(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】潤滑剤組成物および潤滑システム
(51)【国際特許分類】
C10M 173/02 20060101AFI20220817BHJP
C10M 169/04 20060101ALI20220817BHJP
C09K 5/10 20060101ALI20220817BHJP
C10M 105/14 20060101ALN20220817BHJP
C10M 125/02 20060101ALN20220817BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220817BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
C10M173/02
C10M169/04
C09K5/10 E
C10M105/14
C10M125/02 ZNM
C10N30:06
C10N40:00 Z
(21)【出願番号】P 2019511251
(86)(22)【出願日】2018-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2018014225
(87)【国際公開番号】W WO2018186381
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2017075226
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】木本 訓弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 友尋
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-538274(JP,A)
【文献】特開2001-146599(JP,A)
【文献】特開平05-051588(JP,A)
【文献】特開2004-085108(JP,A)
【文献】特表2004-538349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C09K 5/10
C10N 30/06
C10N 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレングリコールを含む不凍液と、
0.0001~0.01質量
%のナノダイヤモンド粒子とを含む、潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
ヒートポンプ用液状組成物である、請求項1又は2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の潤滑剤組成物が熱媒体として用いられている、潤滑システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ装置などの熱媒体として用いることができる潤滑剤組成物および当該潤滑剤組成物を熱媒体として用いた潤滑システムに関する。本願は、2017年4月5日に日本に出願した特願2017-075226号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまな分野でヒートポンプ装置が使用されている。一般的に使用されているヒートポンプ装置としては、冷凍冷蔵庫、エアコン、およびヒートポンプ式給湯器などが挙げられる。ヒートポンプとは、熱媒体を用いて熱交換を行う技術であり、ヒートポンプ装置は、熱媒体の圧縮および膨張を行う圧縮機や膨張弁といった機構と、凝縮器や蒸発器といった熱交換を行う機構とを組み合わせたものである。これらのヒートポンプ装置では、熱媒体として、エチレングリコール水溶液である不凍液などが用いられている。このようなヒートポンプ装置については、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
ヒートポンプ装置の熱媒体を流通させるためのポンプ等の内部などでは、ピストン機構の軸受部などに摺動部があり、摺動部の構成材料である摺動部材間における、摩擦によるエネルギーロスが懸念されている。これらの熱媒体においては、摩擦によるエネルギーロスを低減するために、潤滑性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであり、ヒートポンプ装置の熱媒体を流通させるためのポンプの内部等の摺動部材間における摩擦を低減するのに好適な潤滑剤組成物、および、当該組成物を用いた潤滑システムを、提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によると潤滑剤組成物が提供される。この潤滑剤組成物は、エチレングリコールを含む不凍液と、0.01質量%以下のナノダイヤモンド粒子(以下、「ND粒子」と称する場合がある)とを含む。本発明者らは、エチレングリコールを含む不凍液を用いて、所定の摺動部材間の摩擦係数について検証したところ、不凍液に所定の配合量のND粒子を添加することで、摩擦係数が大幅に低減することを見出した。これは例えば後記の実施例の示すとおりである。摩擦係数が大幅に低減した理由は、摺動部材におけるND粒子が存在する系でのトライボ化学反応によって、平滑性と濡れ性とを兼ね備えた表面が形成されることに起因するものと考えられる。本発明は、例えばヒートポンプ装置の熱媒体を流通させるためのポンプ等の内部などにおける摺動部材間において、摩擦に適したなじみ面の形成と、摩擦面の濡れ性向上により、当該摺動部材間の低摩擦を達成するのに好適である。本発明は、配合されるND粒子についてその配合量を抑制しつつ効率よく低摩擦を実現するのに適する。ND粒子の配合量の抑制は、潤滑剤組成物の製造コスト抑制の観点から特に好ましい。
【0007】
本発明は、前記ナノダイヤモンド粒子が、爆轟法ナノダイヤモンド粒子であることが好ましい。爆轟法によると、一次粒子の粒径が10nm以下のNDを適切に生じさせることが可能である。
【0008】
本発明は、潤滑剤組成物がヒートポンプ用液状組成物であることが好ましい。本発明の潤滑剤組成物は、ヒートポンプ装置の熱媒体における潤滑剤として好適である。
【0009】
本発明の第2の側面によると潤滑システムが提供される。この潤滑システムは、前記潤滑剤組成物が熱媒体として用いられた潤滑システムを提供する。このような構成の潤滑システムは、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)摺動部材の潤滑において低摩擦を実現するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る潤滑剤組成物の拡大模式図である。
【
図2】本発明の一の実施形態に係るND分散液の製造方法の一例の工程図である。
【
図3】本発明の一の実施形態に係る潤滑システムの概念模式図である。
【
図4】比較例1および実施例1の潤滑剤組成物を用いたときの摩擦試験の結果を示すグラフである。
【
図5】実施例1の潤滑剤組成物を用いたときの摩擦試験の結果を示すグラフである。
【
図6】比較例1および実施例2の潤滑剤組成物を用いたときの摩擦試験の結果を示すグラフである。
【
図7】実施例2の潤滑剤組成物を用いたときの摩擦試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一の実施形態に係る潤滑剤組成物10の拡大模式図である。潤滑剤組成物10は、エチレングリコールを含む不凍液11と、ND粒子12と、必要に応じて加えられる他の成分とを含有する。
【0012】
潤滑剤組成物10における不凍液11は、エチレングリコールを含み、ヒートポンプの内部を循環する熱媒体(冷媒)として機能する成分であるところ、潤滑剤組成物10における不凍液11の含有率は、本実施形態では例えば90質量%以上であり、好ましくは99質量%以上である。
【0013】
潤滑剤組成物10におけるND粒子12の含有率ないし濃度は、本実施形態では、0.01質量%(100質量ppm)以下であり、好ましくは0.0001~0.008質量%(1~80質量ppm)、より好ましくは0.0003~0.006質量%(3~60質量ppm)、より好ましくは0.0005~0.003質量%(5~30質量ppm)、より好ましくは0.0008~0.002質量%(8~20質量ppm)である。
【0014】
不凍液11は、エチレングリコールを含む限り特に限定されないが、JIS-2234で定義されるエチレングリコール水溶液などが挙げられる。不凍液11は、例えば、エチレングリコール以外にプロピレングリコール、ジエチレングリコール、およびアルコール(例えば、メタノール、エタノール、およびイソプロパノール)を含むものであってよい。
【0015】
不凍液11におけるエチレングリコールの含有率は、本実施形態では例えば10~90質量%であり、好ましくは20~80質量%、より好ましくは25~60質量%である。また、不凍液11における水の含有率は、本実施形態では例えば10~90質量%であり、好ましくは20~80質量%、より好ましくは40~75質量%である。なかでも不凍液11としては、エチレングリコールを25~60質量%、且つ水を40~75質量%含むエチレングリコール水溶液が特に好ましい。
【0016】
潤滑剤組成物10に含有されるND粒子12は、一次粒子として、潤滑剤組成物10中にて互いに離隔して分散している。ナノダイヤモンドの一次粒子とは、粒径10nm以下のナノダイヤモンドをいうものとする。ナノダイヤモンドの一次粒子の粒径の下限は例えば1nmである。また、潤滑剤組成物10中のND粒子12の粒径D50(メディアン径)は、例えば9nm以下であり、好ましくは8nm以下、より好ましくは7nm以下、より好ましくは6nm以下である。ND粒子12の粒径D50は、例えば動的光散乱法によって測定することが可能である。
【0017】
潤滑剤組成物10に含有されるND粒子12は、好ましくは、爆轟法ND粒子(爆轟法によって生成したND粒子)である。爆轟法によると、一次粒子の粒径が10nm以下のNDを適切に生じさせることが可能である。
【0018】
前記潤滑剤組成物は、ヒートポンプ用液状組成物であることが好ましい。本発明の潤滑剤組成物は、ヒートポンプ装置の熱媒体における潤滑剤として好適である。
【0019】
潤滑剤組成物10に含有されるND粒子12のいわゆるゼータ電位は、ネガティブであってもポジティブあってもよい。ゼータ電位がネガティブの場合の値は、例えば-50~-30mVである。例えば、製造過程において、後記のように酸素酸化処理の温度条件を比較的に高温(例えば400~450℃)とすることで、ND粒子12についてネガティブのゼータ電位とすることができる。また、ゼータ電位がポジティブの場合の値は、例えば30~50mVである。例えば、製造過程において、後記のように酸素酸化工程の後に水素化工程を行うことで、ND粒子12についてポジティブのゼータ電位とすることができる。
【0020】
潤滑剤組成物10は、上述のように、エチレングリコールを含む不凍液11およびND粒子12に加えて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、カップリング剤、潤滑対象部材たる金属部材の錆止めのための防錆剤、潤滑対象部材たる非金属部材の腐食抑制のための腐食防止剤、凝固点降下剤、消泡剤、耐摩耗添加剤、防腐剤、着色料、および、ND粒子12以外の固体潤滑剤が挙げられる。
【0021】
以上のような潤滑剤組成物10は、後記の方法で得られたND分散液と、エチレングリコールや水等の所望の成分とを混合することで製造することができる。上記ND分散液は、例えば、下記の生成工程S1と、精製工程S2と、酸素酸化工程S3と、解砕工程S4とを少なくとも含む過程を経て作製することができる。
【0022】
生成工程S1では、例えば爆轟法によって、ナノダイヤモンドを生じさせる。具体的には、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において所定の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉する。容器は例えば鉄製で、容器の容積は、例えば0.5~40m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。TNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、例えば40/60~60/40の範囲とされる。爆薬の使用量は、例えば0.05~2.0kgである。使用爆薬とともに容器内に密閉される上記の気体は、大気組成を有してもよいし、不活性ガスであってもよい。一次粒子表面の官能基量の少ないナノダイヤモンドを生じさせるという観点からは、使用爆薬とともに容器内に密閉される上記気体は、不活性ガスであるのが好ましい。すなわち、一次粒子表面の官能基量の少ないナノダイヤモンドを生じさせるという観点からは、ナノダイヤモンドを生じさせるための爆轟法は不活性ガス雰囲気下で行われるのが好ましい。当該不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素、およびヘリウムから選択される少なくとも一つを用いることができる。
【0023】
生成工程S1では、次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させる。爆轟とは、化学反応に伴う爆発のうち反応の生じる火炎面が音速を超えた高速で移動するものをいう。爆轟の際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によってナノダイヤモンドが生成する。爆轟法によると、上述のように、一次粒子の粒径が10nm以下のナノダイヤモンドを適切に生じさせることが可能である。ナノダイヤモンドは、爆轟法により得られる生成物にて先ずは、隣接する一次粒子ないし結晶子の間がファンデルワールス力の作用に加えて結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成し、凝着体をなす。
【0024】
生成工程S1では、次に、室温での例えば24時間の放置により、容器およびその内部を降温させる。この放冷の後、ナノダイヤモンド粗生成物を回収する。例えば、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上述のようにして生成したナノダイヤモンドの凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業によって、ナノダイヤモンド粗生成物を回収することができる。以上のような爆轟法によって、ナノダイヤモンド粒子の粗生成物を得ることができる。また、以上のような生成工程S1を必要回数行うことによって、所望量のナノダイヤモンド粗生成物を取得することが可能である。
【0025】
精製工程S2は、本実施形態では、原料たるナノダイヤモンド粗生成物に例えば水溶媒中で強酸を作用させる酸処理を含む。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物には金属酸化物が含まれやすいところ、この金属酸化物は、爆轟法に使用される容器等に由来するFe,Co,Ni等の酸化物である。例えば水溶媒中で所定の強酸を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物から金属酸化物を溶解・除去することができる(酸処理)。この酸処理に用いられる強酸としては、鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、および王水が挙げられる。酸処理では、一種類の強酸を用いてもよいし、二種類以上の強酸を用いてもよい。酸処理で使用される強酸の濃度は例えば1~50質量%である。酸処理温度は例えば70~150℃である。酸処理時間は例えば0.1~24時間である。また、酸処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような酸処理の後、例えばデカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行う。沈殿液のpHが例えば2~3に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物における金属酸化物の含有量が少ない場合には、以上のような酸処理を省略してもよい。
【0026】
精製工程S2は、本実施形態では、酸化剤を用いてナノダイヤモンド粗生成物(精製終了前のナノダイヤモンド凝着体)からグラファイトやアモルファス炭素等の非ダイヤモンド炭素を除去するための溶液酸化処理を含む。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物にはグラファイト(黒鉛)やアモルファス炭素等の非ダイヤモンド炭素が含まれているところ、この非ダイヤモンド炭素は、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちナノダイヤモンド結晶を形成しなかった炭素に由来する。例えば上記の酸処理を経た後に、例えば水溶媒中で所定の酸化剤を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物から非ダイヤモンド炭素を除去することができる(溶液酸化処理)。この溶液酸化処理に用いられる酸化剤としては、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、及びこれらの塩、硝酸、並びに混酸(硫酸と硝酸の混合物)が挙げられる。溶液酸化処理では、一種類の酸化剤を用いてもよいし、二種類以上の酸化剤を用いてもよい。溶液酸化処理で使用される酸化剤の濃度は例えば3~50質量%である。溶液酸化処理における酸化剤の使用量は、溶液酸化処理に付されるナノダイヤモンド粗生成物100質量部に対して例えば300~2000質量部である。溶液酸化処理温度は例えば50~250℃である。溶液酸化処理時間は例えば1~72時間である。溶液酸化処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような溶液酸化処理の後、例えばデカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行う。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。
【0027】
以上のような酸処理および溶液酸化処理を経た後であっても、爆轟法ナノダイヤモンドは、一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとる。この凝着体からの一次粒子の分離を促すために、本実施形態では、次に、ナノダイヤモンドに対して水溶媒中で所定のアルカリおよび過酸化水素を作用させてもよい。これにより、例えば、上述の酸処理によっても除去しきれなかった金属酸化物がナノダイヤモンドに残存する場合に当該金属酸化物を除去することができ、そして、ナノダイヤモンド凝着体からのナノダイヤモンド一次粒子の分離が促される(アルカリ過水処理)。この処理に用いられるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム等が挙げられる。本処理において、アルカリの濃度は例えば0.1~10質量%であり、過酸化水素の濃度は例えば1~15質量%であり、処理温度は例えば40~100℃であり、処理時間は例えば0.5~5時間である。また、本処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。本処理を経たナノダイヤモンド含有溶液から例えばデカンテーションによって上澄みが除かれた後、残留画分について乾燥処理に付して乾燥粉体を得る。乾燥処理の手法としては、例えば、噴霧乾燥装置を使用して行う噴霧乾燥や、エバポレーターを使用して行う蒸発乾固が挙げられる。
【0028】
次の酸素酸化工程S3では、精製工程S2を経たナノダイヤモンドの粉体について、ガス雰囲気炉を使用して、酸素を含有する所定組成のガス雰囲気下にて加熱する。具体的には、ガス雰囲気炉内にナノダイヤモンド粉体が配され、当該炉に対して酸素含有ガスが供給ないし通流され、加熱温度として設定された温度条件まで当該炉内が昇温されて酸素酸化処理が実施される。この酸素酸化処理の温度条件は、例えば250~500℃である。作製されるND分散液に含まれるND粒子についてネガティブのゼータ電位を実現するためには、この酸素酸化処理の温度条件は、比較的に高温であるのが好ましく、例えば400~450℃である。また、本実施形態で用いられる酸素含有ガスは、酸素に加えて不活性ガスを含有する混合ガスである。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素、およびヘリウムが挙げられる。当該混合ガスの酸素濃度は、例えば1~35体積%である。
【0029】
作製されるND分散液に含まれるND粒子についてポジティブのゼータ電位を実現するためには、好ましくは、上述の酸素酸化工程S3の後に水素化工程S3’を行う。水素化工程S3’では、酸素酸化工程S3を経たナノダイヤモンドの粉体について、ガス雰囲気炉を使用して、水素を含有する所定組成のガス雰囲気下にて加熱する。具体的には、ナノダイヤモンド粉体が内部に配されているガス雰囲気炉に対して水素含有ガスが供給ないし通流され、加熱温度として設定された温度条件まで当該炉内が昇温されて水素化処理が実施される。この水素化処理の温度条件は、例えば400~800℃である。また、本実施形態で用いられる水素含有ガスは、水素に加えて不活性ガスを含有する混合ガスである。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素、およびヘリウムが挙げられる。当該混合ガスの水素濃度は、例えば1~50体積%である。作製されるND分散液に含まれるND粒子についてネガティブのゼータ電位を実現するためには、このような水素化工程を行わずに下記の解砕工程S4を行ってもよい。
【0030】
以上のような一連の過程を経て精製等された後であっても、爆轟法ナノダイヤモンドは、一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとる。この凝着体から一次粒子を分離させるために、次に解砕工程S4が行われる。具体的には、まず、酸素酸化工程S3またはその後の水素化工程S3’を経たナノダイヤモンドを純水に懸濁し、ナノダイヤモンドを含有するスラリーが調製される。スラリーの調製にあたっては、比較的に大きな集成体をナノダイヤモンド懸濁液から除去するために遠心分離処理を行ってもよいし、ナノダイヤモンド懸濁液に超音波処理を施してもよい。そして、当該スラリーが湿式の解砕処理に付される。解砕処理は、例えば、高剪断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、またはコロイドミルを使用して行うことができる。これらを組み合わせて解砕処理を実施してもよい。効率性の観点からはビーズミルを使用するのが好ましい。
【0031】
粉砕装置ないし分散機たるビーズミルは、例えば、円筒形状のミル容器と、ローターピンと、遠心分離機構と、原料タンクと、ポンプとを具備する。ローターピンは、ミル容器と共通の軸心を有してミル容器内部で高速回転可能に構成されている。遠心分離機構は、ミル容器内の上部に配されている。解砕工程におけるビーズミルによるビーズミリングでは、ミル容器内に所定量のビーズが充填され且つローターピンが当該ビーズを撹拌している状態で、ポンプの作用によって原料タンクからミル容器の下部に原料としての上記スラリー(ナノダイヤモンド凝着体を含む)が投入される。スラリーは、ミル容器内でビーズが高速撹拌されている中を通ってミル容器内の上部に到達する。この過程で、スラリーに含まれているナノダイヤモンド凝着体は、激しく運動しているビーズとの接触によって粉砕ないし分散化の作用を受ける。これにより、ナノダイヤモンドの凝着体(二次粒子)から一次粒子への解砕が進む。ミル容器内の上部の遠心分離機構に到達したスラリーとビーズは、稼働する遠心分離機構によって比重差を利用した遠心分離がなされ、ビーズはミル容器内に留まり、スラリーは、遠心分離機構に対して摺動可能に連結された中空ラインを経由してミル容器外に排出される。排出されたスラリーは、原料タンクに戻され、その後、ポンプの作用によって再びミル容器に投入される(循環運転)。このようなビーズミリングにおいて、使用される解砕メディアは例えばジルコニアビーズであり、ビーズの直径は、例えば15~500μmである。ミル容器内に充填されるビーズの量(見掛け体積)は、ミル容器の容積に対して例えば50~80%である。ローターピンの周速は例えば8~12m/分である。循環させるスラリーの量は例えば200~600mLであり、スラリーの流速は例えば5~15L/時間である。また、処理時間(循環運転時間)は例えば30~300分間である。本実施形態においては、以上のような連続式のビーズミルに代えてバッチ式のビーズミルを使用してもよい。
【0032】
このような解砕工程S4を経ることによって、ナノダイヤモンド一次粒子を含有するND分散液を得ることができる。解砕工程S4を経て得られる分散液については、粗大粒子を除去するための分級操作を行ってもよい。例えば分級装置を使用して、遠心分離を利用した分級操作によって分散液から粗大粒子を除去することができる。これにより、ナノダイヤモンドの一次粒子がコロイド粒子として分散する例えば黒色透明のND分散液が得られる。
【0033】
また、ND分散液は、特開2010-248023号公報に記載の方法で、ND粒子の表面修飾基にポリグリセリル基を導入して作製したものを用いてもよい。
【0034】
潤滑剤組成物10は、上述のようなND粒子12を含有するため、所定部材間の潤滑において摩擦係数が例えば0.01を下回る程度に、低摩擦を実現可能である。加えて、潤滑剤10は、ヒートポンプ用液状組成物であるときは、そのND粒子濃度が比較的に低くとも、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)摺動部材間の潤滑において摩擦係数が例えば0.01程度以下の低摩擦を実現可能である。これは、例えば後記の実施例の示すところである。この理由は、ヒートポンプ用液状組成物により潤滑がなされる例えばDLC摺動部材間において、不凍液11と比較的に低濃度のND粒子12とが存在する系でのトライボ化学反応によって、平滑性と濡れ性とを兼ね備えた表面が形成されるためと考えられる。
【0035】
潤滑剤組成物10におけるND粒子12の含有率ないし濃度は、本実施形態では、潤滑剤組成物全体に対して、0.01質量%(100質量ppm)以下であり、好ましくは0.0001~0.008質量%(1~80質量ppm)、より好ましくは0.0003~0.006質量%(3~60質量ppm)、より好ましくは0.0005~0.003質量%(5~30質量ppm)、より好ましくは0.0008~0.002質量%(8~20質量ppm)である。潤滑剤組成物10は、不凍液11と配合されるND粒子12についてその配合量を抑制しつつ効率よく低摩擦を実現するのに適する。ND粒子12の配合量の抑制は、潤滑剤組成物10の製造コスト抑制の観点から好ましい。
【0036】
図3は、本発明の一の実施形態に係る潤滑システム20の概念模式図である。潤滑システム20は、潤滑剤組成物10が熱媒体として用いられている。
図3において、潤滑システム20は、部材21および潤滑剤組成物10を含む構成を具備する。部材21は、摺動表面を有する。DLCは、ダイヤモンドとグラファイト(黒鉛)の両方の炭素-炭素結合を併せ持つ炭素を主成分とした物質で作られた薄膜の総称をいうものとする。DLC摺動部材とは、上記DLCを部材の摺動表面に有する部材をいうものとする。潤滑剤組成物10は、ヒートポンプ装置において熱媒体(冷媒)として用いられるものであるが、ND粒子12を含有し、複数の部材21の摺動表面における潤滑にも用いられている。このような構成の潤滑システム20は、部材21間の低摩擦(特に、DLC摺動部材間の低摩擦)を実現するのに適する。
【0037】
DLCは、耐摩耗性と摺動性に優れた性質を有し、摺動部材等の部材へのコーティング材として好適に用いられる物質である。DLCは、水素含有量の多少と、含まれる結晶質の電子軌道がダイヤモンド寄りかグラファイト寄りかによって、その性質を区別することができる。DLCとしては、例えば、アモルファス水素化カーボンであるa-C:H、アモルファスカーボンであるa-C、水素化テトラヘドラルアモルファスカーボンであるta-C:H、および水素化テトラヘドラルアモルファスカーボンであるta-Cが挙げられる。
【実施例】
【0038】
〈ナノダイヤモンド水分散液X1の作製〉
以下のような生成工程、精製工程、酸素酸化工程、および解砕工程を経て、ナノダイヤモンド水分散液X1(ND水分散液X1)を作製した。
【0039】
生成工程では、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置して容器を密閉した。容器は鉄製で、容器の容積は15m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物0.50kgを使用した。当該爆薬におけるTNTとRDXの質量比(TNT/RDX)は、50/50である。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているナノダイヤモンド粗生成物(上記爆轟法で生成したナノダイヤモンド粒子の凝着体と煤を含む)を回収した。次に、上述のような生成工程を複数回行うことによって取得されたナノダイヤモンド粗生成物に対して精製工程の酸処理を行った。具体的には、当該ナノダイヤモンド粗生成物200gに6Lの10質量%塩酸を加えて得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この酸処理における加熱温度は85~100℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。次に、精製工程の溶液酸化処理としての混酸処理を行った。具体的には、酸処理後のデカンテーションを経て得た沈殿液(ナノダイヤモンド凝着体を含む)に、6Lの98質量%硫酸水溶液と1Lの69質量%硝酸水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で48時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は140~160℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。次に、溶液酸化処理後のデカンテーションを経て得た沈殿液(ナノダイヤモンド凝着体を含む)に対して1Lの10質量%水酸化ナトリウム水溶液と1Lの30質量%過酸化水素水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った(アルカリ過水処理)。この処理における加熱温度は50~105℃である。次に、冷却後、デカンテーションによって上澄みを除いた。そして、デカンテーション後の残留画分について乾燥処理に付して乾燥粉体(ナノダイヤモンド粉体)を得た。乾燥処理の手法としては、エバポレーターを使用して行う蒸発乾固を採用した。次に、ガス雰囲気炉(商品名「ガス雰囲気チューブ炉 KTF045N1」,光洋サーモシステム株式会社製)を使用して酸素酸化工程を行った。具体的には、上述のようにして得られたナノダイヤモンド粉体4.5gをガス雰囲気炉の炉心管内に静置し、炉心管に窒素ガスを流速1L/分で30分間通流させ続けた後、通流ガスを窒素から酸素と窒素との混合ガスへと切り替えて当該混合ガスを流速1L/分で炉心管に通流させ続けた。混合ガス中の酸素濃度は4体積%である。混合ガスへの切り替えの後、炉内を加熱設定温度たる400℃まで昇温させた。昇温速度については、加熱設定温度より20℃低い380℃までは10℃/分とし、その後の380℃から400℃までは1℃/分とした。そして、炉内の温度条件を400℃に維持しつつ、炉内のナノダイヤモンド粉体について酸素酸化処理を行った。処理時間は3時間とした。次に、解砕工程を行った。具体的には、まず、酸素酸化工程を経たナノダイヤモンド粉体1.8gと純水28.2mLとを50mLのサンプル瓶内で混合し、スラリー約30mLを得た。次に、当該スラリーについて、1Nの水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpHを調整した後、超音波処理を施した。超音波処理においては、超音波照射器(商品名「超音波洗浄機 AS-3」,アズワン(AS ONE)社製)を使用して、当該スラリーに対して2時間の超音波照射を行った。この後、ビーズミリング装置(商品名「並列四筒式サンドグラインダー LSG-4U-2L型」,アイメックス株式会社製)を使用してビーズミリングを行った。具体的には、100mLのミル容器たるベッセル(アイメックス株式会社製)に対して超音波照射後のスラリー30mLと直径30μmのジルコニアビーズとを投入して封入し、装置を駆動させてビーズミリングを実行した。このビーズミリングにおいて、ジルコニアビーズの投入量はミル容器の容積に対して約33%であり、ミル容器の回転速度は2570rpmであり、ミリング時間は2時間である。次に、このような解砕工程を経たスラリーないし懸濁液について、遠心分離装置を使用して遠心分離処理を行った(分級操作)。この遠心分離処理における遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分間とした。次に、当該遠心分離処理を経たナノダイヤモンド含有溶液の上清10mLを回収した。このようにして、ナノダイヤモンドが純水に分散するND水分散液X1を得た。このND水分散液X1について、固形分濃度ないしナノダイヤモンド濃度は59.1g/Lであり、pHは9.33であった。
【0040】
〈粒径〉
上述のようにして得られたND水分散液X1に含まれるナノダイヤモンド粒子について、動的光散乱法によって粒度分布を測定した。具体的には、Malvern社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、ナノダイヤモンドの粒度分布を動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した。測定に付されたND水分散液X1は、固形分濃度ないしナノダイヤモンド濃度が2.0質量%となるように超純水で希釈された後に超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。測定の結果、ND水分散液X1に含まれるナノダイヤモンド粒子について、粒径D50(メディアン径)は3.97nmであり、粒径D90は7.20nmであった。
【0041】
〈ゼータ電位〉
上述のようにして得られたND水分散液X1に含まれるナノダイヤモンド粒子について、Malvern社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、レーザードップラー式電気泳動法によってゼータ電位を測定した。測定に付されたND水分散液X1は、固形分濃度ないしナノダイヤモンド濃度が0.2質量%となるように超純水で希釈された後に超音波洗浄機による超音波照射を経たものであり、pHが9である。ゼータ電位測定温度は25℃である。本測定の結果、ゼータ電位は-42mVであった。
【0042】
〔実施例1〕
上記で得られたND水分散液X1と、エチレングリコールと、水とを混合して濃度調整することで、ナノダイヤモンド粒子を0.01質量%含む潤滑剤組成物(ND粒子0.01質量%含有エチングリコール50%水溶液)を作製した。
【0043】
〔実施例2〕
上記で得られたND水分散液X1と、エチレングリコールと、水とを混合して濃度調整することで、ナノダイヤモンド粒子を0.001質量%含む潤滑剤組成物(ND粒子0.001質量%含有エチングリコール50%水溶液)を作製した。
【0044】
[摩擦試験]
ND粒子を含まないエチングリコール50%水溶液(比較例1)、および上記実施例1、2の潤滑剤組成物ごとに、DLCコートが施されたSUJ-2製ディスク基板(直径30mm,厚さ4mm)とDLCコートが施されたSUJ-2製のボール(直径8mm)との間の潤滑に用いられた場合の摩擦係数を調べるための摩擦試験を行った。この摩擦試験は、ボールオンディスク型の滑り摩擦試験機(型番「UMT-3」、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を使用して行った。具体的には、試験開始時にディスク基板表面に1mLの潤滑剤組成物を滴下し、当該ディスク基板表面にボールを当接させつつディスク基板を回転させた。これにより、ボールは、相対的に、ディスク基板表面を滑動することとなる。この摩擦試験において、試験温度は室温とし、ディスク基板表面に対するボールの荷重は8Nとし、ディスク基板表面におけるボールの滑り速度は0.15m/秒とし、ディスク基板表面におけるボールの滑り距離は100mないし1000mとした。
図4と
図6が総摺動距離であるすべり距離が100m、
図5と
図7がすべり距離1000mの場合のグラフである。比較例1における滑り距離100mのときの摩擦係数(μ)は、0.104であった(
図4又は
図6参照)。実施例1における滑り距離100mのときの摩擦係数(μ)は0.039であり(
図4参照)、実施例1における滑り距離1000mのときの摩擦係数(μ)は0.039であった(
図5参照)。実施例2における滑り距離100mのときの摩擦係数(μ)は0.042であり(
図6参照)、実施例2における滑り距離1000mのときの摩擦係数(μ)は0.008であった(
図7参照)。
【符号の説明】
【0045】
10 潤滑剤組成物
11 不凍液
12 ND粒子
20 潤滑システム
21 部材
S1 生成工程
S2 精製工程
S3 酸素酸化工程
S3’ 水素化工程
S4 解砕工程
【0046】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1]エチレングリコールを含む不凍液と、0.01質量%以下のナノダイヤモンド粒子とを含む、潤滑剤組成物。
[2]前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、[1]に記載の潤滑剤組成物。
[3]前記ナノダイヤモンド粒子の一次粒子の粒径(D50;メディアン径)は、10nm以下である、[1]又は[2]に記載の潤滑剤組成物。
[4]前記ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位は、ネガティブ(例えば、-50~-30mV)である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の潤滑剤組成物。
[5]前記ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位は、ポジティブ(例えば、30~50mV)である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の潤滑剤組成物。
[6]前記不凍液の含有率は、90質量%以上である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の潤滑剤組成物。
[7]前記不凍液におけるエチレングリコールの含有率は、10~90質量%である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の潤滑剤組成物。
[8]ヒートポンプ用液状組成物である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の潤滑剤組成物。
[9][1]~[8]のいずれか1つに記載の潤滑剤組成物が熱媒体として用いられている、潤滑システム。
[10]摺動表面を有する2つの部材の当該摺動表面の間に[1]~[8]のいずれか1つに記載の潤滑剤組成物が存在する、潤滑システム。
[11]前記摺動表面における材質は、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)である、[10]に記載の潤滑システム。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の潤滑剤組成物は、ヒートポンプ装置などの熱媒体として用いることができる。また、本発明の潤滑システムは、当該潤滑剤組成物を熱媒体として用いており、ヒートポンプ装置等の熱媒体を流通させるためのポンプ等の内部における、ピストン機構の軸受部などの摺動部として適用することができる。