリーンシートを作製しようと試みた。しかし、比較例4に係るセラミックスグリーンシートが刃に貼りつく現象が発生し、溝付グリーンシートを得ることはできなかった。
【0075】
表1に示す通り、セラミックスグリーンシートの1Hzでの貯蔵弾性率が5~1800MPaである状態で溝付グリーンシートが形成されていると、母基板の分割において意図しない母基板の割れが発生しにくいことが示唆された。
【0076】
【表1】
【符号の説明】
【0077】
10 セラミックスグリーンシート
11 溝付グリーンシート
15 母基板
21 第一溝
22 第二溝
図1