(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】電気接続用ソケット
(51)【国際特許分類】
G01R 1/073 20060101AFI20220817BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20220817BHJP
【FI】
G01R1/073 B
G01R31/26 J
(21)【出願番号】P 2019540784
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2018024820
(87)【国際公開番号】W WO2019049481
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 慶一
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-129877(JP,A)
【文献】特開2012-103028(JP,A)
【文献】国際公開第2009/001731(WO,A1)
【文献】特開2014-135184(JP,A)
【文献】特開2012-163529(JP,A)
【文献】特開2012-042252(JP,A)
【文献】特開2007-178196(JP,A)
【文献】特開2009-139191(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0325394(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-073
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と電気部品との間における電気信号の授受を中継する電気接続用ソケットであって、
自身の上面と下面との間を連通する
第1連通孔
及び複数の第2連通孔を有し、前記上面側に前記電気部品が装着され、且つ前記下面側に前記回路基板が配設される金属筐体と、
前記
第1連通孔の内壁面との間で同軸線路を構成するように前記
第1連通孔内に挿通され、一端が前記回路基板の信号路用のパッド電極と電気接続し、他端が前記電気部品の信号路用の端子と電気接続するシグナルピンと、
前記複数の第2連通孔内それぞれに挿通され、一端が前記回路基板上に形成されたグラウンド用の第2パッド電極と電気接続し、他端が前記電気部品のグラウンド用の第2端子と電気接続する複数のグラウンドピンと、
を備え、
前記金属筐体は、前記下面に下方に向かって突出する複数の突起部を有し、
前記複数の突起部は、それぞれ、前記回路基板上に形成された各別の前記第2パッド電極と接触して前記金属筐体を接地し、
前記複数の突起部は、前記金属筐体の前記下面と前記回路基板の上面の間の領域に、エアギャップが形成されるように、前記金属筐体の前記下面の前記複数の第2連通孔それぞれの周囲に別個に配設されている、
電気接続用ソケット。
【請求項2】
前記複数の突起部は、前記エアギャップの高さが0.1mm以上となるように、前記金属筐体の前記下面から下方に向かって突出する
請求項
1に記載の電気接続用ソケット。
【請求項3】
前記金属筐体の前記下面と前記回路基板の上面とが対向する領域のうち95%以上が前記エアギャップ領域である
請求項
1に記載の電気接続用ソケット。
【請求項4】
前記複数の突起部は、少なくとも前記金属筐体の前記下面の四隅の領域に配設されている
請求項
1に記載の電気接続用ソケット。
【請求項5】
前記複数の突起部は、
それぞれ、前記金属筐体の前記下面において、前記
複数の第2連通孔の縁部を
各別に囲繞する形状を呈する
請求項
1に記載の電気接続用ソケット。
【請求項6】
前記シグナルピンは、自身の外周面と前記
第1連通孔の内壁面との間が離間するように、前記
第1連通孔内に挿通されている
請求項1に記載の電気接続用ソケット。
【請求項7】
前記シグナルピンは、前記
第1連通孔内に固定されたピンバレルと、当該ピンバレルの上端部及び下端部それぞれにおいて当該ピンバレルに対して上下方向に摺動可能に、当該ピンバレルに連結された第1及び第2プランジャと、を含んで構成される
請求項1に記載の電気接続用ソケット。
【請求項8】
前記電気部品は、ICパッケージである
請求項1に記載の電気接続用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気接続用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気部品(例えば、ICパッケージ)と回路基板(例えば、PCB基板)との間における電気信号の授受を中継する電気接続用ソケットが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の電気接続用ソケットにおいては、近年のデータ転送速度の高速化の要請から、高周波(例えば、10GHz)の電気信号を中継することが求められている。そのため、近年の電気接続用ソケットにおいては、信号劣化を抑制し得るように、グラウンド接続された金属筐体が用いられている。そして、当該電気接続用ソケットは、金属筐体の上面と下面を連通するように設けられた連通孔内に、信号伝達を行うシグナルピンが配設され、当該シグナルピンが、連通孔の内壁面との間で、同軸線路を構成するように配設されている。
【0005】
しかしながら、金属筐体を用いた電気接続用ソケットは、従来技術に係る樹脂製の電気接続用ソケットを用いた場合よりも、金属筐体と回路基板との間のクロストークの影響を受けやすく、当該クロストークに起因して、シグナルピンそれ自体の接続状態にかかわらず、信号伝達能力が低下するおそれがある。典型的には、当該クロストークに起因して、金属筐体のグラウンド電圧が不安定な状態となる。その結果、シグナルピンに構成される信号路の特性インピーダンスが不安定となり、信号路中での反射に起因した信号劣化を誘起するおそれがある。
【0006】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、金属筐体と回路基板との間のクロストークを抑制し得る電気接続用ソケットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
回路基板と電気部品との間における電気信号の授受を中継する電気接続用ソケットであって、
自身の上面と下面との間を連通する連通孔を有し、前記上面側に前記電気部品が装着され、且つ前記下面側に前記回路基板が配設される金属筐体と、
前記連通孔の内壁面との間で同軸線路を構成するように前記連通孔内に挿通され、一端が前記回路基板の信号路用のパッド電極と電気接続し、他端が前記電気部品の信号路用の端子と電気接続するシグナルピンと、
を備え、
前記金属筐体は、自身の前記下面と前記回路基板の上面との間にエアギャップが形成されるように、前記回路基板上に配設される
電気接続用ソケットである。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電気接続用ソケットによれば、金属筐体と回路基板との間のクロストークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る電気接続用ソケットの側面断面図
【
図2】一実施形態に係る電気接続用ソケットのシグナルピンの側面断面図
【
図3】一実施形態に係る電気接続用ソケットの金属筐体を上面側から見た斜視図
【
図4】一実施形態に係る電気接続用ソケットの金属筐体を下面側から見た斜視図
【
図5】一実施形態に係る電気接続用ソケットにおいて、金属筐体の下面側に形成されるエアギャップを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
[電気接続用ソケットの全体構成]
以下、
図1~
図5を参照して、一実施形態に係る電気接続用ソケットの構成の一例について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る電気接続用ソケット1の側面断面図である。
【0013】
図2は、本実施形態に係る電気接続用ソケット1のシグナルピン11の側面断面図である。
図3は、本実施形態に係る電気接続用ソケット1の金属筐体10を上面側から見た斜視図である。
図4は、本実施形態に係る電気接続用ソケット1の金属筐体10を下面側から見た斜視図である。
図5は、本実施形態に係る電気接続用ソケット1において、金属筐体10の下面側に形成されるエアギャップを示す図である。
【0014】
本実施形態に係る電気接続用ソケット1は、表面実装式のソケットであり、回路基板P上に装着される。そして、電気接続用ソケット1の上部には、ICパッケージBが装着される。尚、以下では、電気接続用ソケット1から見て回路基板P側を下方側(
図1の下方側に相当)、ICパッケージB側を上方側(
図1の上方側に相当)として、説明する。
【0015】
本実施形態に係る電気接続用ソケット1は、例えば、ICパッケージBの性能試験を行う用途に適用される。そして、電気接続用ソケット1は、自身の上面側に配されたICパッケージBと、自身の下面側に配されたIC試験装置側の回路基板Pとの電気的接続を行う。尚、データ転送速度を維持する最も効率がよい手法としては、回路基板Pに直接ICパッケージBを半田付けすることであるが、ここでは、回路基板PとICパッケージBとを着脱可能にするため、電気接続用ソケット1を用いた電気的接続を行っている。
【0016】
ICパッケージBは、例えば、BGA(Ball Grid Array)タイプのICパッケージである。ICパッケージBは、例えば、外部接続用の端子として、パッケージ本体の下面から下方に向けて突出する信号路用の第1半田ボールBa(第1端子)及びグラウンド接続用の第2半田ボールBb(第2端子)を有している。
【0017】
尚、ICパッケージBは、電気接続用ソケット1に設けられたラッチ(図示せず)により、電気接続用ソケット1上に装着される。ICパッケージBは、ラッチが閉じられた状態においては、自身の上面が押圧されるようにして電気接続用ソケット1上に装着され、当該ラッチが開かれることにより、電気接続用ソケット1から取り外されるようになっている。
【0018】
回路基板Pは、例えば、PCB(Printed Circuit Board)基板である。回路基板Pには、例えば、ICパッケージBの性能試験を行うための信号を生成したり、ICパッケージBからの信号を受信処理する信号路用の回路パターン、及び、グラウンド電圧を供給するためのグラウンドパターン等が形成されている。又、回路基板P上には、当該回路基板Pの表面から露出した状態で、信号路用の回路パターンに接続された第1パッド電極Pa、及び、グラウンドパターンに接続された第2パッド電極Pbが形成されている。
【0019】
尚、電気接続用ソケット1は、回路基板Pに対して、ボルト及びナット等によって装着される。
【0020】
電気接続用ソケット1は、金属筐体10、回路基板PとICパッケージBとの間における信号伝達を行うシグナルピン11、及び、回路基板PからICパッケージBに対してグラウンド電圧を供給するグラウンドピン12等を備えている。
【0021】
金属筐体10は、例えば、アルミニウム又は銅等の金属部材によって形成されている。金属筐体10は、例えば、全体がアルミニウムで形成されて導電性を有しており、当該金属筐体10の下面の突起部10t(詳細は後述)で確保されたグラウンド電圧は、当該金属筐体10の全体に供給される。
【0022】
尚、金属筐体10は、固定部材(例えば、ボルトとナット)を用いて、上部プレートと下部プレートとが接続されて構成されている。但し、金属筐体10は、一の部材によって一体的に構成されてもよいし、複数のプレートを接合して構成されてもよい。又、金属筐体10は、一部が絶縁性の材料によって構成されてもよい。
【0023】
金属筐体10は、シグナルピン11が挿通される第1連通孔10a、及び、グラウンドピン12が挿通される第2連通孔10bを有している。第1連通孔10a及び第2連通孔10bは、いずれも、金属筐体10の上面から下面まで連通するように、形成されている。尚、第1連通孔10a及び第2連通孔10bは、例えば、平面視で、円形状を呈している。
【0024】
金属筐体10の露出した表面のうち、電気的に絶縁が必要な領域は、陽極酸化されている(
図1中の斜線部10s)。ここでは、金属筐体10の第1連通孔10aの内壁面、金属筐体10の下面の一部、及び、金属筐体10の上面が、陽極酸化領域10sとなっている。これによって、金属筐体10とシグナルピン11との間の電気的絶縁、金属筐体10と回路基板Pとの間の電気的絶縁、及び、金属筐体10とICパッケージBとの間の電気的絶縁が強化されている。
【0025】
シグナルピン11は、第1連通孔10a内において、当該第1連通孔10aの内壁面から離間するように配設される。つまり、シグナルピン11は、金属筐体10と電気的に絶縁された状態で、第1連通孔10a内に配設され、第1連通孔10aの内壁面との間で、同軸線路を構成する。尚、シグナルピン11(ピンバレル11a)の外周面と第1連通孔10aの内壁面との間の距離は、シグナルピン11が構成する同軸線路の特性インピーダンスが、各位置において所定値(例えば、50Ω)となるように調整されている。シグナルピン11は、かかる構成によって、ICパッケージBと回路基板Pとの間に、インピーダンス整合された信号路を提供する。
【0026】
シグナルピン11は、ピンバレル11a、第1プランジャ11b、第2プランジャ11c、及び、スプリング11dを含んで構成される(
図2を参照)。
【0027】
ピンバレル11aは、筒状部材であり、第1連通孔10a内において、当該第1連通孔10aに沿って上下方向に延在するように配設されている。ピンバレル11aは、例えば、絶縁性の保持部材13a、13bによって、第1連通孔10aの内壁面から離間した状態で、第1連通孔10a内に固定されている。
【0028】
尚、保持部材13aは、環形状を呈し、第1連通孔10aの上方側において第1連通孔10aに圧入固定されている。又、保持部材13bは、環形状を呈し、ピンバレル11aの下方側に圧入固定され、第1連通孔10aに係止されている。そして、ピンバレル11aは、当該保持部材13a、13bを介して、第1連通孔10a内で上下から挟持されるように固定されている。
【0029】
第1プランジャ11bは、上下方向に摺動可能な状態で、ピンバレル11aの上端部に連結されている。第1プランジャ11bは、下端部がピンバレル11a内に配設されたスプリング11dの上端部に接続され、上端部がピンバレル11aの上端部に形成された開口から上方に突出するように構成されている。又、第1プランジャ11bの上端部は、金属筐体10の上面よりも上方まで突出する。かかる構成によって、電気接続用ソケット1にICパッケージBが装着された際には、第1プランジャ11bの上端部が、ICパッケージBの信号路用の第1半田ボールBaと接触する。これにより、シグナルピン11とICパッケージB内の信号路との電気接続が行われる。尚、第1プランジャ11bの上端部は、第1半田ボールBaと接触し易いように、当該第1半田ボールBaの外形に沿った凹形状を呈している。
【0030】
第2プランジャ11cは、ピンバレル11aの下端部に、上下方向に摺動可能な状態で連結されている。第2プランジャ11cは、上端部がピンバレル11a内に配設されたスプリング11dの下端部に接続され、下端部がピンバレル11aの下端部に形成された開口から下方に突出するように構成されている。又、第2プランジャ11cの下端部は、金属筐体10の下面よりも下方まで突出する。かかる構成によって、電気接続用ソケット1が回路基板P上に装着された際には、第2プランジャ11cの下端部が、回路基板Pに形成された信号路用の第1パッド電極Paに接触する。これにより、シグナルピン11と回路基板P内の信号路との電気接続が行われる。
【0031】
スプリング11dは、ピンバレル11a内において第1プランジャ11bと第2プランジャ11cとの間に配設され、第1プランジャ11bを上方向に付勢すると共に、第2プランジャ11cを下方向に付勢する。これにより、第1プランジャ11bの上端部とICパッケージBの第1半田ボールBaとの接触圧力、及び、第2プランジャ11cの下端部と回路基板Pの第1パッド電極Paとの接触圧力を確保する。又、スプリング11dは、ピンバレル11aの内壁面と接触するように構成されており、第1プランジャ11b、ピンバレル11a、及び第2プランジャ11cの間を導通する。
【0032】
ピンバレル11a、第1プランジャ11b、第2プランジャ11c、及び、スプリング11dは、それぞれ、金属部材で構成されている。但し、これらの部材は、上記したように、第1連通孔10aの内壁面から電気的に絶縁された状態で配設されている。
【0033】
シグナルピン11は、かかる構成において、第1プランジャ11bの上端部がICパッケージBの第1半田ボールBaに接触し、第2プランジャ11cの下端部が回路基板Pの第1パッド電極Paに接触したときに、ICパッケージBと回路基板Pとの間の信号伝達を中継する。
【0034】
グラウンドピン12(ピンバレル12a)は、第2連通孔10b内において、当該第2連通孔10bの内壁面と接触するように配設される。つまり、グラウンドピン12は、第2連通孔10bの内壁面において、金属筐体10と電気的に接続された状態で、第2連通孔10b内に配設される。尚、グラウンドピン12は、より好適には、第2連通孔10b内の上部側の領域において、第2連通孔10bと電気的に接続するように配設される。
【0035】
グラウンドピン12は、シグナルピン11と同様に、ピンバレル12a、第1プランジャ12b、第2プランジャ12c、及び、スプリング(図示せず)を含んで構成される。
【0036】
グラウンドピン12は、シグナルピン11と略同一の構造で構成されている。つまり、電気接続用ソケット1にICパッケージBが装着された際には、第1プランジャ12bの上端部が、ICパッケージBのグラウンド用の第2半田ボールBbと接触し、第2プランジャ12cの下端部が、回路基板Pに形成されたグラウンド用の第2パッド電極Pbに接触する。これにより、グラウンドピン12を介して、回路基板Pのグラウンド電圧が、ICパッケージBのグラウンドパターンに供給される。
【0037】
但し、グラウンドピン12は、上記したように、金属筐体10の第2連通孔10bの内壁面と接触するように配設されている。
【0038】
尚、
図1には、説明の便宜として、一個のシグナルピン11及び一個のグラウンドピン12のみを示すが、電気接続用ソケット1には、上記と同様のシグナルピン11及びグラウンドピン12が、複数設けられている。
図3、
図4には、金属筐体10に形成された複数の第1連通孔10a、複数の第2連通孔10bを示しており、これらの第1連通孔10a及び第2連通孔10bそれぞれに、シグナルピン11及びグラウンドピン12が挿通される(
図3、
図4中では、シグナルピン11及びグラウンドピン12の図示は省略している)。但し、電気接続用ソケット1には、更に、回路基板PからICパッケージBに対して動作電力を供給するためのパワーピンが設けられてもよい。
【0039】
[電気接続用ソケットの突起部の構成]
本実施形態に係る電気接続用ソケット1は、金属筐体10の下面と回路基板Pの上面の間にエアギャップ(
図5を参照)が形成されるように、金属筐体10の下面から下方に向かって突出する複数の突起部10tを有している。つまり、本実施形態に係る電気接続用ソケット1は、当該エアギャップを利用して、回路基板P上に形成された信号路と金属筐体10と間におけるクロストークを低減する。
【0040】
複数の突起部10tは、典型的には、金属筐体10の下面において、複数の第2連通孔10bそれぞれの周囲を囲繞するようにリング状に形成されている(
図4を参照)。そして、複数の突起部10tは、金属筐体10を下方から支持するように、例えば、金属筐体10の下面の四隅の領域、及び、金属筐体10の下面の中心領域に配設されている。
【0041】
尚、突起部10tの突出高さは、例えば、金属筐体10の下面と回路基板Pの上面との間のエアギャップが、0.1mm以上となるように設定されるのが望ましい。又、突起部10tが配設される面積は、当該突起部10tによる金属筐体10の接地の必要性を考慮しても、金属筐体10の下面と回路基板Pの上面とが対向する領域のうち95%以上がエアギャップ領域となるように設定されるのが望ましい。
【0042】
又、突起部10tは、金属筐体10を、直接、回路基板Pのグラウンド用の第2パッド電極Pbと電気的に接続する機能も有する。突起部10tは、金属筐体10と同様に、金属部材(例えば、アルミ材)によって構成されている。尚、突起部10tは、表面が陽極酸化されることなく、金属部材が露出した状態となっている。
【0043】
そして、突起部10tは、当該突起部10tの下端部が、グラウンドピン12が回路基板Pの第2パッド電極Pbと接触する領域の外周領域において、当該第2パッド電極Pbと接触する。これによって、突起部10tは、金属筐体10を接地する。
【0044】
本実施形態に係る電気接続用ソケット1は、このように、突起部10tにより、金属筐体10をグラウンド接続する。
【0045】
従来技術に係る電気接続用ソケットにおいては、金属筐体10の接地は、グラウンドピン12の外周面と金属筐体10の連通孔(例えば、
図1の第1連通孔10a)の内壁面との接触によって行われており、グラウンドピン12の外周面と連通孔の内壁面との間の接触抵抗によるインピーダンスを介して行われていた。この点、本実施形態に係る突起部10tの構成によって、グラウンドピン12の外周面と第1連通孔10aの内壁面との間の接触抵抗によるインピーダンスを介することなく、金属筐体10をグラウンド接続することができることを意味する。
【0046】
これによって、金属筐体10のグラウンド電位をより安定にすることが可能であり、シグナルピン11が構成する同軸線路の特性インピーダンスを適切に保持することが可能である。又、これによって、他のシグナルピン11との間での信号干渉の発生を抑制することもできる。
【0047】
尚、突起部10tからのグラウンド電圧の供給は、第2連通孔10bの内壁面とグラウンドピン12との接触部分を介して、グラウンドピン12に対しても行われる。特に、本実施形態では、グラウンドピン12は、第2連通孔10bの下部領域においては、第2連通孔10bの内壁面と離間した状態で配設され、第2連通孔10bの上部領域において、第2連通孔10bの内壁面と接触するように配設されている。これによって、グラウンドが不安定になりやすいグラウンドピン12の上部領域のグラウンド電圧の安定化を図ることも可能である。
【0048】
尚、ここでは、突起部10tによって、金属筐体10の下面と回路基板Pの上面との間にエアギャップを形成する態様を示している。但し、エアギャップを形成ための構成としては、他の手法であってもよく、例えば、金属筐体10の下面全体が回路基板Pの上面から離間するように、電気接続用ソケット1を回路基板P上に装着してもよい。
【0049】
[電気接続用ソケットの使用態様]
次に、本実施形態に係る電気接続用ソケット1の使用態様について、説明する。
【0050】
まず、電気接続用ソケット1が、回路基板P上に装着される。この際、金属筐体10の下面に設けられた突起部10tが、回路基板Pのグラウンド用の第2パッド電極Pbと接触する。これにより、金属筐体10は、直接、回路基板Pのグラウンド用の第2パッド電極Pbと電気接続され、安定したグラウンド電圧が確保された状態となる。
【0051】
次に、ICパッケージBが、電気接続用ソケット1上に装着される。その後、電気接続用ソケット1に設けられたラッチを用いて、ICパッケージBの上面を下方向に押圧すると、ICパッケージBの第1及び第2半田ボールBa、Bbが、シグナルピン11及びグラウンドピン12それぞれの第1プランジャ11b、12bに当接する。これにより、信号路用の第1半田ボールBaとシグナルピン11の第1プランジャ部11bとの電気的接触、及び、グラウンド用の第2半田ボールBbとグラウンドピン12の第1プランジャ部12bとの電気的接触が確保されることとなる。
【0052】
そして、ICパッケージBが下降するに伴って、シグナルピン11の第2プランジャ11c及びグラウンドピン12の第2プランジャ12cが、それぞれ、回路基板P上の信号路用の第1パッド電極Pa及びグラウンド用の第2パッド電極Pbと当接する。これにより、信号路用の第1パッド電極Paとシグナルピン11の第2プランジャ部11cとの電気的接触、及び、グラウンド用の第2パッド電極Pbとグラウンドピン12の第2プランジャ部12cとの電気的接触が確保されることとなる。
【0053】
この際、シグナルピン11の第1プランジャ部11b及び第2プランジャ部11cそれぞれには、上下方向に沿って、互いに離れる方向に、スプリング11dの付勢力が作用する。又、同様に、グラウンドピン12の第1プランジャ部12b及び第2プランジャ部12cそれぞれには、上下方向に沿って、互いに離れる方向に、スプリング(図示せず)の付勢力が作用する。これにより、ICパッケージBの第1及び第2半田ボールBa、Bbと各ピン11、12の第1プランジャ部11b、12bとの接触圧力、及び、回路基板Pの第1パッド電極Pa、Pbと各ピン11、12の第2プランジャ部11c、12cとの接触圧力が適度に確保された状態で維持される。
【0054】
このようにして電気接続用ソケット1を介してICパッケージBと回路基板Pとが電気的に接続されることでICパッケージBの性能試験等が行われることとなる。この際には、金属筐体10のグラウンド電圧が安定した状態に保持されることにより、信号劣化を抑制した状態で、シグナルピン11を介した信号伝達が行われることになる。
【0055】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る電気接続用ソケット1は、金属筐体10の下面と回路基板Pの上面との間にエアギャップが形成されるように、金属筐体10が回路基板P上に配設される。従って、本実施形態に係る電気接続用ソケット1によれば、金属筐体10と回路基板Pとの間におけるクロストークを抑制することができる。これによって、金属筐体10のグラウンド電位の不安定化を抑制し、信号伝達時の信号劣化を抑制することが可能である。
【0056】
特に、本実施形態に係る電気接続用ソケット1は、金属筐体10の下面から下方に向かって突出して、回路基板Pの上面と接触するように配設された複数の突起部10tを有し、エアギャップは、複数の突起部10tの間の領域に形成される構成としている。これによって、金属筐体10の支持構造の安定化を図ると共に、当該突起部10tによって、金属筐体10の接地を行うことが可能である。
【0057】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、種々に変形態様が考えられる。
【0058】
上記実施形態では、シグナルピン11の保持態様の一例として、シグナルピン11を第1連通孔10aの内壁面と離間するように保持する態様を示した。しかしながら、シグナルピン11は、金属筐体10と電気的に絶縁されていればよく、シグナルピン11と第1連通孔10aの内壁面との間に、絶縁部材が介装される構成としてもよい。又、シグナルピン11のピンバレル11aは、必ずしも固定されている必要はなく、ピンバレル11aが第1連通孔10a内において摺動可能に構成されてもよい。
【0059】
又、上記実施形態では、電気接続用ソケット1の構成の一例として、グラウンドピン12を有する態様を示した。しかしながら、金属筐体10の接地が、突起部10tによって行われることを考慮して、電気接続用ソケット1には、グラウンドピン12を設けない構成としてもよい。
【0060】
又、上記実施形態では、電気接続用ソケット1の上部側に接続する電気部品Bの一例として、ICパッケージBを示した。しかしながら、電気接続用ソケット1の上部側に接続する電気部品Bとしては、同軸ケーブル等であってもよい。
【0061】
又、上記実施形態では、電気接続用ソケット1の用途の一例として、ICパッケージBの試験用に用いる態様を示した。しかしながら、電気接続用ソケット1の用途としては、ICパッケージBの試験用以外の任意の電気接続用の用途に適用し得るのは勿論である。
【0062】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0063】
2017年9月8日出願の62/555,793の米国仮出願の開示内容、及び2017年10月6日出願の62/568,806の米国仮出願の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示に係る電気接続用ソケットによれば、金属筐体のグラウンド電圧を安定化させ、信号伝達時の信号劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 電気接続用ソケット
10 金属筐体
10a 第1連通孔
10b 第2連通孔
10s 陽極酸化領域
10t 突起部
11 シグナルピン
11a ピンバレル
11b 第1プランジャ
11c 第2プランジャ
11d スプリング
12 グラウンドピン
12a ピンバレル
12b 第1プランジャ
12c 第2プランジャ
13a、13b 保持部材
B ICパッケージ
Ba 第1半田ボール
Bb 第2半田ボール
P 回路基板
Pa 第1パッド電極
Pb 第2パッド電極