(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、判定方法、判定プログラム、および判定システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20220817BHJP
【FI】
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2019096798
(22)【出願日】2019-05-23
【審査請求日】2020-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000111292
【氏名又は名称】ネポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】大場 次一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大輝
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032248(JP,A)
【文献】特開2015-119646(JP,A)
【文献】特開2009-014211(JP,A)
【文献】特開平11-187776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウス内の異なる位置に設置された複数のセンサで計測される計測値に基づいて、前記ハウス内における所定の環境基準と前記計測値に基づく実環境との差分を推定する推定部と、
前記ハウス内の環境に改変が必要か否かを判定する判定部と、
を含
む制御部を備え、
前記推定部は、前記ハウス内の領域ごとに前記差分を推定し、
前記制御部は、前記差分が許容範囲外の領域の合計サイズが所定のサイズを超える状態を検出し、
前記判定部は、
前記制御部によって前記合計サイズが
前記所定のサイズを超える状態が検出された場合に、前記ハウス内の環境に改変が必要と判定する、情報処理装置。
【請求項2】
前記差分は、温度の差分、炭酸ガス濃度の差分、湿度の差分、および飽差の差分の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記複数のセンサで計測される計測値は温度であり、
前記差分は温度の差分である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記温度の差分の発生している領域のサイズに応じて、前記ハウスに対して実行する改変を提示する表示情報を出力する出力部を更に含む、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数のセンサで計測された温度に基づいて、夜間において前記ハウス内にある第1の区画が、前記第1の区画の鉛直上方向にある第2の区画よりも高温となる温度の差分を検出し
、
前記判定部は、前記制御部によって前記第1の区画が前記第2の区画よりも高温となる温度の差分が検出された場合に、前記ハウス内の環境に改変が必要と判定する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記温度の差分の発生している領域のサイズとの相関係数の大きさが所定値以上の環境要因を特定する特定部を更に含み、
前記推定部は、前記特定部が特定した環境要因に基づいて、前記温度の差分が発生する日時を推定する、ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
ハウス内の異なる位置に設置された複数のセンサで計測される計測値に基づいて、前記ハウス内における所定の環境基準と前記計測値に基づく実環境との差分を
前記ハウス内の領域ごとに推定し、
前記差分が許容範囲外の領域の合計サイズが所定のサイズを超える状態を検出し、
前記合計サイズが
前記所定のサイズを超える状態が検出された場合に、前記ハウス内の環境に改変が必要と判定する、
ことを含む、コンピュータが実行する判定方法。
【請求項8】
ハウス内の異なる位置に設置された複数のセンサで計測される計測値に基づいて、前記ハウス内における所定の環境基準と前記計測値に基づく実環境との差分を
前記ハウス内の領域ごとに推定し、
前記差分が許容範囲外の領域の合計サイズが所定のサイズを超える状態を検出し、
前記合計サイズが
前記所定のサイズを超える状態が検出された場合に、前記ハウス内の環境に改変が必要と判定する、
処理をコンピュータに実行させる判定プログラム。
【請求項9】
ハウス内の異なる位置に設置された複数のセンサと、
前記複数のセンサで計測される計測値に基づいて前記ハウス内における所定の環境基準と前記計測値に基づく実環境との差分を
前記ハウス内の領域ごとに推定し、
前記差分が許容範囲外の領域の合計サイズが所定のサイズを超える状態を検出し、前記合計サイズが
前記所定のサイズを超える状態が検出された場合に、前記ハウス内の環境に改変が必要と判定する、情報処理装置と、
を含む、判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、判定方法、判定プログラム、および判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の栽培では環境を農作物に適した状態に整えることが望ましい。そのため、農作物の栽培の効率化を図るために、例えば、風に関する情報、大気に関する情報、土壌に関する情報等を検出する湿温度センサ、生体電位センサ、EC(電気伝導度)センサ、照度センサ等のセンサを用いて、圃場の状態を観測することが行われている。また、圃場の状態を観測するセンシング技術について、様々な研究開発がすすめられている。
【0003】
これに関し、農業用ハウスを設置する予定地の適否を判定するための技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
農作物の置かれた環境が、農作物に適した状態から外れていると、生育に悪影響を与えることがある。そのため、例えば、ビニールハウスなどのハウス栽培では、ハウス内の環境が農作物に適した状態から外れている場合には、ハウス内の環境に改変を行い、より適した環境に改善することが望ましい。しかしながら、ハウス内の環境に改変が必要か否かを適切に判定することが難しいことがある。
【0006】
1つの側面では、本発明は、ハウス内の環境に改変が必要になるか否かを適切に判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様の情報処理装置は、ハウス内の異なる位置に設置された複数のセンサで計測される計測値に基づいて、ハウス内の環境のムラを推定する推定部と、ハウス内の環境のムラに基づいて、ハウス内の環境に改変が必要か否かを判定する判定部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
ハウス内の環境に改変が必要になるか否かを適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る判定システムを例示する図である。
【
図2】実施形態に係る情報処理装置のブロック構成を例示する図である。
【
図3】実施形態に係るハウス内でのセンサの水平方向での配置を例示する図である。
【
図4】実施形態に係るハウス内でのセンサの鉛直方向の配置を例示する図である。
【
図5】実施形態に係るハウスの水平方向に定めた区画を例示する図である。
【
図6】2つのセンサの間の任意の位置での温度の推定を例示する図である。
【
図7】xy平面における任意の位置での温度の推定を例示する図である。
【
図8】ハウス内に定めた各区画における温度を推定するための式を例示する図である。
【
図9】例示的な温度ムラと色との対応付けを示す図である。
【
図10】実施形態に係る水平方向の温度ムラを色で表現した図である。
【
図11】実施形態に係るハウス内の温度ムラを見える化した温度ムラグラフを例示する図である。
【
図12】温度ムラのサイズ情報を例示する図である。
【
図14】実施形態に係る日ごとの夜間平均温度からの温度ムラを例示する図である。
【
図15】実施形態に係る温度ムラの時間推移を例示する図である。
【
図16】実施形態に係るハウスの改変の要否判定処理の動作フローを例示する図である。
【
図17】実施形態に係る表示情報の表示画面を例示する図である。
【
図18】実施形態に係る評価情報を例示する図である。
【
図19】第2の実施形態に係るハウスの改変の要否判定処理の動作フローを例示する図である。
【
図20】第2の実施形態に係る表示情報の表示画面を例示する図である。
【
図21】夜間において地面に近い位置での温度が地面から遠い位置における温度よりも高い温度ムラが検出された場合を例示する図である。
【
図22】変形例に係るハウスの改変の要否判定処理の動作フローを例示する図である。
【
図23】夜間の平均温度に対する温度ムラ発生合計面積と夜間平均外気温との相関係数を示す図である。
【
図24】第3の実施形態に係る温度ムラの発生の推定処理の動作フローを例示する図である。
【
図25】実施形態に係る情報処理装置を実現するためのコンピュータのハードウェア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。なお、複数の図面において対応する要素には同一の符号を付す。
【0011】
図1は、実施形態に係る判定システム100を例示する図である。判定システム100は、情報処理装置101、センサ102、およびビニールハウスなどのハウス110を含む。なお、情報処理装置101、およびセンサ102は、例えば、ネットワーク150を介して接続されてよい。
【0012】
情報処理装置101は、例えば、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、モバイルPC、タブレット端末、スマートフォンなどであってよい。センサ102は、例えば、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、炭酸ガスセンサなどを含んでよい。なお、
図1の例では、ハウス110の内部と、ハウス110の外部とにセンサ102が設置されている。ハウス110の内部に設置されているセンサ102は、ハウス内の環境を計測する。また、ハウス110の外部に設置されているセンサ102はハウス110の周辺環境を計測する。情報処理装置101は、例えば、センサ102で計測された計測値をネットワーク150を介して収集する。なお、情報処理装置101とセンサ102との間の通信接続は、これに限定されるものではなく、その他の方式で接続されてもよい。例えば、別の実施形態では情報処理装置101は、例えば、Bluetooth(登録商標)およびWi-Fi(登録商標)などの近距離無線通信を介してセンサ102と接続してもよい。
【0013】
図2は、実施形態に係る情報処理装置101のブロック構成を例示する図である。情報処理装置101は、例えば、制御部201、記憶部202、通信部203、および表示部204を含む。制御部201は、例えば推定部211、判定部212、出力部213、および特定部214を含む。情報処理装置101の記憶部202は、例えば、センサ102から取得した時系列の計測値、並びに後述する温度ムラグラフ1100、サイズ情報1200、および環境情報1300などの情報を記憶していてよい。通信部203は、例えば、制御部201の指示に従ってセンサ102と通信する。表示部204は、例えば、制御部201の指示に従って、表示画面に情報の表示を行う。これらの各部の詳細および記憶部202に格納されている情報の詳細については後述する。
【0014】
図3は、実施形態に係るハウス110内でのセンサ102の配置を例示する図である。
図3では、水平方向のサイズが縦30mおよび横60mのハウス110が例示されている。そして、
図3では、ハウス110内の9か所の設置位置にセンサ102が配置されている。設置位置は、
図3の例では、縦方向に上端から5m、15m、25mの位置にあり、また、横方向に左端から10m、30m、50mの位置にある。
【0015】
また、
図4は、実施形態に係るハウス110内でのセンサ102の鉛直方向の配置を例示する図である。
図4では、センサ102は、
図3で述べた各設置位置において、鉛直方向に上段、中段、および下段の3つの高さに設置されている。上段は、一例では、ハウス110内で栽培している農作物の生長点の高さであってよい。また、下段は、一例では、ハウス110内で栽培している農作物の収穫物の生る高さであってよい。中段は、一例では、上段の高さと下段の高さの中間の高さであってよい。なお、別の実施形態では、センサ102は、ハウス110の高さ方向に所定の間隔で配置されてもよい。
【0016】
従って、
図3および
図4に示す例では、水平方向に9個のセンサ102が鉛直方向に3段で、計27個のセンサ102がハウス110内に設置されている。なお、センサ102の設置位置は、
図3および
図4に示す例に限定されるものではなく、その他の設置位置にセンサ102が設置されてもよい。また、ハウス内110に設置されるセンサ102の数も27個に限定されるものではない。例えば、別の例では、ハウス110内でユーザがより環境を詳しく知りたい位置にはより多くのセンサ102が配置されてもよい。また、ハウス内110に設置されるセンサ102の数は、判定システム100のユーザが求める環境のムラの評価精度や、コストなどに応じて増減されてよい。
【0017】
各センサ102は、例えば、1分ごとなど所定の時間間隔で、温度、湿度、照度、炭酸ガス濃度などの計測対象の計測を行って計測値を取得してよい。そして、センサ102は、例えば、自装置の識別情報と対応づけて計測した計測値を情報処理装置101に通知する。情報処理装置101の制御部201は、センサ102から計測値を受信すると、例えば、受信した日時に、センサ102の識別情報と計測値とを対応づけて記憶部202に記憶する。そのため、情報処理装置101の記憶部202には、各センサ102で計測された計測値が時系列に記憶されていてよい。そして、以下で述べる実施形態では、情報処理装置101の制御部201は、ハウス110に設置されたセンサ102の計測値に基づいて、ハウス110内に発生している環境のムラを推定し、環境のムラに基づいてハウス110に改変が必要か否かを判定する。なお、以下では、温度ムラに基づいてハウス110に改変が必要か否かを判定する例を述べる。一実施形態では制御部201は、ハウス110内の温度を水平方向の区画単位で求めて、温度ムラを推定する。
【0018】
図5は、実施形態に係るハウス110の水平方向に定めた区画を例示する図である。
図5の例では、ハウス110内が水平方向に1m×1mメッシュに区切られている。なお、
図5において、■(黒塗り潰し)はセンサ102が設置されている設置位置を示す。そして、制御部201は、■で示す設置位置に設置されたセンサ102で計測した温度に基づいて、メッシュに切った各区画の温度を推定する。
【0019】
各区画の温度は、例えば、以下のように推定することができる。例えば、ハウス110内において空気の移動がないものと仮定すると、以下の式1に示す熱流束に対するフーリエの式が成り立つ。
【数1】
【0020】
なお、上記式1において■:熱量、λ:比例定数(熱伝導率)、■:温度、■,■′:積分定数である。
【0021】
図6は、x軸方向における2つのセンサ102の間の任意の位置での温度の推定を例示する図である。
図6に示すように、例えば、センサAと、センサBとが並ぶ方向にx軸を定め、また、x軸上に原点0を定めたとする。そして、センサAのx座標をαおよびセンサAの計測温度をA℃とし、センサBのx座標をβおよびセンサBの計測温度をB℃とする。また、温度を推定する位置のx座標をγおよびその位置における推定温度をθ℃とする。この場合に、各位置のx座標と、その位置における温度との関係は、上記フーリエの式を用いて以下の式1から式3で表すことができる。
【数2】
【0022】
そして、式2-式1により、以下の式4が得られる。
【数3】
【0023】
また、式1×β-式2×αにより、以下の式5が得られる。
【数4】
【0024】
式3に、式4および式5を代入すると、以下の式6が得られる。
【数5】
【0025】
ここで、センサAの計測温度:A℃と、センサBの計測温度:B℃と、センサA、センサB、および温度を推定したい位置のそれぞれのx座標であるα、β、およびγはいずれも既知である。そのため、これらの値を式6に代入することで、2つのセンサ102に挟まれた任意のx座標:γにおける温度:θ℃を推定することができる。
【0026】
続いて、xy平面における温度の推定について述べる。
図7は、xy平面における任意の位置での温度の推定を例示する図である。
図7に示すように、例えば、センサA,センサB、センサC、およびセンサDの4つのセンサ102に囲まれた区画があるとする。そして、
図7では、4つのセンサ102に囲まれた区画内における点Jにおける温度を求める例を述べる。まず、各センサ102の座標は予め計測することで取得することができる。また、各センサ102で計測された温度も取得することができるため、センサAおよびセンサBの間にある点Hにおける温度H℃は、式6を用いて求めることができる。同様に、センサCおよびセンサDの間にある点Iにおける温度I℃も、式6を用いて求めることができる。
【0027】
そして、点H、点I、点Jのx座標は同じであるため、得られた点Hおよび点Iでの温度を用いてy軸方向の任意の位置にある点Jの温度も式6を用いて推定することができる。
【0028】
なお、以上のy軸方向の温度の推定を数式で表すと、以下の式7となる。
【数6】
【0029】
従って、式7を用いて、例えば、
図7に示すような、直行する軸方向に並べて配置された4つのセンサで囲まれる区画内の任意の位置における温度を推定することができる。
図8には、各センサ102の設置位置の座標が示されており、また、センサ102の設置位置の座標と計測温度とを用いた温度の推定の式が示されている。なお、制御部201は、例えば、
図8に示す区画の中心の座標、または、左上の座標などの区画内の所定の位置において推定した温度を、区画の温度として用いてよい。
【0030】
そして、各区画で推定した温度を用いて、ハウス110内の温度ムラを表現することができる。なお、温度ムラは、例えば、圃場の管理者が重視している温度に対する、各区画での温度の差分で表されてよい。
【0031】
例えば、温度ムラとして、平均温度に対する温度の差分を用いることができる。この場合には、ハウス110内に設置された複数のセンサ102で計測した温度の平均温度に対する、各区画に対して推定された温度の差分を温度ムラとして用いてよい。
【0032】
また、例えば、温度ムラとして、ハウス110内に設置された制御用センサなどの基準となるセンサ102で計測された温度に対する温度の差分を用いることもできる。この場合、ハウス110内に設置された制御用センサなどの基準となるセンサ102で計測した温度に対する、各区画に対して推定された温度の差分を温度ムラとして用いてよい。
【0033】
或いは、例えば、温度ムラとして、設定温度に対する温度の差分を用いることもできる。この場合には、暖房機およびエアコンディショナーなどの空調設備に対して設定されている目標となる設定温度に対する、各区画に対して推定された温度の差分を温度ムラとして用いてよい。
【0034】
そして、得られた温度ムラを色で表現することで、ユーザにとって理解しやすい形式で温度ムラを見える化することができる。例えば、
図9に示すように、温度ムラが~-2.0℃を青色、-2.0℃~-1.0℃を水色、-1.0℃~+1.0℃を白色、+1.0℃~+2.0℃を黄色、+2.0℃~を赤色で表すものとする。なお、白色で表される範囲(例えば、-1.0℃~+1.0℃)は、温度ムラが小さく農作物の栽培において許容範囲内であるため、一例では温度ムラなしと見なしてよい。栽培する作物、品種、栽培目的などに応じて温度ムラなしと見なす範囲は異なる値に変更することができる。なお、以下では、温度ムラとして、平均温度からのずれを用いる場合を例示する。
【0035】
図10は、実施形態に係る水平方向の温度ムラを色で表現した図である。
図10に示すように、各区画ごとに温度ムラを色で表現することで、ハウス110内の水平方向の温度ムラがユーザにとって分かり易く表現されている。また、
図4で述べたように、センサ102は、鉛直方向に3段設置されているため、それぞれの段において温度ムラを特定することで、ハウス110内の全体の温度ムラを温度ムラグラフ1100で表現することができる。
【0036】
図11は、実施形態に係るハウス110内の温度ムラを見える化した温度ムラグラフ1100を例示する図である。
図11に示すように、各段における水平方向の温度ムラを重ねて表示することで、或る時刻におけるハウス110内の温度ムラを3次元で視覚化することができる。
【0037】
また、例えば、ハウス110内で温度ムラが発生している領域のサイズを、ハウス110内の環境に改変が必要か否かの判定に利用することができる。例えば、制御部201は、ハウス110内で温度ムラが発生している領域のサイズが所定のサイズを超える状態が検出された場合、ハウス110内の環境に改変が必要と判定してよい。
【0038】
図12は、温度ムラのサイズ情報1200を例示する図である。サイズ情報1200には、例えば、
図11に示される3段の各段における水平方向の区画で表される温度ムラの数が、色毎にカウントされて登録されている。なお、上記の例では、各区画は、1m×1mのメッシュに区切られているため、
図12に登録されている各色の数値は、各色の区画の面積と対応しており、単位は、m
2である。
【0039】
また、サイズ情報1200の右端の列は、白色以外の色で表される区画の面積である。即ち、例えば、サイズ情報1200の上段の右端の列は、上段において青色、水色、黄色および赤色で表される区画の合計面積である。
【0040】
また、サイズ情報1200の最下段には、各段の値を合計した合計値が示されている。サイズ情報1200の右下の合計値は、上段、中段、および下段のそれぞれの段において、青色、水色、黄色、および赤色で表される区画の合計面積であり、ハウス110内で温度ムラが発生している区画の合計面積を表している。以下、このハウス110内で温度ムラが発生している区画の合計面積を、温度ムラ発生合計面積と呼ぶことがある。温度ムラ発生合計面積は、例えば、ハウス110内で温度ムラが発生している領域のサイズを表す指標として用いることができる。
【0041】
また、
図13は、例示的な環境情報1300を示す図である。情報処理装置101の記憶部202には、環境情報1300が記憶されていてよい。環境情報1300には、例えば、暦の日付に対応する環境に関する情報が登録されていてよい。
図13の例では、環境情報1300は、日照時間、降水量、夜間平均外気温、日の出時刻、日の入時刻などの情報が登録されている。このような環境に関する情報は、例えば、気象庁などから入手することができる。また、環境に関する情報は、例えば、夜間平均外気温などのように、ハウス110の外部に設置されているセンサ102などから取得されてもよい。
【0042】
続いて、ハウス110内の環境に改変が必要か否かの判定について説明する。例えば、ユーザがハウス110内の夜間における温度管理に関心があり、夜間における温度に関してハウス110内の環境に改変が必要か否かを判定したいと望んでいるものとする。この場合、夜間の平均温度に対する温度ムラを用いてサイズ情報1200を日ごとに作成することで、夜間の温度ムラが大きい日を特定することができる。なお、夜間平均温度とは、例えば、日の入時刻~翌日の日の出時刻までの平均温度であってよい。また、ユーザの関心に応じて、その他の時間帯の温度ムラが用いられてもよく、別の例では、24時間平均温度であっても、日中平均温度であってもよい。24時間平均温度は、例えば、日の出時刻~翌日の日の出時刻までの平均温度であってよい。また、日中平均温度は、例えば、日の出時刻~日の入時刻までの平均温度であってよい。制御部201は、たとえば、環境情報1300を参照することで、日の出時刻、日の入時刻などの情報を取得することができる。
【0043】
図14は、実施形態に係る日ごとの夜間平均温度に対する温度ムラを例示する図である。
図14に示す例では、2月10日から2月17日までの期間の日ごとの夜間平均温度からの温度ムラがサイズ情報1200を用いて示されている。
図14に示すように、2月17日において、サイズ情報1200の右下に示されるハウス110内での温度ムラ発生合計面積がこの期間において最大の2751m
2となり、温度ムラが最も大きい日となっている。そのため、ユーザは、温度ムラの改変の要否を判定するための対象として2月17日を選択してよい。
【0044】
続いて、制御部201は、温度ムラの時間推移を評価する。
図15は、実施形態に係る温度ムラの時間推移を例示する図である。
図15では、
図14において最も温度ムラの大きかった2月17日の夜間において30分おきに温度ムラグラフ1100とサイズ情報1200とを作成しており、温度ムラの変化が示されている。
図15の例では、3時30分~4時00分の期間で、温度ムラ発生合計面積が最大の3406m
2となっている。そのため、制御部201は、3時31分~4時00分の時間帯での温度ムラを、ハウスの改変の要否を判定するために用いてよい。例えば、制御部201は、温度ムラ発生合計面積が所定のサイズを超えている場合に、ハウス110への改変が必要と判定してよい。
【0045】
以下、実施形態に係る情報処理装置101の制御部201が実行するハウス110への改変の要否判定処理を説明する。
図16は、実施形態に係るハウス110への改変の要否判定処理の動作フローを例示する図である。情報処理装置101の制御部201は、例えば、所定期間を対象としてハウス110への改変の要否判定処理の実行指示が入力されると、
図16の動作フローを開始してよい。
【0046】
ステップ1601(以降、ステップを“S”と記載し、例えば、S1601と表記する)で情報処理装置101の制御部201は、所定期間における温度ムラを推定する。なお、制御部201は、
図14で例示したように1日単位で温度ムラを推定してもよく、または、
図15を参照して例示したように30分間隔など所定の時間単位で温度ムラを推定してもよい。或いは別の実施形態では、制御部201は、
図14および
図15を参照して述べたように、まず日ごとに温度ムラ発生合計面積が最も大きい日を特定した後で、その日において温度ムラ発生合計面積が最も大きくなる時間帯の温度ムラを推定してもよい。
【0047】
S1602において制御部201は、推定した温度ムラが所定の判定条件を満たして大きいか否かを判定する。一例では、制御部201は、推定した温度ムラの領域のサイズが所定のサイズよりも大きいか否かを判定してよい。例えば、温度ムラの領域のサイズの指標として、上述の温度ムラ発生合計面積を用いることができ、この場合、制御部201は、所定期間において推定した温度ムラから特定した温度ムラ発生合計面積が、所定の閾値を超えて大きいか否かを判定してよい。温度ムラ発生合計面積に対する所定の閾値は、温度ムラが農作物の育成において許容できる範囲内であるか否かを判定することが可能な値に設定されていてよい。例えば、制御部201は、1000m2あたりの面積が1m2~200m2の範囲にある所定の面積を所定の閾値として用いてよく、一例では、1000m2あたりの面積が10m2以上であるか否かで判定を実行してよい。温度ムラ発生合計面積が所定の閾値以上であるなど、温度ムラが所定の判定条件を満たして大きい場合(S1602がYES)、フローはS1603に進む。この場合、制御部201は、S1603においてハウス110への改変が必要であることを示す表示情報を出力し、本動作フローは終了する。
【0048】
図17は、実施形態に係る表示情報の表示画面1701を例示する図である。
図17(a)は、ハウス110への改変要を示す表示情報で表示される表示画面1701を例示する図である。情報処理装置101が備える表示部204は、例えば、改変要を示す表示情報の入力を受けると表示画面1701を表示してよく、ユーザは表示画面1701を参照することで、ハウス110への改変が必要であることを知ることができる。
【0049】
また、例えば、S1602において温度ムラ発生合計面積が所定の閾値未満であるなど、温度ムラが所定の判定条件を満たして大きくはない場合(S1602がNO)、フローはS1604に進む。この場合、制御部201は、S1604においてハウス110への改変が不要であることを示す表示情報を出力し、本動作フローは終了する。
図17(b)は、ハウス110への改変不要を示す表示情報で表示される表示画面1702を例示する図である。情報処理装置101が備える表示部204は、例えば、改変不要を示す表示情報の入力を受けると表示画面1702を表示してよく、ユーザは表示画面1702を参照することで、ハウス110への改変が不要であることを知ることができる。
【0050】
以上で述べたように、
図16の動作フローによれば、センサ102で計測された計測値に基づいて推定されるハウス110内の温度ムラに基づいて、ハウス110への改変が必要であるか否かを判定することができる。
【0051】
なお、上記では、ハウス110への改変の要否の判定に温度ムラ発生合計面積を用いる場合を例示しているが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、別の実施形態では、制御部201は、所定期間において温度ムラの最大値の温度差を特定し、その温度差が、所定の温度差を上回る場合にS1602でYESと判定して、改変要を示す情報を出力してもよい。
【0052】
また、ハウス110への改変が必要であると判定された場合、制御部201は、S1603において温度ムラグラフ1100を表示情報に含めて表示部204に表示させてもよい。ユーザは、温度ムラグラフ1100を参照することで、ハウス110の改変が必要となる温度ムラの発生位置を特定することができ、また、その位置において加温または冷却のいずれが必要なのかも特定することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態を説明する。上述の実施形態では、温度ムラに基づいて、ハウス110に改変が必要か否かを判定する例を述べている。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではなく、例えば、温度ムラの情報に基づいてハウス110の状態を評価し、ハウス110にどのような改変が必要になるかを提示することも可能である。
【0054】
図18は、第2の実施形態に係る評価情報1800を例示する図である。評価情報1800には、例えば、評価値と、評価基準と、対応策とが対応づけられたエントリが登録されている。評価値には、評価対象のハウス110の評価を示す評価値が登録されている。
図18では、A~Eの5段階でハウス110を評価する例が示されており、評価値:Aは最も温度ムラが少なく、評価値:Eは最も温度ムラが大きい。評価基準は、エントリの評価値にハウス110を評価する基準を示す情報である。また、対応策は、エントリの評価値に評価されたハウス110に対して提示する改変を示す情報である。
【0055】
例えば、
図18に示すように、評価値Aの評価基準は、1000m
2あたりの温度ムラ発生合計面積が0m
2であることであってよい。この場合、制御部201は、1000m
2あたりの温度ムラ発生合計面積が0m
2である場合に評価値Aを適用してよい。また、評価情報1800において評価値Aの場合の対応策は「不要」となっており、評価値Aの場合、ハウス110への改変が不要であることが示されている。
【0056】
また、評価値Bの評価基準は、例えば、
図18に示すように、1000m
2あたりの温度ムラ発生合計面積が1m
2以上かつ200m
2未満であることであってよい。この場合、制御部201は、1000m
2あたりの温度ムラ発生合計面積が1m
2以上かつ200m
2未満である場合に評価値Bを適用してよい。また、評価情報1800では評価値Bの場合の対応策として「現状の設備および機器運用での改変が可能。」が提示されている。そのため、評価値Bの場合、ユーザは、ハウス110に発生した温度ムラがハウス110に既に設置されている設備の設定等を見直すことで改善可能な軽微な温度ムラであることが分かり、設備の設定等を見直して温度ムラの改善を試みることができる。
【0057】
評価値Cの評価基準は、例えば、
図18に示すように、1000m
2あたりの温度ムラ発生合計面積が200m
2以上かつ400m
2未満であることであってよい。この場合、制御部201は、1000m
2あたりの温度ムラ発生合計面積が200m
2以上かつ400m
2未満である場合に評価値Cを適用してよい。また、評価情報1800において評価値Cの対応策として「現状の設備・機器運用での改変が可能か検討。改変が難しい場合は、循環扇やヒートポンプ等の導入により改変を実施。」が提示されている。そのため、評価値Cの場合、ユーザは、ハウス110に既に設置されている設備の設定等を見直すことで温度ムラの改善を試みることができる。また、既存の設備での改善が難しい場合には、循環扇やヒートポンプ等の導入を検討することができる。
【0058】
また、評価値Dの評価基準は、例えば、
図18に示すように、1000m
2あたりの温度ムラ発生合計面積が400m
2以上かつ600m
2未満であることであってよい。この場合、制御部201は、1000m
2あたりの温度ムラ発生合計面積が400m
2以上かつ600m
2未満である場合に評価値Dを適用してよい。また、評価情報1800において評価値Dの対応策として「ヒートポンプ等の導入により改変が可能。」が提示されている。そのため、評価値Dの場合、ユーザは、ハウス110に既に設置されている設備の設定等を見直すことで温度ムラを改善することは難しいと判断することができ、また、ヒートポンプ等の導入を検討することができる。
【0059】
また、評価値Eの評価基準は、例えば、
図18に示すように、1000m
2あたりの温度ムラ発生合計面積が600m
2以上であることであってよい。この場合、制御部201は、1000m
2あたりの温度ムラ発生合計面積が600m
2以上である場合に評価値Eを適用してよい。また、評価情報1800において評価値Eの対応策として「主要設備の見直し」が提示されている。そのため、評価値Eの場合、ユーザは、ハウス110に既に設置されている設備の設定等を見直すことで温度ムラを改善することは難しいと判断することができる。また、ユーザは、評価値Eの場合、ヒートポンプ等の導入でも温度ムラを改善することは難しいと判断することができる。そして、ユーザは、温度ムラを改善するために、主要設備の見直しを行うことができる。
【0060】
例えば、以上で述べたように、制御部201は、サイズ情報1200を用いて評価したハウス110内の温度ムラから、ハウス110への改変の要否を判定することができる。また、例えば、制御部201は、サイズ情報1200を用いて評価したハウス110内の温度ムラと、評価情報1800とに基づいて、ハウス110に対する温度ムラの適切な対応策を提示することができる。
【0061】
なお、評価情報1800における評価基準と、対応策との関係は、例えば、判定システム100で利用可能な設備およびヒートポンプなどの機器の性能などに応じて設定することができる。例えば、中規模施設5000m2(高さ3m)で評価値Dの場合の温度ムラに対する対応策を考えるものとする。
【0062】
この場合、温度ムラ発生合計面積は、評価情報1800の評価値Dの評価基準より、最大で3000m2である。そして、3000m2×3m(高さ)の空間を15分で2.0℃温度変化させるのに必要なエネルギーは、以下の式8で見積もることができる。
0.0002778[kW/kJ]×空気比熱[kJ/kg・℃]×空気密度[kg/m3]×空間体積[m3]×温度変化[℃/h]/温度変化時間[h] ・・・式8
【0063】
ここで、0.0002778[kW/kJ]は、ジュールとワットの換算のための定数である。空気比熱は、例えば、1.006[kJ/kg・℃]である。空気密度は、例えば、1.166[kg/m3]である。空間体積は、本例では、3000m2×3m(高さ)で計算することができる。温度変化[℃/h]は2℃/hであり、温度変化時間[h]は、15min/60min=0.25[h]である。これらの値を式8に代入すると、以下の式となり、温度変化に必要なエネルギー:23.46kWを見積もることができる。
0.0002778[kW/kJ]×1.006[kJ/kg・℃]×1.166[kg/m3]×3,000×3[m3]×2.0[℃/h]/0.25[h]=23.46kW
【0064】
そのため、評価値Dの中規模施設5000m2(高さ3m)の温度ムラは、23.46kW以上のヒートポンプを1台追加導入することで、十分に改変することが可能である。例えば、ネポン株式会社から利用可能な施設園芸用ヒートポンプグリーンパッケージNGP1010Tの能力は、定格暖房時28.0kW、定格冷房時25.3kW(日本施設園芸協会格付け暖房定格条件:室内15℃DB、室外7℃DB、6℃WB時)である。環境条件によってNGP1010Tの能力が低下することもあり、それらを考慮すると、上記の評価値Dの中規模施設5000m2(高さ3m)の温度ムラは、NGP1010Tを1台追加導入することで、改変が可能であることが分かる。
【0065】
この様に、評価情報1800における評価基準と、対応策との関係は、例えば、判定システム100で利用可能な設備およびヒートポンプなどの機器の性能などに応じて設定することができる。そして、評価情報1800を用いてハウス110の温度ムラを評価することで、ユーザにハウス110の温度ムラに対する対応策を提示することが可能である。
【0066】
なお、上記の例では、温度ムラの解消にかける時間を15分としている。これは、例えば、植物の生育において、あまり急激に温度変化させることはよくないことが知られており、一方で、温度変化に時間をかけすぎても、効率が悪く温度差がなかなか埋まらないことがあり、好ましい時間として15分を用いている。しかしながら、実施形態に係る温度ムラの解消のためのエネルギーの見積もりに用いる時間は、15分に限定されるものではない。別の例では、ユーザがかけられるコスト、利用可能な設備およびヒートポンプの性能などに応じて、その他の時間でエネルギーの見積もりが行われてもよい。
【0067】
以下、第2の実施形態に係る情報処理装置101の制御部201が実行するハウス110の改変の要否判定処理を説明する。
図19は、第2の実施形態に係るハウス110の改変の要否判定処理の動作フローを例示する図である。情報処理装置101の制御部201は、例えば、所定期間に対するハウス110の改変の要否判定処理の実行指示が入力されると、
図19の動作フローを開始してよい。
【0068】
S1901で情報処理装置101の制御部201は、所定期間における温度ムラを推定する。なお、制御部201は、
図14で例示したように1日単位で温度ムラを推定してもよく、または、
図15を参照して例示したように30分間隔など所定の時間単位で温度ムラを推定してもよい。或いは別の実施形態では、制御部201は、
図14および
図15を参照して述べたように、まず日ごとに温度ムラ発生合計面積が最も大きい日を特定した後で、その日において温度ムラ発生合計面積が最も大きくなる時間帯の温度ムラを推定してもよい。
【0069】
S1902において制御部201は、推定した温度ムラの発生している領域のサイズに応じて、ハウス110への対応策を提示し、本動作フローは終了する。例えば、制御部201は、推定した温度ムラを用いて温度ムラ発生合計面積を特定し、特定した温度ムラ発生合計面積が該当する評価情報1800の評価基準と対応する対応策を示す表示情報を出力してよい。
【0070】
図20は、第2の実施形態に係る表示情報で表示される表示画面2000を例示する図である。例えば、制御部201は、評価の結果得られた評価値:Dと、その評価基準と、対応策とを含む表示情報を生成し、表示情報を表示部204に出力してよい。そして、表示部204は、表示情報を受信すると表示画面2000を表示してよい。ユーザは、表示画面2000を参照することで、ハウス110の改変で求められる対応策の知ることができる。
【0071】
(変形例)
上述の実施形態では、ハウス110内で温度ムラが発生している領域のサイズなどに基づいて、ハウス110への改変の要否を判定したり、対応策を提示したりする例を述べているが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、以下の変形例で述べるように、温度ムラを利用して、その他の判定に基づいて、ハウス110への改変の要否を判定したり、対応策を提示したりすることも可能である。例えば、一般的に夜間では、地面の放射冷却の影響により、地面に近いほどハウス110内の空気の温度が下がる傾向がある。そのため、例えば、夜間において地面に近い位置での温度が、地面から遠い位置における温度よりも高い場合、暖房機などの空調設備の影響で温度ムラが発生していることが推定される。
【0072】
図21は、夜間において地面に近い位置での温度が、地面から遠い位置における温度よりも高い温度が計測された場合を例示する図である。
図21では、水平方向におけるハウス110の中央部にある区画において地面に近い下段での温度が、地面から遠い位置にある中段および上段での温度よりも高くなっている。このように、水平方向での位置が所定の誤差範囲内で一致しており、鉛直方向に略1列に並ぶ区画において、夜間に下段の区画の方が鉛直上方向にある上段の区画よりも高い温度が検出された場合、暖房機などの空調設備の影響で温度ムラが発生していると推定することができる。この場合、制御部201は、ハウス110への改変要と判定してよい。
【0073】
また更に、制御部201は、夜間において下段の区画の方が鉛直上方向にある上段の区画よりも高い温度が検出された位置および時間帯での温度調整に関わる暖房機の配置や設定等の改変を促す表示情報を出力してよい。それにより、ユーザは、ハウス110内のどの位置および時間帯での空調設備の設定や配置を見直す必要があるかを知ることができる。
【0074】
なお、
図21に例示するように、制御部201が、表示部204に色分けして表示させた温度ムラグラフ1100に更に、実際の温度差の数値を表示させることで、ユーザは温度ムラの状態をより正確に把握することが可能である。
【0075】
図22は、変形例に係る情報処理装置101の制御部201が実行するハウス110への改変の要否判定処理の動作フローを例示する図である。情報処理装置101の制御部201は、例えば、所定期間を対象としてハウス110への改変の要否判定処理の実行指示が入力されると、
図22の動作フローを開始してよい。
【0076】
S2201において制御部201は、夜間において下段の方が上段よりも高温となる温度ムラがあるか否かを判定する。例えば、所定期間において、夜間に下段の区画の方が鉛直上方向にある上段の区画よりも高い温度が検出される温度ムラがない場合(S2201がNO)、本動作フローは終了する。一方、例えば、所定期間において、夜間に下段の区画の方が鉛直上方向にある上段の区画よりも高い温度が検出される温度ムラがある場合(S2201がYES)、フローはS2202に進む。
【0077】
S2202において制御部201は、該当する温度ムラが検出された時間帯において、該当する温度ムラの位置における空調設備の調整が必要であることを示す表示情報を出力し、本動作フローは終了する。
【0078】
以上で述べたように、変形例によれば、暖房機などの空調設備の影響で発生している温度ムラの発生時刻や発生位置を特定し、ユーザにハウス110への改変を促すことが可能である。
【0079】
(第3の実施形態)
上述の実施形態では、ハウス110内で温度ムラに基づいて、ハウス110への改変の要否を判定したり、対応策を提示したりする例を述べているが、実施形態はこれに限定されるものではない。第3の実施形態では、過去に計測された温度ムラの情報に基づいて、次に温度ムラが発生する日時を推定する例を述べる。
【0080】
ハウス110内の温度ムラの発生は、ハウス110が設置されている環境の様々な要因に起因し得る。そして、ハウス110が設置されている環境に関する情報は、環境情報1300を参照して例示したように、例えば、気象庁などから入手することが可能である。そして、例えば、気象庁などから入手した、ハウス110が設置されている環境を示す環境値と、ハウス110で発生した温度ムラとの相関を見ることで、温度ムラの発生と相関の高い環境値を特定することが可能である。例えば、
図23は、夜間のハウス110内の平均温度に対して求めた温度ムラ発生合計面積と、夜間平均外気温との相関係数を求めた図であり、これらは相関係数が-0.904と極めて強い相関があることが分かる。
【0081】
そして、このように、温度ムラ発生合計面積などの温度ムラの指標と相関係数の高い環境要因を特定することで、環境要因から温度ムラが発生しそうな日時などを推定することが可能となる。即ち、例えば、
図23に示すハウス110の環境では、夜間平均外気温が低下することが予想された場合、温度ムラが大きく発生することが推定できる。そのため、ユーザは、例えば、ハウス110に送風機や暖房機などを一時的に設置したり、空調設備の設定を変更したりなどの対処を講じることが可能となる。
【0082】
図24は、第3の実施形態に係る温度ムラの発生の推定処理の動作フローを例示する図である。例えば、情報処理装置101の制御部201は、温度ムラの発生の推定処理の実行指示が入力されると、
図24の動作フローを開始してよい。
【0083】
S2401で情報処理装置101の制御部201は、指定された所定期間において、環境情報1300から取得した少なくとも1つの環境値と、温度ムラの指標との相関係数を求め、相関係数の大きさが所定の条件を満たして高い環境値を特定する。環境値は、例えば、日中平均温度、夜間平均温度、日照時間、降水量などさまざまな値を用いることができる。また、環境値を特定に用いる所定の条件は、例えば、相関係数の大きさが0.2以上(例えば、±0.2~±1.0)であってよい。環境値を特定に用いる所定の条件は、より好ましくは、相関係数の大きさが0.7以上(例えば、±0.7~±1.0)であってよく、更に好ましくは相関係数の大きさが0.9以上(例えば、±0.9~±1.0)であってよい。
【0084】
S2402において制御部201は、特定した相関係数の高い環境値の予測値に基づいて、温度ムラの発生する日時を推定して出力し、本動作フローは終了する。例えば、
図23の例のように夜間外気温と温度ムラの指標とが高い相関係数を有するものとする。この場合、制御部201は、直近の数日において夜間外気温が所定値以下に低下することが予想される日時があれば、その日時を温度ムラの発生する日時として表示部204に出力してよい。ユーザは、出力結果を参照することで、例えば、温度ムラが発生する日時を知ることができ、ハウス110に送風機や暖房機などを一時的に設置したり、空調設備の設定を変更したりなどの対処を講じることができる。
【0085】
なお、ハウス110の置かれた環境に応じてハウス110の環境に大きな影響を与える環境要因は変わり得るため、温度ムラと相関係数の高い環境要因はハウス110ごとに異なり得る。そのため、ハウス110ごとに温度ムラと相関係数の高い環境要因を特定し、ハウス110ごとに特定した環境要因に応じて温度ムラの発生を予測することで、高い精度で温度ムラの発生を予測することが可能になる。
【0086】
以上において、実施形態を例示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の動作フローは例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。可能な場合には、動作フローは、処理の順番を変更して実行されてもよく、別に更なる処理を含んでもよく、または、一部の処理が省略されてもよい。例えば、上述の実施形態および変形例の動作フローは組み合わせて実行することもできる。一例として、上述の
図19の動作フローの各ステップに続けて、
図22および
図24の動作フローの各ステップが実行されてもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、例えば、ハウス110内で温度ムラが発生している領域のサイズを表す指標として温度ムラ発生合計面積を用いる例が示されている。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、別の実施形態では、温度ムラ発生合計面積に所定の高さの値を乗算し、ハウス110内で温度ムラが発生している領域のサイズを体積で評価してもよい。
【0088】
また、上述の実施形態では、例として、温度ムラが+1℃以上、もしくは-1℃以下発生した場合に、その面積を温度ムラ発生合計面積のカウントに用いているが、実施形態は、これに限定されるものではなく、その他の範囲で温度ムラをカウントしてもよい。例えば、圃場で栽培する作物、品種、栽培目的などに応じて、±1℃の数値は異なる値に変更することができる。
【0089】
また、上述の実施形態では、ハウス110内で発生する環境のムラの例として、温度ムラを例に説明を行っているが、上述の実施形態はハウス110内で発生するその他のムラに対しても適用することが可能である。例えば、上述の実施形態は、CO2濃度のムラ、湿度のムラ、飽差のムラなどに対して適用されてもよく、また、これらの複数のムラを組み合わせてハウス110内への改変の要否の判定が行われてもよい。例えば、制御部201は、ハウス110内で発生するCO2濃度のムラ、湿度のムラ、飽差のムラなどの環境のムラの大きさの最大値が、所定の閾値を超えた場合に、ハウス110内への改変が必要と判定してよい。
【0090】
一例として、CO2濃度のムラに基づいてハウス110の環境に改変が必要か否かを判定するものとする。この場合、制御部201は、所定期間におけるCO2濃度ムラが1箇所以上、+100ppm以上、もしくは-100ppm以下発生した場合にハウス110内の環境に改変が必要であると判定してよい。なお、圃場で栽培する作物、品種、栽培目的などに応じて、上記の±100ppmの数値は異なる値に変更されてよい。
【0091】
また、別な例として、湿度のムラに基づいてハウス110の環境に改変が必要か否かを判定するものとする。この場合、制御部201は、所定期間における湿度のムラが1箇所以上、+10%以上、もしくは-10%以下発生した場合にハウス110内の環境に改変が必要であると判定してよい。なお、圃場で栽培する作物、品種、栽培目的などに応じて、上記の±10%の数値は異なる値に変更されてよい。
【0092】
更に別な例として、飽差に基づいてハウス110の環境に改変が必要か否かを判定するものとする。この場合、制御部201は、所定期間における飽差のムラが1箇所以上、+2g/m3以上、もしくは-2g/m3以下発生した場合にハウス110内の環境に改変が必要であると判定してよい。なお、圃場で栽培する作物、品種、栽培目的などに応じて、上記の±2g/m3の数値は異なる値に変更されてよい。
【0093】
また、上述の実施形態では、フーリエの式を用いて、メッシュ状に区切った区画の温度を推定する例を述べているが実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、メッシュ状に区切った各区画のCO2濃度、湿度、飽差などを、設置されているセンサ102による計測値に基づいて逆距離加重補間法により推定することができる。
【0094】
なお、上述の実施形態において、
図16のS1601、
図19のS1901、および
図24のS2402では情報処理装置101の制御部201は、例えば、推定部211として動作する。また、
図16のS1602、および
図22のS2201では情報処理装置101の制御部201は、例えば、判定部212として動作する。
図19のS1902では情報処理装置101の制御部201は、例えば、出力部213として動作する。
図24のS2401では情報処理装置101の制御部201は、例えば、特定部214として動作する。
【0095】
図25は、実施形態に係る情報処理装置101を実現するためのコンピュータ2500のハードウェア構成を例示する図である。
図25の情報処理装置101を実現するためのハードウェア構成は、例えば、プロセッサ2501、メモリ2502、記憶装置2503、読取装置2504、通信インタフェース2506、入出力インタフェース2507、および表示装置2511を備える。なお、プロセッサ2501、メモリ2502、記憶装置2503、読取装置2504、通信インタフェース2506、入出力インタフェース2507は、例えば、バス2508を介して互いに接続されている。
【0096】
プロセッサ2501は、例えば、シングルプロセッサであっても、マルチプロセッサやマルチコアであってもよい。プロセッサ2501は、メモリ2502を利用して例えば上述の動作フローの手順を記述したプログラムを実行することにより、上述した制御部201の一部または全部の機能を提供する。例えば、プロセッサ2501は、記憶装置2503に格納されているプログラムを読み出して実行することで、推定部211、判定部212、出力部213、および特定部214として動作する。
【0097】
メモリ2502は、例えば半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んでいてよい。記憶装置2503は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、または外部記憶装置である。なお、RAMは、Random Access Memoryの略称である。また、ROMは、Read Only Memoryの略称である。
【0098】
読取装置2504は、プロセッサ2501の指示に従って着脱可能記憶媒体2505にアクセスする。着脱可能記憶媒体2505は、例えば、半導体デバイス(USBメモリ等)、磁気的作用により情報が入出力される媒体(磁気ディスク等)、光学的作用により情報が入出力される媒体(CD-ROM、DVD等)などにより実現される。なお、USBは、Universal Serial Busの略称である。CDは、Compact Discの略称である。DVDは、Digital Versatile Diskの略称である。
【0099】
上述の記憶部202は、例えばメモリ2502、記憶装置2503、および着脱可能記憶媒体2505を含んでよい。例えば、情報処理装置101の記憶装置2503には、センサ102から取得した時系列の計測値、温度ムラグラフ1100、サイズ情報1200、および環境情報1300などが格納されていてよい。
【0100】
通信インタフェース2506は、プロセッサ2501の指示に従ってネットワークを介してデータを送受信する。通信インタフェース2506は、上述の通信部203の一例である。入出力インタフェース2507は、例えば、入力装置および出力装置との間のインタフェースであってよい。入力装置は、例えばユーザからの指示を受け付けるキーボードやマウスなどのデバイスである。また、
図25の例では、出力装置として、例えば、ディスプレイなどの表示装置2511が通信インタフェース2506に接続されている。表示装置2511は、例えば、上述の表示部204の一例である。
【0101】
実施形態に係る各プログラムは、例えば、下記の形態で情報処理装置101に提供される。
(1)記憶装置2503に予めインストールされている。
(2)着脱可能記憶媒体2505により提供される。
(3)プログラムサーバなどのサーバから提供される。
【0102】
なお、
図25を参照して述べた情報処理装置101を実現するためのコンピュータ2500のハードウェア構成は、例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の機能部の一部または全部の機能がFPGAおよびSoCなどによるハードウェアとして実装されてもよい。なお、FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。SoCは、System-on-a-chipの略称である。
【0103】
以上において、いくつかの実施形態が説明される。しかしながら、実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態の各種変形形態および代替形態を包含するものとして理解されるべきである。例えば、各種実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることが理解されよう。また、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の実施形態が実施され得ることが理解されよう。更には、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してまたは置換して、或いは実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加して種々の実施形態が実施され得ることが当業者には理解されよう。
【符号の説明】
【0104】
100 :判定システム
101 :情報処理装置
102 :センサ
110 :ハウス
150 :ネットワーク
201 :制御部
202 :記憶部
203 :通信部
204 :表示部
211 :推定部
212 :判定部
213 :出力部
214 :特定部
2500 :コンピュータ
2501 :プロセッサ
2502 :メモリ
2503 :記憶装置
2504 :読取装置
2505 :着脱可能記憶媒体
2506 :通信インタフェース
2507 :入出力インタフェース
2508 :バス
2511 :表示装置