(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】制御装置並びに方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20220817BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20220817BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B60W30/06
B60R99/00 340
B60R99/00 320
B60W40/02
(21)【出願番号】P 2019540450
(86)(22)【出願日】2018-02-26
(86)【国際出願番号】 DE2018200017
(87)【国際公開番号】W WO2018184637
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】102017205782.3
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】ドイシュ・ヘンドリク
(72)【発明者】
【氏名】エドリング・フランク
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347460(JP,A)
【文献】特開2010-018074(JP,A)
【文献】特開2009-083806(JP,A)
【文献】特開2016-060223(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03078575(EP,A1)
【文献】特開2013-122743(JP,A)
【文献】特開2012-153324(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0204866(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
B62D 6/00 - 6/10
B60R 21/00 - 21/017
B60R 25/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)の周辺部の空いている及び空いていない領域を捕捉し、対応する周辺情報(106)を出力する様に構成された周辺把握システム(105)と、
スタートポジション(103, 303, 403, 503, 603, 703, 803)を起点とする該周辺情報(106)を基に、車両用の衝突なく実施し得る第一軌道(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)を算出し、続いて、該エンドポジション(104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804)を起点として、車両用の衝突なく実施し得る第二軌道(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)を算出する様に構成された軌道算出手段(107)とを備えた、
スタートポジション(103, 303, 403, 503, 603, 703, 803)を起点としエンドポジション(104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804)までの走行軌道を算出するための車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)用の制御装置であって、
該軌道算出手段(107)が、更に、
一巡目のペア割り出しとして、それらの軌道エンドポジション(713, 813, 814)が、互いに、予め定められている許容範囲内にある衝突なく実施し得る第一軌道と衝突なく実施し得る第二軌道の少なくとも一つのペアを割り出し、少なくとも一つのペアを該車両軌道(102)として出力する様に構成されていること
、該軌道算出手段(107)が、一巡目のペア割り出しにおいて、どの第一軌道と第二軌道とのペアにおいても、それぞれの軌道エンドポジション(713, 813, 814)が、互いに、予め定められている許容範囲にない場合、互いの間隔が最も小さい第一軌道と第二軌道の軌道エンドポジション(713, 813, 814)を割り出し、割り出された第二軌道の軌道エンドポジション(713, 813, 814)を中間エンドポジションとして選択する様に構成されており、且つ、
該軌道算出手段(107)が、
該中間エンドポジションを起点として、該車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)用の衝突なく実施し得る、二巡目のペア割り出しでの第二軌道の候補を算出し、衝突なく実施し得る第一軌道と中間エンドポジションを基に算出された衝突なく実施し得る、二巡目のペア割り出しでの第二軌道との、それらの軌道エンドポジション(713, 813, 814)が、互いに予め定められている許容範囲内にある少なくとも一つのペアを割り出す様に構成されている
ことを特徴とする制御装置(101)。
【請求項2】
該軌道算出手段(107)が、第一軌道と第二軌道を、可能な最も短い軌道として算出することを特徴とする請求項1に記載の制御装置(101)。
【請求項3】
該許容範囲が、該車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)が、その走行力学的パラメータにおいて、該第一軌道の軌道エンドポジション(713, 813, 814)から第二軌道の軌道エンドポジション(713, 813, 814)へ移行し、それを追従できる様に、予め与えられていることを特徴とする先行請求項
1又は2に記載の制御装置(101)。
【請求項4】
該軌道算出手段(107)は、第一軌道と第二軌道を、円弧と直線の組合せとして、及び/或いは、円弧と円弧の組合せとして、及び/或いは、円弧と円弧及び直線の組合せとして算出する様に構成されていることを特徴とする先行請求項
1から3のうち何れか一項に記載の制御装置(101)。
【請求項5】
該軌道算出手段(107)が、予め与えられている角解像度において、各々の開始ポジションを起点に、軌道を算出する様に構成されていることを特徴とする先行請求項
1から4のうち何れか一項に記載の制御装置(101)。
【請求項6】
該軌道算出手段(107)が、該軌道エンドポジション(713, 813, 814)を、エンドポジション(104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804)の座標系に転換し、該エンドポジション(104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804)の座標系において、該軌道エンドポジション(713, 813, 814)が、互いに、予め定められている許容範囲内にあるか否かを確認することができる様に構成されていることを特徴とする先行請求項
1から5のうち何れか一項に記載の制御装置(101)。
【請求項7】
該軌道算出手段(107)が、回帰的に、第一軌道と第二軌道の、互いの間隔が最も小さい軌道エンドポジション(713, 813, 814)を割り出し、それぞれの第二軌道の中間エンドポジションを起点として、該車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)用の衝突なく実施し得る
、二巡目のペア割り出しでの第二軌道の候補を、少なくとも、衝突なく実施し得る第一軌道と該中間エンドポジションを基にして算出された衝突なく実施し得る
、二巡目のペア割り出しでの第二軌道の、それらの軌道エンドポジション(713, 813, 814)が、互いに予め定められている許容範囲内にあるペアを割り出すことができるまで計算する様に構成されていることを特徴とする請求項
1~6のいずれか1項に記載の制御装置(101)。
【請求項8】
以下のステップを包含することを特徴とする、車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)用のスタートポジション(103, 303, 403, 503, 603, 703, 803)を起点としてエンドポジション(104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804)に至る車両軌道(102)を算出するための方法:
車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)の周辺部の空いている及び空いていない領域を捕捉し、対応する周辺情報(106)を出力するステップ(S1)、
該車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)用のスタートポジション(103, 403, 503, 603, 703, 803)を起点として該周辺情報(106)に基づいて衝突なく実施し得る第一軌道を算出するステップ(S2)、
該車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)用の該エンドポジション(104, 404, 504, 604, 704, 804)を起点として該周辺情報(106)に基づいて衝突なく実施し得る第二軌道を算出するステップ(S3)、
一巡目のペア割り出しとして、それらの軌道エンドポジション(713, 813, 814)が、互いに、予め定められている許容範囲内にある衝突なく実施し得る第一軌道と衝突なく実施し得る第二軌道の少なくとも一つのペアを割り出すステップ(S4)、並びに、
少なくとも一つのペアを車両軌道(102)として出力するステップ(S5)
を包含
し、
一巡目のペア割り出しにおいて、どの第一軌道と第二軌道とのペアにおいても、それぞれの軌道エンドポジション(713, 813, 814)が、互いに、予め定められている許容範囲にない場合、互いの間隔が最も小さい第一軌道と第二軌道の軌道エンドポジション(713, 813, 814)を割り出し、割り出された第二軌道の軌道エンドポジション(713, 813, 814)を中間エンドポジションとして選択し、且つ、
該中間エンドポジションを起点として、該車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)用の衝突なく実施し得る、二巡目のペア割り出しでの第二軌道の候補を算出し、衝突なく実施し得る第一軌道と中間エンドポジションを基に算出された衝突なく実施し得る、二巡目のペア割り出しでの第二軌道との、それらの軌道エンドポジション(713, 813, 814)が、互いに予め定められている許容範囲内にある少なくとも一つのペアを割り出す、
スタートポジションを起点としエンドポジションまでの走行軌道を算出するための方法。
【請求項9】
第一軌道と第二軌道は、可能な最短の軌道として算出されることを特徴とする請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
該許容範囲が、該車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)が、その走行力学的パラメータにおいて、該第一軌道の軌道エンドポジション(713, 813, 814)から第二軌道の軌道エンドポジション(713, 813, 814)へ移行し、それを追従できる様に、予め与えられていることを特徴とする先行請求項
8及び
9のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
第一軌道と第二軌道を、円弧と直線の組合せとして、及び/或いは、円弧と円弧の組合せとして、及び/或いは、円弧と円弧及び直線の組合せとして計算されることを特徴とする先行請求項
8から
10のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
それぞれの開始ポジションを起点として、予め与えられている角解像度において、軌道を算出する;
及び/或いは、
軌道エンドポジション(713, 813, 814)を、エンドポジション(104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804)の座標系に転換し、該エンドポジション(104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804)の座標系において、該軌道エンドポジション(713, 813, 814)が、互いに、予め定められている許容範囲内にあるか否かを確認する
ことを特徴とする先行請求項
8から
11のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
回帰的に、第一軌道と第二軌道の、互いの間隔が最も小さい軌道エンドポジション(713, 813, 814)を割り出し、それぞれの第二軌道の中間エンドポジションを起点として、該車両(100, 300, 400, 500, 600, 700, 800)用の衝突なく実施し得る
、二巡目のペア割り出しでの第二軌道の候補を、少なくとも、衝突なく実施し得る
、二巡目のペア割り出しでの第一軌道と該中間エンドポジションを基にして算出された衝突なく実施し得る第二軌道の、それらの軌道エンドポジション(713, 813, 814)が、互いに予め定められている許容範囲内にあるペアを割り出すことができるまで計算することを特徴とする請求項
8~12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタートポジションからエンドポジションへの走行軌道を算出するための車両用の制御装置に関する。更に、本発明は、対応する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、以下、主に乗用自動車との関連において説明されるが、それに制限されることなく、如何なる種類の車両においても使用可能である。
【0003】
最新の車両では、ドライバーは、より頻繁に、自動化された、或いは、少なくとも、部分的に自動化された走行を可能にするアシスタント・システムによってサポートされる。
【0004】
例えば、あるドライバー・アシスタント・システムは、ドライバーのために、車両の駐車を請け負うことができる。そのためには、該ドライバー・アシスタント・システムは、その時点の車両のポジションからの、その上を通って車両が、駐車スペースに移動する軌道が、選択されなければならない。
【0005】
可能な軌道の算出は、通常、非常に煩雑であり、且つ、高い計算能力を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明の課題は、車両用の効率の良い軌道計画を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立特許請求項1の特徴を有する制御装置によって、並びに、独立特許請求項8の特徴を有する方法によって解決される。
【0008】
それによれば:
車両の周辺部の空いている、即ち、走行可能な、及び、空いていない、即ち、走行できない、領域を捕捉し、対応する周辺情報を出力する様に構成された周辺把握システムと、スタートポジションを起点とする該周辺情報を基に、車両用の衝突なく実施し得る第一軌道を算出し、続いて、該エンドポジションを起点として、車両用の衝突なく実施し得る第二軌道を算出する様に構成された軌道算出手段とを備えた、スタートポジションを起点としエンドポジションまでの走行軌道を算出するための車両用の制御装置であるが、該軌道算出手段は、更に、それらの軌道エンドポジションが、互いに、予め定められている許容範囲内にある衝突なく実施し得る第一軌道と衝突なく実施し得る第二軌道の少なくとも一つのペアを割り出し、少なくとも一つのペアを該車両軌道として出力する様に構成されている。
【0009】
更に、以下も想定されている:
車両の周辺部の空いている及び空いていない領域を捕捉し、対応する周辺情報を出力するステップ、スタートポジションを起点として該周辺情報に基づいて衝突なく実施し得る第一軌道を算出するステップ、エンドポジションを起点として該周辺情報に基づいて衝突なく実施し得る第二軌道を算出するステップ、それらの軌道エンドポジションが、互いに、予め定められている許容範囲内にある衝突なく実施し得る第一軌道と衝突なく実施し得る第二軌道の少なくとも一つのペアを割り出ステップ、並びに、少なくとも一つのペアを車両軌道として出力するステップを包含するスタートポジションを起点としエンドポジションまでの走行軌道を算出するための方法。
【0010】
本発明は、上の従来の技術において記した如く、スタートポジションからエンドポジションへの可能な中間ステップを含む全ての可能な走行軌道を、算出することは、非常に手間暇がかかると言う認識に基づくものである。
【0011】
よって、本発明は、例えば、自動駐車プロセス用の走行軌道の算出に係る計算負荷を、車両のスタートポジションからと同時に望まれるエンドポジションからも衝突なく実施し得る軌道を算出すれば、有意に低減できると言う認識に基づくものである。
【0012】
本発明は、例えば、車両の駐車プロセス用の走行軌道の算出に、使用することができる。該スタートポジションは、例えば、その時点における車両のポジションとして与えることができる。エンドポジションは、例えば、予め、可能な駐車ポジションを割りだすことができる、駐車アシスタントなど、アシスタント機能によって与えることができる。
【0013】
該周辺把握手段は、例えば、車両の周辺部を捕捉することに適したセンサを有していることができる。この様なセンサは、例えば、超音波センサ、レーダセンサ、ライダセンサや同様なものであることができる。しかしながら、該周辺把握センサは、例えば、他のシステムのセンサデータに基づいて、該車両用の周辺モデルを作成し、例えば、本発明に係る制御装置などの他の車両システムに提供する車両の中央制御装置であることもできる。
【0014】
本発明は、更に、軌道算出手段も想定している。該軌道算出手段は、既に上述した如く、スタートポジションを起点に、衝突なく実施し得る第一軌道を、エンドポジションを起点に衝突なく実施し得る第二軌道を算出する。
【0015】
ここで言う「衝突なく実施し得る軌道」とは、車両が、車両周辺部にある障害物に衝突することなく走行できる車両の軌道であると解釈できる。当然のことながら、例えば、オブジェクト乃至障害物までのこれを下回ってはならない最短間隔は、予め与えることができる。
【0016】
軌道算出手段が、第一軌道と第二軌道を算出した場合、これは、少なくとも一つの第一及び第二軌道の軌道エンドポジションが、互いに、予め与えられている公差範囲内にあるか否かを確かめる。
【0017】
該許容範囲は、車両が、第一軌道の軌道エンドポジションから、第二軌道の軌道エンドポジションに移行できる様に選択することができる。
【0018】
その結果、車両は、スタートポジションからエンドポジションに到達するために、選択された第一軌道に追従し、その後、選択された第二軌道を追従することも可能である。該制御装置は、例えば、ドライバーが何もしなくても、該車両が、エンドポジションに到達するために、先ず、選択された第一軌道を、続いて、選択された第二軌道を操縦することができる様に構成されていることができる。代案的には、該制御装置は、選択された第一軌道と選択された第二軌道を適宜なアシスタント・システムに出力することも可能である。
【0019】
スタートポジションからエンドポジションへの車両軌道を算出する計算負荷は、本発明に係る両方向からのアプローチでは、確認されなければならないバリエーションが非常に少ないため、低減する。
【0020】
好ましい実施形態と発展形態は、従属請求項並びに図に基づいた説明によって開示される。
【0021】
ある実施形態では、該軌道算出手段は、第一軌道と第二軌道を、可能な最も短い軌道として算出する様に構成されていることができる。
【0022】
この様な軌道を算出する方法としては、例えば、Bernhard Robert Mullerの博士論文「Two-step Trajectory Planning for Automatic Parking」に、特に、「3.2.2 Shortest Admissible Trajectory Sequences according to Reeds and Shepp」に開示されている方法が挙げられる。
【0023】
ある実施形態では、該許容範囲は、該車両の走行力学的パラメータに基づいて、第一軌道のエンドポジションから第二軌道のエンドポジションに移行し、且つ、これに追従できる様に、予め定められていることができる。
【0024】
即ち、該許容範囲は、エンドポジション間の間隔であることができる。しかしながら同時に、該許容範囲は、軌道の互いの角度も考慮することができる。例えば、それぞれのエンドポイントにおける第一と第二軌道との間の最大許容される角度は、車両が、走行できる最大の角度に相当する。
【0025】
ある実施形態では、該軌道算出手段は、第一軌道と第二軌道を、円弧と直線の組合せとして、及び/或いは、円弧と円弧の組合せとして、及び/或いは、円弧と円弧及び直線の組合せとして算出できる様に構成されていることができる。
【0026】
軌道用に許される形状を限定することにより、軌道の容易な算出が可能になる。
【0027】
ある実施形態では、該軌道算出手段は、各々の開始ポジションを起点に、予め与えられている角解像度において軌道を算出する様に構成されていることができる。
【0028】
ここで言う「角解像度」と言う定義は、その角度において車両の周りがセンシングされる角解像度であると解釈できる。例えば、角解像度90°の場合は、前方、後方、下方、上方それぞれ1本のラインのみが確認される。解像度が、2°の場合、180本のライン(これらのラインは、全て、車両原点を通っている)である。軌道の算出は、オブジェクト乃至障害物との衝突が割り出された場合、停止される。
【0029】
ある実施形態では、軌道算出手段は、軌道エンドポジションを、エンドポジションの座標系に転換し、軌道エンドポジションが、互いに、予め定められている許容範囲内にあるか否かを確認する様に構成されていることができる。
【0030】
双方の軌道が、同じ座標系にある場合、軌道エンドポジションの比較が、容易になる。エンドポジションの座標系は、原点、例えば、エンドポジションを有することができる。
【0031】
ある実施形態では、該軌道算出手段は、どの第一軌道と第二軌道とのペアにおいても、それぞれの軌道エンドポジションが、互いに、予め定められている許容範囲にない場合、互いの間隔が最も小さい第一軌道と第二軌道の軌道エンドポジションを割り出し、割り出された第二軌道の軌道エンドポジションを中間エンドポジションとして選択する様に構成されていることができる。該軌道算出手段は、更に、該中間エンドポジションを起点として、該車両用の衝突なく実施し得る第二軌道の候補を算出し、衝突なく実施し得る第一軌道と中間エンドポジションを基に算出された衝突なく実施し得る第二軌道との、それらの軌道エンドポジションが、互いに予め定められている許容範囲内にある少なくとも一つのペアを割り出す様に構成されていることもできる。
【0032】
第一軌道と第二軌道のエンドポイントが、互いに許容範囲内に無い場合、本発明では、先に算出された第一軌道と第二軌道を、次の計算のベースとなる中間結果として使用することが想定されている。互いに最も近い軌道エンドポジションを起点として、元の計算が、少なくとも第二軌道様に繰り返される。
【0033】
ある実施形態では、該軌道算出手段は、回帰的に、第一軌道と第二軌道の、互いの間隔が最も小さい軌道エンドポジションを割り出し、それぞれの第二軌道の中間エンドポジションを起点として、該車両用の衝突なく実施し得る第二軌道の候補を、少なくとも、衝突なく実施し得る第一軌道と該中間エンドポジションを基にして算出された衝突なく実施し得る第二軌道の、それらの軌道エンドポジションが、互いに予め定められている許容範囲内にあるペアを割り出すことができるまで計算する様に構成されていることができる。
【0034】
前述した如く、本発明では、先の計算ステップの結果が使用され、適した軌道を選択するために、全ての候補が、算出される訳ではない。これにより、計算負荷は、有意に削減される。
【0035】
軌道サーチの回帰的な解決案では、更に、回帰の最多回数などの中止条件を予め定めておくこともできる。
【0036】
上記の実施形態やその発展形態は、有意義である限り、互いに自由に組み合わせることが可能である。更なる可能な形態や発展形態、並びに、本発明の実施形態には、上記の本発明に係る特徴や以下に実施例と関連して述べる本発明に係る特徴の具体的には記述されない組み合わせも包含される。更に、本発明の各々の基本形に対する改善や捕捉として当業者が個別的アスペクトを加えた場合も包含される。
【0037】
該制御装置は、例えば、車載制御装置として構成されていることができる。更に、該制御装置は、複数の制御装置の組合せとして構成されていることもできる。該制御装置は、更に、ハードウェアとソフトウェアの組合せとして構成されていることもできる。例えば、該制御装置の機能は、ある計算手段内の、又は、複数の計算手段からなるある群内のコンピュータープログラムとして実施されることもできる。
【0038】
以下本発明を、概略的な図として描かれている実施例を参照しながら詳しく説明する。図の説明:
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本発明に係る制御手段のある実施形態のブロック図を、
【
図2】
図2は、本発明に係る方法のある実施形態のフローチャートを、
【
図4】
図4は、車両周辺部並びに、スタートポジションとエンドポジションのグラフを、
【
図5】
図5は、衝突なく実施し得る第一軌道のグラフを、
【
図6】
図6は、衝突なく実施し得る第二軌道のグラフを、
【
図7】
図7は、軌道エンドポジションと中間ポジションのグラフを、そして、
【発明を実施するための形態】
【0040】
全ての図において、同じ、或いは、同じ機能を有するエレメント、並びに、手段に対しては - 特に記さない限り - 同じ符号がつけられている。
【0041】
図1は、車両100内に配置されている制御装置101の実施形態のブロック図を示している。
【0042】
該制御装置101は、軌道算出手段107と組み合わされている周辺把握システム105を有している。
【0043】
該周辺把握システム105は、車両100の周辺部の空いている及び空いていない領域を捕捉し、対応する周辺情報106を出力する。
【0044】
軌道算出手段107は、該周辺情報106に基づいて、スタートポジション103を起点として、該車両100用の衝突なく実施し得る第一軌道の候補を算出する。更に、該軌道算出手段107は、予め定められているエンドポジション104から、該車両100用の衝突なく施し得る第二軌道の候補も算出する。
【0045】
続いて、該軌道算出手段107は、衝突なく実施し得る第一軌道と衝突なく実施し得る第二軌道との少なくとも一つの、それらの軌道エンドポジションが、互いに予め定められている許容範囲内にあるペアを割り出す。該少なくとも一つのペアは、続いて、車両軌道102として出力される。
【0046】
第軌道算出手段107は、第一軌道と第二軌道を、例えば、可能な最も短い軌道として算出することができる。この様な軌道を算出する方法としては、例えば、Bernhard Robert Mullerの博士論文「Two-step Trajectory Planning for Automatic Parking」に、特に、「3.2.2 Shortest Admissible Trajectory Sequences according to Reeds and Shepp」に開示されている方法が挙げられる。
【0047】
更に、該第一軌道と第二軌道は、例えば、円弧と直線の組合せとして、及び/或いは、円弧と円弧の組合せとして、及び/或いは、円弧と円弧及び直線の組合せとして算出することもできる。
【0048】
計算負荷を低減するために、該軌道算出手段107は、各々の開始ポジションを起点に、予め与えられている角解像度において軌道を算出する様に構成されていることもできる。
【0049】
第一軌道と第二軌道からなるペアを割り出すための該許容範囲は、該車両100の走行力学的パラメータに基づいて、第一軌道の軌道エンドポジションから第二軌道の軌道エンドポジション104に移行し、且つ、これに追従できる様に、予め定められていることができる。
【0050】
該軌道算出手段107は、更に、軌道エンドポジションをエンドポジション104の座標系に転換し、該エンドポジション104の座標系において、軌道エンドポジションが、互いに、予め定められている許容範囲内にあるか否かを確認することもできる。
【0051】
どの第一軌道と第二軌道とのペアにおいても、それぞれの軌道エンドポジションが、互いに、予め定められている許容範囲にない場合、該軌道算出手段107は、回帰的方法を実施することができる。該軌道算出手段107は、互いの間隔が最も小さい第一軌道と第二軌道の軌道エンドポジションを割り出し、割り出された第二軌道の軌道エンドポジションを中間エンドポジションとして選択することができる。該中間エンドポジションを用いて、該軌道算出手段107は、該車両100用の衝突なく実施し得る第二軌道の候補を算出し、衝突なく実施し得る第一軌道と中間エンドポジションを基に算出された衝突なく実施し得る第二軌道との、それらの軌道エンドポジションが、互いに予め定められている許容範囲内にある少なくとも一つのペアを割り出す様に構成されていることもできる。
【0052】
この二巡目においても適切なペアが見つからない場合、該軌道算出手段107は、更に、回帰的方法を進めることができる
【0053】
該軌道算出手段107は、改めて、第一軌道と第二軌道の、互いの間隔が最も小さい軌道エンドポジションを割り出し、それぞれの第二軌道の中間エンドポジションを起点として、該車両100用の衝突なく実施し得る第二軌道の候補を、少なくとも、衝突なく実施し得る第一軌道と該中間エンドポジションを基にして算出された衝突なく実施し得る第二軌道の、それらの軌道エンドポジションが、互いに予め定められている許容範囲内にあるペアを割り出すことができるまで計算することもできる。中止条件としては、例えば、回帰の回数を用いることができる。
【0054】
図2は、本発明に係る車両100, 300, 400, 500, 600, 700, 800用のスタートポジション103, 303, 403, 503, 603, 703, 803を起点としてエンドポジション104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804までの車両軌道102を算出するための方法の実施形態のグラフを示している。
【0055】
該方法は、車両100, 300, 400, 500, 600, 700, 800の周辺部の空いている及び空いていない領域を捕捉S1し、対応する周辺情報106を出力するステップを有している。更には、該車両100, 300, 400, 500, 600, 700, 800用のスタートポジション103, 403, 503, 603, 703, 803を起点として該周辺情報106に基づいて衝突なく実施し得る第一軌道が算出S2される。
【0056】
該車両100用の該エンドポジション104, 404, 504, 604, 704, 804を起点として該周辺情報106に基づいて衝突なく実施し得る第二軌道も算出S3される。
【0057】
該方法では、それらの軌道エンドポジション713, 813, 814が、互いに、予め定められている許容範囲内にある衝突なく実施し得る第一軌道と衝突なく実施し得る第二軌道の少なくとも一つのペアを割り出しS4、並びに、該少なくとも一つのペアを車両軌道102として出力S5することも想定されている。
【0058】
該許容範囲は、車両100, 300, 400, 500, 600, 700, 800が、走行力学的パラメータに基づいて、第一軌道のエンドポジション104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804から第二軌道のエンドポジション104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804へ移行でき、且つ、これに追従できる様に予め定められていることができる。
【0059】
更に、第一軌道と第二軌道は、例えば、可能な最短の軌道として算出されることができる。更に、該第一軌道と第二軌道は、円弧と直線の組合せとして、及び/或いは、円弧と円弧の組合せとして、及び/或いは、円弧と円弧及び直線の組合せとしても算出することができる。
【0060】
該方法では、更に、各々の開始ポジションを起点に、予め与えられている角解像度において軌道を算出することを想定していても良い。
【0061】
更に、該軌道エンドポジション713, 813, 814は、エンドポジション104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804の座標系に転換され、該エンドポジション104, 304, 310, 311, 404, 504, 604, 704, 804の座標系において、該軌道エンドポジション713, 813, 814が、互いに、予め定められている許容範囲内にあるか否かを確認することができる。
【0062】
該方法の第一巡目において結果が得られなかった場合、例えば、第一軌道と第二軌道から、それぞれの軌道エンドポジション713, 813, 814が、互いに予め定められている許容範囲内にあるペアが無い場合、互いの間隔が最少である第一軌道と第二軌道のそれぞれの軌道エンドポジション713, 813, 814を割り出すことができる。
【0063】
割り出された第二軌道の該軌道エンドポジション713, 813, 814は、中間エンドポジションとして選択することができる。該中間エンドポジションを起点として、該車両100, 300, 400, 500, 600, 700, 800用の衝突なく実施し得る第二軌道の候補を算出し、衝突なく実施し得る第一軌道と中間エンドポジションを基に算出された衝突なく実施し得る第二軌道との、それらの軌道エンドポジション713, 813, 814が、互いに予め定められている許容範囲内にある少なくとも一つのペアを割り出すこともできる。
【0064】
該方法は、結果が得られるまで、回帰的に実施できる。その際、第一軌道と第二軌道の互いの間隔が最も小さい軌道エンドポジション713, 813, 814を回帰的に割り出す。それぞれの第二軌道の該中間エンドポジションを起点として、該車両100, 300, 400, 500, 600, 700, 800用の衝突なく実施し得る第二軌道の候補が、衝突なく実施し得る第一軌道と中間エンドポジションを基に算出された衝突なく実施し得る第二軌道との、それらの軌道エンドポジション713, 813, 814が、互いに予め定められている許容範囲内にある少なくとも一つのペアが割り出されるまで、計算される。
【0065】
図3は、軌道算出手段107によって算出された可能な軌道320, 321, 322のグラフを示している。
【0066】
該軌道320, 321, 322は、一つのスタートポジション303を起点とし、それぞれエンドポイント304, 310, 311において終了している。
【0067】
軌道320は、円弧、乃至、円弧と直線のセグメント(前進)から構成されている。
【0068】
軌道321は、円弧、乃至、後進する円弧のセグメント、並びに、円弧、乃至、前進する円弧のセグメントから構成されている。
【0069】
軌道322は、円弧、乃至、後進する円弧のセグメント、円弧、乃至、前進する円弧のセグメント、並びに、直線から構成されている。
【0070】
ここで述べられている軌道の種類320, 321, 322は、軌道算出手段による第一及び第二軌道の算出のためのベースである。言うまでも無く、バリエーションにおいては、他の軌道の種類も使用できる。
【0071】
図4は、一台の車両400の車両周辺部、並びに、スタートポジション403とエンドポジション404のグラフを示している。車両周辺部は、境界412によって区画されている。これは、そこを走行できない、乃至、その上を乗り越えることができないオブジェクトや障害物を表している。エンドポジション404は、その中に車両400が、進入する(駐車)空間内に配置されている。
【0072】
図4の配置は、
図5から8の本発明に係る方法の説明の基礎になっている。
【0073】
図5は、衝突なく実施し得る第一軌道のグラフを示している。車両500のスタートポジション503を起点として、車両500が走行可能な軌道の候補が、算出されていることが認識できる。これは、前進用にも後進用にも実施される。それぞれのエンドポジションも、同様に示されてはいるが、見やすさを考慮して、個別に符号は付けていない。
【0074】
第一軌道を算出するために、上述した如く、予め与えられた、角解像度が、はっきりと認識できる。
【0075】
図6は、衝突なく実施し得る第二軌道のグラフを示している。
図5と同様、車両600のスタートポジション603を起点として、車両600が走行可能な軌道の候補が、算出されていることが認識できる。これも、前進用にも後進用にも実施される。それぞれのエンドポジションも、同様に示されてはいるが、見やすさを考慮して、個別に符号は付けていない。
【0076】
ここでも、予め与えられている角解像度が、維持される。
【0077】
図7は、軌道エンドポジション713を有するグラフを示している。該軌道エンドポジション713は、
図5の第一軌道と
図6の第二軌道からは、それらの軌道エンドポジションが、互いに予め定められている許容範囲内にあるペアを、割り出すことができなかったため、中間ステップとしての役割を果たす。
【0078】
その結果、該軌道エンドポジション713は、正に、第一軌道のうちの一つの軌道エンドポジションと最も小さな間隔を有する第二軌道の軌道エンドポジションを示している。
【0079】
図8は、方法を複数回回帰した結果得られた最終軌道のフラフを示している。
【0080】
先ず、最終軌道は、軌道エンドポジション814を通っている。ここから、軌道エンドポジション815を通る。そして、軌道エンドポジション815から、該最終軌道は、軌道エンドポジション813を経て、最後に、エンドポジション804に達している。
【0081】
好ましい実施例によって上記のごとく説明されはしたが、本発明は、これらに制限されるものではなく、多種多様な方法や構成によって変更することが可能である。特に、本発明は、本発明の趣旨から逸脱することなく、多種多様に変更や修正することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
100, 300, 400 車両
500, 600, 700, 800 車両
101 制御装置
102 車両軌道
103, 403 スタートポジション
503, 603, 703, 803 スタートポジション
104, 304, 310, 311 エンドポジション
404, 604, 704, 804 エンドポジション
105 周辺把握システム
106 周辺情報
107 軌道算出手段
320, 321, 322 軌道
412, 512, 612, 712, 812 境界
713, 813, 814 軌道エンドポジション
S1 - S5 方法ステップ