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特許7125394RNAでの幹細胞分化による膵臓β細胞の誘導
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】RNAでの幹細胞分化による膵臓β細胞の誘導
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20220817BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20220817BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220817BHJP
   C12N 5/074 20100101ALN20220817BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220817BHJP
   C07K 14/62 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
C12N5/10
A61K35/39
A61L27/38 100
A61L27/38 300
A61P3/10
C12N5/074
C12N15/12
C07K14/62
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019525968
(86)(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 US2017062105
(87)【国際公開番号】W WO2018094114
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】62/423,120
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514287720
【氏名又は名称】アリール バイオテクノロジー アンド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジウー
(72)【発明者】
【氏名】ニー, ユフイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, ユアンユアン
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0207744(US,A1)
【文献】国際公開第2015/178397(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/134313(WO,A1)
【文献】Clin Exp Med,2015年,Vol.15,P.501-509
【文献】Differentiation,2014年,Vol.87,P.200-208
【文献】STEM CELLS TRANSLATIONAL MEDICINE,2016年,Vol.5,P.1525-1537
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/10
A61K 35/39
A61L 27/38
A61P 3/10
C12N 5/074
C12N 15/12
C07K 14/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法であって、該方法は、
(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;
(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、該出発細胞を誘導する工程;
(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、該分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程であって、該mRNAの第1の組み合わせが、FoxA2 mRNAまたはSox17 mRNAを含む、工程
(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、該内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程であって、該mRNAの第2の組み合わせが、PDX1、Hlxb9、Ptf1a、ixl1、HNF1aおよびb、ならびにSox9 mRNAのうちの少なくとも1つを含む、工程
(e)mRNAの第3の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、該膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程であって、該mRNAの第3の組み合わせが、PDX1、NKX6.1、NKX2.2、Pax6、Pax4、Hlxb9、およびNgn3 mRNAのうちの少なくとも1つを含む、工程;および
(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程、
を包含し、各トランスフェクションにおいて、該mRNA用量が10~200ng/ウェルである、方法。
【請求項2】
前記mRNAの第1の組み合わせは、FoxA2 mRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記mRNAの第1の組み合わせは、Sox17 mRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記mRNAの第1の組み合わせは、FoxA2およびSox17 mRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記mRNAの第1の組み合わせは、FoxA2、Sox17、GATA4、およびGATA6 mRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記mRNAの第2の組み合わせは、少なくともPDX1 mRNA含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記mRNAの第3の組み合わせは、少なくともPDX1およびNKX6.1 mRNA含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(e)における前記膵内分泌細胞を、NKX6.1、MAFA、またはMAFA mRNAのうちの少なくとも1つを含むmRNAにより膵臓β細胞へと成熟させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記出発細胞は、被験体の体液または組織から採取される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法によって得られる細胞。
【請求項11】
請求項10に記載の細胞を含む、疾患、障害、または形成異常を処置するための組成物。
【請求項12】
前記細胞は、レシピエント被験体に由来する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記出発細胞は、レシピエントから採取される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
人工グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞を生成するための方法であって、該方法は、
(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;
(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、該出発細胞を誘導する工程;
(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、該分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程であって、該mRNAの第1の組み合わせが、FoxA2 mRNAまたはSox17 mRNAを含む、工程
(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、該内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程であって、該mRNAの第2の組み合わせが、PDX1、Hlxb9、Ptf1a、ixl1、HNF1aおよびb、ならびにSox9 mRNAのうちの少なくとも1つを含む、工程
(e)mRNAの第3の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、該膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程であって、該mRNAの第3の組み合わせが、PDX1、NKX6.1、NKX2.2、Pax6、Pax4、Hlxb9、およびNgn3 mRNAのうちの少なくとも1つを含む、工程;および
(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程、
を包含し、工程(c)、工程(d)、および工程(e)における各トランスフェクションにおいて、該mRNA用量が10~200ng/ウェルである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年11月16日に出願された米国仮特許出願番号第62/423,120号の利益を主張しており、この仮特許出願は、参考として本明細書中に援用される。
【0002】
発明の分野
本開示は、細胞密度、試薬濃度、およびmRNAの特異的組み合わせの特異的組み合わせおよび範囲を利用する動態的に制御された細胞成長プロセスを通じて、多能性幹細胞からの膵臓β細胞の誘導を方向付けることに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ヒト幹細胞の生成および結果としての分化における近年の努力は、細胞運命の可塑性、ヒト疾患のモデル、および臨床上の治療剤に関するパラダイムを変化させてきた。胚性幹細胞(ESC)および体細胞から作製される人工多能性幹細胞(iPSC)はともに、それらの相当する初代細胞から区別不能な特異的細胞タイプの増大しつつあるリストへと分化され得る。結果として、幹細胞は、新たなヒト細胞療法の開発にとって極めて有望である。iPSCは、制限のない細胞利用可能性、その細胞を得る手順の非侵襲性、および免疫抑制薬からの解放を許して、各処置を個々の患者に免疫を合わせる潜在的能力のために、個別化医療の分野において特別な潜在的能力を示す。
【0004】
種々のヒト疾患を処置または防止するための細胞補充療法を開発するに際して、多くの研究費が費やされている。例えば、自己免疫は、1型糖尿病(T1D)を有する患者に、彼らの膵臓β細胞-従って、彼らが血中グルコースレベルに応答し、彼ら自身のインスリンを生成する能力を失わせる。従って、T1D患者は、彼らのインスリン生成β細胞を外部供給源で補充することから大いに利益を受けうる。ヒト膵島(これは、インスリン生成β細胞および他の内分泌細胞を含む)の移植は、いくらかの成功を伴って行われてきたが、ドナー膵臓の信頼性のある供給源を見出すことには、克服すべきかなりのハードルが未だに残っている。いまや、多くの学術上のおよび産業上のグループが、最終的に、幹細胞療法をその導かれたインスリン生成グルコース応答性細胞とともに使用することを期待して、インスリン分泌β細胞を作製することに照準を合わせて、ESCまたはiPSCを、膵臓前駆細胞になるように方向付ける方法を開発してきた。しかし、出願時までにパブリックドメインにおいて公知のこれらの方法の大部分は、完全に機能的なまたは成熟したインスリン分泌膵臓β細胞を生成できなかった。
【0005】
コストの負担および矛盾を軽減するために、当業者はしばしば、成長因子レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストとして、シグナル経路に影響を及ぼし得、それによってある意味成長因子の代用とする低分子を見出すことを頼りにする。低分子は、代表的には、成長因子より遙かに安価である。しかし、低分子の1つの大きな欠点は、意図しない標的(例えば、細胞膜結合レセプター、細胞内オルガネラ、またはゲノム構成要素など)に対してそれらが発揮し得る非特異的効果である。
【0006】
代表的な分化プロトコルの別の鍵となる構成要素は、細胞を培養するための培地であり、培地は、栄養素(脂質、アミノ酸、炭水化物、ビタミンなど)、適切な濃度の塩、pH緩衝化剤、決定的な要素、および一般的タンパク質因子(例えば、インスリンまたは血清アルブミン)から構成され得る。細胞の異なるタイプが、異なる栄養素要求および培地構成要素を有し、細胞タイプ特異的成長因子およびシグナル伝達のための低分子によってさらに複雑である。従って、特別な「分化培地」はしばしば、一度に1つの構成要素を除去または添加することによって、苦心して試験される。
【0007】
幹細胞由来組織細胞の臨床適用において、確立された分化培地の大部分の構成要素は、最新の医薬品等の製造管理および品質管理に関する(cGMP)基準の下で個々の保証を必要とする;例えば、成長因子は、特別な手順によって製造される必要があり、個々の保証を必要とする。同様に、特定の分化培地に添加されるいくつかの低分子は、純度、安定性、および毒性において変動性である特別な化学合成プロセスを通じて生成される。幹細胞培養の分野において、いくつかの以前発表されたプロトコルはまた、血清またはMatrigelのような動物製品に依拠する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
iPSC由来膵臓β細胞を生成することにおける近年の進歩にも拘わらず、インスリン生成β細胞を一貫して生成する効率的方法は、なお開発中である。多くの最新のプロトコルは、成長因子、ホルモン、サイトカイン、シグナルペプチドおよびインスリン生成β細胞を生成する分化カスケードに沿った各工程における他の細胞内シグナル分子(本文中では単純にするためにまとめて成長因子といわれる)の組み合わせの使用を要する。不運なことに、精製ポリペプチドとして供給される場合、成長因子は、概して高価であり、不安定であり、バッチ間で一貫しないので、これらを使用することは困難になっている。さらに、成長因子は非常に特異的であるが組み合わせに関わる様式で機能することから、分化の各ステージは、成長因子の種々のセットによって必然的に決められ、これは、最適化することが困難でありコストがかかる。本発明の目標の1つは、膵臓β細胞の生成をガイドするにあたって、成長因子の必要性を根本的に除去することであった。
【0009】
本開示は、細胞成長動態および関連パラメーターを調節する(それによって、細胞密度、試薬濃度、およびmRNAの組み合わせの特異的組み合わせが、分化/誘導の方向付けを制御するために使用される)ことによって、幹細胞分化を誘導するための方法を提供する。
【0010】
目的を達成するために、および本発明の目的に従って、本明細書で具現化されかつ広く記載されるように、本発明の一局面は、グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法に関し、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含する。
【0011】
一実施形態において、本発明は、グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法に関し、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含し、ここで上記mRNAの第1の組み合わせは、FoxA2 mRNAを含む。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法に関し、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含し、ここで上記mRNAの第1の組み合わせは、Sox17 mRNAを含む。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法に関し、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含し、ここで上記mRNAの第1の組み合わせは、FoxA2およびSox17 mRNAを含む。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法に関し、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含し、ここで上記mRNAの第1の組み合わせは、FoxA2、Sox17、GATA4、およびGATA6 mRNAを含む。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法に関し、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含し、ここで上記mRNAの第2の組み合わせは、PDX1、Hlxb9、Ptf1a、ixl1、HNF1aおよびb、ならびにSox9 mRNAのうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法に関し、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含し、ここで上記mRNAの第3の組み合わせは、PDX1、NKX6.1、NKX2.2、Pax6、Pax4、Hlxb9、およびNgn3 mRNAのうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法に関し、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含し、ここで膵臓β細胞運命拘束をもたらす上記mRNAは、NKX6.1、MAFA、またはMAFA mRNAのうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法に関し、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含し、ここで上記出発細胞は、体液または組織から採取される。
【0019】
本発明の一局面は、グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法によって得られる細胞に関し、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含する。
【0020】
本発明の一局面は、グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法によって得られる細胞を含む、疾患、障害、または形成異常を処置するための組成物に関し、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含する。
【0021】
本発明の一局面は、疾患、障害、または形成異常を処置するための方法であって、上記方法は、以下のうちの少なくとも一方をその必要性がある被験体に投与する工程を包含する:グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法によって得られる細胞であって、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含する方法、細胞、ならびにグルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法によって得られる細胞を含む、疾患、障害、または形成異常を処置するための組成物であって、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含する、組成物に関する。
【0022】
一実施形態において、本発明は、疾患、障害、または形成異常を処置するための方法であって、上記方法は、以下のうちの少なくとも一方をその必要性がある被験体に投与する工程を包含し、ここで上記細胞は、レシピエント被験体に由来する:グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法によって得られる細胞であって、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含する方法、細胞、ならびにグルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法によって得られる細胞を含む、疾患、障害、または形成異常を処置するための組成物であって、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含する、組成物に関する。
【0023】
一実施形態において、本発明は、疾患、障害、または形成異常を処置するための方法であって、上記方法は、以下のうちの少なくとも一方をその必要性がある被験体に投与する工程を包含し、ここで上記出発細胞はレシピエントから採取される:グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法によって得られる細胞であって、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含する方法、細胞、ならびにグルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法によって得られる細胞を含む、疾患、障害、または形成異常を処置するための組成物であって、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含する、組成物に関する。
【0024】
人工グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞を生成するための方法であって、上記方法は、(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、上記分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、上記内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;(e)mRNAの第3の組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含する。
【0025】
よって、本開示はまた、低分子を使用せずに、または低減した量の低分子を使用して、細胞運命決定を達成するための新規な方法を提供する。本発明の主要な利益は、分化を方向付ける遺伝子の適切に供給されたmRNAの使用を通じて分化培地を確立することの単純さである。しかし、mRNAの最適な組み合わせおよび適切な培地はなお、そのプロセスに利益を与え得、本発明の不可欠な部分である。本発明の背後にある別の動機は、一様な保証および品質制御プロセスに適した分子の単一のタイプに主に基づく新たな方法を作り出すことである。
【0026】
本開示において、本開示は、細胞密度および分裂速度を管理して、所望の分化結果を達成するべき方法を包含する新規で実施可能なプロセスを記載する。さらなる開示は、タイミング、添加の順序、RNA用量およびRNAのトランスフェクションの間の種々のRNA間の比、ならびにそれらの継続時間または反復回数の最適化を教示する。本発明はさらに、培養容器の表面および環境条件(例えば、酸素濃度)の選択に関する。本発明はさらに、所望の細胞の選択または集団全体におけるそれらのパーセンテージの増強のためのプロセスおよび方法、ならびに分化した細胞の凍結保存および再培養の方法を包含する。
【0027】
本発明は、細胞成長動態および関連パラメーターを調節する(それによって、細胞密度、試薬濃度、およびmRNAの組み合わせの特異的組み合わせが、分化/誘導の方向付けを制御するために使用される)ことによって、幹細胞および分化を誘導するおよび/または生成するための方法を提供する。一局面において、本発明は、機能的でかつより成熟したインビボで機能するβ細胞を生成するための新たに開発されたプロトコル、ならびにI型糖尿病およびII型糖尿病の種々のタイプを含む適応症のための治療において細胞を使用するための方法を提供する。
【0028】
ある種の実施形態において、例示的な幹細胞誘導プロトコルは、以下の実施例に記載されかつ示されるとおりのレジメンおよび工程によって表され得る。本発明のいくつかの局面において、mRNAと決定的な運命変化点にある細胞とを、適した用量および送達条件において接触させることによって、非常に高い効率が、多量の高価な成長因子を使用することなく低コストで達成された。mRNAは、コードする機能的タンパク質を介して、細胞および分化事象を方向付けるにあたってより特異的であるので、開示される方法は、機能的膵臓β細胞を作製するにあたって任意の公知の方法より驚くほど強く、それによって、ヒトまたは哺乳動物被験体において糖尿病および他の糖尿病関連状態を処置するための道を開く。
【0029】
本開示は、組織特異的分化におけるマスター制御遺伝子または鍵となる転写因子の非常に効率的かつ十分に制御された発現を利用する分化方法を提供する。より具体的には、これらの因子は、提供される手本を通じて示される適切に改変されかつ精製されたmRNA分子の形態において多能性幹細胞へと導入される。
【0030】
一局面において、本開示は、細胞分化を誘導するための方法を提供し、上記方法は、幹細胞を異なるタイプの細胞に向かって方向付けるために最適化された、トランス活性化ドメインを有する従来の転写因子(TF)の間の鍵となる細胞運命因子および融合物を利用する工程;これらの因子を合成メッセンジャーRNA(mRNA)として、導入遺伝子発現の適切なレベルを生じる方法によって好ましい密度において培養した多能性幹細胞へと導入する工程;高効率の特異的分化を生じるように最適化した条件下で細胞を維持し、それによって、幹細胞または前駆細胞の多能性状態または前駆状態は、特異的系統または組織細胞タイプに向かって誘導される工程を包含する。
【0031】
一局面において、本開示は、細胞誘導のための方法を使用して、特異的系統または組織細胞タイプにむかって誘導し得る幹細胞または前駆細胞の多能性状態または前駆状態を生成するための方法を提供し、上記方法は、幹細胞を異なるタイプの細胞に向かって方向付けるために最適化された、トランス活性化ドメインを有する従来の転写因子(TF)の間で鍵となる細胞運命因子および融合物を利用する工程;これらの因子を合成メッセンジャーRNA(mRNA)として、導入遺伝子発現の適切なレベルを生じる方法によって好ましい密度において培養した多能性幹細胞へと導入する工程;高効率の特異的分化を生じるように最適化された条件下で細胞を維持する工程を包含する。
【0032】
一局面において、本開示は、人工グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞を生成するための方法を提供し、上記方法は、a)iPSCを出発細胞として、本明細書で開示されるとおりの検証された条件下で培養して、上記細胞を分化用の出発細胞として調製する工程;b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、上記出発細胞を誘導する工程;c)開示される用量においておよび特定の時間域内での培養細胞トランスフェクションを通じて内胚葉特異的にする遺伝子(endoderm specifying gene)のmRNAを使用することによって、上記分化している細胞を内胚葉に向かって方向付ける工程;d)トランスフェクションを通じて、さらなる遺伝子のmRNA分子または遺伝子のmRNA分子の組み合わせを使用して、内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;e)なお別の遺伝子のmRNAまたは遺伝子のmRNAの組み合わせで上記膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;およびf)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程を包含する。
【0033】
別の局面において、本開示は、幹細胞または前駆細胞の多能性状態または前駆状態を、特異的系統または組織細胞タイプにむかって変化させるための方法を提供し、上記方法は、幹細胞を異なるタイプの細胞に向かって方向付けるために最適化された、トランス活性化ドメインを有する従来の転写因子(TF)の間で鍵となる細胞運命因子および融合物を含む、決定的な細胞運命遺伝子を発現する幹細胞(まとめて、幹細胞といわれる)を生成する工程;これらの因子を合成メッセンジャーRNA(mRNA)として、導入遺伝子発現の適切なレベルを生じる方法によって好ましい密度において培養した多能性幹細胞へと導入する工程;高効率の特異的分化を生じるように最適化された条件下で細胞を維持する工程のうちのすくなくとも1つを包含する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導するための方法であって、該方法は、
(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;
(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、該出発細胞を誘導する工程;
(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、該分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;
(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、該内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;
(e)mRNAの第3の組み合わせで該膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および
(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程、
を包含する方法。
(項目2)
前記mRNAの第1の組み合わせは、FoxA2 mRNAを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記mRNAの第1の組み合わせは、Sox17 mRNAを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記mRNAの第1の組み合わせは、FoxA2およびSox17 mRNAを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記mRNAの第1の組み合わせは、FoxA2、Sox17、GATA4、およびGATA6 mRNAを含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記mRNAの第2の組み合わせは、PDX1、Hlxb9、Ptf1a、ixl1、HNF1aおよびb、ならびにSox9 mRNAのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記mRNAの第3の組み合わせは、PDX1、NKX6.1、NKX2.2、Pax6、Pax4、Hlxb9、およびNgn3 mRNAのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
膵臓β細胞運命拘束をもたらす前記mRNAは、NKX6.1、MAFA、またはMAFA mRNAのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記出発細胞は、被験体の体液または組織から採取される、項目1に記載の方法。
(項目10)
項目1に記載の方法によって得られる細胞。
(項目11)
項目10に記載の細胞を含む、疾患、障害、または形成異常を処置するための組成物。
(項目12)
疾患、障害、または形成異常を処置するための方法であって、該方法は、項目9に記載の細胞および項目11に記載の組成物のうちの少なくとも一方をその必要性のある被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目13)
前記細胞は、レシピエント被験体に由来する、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記出発細胞は、レシピエントから採取される、項目12に記載の方法。
(項目15)
人工グルコース感知インスリン分泌膵臓β細胞を生成するための方法であって、該方法は、
(a)人工多能性幹細胞を出発細胞として、分化のための条件下で培養する工程;
(b)多能性状態から中内胚葉系統に向かって出るように、該出発細胞を誘導する工程;
(c)有効用量においてかつ特定の時間域内でmRNAの第1の組み合わせでの培養細胞トランスフェクションを通じて、該分化している細胞を内胚葉細胞に向かって方向付ける工程;
(d)mRNAの第2の組み合わせでのトランスフェクションを通じて、該内胚葉細胞を膵臓前駆細胞に向かってさらに方向付ける工程;
(e)mRNAの第3の組み合わせで該膵臓前駆細胞を膵内分泌細胞へとさらに成熟させる工程;および
(f)環境グルコースに応答性でありかつ応答してインスリンを分泌し得る膵臓β細胞で富化されたクラスターを集める工程、
を包含する方法。
【0034】
本発明のさらなる目的および利点は、以下の説明において部分的に示され、その説明から部分的に自明であるか、または本発明の実施によって学習され得る。本発明の目的および利点は、添付の請求項において特に指摘される要素および組み合わせによって実現されかつ達成される。
【0035】
前述の一般的説明および以下の詳細な説明はともに、例示および説明に過ぎず、請求項に記載されるような本発明の限定ではないことは、理解されるべきである。
【0036】
添付の図面は、本明細書に組み込まれかつ本明細書の一部を構成し、本発明のいくつかの実施形態を図示し、説明と一緒に、本発明の原理を説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0037】
特許または出願ファイルは、少なくとも1つのカラー仕上げの図面を含む。カラーの図面つきの本特許または特許出願公開のコピーは、請求および必要な手数料の支払いに対して特許庁によって提供される。
【0038】
本発明の前述の局面および利点は、添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明から明らかになり得る。
【0039】
図1A図1Aは、種々の出発密度からの内胚葉細胞を示し、内胚葉誘導の例示的実施形態を図示する。
【0040】
図1B図1Bは、種々の密度(例えば、実施例に記載されるとおりの低密度から高密度まで)でSox17 mRNAを使用することによってiPSCから誘導した内胚葉細胞を示し、内胚葉誘導の例示的実施形態を図示する。
【0041】
図2図2は、種々の内胚葉細胞密度から出発した膵臓前駆細胞を示し、膵臓前駆細胞誘導の例示的実施形態を図示する。図2Aは、誘導の間の例示的な細胞密度の1つの図を示す。図2Bは、誘導の間の例示的な細胞密度の1つの図を示す。図2Cは、誘導の間の例示的な細胞密度の1つの図を示す。図2Dは、誘導の間の例示的な細胞密度の1つの図を示す。
【0042】
図3図3は、クラスターを形成する種々の内胚葉細胞密度から出発した膵内分泌細胞を示し、膵内分泌誘導の例示的実施形態を図示する。図3Aは、誘導の間の例示的な細胞密度/クラスター化の1つの図を示す。図3Bは、誘導の間の例示的な細胞密度/クラスター化の1つの図を示す。図3Cは、誘導の間の例示的な細胞密度/クラスター化の1つの図を示す。
【0043】
図4図4は、培養物中で成熟しかつ浮遊するクラスターを形成した膵内分泌細胞を示し、膵内分泌成熟化の例示的実施形態を図示する。図4Aは、誘導の間の例示的な細胞成熟化の1つの図を示す。図4Bは、誘導の間の例示的な細胞成熟化の1つの図を示す。図4Cは、誘導の間の例示的な細胞成熟化の1つの図を示す。
【0044】
図5A図5Aは、位相差によってβ細胞クラスターの形態を示し、膵臓β細胞膵島様クラスター形成の例示的実施形態を図示する。
【0045】
図5B図5Bは、分化10日後のβ細胞のインスリン染色(緑色)を示し(Dapiは青色で示される)、膵臓β細胞膵島様クラスター形成の例示的実施形態を図示する。
【0046】
図6図6は、特異的細胞マーカーを示す、ヒトiPSCに由来する内胚葉およびβ細胞を示す。図6Aは、緑色CXCR4および青色:DAPI核参照を有する内胚葉細胞を示す。図6Bは、緑色:FOXA1; 青色:DAPI; 赤色Red:ファロイジン細胞膜を有する内胚葉細胞を示す。図6Cは、分化10日目のβ細胞を示す(緑色:インスリン; 青色:DAPI核)。図6Dは、分化8日目のβ細胞を示す(緑色:核NKX6.1 赤色:ファロイジン細胞膜)。
【0047】
図7図7は、化学的に導いた(Meltonプロトコル) 対 mRNAで導いた(Alleleプロトコル)β細胞(1時間間隔を空けて一連のグルコースチャレンジを受けた細胞)のグルコース刺激性インスリン生成を示し、インビトロで作られたβ膵島細胞がグルコース感知インスリン分泌を示すことを図示する。
【0048】
図8図8は、出発集団中の200万個のiPSCを、Optimization 2, OC-100プロセシングアセンブリにおいて設定されたMaxCyte STXを使用してトランスフェクトしたことを示す。写真を、EVOS画像化システムを使用して10×においてトランスフェクションの24時間後に撮影した。図8Aは、例示的なトランスフェクションプロトコルの間のiPSCの代表図を示す。図8Bは、例示的なトランスフェクションプロトコルの間のiPSCの代表図を示す。図8Cは、例示的なトランスフェクションプロトコルの間のiPSCの代表図を示す。図8Dは、例示的なトランスフェクションプロトコルの間のiPSCの代表図を示す。図8Eは、例示的なトランスフェクションプロトコルの間のiPSCの代表図を示す。図8Fは、例示的なトランスフェクションプロトコルの間のiPSCの代表図を示す。
【0049】
図9図9は、mRNA媒介性膵臓β細胞分化の最後に、2D培養から3Dで形成された大きなβ細胞膵島を示す。図9Aは、分化と関連したβ細胞の代表図を示す。図9Bは、分化と関連したβ細胞の代表図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明の詳細な説明
本発明を記載する場合に、本明細書で定義されない全ての用語は、当該分野で認識されるそれらの一般的な意味を有する。以下の説明が本発明の具体的実施形態または特定の使用のものである程度まで、その説明は例証的であるに過ぎず、本願発明の限定ではないことが意図される。以下の説明は、本発明の趣旨および範囲の中に包含される全ての選択肢、改変および均等物を網羅することが意図される。
【0051】
「マスター制御(master control)」遺伝子、すなわち、1つの鍵となる遺伝子(代表的には、転写因子遺伝子、時には、一緒に働く少数の遺伝子)が細胞および組織の運命を、そして最終的には、発生の間の器官全体の形成を決定し得るという概念は、筋肉(MyoD)、眼(Pax6)、および発生生物学の他の分野における研究に基づいて、概して受容されてきた。分化した細胞が幹細胞において発現される転写因子の選択された群の発現によって多能性状態に復帰し得るという山中伸弥の発見は、長いマルチステージの運命変化を通じて細胞を駆動するにあたって、少数の鍵となる転写因子の力を示した。iPSC生成に関する他のグループによる研究は、再プログラミング因子の選択を拡げ、いくつかのバリエーションが再プログラミングの目的のために、転写因子選択において許容され得ることを示した。山中の元の研究では、再プログラミング因子の発現は、これらの因子の長期の発現が細胞形質転換をもたらすために必要とされるので、ゲノムへと組み込まれるウイルスベクターの適用を通じて達成された。ゲノムの付随する改変は、iPSCの治療適用にとって重大なハードルを象徴する一方で、組み込まれたウイルスカセットから再活性化された発現の可能性は、インビトロ研究にとってすら懸念である。mRNAトランスフェクションを、本発明者のグループによって最近開示されたとおりに再プログラミングに適用することは、特に興味をそそるものである。なぜならこのシステムは、単に、どの転写物が細胞培養培地に添加されるかを変化させることによって、再プログラミングカクテルおよびさらに個々の構成要素因子の発現が短い時間枠で調節されることを可能にするからである。特定の因子のトランスフェクションが一旦終了した後、標的細胞内の異所性の発現は、細胞質中のmRNAの急速な崩壊に起因して、迅速に終わる。mRNAが標的細胞の中で消えずに残らないとしても、トランスフェクトされたDNAおよび組み込みウイルスベクターの場合のように、核移行を律速する必要性なしに、細胞質の中で直接翻訳されるその能力は、非常に効率的な発現をしかし短い時間域(これは細胞運命決定にとって決定的である)内で十分に生じるように、mRNAの短い半減期を十二分に補償する。
【0052】
長期間持続するDNAベクター(例えば、エピソームプラスミド)は、細胞運命の質の変化に使用される場合、ランダムなゲノム組み込みのいかなるリスクをも低減する離脱(weaning)を要する。RNAウイルスまたはウイルス誘導体(例えば、センダイウイルスまたはベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルス)は、改変された非感染性RNAレプリコンであるように分離した(stripped)後ですら、宿主ゲノムの中に隠れたウイルスエレメントと組換えを起こしやすいウイルスエレメントをなお有する。細胞が、否定的なデータの形態にある証明の単調で退屈な発見なしに、ウイルスベクターから自由になることを完全に確かにすることは常に困難である。本発明は、mRNAベースの細胞運命決定の利点を方向付けられた分化に適用することに照準を合わせた、多数の進歩的な工程を開示する。まとめると、本開示は、細胞分化を方向付けるために簡素化された方法で、異所性の転写因子発現の単一のまたは多数のラウンドを教示する。
【0053】
にも拘わらず、mRNAベースの幹細胞分化には、技術的な障壁が存在する。全ての幹細胞タイプおよび培養培地が効率的mRNA送達に等しく寄与するわけではなく、これは現在、mRNAベースの分化にとっての障害である。幹細胞、特に、大部分のヒト幹細胞株は、トランスフェクション耐性の一区画を形成することなく培養することがかなり困難であることはまた、一般に公知である。多能性幹細胞が、その細胞の大部分が改変されたmRNAでトランスフェクトされ得る条件下で成長され得ることは、本発明の教示の一部である。別の実施形態において、RNAおよびトランスフェクション試薬の用量(これらはともに、毒性と関連した)は、細胞運命変化プロセスによって発生したアポトーシス促進力および成長抑制力に直面して標的細胞の生存性を支援すると同時に、マスター制御遺伝子効果を発揮し得るレベルでその細胞に提供されるべきである。
【0054】
よって、以前から公知の幹細胞分化手順と関連する課題に鑑みて、本明細書で記載される新規な方法、材料、およびプロトコルは、プロセスの改善された効率および得られた細胞の品質とともにiPSCまたはESCから異なる細胞タイプを生成する。本発明は、標的幹細胞に送達されるTF mRNAの強化を通じて、顕著な改善を達成した。本発明はまた、フィーダー細胞もいかなる他の潜在的に異物で汚染された試薬をも使用することなく、ヒト幹細胞から存在の形跡を残さない(footprint-free)組織細胞の生成を支援する新規なプロトコルを提供する。その新たなプロトコルは、その改変されたmRNAの利益を拡げ、幹細胞派生技術の治療的適用に残っている障害物を一掃することを助ける。
【0055】
多能性状態から最終的に分化した状態までの分化がしばしば多数の工程を踏み、数週間からさらには数ヶ月の時間枠を要することを考慮すれば、成長因子ベースの段階的ストラテジーは、本質的には効率が悪くかつ単調で退屈である。よって、本発明の実施形態は、膵臓β細胞の生成をガイドするにあたって、成長因子の必要性を根本的に除去する。
【0056】
より具体的には、本発明は、幹細胞を異なるタイプの細胞に向かって方向付けるために最適化された、トランス活性化ドメインを有する従来の転写因子(TF)の間で鍵となる細胞運命因子および融合物を含む、決定的な細胞運命遺伝子を発現することによって特異的系統または組織細胞タイプに向かう幹細胞または前駆細胞(まとめて、幹細胞といわれる)の多能性状態または前駆状態を変化させること;これらの因子を合成メッセンジャーRNA(mRNA)として、導入遺伝子発現の適切なレベルを生じる方法によって好ましい密度において培養した多能性幹細胞へと導入すること;特異的分化の以前は達成できなかった効率を生じるように最適化された条件下で細胞を維持することに関する。mRNAの導入を通じて発現される因子としてはまた、成長因子、サイトカイン、ホルモン、シグナルペプチドおよび他の細胞運命に影響を及ぼす分泌型因子または改変酵素が挙げられ得る。類似の手順を使用して、マイクロRNA(miRNA)または他の非タンパク質コードRNAは、分化を方向付けるために、細胞状態移行中の細胞へと導入され得る。当該分野で公知の他の方法と比較すると、本発明は、β細胞への幹細胞分化に関与する時間、コスト、および努力を劇的に低減する。
【0057】
本発明は、幹細胞または前駆細胞の多能性状態または前駆状態を特異的系統または組織細胞タイプに向かって変化させるための方法を記載し、上記方法は、以下のうちの少なくとも1つを含む:鍵となる細胞運命因子を含み、幹細胞を異なるタイプの細胞に向かって方向付けるために最適化された決定的な細胞運命遺伝子を発現させる工程;これらの因子を合成メッセンジャーRNA(mRNA)として、導入遺伝子発現の適切なレベルを生じる方法によって好ましい密度において培養した多能性幹細胞へと導入する工程;高効率の特異的分化を生じるように最適化された条件下で細胞を維持する工程。
【0058】
ある種の実施形態において、完全に安定化され、拡大されたiPSCが提供される。
【0059】
ある種の実施形態において、エピソームまたはRNAウイルス(例えば、センダイ)を一掃する必要がなく、単離後のiPSCの10+継代をたどり得る。
【0060】
ある種の実施形態において、そのプロセスは、フィーダーがない。
【0061】
ある種の実施形態において、そのプロセスは、全ての合成またはヒトの試薬を含み、非ヒトの動物由来の構成要素を含まず、異物がない。
【0062】
ある種の実施形態において、そのプロセスは、存在の形跡を残さない:ゲノムへのDNAのランダムな組み込み(しばしばエピソームで起こるような)がない。
【0063】
ある種の実施形態において、そのプロセスは、患者特異的出発組織および/またはゲノム編集を介して、完全に特別に作られた遺伝的バックグラウンドを生じる。
【0064】
別の実験では、表1に概説されるプロセスの代替として、懸濁物中でスフェアとして成長させたiPSC細胞を、プレートの表面にプレートすることなく、エレクトロポレーションを使用して(例えば、MaxCyte STXエレクトロポレーターを使用して)直接トランスフェクトした。一実施形態において、スフェア中の200万個の出発iPSCを、種々のmRNA(例えば、Sox17またはPax6)と懸濁状態でトランスフェクトしたか、またはモックトランスフェクトした。図8で試験したそのmRNA量は、2500ngであった。次いで、細胞を、Sox17トランスフェクションの場合にはNBM中で、またはPax6トランスフェクションの場合にはKSRを有するMEMalpha中で成長させた。トランスフェクションは、移行により長い期間がかかる場合には、1回、2回、3回、4回、5回またはさらにより多くの回数、反復され得る。結果として、Sox17 mRNAの1回目のトランスフェクションの後、その細胞クラスターは、顕著により小さくなりかつスフェアが密集しなくなり、明確な「縁部(edge)」または外部境界を失った。対照的に、モックトランスフェクトしたスフェアは、十分に明確に維持され、2D写真において明確に肉眼で見える外側「縁部」を示す。トランスフェクトしなかったかまたはモックトランスフェクトしたiPSCの小さい方のスフェアは、透明な外見を有するのに対して、大きい方のスフェアは、細胞層が厚いことからそれほど透明なように見えない。比較のために、Pax6(神経分化TF)mRNAでトランスフェクトしたiPSCスフェアは、外胚葉、すなわち、神経前駆細胞に向かって進み、そのスフェアは、モックトランスフェクトされたものより暗くかつあまり鮮明ではない「縁部」を有したが、サイズはより大きく、Sox17トランスフェクトしたものより明確な境界を有した。
【0065】
同じ原理および類似の方法によって、胚葉特異的中間細胞(例えば、内胚葉細胞)およびより下流の中間細胞(例えば、肝細胞前駆細胞、膵臓前駆細胞など)はまた、スフェアにおいてさらなるTF mRNAでトランスフェクトされ得る。このようにしてトランスフェクトした細胞は、低分子、成長因子、または細胞培養物中の他の要素に由来する毒性により耐性であり、概して、化学的試薬を使用する2Dトランスフェクションより分化がより効率的であるはずである。この観察は、科学刊行物中では未だ見られず、エレクトロポレーション装置の試験の間に偶然にされたものであり、本開示の一部として実施可能な方法として役立った。
【0066】
定義
本発明の理解を容易にするために、多くの用語が以下に定義される。本明細書で定義される用語は、本発明に直接関連する分野の当業者によって一般に理解されるとおりの意味を有する。「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「上記、この、その(the)」のような用語は、単数形の実体のみに言及することを意図するのではなく、具体例が例証のために使用され得る包括的なクラスを含む。本明細書中の用語法は、本発明の具体的実施形態を記載するために使用されるが、それらの使用法は、請求項の中で概説されるものを除いて、本発明の範囲を定めない。
【0067】
用語「β細胞様細胞(beta cell-like cell)」とは、膵臓β細胞と特徴を共有する細胞を意味することが意図される。β細胞様細胞は、形態学的特徴によって、および特異的マーカー特徴によって、さらに定義される。人工多能性幹細胞由来β細胞様細胞は、膵臓β細胞と類似する特徴(マーカーおよびホルモン特徴を含む)を共有するので、人工多能性幹細胞由来β細胞様細胞は、人工多能性幹細胞由来β細胞と交換可能に使用されうる。
【0068】
「胚様体(embryoid body)」とは、多能性細胞に由来する細胞の凝集物をいい、ここで細胞凝集は、細胞が表面に接着して、代表的なコロニー成長を形成することを防止する任意の方法によって開始され得る。本明細書で使用される場合、「胚様体」とは、多能性幹細胞(哺乳動物供給源に由来する胚の胚盤胞ステージに由来する胚性幹細胞が挙げられるが、これらに限定されない)の3次元スフェロイド凝集物をいう。胚様体は、当該分野で一般に公知の任意の技術(体細胞核移入または人工多能性幹細胞を生じる体細胞の再プログラミングが挙げられるが、これらに限定されない)を通じて導かれる胚性幹細胞から形成され得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)」とは、体細胞(例えば、成体体細胞)に由来する多能性幹細胞をいう。人工多能性幹細胞は、任意の成体細胞タイプを形成するそれらの分化能力において、胚性幹細胞に類似するが、胚に由来しない。
【0070】
本明細書で使用される場合、「細胞(cell)」、「細胞株(cell line)」および「細胞培養物(cell culture)」とは、子孫を含む。全ての子孫が故意のまたは偶然の変異に起因してDNA内容において正確に同一でなくてもよいことも理解される。元々形質転換された細胞においてスクリーニングされるように、同じ機能または生物学的特性を有するバリアント子孫が含まれる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「組成物(composition)」とは、活性薬剤および少なくとも1種の他の化合物または分子、不活性(例えば、検出可能な薬剤または標識)または活性なもの(例えば、アジュバント)の組み合わせに言及する。
【0072】
本明細書で使用される場合、「培養する(culturing)」とは、細胞の群として増殖し得かつ老化を回避し得る条件下で細胞を維持することをいう。「培養する」とはまた、その細胞が同様にまたは代わりになるものに分化し得る条件を含み得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「差次的に発現される(differentially expressed)」とは、遺伝子もしくはゲノムの調節領域から転写されるRNA(mRNA、tRNA、miRNA、siRNA、snRNA、およびpiRNAが挙げられるが、これらに限定されない)または遺伝子によってコードされるタンパク質生成物の、正常細胞またはコントロール細胞においてその同じ遺伝子または調節領域によるRNAの生成のレベルと比較した場合の差次的生成に言及する。別の状況では、「差次的に発現される」とはまた、正常細胞またはコントロール細胞と比較した場合に、種々の時間的および/または空間的発現プロフィールを有する細胞または組織におけるヌクレオチド配列またはタンパク質に言及する。
【0074】
本明細書で使用される場合、「過剰発現される(overexpressed)」または「過剰発現(overexpression)」とは、正常細胞またはコントロール細胞におけるRNAまたはタンパク質生成物の発現のレベルと比較した場合に、そのRNAまたは遺伝子によってコードされるタンパク質生成物の増大した発現レベルをいう。
【0075】
本明細書で使用される場合、「過小発現される(underexpressed)」または「過小発現(underexpression)」とは、正常細胞またはコントロール細胞におけるRNAまたはタンパク質生成物の発現のレベルと比較した場合に、そのRNAまたは遺伝子によってコードされるタンパク質生成物の減少した発現レベルをいう。
【0076】
本明細書で使用される場合、「分化する(differentiate)」または「分化(differentiation)」とは、前駆体(precursor)または前駆細胞(すなわち、膵臓前駆細胞)を、特定の細胞タイプ(例えば、膵臓β細胞)へと分化するプロセスに言及する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「有効量(effective amount)」とは、細胞、組織、システム、動物、またはヒトの有益なまたは所望の生物学的、情動的、医療的、または臨床的な応答をもたらすために十分な量である。有効量は、1またはこれより多くの投与、適用、または投与量において投与され得る。その用語はまた、その範囲内で、正常な生理学的機能を増強するために有効な量を含む。
【0078】
本明細書で使用される場合、細胞の状況における「拡大(expansion)」または「拡大される(expanded)」とは、細胞の初期集団(これは、同一であっても同一でなくてもよい)から特徴的な細胞タイプの数の増大に言及する。拡大のために使用される最初の細胞は、拡大から生成される細胞と同じ細胞である必要はない。例えば、その拡大された細胞は、細胞の初期集団のエキソビボまたはインビトロでの成長および分化によって生成され得る。
【0079】
本明細書で使用される場合、「発現(expression)」は、ポリヌクレオチドがRNA転写物へと転写されるプロセスに言及する。mRNAおよび他の翻訳されたRNA種の状況では、「発現」とはまた、その転写されたRNAが、その後ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質へと翻訳されるプロセスに言及する。
【0080】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞」または「iPS細胞」または「iPSC」とは、非多能性細胞から人工的に導かれた(天然に導かれたのではない)複数の細胞タイプへと分化し得る細胞に言及する。
【0081】
本明細書で使用される場合、「組み込みのないiPS細胞(integration free iPS cell)」とは、非多能性細胞のゲノムへと組み込まれる外来の導入遺伝子を含まないiPS細胞をいう。
【0082】
本明細書で使用される場合、「単離された(isolated)」とは、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはそのフラグメントが天然において通常は関連付けられている成分(細胞および他のもの)から分離されていることを意味する。天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはそのフラグメントは、これらをその天然に存在する対応物から区別するために「単離」を要求しない。
【0083】
本明細書で使用される場合、「濃縮された(concentrated)」とは、容積あたりの分子の濃度または数が、その天然に存在する対応物のものより大きいという点で、その天然に存在する対応物から区別可能であるその分子(ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはそのフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない)に言及する。
【0084】
本明細書で使用される場合、「希釈された(diluted)」とは、容積あたりの分子の濃度または数が、その天然に存在する対応物のものより小さいという点で、その天然に存在する対応物から区別可能であるその分子(ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはそのフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない)に言及する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「分離された(separated)」とは、元の供給源または集団から物理的に分けられており、その結果、その分離された化合物、薬剤、粒子、または分子が、その元の供給源または集団の一部とはもはや見做され得ない状態に言及する。
【0086】
本明細書で使用される場合、処置の目的のために、「哺乳動物(mammal)」とは、哺乳動物(ヒトが挙げられる)、飼い慣らされたおよび農場の動物、非ヒト霊長類、ならびに動物園、スポーツ、またはペット動物(例えば、イヌ、ウマ、ネコ、およびウシが挙げられるが、これらに限定されない)として分類される任意の動物をいう。
【0087】
本明細書で使用される場合、「幹細胞(stem cell)」とは、多数の細胞タイプへと分化し得る、任意の自己複製する全能性の、多能性細胞または多分化能細胞または前駆細胞または前駆体細胞に言及する。
【0088】
本明細書で使用される場合、「全能性の(totipotent)」とは、生物における全ての細胞タイプ、加えて胚外細胞または胎盤細胞に分化しかつこれらを生じ得る細胞に言及する。
【0089】
本明細書で使用される場合、「多能性(pluripotent)」とは、胚外細胞または胎盤細胞を除いて、生物を構成する細胞タイプの全て(任意の胎児のまたは成体の細胞タイプを含む)に分化しかつこれらを生じ得る細胞に言及する。
【0090】
本明細書で使用される場合、「多分化能の(multipotent)」とは、1より多くの細胞タイプへと発生し得るが、それらが発生し得る細胞タイプにおいて多能性細胞より制限されている細胞に言及する。
【0091】
本明細書で交換可能に使用される場合、「被験体(subject)」、「個体(individual)、または「患者(patient)」とは、脊椎生物に言及する。
【0092】
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋な細胞集団(substantially pure cell population)」とは、全細胞集団を構成する細胞のうちの約50%、好ましくは約75~80%、より好ましくは約85~90%、および最も好ましくは少なくとも約95%である特定の細胞マーカー特徴および潜在的分化能力を有する細胞の集団に言及する。従って、「実質的に純粋な細胞集団」とは、指定されたアッセイ条件下で特定の細胞マーカー特徴および潜在的分化能力を示さない細胞の約50%未満、好ましくは約20~25%未満、より好ましくは約10~15%未満、および最も好ましくは約5%未満を含む細胞の集団をいう。
【0093】
本明細書で使用される場合、「事前分化(pre-differentiation)」とは、前駆体細胞または前駆細胞(例えば、多能性幹細胞)が、最終的なエフェクター細胞(例えば、β細胞)へとさらに分化する潜在的能力を有する中間細胞タイプ(例えば、膵臓前駆細胞)へと分化するプロセスに言及する。
【0094】
本明細書で使用される場合、「治療剤(therapeutic)」とは、疾患、障害、状態、もしくは副作用の処置、治癒、および/もしくは改善、または疾患、障害、状態、もしくは副作用の進行の速度の減少に言及する。用語はまた、正常な生理学的機能を増強するその範囲内で、緩和処置、および疾患、障害、状態、もしくは副作用の部分的改善を含む。
【0095】
用語「処置する(treating)」および「処置(treatment)」とは、本明細書で使用される場合、概して、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることに言及する。その効果は、疾患、その症状もしくは状態を防止または部分的に防止するという点で予防的であってよいし、そして/または疾患、状態、症状、もしくはその疾患が原因の有害効果の部分的または完全な治癒という点で治療的であってもよい。用語「処置」とは、本明細書で使用される場合、哺乳動物、特にヒトにおける任意の処置を網羅し、以下を包含する:(a)疾患の素因があり得るが、その疾患を有するとは未だ診断されていない被験体において、その疾患が起こるのを防止すること;(b)その疾患を阻害すること、すなわち、その発生を阻止すること;または(c)その疾患を緩和すること、すなわち、その疾患および/またはその症状もしくは状態を軽減または改善すること。用語「処置」は、本明細書で使用される場合、治療的処置および予防的または防止的手段の両方に言及する。処置の必要性のある者は、その障害を既に有する者およびその障害が防止されるべきである者が挙げられる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「防止的(preventative)」とは、疾患または状態が起こる前に、未だ診断されていないとしても、またはその疾患または状態が無症状の段階になおある間に、その疾患または状態を妨げるかまたは停止することに言及する。
【0097】
本明細書で使用される場合、「活性薬剤(active agent)」とは、生物学的に活性な、またはこれが投与される被験体に対して生物学的もしくは生理学的効果を別の方法で誘導する、物質、化合物、もしくは分子に言及する。
【0098】
本明細書で使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア(pharmaceutically acceptable carrier)」とは、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルであって、これらとともに、活性薬剤、本開示の軟骨細胞、または本開示の軟骨細胞を含む組成物がともに投与され、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認されるか、または動物および/もしくはヒトにおける使用のために米国薬局方または他の一般に認識された薬局方に収載されているものをいう。
【0099】
本明細書中で別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0100】
細胞タイプ
例示的な細胞タイプとしては、例えば、内胚葉細胞、膵臓前駆細胞、膵内分泌細胞、およびβ細胞が挙げられ得る。
【0101】
培養容器に適した表面の手本としては、ビトロネクチン、E-カドヘリン、Corning(登録商標)Synthemax(登録商標)IIまたはiPSC用のMatrigelが挙げられるが、これらに限定されず、内胚葉用のMatrigelが挙げられるが、これらに限定されず、膵臓前駆細胞および膵内分泌細胞用のMatrigelまたはコラーゲンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
一局面において、体細胞を脱分化または再プログラミングするための例示的な方法は、Oct4、Sox2、Klf4、cMyc、Nanog、およびLin28から選択される合成mRNA再プログラミング因子、ならびにトランス活性化ドメインのうちのいずれか1またはこれより多くの使用を包含し得、これらによって、その体細胞は、再プログラムされるかまたは脱分化される。IPSC調節のための方法および組成物は、USSN 13/893,166およびUSSN 14/292,317(これらの内容は、参考として援用される)に記載される。
【0103】
ある種の実施形態において、本開示は、懸濁細胞培養物の使用のためのプロトコルを提供し、低細胞付着培養プレートおよび容器が、このような懸濁培養物のために使用され得る。
【0104】
ある種の実施形態において、環境条件(例えば、酸素濃度)は、最適な誘導条件のために調節され得る。
【0105】
ある種の実施形態において、細胞培養集団全体における所望の細胞の選択またはそれらのパーセンテージコンフルエンスもしくは細胞密度の増強のためのプロセスおよび方法が提供される。
【0106】
ある種の実施形態において、凍結保存された、分化されたβ細胞様細胞を生成するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、分化した細胞は、例えば、HSAおよび/またはDMSOを含む培養培地を提供することによって、保存の間または保存後の最適な細胞生存性のために凍結保存される。いくつかの実施形態において、例えば、培養培地中に2.5% HSAおよび10% DMSOを含む培養培地が提供されうる。いくつかの実施形態において、細胞数は、保存の間または保存後の生存性のさらなる改善のために最適化され得る。
【0107】
分化した細胞を再培養する方法がまた提供される。細胞は、大部分の培養容器:例えば、T75フラスコ、T25フラスコ、6ウェルプレート、96ウェルプレートの中で再培養され得る。細胞は、種々の適用のために種々の細胞密度で再培養され得る。
【0108】
ある種の実施形態において、本開示はまた、分化プロセス全体を通じての取り扱いの間の細胞に対する物理的ストレスを管理し、それによって、生存性を改善するための方法を提供する。分化の間の細胞のある種のタイプは、iPSCのように、非常に小さい。これらの小さな細胞は、遠心力に非常に敏感である。iPSCは、過剰な遠心力に非常に敏感である。分化の間の細胞のうちのいくつかのタイプは、iPSCおよび内胚葉ステージの細胞のように、非常に粘着性である。これらの細胞は、剪断力に非常に敏感である。これらの細胞を扱う場合、10mLピペットを使用していかなる小さなチップを使用することも回避し、細胞を反復してピペットで上下させることも回避した。維持管理のために、これらの細胞は、コロニーとして培養され得、次いで、単一の細胞の代わりにクラスターとして解離され得る。分化のために、単一の細胞が必要である場合、細胞剥離の前に解離を終了し、解離溶液を除去し、そして残余の解離溶液で細胞をさらに解離し得る。このプロトコルは、細胞培養物中で一般に使用される。
【0109】
本明細書は、本明細書内で引用される参考文献の教示に鑑みて最も詳細に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態の例証を提供し、そして本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者は、多くの他の実施形態が本発明によって包含されることを容易に認識する。本開示で引用される全ての刊行物および特許は、それらの全体において参考として援用される。参考として援用される資料が本明細書と矛盾するかまたは一致しない程度まで、本明細書は、任意のこれらの資料に取って代わる。本明細書中の任意の参考文献の引用は、このような参考文献が本発明に対する先行技術であることの承認ではない。
【0110】
別段示されなければ、請求項を含め、本明細書で使用される成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合に、用語「約(about)」によって修飾されていると理解されるべきである。よって、別段そうではないと示されなければ、数値パラメーターは近似であり、本発明によって得ようと努められる所望の特性に依存して変動し得る。少なくとも、そして均等論の適用を請求項の範囲に限定しようとする試みとしてではなく、各数値パラメーターは、有効桁数および通常の丸めアプローチに鑑みて解釈されるべきである。
【0111】
語句「1つの、ある(a)」または「1つの、ある(an)」の使用は、請求項および/または明細書の中で用語「含む、包含する(comprising)」とともに使用される場合に、「1(one)」を意味することもあるが、「1またはこれより多く(one or more)」、「少なくとも1(at least one)」、および「1または1より多い(one or more than one)」の意味とも一致する。請求項の中で用語「または(or)」の使用は、選択肢のみをいうことが明示的に示されていなければ、またはその選択肢が相互に排他的であるのでなければ、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢のみおよび「および/または」に言及する定義を支持する。
【0112】
別段示されなければ、一連の要素に先行する用語「少なくとも(at least)」は、その一連の中のあらゆる要素に言及することが理解されるべきである。当業者は、単に慣用的な実験を使用して、本明細書で記載される発明の具体的実施形態に対する多くの均等物を認識するかまたは確認し得る。このような均等物は、以下の請求項によって包含されることが意図される。
【0113】
別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で記載されるものに類似または等価な任意の方法および材料が本発明の実施または試験にあたって使用され得るものの、その好ましい方法および材料が、ここで記載される。
【0114】
本発明の他の実施形態は、本明細書を考慮することから、および本明細書で開示される発明の実施から、当業者に明らかである。本明細書および実施例は、例示として考慮されるに過ぎず、本発明の真の範囲および趣旨は、以下の請求項によって示されることが意図される。
【実施例
【0115】
本発明は、ここで以下の実施例を参照しながら記載される。これらの実施例は、例証目的で提供されるに過ぎず、本発明は、これらの実施例に限定されないが、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかな全てのバリエーションを包含する。
【0116】
実施例1:iPSCから内胚葉細胞を生成する
iPSCを、標準サイズの6ウェル細胞培養プレート(約9.5cm成長面積/ウェル)または標準サイズ12ウェル細胞培養プレート(約3.8cm成長面積/ウェル)へとプレートして、分化を開始した。他のサイズの培養容器は、必要に応じて同様に適用可能であり、ときおり、試薬および時間の使用のより高い効率のために、6ウェルまたは12ウェルのプレートを超えるものがより好ましい場合がある。機能的な分化したβ細胞を生成するための高効率プロトコルに関する例示的な条件は、出発細胞ステージ、培養容器、被覆、解離剤、培地名称および主要な構成要素、例示的な6ウェルプレートに対する播種密度、および酸素レベルを含め、以下のβ細胞表に提供される。
【表1】
【0117】
6ウェルプレートでは、1×10~4×10/ウェルの集団サイズの細胞を、成功裡に使用した。iPSCを、鮮明な十分に明確な縁部を有する十分に代表的なiPSCコロニー(この場合、細胞は密集しており、コロニーは大きくなりすぎていなかった)が存在した場合に、分化の準備ができていると見做した。これらの基準を使用して生成した本発明のiPSCの品質は、本発明のiPSC系統を、他の方法を使用して他者によって生成されたiPSC系統と比較した場合に、分化にとって決定的であることが判明した。
【0118】
このステージでのiPSCを、中内胚葉系統細胞へと分化するように誘導した。分化のための大部分の最新のプロコルが、付着した単層細胞を使用することをたとえ好むとしても、懸濁培養システムがこのステージにおけるスケールアップにとって非常に有用であることが驚くべきことに決定された。より具体的には、誘導のために懸濁物中で成長させたiPSCが、化学的毒性により耐性であり、より後のステージで再度プレートしやすかった。超低付着プレート(Sigma-Aldrich)または他の低付着プレートを使用して、iPSC懸濁細胞成長を促進した。
【0119】
iPS細胞が継代される必要がある場合、iPSCコロニーを、低細胞傷害性を引き起こし、iPSCのより小さなクラスターを生じるプロトコル(これは、懸濁培養が望ましい場合にスフェアを迅速に形成し得る)で解離することは重要であった。iPSCを、DPBS(Fisher Scientific)中0.1mM、時には0.5mM、もしくは1mMのEDTAで、37℃において5分間解離することによって、TripLETM(ThermoFisher)、Accutase(Life Technology)、またはEDTAを使用して解離した。この工程のために、いくつかの実施形態において、1~2分間、およびときには10~20分までを含め、種々の解離時間を成功裡に使用した。いくつかの局面において、その解離時間は、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、もしくは20分であり得る。
【0120】
培地に関しては、MEMa、DMEM/F12、およびDMEM B27を、10~50μM インスリンおよび5% KSRとともに試験したところ、所望されるとおりの結果を分化のこのステージにおいて達成するために適切であった。次いで、iPSCを、多能性ステージを離れ、Wnt、BMP4、およびActivin A経路遺伝子の機能を抑制解除する、GSK3インヒビター(例えば、CHIR99021、CHIR98014、BIOまたはGSKインヒビターIX)およびSB-216763の存在によって、中内胚葉に向かって分化するように誘導した。いくつかの実施形態において、インスリンは、例えば、約10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、もしくは50μMのインスリン、または上で記載される値のうちのいずれかの間の範囲の濃度で存在する。そのGSK3インヒビターを、1日間、2日間、3日間の時間域において行い、そして時間および例えば、5mM、8mM、10mMなどのインヒビターの濃度を選択する場合にFoxA2、CXCR4陽性細胞数を品質分析として使用した。いくつかの実施形態において、そのインヒビターは、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、もしくは10mM、または上で記載される値のうちのいずれかの間の範囲で存在する。
【0121】
1つの実験では、次いで、細胞を、Stemgent Transfection Reagent(Stemgent)とともに約20ng/ウェルの用量においてFoxA2、および/またはSox17 mRNAでトランスフェクトした。このトランスフェクションはまた、GATA4 mRNA、および/またはGATA6 mRNAを含めて行い、3回、4回、5回および6回、時には、10倍高いmRNAの用量において、Stemgent Transfection Reagentまたは他の市販のトランスフェクション試薬を使用して反復した。このステージにおける細胞は、種々のmRNAトランスフェクション時間および出発密度からのiPSCから由来する間葉性細胞より上皮細胞に近い形態を示した(図1)。
【0122】
別の実験では、表1に概説されるプロセスの代替として、懸濁物中のスフェアとして成長させたiPSC細胞を、プレートの表面にプレートすることなく、エレクトロポレーションを使用して(例えば、MaxCyte STXエレクトロポレーターを使用して)直接トランスフェクトした。一実施形態において、スフェア中の200万個の出発iPSCを、種々のmRNA(例えば、Sox17またはPax6)と懸濁状態でトランスフェクトしたか、またはモックトランスフェクトした。図8で試験したそのmRNA量は、2500ngであった。次いで、細胞を、Sox17トランスフェクションの場合にはNBM中で、またはPax6トランスフェクションの場合にはKSRを有するMEMalpha中で成長させた。トランスフェクションは、移行により長い期間がかかる場合には、1回、2回、3回、4回、5回またはさらにより多くの回数、反復され得る。結果として、Sox17 mRNAの1回目のトランスフェクションの後、その細胞クラスターは、顕著により小さくなりかつスフェアが密集しなくなり、明確な「縁部」または外部境界を失った。対照的に、モックトランスフェクトしたスフェアは、十分に明確に維持され、2D写真において明確に肉眼で見える外側「縁部」を示す。そのトランスフェクトしなかったかまたはモックトランスフェクトしたiPSCの小さい方のスフェアは透明な外見を有するのに対して、大きい方のスフェアは、細胞層が厚いことからそれほど透明なように見えない。比較のために、Pax6(神経分化TF)mRNAでトランスフェクトしたiPSCスフェアは、外胚葉、すなわち、神経前駆細胞に向かって進み、そのスフェアは、モックトランスフェクトされたものより暗くかつあまり鮮明ではない「縁部」を有したが、サイズはより大きく、Sox17トランスフェクトしたものより明確な境界を有した。
【0123】
同じ原理および類似の方法によって、胚葉特異的中間細胞(例えば、内胚葉細胞)およびより下流の中間細胞(例えば、肝前駆細胞、膵臓前駆細胞など)はまた、スフェアにおいてさらなるTF mRNAでトランスフェクトされ得る。このようにしてトランスフェクトした細胞は、低分子、成長因子、または細胞培養物中の他の要素に由来する毒性により耐性であり、概して、化学的試薬を使用する2Dトランスフェクションより分化がより効率的であるはずである。この観察は、科学刊行物中では未だ見られず、エレクトロポレーション装置の試験の間に偶然にされたものであり、本開示の一部として実施可能な方法として役立った。
【0124】
実施例2:内胚葉細胞から膵臓前駆細胞を生成する
内胚葉細胞を、市販の細胞培養容器上にプレートする。6ウェルプレートを、図2に示される実験において使用したが、他の標準的な市販のウェルサイズも適切かつ適用可能である。プレートをMatrigel(BD Biosciences)で予め被覆し、次いで、1×10~1×10 細胞を、DMEM/F12または8mM D-グルコースを補充したMCDB131中にプレートした。
【0125】
1つの実験では、細胞を、次いで、PDX1 mRNA.でトランスフェクトした。さらに、その細胞を、より強い効果を求めて、培養培地中のStemgent Transfection Reagent(Stemgent)とともに、50ng/ウェルの用量においてHlxb9、Ptf1a、ixl1、HNF1aおよびb、ならびにSox9 mRNAでトランスフェクトまたは共トランスフェクトし、2回、3回、またはより多くの回数、10ng程度の低い用量および200ng/ウェル程度の高い用量の範囲において、Stemgent Transfection Reagentまたは他の市販のトランスフェクション試薬を使用して反復した。いくつかの実施形態において、Stemgentの初期用量または反復用量は、約10ng/ウェル、20ng/ウェル、30ng/ウェル、40ng/ウェル、50ng/ウェル、60ng/ウェル、70ng/ウェル、80ng/ウェル、90ng/ウェル、100ng/ウェル、110ng/ウェル、120ng/ウェル、130ng/ウェル、140ng/ウェル、150ng/ウェル、160ng/ウェル、170ng/ウェル、180ng/ウェル、190ng/ウェル、もしくは200ng/ウェル、または上で記載される値のうちのいずれの間の範囲であり得る。このステージにおける細胞は、内胚葉細胞より暗く見え、クラスターを形成する傾向にあるようである(図2)。
【0126】
実施例3:膵臓前駆細胞から膵内分泌細胞を生成する
膵臓前駆細胞を、DMEM/F12または8mM D-グルコースを補充したMCDB131中のMatrigel(BD Biosciences)またはコラーゲンI(Sigma)で予め被覆した6ウェルプレートまたは他のプレートの中で培養した。他の類似の付着細胞培養培地はまた、使用に適している。
【0127】
膵臓前駆細胞を、200ng/mL B18Rを補充した培養培地中のStemgent Transfection Reagent(Stemgent)とともに、10~200ng/ウェルの用量においてPDX1、NKX6.1、および/またはNKX2.2、Pax6、Pax4、Hlxb9 Ngn3 mRNAでトランスフェクトした。いくつかの実施形態において、Stemgentの用量は、10ng/ウェル、20ng/ウェル、30ng/ウェル、40ng/ウェル、50ng/ウェル、60ng/ウェル、70ng/ウェル、80ng/ウェル、90ng/ウェル、100ng/ウェル、110ng/ウェル、120ng/ウェル、130ng/ウェル、140ng/ウェル、150ng/ウェル、160ng/ウェル、170ng/ウェル、180ng/ウェル、190ng/ウェル、もしくは200ng/ウェル、または上で記載される値のうちのいずれの間の範囲であり得る。大部分の市販のトランスフェクション試薬はまた、適用可能である。
【0128】
膵臓前駆細胞を必要に応じて、このステージにおいて、一連の成長因子でさらなる分化のために処理した。細胞を、MCDB131+20mM D-グルコース+1.754g/L NaHCO+2% FAF-BSA+ITS-X 1:200+2mM Glutamax+0.25mM ビタミンC+1% ペニシリン/ストレプトマイシン+ヘパリン10μg/ml(Sigma; H3149)を含むS5培地中で培養した。細胞を、0.25μM Sant1+100nM RA+1μM XXI(EMD Millipore)+10μM Alk5i II(Axxora)+1μM T3(EMD Millipore)+20ng/ml Betacellulin(Thermo Fisher Scientific)を含むS5培地で、1日おきに4日間処理した。5日目に、細胞を、25nM RA+1μM XXI+10μM Alk5i II+1μM T3+20ng/ml Betacellulinを含むS5培地で、1日おきに4日間処理した。
【0129】
このステージにおいて、その細胞はさらにクラスター化し、単層から浮遊し始めた(膵内分泌細胞への分化およびその形成の初期徴候)(図3)。
【0130】
実施例4:膵内分泌細胞を成熟化する
膵内分泌細胞を、市販の細胞培養容器上で培養した。6ウェルプレートをこれらの実験において使用したが、全ての他のタイプもまた適用可能である。プレートを、CMRL(Mediatech)中のMatrigel(BD Biosciences)またはコラーゲンI(Sigma)で予め被覆した。クラスターを集めた後に、超低付着プレートまたはフラスコを使用した。
【0131】
これらの細胞を、次いで、200ng/mL B18Rを補充した培養培地中のStemgent Transfection Reagent(Stemgent)とともに、10~200ng/ウェルの用量においてNKX6.1/MAFAまたはMAFA mRNAでトランスフェクトした。反復トランスフェクションを3回行い、選択肢的なさらなるトランスフェクションを、必要であれば行い得る。他の市販のトランスフェクション試薬もまた、適用可能である。
【0132】
膵内分泌細胞をまた、一連の成長因子でさらなる成熟化のために処理した。細胞を、CMRL 1066 Supplemented(Mediatech; 99-603-CV)+10% FBS(HyClone, VWR; 16777)+1% ペニシリン/ストレプトマイシンを含むS6培地中で成長させた。細胞を、10μM Alk5i II+1μM T3を含むS6で1日おきに14日間処理した。
【0133】
このステージにおいて、膵内分泌細胞(例えば、β細胞)のクラスターは、成熟しつつある膵内分泌細胞の単層から自ら揚がった(self-lifted)、数ダースから数千もの細胞のサイズのクラスターを形成する。このステージにおける細胞クラスターを、図4に例として示した。これらの細胞を、細胞ステージ特異的タンパク質マーカー(例えば、NKX6.1およびインスリン)に対する抗体で染色したところ、その結果から、これらの細胞のうちのいくらかが実際に膵臓β細胞であることが確認された(図5)。これらの細胞はまた、β細胞様細胞へのこの人工的に誘導した分化経路に沿って特定の細胞運命マーカーを示した(図6)。さらに、そのβ細胞クラスターは、培養培地に添加したグルコースに応答し、そのβ細胞は、応答してインスリンを分泌した(図7)。
【0134】
実施例5:iPSC由来β細胞は、インビトロでグルコースに応答する
図4に示されるように、単層膵内分泌細胞から3次元構造で形成される細胞のクラスターを集め、15mlチューブ(2×10~1×10 細胞/チューブ)の中に移し、成長培地を遠心分離(300g、2分間)によって除去し、1ml/サンプルのKrebs緩衝液(Melton publication 2014)で2回洗浄した。3mlの低グルコース(2mM) Krebs培地をその細胞に添加し、2時間インキュベートした。その培地を遠心分離によって除去し、その細胞を、1ml Krebs緩衝液/サンプルで2回洗浄した。次いで、1mlのKrebs 低グルコースを各チューブに添加し、空気交換を可能にするようにキャップを緩めたままにして、30分間、37℃においてインキュベーター中でインキュベートした。次いで、上清を、分析のために遠心分離によって集め、次いで、その細胞を1mlのKrebs緩衝液で1回洗浄し、次いで、高グルコース(20mM)を有するKrebs緩衝液中で30分間インキュベートし、次いで、遠心分離して、分析のために上清を集めた。その細胞を2回洗浄し、その後、低グルコース-高グルコースサイクルを再び、合計3回経験させた。その上清を各工程において集め、4~6回の独立した反復から合わせ、市販のELISAキット(ALPCO)およびプレートリーダー(TecanまたはSpectroMax)を使用することによってインスリンレベルに関してアッセイした。そのアッセイを、比較のためにMeltonプロトコル(2014)に本質的に従うことによって作製したβ細胞でも行ったところ、その結果は、本発明の方法を使用して作製したβ細胞が、Melton法と比較して、より低い基底インスリン発現、および培地中のグルコースの増大に対するより高いインスリン応答速度を有することを示した(図7)。これは、本開示の実施形態の予測外のかつ驚くべき有利な特徴を示す。
【0135】
実施例6:iPSC由来β細胞は、動物モデルにおいてグルコースに応答する
本発明に従って生成された例示的な成熟膵臓β細胞の機能をさらに検証するために、そのiPSC由来膵臓β細胞のグルコース応答性インスリン分泌機能を、以下のような糖尿病マウスモデル:1)NODマウス自然発症1型糖尿病モデル、2)STZ誘導性I型糖尿病モデル、3)ob/obもしくはdb/db II型糖尿病モデル;あるいは以下のような非ヒト霊長類モデル:STZ誘導性マカク/ベルベットモンキーもしくはヒヒ I型糖尿病モデル、または自然発症または高脂肪食誘導性マカク/ベルベットモンキーもしくはヒヒ II型糖尿病モデルにおいて試験する。
【0136】
送達経路: 例示的な膵臓β細胞スフェアを、肝臓もしくは腎被膜、または大網(omentum)へと注入する。試験: グルコース刺激なしの血清インスリン(2週目、4週目、8週目、12週目、16週目、24週目)を測定する;測定値を、グルコース刺激なしの血清インスリンに対して得る(2週目、4週目、8週目、12週目、16週目、24週目);絶食動物の血中グルコースの測定を行う(2週目、4週目、8週目、12週目、16週目、24週目);インスリンに関して移植部位のICHを行い、染色をCペプチドおよびグルカゴン染色に関して行う。その結果は、糖尿病症状(例えば、高血中グルコースおよび器官に対する関連する影響)の改善または制御を示す。
【0137】
実施例7:iPSC由来β細胞は、糖尿病ヒト患者を処置するにあたってグルコースに応答する
cGMP手順の下で適するように適合された開示されたプロトコルを使用してヒトiPSC由来膵臓β細胞を使用する臨床試験を、iPSC由来膵臓β細胞療法が現在進行中でなく、ヒトESCに由来する膵臓前駆細胞がこの瞬間に、I型糖尿病を処置することに照準を合わせた臨床試験において使用されている最中であるとしても、他の細胞療法を参照しながら動物研究に従って投与する。自己由来の(好ましいタイプ)または同種異系のiPS細胞に由来するβ細胞は、誘導性I型糖尿病、痩せ型II型糖尿病(lean type II diabetes)、個体自身のβ細胞が離脱またはなくなってしまっている場合の後期ステージ糖尿病、またはβ細胞機能不全に関連する疾患タイプの他のタイプを処置するために、例えば、門脈を通じて送達される。本開示に記載されるとおりの本発明の実施に従って生成される例示的な製造されたβ細胞は、ヒト身体の他の部分(例えば、筋肉、結合組織、膵臓器官または他の器官の一定の部位)に送達される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9A
図9B