(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】データ保存装置、データ追加変更装置、その方法及びコンピュータプログラム。
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20220817BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20220817BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
G01C21/28
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
(21)【出願番号】P 2018193925
(22)【出願日】2018-10-14
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501271479
【氏名又は名称】株式会社トヨタマップマスター
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 大路
(72)【発明者】
【氏名】山下 由美子
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-042946(JP,A)
【文献】特開2007-241813(JP,A)
【文献】特開2006-038469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G09B 23/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部と、
交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のデータを保存する速度抑制道路データ保存部
と、を備えるナビゲーション装置における前記速度抑制道路データ保存部にデータを追加若しくは変更するデータ追加変更装置であって、
前記速度抑制道路を特定する速度抑制道路データを作成する速度抑制道路データ作成部を
備え、
前記速度抑制道路データ作成部は、所定の条件を満足する道路の区間を速度抑制道路候補として抽出する道路区間抽出部と、前記速度抑制道路候補が速度抑制されていないときの標準通過時間を演算する標準通過時間演算部と、指定された時間条件において前記速度抑制道路候補を通過するプローブカーの通過時間に基づき実通過時間を演算する実通過時間演算部と、前記実通過時間と前記標準通過時間とを比較する通過時間比較部と、該通過時時間比較部の比較結果に基づき前記速度抑制道路候補が前記速度抑制道路であるか否かを判断して、前記速度抑制道路を特定する速度抑制道路データを
作成し、
前記指定された時間条件の時間幅を拡張する
手段と、及び
前記抽出された道路区間を延長する
手段と、を更に備え、
前記
通過時間比較部は前記それぞれの拡張に応じて前記実通過時間と前記標準通過時間を比較し、
前記速度抑制道路データ作成部は、比較の結果に基づき、拡張された範囲の速度抑制道路データを
作成する、データ追加変更装置。
【請求項2】
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部と、
交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のデータを保存する速度抑制道路データ保存部
と, を備えるナビゲーション装置における前記速度抑制道路データ保存部にデータを追加若しくは変更するデータ追加変更装置によるデータ追加変更方法であって、
道路区間抽出部に、所定の条件を満足する道路の区間を速度抑制道路候補として抽出させる道路区間抽出ステップ、
標準通過時間演算部に速度抑制されていないときの標準通過時間を演算させる標準通過時間演算ステップ、
実通過時間演算部に指定された時間条件において前記速度抑制道路候補を通過するプローブカーの通過時間に基づき実通過時間を演算させる実通過時間演算ステップ、
通過時間比較部に前記実通過時間と前記標準通過時間とを比較させる
通過時間比較ステップ、
速度抑制道路データ作成部に前記通過時時間比較部の比較結果に基づき前記速度抑制道路候補が前記速度抑制道路であるか否かを判断させて、前記速度抑制道路を特定する速度抑制道路データを作成させる速度抑制道路データ作成ステップ、
前記指定された時間条件の時間幅を拡張する
ステップ、及び
前記抽出された道路区間を拡張するステップ、
を含み、
前記通過時間比較ステップでは前記それぞれの拡張に応じて前記実通過時間と前記標準通過時間とが比較され、
前記速度抑制道路データ作成ステップでは、前記比較の結果に基づき、拡張された範囲の速度抑制道路データを
作成する、データ追加変更方法。
【請求項3】
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部と、
交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のデータを保存する速度抑制道路データ保存部
と、を備えるナビゲーション装置における前記速度抑制道路データ保存部にデータを追加若しくは変更するデータ追加変更装置のコンピュータ用のコンピュータプログラムであって、該コンピュータに
道路区間抽出部に、所定の条件を満足する道路の区間を速度抑制道路候補として抽出させる道路区間抽出ステップ、
標準通過時間演算部に速度抑制されていないときの標準通過時間を演算させる標準通過時間演算ステップ、
実通過時間演算部に指定された時間条件において前記速度抑制道路候補を通過するプローブカーの通過時間に基づき実通過時間を演算させる実通過時間演算ステップ、
通過時間比較部に前記実通過時間と前記標準通過時間とを比較させる通
過時間比較ステップ、
速度抑制道路データ作成部に前記通過時時間比較部の比較結果に基づき前記速度抑制道路候補が前記速度抑制道路であるか否かを判断させて、前記速度抑制道路を特定する速度抑制道路データを作成させる速度抑制道路データ作成ステップ、
前記指定された時間条件の時間幅を拡張する
ステップ、及び
前記抽出された道路区間を拡張する
ステップ、を実行させ、
前記通過時間比較ステップでは前記それぞれの拡張に応じて前記実通過時間と前記標準通過時間とを比較させ、
前記速度抑制道路データ作成ステップでは、前記比較の結果に基づき、拡張された範囲の速度抑制道路データを作成させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に適用されるデータ保存装置、データ追加変更装置、その方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
深夜早朝の交通量が少ない時間帯にも拘わらず、市街地の幹線道路を走行すると信号機毎に停止させられることがある。これは、交通信号制御システムが交通事故を防止するために行うもので、走行速度を抑制するように信号サイクルを制御している。この交通信号制御システムは主に(1)交通流を円滑化する制御と、(2)走行速度を抑制する制御と、を実行する。(2)の走行速度を抑制する制御は深夜早朝等の交通量が少ない時間帯に実行される。
かかる交通信号制御システムにつき特許文献1、2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-032866号公報
【文献】特開2002-063687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の交通信号制御システムが(2)の走行速度抑制制御を実行している道路を走行すると、通過に要する時間が利用者の予想していた時間よりも長くなる。このことはナビゲーション装置にも該当し、ナビゲーション装置の案内ルートに当該道路が含まれていると、当初計算した目的地への到着予定時間と実際の到着時間との間にズレが生じることとなる。
このような到着予定時間のズレは道路の渋滞によっても発生するが、道路の渋滞による到着時間のズレの修正は、VICS(登録商標)情報を受信することなどによって、ナビゲーション装置では一般に実行されている。
【0005】
しかしながら、上記交通信号制御システムを原因とする目的地への到着時間のズレについては、これを補正しようとする機能を備えるナビゲーション装置は、本発明者らの知る限りにおいて、存在しない。
この発明の1つの目的は、上記交通信号制御システムにより走行速度が抑制されている道路における速度抑制がナビゲーション装置のルート検索に反映されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の局面は次のように規定される。即ち、
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部を備えるナビゲーション装置のデータ保存装置であって、
交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のデータを保存する速度抑制道路データ保存部が更に備えられる、データ保存装置。
【0007】
このように規定される第1の局面のナビゲーション装置によれば、速度抑制道路データ保存部に、交通信号制御システムにより走行速度が抑制される道路(速度抑制道路)に関するデータが保存されている。このデータを用い、例えば、当該速度抑制道路を検索ルートから除外して、再度ルート検索を実行することができる。
速度抑制道路を検索ルートから除外することで、目的地へ到着するのに要する時間(要到着時間)の計算値と実際に要する時間との間にズレがなくなるか若しくはズレが小さくなる。かかる時間のズレの発生を未然に防ぐことで、利用者のナビゲーション装置に対するストレスが低減する。
【0008】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、第1の局面に規定のデータ保存装置において、前記速度抑制道路に対応する迂回道路を保存する迂回道路データ保存部が更に備えられる。
このように規定される第2の局面のデータ保存装置によれば、速度抑制道路に対応する迂回道路が迂回道路データ保存部に保存されているので、ナビゲーション装置が速度抑制道路を回避したルートを検索する際、当該迂回道路を利用することで、ルート検索が容易になる。よって、ナビゲーション装置のコンピュータにかかる負担が軽減される。
ここで迂回道路とは、前記速度抑制道路区間の一端から他端へ通じ、該区間を構成するリンクを含まない他のルートであって、通過コストの最も小さいルートである(第3の局面)。
【0009】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部と、
交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のデータを保存する速度抑制道路データ保存部とを備えるナビゲーション装置における前記速度抑制道路データ保存部にデータを追加若しくは変更するデータ追加変更装置であって、
前記速度抑制道路を特定する速度抑制道路データを作成する速度抑制道路データ作成部を備える、データ追加変更装置。
このように規定される第4の局面のデータ追加変更装置によれば、ナビゲーション装置の速度抑制道路データ保存部の内容のアップデートが可能になる。これにより、ナビゲーション装置のルート案内がより正確に実行できることとなる。
【0010】
この発明の第5の局面は次のように規定される。即ち、
第4の局面に規定のデータ追加変更装置であって、前記速度抑制道路データ作成部は、プローブカーの移動履歴であるプローブデータを保存するプローブデータ保存部を備え、
前記プローブデータを解析することで前記速度抑制道路データを作成する。
このように規定される第5の局面のデータ追加変更装置によれば、速度抑制道路であるか否かを、プローブデータを利用することにより判断できるので、信頼性が確保できる。
【0011】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、
第4の局面に規定のデータ追加変更装置であって、所定の条件を満足する道路の区間を速度抑制道路候補として抽出する道路区間抽出部と、前記速度抑制道路候補が速度抑制されていないときの標準通過時間を演算する標準通過時間演算部と、指定された時間条件において前記速度抑制道路候補を通過するプローブカーの通過時間に基づき実通過時間を演算する実通過時間演算部と、前記実通過時間と前記標準通過時間とを比較する通過時間比較部と、該通過時時間比較部の比較結果に基づき前記速度抑制道路候補が前記速度抑制道路であるか否かを判断して、前記速度抑制道路を特定する速度抑制道路データを作成する速度抑制道路データ作成部とを備える。
【0012】
このように規定される第6の局面のデータ追加変更装置によれば、速度抑制道路候補につき、ナビゲーション装置の汎用的なプログラムで演算できる標準通過時間とプローブカーの通過時間に基づく実通過時間とを比較する。この比較結果に基づき、速度抑制道路候補が現実の速度抑制道路であるか否かが正確に判断される。
【0013】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、
第6の局面に規定のデータ追加変更装置において、前記指定された時間条件の時間幅を拡張する手段と、前記抽出された道路区間を拡張する手段とを更に備え、前記比較部はそれぞれの拡張に応じて前記実通過時間と前記標準通過時間とを比較し、前記速度抑制道路データ作成部は、比較の結果に基づき、拡張範囲の速度抑制道路データを作成する。
このように規定される第7の局面のデータ追加変更装置によれば、速度抑制道路を特定するデータを作成するにあたり、速度抑制道路の候補を時間的に拡張し、また道路自体も拡張(延長)する。これにより、実際の速度抑制道路の時間条件(開始時刻、終了時刻)及びその地図上の範囲(速度抑制道路の両端のノード)が正確に特定される。
【0014】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部と、
交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のデータを保存する速度抑制道路データ保存部とを備えるナビゲーション装置における前記速度抑制道路データ保存部にデータを追加若しくは変更するデータ追加変更装置によるデータ追加変更方法であって、
プローブデータを解析することで前記速度抑制道路データを作成する、データ追加変更方法。
このように規定される第8の局面の発明によれば、第5の局面と同様の作用が得られる。
【0015】
この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部と、
交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のデータを保存する速度抑制道路データ保存部とを備えるナビゲーション装置における前記速度抑制道路データ保存部にデータを追加若しくは変更するデータ追加変更装置によるデータ追加変更方法であって、
道路区間抽出部に、所定の条件を満足する道路の区間を速度抑制道路候補として抽出させる道路区間抽出ステップ、
標準通過時間演算部に速度抑制されていないときの標準通過時間を演算させる標準通過時間演算ステップ、
実通過時間演算部に指定された時間条件において前記速度抑制道路候補を通過するプローブカーの通過時間に基づき実通過時間を演算させる実通過時間演算ステップ、
通過時間比較部に前記実通過時間と前記標準通過時間とを比較させる通過時間比較ステップ、及び
速度抑制道路データ作成部に前記通過時時間比較部の比較結果に基づき前記速度抑制道路候補が前記速度抑制道路であるか否かを判断させて、前記速度抑制道路を特定する速度抑制道路データを作成させる速度抑制道路データ作成ステップ、
を含むデータ追加変更方法。
このように規定される第9の局面の発明によれば、第6の局面と同様の作用が得られる。
【0016】
この発明の第10の局面は次のように規定される。即ち、
第9の局面に記載のデータ追加変更方法において、前記指定された時間条件の時間幅を拡張するステップと、前記抽出された道路区間を拡張するステップとを更に含み、
前記通過時間比較ステップでは前記それぞれの拡張に応じて前記実通過時間と前記標準通過時間とが比較され、
前記速度抑制道路データ作成ステップでは、前記比較の結果に基づき、拡張された範囲の速度抑制道路データを作成する。
このように規定される第10の局面の発明によれば、第7の局面と同様の作用が得られる。
【0017】
この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部と、
交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のデータを保存する速度抑制道路データ保存部とを備えるナビゲーション装置における前記速度抑制道路データ保存部にデータを追加若しくは変更するデータ追加変更装置のコンピュータ用のコンピュータプログラムであって、該コンピュータに
プローブデータを解析することで前記速度抑制道路データを作成させる、コンピュータプログラム。
このように規定される第11の局面の発明によれば、第5の局面と同様の作用が得られる。
【0018】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部と、
交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のデータを保存する速度抑制道路データ保存部とを備えるナビゲーション装置における前記速度抑制道路データ保存部にデータを追加若しくは変更するデータ追加変更装置のコンピュータ用のコンピュータプログラムであって、該コンピュータに
道路区間抽出部に、所定の条件を満足する道路の区間を速度抑制道路候補として抽出させる道路区間抽出ステップ、
標準通過時間演算部に速度抑制されていないときの標準通過時間を演算させる標準通過時間演算ステップ、
実通過時間演算部に指定された時間条件において前記速度抑制道路候補を通過するプローブカーの通過時間に基づき実通過時間を演算させる実通過時間演算ステップ、
通過時間比較部に前記実通過時間と前記標準通過時間とを比較させる通過時間比較ステップ、及び
速度抑制道路データ作成部に前記通過時時間比較部の比較結果に基づき前記速度抑制道路候補が前記速度抑制道路であるか否かを判断させて、前記速度抑制道路を特定する速度抑制道路データを作成させる速度抑制道路データ作成ステップ、
を実行させるコンピュータプログラム。
このように規定される第12の局面の発明によれば、第6の局面と同様の作用が得られる。
【0019】
この発明の第13の局面は次のように規定される。即ち、
第12の局面に規定のコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、前記指定された時間条件の時間幅を拡張するステップと、前記抽出された道路区間を拡張するステップとを更に実行させ、
前記通過時間比較ステップでは前記それぞれの拡張に応じて前記実通過時間と前記標準通過時間とを比較させ、
前記速度抑制道路データ作成ステップでは、前記比較の結果に基づき、拡張された範囲の速度抑制道路データを作成させる。
このように規定される第13の局面の発明によれば、第7の局面と同様の作用が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1はこの発明の実施の形態のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は
図1に示すナビゲーション装置の動作を説明するフローチャート図である。
【
図3】
図3はこの発明の他の実施の形態のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図2は
図3に示すナビゲーション装置の動作を説明するフローチャート図である。
【
図5】
図5はこの発明の他の実施の形態のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は
図5に示すナビゲーション装置の動作を説明するフローチャート図である。
【
図7】
図7は速度抑制道路データ追加変更装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は
図7に示す速度抑制道路データ追加変更装置の動作を説明するフローチャート図である。
【
図9】
図9は
図8のフローチャートのステップ38の詳細を説明する。
【
図10】
図10は速度抑制道路を特定する方法を説明する参考図である。
【
図11】
図11は実施の形態のナビゲーション装置のハード構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1にこの発明の実施形態のナビゲーション装置1を示す。
このナビゲーション装置1はデータ保存装置10、演算装置20、出力装置30及び入力装置40を概略備えてなる。なお、以下の説明で「速度抑制道路」を『速抑道路』と略することがある。
データ保存装置10は地図データ保存部11、速抑道路回避地図データ保存部14及び速抑道路データ保存部12を備えている。
【0022】
地図データ保存部11にはリンク及びノードからなる道路図データと、リンクやノードに付随するデータからなる道路付随データが保存される。道路図データに基づき道路地図が描かれる。道路付随データに含まれる制限速度、道路種別、信号機の有無等の指標に基づく通過コストを参照してルートが検索され、また検索したルートを通って目的地に到着するのに要する要到着時間も当該指標に基づき演算される。
【0023】
ルート検索実行部21が検索するルートに速度抑制道路、即ち速抑道路が含まれないようするためには、地図データ11に保存される道路図データから速抑道路に該当するリンクやノードを削除するか、若しくは当該リンクやノードの通過コストを大きくして、検索対象から外れるようにする。
いずれの場合においても、ナビゲーション装置が本来備える地図データに修正を加えるので、かかる修正により速抑道路が検索ルートに含まれないようした地図データ(速抑道路回避地図データ)は、ディフォルトの地図データとは別として、速抑道路回避地図データ保存部14に保存することとした。換言すれば、この速抑道路回避地図データ保存部14は、速抑道路回避地図データを一時的に保存するバッファメモリの役目をする。
【0024】
速抑道路データ保存部12には、速抑道路を特定するためのデータが保存される。この速抑道路データは、道路図上における速抑道路を特定するためのリンク及びノード、並びに交通信号制御により車両走行速度が制御される時間帯のデータ(以下、「オンタイム」ということがある)が含まれる。
この実施の形態では、速度抑制道路の走行速度を制御するため交通信号の制御が時間ベースで行われる例を説明しているが。交通信号を制御する・しないの条件は任意に設定できる。その条件として、時間の外に、他の道路の交通量、天候、近郊でのイベントの有無等を挙げることができる。
【0025】
この速抑道路データ保存部12には、速抑道路データ追加変更装置50より、速抑道路データが定期的に追加変更される。速抑道路データが交通信号制御システムを管理する自治体の交通管制センターから供給される場合は、そのデータを利用する。かかるデータの供給がない場合は、プローブカーの走行履歴(プローブデータ)を処理して、速抑道路か否かを判断し、速抑道路と判断されたものデータを用いる。ブローブデータを用いて速抑道路を特定する方法については後述する。
【0026】
演算装置20は目的地までのルートを演算するルート検索機能を有し、ルート検索実行部21、ルート/時間保存部22、ルート比較部24及び地図データ修正部25を備えてなる。
ルート検索実行部21は、現在位置から指定された目的地までのルートを、地図データを参照し、汎用的な検索プログラムに従って検索する。ルート検索実行部21はルートの検索と併せて当該ルートを通って目的地に到着するまでに要する時間(要到着時間)も演算する。
【0027】
このようにして検索されたルートとその要到着時間はルート/時間保存部22に保存される。
ルート検索実行部21が、地図データ保存部11に保存されているディフォルトの地図データを参照してルートを検索するとき、速度抑制道路の影響は何ら考慮されていない。このように、速度抑制道路の存在が無いものとして検索されたルートを第1のルートとする。
【0028】
ルート比較部24は、上記第1のルートと速抑道路データ保存部12に保存されている速抑道路データとを比較する。第1のルートに速抑道路が含まれている場合、ルート比較部24は該当する速抑道路のデータを地図データ修正部25へ送る。地図データ修正部25は、地図データ保存部11の地図データにおいて該当する速抑道路に対応するリンク及びノードのコストを無限大として実質的にルート検索時に選択されないようする。このように修正した地図データを、速抑道路回避地図データとして速抑道路回避地図データ保存部14に書き込み、ここに一時的に保存する。
勿論、地図データ保存部11に保存されたディフォルトの地図データを修正し、修正元のデータを他の保存部に一時的に回避させ、処理終了後に修正元のデータをもとに戻すようにしてよい。
【0029】
ルート検索実行部21の検索結果はディスプレイやスピーカ等の出力装置30を介して利用者に提案される。目的地は入力装置40を介して入力される。入力装置としてタッチパネルディスプレイ、ポインティング装置、音声入力部などを挙げられる。
地図データ保存部11、ルート検索実行部21、ルート/時間保存部22、出力装置30及び入力装置40が、汎用的なナビゲーション装置の本体部Aを構成する。
【0030】
図2のフローチャートはナビゲーション装置1の動作を示す。
利用者が入力装置40を介して目的地を指定すると、ルート検索実行部21は地図データ保存部11に保存されているディフォルトの地図データを採用し、汎用的なアルゴリズムを用いて現在位置から目的地までの第1のルートを検索する(ステップ1、ステップ3)。検索した第1のルートについて、目的地までの要到着時間も演算する。
このようにして得られた目的地までの第1のルートと要到着時間はルート/時間保存部22に保存される(ステップ5)。
【0031】
ステップ7では、ルート比較部24が、ルート/時間保存部22の保存内容と速抑道路データ保存部12の保存内容とを比較して、第1のルートに速抑道路が含まれているか否かを判断する(ステップ7)。
ここに、速抑道路において速度制限のための信号制御の実行は特定の時間帯(一般的には深夜早朝;オンタイム)に行われることが多い、従って、ルート比較部24は、速抑道路の通過時間も加味してこれが第1のルートに含まれるか否かを判断する。ルート検索実行部21は検索したルート上の各ポイントの通過時間を予測できるので、速抑道路に到達する時間を予測し、その予測時間が抑速道路のオンタイム(速度制御される時間帯)になければ、抑速道路はルートに含まれないものとする。
【0032】
第1のルートに速抑道路が含まれていなければ(ステップ7;N)、ディフォルトの地図データ11に基づき検索した第1のルートは出力装置30を介して出力される。
他方、第1のルートに速抑道路が含まれていたとき(ステップ7;Y)地図データ修正部25が地図データ保存部11に保存されているディフォルトの地図データにおいて速抑道路に対応するリンク及びノードのコストを例えば無限大とする(ステップ9)。このように修正した地図データ(速抑道路回避地図データ)は速抑道路回避地図データ保存部14に保存される。
【0033】
ルート検索実行部21は、速抑道路回避地図データに基づき再度ルート検索を実行し(ステップ3)、検索結果を保存する(ステップ5)。ここに、ルート検索実行部21が再ルート検索したときに得られる第2のルートには速抑道路は含まれない(ステップ7;N)。よって、ステップ8に進んで、速抑道路を含まない第2のルートが出力部30より提案される。
上記の説明では、最初の、即ちディフォルトの地図データを用いてルート検索を実行して得られた第1のルートに含まれる速抑道路の通過コストを高くし、これを速抑道路回避地図データとしている。ディフォルトの地図データを修正する際に、速抑道路データ保存部12に含まれるすべての速抑道路のコストを大きくしてもよい。
【0034】
他の実施の形態のナビゲーション装置100の概略構成を
図3のブロック図に示す。なお、
図1と同じ作用を奏する要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
このナビゲーション装置100では、演算装置120に通過時間演算部125と時間比較部127が備えられる。
通過時間演算部125は、交通信号により速度制御がなされている、所謂オンタイムの速抑道路を通過するときに余計にかかる通過時間(被制御通過時間)を演算する。即ち、被制御通過時間はオンタイムの速抑道路を通過するのに要する時間からオフタイムの速抑道路を通過するのに要する時間(標準通過時間)を減算した値である。
【0035】
例えば、被制御通過時間は次のように演算される。
(1)速抑道路に存在する信号交差点毎に所定の停止時間を加えた時間を速抑道路の被制御通過時間とする。
(2)標準通過時間に、予め定められた係数を乗算して、被制御通過時間とする。
(3)プローブデータに基づき予め求められている速抑道路を通過する車両の平均通過時間から標準通過時間を減算して被制御通過時間とする。
(1)の例では信号機毎に加算する時間(秒)数、(2)の例では係数、(3)の例では標準通過時間が、通過時間演算部125の図略のメモリに予め保存されている。
【0036】
時間比較部127は第1の要到着時間と第2の要到着時間とを比較する。ここに、第1の要到着時間は、第1のルートであって速抑道路を敢えて通過したとき、オンタイムの速抑道路の被制御通過時間を加味した、目的地に到着するのに要する時間を指す。第2の要到着時間は速抑道路を回避した第2のルートを走行したとき、目的地に到着するのに要する時間を指す。
そして、いずれか短い要到着時間のルートを採用して利用者に案内する。
【0037】
図4には、このナビゲーション装置100の動作のフローチャートを示す。なお、
図4において
図2と同一動作のステップには同一の符号を付してその説明を部分的に省略する。
ステップ11では、第1のルートに速抑道路(オンタイムのもの)が含まれていたとき、通過時間演算部125はその速抑道路の被制御通過時間を演算する。この例では、被制御通過時間を、信号数×20秒を加えた時間とした。
ステップ12では、ステップ5で保存している第1のルートを通過したときの目的地までの要到着時間(標準)にステップ11で得られた速抑道路の被制御通過時間を加算して、第1の要到着時間とする。
【0038】
ステップ14において、地図データ修正部25は、速抑道路が検索ルートに含まれないように地図データを修正する。例えば、
図2のステップ9と同様に、速抑道路に対応する道路の通過コストを無限大とする。このように修正された地図データは、速抑道路回避地図データ保存部14に保存する。
ステップ15では、ルート検索実行部21がこのように修正された地図データ(速抑道路回避地図データ)を用いて目的地までのルート検索を実行する。このようにして第2のルートを特定するとともに、当該第2のルートを通ったときに目的地へ到着するまでに要する時間(第2の要到着時間)を演算する。
【0039】
ステップ17では、時間比較部127がステップ12で得られた第1の要到着時間とステップ15で得られた第2の要到着時間とを比較する。そして、短い要到着時間に対応するルートが選択されて、出力装置30を介して利用者に提案される。
【0040】
他の実施の形態のナビゲーション装置200の概略構成を
図5のブロック図に示す。なお、
図3と同じ作用を奏する要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
このナビゲーション装置200では、データ保存装置210に迂回道路反映地図データ保存部214と迂回道路データ保存部217が更に備えられる。
迂回道路データ保存部217には、速抑道路に対応した迂回道路を特定するデータが保存される。この迂回道路は、例えば
図10に示すように、速抑道路の一端から他端へ通じ、速抑道路を構成するリンクを含まないルートであって、通過コストが最も小さいものを指す。地図データ修正部25は、速抑道路データ保存部12に保存されている速抑道路データに基づいて速抑道路毎に迂回道路を作成して、迂回道路データ保存部217に保存する。
【0041】
検索ルートに速抑道路が含まれていたとき、地図データ修正部25は地図データ保存部11に保存されているディフォルトの地図データを次のように修正して、迂回道路反映地図データ保存部214に保存する。
即ち、ディフォルトの地図データにおいて速抑道路の通過コストを無限大にして、速抑道路の一端から他端へ通じる迂回道路の通過コストを最低レベルにする。つまり、ルート検索時に速抑道路の代わりに迂回道路が優先的に選択されるようにする。
【0042】
図6には、このナビゲーション装置200の動作のフローチャートを示す。なお、
図4と同じ動作のステップには同じ参照番号を付してその説明を省略する。
図6のフローチャートにおいて、ステップ24では、ディフォルトの地図データを地図データ保存部11から地図データ修正部25が読み出し、速抑道路の通過コストを無限大として、かつ、迂回道路保存部217を参照して、速抑道路に対応する迂回道路の通過コストを最低レベルとする。勿論、通過コストを下げてもその道路の通過時間が変化するものではない。
【0043】
ステップ25において、ルート検索実行部21は、迂回道路反映地図データ保存部214に保存されている迂回道路反映地図データを参照して、かつ汎用的なアルゴリズムを用いて、目的地までのルート(第3のルート)を探索する。ルート検索実行部21は第3のルートを通って目的地に到着するまでに要する時間(第3の要到着時間)も演算する。
ステップ27では、ステップ12で得られた第1の要到着時間とステップ25で得られた第3の要到着時間とを比較する。そして、短い要到着時間に対応するルートが選択されて、出力装置30を介して利用者に提案される。
【0044】
次に、速抑道路データ追加変更装置50について、
図7~9を参照にして説明する。
この速抑道路データ追加変更装置50の地図データ保存部51に保存される地図データは、ナビゲーション装置本体部10の地図データ保存部11が保存する地図データと同一であり、道路図データと道路付随データとがそれぞれの保存部511、512に保存されている。
プローブデータ保存部52には車両のプローブデータとして少なくも座標とその時刻がセットとして保存される。
【0045】
道路区間抽出部53は速度抑制のために交通信号が制御される可能性が高い道路を選択する。例えば、都心と郊外とを結ぶ比較的車線数の多い道路(例えば、片側2車線以上)において、4キロメートル内に信号が10個以上存在する道路を、速抑道路候補として抽出し、その両端のノードを特定する。標準通過時間演算部55は、抽出した速抑道路候補においては交通信号制御がなされていないものとして、速抑道路候補の一端から他端へ通過するのに要する時間を汎用的なナビゲーション用プログラムで演算し、標準通過時間TSとする。
【0046】
他方、道路区間抽出部53が抽出した速抑道路候補の一端から他端への実際の車両(プローブカー)が通過するのに要した時間を、実通過時間演算部56が、プローブデータを用いて演算する。このとき、時間指定部54は速抑道路の一般的なオンタイム(信号制御による速度抑制が実行)となる時間帯を指定する(例えば深夜ゼロ時~午前2時まで)。これにより、実通過時間演算部56は、指定された時間帯内において速抑道路候補を通過するプローブカーの平均通過時間を演算し、これを実通過時間TRとする。
【0047】
通過時間比較部57は、上記で演算された標準通過時間TSと実通過時間TRとを比較する。両者が下記関係を有するとき、選択した速抑道路候補は抑速道路と認定される。
1.5TS<TR<3.0TS
勿論、この標準通過時間TSと実通過時間TRとの関係は、任意に設定できる。
【0048】
上記において速抑道路と認定された区間は、道路区間抽出部53が所定の条件に基づいて抽出した一定区間であるし、更には、時間指定部54により指定された時間幅も限定されている。他方、速抑道路は上記の区間より長く、かつそのオンタイムもより長い時間幅であることが多い。
速抑道路データ作成部58では、速抑道路であると最初に認定された区間と時間帯をコアにして、その地理的な及び時間的な拡張を特定する。換言すればこれらの限界を確定する。これにより、速抑道路の両端とそのオンタイムの開始時刻と終了時刻が特定される。
【0049】
図8、
図9のフローチャートにこの速抑道路データ追加変更装置50の動作を示す。
図8のステップ31において道路区間抽出部53が地図データを参照して、所定の条件を満足した速抑道路候補R1を抽出する。所定の条件として、例えば、「都心と郊外とを結ぶ片側2車線以上の道路であって、4キロメートル内に信号機の数が10個以上存在する」ことが挙げられる。
ステップ32では、抽出した速抑道路候補R1がオフタイムであるとしてこれを通過するのに要する時間を、汎用的なナビゲーション装置用のアルゴリズムを用いて、地図データ保存部51に保存のディフォルトの地図データを参照して演算する。得られた時間が標準通過時間TSとなる。
【0050】
ステップ34では、時間設定部54が所定の時間(時間条件TC1)を設定する。この所定の時間としては速抑道路の一般的なオンタイムである午前0時から午前2時までとする。
ステップ35では、実通過時間演算部56が、プローブデータ保存部52に保存されているプローブデータを参照して、時間条件TC1の間に速抑道路候補R1を通過するプローブカーの平均通過時間を演算し、これを実通過時間TRとする。
【0051】
ステップ37では、通過時間比較部57がステップ32で得られた標準通過時間TSとステップ35で得られた実通過時間TRとを比較する。
実通過時間TRが標準通過時間TSに比べて長いが、その長さが所定の時間幅に収まっているとき、その原因は速度抑制の交通信号制御によるものとみなし、選択した区間、即ち速抑道路候補を速抑道路と認定する。
この例では、標準通過時間TSと実通過時間TRとが下記関係を満足するとき(ステップ37;Y)、ステップ31で抽出した道路(速抑道路候補)を速抑道路と認定する。
1.5TS<TR<3TS
【0052】
当該速抑道路を特定するデータを速度抑制道路データとする。この速度抑制道路データは道路区間を規定するリンク及びノードのデータと、交通信号制御が実行されているか否か(オンタイム/オフタイム)を規定する時間条件に関するデータとを含む。
標準通過時間TSと実通過時間TRとが上記関係を満足しないとき(ステップ37;N)、ステップ31で抽出した道路(速抑道路候補)は速抑道路と認定されない。
速度抑制道路データ追加変更装置50は、新たな道路区間を抽出して同じ処理を繰り返すこととなる。
【0053】
ステップ7の条件を満足して、道路区間R1が速抑道路であると認定されたとする。
この道路区間R1は、既述のとおり、実際の速度抑制道路の一部である可能性が高い、また、そのオンタイムもより広い時間帯である可能性が高い。
ステップ38では、速抑道路と認定された道路区間R1及びその時間条件TC1をコアにして、実際の速抑道路の全長とオンタイムの幅を特定して、速度抑制道路データとする。
【0054】
そのための詳細な処理を
図9に示す。
ステップS381では、ステップ34で指定された時間条件TC1に連続する時間帯(この例では午前2時からの1時間)を時間条件TC1+1(RC2)として、ステップ32~ステップ35を実行する(ステップ382)。ステップ384の条件を満足していたら、新たな時間条件TC2もオンタイム条件となる。このようにして、時間幅を順次広げていき、ステップ384の条件を満足しない時間帯となったとき、その時間帯はオフタイムであるとして、ステップ386に移る。
【0055】
なお、時間条件の拡大は、
図10に示すように、ステップ384の条件を満足しなくなったとき、最初の時間条件TC1より前の時間帯についても検証し、仮に、その時間帯がオンタイムであったときは、順次時間帯を遡らせて、当該時間帯がオンタイムであるか否かを検証する。
この例では時間幅TC1~TC4及びTC6がステップ384の条件を満足しており、午後11時から午後5時までが速抑道路をオンタイム(交通信号制御により走行速度が抑制されている時間帯)とする時間条件TCAとなる。
上記のように、コアタイムTC1の後に指定される時間帯TCn(n>1)はコアタイムTC1より短くすることが好ましい。
また、ステップ384の条件を満足しないとき、その時の時間帯を縮小して(例えば、TC5=5:00~6:00をTC5=5:00~5:30とする)、再評価することもできる。
【0056】
オンタイムの時間帯(時間条件TCA)が決まった後、ステップ386では、抽出した道路区間R1に連続する他の道路区間(例えば交通信号5個までの道路)をR1+1として、ステップ32からステップ35を実行する(ステップ388)。このとき、時間条件はTCAとする。
ステップ389の条件を満足していたら、新たな道路区間R1+1(=R2)も速抑道路であると認定される、
図10に示すように道路区間を順次拡張していき、ステップ389の条件を満足しない区間が生じたとき、その区間は速抑道路ではないとする。
【0057】
このとき、道路区間の拡大は、
図10に示すように、ステップ389の条件を満足しなくなったとき、最初の区間R1からみてR2より反対側の区間についても検証し、仮に、その区間がステップ389の要件を満足していたときは、その方向へ順次区間を拡大して、当該区間がステップ389の要件を満足する否かを検証する。
上記のように、コアとなる道路区間RC1に比べてその後に指定される道路区間RCk(k>1)を短くすることが好ましい。
また、ステップ389の要件を満足していない区間については、その距離を短くして再評価することもできる。
【0058】
これにより、道路区間R1と時間条件TC1をコアとして、実際の速度抑制道路RAとそのオンタイムの幅TCAが特定される。
かかるデータは、速抑道路データ追加変更装置50より、通信回線等を介して、速抑道路データ保存部12へ書き込まれる。
速度抑制道路を構成する単位R1~Rkを定めておくことにより次の利点が生じる。即ち、
図10において検索された第1のルートが、速度抑制道路の全領域を通過しない場合においも、各単位を独立した速度抑制道路とみなせば、既述の処理をそのまま利用できる。ただし、この場合、第1のルートに含まれなかった速度抑制道路については、迂回のための第2及び第3のルートに含めるべきではない。よって、速抑道路回避地図データを作成する際に、第1のルートに含まれるものに限定せずに、全ての速度抑制道路の通過コストを大きくすることが好ましい。
【0059】
ナビゲーション装置及び速抑道路データ追加変更装置の、コンピュータとしてのハード構成を
図11に示す。
演算部はCPU、ROM及びRAMを備え、ナビゲーション装置においては、演算装置20、120として機能する。
速抑道路データ追加変更装置50にあっては、道路区間抽出部53、時間指定部54、標準通過時間演算部55、実通過時間演算部56、通過時間比較部57及び速抑道路データ作成部58として機能する。
CPUはシステム全体の制御をつかさどる。ROMは演算部を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリを含む。RAMは入力装置を介して利用者により予め設定された各種設定値を読み出し可能に格納したり、CPUに対してワーキングエリアを提供したりする。演算部を制御する制御プログラムはROMに限らずRAMや第1記憶装置及び第2記憶装置に格納されていてもよい。
【0060】
第1記憶装置は、ナビゲーション装置においては、データ保存装置10、110及び210として機能する。なお、速抑道路データ追加変更装置においては地図データ保存部51として機能する。
第2記憶装置はナビゲーション装置においてはルート/時間保存部22として機能する。 なお、速抑道路データ追加変更装置においてはプローブデータ保存部52として機能する。
これら第1及び第2の記憶装置はハードメモリやフラッシュメモリなど、ナビゲーション装置に備えられているメモリ装置の一部の領域を利用することが好ましい。また、これら第1及び第2の記憶装置の何れか又はすべてを外部サーバに担わせることもできる。
なお、データを一時的の保存する、いわゆるバッファメモリには、演算部のRAMの一部領域を利用できる。
図11に示す通り、コンピュータを構成する各装置はシステムバスで連結されている。このコンピュータ装置は図示しない通信インターフェースを介して外部の通信回線へ連結される。
【0061】
本発明は、上記実施形態、実施例、変形例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0062】
以下、次の事項を開示する。
(1)
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部と、
所定の条件において、交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のデータを保存する速度抑制道路データ保存部と、
目的地までのルートを検索して利用者にルートを提案するルート検索部と、を備えるナビゲーション装置によるナビゲーション方法であって、
前記ルート検索部に、検索したルートに前記速度抑制道路が含まれたとき、該速度抑制道路を外して、新たなルートを再検索させ、これを利用者に提案させる、ナビゲーション方法。
【0063】
(2)
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部と
所定の条件において、交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のデータを保存する速度抑制道路データ保存部と、
目的地までのルートを検索して利用者に提案するルート検索部と、を備えるナビゲーション装置のナビゲーション方法であって、
前記ルート検索部は、
前記速度抑制道路が何ら速度抑制制御がなされていない状態として、ルート検索実行部にルート検索を実行させて第1のルートを特定させる、第1のルート特定ステップと、
通過時間演算部に、速度抑制制御がなされている前記速度抑制道路を通過するのに要する時間と速度抑制制御がなされていない前記速度抑制道路を通過するのに要する時間との差を演算させて被制御通過時間とする通過時間演算ステップと、
第1の要到着時間演算部に、前記第1のルートに前記速度抑制道路が含まれたとき、前記被制御通過時間を加味して前記第1のルートを通って目的地に到着するのに要する第1の要到着時間を演算させる第1の要到着時間演算ステップと、
第2の要到着時間演算部に、前記第1のルートに前記速度抑制道路が含まれたとき、前記ルート検索実行部に、該速度抑制道路を回避した第2のルートを検索させ、該第2のルートを通って前記目的地に到達するまでに要する第2の要到着時間を演算させる第2の要到着時間演算ステップと、
ルート比較部に、前記第1の要到着時間と前記第2の要到着時間とを比較して、短い要到着時間のルートを提案するルート比較ステップと、
を実行させる、ナビゲーション方法。
【0064】
(3)
ナビゲーション装置に用いられる地図データを保存する地図データ保存部と
所定の条件において、交通信号が制御されることで走行速度が抑制される道路のテータを保存する速度抑制道路データ保存部と、
該速度抑制道路に対応する迂回道路を保存する迂回道路保存部と、
目的地までのルートを検索して利用者に提案するルート検索部と、を備えるナビゲーション装置によるナビゲーション方法であって、
前記ルート検索部に
前記速度抑制道路が何ら速度の抑制がなされていない状態として、ルート検索実行部に第1のルート検索を実行させて第1のルートを特定させる、第1のルート特定ステップと、
通過時間演算部に、速度抑制制御がなされている前記速度抑制道路を通過するのに要する時間と速度抑制制御がなされていない前記速度抑制道路を通過するのに要する時間との差を演算させて被制御通過時間とする通過時間演算ステップと、
第1の要到着時間演算部に、前記第1のルートに前記速度抑制道路が含まれたとき、前記被制御通過時間を加味して前記第1のルートを通って目的地に到着するのに要する第1の要到着時間を演算する第1の要到着時間演算ステップと、
第3の要到着時間演算部に、前記第1ルートに前記速度抑制道路が含まれたとき、前記ルート検索実行部に前記迂回道路を通る第3のルートを検索させ、該第3のルートを通って前記目的地に到達するのに要する第3の要到着時間を演算させる第3の要到着時間演算ステップと、
ルート比較部に、前記第1の要到着時間と前記第3の要到着時間とを比較して、短い要到着時間のルートを提案するルート提案ステップと、
を実行させる、ナビゲーション方法。
【符号の説明】
【0065】
1、100、200 ナビゲーション装置
10、110、210 データ保存装置
11 地図データ保存部
20、120 演算装置
30 出力装置
40 入力装置
50 速抑道路データ追加変更装置
52 プローブデータ保存部