(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】Uリブ用速硬型軽量充填モルタル組成物及びそのモルタル
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20220817BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20220817BHJP
C04B 14/02 20060101ALI20220817BHJP
C04B 24/30 20060101ALI20220817BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20220817BHJP
C04B 24/06 20060101ALI20220817BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20220817BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20220817BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B22/14 B
C04B14/02 B
C04B24/30 A
C04B24/38 D
C04B24/06 A
C04B38/00 301B
E01D19/12
E01D22/00 B
(21)【出願番号】P 2018219574
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 勉
(72)【発明者】
【氏名】高田 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 康素
(72)【発明者】
【氏名】藤林 美早
(72)【発明者】
【氏名】中原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 亮太
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113327(JP,A)
【文献】特開2010-155739(JP,A)
【文献】特開2017-165628(JP,A)
【文献】特開2006-62888(JP,A)
【文献】特開平4-77339(JP,A)
【文献】特開2014-221702(JP,A)
【文献】特開2007-16504(JP,A)
【文献】米国特許第4157263(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
C04B 38/00
E01D 19/12
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材と、単位容積質量が0.3kg/L以下の軽量骨材とを含み、
前記結合材は、該結合材全質量を基準として、前記カルシウムアルミネート類の質量割合が5~14質量%であり、前記石膏類の質量割合が5~12質量%であり、
前記軽量骨材の含有量は、前記結合材100質量部に対し、4~9.5質量部である、Uリブ用速硬型軽量充填モルタル組成物。
【請求項2】
減水剤及び/又は増粘剤を更に含む、請求項1に記載のモルタル組成物。
【請求項3】
アルカリ金属炭酸塩及び/又は凝結遅延剤を更に含む、請求項1又は2に記載のモルタル組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のモルタル組成物と水とを含み、
水の含有量が、前記結合材100質量部に対し、45~55質量部である、Uリブ用速硬型軽量充填モルタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Uリブ用速硬型軽量充填モルタル組成物及びそのモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
土木構造物や建築構造物の補強・補修、又は機械の設置等において、流動性の高いセメント系グラウト材が用いられている。既設鋼床版下面に設置されているUリブ等の中空部材の補強として、中空部材にモルタルを充填する方法があり、当該モルタルとしては、既設部材への負荷低減の観点から軽量のものが望まれている。このような課題を解決するものとして、充填性に優れた軽量充填モルタルが提案されている(例えば特許文献1)。一方で、既設構造物の補強又は補修工事では、工事できる時間が限られている場合がある。このような用途に対してモルタル充填後、速やかに強度発現する速硬型軽量グラウト組成物が提案されている(例えば特許文献2)。また、既設鋼床版下面の中空部材に充填するモルタルが提案されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-221702号公報
【文献】特開2016-113327号公報
【文献】特開2007-197239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、Uリブに充填するためのモルタルとしては、工事できる時間を考慮すると短時間で硬化することが望まれる一方で、同時に十分な施工作業を行うための流動性及び可使時間の確保も必要とされている。しかしながら、これらの特性の両立は困難であった。また、季節や環境によっては、気温が高くなる場合があり、このような場合には、流動性及び可使時間の確保が更に困難になるという課題もあった。
【0005】
したがって、本発明は、速硬性であり、且つ、流動性及び可使時間に優れるUリブ用速硬型軽量充填モルタル組成物及びそのモルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題について鋭意検討を重ねた結果、石膏類、カルシウムアルミネート類、及び軽量骨材の割合を調整することで、速硬性、流動性及び可使時間に優れるモルタル組成物及びそのモルタルが得られることを見出した。
【0007】
本発明は、すなわち以下の[1]~[4]に関する。
[1]セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材と、単位容積質量が0.3kg/L以下の軽量骨材とを含み、結合材は、結合材全質量を基準として、カルシウムアルミネート類の質量割合が5~14質量%であり、石膏類の質量割合が5~12質量%であり、軽量骨材の含有量は、結合材100質量部に対し、4~9.5質量部である、Uリブ用速硬型軽量充填モルタル組成物。
[2]減水剤及び/又は増粘剤を更に含む、[1]に記載のモルタル組成物。
[3]アルカリ金属炭酸塩及び/又は凝結遅延剤を更に含む、[1]又は[2]に記載のモルタル組成物。
[4][1]~[3]のいずれかに記載のモルタル組成物と水とを含み、水の含有量が、結合材100質量部に対し、45~55質量部である、Uリブ用速硬型軽量充填モルタル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、速硬性であり、且つ、流動性及び可使時間に優れるUリブ用速硬型軽量充填モルタル組成物及びそのモルタルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において「Uリブ」とは、U字の形状をした閉断面のリブを指す。
【0010】
本実施形態のUリブ用速硬型軽量充填モルタル組成物は、セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材と、単位容積質量が0.3kg/Lの軽量骨材とを含む。
【0011】
本実施形態に係る結合材は、セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類の三成分からなる。
【0012】
セメントは種々のものを使用することができ、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、速硬性セメント等が挙げられる。これらの中でも、十分な可使時間の確保と強度発現性の両立という観点から、普通ポルトランドセメントが好ましい。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0013】
カルシウムアルミネート類としては、CaOをC、Al2O3をA、Na2OをN、及びFe2O3をFとして表したとき、C3A、C2A、C12A7、CA、又はCA2等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、C4AF等と表示されるカルシウムアルミノフェライト、カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶又は置換したC3A3・CaF2やC11A7・CaF2等と表示されるカルシウムフルオロアルミネートを含むカルシウムハロアルミネート、C8NA3やC3N2A5等と表示されるカルシウムナトリウムアルミネート、カルシウムリチウムアルミネート、アルミナセメント、並びにC3A3・CaSO4等と表示されるカルシウムサルホアルミネートを総称するものである。このカルシウムアルミネート類は、結晶質のもの、非結晶質のもの、非晶質及び結晶質が混在したもののいずれも使用可能である。カルシウムアルミネート類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。カルシウムアルミネート類の粉末度は、初期強度発現性をより向上させるという観点から、ブレーン比表面積で3000cm2/g以上であることが好ましく、5000cm2/g以上であることがより好ましい。また、カルシウムアルミネート類の粉末度は、ブレーン比表面積で8000cm2/g以下であることが好ましい。
【0014】
カルシウムアルミネート類の質量割合は、結合材全質量を基準として5~14質量%である。カルシウムアルミネート類の含有割合が上記範囲外の場合、短時間での強度発現性が得られにくい場合や可使時間が確保できない場合がある。可使時間及び強度発現性を更に向上させるという観点から、カルシウムアルミネート類の質量割合は、結合材全質量を基準として、6~14質量%であることが好ましく、6.5~13質量%であることがより好ましい。
【0015】
石膏類としては、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏が挙げられる。石膏類としては、強度発現性を更に向上させるという観点から、無水石膏が好ましい。石膏類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0016】
石膏類の質量割合は、結合材全質量を基準として5~12質量%である。石膏類が上記範囲外の場合、強度発現性に劣る。強度発現性を更に向上させるという観点から、石膏類は、結合材全質量を基準として、5~11質量%であることが好ましく、5~9質量%であることがより好ましい。
【0017】
カルシウムアルミネート類と石膏類の合計質量割合は、可使時間及び強度発現性を向上させる観点から、結合材全質量を基準として12~25質量%が好ましく、12~22質量%がより好ましく、12~17質量%が更に好ましい。
【0018】
軽量骨材は、特に限定されるものではなく、例えば、黒曜石、シラス又は真珠岩等の火成岩を粉砕し、焼成発泡させた無機系発泡性骨材であるパーライト、火力発電所で発生するフライアッシュバルーン、発泡ガラス粒(ガラスバルーン)等が挙げられる。軽量骨材は、通常用いられる粒径5mm以下のもの(5mmふるい通過分)を使用することが好ましい。軽量骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0019】
軽量骨材は、単位容積質量(kg/L)が0.3kg/L以下のものである。軽量骨材の単位容積質量が0.3kg/L超であると、モルタルの単位容積質量が大きくなり、充填後において既設部材への負荷が増大する。既設部材への負荷を更に低減するという観点から、軽量骨材の単位容積質量は、0.28kg/L以下であることが好ましく、0.25kg/L以下であることがより好ましい。また、軽量骨材の単位容積質量は0.01kg/L以上であることが好ましい。
【0020】
軽量骨材の含有量は、結合材100質量部に対し、4~9.5質量部である。軽量骨材の単位容積質量が上記範囲外である場合、モルタルの単位容積質量が大きくなり、充填後において既設部材への負荷の増加や、作業性が困難となる虞がある。既設部材への負荷を更に低減するという観点から、軽量骨材の含有量は、結合材100質量部に対し、4.3~9質量部であることが好ましく、4.5~8質量部であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態のモルタル組成物は、減水剤を含んでもよい。減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤、アクリル系減水剤が挙げられる。これらの中では、メラミン系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0022】
減水剤の含有量は、結合材100質量部に対し、0.01~0.8質量部であることが好ましく、0.02~0.5質量部であることがより好ましく、0.03~0.2質量部であることが更に好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタルとした際に、材料分離が起き難く、より良好な流動性が得られやすく、硬化時の圧縮強度もより向上しやすい。
【0023】
本実施形態のモルタル組成物は、増粘剤を含有してもよい。増粘剤の種類は特に限定されず、例えば、セルロース系増粘剤、アクリル系増粘剤、グアーガム系増粘剤が挙げられる。増粘剤としてはセルロース系増粘剤が好ましい。セルロース系増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。増粘剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0024】
増粘剤の含有量は、結合材100質量部に対し、0.05~1質量部であることが好ましく、0.1~0.5質量部であることがより好ましく、0.1~0.3質量部であることが更に好ましい。増粘剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタルとした際に、材料分離やブリーディングの発生を抑制しやすく、良好な流動性を保持しやすい。
【0025】
本実施形態のモルタル組成物は、アルカリ金属炭酸塩を含有してもよい。アルカリ金属炭酸塩は、アルカリ金属(水素原子を除く周期表第一族元素)の炭酸塩であれば特に限定されるものではない。アルカリ金属炭酸塩としては、強度発現性を更に促進させるという観点から、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。アルカリ金属炭酸塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0026】
アルカリ金属炭酸塩の含有量は、結合材100質量部に対して0.1~1.5質量部であることが好ましく、0.2~1.0質量部であることがより好ましく、0.3~0.8質量部であることが更に好ましい。アルカリ金属炭酸塩の含有量が上記範囲内であれば、より一層強度発現性に優れる。
【0027】
本実施形態のモルタル組成物は、凝結遅延剤を含んでもよい。凝結遅延剤としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸又はその塩;ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、リン酸塩、アルカリ金属重炭酸塩等の無機塩;糖類が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、クエン酸塩、酒石酸、及び酒石酸塩が好ましい。凝結遅延剤は、粉体であってもよく、液状体(例えば、水溶液、エマルジョン、懸濁液の形態)であってもよい。凝結遅延剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0028】
凝結遅延剤の含有量は、結合材100質量部に対して0.1~1質量部であることが好ましく、0.15~0.8質量部であることがより好ましく、0.2~0.5質量部であることが更に好ましい。凝結遅延剤の含有量が上記範囲内であれば、可使時間を更に確保しやすく、初期強度発現性が低下しにくい。
【0029】
本実施形態のモルタル組成物は、発泡剤を含んでもよい。発泡剤は特に限定されず、例えば水と混練後に気体を発生する物質であればよい。発泡剤としては、アルミニウムや亜鉛等の両性金属の粉末、過炭酸ナトリウム等の過酸化物質等が挙げられる。発泡剤としては、効果的に発泡し、膨張作用をより一層発揮することができるという観点から、過炭酸ナトリウムが好ましい。発泡剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0030】
発泡剤の含有量は、結合材100質量部に対して0.01~0.2質量部であることが好ましく、0.03~0.1質量部であることがより好ましく、0.05~0.1質量部であることが更に好ましい。発泡剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタル充填後の沈下減少を防止しやすく、過度な膨張による強度低下を起こしにくい。
【0031】
本実施形態のモルタル組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和剤(材)を配合してもよい。混和剤(材)としては、例えば、膨張材、セメント用ポリマー、消泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤、繊維、高炉スラグ微粉末、石粉、土鉱物粉末、スラグ粉末、フライアッシュ、シリカフューム、無機質フィラー、火山灰等が挙げられる。
【0032】
本実施形態のモルタル組成物を製造する方法は、特に限定されず、例えば、V型混合機や可傾式コンクリートミキサー等の重力式ミキサー、ヘンシェル式ミキサー、噴射型ミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー等のミキサーにより混合することで製造することができる。モルタル組成物の製造方法としては、軽量骨材の形状を保持し、品質を維持するという観点から、リボンミキサーやパドルミキサーを用いる方法が好ましい。また、袋やポリエチレン製容器等の容器に各材料を計り取り投入する方法により、本実施形態のモルタル組成物を製造することもできる。
【0033】
本実施形態のモルタル組成物は、水と混合してモルタルとして調製することができ、その水の含有量は用途に応じて適宜調整すればよい。水の含有量は、結合材100質量部に対し、45~55質量部であることが好ましく、46~54質量部であることがより好ましく、47~53質量部であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、より流動性を確保しやすく、材料分離の発生、硬化体の収縮の増加及び初期強度発現性の低下を抑制しやすい。
【0034】
本実施形態のモルタルは、フロー値が160~240mmであることが好ましく、180~235mmであることがより好ましく、190~230mmであることが更に好ましい。モルタルのフロー値が上記範囲内であれば、Uリブ充填の際に充填しやすく、先流れによる空気溜りが発生しにくい。
【0035】
本実施形態のモルタルは、単位容積質量が1.35kg/L以下であることが好ましく、1.30kg/L以下であることがより好ましく、1.28kg/L以下であることが更に好ましい。また、モルタルの単位容積質量は1.00kg/L以上であることが好ましい。モルタルの単位容積質量が上記範囲内であれば、既設部材への負荷を更に低減することができる。
【0036】
本実施形態のモルタルの調製は、通常のモルタル組成物と同様の混練器具を使用することができ、特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、モルタルミキサー、グラウトミキサー、ハンドミキサー、傾胴ミキサー、二軸ミキサー等が挙げられる。
【0037】
本実施形態のモルタル組成物及びそのモルタルは、軽量であり、速硬性を有し、且つ、流動性及び可使時間を十分に確保できるものである。したがって、このようなモルタル組成物及びそのモルタルは、中空部材であるUリブの充填に好適に用いることができる。また、本実施形態のモルタル組成物及びそのモルタルは、15℃以上といった比較的暖かい環境下から、30℃付近の高温条件下であっても用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
実施例で用いる材料は以下のとおりである。
セメント:普通ポルトランドセメント
カルシウムアルミネート類:アルミナセメント
石膏類:無水石膏
軽量骨材A:真珠岩系軽量骨材(単位容積質量0.1kg/L)
軽量骨材B:真珠岩系軽量骨材(単位容積質量0.25kg/L)
アルカリ金属炭酸塩:炭酸ナトリウム、炭酸リチウム
増粘剤:メチルセルロース系増粘剤
減水剤:メラミン系減水剤
凝結遅延剤:クエン酸
発泡剤:過炭酸ナトリウム
【0040】
[モルタル組成物の配合設計]
セメント、カルシウムアルミネート類及び石膏類からなる結合材100質量部に対して、各種材料を表1に示す量として配合設計した。
【0041】
[モルタルの作製]
20℃又は30℃環境下において、10Lの円筒容器に配合設計したモルタル組成物3000gと水を添加し、ハンドミキサーで90秒混練してモルタルを作製した。水は、結合材100質量部に対して51質量部を添加した。
【0042】
【0043】
[評価方法]
下記の評価方法にて、各種モルタルの評価を行った。20℃で評価した結果を表2に示し、30℃で評価した結果を表3に示す。
・フロー値
JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」12.フロー試験に準じて、各温度環境下でモルタルのフロー値(0打)を測定した。
・単位容積質量の測定
JIS A 1171:2016「ポリマーセメントモルタルの試験方法」6.4単位容積質量試験に準拠し、単位容積質量を測定した。
・可使時間
20℃又は30℃環境下において、練上がり後のモルタルを5L容器に移し替え、練上がり直後から15分毎に上記フロー試験値を測定した。ただし、測定前はさじでモルタルを5回撹拌したものをサンプルとした。可使時間の指標として、フロー値が160mmを下回るまでの時間を測定した。例えば、75分後のフロー値が160mm以上であり、90分後のフロー値が160mm以下若しくは測定不可の場合、作業時間を75分とした。
・圧縮強度
土木学会基準JSCE-G 505-2010「円柱供試体を用いたモルタル又はセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)」に準じて、各材齢におけるモルタル硬化体の圧縮強度を測定した。供試体の寸法は、直径50mm、高さ100mmとした。養生は、材齢が24時間以内のものは材齢直前まで各温度にて型枠のまま湿潤養生とした。材齢28日は、24時間後に型枠を脱枠し、以降材齢28日まで水中養生とした。
【0044】
【0045】
【0046】
表2及び表3から、実施例1~6のモルタルは、流動性(フロー値)、並びに4時間及び28日における圧縮強度に優れたものであることが示された。また、実施例1~6のモルタルによれば、20℃では90分以上の作業時間を確保することができ、30℃の高温条件下であっても30分以上の作業時間を確保することができた。