(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60P 1/04 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
B60P1/04 S
(21)【出願番号】P 2018181860
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 宏
(72)【発明者】
【氏名】楠元 究
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-179766(JP,A)
【文献】特開2008-025161(JP,A)
【文献】特開2015-123421(JP,A)
【文献】特開2011-241065(JP,A)
【文献】特開2014-169062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/00
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉が設けられるとともに傾動可能に構成された荷箱と、
該荷箱を傾動させるダンプシリンダと、
上記開閉扉を開閉させるゲートシリンダと、
上記荷箱の前後中間部の側方に設けられ、第1の方向に操作すれば上記ダンプシリンダが作動し、第2の方向に操作すれば上記ゲートシリンダが作動するように構成され、かつ、第1の方向及び第2の方向に同時には操作不能に構成された操作具とを有する作業車両であって、
上記開閉扉の近傍には、上記操作具を操作しても上記ダンプシリンダ及び上記ゲートシリンダの両方が動作しないように規制するダンプ排出作動規制スイッチが設けられて
おり、
上記ダンプ排出作動規制スイッチがオンにされた場合、上記荷箱の起伏傾動動作と、上記開閉扉の開閉動作とが同時に規制されるように構成されている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
上記荷箱の側面における上記開閉扉の近傍には、テールランプを有するテールランプブラケットが設けられており、
上記ダンプ排出作動規制スイッチは、車両前方側となる上記テールランプブラケットの前面に設けられている
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業車両において、
上記操作具を有する操作盤には、上記ダンプ排出作動規制スイッチが操作されたのを報知する報知部が設けられている
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷箱を傾動可能な作業車両に関し、特にそのダンプシリンダ及びゲートシリンダの操作の安全性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後端に開口を有して傾動可能なタンク本体と、この開口を開閉可能なハッチ(開閉扉)とを具備する汚泥吸引車が知られている。このような汚泥吸引車では、タンク本体の傾動及びハッチの開閉を操作するための操作盤は、運転室内や車両の側方に設けられている。このように、操作盤がハッチ付近の者を視認しにくい場所に設置されているので、第1作業者による操作盤の操作時に第1作業者はハッチの後方まで視認できなかった。これにより、第2作業者がハッチの後方にいたとしても第1作業者は気付かずにハッチの開閉やタンクの傾動を行ってしまうおそれがあり、安全性が十分に確保できないという問題があった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1のように、ハッチが開閉する付近の車両後方に人がいないことを確認して操作され得るように、有線又は無線のリモコンを設けるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、車両側方の操作盤とは別に、さらに有線又は無線のリモコンを設けるとなると、部品点数が増えて構造も複雑になる。さらに無線のリモコンは、紛失の問題があり、有線のリモコンについても、ハッチの近くに設けることから積載物が接触するなどにより故障が発生しやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単かつ操作が容易な構成で確実に開閉扉周辺の作業者の安全を確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、ダンプシリンダとゲートシリンダの動作を規制する機能に絞ったスイッチを開閉扉の周辺に設けた。
【0008】
具体的には、第1の発明では、開閉扉が設けられるとともに傾動可能に構成された荷箱と、
該荷箱を傾動させるダンプシリンダと、
上記開閉扉を開閉させるゲートシリンダと、
上記荷箱の前後中間部の側方に設けられ、第1の方向に操作すれば上記ダンプシリンダが作動し、第2の方向に操作すれば上記ゲートシリンダが作動するように構成され、かつ、第1の方向及び第2の方向に同時には操作不能に構成された操作具とを有する作業車両を対象とする。
【0009】
そして、上記開閉扉の近傍には、上記操作具を操作しても上記ダンプシリンダ及び上記ゲートシリンダの両方が動作しないように規制するダンプ排出作動規制スイッチが設けられている。
【0010】
すなわち、操作具が荷箱の前後中間部の側方に設けられているので、操作具を操作する第1作業者は、開閉扉の後方まで視認して操作をすることができない。しかし、上記の構成によると、開閉扉の周辺で作業をしている後ろの第2作業者自身がダンプ排出作動規制スイッチを操作してダンプシリンダ及びゲートシリンダの動作を規制させることで、後方の第2作業者の安全性が確保される。ダンプ排出作動規制スイッチは、ダンプシリンダ及びケートシリンダの動きを規制するだけの簡単な構造なので、新たにリモコンを設ける場合に比べると、部品点数の増加が抑えられると共に、操作も簡単で、故障の発生も抑えられる。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記荷箱の側面における上記開閉扉の近傍には、テールランプを有するテールランプブラケットが設けられており、
上記ダンプ排出作動規制スイッチは、車両前方側となる上記テールランプブラケットの前面に設けられている。
【0012】
上記の構成によると、従来あるテールランプブラケットにダンプ排出作動規制スイッチを設けることで、テールランプと共に配線を行うことができる。また、テールランプブラケットを利用すれば、新たな取付部を設ける必要がなく、部品点数の増加が抑えられる。さらに、テールランプブラケットの前面にダンプ排出作動規制スイッチを設けているので、テールランプの設置エリアを狭くすることがなく、また、開閉扉と反対側なので、荷箱内の積載物を排出するときに、積載物によって損傷したり、汚染されたりすることが防止される。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記操作具を有する操作盤には、上記ダンプ排出作動規制スイッチが操作されたのを報知する報知部が設けられている。
【0014】
上記の構成によると、操作具を操作している第1作業者は、ダンプ排出作動規制スイッチが操作されたのを容易に認識でき、操作具を操作すべきではない状況にあることを知ることができる。これにより、操作具の誤操作により、後方作業における事故が確実に防止される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、開閉扉の近傍に操作具を操作してもダンプシリンダ及びゲートシリンダの両方が動作しないように規制するダンプ排出作動規制スイッチを設けたので、簡単かつ操作が容易な構成で確実に開閉扉周辺の作業者の安全を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】ダンプ排出作動規制スイッチ及びその周辺を拡大して示す側面図である。
【
図1B】ダンプ排出作動規制スイッチ及びその周辺を拡大して示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る吸引車の概略構成を示す側面図である。
【
図4】ゲートシリンダやダンプシリンダを作動させる油圧回路図である。
【
図5】ゲートシリンダやダンプシリンダを作動させるシーケンス回路の一部を示す図である。
【
図7】ロック状態の本発明の実施形態に係る操作盤を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図2、
図3及び
図6は本発明の実施形態の作業装置の操作盤を有する吸引車1を示し、この吸引車1では、車両のシャーシフレーム2上にサブフレーム3が設置され、その前部には吸引装置4が搭載され、後部には荷箱としてのレシーバタンク5が搭載されている。
【0019】
このレシーバタンク5は、後端に開口を有するタンク本体5aと、この開口を開閉するようにタンク本体5aの後端上部にヒンジピン5bを介して回動自在に軸支されたテールゲート5c(開閉扉)とを備えている。レシーバタンク5には、吸引装置4の作動によって、例えば汚泥、土砂、廃液等の回収対象物が回収されるように構成されている。また、タンク本体5aの左右両側にはそれぞれゲートシリンダ6が配設されており、その伸縮作動によってテールゲート5cがタンク本体5aの開口を開閉するようになっている。
【0020】
そして、ゲートシリンダ6の前端部はタンク本体5aの側部に回転自在に軸支されている一方、その後端部はテールゲート5cの側部に回転自在に軸支されている。
図2に実線で示すようにゲートシリンダ6が収縮した状態では、テールゲート5cが開口を閉じる一方、逆に
図2に二点鎖線で示すように、ゲートシリンダ6が伸長すれば、テールゲート5cがヒンジピン5bの周りに回動して、開口を開放するようになっている。
図6に示すように、レシーバタンク5の側面におけるテールゲート5cの近傍には、テールランプ41を有する、例えば直方体状のボックス部分を有するテールランプブラケット42が設けられている。
【0021】
図2及び
図3に示すように、タンク本体5aの上部から左側にかけてタンク加減圧配管7が接続されており、吸引装置4の作動によってレシーバタンク5内の空気を吸引して減圧したり、反対にレシーバタンク5内に空気を送り込んで加圧したりすることができるようになっている。また、テールゲート5cの下部には、回収対象物の吸引口となる開閉弁付きの吸引口8と、回収対象物の排出口となる開閉弁付きの排出口9とが設けられている。
【0022】
また、レシーバタンク5のタンク本体5aの後端部は、傾動ピン10を介してサブフレーム3に対し傾動自在に軸支されており、その左右両側にそれぞれ配設されたダンプシリンダ11の伸縮作動によって、レシーバタンク5が起立又は倒伏するように傾動するように構成されている。
【0023】
吸引車1において例えば汚泥、土砂など(回収対象物)を回収するときには、吸引装置4の作動によってレシーバタンク5内を減圧し、吸引口8に接続した図示しない吸引ホースを通じて外部からレシーバタンク5内に回収対象物を吸引するようになっている。逆に、そうして回収した回収対象物を汚泥処理場など所定の場所において排出するときには、レシーバタンク5内の空気を加圧し、排出口9に接続した図示しない排出ホースを通じてレシーバタンク5内から外部へ回収対象物を排出することができるように構成されている。
【0024】
-作業装置とその操作部-
汚泥処理場などにおいて回収対象物を排出するときには、レシーバタンク5を起立させることによって、その内部の回収対象物を効率良く排出することもできる。このときには
図2に二点鎖線で示すように、ゲートシリンダ6の伸長作動によってテールゲート5cを開いた後に、ダンプシリンダ11の伸長作動によってレシーバタンク5を起立させることにより、その後端の開口から回収対象物が自重により流出するようになっている。
【0025】
テールゲート5cが設けられたレシーバタンク5と、これを傾動させるダンプシリンダ11と、テールゲート5cを開閉させるゲートシリンダ6とによって作業装置が構成されている。そして、この作業装置や上記吸引装置4などを作動させるためのメータ類、スイッチ類、レバーなどを集中配置した操作パネル20(操作部)が、
図2に示すように吸引車1の左側に配設されている。
【0026】
図7に示すように、操作パネル20の最上部には、例えば、これを照明するパネル灯21が設けられ、その下方には、吸引及び加圧時等におけるレシーバタンク5内の圧力を表示する連成計22と、吸引車1のエンジン回転数を表示するエンジン回転計23とが横並びに配置されている。エンジン回転計23の向かって右側(
図7の右側)には、作業時間を表示するアワーメータ24と、非常停止スイッチ25とが配置されている一方、パネル灯21や連成計22の左側(
図7の左側)には、排気温度警告灯26a、吸引装置4に設けられた安全バルブの開状態及び閉状態の表示灯26b,26c、その安全バルブのリセットスイッチ26d、排気温度警報ブザーの解除スイッチ26f、パネル灯21の電源スイッチ26g等が配設されているが、この構成に限定されない。この操作パネル20には、後述するダンプ排出作動規制スイッチ40が操作されたのを報知する報知部としてのダンプ排出作動規制表示灯43が設けられている。なお、報知部としては、図示しない警報ブザーにより、ダンプ排出作動規制スイッチ40が操作されたのを報知するようにしてもよい。この警報ブザーは、例えば、作動油の温度等が高温になったときに報知する温度警報ブザーと兼用してもよい。
【0027】
一方、操作パネル20の下部には上記のようにレシーバタンク5を傾動させる際に、ゲートシリンダ6及びダンプシリンダ11を作動させるためのモノレバー27(操作具)と、エンジン回転数を増減調整するためのアクセルレバー28とが配設されている。
図7においてモノレバー27の右下に表れている第1トグルスイッチ29は、モノレバー27への通電状態を切り換えるものである。
【0028】
図7に示すように、モノレバー27は、そのシャフト27aの先端部に球状の握り部27bが取り付けられており、また、シャフト27aの基端側が挿入されたハウジング27c内には、例えば十文字のゲートが形成されたプレート(図示せず)が配設されていて、その中央部から上下又は左右のいずれかの方向にのみシャフト27aを動かせるようになっている。このように、モノレバー27(シャフト27a)は、上記十文字のゲート中央に相当する中立位置から上下方向(第1の方向)又は左右方向(第2の方向)のいずれかに操作することができ、安全性の観点で上下及び左右の両方向に同時に(すなわち斜めに)は操作できないように構成されている。
【0029】
操作パネル20は、モノレバー27を機械的に保持するロック状態にしてこのモノレバー27が第1の方向(上下方向)に操作されるのを防止する第1ストッパ31と、モノレバー27を機械的に保持するロック状態にしてこのモノレバー27が第2の方向(左右方向)に操作されるのを防止する第2ストッパ32とを備えている。また、第1ストッパ31に設けたツマミ部35を時計回りに回動させるロック解除操作により、第2ストッパ32のロックも解除されるように構成されている。
【0030】
そのようにしてシャフト27aを上下又は左右方向に操作することによって、モノレバー27の電気接点27d~27g(
図5に示す)のいずれかが閉じられる。すなわち、以下に
図4及び
図5を参照して説明するように本実施形態の作業装置において、ゲートシリンダ6及びダンプシリンダ11には、それらを作動させるために作動油を供給する油圧回路Oと、この油圧回路Oに設けられた第1、第2の電磁バルブV1,V2に対して、上記モノレバー27の操作に応じて通電するシーケンス回路S(電気回路)とが設けられている。
【0031】
そして、後述するようにシーケンス回路Sにはモノレバー27の接点27d~27gが含まれており、モノレバー27の上下又は左右方向への操作に応じて、いずれかの接点27d~27gが閉じられると、シーケンス回路Sから第1又は第2の電磁バルブV1,V2に通電されることによって、ダンプシリンダ11又はゲートシリンダ6へ作動油が供給されるようになっている。
【0032】
そして、
図1A及び
図1Bに示すように、テールゲート5cの近傍には、モノレバー27を操作してもダンプシリンダ11及びゲートシリンダ6の両方が動作しないように規制するダンプ排出作動規制スイッチ40(第2トグルスイッチ)が設けられている。具体的には、このダンプ排出作動規制スイッチ40は、例えば第1トグルスイッチ29と同様のトグルスイッチよりなり、車両前方側となるテールランプブラケット42の前面42aに設けられている。
【0033】
-作業装置の油圧回路-
まず、
図4を参照して油圧回路Oの構成について説明すると、この油圧回路Oは、油圧源である油圧ポンプPと、オイルリザーバTと、第1及び第2の電磁バルブV1,V2を共通のバルブブロックに収容したメインバルブユニットMとを備えている。油圧ポンプPは、ドライブシャフト14を介してエンジンのPTOに接続されており、エンジン回転数が高くなれば、油圧ポンプPの回転数が高くなって吐出量が増大する。
【0034】
詳しくは図示しないが、このメインバルブユニットMは、操作パネル20の裏側に配設されており、各油圧配管によってゲートシリンダ6やダンプシリンダ11に接続されている。
図4に表れているように、例えば、電磁バルブV1,V2は6ポート3位置の電磁式の方向切換弁であり、ソレノイドSOLa~SOLdの励磁によって位置が切り換わるようになっている。なお、図示の油圧回路において符号CV1,CV2はそれぞれ、ゲートシリンダ6及びダンプシリンダ11に付設された公知のダブルパイロットチェックバルブを示す。
【0035】
次いで、油圧回路Oの動作について説明すると、電磁バルブV1は、シーケンス回路Sからの通電によってソレノイドSOLaが励磁されると、第1連通位置(図の左側位置)に切り換わって、油圧ポンプPからの作動油を一対のダンプシリンダ11のロッド側油室に供給する。一方、ソレノイドSOLbが励磁されると第2連通位置(図の右側位置)に切り換わって、作動油をダンプシリンダ11のキャップ側油室に供給する。
【0036】
そうして電磁バルブV1からの作動油がキャップ側油室に供給されると、一対のダンプシリンダ11が伸長作動してレシーバタンク5を起立させる。一方、作動油がロッド側油室に供給されると、ダンプシリンダ11は収縮作動して、レシーバタンク5を倒伏させる。また、いずれのソレノイドSOLa,SOLbも励磁されていないときに、電磁バルブV1は中立位置(図の中央位置)に復帰する。
【0037】
一方、電磁バルブV2は、ソレノイドSOLcが励磁されると第1連通位置(図の左側位置)に切り換わって、作動油をゲートシリンダ6のロッド側油室に供給し、このゲートシリンダ6を収縮作動させる。また、ソレノイドSOLdが励磁されると電磁バルブV2は第2連通位置(図の右側位置)に切り換わって、作動油をゲートシリンダ6のキャップ側油室に供給し、このゲートシリンダ6を伸長作動させる。
【0038】
さらに、いずれのソレノイドSOLc,SOLdも励磁されていないときに、電磁バルブV2は中立位置(図の中央位置)に復帰する。そして、電磁バルブV1,V2の両方が中立位置にあるときに、作動油はオイルリザーバTへ還流するようになる。
【0039】
本実施形態では一対のゲートシリンダ6のそれぞれにダブルパイロットチェックバルブCV2を直接、付設しており、このことで、万が一の配管からのオイル漏れの際にも油圧を保持して、ゲートシリンダ6の伸縮作動を規制するようにしている。一方、一対のダンプシリンダ11についてはまとめて1つのダブルパイロットチェックバルブCV1を付設しているが、レシーバタンク5の倒伏についてはダンプ安全ブロック12によって規制し、安全性を確保している。
【0040】
-作業装置の電気回路-
次に
図5には、上記油圧回路Oの電磁バルブV1,V2のソレノイドSOLa~SOLdなどに通電して、ゲートシリンダ6やダンプシリンダ11を作動させるシーケンス回路Sの一部を示しており、図の最上部中央に電源バッテリBTが配置されている。図において符号SWKとして示すのは吸引車1のキースイッチであり、符号SWPとして示すのはPTOスイッチである。また、符号Keはアースラインである。
【0041】
なお、PTOスイッチSWPは、エンジンの出力軸から駆動力を取り出すPTOに内蔵された切換駆動装置をオンオフするためのものであり、これをオン操作すれば、エンジンの駆動力によってPTO及びドライブシャフト14を介して、油圧ポンプPが作動される。一方、PTOスイッチSWPをオフ操作すれば、油圧ポンプPを停止させることができる。これらキースイッチSWKやPTOスイッチSWPは、例えば運転室13に配置されている。
【0042】
図5の最上部においてバッテリBTの正極から左側に延びる電源ラインK0には、キースイッチSWKのオン操作によって閉じられるリレーコイルCR0の接点cr0が介設され、それよりも上流側(バッテリBTに近い側)から分岐するように、電源ラインK0に通電ラインK1の上流端が接続されている。この通電ラインK1にPTOスイッチSWPが介設され、その下流側の分岐ラインにはそれぞれPTOソレノイドSOLp(上記の切換駆動装置を作動させるソレノイド)及びリレーコイルCR1が介設されている。
【0043】
一方、上記の接点cr0よりも下流側で電源ラインK0から分岐するように、通電ラインK2の上流端が接続されており、この通電ラインK2には上記リレーコイルCR1の接点cr1が介設されている。この通電ラインK2はエンジン回転計23の電源ラインであり、リレーコイルCR1がオンになって接点cr1が閉じられると、通電ラインK2に通電することによってエンジン回転計23の表示が行われるようになる。
【0044】
また、上記の接点cr1よりも下流側で通電ラインK2から分岐するように、通電ラインK3の上流端が接続されている。そして、この通電ラインK3から分岐する通電ラインK4には、ダンプ安全ブロック12の位置(規制位置又は収納位置)に応じてオンオフされるリミットスイッチLS(規制位置にあるか否か検出するためのスイッチ)と、リレーコイルCR3とが介設されている。
【0045】
そして、リミットスイッチLSは通常、すなわちダンプ安全ブロック12が収納位置にあるときには閉じられており、このときにはリレーコイルCR3に通電されることで、後述する接点cr3が閉じられる。一方、レシーバタンク5の倒伏を規制するために、ダンプ安全ブロック12を規制位置にすると、リミットスイッチLSが開放され、リレーコイルCR3には通電されないので、接点cr3が開かれる。
【0046】
さらに、通電ラインK3には、第1トグルスイッチ29及びダンプ排出作動規制スイッチ40(第2トグルスイッチ)が介設され、その下流側が4つのラインに分岐して、それぞれにモノレバー27の4つの接点27d~27gが介設されている。このため、第1トグルスイッチ29がオンでダンプ排出作動規制スイッチ40がオフになっていれば、モノレバー27の上下左右の操作に応じていずれかの接点27d~27gが閉じられ、油圧回路Oの第1、第2の電磁バルブV1,V2のいずれかのソレノイドSOLa~SOLdに通電されるようになっている。逆に言うと、第1トグルスイッチ29がオフ又はダンプ排出作動規制スイッチ40がオンになっていれば、モノレバー27の上下左右を操作しても、油圧回路Oの第1、第2の電磁バルブV1,V2のいずれかのソレノイドSOLa~SOLdに通電されることはない。すると、第1、第2の電磁バルブV1,V2が中立位置になって作動油の流れが止まり、テールゲート5cが開閉動作や、レシーバタンク5の起伏動作が停止する。そして、第1トグルスイッチ29又はダンプ排出作動規制スイッチ40を元の位置に戻すと、モノレバー27を操作してテールゲート5cが開閉動作や、レシーバタンク5の起伏動作を行うことが可能になる。
【0047】
次いで、この電気回路の動作について説明すると、通電されたいずれかのソレノイドSOLa~SOLdが励磁され、電磁バルブV1,V2が作動することで、ゲートシリンダ6やダンプシリンダ11に作動油が供給される。これを受けてゲートシリンダ6やダンプシリンダ11がそれぞれ伸縮作動することによって、レシーバタンク5のテールゲート5cが開閉され、また、レシーバタンク5が起立又は倒伏される。
【0048】
具体的には、例えばモノレバー27が上向きに操作され、接点27eが閉じられると、第1の電磁バルブV1のソレノイドSOLbに通電されて、第2連通位置に切り換わる。これにより作動油がキャップ側油室に供給されて、ダンプシリンダ11が伸長作動し、レシーバタンク5を起立させる。一方、モノレバー27が下向きに操作されれば接点27dが閉じられ、第1の電磁バルブV1のソレノイドSOLaに通電されることにより、ダンプシリンダ11が収縮作動して、レシーバタンク5を倒伏させる。
【0049】
但し本実施形態では、モノレバー27の接点27dからソレノイドSOLaへのラインに、上記したリレーコイルCR3の接点cr3が介設されており、上述したようにダンプ安全ブロック12が規制位置にあれば、接点cr3は開放されている。この場合はモノレバー27が下向きに操作され、接点27dが閉じられても、第1の電磁バルブV1のソレノイドSOLaには通電されず、ダンプシリンダ11への作動油の供給は行われない。
【0050】
よって、仮に作業者がダンプ安全ブロック12を収納位置に戻すのを忘れて、それを規制位置にしたまま、モノレバー27を下向きに操作したとしても、ダンプシリンダ11が収縮作動することはない。これにより、ダンプシリンダ11によってレシーバタンク5が倒伏するように引き下げられてしまい、レシーバタンク5やダンプ安全ブロック12に無理な力がかかって破損することを防止できる。
【0051】
さらに、モノレバー27が右側に操作され、接点27fが閉じられると、ソレノイドSOLdへの通電によって第2の電磁バルブV2が第2連通位置に切り換わる。これにより、キャップ側油室への作動油の供給を受けてゲートシリンダ6が伸長作動し、テールゲート5cを開放させる。一方、モノレバー27が左側に操作されれば接点27gが閉じられ、第2の電磁バルブV2のソレノイドSOLcに通電されることにより、ゲートシリンダ6が収縮作動して、テールゲート5cを閉じる。
【0052】
ここで、モノレバー27は、レシーバタンク5の前後中間部の側方に設けられているので、モノレバー27を操作する第1作業者は、テールゲート5cの後方まで視認して操作をすることができない。このため、テールゲート5cの周辺で作業をしている第2作業者が気付かないうちに第1作業者がモノレバー27を操作してしまい、後方の第2作業者にとって不都合が生じるおそれがある。
【0053】
しかし、本実施形態では、後方の第2作業者自身がダンプ排出作動規制スイッチ40を操作してダンプシリンダ11及びゲートシリンダ6の動作を規制させることができるので、モノレバー27が誤って操作されるのを気にすることなく、後方で安全に作業を行うことができる。
【0054】
このダンプ排出作動規制スイッチ40は、ダンプシリンダ11及びケートシリンダの動きを規制するだけの簡単な構造なので、新たにリモコンを設ける場合に比べると、部品点数の増加が抑えられると共に、操作も簡単で、故障の発生も抑えられる。
【0055】
また、従来あるテールランプブラケット42にダンプ排出作動規制スイッチ40を設けることで、テールランプ41と共に配線を行うことができる。また、テールランプブラケット42を利用すれば、専用の取付部を設ける必要がなく、部品点数の増加が抑えられる。さらに、車両前方側となるテールランプブラケット42の前面42aにダンプ排出作動規制スイッチ40を設けているので、車両後方側となる後面のテールランプ41の設置エリアを狭くすることがなく、また、テールゲート5c側や車両側方ではなく、テールゲート5cの反対側の前面42aに設けたので、レシーバタンク5内の積載物を排出するときに、積載物によって損傷したり、汚染されたりすることが防止される。
【0056】
一方で、モノレバー27を操作している第1作業者は、ダンプ排出作動規制スイッチ40が操作された場合に、ダンプ排出作動規制表示灯43が点灯しているのを確認することにより、後方の第2作業者の意思でダンプ排出作動規制スイッチ40が押されたのを容易に認識でき、モノレバー27を操作すべきではない状況にあることを知ることができる。これにより、後方作業における事故が確実に防止される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る吸引車1によると、テールゲート5cの近傍にモノレバー27を操作してもダンプシリンダ11及びゲートシリンダ6の両方が動作しないように規制するダンプ排出作動規制スイッチ40を設けたので、簡単かつ操作が容易な構成で確実にテールゲート5c周辺の作業者の安全を確保できる。
【0058】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0059】
すなわち、上記実施形態では、作業車両が吸引車1である場合について説明したが、吸引車1以外にも荷箱や油圧シリンダを備えた種々の作業車両について本発明を適用することが可能であり、例えば荷箱として、回収された塵芥の収集箱を備える塵芥収集車にも本発明を適用可能である。また、車両に搭載されていない作業装置にも本発明を適用することができ、この場合、作業装置のゲートシリンダ6やダンプシリンダ11は、車両の走行用エンジンとは異なる駆動源によって駆動されることになる。
【0060】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0061】
1 吸引車(作業車両)
2 シャーシフレーム
3 サブフレーム
4 吸引装置
5 レシーバタンク(荷箱)
5a タンク本体
5b ヒンジピン
5c テールゲート(開閉扉)
6 ゲートシリンダ
7 タンク加減圧配管
8 吸引口
9 排出口
10 傾動ピン
11 ダンプシリンダ
12 ダンプ安全ブロック
13 運転室
14 ドライブシャフト
20 操作パネル(操作盤)
21 パネル灯
22 連成計
23 エンジン回転計
24 アワーメータ
25 非常停止スイッチ
26a 排気温度警告灯
26b,26c 表示灯
26d リセットスイッチ
26f 解除スイッチ
26g 電源スイッチ
27 モノレバー(操作具)
27a シャフト
27b 握り部
27c ハウジング
27d~27g 電気接点
27h 第1ブラケット
27i 第2ブラケット
28 アクセルレバー
29 第1トグルスイッチ
31 第1ストッパ
32 第2ストッパ
35 ツマミ部
40 ダンプ排出作動規制スイッチ
41 テールランプ
42 テールランプブラケット
42a 前面
43 ダンプ排出作動規制表示灯