(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】[(1S)-1-[(2S,4R,5R)-5-(5-アミノ-2-オキソ-チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-4-ヒドロキシ-テトラヒドロフラン-2-イル]プロピル]アセテートの新しい固形
(51)【国際特許分類】
C07D 513/04 20060101AFI20220817BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220817BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C07D513/04 351
A61P31/12
A61K31/519
(21)【出願番号】P 2019534249
(86)(22)【出願日】2018-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2018050160
(87)【国際公開番号】W WO2018127526
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/070439
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/092183
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/112151
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】グロッセ-ゼンダー,カーチャ
(72)【発明者】
【氏名】シュビッター,ウルス
(72)【発明者】
【氏名】シュトバッサー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ワーン,シュエメイ
(72)【発明者】
【氏名】シオーン,ジーン
【審査官】東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/146598(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/091698(WO,A1)
【文献】特表2010-526129(JP,A)
【文献】松田芳久,粉体工学会誌,1984年,21(11),704-714
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(I):
【化1】
の固形であって、固形はC形であり、特性ピークが6.0°±0.2°、11.3°±0.2°、15.4°±0.2°、16.2°±0.2°、20.0°±0.2°、21.4°±0.2°、24.6°±0.2°、及び26.1°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示す前記固形。
【請求項2】
C形は、特性ピークが6.0°±0.2°、11.3°±0.2°、13.2°±0.2°、15.4°±0.2°、16.2°±0.2°、18.1°±0.2°、19.3°±0.2°、20.0°±0.2°、21.4°±0.2°、23.5°±0.2°、24.6°±0.2°、25.6°±0.2°、26.1°±0.2°、及び32.5°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示す
、請求項
1に記載の固形。
【請求項3】
化合物(I):
【化2】
の固形であって、当該固形は、特性ピークが5.9°±0.2°、12.6°±0.2°、15.9°±0.2°、21.6°±0.2°、24.5°±0.2°、及び24.7°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すG形である、
前記固形。
【請求項4】
G形は、特性ピークが5.9°±0.2°、9.6°±0.2°、12.6°±0.2°、15.9°±0.2°、17.9°±0.2°、19.9°±0.2°、21.6°±0.2°、24.5°±0.2°、24.7°±0.2°、26.3°±0.2°、29.1°±0.2°、32.7°±0.2°、及び33.1°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示
す、請求項
3に記載の固形。
【請求項5】
化合物(I):
【化3】
の固形であって、当該固形は、特性ピークが7.4°±0.2°、11.2°±0.2°、16.0°±0.2°、16.4°±0.2°、17.2°±0.2°、21.0°±0.2°、25.0°±0.2°、及び25.5°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すF形である、
前記固形。
【請求項6】
F形は、特性ピークが7.4°±0.2°、9.8°±0.2°、11.2°±0.2°、15.7°±0.2°、16.0°±0.2°、16.4°±0.2°、17.2°±0.2°、18.1°±0.2°、18.8°±0.2°、19.2°±0.2°、21.0°±0.2°、21.2°±0.2°、22.9°±0.2°、25.0°±0.2°、25.5°±0.2°、25.7°±0.2°、及び29.1°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示
す、請求項
5に記載の固形。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項の固形と医薬的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、媒体、又はそれらの組合せを含んでなる医薬組成物。
【請求項8】
ウイルス性疾患の患者における
治療用医薬品の製造のための、請求項1~
6のいずれか1項の固形又は請求項
7の医薬組成物の使用。
【請求項9】
ウイルス性疾患がHBV感染
またはHBV感染によって引き起こされる疾患である、請求項
8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TLR7アゴニストとして、又はHBV感染に関連したウイルス性疾患又はHBV感染によって引き起こされる疾患の患者における治療又は予防のために使用し得る、化合物(I):
【0002】
【0003】
[(1S)-1-[(2S,4R,5R)-5-(5-アミノ-2-オキソ-チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-4-ヒドロキシ-テトラヒドロフラン-2-イル]プロピル]アセテートの新規固形と、本明細書に開示されるその固形を含んでなる医薬組成物に関する。
【発明の概要】
【0004】
発明の背景
慢性HBV感染の現行療法は、伝統的な抗ウイルス性ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体とより最近のペグ化(Pegylated)IFN-α(PEG-IFN-α)という2つの異なるタイプの薬物に基づく。経口ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体は、HBV複製を抑制することによって作用する。これは、終生の治療クールであって、この間には、薬剤耐性がしばしば起こる。代わりの選択肢として、一部の慢性被感染HBV患者を一定の治療期間内に治療するために、ペグ化IFN-α(PEG-IFN-α)が使用されてきた。これにより、少なくとも数パーセントのHBV患者ではHBeAgの血清変換が達成されたが、その副作用により、それはほとんど忍容し得ない。注目すべきことに、HBsAg血清変換として定義される機能的治癒は、現行のいずれの療法でもごく稀である。故に、HBV患者を機能的治癒のために治療するための新世代の治療選択肢が今すぐ必要とされている。経口TLR7アゴニストでの治療は、より大きな効力をより優れた忍容性と共にもたらす有望な解決法の代表である。ペグ化IFN-α(PEG-IFN-α)は、慢性HBVを治療するために現在使用されていて、抗ウイルス性ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体での潜在的に終生の治療に代わるものである。慢性HBV患者の一部では、PEG-IFN-α療法が一定期間の療法後にウイルスの持続的な免疫学的抑制を誘導する可能性がある。しかしながら、インターフェロン療法で血清変換を達成するHBV患者の比率は低く(HBeAg陽性患者の27%以下)、その治療は、典形的には、ほとんど忍容されない。さらに、機能的治癒(HBsAgの消失及び血清変換として定義される)も、PEG-IFN-αとヌクレオシド/ヌクレオチドの両方の治療できわめて稀である。こういった制約があるので、慢性HBVを治療してその機能的治癒を誘導するための改善された治療選択肢が今にも必要とされているのである。経口の低分子TLR7アゴニストでの治療は、より大きな効力及び忍容性をもたらす可能性がある有望なアプローチなのである。
【0005】
WO2016091698では、有効なTLR7アゴニストとして、[(1S)-1-[(2S,4R,5R)-5-(5-アミノ-2-オキソ-チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-4-ヒドロキシ-テトラヒドロフラン-2-イル]プロピル]アセテート(化合物(I))が開示された。
【0006】
化合物(I)の非晶形は、結晶化する傾向があって、それが形態変化をもたらして、さらなる医薬開発に向かないことが分かった。本特許の目的の1つとして、数種の新規固形を同定して特性決定し、化合物(I)の非晶形と比較して、有意に改善された安定性を示した。一方で、良好な加工適性(processability)又は受容し得る水溶性を備えた化合物(I)の新規結晶形態を開発することも、今回の発明の目的の1つである。いくつかの新規固形は、化合物(I)の開発可能性(developability)を根本的に高めたのである。
【0007】
本開示は、化合物(I)の新規固形とそれらを作製する方法に概して関する。
別の態様において、化合物(I)のC形は、化合物(I)の非晶形及び/又は他の固形と比較して、有意に改善された安定性と同等の全溶解度(apparent solubility)を示す。医薬物質の物理安定性は、薬物の化学的安定性、性能、及び安全性に対するその潜在的な影響の故に、医薬品の安定性評価への体系的アプローチの不可欠な部分である。この安定性が高いほど、貯蔵寿命はより長くなり得る。故に、本発明において使用される加速安定性試験と長期安定性試験は、貯蔵寿命を予測するために使用し得る。さらに、可溶性も、所望される薬理反応のために所望される全身循環中の薬物濃度を達成するための重要な変数の1つである。一般的に言って、非晶質の医薬品は、その結晶性の対照物より著しく溶けやすい。驚くべきことに、化合物(I)のC形は、化合物(I)の非晶形と比較して、同等の全溶解度を示して、生体内(in vivo)吸収を保証する。このC形の予想外の特性改善は、それをさらなる医薬開発により適したものとする。
【0008】
別の態様において、化合物(I)のD形は、酢酸エチル溶媒和物である。
別の態様において、化合物(I)のE形は、優れた不純物精製効果を示す、プロセス関連形態である。
【0009】
多くの薬物のバイオアベイラビリティは、異なる溶解及び吸収速度を示す多形に左右される可能性がある。さらに、プロドラッグの活性形への生体内(in vivo)変換は、多形依存的であることが確かめられた。化合物(I)は、二重プロドラッグ(double prodrug)であって、二重プロドラッグから一重プロドラッグ(single prodrug)及び活性形への変換は、本発明の固形に左右される可能性がある。A形とC形に対してSDPK試験を実施して、そのような効果を実証した。その結果として、化合物(I)のA形は、生体内(in vivo)試験において、一重プロドラッグへのより速い変換速度(より短いTmaxとより高いCmax)と活性形の高いCmaxを明示して、それ故に、化合物(I)のA形は、即時放出経口製剤としてより好ましい。
【0010】
別の態様において、化合物(I)のB形は、経口懸濁製剤としてより好ましい。水性組成物では、化合物(I)の非晶形又は化合物(I)のA形の化合物(I)のB形への変換が観測された。故に、化合物(I)のB形は、水性環境においてより優れた安定性を示す。
【0011】
別の態様において、化合物(I)のG形は、化合物(I)の非晶形と比較して、改善された安定性と同等の全溶解度を示す。一般的な固体製剤開発に関して言えば、合成物質の融点は、80℃未満であってはならない(Stefan Balbach, 2004, Pharmaceutical evaluation of early development candidates “the 100mg-approach”(初期開発候補品の医薬評価「100mg-アプローチ」), International Journal of Pharmaceutics 275 (2004) 1-12)。化合物(I)のC形、F形、及びG形は、始融点がそれぞれ128.9℃、141.2℃、及び122.0℃であって、それ故に、固体製剤開発に関して、本発明の他の形態と比較してずっとより好ましい。
【0012】
発明の要旨
本発明は、[(1S)-1-[(2S,4R,5R)-5-(5-アミノ-2-オキソ-チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-4-ヒドロキシ-テトラヒドロフラン-2-イル]プロピル]アセテートの多形、塩、溶媒和物、共結晶、又はそれらの組合せと、固形の合成及び生産の方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
1つの態様において、本発明で提供するのは、化合物(I)又はその溶媒和物又はそれらの組合せの非晶形又は固形である。
別の態様において、本発明で提供するのは、化合物(I)の非晶形又は固形であって、ここで該固形は、A形、B形、C形、D形、E形、F形、G形、H形、I形、J形、又はそれらの組合せである。
【0015】
別の態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが6.0°±0.2°、11.3°±0.2°、15.4°±0.2°、16.2°±0.2°、20.0°±0.2°、21.4°±0.2°、24.6°±0.2°、及び26.1°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すC形である。
【0016】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが6.0°±0.2°、11.3°±0.2°、13.2°±0.2°、15.4°±0.2°、16.2°±0.2°、18.1°±0.2°、19.3°±0.2°、20.0°±0.2°、21.4°±0.2°、23.5°±0.2°、24.6°±0.2°、25.6°±0.2°、26.1°±0.2°、及び32.5°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すC形である。
【0017】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、
図3に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示すC形である。
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、開始温度が128.9℃±3℃にある吸熱ピークを含んでなる示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有するC形である。
【0018】
別の態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが6.6°±0.2°、17.5°±0.2°、20.5°±0.2°、20.8°±0.2°、26.1°±0.2°、及び28.7°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すD形である。
【0019】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが6.6°±0.2°、10.9°±0.2°、11.2°±0.2°、15.3°±0.2°、17.1°±0.2°、17.5°±0.2°、19.0°±0.2°、20.5°±0.2°、20.8°±0.2°、22.1°±0.2°、24.2°±0.2°、25.4°±0.2°、26.1°±0.2°、28.7°±0.2°、及び33.3°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すD形である。
【0020】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、
図6に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示すD形である。
さらなる態様において、この固形Dは、化合物(I)の酢酸エチル溶媒和物である。
【0021】
さらなる態様において、この固形は、
図7に示されるX線結晶構造があるD形である。
さらなる態様では、D形が、化合物(I)の酢酸エチル溶媒和物である。
別の態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが6.4°±0.2°、7.4°±0.2°、7.6°±0.2°、9.0°±0.2°、13.4°±0.2°、16.2°±0.2°、及び21.7°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すE形である。
【0022】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが6.4°±0.2°o、7.4°±0.2°、7.6°±0.2°、9.0°±0.2°、9.7°±0.2°、13.4°±0.2°、14.4°±0.2°、15.7°±0.2°、16.2°±0.2°、18.2°±0.2°、21.0°±0.2°、21.3°±0.2°、21.7°±0.2°、23.5°±0.2°、及び25.5°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すE形である。
【0023】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、
図2に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示すE形である。
別の態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが3.7°±0.2°、6.5°±0.2°、7.5°±0.2°、12.6°±0.2°、15.2°±0.2°、16.4°±0.2°、22.4°±0.2°、22.7°±0.2°、及び23.4°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すA形である。
【0024】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが3.7°±0.2°、6.5°±0.2°、7.5°±0.2°、12.1°±0.2°、12.6°±0.2°、15.2°±0.2°、16.4°±0.2°、16.9°±0.2°、20.8°±0.2°、21.4°±0.2°、22.1°±0.2°、22.4°±0.2°、22.7°±0.2°、23.4°±0.2°、24.6°±0.2°、26.2°±0.2°、26.2°±0.2°、及び26.8°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すA形である。
【0025】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、
図8に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示すA形である。
別の態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが4.9°±0.2°、6.5°±0.2°、8.3°±0.2°、13.3°±0.2°、13.6°±0.2°、24.5°±0.2°、及び25.9°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すB形である。
【0026】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが4.9°±0.2°、6.5°±0.2°、8.3°±0.2°、10.0°±0.2°、10.3°±0.2°、13.3°±0.2°、13.6°±0.2°、14.7°±0.2°、18.3°±0.2°、19.3°±0.2°、20.6°±0.2°、22.3°±0.2°、23.1°±0.2°、24.5°±0.2°、25.3°±0.2°、及び25.9°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すB形である。
【0027】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、
図9に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示すB形である。
別の態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが5.9°±0.2°、12.6°±0.2°、15.9°±0.2°、21.6°±0.2°、24.5°±0.2°、及び24.7°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すG形である。
【0028】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが5.9°±0.2°、9.6°±0.2°、12.6°±0.2°、15.9°±0.2°、17.9°±0.2°、19.9°±0.2°、21.6°±0.2°、24.5°±0.2°、24.7°±0.2°、26.3°±0.2°、29.1°±0.2°、32.7°±0.2°、及び33.1°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すG形である。
【0029】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、
図10に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示すG形である。
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、開始温度が122.0℃±3℃にある吸熱ピークを含んでなる示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有するG形である。
【0030】
別の態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが7.4°±0.2°、11.2°±0.2°、16.0°±0.2°、16.4°±0.2°、17.2°±0.2°、21.0°±0.2°、25.0°±0.2°、及び25.5°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すF形である。
【0031】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが7.4°±0.2°、9.8°±0.2°、11.2°±0.2°、15.7°±0.2°、16.0°±0.2°、16.4°±0.2°、17.2°±0.2°、18.1°±0.2°、18.8°±0.2°、19.2°±0.2°、21.0°±0.2°、21.2°±0.2°、22.9°±0.2°、25.0°±0.2°、25.5°±0.2°、25.7°±0.2°、及び29.1°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すF形である。
【0032】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、
図16に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示すF形である。
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、始融点が141.2℃±3℃にある吸熱ピークを含んでなる示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有するF形である。
【0033】
別の態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが11.4°±0.2°、15.6°±0.2°、17.3°±0.2°、21.1°±0.2°、及び21.9°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すH形である。
【0034】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが6.7°±0.2°、9.4°±0.2°、11.1°±0.2°、11.4°±0.2°、15.6°±0.2°、17.3°±0.2°、17.6°±0.2°、18.9°±0.2°、19.5°±0.2°、21.1°±0.2°、21.9°±0.2°、23.2°±0.2°、25.8°±0.2°、及び29.0°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すH形である。
【0035】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、
図17に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示すH形である。
さらなる態様では、H形が化合物(I)の炭酸ジメチル溶媒和物である。
【0036】
別の態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが11.1°±0.2°、15.4°±0.2°、17.2°±0.2°、17.6°±0.2°、20.9°±0.2°、及び21.7°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すI形である。
【0037】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが9.4°±0.2°、11.1°±0.2°、13.8°±0.2°、14.2°±0.2°、15.4°±0.2°、17.2°±0.2°、17.6°±0.2°、19.2°±0.2°、20.9°±0.2°、21.7°±0.2°、22.0°±0.2°、23.0°±0.2°、24.0°±0.2°、25.2°±0.2°、及び28.9°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すI形である。
【0038】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、
図18に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示すI形である。
さらなる態様では、I形が化合物(I)のメチルエチルケトン溶媒和物である。
【0039】
別の態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが8.9°±0.2°、11.0°±0.2°、16.4°±0.2°、19.8°±0.2°、20.7°±0.2°、23.7°±0.2°、及び27.1°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すJ形である。
【0040】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、特性ピークが8.9°±0.2°、11.0°±0.2°、13.3°±0.2°、15.0°±0.2°、16.4°±0.2°、16.9°±0.2°、19.8°±0.2°、20.7°±0.2°、22.6°±0.2°、23.7°±0.2°、27.1°±0.2°、及び33.4°±0.2°の2θ(°)に発現するX線粉末回折(XRPD)パターンを示すJ形である。
【0041】
さらなる態様において、化合物(I)の固形は、
図19に示されるX線粉末回折(XRPD)パターンを示すJ形である。
さらなる態様では、J形が化合物(I)のメチルイソブチルケトン溶媒和物である。
【0042】
別の態様において、本発明で提供されるのは、本明細書に開示される固形と医薬的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、媒体、又はそれらの組合せを含んでなる医薬組成物である。
【0043】
別の態様において、本発明で提供されるのは、本明細書に開示される固形又は医薬組成物の、ウイルス性疾患の患者における治療又は予防用医薬品の製造への使用である。
別の態様において、本明細書に開示されるウイルス性疾患は、HBV感染又はHBV感染によって引き起こされる疾患である。
【0044】
別の態様において、本発明で提供されるのは、HBV感染又はHBV感染によって引き起こされる疾患の治療又は予防のための方法であって、該方法は、本明細書に開示される固形又は医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0045】
略語
Cmax 観測される最高濃度
FaSSIF 絶食時人工腸液
FeSSIF 摂食時人工腸液
DSC 示差走査熱量測定
Pos. 位置
Rel.Int. 相対強度
SGF 人工胃液
TGA 熱重量分析
Tmax 最高濃度(Cmax)が観測される時点
XRPD X線粉末回折
【実施例】
【0046】
本発明は、以下の実施例を参考にしてより完全に理解されよう。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
化学純度及び検定試験用のHPLC法
HPLC条件を本明細書の表1に開示する。
【0047】
表1.化学純度及び検定試験用のHPLC条件
【0048】
【0049】
実施例1
化合物(I)の非晶形の製造
1.0gの化合物(I)の7mLのアセトン溶液を、ロータリーエバポレータを使用して速やかに蒸発させた。この固形物を真空下に50℃で一晩乾燥させた。この固形物についてXRPDによって分析した。この結果を
図1に示す。
【0050】
特性決定法:
XRPD:STOESTADI P 粉末回折計(STOE& Cie GmbH)をCu-Kα1放射光で用いる、透過幾何学の周囲条件でX線回折パターンを記録した。回折計には、一次Geビームモノクロメーターとシリコンストリップ検出器を備え付けた。管電圧は40kVで、管電流は40mAであった。走査範囲は、3~42°(2θ)であった。ステップサイズは、各ステップにつき20秒の測定時間で、0.02°(2θ)であった。
【0051】
実施例2
化合物(I)のE形の調製
[(1S)-1-[(2S,4R,5R)-5-(5-アミノ-2-オキソ-チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-4-ヒドロキシ-テトラヒドロフラン-2-イル]プロピル]アセテート・クエン酸(化合物(II))の製造
【0052】
【0053】
[(1S)-1-[(2S,4R,5R)-5-(5-アミノ-2-オキソ-チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-4-ヒドロキシ-テトラヒドロフラン-2-イル]プロピル]アセテート(化合物(I),22.2モル)のアセトニトリル(69.5kg)溶液を45℃~52℃まで加熱して、45℃~52℃で30分間撹拌した。この混合物へクエン酸一水和物(4.67kg,22.2モル)と水(0.440kg,V水/Vアセトニトリル=0.005)を加えた。生じる混合物を45℃~52℃で4時間撹拌してから10時間にわたって0℃へ冷やした。この固形物を遠心分離により分離して、湿潤ケークをアセトニトリル(1.0kg)で洗浄して、真空オーブン(30mmHg,40℃)に32時間乾燥させて、化合物(II)(9.04kg,収率74.5%)を得た。化合物(II)中の化合物(I)とクエン酸の比は、NMRデータに基づくと、1:1であった。
【0054】
化合物(II):1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) ppm: 8.34 (s, 1H), 6.91 (br. s., 2H), 5.82 (s, 1H), 5.46-5.58 (m, 1H), 4.70-4.82 (m, 2H), 4.14-4.23 (m, 1H), 2.60-2.80 (m, 4H), 2.42-2.48 (m, 1H), 1.98 (s, 3H), 1.78-1.88 (m, 1H), 1.55-1.70 (m, 1H), 1.34-1.49 (m, 1H), 0.82 (t, J = 7.40 Hz, 3H). MS obsd. (ESI+) [(M+H)+]: 355.
化合物(I)のE形の調製
50Lのジャケット付きガラス反応機へNa2CO3(0.819kg,7.73モル)と水(19.8kg)を入れた。この混合物を20℃~30℃で30分間撹拌してから、酢酸イソプロピル(18.2kg)と[(1S)-1-[(2S,4R,5R)-5-(5-アミノ-2-オキソ-チアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル)-4-ヒドロキシ-テトラヒドロフラン-2-イル]プロピル]アセテート・クエン酸(化合物(II))(3.0kg,5.49モル)を加えた。この反応混合物を20℃~30℃でさらに3時間撹拌した。相分離の後で、有機相を飽和Na2CO3水溶液(20.2kg)、水(20.0kg)、飽和NaCl水溶液(21.7kg)で洗浄した。このような抽出を2回繰り返した。合わせた有機溶液を真空下に濃縮して揮発物質を除去して、粗製の溶液(13.04kg)を得てから、これへ酢酸イソプロピル(6.05kg)を加えた。次いで、この反応混合物を40℃~50℃まで加熱して1時間撹拌し、n-ヘプタン(8.05kg)のゆっくりした添加を続けた。生じる混合物を40℃~50℃でさらに12時間撹拌した。4時間にわたって0℃~10℃へゆっくり冷やして、0℃~10℃で30分間撹拌した後で、n-ヘプタン(10.1kg)を加えて、生じる混合物を0℃~10℃に2時間維持した。この懸濁液を真空濾過によって分離して、湿潤ケークをn-ヘプタン(6kg)で洗浄して真空オーブン(30mmHg,45℃)において19時間乾燥させた。
【0055】
化合物(I)のE形のXRPDパターンを
図2に示す。XRPDパターン中の主要ピークとそれらの相対強度を表2に示す。溶媒和状態に依拠して、E形は、化合物(I)の溶媒和物(異なる溶媒で等構造)又は多形であり得る。
【0056】
特性決定法:
DSC分析:TA Q2000,30~200℃,加熱速度:10℃/分。
XRPD:Cu-Kα放射光を用いる、PANalytical EMPYREAN X線粉末回折計。管電圧は40kVで、管電流は40mAであった。走査範囲は、4~40°(2θ)であった。ステップサイズは、3.463°/分の走査速度で0.026°であった。
【0057】
表2.化合物(I)のE形のX線粉末回折ピーク
【0058】
【0059】
図11に示されるDSC結果は、化合物(I)のE形が吸熱事象の開始を76.4℃に有することを示す。
実施例3
化合物(I)のE形の代替製法
実施例1において調製した化合物(I)の非晶形のおよそ50mgを秤量して、ガラスバイアルへ移した。0.1mLの酢酸イソプロピルを加えると、澄明な溶液が生成した。この溶液へ0.4mLのn-ヘプタンを加えた。このバイアルをシェーカーへ載せて、25℃にて1200rpmで4時間振とうを続けると、沈殿を生じた。この固形の沈殿物をXRPD解析用に採取した。この固形物のXRPDパターンは、表2中のそれと同じであって、化合物(I)のE形であることが確認された。
【0060】
実施例4
化合物(I)のC形の調製
50Lジャケット付きガラス反応機へ水(35.65kg)、EtOH(3.00kg)、及び実施例2において調製した化合物(I)のE形の3.15kgを入れた。この混合物を40℃~50℃まで加熱して、19時間撹拌した。次いで、4時間にわたって0℃~10℃へ冷やした後で、懸濁液が生成されて、真空濾過により分離した。湿潤ケークを水(5.00kg)で2回洗浄してから真空オーブン(30mmHg,50℃)において24時間乾燥させた。この固形物をXRPD解析、DSC分析、及びTGA分析のために採取した。
【0061】
化合物(I)のC形のXRPDパターンを
図3に示す。XRPDパターン中の主要ピークとそれらの相対強度を表3に示す。C形は、化合物(I)の多形である。
特性決定法:
XRPD:STOESTADI P 粉末回折計をCu-Kα1放射光で用いる、透過幾何学の周囲条件でX線回折パターンを記録した。回折計には、一次Geビームモノクロメーターとシリコンストリップ検出器を備え付けた。管電圧は40kVで、管電流は40mAであった。走査範囲は、3~42°(2θ)であった。ステップサイズは、各ステップにつき20秒の測定時間で、0.02°(2θ)であった。この試料は、調製して、その物質のさらなる加工処理(例、粉砕又は篩分け)をせずに分析した。
【0062】
DSC分析:Mettler Toledo DSCI,25~180℃,加熱速度:10℃/分。
TGA分析:Mettler Toledo TGA/DSCI,25~350℃,加熱速度:5℃/分。
表3.化合物(I)のC形のX線粉末回折ピーク
【0063】
【0064】
図4と
図5に示されるDSC結果とTGA結果は、化合物(I)のC形が始融点を128.9℃に有することを示す。
実施例5
化合物(I)のC形の代替製法
実施例1において調製した非晶形のおよそ20mgをガラスバイアル中へ秤量して、およそ0.05mLのメタノールを加えた。得られた溶液を25℃で一晩激しく撹拌した。生じる懸濁液を遠心分離し、上清をピペットで除去して、濾紙の小片を数分間挿入することによって、固形の残渣をさらに乾燥させた。この固形物をXRPD解析用に採取した。この固形物のXRPDパターンは、表3中のそれと同じであって、化合物(I)のC形であることが確認された。
【0065】
実施例6
化合物(I)のC形の代替製法
実施例1において調製した非晶形のおよそ100mgをガラスバイアル中へ秤量して、およそ0.05mLのメタノールを加えた。生じる懸濁液を25℃で2時間激しく撹拌してから、固形物を濾過によって採取して、XRPDによって解析した。この固形物のXRPDパターンは、表3中のそれと同じであって、化合物(I)のC形であることが確認された。
【0066】
実施例7
化合物(I)のC形の代替製法
実施例1において調製した化合物(I)の非晶形のおよそ40mgを秤量してガラスバイアルへ移し、これへおよそ0.02mLのエタノールを加えると、スラリーが生成した。このバイアルをシェーカーへ載せて、25℃にて1200rpmで2時間振とうを続けた。この懸濁液を濾過して、固形物をXRPD解析用に採取した。この固形物のXRPDパターンは、表3中のそれと同じであって、化合物(I)のC形であることが確認された。
【0067】
実施例8
化合物(I)のC形の代替製法
実施例1において調製した化合物(I)の非晶形のおよそ40mgを秤量してガラスバイアルへ移し、これへおよそ0.02mLのアセトンを加えると、スラリーが生成した。このバイアルをシェーカーへ載せて、25℃にて1200rpmで4時間振とうを続けた。この懸濁液を濾過して、固形物をXRPD解析用に採取した。この固形物のXRPDパターンは、表3中のそれと同じであって、化合物(I)のC形であることが確認された。
【0068】
実施例9
化合物(I)のD形の調製
実施例4において調製した化合物(I)のC形のおよそ2.0gを秤量してガラスバイアルへ移し、これへ20mLの酢酸エチルを加えると、懸濁液を生じた。この懸濁液を濾過し、濾液をゆっくり蒸発させて、固形物をXRPD解析用に採取した。
【0069】
化合物(I)のD形のXRPDパターンを
図6に示す。XRPDパターン中の主要ピークとそれらの相対強度を表4に示す。D形は、化合物(I)の酢酸エチル溶媒和物である。
【0070】
特性決定法:
XRPD:Cu-Kα放射光を用いる、PANalytical EMPYREAN X線粉末回折計。管電圧は40kVで、管電流は40mAであった。走査範囲は、4~40°(2θ)であった。ステップサイズは、3.463°/分の走査速度で0.026°であった。
【0071】
表4.化合物(I)のD形のX線粉末回折ピーク
【0072】
【0073】
図7は、酢酸エチル溶媒和物:D形のX線構造を示す。この単結晶X線強度データは、Gemini R Ultra 回折計(Rigaku)をCu-K-α-放射光(1.54184Å(オングストローム))で使用して130(2)Kで収集して、Crysalis パッケージで処理した。ShelXTL ソフトウェア(Bruker AXS,カールスルーエ)を使用して、構造の解読と精密化を実施した。この結晶データと構造精密化を表5に示す。
【0074】
表5:D形の単結晶構造データ
【0075】
【0076】
実施例10
化合物(I)のA形の調製
化合物(I)の非晶形の1000mgを秤量してガラスバイアルへ移してから0.3mLのアセトニトリルを加えると、スラリーが生成した。このバイアルをシェーカーへ載せて、25℃にて1200rpmで4時間振とうを続けた。この懸濁液を濾過して、固形物をXRPD解析用に採取した。化合物(I)のA形のXRPDパターンを
図8に示す。XRPDパターン中の主要ピークとそれらの相対強度を表6に示す。溶媒和状態に依拠して、A形は、化合物(I)の溶媒和物、水和物、又は多形であり得る。
【0077】
特性決定法:
DSC分析:TA Q2000,30~200℃,加熱速度:10℃/分。
XRPD:STOESTADI P 粉末回折計をCu-Kα1放射光で用いる、透過幾何学の周囲条件でX線回折パターンを記録した。回折計には、一次Geビームモノクロメーターとシリコンストリップ検出器を備え付けた。管電圧は40kVで、管電流は40mAであった。走査範囲は、3~42°(2θ)であった。ステップサイズは、各ステップにつき20秒の測定時間で、0.02°(2θ)であった。
【0078】
表6.化合物(I)のA形のX線粉末回折ピーク
【0079】
【0080】
図12に示されるDSC結果は、化合物(I)のA形が吸熱事象の開始を75.9℃に有することを示す。
実施例11
化合物(I)のB形の調製
実施例10において調製したA形を水中に懸濁させて、室温で2時間スラリーを形成してB形を得てから、この固形物を濾過によって採取して真空下に乾燥させた。B形について、
図9に示されるXRPDによって特性決定した。XRPDパターン中の主要ピークとそれらの相対強度を表7に示す。溶媒和状態に依拠して、B形は、化合物(I)の溶媒和物、水和物、又は多形であり得る。
【0081】
特性決定法:
DSC分析:TA Q2000,30~200℃,加熱速度:10℃/分。
XRPD:結晶形解析のために、ゴニオメーター上の試料ホルダーに試料を載せて、周囲条件で測定した。40kVと40mAでの Bruker D8 Advance X線粉末回折計で、0.05℃のステップサイズと1秒/ステップの走査速度を用いて4~40°の2θでデータを収集した。1.54Å(オングストローム)波長のCu-放射光をデータ収集に使用した。
【0082】
表7.化合物(I)のB形のX線粉末回折ピーク
【0083】
【0084】
図13に示されるDSC結果は、化合物(I)のB形が吸熱事象の開始を77.3℃に有することを示す。
実施例12
化合物(I)のG形の調製
15gの化合物(I)を周囲温度で44.4gのアセトンに懸濁させた。この懸濁液を、完全な溶解が達成されるまで、60℃へ加熱した。この濃黄色の溶液をおよそ1時間以内に60℃から15℃へ冷やした。15℃でこの溶液を完全に(polish)濾過して、撹拌しながら112.8gのn-ヘプタン(15℃へ予冷した)へ加えた。生じる懸濁液を15℃で3日間撹拌した後で、固形物を濾過によって単離した。G形について、
図10に示されるXRPDによって特性決定した。XRPDパターン中の主要ピークとそれらの相対強度を表8に示す。表9には、単結晶データを見出すことができる。G形は、化合物(I)の多形である。
【0085】
特性決定法:
DSC分析:Mettler Toledo DSC2,25~200℃,加熱速度:10℃/分。
XRPD:Stoe Stadi P 回折計(Cu-Kα1放射光(1.5406Å)、40kVと40mA、一次ビームモノクロメーター、シリコンストリップ検出器、角度範囲:0.02°(2θ)のステップサイズで3°~42°(2θ)、およそ30分の全測定時間)での透過幾何学の周囲条件でX線回折パターンを記録した。この試料は、調製して、その物質のさらなる加工処理(例、粉砕又は篩分け)をせずに分析した。
【0086】
表8.化合物(I)のG形のX線粉末回折ピーク
【0087】
【0088】
図14に示されるDSC結果は、化合物(I)のG形が始融点を122.0℃付近に有することを示す。
単結晶回折:単結晶をループ中に載せて、窒素流において100Kへ冷やした。Pilatus 検出器をシンクロトロン放射光(0.70Å)で使用するスイス(Swiss)光源ビームライン X10SA でデータを収集して、プログラム XDSでデータを処理した。結晶構造は、プログラム ShelXTL(Bruker AXS,カールスルーエ)で解読して精密化した。
【0089】
表9:G形の単結晶構造データ
【0090】
【0091】
実施例13
化合物(I)のF形の調製
化合物(I)のC形の101.1mgを1mLの水に懸濁させた。この懸濁液を60℃で22日間かき混ぜて、固形物を濾過によってF形として単離した。この生成物を真空オーブンにおいて50℃/5ミリバールで4日間乾燥させた。
【0092】
化合物(I)のF形のXRPDパターンを
図16に示す。XRPDパターン中の主要ピークとそれらの相対強度を表10に示す。F形は、化合物(I)の多形である。
特性決定法:
DSC分析:Mettler Toledo DSC2,25~200℃,加熱速度:10℃/分。
【0093】
XRPD:Stoe Stadi P 回折計(Cu-Kα1放射光(1.5406Å)、40kVと40mA、一次ビームモノクロメーター、シリコンストリップ検出器、角度範囲:0.02°(2θ)のステップサイズで3°~42°(2θ)、およそ30分の全測定時間)での透過幾何学の周囲条件でX線回折パターンを記録した。この試料は、調製して、その物質のさらなる加工処理(例、粉砕又は篩分け)をせずに分析した。
【0094】
表10.化合物(I)のF形のX線粉末回折ピーク
【0095】
【0096】
図15に示されるDSC結果は、化合物(I)のF形が始融点を141.2℃付近に有することを示す。
実施例14
化合物(I)のH形の調製
化合物(I)のC形の153.5mgを2.85mLの炭酸ジメチルに周囲温度で溶かした。この溶液を濾過(0.45μm PTFEフィルター)した。6.3mLのn-ヘプタンを加えると、沈殿が観察された。この懸濁液を22℃で1日間撹拌した。固形物を濾過によってH形として単離して、真空オーブンにおいて50℃/5ミリバールで2日間乾燥させた。
【0097】
化合物(I)のH形のXRPDパターンを
図17に示す。XRPDパターン中の主要ピークとそれらの相対強度を表11に示す。H形は、化合物(I)の炭酸ジメチル溶媒和物である。
【0098】
特性決定法:
XRPD:Stoe Stadi P 回折計(Cu-Kα1放射光(1.5406Å)、40kVと40mA、一次ビームモノクロメーター、シリコンストリップ検出器、角度範囲:0.02°(2θ)のステップサイズで3°~42°(2θ)、およそ30分の全測定時間)での透過幾何学の周囲条件でX線回折パターンを記録した。この試料は、調製して、その物質のさらなる加工処理(例、粉砕又は篩分け)をせずに分析した。
【0099】
表11.化合物(I)のH形のX線粉末回折ピーク
【0100】
【0101】
単結晶回折:単結晶をループ中に載せて、窒素流において100Kへ冷やした。Pilatus 検出器をシンクロトロン放射光(0.70Å)で使用するスイス(Swiss)光源ビームライン X10SA でデータを収集して、プログラム XDSでデータを処理した。結晶構造は、プログラム ShelXTL(Bruker AXS,カールスルーエ)で解読して精密化した。
【0102】
表12:H形の単結晶構造データ
【0103】
【0104】
実施例15
化合物(I)のI形の調製
およそ306mgの化合物(I)(C形)を1.5mLのメチルエチルケトンに懸濁させた。この懸濁液を22℃で55日間かき混ぜた。固形物を濾過によってI形として単離して、400ミリバール、周囲温度で一晩乾燥させた。
【0105】
化合物(I)のI形のXRPDパターンを
図18に示す。XRPDパターン中の主要ピークとそれらの相対強度を表13に示す。I形は、化合物(I)のメチルエチルケトン溶媒和物である。
【0106】
特性決定法:
XRPD:Stoe Stadi P 回折計(Cu-Kα1放射光(1.5406Å)、40kVと40mA、一次ビームモノクロメーター、シリコンストリップ検出器、角度範囲:0.02°(2θ)のステップサイズで3°~42°(2θ)、およそ30分の全測定時間)での透過幾何学の周囲条件でX線回折パターンを記録した。この試料は、調製して、その物質のさらなる加工処理(例、粉砕又は篩分け)をせずに分析した。
【0107】
表13.化合物(I)のI形のX線粉末回折ピーク
【0108】
【0109】
実施例16
化合物(I)のJ形の調製
化合物(I)のB形の49.6mgを2mLのメチルイソブチルケトンに22℃で溶かした。このバイアルを開けて5日間保存して、周囲条件での溶媒の蒸発を可能にして、生じる固形物をJ形として入手した。
【0110】
化合物(I)のJ形のXRPDパターンを
図19に示す。XRPDパターン中の主要ピークとそれらの相対強度を表14に示す。J形は、化合物(I)のメチルイソブチルケトン溶媒和物である。
【0111】
特性決定法:
XRPD:Stoe Stadi P 回折計(Cu-Kα1放射光(1.5406Å)、40kVと40mA、一次ビームモノクロメーター、シリコンストリップ検出器、角度範囲:0.02°(2θ)のステップサイズで3°~42°(2θ)、およそ30分の全測定時間)での透過幾何学の周囲条件でX線回折パターンを記録した。この試料は、調製して、その物質のさらなる加工処理(例、粉砕又は篩分け)をせずに分析した。
【0112】
表14.化合物(I)のJ形のX線粉末回折ピーク
【0113】
【0114】
実施例17
固形の安定性
異なる固形の化合物(I)の40mgを、温度と湿度がそれぞれ40℃と75% RHに制御された安定性チャンバに保存した。1ヶ月後、これらの試料についてXRPDによって解析してそれらの固形を確認して、それらの初めの固形と比較した。表15に示す結果によれば、A形、B形、C形、及びG形は、実施例1において調製した元の非晶形より優れた安定性を示した。
【0115】
表15.化合物(I)の異なる固形の物理安定性データ
【0116】
【0117】
実施例18
全溶解度試験
pH緩衝液、SGF、FaSSIF、及びFeSSIFが含まれる、異なる生体関連媒体に5mgの化合物(I)を懸濁させることによって、全溶解度を決定した。この懸濁液を25℃で24時間平衡化した。次いで、この懸濁液を0.22μm PVDFフィルターに通して2mL HPLCバイアルの中へ濾過した。濾液の定量は、標準溶液を基準とするHPLCによって実施した。本発明において選択した新規固形の溶解度結果を表16に示す。驚くべきことに、本発明の新規固形は、非晶形に匹敵する全溶解度を示した。
【0118】
表16.異なる固形の全溶解度
【0119】
【0120】
実施例19
単一用量PK(SDPK)試験
5匹の雄性ウィスター・ハン(Wistar Han)ラットに単一経口用量の化合物(I)(A形又はC形のいずれか一方)の100又は200mg/kgを投与した。薬物は、水中2% klucel、0.1%ポリソルベート80、及び0.1%パラベンの懸濁液として投与した。試料を24時間までの様々な時点で採取して、血漿について化合物(I)(二重プロドラッグ)、化合物(Ia)(一重プロドラッグ)と化合物(Ib)(一重プロドラッグ)、及び化合物(III)(活性形)を分析した。
【0121】
【0122】
表17.ウィスター・ハン(Wistar Han)ラット(n=5)における化合物(I)のA形及びC形のSDPK試験
【0123】
【0124】
200mg/kgで投薬した化合物(I)のC形と比較して、100mg/kgで投薬した化合物(I)のA形は、生体内(in vivo)試験で一重プロドラッグ(Ia)についてのより短いTmaxとより高いCmax(「0.5時間」対「0.67時間」;「24767ng/mL」対「23233ng/mL」)と、活性形についてのより高いCmax(「7103ng/mL」対「5900ng/mL」)を伴う、より速やかな変換速度を示す。驚くべきことに、A形は、C形の半量でも、それと同等か又はより優れたSDPKプロフィールを示し、それ故に、その効力がCmaxによって推進される化合物(I)のA形は、即時放出経口製剤として製剤化されるのにより適している。