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特許7125370自己免疫疾患の治療及び/又は診断におけるアプタマーの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】自己免疫疾患の治療及び/又は診断におけるアプタマーの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20220817BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 9/08 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 33/02 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220817BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20220817BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20220817BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220817BHJP
   G01N 33/566 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P1/04
A61P9/00
A61P9/08
A61P9/12
A61P11/00
A61P13/02
A61P13/08
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/06
A61P25/00
A61P25/28
A61P27/06
A61P33/02
A61P37/06
C12N15/115 Z ZNA
C12Q1/6883 Z
G01N33/53 N
G01N33/566
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019069178
(22)【出願日】2019-03-29
(62)【分割の表示】P 2017054518の分割
【原出願日】2012-03-02
(65)【公開番号】P2019134709
(43)【公開日】2019-08-15
【審査請求日】2019-04-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】11157229.3
(32)【優先日】2011-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】61/449,772
(32)【優先日】2011-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508334199
【氏名又は名称】シャリテ-ウニヴェルジテーツメディツィン・ベルリン
【氏名又は名称原語表記】CHARITE-UNIVERSITAETSMEDIZIN BERLIN
(73)【特許権者】
【識別番号】513225774
【氏名又は名称】マックス-デルブリュック-セントラム フュア モレクラーレ メディツィン
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シムケ インゴルフ
(72)【発明者】
【氏名】ハベルランド アンネカトリン
(72)【発明者】
【氏名】ワルカット ゲルト
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】渕野 留香
【審判官】原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/037323(WO,A2)
【文献】米国特許第5543293(US,A)
【文献】特表2009-508473(JP,A)
【文献】Biomacromolecules,2010,Vol.11,p.2724-2730
【文献】Exp Clin Cardiol,2005,Vol.10,No.3,p.170-172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/7088-31/713,C07K1/00-19/00,C12N1/00-15/90
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、2及び3のうち1つと少なくとも0%同一である核酸配列を含み、かつGタンパク質共役受容体に対する自己抗体と特異的にかつ高親和性で結合することができるアプタマーを含む、自己免疫疾患の治療及び/又は診断において使用するための剤であって、前記自己免疫疾患が、Gタンパク質共役受容体に対する特異的な自己抗体の存在に関連する、剤であって、
ただし、前記アプタマーが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の核酸配列のいずれも含まない、剤
【請求項2】
配列番号1、2及び3のうち1つと少なくとも0%同一である核酸配列を含み、かつGタンパク質共役受容体に対する自己抗体と特異的にかつ高親和性で結合することができるアプタマーを含む、自己免疫疾患に罹患している患者の血液又はその構成要素のアフェレシスの際の選択性成分として使用するための剤であって、前記自己免疫疾患が、Gタンパク質共役受容体に対する特異的な自己抗体の存在に関連することを特徴とする、剤であって、
ただし、前記アプタマーが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の核酸配列のいずれも含まない、剤
【請求項3】
前記アフェレシスが、治療的アフェレシスである、請求項2に記載の剤。
【請求項4】
前記自己抗体が自己免疫疾患に罹患している患者の血清中に存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の剤。
【請求項5】
前記剤が、ヒトにおける治療及び/又は診断に使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の剤。
【請求項6】
前記アプタマーが、DNAアプタマーである、請求項1~5のいずれか一項に記載の剤。
【請求項7】
前記アプタマーが、配列番号1、2及び3のうち1つと少なくとも0%同一である核酸配列のみからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の剤。
【請求項8】
前記アプタマーが、配列番号1と少なくとも0%同一である核酸配列を含むか、又は配列番号1と少なくとも0%同一である核酸配列のみからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の剤。
【請求項9】
前記アプタマーが、配列番号1と少なくとも0%同一である核酸配列のみからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の剤。
【請求項10】
前記自己免疫疾患が、心筋症、拡張型心筋症(DCM)、周産期心筋症(PPCM)、特発性心筋症、シャーガス心筋症、シャーガス巨大結腸、シャーガス巨大食道、シャーガス神経障害、良性前立腺肥大、硬皮症、乾癬、レイノー症候群、子癇前症、腎臓同種移植片拒絶、心筋炎、緑内障、糖尿病、高血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、及び/又はアルツハイマー病である、請求項1~9のいずれか一項に記載の剤。
【請求項11】
配列番号1、2及び3のうち1つと少なくとも0%同一である核酸配列を含み、かつGタンパク質共役受容体に対する自己抗体と特異的にかつ高親和性で結合することができるアプタマーと、容器とを含む、自己免疫疾患の治療及び/又は診断用のキットであって、
ただし、前記アプタマーが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の核酸配列のいずれも含まない、キット
【請求項12】
Gタンパク質共役受容体に特異的である抗体の生体外検出のための、配列番号1、2及び3のうち1つと少なくとも0%同一である核酸配列を含み、かつGタンパク質共役受容体に対する自己抗体と特異的にかつ高親和性で結合することができるアプタマーの使用であって、
ただし、前記アプタマーが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の核酸配列のいずれも含まない、使用
【請求項13】
前記Gタンパク質共役受容体が、ヒトGタンパク質共役受容体アドレナリン作動性α-1受容体、アドレナリン作動性β-1受容体、アドレナリン作動性β-2受容体、エンドセリン1 ETA受容体、ムスカリン性M2受容体、アンギオテンシンII AT1受容体及び/又はPAR受容体である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記被検抗体が、自己抗体である、請求項12又は13に記載の使用。
【請求項15】
前記抗体が、体液に存在するか、又はそれらに由来する、請求項12~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記体液が、ヒト身体の液体である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記ヒト身体の液体が、血液、血漿、血清、尿、糞便、滑液、間質液、リンパ液、唾液、髄液及び/又は涙液である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記体液が、自己免疫疾患に罹患している、又は罹患している疑いのある個体から採取される、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
前記自己免疫疾患が、Gタンパク質共役受容体に特異的である自己抗体が患者の血清に存在することに関連する、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記自己免疫疾患が、アドレナリン作動性α-1受容体、アドレナリン作動性β-1受容体、アドレナリン作動性β-2受容体、エンドセリン1 ETA受容体、ムスカリン性M2受容体、アンギオテンシンII AT1受容体及び/又はPAR受容体に特異的である自己抗体が、患者の血清に存在することに関連する、請求項18の使用。
【請求項21】
配列番号1、2及び3のうち1つと少なくとも0%同一である核酸配列を含み、かつGタンパク質共役受容体に対する自己抗体と特異的にかつ高親和性で結合することができるアプタマーを含むことを特徴とするアフェレシスカラムであって、
ただし、前記アプタマーが、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の核酸配列のいずれも含まない、アフェレシスカラム
【請求項22】
自己免疫疾患の治療及び/又は診断のための請求項21に記載のアフェレシスカラムであって、前記自己免疫疾患が、Gタンパク質共役受容体に特異的な自己抗体の存在に関連している、アフェレシスカラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
免疫系はあらゆる動物の不可欠な部分を成している。哺乳動物は、微生物に対する防御
、例えば腫瘍細胞のような異常な細胞の検出及び除去、並びに組織の再生においてその免
疫系を用いている。それによって、これらの生物は、体液性免疫と細胞性免疫という2つ
の相互に関連した防御機構に頼っている。
【0002】
抗体は、その抗原と結合すると、体液性免疫応答を誘発する。抗体は複数の方法で働く
ことができる。抗原の中和の他、抗体は補体系も活性化させる。自身の身体の抗原に向け
られた抗体も存在する。このようないわゆる自己抗体が生成する理由として、分子模倣及
び/又はバイスタンダーアクチべーション(bystander activation)が知られている。自己
抗体が自身の抗原と特異的に結合すると、これらの抗原の分解を促進することができるナ
チュラルキラー細胞(NK細胞)が活性化される。
【0003】
自己免疫疾患は、自身の細胞又は組織に対して免疫応答を誘発する、自身の身体の構成
部分に向けられた抗体の、こうした特異的認識及び結合に基づくものである。この免疫刺
激作用の他、自己抗体は他の機構によっても病原性表現型の発生に寄与し得る。Gタンパ
ク質共役受容体、例えば、アドレナリン作動性α-1受容体、アドレナリン作動性β-1
受容体、アドレナリン作動性β-2受容体、エンドセリン1 ETA受容体、ムスカリン
性M2受容体、アンギオテンシンII AT1受容体及び/又はプロテイナーゼ活性化受
容体(PAR)の細胞外部分に特異的であり得る自己抗体も存在し、特異的に結合すると
、これらの受容体を活性化させたり遮断したりすることができることはよく知られている
。このような自己抗体が生物体に存在すると、個々の受容体の永続的活性化又は遮断とい
う意味で促進作用又は拮抗作用がもたらされ、疾病の発生の一端を担う場合がある。
【0004】
拡張型心筋症(DCM)は、高いパーセンテージの患者が、アドレナリン作動性β-1
受容体の細胞外部分、特に、アドレナリン作動性β-1受容体の第1ループ又は第2ルー
プに結合するこのような活性化型の自己抗体を呈する疾患の1つである。結果として、こ
れらの患者においてはDCMの自己免疫的病因が示唆された。このような自己抗体が結合
すると、受容体は絶えず活性化される(Jahns et al. (2004) Direct evidence for a bet
a-1-adrenergic receptor-directed autoimmune attack as a cause of idiopathic card
iomyopathy. J.Clin.Invest. 113, 1419-1429)。
【0005】
最近の研究では、免疫グロブリン吸着によって血液からこれらの自己抗体を除去するこ
とが心筋の再生に寄与することを示すことができた(Wallukat G, Reinke P, Dorffel WV,
Luther HP, Bestvater K, Felix SB, Baumann G. (1996) Removal of autoantibodies i
n dilated cardiomyopathy by immunoadsorption. Int J Cardiol. 54:191-195; Muller
J, Wallukat G, Dandel M, Bieda H, Brandes K, Spiegelsberger S, Nissen E, Kunze R
, Hetzer R (2000) Immunoglobulin adsorption in patients with idiopathic dilated
cardiomyopathy. Circulation. 101:385-391; W.V. Dorffel, S.B. Felix, G. Wallukat,
S. Brehme, K. Bestvater, T. Hofmann, F.K. Kleber, G. Baumann, P. Reinke (1997)
Short-term hemodynamic effects of immunoadsorption in dilated cardiomyopathy. Ci
rculation 95, 1994-1997及びW.V. Dorffel, G. Wallukat, Y. Dorffel, S.B. Felix, G.
Baumann (2004) Immunoadsorption in idiopathic dilated cardiomyopathy, a 3-year
follow-up. Int J. Cardiol. 97, 529-534)。
【0006】
シャーガス心筋症、周産期心筋症、心筋炎、肺高血圧症及び悪性高血圧症など、Gタン
パク質共役受容体に対する自己抗体の存在に関連があることが示唆されている心血管系の
他の疾患もある。Gタンパク質共役受容体に対する自己抗体はまた、例えば緑内障、糖尿
病、アルツハイマー病、良性前立腺肥大、硬皮症、レイノー症候群、乾癬、及び子癇前症
を有する患者、及び慢性シャーガス病の患者、並びに腎臓同種移植片拒絶を伴う患者でも
見出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、患者において自己抗体の存在に関連する自己免疫疾患の治療及び/又
は診断において使用するための新規なモダリティーを提供することである。
【0008】
本発明は、自己免疫疾患の治療及び/又は診断において使用するための、配列番号1、
配列番号2、配列番号3の核酸配列、及び/又は配列番号1、2及び3のうち1つと少な
くとも80%同一である核酸配列を含む、又はからなるアプタマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアプタマーは、それらが配列番号1、配列番号2、配列番号3を有するヌクレ
オチド15個の核酸配列、及び/又は配列番号1、2及び3のうち1つと少なくとも80
%同一である核酸配列を含む、又はからなることを特徴とする。15マー:GGT TG
G TGT GGT TGG(配列番号1)、26マー:CGC CTA GGT TG
G GTA GGG TGG TGG CG(配列番号2)及び12マー:GGT TG
G TGT GGT(配列番号3)は全て互いに独立であり、本発明のアプタマーの標的
特異性を可能とし、該標的特異性を担う。配列番号1、2及び/又は3を有する核酸配列
の5’末端及び/又は3’末端に、さらなる核酸分子又は配列を付加することもできる。
前記15マー(配列番号1)は、トロンビンとのその結合に関して最初に単離され(米国
特許第5,543,293号明細書参照)、これは国際公開第2010/033167号
に最初に記載された26マー(配列番号2)についてもそうである。最初に記載されたも
のはARC183の名称で、第I相臨床試験において、トロンビンの阻害のために、すな
わち、急性の心血管状況での使用の可能性に向けた抗凝固薬として、既に用いられている
。26マーは、NU172(ARC2172)の名称で第II相臨床試験(clinic
al trial gov. identifier:NCT00808964)におい
て用いられている。しかしながら、前記15マー(配列番号1)に関しては、所望の抗凝
固を達成するために必要とされるアプタマーの量では最適な投与プロフィールが得られな
いことが分かった。
【0010】
驚くことに、本発明のアプタマーは、自己免疫疾患に関連するGタンパク質共役受容体
に特異的な抗体、特に、自己抗体の相互作用を妨げるために使用可能であることが判明し
た。特に、本発明のアプタマーは、アドレナリン作動性α-1受容体、アドレナリン作動
性β-1受容体、アドレナリン作動性β-2受容体、エンドセリン1 ETA受容体、ム
スカリン性M2受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、及び/又はPAR受容体
に特異的な自己抗体と結合して、これらの自己抗体とその標的タンパク質との特異的相互
作用を阻害することができることを示すことができた。これらの相互作用を阻害すること
により、本発明のアプタマーは、これらの抗体を除去する必要なく、個々のGタンパク質
共役受容体の永続的活性化を減じる、又は無くしさえする。よって、本発明は、自己免疫
疾患、特に、Gタンパク質共役受容体を認識する自己抗体の存在に関連する自己免疫疾患
、すなわち、アドレナリン作動性α-1受容体、アドレナリン作動性β-1受容体、アド
レナリン作動性β-2受容体、エンドセリン1 ETA受容体、ムスカリン性M2受容体
、アンギオテンシンII AT1受容体、及び/又はPAR受容体に特異的な自己抗体の
存在に関連する自己免疫疾患の治療及び/又は診断における使用のためのそれらの適合性
に関して初めて記載される化合物を提供する。更に、本発明のアプタマーは、固定化した
後に、上記で示した自己抗体を捕捉することができる。このように、第1に患者の血清か
ら自己抗体を除去するためのアフェレシス技術を確立するため、第2に自己抗体の測定の
ための分析ツールを開発するためのプラットフォームが提供される。最後に、特に、自己
免疫疾患の診断のために使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、図に示されている種々のAABの機能活性の中和の用量反応曲線を示す。
図2図2は、トロンビンアプタマーによるβ1-受容体AABの機能活性を中和する用量反応曲線に対する、ヒトIgG-3[73nM]の存在の影響を示す。
図3図3は、ETA-ABにより媒介される新生児心筋細胞の拍動数低下に対する、トロンビンアプタマーの影響を示す。
図4図4は、固定化ETA-AB、対照としての固定化ウサギIgG及び固定化ヒトIgGサブクラスに対するトロンビンアプタマー(配列番号1)の結合を示す。A及びC:各25nMの固定化タンパク質、B及びD:250nMの固定化タンパク質。A及びB:トロンビンアプタマー配列番号1の結合、並びにC及びD:そのスクランブル対照配列の結合。ビオチン化トロンビンアプタマーを使用したが、このビオチン部分が検出に役立つ。結合したビオチンの量は、ニュートラアビジン-POD及びTMB/H22反応によって定量した。
図5図5は、固定化トロンビンアプタマー(配列番号1)に対するETA-AB(SP4122P)の結合を示す。固定化のためのトロンビンアプタマーは、A:1μM、B:0.1μM。検出には、二次抗ウサギIgG-POD抗体(1:10.000)及びTMB/H22反応を用いた。非コーティングプレート及びニュートラアビジンコーティングプレートを対照として用いた(ニュートラアビジン=NA)。
図6図6は、固定化トロンビンアプタマー(配列番号1)及び対照としての固定化スクランブルトロンビンアプタマーに対するETA-AB(SP4122P)の結合を示す。
図7図7は、トロンビンアプタマーカラム及び対応する対照実験(対照カラム)からの溶出後の、結合したETA-ABの回収を示す。ETA-AB活性をバイオアッセイで測定した。
図8図8は、ELISA試験における、添加を行った血清からのETA-ABの回収を示す。A:溶出液サンプル(透析)と同等に処理したETA-AB標準曲線を示す。B:トロンビンアプタマーカラム(ARC183カラム)及び対応する対照カラム(スクランブルトロンビンアプタマー)からの溶出後の通過画分、洗浄溶液及び溶出液中で回収されたETA-ABの量を示す。検出には、抗ウサギ-IgG-POD抗体(1:10,000)及びTMB/H22検出を用いた。
図9図9は、自発的に拍動する新生ラット心筋細胞のバイオアッセイを用いた、5’-FITC標識トロンビンアプタマーのAAB中和能試験を示す。β1-受容体AABにより生じた拍動数の増加は、100nM FITC-トロンビンアプタマーが存在した場合には約50%低下した。バーは独立した2回の試験(n=2)の平均である。
図10図10は、トロンビンアプタマー//FITC-トロンビンアプタマーサンドイッチアッセイを用いた、患者サンプルのETA-AABの検出を示す。対照として、対照IgGサンプル及びスクランブルトロンビンアプタマーを用いた。データは1回の試験から得たものである(FITC-throm-a=FITC-トロンビン-アプタマー、throm-apta=トロンビン-アプタマー)。
図11図11は、自発的に拍動する新生児心筋細胞のバイオアッセイで測定した、100nM dT-トロンビンアプタマーによる、AAB活性(β1-受容体 AAB、α1+β2-受容体AAB、アフィニティー精製β2-受容体AAB、各AAB n=1)の中和を示す。
図12図12は、自発的に拍動するラット心筋細胞のバイオアッセイにおける、β1-受容体AABの正の変時活性を中和する原型15マー配列(ARC183、配列番号1)及び26マー配列(NU172、配列番号2)と比較した、末端切断型トロンビンアプタマー配列(12マー配列、配列番号3、Throm K1)の機能性の試験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、用語「アプタマー」は、配列番号1、配列番号2、配列番号3の核酸
配列、及び/又は配列番号1、2及び3のうち1つと少なくとも80%同一である核酸配
列を含む、又はからなり、かつ、特定の標的分子と、例えば、アドレナリン作動性α-1
受容体、アドレナリン作動性β-1受容体、アドレナリン作動性β-2受容体、エンドセ
リン1 ETA受容体、ムスカリン性M2受容体、アンギオテンシンII AT1受容体
、及び/又はPAR受容体などのようなGタンパク質共役受容体に向けられた自己抗体と
特異的にかつ高親和性で結合することができるオリゴヌクレオチドを意味する。
【0013】
本発明のアプタマーは、核酸分子、すなわちヌクレオチド、の配列を含む、又はからな
る。本発明のアプタマーは好ましくは、非修飾及び/又は修飾D-ヌクレオチド及び/又
はL-ヌクレオチドを含む。核酸塩基の一般的な一文字コードによれば、「C」はシトシ
ンを表し、「A」はアデニンを表し、「G」はグアニンを表し、そして「T」はチミンを
表し、また、「U」はウラシルを表す。以下、そうではないことが示されない限り、用語
「ヌクレオチド」は、リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドを意味するものと
する。用語「2’-フルオロ修飾ヌクレオチド」、「2’-メトキシ修飾ヌクレオチド」
、及び/又は「2-アミノ修飾ヌクレオチド」はそれぞれ、修飾リボヌクレオチド及び修
飾デオキシリボヌクレオチドを意味する。
【0014】
アプタマーは、そのアプタマーが、それぞれ配列番号1、2又は3のヌクレオチド配列
に対して、配列番号1、2又は3の全長にわたって少なくとも80%の配列同一性を示す
ヌクレオチドの連続配列を含む場合に、配列番号1、2及び3のうち1つと少なくとも8
0%同一である核酸配列からなる、又は含むとみなされる。配列同一性を決定するための
手段は当技術分野で周知であり、例えば、アルゴリズムblastnの使用を含み得る。
【0015】
本発明のアプタマーは、≧15ヌクレオチド~≦160ヌクレオチド、好ましくは、≧
15ヌクレオチド~≦120ヌクレオチドの核酸配列を含み得る。
【0016】
本発明のアプタマーは、DNAヌクレオチド配列又はRNAヌクレオチド配列を含み得
るか、又はからなり得、従って、それぞれDNAアプタマー又はRNAアプタマーと呼ぶ
ことができる。本発明を通じて明示される配列モチーフ内で、本発明のアプタマーがRN
Aヌクレオチド配列を含む場合、チミンはウラシルに置き換わると理解される。本発明の
RNAヌクレオチド配列は、TがUに置き換わっていること以外は、本発明のDNAヌク
レオチド配列と同じである。本発明を通じて簡潔にするために、明確なDNAヌクレオチ
ド配列だけを記載している。しかしながら、それぞれのRNAヌクレオチド配列も本発明
に含まれると理解される。
【0017】
DNAアプタマーの使用が特に好ましい。DNAアプタマーは通常、血漿中でRNAア
プタマーよりも安定である。
【0018】
本発明のアプタマーは、2’修飾ヌクレオチド、例えば、2’-フルオロ修飾ヌクレオ
チド、2’-メトキシ修飾ヌクレオチド及び/又は2’-アミノ修飾ヌクレオチドを含有
するヌクレオチド配列を含み得る。本発明のアプタマーはまた、デオキシリボヌクレオチ
ド、修飾デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド及び/又は修飾リボヌクレオチド
の混合物も含み得る。
【0019】
本発明のアプタマーは、修飾を含み得る。このような修飾は、例えば、少なくとも1つ
のヌクレオチドのアルキル化、すなわち、メチル化、アリール化又はアセチル化、鏡像異
性体の包含及び/又はアプタマーと1以上の他のヌクレオチド又は核酸配列との融合を包
含する。このような修飾は、例えば、5’-CAP修飾及び/若しくは3’-CAP修飾
、又は5’-PEG構造及び/若しくは3’-PEG構造を含み得る。代わりに、又は加
えて、本発明のアプタマーは、修飾ヌクレオチド、好ましくは、ロックド(locked)核酸、
2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-メトキシ修飾ヌクレオチド及び/又は2’-ア
ミノ修飾ヌクレオチドから選択されるものを含み得る。
【0020】
ロックド核酸(locked-nucleic acids)(LNA)は、コンフォメーションが固定された
各RNAヌクレオチドの類似体を表す。ロックド核酸のオリゴヌクレオチドは、2’-O
H基がメチレン基を介してC4-炭素原子に連結されている1以上の二環式リボヌクレオ
シドを含む。ロックド核酸は、ヌクレアーゼに対し、各非修飾RNAアプタマー対応物に
比べて安定性の向上を示す。また、ハイブリダイゼーション特性も改良され、これにより
、アプタマーの親和性及び特異性の増強が可能となる。
【0021】
もう1つの好ましい修飾は、前記アプタマーの3’末端及び/又は5’末端への、いわ
ゆる3’-CAP構造、5’-CAP構造、及び/又は修飾グアノシンヌクレオチド(例
えば、7-メチル-グアノシン)の付加である。このような3’末端及び/又は5’末端
の修飾は、ヌクレアーゼによる急速な分解からアプタマーを保護する効果を持つ。
【0022】
代わりに、又は加えて、本発明のアプタマーは、ペグ化された5’末端及び/又は3’
末端を呈することができる。5’-PEG修飾及び/又は3’-PEG修飾は、少なくと
も1つのポリエチレングリコール(PEG)単位の付加を含み、好ましくは、このPEG
基は、1~900個のエチレン基、より好ましくは、1~450個のエチレン基を含む。
好ましい実施形態では、アプタマーは、HO-(CH2CH2O)n-H(式中、nは1~
900の整数であり、好ましくは、nは1~450の整数である)を有する直鎖PEG単
位を含む。
【0023】
本発明のアプタマーは、ホスホチオエート主鎖を有する核酸配列を含み得るか、若しく
はからなることができ、又は全部が又は一部がペプチド核酸(PNA)として構成されて
もよい。
【0024】
本発明のアプタマーを上述の方法のうち1以上によって修飾する1つの利点は、アプタ
マーが使用される環境に存在する、例えばヌクレアーゼのような有害な影響に対して、ア
プタマーを安定化させることができるということである。前記修飾はまた、アプタマーの
薬理特性を適合させるためにも適している。前記修飾はアプタマーの親和性又は特異性を
変化させないことが好ましい。
【0025】
本発明のアプタマーはまた、担体分子及び/又はリポーター分子とコンジュゲートさせ
てもよい。担体分子は、アプタマーとコンジュゲートされた際に、例えば、安定性を増強
することにより、かつ/又は排泄速度に影響を与えることにより、コンジュゲートされた
アプタマーのヒト血漿中での血漿半減期を延長するこのような分子を含む。好適な担体分
子の一例としてPEGがある。リポーター分子は、コンジュゲートされたアプタマーの検
出を可能とする分子を含む。このようなリポーター分子の例として、GFP、ビオチン、
コレステロール、例えば蛍光色素のような色素、電気化学的に活性なリポーター分子及び
/又は放射性残基、特に、例えば18F、11C、13N、15O、82Rb又は68GaのようなP
ET(陽電子放射型断層撮影法)検出に好適な放射性核種を含む化合物がある。当業者は
、好適な担体及びリポーター分子並びにそれらを本発明のアプタマーにコンジュゲートさ
せる方法を十分認識している。
【0026】
本発明のアプタマーは、抗体の促進効果又は遮断効果を阻害する。本発明において、用
語「抗体」は、例えば、自己抗体、特に、例えば、アドレナリン作動性α-1受容体、ア
ドレナリン作動性β-1受容体、アドレナリン作動性β-2受容体、エンドセリン1 E
TA受容体、ムスカリン性M2受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、及び/又
はPAR受容体のようなGタンパク質共役受容体に特異的な自己抗体の存在に関連する自
己免疫疾患に罹患している患者の自己抗体を含む天然抗体、及び修飾された又は遺伝子操
作された抗体を意味する。自己抗体は、個体の免疫系によって製造された、その個体自身
の1以上のタンパク質に向けられた抗体である。しかしながら、抗体という用語は、従来
の重鎖及び軽鎖構造を有する抗体に限定されない。本明細書において用語「抗体」は、技
術分野で認知された用語であり、所与の抗原と結合する分子又は分子の活性フラグメント
を意味すると理解され、特に、この用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子
の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と特異的に結合する結合部位を含む分子を意味
する。免疫グロブリンは、免疫グロブリンκ及びλ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝
子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子によって実質的にコードされている1以
上のポリペプチドを含むタンパク質である。軽鎖はκ又はλのいずれかに分類される。重
鎖はγ、μ、α、δ、又はεに分類され、そしてこれが、それぞれ免疫グロブリンクラス
IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを定義する。また、重鎖のサブクラスも知ら
れている。例えば、ヒトのIgG重鎖は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4サ
ブクラスのいずれかであり得る。抗体は好ましくは、IgM及び/又はIgGクラス又は
これらのいずれかのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)であり得る
【0027】
「抗体」は、本発明の範囲内で、自己抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体
、キメラ抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、サル化、ヒト及びヒト化抗体、並びにこれ
らの活性フラグメントを含むものとする。既知の抗原と結合する分子の活性フラグメント
の例としては、分離された軽鎖及び重鎖、Fab、Fab/c、Fv、Fab’、及びF
(ab’)2フラグメントが挙げられ、Fab免疫グロブリン発現ライブラリーの産物、
並びに上述の抗体及びフラグメントのいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれる
【0028】
本発明のアプタマーは、自己免疫疾患の治療及び/又は診断において使用される。本発
明において用いる場合、用語「自己免疫疾患」は、自己免疫疾患、特に、ヒトにおける自
己免疫疾患を意味し、前記自己免疫疾患は、Gタンパク質共役受容体に特異的な自己抗体
の存在に関連する。前記自己抗体は好ましくは自己免疫疾患の病因に関与する可能性があ
り、従って、前記自己免疫疾患に罹患している患者の血清中に存在する可能性がある。よ
り好ましくは、自己免疫疾患は、患者の血清における、アドレナリン作動性α-1受容体
、アドレナリン作動性β-1受容体、アドレナリン作動性β-2受容体、エンドセリン1
ETA受容体、ムスカリン性M2受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、及び
/又はPAR受容体に特異的な自己抗体の存在に関連する自己免疫疾患である。いっそう
より好ましくは、自己免疫疾患は、心筋症、拡張型心筋症(DCM)、周産期心筋症(P
PCM)、特発性心筋症、シャーガス心筋症、シャーガス巨大結腸、シャーガス巨大食道
、シャーガス神経障害、良性前立腺肥大、硬皮症、乾癬、レイノー症候群、子癇前症、腎
臓同種移植片拒絶、心筋炎、緑内障、高血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、及び/又は
アルツハイマー病である。最も好ましくは、用語「自己免疫疾患」は、自己免疫疾患であ
る拡張型心筋症(DCM)、周産期心筋症(PPCM)、シャーガス心筋症、シャーガス
巨大結腸、緑内障、高血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、腎臓同種移植片拒絶、レイノ
ー症候群及び/又はアルツハイマー病を意味する。
【0029】
本発明のアプタマーの製造又は大量生産は当技術分野で周知であり、単に慣例の作業に
過ぎない。
【0030】
本発明はまた、本発明の少なくとも1種のアプタマーと所望により少なくとも1種の薬
学上許容される賦形剤とを含む医薬組成物も対象とする。本発明はまた、本発明のアプタ
マー又は本発明の異なるアプタマーの混合物と例えば好適な担体又は希釈剤のような薬学
上許容される賦形剤とを含む医薬組成物も対象とする。
【0031】
好ましくは、本発明のアプタマーは、医薬組成物の有効成分を構成し、且つ/又は有効
量で存在する。
【0032】
用語「有効量」は、疾患又は病態に予防上、診断上又は治療上適切な効果を有する本発
明のアプタマーの量を表す。予防効果は疾患の発症を予防する。治療上適切な効果は、疾
患の1以上の症状をある程度軽減するか、又は疾患若しくは病態と関連のある、若しくは
原因となる1以上の生理学的又は生化学的パラメーターを部分的に若しくは完全に正常に
戻す。本発明のアプタマーを投与するための個々の量は、所望の予防、診断又は治療効果
を達成するために十分に高いものである。当業者ならば、任意の特定の哺乳動物に対する
具体的な用量レベル、投与の頻度及び期間は、使用する具体的成分の活性、齢、体重、健
康状態、性、食餌、投与時間、投与経路、薬物の組合せ、及び具体的療法の重篤度(the s
everity of the specific therapy)を含む様々な要因によって決まることが理解されるで
あろう。当業者ならば、周知の手段及び方法を用い、慣例の実験の一事項として正確な量
を決定することができる。
【0033】
本発明の医薬組成物では、総アプタマー含量の少なくとも20%、好ましくは少なくと
も50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%が本発明
のアプタマーから構成される。
【0034】
療法に使用する場合、医薬組成物は一般に1種以上の薬学上許容される賦形剤を伴う製
剤として投与される。用語「賦形剤」は、本明細書では、本発明のアプタマー以外の任意
の成分を表して用いられる。賦形剤の選択は、特定の投与様式に依存するところが大きい
。賦形剤は好適な担体及び/又は希釈剤であり得る。
【0035】
本発明の医薬組成物は、経口投与することができる。経口投与は嚥下を含んでよく、そ
の場合には前記組成物は消化管に入り、或いは頬側又は舌下投与を用いてもよく、これに
よれば前記組成物は口腔から直接血流に入る。
【0036】
経口投与に好適な製剤としては、錠剤;コーティング錠;粒子、液体又は粉末を含有す
るカプセル剤;トローチ剤(液体充填型を含む);及び咀嚼剤などの固体製剤;多粒子及
びナノ粒子;ゲル;固溶体;リポソーム;フィルム、膣坐剤、噴霧剤及び液体製剤が含ま
れる。
【0037】
液体製剤としては、懸濁液、溶液、シロップ剤及びエリキシル剤が含まれる。このよう
な製剤は軟カプセル又は硬カプセル中の充填剤として用いてもよく、一般に担体、例えば
、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース
、又は好適なオイル、及び1種以上の乳化剤及び/又は沈殿防止剤を含む。液体製剤はま
た、例えばサシェ剤からの固体の再構成によって調製することもできる。
【0038】
錠剤投与形の場合、用量に応じ、本発明のアプタマーは投与形の0.1質量%~80質
量%、より一般には投与形の5質量%~60質量%を構成し得る。本発明のアプタマーに
加え、錠剤は一般に崩壊剤を含有する。崩壊剤の例としては、グリコール酸ナトリウムデ
ンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウ
ム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセ
ルロース、微晶質セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプ
ン、アルファ化デンプン及びアルギン酸ナトリウムが挙げられる。一般に、崩壊剤は投与
形の1質量%~25質量%、好ましくは5質量%~20質量%含む。
【0039】
錠剤は、例えば、結合剤、界面活性剤、滑沢剤、及び/又は例えば、抗酸化剤、着色剤
、香味剤、保存剤及び/又は矯味剤のような他の可能性のある成分といった付加的賦形剤
を含んでもよい。
【0040】
錠剤ブレンドは直接打錠してもよく、又はローラーにより錠剤を形成してもよい。或い
は、錠剤ブレンド又はブレンドの一部を、打錠前に湿式造粒、乾式造粒、溶融造粒、溶融
凝固、又は押出成形してもよい。最終的な製剤は1以上の層を含んでよく、コーティング
してもコーティングしなくてもよく、それを更にカプセル封入してもよい。
【0041】
経口投与用固体製剤は、即時放出及び/又は調節放出されるように調剤することができ
る。調節放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出及び
プログラム放出が含まれる。
【0042】
本発明の医薬組成物はまた、血流中、筋肉中、又は内部器官中に直接投与してもよい。
非経口投与のための好適な手段としては、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、心室
内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内及び皮下が含まれる。非経口投与のために好適なデ
バイスとしては、有針(マイクロニードルを含む)注射器、無針注射器及び注入技術が含
まれる。
【0043】
非経口製剤は一般に、塩、炭水化物及び緩衝剤(好ましくは、3~9のpHに緩衝)な
どの賦形剤を含有し得る水溶液であるが、適用によっては、それらは無菌非水溶液として
、又は無菌発熱物質不含水などの好適なビヒクルとともに使用される乾燥形態として調剤
することがより好適である場合がある。
【0044】
例えば凍結乾燥によるなど、無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準
的製薬技術を用いて容易に達成することができる。
【0045】
非経口溶液の調製に使用する本発明の医薬組成物の溶解度は、溶解促進剤の配合などの
適当な調剤技術の使用によって増大させることができる。
【0046】
非経口投与用の製剤は、即時放出及び/又は調節放出されるように調剤することができ
る。調節放出製剤としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出及び
プログラム放出が含まれる。従って、本発明の化合物は、有効化合物の調節放出を提供す
るインプラント型デポーとして投与するための固体、半固体、又はチクソトロピー液体と
して調剤してもよい。このような製剤の例としては、薬物コーティングステント及びPG
LAポリ(dl-乳酸-コグリコール)酸(PGLA)マイクロスフェアが含まれる。
【0047】
本発明の医薬組成物はまた、皮膚又は粘膜に局所的に、すなわち、皮膚に又は経皮的に
投与してもよい。この目的に典型的な製剤としては、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶
液、クリーム、軟膏、撒布粉剤、包帯、フォーム、フィルム、皮膚パッチ、ウエハース、
インプラント、スポンジ、繊維、帯具及びマイクロエマルションが含まれる。リポソーム
もまた使用可能である。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、
白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールが含まれ
る。浸透促進剤を配合してもよい。局所投与の他の手段としては、エレクトロポレーショ
ンによる送達、イオン導入法(iontophoresis)、音波導入法(phonophoresis)、超音波導入
法(sonophoresis)及びマイクロニードル又は無針(例えば、Powderject(商標
)、Bioject(商標)など)注射が含まれる。局所投与用製剤は、即時放出及び/
又は調節放出されるように調剤することができる。調節放出製剤としては、遅延放出、持
続放出、パルス放出、制御放出、標的放出及びプログラム放出が含まれる。
【0048】
ヒト患者への投与に関して、本発明のアプタマー及び/又は本発明の医薬組成物の総一
日用量は、もちろん投与様式に応じて、一般に0.001mg~5000mgの範囲であ
る。例えば、静脈内一日用量は0.001mg~40mgを必要とするだけである。総一
日用量は単回用量で投与しても分割用量で投与してもよく、医師の判断で本明細書に示さ
れる典型的範囲から外れてもよい。
【0049】
これらの用量は約65kg~70kgの体重を有する平均的なヒト被験者に基づくもの
である。医師は、小児及び高齢者など、体重がこの範囲外にある被験者に対する用量を容
易に決定することができる。
【0050】
本発明はまた、本発明のアプタマー、医薬組成物、容器及び所望により使用説明書及び
/又は投与手段を含むキットを包含する。
【0051】
本発明のアプタマー、医薬組成物及び/又はキットは、自己免疫疾患、特に、ヒトにお
ける自己免疫疾患の治療及び/又は診断において使用される。好ましくは、自己免疫疾患
は、Gタンパク質共役受容体に特異的な自己抗体の存在に関連する自己免疫疾患であり、
この場合、自己抗体は前記自己免疫疾患に罹患している患者の血清中に存在する。より好
ましくは、自己免疫疾患は、患者の血清におけるアドレナリン作動性α-1受容体、アド
レナリン作動性β-1受容体、アドレナリン作動性β-2受容体、エンドセリン1 ET
A受容体、ムスカリン性M2受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、及び/又は
PAR受容体に特異的な自己抗体の存在に関連する自己免疫疾患である。いっそうより好
ましくは、自己免疫疾患は、心筋症、拡張型心筋症(DCM)、周産期心筋症(PPCM
)、特発性心筋症、シャーガス心筋症、シャーガス巨大結腸、シャーガス巨大食道、シャ
ーガス神経障害、良性前立腺肥大、硬皮症、乾癬、レイノー症候群、子癇前症、腎臓同種
移植片拒絶、心筋炎、緑内障、高血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、及び/又はアルツ
ハイマー病である。最も好ましくは、用語「自己免疫疾患」は、自己免疫疾患である拡張
型心筋症(DCM)、周産期心筋症(PPCM)、シャーガス心筋症、シャーガス巨大結
腸、緑内障、高血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、腎臓同種移植片拒絶、レイノー症候
群及び/又はアルツハイマー病を意味する。
【0052】
本明細書において、用語「療法」、「治療」及び「治療上」は、治療する行為を意味し
、「治療する」は以下に定義される。本明細書において、用語「治療する」は、この用語
を適用する疾患、障害若しくは病態の進行を逆転させること、緩和すること、若しくは阻
害すること、又はそのような疾患、障害若しくは病態の1以上の症状の進行を逆転させる
こと、緩和すること、若しくは阻害することを意味する。本明細書において、「治療する
」とはまた、哺乳動物における疾患、障害又は病態の発生の確率又は罹患率を、未治療の
対象集団と比較して、又は治療前の同じ哺乳動物と比較して低減することも意味し得る。
例えば、本明細書において、「治療する」とは、疾患、障害又は病態を予防することを意
味する場合もあり、疾患、障害若しくは病態の発症を遅延させる、若しくは予防すること
、又は疾病、障害若しくは病態に関連する症状を遅延させる、若しくは予防することも含
み得る。本明細書において、「治療する」とはまた、疾患、障害若しくは病態、又はその
ような疾患、障害若しくは病態に関連する症状の重篤度を、哺乳動物がその疾患、障害又
は病態に罹患する前に軽減することも意味し得る。このような、罹患前の疾患、障害若し
くは病態の予防、又はその重篤度の軽減は、投与時にその疾患、障害又は病態に罹患して
いない被験体に、本明細書に記載されるように、本発明の組成物を投与することに関する
。本明細書において、「治療する」とはまた、疾患、障害若しくは病態、又はそのような
疾患、障害若しくは病態に関連する1以上の症状の再発を予防することも意味し得る。
【0053】
疾患の治療及び/又は診断に関して、投与経路に関係なく、本発明のアプタマーは、1
回治療サイクルにつき20mg/kg体重以下、好ましくは10mg/kg体重以下、よ
り好ましくは1μg/kg~20mg/kg体重の範囲から選択される、最も好ましくは
0.01~10mg/kg体重の範囲から選択される一日用量で投与される。
【0054】
本発明はまた、自己免疫疾患の治療及び/又は診断のための薬剤の製造における、本発
明のアプタマー又は本発明の医薬組成物の使用を対象とする。好ましくは、自己免疫疾患
は、心筋症、拡張型心筋症(DCM)、周産期心筋症(PPCM)、特発性心筋症、シャ
ーガス心筋症、シャーガス巨大結腸、シャーガス巨大食道、シャーガス神経障害、良性前
立腺肥大、硬皮症、乾癬、レイノー症候群、子癇前症、腎臓同種移植片拒絶、心筋炎、緑
内障、高血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、及び/又はアルツハイマー病である。いっ
そうより好ましくは、用語「自己免疫疾患」は、自己免疫疾患である拡張型心筋症(DC
M)、周産期心筋症(PPCM)、シャーガス心筋症、シャーガス巨大結腸、緑内障、高
血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、腎臓同種移植片拒絶、レイノー症候群及び/又はア
ルツハイマー病を意味する。
【0055】
別の態様において、本発明は、自己免疫疾患の治療又は診断方法を対象とし、そのよう
な治療を必要とする個体に有効量の本発明のアプタマー又は本発明の医薬組成物が投与さ
れる。好ましくは、自己免疫疾患は、心筋症、拡張型心筋症(DCM)、周産期心筋症(
PPCM)、特発性心筋症、シャーガス心筋症、シャーガス巨大結腸、シャーガス巨大食
道、シャーガス神経障害、良性前立腺肥大、硬皮症、乾癬、レイノー症候群、子癇前症、
腎臓同種移植片拒絶、心筋炎、緑内障、高血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、及び/又
はアルツハイマー病である。いっそうより好ましくは、用語「自己免疫疾患」は、自己免
疫疾患である拡張型心筋症(DCM)、周産期心筋症(PPCM)、シャーガス心筋症、
シャーガス巨大結腸、緑内障、高血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、腎臓同種移植片拒
絶、レイノー症候群及び/又はアルツハイマー病を意味する。
【0056】
本発明のアプタマーは、自己免疫疾患の治療又は診断に使用される場合、必ずしも個体
又は患者に投与される必要はない。治療効果又は診断効果はまた、身体又は体液からの、
例えば自己抗体のような抗体の除去に本発明のアプタマーを使用することによって達成す
ることもできる。このような除去は、本発明のアプタマーがex vivoにおいて、例
えば、免疫吸着及び/又はアフェレシス中にのみ体液と接触され、従って、本発明のアプ
タマーが治療を受ける個体又は患者の身体に入らない状態での本発明のアプタマーの適用
を含み得る。よって、本発明はまた、本発明のアプタマーを含むアフェレシスカラムも対
象とする。
【0057】
アフェレシスは、ドナー又は患者の血液を、ある特定の構成要素を分離し、残りのもの
をそのドナー又は患者の循環に再び戻すような装置に通すという医療技術である。本発明
のアプタマーは、アフェレシスの際の選択性成分として使用することができる。この選択
性成分は、サンプル又は血液中に存在する、本発明のアプタマーによって特異的に標的と
される所望の特定構成要素、すなわち、抗体又は自己抗体を特異的に分離することを担う
。好ましくは、本発明のアプタマーは、自己免疫疾患に罹患している患者に由来する血液
又はその一部の治療的アフェレシスにおいて選択性成分として使用される。より好ましく
は、自己免疫疾患は、心筋症、拡張型心筋症(DCM)、周産期心筋症(PPCM)、特
発性心筋症、シャーガス心筋症、シャーガス巨大結腸、シャーガス巨大食道、シャーガス
神経障害、良性前立腺肥大、硬皮症、乾癬、レイノー症候群、子癇前症、腎臓同種移植片
拒絶、心筋炎、緑内障、高血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、及び/又はアルツハイマ
ー病である。いっそうより好ましくは、用語「自己免疫疾患」は、自己免疫疾患である拡
張型心筋症(DCM)、周産期心筋症(PPCM)、シャーガス心筋症、シャーガス巨大
結腸、緑内障、高血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、腎臓同種移植片拒絶、レイノー症
候群及び/又はアルツハイマー病を意味する。
【0058】
本発明はまた、本発明のアプタマーと固相支持体との結合体に関する。当業者は、この
ようなアプタマーと固相支持体との結合体を製造するために使用可能な技術及び材料を十
分認識している。好ましい実施形態では、固相支持体は、医学的、生化学的又は生物学的
アッセイにおいて適用可能な固相材料、例えば、アフェレシス又はELISAアッセイに
おいて使用される材料を含む。前記固相材料は、医学的、生化学的又は生物学的アッセイ
において支持体として通常使用されるポリマーを含む。特に、本発明のアプタマーは、得
られる生成物が、アフェレシスに好適なカラム、好ましくは、液体サンプル、好ましくは
体液から、本発明のアプタマーが特異的に結合し得る抗体を除去するためのアフェレシス
での使用に好適なカラムの製造に使用可能となるような固相支持体に結合させることがで
きる。
【0059】
さらなる態様において、本発明は、Gタンパク質共役受容体、好ましくは、Gタンパク
質共役受容体であるアドレナリン作動性α-1受容体、アドレナリン作動性β-1受容体
、アドレナリン作動性β-2受容体、エンドセリン1 ETA受容体、ムスカリン性M2
受容体、アンギオテンシンII AT1受容体、及び/又はPAR受容体に特異的である
、例えば自己抗体のような抗体の生体外検出及び/又は同定のための本発明のアプタマー
の使用を対象とする。
【0060】
このような使用は、有効量の本発明のアプタマーの存在下及び不在下でのラット心筋細
胞拍動数アッセイにおけるサンプルの試験を含み得る。サンプルと本発明のアプタマーが
拍動数に及ぼす影響によって、当業者は個々の抗体の存在を結論付けることができる。ま
た、サンプル中のこのような抗体の総量又は相対量に関するデータとともに、このような
抗体の他の特性に関するデータも得ることができる。
【0061】
いわゆるラット心筋細胞拍動数アッセイは、患者に由来する、例えば、ヒトアドレナリ
ン作動性α-1受容体、アドレナリン作動性β-1受容体、アドレナリン作動性β-2受
容体、エンドセリン1 ETA受容体、ムスカリン性M2受容体、アンギオテンシンII
AT1受容体、及び/又はPAR受容体のような、いくつかのヒトGタンパク質共役受
容体に特異的な抗体、例えば、自己抗体の検出及び同定のための、十分に確立されたアッ
セイである。このアッセイは、Wallukat et al. (1987) Effects of the serum gamma gl
obulin fraction of patients with allergic asthma and dilated cardiomyopathy on c
hromotropic beta adrenoceptor function in cultured neonatal rat heart myocytes,
Biomed. Biochim. Acta 46, 634-639; Wallukat et al. (1988) Cultivated cardiac mus
cle cells - a functional test system for the detection of autoantibodies against
the beta adrenergic receptor, Acta Histochem. Suppl. 35, 145-149;及びWallukat e
t al. (2010) Distinct patterns of autoantibodies against G-protein coupled recep
tors in Chagas' cardiomyopathy and megacolon. Their potential impact for early r
isk assessment in asymptomatic Chagas' patients, J. Am. Coll. Cardiol. 55, 463-4
68に詳細に記載されている。よって、当業者はこのアッセイの性質を十分認識し、その適
用方法を知っている。
【0062】
本発明のアプタマーは、特に個々の抗体の検出及び/又は同定に使用することができ、
前記抗体は、体液、好ましくは、ヒト身体の液体、より好ましくは、ヒト血液、血漿、血
清、尿、糞便、滑液、間質液、リンパ液、唾液、汗、髄液及び/又は涙液中に存在するか
、又はそれらに由来する。好ましい実施形態では、体液は、自己免疫疾患に罹患している
、又は罹患している疑いのある個体から採取される。好ましくは、自己免疫疾患は、心筋
症、拡張型心筋症(DCM)、周産期心筋症(PPCM)、特発性心筋症、シャーガス心
筋症、シャーガス巨大結腸、シャーガス巨大食道、シャーガス神経障害、良性前立腺肥大
、硬皮症、乾癬、レイノー症候群、子癇前症、腎臓同種移植片拒絶、心筋炎、緑内障、高
血圧症、肺高血圧症、悪性高血圧症、及び/又はアルツハイマー病である。いっそうより
好ましくは、用語「自己免疫疾患」は、自己免疫疾患である拡張型心筋症(DCM)、周
産期心筋症(PPCM)、シャーガス心筋症、シャーガス巨大結腸、緑内障、高血圧症、
肺高血圧症、悪性高血圧症、腎臓同種移植片拒絶、レイノー症候群及び/又はアルツハイ
マー病を意味する。
【0063】
このような抗体の検出及び/又は同定に関して、本発明のアプタマーは溶液中で又は固
定化形態で使用可能である。
【0064】
本発明のアプタマーは、前記抗体の直接的又は間接的検出及び/又は同定に使用可能で
ある。
【0065】
以下、例を挙げて本発明を更に説明し、例示する。
【実施例
【0066】
概要
それぞれ配列番号1及び2を有する核酸配列からなるアプタマーは、Gタンパク質共役
受容体を標的とする自己抗体に対して親和性があり、且つ、特異的な結合剤である。前記
アプタマーは、AAB(自己抗体)機能を可溶状態で中和することができる。表面に固定
化されたアプタマーはAABを捕捉することができる。その後溶出を行えば、捕捉された
AABを除去することができる。
【0067】
従って、本発明のアプタマーは、Gタンパク質共役受容体に対して機能的に活性なAA
Bに関連する疾患の治療のために、治療目的及び診断目的で適当な分子であることが示さ
れた。
【0068】
材料及び方法
心筋細胞の調製及び培養
1~3日齢のラットの心臓を無菌条件下で摘出し、ペニシリン/ストレプトマイシンを
含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に移した。心室組織を分離し、細片に切断し、
ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する10mlのPBSで2回洗浄し、最後にPB
Sのみで1回洗浄した。これらの心室細片を、0.2%トリプシンを含有する30mlの
PBSに懸濁させた。37℃で20分間インキュベートした後、このトリプシン処理を1
0mlの氷冷した熱不活化仔ウシ血清で停止させた。得られた懸濁液を130xgで6分
間遠心分離し、ペレットを20mlのSM20-I培地に移した。細胞数の評価のため、
100μlのこの懸濁液を100μlのトリパンブルー溶液に加えた。細胞培養のため、
2.4×106細胞を、加湿空気で平衡化し10%熱不活化仔ウシ血清、0.1mUイン
スリン、及び2μMフルオロデオキシウリジン(非筋細胞による筋細胞の肥大を防ぐ)を
添加したグルコース含有SM20-I培地2.5mlに懸濁させ、12.5cm2のファ
ルコンフラスコに移し、単層として37℃で4日間培養した。培地を2日後に更新した。
【0069】
バイオアッセイの原理
AABの同定及び定量のため、最初にWallukat and Wollenberger (Wallukat G, Wolle
nberger A. Effects of the serum gamma globulin fraction of patients with allergi
c asthma and dilated cardiomyopathy on chromotropic beta adrenoceptor function i
n cultured neonatal rat heart myocytes. Biomed Biochim Acta 1987;46:S634-9)によ
ってGタンパク質共役受容体に対するAABの測定のために確立され、最近、本発明者ら
が慢性シャーガス病においてアドレナリン作動性β1及びβ2受容体並びにムスカリン作
動性M2受容体に対するAABの測定に関して詳細に記載した(Wallukat G, Munoz Sarav
ia SG, Haberland A, Bartel S, Araujo R, Valda G, Duchen D, Diaz Ramirez I, Borge
s AC, Schimke I. Distinct patterns of autoantibodies against G-protein-coupled r
eceptors in Chagas' cardiomyopathy and megacolon. Their potential impact for ear
ly risk assessment in asymptomatic Chagas' patients. J Am Coll Cardiol. 2010;55:
463-8)バイオアッセイを用いた。
【0070】
このバイオアッセイにおいて、自発的に拍動する培養新生ラット心筋細胞の変時応答を
記録した。なお、前記変時応答は、アドレナリン作動性β1及びβ2受容体又はアドレナ
リン作動性α1受容体を標的とするものなどのAABを刺激することによって生じる正の
変時性と、ムスカリン作動性M2受容体又はエンドセリン受容体A型(ETA受容体)を
標的とするものなどのAABを阻害することによって生じる負の変時性の和である(1単
位のAAB活性=1拍/分の拍動数変化)。
【0071】
AAB種を変時応答(正又は負の変時性)への寄与に関して区別するために、β2受容
体AABに対するICI-118.551、M2-AABに対するアトロピン、β1/β
2受容体AABに対するプロプラノロール、ETA受容体に対するBQ610又はBQ1
23、α1アドレナリン受容体に対するプラゾシン、及びAT1受容体に対するイベサル
タン(Ibesartan)又はロサルタンなどの特異的拮抗剤の存在下で分析を行った。特異的に
遮断された一度を除く残りの活性変化はAABにより生じたものである。
【0072】
上記に示した種々の受容体AABのさらなる同定は、前記受容体の細胞外ループに相当
するAABエピトープ提示ペプチドを使用することで行った。
【0073】
前記バイオアッセイは、全てのヒト血清AAB、及びその配列がヒト受容体と相同であ
り(AAB標的化の場合)、且つGタンパク質系などの細胞の拍動数(収縮性、変時性)
を調節する機構に関連する細胞表面の受容体を標的とする他の分子を検出及び定量するこ
とができる。
【0074】
AABの同定及び区別並びにAAB活性の測定のための血清サンプルの調製
1mlの対照及び患者血清と660μlの飽和硫酸アンモニウム溶液を混合し(終濃度
40%硫酸アンモニウム)、4℃で18時間インキュベートした。6,000xgで15
分間遠心分離した後、ペレットを750μlのPBSに再懸濁させ、750μlの飽和硫
酸アンモニウム溶液と混合し(終濃度50%硫酸アンモニウム)、再び遠心分離した。こ
の後、ペレットを700μlのPBSに懸濁させ、100倍容量のPBSに対して透析し
た。得られたIgG画分は測定まで-20℃で保存することができる。
【0075】
結果
特異的アプタマーによる、Gタンパク質共役受容体に対する種々のAABのAAB機能の
阻害
以下では、抗体(患者血清由来の自己抗体)の活性の、アプタマー配列番号1(トロン
ビンアプタマー配列番号1又はARC183としても知られる、米国特許第5,543,
293号明細書に記載)による、及びアプタマー配列番号2(トロンビンアプタマー配列
番号2、又はARC2172若しくはNU172としても知られる、国際出願公開第20
07/025049号に記載)による中和を検討した(表1)。
【0076】
この実施において以下の抗体(自己抗体=AAB):アドレナリン作動性α1受容体A
AB、アドレナリン作動性β1受容体AAB、β2受容体AAB、ムスカリン性M2受容
体AAB、エンドセリン1 ETA受容体AAB(ETA-AAB)、アンギオテンシン
II AT1受容体AAB、及びPAR受容体AABを検討した。
【0077】
このようなAABの存在は以下の病的状態:DCM、シャーガス心筋症、慢性シャーガ
ス病、シャーガス巨大結腸、周産期心筋症、緑内障(Glaucom)、肺高血圧症、高血圧症、
悪性高血圧症(maligne hypertension)、糖尿病(diabetis mellitus)、アルツハイマー病
、腎臓同種移植片拒絶、レイノー症候群において記載されているが、同一又は類似のAA
Bの媒体となり得る他の病的状態を排除するものではない。表1は、Gタンパク質共役受
容体に向けられた全ての供試自己抗体の機能活性が、配列番号1を有するアプタマーを用
いた場合に中和され、又は配列番号2を有するアプタマーを用いた場合には部分的に中和
されたことを示す。
【0078】
【表1-1】
【表1-2】
【0079】
トロンビンアプタマーにより媒介されるAAB中和の用量反応曲線
以下では、単一トロンビンアプタマー-インキュベーションの用量反応曲線を評価した
図1)。これを実施したところ、Gタンパク質共役受容体に対するヒトAABが中和さ
れただけでなく、SHRラットの血液に由来するβ1受容体AABも中和された。実際に
、β1受容体の第1又は第2ループに対するヒトAAB、AT1受容体及びアドレナリン
作動性α1受容体に対するAABが中和された。ラットのβ1受容体AABは、自発的に
形成されたAABである。
【0080】
これらの用量反応曲線は若干の違いを示すことが明らかになった。この中和効果はヒト
α1受容体AABで最も有効であり、ラットβ1受容体AABでは最小の効果を示した。
AAB濃度がIgG画分の0.1%前後であると考えると(Dr.Wallukatの私
的情報)、種々のアプタマー濃度は終濃度約1.4nM AAB(通常のIgG濃度約1
0g/l=68.5μM、細胞培養培地中AABの希釈は1:50)となる。これにより
、一般にAAB機能の完全な阻害には100nMのアプタマーが必要であるが、α1受容
体AABなどのいくつかのAABでは、約1nMのアプタマー濃度で中和効果が始まると
いうことが極めて論理的となる。
【0081】
競合するヒトIgG-3の存在下でのアプタマー-AAB親和性
ヒトIgGサブタイプに対するトロンビンアプタマー配列番号1の親和性を試験する前
者の実験は、トロンビンアプタマー配列番号1がIgG-3、次いでIgG-4、IgG
-2、及びIgG1に対して高い親和性を有することを示した。最後の3つのサブタイプ
間の違いはわずかなものに過ぎず、サブタイプIgG-3に対する親和性が著しかった(
データは示されていない)。
【0082】
ここで、AABに対するトロンビンアプタマー配列番号1の親和性が、IgG-3サブ
クラスに対するその一般的親和性に比べて高いかどうかを調べるために、以下の競合実験
を行った:ヒト患者血清AAB(β1受容体AAB、第2ループ、1:50希釈)に対す
るトロンビンアプタマー配列番号1の用量反応曲線を求めるとともに、1つの実験セット
において、トロンビンアプタマーの結合に関してβ1受容体AABと競合可能な73nM
のヒトIgG-3を加えた(図2)。特に低濃度のトロンビンアプタマー配列番号1(1
、5、及び10nMトロンビンアプタマー)では(このIgG-3濃度は、トロンビンア
プタマーに対して明らかにモル過剰である)、IgG-3が存在する場合でも存在しない
場合でも、AAB中和効果間に違いは見られなかった。
【0083】
モデル自己抗体:受容体の第2の細胞外ループに対するウサギ抗ヒトエンドセリン受容体
抗体(acris antibodies社、SP41222P)を用いたトロンビンア
プタマーと自己抗体の間の結合の証明
1.バイオアッセイにおけるETA-AB機能試験及びトロンビンアプタマー配列番号1
による中和
ヒトエンドセリン受容体の第2の細胞外ループに対してウサギエンドセリン受容体抗体
(ETA-AB)を作製した。この抗体はバイオアッセイにおいて機能活性を示した。こ
のETA-ABは、自発的に拍動する新生(neonatale)ラット心筋細胞の拍動数の減少を
引き起こした(図3)。100nMのトロンビンアプタマーを添加すると、このETA-
ABの完全な中和が起こり、拍動数に変化が生じた(図3)。トロンビンアプタマー(配
列番号1)を単独で新生(neonatale)ラット心筋細胞に添加しても、細胞に対して視覚的
影響は無く、基本拍動数にも影響を及ぼさなかった(データは示されていない)。
【0084】
2.トロンビンアプタマー配列番号1とETA-ABの間の直接的結合の試験
2つの異なる試験設定のELISA試験において、トロンビンアプタマーとETA-A
Bの間の直接的結合を試験した。第1に、ETA-ABをELISAプレートに固定化し
、そのトロンビンアプタマー配列番号1との結合能を試験した(図4)。第2の試験セッ
トでは、トロンビンアプタマー配列番号1を固定化し、ETA-ABを結合に用いた(図
5)。
【0085】
第1の試験セットでは、ELISAプレートへの固定化のために2種類の異なるタンパ
ク質濃度を選択した:25nM(図4A)及び250nM(図4B)。対照として、同じ
濃度のウサギIgG、ヒトIgGサブクラス(IgG-1、2、3及び4)と、非コーテ
ィングプラスチックプレートを用いた。さらなる対照をスクランブルトロンビンアプタマ
ー配列とし、これを結合に用いた(図4C、D)。
【0086】
第2の試験セットでは、ETA-ABとトロンビンアプタマー配列番号1の間の結合を
逆にして試験した。この場合には、ニュートラアビジンを予め固定化することにより、E
LISAプレートにビオチン化トロンビンアプタマーを固定化した。その後、ETA-A
Bを結合に用いた(図5A、B)。
【0087】
図5Bと5Aの吸光度を比較すると、この与えられた試験では、0.1μMのトロンビ
ンアプタマー(配列番号1)のコーティングで既に飽和に達していたことが示される。
【0088】
さらなる対照を、固定化スクランブルトロンビンアプタマーに対するETA-ABの結
合とした(図6)。
【0089】
前記スクランブルトロンビンアプタマーに対するETA-ABの親和性は、トロンビン
アプタマー(配列番号1)を結合に用いた場合に達成された親和性の約50%であった。
【0090】
血清からAABを除去するためのトロンビンアプタマーカラム(Thombinaptamar-column)
1.ウサギETA-ABを添加したヒト血清
以下では、トロンビンアプタマーカラムを作製し、血清からAABを除去するために用
いた。対照として、スクランブルトロンビンアプタマーを保持するカラムを用いた。
【0091】
アプタマー(トロンビンアプタマー配列番号1)及びスクランブル対照配列を、0.1
μmolの濃度でカラム材料(NHS活性化セファロース、GE healthcare
)に結合させた。
【0092】
第1の試験セットでは、バイオアッセイ(図7)によってETA-AB活性を測定する
ためだけでなく、ELISA(図8)によっても測定するための機会を得るために、血清
にウサギETA-AB(50nM)を添加した。添加を行った血清を前記カラム及び対照
カラムに適用した。通過画分を採取し、保存した。結合したETA-ABを、3M KS
CN溶液を用いて溶出させた。溶出液中のAAB活性を測定する前に、サンプルを4℃で
3日間、生理学的バッファーに対して透析した。
【0093】
バイオアッセイでは、2つの画分中に採取された溶出液を測定した(図7)。トロンビ
ンアプタマーカラムは溶出後にETA-AB活性を示したが、対照カラムは示さなかった
。主要なETA-AB画分は第2の溶出液画分に存在し、これは使用する用量によった。
カラムの容量は500μlであったが、全ての取り扱い工程に250μlを選択した。
【0094】
カラムの通過画分又は溶出液中のETA-ABをELISAにおいて検出するために、
ELISAのETA-AB標準曲線にも、溶出液サンプル材料と同等の透析手順を施さな
ければならなかった(図8A)。この標準的材料を用い、サンプルにETA-ABが存在
するかどうかを調べた(図8B)。
【0095】
特異的トロンビンアプタマーカラムだけが、添加を行った対照血清からのETA-AB
と結合することができ、スクランブル対照アプタマーはETA-ABと結合しなかったこ
とが示される。ここでは、ETA-ABは通過画分に見られたが、特異的カラムでは、溶
出液画分がETA-ABを含んでいた。
【0096】
対照血清由来の結合したヒトIgGは二次抗体との交差反応を介してETA-ABの存
在を模倣する可能性があるということを排除するために、血清(40%及び100%)を
またELISAプレートに適用した。交差反応の最大潜在量を測定したところ、特異的抗
ウサギAB検出よりも小さかった。更に、独立した試験では、これらの溶出液は通過画分
サンプルの1/10より少ないヒトIgGを含んでいたことが示され(データは示されて
いない)、二次抗体の交差反応性の大きな影響は排除された。
【0097】
2.ヒトAAB含有血清
第2の一連の試験では、トロンビンアプタマーカラムを血清AABの除去に用いた。対
照として、スクランブルトロンビンアプタマーカラムを用いた。
【0098】
この目的で、250μlのETA-AAB及びα1受容体AAB含有血清をカラムに適
用した。通過画分及び溶出液を捕捉させ、バイオアッセイを用いてAAB活性を評価した
(表2)。溶出は3M KSCNで行った。サンプルを生理学的バッファーに対して3日
間透析した後、AAB活性の測定を行った。
【0099】
【表2】
【0100】
アプタマー-磁性ビーズにより血清をAABから精製するための、考えられるキット
トロンビンアプタマー-磁性ビーズにより血清をAABから精製するため、又はAAB
を濃縮するためのキット。
【0101】
【表3】
【0102】
エキソヌクレアーゼ保護の導入
以下では、アプタマー配列番号1の機能活性に及ぼす3’-dTキャップの導入の影響
を調べた。3’-dTキャップは、ヌクレオチド配列をエキソヌクレアーゼ活性から保護
し、生物学的流体中でのその安定性を高めると考えられる。アプタマー機能に及ぼす3’
-dTキャップの影響を調べるにあたって、DCM患者由来のβ1受容体AAB(2.ル
ープ)及びアルツハイマー患者由来のβ2受容体AABを使用した(表4)。両AABの
機能活性は、100nMの3’-dTキャップ修飾アプタマーとともにインキュベートし
た際に中和された。3’-キャップ修飾は、アプタマー配列番号1の機能活性に影響を及
ぼさなかった。
【0103】
キャップ保護されたアプタマーはそれだけでは、新生児心筋細胞の基本拍動数に影響を
及ぼさなかった。
【0104】
【表4】
【0105】
AABの検出のためのFITC標識トロンビンアプタマー
血清AABの検出のための直接蛍光マーカー標識トロンビンアプタマーの使用
これらの試験の目的は、Gタンパク質共役受容体に対する自己抗体を標的とする直接標
識アプタマーの生成であり、最終的にこのようなAABの検出に活用される。
【0106】
この目的で、トロンビンアプタマーの5’末端をFITCで標識した。
【0107】
第1の試験では、FITC標識トロンビンアプタマーが、その非標識型に比べて、自己
抗体を中和する完全な機能/活性を示すかどうかを調べた。これを、バイオアッセイを用
いて調べた。
【0108】
図9は、100nMの5’-FITC-トロンビンアプタマーの、β1受容体AABを
中和する能力を示す。FITC標識はトロンビンアプタマーの活性を低下させたが、この
100nMという選択濃度では、β1受容体AAB活性の50%がなお中和された。この
アプタマー濃度では、AAB活性の部分的阻害が見られた。
【0109】
FITC標識トロンビンアプタマーは、同濃度の非標識アプタマーと比べた場合に、A
AB活性の部分的阻害を示したことから、この標識トロンビンアプタマーをサンドイッチ
アッセイに使用することが可能な戦略であるかどうかを調べるために、この分子を採取し
た。このため、非標識ビオチン化トロンビンアプタマーを、ニュートラアビジンを介して
ELISAプレートに固定化してAABを捕捉するために用い、一方、FITC標識抗ト
ロンビンアプタマーの方は、吸着されたAAB材料の検出の目的で用いることを想定した
【0110】
サンプルを複数のウェルから取り出し、2つを1つにし(最終容量200μl)、30
0μlのPBSで希釈し、分光蛍光光度計RF-5001PC(島津、日本)を用い、励
起波長及び蛍光波長をそれぞれ494nm及び519nmとして、相対的蛍光を測定した
【0111】
図10から分かるように、対照IgGサンプルと比較して、患者サンプル(ETA-A
ABを含有するIgG画分)を検出することができた。スクランブルトロンビンアプタマ
ーをさらなる対照として用いた場合にも、蛍光を示さなかった。
【0112】
トロンビンアプタマーの機能に対するdTキャップの影響
次の試験において、Gタンパク質共役受容体に対する自己抗体を中和するトロンビンア
プタマー活性に影響を及ぼすことなくエキソヌクレアーゼ(exonulease)活性から保護する
ためにdTキャップなどの保護基を導入することが可能であるかどうかを調べた。dTキ
ャップの導入は、Gタンパク質共役受容体に対するAABを中和するトロンビンアプタマ
ー機能に影響を及ぼすことなく可能であった(図11).
【0113】
12マー配列を生じるトロンビンアプタマーの末端切断
次の試験セットにおいて、トロンビンアプタマーを末端切断してもGタンパク質共役受
容体に対する自己抗体をなお中和することができる産物を生じるかどうかを調べた。
【0114】
これにより、トロンビンアプタマー(ARC183)の原型15マー配列は末端切断を
受けて配列番号3を有する12マーの配列となり、これをThrom-K1と呼称した。
この末端切断型配列を、バイオアッセイでそのAAB中和能に関して試験した(β1受容
体AABに関して示した、図12)。
【0115】
この12マー配列は完全な活性を示した。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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