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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ラクトース不耐性を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/20 20060101AFI20220817BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220817BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20220817BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220817BHJP
【FI】
A61K31/20
A61K31/201
A61P43/00 105
A61P1/12
A61P1/04
A61K9/32
A61K47/32
A23L33/12
A23L33/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018544455
(86)(22)【出願日】2017-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2017054526
(87)【国際公開番号】W WO2017144725
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2020-02-26
(31)【優先権主張番号】62/300,376
(32)【優先日】2016-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511134621
【氏名又は名称】ノグラ ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マクナルティ, マリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィティ, フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】ベッリンヴィア, サルヴァトーレ
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-520166(JP,A)
【文献】国際公開第2007/096148(WO,A1)
【文献】特表2001-525364(JP,A)
【文献】特表2015-518483(JP,A)
【文献】特許第6211589(JP,B2)
【文献】LUKOVAC S,M1730 ESSENTIAL FATTY ACID (EFA) DEFICIENCY IN MICE IMPAIRS LACTOSE DIGESTION,GASTROENTEROLOGY,NL,2008年04月,VOL:134, NR:4,PAGE(S):A406-A407,https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(08)61900-9/pdf
【文献】JIANG J,CONJUGATED LINOLEIC ACID IN SWEDISH DAIRY PRODUCTS WITH SPECIAL REFERENCE TO THE 以下備考,INTERNATIONAL DAIRY JOURNAL,英国,1997年11月21日,VOL:7, NR:12,PAGE(S):863 - 867,https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0958694698000041,MANUFACTURE OF HARD CHEESES
【文献】Gastroenterology,2004年,Vol.127,p.777-791
【文献】Nat. Struct. Mol. Biol.,2008年,Vol.15, No.8,p.1-7(p.865-867),doi:10.1038/nsmb.1447
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、かつ/または好転させることを必要としている患者への組成物の投与により該患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、かつ/または好転させるための方法における使用のための組成物であって、共役リノール酸を含む、組成物。
【請求項2】
ラクターゼ遺伝子発現を刺激することを必要としている患者への組成物の投与により該患者におけるラクターゼ遺伝子発現を刺激するための方法における使用のための組成物であって、共役リノール酸を含む、組成物。
【請求項3】
ラクトース摂取後の下痢、腹痛および/または鼓脹を処置することを必要としているラクトース不耐性の患者への組成物の投与により該ラクトース不耐性の患者の、ラクトース摂取後の下痢、腹痛および/または鼓脹を処置するための方法における使用のための組成物であって、共役リノール酸を含む、組成物。
【請求項4】
前記組成物が、乳製品を含む食物の消費の前、その後またはそれと実質的に同時に投与されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記患者が、胃腸炎、セリアック病、クローン病、および/または細菌過剰繁殖の1つまたは複数にも罹患している、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記患者が、放射線療法および/または化学療法を受けている、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記組成物が、毎日、毎週、または必要に応じて3カ月、6カ月、1年もしくはそれよりも長期間にわたって投与されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記共役リノール酸が、トランス-10,シス-12共役リノール酸、シス-9,トランス-11共役リノール酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、かつ/または好転させることを必要としている患者への組成物の投与により該患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、かつ/または好転させるための方法における使用のための組成物であって、共役リノール酸から本質的になる、使用のための組成物。
【請求項10】
前記組成物が、前記患者のラクトース不耐性もしくはラクターゼ欠乏症を処置および/もしくは好転させるための、前記患者におけるラクターゼ遺伝子発現を刺激するための、ならびに/または前記ラクトース不耐性の患者のラクトース摂取後の下痢、腹痛および/もしくは鼓脹を処置するための、治療有効量の共役リノール酸、および任意選択で乳成分を含む、食品である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記組成物が、治療有効量の共役リノール酸を含む、栄養補助組成物であり、前記治療有効量の共役リノール酸は、経口投与または消費されると、前記患者のラクトース不耐性もしくはラクターゼ欠乏症を実質的に防止し、好転させ、もしくは処置するか、前記患者のラクターゼ遺伝子発現を刺激するか、ならびに/または前記患者のラクトース摂取後の下痢、腹痛および/もしくは鼓脹を処置する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記組成物が、共役リノール酸、薬学的に許容される充填剤、および腸溶コーティングを含む、共役リノール酸の経口投与のための医薬製剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
この出願は、2016年2月26日に出願された米国仮特許出願第62/300,376号(この出願の内容全体は、参考として本明細書に援用される)に対する優先権およびその利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
ラクターゼタンパク質は、ラクトースをガラクトースおよびグルコースに加水分解する能力を有する、小腸の絨毛先端上に発現する二糖分解酵素(β-ガラクトシダーゼ)である。不適切なラクターゼ-フロリジン加水分解酵素(LPH)活性は、ラクトース摂取後に下痢、腹痛または鼓脹をもたらすラクトース不耐性/吸収不全の原因となる。原発性ラクターゼ欠乏症(またはラクターゼ非持続性または低ラクターゼ症(hypolactasia))は、小腸におけるラクターゼの発現の相対的または絶対的非存在に起因する、ラクトース不耐性の主な原因であり、様々な年齢の小児期に、異なる人種群で生じる。世界人口のおよそ70%は、原発性ラクターゼ欠乏症を有する。ラクトース欠乏症の百分率は、民族性によって変わり、食事における乳製品の使用と関係し、北欧人口の20%、欧州地中海人口の40%、アフリカ人口の80%、およびアジア人口の90%にも達する。現在利用可能な原発性ラクトース不耐性の根治的処置は存在せず、ラクトース不耐性の典型的な処置には、ラクトース排除(栄養機能障害をもたらす)または高額な(expansive)レジメン、例えばラクトース欠乏乳もしくはラクターゼ補給の使用が含まれる。米国だけでも、ラクトース不耐性の年間の経済的負担は、ほぼ20億ドルと推定される。
【0003】
2つの特定の一塩基多型(SNP)が、成人型低ラクターゼ症と密接に関連することが報告されている。ラクターゼ遺伝子の上流位置13910のC(C13910)は、100%関連性があり、位置22018のG(G22018)は、フィンランド人口ではラクターゼ非持続性と95%を超える関連性がある。T13910およびA22018を有する個体の腸管粘膜におけるLPHのmRNAの発現は、C13910およびG22018を有する個体に見出される発現よりも高く、これは、LPH遺伝子の転写調節を示唆している。しかし、LPH遺伝子の調節の多くは、まだ知られていない。特に、低ラクターゼ症の遺伝的特徴のいくつかの要素は解明されているが、LCT発現を増加させることができるモジュレーターは、まだ同定されていない。したがって、ラクトース不耐性および関連障害の処置において有用な、有効な薬剤が必要である。
【0004】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核内ホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーであり、遺伝子発現を調節する、リガンドによって活性化された転写因子である。PPARは、高等生物の細胞の分化、成長および代謝を調節する上で役割を果たす。
【0005】
肝臓、腎臓、心臓、ならびに他の組織および器官に発現するアルファと、例えば脳内に発現するベータ/デルタと、ガンマ1、ガンマ2およびガンマ3の3つの形態で発現するガンマの、3種のPPARが同定されている。PPARγは、ケラチノサイト分化の刺激と関連付けられており、グルコースのホメオスタシスおよび脂質代謝を制御するためのマスター遺伝子である。したがって、PPARγは、チアゾリジンジオン(TZD)クラスの薬物の開発により、皮膚障害、例えば乾癬およびアトピー性皮膚炎、2型糖尿病を含むいくつかの病状のための薬物標的として役立ってきた。現在まで、ほとんどの研究は、主な代謝器官、例えば肝臓、脂肪細胞、膵臓または骨格筋におけるPPARγの役割を評価するものであった。腸上皮細胞(IEC)は、PPARγの別の主な供給源を構成するが、炭水化物代謝中のIECにおけるPPARγの役割は、十分に調査されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本明細書において、ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、かつ/または好転させることを必要としている患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、かつ/または好転させるための方法であって、該患者に、単離された脂肪酸を含む組成物を投与することを含む、方法が記載される。また、本明細書において、ラクターゼ遺伝子発現を刺激すことを必要としている患者におけるラクターゼ遺伝子発現を刺激するための方法であって、該患者に、単離された脂肪酸を含む組成物を投与することを含む、方法、ならびにラクトース摂取後の下痢、腹痛および/または鼓脹を処置することを必要としているラクトース不耐性の患者の、ラクトース摂取後の下痢、腹痛および/または鼓脹を処置するための方法であって、単離された脂肪酸を含む組成物を投与することを含む、方法が記載される。いくつかの態様では、本開示は、それを必要としている患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、かつ/または好転させるための方法であって、脂肪酸、例えば共役リノール酸から本質的になる組成物を患者に投与することを含む、方法を対象とする。一部の実施形態では、脂肪酸は、天然に存在する脂肪酸、例えば天然に存在する共役リノール酸である。
【0007】
ある特定の実施形態では、投与は、乳製品を含む食物の消費の前、その後またはそれと実質的に同時に行われ得る。一部の実施形態では、この方法は、脂肪酸を含む組成物を、毎日、毎週、または必要に応じて3カ月、6カ月、1年もしくはそれよりも長期間にわたって投与することを含む。患者(例えば、ヒト患者)は、胃腸炎、セリアック病、クローン病、および/もしくは細菌過剰繁殖の1つもしくは複数に罹患している場合もあり、かつ/または放射線療法および/もしくは化学療法を受けている場合もある。ある特定の実施形態では、脂肪酸は、共役リノール酸、例えばトランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、またはそれらの混合物である。
【0008】
他の態様では、患者のラクトース不耐性を好転させるための治療有効量の脂肪酸を含む食品が提供される。一部の実施形態では、食品は、患者のラクトース不耐性を好転させるための治療有効量の脂肪酸、および任意選択で乳成分、例えば、乳清、乳、チーズまたはクリームを含む。ある特定の実施形態では、脂肪酸は、共役リノール酸、例えばトランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、またはそれらの混合物である。
【0009】
また本明細書では、食品に天然に存在する脂肪酸の量、例えば天然に存在する共役リノール酸の量よりも有意に多い量の脂肪酸、例えば共役リノール酸を含む食品が提供され、ここで例えば、脂肪酸(例えば共役リノール酸)の量は、食品に天然に存在する脂肪酸の量(例えば、天然に存在する共役リノール酸の量)よりも約5重量%、約10重量%、約50重量%、約100重量%多い、または約100重量%よりも多い。一部の実施形態では、食品は、共役リノール酸を含み、該共役リノール酸は、トランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、またはそれらの混合物である。
【0010】
別の態様では、本開示は、治療有効量の脂肪酸、例えば共役リノール酸を含む栄養補助組成物を対象とし、治療有効量の脂肪酸、例えば治療有効量の共役リノール酸は、患者に経口投与され、または患者によって消費されると、ヒト患者のラクトース不耐性を実質的に防止し、好転させ、または処置する。一部の実施形態では、栄養補助組成物は、共役リノール酸を含み、該共役リノール酸は、トランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、またはそれらの混合物である。
【0011】
さらに別の態様では、本開示は、脂肪酸の経口投与のための医薬製剤を対象とする。一部の実施形態では、本開示の医薬製剤は、脂肪酸、薬学的に許容される充填剤、および腸溶コーティングを含む。一部の実施形態では、医薬製剤は、共役リノール酸である脂肪酸を含む。一部の実施形態では、医薬製剤は、脂肪酸を含み、該脂肪酸は、トランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、またはそれらの混合物である。一部の実施形態では、本開示の医薬製剤は、崩壊剤を含む。一部の実施形態では、本開示の医薬製剤は、滑沢剤を含む。一部の実施形態では、本開示の医薬製剤は、腸溶コーティングを含み、該腸溶コーティングは、医薬製剤の約1重量%~約10重量%、約5重量%~約10重量%、約8重量%~約10重量%、約8重量%~約12重量%、約8重量%~約15重量%、約8重量%~約20重量%、約10重量%~約12重量%、約10重量%~約18重量%、または約15重量%~約20重量%である。本開示の医薬製剤の一部の実施形態では、腸溶コーティングは、エチルアクリレートメタクリル酸(ethylacrylate methacrylic acid)である。
【0012】
一部の実施形態では、本開示の医薬製剤は、患者に経口投与されると、脂肪酸を患者の十二指腸および/または患者の空腸に送達する結果となる。一部の実施形態では、本開示の医薬製剤は、患者に経口投与されると、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、または約7のpH値で脂肪酸の放出をもたらす。一部の実施形態では、本開示の医薬製剤は、患者に投与されると、胃腸管において約pH4.5、約pH5、約pH5.5、約pH6、約pH6.5、または約pH7の環境下で脂肪酸の放出をもたらす。
【0013】
一部の実施形態では、本開示の医薬製剤は、患者に経口投与されると、患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症の好転または処置をもたらす。一部の実施形態では、本開示の医薬製剤は、その製剤が、規定される期間にわたって規定される回数、例えば1時間、1日、1週間、または1カ月の経過にわたって、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、または10回より多く投与された後に、患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症の好転または処置をもたらす。
【0014】
一部の態様では、本開示は、それを必要としている患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を、例えば処置し、防止し、管理し、かつ/または好転させる医薬として使用するための、脂肪酸、例えばリノール酸、例えば共役リノール酸を対象とする。一部の態様では、本開示は、それを必要としている患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、防止し、管理し、かつ/または好転させるのに使用するための脂肪酸を対象とする。一部の実施形態では、それを必要としている患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、防止し、管理し、かつ/または好転させるのに使用するための脂肪酸は、本明細書に開示される方法のいずれかにおいて使用するための脂肪酸である。また本明細書では、本明細書に記載される方法によってラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、防止し、管理し、かつ/または好転させる医薬の製造における、脂肪酸、例えばリノール酸、例えば共役リノール酸の使用が提供される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、かつ/または好転させることを必要としている患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、かつ/または好転させるための方法であって、該患者に、単離された脂肪酸を含む組成物を投与することを含む、方法。
(項目2)
ラクターゼ遺伝子発現を刺激することを必要としている患者におけるラクターゼ遺伝子発現を刺激するための方法であって、該患者に、単離された脂肪酸を含む組成物を投与することを含む、方法。
(項目3)
ラクトース摂取後の下痢、腹痛および/または鼓脹を処置することを必要としているラクトース不耐性の患者の、ラクトース摂取後の下痢、腹痛および/または鼓脹を処置するための方法であって、単離された脂肪酸を含む組成物を投与することを含む、方法。
(項目4)
前記投与することが、乳製品を含む食物の消費の前、その後またはそれと実質的に同時に行われる、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記患者が、胃腸炎、セリアック病、クローン病、および/または細菌過剰繁殖の1つまたは複数にも罹患している、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記患者が、放射線療法および/または化学療法を受けている、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記投与することが、毎日、毎週、または必要に応じて3カ月、6カ月、1年もしくはそれよりも長期間にわたって行われる、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記脂肪酸が、リノール酸、共役リノール酸、またはそれらの混合物である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記共役リノール酸が、トランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目8に記載の方法。
(項目10)
ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、かつ/または好転させることを必要としている患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、かつ/または好転させるための方法であって、該患者に、リノール酸、共役リノール酸、またはそれらの混合物から本質的になる組成物を投与することを含む、方法。
(項目11)
患者のラクトース不耐性を好転させるための治療有効量の脂肪酸、および任意選択で乳成分を含む、食品。
(項目12)
前記脂肪酸が、リノール酸、共役リノール酸、またはそれらの混合物である、項目11に記載の食品。
(項目13)
前記共役リノール酸が、トランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目12に記載の食品。
(項目14)
前記乳成分が、乳清、乳、チーズまたはクリームである、項目11~13のいずれか一項に記載の食品。
(項目15)
食品に天然に存在する共役リノール酸の量よりも有意に多い量の共役リノール酸を含む、食品。
(項目16)
前記共役リノール酸の前記量が、前記食品に天然に存在する共役リノール酸の量よりも約5重量%、約10重量%、約50重量%、約100重量%多い、または100重量%よりも多い、項目15に記載の食品。
(項目17)
前記共役リノール酸が、トランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目16に記載の食品。
(項目18)
経口投与または消費されると、ヒト患者のラクトース不耐性を実質的に防止し、好転させ、または処置する治療有効量の共役リノール酸を含む、栄養補助組成物。
(項目19)
前記共役リノール酸が、トランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目18に記載の栄養補助組成物。
(項目20)
脂肪酸、薬学的に許容される充填剤、および腸溶コーティングを含む、脂肪酸の経口投与のための医薬製剤。
(項目21)
前記脂肪酸が、リノール酸、共役リノール酸、またはそれらの混合物である、項目20に記載の医薬製剤。
(項目22)
前記脂肪酸が、トランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、またはそれらの混合物である、項目20または21に記載の医薬製剤。
(項目23)
崩壊剤をさらに含む、項目20~22のいずれか一項に記載の医薬製剤。
(項目24)
滑沢剤をさらに含む、項目20~23のいずれか一項に記載の医薬製剤。
(項目25)
前記腸溶コーティングが、前記医薬製剤の約1重量%~約10重量%、約5重量%~約10重量%、約8重量%~約10重量%、約8重量%~約12重量%、約8重量%~約15重量%、約8重量%~約20重量%、約10重量%~約12重量%、約10重量%~約18重量%、または約15重量%~約20重量%である、項目20~24のいずれか一項に記載の医薬製剤。
(項目26)
前記腸溶コーティングが、エチルアクリレートメタクリル酸である、項目20~25のいずれか一項に記載の医薬製剤。
(項目27)
患者に経口投与されると、前記脂肪酸を十二指腸に送達するという結果になる、項目20~26のいずれか一項に記載の医薬製剤。
(項目28)
患者に経口投与されると、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、または約7のpH値で前記脂肪酸の放出をもたらす、項目20~27のいずれか一項に記載の医薬製剤。
(項目29)
それを必要としている患者に経口投与されると、該患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症の好転または処置をもたらす、項目20~28のいずれか一項に記載の医薬製剤。
(項目30)
前記患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症の好転または処置が、前記製剤を、1時間、1日、1週間、または1カ月の経過にわたって、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、または10回より多く投与した後に生じる、項目29に記載の医薬製剤。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1Aは、Caco-2細胞における1mMの3-(4’-アミノフェニル)2-メトキシプロピオン酸(GED)によるLCT mRNA発現の誘導を、刺激しなかった(CTL)細胞と比較して示す定量PCR(qPCR)分析を示す(CTL対1mMのGED、p<0.0001)。図1Bは、Caco-2細胞における1μMのピオグリタゾン(Pio)によるLCT mRNA発現の誘導を、CTL細胞と比較して示すqPCR分析を示す(CTL対1μMのPio、p<0.0001)。図1Aおよび1Bの結果は、4回の独立した実験の平均(SEM)の平均±標準誤差を表す。LCT遺伝子発現の変化倍率は、GAPDH mRNA発現レベルに対して正規化される。図1Cは、Caco-2細胞における30 GEDによるLCT mRNA発現の誘導を、CTL細胞と比較して示すqPCR分析を示す(CTL対30mMのGED、p=0.0002)。図1Dは、Caco-2細胞における30 5-アミノサリチル酸(5-ASA)によるLCT mRNA発現の誘導を、CTL細胞と比較して示すqPCR分析を示す(CTL対30mMの5-ASA、p=0.0002)。対照細胞で測定された発現レベル(任意に1と定義される)を、図1A~1Dのそれぞれの基準として使用した。
【0016】
図2図2Aは、0.1mM、1mM、または30mMのGEDで刺激したCaco-2細胞におけるLCT mRNA発現に対するGEDの用量効果を示しており、対照(CTRL;DMEM)と比較したLCT mRNA発現を、qRT-PCRによって決定した。図2Bは、0.1μM、1μM、または10μMのPioで刺激したCaco-2細胞におけるLCT mRNA発現に対するPioの用量効果を示しており、対照(CTRL;DMSO)と比較したLCT mRNA発現を、qRT-PCRによって決定した。図2Aおよび2Bの結果は、3連で実施した2~3回の独立した実験の平均±SEMを表す(、P<0.05;***P<0.001;NS、有意差なし)。CTRL細胞で測定された発現レベルを、基準として使用した。
【0017】
図3図3は、免疫沈降アッセイによって評価したLCTタンパク質の発現を示す棒グラフである。LCTタンパク質を、1mMのGEDで刺激した(GED)、または刺激しないまま(CTRL)のいずれかのCaco-2細胞から免疫沈降させた。棒は、β-アクチンシグナル強度と比較したLCTタンパク質シグナル強度を表す。CTRLシグナルは、任意に100%と定義した。
【0018】
図4A図4Aは、1mMのGEDで刺激した(GED)後の、または刺激しなかった(CTRL)Caco-2細胞におけるLCT活性を示す棒グラフである。結果は、LCT活性の百分率の平均±SEM(3連で実施した3回の独立した実験)を、任意に100%と定義したCTRL細胞における活性と比較して表す。
【0019】
図4B図4Bは、1μMのPioで刺激した(Pio)後の、または刺激しなかった(CTRL)Caco-2細胞におけるLCT活性を示す棒グラフである。結果は、LCT活性の百分率の平均±SEM(3連で実施した3回の独立した実験)を、任意に100%と定義したCTRL細胞における活性と比較して表す。
【0020】
図4C図4Cは、1mMのGED(GED1mM)、30mMのGED(GED30mM)、30mMの5-ASA(5ASA30mM)で刺激した後の、または刺激しなかった(CTRL)Caco-2細胞におけるLCT活性を示す棒グラフである。ラクターゼ活性は、CTRL試料と比較して、1mMのGED(CTRL対GED1mM、p<0.005)および30mMのGED(CTRL対GED30mM、p<0.005)による刺激後に有意に上方調節された。
【0021】
図5図5は、1mMのGED(GED1mM)および1μMのピオグリタゾン(Pio1μM)で刺激した後の、または刺激しなかった(CTRL)Caco-2細胞のグルコース取込み能を示す。結果は、細胞において測定されたグルコース類似体である2-デオキシグルコース(2-DG6P)のリン酸化の量(pmol)で表される。NS、有意差なし。
【0022】
図6A図6Aは、PPARγアゴニストで刺激した後のCaco-2細胞において、qPCRによって決定される通り、スクラーゼ-イソマルターゼ(SIM)およびマルターゼ-グルコアミラーゼ(MGAM)のmRNAの相対的発現レベルを、LCT mRNAと比較して示す。
【0023】
図6B図6Bは、1mMのGED(左)もしくは1μMのPio(右)で刺激した後の、または刺激しないまま(CTRLおよびDMSO)の、qPCRによって決定されたCaco-2細胞におけるSIM mRNAの相対的発現レベルを示す。結果は、GAPDHレベルに対して正規化されたSIM mRNAの発現の変化倍率の平均±SEM(6連(sextuplicate)で実施した2回の独立した実験)を表す。対照細胞で測定された発現レベル(任意に1と定義される)を、基準として使用した。**P<0.01;***P<0.001;NS、有意差なし。
【0024】
図6C図6Cは、1mMのGED(左)もしくは1μMのPio(右)で刺激した後の、または刺激しないまま(CTRLおよびDMSO)の、qPCRによって決定されたCaco-2細胞におけるMGAM mRNAの相対的発現レベルを示す。結果は、GAPDHレベルに対して正規化されたMGAM mRNAの発現の変化倍率の平均±SEM(6連で実施した2回の独立した実験)を表す。対照細胞で測定された発現レベル(任意に1と定義される)を、基準として使用した。**P<0.01;NS、有意差なし。
【0025】
図7図7は、マイクロアレイ分析およびqPCR分析によって決定された、遺伝子発現データの相関を示す(r=0.754、p=0.0046)。
【0026】
図8図8は、ヒトLCT遺伝子のプロモーター領域においてコンピューターによる分析によって同定されたPPAR応答エレメント(PPRE)(推定上の転写開始部位の上流3,000bpまで)、ならびにその領域に位置する直列反復配列1(direct repeat 1)(DR1)および直列反復配列2(DR2)応答エレメントの模式図である。8aおよび8bは、ヌクレオチド-223~-210の間に位置するDR2を包含するゲノム領域を増幅するために使用したプライマー対を示す。
【0027】
図9図9は、ヒトLCTプロモーター遺伝子におけるPPRE(DR1およびDR2)のヌクレオチド配列を示す(転写開始点に対して上流3,000bpまで)。LCT遺伝子プロモーターの3,000bpの配列において同定された、推定上のDR1のヌクレオチド配列およびDR2のヌクレオチド配列に、下線が引かれている。下線が引かれているヌクレオチド配列「TAAATA」は、潜在的TATAボックスを示す。図9は、配列番号3を開示している。
【0028】
図10図10は、GEDで処理した(GED)、または処理しなかった(CTRL)Caco-2細胞からの、ChIPアッセイによる8a-8bフラグメントのqPCR増幅シグナルを示す棒グラフを示す。結果は、CTRL細胞と比較した富化倍率として表す。
【0029】
図11図11は、ルシフェラーゼ遺伝子配列の上流にDR2応答エレメントを含有するレポーター構築物(pGL4Luc PromLCT構築物)、またはルシフェラーゼ遺伝子配列を含有するが上流にDR2配列がない対照構築物(pGL4Luc)をトランスフェクトしたCaco-2細胞における、ルシフェラーゼ遺伝子レポーターアッセイの結果を示す。結果は、GEDで刺激した後の、または刺激しなかった(CTL)タンパク質含量について正規化された、ルシフェラーゼ活性の平均±SEMを表す(3連の2回の独立した実験)。
【0030】
図12図12は、安定にトランスフェクトされたPPARγノックダウンCaco-2細胞(ShPPAR)における、qPCR(左)およびLCT活性(右)によって測定されたLCT mRNA発現を、安定にトランスフェクトされた対照細胞(ShLuc)と比較して示す。結果は、3連または6連で実施した3回の独立した実験の平均±SEMを表す(**、P<0.01;***、P<0.001)。
【0031】
図13図13は、Caco-2細胞におけるLCT mRNA発現のGED依存性誘導に対する、PPARγアンタゴニストGW9662の効果を示す棒グラフである。LCT mRNA発現は、qPCRによって決定した。細胞を、GW9662で処理し(+GW9662)、または未処理のままにし(-GW9662)、次にGEDで処理し(GED)、または未処理のままにした(対照)。結果は、LCT mRNA発現における倍率変化の平均±SEM(3連および6連で実施した2回の独立した実験の)を、GW9662またはGEDで処理しなかった細胞と比較して表す(**、P<0.01;***、P<0.001)。
【0032】
図14図14は、対照マウス(CTRL)および腸上皮細胞においてPPARγの発現が欠如しているマウス(PPARγΔIEC)の近位小腸における相対的なLCT mRNA発現レベルを示す棒グラフである。結果は、平均±平均の標準偏差を表す(SD;n=5;、P<0.05)。
【0033】
図15A図15Aは、qPCRによって決定される通り、「離乳していない」ラットおよび「離乳した」ラットの腸の異なる切片における相対的なLCT mRNA発現(左)およびPPARγ mRNA発現(右)を示す一対のグラフである。結果は、GAPDHレベルに対して正規化された相対的mRNA発現レベルの平均±SDを表す(群ごとにn=6)。
【0034】
図15B図15Bは、離乳したラット(四角)および離乳していないラット(丸)の空腸における、LCT mRNAレベルとPPARγ mRNAレベルの相関を示すグラフである。
【0035】
図15C図15Cは、離乳したラット(四角)および離乳していないラット(丸)の十二指腸における、LCT mRNAレベルとPPARγ mRNAレベルの相関を示すグラフである。
【0036】
図16図16は、PPARγモジュレーターであるGEDで3時間(GED 3H)、6時間(GED 6H)、または10時間(GED 10H)刺激した後の、ヒト十二指腸生検の短期間培養物中の上皮細胞によるラクターゼ mRNA発現の上方調節を、刺激しなかった対照(CTL;CTL対GED6H、p=0.008)と比較して示す棒グラフである。
【0037】
図17図17は、フェノフィブレートで刺激したCaco-2細胞における、qPCR(左)およびLCT活性(右)によって測定されたLCT mRNA発現を、刺激しなかった対照細胞(DMSO)と比較して示す一連の棒グラフである。結果は、3連で実施した3回の独立した実験の平均±SEMを表す(NS、有意差なし)。
【0038】
図18A図18Aは、処置なし(対照)または30mg/gの経口GEDで7日間処置した(GED)、C57BL/6マウス(上列)およびSprague-Dawleyラット(下列)の近位小腸においてin vivoで測定された、LCT mRNA発現(左)およびLCT活性(右)を示す一連のグラフである。結果は、3回の独立した実験の合計を表す(マウス、n=25~30;ラット、n=21~23)。水平線は、平均値を表す(**、P<0.01;***、P<0.001)。
【0039】
図18B図18Bは、対照食(CTRL食)またはラクトース富化食(15%ラクトース食)を与え、GEDで処置した(+GED)またはGEDで処置しなかった(+CMC)ラットにおける、異なる時点(0~4日目)の糞便軟度スコアを示すグラフである。結果は、2回の独立した実験の合計を表す(群ごとにn=20;**、P<0.01;***、P<0.001)。
【0040】
図18C図18Cは、4日間、対照食(対照食)またはラクトース富化食(ラクトース食)を与え、GEDで処置した(GED)またはGEDで処置しなかった(CMC)ラットの盲腸内容物における、総短鎖脂肪酸(SCFA)濃度(mmol/L)を示すグラフである。水平線は、平均値を表す(群ごとにn=10;、P<0.05;***、P<0.001。
【0041】
図19A図19Aは、天然に存在する一連のPPARγリガンドの化学構造を示す。
【0042】
図19B図19Bは、刺激しなかった細胞(CTL)、または1mMのGED(GED1mM)もしくは様々な濃度(50μM、100μM、250μM、500μM、1000μM)の共役リノール酸(CLA)で刺激した後の、qPCRによって測定されるCaco-2細胞におけるLCT mRNA発現の誘導を示す棒グラフである。結果は、GAPDH mRNAレベルに対して正規化されたLCT mRNA発現の変化倍率の平均±SEMを、CTLにおけるLCT mRNA発現と比較して表す(n=4連で実施した3回の独立した実験;***、P<0.001)。
【0043】
図19C図19Cは、刺激しなかった細胞(CTL)、または1mMのGED(GED1mM)もしくは様々な濃度(50μM、100μM、250μM、500μM、1000μM)のCLAで刺激した後の、Caco-2細胞におけるLCT活性の誘導を示す棒グラフである。結果は、LCT活性の変化倍率の平均±SEMを、CTLにおけるLCT活性と比較して表す(n=4連で実施した3回の独立した実験;、P<0.05;***、P<0.001)。
【0044】
図20A図20Aは、刺激しなかった(CTRL)、または様々な濃度(250μM、500μM、1000μM)のCLAで刺激した、安定にトランスフェクトされたPPARγノックダウンCaco-2細胞(ShPPAR)および安定にトランスフェクトされた対照細胞(ShLuc)における、qPCRによって測定されるLCT mRNA発現を示す棒グラフである。結果は、LCT mRNA発現の変化倍率の平均±SEMを、CTRLにおけるLCT mRNA発現と比較して表す(n=4連で実施した3回の独立した実験;**、P<0.01;***、P<0.001;NS、有意差なし)。
【0045】
図20B図20Bは、刺激しなかった(CTRL)、または1mMのGED(GED1mM)もしくは様々な濃度(250μM、500μM、1000μM)のCLAで刺激した、安定にトランスフェクトされたPPARγノックダウンCaco-2細胞(ShPPAR)および安定にトランスフェクトされた対照細胞(ShLuc)における、LCT mRNA活性を示す棒グラフである。結果は、LCT活性の変化倍率の平均±SEMを、CTRLにおけるLCT活性と比較して表す(n=4連で実施した2回の独立した実験;P<0.05;**、P<0.01;NS、有意差なし)。
【0046】
図21A図21Aは、Sprague-Dawleyラットに、0.5%カルボキシメチルセルロースを補充した対照食(対照食+CMC;n=3回の独立した実験で24匹の動物)、または200mg/kg/日のCLAを補充した食(対照食+CLA200mg/Kg/日(経口強制飼養);n=10匹の動物)、または30mg/kg/日のGEDを補充した食(対照食+GED/Kg/日(経口強制飼養);n=2回の独立した実験で15匹の動物)を5日間(D)与える効果を分析するための実験設計の模式図である。
【0047】
図21B図21Bは、0.5%カルボキシメチルセルロースを補充した対照食(CMC)、30mg/kg/日のGED(GED)、または200mg/kg/日のCLA(CLA)を与えたラットの十二指腸組織における、LCT mRNA発現レベル(GAPDH mRNA発現に対して正規化された)に関する個々のデータ点および平均値(水平線)を、CMC対照と比較して示すグラフである。
【0048】
図21C図21Cは、0.5%カルボキシメチルセルロースを補充した対照食(CMC)、30mg/kg/日のGED(GED)、または200mg/kg/日のCLA(CLA)を与えたラットの空腸組織における、LCT mRNA発現レベル(GAPDH mRNA発現に対して正規化された)に関する個々のデータ点および平均値(水平線)を、CMC対照と比較して示すグラフである。
【0049】
図21D図21Dは、0.5%カルボキシメチルセルロースを補充した対照食(CMC)または200mg/kg/日のCLA(CLA)を与えたラットの十二指腸組織における、PPARγ mRNA発現レベル(GAPDH mRNA発現に対して正規化された)に関する個々のデータ点および平均値(水平線)を、CMC対照と比較して示すグラフである。
【0050】
図21E図21Eは、0.5%カルボキシメチルセルロースを補充した対照食(CMC)または200mg/kg/日のCLA(CLA)を与えたラットの空腸組織における、PPARγ mRNA発現レベル(GAPDH mRNA発現に対して正規化された)に関する個々のデータ点および平均値(水平線)を、CMC対照と比較して示すグラフである。
【0051】
図22A図22Aは、0.5%カルボキシメチルセルロースを補充した対照食を与えたラットの十二指腸組織における、PPARγ(PPARg) mRNA発現レベルとLCT(LCT) mRNA発現レベルとの間の相関を示すグラフである。
【0052】
図22B図22Bは、200mg/kg/日のCLAを補充した対照食を与えたラットの十二指腸組織における、PPARγ(PPARg) mRNA発現レベルとLCT(LCT) mRNA発現レベルとの間の相関を示すグラフである。
【0053】
図22C図22Cは、0.5%カルボキシメチルセルロースを補充した対照食を与えたラットの空腸組織における、PPARγ(PPARg) mRNA発現レベルとLCT(LCT) mRNA発現レベルとの間の相関分析を示すグラフである。
【0054】
図22D図22Dは、0.5%カルボキシメチルセルロースを補充した対照食を与えたラットの空腸組織における、PPARγ(PPARg) mRNA発現レベルとLCT(LCT) mRNA発現レベルとの間の相関分析を示すグラフである。
【0055】
図22E図22Eは、0.5%カルボキシメチルセルロースを補充した対照食(CMC)、30mg/kg/日のGED(GED)、または200mg/kg/日のCLA(CLA)を5日間与えたラットの十二指腸組織における、LCT活性の変化倍率の個々のデータ点および平均値(水平線)を示すグラフである。
【0056】
図22F図22Fは、0.5%カルボキシメチルセルロースを補充した対照食(CMC)、30mg/kg/日のGED(GED)、または200mg/kg/日のCLA(CLA)を5日間与えたラットの空腸組織における、LCT活性の変化倍率の個々のデータ点および平均値(水平線)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
詳細な説明
ここで、本開示の特徴および他の詳細を、さらに具体的に記載する。本発明をさらに説明する前に、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲に用いられるある特定の用語を、ここにまとめる。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして読まれ、当業者によって理解されるべきである。別段定義されない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、当業者によって共通に理解される意味と同じ意味を有する。
【0058】
定義
「処置すること」は、状態、疾患、障害等を改善する任意の効果、例えば減弱、低減、モジュレートまたは排除することを含む。
【0059】
用語「薬学的に許容されるキャリア」または「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書で使用される場合、薬学的投与と適合性がある、任意のすべての溶媒、分散媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤等を指す。薬学的に活性な物質のために、このような媒体および作用物質(agent)を使用することは、当技術分野で周知である。組成物はまた、補助的機能、付加的機能または増強された治療機能を提供する他の活性な化合物を含有することができる。
【0060】
用語「医薬組成物」は、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の薬学的に許容されるキャリアと一緒に製剤化された、本明細書に開示される少なくとも1つの化合物を含む組成物を指す。
【0061】
「個体」、「患者」または「被験体」は、交換可能に使用され、哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、最も好ましくはヒトを含む任意の動物を含む。本発明の化合物は、ヒトなどの哺乳動物に投与され得るが、他の哺乳動物、例えば獣医学的処置を必要としている動物、例えば飼育動物(例えば、イヌ、ネコ等)、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット等)にも投与され得る。本発明の方法で処置される哺乳動物は、PPAR受容体のモジュレーションが望まれる、望ましくは哺乳動物である。「モジュレーション」には、アンタゴニズム(例えば、阻害)、アゴニズム、部分的アンタゴニズムおよび/または部分的アゴニズムが含まれる。
【0062】
本明細書では、用語「治療有効量」は、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって求められる、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発する、対象の化合物の量を意味する。本発明の化合物は、疾患を処置するための治療有効量で投与される。あるいは、化合物の治療有効量は、所望の治療効果および/または予防効果を達成するのに必要な数量(quantity)、例えばPPAR受容体と関連する疾患と関連する症状を防止または低減する量である。
【0063】
用語「薬学的に許容される塩(複数可)」は、本明細書で使用される場合、本組成物において使用される化合物に存在し得る酸性基または塩基性基の塩を指す。塩基性の性質である本組成物に含まれる化合物は、様々な無機酸および有機酸と共に多種多様な塩を形成することができる。このような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、それらに限定されるものではないが、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩(acid phosphate)、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))を含む、非毒性の酸付加塩、すなわち薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩を形成する酸である。アミノ部分を含む本組成物に含まれる化合物は、先に列挙される酸に加えて、様々なアミノ酸と共に薬学的に許容される塩を形成し得る。酸性の性質である本組成物に含まれる化合物は、様々な薬理学的に許容されるカチオンと共に塩基塩を形成することができる。このような塩の例として、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩、および鉄塩が挙げられる。本開示の薬学的に許容される塩には、例えば脂肪酸の薬学的に許容される塩、例えば共役リノール酸の薬学的に許容される塩が含まれる。
【0064】
本開示の化合物は、1つまたは複数のキラル中心および/または二重結合を含有することができ、したがって、立体異性体、例えば幾何異性体、鏡像異性体またはジアステレオマーとして存在し得る。用語「立体異性体」は、本明細書で使用される場合、あらゆる幾何異性体、鏡像異性体またはジアステレオマーからなる。これらの化合物は、不斉炭素原子の周りの置換基の立体配置に応じて、記号「R」または「S」によって指定され得る。本発明は、これらの化合物の様々な立体異性体およびそれらの混合物を包含する。立体異性体には、鏡像異性体およびジアステレオマーが含まれる。鏡像異性体またはジアステレオマーの混合物は、命名法で「(±)」で指定され得るが、当業者は、その構造が、キラル中心を暗黙的に示し得ることを認識されよう。
【0065】
本発明の化合物の個々の鏡像異性体は、非対称もしくは不斉中心を含有する市販の出発材料から、またはラセミ混合物を調製した後、当業者に周知の分割方法を行うことによって、合成的に調製することができる。これらの分割方法は、(1)キラル補助基(chiral auxiliary)への鏡像異性体混合物の付着、再結晶化もしくはクロマトグラフィーによるジアステレオマーの生成混合物の分離、および補助基からの光学的に純粋な生成物の遊離、(2)光学的に活性な分割剤を用いる塩の形成、または(3)キラル液体クロマトグラフィーカラム上の光学的鏡像異性体の混合物の直接的な分離によって例示される。立体異性混合物は、周知の方法、例えばキラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、キラル塩錯体としての化合物の結晶化、またはキラル溶媒中での化合物の結晶化によって、それらの構成成分である立体異性体に分割することもできる。立体異性体は、立体異性体的に純粋な中間体、試薬、および触媒から、周知の不斉合成法によって得ることもできる。
【0066】
幾何異性体も、本発明の化合物に存在し得る。記号
【化1】

は、本明細書に記載の通り、単結合、二重結合または三重結合であり得る結合を示す。本発明は、炭素-炭素二重結合の周りの置換基の配置または炭素環式環の周りの置換基の配置から生じる、様々な幾何異性体およびそれらの混合物を包含する。炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、「Z」または「E」立体配置中に存在するものと指定され、ここで用語「Z」および「E」は、IUPAC標準に従って使用される。別段の指定がない限り、二重結合を図示する構造は、「E」および「Z」異性体の両方を包含する。
【0067】
あるいは、炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、「シス」または「トランス」と呼ぶことができ、ここで「シス」は、二重結合の同じ側にある置換基を表し、「トランス」は、二重結合の反対側にある置換基を表す。炭素環式環の周りの置換基の配置は、「シス」または「トランス」と指定される。用語「シス」は、環の平面の同じ側にある置換基を表し、用語「トランス」は、環の平面の反対側にある置換基を表す。置換基が環の平面の同じ側および反対側の両方に配置される化合物の混合物は、「シス/トランス」と指定される。
【0068】
本明細書に開示の化合物は、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態および非溶媒和形態で存在することができ、本発明が溶媒和形態および非溶媒和形態の両方を包含することが企図される。一実施形態では、化合物は、非晶質である。一実施形態では、化合物は、多形である。別の実施形態では、化合物は、結晶形である。
【0069】
本発明はまた、1つまたは複数の原子が、通常天然で見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられていることを除き、本明細書に列挙されているものと同一の、同位体的に標識された本発明の化合物を包含する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例として、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体、例えばそれぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clが挙げられる。
【0070】
ある特定の同位体的に標識された本開示の化合物(例えば、Hおよび14Cで標識されたもの)は、化合物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。化合物の調製および検出性を容易にするには、トリチウム標識(すなわち、H)および炭素-14(すなわち、14C)同位体が、特に好ましい。さらに、より重い同位体、例えば重水素(すなわち、H)による置換では、より高い代謝安定性(例えば、in vivo半減期の延長または必要投与量の低減)から生じるある特定の治療上の利点を得ることができ、したがって、一部の環境において好ましい場合がある。同位体的に標識された本発明の化合物は、一般に、本明細書の例えば実施例に開示のものに類似の手順に従って、非同位体的に標識された試薬を同位体的に標識された試薬で置換することによって調製することができる。
【0071】
脂肪酸
本開示は、少なくとも部分的に、患者、例えばラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症の処置、防止、管理、および/または好転を必要としている患者に、1つまたは複数の単離された脂肪酸を投与することによって、ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、管理し、防止し、かつ/または好転させるための方法を提供する。例えば、一部の実施形態では、ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、管理し、防止し、かつ/または好転させるための方法は、1つまたは複数の単離された脂肪酸を含む薬学的に許容される組成物、例えば薬学的に許容される製剤を患者に投与する方法を含む。脂肪酸および単離された脂肪酸(本明細書では交換可能に使用される)は、任意の脂肪酸分子またはPPARをモジュレートする分子を指すことができる。このような脂肪酸は、例えばPPAR活性を増加させることによって、例えばPPARアゴニストまたはPPARγアゴニストとして作用することによって、例えばPPAR活性をモジュレートすることができる。いかなる理論にも拘泥するものではないが、脂肪酸は、例えばPPARに結合することによって、例えばPPARリガンドとして作用することによって、PPARモジュレーターとして作用することができる。
【0072】
脂肪酸には、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、短鎖脂肪酸(例えば、6個未満の炭素の脂肪族の尾部を有する脂肪酸)、中鎖脂肪酸(例えば、6~12個の炭素の脂肪族の尾部を有する脂肪酸)、長鎖脂肪酸(例えば、13~21個の炭素の脂肪族の尾部を有する脂肪酸)、リノール酸、超長鎖脂肪酸(例えば、22個を超える炭素の脂肪族の尾部を有する脂肪酸)、オメガ-3脂肪酸、および必須脂肪酸が含まれるが、それらに限定されない。脂肪酸には、脂肪酸の異性体、例えば共役リノール酸の異性体も含まれる。脂肪酸には、脂肪酸の異性体、例えば脂肪酸のトランスおよびシス異性体も含まれる。
【0073】
不飽和脂肪酸には、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノールエライジン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ステアリドン酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、ドコサテトラエン酸、パウリン酸、ゴンド酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ネルボン酸、ミード酸、クロトン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、ピノレン酸、エレオステアリン(elostearic)酸、β-エレオステアリン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、オズボンド(ozubondo)酸、イワシ酸(sardine acid)、ニシン酸(herring acid)、テトラコサノールペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸が含まれるが、それらに限定されない。
【0074】
飽和脂肪酸には、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、エナント酸、ペラルゴン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、マルガリン酸、ノナデシル酸、ヘンイコシル酸、トリコシル酸、ペンタコシル酸、ヘプタコシル酸、モンタン酸、ノナコシル酸、メリシン酸、ヘナトリアコンチル酸(henatriacontylic acid)、ラッセル(lacceroic)酸、プシリン(psyllic)酸、ゲジン(geddic)酸、セロプラスチック(ceroplastic)酸、ヘキサトリアコンチル(hexatriacontylic)酸、ヘプタトリアコンタン酸、およびオクタトリアコンタン酸が含まれるが、それらに限定されない。
【0075】
脂肪酸には、脂肪酸の立体異性体および脂肪酸立体異性体のラセミ混合物、例えばリノール酸の立体異性体、例えば9(S)-ヒドロキシ-10(E),12(Z)-オクタデカジエン酸(9(S)-HODE)および9(R)-ヒドロキシ-10(E),12(Z)-オクタデカジエン酸(9(R)-HODE)、ならびにリノール酸立体異性体のラセミ混合物、例えば9-ヒドロキシオクタデカジエン酸(9-HODE)も含まれる。脂肪酸の立体異性体の他の例として、13-ヒドロキシオクタデカジエン酸(13-HODE、13(S)-ヒドロキシ-9Z,11E-オクタデカジエン酸、または13(S)-HODEとしても公知である)および13(R)-ヒドロキシ-9Z,11E-オクタデカジエン酸(13(R)-HODE)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0076】
脂肪酸は、例えば共役リノール酸であり得る。共役リノール酸(CLA)は、共役ジエンの存在によって特徴付けられるリノール酸の位置異性体および幾何異性体の群を指す。脂肪酸には、例えば、シス-9,トランス-11(c9,t11)異性体、トランス-10,シス-12(t10、c12)異性体、およびトランス-10,シス-11(t10、c11)異性体を含む、共役リノール酸の任意の異性体が含まれ得る。例示的な共役リノール酸は、以下の構造のリノール酸で表される。
【化2】
【0077】
本開示はまた、1つまたは複数の薬学的または化粧的に許容されるキャリアと一緒に製剤化された、本明細書で開示される化合物(例えば、上に記載した単離されたCLA)を含む医薬組成物の使用を含む方法を提供する。本明細書で提供される例示的な組成物には、上に記載したCLAおよび1つまたは複数の薬学的に許容されるキャリアを本質的に含む組成物が含まれる。製剤には、経口、直腸、局所、口腔(buccal)および非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、または静脈内)投与に適した製剤、または局所使用に適した製剤、例えば化粧品としての製剤が含まれる。任意の所与の場合において最も適した投与形態は、処置を受ける状態の度合いおよび重症度、ならびに使用される特定の化合物の性質に応じて決まる。
【0078】
一部の実施形態では、本開示はまた、脂肪酸または脂肪酸代謝の生成物の1つまたは複数の誘導体を含む、ラクトース不耐性および/またはラクターゼ欠乏症を処置し、防止し、モニターし、かつ/または好転させるための組成物を対象とする。一部の実施形態では、本開示はまた、脂肪酸または脂肪酸代謝の生成物の1つまたは複数の誘導体を含む組成物を患者に投与することを含む、ラクトース不耐性および/またはラクターゼ欠乏症を処置し、防止し、モニターし、かつ/または好転させるための方法を対象とする。脂肪酸および脂肪酸代謝の生成物の誘導体には、例えばホルモン、例えばプロスタグランジン(例えば、15-デオキシ-デルタ-12,14-プロスタグランジンJ2(15d-PGJ2))、トリグリセリド、リン脂質、ジアシルグリセロール、セカンドメッセンジャー(例えば、イノシトール三リン酸)、およびケトン体が含まれる。
【0079】
脂肪酸の誘導体には、リノール酸の誘導体、例えばDCP-LA(8-[2-(2-ペンチル-シクロプロピルメチル)-シクロプロピル]-オクタン酸)、FR236924、およびそれに限定されるものではないが、12,13-エポキシ-9-ケト-(10-トランス)-オクタデセン酸(EKODE)を含むリノール酸の酸化誘導体が含まれる。脂肪酸の誘導体には、5-ヒドロキシエイコサテトラエン(hydroxyicosatetraenoic)酸(5-HETE)、12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE)、15-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(15-HETE)、16(R)-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(16(R)-HETE)、16(S)-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(16(S)-HETE)、および5(S),6(R)-リポキシンA4、5(S),6(R)、および15(R)-リポキシンA4を含むが、それらに限定されないアラキドン酸の誘導体も含まれる。脂肪酸の誘導体には、脂肪酸のポリエチレングリコール(PEG)化誘導体、例えばリノール酸のペグ化誘導体、例えばペグ化共役リノール酸も含まれる。
【0080】
一部の実施形態では、本開示は、脂肪酸代謝の1つまたは複数の中間生成物、例えばリノール酸代謝の中間生成物を含む、ラクトース不耐性および/またはラクターゼ欠乏症を処置し、防止し、モニターし、かつ/または好転させるための組成物を対象とする。一部の実施形態では、本開示はまた、脂肪酸代謝の1つまたは複数の中間生成物、例えばリノール酸代謝の中間生成物を含む組成物を患者に投与することを含む、ラクトース不耐性および/またはラクターゼ欠乏症を処置し、防止し、モニターし、かつ/または好転させるための方法を対象とする。リノール酸代謝の中間生成物には、例えば、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、およびドコサテトラン酸(docosatetranoic acid)が含まれる。
【0081】
一部の実施形態では、本開示は、1つまたは複数の脂肪酸プロドラッグ、例えば共役リノール酸のプロドラッグを含む、ラクトース不耐性および/またはラクターゼ欠乏症を処置し、防止し、モニターし、かつ/または好転させるための組成物を対象とする。一部の実施形態では、本開示はまた、1つまたは複数の脂肪酸プロドラッグ、例えば共役リノール酸のプロドラッグを含む組成物を患者に投与することを含む、ラクトース不耐性および/またはラクターゼ欠乏症を処置し、防止し、モニターし、かつ/または好転させるための方法を対象とする。本明細書で使用される場合、用語「プロドラッグ」は、薬理学的に活性な化合物、例えば薬理学的に活性な脂肪酸に代謝される(例えば、患者に投与された後に代謝される)化合物を指す。例として、共役リノール酸のプロドラッグには、共役リノール酸に代謝される化合物が含まれる。
【0082】
治療上の適用
本開示は、少なくとも部分的に、脂肪酸、例えばリノール酸、例えば共役リノール酸を、それを必要としている患者(例えば、ヒト患者)に投与することによって、ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置または好転させる(または例えばラクトース不耐性の症状を制御する)ことを対象とする。例えば、ラクトース摂取後の下痢、腹痛および/または鼓脹を処置する方法が提供され、ここで共役リノール酸(または例えば、共役リノール酸を含む組成物)は、それを必要としている被験体に、例えば経口投与によって投与される。
【0083】
例えば一部の実施形態では、本開示は、患者が、ラクトース、例えばラクトースを含む組成物、例えばラクトースを含む食品を摂取する前、実質的に同時、または後に、脂肪酸、例えば共役リノール酸異性体を投与することによって、患者のラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置または好転させる方法を対象とする。
【0084】
また本明細書では、ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を低減するための組成物が提供される。例えば、一部の実施形態では、開示される組成物は、脂肪酸、例えば共役リノール酸を含む、ラクトース低含量乳または乳製品(milk product)の一部を形成することができ、またはそれらを作製するために使用される。このような組成物は、例えば乳清製品、乳製品(milk product)またはチーズ製品であってよく、またはそれらの一部であってよい。
【0085】
本発明の化合物は、このような処置または好転を必要としている被験体(例えば、動物および/またはヒト)に、最適な薬学的有効性を提供する投与量で投与され得る。任意の特定の適用において使用するのに必要な用量は、選択される特定の化合物または組成物に関してだけでなく、投与経路、処置を受ける状態の性質、患者の年齢および状態、併用医薬品またはその後患者が摂取する特別食、ならびに当業者が認識する他の因子に関しても、患者ごとに様々であり、適切な投与量は、最終的に主治医、介護者、または患者の裁量によって決まることが理解されよう。上記の臨床状態および疾患を処置するために、本発明の化合物は、例えば経口、局所、非経口で、吸入スプレーによって、または直腸に、従来の非毒性の薬学的に許容されるキャリア、アジュバント、およびビヒクルを含有する投薬単位製剤で投与され得る。非経口という用語は、本明細書で使用される場合、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、または注入技術を含む。
【0086】
一般に、活性構成成分の治療有効量は、約0.1mg/kg~約100mg/kg、約0.1mg/kg~約1mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約100mg/kg、約1mg/kg~10mg/kg、約10mg/kg~約20mg/kg、約20mg/kg~約30mg/kg、約30mg/kg~約40mg/kg、約40mg/kg~約50mg/kg、約50mg/kg~約60mg/kg、約60mg/kg~約70mg/kg、約70mg/kg~約80mg/kg、約80mg/kg~約90mg/kg、または約90mg/kg~約100mg/kgの範囲である。投与される量は、処置される疾患または適応症のタイプおよび程度、特定の患者の全体的な健康状態、化合物の相対的な生物学的有効性、化合物の製剤、製剤における賦形剤の存在およびタイプ、ならびに投与経路などの変数に応じて変わる。投与される初期投与量は、所望の血液レベルもしくは組織レベルを急速に達成するために、上位レベルを超えて増加させることができ、または初期投与量は、最適量より少なくて済む場合があり、毎日の投与量は、処置過程中、特定の状況に応じて次第に増加させることができる。ヒトの投与量は、例えば、0.5mg/kg~20mg/kgになるように設計された従来の第I相用量漸増試験において最適化され得る。投与頻度は、投与経路、投薬量および処置されている疾患状態などの因子に応じて変わり得る。例示的な投与頻度は、1日1回、週1回、および2週間毎に1回である。
【0087】
本開示の製剤または組成物は、開示される化合物を含むことができ、典型的に、薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含むこともできる。
【0088】
本開示の組成物は、当技術分野で周知の通り、それらの企図される使用に応じて様々な手段によって投与され得る。例えば、本発明の組成物は、経口投与する予定である場合、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤・粉剤(powder)またはシロップ剤として製剤化され得る。あるいは、本発明の製剤は、注射剤(静脈内、筋肉内、または皮下)、点滴注入調製物、浣腸剤、または坐剤として非経口投与され得る。眼部粘膜経路によって適用するために、本発明の組成物は、点眼剤または眼用軟膏として製剤化され得る。これらの製剤は、従来の手段によって調製することができ、所望の場合、組成物は、任意の従来の添加剤、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭薬、可溶化剤、懸濁化助剤、乳化剤またはコーティング剤と混合され得る。
【0089】
本明細書で提供される製剤の一部の実施形態では、湿潤剤、乳化剤、および滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、賦香剤、防腐剤、および抗酸化剤は、製剤化された薬剤中に存在してよい。
【0090】
本組成物は、経口、経鼻、局所(口腔および舌下を含む)、直腸、膣、エアロゾルおよび/または非経口投与に適し得る。製剤は、好都合には単位剤形で提示することができ、薬剤学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。単回用量を生成するためにキャリア材料と組み合わされ得る組成物の量は、処置を受ける被験体および特定の投与方法に応じて変わり得る。
【0091】
経口投与に適した製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤(フレーバー基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガントを使用する)、散剤・粉剤、顆粒剤の形態で、または水性もしくは非水性液体での液剤もしくは懸濁剤として、または水中油もしくは油中水液体エマルジョンとして、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ剤(不活性な基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを使用する)として存在することができ、それらのそれぞれは、その所定量の本組成物を活性成分として含有する。本発明の組成物はまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与され得る。
【0092】
経口投与のための固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、フィルムコーティングされた錠剤、糖でコーティングされた錠剤、散剤・粉剤、顆粒剤等)では、本開示の組成物は、1つもしくは複数の薬学的に許容されるキャリア、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、ならびに/または以下:(1)充填剤もしくは増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/もしくはケイ酸、(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/もしくはアカシアなど、(3)保湿剤、例えばグリセロール、(4)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、バレイショもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、(5)溶解遅延剤、例えばパラフィン、(6)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物、(7)湿潤剤、例えばアセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど、(8)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土、(9)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物、ならびに(10)着色剤のいずれかと混合され得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、組成物は、緩衝剤を含むこともできる。ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、類似のタイプの固体組成物を、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル剤における充填剤として用いることもできる。
【0093】
経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれ得る。液体剤形は、本組成物に加えて、当技術分野で共通に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、シクロデキストリン、ならびにそれらの混合物などを含有し得る。
【0094】
懸濁剤は、本組成物に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにそれらの混合物としての懸濁化剤を含有し得る。
【0095】
本明細書本文全体を通して、組成物が、特定の構成成分を有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載される場合、組成物は、列挙された構成成分から本質的になる、またはそれからなることも企図される。同様に、プロセスが、特定のプロセスステップを有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載される場合、そのプロセスは、やはり列挙されたプロセシングステップから本質的になる、またはそれからなる。
【0096】
別段示される場合を除いて、ステップの順序またはある特定の動作を実施する順序は、本発明が依然として操作可能な限り重要ではない。さらに、別段の注記がない限り、2つまたはそれよりも多くのステップまたは動作は、同時に実施され得る。
【0097】
本明細書に開示される化合物は、有機合成分野の当業者に周知のいくつかのやり方で調製され得る。
【0098】
医薬組成物および投与経路
本開示はまた、1つまたは複数の単離された脂肪酸、例えば共役リノール酸(CLA)、例えばトランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、またはそれらの混合物を含む医薬組成物を投与することによって、ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、防止し、または好転させるための方法を提供する。別の態様では、本開示は、ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症の処置に使用するための医薬組成物を提供する。医薬組成物は、開示される単離された脂肪酸、例えばCLAおよび薬学的に許容されるキャリアから構成され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、管理し、好転させ、および/または防止するために、患者、例えばヒトに投与するための薬学的に許容されるキャリアに、特定量の治療化合物、例えば治療有効量の治療化合物、例えば治療有効量の脂肪酸(例えば、CLA)を含有する混合物であり得る。一部の実施形態では、開示される単離された脂肪酸および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物が本明細書に提供される。一部の実施形態では、本開示は、ラクトース不耐性またはラクターゼ欠乏症を処置し、管理し、好転させ、かつ/または防止するための医薬の製造における、単離された脂肪酸の使用を対象とする。「医薬」は、本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」と本質的に同じ意味を有する。
【0099】
薬学的に許容されるキャリアには、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク比に見合うバッファ、キャリア、および賦形剤が含まれ得る。キャリア(複数可)は、製剤のその他の成分と適合性があり、レシピエントにとって有害でないという意味で「許容され(acceptable)」なければならない。薬学的に許容されるキャリアには、薬学的投与と適合性があるバッファ、溶媒、分散媒、コーティング、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および作用物質の使用は、当技術分野で公知である。一実施形態では、医薬組成物は、経口投与され、消化器系または腸内の、カプセル封入物質の吸収部位を調節するのに適した腸溶コーティングまたは親油性コーティングを含む。例えば、腸溶コーティングには、エチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸エステルコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、ポリメタクリレート、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)、ヒドロキシプロピル-メチルセルロースフタレートが含まれ得る。
【0100】
一部の実施形態では、本明細書で提供される製剤は、治療物質(therapeutic)、例えば単離された脂肪酸を、胃腸管の1つまたは複数の特定領域への送達を可能にする、腸溶コーティング、例えば親油性コーティングを含む。例えば製剤は、治療物質を、胃、十二指腸、空腸、小腸、大腸、横行結腸、上行結腸もしくは下行結腸、回腸、盲腸、および/または直腸への送達を可能にする腸溶コーティングおよび試薬を含み得る。製剤は、治療物質を、例えば錠剤、ロゼンジ、またはカプセル剤の形態の経口投与のための製剤から、ある近似のpH値でまたはあるpH値範囲内での放出を可能にする、腸溶コーティングおよび試薬を含み得る。例えば、本明細書で提供される製剤は、治療物質、例えば単離された脂肪酸を、経口投与のための製剤から、約3、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、または約8のpH値で放出する、腸溶コーティングおよび試薬を含み得る。例えば、本明細書で提供される製剤は、治療物質を、経口投与のための製剤から、約3を超える、約4を超える、約4.5を超える、約5を超える、約5.5を超える、約6を超える、約6.5を超える、約7を超える、約7.5を超える、または約8を超えるpH値で放出する、腸溶コーティングおよび試薬を含み得る。一部の実施形態では、本開示の製剤は、治療物質を、経口投与のための製剤から、約pH3~約pH、約pH4~約pH5、約pH5~約pH6、約pH6~約pH7、約pH7~約pH8、約pH8~約pH9、約pH4.5~約pH7.5、約pH4~約pH7、約pH5~約pH7、約pH5.5~約pH6.5、または約pH4.5~約pH5.5のpH値範囲で放出する。
【0101】
一部の実施形態では、開示される脂肪酸およびその任意の医薬組成物は、局所、非経口、経口、肺、気管内、鼻腔内、経皮、または十二指腸内を含む1つまたはいくつかの経路によって投与され得る。非経口投与には、皮下注射、膵臓内投与、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内注射または注入技術が含まれる。例えば、脂肪酸は、被験体に皮下投与され得る。別の例では、脂肪酸は、被験体に経口投与され得る。別の例では、脂肪酸は、胃腸管系、または胃腸管系の特定の領域(例えば、回腸、結腸または直腸)に、非経口投与によって直接的に投与され得る。
【0102】
本明細書に開示されるものなどの脂肪酸を含有する医薬組成物は、単位剤形で提示することができ、任意の適切な方法によって調製することができる。医薬組成物は、その所期の投与経路と適合するように製剤化されるべきである。有用な製剤は、薬学分野で周知の方法によって調製することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Publishing Company、1990年)参照。
【0103】
医薬製剤は、例えば、無菌である。滅菌は、例えば、無菌濾過膜を介する濾過によって達成することができる。組成物が凍結乾燥される場合、濾過滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後に実施することができる。
【0104】
非経口投与
本開示の医薬組成物は、非経口投与のために製剤化することができ、例えば静脈内、筋肉内、皮下、病巣内、または腹腔内経路を介する注射のために製剤化することができる。脂肪酸を含有する水性組成物、例えば水性医薬組成物の調製は、本開示に照らして当業者に公知となろう。典型的に、このような組成物は、注射剤として、液体溶液または懸濁液として調製することができる。また、注射前に液体を添加して溶液または懸濁液を調製するために使用するのに適した固体形態を調製することができ、その調製物は、乳化されていてもよい。
【0105】
注射用の使用に適した医薬形態には、無菌水性溶液または分散物;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および注入可能な無菌溶液または分散物の即時調製のための無菌散剤が含まれる。あらゆる場合、その形態は、無菌でなければならず、注射針を容易に通過できる程度に流体でなければならない。その形態は、製造および保存条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0106】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製され得る。また分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物中で、ならびに油中で調製することができる。さらに、無菌固定油を、溶媒または懸濁化媒体として用いることができる。この目的では、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含めた任意の無刺激性の固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に(治療剤としてのそれらの使用の域を超えて)使用され得る。無菌注射可能調製物はまた、非中毒性の非経口で許容される希釈剤もしくは溶媒中の無菌で注射可能な溶液、懸濁物またはエマルジョン(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液)であり得る。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、米国薬局方のリンゲル溶液、および等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。特定の実施形態では、脂肪酸は、1%(w/v)カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび0.1%(v/v)TWEEN(商標)80を含むキャリア流体に懸濁させることができる。これらの調製物は、保存および使用の通常条件下では、微生物の成長を防止するための保存剤を含有する。
【0107】
注射可能な調製物、例えば、注入可能な無菌水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、公知の技術に従って製剤化することができる。一般に、分散物は、滅菌された様々な活性成分を、基本的な分散媒および先に列挙したものの中から必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。本開示の注入可能な無菌溶液は、脂肪酸を、必要に応じて先に列挙したその他の様々な成分と共に、必要量の適切な溶媒に組み込んだ後、濾過滅菌することによって調製することができる。注入可能な無菌溶液を調製するための無菌散剤の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、それらによって、活性成分と任意の追加の所望の成分の予め滅菌濾過した溶液から、その粉末を得る。注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターを介する濾過によって、滅菌され得る。
【0108】
また、筋肉内注射のためにさらにまたは高度に濃縮された溶液の調製が企図される。これに関して、溶媒としてDMSOを使用すると、高濃度の脂肪酸を小さな領域に極めて急速に浸透させ、送達できるので、DMSOの使用が好ましい。
【0109】
このような溶液に使用するのに適した防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、チメロサール等が含まれる。適切な緩衝液には、約pH6~pH8、例えば約pH7~pH7.5のpHを維持するのに十分な量の、ホウ酸、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム10、酢酸ナトリウム、重リン酸ナトリウム等が含まれる。適切な張度剤(tonicity agent)は、デキストラン40、デキストラン70、ブドウ糖、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウム等であり、したがって、溶液の塩化ナトリウム当量は、0.9%プラスまたはマイナス0.2%の範囲である。適切な抗酸化剤および安定剤には、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウム、チオ尿素等が含まれる。適切な湿潤剤および清澄剤には、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282およびチロキサポールが含まれる。適切な増粘剤には、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ワセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース等が含まれる。
【0110】
経口投与
一部の実施形態では、脂肪酸の経口送達に適した組成物、例えば腸溶コーティング、例えば胃内抵抗性コーティングを含み、したがって組成物によって、脂肪酸を、例えば患者の胃腸管に送達することができる錠剤が本明細書に提供される。例えば、このような投与は、患者の胃腸管の罹患部分に、脂肪酸を実質的に局所的に直接適用して局所効果をもたらし得る。このような投与は、一部の実施形態では、脂肪酸の望ましくない全身吸収を実質的に回避することができる。
【0111】
例えば、脂肪酸、例えば単離された天然に存在する脂肪酸、例えばトランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、または1つもしくは複数の共役リノール酸の混合物、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む顆粒(例えば、顆粒から少なくとも部分的に形成される)を含む、経口投与のための錠剤が提供される。このような錠剤は、腸溶コーティングでコーティングされ得る。本明細書に提供される錠剤には、薬学的に許容される賦形剤、例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、および/または滑沢剤、ならびに着色剤、放出剤(release agent)、コーティング剤、甘味剤、香味剤(flavoring)、例えばウィンターグリーン、オレンジ、キシリトール、ソルビトール、フルクトース、およびマルトデキストリン、ならびに賦香剤(perfuming agent)、防腐剤および/または抗酸化剤が含まれ得る。
【0112】
一部の実施形態では、提供される医薬製剤は、脂肪酸、例えば単離された天然に存在する脂肪酸、例えばトランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、または1つもしくは複数の共役リノール酸の混合物、および薬学的に許容される塩、例えば開示される脂肪酸、例えば単離された天然に存在する脂肪酸、例えばトランス-10,シス-12共役リノール酸異性体、シス-9,トランス-11共役リノール酸異性体、または1つもしくは複数の共役リノール酸の混合物、および薬学的に許容される充填剤を含む粒内相を含む。例えば、開示される脂肪酸および充填剤は、任意選択で他の賦形剤と共に全体としてブレンドし、顆粒に形成することができる。一部の実施形態では、顆粒内相は、湿潤造粒を使用して形成することができ、例えば液体(例えば、水)を、ブレンドされた脂肪酸化合物および充填剤に添加し、次にその組合せを乾燥させ、製粉し、かつ/または篩にかけて顆粒を生成する。当業者であれば、顆粒内相を得るために他のプロセスを使用できることを理解されよう。
【0113】
一部の実施形態では、提供される製剤は、顆粒外相を含み、この顆粒外相は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含むことができ、顆粒内相とブレンドして開示の製剤を形成することができる。
【0114】
開示の製剤は、充填剤を含む顆粒内相を含むことができる。例示的な充填剤として、それらに限定されるものではないが、セルロース、ゼラチン、リン酸カルシウム、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、微結晶性セルロース、ペクチン、ポリアクリレート、ブドウ糖、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、部分的にアルファ化されたデンプン、炭酸カルシウム、およびそれらの組合せを含む他のものが挙げられる。
【0115】
一部の実施形態では、開示の製剤は、結合剤を含む、顆粒内相および/または顆粒外相を含むことができ、この結合剤は一般に、医薬製剤の成分を一緒に保持するように機能することができる。本開示の例示的な結合剤として、それらに限定されるものではないが、デンプン、糖、セルロースまたは改変セルロース、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ラクトース、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、糖アルコール、およびそれらの組合せを含む他のものを挙げることができる。
【0116】
開示の製剤(例えば、顆粒内相および/または顆粒外相を含むもの)は、崩壊剤、例えばそれらに限定されるものではないが、デンプン、セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギネート、トウモロコシデンプン、クロスカルメロース(crosmellose)ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、アカシア、およびそれらの組合せを含む他のものを含み得る。例えば、顆粒内相および/または顆粒外相は、崩壊剤を含み得る。
【0117】
一部の実施形態では、提供される製剤は、本明細書に記載の脂肪酸、ならびにマンニトール、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびデンプングリコール酸ナトリウムまたはそれらの組合せから選択される賦形剤を含む顆粒内相と、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムまたはそれらの混合物の1つまたは複数を含む顆粒外相とを含む。
【0118】
一部の実施形態では、提供される製剤は、滑沢剤を含むことができ、例えば顆粒外相は、滑沢剤を含有することができる。滑沢剤には、それらに限定されるものではないが、タルク、シリカ、脂肪、ステアリン、ステアリン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸金属塩(metallic stearate)、水素化植物油、トウモロコシデンプン、安息香酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、酢酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、タルク、およびステアリン酸が含まれる。
【0119】
一部の実施形態では、医薬製剤は、腸溶コーティング(例えば、親油性コーティング)を含む。一般に、腸溶コーティングは、薬物が消化管に沿って吸収される位置を制御する、経口薬物適用のためのバリアを作成する。腸溶コーティングは、pHに従って異なる速度で崩壊するポリマーを含むことができる。腸溶コーティングは、例えば、酢酸フタル酸セルロース、メチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、酢酸コハク酸セルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、エチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマータイプC、ポリ酢酸ビニル-フタレート、および酢酸フタル酸セルロースを含むことができる。
【0120】
例示的な腸溶コーティングとして、Opadry(登録商標)AMB、Acryl-EZE(登録商標)、Eudragit(登録商標)グレードが挙げられる。一部の実施形態では、腸溶コーティングは、錠剤の約5重量%~約10重量%、約5重量%~約20重量%、8~約15重量%、約8重量%~約20重量%、約10重量%~約20重量%、または約12~約20重量%、または約18重量%を構成し得る。例えば、腸溶コーティングは、エチルアクリレート-メタクリル酸コポリマーを含むことができる。
【0121】
例えば、本明細書に提供される一部の実施形態では、約0.5重量%~約70重量%、例えば約0.5重量%~約10重量%、または約1重量%~約20重量%の脂肪酸または薬学的に許容されるその塩を含むまたはそれから本質的になる錠剤が提供される。このような錠剤は、例えば約0.5重量%~約60重量%のマンニトール、例えば約30重量%~約50重量%のマンニトール、例えば約40重量%のマンニトール、および/または約20重量%~約40重量%の微結晶性セルロース、もしくは約10重量%~約30重量%の微結晶性セルロースを含むことができる。例えば、開示の錠剤は、約30重量%~約60重量%、例えば約45重量%~約65重量%、あるいは約5~約10重量%の脂肪酸、約30重量%~約50重量%、あるいは約5重量%~約15重量%のマンニトール、約5重量%~約15重量%の微結晶性セルロース、約0重量%~約4重量%、または約1重量%~約7重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、および約0重量%~約4重量%、例えば約2重量%~約4重量%デンプングリコール酸ナトリウムを含む顆粒内相を含み得る。
【0122】
別の実施形態では、脂肪酸を経口投与するための医薬錠剤製剤は、脂肪酸または薬学的に許容されるその塩(例えばナトリウム塩)、および薬学的に許容される充填剤を含む顆粒内相を含み、崩壊剤などの薬学的に許容される賦形剤を含み得る顆粒外相を含むこともできる。顆粒外相は、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、およびそれらの混合物から選択される構成成分を含むことができる。また、医薬組成物は、また、錠剤に対して約12重量%~20重量%の腸溶コーティングを含むことができる。例えば、経口で使用するための薬学的に許容される錠剤は、約0.5重量%~10重量%の開示される脂肪酸(例えば、CLA)または薬学的に許容されるその塩、約30重量%~50重量%のマンニトール、約10重量%~30重量%の微結晶性セルロース、およびエチルアクリレート-メタクリル酸コポリマーを含む腸溶コーティングを含むことができる。
【0123】
別の例では、経口で使用するための薬学的に許容される錠剤は、約5~約10重量%の脂肪酸(例えば、CLA)または薬学的に許容されるその塩、約40重量%のマンニトール、約8重量%の微結晶性セルロース、約5重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethyl cellulose)、および約2重量%のデンプングリコール酸ナトリウムを含む顆粒内相、約17重量%の微結晶性セルロース、約2重量%のデンプングリコール酸ナトリウム、約0.4重量%のステアリン酸マグネシウムを含む顆粒外相、ならびにエチルアクリレート-メタクリル酸コポリマーを含む、錠剤に被せる腸溶コーティングを含むことができる。
【0124】
一部の実施形態では、医薬組成物は、約13重量%または約15重量%、16重量%、17重量%または18重量%を構成する腸溶コーティング、例えばAcyrlEZE(登録商標)を含有することができる(例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるPCT公開WO2010/054826参照)。
【0125】
コーティングが溶解し、活性成分が放出される点での速度は、その溶解速度である。一実施形態では、錠剤は、例えばUSP/EPタイプ2装置(パドル)により100rpmで、pH7.2を有するリン酸緩衝液中37℃で試験した場合、約120分~約240分後、例えば180分後に約50%~約100%の脂肪酸を放出する溶解プロファイルを有することができる。別の実施形態では、錠剤は、例えばUSP/EPタイプ2装置(パドル)により100rpmで、pH1.0を有する希釈HCl中37℃で試験した場合、120分後に脂肪酸が実質的に全く放出されない溶解プロファイルを有することができる。別の実施形態では、本明細書に提供される錠剤は、例えばUSP/EPタイプ2装置(パドル)により100rpmで、pH6.6を有するリン酸緩衝液中37℃で試験した場合、30分後に約10%~約30%、または約50%以下の脂肪酸を放出する溶解プロファイルを有することができる。
【0126】
製剤、例えば錠剤は、一部の実施形態では、患者に経口投与されると、患者における脂肪酸の最小血漿濃度をもたらし得る。別の実施形態では、開示される製剤は、患者に経口投与されると、患者の結腸または直腸に、例えば患者の罹患部位または疾患部位に局所送達される。
【0127】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、本明細書に開示の疾患、および障害の処置を対象とする少なくとも1つの他の薬剤を投与することをさらに含むことができる。一実施形態では、企図される他の薬剤は、共投与(co-administer)され得る(例えば、逐次または同時に)。
【0128】
企図される薬剤には、グルココルチコイド、細胞分裂阻害薬(cytostatics)、抗体、イムノフィリンに作用する薬剤、インターフェロン、オピオイド、TNF結合タンパク質、ミコフェノール酸塩、および小型の生物学的薬剤を含む免疫抑制剤が含まれる。例えば、企図される免疫抑制剤には、それらに限定されるものではないが、タクロリムス、シクロスポリン、ピメクロリムス、シロリムス、エベロリムス、ミコフェノール酸、フィンゴリモド、デキサメタゾン、フルダラビン、シクロホスファミド、メトトレキセート、アザチオプリン、レフルノミド、テリフルノミド、アナキンラ、抗胸腺細胞グロブリン、抗リンパ球グロブリン、ムロモナブ-CD3、アフツズマブ、リツキシマブ、テプリズマブ、エファリズマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブペゴル、ナタリズマブ、およびエタネルセプトが含まれる。企図される他の薬剤には、抗生物質、止痢薬、緩下剤、鎮痛薬(pain reliever)、他の脂肪酸、鉄補給剤、およびカルシウムまたはビタミンDまたはB-12補給剤が含まれる。
【0129】
投与量および投与頻度
例示的な製剤は、約35mg~約500mgの脂肪酸を含むまたはそれから本質的になる剤形を含む。例えば、約35mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、または250mgの脂肪酸を含む製剤が本明細書に提供される。一実施形態では、製剤は、約40mg、80mg、または160mgの本明細書に記載の脂肪酸を含むことができる。一部の実施形態では、製剤は、少なくとも100μgの脂肪酸を含むことができる。例えば、製剤は、約0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、または25mgの脂肪酸を含むことができる。投与される量は、処置される疾患または適応症のタイプおよび程度、患者の全体的な健康状態および大きさ、脂肪酸のin vivo効力、医薬製剤、ならびに投与経路などの変数に応じて変わることになる。初期投与量は、所望の血液レベルまたは組織レベルを急速に達成するために、上位レベル(upper level)を超えて増加させることができる。あるいは、初期投与量は、最適量より少なくて済む場合があり、投与量は、処置過程中、次第に増加させることができる。ヒトの投与量は、例えば、40mg~160mgになるように設計された従来の第I相用量漸増試験において最適化され得る。投薬頻度は、投与経路、投与量および処置されている疾患などの因子に応じて変わり得る。投薬頻度は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回、1日8回、1日9回、1日10回、1日10回超、週1回、2週間に1回、1カ月に1回および必要に応じてを含み得る。一部の実施形態では、投薬は、7日にわたって1日1回である。
【実施例
【0130】
本明細書に記載される実施形態を、以下の実施例によってさらに例示する。実施例は、単に例示目的で提供され、いかなる方式でも本実施形態の範囲または内容を制限すると解釈されるべきではない。
【0131】
(実施例1:材料および方法)
細胞培養および処理
Caco-2(結腸腺癌)細胞を、20%ウシ胎児血清(FCS、Dutscher、Brumath、France)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(5ml/l)(Invitrogen、Life technologies)および1%非必須アミノ酸(5ml/l)(Invitrogen、Life Technologies)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Invitrogen、Life Technologies、Cergy-Pontoise、France)中で成長させた。すべての細胞株を、制御された5%CO雰囲気下で37℃において、コンフルエントな単層として培養した。
【0132】
細胞への刺激のために、1ウェル当たり1×10個の細胞を、6ウェルプレートに播種した。細胞を同調させるために、16時間にわたって血清を取り除いた後に刺激を与えた。細胞を、GED(Nogra Pharma Ltd、Ireland)、ピオグリタゾン(1μM、Sigma-Aldrich)またはCLA(様々な濃度、Sigma-Aldrich)で処理した。必要な場合には、DMSOビヒクル(Sigma-Aldrich)を対照として使用した。24時間刺激を与えた後に、細胞を無菌PBSで3回洗浄した後、RNAを抽出した。細胞刺激は、マイクロアレイ分析について4回反復して実施し、他の刺激について3回、4回、または6回反復して実施した。
【0133】
RNA抽出
細胞を、1%β-メルカプトエタノールを含有する溶解緩衝液(RA1、Macherey-Nagel)で溶解させた。全RNAを、Nucleospin RNAキット(Macherey-Nagel、Hoerdt、France)で抽出した。リボヌクレアーゼ不活化後、全RNAから、デオキシリボヌクレアーゼ処理によって微量ゲノムDNAを除き、リボヌクレアーゼを含まないDEPC-水中に全RNAを溶離させた。RNAの純度を、UV分光法によって、Nanodrop系(Nyxor Biotech、Paris、France)により220~350nmで評価した。また、マイクロアレイ実験の前に、RNAをAgilent 2100バイオアナライザでプロファイリングした。最小濃度50ng/μlの全RNA 1μgを、マイクロアレイ分析およびqRT-PCR分析で使用した。
【0134】
マイクロアレイ
二色遺伝子発現マイクロアレイを使用して、試料からのcRNAを比較した。44,000の遺伝子をスクリーニングした。試料からのRNAを、まずcDNA(Affinity-Script RT、Agilent)に逆転写し、次にそれを、CTL試料(緑色蛍光)についてはシアニン3-CTPの存在下で、PPAR-γモジュレーター試料(赤色蛍光)についてはシアニン5-CTPの存在下で、T7 RNAポリメラーゼによるcRNAの合成および増幅のための基質として使用した。二標識cRNAを混合し、同じアレイ(G4851A Agilent 8×44K)上でハイブリダイズし、次に走査した(Agilent G2505Bスキャナーを用いた)。蛍光を、レーザー励起後に可視化し、各遺伝子の過剰発現または過小発現状態を得るために2つのフルオロフォアの相対強度を比として表した(GeneSpringソフトウェア(Agilent)を使用した)。この分析を、PPAR-γモジュレーターごとに実施した。
【0135】
定量PCR
目的の遺伝子発現を、対応する逆転写mRNAの定量PCR(qPCR)によって定量した。全RNA 1μgを、High Capacity cDNA Archiveキット(Applied Biosystems)を使用してcDNAに逆転写した。増幅は、ABI PRISM 7000配列検出系(Applied Biosystem)を使用し、Power SYBR(登録商標)Green PCRマスターミックス(Applied Biosystem)を使用して実施した。ヒト転写物ごとのプライマー対を、qPrimerデポーソフトウェア(primerdepot.nci.nih.gov.)を用いて選択した。qPCRシグナルの定量を、ΔCt相対的定量方法を使用し、ヒトおよびラット試料についてはGAPDHを参照遺伝子として使用し、マウス試料についてはβ-アクチンを使用して実施した。値は、対照条件と比較して、mRNAレベルの変動または増加倍率の相対量に関して表した。
【0136】
免疫沈降
LCTタンパク質の発現レベルを、免疫沈降の後、ウェスタンブロッティング分析によって決定した。簡潔には、全タンパク質を、古典的なプロテアーゼ阻害剤カクテルを補充した、25mMのTris-HCl、pH7.6、150mMのNaCl、1%NP-40、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含有するRIPA緩衝液を使用して、Caco-2細胞から抽出した。全タンパク質250μgを、ラクターゼに対する特異的抗体(Santa Cruz)2μgを用いて、終夜4℃で免疫沈降させた。免疫沈降したタンパク質を、タンパク質A/Gアガロースビーズ(Santa Cruz)でコーティングし、4℃で4時間、穏やかに混合した。ビーズをRIPA緩衝液で3回洗浄し、次に12.5%SDS-PAGEによって電気泳動し、ポリフッ化ビニリデン膜(PVDF;Amersham Biosciences)上に移した。膜を、LCTに対する特異的モノクローナル抗体(Cell Signaling;1:1000、終夜4℃)または「10%インプット」ローディングコントロールについてはβ-アクチン(Sigma Aldrich;1:20000、室温で2時間)を用いてイムノブロッティングした。次に膜を、二次セイヨウワサビペルオキシダーゼ-コンジュゲート抗体(抗ウサギ(Jackson ImmunoResearch)および抗マウス(Sigma)、1:10000、室温で1時間)を用いてインキュベートし、最後に、製造者のプロトコール(ECL;Millipore Corporation)に従って、化学発光基質を用いて明らかにした。膜を、オートラジオグラフィーフィルム(Hyperfilm;Amersham Biosciences)に曝露した。
【0137】
ラクターゼ活性
ラクターゼ活性を、グルコースオキシダーゼ方法(Glucose Assay Kit、Sigma)を使用することによって評価した。このラクターゼアッセイは、試料を、ラクトース緩衝溶液(0.1mol/lのマレイン酸Na緩衝液中0.056mol/lのラクトース)とともにインキュベートすることによって、ラクターゼの作用に従って生成されたグルコースの量を測定することに基づく。Caco-2細胞については、ラクターゼ活性は、細胞単層から直接決定した。細胞単層を十分に洗浄した後、ラクトース緩衝液を用いて37℃で1時間インキュベートした。上清を回収し、50μlをグルコースオキシダーゼ試薬100μlで希釈し、37℃で1時間インキュベートした。反応を、HSO100μlで停止させ、分光光度法によって450nmで読み取った。ラクターゼ活性が腸管試料から決定されたら、組織試料を、最初にクラッシュアイス上0.9%NaCl中、ダウンスホモジナイズした。次に、これらのホモジネートを0.9%NaCl(1/500)で希釈し、希釈物50μlを、ラクトース緩衝液とともにインキュベートし、それを使用してラクターゼ活性を決定した。実験ごとに、試料に残存したグルコースに起因するバックグラウンドを、ラクトースを含まない緩衝液中、細胞または細胞抽出物をインキュベートすることによって測定した。
【0138】
グルコースの取込みアッセイ
グルコースの取込みを、グルコースの取込み比色アッセイキット(Sigma-Aldrich)を使用することによって、製造者の指示に従って評価した。簡潔には、Caco-2細胞を、96ウェルプレートに、1ウェル当たり細胞30,000個の密度で播種した。細胞を同調させるために、16時間にわたって血清を取り除いた後に刺激を与えた。細胞を、GED(1mM)またはピオグリタゾン(1μM)で24時間処理した。次に、細胞をPBSで3回洗浄し、2%BSAを含有するKRPH緩衝液100μl(クレブスリンガーリン酸-HEPES(KRPH)緩衝液-20mMのHEPES、5mMのKH2PO4、1mMのMgSO4、1mMのCaCl2、136mMのNaCl、および4.7mMのKCl、pH7.4)とともに40分間インキュベートすることによって、グルコース飢餓状態にした。次に、2-デオキシグルコース10μl(2-DG;10mM)を添加し、20分間インキュベーションを続けた。2-DGは、細胞によって取り込まれ、ヘキソキナーゼによって2-DG6Pにリン酸化され、その2-DG6Pはさらに代謝することができず、細胞内に蓄積する。インキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄し、提供された抽出緩衝液80μlを用いて溶解した。2-DG6Pの量(細胞によるグルコースの取込みに正比例する)は、比色検出アッセイによって、製造者のプロトコールに従って決定した。
【0139】
PPAR-γノックダウン細胞の作製
PPARγノックダウンIECを、pSUPER.retro系(OligoEngine)を使用して得た。ヒトPPARγ mRNAのヌクレオチド105~123に相当するフォワードおよびリバース標的配列(5’-GCCCTTCACTACTGTTGAC-3’(配列番号1))を、pSUPERretroベクター(pRS)のBglII/XhoI制限部位にクローニングして、ShPPAR構築物を得た。ルシフェラーゼ遺伝子を標的とした、配列5’-ACGCTGAGTACTTCGAAAT-3’(配列番号2)を含有する負の対照であるpRSプラスミドも作製した(ShLuc構築物)。両方の構築物を、Amaxa Biosystems製のNucleofector技術を使用して、製造者のプロトコールに従ってCaco-2細胞にトランスフェクトした。安定にトランスフェクトされたクローンを、ピューロマイシン(5μg/ml)を補充した完全培養培地を用いるトランスフェクション後24時間で選択した。PPARγ発現のサイレンシングを、定量RT-PCRおよびウェスタンブロット分析によってチェックした。ShPPAR細胞株およびShLuc細胞株が確立されたら、2.5μg/mlのピューロマイシンを補充した完全培地中で維持した。
【0140】
レポーター遺伝子アッセイ
321bpのゲノムフラグメント(ヒトラクターゼ遺伝子の転写開始部位の上流にある最初の321bpに相当する)を、「Hs-Prom-0.3Kbセンス」および「Hs-Prom-0.3Kbアンチセンス」オリゴヌクレオチドにそれぞれ導入されたXhoIおよびHind III制限部位を使用して、pGL4-Lucレポーターベクターにクローニングした。この構築物および空ベクター対照を、Nucleofector(商標)技術を使用し、Caco-2細胞中で一過性にトランスフェクトした。トランスフェクション後6時間で、細胞を、PPARγモジュレーターで12時間処理した。ルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼアッセイキット(Promega)を使用し、Wallac Victor2(商標)1420マルチラベルカウンター(Perkin Elmer)中で測定した。
【0141】
クロマチン免疫沈降実験
LCT遺伝子プロモーター上へのPPARγの物理的結合を、クロマチン免疫沈降(ChIP)実験によって、100mmの細胞培養ペトリ皿中、1mMのGEDで24時間刺激したCaco-2細胞(5×10個の細胞)において研究した。Caco-2細胞を、無血清培地を添加することによって16時間同調させ、次に、既に記載されているプロトコールを使用して、24時間刺激した。次に、細胞をPBSですすぎ、タンパク質-DNA複合体を、1%PFAを添加することによって室温で30分間固定させた。この結合を、グリシン(0.125M)を添加することによって停止させた。細胞を、冷PBSおよびプロテアーゼ阻害剤(Sigma)の存在下で擦り取ることによって収集した。遠心分離によって得られた細胞ペレットを、SDS緩衝液300μl(1%SDS、10mMのEDTA、50mMのTris-HCl、pH8、プロテアーゼ阻害剤)に取り込み、30秒間超音波処理し(Diagenode、BioruptorUCD200TM-EX)、その後30秒間の静止時間を設けた。免疫沈降ごとに、超音波処理した架橋試料125μLを、IP緩衝液225μl(1%トリトンX-100、150mMのNaCl、2mMのEDTA、20mMのTris-HCl、pH8.1およびプロテアーゼ阻害剤)で希釈し、タンパク質A/Gビーズ40μL(50%スラリータンパク質A/Gセファロース、Clinisciences)およびサケ精子DNA 5μg(Invitrogen)を添加することによって、4時間にわたって事前に清澄にした。複合体を、インキュベーションによって、特異的抗PPARγ抗体(C26H12ウサギモノクローナル抗体、CellSignaling)を用いて、回転させながら終夜4℃で免疫沈降させた。免疫複合体を、タンパク質A/Gセファロース(50%)40μLとサケ精子DNA2μgを添加することによって回収し、4℃で4時間インキュベートした。ビーズを、洗浄緩衝液1(0.1%SDS、1%トリトンX-100、150mMのNaCl、0.1%デオキシコール酸塩、1mMのEGTA、2mMのEDTA、20mMのTris HCl、pH8.0)で2回洗浄し、洗浄緩衝液2(0.1%SDS、1%トリトンX-100、500mMのNaCl、0.1%デオキシコール酸塩、1mMのEGTA、2mMのEDTA、20mMのTris HCl、pH8.0)で2回洗浄し、洗浄緩衝液3(0.25mMのLiCl、0.5%デオキシコール酸塩、0.5%NP40、0.5mMのEGTA、1mMのEDTA、10mMのTris HCl、pH8.0)で1回洗浄し、洗浄緩衝液4(1mMのEDTA、10mMのTris HCl、pH8.0)で3回洗浄した。次に、共免疫沈降させたDNAを、抽出緩衝液150μl(0.1MのNaHCO3、1%SDS)で抽出した。架橋を終夜65℃で逆転させた。次に、DNAを、PCR Clean-upキット(Macherey-Nagel)を使用して精製し、PCRによって分析した。
【0142】
動物実験法
動物実験を、公認のパスツール研究所動物ケア施設(Institut Pasteur de Lille、France;番号B59-35009)で、政府指針(番号2010/63/UE;政令2013-118)および動物倫理委員会の承認に従って実施した。特定病原体除去雄性C57BL/6マウスおよびSprague-Dawleyラットを、Janvier Labs(France)から得た。マウスおよびラットを、特定病原体除去施設内の空調管理された室内で、温度(22±1℃)、湿度(65~70%)を制御し、12時間の明/12時間の暗サイクルにより、それぞれ動物5匹/ケージおよび動物3匹/ケージで収容した。動物に、実験用の標準固形飼料(指定される場合を除く)を与え、オートクレーブした水道水を自由に飲めるように提供した。動物を、研究に入る前に少なくとも1週間順応させた。
【0143】
ラクターゼの発現および活性に対するGEDの効果を評価するために、離乳したC57BL/6マウス(8週齢)および離乳したSprague-Dawleyラット(2カ月齢を超える)を、30mg/kgのGEDまたはビヒクル(0.5%CMC、1%Tween 80)の胃内強制飼養を毎日受ける2つの群に無作為化した。7日間処置した後、動物を安楽死させ、胃腸管を正中線開腹術により取り出した。およそ0.5cmの近位腸組織標本を、さらなる抽出のために急速凍結させた。LCT mRNA発現およびLCT活性を、上記の通り評価した。
【0144】
さらに、ラクトース不耐性と関連する症状に対するGEDの効果を、Ssniff Spezialdiaeten GmbH(Soest、Germany)によって提供されたラクトース富化食を与えた離乳したラットで評価した。動物を、毎日モニターし、秤量し、糞便軟度を評価した。
【0145】
IECに特異的PPAR-γ欠失を有するノックアウトマウス(PPAR-γΔIEC)からの近位腸試料は、Daniel Metzger教授(Institute of Genetics and Molecular and Cellular Biology IGBMC(Inserm/CNRS/University of Strasbourg))によって提供された。
【0146】
SCFA定量
SCFAを、参照によって本明細書に組み込まれるMomose, Y.、ら「Studies on antidiabetic agents X. Synthesis and biological activities of pioglitazone and related compounds.」Chem Pharm Bull(東京)39巻、1440~1445頁(1991年)に記載される通り抽出し、測定した。
【0147】
遺伝子型解析
Caco-2細胞に関するC/T13910およびG/A22018多型のLCT遺伝子型解析を、参照によって本明細書に組み込まれるMastrofrancesco, A.ら「Preclinical studies of a specific PPARgamma modulator in the control of skin inflammation.」J Invest Dermatol 134巻、1001~1011頁(2014年)に記載される通り決定した。
【0148】
統計的分析
すべてのグラフを、GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)およびStatXact v.7.0(Cytel Studio)ソフトウェアを用い、ノンパラメトリックMann-Whitney検定を使用してプロットし、分析した。0.05未満のP値(P<0.05)を、統計的に有意とみなした。
【0149】
(実施例2:PPARγモジュレーターはラクターゼ活性を誘導する)
いかなる遺伝子発現変化がPPARγ活性化によって誘導されたかを決定するために、遺伝子発現データを、刺激しなかったCaco-2細胞およびPPARγ刺激後のCaco-2細胞から収集した。PPARγモジュレーターに曝露した後のCaco-2細胞の遺伝子発現プロファイル変化を、マイクロアレイ分析によって評価した。この研究では、ピオグリタゾン(Pio)およびGED-0507-34-Levo(GED)の2つの異なるPPARγ活性化因子を使用した。ピオグリタゾン(Pio)は、TZD薬物クラスの周知のメンバーである。GEDは、アミノフェニル-アルファ-メトキシプロピオン酸ファミリーの化合物のメンバーである。GEDは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願第14/394,916号に記載されている。分析した44,000の遺伝子の中で、LCT遺伝子は、1mMのGED、30mMのGED、および1μMのPioによる刺激後に上方調節された主な遺伝子であったことが観測された(表1)。LCT遺伝子発現は、刺激しなかった細胞と比較して、1mMのGED(5.28倍±0.55;P<0.05)、30mMのGED(8.28倍±1.7;P<0.05)に対する応答において、およびPio(17.93倍±5.1;P<0.05)によって、有意に増加した。
【表1】
【0150】
LCT遺伝子発現を刺激するGEDおよびピオグリタゾンの能力を、1mMおよび30mMのGED、1μmのPio、ならびに5-アミノサリチル酸(5-ASA)に曝露した後に、定量RT-PCR(qRT-PCR)を使用してCaco-2細胞におけるLCT遺伝子発現を評価することによって確認した。対照レベルと比較したLCT mRNA発現の有意な増加は、1mMのGED(5.76±0.89倍の変化;p<0.0001;図1A)、1μMのPio(14.77±1.37倍の変化;p<0.0001;図1B)、30mMのGED(p=0.0002;図1C)、および30mMの5-ASA(p<0.0001;図1D)への曝露後に観測された。
【0151】
PPARγ活性化因子であるGEDのレベルの増加に応答する、Caco-2細胞におけるLCT mRNA発現レベルの変化も分析した。用量応答分析によって、LCT mRNA遺伝子発現が、刺激しなかった細胞(CTRL)と比較して、0.1mM、1mMおよび30mMのGEDへの曝露(図2A)、または0.1μM、1μMもしくは10μMのPioへの曝露(図2B)後に増加したことが実証された。LCT遺伝子発現の最大平均増加は、1mMのGEDおよび1μMのPioへの曝露後に観測された(図2Aおよび2B)。また、免疫沈降アッセイおよび免疫染色アッセイによって、PPARγ活性化因子が、Caco-2細胞におけるLCTタンパク質発現の増加を誘導したことが実証された(図3、ただしデータ示さず)。これらの結果は、アゴニスト化合物によるPPARγの刺激によって、LCT mRNAおよびタンパク質の発現レベルが、有意に強力に増加したことを実証している。
【0152】
PPARγの刺激によってLCT活性が増加するかどうかを決定するために、Caco-2細胞におけるLCT活性を、PPARγモジュレーターによる刺激後に測定した。LCT活性を、ラクトースとともにCaco-2細胞のインキュベーション後に、Caco-2培養上清におけるグルコース生成率として測定した。1mMのGED(図4A)または1μMのPio(図4B)によってCaco-2細胞を刺激すると、処理しなかった細胞(CTRLまたはDMSO、それぞれ図4Aおよび4B)と比較して、LCT活性がそれぞれ3倍および2倍を超えて有意に増加した(図4Aおよび4B)。LCT活性を、1mMのGED、30mMのGED、または30mMの5-ASAを用いてCaco-2細胞を刺激した後にも評価した。LCT活性の有意な増加が、対照細胞(CTRL)と比較して、1mMまたは30mMのGEDを用いる刺激後に観測されたが、30mMの5-ASAでは観測されなかった(図4C;CTRL対1mMのGED、p<0.005;CTRL対30mMのGED、p<0.005)。これらの結果は、複数のPPARγアゴニストを用いて腸上皮細胞株を刺激すると、LCT活性が有意に増加したことを実証している。
【0153】
1mMのGEDまたは1μMのPioによってCaco-2細胞を刺激すると、LCTの発現および活性の増加が観測されたにもかかわらず、Caco-2細胞のグルコースの取込みは有意に変化しなかった(図5)。二糖分解酵素であるスクラーゼ-イソマルターゼ(SIM)およびマルターゼ-グルコアミラーゼ(MGAM)の発現レベルは、Caco-2細胞におけるLCTの発現レベルよりも低かったことが見出された。さらに、PPARγの刺激により、LCT遺伝子発現は増加したが、PPARγの刺激後に、SIMまたはMGAMの発現の有意な増加は観測されなかった(図6Bおよび6C)。実際、ピオグリタゾンによる刺激は、SIMおよびMGAM発現の両方の有意な低下を誘導した(図6Bおよび6C)。これらの実験は、観察されたPPARγアゴニスト誘導グルコース生成の増加が、LCT以外の二糖分解酵素の発現が増加した結果としては、またはCaco-2細胞によるグルコース取込みが増加した結果としては、起こらなかったことを実証している。むしろこれらの結果は、グルコース生成の任意の増加が、PPARγアゴニストによる刺激後のLCT遺伝子発現の増加から生じたことを強く示唆している。
【0154】
PPARγアゴニストで刺激したCaco-2細胞から得られたマイクロアレイデータの再現性を評価するために、定量PCR(qPCR)研究およびマイクロアレイ研究から得られたデータの相関分析を実施した(図7)。この分析によって、マイクロアレイ(マイクロアレイ倍率)とqPCR(刺激2倍率(Fold Stimulation 2))データの間に有意な相関が存在することが確認された(r=0.754、p=0.0046)。
【0155】
まとめると、これらのデータは、PPARγモジュレーターが、Caco-2細胞においてLCT mRNA発現およびLCT活性を誘導することができたことを実証している。
【0156】
(実施例3:ラクターゼ遺伝子プロモーターの分析)
ヒトLCT遺伝子において特徴付けられた一塩基多型の中でも、C/T13910およびG/A22018の2つの多型が、低ラクターゼ症と関連している。ホモ接合型CC13910およびGG22018遺伝子型は、ラクターゼの非持続性表現型と関連している。興味深いことに、Caco-2細胞の遺伝子型は、CC13910およびGG22018であり、このことは、PPARγモジュレーターが、ラクターゼ非持続性個体においてLCT遺伝子発現を制御でき得ることを示唆している。
【0157】
この可能性を調査するために、LCT遺伝子プロモーターを、PPAR応答エレメント(PPRE)配列の存在について分析した。PPARγは、別の核内受容体RXRとのヘテロ二量体として、DNAに結合することができる。ヘテロ二量体PPARγ-RXRは、PPREを定義付ける、1個のヌクレオチド(直列反復配列1(DR1)として公知である)または2個のヌクレオチド(直列反復配列2(DR2)として公知である)で間隔を空けた短い二量体回文配列(コンセンサス配列AGGTCAまたはTGACCT)を認識する。ヒトLCT遺伝子の転写開始部位から上流にある3,000塩基対のコンピューターによる分析を実施し、PPARγがLCT遺伝子発現を調節できるようにし得る、いくつかの潜在的なDR1およびDR2のPPRE配列の存在が明らかになった(図8および図9)。
【0158】
クロマチン免疫沈降(ChIP)を実施して、これらの推定上のPPRE配列が、PPARγによって結合されるかどうかについて決定した。ChIP分析によって、LCT遺伝子転写開始部位の上流-223bp~-210bpの間およびLCT遺伝子プロモーター内に位置しているDR2が、1mMのGEDによる24時間の刺激後に、Caco-2細胞におけるPPARγによって結合されたことが明らかになった(図10)。PPARγが結合したゲノム配列の定量PCR分析によって、1mMのGEDによる刺激後にこのPPREに結合したPPARγの量が、刺激しなかった細胞と比較して2倍多かったことが実証された(図10)。
【0159】
このPPARγが結合したDR2配列を含有するゲノムフラグメントを、ルシフェラーゼ遺伝子配列の上流でpGL4ベクターにクローニングし(pGL4Luc Prom LCT構築物)、Caco-2細胞においてレポーター遺伝子アッセイで試験した。pGL4Luc Prom LCT構築物をトランスフェクトされた細胞では、ルシフェラーゼ活性は、GEDによる刺激(GED)の存在下で、処理しなかった細胞(CTL;図11)と比較して有意に増加したが、このことは、GEDが、DR2配列へのPPARγの結合を刺激し、ルシフェラーゼ発現増加を誘発したことを示している。このDR2配列が欠如しているルシフェラーゼ構築物(pGL4Luc)を安定にトランスフェクトされた細胞では、GEDによる刺激後に、ルシフェラーゼ活性に有意な変化が観測されなかった。これらの結果は、遺伝子プロモーターにこのDR2が存在することにより、下流遺伝子カセット発現のPPARγ媒介性の活性化が容易になったことを実証しており、このDR2応答エレメントが、そのLCT遺伝子プロモーターにおいて機能的であることを示唆している。
【0160】
(実施例4:PPARγ標的遺伝子としてのラクターゼ遺伝子)
LCT遺伝子発現の制御におけるPPARγの役割および特異性をさらに確認するために、PPAR-γに対する低分子ヘアピン型アンチセンスRNAを安定に発現するCaco-2細胞株(ShPPAR)を構築して、PPAR-γ発現レベルの特異的ノックダウンをもたらした。ShPPAR細胞では、LCT遺伝子転写(図12、左)およびLCT活性(図12、右)は共に、Caco-2のShLuc対照細胞と比較して、それぞれ63%および33%有意に低下した。これらの結果は、PPARγアゴニストへの曝露によって誘導されたLCT mRNA発現およびLCT活性が、PPARγ発現に依存していたことを実証している。
【0161】
LCT mRNA発現を誘導するGEDの能力を、PPAR-γアンタゴニストであるGW9662の存在下で分析した。LCT mRNA発現の増加を誘導するGEDの能力は、GW9662の存在下で著しく低下した(図13)。この結果は、PPARγアゴニストへの曝露によって誘導されたLCT mRNA発現およびLCT活性が、PPARγ活性に依存していたことを実証している。
【0162】
LCT mRNAの発現を、対照マウス(CTRLマウス)およびIECにPPARγの特異的欠失を呈するマウス(PPARγΔIECKOマウス;図14)の近位小腸において分析した。LCT mRNA発現は、CTRL動物と比較して、PPARγΔIECKOマウスの小腸の近位部において有意に低下した(図14)。この結果は、近位小腸におけるLCTの発現が、PPARγ発現に依存していたことを実証している。
【0163】
LCT mRNA発現およびPPARγ mRNA発現は、離乳していない野生型Sprague-Dawleyラットの十二指腸および空腸において、それらの離乳した対応物と比較して有意に増加した(図15A)。PPARγとLCT mRNA発現の増加も、離乳していないラットの十二指腸および空腸において有意に相関していた(図15Bおよび15C)。これらの結果は、PPARγとLCTの発現の増加が、離乳していないラットの近位腸において有意に相関していたことを実証している。
【0164】
GEDに6時間曝露すると、ヒト十二指腸生検の短期間培養物において、やはりラクターゼの発現および活性の有意な増加が誘導された(図16、ただしデータ示さず)。この結果は、PPARγアゴニストへの曝露が、ヒト十二指腸組織におけるLCT発現の有意な増加を刺激したことを実証している。
【0165】
まとめると、これらの結果は、PPARγが、LCT遺伝子発現を制御する非常に重要な因子であることを実証している。
【0166】
LCT遺伝子発現の制御への別のPPAR受容体の潜在的な関与も評価した。特異的PPARαモジュレーターであるフェノフィブレートは、Caco-2細胞におけるLCT活性またはLCT遺伝子転写を誘導し、増加させることができなかった(図17)。さらに、PPARα発現は、ShPPARγ細胞株において、またはPPARγΔIECマウスのIECにおいて修飾されなかったが(データ示さず)、このことは、PPARαがLCT発現を調節する役割を果たさないことを示している。これらの結果は、PPARαの発現および活性化の増加が、複数の実験パラダイムにおいてLCT遺伝子の発現および活性の増加に寄与しなかったことを実証している。
【0167】
PPARγとLCTの関係をin vivoでさらに探索するために、PPARγモジュレーターによるLCT遺伝子発現の潜在的な誘導を、げっ歯類において評価した。簡潔には、30mg/kgのGEDを、離乳したC57BL/6マウスおよびSprague-Dawleyラットに強制飼養によって毎日、7日間投与し、LCT活性およびmRNAレベルの両方を、小腸の近位部で測定した。GEDは、両方の種においてLCTの発現および活性を有意に増加させた(図18A)。これらの結果によって、GEDによる処置がラクトース不耐性と関連する症状を改善できるかどうかの試験に至った。この目的では、LCT発現が欠如しているために自然にLCT非持続性になっている離乳したラットに、ラクトース富化食(総食餌重量の15%または60%)を与えた。等カロリーのラクトース不含食を受けた対照動物と比較して、ラクトース群のラットは、体重が低下し、軟便および下痢を起こした。ラクトース富化食を与えた動物にGEDを強制飼養させた後、糞便軟度は、40%を超えて急速に改善された(図18B)。ラットを4日目に屠殺し、GEDで処置したラットは、処置しなかったラットと比較して盲腸体積の有意な低下を呈した(データ示さず)と共に、ラクトース発酵の盲腸の(ceacal)最終生成物に相当する短鎖脂肪酸(SCFA)の濃度が有意に低下していた(図18C)。これらの結果は、PPARγアゴニストへの曝露が、マウスおよびラットにおけるLCT mRNA発現およびLCT活性の増加を刺激したこと、ならびにPPARγアゴニストへの曝露が、ラクトース富化食と関連する症状を改善したことを実証している。したがって、GEDで処置したラットで得られた糞便軟度が40%~50%改善されたことは、PPARγ活性のモジュレートが、ヒトのラクトース耐性の改善と臨床的に関連し得ることを明らかに示唆している。
【0168】
(実施例5:CLAは腸上皮細胞株におけるラクターゼ遺伝子の発現および活性を誘導する)
LCTの発現および活性をin vitroで誘導する、自然のPPARγモジュレーターであるトランス-10,シス-12共役リノール酸(CLA)異性体の能力を調査した。リノレン酸およびいくつかの他の天然に存在するPPARγアゴニストの構造は、図19Aに提示されている。CLA(1mM)は、1mMのGEDと同じく効率的に、Caco-2細胞におけるLCT遺伝子発現を誘導した(図19B;例えば、1mMのGEDを1mMのCLAと比較されたい)。CLAはまた、100mMまたはそれを超える濃度で、Caco-2細胞におけるLCT活性を有意に増加させ、1mMのCLAは、対照レベルを超えて、1mMのGEDと比較して2倍を超えるLCT活性の増加を誘導した(図19C)。LCTの発現および活性のCLA依存性誘導は、PPARγノックダウン細胞において強力に損なわれた(図20Aおよび20B)。これらの結果は、自然のPPARγアゴニストが、腸上皮細胞株におけるLCTの発現および活性を誘導することができること、ならびに観測されたLCT mRNA発現およびLCT活性の増加が、PPARγ発現に依存していたことを実証している。またこれらの結果は、食物に天然に存在するPPARγモジュレーターが、ラクトース不耐性を管理するのに有望となり得ることを強く示唆している。
【0169】
(実施例6:CLAはラクターゼ遺伝子の発現および活性をin vivoで誘導する)
CLAがLCTの発現および活性をin vivoで誘導するかどうかを決定するために、Sprague Dawleyラットに対照食を与え、カルボキシメチルセルロース(CMC;0.5%)、CLA、またはGEDのいずれかを5日間投与し、その後、PPARγ mRNA、LCT mRNA、およびLCT活性のレベルを測定した。CLAは、200mg/kg/日で経口強制飼養によって投与し、GEDは、30mg/kg/日で経口強制飼養によって投与した(図21A)。
【0170】
GEDおよびCLAの両方の投与によって、十二指腸組織におけるLCT mRNA発現が、CMCを補充した対照食を与えた動物において観測されたレベルと比較して有意に増加した(図21B)。CMCを補充した対照食を与えた動物において観測されたレベルと比較して、CLAではなくGEDの投与後に、空腸組織におけるLCT mRNA発現の有意な増加が観測された(図21C)。CLA投与は、CMCを補充した対照食を与えた動物において観測されたレベルと比較して、空腸および十二指腸の両方におけるPPARγ mRNA発現レベルの有意な増加を誘導した(図21Dおよび21E)。さらに、CMCまたはCLAを与えた動物の十二指腸におけるLCT mRNA発現レベルとPPARγ mRNA発現レベルの誘導の間に、有意な相関が観測された(図22Aおよび22B)。CMCまたはCLAを与えた動物の空腸におけるLCT mRNA発現レベルとPPARγ mRNA発現レベルの誘導の間に、有意な相関は観測されなかった(図22Aおよび22B)。これらの結果は、CLAをラットに5日間経口投与すると、十二指腸組織におけるLCT mRNAのレベルおよびPPARγ mRNAのレベルが有意に増加し、空腸組織ではPPARγ mRNAレベルが有意に増加したことを実証している。
【0171】
CLAの経口投与から生じるLCT活性レベルも分析した。GEDおよびCLAの両方の経口投与によって、5日後に、CMCを補充した対照食を与えた動物におけるLCT活性レベルと比較して、十二指腸組織におけるLCT活性が有意に増加した(図22E)。またGEDの経口投与によって、CMCを補充した対照食を与えた動物におけるLCT活性レベルと比較して、空腸組織におけるLCT活性が有意に増加した(図22F)。
【0172】
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解される意味と同じ意味を有する。
【0173】
本記載を通して、組成物およびキットが特別な構成成分を有する、含む(including)もしくは含む(comprising)ものとして記載される場合、またはプロセスおよび方法が特別なステップを有する、含む(including)もしくは含む(comprising)ものとして記載される場合、さらに、列挙されている構成成分から本質的になるもしくはそれからなる本発明の組成物およびキットが存在すること、ならびに列挙されている処理ステップから本質的になるもしくはそれからなる本発明によるプロセスおよび方法が存在することが企図される。
【0174】
本願では、要素または構成成分が、列挙されている要素もしくは構成成分の一覧に含まれ、かつ/またはその一覧から選択されると言われる場合、その要素もしくは構成成分は、列挙されている要素もしくは構成成分のいずれか1つであってよく、またはその要素もしくは構成成分は、列挙されている要素もしくは構成成分の2つもしくはそれよりも多くからなる群から選択され得ることを理解されたい。
【0175】
さらに、本明細書に記載される組成物または方法の要素および/または特徴は、本明細書において明示的であろうと暗示的であろうと、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々なやり方で組み合わせられ得ることを理解されたい。例えば、特定の化合物が言及されている場合、その化合物は、文脈によって別段の理解がされない限り、本発明の組成物の様々な実施形態および/または本発明の方法において使用され得る。換言すれば、本願における実施形態は、明瞭かつ簡潔な適用を記載し、図示できるように記載され、図示されているが、実施形態は、本発明の教示および本発明から逸脱することなく、様々に組み合わせられ、または分離され得ることが企図され、そのように理解されよう。例えば、本明細書に記載され、図示されているあらゆる特徴は、本明細書に記載され、図示されている本発明のあらゆる態様に適用できることを理解されよう。
【0176】
冠詞「a」および「an」は、本開示では、文脈が不適切でない限り、冠詞の文法的目的語の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「1つの要素(an element)」は、1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0177】
「および/または」という用語は、本開示では、別段の指定がない限り「および」あるいは「または」のいずれかを意味するために使用される。
【0178】
「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という表現は、文脈および使用から別段理解されない限り、この表現に後続する列挙されている目的語のそれぞれ、および列挙されている目的語の2つまたはそれよりも多くの様々な組合せを個々に含むと理解されたい。3つまたはそれよりも多く列挙されている目的語に関する「および/または」という表現は、文脈から別段理解されない限り、同じ意味を有すると理解されたい。
【0179】
「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」または「含有する(containing)」という用語の使用は、それらの文法的均等物を含めて、別段具体的に記載されていない限り、または文脈から理解されない限り、一般に無制限かつ非限定的であり、例えば列挙されていない追加の要素またはステップを除外しないと理解されたい。
【0180】
「約」という用語の使用が定量値の前にある場合、本開示はまた、別段具体的に記載されない限り、その特定の定量値自体を含む。
【0181】
例えば、ポリマーの分子量が提供されており、絶対値でない場合、その分子量は、別段指定されない限り、または文脈から理解されない限り、平均分子量であると理解されたい。
【0182】
ステップの順序またはある特定の動作を実施する順序は、本発明が依然として操作可能な限り重要でないことを理解されたい。さらに、2つまたはそれよりも多くのステップまたは動作は、同時に実施され得る。
【0183】
本明細書の様々な箇所で、置換基が、群または範囲により開示される。具体的には、その説明は、このような群および範囲のメンバーのそれぞれおよびすべての個々の副組み合わせを含むことが企図される。例えば、「C1~6アルキル」という用語は、具体的には、C、C、C、C、C、C、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、C~C、およびC~Cアルキルを個々に開示することが企図される。他の例では、0~40の範囲の整数は、具体的には、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、および40を個々に開示することが企図され、1~20の範囲の整数は、具体的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20を個々に開示することが企図される。さらなる例として、「任意選択で1~5個の置換基で置換されている」という句は、具体的には、0個、1個、2個、3個、4個、5個、0~5個、0~4個、0~3個、0~2個、0~1個、1~5個、1~4個、1~3個、1~2個、2~5個、2~4個、2~3個、3~5個、3~4個、および4~5個の置換基を含み得る化学基を個々に開示することが企図されることが挙げられる。
【0184】
本明細書における任意のすべての例、または例示的用語、例えば「など(such as)」または「を含む(including)」の使用は、別段特許請求されていない限り、単に本発明をより良く例示し、本発明の範囲を制限しないことが企図される。本明細書におけるいかなる用語も、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施にとって必須であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0185】
一般的事柄として、百分率が特定されている組成物は、別段の指定がない限り重量によるものである。さらに、ある変数にある定義が伴っていない場合、その変数の以前の定義が優先する。
【0186】
参考文献の援用
本明細書で言及されるあらゆる科学論文、刊行物、および特許文献は、あたかもそれぞれ個々の刊行物または特許が、参照によって具体的に個々に組み込まれるかのように、あらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。矛盾が生じる場合、本明細書の任意の定義を含む本願が優先する。
【0187】
均等物
本発明の具体的な実施形態を論じてきたが、上記の明細書は、例示的なものであり、限定的ではない。本発明の多くの変更形態が、本明細書を見直すことにより当業者に明らかとなろう。本発明の完全な範囲は、特許請求の範囲を、それらの均等物の全範囲と共に参照し、本明細書を、このような変更形態と共に参照することによって決定されるべきである。
【0188】
別段指定されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件等を表すあらゆる数値は、あらゆる場合において、「約」という用語によって修飾されると理解されたい。したがって、そうでないと示されない限り、本明細書および添付の特許請求に記載される数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
【配列表】
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