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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】オゾン発生装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/11 20060101AFI20220817BHJP
   H01T 19/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C01B13/11 F
H01T19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018234750
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020093962
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】松井 良彦
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 遊
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-291803(JP,A)
【文献】特開2007-080772(JP,A)
【文献】特開2018-035023(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002902(WO,A1)
【文献】特開2008-308372(JP,A)
【文献】特開2010-033914(JP,A)
【文献】米国特許第05554344(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/11
H01T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、前記第1電極を内部に備えるとともに第1面を備えた第1誘電体と、を備える第1構造体と、
第2電極と、前記第2電極を内部に備えるとともに第2面を備えた第2誘電体と、を備える第2構造体と、
を備えるオゾン発生装置であって、
前記第1誘電体の前記第1面と前記第2誘電体の前記第2面とが対向するように前記第1構造体と前記第2構造体とが配置されており、
前記第1誘電体の前記第1面と前記第2誘電体の前記第2面は、平坦であり、
前記第1電極は、前記第2構造体と対向する対向面を備えており、
前記第1構造体は、前記対向面よりも前記第2構造体側に、放電が誘起される複数の放電起点構造を備え、
前記複数の放電起点構造は、前記第1誘電体よりも高い比誘電率を有する誘電体であり、
前記複数の放電起点構造は、前記第1誘電体に設けられており、
前記複数の放電起点構造の1平方センチメートル当たりの個数である密度Dと、前記第1面と前記第2面との間のセンチメートル単位の距離である構造体間距離Hと、が、
2≦D*H≦9
を満足する、オゾン発生装置。
【請求項2】
第1電極と、前記第1電極を内部に備えるとともに第1面を備えた第1誘電体と、を備える第1構造体と、
第2電極と、前記第2電極を内部に備えるとともに第2面を備えた第2誘電体と、を備える第2構造体と、
を備えるオゾン発生装置であって、
前記第1誘電体の前記第1面と前記第2誘電体の前記第2面とが対向するように前記第1構造体と前記第2構造体とが配置されており、
前記第1誘電体の前記第1面と前記第2誘電体の前記第2面は、平坦であり、
前記第1電極は、前記第2構造体と対向する対向面を備えており、
前記第1構造体は、前記対向面よりも前記第2構造体側に、放電が誘起される複数の放電起点構造を備え、
前記複数の放電起点構造は、導電体であり、
前記複数の放電起点構造は、前記対向面上に設けられており、
前記複数の放電起点構造の1平方センチメートル当たりの個数である密度Dと、前記第1面と前記第2面との間のセンチメートル単位の距離である構造体間距離Hと、が、
2≦D*H≦9
を満足する、オゾン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、オゾン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1電極と、第1電極を内部に備えるとともに第1面を備えた第1誘電体と、を備える第1構造体と、第2電極と、第2電極を内部に備えるとともに第2面を備えた第2誘電体と、を備える第2構造体と、を備えるオゾン発生装置が知られている。このオゾン発生装置では、第1誘電体の第1面と第2誘電体の第2面とが対向するように第1構造体及び第2構造体が配置されている。第1電極及び第2電極の間に電圧を印加することで微小な柱状の放電が起こり、オゾンを発生させることができる。例えば、特許文献1に、オゾン発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-160097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のオゾン発生装置において、第1電極及び第2電極の間に電圧が印加されると、オゾンが発生するとともに発熱する。発熱量が多くなり、構造体間の温度が高くなりすぎると、熱分解等により、オゾン発生装置によるオゾンの生成効率が低下する。このため、オゾン発生装置が動作している時の発熱量が適切な範囲に収まるようにする必要がある。
【0005】
発熱量は、オゾン発生装置への投入電力に依存する。そして、投入電力は、放電が開始する電圧である放電開始電圧と、放電が発生したときに流れる電流である放電電流と、に依存する。このため、放電開始電圧及び放電電流を調整することができれば、投入電力を適切な値に調整することができる。放電開始電圧は、第1誘電体の第1面と第2誘電体の第2面との間の距離である構造体間距離に依存する。従って、構造体間距離を調整することによって、放電開始電圧を調整することができる。一方、放電電流は、単位面積当たりにおいて放電が発生する領域の数に対応する放電密度に依存する。上述のオゾン発生装置では、放電密度を調整することができない。このため、投入電力を適切に調整することができない。
【0006】
本明細書では、オゾンを効率的に供給可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示するオゾン発生装置の一実施形態は、第1電極と、前記第1電極を内部に備えるとともに第1面を備えた第1誘電体と、を備える第1構造体と、第2電極と、前記第2電極を内部に備えるとともに第2面を備えた第2誘電体と、を備える第2構造体と、を備える。前記第1誘電体の前記第1面と前記第2誘電体の前記第2面とが対向するように前記第1構造体と前記第2構造体とが配置されており、前記第1構造体は、前記第1電極の前記第2構造体と対向する第3の面よりも前記第2構造体側に、放電が誘起される複数の放電起点構造を備え、前記複数の放電起点構造の1平方センチメートル当たりの個数である密度Dと、前記第1面と前記第2面との間のセンチメートル単位の距離である構造体間距離Hと、が、2≦D*H≦9を満足する。
【0008】
なお、密度Dは、放電電流に対応する指標であり、構造体間距離Hは、放電開始電圧に対応する指標である。従って、密度Dと構造体間距離Hとの積(D*H)は、オゾン発生装置への投入電力に対応する指標となる。
【0009】
上記の構成によれば、複数の放電起点構造が起点となって放電が起こり、放電起点構造が設けられていない領域では放電が発生しない。即ち、複数の放電起点構造の密度が、オゾン発生装置における放電密度に対応する。このため、複数の放電起点構造の密度を調整することで、放電電流を調整することができる。従って、放電開始電圧に対応する構造体間距離Hと、放電電流に対応する密度Dと、を調整することによってオゾン発生装置への投入電力を調整することができる。この結果、オゾン発生装置が動作している時の発熱量が大きくなりすぎることを抑制することができる。
【0010】
また、本発明者らは、密度Dと構造体間距離Hとの積が、2≦D*H≦9を満足する場合に、オゾンが効率よく供給される、即ち、熱分解などによる影響が小さいことを見出した。従って、第1構造体に複数の放電起点構造を設けるとともに、密度Dと構造体間距離Hとの積が2≦D*H≦9を満足するように、密度Dと構造体間距離Hを調整することで、オゾンをより効率よく供給することができる。
【0011】
複数の放電起点構造は、第1誘電体よりも高い比誘電率を有する誘電体であり、複数の放電起点構造は、第1誘電体に設けられていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0012】
複数の放電起点構造は、誘電体であり、複数の放電起点構造は、第1面上に配置されていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0013】
複数の放電起点構造は、導電体であり、複数の放電起点構造は、対向面上に設けられていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施例のオゾン発生装置1の模式断面図である。
図2A】第1実施例のオゾン発生装置1の一部の斜視図である。
図2B】第1実施例に係る第1構造体10の上面図である。
図3】密度D及び構造体間距離Hと、オゾン生成能力と、の関係を示すグラフである。
図4】比較例のオゾン発生装置101の模式断面図である。
図5】第2実施例のオゾン発生装置201の模式断面図である。
図6】第2実施例のオゾン発生装置201の一部の斜視図である。
図7】第3実施例のオゾン発生装置301の模式断面図である。
図8】第3実施例のオゾン発生装置301の一部の斜視図である。
図9】第4実施例のオゾン発生装置401の模式断面図である。
図10】第5実施例のオゾン発生装置501の模式断面図である。
図11図10のXI-XI線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(オゾン発生装置1の構成)
図1に、本実施例のオゾン発生装置1の模式断面図を示す。なお、図1では、見易くするために、複数の放電起点構造16、26のハッチングを省略している。図2Aに、図1のオゾン発生装置1の一部の斜視図を示す。なお、図2Aでは、説明を分かり易くするために、第1電極14の下面14b、及び、第2電極24の上面24bが、各誘電体12、22に覆われていない状態を示している。図1に示すように、オゾン発生装置1は、第1構造体10と、第2構造体20と、を備える。第1構造体10は、第2構造体20と対向するように配置されている。なお、図1では、ガス流路Pを点線の矢印で示している。
【0016】
図1に示すように、第1構造体10は、第1誘電体12と、第1電極14と、を備える。第1誘電体12は、上面に第1面12aを備えた平板状の部材である。第1誘電体12は、第1電極14を内部に備えている。第1電極14は、上面に第1対向面14aを備えた平板状の部材である。第1対向面14aは、第2構造体20と対向する面である。第1構造体10は、さらに、複数の放電起点構造16を備えている。複数の放電起点構造16は、第1誘電体12に設けられている。複数の放電起点構造16は、第1誘電体12の比誘電率よりも高い比誘電率を有する誘電体である。複数の放電起点構造16は、第1電極14の第1対向面14aよりも第2構造体20側(z軸正方向側)に設けられている。本実施例において、複数の放電起点構造16は、第1誘電体12の第1面12aに露出している。図2A図2Bに示すように、放電起点構造16は、第1構造体10を上方(z軸正方向)から見たときに、円形状を有する。また、図2Bに示すように、複数の放電起点構造16は、距離Lを空けて等間隔に配置されている。
【0017】
図1に示すように、第2構造体20は、第2誘電体22と、第2電極24と、を備えている。第2誘電体22は、下面に第2面22aを備えた平板状の部材である。第2構造体20は、第2誘電体22の第2面22aが第1誘電体12の第1面12aと対向するように配置されている。第1構造体10と第2構造体20は、第1面12aと第2面22aとの間の上下方向(z軸方向)の距離が、構造体間距離H[cm]となるように配置されている。複数の放電起点構造16の数及び構造体間距離H[cm]は、1平方センチメートル当たりの放電起点構造16の数である密度D[個/cm]と、構造体間距離H[cm]と、の関係によって決定される。複数の放電起点構造16の数及び構造体間距離H[cm]の決定方法については、後で詳しく説明する。第2誘電体22は、第2電極24を内部に備えている。第2電極24は、下面に第2対向面24aを備えた板状の部材である。第2対向面24aは、第1誘電体12の第1面12a及び第1電極14の第1対向面14aと対向する。第2構造体20は、さらに、複数の放電起点構造26を備えている。複数の放電起点構造26は、第2誘電体22に設けられている。複数の放電起点構造26は、第2電極24の第2対向面24aよりも第1構造体10側(z軸負方向側)に設けられている。複数の放電起点構造26は、第2誘電体22の比誘電率よりも高い比誘電率を有する誘電体である。複数の放電起点構造26は、第2誘電体22の第2面22aに露出している。放電起点構造26は、第2構造体20を下方(z軸負方向)から見たときに、円形状を有する。第2構造体20の複数の放電起点構造26の数は、第1構造体10の複数の放電起点構造16の数と一致する。また、第2構造体20の複数の放電起点構造26の左右方向(x軸方向)及び前後方向(y軸方向)の位置は、第1構造体10の複数の放電起点構造16の左右方向及び前後方向の位置と一致するように配置されている。なお、複数の放電起点構造16、26の数及び構造体間距離H[cm]は、1平方センチメートル当たりの放電起点構造16、26の数である密度D[個/cm]と、構造体間距離H[cm]と、の関係によって決定される。複数の放電起点構造16、26の数及び構造体間距離H[cm]の決定方法については、後で詳しく説明する。
【0018】
また、オゾン発生装置1は、電圧印加部(図示省略)を備えている。電圧印加部は、第1電極14と第2電極24との間に電圧を印加する。本実施例では、第1電極14が正極となり、第2電極24が負極となる。第1電極14には、第2電極24よりも高電位の電圧が印加される。第1電極14と第2電極24との間に印加される電圧は、交流電圧あるいはパルス電圧である。第1電極14と第2電極24との間に印加される電圧は、例えば5[kV]である。また、印加する交流電圧の周波数(パルス電圧の場合は繰り返し周波数)は、1[kHz]以上であることが望ましい。
本実施例では、交流電圧の周波数は40[kHz]である。なお、変形例では、第1電極14が負極となり、第2電極24が正極となってもよい。
【0019】
(オゾンの発生方法)
続いて、オゾン発生装置1によるオゾン発生方法について説明する。オゾン発生装置1には、オゾンの原料ガス(空気あるいは酸素ガス)を供給する原料ガス供給器(図示省略)が接続されている。原料ガス供給器から原料ガスがガス流路Pに供給されるとともに、5[kV]、40[kHz]の交流電圧がオゾン発生装置1に印加される。これにより、対向する第1電極14と第2電極24との間で、微小な柱状の放電が発生する。本実施例において、複数の放電起点構造16、26の比誘電率は、第1誘電体12及び第2誘電体22の比誘電率よりも高い。比誘電率が高い方が、放電が発生しやすい。即ち、放電起点構造16、26が配置されている領域は、放電起点構造16、26が配置されていない領域よりも、放電が発生しやすい領域である。従って、オゾン発生装置1において、第1電極14と第2電極24との間に電圧が印加されると、複数の放電起点構造16、26が起点となって放電が起こり、複数の放電起点構造16、26の間にストリーマ状放電柱が発生する。そして、ストリーマ状放電柱が発生した箇所でオゾンが発生する。発生したオゾンは原料ガスが継続的に供給されることで掃気され、外部に供給される。
【0020】
(本実施例の効果)
本実施例に係るオゾン発生装置1の効果について説明する前に、比較例に係るオゾン発生装置101について説明する。図4に示すように、比較例のオゾン発生装置101は、複数の放電起点構造16、26を有さない点を除いて、オゾン発生装置1と同様の構造を有する。上述のように、比較例のオゾン発生装置101において、第1電極14及び第2電極24の間に電圧が印加されると、オゾンが発生するとともに発熱する。発熱量が多くなり、第1構造体10と第2構造体20と間の温度が高くなりすぎると、熱分解等により、オゾン発生装置101によるオゾンの生成効率が低下する。このため、オゾン発生装置101が動作している時の発熱量が適切な範囲に収まるようにする必要がある。オゾン発生装置1が動作している時の発熱量は、オゾン発生装置101への投入電力に依存する。そして、投入電力は、放電が開始する電圧である放電開始電圧と、放電が発生したときに流れる電流である放電電流と、に依存する。このため、放電開始電圧及び放電電流を調整することができれば、投入電力を適切な値に調整することができる。放電開始電圧は、第1誘電体12の第1面12aと第2誘電体22の第2面22aとの間の構造体間距離Hに依存する。従って、構造体間距離Hを調整することによって、放電開始電圧を調整することができる。一方、放電電流は、単位面積当たりにおいて放電が発生する領域の数に対応する放電密度に依存する。比較例のオゾン発生装置101では、放電起点構造16、26を有さないために、放電がランダムに発生する。即ち、放電が発生する領域の数を制御することができず、放電密度を調整することができない。従って、比較例のオゾン発生装置101では投入電力を適切に調整することができず、オゾンの生成効率が低下し得る。
【0021】
そこで、図1に示すように、本実施例のオゾン発生装置1において、第1構造体10は、第1誘電体12の比誘電率よりも高い比誘電率を有する放電起点構造16を備えている。このため、第1電極14と第2電極24との間に電圧が印加されると、複数の放電起点構造16が起点となって放電が起こる。一方、放電起点構造16が設けられていない領域では放電が発生しない。複数の放電起点構造16が設けられている領域のみで放電が発生するため、放電起点構造16の数が、放電が発生する領域の数と一致する。このため、放電起点構造16の数(即ち密度D[個/cm])を調整することによって、放電密度を調整することができる。従って、放電開始電圧に対応する構造体間距離H[cm]と、放電電流に対応する密度D[個/cm]と、を調整することによってオゾン発生装置1への投入電力を調整することができる。この結果、オゾン発生装置1が動作している時の発熱量が大きくなりすぎることを抑制することができる。
【0022】
また、図3に示すように、本発明者らは、密度D[個/cm]と構造体間距離H[cm]の積が、2≦D*H≦9の領域R1にある場合に、オゾンが効率よく供給される、即ち、熱分解などによる影響が小さいことを見出した。図3の横軸は、密度D[個/cm]と構造体間距離H[cm]の積を表わし、縦軸は、オゾンの生成能力を表わしている。オゾンの生成能力は、D*Hが「2」であるときのオゾンの生成能力を基準(即ち「1」)とした値である。上述のように、密度D[個/cm]は、放電電流に対応する指標であり、構造体間距離H[cm]は、放電開始電圧に対応する指標である。従って、D*Hは、オゾン発生装置1への投入電力に対応する指標となる。
【0023】
図3に示すように、D*Hが4以下の領域R3では、投入電力が大きくなるにつれて、オゾン生成能力が向上し、D*Hが4よりも大きい領域R4では、投入電力が大きくなるにつれて、オゾン生成能力は低下する。これは、領域R3においては、投入電力が大きくなることによるオゾン生成能力の向上率が、投入電力が大きくなり、発熱量が大きくなることによるオゾン生成能力の低下率よりも大きく、領域R4においては、投入電力が大きくなることによるオゾン生成能力の向上率よりも、投入電力が大きくなり、発熱量が大きくなることによるオゾン生成能力の低下率が大きいためであると考えられる。なお、領域R4におけるオゾン生成能力の低下は、オゾン発生装置1の水冷性能、オゾン発生装置1の空冷性能、第1誘電体12及び第2誘電体22の熱伝導率、又は、オゾン発生装置1の熱容量等を高めても変化しない。即ち、図3に示されているD*Hとオゾンの生成能力の関係は、本実施例のオゾン発生装置1とは異なる様々な種類のオゾン発生装置にも当てはまる。従って、第1構造体10に複数の放電起点構造16を設け、密度D[個/cm2]と構造体間距離H[cm]との積が、領域R1内に収まるようにすることで、オゾンをより効率よく供給することができる。例えば、構造体間距離H[cm]が0.08[cm]である場合、1平方センチメートル当たりの放電起点構造16の数を25~112[個]にするとよい。なお、オゾンをより効率よく供給させるためには、密度D[個/cm2]と構造体間距離H[cm]との積が、領域R2(3≦D*H≦6)内に収まるようにするとよい。
【0024】
(第2実施例)
続いて、第2実施例のオゾン発生装置201について説明する。なお、以下では、実施例間で共通する構造については、同じ符号を付してその説明を省略する。本実施例では、複数の放電起点構造216、226が、第1実施例の放電起点構造16、26と異なる。
【0025】
図5に示すように、複数の放電起点構造216は、第1誘電体12の第1面12a上に設けられている。複数の放電起点構造216は、第1誘電体12と同じ材料からなる。即ち、複数の放電起点構造216の比誘電率は、第1誘電体12の比誘電率と同じである。複数の放電起点構造216は、第1誘電体12と一体に形成されてもよいし、別体に形成されてもよい。なお、変形例では、複数の放電起点構造216は、第1誘電体12の比誘電率よりも高い比誘電率を有する誘電体であってもよい。放電起点構造216は、第1面12aから上方に突出している。図6に示すように、放電起点構造216は、円柱形状を有する。複数の放電起点構造216は、等間隔に離れて配置されている。
【0026】
図5に示すように、複数の放電起点構造226は、第2誘電体22の第2面22a上に設けられている。複数の放電起点構造226は、第2誘電体22と同じ材料からなる。従って、複数の放電起点構造226の比誘電率は、第2誘電体22の比誘電率と同じである。放電起点構造226は、第2面22aから下方に突出している。複数の放電起点構造226の数は、複数の放電起点構造216の数と一致する。また、第2構造体20の複数の放電起点構造226の左右方向(x軸方向)及び前後方向(y軸方向)の位置は、第1構造体10の複数の放電起点構造216の左右方向及び前後方向の位置と一致するように配置されている。本実施例において、構造体間距離H[cm]は、第1構造体10の複数の放電起点構造216と第2構造体20の複数の放電起点構造226との間の距離である。
【0027】
オゾン発生装置201において、第1電極14と第2電極24との間に電圧が印加されると、複数の放電起点構造216、226が起点となって放電が起こり、複数の放電起点構造216、226の間にストリーマ状放電柱が発生する。一方、放電起点構造216、226が設けられていない領域では放電が発生しない。このため、本実施例においても、複数の放電起点構造216の数を調整することによって、放電密度を調整することができる。従って、第1実施例と同様の効果を奏することができる。
【0028】
(第3実施例)
続いて、第3実施例のオゾン発生装置301について説明する。本実施例では、複数の放電起点構造316、326が、第1実施例の放電起点構造16、26と異なる。
【0029】
図7に示すように、複数の放電起点構造316は、第1電極14の第1対向面14a上に設けられている。複数の放電起点構造316は、導電体であり、第1電極14と同じ材料からなる。複数の放電起点構造316は、第1電極14と一体に形成されてもよいし、別体に形成されてもよい。放電起点構造316は、第1対向面14aから上方に突出している。図8に示すように、放電起点構造316は、円柱形状を有する。複数の放電起点構造316は、等間隔に離れて配置されている。
【0030】
図7に示すように、複数の放電起点構造326は、第2電極24の第2対向面24a上に設けられている。複数の放電起点構造326は、導電体であり、第2電極24と同じ材料からなる。放電起点構造326は、第2対向面24aから下方に突出している。複数の放電起点構造326の数は、複数の放電起点構造316の数と一致する。また、第2構造体20の複数の放電起点構造326の左右方向(x軸方向)及び前後方向(y軸方向)の位置は、第1構造体10の複数の放電起点構造316の左右方向及び前後方向の位置と一致するように配置されている。
【0031】
上記の構成によると、オゾン発生装置301において、第1電極14と第2電極24との間に電圧が印加されると、オゾン発生装置301を平面視した時に、複数の放電起点構造316、326が形成されている領域の第1誘電体12及び第2誘電体22が起点となって放電が起こる。一方、オゾン発生装置301を平面視した時に、複数の放電起点構造316、326が設けられていない領域の第1誘電体12及び第2誘電体22との間には、放電が起こらない。このため、本実施例においても、複数の放電起点構造316の数を調整することによって、放電密度を調整することができる。従って、第1実施例と同様の効果を奏することができる。
【0032】
(第4実施例)
続いて、第4実施例のオゾン発生装置401について説明する。第4実施例のオゾン発生装置401は、屈曲したガス流路P2を有する。
【0033】
図9に示すように、第1構造体410は、上面に第1面412aを備えた第1誘電体412と、第1電極14と、を備えている。第1誘電体412は、第1貫通孔412bを備えている。第1貫通孔412bは、原料ガスの排出口である。第1構造体410は、さらに、複数の放電起点構造16を備えている。また、第2構造体420は、下面に第2面422aを備えた第2誘電体422と、第2電極24と、を備えている。第2誘電体422は、第2貫通孔422bを備えている。第2貫通孔422bの左右方向及び前後方向の位置は、第1貫通孔412bの前後方向及び左右方向の位置とは異なる。第2貫通孔422bは、原料ガスの流入口である。第2構造体420は、さらに、複数の放電起点構造26を備えている。
【0034】
本実施例において、第2貫通孔422bからオゾン発生装置401に流入した原料ガスは、ガス流路P2に示すように、第1誘電体412の第1面412aにぶつかり、屈曲し、その後、第1貫通孔412bから排出される。
【0035】
オゾン発生装置401において、第1電極14と第2電極24との間に電圧が印加されると、複数の放電起点構造16、26が起点となって放電が起こり、複数の放電起点構造16、26の間にストリーマ状放電柱が発生する。一方、放電起点構造16、26が設けられていない領域では放電が発生しない。このため、本実施例においても、複数の放電起点構造16の数を調整することによって、放電密度を調整することができる。従って、第1実施例と同様の効果を奏することができる。
【0036】
(第5実施例)
続いて、第5実施例のオゾン発生装置501について説明する。第5実施例のオゾン発生装置501は、円筒型のオゾン発生装置501である。
【0037】
図10図11に示すように、オゾン発生装置501は、第1構造体510と、第1構造体510の外側に配置される第2構造体520と、を備えている。第1構造体510は、第1誘電体512と、第1電極514と、を備える。第1誘電体512は、外周面である第1面512aを備えた円筒状の部材である。第1誘電体512は、第1電極514を内部に備えている。第1電極514は、第2構造体520の内周面に対向する第1対向面514aを備えた円筒状の部材である。第1構造体510は、さらに、複数の放電起点構造516を備えている。複数の放電起点構造516は、第1誘電体512に設けられている。複数の放電起点構造516は、第1誘電体512の比誘電率よりも高い比誘電率を有する誘電体である。複数の放電起点構造516は、第1電極514の第1対向面514aよりも第2構造体520側(外側)に設けられている。本実施例において、複数の放電起点構造516は、第1誘電体512の第1面512aに露出している。複数の放電起点構造516は、等間隔に離れて配置されている。
【0038】
第2構造体520は、第2誘電体522と、第2電極524と、を備えている。第2誘電体522は、内周面である第2面522aを備えた円筒状の部材である。第1構造体510と第2構造体520は、第1面512aと第2面522aとの間の距離が、構造体間距離H[cm]となるように配置されている。第2誘電体522は、第2電極524を内部に備えている。第2電極524は、第1誘電体512の第1面512a及び第1電極514の第1対向面514aと対向する第2対向面524aを備えた円筒状の部材である。第2構造体520は、さらに、複数の放電起点構造526を備えている。複数の放電起点構造526は、第2誘電体522に設けられている。複数の放電起点構造526は、第2電極524の第2対向面524aよりも第1構造体510側(内側)に設けられている。複数の放電起点構造526は、第2誘電体522の比誘電率よりも高い比誘電率を有する誘電体である。複数の放電起点構造526は、第2誘電体522の第2面522aに露出している。第2構造体520の複数の放電起点構造526の数は、第1構造体510の複数の放電起点構造516の数と一致する。また、第2構造体520の複数の放電起点構造526は、第1構造体510の複数の放電起点構造516と対向するように配置されている。
【0039】
オゾン発生装置501において、第1電極514と第2電極524との間に電圧が印加されると、複数の放電起点構造516、526が起点となって放電が起こり、複数の放電起点構造516、526の間にストリーマ状放電柱が発生する。一方、放電起点構造516、526が設けられていない領域では放電が発生しない。このため、本実施例においても、複数の放電起点構造516の数を調整することによって、放電密度を調整することができる。従って、第1実施例と同様の効果を奏することができる。
【0040】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0041】
(第1変形例)各実施例において、複数の放電起点構造が第1構造体10、410、510にのみ設けられていてもよい。
【0042】
(第2変形例)第1実施例において、複数の放電起点構造16が、第1誘電体12の内部に埋め込まれていてもよい。本変形例では、複数の放電起点構造16は、第1誘電体12の内部であって、第1誘電体12の第1面12aと第1電極14の第1対向面14aとの間に配置される。
【0043】
(第3変形例)各実施例において、オゾン発生装置を平面視した時の複数の放電起点構造の形状は、円形状に限定されない。オゾン発生装置を平面視した時の形状が、楕円、四角形等、任意の形状であってもよい。
【0044】
(第4変形例)各実施例において、各放電起点構造が不等間隔に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1:オゾン発生装置、10:第1構造体、12:第1誘電体、12a:第1面、14:第1電極、14a:第1対向面、16:放電起点構造、20:第2構造体、22:第2誘電体、22a:第2面、24:第2電極、24a:第2対向面、26:放電起点構造
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11