(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】サルベージキメラ抗原受容体システム
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220817BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220817BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220817BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220817BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20220817BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20220817BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220817BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20220817BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220817BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220817BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220817BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220817BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220817BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220817BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220817BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20220817BHJP
A61K 35/26 20150101ALI20220817BHJP
A61K 35/51 20150101ALI20220817BHJP
A61K 35/42 20150101ALI20220817BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220817BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20220817BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
C07K19/00
C07K16/18
C07K14/725
C12N15/867 Z
C12N5/10
C07K14/705
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K31/7088
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K35/17 A
A61K35/28
A61K35/26
A61K35/51
A61K35/42
A61K35/12
A61K35/15 Z
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2018554036
(86)(22)【出願日】2017-04-14
(86)【国際出願番号】 US2017027606
(87)【国際公開番号】W WO2017180993
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-03-02
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521438515
【氏名又は名称】2セブンティ バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レオン, ワイ-ハン
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/017214(WO,A1)
【文献】特表2016-508518(JP,A)
【文献】国際公開第2015/142661(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルベージキメラ抗原受容体(CAR)システムであって、
I)a)
i)第1の抗原に結合する細胞外抗原結合ドメイン、
ii)多量体化ドメイン、
iii)膜貫通ドメイン、
iv)1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および
v)一次シグナル伝達ドメイン
を含む、サルベージCARを含むCAR T細胞と;
b)
i)第2の抗原に結合する抗原結合ドメイン、および
ii)多量体化ドメイン
を含む、二量体化可能なサルベージ受容体と;
c)架橋因子であって、前記多量体化ドメインと会合し、前記多量体化ドメインの間に配置される、架橋因子と、
を含み;
前記第1の抗原が前記第2の抗原とは異なる;
II)a)
i)細胞外抗原結合ドメイン、
ii)多量体化ドメイン、
iii)膜貫通ドメイン、
iv)1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および
v)一次シグナル伝達ドメイン
を含む、第1の抗原に結合するサルベージCARを含むCAR T細胞と;
b)
i)抗原結合ドメイン、および
ii)多量体化ドメイン
を含む、第2の抗原に結合する二量体化可能なサルベージ受容体と
を含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体が、架橋因子に結合しており、前記架橋因子が、前記多量体化ドメインと会合し、前記多量体化ドメインの間に配置され;
前記第1の抗原が前記第2の抗原とは異なる、あるいは
III)a)第1の抗原に結合するサルベージCAR、および、第2の抗原に結合する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞と;
b)架橋因子と
を含み、前記サルベージCARが、
i)細胞外抗原結合ドメイン、
ii)多量体化ドメイン、
iii)膜貫通ドメイン、
iv)1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および
v)一次シグナル伝達ドメイン
を含み、前記サルベージ受容体が、
i)抗原結合ドメイン、および
ii)多量体化ドメイン
を含み、前記架橋因子が、前記多量体化ドメインと会合し、前記多量体化ドメインの間に配置され;そして
前記第1の抗原が前記第2の抗原とは異なる、
サルベージキメラ抗原受容体(CAR)システム。
【請求項2】
(a)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、抗体またはその抗原結合断片を含む、
(b)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、ラクダIg、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)からなる群から選択される抗体またはその抗原結合断片を含む、
(c)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、scFvである、
(d)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、アルファ葉酸受容体、5T4、α
vβ
6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される抗原に結合する、
(e)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、BCMA、CD19、CSPG4、PSCA、ROR1、およびTAG72からなる群から選択される抗原に結合する、
(f)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される抗原に結合する、
(g)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、BCMAまたはCD19に結合する、
(h)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、がん細胞上に発現する抗原に結合する、
(i)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、固形がん細胞上に発現する抗原に結合する、
(j)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、液性がん細胞上に発現する抗原に結合する、
(k)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、悪性B細胞上に発現する抗原に結合する、あるいは
(l)前記サルベージCARの前記細胞外抗原結合ドメインが、悪性形質細胞上に発現する抗原に結合する、
請求項1に記載のサルベージCARシステム。
【請求項3】
前記サルベージCARの前記多量体化ドメインが、
(a)FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、カルシニューリンポリペプチド、サイクロフィリンポリペプチド、細菌DHFRポリペプチド、PYL1ポリペプチド、ABI1ポリペプチド、GIB1ポリペプチド、GAIポリペプチド、およびそれらのバリアント、
(b)FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、およびそのバリアント、あるいは
(c)FKBP12ポリペプチドおよびFRB T2098Lポリペプチド
からなる群から選択される、請求項1または2に記載のサルベージCARシステム。
【請求項4】
前記サルベージCARの前記膜貫通ドメインが、
(a)T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD1からなる群から選択されるポリペプチド、
(b)CD8α、CD4、CD45、PD1、およびCD152からなる群から選択されるポリペプチド、あるいは
(c)CD8αポリペプチド
から単離される、請求項1~3のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
【請求項5】
(a)前記サルベージCARの前記1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインが、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含む、
(b)前記サルベージCARの前記1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインが、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、およびZAP70からなる群から選択される共刺激分子から単離される、
(c)前記サルベージCARの前記1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28、CD134、CD137、およびCD278からなる群から選択される共刺激分子から単離される、
(d)前記サルベージCARの前記1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインが、CD137から単離される、
(e)前記サルベージCARの前記一次シグナル伝達ドメインが、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dからなる群から選択されるポリペプチドから単離される、あるいは
(f)前記サルベージCARの前記一次シグナル伝達ドメインが、CD3ζから単離される、
請求項1~4のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
【請求項6】
前記サルベージ受容体が、
(a)シグナルペプチド、抗BCMA scFv、リンカー、FRB(T82L)多量体化ドメイン、CD8αヒンジおよび膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む、あるいは
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載のサルベージCARシステム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のサルベージCARシステムであって、前記二量体
化可能なサルベージ受容体が、
(a)アンカードメイン;
(b)リンカー;
(c)シグナルペプチドおよびリンカー;
(d)リンカー、ヒンジドメイン、およびアンカードメイン;または
(e)シグナルペプチド、リンカー、ヒンジドメイン、およびアンカードメイン
をさらに含む、サルベージCARシステム。
【請求項8】
(a)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、抗体またはその抗原結合断片を含む、
(b)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、ラクダIg、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)からなる群から選択される抗体またはその抗原結合断片を含む、
(c)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、scFvである、
(d)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、アルファ葉酸受容体、5T4、α
vβ
6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される抗原に結合する、
(e)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、BCMA、CD19、CSPG4、PSCA、ROR1、およびTAG72からなる群から選択される抗原に結合する、
(f)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される抗原に結合する、
(g)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、BCMAまたはCD19に結合する、
(h)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、がん細胞上に発現する抗原に結合する、
(i)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、固形がん細胞上に発現する抗原に結合する、
(j)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、液性がん細胞上に発現する抗原に結合する、
(k)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、悪性B細胞上に発現する抗原に結合する、あるいは
(l)前記二量体化可能なサルベージ受容体の前記抗原結合ドメインが、悪性形質細胞上に発現する抗原に結合する、
請求項1~7のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
【請求項9】
(a)前記二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインが、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、カルシニューリンポリペプチド、サイクロフィリンポリペプチド、細菌DHFRポリペプチド、PYL1ポリペプチド、ABI1ポリペプチド、GIB1ポリペプチド、GAIポリペプチド、およびそれらのバリアントからなる群から選択される、
(b)前記二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインが、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、およびそのバリアントからなる群から選択される、
(c)前記二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインが、FKBP12ポリペプチドおよびFRB T2098Lポリペプチドからなる群から選択される、
(d)前記二量体化可能なサルベージ受容体が、CD4ヒンジ、CD8αヒンジ、PD-1ヒンジ、およびCD152ヒンジから本質的になる群から選択されるヒンジドメインを含む、
(e)前記二量体化可能なサルベージ受容体が、GPI分子および膜貫通ドメインからなる群から選択されるアンカードメインを含む、あるいは
(f)前記二量体化可能なサルベージ受容体が、前記T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD1からなる群から選択されるポリペプチドの膜貫通領域を含むアンカードメインを含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
【請求項10】
前記二量体化可能なサルベージ受容体が、
(a)シグナルペプチド、抗CD19 scFv、リンカー、およびFKBP12多量体化ドメインを含む、
(b)シグナルペプチド、抗CD19 scFv、リンカー、および架橋因子に結合したFKBP12多量体化ドメインを含む、
(c)配列番号3~5のうちのいずれか1つに記載のポリペプチド配列を含む、あるいは
(d)架橋因子に結合した、配列番号3~5のうちのいずれか1つに記載のポリペプチド配列を含む、
請求項1に記載のサルベージCARシステム。
【請求項11】
前記CAR T細胞が、前記サルベージCARまたは二量体化可能なサルベージ受容体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む、請求項1~1
0のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
【請求項12】
(a)前記ベクターが、発現ベクターである、
(b)前記ベクターが、エピソームベクターである、
(c)前記ベクターが、ウイルスベクターである、
(d)前記ベクターが、レトロウイルスベクターである、あるいは
(e)前記ベクターが、レンチウイルスベクターである、
請求項11に記載のサルベージCARシステム。
【請求項13】
前記架橋因子が、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムスおよびゾタロリムスからなる群より選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
【請求項14】
前記細胞が、
(a)造血細胞である、
(b)免疫エフェクター細胞である、
(c)CD3
+、CD4
+、CD8
+、またはこれらの組み合わせである、
(d)T細胞である、あるいは
(e)細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である、
請求項1~13のいずれか1項に記載の
サルベージCARシステム。
【請求項15】
(a)請求項1~1
4のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム
の前記CAR T細胞を含む、あるいは
(b)生理学的に許容される担体、および請求項1~1
4のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム
の前記CAR T細胞を含む、
組成物
であって、
前記CAR T細胞が、第1の抗原に結合するサルベージCARと、第2の抗原に結合する二量体化可能なサルベージ受容体とを含み、
前記サルベージCARが、
i)細胞外抗原結合ドメイン、
ii)多量体化ドメイン、
iii)膜貫通ドメイン、
iv)1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および
v)一次シグナル伝達ドメイン
を含み、
前記サルベージ受容体が、
i)抗原結合ドメイン、および
ii)多量体化ドメイン
を含み、
前記第1の抗原が前記第2の抗原とは異なる、
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2016年6月29日出願の米国仮特許出願第62/356,335号、2016年4月14日出願の米国仮特許出願第62/322,634号の優先権を主張するものであり、これらの出願の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する記載
本出願に関連する配列表は、ハードコピーの代わりにテキスト形式で提供され、ここに参照することによって本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称はBLBD_068_02WO_ST25.txtである。テキストファイルは42KBであり、2017年4月14日に作成され、本明細書の出願と同時に、EFS-Webを介して電子的に提出される。
【背景技術】
【0003】
本発明は、がんを治療するための改善された組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、がんを治療するための細胞免疫療法組成物およびそれを使用する方法に関する。
【0004】
がんは、世界中で深刻な健康問題である。2008~2010年の割合に基づくと、現在出生している男女のうちの40.76%が、生存期間中のある時点である種のがんであると診断されるであろう。男性の20.37%は、女性においての15.30%と比較して、50歳~70歳の間にがんを発症するであろう。2010年1月1日時点で、米国では、がん歴を有し、生存している人々は、およそ13,027,914人であり、男性が6,078,974人であり、女性が6,948,940人であった。米国では、1,660,290人の人々(男性854,790人および女性805,500人)が、全ての部位のがんであると診断され、580,350人の人々が、2013年には、全ての部位のがんで死亡するであろう。Howlader et al.2013。
【0005】
がんの検出、予防、および治療において進歩してきたが、万人に成功する治療戦略は依然として実現していない。様々な形態へのがん治療の応答は、混合している。化学療法および放射線療法を含むがんを治療する従来の方法は、毒性副作用により有用性を制限されていた。治療抗体による免疫療法はまた、一部分において、不良な薬物動態プロファイル、糸球体での血清プロテアーゼおよび濾過による抗体の迅速排除、ならびに腫瘍部位への限られた浸透および腫瘍細胞上の標的抗原の発現レベルのため、限られた成功しか提供していない。キメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子改変された細胞を使用する試みもまた、CAR T細胞の不良なインビボ増殖、注入後の細胞の迅速な消失、期待外れの臨床活性、および再発性または難治性がんのために、限られた成功のみ満たした。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は概して、T細胞療法をもたらすための改善されたベクターおよびそれを使用する方法を提供する。より具体的には、本発明は、サルベージCAR、二量体化可能なサルベージ受容体、ならびにがん、ならびに特に好ましい実施形態において、再発性または難治性がんの治療、予防、または寛解におけるその使用を提供する。
【0007】
様々な実施形態において、細胞外抗原結合ドメイン、多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを含む、サルベージキメラ抗原受容体(CAR)が、提供される。
【0008】
様々な実施形態において、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、多量体化ドメイン、1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを含む、サルベージキメラ抗原受容体(CAR)が、提供される。
【0009】
特定の実施形態において、サルベージCARは、抗体またはその抗原結合断片を含む細胞外抗原結合ドメインをさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、サルベージCARは、ラクダIg、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)からなる群から選択される抗体または抗原結合断片をさらに含む。
【0011】
さらなる実施形態において、抗体または抗原結合断片は、scFvである。
【0012】
ある特定の実施形態において、細胞外抗原結合ドメインは、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される抗原に結合する。
【0013】
特定の実施形態において、サルベージCARは、BCMA、CD19、CSPG4、PSCA、ROR1、およびTAG72からなる群から選択される抗原に結合する細胞外抗原結合ドメインをさらに含む。
【0014】
特定の実施形態において、サルベージCARは、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される抗原に結合する細胞外抗原結合ドメインをさらに含む。
【0015】
ある特定の実施形態において、細胞外抗原結合ドメインは、BCMAまたはCD19に結合する。
【0016】
いくつかの実施形態において、細胞外抗原結合ドメインは、癌細胞上に発現する抗原に結合する。
【0017】
さらなる実施形態において、細胞外抗原結合ドメインは、固形癌細胞上に発現する抗原に結合する。
【0018】
いくつかの実施形態において、細胞外抗原結合ドメインは、液性癌細胞上に発現する抗原に結合する。
【0019】
特定の実施形態において、サルベージCARは、悪性B細胞上に発現する抗原に結合する細胞外抗原結合ドメインをさらに含む。
【0020】
さらなる実施形態において、細胞外抗原結合ドメインは、悪性形質細胞上に発現する抗原に結合する。
【0021】
特定の実施形態において、サルベージCARは、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、カルシニューリンポリペプチド、サイクロフィリンポリペプチド、細菌DHFRポリペプチド、PYL1ポリペプチド、ABI1ポリペプチド、GIB1ポリペプチド、GAIポリペプチド、およびそれらのバリアントからなる群から選択される多量体化ドメインをさらに含む。
【0022】
特定の実施形態において、サルベージCARは、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、およびそのバリアントからなる群から選択される多量体化ドメインをさらに含む。
【0023】
さらなる実施形態において、多量体化ドメインは、FKBP12ポリペプチドおよびFRB T2098Lポリペプチドからなる群から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD1からなる群から選択されるポリペプチドから単離される。
【0025】
特定の実施形態において、サルベージCARは、CD8α、CD4、CD45、PD1、およびCD152からなる群から選択されるポリペプチドから単離される膜貫通ドメインをさらに含む。
【0026】
ある特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、CD8αから単離される。
【0027】
ある特定の実施形態において、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含む。
【0028】
特定の実施形態において、サルベージCARは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、およびZAP70からなる群から選択される共刺激分子から単離される1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、CD134、CD137、およびCD278からなる群から選択される共刺激分子から単離される。
【0030】
さらなる実施形態において、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD137から単離される。
【0031】
さらなる実施形態において、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dからなる群から選択されるポリペプチドから単離される一次シグナル伝達ドメイン。
【0032】
特定の実施形態において、CD3ζから単離される一次シグナル伝達ドメイン。
【0033】
いくつかの実施形態において、サルベージCARは、ヒンジ領域ポリペプチドをさらに含む。
【0034】
特定の実施形態において、ヒンジ領域ポリペプチドは、CD8αのヒンジ領域を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、サルベージCARは、スペーサー領域をさらに含む。
【0036】
特定の実施形態において、サルベージCARは、シグナルペプチドをさらに含む。
【0037】
さらなる実施形態において、シグナルペプチドは、IgG1重鎖シグナルポリペプチド、CD8αシグナルポリペプチド、またはヒトGM-CSF受容体アルファシグナルポリペプチドを含む。
【0038】
様々な実施形態において、シグナルペプチド、抗BCMA scFv、リンカー、FRB(T82L)多量体化ドメイン、CD8αヒンジおよび膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含むサルベージCARが、提供される。
【0039】
様々な実施形態において、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むサルベージCARが提供される。
【0040】
様々な実施形態において、抗原結合ドメインおよび多量体化ドメインを含む、二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。
【0041】
様々な他の実施形態において、a)抗原結合ドメイン、多量体化ドメイン、およびアンカードメインを含む、二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。
【0042】
様々な特定の実施形態において、抗原結合ドメイン、リンカー、および多量体化ドメインから本質的になる、二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。
【0043】
様々なある特定の実施形態において、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、リンカー、および多量体化ドメインから本質的になる、二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。
【0044】
様々な追加の実施形態において、抗原結合ドメイン、リンカー、多量体化ドメイン、ヒンジドメイン、およびアンカードメインから本質的になる、二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。
【0045】
様々なさらなる実施形態において、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、リンカー、多量体化ドメイン、ヒンジドメイン、およびアンカードメインから本質的になる、二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。
【0046】
さらなる実施形態において、抗原結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0047】
特定の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、ラクダIg、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)からなる群から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合断片は、scFvである。
【0049】
さらなる実施形態において、抗原結合ドメインは、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される抗原に結合する。
【0050】
ある特定の実施形態において、抗原結合ドメインは、BCMA、CD19、CSPG4、PSCA、ROR1、およびTAG72からなる群から選択される抗原に結合する。
【0051】
特定の実施形態において、抗原結合ドメインは、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される抗原に結合する。
【0052】
いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、BCMAまたはCD19に結合する。
【0053】
いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、がん細胞上に発現する抗原に結合する。
【0054】
さらなる実施形態において、抗原結合ドメインは、固形がん細胞上に発現する抗原に結合する。
【0055】
特定の実施形態において、抗原結合ドメインは、液性癌細胞上に発現する抗原に結合する。
【0056】
ある特定の実施形態において、抗原結合ドメインは、悪性B細胞上に発現する抗原に結合する。
【0057】
特定の実施形態において、抗原結合ドメインは、悪性形質細胞上に発現する抗原に結合する。
【0058】
特定の実施形態において、多量体化ドメインは、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、カルシニューリンポリペプチド、サイクロフィリンポリペプチド、細菌DHFRポリペプチド、PYL1ポリペプチド、ABI1ポリペプチド、GIB1ポリペプチド、GAIポリペプチド、およびそれらのバリアントからなる群から選択される。
【0059】
いくつかの実施形態において、多量体化ドメインは、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、およびそのバリアントからなる群から選択される。
【0060】
さらなる実施形態において、多量体化ドメインは、FKBP12ポリペプチドおよびFRB T2098Lポリペプチドからなる群から選択される。
【0061】
さらなる実施形態において、ヒンジドメインは、CD4ヒンジ、CD8αヒンジ、PD-1ヒンジ、およびCD152ヒンジから本質的になる群から選択される。
【0062】
特定の実施形態において、アンカードメインは、GPI分子および膜貫通ドメインからなる群から選択される。
【0063】
さらなる実施形態において、アンカードメインは、T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD1からなる群から選択されるポリペプチドの膜貫通領域であるを含む。
【0064】
様々な実施形態において、シグナルペプチド、抗CD19 scFv、リンカー、およびFKBP12多量体化ドメインを含む二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。
【0065】
様々な実施形態において、シグナルペプチド、抗CD19 scFv、リンカー、および架橋因子に結合したFKBP12多量体化ドメインを含む二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。
【0066】
様々な実施形態において、配列番号3~5のうちの1つに記載されるポリペプチド配列を含む二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。
【0067】
様々な実施形態において、架橋因子に結合した、配列番号3~5のうちの1つに記載されるポリペプチド配列を含む二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。
【0068】
様々な実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0069】
特定の実施形態において、本明細書において企図される二量体化可能なサルベージ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0070】
様々な実施形態において、本明細書において企図されるポリヌクレオチドをコードするベクターが提供される。
【0071】
ある特定の実施形態において、ベクターは、発現ベクターである。
【0072】
特定の実施形態において、ベクターは、エピソームベクターである。
【0073】
特定の実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。
【0074】
いくつかの実施形態において、ベクターは、レトロウイルスベクターである。
【0075】
さらなる実施形態において、ベクターは、レトロウイルスベクターである。
【0076】
特定の実施形態において、レンチウイルスベクターは、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ビスナ-マエディウイルス(VMV)ウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)から本質的になる群から選択される。
【0077】
ある特定の実施形態において、ベクターは、左(5’)レトロウイルスLTR、プサイ(Ψ)パッケージングシグナル、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)、レトロウイルス排出エレメント、本明細書において企図されるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター、および右(3’)レトロウイルスLTRを含む。
【0078】
さらなる実施形態において、5’LTRのプロモーターは、異種プロモーターに置き換えられている。
【0079】
特定の実施形態において、異種プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、またはサルウイルス40(SV40)プロモーターである。
【0080】
さらなる実施形態において、3’LTRは、自己不活性化型(SIN)LTRである。
【0081】
様々な実施形態において、本明細書において企図される、サルベージCAR、二量体化可能なサルベージ受容体、ポリヌクレオチド、および/またはベクターを含む細胞が提供される。
【0082】
様々な実施形態において、本明細書において企図される、サルベージCARおよび二量体化可能なサルベージ受容体を含む細胞が提供される。
【0083】
様々な実施形態において、本明細書において企図される1つ以上のポリヌクレオチドを含む細胞が提供される。
【0084】
様々な実施形態において、本明細書において企図される1つ以上のベクターを含む細胞が提供される。
【0085】
いくつかの実施形態において、細胞は、造血細胞である。
【0086】
さらなる実施形態において、細胞は、免疫エフェクター細胞である。
【0087】
特定の実施形態において、細胞は、CD3+、CD4+、CD8+、またはこれらの組み合わせである。
【0088】
ある特定の実施形態において、細胞は、T細胞である。
【0089】
さらなる実施形態において、細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である。
【0090】
いくつかの実施形態において、細胞源は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺問題、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、または腫瘍である。
【0091】
様々な実施形態において、本明細書において企図される、サルベージCAR、二量体化可能なサルベージ受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、および/または細胞を含む組成物が提供される。
【0092】
様々な実施形態において、本明細書において企図される、生理学的に許容される賦形剤、サルベージCAR、二量体化可能なサルベージ受容体、ポリヌクレオチド、ベクター、および/または細胞を含む組成物が提供される。
【0093】
様々な実施形態において、第1の抗原に結合するサルベージCAR、第2の抗原に結合する二量体化可能なサルベージ受容体、および架橋因子を含むCAR T細胞を含むサルベージCARシステムが提供される。様々な実施形態において、第1の抗原に結合するサルベージCAR、および架橋因子に結合した二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含むサルベージCARシステムが提供される。
【0094】
様々な実施形態において、第1の抗原に結合するサルベージCAR、第2の抗原に結合する二量体化可能なサルベージ受容体、および架橋因子を含むCAR T細胞を含むサルベージCARシステムが提供される。
【0095】
さらなる実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、誘導性プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドによってコードされる。
【0096】
特定の実施形態において、第1の抗原は、第2の抗原とは異なる。
【0097】
ある特定の実施形態において、第1の抗原および第2の抗原は、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される。
【0098】
特定の実施形態において、第1の抗原および第2の抗原は、BCMAまたはCD19からなる群から選択される。
【0099】
さらなる実施形態において、第1の抗原はBCMAであり、第2の抗原はCD19である。
【0100】
いくつかの実施形態において、第1の抗原はCD19であり、第2の抗原はBCMAである。
【0101】
ある特定の実施形態において、サルベージCARの多量体化ドメインおよび二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインは、FKBPおよびFRB、FKBPおよびカルシニューリン、FKBPおよびサイクロフィリン、FKBPおよび細菌DHFR、カルシニューリンおよびサイクロフィリン、PYL1およびABI1、またはGIB1およびGAI、またはそのバリアントから選択される対である。
【0102】
特定の実施形態において、サルベージCARの多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含み、二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、サルベージCARの多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含み、二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む。
【0104】
さらなる実施形態において、架橋因子は、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、またはゾタロリムスである。
【0105】
特定の実施形態において、サルベージCARは、BCMAに特異的なscFv、FRB T2098Lの多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、二量体化可能なサルベージ受容体は、CD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、架橋因子はAP21967である。
【0106】
さらなる実施形態において、サルベージCARは、BCMAに特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、二量体化可能なサルベージ受容体は、CD19に特異的なscFv、FRB T2098L多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、架橋因子はAP21967である。
【0107】
いくつかの実施形態において、サルベージCARは、CD19に特異的なscFv、FRB T2098L多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、二量体化可能なサルベージ受容体は、BCMAに特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、架橋因子はAP21967である。
【0108】
特定の実施形態において、サルベージCARは、CD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、二量体化可能なサルベージ受容体は、BCMAに特異的なscFv、FRB T2098L多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、架橋因子はAP21967である。
【0109】
ある特定の実施形態において、サルベージCARは、BCMAに特異的なscFv、FRB多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、二量体化可能なサルベージ受容体は、CD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである。
【0110】
いくつかの実施形態において、サルベージCARは、BCMAに特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、二量体化可能なサルベージ受容体は、CD19に特異的なscFv、FRB多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである。
【0111】
ある特定の実施形態において、サルベージCARは、CD19に特異的なscFv、FRB多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、二量体化可能なサルベージ受容体は、BCMAに特異的なscFvおよびFKBP12多量体化ドメイン、ならびに任意に、アンカードメインを含み、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである。
【0112】
さらなる実施形態において、サルベージCARは、CD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、二量体化可能なサルベージ受容体は、BCMAに特異的なscFvおよびFRB多量体化ドメイン、ならびに任意に、アンカードメインを含み、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである。
【0113】
様々な実施形態において、対象における再発性/難治性癌細胞の数を減少させるための方法が提供され、本方法は、サルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与されたことがある対象に、有効量の二量体化可能なサルベージ受容体、ならびに有効量の、二量体化可能なサルベージ受容体およびサルベージCARの多量体化ドメインに結合する架橋因子を投与することを含む。
【0114】
様々な実施形態において、対象における再発性/難治性癌細胞の数を減少させるための方法が提供され、本方法は、サルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与されたことがある対象に、有効量の、架橋因子に結合した二量体化可能なサルベージ受容体を投与することを含む。
【0115】
様々な実施形態において、対象における再発性/難治性がん細胞の数を減少させるための方法が提供され、本方法は、対象に、有効量の二量体化可能なサルベージ受容体を含むサルベージCAR T細胞、二量体化可能なサルベージ受容体の発現を誘発させるための誘導物質剤、ならびに有効量の、二量体化可能なサルベージ受容体およびサルベージCARの多量体化ドメインに結合する架橋因子を投与することを含む。
【0116】
様々な実施形態において、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法が提供され、本方法は、サルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与されたことがある対象に、有効量の二量体化可能なサルベージ受容体、ならびに有効量の、二量体化可能なサルベージ受容体およびサルベージCARの多量体化ドメインに結合する架橋因子を投与することを含む。
【0117】
様々な実施形態において、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法が提供され、本方法は、サルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与されたことがある対象に、有効量の、架橋因子に結合した二量体化可能なサルベージ受容体を投与することを含む。
【0118】
様々な実施形態において、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法が提供され、本方法は、対象に、有効量の二量体化可能なサルベージ受容体を含むサルベージCAR T細胞、二量体化可能なサルベージ受容体の発現を誘発させるための誘導物質剤、ならびに有効量の、二量体化可能なサルベージ受容体およびサルベージCARの多量体化ドメインに結合する架橋因子を投与することを含む。
【0119】
さらなる実施形態において、がんは、固形がんである。
【0120】
特定の実施形態において、がんは、副腎癌、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳/CNS癌、乳癌、気管支腫瘍、心臓腫瘍、子宮頸癌、胆管細胞癌、軟骨肉腫、脊索腫、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、乳管内上皮内癌(DCIS)子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、感覚神経芽腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌、卵管癌、線維組織腫(fibrous histiosarcoma)、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、神経膠腫、神経膠芽腫、頭頸部癌、血管芽腫、肝細胞癌、下咽頭癌、眼球内黒色腫、カポジ肉腫、腎癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、非小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、悪性中皮腫、髄様癌、髄芽腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、メルケル細胞癌、正中管癌(midline tract carcinoma)、口癌、粘液肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、鼻腔および副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、乏突起神経膠腫、口頭癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、膵島細胞腫瘍、乳頭癌、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、腎細胞癌、腎盂腎および尿管癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮脂腺癌、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、小細胞肺癌、小腸癌、胃の癌、汗腺癌、滑膜腫、精巣癌、咽喉癌、胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、血管癌、外陰癌、ならびにウィルムス腫瘍からなる群から選択される。
【0121】
さらなる実施形態において、がんは、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、脳癌、骨癌、甲状腺癌、腎臓癌、および皮膚癌からなる群から選択される。
【0122】
さらなる実施形態において、がんは、液性がんまたは血液がんである。
【0123】
特定の実施形態において、血液学的悪性腫瘍は、B細胞悪性腫瘍である。
【0124】
いくつかの実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群から選択される。
【0125】
ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病、有毛細胞白血病(HCL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)および真性多血症、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、周辺帯リンパ腫、菌状息肉症、未分化大細胞リンパ腫、セザリー症候群、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、多発性骨髄腫、顕性多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、形質細胞性白血病、非分泌型骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、孤立性骨形質細胞腫、および髄外性形質細胞腫からなる群から選択される。
【0126】
特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、多発性骨髄腫である。
【0127】
様々な実施形態において、対象におけるがんと関連する1つ以上の症状を寛解させるための方法が提供され、本方法は、サルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与したことがある対象に、有効量の二量体化可能なサルベージ受容体、ならびに有効量の、二量体化可能なサルベージ受容体およびサルベージCARの多量体化ドメインに結合する架橋因子を投与することを含む。
【0128】
様々な実施形態において、対象におけるがんと関連する1つ以上の症状を寛解させるための方法が提供され、本方法は、サルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与したことがある対象に、有効量の、架橋因子に結合した二量体化可能なサルベージ受容体を投与することを含む。
【0129】
様々な実施形態において、対象におけるがんと関連する1つ以上の症状を寛解させるための方法が提供され、本方法は、対象に、有効量の二量体化可能なサルベージ受容体を含むサルベージCAR T細胞、二量体化可能なサルベージ受容体の発現を誘発させるための誘導物質剤、ならびに有効量の、二量体化可能なサルベージ受容体およびサルベージCARの多量体化ドメインに結合する架橋因子を投与することを含む。
【0130】
特定の実施形態において、寛解される1つ以上の症状は、脱力感、疲労、息切れ、易挫傷性および易出血性、頻繁な感染症、リンパ節腫大、腹部の膨張または痛み、骨痛または関節痛、骨折、計画外の体重減少、食欲不振、寝汗、持続的微熱、ならびに排尿減少からなる群から選択される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
サルベージキメラ抗原受容体(CAR)であって、
a)細胞外抗原結合ドメイン、
b)多量体化ドメイン、
b)膜貫通ドメイン、
c)1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および/または
d)一次シグナル伝達ドメインを含む、サルベージキメラ抗原受容体(CAR)。
(項目2)
サルベージキメラ抗原受容体(CAR)であって、
a)細胞外抗原結合ドメイン、
b)膜貫通ドメイン、
b)多量体化ドメイン、
c)1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および/または
d)一次シグナル伝達ドメインを含む、サルベージ抗原受容体(CAR)。
(項目3)
前記細胞外抗原結合ドメインが、抗体またはその抗原結合断片を含む、項目1または項目2に記載のサルベージCAR。
(項目4)
前記抗体または抗原結合断片が、ラクダIg、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)からなる群から選択される、項目3に記載のサルベージCAR。
(項目5)
前記抗体または抗原結合断片が、scFvである、項目3または項目4に記載のサルベージCAR。
(項目6)
前記細胞外抗原結合ドメインが、アルファ葉酸受容体、5T4、α
v
β
6
インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される抗原に結合する、項目1~5のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目7)
前記細胞外抗原結合ドメインが、BCMA、CD19、CSPG4、PSCA、ROR1、およびTAG72からなる群から選択される抗原に結合する、項目1~6のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目8)
前記細胞外抗原結合ドメインが、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される抗原に結合する、項目1~6のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目9)
前記細胞外抗原結合ドメインが、BCMAまたはCD19に結合する、項目1~7のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目10)
前記細胞外抗原結合ドメインが、がん細胞上に発現する抗原に結合する、項目1~5のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目11)
前記細胞外抗原結合ドメインが、固形がん細胞上に発現する抗原に結合する、項目1~5のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目12)
前記細胞外抗原結合ドメインが、液性がん細胞上に発現する抗原に結合する、項目1~5のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目13)
前記細胞外抗原結合ドメインが、悪性B細胞上に発現する抗原に結合する、項目1~5のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目14)
前記細胞外抗原結合ドメインが、悪性形質細胞上に発現する抗原に結合する、項目1~5のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目15)
前記多量体化ドメインが、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、カルシニューリンポリペプチド、サイクロフィリンポリペプチド、細菌DHFRポリペプチド、PYL1ポリペプチド、ABI1ポリペプチド、GIB1ポリペプチド、GAIポリペプチド、およびそれらのバリアントからなる群から選択される、項目1~14のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目16)
前記多量体化ドメインが、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、およびそのバリアントからなる群から選択される、項目1~15のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目17)
前記多量体化ドメインが、FKBP12ポリペプチドおよびFRB T2098Lポリペプチドからなる群から選択される、項目1~16のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目18)
前記膜貫通ドメインが、T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD1からなる群から選択されるポリペプチドから単離される、項目1~17のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目19)
前記膜貫通ドメインが、CD8α、CD4、CD45、PD1、およびCD152からなる群から選択されるポリペプチドから単離される、項目1~18のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目20)
前記膜貫通ドメインが、CD8αから単離される、項目1~19のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目21)
前記1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインが、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含む、項目1~20のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目22)
前記1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインが、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、およびZAP70からなる群から選択される共刺激分子から単離される、項目1~21のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目23)
前記1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28、CD134、CD137、およびCD278からなる群から選択される共刺激分子から単離される、項目1~22のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目24)
前記1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインが、CD137から単離される、項目1~23のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目25)
前記一次シグナル伝達ドメインが、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dからなる群から選択されるポリペプチドから単離される、項目1~24のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目26)
前記一次シグナル伝達ドメインが、CD3ζから単離される、項目1~25のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目27)
ヒンジ領域ポリペプチドをさらに含む、項目1~26のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目28)
前記ヒンジ領域ポリペプチドが、CD8αのヒンジ領域を含む、項目27に記載のサルベージCAR。
(項目29)
スペーサー領域をさらに含む、項目1~28のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目30)
シグナルペプチドをさらに含む、項目1~29のいずれか1項に記載のサルベージCAR。
(項目31)
前記シグナルペプチドが、IgG1重鎖シグナルポリペプチド、CD8αシグナルポリペプチド、またはヒトGM-CSF受容体アルファシグナルポリペプチドを含む、項目30に記載のサルベージCAR。
(項目32)
シグナルペプチド、抗BCMA scFv、リンカー、FRB(T82L)多量体化ドメイン、CD8αヒンジおよび膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む、サルベージCAR。
(項目33)
配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、サルベージCAR。
(項目34)
二量体化可能なサルベージ受容体であって、
a)抗原結合ドメイン、および
b)多量体化ドメインを含む、二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目35)
二量体化可能なサルベージ受容体であって、
a)抗原結合ドメイン、
b)多量体化ドメイン、および
c)アンカードメインを含む、二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目36)
二量体化可能なサルベージ受容体であって、
a)抗原結合ドメイン、
b)リンカー、および
c)多量体化ドメインから本質的になる、二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目37)
二量体化可能なサルベージ受容体であって、
a)シグナルペプチド、
b)抗原結合ドメイン、
c)リンカー、および
d)多量体化ドメインから本質的になる、二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目38)
二量体化可能なサルベージ受容体であって、
a)抗原結合ドメイン、
b)リンカー、
c)多量体化ドメイン、
d)ヒンジドメイン、および
e)アンカードメインから本質的になる、二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目39)
二量体化可能なサルベージ受容体であって、
a)シグナルペプチド、
b)抗原結合ドメイン、
c)リンカー、
d)多量体化ドメイン、
e)ヒンジドメイン、および
f)アンカードメインから本質的になる、二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目40)
前記抗原結合ドメインが、抗体またはその抗原結合断片を含む、項目34~39のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目41)
前記抗体または抗原結合断片が、ラクダIg、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)からなる群から選択される、項目40に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目42)
前記抗体または抗原結合断片が、scFvである、項目40または項目41に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目43)
前記抗原結合ドメインが、アルファ葉酸受容体、5T4、α
v
β
6
インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される抗原に結合する、項目34~42のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目44)
前記抗原結合ドメインが、BCMA、CD19、CSPG4、PSCA、ROR1、およびTAG72からなる群から選択される抗原に結合する、項目34~43のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目45)
前記抗原結合ドメインが、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される抗原に結合する、項目34~44のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目46)
前記抗原結合ドメインが、BCMAまたはCD19に結合する、項目34~45のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目47)
前記抗原結合ドメインが、がん細胞上に発現する抗原に結合する、項目34~46のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目48)
前記抗原結合ドメインが、固形がん細胞上に発現する抗原に結合する、項目34~47のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目49)
前記抗原結合ドメインが、液性がん細胞上に発現する抗原に結合する、項目34~48のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目50)
前記抗原結合ドメインが、悪性B細胞上に発現する抗原に結合する、項目34~49のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目51)
前記抗原結合ドメインが、悪性形質細胞上に発現する抗原に結合する、項目34~47のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目52)
前記多量体化ドメインが、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、カルシニューリンポリペプチド、サイクロフィリンポリペプチド、細菌DHFRポリペプチド、PYL1ポリペプチド、ABI1ポリペプチド、GIB1ポリペプチド、GAIポリペプチド、およびそれらのバリアントからなる群から選択される、項目34~51のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目53)
前記多量体化ドメインが、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、およびそのバリアントからなる群から選択される、項目34~52のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目54)
前記多量体化ドメインが、FKBP12ポリペプチドおよびFRB T2098Lポリペプチドからなる群から選択される、項目34~53のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目55)
前記ヒンジドメインが、CD4ヒンジ、CD8αヒンジ、PD-1ヒンジ、およびCD152ヒンジから本質的になる群から選択される、項目36~54のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目56)
前記アンカードメインが、GPI分子および膜貫通ドメインからなる群から選択される、項目36~55のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目57)
前記アンカードメインが、前記T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD1からなる群から選択されるポリペプチドの膜貫通領域であるを含む、項目36~56のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目58)
シグナルペプチド、抗CD19 scFv、リンカー、およびFKBP12多量体化ドメインを含む、二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目59)
シグナルペプチド、抗CD19 scFv、リンカー、および架橋因子に結合したFKBP12多量体化ドメインを含む、二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目60)
配列番号3~5のうちのいずれか1つに記載のポリペプチド配列を含む、二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目61)
架橋因子に結合した、配列番号3~5のうちのいずれか1つに記載のポリペプチド配列を含む、二量体化可能なサルベージ受容体。
(項目62)
項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCARをコードする、ポリヌクレオチド。
(項目63)
項目34~61のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体をコードする、ポリヌクレオチド。
(項目64)
項目62または項目63に記載のポリヌクレオチドをコードする、ベクター。
(項目65)
前記ベクターが、発現ベクターである、項目64に記載のベクター。
(項目66)
前記ベクターが、エピソームベクターである、項目64または項目65に記載のベクター。
(項目67)
前記ベクターが、ウイルスベクターである、項目64~66のいずれか1項に記載のベクター。
(項目68)
前記ベクターが、レトロウイルスベクターである、項目64~67のいずれか1項に記載のベクター。
(項目69)
前記ベクターが、レンチウイルスベクターである、項目64~68のいずれか1項に記載のベクター。
(項目70)
前記レンチウイルスベクターが、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ビスナ-マエディウイルス(VMV)ウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)から本質的になる群から選択される、項目69に記載のベクター。
(項目71)
左(5’)レトロウイルスLTR、プサイ(Ψ)パッケージングシグナル、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)、レトロウイルス排出エレメント、項目62または項目63に記載のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター、および右(3’)レトロウイルスLTRを含む、項目64~70のいずれか1項に記載のベクター。
(項目72)
前記5’LTRのプロモーターが、異種プロモーターに置き換えられている、項目71に記載のベクター。
(項目73)
前記異種プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、またはサルウイルス40(SV40)プロモーターである、項目72に記載のベクター。
(項目74)
前記3’LTRが、自己不活性化型(SIN)LTRである、項目71に記載のベクター。
(項目75)
項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCAR、項目34~61のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体、項目62もしくは項目63に記載のポリヌクレオチド、および/または項目64~74のいずれか1項に記載のベクターを含む、細胞。
(項目76)
項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCAR、および項目34~61のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体を含む、細胞。
(項目77)
項目62または項目63に記載の1つ以上のポリヌクレオチドを含む、細胞。
(項目78)
項目64~74のいずれか1項に記載の1つ以上のベクターを含む、細胞。
(項目79)
前記細胞が、造血細胞である、項目75~78のいずれか1項に記載の細胞。
(項目80)
前記細胞が、免疫エフェクター細胞である、項目75~79のいずれか1項に記載の細胞。
(項目81)
前記細胞が、CD3
+
、CD4
+
、CD8
+
、またはこれらの組み合わせである、項目75~80のいずれか1項に記載の細胞。
(項目82)
前記細胞が、T細胞である、項目75~81のいずれか1項に記載の細胞。
(項目83)
前記細胞が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である、項目75~82のいずれか1項に記載の細胞。
(項目84)
前記細胞源が、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺問題、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、または腫瘍である、項目75~83のいずれか1項に記載の細胞。
(項目85)
項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCAR、項目34~61のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体、項目62もしくは63に記載のポリヌクレオチド、項目64~74のいずれか1項に記載のベクター、および/または項目75~78のいずれか1項に記載の細胞を含む、組成物。
(項目86)
生理学的に許容される担体、および項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCAR、項目34~61のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体、項目62もしくは63に記載のポリヌクレオチド、項目64~74のいずれか1項に記載のベクター、および/または項目75~78のいずれか1項に記載の細胞を含む、組成物。
(項目87)
サルベージCARシステムであって、
a)第1の抗原に結合する項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCARを含むCAR T細胞と、
b)第2の抗原に結合する項目34~61のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体と、
c)架橋因子と、を含む、サルベージCARシステム。
(項目88)
サルベージCARシステムであって、
a)第1の抗原に結合する項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCARを含むCAR T細胞と、
b)第2の抗原に結合する項目34~61のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体と、を含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体が、架橋因子に結合している、サルベージCARシステム。
(項目89)
サルベージCARシステムであって、
a)第1の抗原に結合する項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCARおよび第2の抗原に結合する項目34~61のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体を含む、CAR T細胞と、
c)架橋因子と、を含む、サルベージCARシステム。
(項目90)
前記二量体化可能なサルベージ受容体が、誘導性プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドによってコードされる、項目89に記載のサルベージCARシステム。
(項目91)
前記第1の抗原が、前記第2の抗原と異なる、項目87~90のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目92)
前記第1の抗原および第2の抗原が、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される、項目87~91のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目93)
前記第1の抗原および第2の抗原が、BCMAまたはCD19からなる群から選択される、項目87~92のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目94)
前記第1の抗原がBCMAであり、第2の抗原がCD19である、項目87~93のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目95)
前記第1の抗原がCD19であり、第2の抗原がBCMAである、項目87~94のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目96)
前記サルベージCARの多量体化ドメインおよび二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインが、FKBPおよびFRB、FKBPおよびカルシニューリン、FKBPおよびサイクロフィリン、FKBPおよび細菌DHFR、カルシニューリンおよびサイクロフィリン、PYL1およびABI1、またはGIB1およびGAI、またはそのバリアントから選択される対である、項目87~95のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目97)
前記サルベージCARの多量体化ドメインが、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインが、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む、項目87~96のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目98)
前記サルベージCARの多量体化ドメインが、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインが、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む、項目87~96のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目99)
前記架橋因子が、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、またはゾタロリムスである、項目87~98のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目100)
前記サルベージCARが、BCMAに特異的なscFv、FRB T2098L多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体が、CD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、前記架橋因子が、AP21967である、項目87~98のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目101)
前記サルベージCARが、BCMAに特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体が、CD19に特異的なscFv、FRB T2098L多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、前記架橋因子が、AP21967である、項目87~98のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目102)
前記サルベージCARが、CD19に特異的なscFv、FRB T2098L多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体が、BCMAに特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、前記架橋因子が、AP21967である、項目87~98のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目103)
前記サルベージCARが、CD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体が、BCMAに特異的なscFv、FRB T2098L多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、前記架橋因子が、AP21967である、項目87~98のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目104)
前記サルベージCARが、BCMAに特異的なscFv、FRB多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体が、CD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、前記架橋因子が、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである、項目87~98のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目105)
前記サルベージCARが、BCMAに特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体が、CD19に特異的なscFv、FRB多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、前記架橋因子が、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである、項目87~98のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目106)
前記サルベージCARが、CD19に特異的なscFv、FRB多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体が、BCMAに特異的なscFvおよびFKBP12多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、前記架橋因子が、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである、項目87~98のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目107)
前記サルベージCARが、CD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを含み、前記二量体化可能なサルベージ受容体が、BCMAに特異的なscFvおよびFRB多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを含み、前記架橋因子が、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである、項目87~98のいずれか1項に記載のサルベージCARシステム。
(項目108)
対象における再発性/難治性がん細胞の数を減少させるための方法であって、前記対象に、
a)項目34~61のいずれか1項に記載の有効量の二量体化可能なサルベージ受容体であって、前記対象が、項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与されたことがある、二量体化可能なサルベージ受容体と、
b)前記二量体化可能なサルベージ受容体および前記サルベージCARの多量体化ドメインに結合する有効量の架橋因子と、を投与することを含む、方法。
(項目109)
対象における再発性/難治性がん細胞の数を減少させるための方法であって、前記対象に、
a)架橋因子に結合した項目34~61のいずれか1項に記載の有効量の二量体化可能なサルベージ受容体であって、前記対象が、項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与されたことがある、二量体化可能なサルベージ受容体を投与することを含む、方法。
(項目110)
対象における再発性/難治性がん細胞の数を減少させるための方法であって、前記対象に、
a)項目34~61のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体を含む有効量のサルベージCAR T細胞と、
b)前記二量体化可能なサルベージ受容体の発現を誘発させるための誘導物質剤と、
c)前記二量体化可能なサルベージ受容体および前記サルベージCARの多量体化ドメインに結合する有効量の架橋因子と、を投与することを含む、方法。
(項目111)
がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、前記対象に、
a)項目34~61のいずれか1項に記載の有効量の二量体化可能なサルベージ受容体であって、前記対象が、項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与されたことがある、二量体化可能なサルベージ受容体と、
b)前記二量体化可能なサルベージ受容体および前記サルベージCARの多量体化ドメインに結合する有効量の架橋因子と、を投与することを含む、方法。
(項目112)
がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、前記対象に、
a)架橋因子に結合した項目34~61のいずれか1項に記載の有効量の二量体化可能なサルベージ受容体であって、前記対象が、項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与されたことがある、二量体化可能なサルベージ受容体を投与することを含む、方法。
(項目113)
がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、前記対象に、
a)項目34~61のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体を含む有効量のサルベージCAR T細胞と、
b)前記二量体化可能なサルベージ受容体の発現を誘発させるための誘導物質剤と、
c)前記二量体化可能なサルベージ受容体および前記サルベージCARの多量体化ドメインに結合する有効量の架橋因子と、を投与することを含む、方法。
(項目114)
前記がんが、固形がんである、項目108~113のいずれか1項に記載の方法。
(項目115)
前記がんが、副腎癌、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳/CNS癌、乳癌、気管支腫瘍、心臓腫瘍、子宮頸癌、胆管細胞癌、軟骨肉腫、脊索腫、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、乳管内上皮内癌(DCIS)子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、感覚神経芽腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌、卵管癌、線維組織腫(fibrous histiosarcoma)、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、神経膠腫、神経膠芽腫、頭頸部癌、血管芽腫、肝細胞癌、下咽頭癌、眼球内黒色腫、カポジ肉腫、腎癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、非小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、悪性中皮腫、髄様癌、髄芽腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、メルケル細胞癌、正中管癌(midline tract carcinoma)、口癌、粘液肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、鼻腔および副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、乏突起神経膠腫、口頭癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、膵島細胞腫瘍、乳頭癌、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、腎細胞癌、腎盂腎および尿管癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮脂腺癌、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、小細胞肺癌、小腸癌、胃の癌、汗腺癌、滑膜腫、精巣癌、咽喉癌、胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、血管癌、外陰癌、ならびにウィルムス腫瘍からなる群から選択される、項目108~113のいずれか1項に記載の方法。
(項目116)
前記がんが、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、脳癌、骨癌、甲状腺癌、腎臓癌、および皮膚癌からなる群から選択される、項目108~113のいずれか1項に記載の方法。
(項目117)
前記がんが、液性がんまたは血液がんである、項目108~113のいずれか1項に記載の方法。
(項目118)
前記血液学的悪性腫瘍が、B細胞悪性腫瘍である、項目117に記載の方法。
(項目119)
前記B細胞悪性腫瘍が、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群から選択される、項目118に記載の方法。
(項目120)
前記B細胞悪性腫瘍が、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病、有毛細胞白血病(HCL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、および真性赤血球増加症、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、菌状息肉腫、未分化大細胞リンパ腫、セザリー症候群、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、多発性骨髄腫、顕性多発性骨髄腫、くすぶり多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌性骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、ならびに髄外性形質細胞腫からなる群から選択される、項目118または項目119に記載の方法。
(項目121)
前記B細胞悪性腫瘍が、多発性骨髄腫である、項目118~120のいずれか1項に記載の方法。
(項目122)
対象におけるがんと関連する1つ以上の症状を寛解させるための方法であって、前記対象に、
a)項目34~61のいずれか1項に記載の有効量の二量体化可能なサルベージ受容体であって、前記対象が、項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与されたことがある、二量体化可能なサルベージ受容体と、
b)前記二量体化可能なサルベージ受容体および前記サルベージCARの多量体化ドメインに結合する有効量の架橋因子と、を投与することを含む、方法。
(項目123)
対象におけるがんと関連する1つ以上の症状を寛解させるための方法であって、前記対象に、
a)架橋因子に結合した項目34~61のいずれか1項に記載の有効量の二量体化可能なサルベージ受容体であって、前記対象が、項目1~33のいずれか1項に記載のサルベージCARを含む免疫エフェクター細胞をこれまでに投与されたことがある、二量体化可能なサルベージ受容体を投与することを含む、方法。
(項目124)
対象におけるがんと関連する1つ以上の症状を寛解させるための方法であって、前記対象に、
a)項目34~61のいずれか1項に記載の二量体化可能なサルベージ受容体を含む有効量のサルベージCAR T細胞と、
b)前記二量体化可能なサルベージ受容体の発現を誘発させるための誘導物質剤と、
c)前記二量体化可能なサルベージ受容体および前記サルベージCARの多量体化ドメインに結合する有効量の架橋因子と、を投与することを含む、方法。
(項目125)
寛解される前記1つ以上の症状が、脱力感、疲労、息切れ、易挫傷性および易出血性、頻繁な感染症、リンパ節腫大、腹部の膨張または痛み、骨痛または関節痛、骨折、計画外の体重減少、食欲不振、寝汗、持続的微熱、ならびに排尿減少からなる群から選択される、項目122~124のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【
図1】サルベージCARシステムと比較して、CAR T細胞(左パネル)の図を示す。サルベージCARシステムは、サルベージCAR(中央パネル)および二量体化可能なサルベージ受容体(右上パネル)を含む。右下パネルは、分泌された二量体化可能なサルベージ受容体を発現するように操作された293T細胞株を示す。
【
図2A】細胞傷害性アッセイからの結果を示す。抗BCMA CAR T細胞および抗BCMAサルベージCAR T細胞を、E:T比を5:1でK562-BCMA(+)細胞およびK562-BCMA(-)細胞と24時間共培養した。共培養物を、ビヒクルまたはAP21967で処理した。
【
図2B】インターフェロンガンマ(IFNγ)放出アッセイからの結果を示す。抗BCMA CAR T細胞および抗BCMAサルベージCAR T細胞を、E:T比を1:1でK562 BCMA(+)細胞と24時間共培養した。共培養物を、ビヒクルまたはAP21967で処理した。
【
図3A】サルベージCARシステムの図を示す。抗BCMA サルベージCARおよび二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体は、架橋因子AP21967の存在下でヘテロ二量体化する。
【
図3B】細胞傷害性アッセイからの結果を示す。抗BCMA サルベージCAR T細胞を、E:T比を2:1でNalm-6-CD19(+)細胞およびK562 CD19(-)細胞と24時間共培養した。共培養物を、ビヒクルまたは100nMのAP21967で、および0μL、10μL、または30μLの、二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体を含有する293T-710細胞上清で処理した。
【
図3C】インターフェロンガンマ(IFNγ)放出アッセイからの結果を示す。抗BCMAサルベージCAR T細胞を、E:T比を1:1でNalm-6-CD19(+)細胞と24時間共培養した。共培養を、100nMのAP21967、および0μLまたは100μLの、二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体を含有する293T-710細胞上清で処理した。
【
図4A】二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体のための精製スキームを示す。
【
図4B】精製した二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体がリガンドで予め充填されていることを示す。
【
図5】細胞傷害性アッセイからの結果を示す。抗BCMA CAR T細胞または抗BCMA サルベージCAR T細胞を、250ngの予め充填された二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体の存在または不在下で、100nMのAP21967を用いてまたは用いずに、E:T比を2:1でNalm-6-CD19(+)細胞およびK562 CD19(-)細胞と24時間共培養した。
【
図6】予め充填された二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体の滴定アッセイからの結果を示す。抗BCMAサルベージCAR T細胞を、E:T比を2:1でNalm-6-CD19(+)細胞およびK562 CD19(-)細胞と、減少した量(125ng、62.5ng、31.3ng、15.6ng、7.8ng、3.9ng、2.0ng)の予め充填された二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体とで24時間共培養した。
【
図7】サイトカイン放出アッセイからの結果を示す。抗BCMAサルベージCAR T細胞または非形質転換T細胞を、E:T比を1:1でCD19陽性Nalm-6細胞と、減少した量(125ng、62.5ng、31.3ng、15.6ng、7.8ng、3.9ng、2.0ng)の予め充填された二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体とで24時間共培養した。IL-2、IL-4、IL-17A、TNF、およびIFNγの量を測定した。
【
図8A】抗BCMA DARICおよび二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体システムの図を示す。
【
図8B】抗BCMA DARIC T細胞が、抗CD19サルベージ受容体でCD19を発現するNalm-6細胞に再指向され得ることを示す。
【
図8C】抗BCMA DARIC T細胞のみが、抗CD19サルベージ受容体の存在下で、CD19を発現するNalm-6細胞で共培養したときに、検出可能なレベルのIFNγを分泌することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0132】
配列識別子の簡単な説明
配列番号1は、抗BCMA CARのポリペプチド配列を示す。
配列番号2は、抗BCMAサルベージCARのポリペプチド配列を示す。
配列番号3は、二量体化可能なサルベージ受容体のポリペプチド配列を示す。
配列番号4は、二量体化可能なサルベージ受容体-T2A-蛍光レポーターのポリペプチド配列を示す。
配列番号5は、二量体化可能なサルベージ受容体-T2A-蛍光レポーターのポリペプチド配列を示す。
配列番号6は、抗BCMA DARICのポリペプチド配列を示す。
配列番号7~17は、様々なリンカーのアミノ酸配列を示す。
配列番号18~42は、プロテアーゼ切断部位および自己切断型ポリペプチド切断部位のアミノ酸配列を示す。
【0133】
A.概要
がんは、多くの場合、異なるレベルの様々な抗原を発現する細胞の異種プールである。概して、免疫療法は、最初に、がん細胞の大部分で発現され、正常細胞の発現を実質的に欠いている抗原を標的化するように選択される。有効な標的免疫療法は、標的抗原を発現するがん細胞の大部分を死滅させ、部分的または完全寛解をもたらす。しかしながら、ほとんどのがんが、実際に異種であるため、標的抗原を発現しないか、低レベルの標的抗原を発現する残りのがん細胞を、回避し、初期免疫療法によって効率よく標的化されないがん細胞を潜在的に生じさせ得る。
【0134】
CAR T細胞療法の有効性を依然として制限する1つの主な障害は、「抗原陰性」がんの再発である。例えば、抗CD19 CAR T細胞療法は、最初に、再発性および難治性急性ALLの優れた寛解率をもたらすが、CD19陰性白血病芽細胞の再発が、約10~20%の症例で生じる。驚くほど高速な抗原陰性再発は、依然として、CAR T免疫療法の取り組まれていない欠点を表す。任意の特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、再発性または難治性抗原陰性がん細胞上で発現される事実上限定されない数のさらなる抗原を再標的化し得るように、CARを再操作することによって問題を解決した。したがって、本明細書において企図される組成物および方法は、CAR T細胞免疫療法における重要な進歩を表す。
【0135】
様々な実施形態において、サルベージキメラ抗原受容体(CAR)が提供される。サルベージCARは、1つ以上の抗原結合ドメイン、多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、CARは、CARに多量体化ドメインを組み込むことによってサルベージCARに適合され得る。多量体化ドメインは、細胞内または細胞外に位置付けられ得る。
【0136】
様々な実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。二量体化サルベージCAR受容体は、1つ以上の抗原結合ドメインおよび多量体化ドメイン、ならびに任意に、リンカードメイン、ヒンジドメイン、および/またはアンカードメインのうちの1つ以上を含み得る。
【0137】
様々な他の実施形態において、サルベージCARシステムが提供される。サルベージCARシステムは、サルベージCAR T細胞、二量体化可能なサルベージ受容体、および架橋因子を含み得る。架橋因子は、サルベージCARおよび二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインに結合し、これは、機能的CARシグナル伝達複合体の形成をもたらす。
【0138】
いくつかの実施形態において、サルベージCAR T細胞は、誘導性二量体化可能なサルベージ受容体をさらに含む。
【0139】
特定の実施形態において、架橋因子で予め充填された二量体化可能なサルベージ受容体を精製するための方法が提供される。
【0140】
別段の指示が具体的にない限り、特定の実施形態の実践には、当該技術分野の技能の範囲内である化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、遺伝学、免疫学、および細胞生物学の従来法が用いられ、これらの多くは、例証の目的で以下に記載される。このような技法は文献に完全に説明されている。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989)、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons、2008年7月更新)、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience、Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(IRL Press,Oxford,1985)、Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992)、Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1984)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)、Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998) Current Protocols in Immunology Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991)、Annual Review of Immunology、ならびにmonographs in journals such as Advances in Immunologyなどの学術誌中の研究論文を参照されたい。
【0141】
B.定義
別様に定義されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。特定の実施形態の実践および試験には、本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料が使用され得るが、好ましい実施形態の組成物、方法、および材料を本明細書に記載する。本開示において、以下の用語は、以下の定義の通りである。
【0142】
「a」、「an」、および「the」という冠詞は、本明細書において、その冠詞の文法上の目的語の1つ、または1つより多く(すなわち、少なくとも1つ、または1つ以上)を指すように使用される。例として、「あるエレメント(an element)」は1つの要素または1つ以上の要素を意味する。
【0143】
代替物(例えば、「または(or)」)の使用は、代替物のうちの1つ、両方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味するよう理解されるものとする。
【0144】
「および/または」という用語は、代替物のうちの1つまたは両方のいずれかを意味するよう理解されるものとする。
【0145】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、基準の分量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%ほど異なる分量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。一実施形態において、「約」または「およそ」という用語は、基準の分量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さについて±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の範囲の分量、レベル、値、数、頻度、割合、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。
【0146】
本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含んでいる(comprising)」という言葉は、記載されるステップもしくは要素またはステップもしくは要素の一群の包含を暗示するが、いかなる他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の一群の除外を暗示するものではないと理解される。「からなる」とは、「からなる」という表現に続くもの全てを含み、それらに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という表現は、列記される要素が必要または必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる」とは、句の後に列記される任意の要素を含み、列記された要素の開示において指定された活性または作用に干渉しない、または寄与しない他の要素に限定されることを意味する。よって、「から本質的になる」という句は、列記される要素が必要であるか、または必須であるが、列記された要素の活性または作用に物質的に影響を及ぼす他の要素が存在しないことを示す。
【0147】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある特定の実施形態」、「付加的な実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」、またはそれらの組み合わせへの言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通した様々な箇所に前述の表現が存在しても、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な様式で組み合わされてもよい。一実施形態の特徴の積極的な記載が特定の実施形態における特徴を除外する根拠とならないことも理解される。
【0148】
「抗原(Ag)」とは、動物において抗体の産生またはT細胞応答を刺激することのできる化合物、組成物、または物質を指し、動物に注射または吸収される組成物(例えば、がん特異的タンパク質を含むものなど)を含む。例示的な抗原としては、脂質、炭水化物、多糖、糖タンパク質、ペプチド、または核酸が挙げられるが、これらに限定されない。抗原は、開示される抗原などの異種抗原により誘発されたものを含む、特定の体液性または細胞性免疫の産物と反応する。
【0149】
「標的抗原」または「目的となる標的抗原」は、本明細書において企図される結合ドメインが結合するように設計される、抗原である。特定の実施形態において、標的抗原は、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、STn、TAG72、TEM、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される。
【0150】
一実施形態において、抗原は、クラスI MHC-ペプチド複合体またはクラスII MHC-ペプチド複合体などのMHC-ペプチド複合体である。
【0151】
本明細書で使用される場合、「結合ドメイン」、「細胞外ドメイン」、「抗原結合ドメイン」、「細胞外結合ドメイン」、「細胞外抗原結合ドメイン」、「抗原特異的結合ドメイン」、および「細胞外抗原特異的結合ドメイン」という用語は、同義に使用され、目的となる標的抗原に特異的に結合する能力を有するポリペプチドを提供する。結合ドメインは、天然、合成、半合成、または組換えの起源のいずれに由来してもよい。
【0152】
本明細書で使用される「特異的結合親和性」、または「特異的に結合する」、または「特異的に結合している」、または「特異的結合」、または「特異的に標的化する」という用語は、抗体またはその抗原結合断片が標的抗原にバックグラウンド結合よりも高い結合親和性で結合することを説明する。結合ドメインは、例えば、約105M-1以上の親和性またはKa(すなわち、1/Mの単位を有する特定の結合相互作用の平衡結合定数)を有する抗原に結合するまたはそれと関連する場合、標的抗原に「特異的に結合する」。ある特定の実施形態において、結合ドメイン(またはその融合タンパク質)は、約106M-1、107M-1、108M-1、109M-1、1010M-1、1011M-1、1012M-1、または1013M-1以上のKaで標的に結合する。「高親和性」結合ドメイン(またはその一本鎖融合タンパク質)とは、少なくとも107M-1、少なくとも108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも1012M-1、少なくとも1013M-1、またはそれ以上のKaを有する結合ドメインを指す。
【0153】
あるいは、親和性は、Mの単位を有する特定の結合相互作用(例えば、10-5M~10-13M、またはそれ以下)の平衡解離定数(Kd)として定義され得る。結合ドメインポリペプチドの親和性は、従来の技術を使用して、例えば、競合ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)によって、または結合会合(binding association)、もしくは標識リガンドを使用した置換アッセイによって、あるいは、Biacore,Inc.(Piscataway,NJ)から入手可能であるBiacore T100などの表面プラズモン共鳴デバイス、またはそれぞれCorningおよびPerkin Elmerから入手可能なEPICシステムもしくはEnSpireなどの光学バイオセンサ技術を使用して、容易に決定することができる(例えば、Scatchard et al.(1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660、および米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号、またはその均等物も参照されたい)。
【0154】
一実施形態において、特異的結合の親和性は、バックグラウンド結合より約2倍高いか、バックグラウンド結合より約5倍高いか、バックグラウンド結合より約10倍高いか、バックグラウンド結合より約20倍高いか、バックグラウンド結合より約50倍高いか、バックグラウンド結合より約100倍高いか、またはバックグラウンド結合より約1000倍以上高い。
【0155】
「抗体」とは、免疫細胞により認識されるものなどの抗原決定基を含む脂質、炭水化物、多糖、糖タンパク質、ペプチド、または核酸といった抗原のエピトープを特異的に認識し、それに結合する、少なくとも軽鎖または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドである結合剤を指す。
【0156】
「エピトープ」または「抗原決定基」は、結合剤が結合する抗原の領域を指す。
【0157】
抗体には、その抗原結合断片、例えばラクダIg、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)、ならびに抗原結合に関与する全長抗体の一部分などが含まれる。この用語には、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロ接合抗体(例えば二重特異性抗体など)、およびそれらの抗原結合断片といった、遺伝子操作された形態も含まれる。Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL)、Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman&Co.,New York,1997も参照されたい。
【0158】
当業者には理解されるように、また本明細書の他の箇所に記載されるように、完全抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む。各重鎖は、1つの可変領域と、第1、第2、および第3の定常領域とからなり、一方で各軽鎖は、1つの可変領域と1つの定常領域とからなる。哺乳動物の重鎖は、α、δ、ε、γ、およびμに分類される。哺乳動物の軽鎖は、λまたはκに分類される。α、δ、ε、γ、およびμの重鎖を含む免疫グロブリンは、免疫グロブリン(Ig)A、IgD、IgE、IgG、およびIgMに分類される。完全抗体は「Y」形状を形成する。Yのステムは、一緒に結合した2本の重鎖の第2および第3の定常領域(そしてIgEおよびIgMに関しては第4の定常領域)からなり、ジスルフィド結合(鎖間)がヒンジに形成される。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム(一列)のIgドメインと柔軟性を高めるためのヒンジ領域とから構成された定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリンドメインから構成された定常領域を有する。第2および第3の定常領域は、それぞれ「CH2ドメイン」および「CH3ドメイン」と称される。Yの各アームは、単一の軽鎖の可変領域および定常領域に結合した単一の重鎖の可変領域および第1の定常領域を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原結合に関与する。
【0159】
軽鎖および重鎖の可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって中断されている「フレームワーク」を含む。CDRは、従来の方法によって、例えばKabatらによる配列(Wu,TT and Kabat,E.A.,J Exp “Med.132(2):211-50,(1970)、Borden,P.and Kabat E.A.,PNAS,84:2440-2443(1987)(参照により本明細書に組み込まれるKabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Health and Human Services,1991を参照されたい)、またはChothiaらによる構造(Chothia,C.and Lesk,A.M.,J Mol.Biol.,196(4):901-917(1987)、Chothia,C.et al,Nature,342:877-883(1989))などによって、定義または特定することができる。
【0160】
軽鎖CDRを予測するための規則の例示的な例としては、次のものが挙げられる:CDR-L1は、約残基24で開始し、Cysが先行し、約10~17残基であり、Trpが続く(通常はTrp-Tyr-Glnであるが、Trp-Leu-Gln、Trp-Phe-Gln、Trp-Tyr-Leuも続く);CDR-L2は、CDR-L1の端部の後の約16残基で開始し、概してIle-Tyrが先行するが、Val-Tyr、Ile-Lys、Ile-Pheも先行し、7残基である;そしてCDR-L3は、CDR-L2の端部の後の約33残基で開始し、Cysが先行し、7~11残基であり、Phe-Gly-XXX-Glyが続く(配列番号44)(XXXは任意のアミノ酸である)。
【0161】
重鎖CDRを予測するための規則の例示的な例としては、次のものが挙げられる:CDR-H1は、約残基26で開始し、Cys-XXX-XXX-XXX(配列番号45)が先行し、10~12残基であり、Trpが続く(通常はTrp-Valであるが、Trp-Ile、Trp-Alaも続く);CDR-H2は、CDR-H1の端部の後の約15残基で開始し、概してLeu-Glu-Trp-Ile-Gly(配列番号46)またはいくつかの変形形態が先行し、16~19残基であり、Lys/Arg-Leu/Ile/Val/Phe/Thr/Ala-Thr/Ser/Ile/Alaが続く;そしてCDR-H3は、CDR-H2の端部の後の約33残基で開始し、Cys-XXX-XXX(配列番号45)(通常はCys-Ala-Arg)が先行し、3~25残基であり、Trp-Gly-XXX-Gly(配列番号47)が続く。
【0162】
一実施形態において、軽鎖CDRおよび重鎖CDRは、Kabat法に従って決定される。
【0163】
一実施形態において、軽鎖CDRならびに重鎖CDR2およびCDR3は、Kabat法に従って決定され、重鎖CDR1は、AbM法に従って決定され、これは、Kabat法とChothia法との間の含むである。例えば、Whitelegg N&Rees AR,Protein Eng.2000 Dec;13(12):819-24およびMethods Mol Biol.2004;248:51-91を参照されたい。例えばAbYsis(www.bioinf.org.uk/abysis/)などの、CDRを予測するためのプログラムが公的に利用可能である。
【0164】
異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、ヒトなどの種内で比較的保存されている。構成物である軽鎖および重鎖の組み合わされたフレームワーク領域である抗体のフレームワーク領域は、三次元空間におけるCDRの位置決定およびアライメントに役立つ。CDRは主に、抗原のエピトープへの結合に関与する。各鎖のCDRは通常、N末端から開始して順次付番されてCDR1、CDR2、およびCDR3と称され、また通常は、特定のCDRが位置する鎖によって特定される。したがって、抗体の重鎖の可変ドメインに位置するCDRは、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3と称され、一方で、抗体の軽鎖の可変ドメインに位置するCDRは、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3と称される。異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。抗体間で異なるのはCDRであるが、CDR内の限定された数のアミノ酸位置しか、抗原結合に直接関与しない。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。
【0165】
「VL」または「VL」への言及は、抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab、または本明細書に開示される他の抗体断片のものを含めた、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0166】
「VH」または「VH」への言及は、抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab、または本明細書に開示される他の抗体断片のものを含めた、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。
【0167】
「モノクローナル抗体」は、Bリンパ球の単一クローンによって、または単一抗体の軽鎖および重鎖の遺伝子が形質導入されている細胞によって産生される抗体である。モノクローナル抗体は、当業者に知られる方法によって、例えば骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞との融合からハイブリッド抗体を形成する細胞を作製することによって産生される。モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体を含む。
【0168】
「キメラ抗体」は、ヒトなどの1つの種に由来するフレームワーク残基、およびマウスなどの別の種に由来するCDR(これが一般的に抗原結合をもたらす)を有する。特定の好ましい実施形態において、抗原特異的な結合ドメインは、キメラ抗体またはその抗原結合断片である。
【0169】
特定の実施形態において、抗体は、標的抗原に特異的に結合するヒト抗体(ヒトモノクローナル抗体など)またはその抗原結合断片である。ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列(複数可)を、上述のような既知のヒト定常ドメイン配列(複数可)と組み合わせることによって構築することができる。あるいは、ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって作製されてもよい。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫およびマウス-ヒト異種骨髄腫の細胞株が、例えば、KozborJ.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、およびBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)によって説明されている。加えて、トランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用して、内因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができる。例えば、Jakobovits et al.,PNAS USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993)を参照されたい。ヒト抗体が、起点となる非ヒト抗体と同様の親和性および特異性を有する場合、遺伝子シャフリングを使用して、非ヒト、例えば齧歯類の抗体からヒト抗体を得ることもできる。1993年4月1日に刊行されたPCT WO93/06213を参照されたい。CDRグラフティングによる非ヒト抗体の従来のヒト化とは異なり、この技術は、非ヒト起源のFRまたはCDR残基を有しない完全ヒト抗体をもたらす。
【0170】
「ヒト化」抗体は、ヒトフレームワーク領域と、非ヒト(例えばマウス、ラット、または合成)の免疫グロブリンからの1つ以上のCDRとを含む、免疫グロブリンである。CDRをもたらす非ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」と呼ばれ、フレームワークをもたらすヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ばれる。一実施形態において、全てのCDRが、ヒト化免疫グロブリンにおけるドナー免疫グロブリンからのものである。定常領域が存在する必要はないが、存在する場合、それらは、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち、少なくとも約85~90%、例えば約95%以上同一でなければならない。したがって、場合によりCDRを除くヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。ヒト化抗体または他のモノクローナル抗体は、抗原結合または他の免疫グロブリン機能に実質的に影響を及ぼさない、付加的な保存的アミノ酸置換を有し得る。ヒト化抗体は、遺伝子操作の手段によって構築することができる(例えば、米国特許第5,585,089号を参照されたい)。
【0171】
本明細書で使用される「ラクダIg」または「ラクダ科VHH」は、重鎖抗体の最小の既知の抗原結合単位を指す(Koch-Nolte,et al,FASEB J.,21:3490-3498(2007))。「重鎖抗体」または「ラクダ科抗体」は、2つのVHドメインを含み、軽鎖を含まない抗体を指す(Riechmann L.et al,J.Immunol.Methods 231:25-38(1999)、WO94/04678、WO94/25591、米国特許第6,005,079号)。
【0172】
「免疫グロブリン新抗原受容体」の「IgNAR」は、1つの可変新抗原受容体(VNAR)ドメインと、5つの定常新抗原受容体(CNAR)ドメインとのホモ二量体からなる、サメ免疫レパートリー由来の抗体のクラスを指す。IgNARは、最小の既知の免疫グロブリンベースのタンパク質の足場の一部であり、高度に安定であり、効率的な結合特性を有する。この本質的な安定性は、(i)マウス抗体に見られる従来の抗体のVHおよびVLドメインと比較して相当数の荷電した親水性の表面露出残基を提示する、基礎となるIg足場と、(ii)ループ間ジスルフィド架橋、およびループ内水素結合のパターンを含む、相補性決定領域(CDR)ループ内の安定化構造特徴との両方に起因し得る。
【0173】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる、各々が単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映した名称である残りの「Fc」断片とを産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有しながらも抗原に架橋結合することのできるF(ab’)2断片をもたらす。
【0174】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。一実施形態において、二本鎖Fv種は、密接な非共有性会合状態にある、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖および重鎖が二本鎖Fv種のものと類似した「二量体」構造で会合することができるように、可動性ペプチドリンカーによって共有結合していてもよい。各可変ドメインの3つの超可変領域(HVR)がVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を画定するように相互作用するのは、この構成においてである。集合的に、6つのHVRは、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体よりも低い親和性であるにせよ、抗原を認識しそれに結合する能力を有する。
【0175】
Fab断片は、重鎖および軽鎖の可変ドメインを含み、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端におけるいくつかの残基の付加により、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’に対する、本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、ヒンジシステインを間に有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0176】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖内で重鎖可変ドメイン(VH)が軽鎖可変ドメイン(VL)に接続したもの(VH-VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を作り出す。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、およびHollinger et al.,PNAS USA 90:6444-6448(1993)に、より詳細に記載されている。トリアボディおよびテトラボディもまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。
【0177】
「単一ドメイン抗体」すなわち「sdAb」または「ナノボディ」は、抗体重鎖の可変領域(VHドメイン)または抗体軽鎖の可変領域(VLドメイン)からなる抗体断片を指す(Holt,L.,et al,Trends in Biotechnology,21(11):484-490)。
【0178】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に、いずれかの配向(例えば、VL-VHまたはVH-VL)で存在する。一般に、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0179】
一本鎖抗体は、所望の標的に特異的なハイブリドーマのV領域遺伝子からクローニングされ得る。このようなハイブリドーマの産生は日常的となっている。可変領域重鎖(VH)および可変領域軽鎖(VL)のクローニングに使用することのできる技術は、例えば、Orlandi et al.,PNAS,1989;86:3833-3837に記載されている。
【0180】
「リンカー」とは、様々なポリペプチドドメイン間に、例えば、分子の適切な空間配置および立体構造のために付加されたVHドメインとVLドメインとの間の複数のアミノ酸残基を指す。特定の実施形態において、リンカーは、可変領域連結配列である。「可変領域連結配列」とは、得られるポリペプチドが、同じ軽鎖および重鎖の可変領域を含む抗体と同じ標的分子に対して特異的結合親和性を保持するように、VHドメインとVLドメインとを接続し、2つのサブ結合ドメインの相互作用と適合性のあるスペーサー機能を提供するアミノ酸配列である。特定の実施形態において、リンカーは、1つ以上の重鎖もしくは軽鎖の可変ドメイン、ヒンジドメイン、多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを分離する。
【0181】
本明細書において企図される特定の実施形態での使用に好適なリンカーの例示的な例としては、次のアミノ酸配列が挙げられるが、これらに限定されない:GGG;DGGGS(配列番号7);TGEKP(配列番号8)(例えば、Liu et al.,PNAS 5525-5530(1997)を参照されたい);GGRR(配列番号9)(Pomerantz et al.1995,上記);(GGGGS)n(式中、n=1、2、3、4または5である)(配列番号10)(Kim et al.,PNAS 93,1156-1160(1996.);EGKSSGSGSESKVD(配列番号11)(Chaudhary et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1066-1070);KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号12)(Bird et al.,1988,Science 242:423-426)、GGRRGGGS(配列番号13);LRQRDGERP(配列番号14);LRQKDGGGSERP(配列番号15);LRQKD(GGGS)2ERP(配列番号16)。代替的に、柔軟なリンカーは、DNA結合部位およびペプチド自体の両方をモデル化することができるコンピュータプログラムを使用して(Desjarlais&Berg,PNAS 90:2256-2260(1993),PNAS 91:11099-11103(1994)、またはファージディスプレイ法により、合理的に設計され得る。一実施形態において、リンカーは、次のアミノ酸配列:GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号17)を含む(Cooper et al.,Blood,101(4):1637-1644(2003))。
【0182】
「スペーサードメイン」とは、2つのドメインを分離するポリペプチドを指す。一実施形態において、スペーサードメインは、適切な細胞/細胞接触、抗原結合、および活性化が可能となるように抗原結合ドメインをエフェクター細胞の表面から離して移動させる(Patel et al.,Gene Therapy,1999;6:412-419)。特定の実施形態において、スペーサードメインは、1つ以上の重鎖もしくは軽鎖の可変ドメイン、多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを分離する。スペーサードメインは、天然、合成、半合成、または組換えの起源のいずれに由来してもよい。ある特定の実施形態において、スペーサードメインは、1つ以上の重鎖定常領域、例えば、CH2およびCH3を含むがこれらに限定されない、免疫グロブリンの一部である。スペーサードメインは、天然起源の免疫グロブリンヒンジ領域または変更された免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含み得る。
【0183】
「ヒンジドメイン」とは、適切な細胞/細胞接触、抗原結合、および活性化が可能となるように、抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から離して位置付ける機能を果たすポリペプチドを指す。特定の実施形態において、ポリペプチドは、結合ドメインと多量体化ドメインとの間、結合ドメインと膜貫通ドメイン(TM)との間、または多量体化ドメインと膜貫通ドメインとの間に1つ以上のヒンジドメインを含み得る。ヒンジドメインは、天然、合成、半合成、または組換え源のいずれかに由来し得る。ヒンジドメインは、天然起源の免疫グロブリンヒンジ領域または変更された免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含み得る。
【0184】
「変更されたヒンジ領域」とは、(a)最大30%のアミノ酸変化(例えば、最大25%、20%、15%、10%、または5%のアミノ酸置換もしくは欠失)を有する天然起源のヒンジ領域、(b)最大30%のアミノ酸変化(例えば、最大25%、20%、15%、10%、または5%のアミノ酸置換もしくは欠失)を有する、少なくとも10アミノ酸長(例えば、少なくとも12、13、14、または15アミノ酸長)の天然起源のヒンジ領域の一部分、または(c)(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15、または少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15アミノ酸長であり得る)コアヒンジ領域を含む天然起源のヒンジ領域の一部分を指す。ある特定の実施形態において、天然起源の免疫グロブリンヒンジ領域内の1つ以上のシステイン残基は、1つ以上の他のアミノ酸残基(例えば、1つ以上のセリン残基)で置換されていてもよい。変更された免疫グロブリンヒンジ領域では、代替的または付加的に、野生型免疫グロブリンヒンジ領域のプロリン残基が別のアミノ酸残基(例えば、セリン残基)で置換されていてもよい。
【0185】
本明細書で使用される場合、「多量体化ドメイン」とは、別の異なるポリペプチドと、直接または架橋分子を介して、優先的に相互作用または会合するポリペプチドを指し、異なる多量体化ドメインの相互作用は、多量体化(すなわち、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ多量体、ヘテロ多量体であり得る、二量体、三量体、または多部分複合体の形成)に実質的に寄与するか、またはこれを効率的に促進する。多量体化ドメインは、天然、合成、半合成、または組換えの起源のいずれに由来してもよい。
【0186】
本明細書において企図される特定の実施形態での使用に好適な多量体化ドメインの例示的な例としては、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、カルシニューリンポリペプチド、サイクロフィリンポリペプチド、細菌DHFRポリペプチド、PYL1ポリペプチド、ABI1ポリペプチド、GIB1ポリペプチド、GAIポリペプチド、またはそのバリアントが挙げられる。
【0187】
「架橋因子」とは、2つ以上の多量体化ドメインと会合し、その間に配置される分子を指す。特定の実施形態において、多量体化ドメインは、架橋因子の存在下でのみポリペプチド複合体の形成に実質的に寄与するか、またはこれを効率的に促進する。特定の実施形態において、多量体化ドメインは、架橋因子の不在下でポリペプチド複合体の形成に寄与しないか、またはこれを効率的に促進しない。本明細書において企図される特定の実施形態での使用に好適な架橋因子の例示的な例としては、ラパマイシン(シロリムス)もしくはそのラパログ、クーママイシンもしくはその誘導体、ジベレリンもしくはその誘導体、アブシジン酸(ABA)もしくはその誘導体、メトトレキサートもしくはその誘導体、シクロスポリンAもしくはその誘導体、FKCsAもしくはその誘導体、FKBP(SLF)のトリメトプリム(Tmp)-合成リガンドもしくはその誘導体、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0188】
ラパマイシン類似体(ラパログ)としては、米国特許第6,649,595号において開示されているものが挙げられるが、これらに限定されず、このラパログ構造は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態において、架橋因子は、ラパマイシンと比較して、実質的に低減された免疫抑制効果のあるラパログである。好ましい一実施形態において、ラパログは、AP21967誘導体(C-16-(S)-7-メチルインドールラパマイシンとしても知られており、IC50=10nM、化学的に修飾された免疫抑制効果のないラパマイシン類似体)である。
【0189】
「実質的に低減された免疫抑制効果」とは、臨床的に測定されるか、またはヒト免疫抑制活性についての、適切なインビトロにおけるサロゲート(例えば、T細胞増殖の阻害)、もしくはインビボにおけるサロゲートにおいて測定される免疫抑制効果が、当モル量のラパマイシンについて観察または予測される少なくとも0.1~0.005倍未満の免疫抑制効果を有するラパログを指す。一実施形態において、「実質的に低減された免疫抑制効果」とは、このようなインビトロアッセイにおけるEC50値が、同じアッセイにおいてラパマイシンについて観察されるEC50値よりも少なくとも10~250倍大きいラパログを指す。ラパログの他の例示的な例としては、AP21967、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
本明細書で使用される場合、「アンカードメイン」とは、二量体化可能なサルベージ受容体の、細胞表面への係留、アンカリング、またはこれとの会合を促進する、アミノ酸配列または他の分子を指す。例示的なアンカードメインは、細胞膜内で安定な構造を伴うアミノ酸配列、または糖脂質(グリコシルホスファチジルイノシトールまたはGPIとしてもまた既知である)などの付加を促進するアミノ酸配列を含む。背景として、GPI分子は、カルボキシ末端のGPIシグナル配列の切断(例えば、White et al.,J.Cell Sci.113:721,2000を参照されたい)、および既に合成されたGPIアンカー分子の、新たに形成されたカルボキシ末端のアミノ酸への同時的な移動(例示的なGPIアンカーであって、参照によりそれらの全体が組み込まれるGPIアンカーについては、www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK20711を参照されたい)を結果としてもたらす、アミノ基転移反応により、タンパク質標的に翻訳後に付着される。ある特定の実施形態において、アンカードメインは、疎水性ドメイン(例えば、膜貫通ドメイン)またはGPIシグナル配列である。いくつかの実施形態において、本明細書において企図されるポリペプチドをコードする核酸分子は、アンカードメインを含み、任意に、アンカードメインはGPI分子である。
【0191】
「膜貫通ドメイン」は、細胞の細胞膜にポリペプチドを固定するドメインである。TMドメインは、天然、合成、半合成、または組換え源のいずれかに由来し得る。
【0192】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、免疫エフェクター細胞上に発現された受容体によって標的抗原の効果的な結合のメッセージを、免疫エフェクター細胞の内部に形質導入して、エフェクター細胞機能、例えば、活性化、サイトカイン産生、増殖、および細胞傷害性因子の放出を含む細胞傷害活性、または免疫エフェクター細胞上に発現された受容体に抗原結合より誘発される他の細胞応答を誘発することに関与する、ポリペプチドを指す。
【0193】
「エフェクター機能」という用語は、免疫エフェクター細胞の特殊機能を指す。例えばT細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性、またはサイトカインの分泌を含む補助もしくは活性であり得る。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞に特殊機能を行わせる、タンパク質の一部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体が採用され得るが、多くの場合、ドメイン全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮化部分が使用される範囲内では、そのような短縮化部分は、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、ドメイン全体の代わりに使用され得る。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインのいかなる短縮化部分をも含むよう意図される。
【0194】
TCRによって生成されたシグナル単独ではT細胞の完全な活性化に不十分であり、二次的または共刺激性のシグナルも必要であることが知られている。したがって、T細胞活性化は、2つの明確に異なるクラスの細胞内シグナル伝達ドメイン、すなわち、TCR(例えば、TCR/CD3複合体)によって抗原依存性一次活性化を開始する一次シグナル伝達ドメインと、抗原依存様式で作用して二次的または共刺激性のシグナルを提供する共刺激シグナル伝達ドメインとによって媒介されると言うことができる。
【0195】
「一次シグナル伝達ドメイン」とは、刺激方法または阻害方法のいずれかでTCR複合体の一次活性化を調節するシグナル伝達ドメインを指す。刺激様式で作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。特定の実施形態での使用に好適な一次シグナル伝達ドメインを含有するITAMの例示的な例としては、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0196】
本明細書で使用される場合、「共刺激シグナル伝達ドメイン」または「共刺激ドメイン」という用語は、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを指す。共刺激分子は、抗原に結合するとTリンパ球の効率的な活性化および機能に必要とされる第2のシグナルを提供する、抗原受容体またはFc受容体以外の細胞表面分子である。共刺激ドメインが単離され得るような共刺激分子の例示的な例としては、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、およびZAP70が挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、一般に、異常な細胞が制御されずに分裂し、近くの組織に浸潤し得る、疾患または状態のクラスに関する。
【0198】
本明細書で使用される場合、「悪性」という用語は、腫瘍細胞の群が、制御されていない成長(すなわち、正常な限界を超えた分裂)、浸潤(すなわち、近接組織への侵入およびその破壊)、ならびに転移(すなわち、リンパ液または血液を介した、体内の他の場所への拡散)のうちの1つ以上を示すがんを指す。本明細書で使用される場合、「転移する」という用語は、身体の1つの部分から別の部分へとがんが拡散することを指す。拡散した細胞により形成された腫瘍は「転移性腫瘍」または「転移」と呼ばれる。転移性腫瘍は、元々(原発)の腫瘍の細胞と同様の細胞を含む。
【0199】
本明細書で使用される場合、「良性」または「非悪性」という用語は、大きく成長し得るが、身体の他の部分に拡散しない腫瘍を指す。良性腫瘍は、自己限定的であり、通常は浸潤または転移しない。
【0200】
「がん細胞」は、がん性腫瘍または組織の個々の細胞を指す。がん細胞は、固形がんと液性がんとの両方を含む。「腫瘍」または「腫瘍細胞」とは、概して、良性、前悪性、または悪性であり得る細胞の異常増殖により形成された腫脹または病変を指す。ほとんどのがんは腫瘍を形成するが、液性がん、例えば白血病は、必ずしも腫瘍を形成するわけではない。腫瘍を形成するがんに関しては、がん(細胞)および腫瘍(細胞)という用語は互換的に使用される。個体における腫瘍の量は、腫瘍の数、体積、または重量として測定され得る「腫瘍負荷」である。
【0201】
「再発」という用語は、改善または寛解後のがんの戻り、または戻りの兆候および症状の診断を指す。
【0202】
「寛解」はまた、「臨床的寛解」と称され、部分的および完全寛解の両方を含む。部分的寛解において、がんの一部ではあるが、全てではない、兆候および症状が、消失する。完全寛解において、がんが依然として体内に存在し得るが、がんの全ての兆候および症状が、消失する。
【0203】
「難治性」とは、特定の治療剤を有する治療法に耐性を示すか、またはそれに応答しないがんを指す。がんは、第1の治療期間の経過にわたってまたはその後の治療期間中のいずれかで、治療の開始から、または治療剤への耐性を生じる結果として難治性であり得る(すなわち、治療剤への初期曝露への非応答性)。
【0204】
「抗原陰性」とは、抗原を発現しない、または検出できない無視できる量の抗原を発現する、細胞を指す。一実施形態において、抗原陰性細胞は、抗原に指向される受容体に結合しない。一実施形態において、抗原陰性細胞は、抗原に指向される受容体に実質的に結合しない。
【0205】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、本明細書において企図される組成物および方法を用いて治療され得る特定の疾患、障害、または状態と診断されたことのある対象を指す。
【0206】
本明細書で使用される「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」には、疾患または病態の症状もしくは病理に対する、あらゆる有益な作用または望ましい作用を含み、治療される疾患または状態の1つ以上の測定可能なマーカーの最小の低減さえも含み得る。治療は、任意に、疾患もしくは状態の低減、または疾患もしくは状態の進行の遅延、例えば、腫瘍成長の遅延のいずれかを伴ってもよい。「治療」は、疾患もしくは状態、またはその関連症状の完全な根絶、あるいは治癒を必ずしも示さない。
【0207】
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」および「予防される(prevented)」、「予防すること(preventing)」などの同様の用語は、疾患もしくは状態の発生または再発の可能性を予防、阻害、または低減するための手法を示す。疾患もしくは状態の開始または再発を遅延する、あるいは疾患もしくは状態の症状の発生または再発を遅延することも指す。本明細書で使用される場合、「予防(prevention)」および類似する用語も、疾患もしくは状態の開始または再発前の疾患もしくは状態の強度、作用、症状、および/または負荷を減少させることも含む。
【0208】
本明細書で使用される場合、「の少なくとも1つの症状を寛解させる」という表現は、対象が治療を受けている疾患または状態の1つ以上の症状を減少させることを指す。特定の実施形態において、治療される疾患または状態はがんであり、寛解される1つ以上の症状としては、脱力感、疲労、息切れ、易挫傷性および易出血性、頻繁な感染症、リンパ節腫大、腹部の膨張または(腹部器官の肥大による)痛み、骨痛または関節痛、骨折、計画外の体重減少、食欲不振、寝汗、持続的微熱、および(腎機能不全による)排尿減少が挙げられるが、これらに限定されない。
【0209】
「増強する」または「促進する」または「増加する」または「増幅する」とは、概して、本明細書において企図される組成物が、ビヒクルもしくは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較してより大きな生理学的応答(すなわち、下流作用)をもたらすか、誘発するか、または引き起こす能力を指す。測定可能な生理学的応答は、当該技術分野における理解および本明細書の説明から明らかであるものの中でもとりわけ、T細胞の増幅、活性化、持続性の増加、および/またはがん細胞殺滅能力の増加を含み得る。「増加した」または「増強された」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、ビヒクルまたは対照組成物によりもたらされる応答の1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、またはそれ以上(例えば、500、1000倍)(その間および1を超える全ての整数ならびに小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)の増加を含み得る。
【0210】
「減少する」、または「低下する」、または「減らす」、または「低減する」、または「軽減する」とは、概して、本明細書において企図される組成物が、ビヒクルもしくは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較してより小さな生理学的応答(すなわち、下流作用)をもたらすか、誘発するか、または引き起こす能力を指す。「減少した」または「低減した」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、ビヒクル、対照組成物によりもたらされる応答(参照応答)または特定の細胞系列における応答の1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、またはそれ以上(例えば、500、1000倍)(その間および1を超える全ての整数ならびに小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)の減少を含み得る。
【0211】
「維持する」、または「保存する」、または「維持」、または「変化しない」、または「実質的に変化しない」、または「実質的に減少しない」とは、概して、本明細書において企図される組成物が、細胞において、ビヒクル、対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答、または特定の細胞系列における応答と比較した場合に実質的に同様もしくは比較可能な生理学的応答(すなわち、下流作用)をもたらすか、誘発するか、または引き起こす能力を指す。比較可能な応答は、参照応答と大幅に異ならないか、または測定可能な差がないものである。
【0212】
C.サルベージキメラ抗原受容体
様々な実施形態において、標的抗原を発現するがん細胞に免疫エフェクター細胞の細胞傷害性を再指向させる遺伝子操作された受容体が提供される。これらの遺伝子操作された受容体は、本明細書において、サルベージキメラ抗原受容体(CAR)と称される。サルベージCARは、抗原特異的な細胞免疫活性を示すキメラタンパク質を生成するために、所望の抗原に対する抗体ベースの特異性をT細胞受容体活性化細胞内ドメインと組み合わせる分子である。サルベージCARはまた、抗原特異的なCARを別の抗原に再指向させることができる、多量体化ドメインも含む。本明細書で使用される場合、「キメラ」という用語は、異なる起源からの異なるタンパク質またはDNAの一部で構成されることを説明する。サルベージCARを含むT細胞は、サルベージCARを発現するCAR T細胞またはサルベージCAR T細胞と称される。
【0213】
特定の実施形態において、サルベージCARは、標的抗原に結合する細胞外ドメイン(結合ドメインまたは抗原特異的結合ドメインとも称される)、多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。他の特定の実施形態において、サルベージCARは、細胞外抗原特異的結合ドメイン、膜貫通ドメイン、多量体化ドメイン、および1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。サルベージCARの抗原結合ドメインと、標的細胞の表面上の標的抗原との会合は、サルベージCARのクラスター化をもたらし、サルベージCAR含有細胞に活性化刺激を送達する。サルベージCARの主な特性は、免疫エフェクター細胞の特異性を再指向させ、それにより、モノクローナル抗体、可溶性リガンド、または細胞特異的共受容体の細胞特異的標的化能力を利用して、主要組織適合性(MHC)依存様式で標的抗原発現細胞の細胞死を媒介することのできる分子の増殖、サイトカイン産生、食作用、または産生を誘発するそれらの能力である。
【0214】
様々な実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARは、がん、任意に、サルベージCARによって標的とされる初期抗原に対して陰性である抗原である再発性または難治性がんの増加した標的とする柔軟性および再標的化を提供する。
【0215】
特定の実施形態において、サルベージCARは、細胞外抗原結合ドメイン、多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0216】
特定の実施形態において、サルベージCARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、多量体化ドメイン、1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0217】
特定の実施形態において、サルベージCARは、抗体またはその抗原結合断片を含む細胞外結合ドメイン、1つ以上のスペーサードメインおよび/もしくはリンカー、多量体化ドメイン、1つ以上のヒンジドメイン、1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含む膜貫通ドメイン、および一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0218】
特定の実施形態において企図されるサルベージCARは、ラクダIg、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)からなる群から選択される抗原結合ドメインを含む。いくつかの好ましい実施形態において、抗原結合ドメインは、scFvまたは単一ドメイン抗体である。
【0219】
特定の実施形態において、抗原結合ドメインは、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される標的抗原に結合する。
【0220】
特定の実施形態において、標的抗原は、BCMA、CD19、CSPG4、PSCA、ROR1、およびTAG72からなる群から選択される。
【0221】
特定の実施形態において、標的抗原は、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される。
【0222】
特定の実施形態において企図されるCARは、サルベージCARの様々なドメイン間に、場合によっては、サルベージCARドメインの適切な空間配置および立体構造を提供するために1つ以上のリンカーまたはスペーサーポリペプチドを含む。特定の実施形態において、リンカーは、サルベージCARの抗原結合ドメインにおいてscFvの重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの間に配置されている。特定の実施形態において、リンカーは、(GGGGS)nリンカー(式中、n=1、2、3、4、または5である)である(配列番号10)。
【0223】
ある特定の実施形態において、サルベージCARは、IgG1、IgG4、またはIgDのCH2およびCH3ドメインを含むスペーサードメインを含む。
【0224】
サルベージCARはまた、特定の実施形態においてヒンジドメインも含むことができる。本明細書に記載されるサルベージCARで使用するのに好適な例示的なヒンジドメインとしては、CD8αおよびCD4などの1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域が挙げられ、これは、これらの分子からの野生型ヒンジ領域であってもよいし、変更されていてもよい。別の実施形態において、ヒンジドメインは、CD8αヒンジ領域を含む。一実施形態において、ヒンジは、PD-1ヒンジまたはCD152ヒンジである。
【0225】
特定の実施形態において、サルベージCARは、1つ以上の多量体化ドメインを含む。特定の実施形態において、多量体化ドメインは、細胞外である。多量体化ドメインは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間、抗原結合ドメインとヒンジドメインとの間、またはヒンジドメインと膜貫通ドメインとの間に配置され得る。本明細書において企図される特定の実施形態での使用に好適な多量体化ドメインの例示的な例としては、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、カルシニューリンポリペプチド、サイクロフィリンポリペプチド、細菌DHFRポリペプチド、PYL1ポリペプチド、ABI1ポリペプチド、GIB1ポリペプチド、GAIポリペプチド、またはそのバリアントが挙げられる。
【0226】
一実施形態において、多量体化ドメインは、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、およびそのバリアントからなる群から選択される。
【0227】
一実施形態において、多量体化ドメインは、FKBP12ポリペプチドおよびFRB T2098Lポリペプチドからなる群から選択される。
【0228】
特定の実施形態において、サルベージCARは、TMドメインが、T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD1に由来し得る(すなわち、少なくともこれらの膜貫通領域(複数可)を含む)を含む。特定の実施形態において、TMドメインは合成的であり、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。
【0229】
一実施形態において、サルベージCARは、PD1、CD152、またはCD8αに由来するTMドメインを含む。別の実施形態において、サルベージCARは、PD1、CD152、もしくはCD8αに由来するTMドメインと、サルベージCARのTMドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを連結させる、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の間のアミノ酸長の短いオリゴペプチドまたはポリペプチドリンカーとを含む。グリシン-セリンベースのリンカーは、特に好適なリンカーを提供する。
【0230】
本明細書において企図されるサルベージCARは、1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、サルベージCARは、1つ以上の共刺激細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含む。
【0231】
特定の実施形態での使用に好適な一次シグナル伝達ドメインを含むITAMの例示的な例としては、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが挙げられる。特定の好ましい実施形態において、サルベージCARは、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインおよび1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。細胞内一次シグナル伝達ドメインおよび共刺激シグナル伝達ドメインは、膜貫通ドメインのカルボキシル末端に、任意の順序でタンデムに連結していてもよい。
【0232】
そのような共刺激分子の例示的な例としては、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、およびZAP70が挙げられる。一実施形態において、サルベージCARは、CD28、CD137、およびCD134からなる群から選択される1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、サルベージCARは、CD28、CD137、およびCD134からなる群から選択される1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメイン、ならびにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0233】
D.二量体化可能なサルベージ受容体
様々な実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARは、再発性または難治性がん細胞への免疫エフェクター細胞の細胞傷害性を再指向するように操作されている。再発性または難治性がん細胞へのCAR T細胞(サルベージCAR T細胞)を再指向されるまたは再標的化する分子は、本明細書において二量体性サルベージ受容体と称される。二量体化可能なサルベージ受容体は、架橋因子の存在下で、サルベージCARの多量体化ドメインと相互作用する多量体化ドメインと再発性または難治性がん細胞上で発現される抗原に対する抗原に基づいた特異性を組み合わせる分子である。架橋因子の存在下で、二量体化可能なサルベージ受容体は、再発性または難治性がん細胞に対する免疫エフェクター細胞活性を再開始するようにサルベージCAR分子に係合する。いずれの特定の理論によって拘束されるものではないが、初期がん抗原に対するCAR T細胞療法は、寛解をもたらすことが企図される。しかしながら、がんが、戻り、初期がん抗原の発現を欠いているまたはほとんど発現しない場合、がんに対する免疫エフェクター細胞活性を再開始するように再発性または難治性がん細胞上に発現する抗原を標的化する二量体化可能なサルベージ受容体が選択される。
【0234】
様々な実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体ポリペプチドは、CAR T細胞療法を受けたことがある対象に投与される。
【0235】
様々な実施形態において、架橋因子で予め充填された二量体化可能なサルベージ受容体ポリペプチドは、CAR T細胞療法を受けたことがある対象に投与される。
【0236】
様々な実施形態において、サルベージCAR T細胞は、二量体化可能なサルベージ受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された誘導性プロモーターを含む。
【0237】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、結合した架橋因子を含む。
【0238】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、抗原結合ドメインおよび多量体化ドメインを含む。
【0239】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、抗原結合ドメイン、多量体化ドメイン、およびアンカードメインを含む。
【0240】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、抗原結合ドメイン、多量体化ドメイン、ヒンジドメイン、およびアンカードメインを含む。
【0241】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、リンカードメイン、および多量体化ドメインから本質的になる。
【0242】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、リンカードメイン、多量体化ドメイン、ヒンジドメイン、およびアンカードメインから本質的になる。
【0243】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、抗原結合ドメイン、リンカードメイン、および多量体化ドメインから本質的になる。
【0244】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、抗原結合ドメイン、リンカードメイン、多量体化ドメイン、ヒンジドメイン、およびアンカードメインから本質的になる。
【0245】
特定の実施形態において企図される二量体化可能なサルベージ受容体は、抗体またはその抗原結合断片を含む。特定の実施形態において、抗体または抗原結合断片は、ラクダIg、Ig NAR、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fv抗体(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、および単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)からなる群から選択される。好ましい一実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、scFv抗原結合ドメインを含む。
【0246】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される抗原に結合する抗原結合ドメインを含む。
【0247】
一実施形態において、BCMA、CD19、CSPG4、PSCA、ROR1、およびTAG72からなる群、またはBCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される抗原。
【0248】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、1つ以上のリンカーを含む。リンカーは、抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間、および/または抗原結合ドメインと多量体化ドメインとの間に配置され得る。一実施形態において、リンカーは、(GGGGS)nリンカー(式中、n=1、2、3、4、または5である)である(配列番号10)。
【0249】
一実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、カルシニューリンポリペプチド、サイクロフィリンポリペプチド、細菌DHFRポリペプチド、PYL1ポリペプチド、ABI1ポリペプチド、GIB1ポリペプチド、GAIポリペプチド、およびそれらのバリアントからなる群から選択される多量体化ドメインを含む。
【0250】
一実施形態において、多量体化ドメインは、FKBPポリペプチド、FRBポリペプチド、またはそれらのバリアントを含む。
【0251】
一実施形態において、多量体化ドメインは、FKBP12ポリペプチドまたはFRB T2098Lポリペプチドを含む。
【0252】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、ヒンジドメインを含む。一実施形態において、ヒンジドメインは、CD4ヒンジ、CD8αヒンジ、PD-1ヒンジ、およびCD152ヒンジから本質的になる群から選択される。
【0253】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、TMドメインが、T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD1に由来し得る(すなわち、少なくともこれらの膜貫通領域(複数可)を含む)を含む。特定の実施形態において、TMドメインは合成的であり、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。
【0254】
特定の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、GPIアンカー分子を含む。
【0255】
E.サルベージCARシステム
再発性または難治性がんは、細胞免疫療法分野を悩ませている一般的な問題である。本明細書において企図されるサルベージCARシステムは、再発性/難治性がん、特に、最初に標的化された抗原(初期標的抗原)をもはや発現しないものを治療するために高効率的解法を提供する。例えば、抗CD19 CAR T細胞によりCD19を発現する白血病に対して治療された患者は、最初に、改善およびがんの退縮を示し得るが、最終的に、CD19発現を欠いている白血病が再発する場合がある。このシナリオは、患者に存在するCAR T細胞がCD19に対して特異的であり、したがって、再発性または難治性CD19陰性がん細胞が、免疫系では探知されず、さらなる治療的介入することなく確認されないまま成長するため、深刻な問題を示す。サルベージCARシステムは、本明細書において、二量体化可能なサルベージ受容体と称される、さらなる標的受容体の形での介入を提供する。
【0256】
様々な実施形態において、サルベージCARシステムは、がん、およびある特定の好ましい実施形態において、再発性または難治性がんを治療するために、対象に提供される。サルベージCARシステムは、がん細胞上に発現する第1の抗原に対するサルベージCAR、がん細胞上に発現する第2の抗原に対する二量体化可能なサルベージ受容体、および架橋因子を含む、CAR T細胞を含む。
【0257】
様々な実施形態において、架橋因子を予め充填または結合した二量体化可能なサルベージ受容体が、提供され得るかまたは対象に投与され得る。
【0258】
様々な他の実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、提供されるかまたは対象に投与されるとき、架橋因子を予め充填または結合しない。
【0259】
任意の特定の理論に拘束されることを望むものではないが、再発性/難治性がんが、再発性/難治性がん上にもはや発現しないまたは実質的にもはや発現しない第1の抗原を対象にするサルベージCARを発現するCAR T細胞で治療されたことがある対象においてそれ自体が現れると、再発性または難治性がん細胞上に発現するまたは実質的に発現する第2の抗原を対象にする二量体化可能なサルベージ受容体が、対象に投与されることが企図される。対象に、サルベージCARの多量体化ドメインおよび二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインに結合する架橋因子をさらに投与し、それによってサルベージCARとサルベージ受容体との間に会合を促進する。この会合は、CARシグナル伝達経路を再係合し、第2の抗原を発現する再発性/難治性がん細胞に対する免疫エフェクター細胞活性を促進する。
【0260】
特定の実施形態において、サルベージCARシステムは、第1の抗原に結合するCAR;第2の抗原に結合する二量体化可能なサルベージ受容体;ならびに第2の抗原を発現するがん細胞に対して機能的に活性なサルベージCARを形成するために、サルベージCARおよび二量体化可能なサルベージ受容体に結合する架橋因子を含むCAR T細胞(サルベージCAR T細胞)を含む。
【0261】
一実施形態において、二量体化可能なサルベージ受容体は、対象に投与される。
【0262】
一実施形態において、サルベージCAR T細胞は、誘導性プロモーター、および二量体化可能なサルベージ受容体をコードするポリヌクレオチドを含む、核酸を含む。
【0263】
いくつかの実施形態において、サルベージCARおよび二量体化可能なサルベージ受容体は、同じ抗原上で異なるエピトープに結合するように設計される。
【0264】
好ましい実施形態において、第1の抗原は、第2の抗原とは異なる。
【0265】
特定の実施形態において、第1の抗原および第2の抗原は、独立して、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、EGFRファミリー、例えば、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、Lewis-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、およびWT-1からなる群から選択される。
【0266】
一実施形態において、サルベージCARシステムは、B細胞悪性腫瘍を標的とする。
【0267】
特定の実施形態において企図されるサルベージCARシステムは、BCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される第1の抗原を標的化するサルベージCAR、ならびにBCMA、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される第2の抗原を標的化する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含む。
【0268】
特定の実施形態において、サルベージCARシステムは、BCMAを標的化するサルベージCAR、ならびにCD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される第2の抗原を標的化する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含む。
【0269】
ある特定の実施形態において、サルベージCARシステムは、CD19を標的化するサルベージCAR、ならびにBCMA、CD20、CD22、CD23、CD33、CD37、CD52、CD80、およびHLA-DRからなる群から選択される第2の抗原を標的化する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含む。
【0270】
一実施形態において、サルベージCARシステムは、BCMAを標的化するサルベージCAR、およびCD19を標的化する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含む。
【0271】
別の実施形態において、サルベージCARシステムは、CD19を標的化するサルベージCARおよびBCMAを標的化する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含む。
【0272】
サルベージCARシステムは、1つの標的抗原に対する初期特異性を有するサルベージCARを同時に選択して、サルベージCARおよび二量体化可能なサルベージ受容体における多量体化ドメインの架橋因子を媒介される会合によって第2の標的抗原を認識する、柔軟ながん標的システムである。
【0273】
様々な実施形態において、サルベージCARの多量体化ドメインおよび二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインは、FKBPおよびFRB、FKBPおよびカルシニューリン、FKBPおよびサイクロフィリン、FKBPおよび細菌DHFR、カルシニューリンおよびサイクロフィリン、PYL1およびABI1、またはGIB1およびGAI、またはそれらのバリアントから選択される対である。
【0274】
一実施形態において、サルベージCARの多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含み、二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む。
【0275】
一実施形態において、サルベージCARの多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含み、二量体化可能なサルベージ受容体の多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む。
【0276】
一実施形態において、架橋因子は、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、またはゾタロリムスである。
【0277】
特定の一実施形態において、サルベージCARシステムは、BCMAに特異的なscFv、FRB T2098L多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびITAMまたはCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを有するサルベージCAR、ならびにCD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを有する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含み、架橋因子はAP21967である。
【0278】
一実施形態において、サルベージCARシステムは、CD19に特異的なscFv、FRB T2098L多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびITAMまたはCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを有するサルベージCAR、ならびにBCMAに特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを有する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含み、架橋因子はAP21967である。
【0279】
特定の一実施形態において、サルベージCARシステムは、BCMAに特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびITAMまたはCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを有するサルベージCAR、ならびにCD19に特異的なscFv、FRB T2098L多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを有する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含み、架橋因子はAP21967である。
【0280】
一実施形態において、サルベージCARシステムは、CD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびITAMまたはCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを有するサルベージCAR、ならびにBCMAに特異的なscFv、FRB T2098L多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを有する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含み、架橋因子はAP21967である。
【0281】
別の実施形態において、サルベージCARシステムは、BCMAに特異的なscFv、FRB多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびITAMまたはCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを有するサルベージCAR、ならびにCD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを有する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含み、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである。
【0282】
別の実施形態において、サルベージCARシステムは、CD19に特異的なscFv、FRB多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびITAMまたはCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを有するサルベージCAR、ならびにBCMAに特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを有する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含み、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである。
【0283】
別の実施形態において、サルベージCARシステムは、BCMAに特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびITAMまたはCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを有するサルベージCAR、ならびにCD19に特異的なscFv、FRB多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを有する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含み、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである。
【0284】
別の実施形態において、サルベージCARシステムは、CD19に特異的なscFv、FKBP12多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、4-1BBの共刺激ドメイン、およびITAMまたはCD3ζの一次シグナル伝達ドメインを有するサルベージCAR、ならびにBCMAに特異的なscFv、FRB多量体化ドメイン、および任意に、アンカードメインを有する二量体化可能なサルベージ受容体を含むCAR T細胞を含み、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムス、またはエベロリムスである。
【0285】
F.ポリペプチド
サルベージCARポリペプチド、二量体化可能なサルベージ受容体ポリペプチドおよびそれらの断片、細胞およびそれを含む組成物、ならびにポリペプチドを発現するベクターが挙げられるが、これらに限定されない、様々なポリペプチドが、本明細書において企図される。
【0286】
「ポリペプチド」、「ポリペプチド断片」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、別段の規定がない限り、従来の意味に従って、すなわち、アミノ酸の配列として同義に使用される。ポリペプチドは、合成されても、組換え産生されてもよい。ポリペプチドは特定の長さに限定されず、例えば、それらは、全長タンパク質配列または全長タンパク質の断片を含み得、かつ、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化など、ならびに当該技術分野で知られる天然起源と非天然起源との両方の他の修飾を含み得る。様々な実施形態において、ポリペプチドは、タンパク質の移動を同時翻訳によってか翻訳後かに指向するシグナル(またはリーダー)配列を、タンパク質のN末端に含む。本明細書において企図されるポリペプチドにおいて有用な好適なシグナル配列の例示的な例としては、IgG1重鎖シグナルポリペプチド、CD8αシグナルポリペプチド、またはヒトGM-CSF受容体アルファシグナルポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。ポリペプチドは、様々な周知の組換えおよび/または合成技法のいずれかを使用して調製され得る。本明細書において企図されるポリペプチドは、具体的には、本明細書において企図されるサルベージCARまたは二量体化可能なサルベージ受容体の1つ以上のアミノ酸の欠失、付加、および/もしくは置換を有する配列を包含する。
【0287】
本明細書で使用される「単離されたペプチド」または「単離されたポリペプチド」などは、細胞環境から、また細胞の他の成分との会合から、ペプチドもしくはポリペプチド分子をインビトロで単離および/または精製することを指す(すなわち、それは、インビボの物質と著しく会合していない)。同様に、「単離された細胞」とは、インビボ組織または器官から得られ、細胞外基質を実質的に含まない細胞を指す。
【0288】
ポリペプチドは、「ポリペプチドバリアント」を含む。ポリペプチドバリアントは、1つ以上の置換、欠失、付加、および/または挿入において天然起源のポリペプチドと異なり得る。そのようなバリアントは、天然起源であっても、または、例えば、上記のポリペプチド配列のうちの1つ以上を改変することによって合成的に生成されてもよい。例えば、特定の実施形態において、ポリペプチドに、1つ以上の置換、欠失、付加、および/または挿入を導入することによって、ポリペプチドの結合親和性および/または他の生物学的特性を改善させることが望ましい場合がある。特定の実施形態において、ポリペプチドは、典型的にはバリアントが参照配列の少なくとも1つの生物活性を維持する場合、本明細書において企図される参照配列のいずれかに対して少なくとも約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、86%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドを含む。
【0289】
ポリペプチドは、「ポリペプチド断片」を含む。ポリペプチド断片は、天然起源または組換え産生のポリペプチドのアミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失、および/または内部欠失もしくは置換を有する、単量体であっても多量体であってもよいポリペプチドを指す。ある特定の実施形態において、ポリペプチド断片は、少なくとも5~約500アミノ酸長のアミノ酸鎖を含み得る。ある特定の実施形態において、断片が、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、または450アミノ酸長であることは理解されよう。特に有用なポリペプチド断片は、抗体の抗原結合ドメインまたは断片を含む機能性ドメインを含む。
【0290】
ポリペプチドはまた、ポリペプチド(例えば、ポリ-His)の合成、精製、もしくは特定を容易にするため、または固体担体へのポリペプチドの結合を増強するために、インフレームで融合されるか、またはリンカーもしくは他の配列に接合されてもよい。
【0291】
上記のように、ポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、短縮化、および挿入を含む、様々な方法で変更され得る。このような操作方法は、当該技術分野で一般に既知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNAにおける突然変異により調製され得る。突然変異誘発およびヌクレオチド配列の変更方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Kunkel(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488-492)、Kunkel et al.,(1987,Methods in Enzymol,154:367-382)、米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.et al.,(Molecular Biology of the Gene,Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)、およびこれらの文献中に引用される参考文献を参照されたい。目的とするタンパク質の生物活性に影響しない適切なアミノ酸置換に関する指針は、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルに見出すことができる。
【0292】
ある特定の実施形態において、ポリペプチドバリアントは、1つ以上の保存的置換を含む。「保存置換」とは、ペプチド化学分野における当業者がポリペプチドの二次構造および疎水性親水性(hydropathic nature)が実質的に変化しないことを予想するように、アミノ酸が類似する性質を有する別のアミノ酸に置換されるものである。特定の実施形態において企図されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造に改変を行いながらも、依然として、望ましい特性を有するバリアントまたは誘導体のポリペプチドをコードする機能性分子を得ることができる。同等の、またはさらには改善されたバリアントポリペプチドを作り出すために、ポリペプチドのアミノ酸配列を変更することが所望される場合、当業者は、例として、例えば表1によるコードDNA配列のコドンのうちの1つ以上を変化させることができる。
【表1】
【0293】
生物学的活性を消失することなく置換、挿入、または欠失させることのできるアミノ酸残基がどれかを決定する指針は、当該技術分野で周知のコンピュータプログラム、例えばDNASTAR、DNA Strider、Geneious、Mac Vector、またはVector NTIソフトウェアなどを使用して見出すことができる。好ましくは、本明細書に開示されるタンパク質バリアントのアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に荷電したアミノ酸または非荷電のアミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、それらの側鎖において関連するアミノ酸のファミリーのうちの1つの置換を伴う。天然起源のアミノ酸は一般に、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)の4つのファミリーに分類される。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時折、芳香族アミノ酸として一緒に分類される。ペプチドまたはタンパク質において、アミノ酸の好適な保存的置換は、本技術分野における当業者に既知であり、一般に、得られる分子の生物学的活性を変更することなく作製され得る。当業者は、全般に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換が実質的に生物学的活性を変更しないことを認識している(例えば、Watson et al.Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224を参照されたい)。
【0294】
そのような変更を行う際、アミノ酸の疎水性親水性指標が考慮される場合がある。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与するアミノ酸の疎水性親水性指標の重要性は、当該技術分野において一般的に理解されている(参照により本明細書に組み込まれるKyte and Doolittle,1982)。各アミノ酸には、その疎水性および電荷特性に基づいて疎水性親水性指標が割り当てられている(Kyte and Doolittle,1982)。それらの値は、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/システイン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、スレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸(-3.5)、アスパラギン(-3.5)、リジン(-3.9)、およびアルギニン(-4.5)である。
【0295】
ある特定のアミノ酸を同様の疎水性親水性指標またはスコアを有する他のアミノ酸で置き換え、依然として同様の生物活性を有するタンパク質をもたらすこと、すなわち、依然として生物学機能的に同等のタンパク質を得ることができることは、当該技術分野で知られている。そのような変更を行う際、疎水性親水性指標が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものが特に好ましく、±0.5以内であるものがさらにより特に好ましい。親水性に基づいて同様のアミノ酸の置換が効果的に行われ得ることも、当該技術分野では理解される。
【0296】
米国特許第4,554,101号に詳述されているように、次の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(-0.4)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(-0.5)、ヒスチジン(-0.5)、システイン(-1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、チロシン(-2.3)、フェニルアラニン(-2.5)、トリプトファン(-3.4)。アミノ酸を同様の親水性値を有する別のものに置換し、依然として生物学的に同等な、特に免疫学的に同等なタンパク質を得ることができることが理解されている。そのような変化において、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものが特に好ましく、±0.5以内であるものがさらにより特に好ましい。
【0297】
上記に概説したように、アミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズに基づいてもよい。
【0298】
ポリペプチドバリアントは、グリコシル化形態、他の分子との凝集接合体、および無関係の化学部分との共有結合接合体(例えば、PEG化分子)をさらに含む。共有結合バリアントは、当該技術分野で既知であるように、アミノ酸鎖内またはN末端もしくはC末端の残基に見出される基に官能基を連結することによって調製することができる。バリアントには、対立遺伝子バリアント、種バリアント、およびムテインも含まれる。タンパク質の機能活性に影響を及ぼさない領域の短縮化または欠失もバリアントである。
【0299】
一実施形態において、2つ以上のポリペプチドの発現が所望される場合、それらをコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書において他の箇所に論じられるように、IRES配列によって分離され得る。別の実施形態では、2つ以上のポリペプチドが、1つ以上の自己切断型ポリペプチド配列を含む融合タンパク質として発現し得る。
【0300】
特定の実施形態において企図されるポリペプチドは、融合ポリペプチドを含む。好ましい実施形態において、融合ポリペプチド、および融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば、サルベージCARまたは二量体化可能なサルベージ受容体が提供される。融合ポリペプチドおよび融合タンパク質とは、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上のポリペプチドセグメントを有するポリペプチドを指す。融合ポリペプチドは通常C末端とN末端で連結しているが、それらは、C末端とC末端、N末端とN末端、またはN末端とC末端で連結していてもよい。融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序であっても指定の順序であってもよい。融合ポリペプチドまたは融合タンパク質は、融合ポリペプチドの所望の転写活性が保存される限り、保存的に改変されたバリアント、多形性バリアント、対立遺伝子、変異体、サブ配列、および種間相同体も含み得る。融合ポリペプチドは、化学合成方法もしくは2つの部分間の化学連結により産生され得るか、または他の標準的な技法を使用して一般的に調製され得る。融合ポリペプチドを含む連結されたDNA配列は、本明細書の他の箇所で詳解される好適な転写または翻訳の制御エレメントに作動可能に連結される。
【0301】
一実施形態において、融合パートナーは、未変性組換えタンパク質よりも高い収率でのタンパク質の発現を補助する配列(発現エンハンサー)を含む。他の融合パートナーが、タンパク質の溶解度を増加させるように、タンパク質を所望の細胞内区画に標的化することを可能にするように、または細胞膜を通した融合タンパク質の輸送を促進するように選択されてもよい。
【0302】
融合ポリペプチドは、本明細書に記載されるポリペプチドドメインの各々の間にポリペプチド切断シグナルをさらに含んでもよい。加えて、ポリペプチド切断部位は、任意のリンカーペプチド配列に入れることができる。例示的なポリペプチド切断シグナルとしては、プロテアーゼ切断部位、ヌクレアーゼ切断部位(例えば、稀な制限酵素認識部位、自己切断型リボザイム認識部位)、および自己切断型ウイルスオリゴペプチドなどのポリペプチド切断認識部位が挙げられる(deFelipe and Ryan,2004.Traffic,5(8);616-26を参照されたい)。
【0303】
好適なプロテアーゼ切断部位および自己切断型ペプチドは当業者に既知である(例えば、Ryan et al.,1997.J.Gener.Virol.78,699-722、Scymczak et al.(2004)Nature Biotech.5,589-594を参照されたい)。例示的なプロテアーゼ切断部位は、ポティウイルスNIaプロテアーゼ(例えば、タバコエッチウイルスプロテアーゼ)、ポティウイルスHCプロテアーゼ、ポティウイルスP1(P35)プロテアーゼ、ビオウイルスNIaプロテアーゼ、ビオウイルスRNA-2コードプロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナ3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(イネツングロ球状ウイルス)3C様プロテアーゼ、PYVF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様プロテアーゼ、ヘパリン、トロンビン、因子Xa、およびエンテロキナーゼを含むが、これらに限定されない。その高い切断厳密性により、TEV(タバコエッチウイルス)プロテアーゼ切断部位、例えば、EXXYXQ(G/S)(配列番号18)、例えば、ENLYFQG(配列番号19)およびENLYFQS(配列番号20)(ここで、Xは、任意のアミノ酸を表す)(TEVによる切断はQとGとの間またはQとSとの間で生じる)が一実施形態において好ましい。
【0304】
特定の一実施形態において、自己切断型ペプチドは、ポティウイルスおよびカルジオウイルス2Aペプチド、FMDV(口蹄疫ウイルス)、ウマ鼻炎Aウイルス、Thosea asignaウイルス、ならびにブタテッショウウイルスから得られるポリペプチド配列を含む。
【0305】
ある特定の実施形態において、自己切断型ポリペプチド部位は、2Aもしくは2A様の部位、配列、またはドメインを含む(Donnelly et al.,2001.J.Gen.Virol.82:1027-1041)。例示的な2A部位を表2に示す。
【表2】
【0306】
好ましい実施形態において、ポリペプチドは、サルベージCARポリペプチドまたは二量体化可能なサルベージ受容体ポリペプチドを含む。
【0307】
G.ポリヌクレオチド
特定の実施形態において、1つ以上のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、ゲノムRNA(gRNA)、プラス鎖RNA(RNA(+))、マイナス鎖RNA(RNA(-))、ゲノムDNA(gDNA)、相補DNA(cDNA)、または組換えDNAを指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖のポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、本明細書において企図される参照配列のいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、86%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはバリアントを含む。様々な例示的な実施形態において、ポリヌクレオチドは、発現ベクター、ウイルスベクター、および移入プラスミド、ならびにそれらを含む組成物および細胞を含む。
【0308】
特定の実施形態において、ポリペプチドの少なくとも約5個、10個、25個、50個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、500個、1000個、1250個、1500個、1750個、もしくは2000個、またはそれ以上、ならびに全ての中間の長さの隣接アミノ酸残基をコードするポリヌクレオチドが提供される。この文脈における「中間の長さ」が、引用された値の間の任意の長さ、例えば6、7、8、9など、101、102、103など、151、152、153など、201、202、203などを意味することは、容易に理解されるであろう。
【0309】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」などの用語は、参照ポリヌクレオチド配列と実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチド、または下文に定義されるストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語には、参照ポリヌクレオチドと比較して、1つ以上のヌクレオチドが付加されているか、もしくは欠失しているか、または異なるヌクレオチドに置き換えられているポリヌクレオチドが含まれる。この点において、変更されたポリヌクレオチドが参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を保持するような、変異、付加、欠失、および置換を含むある特定の変更を参照ポリヌクレオチドに行うことができることは、当該技術分野で十分に理解されている。
【0310】
本明細書で使用される「配列同一性」または例えば「に対して50%同一の配列」を含む記述は、配列が比較枠にわたってヌクレオチド単位基準またはアミノ酸単位基準で同一である程度を指す。よって、「配列同一性の割合」は、比較枠にわたって2つの最適にアライメントされた配列を比較すること、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が両方の配列で生じる位置数を決定して対応位置数を得ること、比較枠の総位置数(すなわち、枠のサイズ)で対応位置数を除すること、およびその結果を100で乗じて配列同一性の割合を得ることにより計算され得る。典型的にはポリペプチドバリアントが参照ポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を維持する場合、本明細書に記載される参照配列のいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、86%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するヌクレオチドおよびポリペプチドが含まれる。
【0311】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列関係を説明するために使用される用語は、「参照配列」、「比較枠」、「配列同一性」、「配列同一性の割合」、および「実質的な同一性」を含む。「参照配列」は、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含めて、長さが少なくとも12であるが、頻繁に15~18、多くの場合、少なくとも25の単量体単位である。2つのポリヌクレオチドは、各々、(1)2つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)および(2)2つのポリヌクレオチド間で多様である配列を含み得るため、2つ(以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、「比較枠」にわたって2つのポリヌクレオチドの配列を比較して、配列類似性の局所的な領域を特定および比較することにより行われる。「比較枠」は、2つの配列が最適にアライメントされた後に、ある配列が同じ数の隣接位置の参照配列と比較される、少なくとも6つの隣接位置、一般的には約50~約100、より一般的には約100~約150の概念的セグメントを指す。比較枠は、2つの配列の最適なアライメントのために参照配列(これは付加または欠失を含まない)と比較した場合に約20%以下の付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。比較枠をアライメントするための配列の最適なアライメントは、コンピュータ化されたアルゴリズムの実装(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group,575 Science Drive Madison,WI,USA)によって、または検査および選択された様々な方法のいずれかにより生成された最良のアライメント(すなわち、比較枠にわたって最高率の相同性をもたらすもの)によって実施され得る。例えば、Altschul et al.,1997,Nucl.Acids Res.25:3389によって開示されるBLASTファミリーのプログラムも参照することができる。配列分析の詳細な説明は、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons Inc,1994-1998,Chapter 15のユニット19.3に見出すことができる。
【0312】
本明細書で使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」は、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、ある断片に通常隣接する配列から取り除かれたDNA断片を指す。「単離されたポリヌクレオチド」は、相補的DNA(cDNA)、組換えDNA、または実際に存在せず、人の手によって作製された他のポリヌクレオチドも指す。
【0313】
ポリヌクレオチドの配向を説明する用語は、5’(通常、遊離リン酸基を有するポリヌクレオチドの末端)および3’(通常、遊離ヒドロキシル(OH)基を有するポリヌクレオチドの末端)を含む。ポリヌクレオチド配列は、5’~3’配向または3’~5’配向で注釈が付けられ得る。DNAおよびmRNAについては、5’~3’の鎖は、その配列がプレメッセンジャー(premRNA)の配列と同一であるため[DNAのチミン(T)の代わりにRNAのウラシル(U)を除く]、「センス」鎖、「プラス」鎖、または「コード」鎖と呼称される。DNAおよびmRNAについては、RNAポリメラーゼにより転写された鎖である相補3’~5’鎖は、「テンプレート」鎖、「アンチセンス」鎖、「マイナス」鎖、または「非コード」鎖と呼ばれる。本明細書で使用される場合、「逆配向」という用語は、3’~5’配向で書かれた5’~3’配列、または5’~3’配向で書かれた3’~5’配列を指す。
【0314】
「相補的」および「相補性」という用語は、塩基対合規則によって関係が表されるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、DNA配列5’A G T C A T G 3’の相補鎖は、3’T C A G T A C 5’である。後者の配列は、左側に5’端、そして右側に3’端の5’C A T G A C T 3’の逆相補として書かれることが多い。その逆相補体と等しい配列は、パリンドローム配列と言われる。相補性は「部分的」であり、核酸の塩基のうちのいくつかのみが塩基対合規則に従い一致する。または、核酸間で「完全な」もしくは「全」相補性が存在し得る。
【0315】
さらに、本明細書に記載されるように、遺伝コードの縮重の結果として、ポリペプチドまたはそのバリアントの断片をコードする多くのヌクレオチド配列が存在することは、当業者には理解されよう。これらのポリヌクレオチドのいくつかは、任意の未変性遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を有する。とはいえ、コドン利用の差により異なるポリヌクレオチド、例えばヒトおよび/または霊長類のコドン選択のために最適化されるポリヌクレオチドは、特定の実施形態において特に想定される。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、発現および/または安定性のために最適化されたコドンである。さらに、本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子も使用され得る。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、および/または置換などの1つ以上の変異の結果として変更されている内在性遺伝子である。
【0316】
本明細書で使用される「核酸カセット」という用語は、RNA、そして後にタンパク質を発現することのできるベクター内の遺伝子配列を指す。核酸カセットは、目的となる遺伝子を含む。核酸カセットは、カセット内の核酸がRNAに転写され、必要に応じてタンパク質またはポリペプチドに翻訳され、形質転換細胞における活性に必要とされる適切な翻訳後修飾を受け、適切な細胞内区画への標的化または細胞外区画への分泌によって生物活性のために適切な区画に転位置され得るように、ベクター内に位置的かつ順次的に配向される。好ましくは、カセットは、その3’末端および5’末端が、ベクターに容易に挿入できるように適合されており、例えば、各末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有する。
【0317】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、目的となる少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用される場合、「目的となるポリヌクレオチド」という用語は、発現が所望される発現ベクターに挿入された、ポリペプチド(すなわち、目的となるポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドを指す。ベクターは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の目的となるポリヌクレオチドを含み得る。ある特定の実施形態において、目的となるポリヌクレオチドは、疾患もしくは障害の治療または予防において治療効果をもたらすポリペプチドをコードする。目的となるポリヌクレオチドおよびそれからコードされるポリペプチドは、野生型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびにその機能的バリアントおよび断片の両方を含む。特定の実施形態において、機能的バリアントは、対応する野生型参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性を有する。ある特定の実施形態において、機能的バリアントまたは断片は、対応する野生型ポリペプチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の生物活性を有する。
【0318】
一実施形態において、目的となるポリヌクレオチドは、miRNA、siRNAもしくはshRNA、リボザイム、または他の阻害性RNAを転写するためのテンプレートである。様々な他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、サルベージCARをコードする目的となるポリヌクレオチド、ならびに、siRNA、miRNA、shRNA、およびリボザイムを含むがこれらに限定されない阻害性核酸配列を含むがこれに限定されない、1つ以上の付加的な目的となるポリヌクレオチドを含む。
【0319】
本明細書で使用される場合、「siRNA」または「低分子干渉RNA(short interfering RNA)」という用語は、動物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシング、翻訳阻害、転写阻害、またはエピジェネティックRNAiのプロセスを媒介する短いポリヌクレオチド配列を指す(Zamore et al.,2000,Cell,101,25-33、Fire et al.,1998,Nature,391,806、Hamilton et al.,1999,Science,286,950-951、Lin et al.,1999,Nature,402,128-129、Sharp,1999,Genes&Dev.,13,139-141、およびStrauss,1999,Science,286,886)。ある特定の実施形態において、siRNAは、同じ数のヌクレオシドを有する第1の鎖および第2の鎖を含むが、第1および第2の鎖は、第1および第2の鎖上の2つの末端ヌクレオシドが相補鎖上の残基と対合しないようにオフセットである。ある特定の事例において、対合しない2つのヌクレオシドは、チミジン残基である。siRNAは、siRNAまたはその断片が標的遺伝子の下方制御を媒介し得るように、標的遺伝子に対して十分な相同性のある領域を含み、かつヌクレオチド単位で十分な長さであるべきである。したがって、siRNAは、標的RNAに対して少なくとも部分的に相補的である領域を含む。siRNAと標的との間に完全な相補性が存在する必要はないが、その対応関係は、siRNAまたはその切断産物が標的RNAのRNAi切断などにより配列特異的サイレンシングを指向できるように、十分である必要がある。標的鎖との相補性すなわち相同性の程度は、アンチセンス鎖で最も重要である。完全な相補性は特にアンチセンス鎖において所望されるが、いくつかの実施形態は、標的RNAに対して、1個以上であるが好ましくは10個、8個、6個、5個、4個、3個、2個、またはそれ以下のミスマッチを含む。ミスマッチは末端領域において最も許容され、存在する場合、例えば5’末端および/もしくは3’末端の6、5、4、または3ヌクレオチド以内の末端領域(複数可)にあることが好ましい。センス鎖は、分子の全体的な二本鎖の特徴を維持するのに十分にアンチセンス鎖と相補的であれば十分である。
【0320】
加えて、siRNAは、改変されても、またはヌクレオシド類似体を含んでもよい。siRNAの一本鎖領域は、改変されても、またはヌクレオシド類似体を含んでもよく、例えば、ヘアピン構造の不対領域(複数可)、例えば、2つの相補領域を連結する領域は、改変またはヌクレオシド類似体を有し得る。siRNAの1つ以上の3’末端もしくは5’末端を、例えばエキソヌクレアーゼに対して安定化させるため、またはRISCに侵入するようにアンチセンスsiRNA剤を優先するための改変も有用である。改変は、C3(またはC6、C7、C12)アミノリンカー、チオールリンカー、カルボキシルリンカー、非ヌクレオチドスペーサー(C3、C6、C9、C12、脱塩基、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール)、特殊なビオチン、または、ホスホラミダイトをもたらし、かつ別のDMT保護されたヒドロキシル基を有し、RNA合成中に複数のカップリングを可能にするフルオレセイン試薬を含み得る。siRNAの各鎖は、30、25、24、23、22、21、または20ヌクレオチド長以下であり得る。この鎖は、好ましくは少なくとも19ヌクレオチド長である。例えば、各鎖は、21~25ヌクレオチド長であり得る。好ましいsiRNAは、17個、18個、19個、29個、21個、22個、23個、24個、または25個のヌクレオチド対の二本鎖領域、および2~3ヌクレオチドの1つ以上のオーバーハング、好ましくは2~3ヌクレオチドの1つまたは2つの3’オーバーハングを有する。
【0321】
本明細書で使用される場合、「miRNA」または「マイクロRNA」という用語は、通常はpre-miRNAとして知られる約70ヌクレオチドのフォールドバック(foldback)RNA前駆体構造から切除された、20~22ヌクレオチドの小さな非コードRNAを指す。miRNAは、miRNAと標的との間の相補性の程度により、2つの方法のうちの1つでそれらの標的を負に調節する。第1に、タンパク質コードmRNA配列に完全またはほぼ完全な相補性で結合するmiRNAは、RNA媒介干渉(RNAi)経路を誘導する。mRNA標的の3’非翻訳領域(UTR)内の不完全相補部位に結合することによって調節作用を及ぼすmiRNAは、RNAi経路に使用されるものと同様または場合により同一であるRISC複合体を通して、転写後に、見かけ上は翻訳のレベルで、標的遺伝子発現を抑制する。翻訳制御と一致して、この機序を使用するmiRNAは、それらの標的遺伝子のタンパク質レベルを低下させるが、これらの遺伝子のmRNAレベルは、最小限の影響しか受けない。miRNAは、天然起源のmiRNA、ならびに任意のmRNA配列を特異的に標的化し得る人工的に設計されたmiRNAの両方を包含する。例えば、一実施形態において、当業者は、ヒトmiRNA(例えば、miR-30またはmiR-21)一次転写物として発現する短いヘアピンRNA構築物を設計することができる。この設計は、ヘアピン構築物にドローシャプロセシング部位を付加するものであり、ノックダウン効率を大幅に増加させることが示されている(Pusch et al.,2004)。このヘアピンのステムは、22-ntのdsRNA(例えば、アンチセンスは所望の標的に対して完全な相補性を有する)およびヒトmiR由来の15-19-ntのループからなる。ヘアピンの片側または両側にmiRループおよびmiR30フランキング配列を付加すると、発現したヘアピンのドローシャおよびダイサープロセシングにおいて、マイクロRNAを含まない従来のshRNA設計と比較したときに10倍超の増加がもたらされる。ドローシャおよびダイサープロセシングの増加は、siRNA/miRNA産生の増加、および発現したヘアピンの効力の増加につながる。
【0322】
本明細書で使用される場合、「shRNA」または「短いヘアピンRNA」という用語は、単一の自己相補的RNA鎖によって形成される二本鎖構造を指す。標的遺伝子のコード配列または非コード配列のいずれかの一部分と同一のヌクレオチド配列を含むshRNA構築物は、阻害のために好ましい。標的配列に対して挿入、欠失、および一点変異を有するRNA配列も、阻害に有効であることが見出されている。阻害性RNAと標的遺伝子の一部分との間で90%超の配列同一性、またはさらには100%の配列同一性が好ましい。ある特定の好ましい実施形態では、shRNAの二本鎖形成部分の長さは、例えば、ダイサー依存切断により産生されたRNA産物と相当するサイズの、少なくとも20、21、または22ヌクレオチド長である。ある特定の実施形態において、shRNA構築物は、少なくとも25、50、100、200、300または400塩基長である。ある特定の実施形態において、shRNA構築物は、400~800塩基長である。shRNA構築物は、ループ配列およびループサイズの変化に対する耐性が高い。
【0323】
本明細書で使用される場合、「リボザイム」という用語は、標的mRNAの部位特異的切断が可能な触媒的に活性なRNA分子を指す。例えば、ハンマーヘッド型およびヘアピン型のリボザイムといった、いくつかのサブタイプが説明されている。リボザイムの触媒活性および安定性は、非触媒性塩基でデオキシリボヌクレオチドをリボヌクレオチドに置換することによって改善させることができる。部位特異的認識配列でmRNAを切断するリボザイムを使用して特定のmRNAを破壊することができるが、ハンマーヘッド型リボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNAと相補的塩基対を形成するフランキング領域によって決められた位置でmRNAを切断する。唯一の要件は、2つの塩基の配列:5’-UG-3’を標的mRNAが有することである。ハンマーヘッド型リボザイムの構築および産生は、当該技術分野で周知である。
【0324】
siRNA、miRNA、shRNA、またはリボザイムを含む目的となるポリヌクレオチドの好ましい送達方法は、例えば、本明細書の他の箇所に記載される、強力な構成的pol III、例えば、ヒトU6 snRNAプロモーター、マウスU6 snRNAプロモーター、ヒトおよびマウスH1 RNAプロモーター、ならびにヒトtRNA-valプロモーター、または強力な構成的pol IIプロモーターといった、1つ以上の調節配列を含む。
【0325】
本明細書において企図されるポリヌクレオチドは、コード配列自体の長さにかかわらず、本明細書の他の箇所に開示されるか当該技術分野で知られている、プロモーターおよび/またはエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、シグナル配列、コザック配列、ポリアデニル化シグナル、付加的な制限酵素部位、多重クローニング部位、内部リボソーム侵入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP、FRT、およびAtt部位)、終止コドン、転写終結シグナル、および自己切断型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグなどの他のDNA配列と組み合わされてもよく、その結果、それらの全体的な長さが大幅に変動してもよい。したがって、ほぼあらゆる長さのポリヌクレオチド断片が用いられ得ることが企図され、その全長は、好ましくは、意図される組換えDNAプロトコルにおける調製および使用の容易さにより限定される。
【0326】
ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知であり、利用可能である十分に確立された種々の技術のいずれを使用して、調製、操作、発現、および/または送達され得る。所望のポリペプチドを発現するために、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が適切なベクターに挿入され得る。
【0327】
ベクターの例示的な例としては、プラスミド、自己複製配列、および転位因子、例えば、Sleeping Beauty、PiggyBacが挙げられるが、これらに限定されない。
【0328】
ベクターのさらなる例示的な例としては、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体、例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1誘導人工染色体(PAC)など、バクテリオファージ、例えば、ラムダファージまたはM13ファージ、および動物ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0329】
ベクターとして有用なウイルスの例示的な例としては、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(例えば、SV40)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0330】
発現ベクターの例示的な例としては、哺乳動物細胞における発現のためのpClneoベクター(Promega)、哺乳動物細胞におけるレンチウイルス媒介性遺伝子移入および発現のためのpLenti4/V5-DEST(商標)、pLenti6/V5-DEST(商標)、およびpLenti6.2/V5-GW/lacZ(Invitrogen)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本明細書に開示されるポリペプチドのコード配列が、哺乳動物細胞におけるポリペプチドの発現のために、このような発現ベクターに連結され得る。
【0331】
特定の実施形態において、ベクターは、エピソームベクター、または染色体外に維持されるベクターである。本明細書で使用される場合、「エピソーム」という用語は、宿主の染色体DNA内に組み込むことなしに、および宿主細胞の分裂により徐々に失われることなく複製することができるベクターを指し、該ベクターは染色体外またはエピソームで複製することも意味する。ベクターは、アルファ、ベータ、もしくはガンマヘルペスウイルス、アデノウイルス、SV40、ウシパピローマウイルス、または酵母からのDNA複製起源、または「ori」をコードする配列を保有するように操作される。典型的には、宿主細胞は、複製を活性化するウイルス複製トランス活性化因子タンパク質を含む。アルファヘルペスウイルスは、比較的短い生殖周期、可変宿主範囲を有し、感染細胞を効率的に破壊し、主に感覚神経節において潜伏感染を確立する。アルファヘルペスウイルスの例示的な例としては、HSV 1、HSV 2、およびVZVが挙げられる。ベータヘルペスウイルスは、長い生殖周期および制限された宿主範囲を有する。感染細胞は、多くの場合、増大する。潜在性は、血液、腎臓、分泌腺、および他の組織の白血球に維持され得る。ベータヘルペスウイルスの例示的な例としては、CMV、HHV-6、およびHHV-7が挙げられる。ガンマ-ヘルペスウイルスは、Tリンパ球またはBリンパ球のいずれかに対して特異的であり、潜在性は、多くの場合、リンパ組織組織において示されている。ガンマヘルペスウイルスの例示的な例としては、EBVおよびHHV-8が挙げられる。
【0332】
発現ベクター内に存在する「発現制御配列」、「制御エレメント」、または「調節配列」は、宿主細胞タンパク質と相互作用して転写および翻訳を行う、ベクター複製起点の非翻訳領域、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(シャイン・ダルガーノ配列またはコザック配列)イントロン、ポリアデニル化配列、5’および3’非翻訳領域である。このようなエレメントは、それらの強度および特異性が異なり得る。用いられるベクター系および宿主に応じて、遍在性プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む任意の数の好適な転写および翻訳エレメントを使用することができる。
【0333】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、発現ベクターおよびウイルスベクターを含むが、これらに限定されず、プロモーターおよび/またはエンハンサーなどの外因性、内因性、もしくは異種の制御配列を含む。「内因性」制御配列は、ゲノム内の所与の遺伝子と自然に連結しているものである。「外因性制御配列」は、その遺伝子の転写が連結されたエンハンサー/プロモーターにより指向されるように、遺伝子操作の手段(すなわち、分子生物学的技法)により遺伝子と並立に配置されるものである。「異種制御配列」は、遺伝子操作されている細胞とは異なる種に由来する外因性配列である。
【0334】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドを開始および転写する。特定の実施形態において、哺乳動物細胞において作動可能なプロモーターは、転写が開始される部位からおよそ25~30塩基上流に位置するAT豊富領域、および/またはNが任意のヌクレオチドであり得るCNCAAT領域の、転写の開始から70~80塩基上流に見られる別の配列を含む。
【0335】
「エンハンサー」という用語は、転写を増強することができ、いくつかの事例では別の制御配列に対するそれらの配向に関係なく機能することができる配列を含むDNAのセグメントを指す。エンハンサーは、プロモーターおよび/もしくは他のエンハンサー要素と協同的または追加的に機能することができる。「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーターおよびエンハンサー両方の機能を提供することができる配列を含有するDNAのセグメントを指す。
【0336】
「作動可能に連結される」という用語は、説明されている成分がそれらの意図される様式で機能することを可能にする関係にある並立を指す。一実施形態において、本用語は、発現制御配列が第2の配列に対応する核酸の転写を指向する、核酸発現制御配列(プロモーターおよび/またはエンハンサーなど)と第2のポリヌクレオチド配列、例えば、目的となるポリヌクレオチドとの間の機能的連結を指す。
【0337】
本明細書で使用される場合、「構成的発現制御配列」という用語は、作動可能に連結された配列の転写を構成的もしくは連続的に可能にするプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーを指す。構成的発現制御配列は、それぞれ、多種多様な細胞および組織型における発現を可能にする「遍在性」プロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサー、または限定された様々な細胞および組織型における発現を可能にする「細胞特異的」、「細胞型特異的」、「細胞系列特異的」、もしくは「組織特異的」プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであり得る。
【0338】
特定の実施形態で使用するのに好適な例示的な遍在性発現制御配列としては、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ウイルス性サルウイルス40(SV40)(例えば、初期または後期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルス由来のH5、P7.5、およびP11プロモーター、伸長因子1アルファ(EF1a)プロモーター、初期増殖応答1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、真核細胞翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、熱ショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、熱ショックタンパク質90kDaベータメンバー1(HSP90B1)、熱ショックタンパク質70kDa(HSP70)、β-キネシン(β-KIN)、ヒトROSA 26遺伝子座(Irions et al.,Nature Biotechnology 25,1477-1482(2007))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーター、および骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、負の制御領域欠失、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーター(Challita et al.,J Virol.69(2):748-55(1995))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0339】
一実施形態において、ベクターは、MNDプロモーターを含む。
【0340】
一実施形態において、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第1イントロンを含むEF1aプロモーターを含む。
【0341】
一実施形態において、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第1イントロンを欠いているEF1aプロモーターを含む。
【0342】
特定の実施形態において、所望のポリヌクレオチド配列の細胞型特異的、系統特異的、または組織特異的な発現を達成するために(例えば、細胞型、細胞系統、もしくは組織のサブセットのみまたは発達の特定の段階の間ポリペプチドをコードする特定の核酸を発現するために)、細胞、細胞型、細胞系統、または組織特異的発現制御配列を使用することが望ましくあり得る。
【0343】
特定の一実施形態において、T細胞特異的プロモーターにポリヌクレオチドを発現することが望ましい場合がある。
【0344】
本明細書で使用される場合、「条件付き発現」は、誘導性発現、抑制性発現、特定の生理学的状態、生物学的状態、または疾患状態を有する細胞または組織における発現などを含むが、これらに限定されない、あらゆる種類の条件付き発現を指し得る。この定義は、細胞型または組織特異的発現を除外することを意図しない。ある特定の実施形態は、目的となるポリヌクレオチドの条件付き発現を提供し、例えば、ポリヌクレオチドを発現させる、または目的となるポリヌクレオチドによりコードされるポリヌクレオチドの発現を増加もしくは減少させる処理または条件に、細胞、組織、生物などを供することによって、発現が制御される。
【0345】
誘導性プロモーター/系の例示的な例としては、グルココルチコイドもしくはエストロゲン受容体をコードする遺伝子のプロモーターなどのステロイド誘導性プロモーター(対応するホルモンでの処理によって誘導可能)、メタロチオニン(metallothionine)プロモーター(様々な重金属での処理によって誘導可能)、MX-1プロモーター(インターフェロンによって誘導可能)、「GeneSwitch」ミフェプリストン調節可能な系(Sirin et al.,2003,Gene,323:67)、クミン酸誘導性遺伝子スイッチ(WO2002/088346)、テトラサイクリン依存性調節系などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0346】
誘導物質剤としては、グルココルチコイド、エストロゲン、ミフェプリストン(RU486)、金属、インターフェロン、小分子、クミン酸塩、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、およびそれらのバリアントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0347】
条件付き発現は、部位特異的DNAリコンビナーゼを使用することによって達成することもできる。ある特定の実施形態によると、ベクターは、部位特異的リコンビナーゼにより媒介される組換えのための少なくとも1つ(典型的には2つ)の部位(複数可)を含む。本明細書で使用される場合、「リコンビナーゼ」または「部位特異的リコンビナーゼ」という用語は、野生型タンパク質であり得る1つ以上の組換え部位(例えば、2、3、4、5、7、10、12、15、20、30、50など)を伴う組換え反応に関与する、切除性(excisive)もしくは組み込み(integrative)のタンパク質、酵素、補助因子、または関連するタンパク質(Landy,Current Opinion in Biotechnology 3:699-707(1993)を参照されたい)、またはそれらの変異体、誘導体(例えば、組換えタンパク質配列またはその断片を含む融合タンパク質)、断片、およびバリアントを含む。特定の実施形態で使用するのに好適なリコンビナーゼの例示的な例としては、Cre、Int、IHF、Xis、Flp、Fis、Hin、Gin、ΦC31、Cin、Tn3リゾルバーゼ、TndX、XerC、XerD、TnpX、Hjc、Gin、SpCCE1、およびParAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0348】
ポリヌクレオチドは、多様な部位特異的リコンビナーゼのいずれかに対して1つ以上の組換え部位を含み得る。部位特異的リコンビナーゼのための標的部位は、ベクター、例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターの組み込みに必要とされる任意の部位(複数可)に加えてであることを理解されたい。本明細書で使用される場合、「組換え配列」、「組換え部位」、または「部位特異的組換え部位」という用語は、リコンビナーゼが認識および結合する特定の核酸配列を指す。
【0349】
例えば、Creリコンビナーゼの組換え部位の1つはloxPであり、これは、8塩基対コア配列に隣接する2つの13塩基対逆方向反復(リコンビナーゼ結合部位として機能する)を含む34塩基対配列である(Sauer,B.,Current Opinion in Biotechnology 5:521-527(1994)の
図1を参照されたい)。他の例示的なloxP部位としては、lox511(Hoess et al.,1996、Bethke and Sauer,1997)、lox5171(Lee and Saito,1998)、lox2272(Lee and Saito,1998)、m2(Langer et al.,2002)、lox71(Albert et al.,1995)、およびlox66(Albert et al.,1995)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0350】
FLPリコンビナーゼの好適な認識部位としては、FRT(McLeod,et al.,1996)、F1、F2、F3(Schlake and Bode,1994)、F4、F5(Schlake and Bode,1994)、FRT(LE)(Senecoff et al.,1988)、FRT(RE)(Senecoff et al.,1988)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0351】
認識配列の他の例は、リコンビナーゼ酵素λインテグラーゼ、例えば、phi-c31により認識される、attB、attP、attL、およびattR配列である。φC31 SSRは、異型部位attB(長さが34bp)とattP(長さが39bp)との間の組換えのみを媒介する(Groth et al.,2000)。それぞれ、細菌およびファージゲノム上のファージインテグラーゼの結合部位に名前が由来するattBおよびattPは両方とも、φC31ホモ二量体により結合される可能性がある不完全な逆方向反復を含入する(Groth et al.,2000)。産生部位であるattLおよびattRは、φC31媒介組換えを進めるために(Belteki et al.,2003)、効果的に不活性であり、反応を不可逆にする。挿入を触媒するために、attB保有DNAが、attP部位をゲノムattB部位に挿入するよりも容易にゲノムattP部位内に容易に挿入されることが分かった(Thyagarajan et al.,2001、Belteki et al.,2003)。よって、典型的な戦略は、相同組換えにより、attP保有「ドッキング部位」を、定義された座位に位置付け、次に、挿入のためにこれをattB保有入来配列と組み合わせる。
【0352】
本明細書で使用される場合、「内部リボソーム侵入部位」または「IRES」は、シストロン(タンパク質コード領域)のATGなどの開始コドンへの直接的な内部リボソーム侵入を促進し、それによって遺伝子のキャップ非依存性翻訳をもたらすエレメントを指す。例えば、Jackson et al.,1990.Trends Biochem Sci 15(12):477-83)およびJackson and Kaminski.1995.RNA 1(10):985-1000を参照されたい。当業者によって一般に用いられるIRESの例は、米国特許第6,692,736号に記載されるものを含む。当該技術分野で既知の「IRES」のさらなる例としては、ピコルナウイルスから得られるIRES(Jackson et al.,1990)、ならびにウイルスまたは細胞mRNA源から得られるIRES、例えば、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、血管内皮成長因子(VEGF)(Huez et al.1998.Mol.Cell.Biol.18(11):6178-6190)、線維芽細胞成長因子2(FGF-2)、およびインスリン様成長因子(IGFII)、翻訳開始因子eIF4G、ならびに酵母転写因子TFIIDおよびHAP4、Novagenから市販されている脳心筋炎ウイルス(encephelomycarditis virus)(EMCV)(Duke et al.,1992.J.Virol 66(3):1602-9)およびVEGF IRES(Huez et al.,1998.Mol Cell Biol 18(11):6178-90)が挙げられるが、これらに限定されない。IRESはまた、Picornaviridae、Dicistroviridae、およびFlaviviridae種のウイルスゲノム、ならびにHCV、Friendマウス白血病ウイルス(FrMLV)、およびMoloneyマウス白血病ウイルス(MoMLV)においても報告されている。
【0353】
一実施形態において、本明細書において企図されるポリヌクレオチドに使用されるIRESは、EMCV IRESである。
【0354】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コンセンサスコザック配列を有し、かつ所望のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用される場合、「コザック配列」という用語は、リボソームの小さいサブ単位へのmRNAの初期結合を大幅に容易にし、翻訳を増加させる、短いヌクレオチド配列を指す。コンセンサスコザック配列は、(GCC)RCCATGG(配列番号43)であり、式中、Rは、プリン(AまたはG)である(Kozak,1986.Cell.44(2):283-92、およびKozak,1987.Nucleic Acids Res.15(20):8125-48)。
【0355】
効率的な終止および異種核酸転写物のポリアデニル化を指向するエレメントは、異種遺伝子の発現を増加させる。転写終止シグナルは一般に、ポリアデニル化シグナルの下流に見られる。特定の実施形態において、ベクターは、発現されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのポリアデニル化配列3’を含む。本明細書で使用される場合、「ポリA部位」または「ポリA配列」という用語は、RNAポリメラーゼIIによる新生RNA転写の終止およびポリアデニル化の両方を指向するDNA配列を示す。ポリアデニル化配列は、コード配列の3’端へのポリA尾部の付加により、mRNAの安定性を促進し、よって、転写効率の増加に寄与し得る。ポリA尾部を欠く転写物は不安定であり、迅速に分解されるため、組換え転写物の効率的なポリアデニル化が望ましい。ベクターにおいて使用され得るポリAシグナルの例示的な例としては、理想的なポリA配列(例えば、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA)、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、ウサギβ-グロビンポリA配列(rβgpA)、または当該技術分野で既知の別の好適な異種もしくは内因性ポリA配列が挙げられる。
【0356】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを保有する細胞は、直接的な毒性および/または未制御の増殖のリスクを低減させるために、誘導性自殺遺伝子を含む自殺遺伝子を用いる。特定の実施形態において、自殺遺伝子は、ポリヌクレオチドを保有する宿主または細胞に対して免疫原性ではない。使用され得る自殺遺伝子のある特定の例は、カスパーゼ-9もしくはカスパーゼ-8、またはシトシンデアミナーゼである。カスパーゼ-9は、二量体化の特定の化学誘導物資(CID)を使用して活性化され得る。
【0357】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、免疫エフェクター細胞、例えばT細胞に、インビボで負の選択を受けやすくさせる遺伝子セグメントを含む。「負の選択」とは、注入された細胞が、個々のインビボ条件の変化の結果として排除され得ることを意味する。負の選択可能な表現型は、投与された薬剤、例えば、化合物に対して感受性を付与する遺伝子の挿入により生じ得る。負の選択可能な遺伝子は当該技術分野で知られており、とりわけ、ガンシクロビル感受性を付与する単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子(Wigler et al.,Cell 11:223,1977)、細胞性ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、細胞性アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、および細菌性シトシンデアミナーゼを含む(Mullen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:33(1992))。
【0358】
いくつかの実施形態において、遺伝子改変されたT細胞などの免疫エフェクター細胞は、負の選択可能な表現型の細胞のインビトロでの選択を可能にする正のマーカーをさらに含むポリヌクレオチドを含む。正の選択マーカーは、宿主細胞に導入されると、その遺伝子を有する細胞の正の選択を可能にする優性表現型を発現する遺伝子であり得る。この種類の遺伝子は当該技術分野で知られており、とりわけ、ハイグロマイシンBに対する耐性を付与するハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hph)、抗生物質G418に対する耐性をコードするTn5由来のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoまたはaph)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子(ADA)、および多剤耐性(MDR)遺伝子を含む。
【0359】
一実施形態において、正の選択可能なマーカーおよび負の選択可能エレメントは、負の選択可能エレメントの損失が正の選択可能なマーカーの損失も必然的に伴うように連結されている。特定の実施形態において、正の選択可能なマーカーおよび負の選択可能なマーカーは、一方の損失が他方の損失に義務的につながるように融合されている。上述される所望の正負両方の選択の特徴を付与するポリペプチドを発現産物としてもたらす融合ポリヌクレオチドの例は、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼチミジンキナーゼ融合遺伝子(HyTK)である。この遺伝子の発現は、インビトロでの正の選択のためのハイグロマイシンB耐性、およびインビボでの負の選択のためのガンシクロビル感受性を付与するポリペプチドをもたらす。優性の正の選択可能なマーカーと負の選択可能なマーカーとの融合に由来する二機能性選択可能な融合遺伝子の使用を説明する、S.D.LuptonによるPCT US91/08442およびPCT/US94/05601の刊行物も参照されたい。
【0360】
好ましい正の選択可能なマーカーは、hph、nco、およびgptからなる群から選択される遺伝子に由来し、好ましい負の選択可能なマーカーは、シトシンデアミナーゼ、HSV-I TK、VZV TK、HPRT、APRT、およびgptからなる群から選択される遺伝子に由来する。特定の実施形態において企図される例示的な二機能性選択可能融合遺伝子としては、正の選択可能なマーカーは、hphまたはneoに由来し、負の選択可能なマーカーは、シトシンデアミナーゼもしくはTK遺伝子、または選択可能マーカーに由来する。
【0361】
特定の実施形態において、1つ以上のサルベージCAR、二量体化可能なサルベージ受容体、治療ポリペプチド、または融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、非ウイルス方法およびウイルス方法の両方によって、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞に導入され得る。特定の実施形態において、1つ以上のポリヌクレオチドの送達は、同じ方法もしくは異なる方法によって、および/または同じベクターもしくは異なるベクターによって提供され得る。
【0362】
「ベクター」という用語は、本明細書において、別の核酸分子を移入または輸送することのできる核酸分子を指すように使用される。移入された核酸は概して、ベクター核酸分子に連結、例えば、挿入される。ベクターは、細胞における自律複製を指向する配列を含んでもよいし、宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含んでもよい。特定の実施形態において、非ウイルスベクターは、本明細書において企図される1つ以上のポリヌクレオチドをT細胞に送達するために使用される。
【0363】
非ウイルスベクターの例示的な例としては、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌人工染色体、およびウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0364】
特定の実施形態において企図されるポリヌクレオチドの非ウイルス送達の例示的な方法としては、電気穿孔、ソノポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ナノ粒子、ポリカチオン、または脂質:核酸抱合体、裸DNA、人工ビリオン、DEAEデキストラン介在転移、遺伝子銃、および熱ショックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0365】
特定の実施形態において企図される特定の実施形態で用いるのに好適なポリヌクレオチド送達システムの例示的な例としては、Amaxa Biosystems、Maxcyte,Inc.、BTX Molecular Delivery Systems、およびCopernicus Therapeutics Inc.によって提供されるものが挙げられるが、これらに限定されない。リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識のために好適なカチオン性および中性脂質は、文献に記載されている。例えば、Liu et al.(2003)Gene Therapy.10:180-187、およびBalazs et al.(2011)Journal of Drug Delivery.2011:1-12を参照されたい。抗体標的バクテリア由来の生命体ではない(non-living)ナノ細胞ベースの送達もまた、特定の実施形態において企図される。
【0366】
特定の実施形態において企図されるポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、個々の患者に、典型的には、以下に記載されるように、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、もしくは頭蓋内注入)または局所適用による投与によってインビボで送達され得る。あるいは、ベクターは、個々の患者から外植される細胞(例えば、動員末梢血、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検など)または万能ドナー造血幹細胞などのエクスビボで細胞に送達され、続いて、細胞の患者に再移植され得る。
【0367】
一実施形態において、本明細書において企図されるポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、インビボで細胞の形質導入のために生物に直接投与される。あるいは、裸DNAが、投与され得る。投与は、注射、注入、局所適用、および電気穿孔が挙げられるが、これらに限定されない、血液または組織細胞との最終接触に分子を導入するために通常使用される経路のうちのいずれかによるものである。かかる核酸を投与する好適な方法が利用可能であり、当業者に周知であり、1つを超える経路が、特定の組成物を投与するために使用することができるが、特定の経路は、多くの場合、別の経路よりもより即時かつより効果的な反応を提供することができる。
【0368】
特定の実施形態において企図される特定の実施形態で用いるのに好適なウイルスベクターシステムの例示的な例としては、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペス、アデノウイルス、遺伝子導入のためのワクシニアウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0369】
様々な実施形態において、1つ以上のポリヌクレオチドは、1つ以上のポリヌクレオチドを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)で細胞を形質導入ことによって、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞に導入される。
【0370】
AAVは、主なエピソーム、非エンベロープウイルスである小規模(約26nm)の複製欠損である。AAVは、分裂細胞および非分裂細胞の両方を感染させることができ、そのゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込み得る。組換えAAV(rAAV)は、典型的には、最小で、トランス遺伝子およびその調節配列、ならびに5’および3’AAV逆方向末端反復(ITR)からなる。ITR配列は、約145bpの長さである。特定の実施形態において、rAAVは、ITR、およびAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAV10から単離されるカプシド配列を含む。
【0371】
いくつかの実施形態において、ITR配列が、1つのAAV血清型から単離され、カプシド配列が、異なるAAV血清型から単離される、キメラrAAVが使用される。例えば、AAV2に由来するITR配列およびAAV6に由来するカプシド配列を有するrAAVは、AAV2/AAV6と称される。特定の実施形態において、rAAVベクターは、AAV2からのITR、およびAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAV10のうちのいずれか1つからのカプシドタンパク質を含み得る。好ましい実施形態において、rAAVは、AAV2に由来するITR配列と、AAV6に由来するカプシド配列とを含む。
【0372】
いくつかの実施形態において、操作および選択方法は、目的となる細胞を形質導入する可能性が高いAAVカプシドに適用され得る。
【0373】
rAAVベクターの構築、その生成、および精製は、例えば、米国特許第9,169,494号、同第9,169,492号、同第9,012,224号、同第8,889,641号、同第8,809,058号、および同第8,784,799号に開示されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0374】
様々な実施形態において、1つ以上のポリヌクレオチドは、1つ以上のポリヌクレオチドを含む、レトロウイルス、例えば、レンチウイルスで細胞を形質導入ことによって、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞に導入される。
【0375】
本明細書で使用される場合、「レトロウイルス」という用語は、そのゲノムRNAを直鎖状二本鎖DNAのコピーに逆転写し、その後そのゲノムDNAを宿主ゲノムに共有結合的に組み込むRNAウイルスを指す。特定の実施形態において使用するのに好適な例示的なレトロウイルスとしては、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV))、ならびにレンチウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0376】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、複合レトロウイルスの群(または族)を指す。例示的なレンチウイルスとしては、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV1型およびHIV2型を含む)、ビスナ・マエディウイルス(VMV)ウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ならびにサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、HIVベースのベクター骨格(すなわち、HIVシス作動性配列要素)が好ましい。
【0377】
様々な実施形態において、本明細書において企図されるレンチウイルスベクターは、1つ以上のLTR、ならびにアクセサリーエレメント:cPPT/FLAP、プサイ(Ψ)パッケージングシグナル、輸出エレメント、ポリ(A)配列のうちの1つ以上または全てを含み、任意に、本明細書において他の箇所に論じられるように、WPREまたはHPRE、絶縁体エレメント、選択可能なメーカー、および細胞自殺遺伝子を含み得る。
【0378】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるレンチウイルスベクターは、組み込みまたは非組み込みまたは組み込み欠損レンチウイルスであり得る。本明細書で使用される場合、「組み込み欠損レンチウイルス」または「IDLV」という用語は、ウイルスゲノムを宿主細胞のゲノム内に組み込む能力を欠くインテグラーゼを有するレンチウイルスを指す。組み込み能力のないウイルスベクターは、WO2006/010834に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0379】
インテグラーゼ活性を減少させるのに好適なHIV-1遺伝子における例示的な変異としては、H12N、H12C、H16C、H16V、S81R、D41A、K42A、H51A、Q53C、D55V、D64E、D64V、E69A、K71A、E85A、E87A、D116N、D1161、D116A、N120G、N1201、N120E、E152G、E152A、D35E、K156E、K156A、E157A、K159E、K159A、K160A、R166A、D167A、E170A、H171A、K173A、K186Q、K186T、K188T、E198A、R199c、R199T、R199A、D202A、K211A、Q214L、Q216L、Q221L、W235F、W235E、K236S、K236A、K246A、G247W、D253A、R262A、R263A、およびK264Hが挙げられるが、これらに限定されない。
【0380】
「長い末端反復(LTR)」という用語は、それらの天然の配列関係において、直接反復であり、U3、R、およびU5領域を含有するレトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指す。
【0381】
本明細書で使用される場合、「FLAPエレメント」または「cPPT/FLAP」という用語は、レトロウイルス、例えばHIV-1またはHIV-2のセントラルポリプリントラクトおよび中央終止配列(cPPTおよびCTS)が配列に含まれる核酸を指す。好適なFLAPエレメントは、米国特許第6,682,907号およびZennou,et al.,2000,Cell,101:173に記載されている。
【0382】
本明細書で使用される場合、「パッケージングシグナル」または「パッケージング配列」という用語は、ウイルスRNAをウイルスカプシドまたは粒子内に挿入するために必要なレトロウイルスゲノム内に位置するプサイ[Ψ]配列を指し、例えば、Clever et al.,1995.J.of Virology,Vol.69,No.4;pp.2101-2109を参照されたい。
【0383】
「輸出エレメント」という用語は、細胞の核から細胞質へのRNA転写物の輸送を調節するシス作用性転写後調節エレメントを指す。RNA輸出エレメントの例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)rev応答エレメント(RRE)(例えば、Cullen et al.,1991.J.Virol.65:1053、およびCullen et al.,1991.Cell 58:423を参照されたい)、およびB型肝炎ウイルス転写後調節エレメント(HPRE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0384】
特定の実施形態において、ウイルスベクターにおける異種配列の発現は、転写後調節エレメント、効率的なポリアデニル化部位、および任意に、転写終止シグナルをベクター内に組み込むことにより増加する。例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE;Zufferey et al.,1999,J.Virol.,73:2886)、B型肝炎ウイルスに存在する転写後調節エレメント(HPRE)(Huang et al.,Mol.Cell.Biol.,5:3864)、および同類のもの(Liu et al.,1995,Genes Dev.,9:1766)など、種々の転写後調節エレメントが、タンパク質における異種核酸の発現を増加させることができる。
【0385】
レンチウイルスベクターは、好ましくは、LTRを改変する結果としていくつかの安全性の強化をもたらす。「自己不活性化型」(SIN)ベクターとは、U3領域として知られている右(3’)LTRエンハンサープロモーター領域が1回目のウイルス複製以降のウイルス転写を防止するように(例えば欠失または置換によって)改変されている、複製欠損ベクターを指す。5’LTRのU3領域を異種プロモーターに置き換えてウイルス粒子の産生中のウイルスゲノムの転写を推進することによって、さらなる安全性の強化がもたらされる。使用することのできる異種プロモーターの例としては、例えば、ウイルス性サルウイルス40(SV40)(例えば、初期または後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、最初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、および単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーターが挙げられる。
【0386】
本明細書で使用される「シュードタイプ」または「シュードタイピング」という用語は、ウイルスエンベロープタンパク質が好ましい特性を保有する別のウイルスのもので置換されたウイルスを指す。例えば、HIVは、HIVエンベロープタンパク質(env遺伝子によってコードされる)が通常ウイルスをCD4+提示細胞に標的化するため、HIVがより広範囲の細胞を感染させることを可能にする、水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)エンベロープタンパク質でシュードタイピングされ得る。
【0387】
ある特定の実施形態において、レンチウイルスベクターは、既知の方法に従って生成される。例えば、Kutner et al.,BMC Biotechnol.2009;9:10.doi:10.1186/1472-6750-9-10、Kutner et al.Nat.Protoc.2009;4(4):495-505.doi:10.1038/nprot.2009.22を参照されたい。
【0388】
本明細書において企図されるある特定の具体的な実施形態によると、ウイルスベクター骨格配列の大部分または全てが、レンチウイルス、例えばHIV-1に由来する。しかしながら、レトロウイルスおよび/またはレンチウイルスの多くの異なる配列源を使用することまたは組み合わせることができ、レンチウイルス配列のうちある特定のものにおいて、本明細書に記載の機能を行う移入ベクターの能力を損なうことなく多数の置換および変更が適応され得ることを理解されたい。さらに、種々のレンチウイルスベクターが当該技術分野で既知であり、Naldini et al.,(1996a、1996b、および1998)、Zufferey et al.,(1997)、Dull et al.,1998、米国特許第6,013,516号および同第5,994,136号を参照されたく、それらの多くが、本明細書において企図されるウイルスベクターまたは移入プラスミドを産生するように適合され得る。
【0389】
様々な実施形態において、1つ以上のポリヌクレオチドは、1つ以上のポリヌクレオチドを含む、アデノウイルスで細胞を形質導入ことによって、免疫エフェクター細胞に導入される。
【0390】
アデノウイルス系ベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。このようなベクターを用いて、高力価および高レベルの発現が得られている。このベクターは、相対的に簡単な系で大量に産生され得る。ほとんどのアデノウイルスベクターは、トランス遺伝子を、Ad E1a、E1b、および/またはE3遺伝子に置き換え、その後、複製欠損ベクターが、トランスで欠失遺伝子機能を供給するヒト293細胞中で増殖されるように、操作される。Adベクターは、非分裂中の分化細胞、例えば肝臓、腎臓、および筋肉中に見出されるものを含む多数の型の組織をインビボで形質導入し得る。従来のAdベクターは、大きな輸送能力を有する。
【0391】
複製欠損である現行のアデノウイルスベクターの生成および伝播は、Ad5 DNA断片によってヒト胎児腎臓細胞から形質転換された293と指定された特有のヘルパー細胞株を利用し得、E1タンパク質を構造的に発現する(Graham et al.,1977)。E3領域がアデノウイルスゲノムに不必要である(Jones&Shenk,1978)ため、293細胞の支援を受ける現行のアデノウイルスベクターは、E1領域、D3領域のいずれか、または両方の領域に外来DNAを保持する(Graham&Prevec,1991)。アデノウイルスベクターは、真核生物遺伝子の発現(Levrero et al.,1991、Gomez-Foix et al.,1992)およびワクチン開発(Grunhaus&Horwitz,1992、Graham&Prevec,1992)で使用されている。組み換えアデノウイルスを異なる組織に投与する研究には、気管点滴注入(Rosenfeld et al.,1991、Rosenfeld et al.,1992)、筋肉注射(Ragot et al.,1993)、末梢静脈内注射(Herz&Gerard,1993)、および脳への定位接種(stereotactic inoculation)(Le Gal La Salle et al.,1993)が含まれる。臨床試験中のAdベクターの使用の一例は、筋肉内注射による抗腫瘍免疫化に対するポリヌクレオチド療法を含んだ(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083-9(1998))。
【0392】
様々な実施形態において、1つ以上のポリヌクレオチドは、免疫エフェクター細胞を、1つ以上のポリヌクレオチドを含む単純ヘルペス、例えば、HSV-1、HSV-2で形質導入することによって、免疫エフェクター細胞に導入される。
【0393】
成熟HSVビリオンは、152kbである直鎖二本鎖DNA分子からなるウイルスゲノムを有する包まれた二十面体カプシドからなる。一実施形態において、HSV系ウイルスベクターは、1つ以上の必須または非必須HSV遺伝子に欠けている。一実施形態において、HSV系ウイルスベクターは、複製欠損である。最も複製欠損であるHSVベクターは、複製を妨げるために、1つ以上の最初期、初期、または後期HSV遺伝子を除去するための欠失を含む。例えば、HSVベクターは、ICP4、ICP22、ICP27、ICP47、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される最初期遺伝子を欠損し得る。HSVベクターの利点は、長期のDNA発現、および25kbまでの外因性DNAインサートを収容するその大型ウイルスDNAゲノムをもたらすことができる、潜伏段階へ入る能力である。HSV系ベクターは、例えば、米国特許第5,837,532号、同第5,846,782号、および同第5,804,413号、ならびに国際特許出願第WO91/02788号、同第WO96/04394号、同第WO98/15637号、および同第WO99/06583号に記載されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0394】
H.遺伝子改変細胞
様々な実施形態において、がんの治療において使用するための、本明細書において企図されるサルベージCARおよび/または二量体化可能なサルベージ受容体を発現するように遺伝子改変された細胞が提供される。細胞は、本明細書において企図されるサルベージCARおよび/または二量体化可能なサルベージ受容体を発現するように非遺伝子改変され得るか、または特定の好ましい実施形態において、細胞は、本明細書において企図されるサルベージCARおよび/または二量体化可能なサルベージ受容体を発現するように遺伝子改変され得る。本明細書で使用される場合、「遺伝子操作された」または「遺伝子改変された」という用語は、細胞内の全遺伝子材料にDNAまたはRNAの形態における追加の遺伝子材料を付加することを指す。特定の実施形態において、「遺伝子改変細胞」、「改変細胞」、および「再指向された細胞」という用語は、互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「遺伝子療法」という用語は、遺伝子の発現を回復、修正、もしくは改変する、またはサルベージCARポリペプチドおよび/または二量体化可能なサルベージ受容体ポリペプチドを発現する目的で、細胞内の全遺伝子材料にDNAまたはRNAの形態における追加の遺伝子材料を導入することを指す。
【0395】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARは、目的となる標的抗原にそれらの特異性を再指向させるために、免疫エフェクター細胞に導入され、発現する。特定の実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARは、目的となる一次標的抗原にそれらの特異性を再指向させるために、免疫エフェクター細胞に導入され、発現し、二量体化可能なサルベージ受容体は、架橋因子の存在下で目的となる二次標的抗原にそれらの特異性を再指向させるために、導入され、誘導的に発現される。
【0396】
「免疫エフェクター細胞」とは、1つ以上のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性細胞殺滅活性、サイトカインの分泌、ADCCおよび/またはCDCの誘導)を有する免疫系の任意の細胞である。本明細書において企図される例示的な免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球、特に細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、TIL、およびヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)である。一実施形態において、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞を含む。一実施形態において、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞を含む。免疫エフェクター細胞は、自家性/自律性(「自己」)であっても、非自家性(「非自己」、例えば、同種、同系、または異種)であってもよい。
【0397】
本明細書で使用される「自家性」とは、同じ対象からの細胞を指す。本明細書で使用される場合、「同種」は、比較する際に細胞と遺伝的に異なる同じ種の細胞を指す。本明細書で使用される場合、「同系」は、比較する際に細胞と遺伝的に同一である異なる対象の細胞を指す。本明細書で使用される場合、「異種」は、比較する際に細胞と異なる種の細胞を指す。好ましい実施形態において、細胞は自家である。
【0398】
本明細書において企図されるサルベージCARおよび/または二量体化可能なサルベージ受容体と共に使用される例示的な免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球を含む。「T細胞」または「Tリンパ球」という用語は、当該技術分野において認識されており、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、休止Tリンパ球、または活性化Tリンパ球を含むよう意図される。T細胞は、Tヘルパー(Th)細胞、例えば、Tヘルパー1(Th1)またはTヘルパー2(Th2)細胞であり得る。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)CD4+T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、CD4-CD8-T細胞、またはT細胞の任意の他のサブセットであってもよい。特定の実施形態で使用するのに好適な他の例示的なT細胞集団は、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞を含む。
【0399】
当業者には理解されるように、他の細胞を免疫エフェクター細胞として本明細書において企図されるサルベージCARおよび/または二量体化可能なサルベージ受容体と共に使用してもよい。特に、免疫エフェクター細胞はまた、NK細胞、NKT細胞、好中球、およびマクロファージも含む。免疫エフェクター細胞にはエフェクター細胞の前駆細胞も含まれ、そのような前駆細胞は、インビボまたはインビトロで免疫エフェクター細胞に分化するよう誘導され得る。したがって、特定の実施形態において、免疫エフェクター細胞は、臍帯血、骨髄、または動員末梢血に由来する細胞のCD34+集団に含まれる造血幹細胞(HSC)などの免疫エフェクター細胞の前駆細胞を含み、これは、対象に投与されると成熟免疫エフェクター細胞に分化するか、または成熟免疫エフェクター細胞に分化するようにインビトロで誘導され得る。
【0400】
本明細書で使用される場合、特異的サルベージCARを含むように遺伝子操作された免疫エフェクター細胞は、「抗原特異的な再指向された免疫エフェクター細胞」と称され得る。
【0401】
本明細書で使用される「CD34+細胞」という用語は、その細胞表面上でCD34タンパク質を発現する細胞を指す。本明細書で使用される「CD34」は、多くの場合、細胞-細胞接着因子として作用し、かつリンパ節へのT細胞進入に関与する、細胞表面糖タンパク質(例えば、シアロムチンタンパク質)を指す。CD34+細胞集団には、患者に投与されると分化し、T細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、および単球/マクロファージ系列の細胞を含む全ての造血系に寄与する、造血幹細胞(HSC)が含まれる。
【0402】
本明細書において企図されるサルベージCARおよび/または二量体化可能なサルベージ受容体を発現する免疫エフェクター細胞を作製するための方法が、特定の実施形態において提供される。一実施形態において、本方法は、免疫エフェクター細胞が本明細書において企図される1つ以上のサルベージCARを発現するように、個体から単離された免疫エフェクター細胞にトランスフェクションまたは形質導入を行うことを含む。一実施形態において、本方法は、免疫エフェクター細胞が本明細書において企図される1つ以上のサルベージCARおよび/または二量体化可能なサルベージ受容体を発現するように、個体から単離された免疫エフェクター細胞にトランスフェクションまたは形質導入を行うことを含む。ある特定の実施形態において、免疫エフェクター細胞は、インビトロで個体から単離され、さらなる操作を行うことなく遺伝子改変される。このような細胞は次に、個体に直接再投与され得る。さらなる実施形態において、免疫エフェクター細胞は、遺伝子改変される前に、まずインビトロで増殖するよう活性化され、刺激される。この点において、免疫エフェクター細胞は、遺伝子改変される前および/または後に培養されてもよい。
【0403】
特定の実施形態において、本明細書に記載される免疫エフェクター細胞のインビトロでの操作または遺伝子改変の前に、細胞源が対象から得られる。特定の実施形態において、改変免疫エフェクター細胞は、T細胞を含む。
【0404】
T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺問題、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含むが、これらに限定されない、いくつかの供給源から得ることができる。ある特定の実施形態において、T細胞は、当業者に知られる任意の数の技術、例えば遠心沈降、例えばFICOLL(商標)分離などを使用して、対象から収集された血液単位から得ることができる。
【0405】
他の実施形態において、単離または精製されたT細胞集団が、使用される。いくつかの実施形態において、PBMCの単離後、細胞傷害性Tリンパ球とヘルパーTリンパ球との両方が、活性化、増幅、および/または遺伝子改変の前または後のいずれかに、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、およびエフェクターT細胞の亜集団に分別され得る。
【0406】
マーカー:CD3、CD4、CD8、CD28、CD45RA、CD45RO、CD62、CD127、およびHLA-DRのうちの1つ以上を発現するT細胞の特定のサブ集団は、正または負の選択技法によりさらに単離され得る。一実施形態において、CD62L、CCR7、CD28、CD27、CD122、CD127、CD197、またはCD38もしくはCD62L、CD127、CD197、およびCD38からなる群から選択されるマーカーのうちの1つ以上を発現するT細胞の特定のサブ集団は、正または負の選択技法によりさらに単離され得る。様々な実施形態において、製造されたT細胞組成物は、マーカー:CD57、CD244、CD160、PD-1、CTLA4、TIM3、およびLAG3のうちの1つ以上を発現しない、または実質的に発現しない。
【0407】
一実施形態において、単離または精製されたT細胞集団は、CD3+、CD4+、CD8+、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、マーカーのうちの1つ以上発現する。
【0408】
ある特定の実施形態において、T細胞は、サルベージCARおよび/または二量体化可能なサルベージ受容体を発現するように改変される前に、まず個体から単離され、インビトロで増殖するよう活性化され、刺激される。
【0409】
T細胞組成物の十分な治療用量を達成するために、T細胞は、多くの場合、1つ以上の刺激、活性化、および/または拡大させる。T細胞は、一般的に、例えば、米国特許第6,352,694号、同第6,534,055号、同第6,905,680号、同第6,692,964号、同第5,858,358号、同第6,887,466号、同第6,905,681号、同第7,144,575号、同第7,067,318号、同第7,172,869号、第7,232,566号、同第7,175,843号、同第5,883,223号、同第6,905,874号、同第6,797,514号、および同第6,867,041号(それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される方法を使用して、活性化および増幅させ得る。特定の実施形態において、T細胞は、活性化し、本明細書において企図されるサルベージCARおよび/または二量体化可能なサルベージ受容体をコードするベクターまたはmRNAの導入前に、約6時間、約12時間、約18時間、または約24時間増幅させる。
【0410】
一実施形態において、T細胞は、改変されると同時に活性化される。
【0411】
様々な実施形態において、CAR T細胞を生成する方法は、T細胞を含む細胞の集団を活性化させること、およびT細胞の集団を増幅させることを含む。T細胞活性化は、T細胞TCR/CD3複合体によって、一次刺激シグナルを提供すること、およびアクセサリー分子、例えばCD28によって二次共刺激シグナルを提供することによって達成され得る。
【0412】
TCR/CD3複合体は、好適なCD3結合剤、例えばCD3リガンドまたは抗CD3モノクローナル抗体とT細胞を接触させることによって刺激され得る。CD3抗体の例示的な例としては、OKT3、G19-4、BC3、および64.1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0413】
TCR/CD3複合体によって提供される一次刺激シグナルに加えて、T細胞応答の誘導は、第2の共刺激シグナルを必要とする。特定の実施形態において、CD28結合剤は、共刺激シグナルを提供するために使用され得る。CD28結合剤の例示的な例としては、天然のCD28リガンド、例えば、CD28の天然リガンド(例えば、B7-1(CD80)およびB7-2(CD86)などのタンパク質のB7ファミリーのメンバー;CD28分子を架橋することができる抗CD28モノクローナル抗体またはその断片、例えば、モノクローナル抗体9.3、B-T3、XR-CD28、KOLT-2、15E8、248.23.2、およびEX5.3D10が挙げられるが、これらに限定されない。
【0414】
一実施形態において、一次刺激シグナルを提供する分子、例えば、TCR/CD3複合体によって刺激を提供する分子、および共刺激分子は、同じ表面に結合する。
【0415】
ある特定の実施形態において、刺激シグナルおよび共刺激シグナルを提供する結合剤は、細胞の表面上に局在化される。これは、細胞表面上でのその発現に好適な形態における結合剤をコードする核酸を細胞にトランスフェクトもしくは形質導入することによって、あるいは結合剤を細胞表面に結合させることによって達成することができる。
【0416】
別の実施形態において、一次刺激シグナルを提供する分子、例えば、TCR/CD3複合体によって刺激を提供する分子、および共刺激分子は、抗原提示細胞で提示される。
【0417】
一実施形態において、一次刺激シグナルを提供する分子、例えば、TCR/CD3複合体によって刺激を提供する分子、および共刺激分子は、別々の表面上に提供される。
【0418】
ある特定の実施形態において、刺激シグナルおよび共刺激シグナルを提供する結合剤のうちの1つは、可溶性であり(溶液で提供され)、他の薬剤(複数可)は、1つ以上の表面上に提供される。
【0419】
特定の実施形態において、刺激シグナルおよび共刺激シグナルを提供する結合剤は、両方とも可溶形態で提供される(溶液で提供される)。
【0420】
様々な実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCAR T細胞を作製するための方法は、抗CD3抗体および抗CD28抗体でT細胞を活性化させることを含む。
【0421】
一実施形態において、本明細書において企図される方法によって活性化されたT細胞の増幅は、T細胞を含む細胞の集団を、数時間(約3時間)から約7日間~約28日間、またはそれらの間の任意の時間単位の整数値にわたって培養することをさらに含む。別の実施形態において、T細胞組成物は、14日間培養され得る。特定の実施形態において、T細胞は、約21日間培養される。別の実施形態において、T細胞組成物は、約2~3日間培養される。T細胞の培養時間が60日間以上になり得るように、数サイクルの刺激/活性化/増幅が望ましい場合もある。
【0422】
特定の実施形態において、T細胞培養に適切な条件としては、適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI Media 1640もしくはX-vivo 15(Lonza))、ならびに、血清(例えば、ウシ胎仔血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、IL-21、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβ、およびTNF-α、または当業者に既知の細胞の増殖に好適な任意の他の添加剤を含むが、これらに限定されない、増殖および生存能に必要な1つ以上の要素が挙げられる。
【0423】
細胞培養培地のさらなる例示的な例としては、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンが添加され、血清不含であるか、あるいは適切な量の血清(もしくは血漿)または定義されたホルモン一式、ならびに/またはT細胞の増殖および増幅に十分な量のサイトカイン(複数可)が補充された、RPMI 1640、Clicks、AIM-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20、Optimizerが挙げられるが、これらに限定されない。
【0424】
抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験用培養物にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養物には含まれない。標的細胞は、増殖の支持に必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5%CO2)に維持される。
【0425】
特定の実施形態において、PBMCまたは単離されたT細胞は、IL-2、IL-7、および/またはIL-15などの適切なサイトカインを含む培養培地において、概してビーズまたは他の表面に結合した抗CD3抗体および抗CD28抗体などの刺激剤および共刺激剤と接触させられる。
【0426】
他の実施形態において、種々の共刺激分子およびサイトカインの安定した発現および分泌を指向するようにK562、U937、721.221、T2、およびC1R細胞を操作することにより作製された人工APC(aAPC)。特定の実施形態において、K32またはU32 aAPCは、AAPC細胞表面上に1つ以上の抗体ベースの刺激分子の表示を指向するために使用される。T細胞集団は、CD137L(4-1BBL)、CD134L(OX40L)、および/またはCD80もしくはCD86を含むが、これらに限定されない、様々な共刺激分子を発現するaAPCにより増幅され得る。最後に、aAPCは、遺伝子改変T細胞を増幅し、CD8 T細胞上のCD28発現を維持するために、効率的なプラットホームを提供する。WO03/057171およびUS2003/0147869に提供されるaAPCは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0427】
特定の一実施形態において、サルベージCARおよび/または二量体化可能なサルベージ受容体をコードするポリヌクレオチドを、T細胞の集団に導入される。ポリヌクレオチドは、マイクロインジェクション、トランスフェクション、リポフェクション、熱ショック、電気穿孔、形質導入、遺伝子銃、マイクロインジェクション、DEAEデキストラン媒介移動などによってT細胞に導入され得る。
【0428】
様々な実施形態において、サルベージCAR T細胞が生成される。いくつかの実施形態において、サルベージCAR T細胞は、二量体化可能なサルベージ受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された誘導性プロモーターを含む核酸を導入することによって、さらに遺伝子改変される。
【0429】
好ましい一実施形態において、ポリヌクレオチドは、ウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0430】
免疫エフェクター細胞またはCD34+細胞にポリヌクレオチドを導入するのに好適なウイルスベクターシステムの例示的な例としては、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペス、アデノウイルス、遺伝子導入のためのワクシニアウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0431】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、AAV形質導入によりT細胞に導入される。
【0432】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、レトロウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0433】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、レンチウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0434】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、アデノウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0435】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、単純ヘルペスウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0436】
一実施形態において、ポリヌクレオチドは、ワクシニアウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0437】
様々な実施形態において、本明細書において企図される遺伝子改変された細胞は、1つ以上の改変されたTCRα対立遺伝子をさらに含む。特定の実施形態において、TCRα遺伝子座で二本鎖切断を作製するように設計された1つ以上の操作されたヌクレアーゼを、サルベージCAR T細胞に導入される。特定の実施形態において、TCRα遺伝子座で二本鎖切断を作製するように設計された1つ以上の操作されたヌクレアーゼを、二量体化可能なサルベージ受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された誘導性プロモーターを含む核酸を含むサルベージCAR T細胞に導入される。
【0438】
特定の実施形態において、遺伝子改変されたT細胞を生成する方法は、IL-2、IL-7、および/もしくはIL-15などの適切なサイトカイン、ならびに/またはPI3K細胞シグナル伝達経路を調節する1つ以上の薬剤を含む細胞培地中で、細胞を、刺激剤および共刺激剤、例えば、可溶性抗CD3抗体および抗CD28抗体、またはビーズもしくは他の表面に結合した抗体と接触させることを含む。
【0439】
本明細書で使用される場合、「PI3K阻害剤」という用語は、PI3Kに結合し、その少なくとも1つの活性を阻害する核酸、ペプチド、化合物、または有機小分子を指す。PI3Kタンパク質は、クラス1のPI3K、クラス2のPI3K、およびクラス3のPI3Kの3つのクラスに分けることができる。クラス1のPI3Kは、4つのp110触媒サブ単位(p110α、p110β、p110δ、およびp110γ)のうちの1つ、ならびに調節サブ単位の2つのファミリーのうちの1つからなるヘテロ二量体として存在する。特定の実施形態において、PI3K阻害剤は、クラス1のPI3K阻害剤を標的化する。一実施形態において、PI3K阻害剤は、クラス1のPI3K阻害剤の1つ以上のアイソフォームに選択性(すなわち、p110α、p110β、p110δ、およびp110γ、またはp110α、p110β、p110δ、およびp110γのうちの1つ以上に対する選択性)を示すであろう。別の態様では、PI3K阻害剤はアイソフォーム選択性を提示せず、「汎PI3K阻害剤」とみなされるであろう。一実施形態において、PI3K阻害剤は、PI3K触媒ドメインとの結合に関してATPと競合するであろう。
【0440】
特定の実施形態で使用するのに好適なPI3K阻害剤の例示的な例としては、BKM120(クラス1のPI3K阻害剤、Novartis)、XL147(クラス1のPI3K阻害剤、Exelixis)、(汎PI3K阻害剤、GlaxoSmithKline)、およびPX-866(クラス1のPI3K阻害剤;p110α、p110β、およびp110γアイソフォーム、Oncothyreon)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0441】
選択的PI3K阻害剤の他の例示的な例としては、BYL719、GSK2636771、TGX-221、AS25242、CAL-101、ZSTK474、およびIPI-145が挙げられるが、これらに限定されない。
【0442】
汎PI3K阻害剤のさらに例示的な例としては、BEZ235、LY294002、GSK1059615、TG100713、およびGDC-0941が挙げられるが、これらに限定されない。
【0443】
好ましい実施形態において、PI3K阻害剤は、ZSTK474である。
【0444】
I.組成物および製剤
本明細書において企図される組成物は、1つ以上のポリペプチド、ポリヌクレオチド、それらを含むベクター、遺伝子改変免疫エフェクター細胞などを含み得る。組成物は、薬学的組成物を含むが、これに限定されない。「薬学的組成物」は、単独で、あるいは1つ以上の他の治療様式と組み合わせてのいずれかで細胞もしくは動物に投与するための、薬学的に許容される溶液または生理学的に許容される溶液において製剤化される組成物を指す。また、所望される場合、組成物が、例えばサイトカイン、成長因子、ホルモン、小分子、化学療法薬、プロドラッグ、薬物、抗体、または他の様々な薬学的活性剤といった他の薬剤と組み合わせて投与されてもよいことが理解されよう。本組成物に同様に含まれ得る他の構成成分に実質的に制限はないが、但し、追加の薬剤が、本組成物が意図される療法を送達する能力に悪影響を及ぼさないものとする。
【0445】
「薬学的に許容される」という表現は、本明細書において、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに好適な、妥当な利益/リスク比に見合った化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために用いられる。
【0446】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」としては、ヒトまたは飼育動物に使用するのに許容可能なものとして米国食品医薬品局によって承認されている任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒、界面活性剤、または乳化剤が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な薬学的に許容される担体としては、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン類;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;ココアバター、ワックス、動物脂および植物脂、パラフィン、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;落花生油、綿実油、紅花油、胡麻油、オリーブ油、コーン油、および大豆油などの油類;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール類;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質除去水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液、ならびに薬学的製剤において採用される任意の他の適合性物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0447】
特定の実施形態において、組成物は、本明細書において企図される、ある量のサルベージCARを発現する免疫エフェクター細胞を含む。他の特定の実施形態において、組成物は、ある量の二量体化可能なサルベージ受容体を含む。他の特定の実施形態において、組成物は、ある量の架橋因子を含む。他の特定の実施形態において、組成物は、架橋因子に結合したある量の二量体化可能なサルベージ受容体を含む。
【0448】
本明細書で使用される場合、「量」という用語は、臨床結果を含む、有益なもしくは所望の予防または治療結果を達成するために、治療細胞、サルベージCAR T細胞、二量体化可能なサルベージ受容体、または架橋因子などの「有効な量」または「有効量」を指す。
【0449】
「予防的に有効な量」とは、所望の予防結果を達成するために有効な、治療細胞、サルベージCAR T細胞、二量体化可能なサルベージ受容体、または架橋因子などの量を指す。必ずしもそうではないが典型的には、予防的用量は疾患の発生前または初期段階で対象に使用されるため、予防上有効量は、治療上有効量未満である。
【0450】
治療細胞、サルベージCAR T細胞、二量体化可能なサルベージ受容体、または架橋因子などの「治療上有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する組成物の能力などの要因によって異なり得る。治療上有効量はまた、治療細胞、サルベージCAR T細胞、二量体化可能なサルベージ受容体、または架橋因子などのいかなる毒性もしくは有害な作用をも治療に有益な効果が上回るものである。「治療上有効量」という用語は、対象(例えば、患者)を治療するのに有効な量を含む。治療量が示される場合、投与されるべき組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍サイズ、感染もしくは転移の範囲、および状態の個々の差を考慮して医師により決定され得る。本明細書に記載のT細胞を含む薬学的組成物は、102~1010個の細胞/kg体重、好ましくは105~106個の細胞/kg体重の投薬量(これらの範囲内の全ての整数値を含む)で投与され得ると概説することができる。細胞数は、その中に含まれる細胞の型のように、組成物が意図される最終用途に依存する。本明細書に提供される用途において、細胞は、概して1リットル以下の容量であり、500mL以下、さらには250mLまたは100mL以下であってもよい。したがって、所望の細胞の密度は、典型的には106個の細胞/ml超であり、概して107個の細胞/ml超、概して108個の細胞/mlまたはそれ以上である。臨床的に関連する免疫細胞数は、累積的に105、106、107、108、109、1010、1011、または1012個の細胞と等しいかまたはそれを超える複数回の注入に分配され得る。いくつかの実施形態において、特に、注入された細胞の全てが特定の標的抗原に再指向されるため、106/キログラム(患者当たり106~1011)の範囲内の低い細胞数が投与され得る。サルベージCARを発現するT細胞を含むT細胞組成物は、これらの範囲内の投薬量で複数回投与され得る。細胞は、療法を受ける患者に対して同種、同系、異種、または自家であり得る。所望される場合、治療は、免疫応答の誘導を増強するために、本明細書に記載されるマイトジェン(例えばPHA)またはリンホカイン、サイトカイン、および/もしくはケモカイン(例えば、IFN-γ、IL-2、IL-12、TNF-アルファ、IL-18、およびTNF-ベータ、GM-CSF、IL-4、IL-13、Flt3-L、RANTES、MIP1αなど)の投与を含んでもよい。
【0451】
概して、本明細書に記載されるように活性化および増幅された細胞を含む組成物は、免疫不全の個体において生じる疾患の治療および予防に用いられ得る。具体的には、本明細書において企図される組成物は、がんの治療に使用される。特定の実施形態において、サルベージCAR改変T細胞、二量体化可能なサルベージ受容体、および架橋因子は、単独で、あるいは担体、希釈剤、賦形剤、および/またはIL-2もしくは他のサイトカインもしくは細胞集団などの他の成分と組み合わせた薬学的組成物としてのいずれかで投与されてもよい。
【0452】
特定の実施形態において、薬学的組成物は、1つ以上の薬学的もしくは生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせた、ある量の遺伝子改変T細胞を含む。
【0453】
特定の実施形態において、薬学的組成物は、1つ以上の薬学的もしくは生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせた、ある量の二量体化可能なサルベージ受容体を含む。
【0454】
特定の実施形態において、薬学的組成物は、1つ以上の薬学的もしくは生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせた、ある量の二量体化可能なサルベージ受容体を含む。
【0455】
T細胞などのサルベージCAR発現免疫エフェクター細胞集団、二量体化可能なサルベージ受容体、または架橋因子を含む薬学的組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース、またはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸;抗酸化剤;EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤を含み得る。特定の実施形態において、組成物は、好ましくは、経鼻、経口、腸内、または非経口投与、例えば、血管内(静脈内または動脈内)、腹腔内または筋肉内投与のために製剤化される。
【0456】
液体薬学的組成物は、それらが溶液であるか、懸濁液であるか、または他の同様の形態であるかにかかわらず、注射用水、食塩水溶液、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張食塩水などの無菌希釈剤、溶媒もしくは懸濁媒として機能し得る合成モノグリセリドもしくはジグリセリドなどの固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;アセテート、シトレート、またはホスフェートなどの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性を調整するための薬剤のうちの1つ以上を含み得る。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチックで作製された多用量バイアルに封入され得る。注射可能な薬学的組成物は、好ましくは減菌である。
【0457】
一実施形態において、本明細書において企図されるT細胞組成物は、薬学的に許容される細胞培養培地において製剤化される。そのような組成物は、ヒト対象への投与に好適である。特定の実施形態において、薬学的に許容される細胞培養培地は、血清不含培地である。
【0458】
血清不含培地は、簡素かつより明確に定義された組成物、低い程度の混入物、感染因子源の可能性の排除、およびコストの低下を含め、血清含有培地に比べていくつかの利点を有する。様々な実施形態において、血清不含培地は動物質不含であり、任意にタンパク質不含であってもよい。任意に、培地は、生物薬剤学的に許容される組換えタンパク質を含んでもよい。「動物質不含」培地とは、成分が非動物源に由来する培地を指す。動物質不含培地では、組換えタンパク質が天然の動物タンパク質に取って代わり、栄養素は合成源、植物源、または微生物源から得られる。対照的に、「タンパク質不含」培地は、タンパク質を実質的に含まないものと定義される。
【0459】
特定の組成物に使用される血清不含培地の例示的な例としては、QBSF-60(Quality Biological,Inc.)、StemPro-34(Life Technologies)、およびX-VIVO 10が挙げられるが、これらに限定されない。
【0460】
好ましい一実施形態において、本明細書において企図されるT細胞を含む組成物は、PlasmaLyte Aを含む溶液において製剤化される。
【0461】
別の好ましい実施形態において、本明細書において企図されるT細胞を含む組成物は、凍結保存培地を含む溶液において製剤化される。例えば、凍結保存剤を含む凍結保存培地を使用して、解凍後の高い細胞生存成績を維持することができる。特定の組成物に使用される凍結保存培地の例示的な例としては、CryoStor CS10、CryoStor CS5、およびCryoStor CS2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0462】
より好ましい実施形態において、本明細書において企図されるT細胞を含む組成物は、50:50のPlasmaLyte AとCryoStor CS10とを含む溶液において製剤化される。
【0463】
特定の一実施形態において、組成物は、有効量のサルベージCAR発現免疫エフェクター細胞を、単独で、または1つ以上の治療剤との組み合わせで含む。したがって、サルベージCAR発現免疫エフェクター細胞組成物は、単独で、または二量体化可能なサルベージ受容体、架橋因子、もしくは他の既知のがん治療、例えば、放射線療法、化学療法、移植、免疫療法、ホルモン療法、光線力学的療法などと組み合わせて投与されてもよい。組成物はまた、抗生物質と組み合わせて投与されてもよい。このような治療薬は、特定のがんなど、本明細書に記載される特定の疾患状態の標準的な治療として、当該技術分野において認められていてもよい。企図される例示的な治療剤としては、サイトカイン、成長因子、ステロイド、NSAID、DMARD、抗炎症薬、化学療法薬、放射線療法薬、治療用抗体、または他の活性剤および補助剤が挙げられる。
【0464】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示されるサルベージCAR発現免疫エフェクター細胞を含む組成物は、任意の数の化学療法剤と併せて投与されてもよい。化学療法剤の例示的な例としては、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、およびウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチローロメラミンレジューム(trimethylolomelamine resume)を含むエチレンイミンならびにメチルアメラミン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソウレア;アクラシロマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhne-Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロナート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオミチン(DMFO);Targretin(商標)(ベキサロテン)、Panretin(商標)(アリトレチノイン)などのレチノイン酸誘導体;ONTAK(商標)(デニロイキンジフチトクス);エスペラミシン;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。この定義には、がんに対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン薬など;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン薬;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体も含まれる。
【0465】
種々の他の治療剤が、本明細書に記載の組成物と併せて使用され得る。一実施形態において、サルベージCAR発現免疫エフェクター細胞を含む組成物は、抗炎症剤と共に投与される。抗炎症剤または薬物は、ステロイドおよびグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンを含む)、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDS)(アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬物、シクロホスファミド、およびミコフェノレートを含む)を含むが、これらに限定されない。
【0466】
他の例示的なNSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、VIOXX(登録商標)(ロフェコキシブ)およびCELEBREX(登録商標)(セレコキシブ)などのCox-2阻害剤、ならびにシアリレート(sialylate)からなる群から選択される。例示的な鎮痛薬は、アセトアミノフェン、オキシコドン、プロポルキシフェン(proporxyphene)塩酸塩のトラマドールからなる群から選択される。例示的なグルココルチコイドは、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、またはプレドニゾンからなる群から選択される。例示的な生物学的応答修飾物質としては、細胞表面マーカー(例えば、CD4、CD5など)に対して指向される分子、TNF拮抗薬(例えば、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、およびインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))などのサイトカイン阻害剤、ケモカイン阻害剤、ならびに接着分子阻害剤が挙げられる。生物学的応答修飾物質は、モノクローナル抗体ならびに分子の組換え形態を含む。例示的なDMARDとしては、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシリラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、金(経口(オーラノフィン)および筋肉内)、およびミノサイクリンが挙げられる。
【0467】
本明細書において企図されるサルベージCAR改変T細胞との組み合わせに好適な治療抗体の例示的な例としては、単独で、または二量体化可能なサルベージ受容体の一部としてのいずれかの、バビツキシマブ、ベバシズマブ(アバスチン)、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、コナツムマブ、ダラツムマブ、ドゥリゴツマブ、ダセツズマブ、ダロツズマブ、エロツズマブ(HuLuc63)、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、インダツキシマブ、イノツズマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、ミラツズマブ、モキセツモマブ、オカラツズマブ、オファツムマブ、リツキシマブ、シルツキシマブ、テプロツムマブ、およびウブリツキシマブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0468】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、サイトカインと併せて投与される。本明細書で使用される場合、「サイトカイン」とは、細胞間の介在物質として別の細胞に作用する1つの細胞集団によって放出されるタンパク質の一般的な用語を意味する。そのようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインの中には、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝臓成長因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子-アルファおよび-ベータ;ミュラー管抑制物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-ベータなどの神経成長因子;血小板成長因子;TGF-アルファおよびTGF-ベータなどの形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子IおよびII;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン-アルファ、ベータ、および-ガンマなどのインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);ならびに顆粒球-CSF(G-CSF);IL-1、IL-1アルファ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15などのインターロイキン(IL)、TNF-アルファまたはTNF-ベータなどの腫瘍壊死因子;ならびにLIFおよびキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書で使用される場合、サイトカインという用語は、天然源または組換え細胞培養物からのタンパク質、および天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0469】
J.治療方法
本明細書において企図されるサルベージCARシステムは、がんの予防、治療、および寛解に使用するための、またはがんに関連する少なくとも1つの症状を予防、治療、もしくは寛解するための、改善された養子免疫療法の方法を提供する。好ましい実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARシステムは、再発性または難治性がんの予防、治療、および寛解に使用するための改善された養子免疫療法の方法を提供する。
【0470】
様々な実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARシステムは、再発性または難治性がん細胞における細胞傷害性を増加させるのに使用するための、または再発性または難治性がん細胞の数を減少させるのに使用するための、改善された養子免疫療法の方法を提供する。
【0471】
特定の実施形態において、一次T細胞の特異性は、がん細胞上に発現する第1の抗原に指向されるサルベージCARで一次T細胞を遺伝子改変することによって、腫瘍またはがん細胞に再指向される。一実施形態において、サルベージCAR T細胞は、それを必要とするレシピエントに注入される。注入された細胞は、レシピエントの腫瘍細胞を殺滅することができる。抗体療法とは異なり、サルベージCAR T細胞は、インビボで複製することができ、そのため、さらに持続したがん療法をもたらし得る長期持続性に貢献する。しかしながら、寛解またはがんの退縮が不完全であり、がんが再発し、治療が効かなくなる場合、二量体化可能なサルベージ受容体は、再発性または難治性がん細胞上に発現する第2の抗原に対してサルベージCAR T細胞療法を再標的化するために架橋因子の存在下で提供される。
【0472】
一実施形態において、サルベージCAR T細胞は、がんがあると診断された対象に投与される。再発性または難治性がん細胞が成長した時点で、対象に、再発性または難治性細胞にCAR T細胞療法を再開始するために、二量体化可能なサルベージ受容体および架橋因子を投与する。二次腫瘍も再発する場合、異なるサルベージCAR T細胞、異なる二量体化可能なサルベージ受容体のいずれか、またはその両方が、対象に提供され得る。このサイクルは、対象におけるがんを根絶するために必要に応じて何度も繰り返され得る。
【0473】
一実施形態において、誘導性二量体化可能なサルベージ受容体を含むサルベージCAR T細胞は、がんがあると診断された対象に投与される。再発性または難治性がん細胞が成長した時点で、対象に、二量体化可能なサルベージ受容体の発現を誘発する薬剤を投与し、再発性または難治性細胞にCAR T細胞療法を再開始するために、架橋因子も投与する。二次腫瘍も再発する場合、異なるサルベージCAR T細胞、異なる二量体化可能なサルベージ受容体のいずれか、またはその両方が、対象に提供され得る。異なるサルベージ受容体は、同じサルベージCAR T細胞中の異なる誘導性プロモーターの制御下であり得るか、または二量体化可能なサルベージ受容体ポリペプチドの直接投与によって提供され得る。このサイクルは、対象におけるがんを根絶するために必要に応じて何度も繰り返され得る。
【0474】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARシステムは、固形腫瘍またはがんの治療で使用される。
【0475】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARシステムは、副腎癌、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳/CNS癌、乳癌、気管支腫瘍、心臓腫瘍、子宮頸癌、胆管細胞癌、軟骨肉腫、脊索腫、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、乳管内上皮内癌(DCIS)子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、感覚神経芽腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌、卵管癌、線維組織腫(fibrous histiosarcoma)、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、神経膠腫、神経膠芽腫、頭頸部癌、血管芽腫、肝細胞癌、下咽頭癌、眼球内黒色腫、カポジ肉腫、腎癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、非小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、悪性中皮腫、髄様癌、髄芽腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、メルケル細胞癌、正中管癌(midline tract carcinoma)、口癌、粘液肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、鼻腔および副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、乏突起神経膠腫、口頭癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、膵島細胞腫瘍、乳頭癌、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、腎細胞癌、腎盂腎および尿管癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮脂腺癌、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、小細胞肺癌、小腸癌、胃の癌、汗腺癌、滑膜腫、精巣癌、咽喉癌、胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、血管癌、外陰癌、ならびにウィルムス腫瘍のものが挙げられるが、これらに限定されない、固形腫瘍またはがんの治療で使用される。
【0476】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARシステムは、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、脳癌、骨癌、甲状腺癌、腎臓癌、または皮膚癌が挙げられるが、これらに限定されない、固形腫瘍またはがんの治療で使用される。
【0477】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARシステムは、膵臓、膀胱、および肺が挙げられるが、これらに限定されない、様々ながんの治療で使用される。
【0478】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARシステムは、液性がんまたは血液がんの治療に使用される。
【0479】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARシステムは、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない、B細胞悪性腫瘍の治療で使用される。
【0480】
特定の実施形態において、本明細書において企図されるサルベージCARシステムは、白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫:急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄芽球性,前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病、有毛細胞白血病(HCL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、および真性赤血球増加症、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、菌状息肉腫、未分化大細胞リンパ腫、セザリー症候群、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、多発性骨髄腫、顕性多発性骨髄腫、くすぶり多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌性骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、ならびに髄外性形質細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない、液性がんの治療で使用される。
【0481】
特定の実施形態において、方法は、再発性または難治性がん細胞が成長したときに、治療上有効量のサルベージCAR T細胞を、それを必要とする患者に投与することと、続いて、二量体化可能なサルベージ受容体および架橋因子を対象に投与することと、を含む。
【0482】
特定の実施形態において、方法は、再発性または難治性がん細胞が成長したときに、治療上有効量のサルベージCAR T細胞を、それを必要とする患者に投与することと、続いて、架橋因子に結合した二量体化可能なサルベージ受容体を対象に投与することと、を含む。
【0483】
特定の実施形態において、方法は、再発性または難治性がん細胞が成長したときに、治療上有効量のサルベージCAR T細胞を、それを必要とする患者に投与することと、続いて、二量体化可能なサルベージ受容体の発現を誘発することと、架橋因子を対象に投与することと、を含む。
【0484】
ある特定の実施形態において、細胞は、がんを発症するリスクがある患者の治療で使用される。それ故に、特定の実施形態は、再発性または難治性がん細胞が成長したときに、治療上有効量のサルベージCAR T細胞を、それを必要とする患者に投与することと、続いて、二量体化可能なサルベージ受容体および架橋因子を対象に投与することと、を含む、がんの少なくとも1つの症状の治療または予防または寛解を含む。
【0485】
ある特定の実施形態において、細胞は、がんを発症するリスクがある患者の治療で使用される。それ故に、特定の実施形態は、再発性または難治性がん細胞が成長したときに、治療上有効量のサルベージCAR T細胞を、それを必要とする患者に投与することと、続いて、架橋因子に結合した二量体化可能なサルベージ受容体を対象に投与することと、を含む、がんの少なくとも1つの症状の治療または予防または寛解を含む。
【0486】
特定の実施形態において、がんを発症するリスクがある患者を治療する方法は、再発性または難治性がん細胞が成長したときに、治療上有効量のサルベージCAR T細胞を、それを必要とする患者に投与することと、続いて、二量体化可能なサルベージ受容体の発現を誘発することと、架橋因子を対象に投与することと、を含む。
【0487】
一実施形態において、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法は、再発性または難治性がん細胞が成長したときに、有効量のサルベージCAR T細胞を投与することと、続いて、二量体化可能なサルベージ受容体および架橋因子を対象に投与することと、を含む。
【0488】
一実施形態において、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法は、再発性または難治性がん細胞が成長したときに、有効量のサルベージCAR T細胞を投与することと、続いて、架橋因子に結合した二量体化可能なサルベージ受容体を対象に投与することと、を含む。
【0489】
一実施形態において、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法は、再発性または難治性がん細胞が成長したときに、有効量のサルベージCAR T細胞をそれを必要とする患者に投与することと、続いて、二量体化可能なサルベージ受容体の発現を誘発することと、架橋因子を対象に投与することと、を含む。
【0490】
適切な投薬量は臨床治験によって決定され得るが、投与の分量および頻度は、患者の状態、ならびに患者の疾患の種類および重症度などの要因によって決定されるであろう。
【0491】
一実施形態において、対象に投与される組成物中の免疫エフェクター細胞、例えばT細胞の量は、少なくとも0.1×105個の細胞、少なくとも0.5×105個の細胞、少なくとも1×105個の細胞、少なくとも5×105個の細胞、少なくとも1×106個の細胞、少なくとも0.5×107個の細胞、少なくとも1×107個の細胞、少なくとも0.5×108個の細胞、少なくとも1×108個の細胞、少なくとも0.5×109個の細胞、少なくとも1×109個の細胞、少なくとも2×109個の細胞、少なくとも3×109個の細胞、少なくとも4×109個の細胞、少なくとも5×109個の細胞、または少なくとも1×1010個の細胞である。
【0492】
特定の実施形態において、約1×107個のT細胞~約1×109個のT細胞、約2×107個のT細胞~約0.9×109個のT細胞、約3×107個のT細胞~約0.8×109個のT細胞、約4×107個のT細胞~約0.7×109個のT細胞、約5×107個のT細胞~約0.6×109個のT細胞、または約5×107個のT細胞~約0.5×109個のT細胞が対象に投与される。
【0493】
一実施形態において、対象に投与される組成物中の免疫エフェクター細胞、例えばT細胞の量は、少なくとも0.1×104個の細胞/kg体重、少なくとも0.5×104個の細胞/kg体重、少なくとも1×104個の細胞/kg体重、少なくとも5×104個の細胞/kg体重、少なくとも1×105個の細胞/kg体重、少なくとも0.5×106個の細胞/kg体重、少なくとも1×106個の細胞/kg体重、少なくとも0.5×107個の細胞/kg体重、少なくとも1×107個の細胞/kg体重、少なくとも0.5×108個の細胞/kg体重、少なくとも1×108個の細胞/kg体重、少なくとも2×108個の細胞/kg体重、少なくとも3×108個の細胞/kg体重、少なくとも4×108個の細胞/kg体重、少なくとも5×108個の細胞/kg体重、または少なくとも1×109個の細胞/kg体重である。
【0494】
特定の実施形態において、約1×106個のT細胞/kg体重~約1×108個のT細胞/kg体重、約2×106個のT細胞/kg体重~約0.9×108個のT細胞/kg体重、約3×106個のT細胞/kg体重~約0.8×108個のT細胞/kg体重、約4×106個のT細胞/kg体重~約0.7×108個のT細胞/kg体重、約5×106個のT細胞/kg体重~約0.6×108個のT細胞/kg体重、または約5×106個のT細胞/kg体重~約0.5×108個のT細胞/kg体重が対象に投与される。
【0495】
所望の療法をもたらすために、特定の実施形態において企図される組成物の複数回投与が必要とされる場合があることは、当業者であれば認識するであろう。例えば、組成物は、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、1年、2年、5年、10年、またはそれ以上にわたって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回もしくはそれ以上投与され得る。
【0496】
ある特定の実施形態において、活性化されたT細胞を対象に投与し、次いで再採血し(またはアフェレーシスを行い)、そこからT細胞を活性化させ、これらの活性化および増幅したT細胞を患者に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週間毎に複数回行われてもよい。ある特定の実施形態において、T細胞は、10cc~400ccの採血から活性化され得る。ある特定の実施形態において、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、100cc、150cc、200cc、250cc、300cc、350cc、または400ccもしくはそれ以上の採血から活性化される。理論に束縛されるものではないが、この複数回採血/複数回再注入プロトコルの使用は、ある特定のT細胞集団を選出することに役立ち得る。
【0497】
特定の実施形態において企図される組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、留置、または移植を含む、任意の簡便な様式で行われ得る。好ましい一実施形態において、組成物は、経鼻、経口、腸内、または非経口投与される。本明細書で使用される場合、「非経口投与」および「非経口投与される」という語句は、腸内および局所投与以外、通常、注射による投与モードを指し、血管内、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、腫瘍内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、ならびに胸骨内注射および注入を含むが、これらに限定されない。一実施形態において、本明細書において企図される組成物は、腫瘍、リンパ節、または感染部位への直接注射により対象に投与される。
【0498】
一実施形態において、それを必要とする対象は、対象のがんに対する細胞免疫応答を増加させるために有効量の組成物を投与される。免疫応答は、感染細胞、調節性T細胞、およびヘルパーT細胞応答を死滅させることができる細胞傷害性T細胞により媒介される細胞免疫応答を含み得る。B細胞を活性化することができるヘルパーT細胞によって主に媒介され、よって抗体産生につながる体液性免疫応答も誘発され得る。組成物により誘導される免疫応答の種類を分析するには種々の技術を使用することができ、これらは、当該技術分野において、例えば、Current Protocols in Immunology,Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober(2001)John Wiley & Sons,NY,N.Y.に詳しく記載されている。
【0499】
一実施形態において、がんと診断された対象を治療する方法は、対象から免疫エフェクター細胞を取り出すことと、免疫エフェクター細胞を改変し、改変された免疫エフェクター細胞の集団を生成することと、改変された免疫エフェクター細胞の集団を同じ対象に投与することと、を含む。好ましい実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞を含む。
【0500】
特定の実施形態において企図される細胞組成物を投与するための方法は、エクスビボの改変された免疫エフェクター細胞の再導入、または対象に導入されると成熟免疫エフェクター細胞に分化する免疫エフェクター細胞の前駆細胞の再導入をもたらすのに有効な任意の方法を含む。1つの方法は、エクスビボで末梢血T細胞に改変し、改変された細胞を対象に戻すことを含む。
【0501】
本明細書に引用される公開文献、特許出願、および交付済み特許は全て、個々の公開文献、特許出願、または交付済み特許それぞれが参照により組み込まれるよう明確かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0502】
前述の実施形態は、理解を明確にするために図示および例によりいくらか詳細に記載されているが、本明細書において企図される教示の観点から、添付の特許請求の範囲の主旨または範囲から逸脱することなく、ある特定の変更および改変がそれに対して行われ得ることは、当業者には容易に明らかであろう。以下の実施例は、限定ではなく、単なる例示として提供されるものである。当業者であれば、変更または改変しても本質的に同様の結果を得ることができる必須ではない種々のパラメータを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0503】
実施例1
サルベージCARシステム
機能的なサルベージCARシステムは、二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体および架橋因子AP21967を用いて、CD19陽性、BCMA陰性Nalm-6細胞株に抗BCMAサルベージCARを再指向した。
【0504】
対照抗BCMA CARは、CD8α由来のシグナルペプチド、抗BCMA scFv、CD8α由来のヒンジ領域、および膜貫通ドメイン、細胞内4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ζシグナル伝達ドメインを含む(
図1、左パネル、配列番号1)。抗BCMAサルベージCARは、CD8α由来のシグナルペプチド、抗BCMA scFv、G4Sリンカー配列、FRBバリアント(T82L)、CD8α由来のヒンジ領域、および膜貫通ドメイン、細胞内4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む(
図1、中央パネル、配列番号2)。二量体化可能なサルベージ受容体は、IgK由来のシグナルペプチド、FLAGタグ、抗CD19 scFv、およびFKBP12ドメインを含む(配列番号3)。この実験で使用されるポリペプチドは、T2A.1配列およびmCherry蛍光タンパク質も含んだポリタンパク質であった(配列番号4)。全ての構築物を、レンチウイルスベクターにクローニングし、レンチウイルスは、構築されたプロトコルを用いて調製した。例えば、Kutner et al.,BMC Biotechnol.2009;9:10.doi:10.1186/1472-6750-9-10、Kutner et al.Nat.Protoc.2009;4(4):495-505.doi:10.1038/nprot.2009.22を参照されたい。
【0505】
二量体化ドメインの存在は、CAR機能に影響しない。
ヒトPBMC(1×106個の細胞/mL)を、可溶性抗CD3抗体および抗CD28抗体(50ng/mL)で0日目に活性化した。24時間のインキュベーション後、1×106個の細胞を、抗BCMA CARまたは抗BCMAサルベージCARのいずれかをコードするレンチウイルスで形質導入した。形質導入した細胞を、3日目に、洗浄し、0.3×106個の細胞/mLの成長培地で再懸濁した。CAR T細胞を、一日おきに変化したIL-2(250IU/mL)を含有する培地で7日間培養した。
【0506】
抗BCMA CAR T細胞および抗BCMAサルベージCAR T細胞の細胞傷害能は、CAR T細胞(E、エフェクター細胞)を、E:T比を5:1でK562-BCMA陽性細胞(GFP陽性)(T、標的細胞)とK562-BCMA陰性細胞(BFP陽性)との50:50の混合物と10日目に24時間共培養することによって分析した。細胞を、20nMのAP21967(非免疫抑制ラパマイシン類似体)を用いて共培養したか、またはそれを用いずに培養した。K562-BCMA陽性細胞対K562-BCMA陰性細胞の比は、CAR T細胞傷害性の直接読み出しである。抗BCMA CAR T細胞と抗BCMAサルベージCAR T細胞との間でBCMA特異的な細胞傷害性の有意な差はなかった。(
図2A)。AP21967はまた、細胞傷害性への影響を与えなかった。
【0507】
抗原依存性サイトカイン分泌を、E:T比を1:1でCAR T細胞をK562-BCMA陽性細胞と(AP21967を用いてまたは用いずに)10日目に24時間共培養することによって分析した。培養上清を収集し、IFNγの産出を、IFNγ ELISAキット(eBiosciences)を用いて分析した。同様レベルのIFNγの分泌が、抗BCMA CAR T細胞と抗BCMAサルベージCAR T細胞との間で観察された(
図2B)。AP21967は、実質的には、細胞傷害性に影響を与えなかった。
【0508】
抗BCMAサルベージCAR T細胞は、抗CD19サルベージ受容体およびAP21967の存在下で、CD19を発現するNalm-6細胞に再指向され得る
293 T細胞を、二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体をコードするレンチウイルスで形質導入して、分泌した抗CD19-scFv-FKBP12タンパク質の安定した源を生成した(
図1、右パネル)。可溶性抗CD19サルベージ受容体ポリペプチド(抗CD19 scFV FKBP12)を含有する上清を、安定した293T-710細胞から収集し、濾過した。
【0509】
抗CD19サルベージ受容体は、AP21967の存在下で、抗BCMAサルベージCARを用いてヘテロ二量体を形成する(
図3A)。BCMA陰性に対する抗BCMAサルベージCAR T細胞(E)およびCD19陽性Nalm-6細胞(T)の細胞傷害能は、CAR T細胞を、E:T比を2:1でNalm-6-CD19陽性細胞(GFP陽性)とK562-CD19陰性細胞(BFP陽性)との50:50の混合物と24時間共培養することによって分析した。共培養物を、ビヒクルまたは100nM AP21967で、異なる容量の293T-710細胞上清(0μl、10μl、または30μl)で処理した。抗BCMAサルベージCAR T細胞は、AP21967および293T-710細胞上清の存在下で、Nalm-6細胞に対してCD19特異的細胞傷害性を示した。
図3B。
【0510】
抗原依存性サイトカイン分泌は、抗BCMAサルベージCAR T細胞を、E:T比を1:1でCD19陽性Nalm-6細胞と24時間共培養することによって分析した。共培養物を、ビヒクルまたは100μLの293T-710細胞上清で、および100nMのAP21967で処理した。培養上清を収集し、IFNγの分泌は、IFNγ ELISAキット(eBiosciences)を用いて分析した。IFNγの分泌は、100μLの293T-710細胞上清および100nMのAP21967の存在下で、抗BCMAサルベージCARの共培養で有意に増加した。
図3C。
【0511】
実施例2
予め充填された二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体
ヒトリポカリン-2由来のシグナルペプチド、CD19抗原を標的化するscFV、FKBP12ドメイン、T2A.1配列、mCherry配列、およびウッドチャック転写後調節領域(WPRE)を含む二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体をコードするレンチウイルス(配列番号5)を使用して、二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体を発現する安定した293T細胞株(293T-707)を生成した。
【0512】
二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体を、収集し、500mLの293T-707細胞培養上清を濾過し(0.22μmのフィルタ)、FKBP12特異的親和性カラムに結合することによって精製した。カラムは、一定の回転で、400μgのビオチン-FK506を用いて2mLのNeutrAvidin Agarose(Thermofisher)を室温で30分間インキュベートすることによって生成した。カラムを、PBSで洗浄して、非共役ビオチン-FK506を除去した。濾過した293T-707上清を、重力によってカラムを通過させた。A280の流入が約0になるまで、カラムを、PBSで洗浄した。二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体を、5mLの8μM ラパマイシンで溶出し、続いて、15mLのPBSで溶出した(
図4A)。VivaSpin-20遠心分離濃縮器(10kD MWCO)を用いて、溶出したタンパク質を、濃縮した(100倍)。濃縮したタンパク質画分を、20mLのPBS中で再希釈し、続いて、さらなる一連のVivaSpin-20濃縮で再希釈した。タンパク質画分を、PBSへのZeba Spin 7Kカラム(Thermofisher)で脱塩して、残りの非結合ラパマイシンを除去した。精製したタンパク質溶液を濾過し(0.22μm)、滅菌し、4℃で保存した。精製した二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体を、ウサギ抗FKBP12抗体を用いたSDS PAGEおよびウェスタンブロット分析を使用して結合したラパマイシンの存在についてアッセイした。
【0513】
これらのアッセイは、精製した二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体がラパマイシンに結合したことを確認した(
図4B)。
【0514】
実施例3
予め充填された二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体は、抗BCMAサルベージCARを再指向する
T細胞を、抗BCMA CARまたは抗BCMAサルベージCARをコードするレンチウイルスで形質導入した。CAR T細胞を、250ngの予め充填された二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体の存在または不在下で、100nM AP21967を用いてまたは用いずに、E:T比を2:1でGFPを発現するCD19陽性Nalm-6細胞とBFPを発現するCD19陰性K562細胞との50:50の混合物と24時間共培養した。抗BCMAサルベージCAR T細胞は、ラパマイシンで予め充填された二量体化可能なCD19サルベージ受容体の存在下で、Nalm-6に対してCD19に特異的な細胞傷害性を示した。
図5。AP21967は、CD19に特異的な細胞傷害性を誘発する必要がなかった。
【0515】
抗BCMAサルベージCAR T細胞を、E:T比を2:1でGFPを発現するCD19陽性Nalm-6細胞とBFPを発現するCD19陰性K562細胞との50:50の混合物と、減少した量(125ng、62.5ng、31.3ng、15.6ng、7.8ng、3.9ng、2.0ng)の予め充填された二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体とで24時間共培養した。わずか2ngの予め充填された二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体は、CD19に特異的な細胞傷害性を誘発するのに十分であった。
図6。
【0516】
抗BCMAサルベージCAR T細胞または非形質導入T細胞を、E:T比を1:1でCD19陽性Nalm-6細胞と、減少した量(125ng、62.5ng、31.3ng、15.6ng、7.8ng、3.9ng、2.0ng)の予め充填された二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体とで24時間共培養した。共培養上清(superantant)上で実施されるサイトカイン放出アッセイは、IL-2、IL-4、IL-17A、TNF、およびIFNγを産生し、産生したサイトカインの量が共培養液中で予め充填された二量体化可能な抗CD19サルベージ受容体の量に相関したことを示した。
図7。
【0517】
実施例4
抗CD19サルベージ受容体は、抗BCMA DARIC T細胞を再指向する
抗BCMA DARICをコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたMNDプロモーターを含むレンチウイルスを、設計し、構築し、検証した。BCMA DARICは、CD8α由来のシグナルペプチド、FRBバリアント(T82L)、CD8α由来の膜貫通ドメイン、細胞内4-1BB共刺激ドメイン、CD3ゼータシグナル伝達ドメイン、P2A配列、Igκ由来のシグナルペプチド、BCMA抗原を標的化する一本鎖可変断片(scFv)、G4Sリンカー配列、FKBP12ドメイン、およびアムニオンレス(AMN)由来の膜貫通ドメインを含む(配列番号6)。
【0518】
抗CD19サルベージ受容体を用いてCD19を発現するNalm-6細胞に抗BCMA DARIC T細胞を再指向する能力を評価した。抗BCMA-DARIC T細胞を、250ngの抗CD19サルベージ受容体の存在または不在下で、エフェクター対標的(E:T)比を2:1でCD19+Nalm-6(GFP)とK562(BFP)標的細胞との50:50の混合物と共培養した。抗CD19サルベージ受容体は、CD19+Nalm-6細胞に対して抗BCMA DARIC T細胞の細胞傷害性を再指向することができた。
図8B。サイトカイン放出アッセイも行った。抗BCMA DARIC T細胞を、250ngの抗CD19サルベージ受容体の存在または不在下で、E:T比を1:1でNalm-6細胞と24時間共培養した。IFNγは、抗CD19サルベージ受容体を含有する共培養物からのみ生成した。
図8C。
【0519】
概して、続く特許請求の範囲において、使用される用語は、本明細書および特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、可能性のある全ての実施形態を、かかる特許請求の範囲が権利を有する同等物の全範囲と共に含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、開示により制限されない。
【配列表】