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特許7125415細胞外基質分解因子を発現する組換えアデノウイルスを含む抗がん用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】細胞外基質分解因子を発現する組換えアデノウイルスを含む抗がん用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/761 20150101AFI20220817BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220817BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20220817BHJP
   A61K 38/20 20060101ALN20220817BHJP
   A61K 38/16 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
A61K35/761 ZNA
A61K48/00
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
C12N7/01
A61K38/20
A61K38/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019552438
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 KR2017014409
(87)【国際公開番号】W WO2018106068
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2019-08-08
(31)【優先権主張番号】10-2016-0167265
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519209439
【氏名又は名称】ジーンメディスン・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チェ・オク・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョ・ミン・アン
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/069770(WO,A1)
【文献】特表2007-531519(JP,A)
【文献】国際公開第2015/153417(WO,A1)
【文献】SEO, JONG-HYUN, "Anti-tumor Effects of Oncolytic Adenovirus Co-expressing Interleukin-12 and Decorin in Combination with Radiotherapy", [online], ENGINEERING MASTER'S THESIS OF HANYANG UNIVERSITY, August 2014, [検索日2020-07-13], インターネット:<URL: http://www.riss.kr/link?id=T13525209>
【文献】Molecular Therapy (2014) vol.22, suppl.1, p.S200-S201(518)
【文献】OH, EONJU, "Escape from Treg-mediated Immunosuppression through Oncolytic Adenovirus Co-expressing interleukin-12 and Decorin", [online], June 2012, [検索日2020-07-13], MASTER'S THESIS OF YONSEI UNIVERSITY, インターネット: <URL: https://ir.ymlib.yonsei.ac.kr/bitstream/22282913/134285/1/T012527.pdf>
【文献】J. Natl. Cancer. Inst. (2006) vol.98, no.20, p.1482-1493
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/761
C12N 7/01
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-12(Interleukin 12)をコードする遺伝子;及びDecorin又はRelaxinをコードする遺伝子を含む組換え腫瘍殺傷アデノウイルスを含む、免疫チェックポイント阻害剤又は抗がん剤を補助するための薬学的組成物であって、前記組換え腫瘍殺傷アデノウイルスは、E1A遺伝子を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記組換え腫瘍殺傷アデノウイルスは、E1及びE3領域からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の領域が欠失されているものである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記IL-12をコードする遺伝子は、組換え腫瘍殺傷アデノウイルスのE1領域に挿入されるものである、請求項記載の組成物。
【請求項4】
前記Decorin又はRelaxinをコードする遺伝子は、組換え腫瘍殺傷アデノウイルスのE1又はE3領域に挿入されるものである、請求項記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、抗がん剤又は免疫チェックポイント阻害剤と同時に、別途に、又は順次的に併用投与されるものである、請求項1からのいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1(programmed cell death-1)、PD-L1(programmed cell death-ligand 1)、PD-L2(programmed cell death-ligand 2)、CD27(cluster of differentiation 27)、CD28(cluster of differentiation 28)、CD70(cluster of differentiation 70)、CD80(cluster of differentiation 80、also known as B7-1)、CD86(cluster of differentiation 86、also known as B7-2)、CD137(cluster of differentiation 137)、CD276(cluster of differentiation 276)、KIRs(killer-cell immunoglobulin-like receptors)、LAG3(lymphocyte-activation gene 3)、TNFRSF4(tumor necrosis factor receptor superfamily、member 4、also known as CD134)、GITR(glucocorticoid-induced TNFR-related protein)、GITRL(glucocorticoid-induced TNFR-related protein ligand)、4-1BBL(4-1BB ligand)、CTLA-4(cytolytic T lymphocyte associated antign-4)拮抗剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるいずれか一つであるものである、請求項記載の組成物。
【請求項7】
前記がんは、胃がん、肺がん、非小細胞性肺がん、乳がん、卵巣がん、肝がん、気管支がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸癌、子宮頸がん、骨がん、非小細胞性骨がん、血液がん、皮膚がん、頭部又は頸部がん、子宮がん、直腸がん、肛門付近がん、結腸がん、卵管がん、子宮内膜がん、膣がん、陰門がん、ホジキン病(Hodgkin's disease)、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、慢性又は急性白血病、リンパ球リンパ腫、腎臓又は輸尿管がん、腎細胞癌腫、腎骨盤癌腫、唾液腺がん、肉腫がん、偽性粘液腫、肝芽腫、精巣がん、膠芽腫、口唇がん、卵巣生殖細胞腫瘍、基底細胞がん、多発性骨髄腫、胆のうがん、脈絡膜黒色腫、ファーター膨大部がん、腹膜がん、舌がん、小細胞がん、小児リンパ腫、神経芽細胞腫、十二指腸がん、尿管がん、星状細胞腫、髄膜腫、腎盂がん、外陰がん、胸腺がん、中枢神経系(central nervous system, CNS)腫瘍、1次中枢神経系リンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫及び下垂体腺腫から構成された群から選ばれるいずれか一つであるものである、請求項1からのいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
前記がんは、再発がん(Recurrent cancer)又は抗がん剤-耐性がん(Anticancer drug-resistanced cancer)であるものである、請求項1からのいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、抗腫瘍免疫(Antitumor immunity)を増進させることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外基質分解因子を発現する組換えアデノウイルスを含む抗がん用組成物に関する。
【0002】
本発明は、大韓民国の未来創造科学部の支援の下で、課題番号20160000002116によってなされたものであって、前記課題の研究管理専門機関は、韓国研究財団、研究事業名は、理工分野基礎研究事業/中堅研究者支援事業/跳躍研究(転落-後続研究支援)、研究課題名は、選択的腫瘍制御のためのナノ物質ハイブリッド遺伝子伝達体の開発である。本発明は、大韓民国の未来創造科学部の支援の下で、課題番号20160000002536によってなされたものであって、前記課題の研究管理専門機関は、韓国研究財団、研究事業名は、源泉技術開発事業/バイオ、医療技術開発事業/次世代新薬基盤技術開発事業、研究課題名は、膵臓がん治療用の腫瘍殺傷アデノウイルス候補物質の開発及び実用化研究である。
【0003】
本特許出願は、2016年12月09日に大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2016-0167265号に対して優先権を主張し、前記特許出願の開示事項は、本明細書に参照として挿入される。
【背景技術】
【0004】
がんは、全世界的に疾病死亡の首位を占める疾病であって、手術、放射線治療、抗がん化学療法などの複合的な治療にもかかわらず、患者の50%以上が死亡する難治疾患である(WHO:World Health Report,2001)。がんの治療は、外科的手術、放射線治療、抗がん剤治療の順に発展した。初期のがんは、外科的手術が効果的であるが、転移がある殆どのがんは、手術以外の放射線治療又は抗がん剤治療の併用を必要とする。特に、これらの治療法は、正常細胞に及ぼす副作用が大きく、がん細胞の多重薬剤に対する耐性により完治率が非常に低いので、新しい抗がん治療法の開発が切実に求められている。特に、がんの再発や転移に伴う難治性耐性がんを対象とした治療剤の開発が急務である。このような現実的な必要性に応じて、2016年基準で総2356件の遺伝子治療に関する臨床試験のうち、がんを対象疾患として進行している臨床試験は、約64.4%であり、いくつかの疾患の中で最も高い頻度の臨床試験が進行中である。
【0005】
前述のように、現在使用されるがんの標準治療法には、外科的手術、放射線治療、抗がん剤治療がある。初期、すなわち、がんが局所及び近くのリンパ節まで転移したときには、外科的手術だけで完治が可能であるが、それ以上の転移が進行した場合には、治療に限界があるので、外科的手術により完治が可能ながん患者は、ごく少数に過ぎない。したがって、殆どのがんは、外科的手術のほかに、放射線と抗がん剤の治療を並行しなければならない。しかし、放射線と抗がん剤治療は両方ともに標的治療法ではないので、がん細胞と正常細胞を区分して治療できないので、一部の正常細胞も治療時に損傷を受けることになる。正常細胞の中でも急速に分裂及び増殖がなされる細胞、すなわち、骨髄で形成された血液細胞、口腔を含む胃腸管の上皮細胞、髪の毛細胞、及び精子、卵子を作り出す生殖細胞などに大きな影響を及ぼすことになる。このように、正常細胞に及ぼす副作用が大きいため、実際の腫瘍の治療率は、極めて低い状況である。
【0006】
理想的な抗がん剤なら、正常細胞に損傷を与えずに、がん細胞を除去できなければならない。残念ながら、現在までに開発されたいかなる薬物もこのような条件を満たすことはなく、ただ好ましい治療のために毒性と効果を秤にかけているだけである。最近、重点的に開発されている化学療法剤を分類してみると、第一に、新生細胞の増殖能を無くしたり、終末期の細胞となるようにして、腫瘍細胞の成熟を遮断できる、分化誘導体;第二に、悪性腫瘍細胞の表面特性を変化させて侵襲と転移できる能力を混乱させることができる、抗転移薬物;第三に、固形がん細胞における酸素欠乏状態から還元反応を誘導する、低酸素腫瘍幹細胞特異性薬物;第四に、腫瘍細胞特異的放射線薬物などがある。
【0007】
これらの新しい治療物質は、既存の抗がん化学療法に比べて抗がん効果が増進された。特に、より優れた潜在力を示している薬物としは、タキサン誘導体(例えば、ドセタキセル)、カンポセチン誘導体、チミジル酸合成阻害剤(例えば、ラルチトレックスド)、ヌクレオシド誘導体(ゲムシタビン)、5-FU経口用誘導体などがある。しかし、これらの化学療法剤の毒性は、未だに解決すべき問題として残っている。
【0008】
最近、がんの分子生物学的特性が多く究明され、特定のがん細胞だけを攻撃する標的治療薬が開発されている。標的がん治療とは、がんの成長と発生に関与する特別な分子の活動を妨害して、がんが成長して広がることを防ぐ薬剤を用いることをいう。分子と細胞の変化に焦点を合わせてみると、標的治療は、比較的正常細胞の損傷を最小化しつつ、選択的にがん細胞だけを攻撃するために、副作用を最小化できるという長所がある。標的治療剤は、殆どのがん細胞が特徴的に持っている分子を標的としてその効果を示すことができるように作製された。前記分子的標的には、がん細胞の信号伝達経路(signal transduction pathway)、血管新生(angiogenesis)、細胞間質(matrix)、細胞周期調節因子(cell cycle regulator)、細胞死滅(apoptosis)などに関与する分子が用いられているが、これらの臨床的適用に至るまではさらなる研究が必要な状況である。
【0009】
また、がんの治療のための新しいアプローチとして、身体の腫瘍特異的免疫活性を用いた免疫治療に対する研究が進行中である。しかし、がんは、腫瘍内の免疫抑制環境(immunosuppression tumor microenvironment)を誘導することにより、様々な宿主免疫反応を巧妙に回避して破壊し、結果として腫瘍の生存を持続的に維持するだけでなく、免疫体系が活性化されても活性化された抗腫瘍免疫反応から逃避できる能力を持つという点で、免疫治療に困難性があるのが実情である。したがって、腫瘍内の免疫抑制環境を改善して、がん細胞に対する免疫反応を増進させるために、IL-12、IL-18、IL-23、IFN-γ(interferon-gamma)、GM-CSF(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)、TNF-α(tumor necrosis factor alpha)のようなサイトカイン遺伝子、B7分子のような同時刺激誘発因子、直接的に抗原提示細胞(antigen presenting cell;APC)の役割を果たす樹状細胞(dentritic cell;DC)、腫瘍抗原で活性化させたT細胞、ナチュラルキラー細胞(natural killer cell;NK)などを用いた研究が多角的に進められている。特に、IL-12は、主に単核細胞(monocytes)、マクロファージ(macrophages)、DCなどのAPCから分泌され、がん細胞を効果的に除去できる細胞毒性T細胞(cytotoxic T lymphocyte;CTL)とNK細胞に直接作用してこれらを活性化させてIFN-γの分泌を誘導するだけでなく、がん細胞に対する殺傷能力も増強させることが知られている。また、ナイーブ(naive)CD4リンパ球に作用して、Th1(T helper 1)細胞への分化を促進させて、結局、抗がん免疫反応に重要な役割を果たす細胞媒介免疫反応(cell-mediated immune response)を誘導して増強させることにより、抗がん免疫反応を活性化させるのに重要な役割を果たす。
【0010】
このような技術的背景の下で、本発明者らは、E1B 55kDa遺伝子が消失した腫瘍選択的殺傷アデノウイルスであるYKL-1(Ad-E1B 55)の抗腫瘍効果を報告したことがあり、E1B遺伝子の消失とE1AのRb結合部位が変異されて、これより腫瘍選択的殺傷能が増進されたRdBアデノウイルスを用いてGM-CSFの抗腫瘍効果も報告したことがある(韓国公開特許第10-2012-0010697号)。しかし、腫瘍内の免疫抑制環境が改善されるとしても、腫瘍の低い免疫原性により、依然として、がんを完全に治療するには多くの限界点があるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、抗腫瘍効果を向上させることができる新しい治療法を開発するために鋭意努力した結果、細胞外基質分解因子を発現する腫瘍選択的殺傷組み換えアデノウイルスを製造し、前記組換えアデノウイルスは、既存の抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤との併用により、既存の抗がん剤治療の限界を克服するとともに、極めて顕著な抗腫瘍効果を示したため、これに基づいて本発明を完成させた。
【0012】
したがって、本発明の目的は、細胞と基質分解因子を発現する組換えアデノウイルスを含む、抗がん剤補助用薬学的組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、免疫チェックポイント阻害剤と併用投与され、細胞外基質分解因子を発現する組換えアデノウイルスを含む、がん治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0014】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、下記の記載から当業者が明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記のような本発明の目的を達成するために、IL-12(Interleukin 12)をコードする遺伝子;及びDecorin又はRelaxinをコードする遺伝子を含む組換えアデノウイルスを含む、抗がん剤補助用薬学的組成物を提供する。
【0016】
本発明の一具現例として、前記組換えアデノウイルスは、E1及び/又はE3領域が欠失されていてもよい。
【0017】
本発明の他の具現例として、前記IL-12をコードする遺伝子は、組換えアデノウイルスのE1領域に挿入されてもよく、前記Decorin又はRelaxinをコードする遺伝子は、組換えアデノウイルスのE1又はE3領域に挿入されてもよい。
【0018】
本発明のさらに他の具現例として、前記組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と同時に、別途に、又は順次的に併用投与されてもよく、前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1拮抗剤、PD-L1拮抗剤、CTLA-4拮抗剤、PD-L2拮抗剤、CD27拮抗剤、CD28拮抗剤、CD70拮抗剤、CD80拮抗剤、CD86拮抗剤、CD137拮抗剤、CD276拮抗剤、KIRs拮抗剤、LAG3拮抗剤、TNFRSF4拮抗剤、GITR拮抗剤、GITRL拮抗剤、4-1BBL拮抗剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるいずれか一つであってもよい。
【0019】
本発明のさらに他の具現例として、前記がんとしては、胃がん、肺がん、非小細胞性肺がん、乳がん、卵巣がん、肝がん、気管支がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸癌、子宮頸がん、骨がん、非小細胞性骨がん、血液がん、皮膚がん、頭部又は頸部がん、子宮がん、直腸がん、肛門付近がん、結腸がん、卵管がん、子宮内膜がん、膣がん、陰門がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、慢性又は急性白血病、リンパ球リンパ腫、腎臓又は輸尿管がん、腎細胞癌腫、腎骨盤癌腫、唾液腺がん、肉腫がん、偽性粘液腫、肝芽腫、精巣がん、膠芽腫、口唇がん、卵巣生殖細胞腫瘍、基底細胞がん、多発性骨髄腫、胆のうがん、脈絡膜黒色腫、ファーター膨大部がん、腹膜がん、舌がん、小細胞がん、小児リンパ腫、神経芽細胞腫、十二指腸がん、尿管がん、星状細胞腫、髄膜腫、腎盂がん、外陰がん、胸腺がん、中枢神経系腫瘍、1次中枢神経系リンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫及び下垂体腺腫から構成された群から選ばれるいずれか一つであってもよく、又は再発がん又は抗がん剤-耐性がんであってもよい。
【0020】
本発明の他の具現例として、前記組成物は、抗腫瘍免疫(Antitumor immunity)を増進させることができる。
【0021】
また、本発明は、IL-12をコードする遺伝子;Decorin又はRelaxinをコードする遺伝子を含む組換えアデノウイルスを個体に投与する段階を含む、抗がん剤の治療効能増進方法を提供する。
【0022】
また、本発明は、IL-12をコードする遺伝子と、Decorin又はRelaxinをコードする遺伝子を含む組換えアデノウイルスを個体に投与する段階を含む、がんの治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明による組換えアデノウイルスは、腫瘍組織内の細胞外基質の主要構成成分であるコラーゲンI、コラーゲンIII、ピブロネクチン、又はエラスチンなどを顕著に減少させ、ウイルスの増殖によって治療遺伝子を腫瘍細胞でのみ選択的に高発現させることにより、優れた抗腫瘍効果を示す。特に、前記組換えアデノウイルスは、既存の抗がん剤又は免疫チェックポイント阻害剤と併用投与される場合、既存の抗がん効果を有しながらも、併用投与された治療物質の腫瘍組織内での拡散及び分布を有意的に増加させて、抗腫瘍効果をさらに向上させることができるため、本発明は、がん治療技術分野の核心技術として活用できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明による腫瘍選択的殺傷アデノウイルスの腫瘍細胞特異的作用機序を概略的に示す模式図である。
図2図2は、本発明による腫瘍選択的殺傷アデノウイルスの細胞外基質(ECM)の分解機序を概略的に示す模式図である。
図3図3は、本発明による腫瘍選択的殺傷アデノウイルスの遺伝的構造を模式化したもので、図3(a)は、IL-12とDecorin(DCN)を同時発現する腫瘍選択的殺傷アデノウイルス(RdB/IL-12/DCN)の遺伝的構造を示したものであり、図3(b)は、IL-12とRelaxin(RLX)を同時発現する腫瘍選択的殺傷アデノウイルス(RdB/IL-12/RLX)の遺伝的構造を示したものである。具体的に、RdBは、変異されたE1A(open star-Rbタンパク質の結合部位の突然変異)を含み、E1B 19及び55 kDa(E1B)、及びE3領域(E3)が欠失されており;IL-12及びDCN/RLXは、アデノウイルスゲノムのE1及び/又はE3部位にそれぞれ挿入された。
図4図4は、RdB/IL-12/DCNとgemcitabineの併用投与による膵臓がん細胞株(PANC-1、MIA PaCa-2、又はAsPC-1)に対する殺傷能をMTT assayで確認した結果である。
図5図5は、RdB/IL-12/DCNとgemcitabineの併用投与による抗腫瘍効果を膵臓がん同所移植動物モデルに形成された腫瘍のサイズの変化を介して確認した結果である。
図6図6は、RdB/IL-12/DCNとgemcitabineの併用投与による抗腫瘍効果を組織学的に評価したもので、それぞれHematoxylin-eosin(H&E)染色、PCNA免疫組織染色、E1Aタンパク質の抗体を用いた免疫組織染色、及びTUNEL assayを行った結果である。
図7図7は、RdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-L1)の併用投与による抗腫瘍効果を黒色腫皮下動物モデルに形成された腫瘍のサイズの変化を介して確認した結果である。
図8図8は、RdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-L1)の併用投与による抗腫瘍効果を黒色腫皮下動物モデルの生存率の変化を介して確認した結果である。
図9図9は、RdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1、抗-PD-L1、又は抗-CTLA-4)の併用投与による抗腫瘍効果をハムスター膵臓がん皮下動物モデルに形成された腫瘍のサイズの変化を介して確認した結果である。
図10図10は、RdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1、抗-PD-L1、又は抗-CTLA-4)の併用投与によるメモリー免疫反応(再発がんの治療効果)をハムスター膵臓がん皮下動物モデルに形成された腫瘍のサイズの変化を介して確認した結果である。
図11図11は、RdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1)の併用投与による抗腫瘍効果を抗がん剤耐性誘導動物モデルに形成された腫瘍のサイズの変化を介して確認した結果である。
図12図12は、RdB/IL-12/RLXとgemcitabineの併用投与による膵臓がん細胞株(MIA PaCa-2、又はPANC-1)に対する殺傷能をMTT assayで確認した結果である。
図13図13は、RdB/IL-12/RLXとgemcitabineの併用投与による抗腫瘍効果をTUNEL assayで確認した結果である。
図14図14は、RdB/IL-12/RLXとgemcitabineの併用投与による細胞外基質分解効果をコラーゲンI、又はコラーゲンIIIの発現量の変化を介して確認した結果である。
図15a図15a及び図15bは、RdB/IL-12/RLXとgemcitabineの併用投与による細胞外基質分解効果をコラーゲンI、コラーゲンIII、ピブロネクチン、又はエラスチンの発現量の変化を介して確認した結果である。
図15b図15a参照。
図16a図16a及び図16bは、RdB/IL-12/RLXとgemcitabineの併用投与による抗腫瘍効果を組織学的に評価したもので、それぞれMT染色、picorosirius染色、及びTUNEL assayを行った結果である。
図16b図16a参照。
図17a図17a~図17cは、RdB/IL-12/RLXとgemcitabineの併用投与による抗腫瘍効果を膵臓がん皮下動物モデルに形成された腫瘍のサイズの変化を介して確認した結果である。
図17b図17a参照。
図17c図17a参照。
図18図18は、RdB/IL-12/RLXとgemcitabineの併用投与による細胞外基質分解効果を膵臓がん異種移植動物モデルに形成された腫瘍組織内のコラーゲンI、コラーゲンIV、ピブロネクチン、又はエラスチンの発現量の変化を介して確認した結果である。
図19図19は、RdB/IL-12/RLXとgemcitabineの併用投与による抗腫瘍効果を組織学的に評価したもので、それぞれHematoxylin-eosin(H&E)染色、TUNEL assay及びcleaved caspase3免疫染色を行った結果である。
図20図20は、RdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-L1)の併用投与による抗腫瘍効果を黒色腫皮下動物モデルに形成された腫瘍のサイズの変化を介して確認した結果である。
図21図21は、RdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-L1)の併用投与による抗腫瘍効果を黒色腫皮下動物モデルの生存率の変化を介して確認した結果である。
図22図22は、RdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1)の併用投与による抗腫瘍効果を黒色腫皮下動物モデルに形成された腫瘍のサイズの変化を介して確認した結果である。
図23図23は、RdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1)の併用投与による抗腫瘍効果を黒色腫皮下動物モデルの生存率の変化を介して確認した結果である。
図24図24は、RdB/IL-12/RLX(1×10VP)と免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1)の併用投与による抗腫瘍効果を黒色腫皮下動物モデルに形成された腫瘍のサイズの変化を介して確認した結果である。
図25図25は、RdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-L1、又は抗PD-1)の併用投与によるメモリー免疫反応(再発がんの治療効果)を黒色腫皮下動物モデルに形成された腫瘍のサイズの変化を介して確認した結果である。
図26図26は、RdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1)の併用投与による抗腫瘍効果を抗がん剤耐性誘導動物モデルに形成された腫瘍のサイズの変化を介して確認した結果である。
図27図27は、RdB/IL-12/RLXの併用投与による胃腫瘍組織内の抗がん剤の浸透の増進効果を抗がん剤であるtrastuzumabと免疫蛍光染色を介して確認した結果である。
図28a図28a~図28cは、RdB/IL-12/RLXの併用投与による胃腫瘍組織内の抗がん剤の分布を評価したもので、前記図27に示された領域を拡大して、腫瘍組織内のmargin部位を基準に抗がん剤の分布を確認したものである。
図28b図28a参照。
図28c図28a参照。
図29a図29a~図29cは、RdB/IL-12/RLXの併用投与による胃腫瘍組織内の抗がん剤の分布を評価したもので、腫瘍組織内の血管を基準に抗がん剤の分布を確認したものである。
図29b図29a参照。
図29c図29a参照。
図30a図30aと図30bは、RdB/IL-12/RLXの併用投与による胃腫瘍組織内の抗がん剤の滞留時間を評価したもので、PETイメージングを行った結果である。
図30b図30a参照。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明は、IL-12(Interleukin 12)をコードする遺伝子、及びDecorin又はRelaxinをコードする遺伝子を含む組換えアデノウイルスを含む、抗がん剤補助用薬学的組成物;抗がん剤の治療効能を増進させるための前記組成物の用途;及び治療学的有効量の前記組成物と抗がん剤を併用投与する段階を含む、がんの治療方法を提供する。
【0027】
本発明において用いられる用語の「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与により(腫瘍)に対する症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0028】
本発明において「個体」とは、疾病の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒト又は非-ヒトの霊長類、げっ歯類(ラット、マウス、ギニーピッグなど)、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、レイヨウなどの哺乳類を意味する。
【0029】
本発明の薬学的組成物による治療対象の疾病である「がん(cancer)」は、細胞が正常な成長の限界を無視し、分裂及び成長する攻撃的な(aggressive)特性、周囲の組織に浸透する浸透的(invasive)特性及び体内外の他の部位に広がる転移的(metastatic)特性を持つ細胞による疾病を総称する。本発明において、前記がんは、悪性腫瘍(malignant tumor)、あるいは腫瘍(tumor)と同じ意味で用いられ、固形腫瘍及び血液腫瘍(blood born tumor)を含んでもよい。例えば、本発明において、がんは、病変部位に応じて分類すると、胃がん、肺がん、非小細胞性肺がん、乳がん、卵巣がん、肝がん、気管支がん、鼻咽頭がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸癌、子宮頸がん、骨がん、非小細胞性骨がん、血液がん、皮膚がん、頭部又は頸部がん、子宮がん、直腸がん、肛門付近がん、結腸がん、卵管がん、子宮内膜がん、膣がん、陰門がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、慢性又は急性白血病、リンパ球リンパ腫、腎臓又は輸尿管がん、腎細胞癌腫、腎骨盤癌腫、唾液腺がん、肉腫がん、偽性粘液腫、肝芽腫、精巣がん、膠芽腫、口唇がん、卵巣生殖細胞腫瘍、基底細胞がん、多発性骨髄腫、胆のうがん、脈絡膜黒色腫、ファーター膨大部がん、腹膜がん、舌がん、小細胞がん、小児リンパ腫、神経芽細胞腫、十二指腸がん、尿管がん、星状細胞腫、髄膜腫、腎盂がん、外陰がん、胸腺がん、中枢神経系腫瘍、1次中枢神経系リンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫及び下垂体腺腫から構成された群から選ばれるいずれか一つであってもよく、又は病理学的特性によって分類する場合、再発がん又は抗がん剤-耐性がんであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明に用いられる用語の抗がん剤補助用薬学的組成物は、既存のがん治療物質と併用されてがんの治療効能を向上させることを意味する。一例として、抗がん剤の治療学的有効投与量を減少させて抗がん剤による副作用を最小化させたり、腫瘍の成長を有意的に阻害させることを示す。前記抗がん剤補助用薬学組成物は、抗がん補助剤又は抗がん治療補助剤などと相互交換的に使用可能である。
【0031】
本発明の一具体例において、前記抗がん剤は、代謝拮抗剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ拮抗剤、微小管拮抗剤、抗がん抗生剤、植物由来のアルカロイド、抗体抗がん剤又は分子標的抗がん剤であってもよく、より具体的には、タキソール、ナイトローゼンマスタード、イマチニブ、オキサリプラチン、リツキシマブ、エルロチニブ、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ、スニチニブ、カルボプラチン、ソラフェニブ、ベバシズマブ、シスプラチン、セツキシマブ、ビスクムアルブム、アスパラギナーゼ、トレチノイン、ヒドロキシカバマイド、ダサチニブ、エストラムスチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブチウキセタン、ヘプタプラチン、メチルアミノレブリン酸、アムサクリン、アレムツズマブ、プロカルバジン、アルプロスタジル、硝酸ホルミウムキトサン、ゲムシタビン、ドキシフルリジン、ペメトレキセド、テガフール、カペシタビン、ギメラシル、オテラシル、アザシチジン、メトトレキサート、ウラシル、シタラビン、フルオロウラシル、フルダラビン、エノシタビン、デシタビン、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン、カルモファー、ラルティトレックセッド、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ベロテカン、トポテカン、ビノレルビン、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、テニポシド、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、ミトマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ピラルビシン、アクラウビシン、ペプロマイシン、テモゾロミド、ブスルファン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルパラン、アルトレタミン、ダカルバジン、チオテパ、ニムスチン、クロラムブシル、ミトラクトール、ロムスチン及びカルムスティンイル、イメチニブ、ゲフィチニブ、エルトチニブ、トラスツズマブ、ロシレチニブ、ネシツムマブ、エバロリムス、ラムシルマブ、ダコミチニブ、フォレチニブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、ダブラフェニブ、ベリパリブ、セリチニブ、カルムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、イキサベピロン、メルファラン、メルカプトプリン、ミトキサントロン、ティーエスワンであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明の薬学的組成物に含まれる、腫瘍選択的殺傷組み換えアデノウイルスは、IL-12をコードする遺伝子;細胞外基質分解因子であるDecorin又はRelaxinをコードする遺伝子を含むことを特徴とする。
【0033】
本発明の組換えアデノウイルスとしては、当業界で広く知られているoncolyticアデノウイルスが用いられることができる。一具体例として、前記組換えアデノウイルスは、活性のE1A遺伝子及び非活性化されたE1B 19遺伝子、E1B 55遺伝子又はE1B 19/E1B 55遺伝子を含む。本明細書において、遺伝子と関連して用いられる用語の非活性化は、その遺伝子の転写及び/又は解毒が正常になされていないため、その遺伝子によってコーディングされる正常なタンパク質の機能が表れないことを意味する。例えば、非活性化E1B 19遺伝子は、その遺伝子に変異(置換、付加、部分的欠失又は全体的欠失)が発生して活性のE1B 19 kDaタンパク質を生成できない遺伝子である。E1B 19が欠失される場合には、細胞枯死能を増加させることができ、E1B 55遺伝子が欠失した場合には、腫瘍細胞の特異性を有するようにする(参照:特許出願第2002-23760号及び図1)。特に、このような腫瘍選択的殺傷アデノウイルスは、一次感染細胞に対して治療効果を示すだけでなく、増殖されたウイルスが周囲の腫瘍細胞に二次的にそして三次的に連鎖的に感染して腫瘍細胞を殺傷することにより、その治療効果がドミノ現象のように続けて広がっていくことができるため、抗腫瘍効果が顕著に増大されることができる。本明細書において、ウイルスゲノム配列と関連して用いられる用語の欠失は、該当配列が完全に欠失したものだけではなく、部分的に欠失したものも含む意味を持つ。
【0034】
本発明の一具現例によれば、前記組換えアデノウイルスは、E1A領域を含み、E1B領域、すなわち、E1B 19及び55 kDa(E1B)が欠失されており、及び/又はE3領域(E3)が欠失されている。E1A遺伝子を含む組換えアデノウイルスは、複製可能な特性を持つようになる。前記IL-12をコードする遺伝子は、組換えアデノウイルスの欠失されたE1領域に挿入され、前記Decorin又はRelaxinをコードする遺伝子は、E1又はE3領域に挿入されてもよいが、前記遺伝子の挿入部位は、適宜変更されてもよい。一方、前記E1A部位は、E1A遺伝子配列に位置したRb結合部位をコーディングするヌクレオチド配列の中で45番目のGlu残基がGlyに置換された変異及び121-127番目のアミノ酸配列が、全体的にGlyに置換された変異を有する。
【0035】
一方、前記アデノウイルス以外の他のウイルスも、本発明で用いられることができる。本発明に用いられることができるウイルスは、好ましくは、アデノ-関連ウイルス(Adeno associated viruses:AAV)(Lashford LS.,et al., Gene Therapy Technologies,Applications and Regulations Ed.A.Meager(1999)),レトロウイルス(Gunzburg WH,et al., Gene Therapy Technologies,Applications and Regulations Ed.A.Meager(1999)),レンチウイルス(Wang G.et al., J.Clin.Invest.104(11):R55-62(1999)),単純ヘルペスウイルス(Chamber R.,et al., Proc.Natl.Acid.Sci USA92:1411-1415(1995)),ワクシニアウイルス(Puhlmann M.et al., Human Gene Therapy10:649-657(1999)),レオウイルス、ポックスウイルス(GCE,NJL,Krupa M,Esteban M., The poxvirus vectors MVA and NYVAC as gene delivery systems for vaccination against infectious diseases and cancer Curr Gene Ther8(2):97-120(2008)),セムリキフォーリスターウイルス、ポリマー(Hwang et al., In vitro and In vivo Transfection Efficiency of Human Osteoprotegerin Gene using Non-Viral Polymer Carriers., Korean J.Bone Metab.13(2):119-128(2006)),リポソーム(Methods in Molecular Biology,Vol 199,S.C.Basu and M.Basu(Eds.),Human Press 2002)、ナノ物質又はニオソームに適用されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明で用いられる組換えアデノウイルスは、動物細胞、好ましくは、哺乳動物細胞で作動可能なプロモーターを含む。本発明に適したプロモーターは、哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター及び哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーターを含み、例えば、CMV(Cytomegalovirus)プロモーター、U6プロモーター、及びH1プロモーター、MLV(Murine Leukemia Virus)LTR(Long terminal repeat)プロモーター、アデノウイルス初期プロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、RSVプロモーター、EF1アルファプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、ヒトIL-2遺伝子のプロモーター、ヒトIFN遺伝子のプロモーター、ヒトIL-4遺伝子のプロモーター、ヒトリンフォトキシン遺伝子のプロモーター、ヒトGM-CSF遺伝子のプロモーター、inducibleプロモーター、がん細胞特異的プロモーター(例えば、TERTプロモーター、modified TERTプロモーター、PSAプロモーター、PSMAプロモーター、CEAプロモーター、Survivinプロモーター、E2Fプロモーター、modified E2Fプロモーター、AFPプロモーター、modified AFPプロモーター、E2F-AFP hybridプロモーター、及びE2F-TERT hybridプロモーター)、及び組織特異的プロモーター(例えば、アルブミンプロモーター)、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターを含むが、これに限定されるものではない。最も好ましくは、CMVプロモーターである。トランス遺伝子を発現させるための発現コンストラクトでトランス遺伝子のダウンストリームにポリアデニル化配列が結合されていることが好ましい。前記ポリアデニル化配列は、ウシ成長ホルモンターミネーター(Gimmi,E.R.,et al., Nucleic Acids Res.17:6983-6998(1989)),SV40由来のポリアデニル化配列(Schek,N,et al., Mol.Cell Biol.12:5386-5393(1992)),HIV-1 polyA(Klasens,B.I.F.,et al., Nucleic Acids Res.26:1870-1876(1998))、 β-グロビンpolyA(Gil,A.,et al, Cell 49:399-406(1987)),HSV TK polyA(Cole,C.N.and T.P.Stacy,Mol.Cell.Biol.5:2104-2113(1985))又はポリオーマウイルスpolyA(Batt,D.B and G.G.Carmichael,Mol.Cell.Biol.15:4783-4790(1995))を含むが、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明で用いられる組換えアデノウイルスにおいて、IL-12遺伝子配列と、Decorin又はRelaxin遺伝子配列は、プロモーターに作動的に連結されている。本明細書において、用語の「作動的に結合された」とは、核酸発現調節配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、又は転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列との間の機能的な結合を意味し、これにより前記調節配列は、前記他の核酸配列の転写及び/又は翻訳を調節するようになる。
【0038】
本発明の組換えアデノウイルスは、選択標識として抗生剤耐性遺伝子及びレポーター遺伝子(例えば、GFP(green fluorescence protein)、ルシフェラーゼ及び β-グルクロニダーゼ)をさらに含んでもよい。前記抗生剤耐性遺伝子は、当業界で通常的に用いられる抗生剤耐性遺伝子を含み、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子があり、好ましくは、ネオマイシン耐性遺伝子である。前記選択標識は、別途のプロモーター又はIRES(internal ribosome entry site)、2A system(F2A system、P2A system、T2A system)によって連結された発現システムによっても発現されることができ、本発明で用いることができるIRESは、いくつかの種のウイルス及び細胞のRNAsで発見される調節配列である。
【0039】
本発明で用いられる、「IL-12をコードする遺伝子」は、IL-12A(p35)遺伝子配列及びIL-12B(p40)遺伝子配列を含み、Viral Proteinの効果的な翻訳のために、IL-12A(p35)遺伝子配列とIL-12B(p40)遺伝子配列の間にIRES配列を含んでもよい。好ましくは、前記IL-12A(p35)遺伝子配列は配列番号1、前記IL-12B(p40)遺伝子配列は配列番号2、前記IRES配列は配列番号3の塩基配列からなることができる。前記IL-12は、T helper 1細胞の分化を誘導し、細胞毒性Tリンパ球及びナチュラルキラー細胞の細胞毒性を活性化させることにより抗腫瘍免疫を増加させる役割を果たす。
【0040】
本発明で用いられる、「Decorin又はRelaxinをコードする遺伝子」は、好ましくは、前記Decorin遺伝子配列は配列番号4、前記Relaxin遺伝子配列は配列番号5からなることができる。治療効果が比較的低い殆どの腫瘍は、細胞外基質(extra cellular matrix;ECM)の発達により、アデノウイルスが腫瘍組織に均等に拡散されずに、投与した局所部位にとどまる場合が頻繁である。前記Decorin又はRelaxinは細胞外基質の構成成分、例えば、コラーゲンI、コラーゲンIII、ピブロネクチン、又はエラスチンなどを分解して、腫瘍組織内の治療物質の拡散と分布を増加させる役割を果たし(図2参照)、さらにDecorinの場合には、それ自体が抗腫瘍効果を持っている。特に、前記効果は、腫瘍選択的殺傷組換えアデノウイルスそれ自体だけでなく、併用投与される物質の拡散及び分布にも影響を及ぼすことができるため、既存のがん治療物質との併用により、抗腫瘍効果を極大化させることに寄与し得る。
【0041】
すなわち、本発明の薬学的組成物は、このような一切の構成を含むことにより、組換えアデノウイルスそれ自体に起因する腫瘍選択的殺傷効能だけでなく、前記組成物と併用投与される抗がん剤の腫瘍組織内の浸透を継続的に向上させて、がんの治療効果を極大化させたという点において技術的特徴がある。つまり、遺伝子治療の効能は、そのまま維持しながら、従来の抗がん剤による治療効能を著しく増加させることにより、究極的には完治に近い治療効能を得ることができる。
【0042】
前記遺伝子配列は、実質的な同一性(substantial identity)又は実質的な類似性(substantial similarity)を示す遺伝子配列も含んでいるものと解釈される。前記実質的な同一性は、前記本発明の配列と任意の他の配列を最大限に対応するように整列し、当業界で通常的に用いられるアルゴリズムを用いて整列された配列を分析した場合に、最小80%の相同性、より好ましくは、90%の相同性、最も好ましくは、95%の相同性を示す配列を意味する。前記実質的な類似性は、1つ以上の塩基の欠損又は挿入のような遺伝子配列の変化が、組換えアデノウイルスベクターとの相同性組換えを最小化する本発明の目的に影響を及ぼさない変化を総称する。したがって、本発明の遺伝子配列は、例示された配列番号1~配列番号5に限定されず、本発明が目的とする最終生成物の活性に実質的に影響を与えない限り、本発明の権利範囲に含まれると解釈される。
【0043】
また、本発明の薬学的組成物は、免疫チェックポイント阻害剤(Immune checkpoint inhibitor)と同時に、別途に、又は順次的に投与されてもよい。
【0044】
本発明で用いられる用語の「免疫チェックポイント」は、免疫細胞の表面で免疫反応の刺激又は抑制信号を誘発するのに関与するタンパク質を総称し、がん細胞は、このような免疫チェックポイントを介して免疫反応の刺激及びこれによるがん細胞の抑制がうまく進行されないように操作して、免疫体系の監視網を回避することになり、すなわち、抗腫瘍免疫反応を無力化させる。好ましくは、前記免疫チェックポイントタンパク質は、PD-1(programmed cell death-1)、PD-L1(programmed cell death-ligand 1)、PD-L2(programmed cell death-ligand 2)、CD27(cluster of differentiation 27)、CD28(cluster of differentiation 28)、CD70(cluster of differentiation 70)、CD80(cluster of differentiation 80、also known as B7-1)、CD86(cluster of differentiation 86, also known as B7-2)、CD137(cluster of differentiation 137)、CD276(cluster of differentiation 276)、KIRs(killer-cell immunoglobulin-like receptors)、LAG3(lymphocyte-activation gene 3)、TNFRSF4(tumor necrosis factor receptor superfamily, member 4, also known as CD134)、GITR(glucocorticoid-induced TNFR-related protein)、GITRL(glucocorticoid-induced TNFR-related protein ligand)、4-1BBL(4-1BB ligand)、又はCTLA-4(cytolytic T lymphocyte associated antign-4)であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0045】
免疫チェックポイント阻害剤は、このような免疫チェックポイントタンパク質を標的とする拮抗剤又は抗体であって、免疫反応を刺激させるタンパク質を増進させたり、免疫反応を抑制するタンパク質を遮断して免疫反応による抗腫瘍効果を示す。免疫チェックポイント阻害剤は、一般的な細胞毒性抗がん剤よりも嘔吐や脱毛などの副作用が少なく、治療効果が大きいという長所に加えて、記憶機能に優れた免疫反応体系を用いるため、薬物投与を中止した後にも治療効果が長く持続され得る。しかし、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫抑制環境では、その治療効果が顕著に減少し、特に、一部の患者では、腫瘍の再発が報告されたことがある。
【0046】
一方、腫瘍に対する免疫遺伝子治療法は、過去数十年の間に有望なアプローチとして発展してきたが、腫瘍もこれらの免疫の監視体系を回避するための他の多くの戦略を立ててきた。これらの障害を克服し、抗腫瘍免疫の効果を増進させるために、本発明は、前述したように、IL-12及び細胞外基質分解因子を含む腫瘍選択的殺傷アデノウイルスシステムを構築し(RdB/IL12/DCN、RdB/IL12/RLX)、これとともに免疫チェックポイント阻害剤を併用することにより、本発明によるシステムがより効果的に作用できる環境を提供した。すなわち、抗腫瘍免疫反応を無力化させる腫瘍細胞の回避機序を遮断することにより、免疫遺伝子治療の効能を極大化させた。このような顕著な効果によって、本発明の薬学的組成物は、原発性がんだけでなく、従来の抗がん剤の限界として指摘されてきた再発がん及び抗がん剤耐性がんの治療に対しても有効な効果を示した。
【0047】
本発明の薬学的組成物は、有効成分に加えて、薬学的に許容される担体を含んでもよい。このとき、薬学的に許容される担体は、製剤時に通常的に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。また、前記成分以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含んでもよい。適切な薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences(19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0048】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法によって経口投与したり、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔、肺腔内又は局所に適用)することができ、本発明の一具現例によると、本発明による薬学的組成物は、好ましくは、腫瘍内(intratumorally)に直接投与されてもよい。投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路、及び時間によって異なるが、当業者によって適切に選択されてもよい。
【0049】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、薬学的に有効な量は、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物の敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に用いられる薬物を含む要素及びその他の医学分野でよく知られている要素に応じて決定されてもよい。本発明に他の薬学的組成物は、個別治療剤で投与したり、他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次的又は同時に投与されてもよく、単一又は多重投与されてもよい。前記要素をすべて考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定されてもよい。
【0050】
一方、本発明の他の態様として、本発明は、IL-12(Interleukin 12)をコードする遺伝子、及びDecorin又はRelaxinをコードする遺伝子を含む組換えアデノウイルスを含み、免疫チェックポイント阻害剤と併用投与される、がん治療用薬学的組成物;がんの治療のための組成物の用途;及び前記組成物及び免疫チェックポイント阻害剤を個体に併用投与する段階を含むがんの治療方法を提供する。
【0051】
本発明によるがん治療用薬学的組成物などは、前述した抗がん剤補助用薬学的組成物で記述したことがある技術的構成を用いるため、この両者の間に共通の内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるため、その記載を省略する。
【0052】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであるだけで、下記実施例により本発明の内容が限定されるものではない。
【0053】
[実施例]
実施例1.腫瘍選択的殺傷アデノウイルスの作製
1-1.RdB/IL-12/DCN及びRdB/IL-12/RLXの作製
アデノウイルスE3部位にdecorin又はrelaxinを発現するアデノウイルスシャトルベクターを作製するために、decorin又はrelaxinをコードする配列をpSP72 E3/CMV-polAアデノウイルスE3シャトルベクター(Yun CO.et al., Cancer Gene Ther,2005.12(1):p.61-71)にそれぞれクローニングして、pSP72 E3/DCNとpSP72 E3/RLX E3シャトルベクターを作製した。相同組換えのために、前記pSP72 E3/DCNとpSP72 E3/RLXと、それぞれアデノウイルスベクトル全体ベクターであるpdE1を大腸菌BJ5183に同時形質転換させ、pdE1/DCNとpdE1/RLXアデノウイルスプラスミドを作製した。
【0054】
IL-12を発現するAd E1シャトルベクターを構築するために、pCA14/IL12(Lee YS.et al., Clin Cancer Res,2006.12(19):p.5859-68)からマウスIL-12遺伝子を切り取り、これをpXC1RdB E1シャトルベクターにサブクローニングして、pXC1RdB/IL12E1シャトルベクターを作製した。相同組換えのために、前記pXC1RdB/IL12E1シャトルベクターとpdE1/DCN又はpdE1/RLXを大腸菌BJ5183に同時形質転換させ、これによりpRdB/IL12/DCNとpRdB/IL12/RLX Adベクターを作製した。アデノウイルスの精製、滴定(titration)及び品質分析は、先行技術に基づいて行った(Lee YS.et al., Clin Cancer Res,2006.12(19):p.5859-68,Choi KJ.et al., Gene Ther,2012.19(7):p.711-23)。
【0055】
実施例2. Decorinを発現する腫瘍選択的殺傷アデノウイルスと抗がん剤の併用
2-1.膵臓がん細胞に対する殺傷能の確認
Relaxinを発現する腫瘍選択的殺傷アデノウイルス(以下、RdB/IL-12/DCNという)と膵臓がんの標準治療剤であるgemcitabineを併用投与した場合、膵臓がん細胞に対する殺傷能が著しく増加できるかを検証した。このために、ヒトの膵臓がん細胞株であるPANC-1、MIA PaCa-2、及びAsPC-1に本発明のRdB/IL-12/DCNをそれぞれ0.5又は2 MOIの力価で感染させ、これとともにgemcitabine(0.05、0.2、1、2、5、20、又は100μg/ml)をともに処理した後、細胞死滅の程度をMTT assayを介して観察した。
【0056】
図4に示すように、gemcitabineを単独で処理した場合、PANC-1、MIA PaCa-2、及びAsPC-1の全部で、高濃度の100μg/mlの濃度でも最大30%未満の殺傷能のみが観察されたが、RdB/IL-12/DCNをgemcitabineと併用投与した場合、0.2μg/mlの低いgemcitabine濃度でも前記膵臓がん細胞株に対する殺傷能が著しく増加した。特に、このような効果は、RdB/IL-12/DCNを単独投与した場合に比べても優れており、組換えアデノウイルスの濃度が高くなるほど(2 MOI)、その効果はより顕著であった。したがって、前記実験結果は、既存の抗がん剤と本発明によるRdB/IL-12/DCNの併用投与は、抗腫瘍治療のための抗がん剤の投与容量を減らすことができるだけでなく、より強力な抗腫瘍効果を示すことを示唆するものである。
【0057】
2-2.膵臓がん同所移植動物モデルにおける抗腫瘍効果の確認
(1)腫瘍のサイズの変化の確認
膵臓がん同所移植動物モデルを構築するために、human pancreatic cancer cell lineであるMIA PaCa-2-Flucを選定して実験に使用した。腫瘍細胞をマウスの膵臓に注入し、これから2週間後、IVISイメージングマシンを介して腫瘍の生成を確認した。以後、RdB/IL-12/DCNを2×1010 VP/500μLずつ2日間隔で腹腔内に3回投与し、gemcitabineは、100mg/kgで一週間に2回ずつ、総3週間投与した。一方、陰性対照群としてはPBS単独投与群を使用した。RdB/IL-12/DCN投与前の腫瘍のサイズ及びphoton値をIVISイメージングマシンを用いて確認し、投与後1週間、2週間、及び3週間目、腫瘍のサイズの変化を定量的に比較した。
【0058】
図5に示すように、陰性対照群(PBS)及びgemcitabine単独投与群(gemcitabine)では、腫瘍のサイズの急激な増加が観察された反面、併用投与群(Ad+ gemcitabine)では、これらの腫瘍の成長が鈍化されただけでなく(1週間及び2週間)、さらに3週間目には、むしろ、腫瘍のサイズが著しく減少されることを確認できた。前記実験の結果は、既存の抗がん剤とRdB/IL-12/DCNの併用投与による抗腫瘍効果は、これら夫々の単独投与に比べて非常に顕著であることを示すものである。
【0059】
(2)抗腫瘍効果の組織学的評価
前記実験における抗腫瘍効果を組織学的に評価した。まず、human pancreatic cancer cell lineであるMIA PaCa-2-Flucをマウス膵臓に注入して、腫瘍の形成を誘導した後、PBS、gemcitabine、RdB/IL-12/DCN、又はgemcitabine+RdB/IL-12/DCNをそれぞれ投与した。以後、前記腫瘍組織を回収してHematoxylin-eosin(H&E)染色、PCNA免疫組織染色を行った。また、腫瘍細胞の死滅程度を確認するためにTUNEL assayを行い、前記抗腫瘍効果が、腫瘍組織内に存在するアデノウイルスの複製によるものかを確認するために、アデノウイルスのE1Aタンパク質に対する抗体を用いた免疫組織染色を行った。
【0060】
図6に示すように、PBS又はgemcitabine単独投与群では、細胞壊死が殆ど観察されなかった反面、RdB/IL-12/DCN単独、又はgemcitabine+RdB/IL-12/DCNを併用投与した場合、腫瘍内の細胞の壊死が非常に活発に進行された。特に、gemcitabineとRdB/IL-12/DCNを併用投与した群は、腫瘍の大部分で細胞壊死が起こったことを確認した。また、前記結果と同様に、PBS又はgemcitabine単独投与群に比べて、RdB/IL-12/DCN単独、又はgemcitabine+RdB/IL-12/DCN投与群で腫瘍細胞の増殖が顕著に減少されることをPCNA免疫組織染色を介して観察し、gemcitabineとRdB/IL-12/DCNを併用投与した群では、その効果が最も顕著であった。併せて、細胞死滅程度もまたRdB/IL-12/DCN単独、又はgemcitabine+RdB/IL-12/DCN投与群、特に、gemcitabineとRdB/IL-12/DCNを併用投与した群で高レベルの細胞死滅を確認した。最後に、アデノウイルスのE1Aタンパク質に対する抗体を用いた免疫組織染色を行った結果、PBS又はgemcitabineのみ投与したマウスの腫瘍に比べて、RdB/IL-12/DCN単独、又はgemcitabine+RdB/IL-12/DCNを投与したマウスの腫瘍でアデノウイルスのE1Aタンパク質が著しく増加したことを確認できた。
【0061】
これらの結果を総合してみると、decorinによってRdB/IL-12/DCNの腫瘍組織内分布が増加し、これによって腫瘍選択的殺傷アデノウイルスの活発な複製及び腫瘍細胞に対する殺傷が誘導される。また、腫瘍組織内に分布するRdB/IL-12/DCNの活発な増殖によってdecorinの遺伝子が高発現されることによって、再び腫瘍細胞の死滅がさらに促進され、併用投与された抗がん剤の効能を増進させて強力な抗腫瘍効果を引き起こすことが分かる。
【0062】
実施例3.Decorinを発現する腫瘍選択的殺傷アデノウイルスと免疫チェックポイント阻害剤の併用
3-1.黒色腫皮下動物モデルにおける抗腫瘍効果の確認
黒色腫細胞株であるB16-F10マウス皮下に1匹あたり5×10cells/50μLを注入した後、約10日後、腫瘍のサイズが約100mmに到達したとき、5×10 VPのRdB/IL-12/DCNを単独、又は200μgの力価で免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-L1)とともに併用投与しつつ、これによる腫瘍のサイズの変化を観察した。併用投与時、RdB/IL-12/DCNを1日、3日、及び5日目に総3回腫瘍内に投与し、免疫チェックポイント阻害剤は、3日、6日、及び9日目に総3回腹腔内に投与した。一方、陰性対照群としては、PBS単独投与群を使用した。
【0063】
図7及び図8に示すように、腫瘍選択的殺傷アデノウイルス(RdB/IL-12/DCN)を免疫チェックポイント阻害剤と併用投与した場合、RdB/IL-12/DCN又は免疫チェックポイント阻害剤の単独投与群に比べて、腫瘍のサイズの増加が著しく減少され、黒色腫皮下動物モデルの生存率が大幅に向上されることを確認した。したがって、前記実験結果は、本発明によるRdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤の併用投与は、より強力で効果的な抗がん治療剤として用いられることを示すものである。
【0064】
3-2.ハムスター膵臓がん皮下動物モデルにおける抗腫瘍効果の確認
体内の免疫機能を保有しつつ、組換えウイルスの体内複製が可能なハムスターモデルを用いて、RdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤の併用投与による抗腫瘍免疫反応を確認した。ハムスターの膵臓がん細胞株であるHap-T1をハムスターの皮下に注入した後、腫瘍のサイズが約100mmに到達したとき、2×10VPのRdB/IL-12/DCNを単独、又は700μgの力価で免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1、抗-PD-L1、又は抗-CTLA-4)とともに併用投与しつつ、これによる腫瘍のサイズの変化を観察した。併用投与時、RdB/IL-12/DCNを2日おきに総3回腫瘍内に投与し、免疫チェックポイント阻害剤は、総3回腹腔内に投与した。一方、陰性対照群としては、PBS単独投与群を使用した。
【0065】
図9に示すように、腫瘍選択的殺傷アデノウイルス(RdB/IL-12/DCN)を免疫チェックポイント阻害剤併用投与した結果、RdB/IL-12/DCN又は免疫チェックポイント阻害剤単独投与群に比べて、腫瘍サイズの増加が著しく減少され、このような傾向は、3種類の免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1、抗-PD-L1、又は抗-CTLA-4)の全部において同一に示された。具体的に、投与21日経過後、免疫チェックポイント阻害剤単独投与群それぞれは(抗-PD-1、抗-PD-L1、又は抗-CTLA-4)、陰性対照群に比べて腫瘍の成長を約35.4%、38.8%、又は7.2%抑制させるに止まったが、RdB/IL-12/DCN単独投与群それぞれの場合、腫瘍の成長を約89.8%、57.7%、又は48.2%まで抑制させることができた。特に、RdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤を併用投与した場合には、陰性対照群に比べて腫瘍の成長をそれぞれ95.7%、82.1%、又は78.1%まで抑制させることができたため、前述の抗腫瘍効果を再度検証できた。
【0066】
3-3.ハムスター膵臓がん皮下動物モデルにおけるメモリー免疫反応の確認
腫瘍選択的殺傷アデノウイルスと免疫チェックポイント阻害剤の併用投与による抗腫瘍メモリー免疫反応を検証した。最初に腫瘍が生成されてから49日後、腫瘍が完全に消えたマウス(RdB/IL-12/DCN単独、又はRdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤の併用投与群)を対象に、以前と同じ条件でHap-T1細胞を注入して腫瘍を再度形成した。以後、RdB/IL-12/DCNを単独、又は免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1、抗-PD-L1、又は抗-CTLA-4)とともに併用投与しつつ、以前と同様に腫瘍の成長を観察した。
【0067】
図10に示すように、RdB/IL-12/DCNを単独処理した群では、rechallenageした腫瘍が再び急激に成長した反面、RdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1、抗-PD-L1、又は抗-CTLA-4)を併用投与した場合には、依然として腫瘍の成長が抑制されることを確認した。したがって、前記実験結果は、本発明によるRdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤の併用投与は、強力な抗腫瘍メモリー免疫反応を誘導して、再発がん治療にも効果的であることを示す。
【0068】
3-4.抗がん剤耐性誘導動物モデルにおける抗腫瘍効果の確認
抗がん剤の耐性などにより抗がん剤による抗腫瘍効果が微々たる条件で、RdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体;αPD-1)の併用投与による生体内の抗腫瘍効果を検証した。B16-F10マウス黒色腫細胞株をC57BL/6マウスの脇腹皮下に注射(5×10cells)した後、形成された腫瘍(day1、約50mm)にtaxol(day1、2、3;10mg/kg)を腹腔内注射し、RdB/IL-12/DCN単独(day3、5、7、9、5×10VP)、αPD-1単独(day4、7、8、10、200μg)、又はRdB/IL-12/DCN及びαPD-1併用投与(それぞれ同じ条件)した後、腫瘍の成長を観察した。一方、陰性対照群としては、PBS単独投与群を使用した。
【0069】
図11に示すように、抗がん剤を最初に投与した後、15日目(day16)、PBS、taxol、又はαPD-1のみを単独投与した場合、腫瘍のサイズがそれぞれ7649.0±798.5mm、5394.5±288.2mm、又は5814.2±471.6mmで腫瘍の急激な成長を確認した反面、RdB/IL-12/DCN単独、又はRdB/IL-12/DCN及びαPD-1併用投与群では、腫瘍のサイズがそれぞれ2374.0±776.2mm又は669.8±335.2mmで有意的な抗腫瘍効果を示した。特に、RdB/IL-12/DCN及びαPD-1の併用投与群は、RdB/IL-12/DCN単独投与群に比べて、腫瘍のサイズが約71.8%減少されたため、その効果が非常に顕著であった(P<0.01)。これらの実験の結果は、本発明によるRdB/IL-12/DCNと免疫チェックポイント阻害剤の併用投与は、従来の抗がん剤の抗腫瘍効果をより向上させる水準に止まるのではなく、抗がん剤の耐性などの生体内の要因により抗がん剤の効果が微々たる場合でも、有意的な抗腫瘍効果を付与する、顕著な効果を示すものである。
【0070】
実施例4.Relaxinを発現する腫瘍選択的殺傷アデノウイルスと抗がん剤の併用
4-1.膵臓がん細胞に対する殺傷能の確認
Relaxinを発現する腫瘍選択的殺傷アデノウイルスと膵臓がんの標準治療剤であるgemcitabineを併用投与した場合、膵臓がん細胞に対する殺傷能が著しく増加できるかを検証した。このために、膵臓がん細胞株であるMIA PaCa-2とPANC-1にRdB/IL-12/RLXをそれぞれ0.1、0.5、1又は2MOIの力価で感染させ、gemcitabine0.01μM又は0.05μMを同時に処理した後、細胞死滅の程度をMTT assayを介して観察した。一方、陰性対照群としては、非処理群を使用した。
【0071】
図12に示すように、RdB/IL-12/RLX(YDC002)をgemcitabineと併用投与した場合、gemcitabineを単独で処理した場合に比べて、膵臓がん細胞株に対する殺傷能が著しく増加した。特に、このような効果は、RdB/IL-12/RLXを単独投与した場合に比べても優れており、組換えアデノウイルスの濃度が高くなるほど(2MOI)、その効果はより顕著であった。したがって、前記実験結果は、既存の抗がん剤と本発明によるRdB/IL-12/RLXの併用投与は、抗腫瘍治療のための抗がん剤の投与量を減らすことができるだけでなく、より強力な抗腫瘍効果を示すことを示唆するものである。
【0072】
4-2.抗腫瘍効果の組織学的評価
前記実験における抗腫瘍効果を組織学的に評価した。まず、膵臓がん細胞株であるMIA PaCa-2又はPANC-1にRdB/IL-12/RLX単独(0.5又は1MOI)、gemcitabine単独(0.02又は0.05μM)、又はRdB/IL-12/RLXとgemcitabineを併用投与した後、腫瘍細胞の死滅程度を確認するために、TUNEL assayを行った。一方、陰性対照群としては、非処理群を使用した。また、膵臓がん細胞株でRdB/IL-12/RLXによる細胞外基質(ECM;extracellular matrix)の変化を確認した。前記腫瘍細胞内のコラーゲンI、コラーゲンIIIのmRNA発現量を測定するためにqPCRを行い、膵臓がん組織(球状体)内の細胞外基質の変化及びこれによる細胞死滅効果を免疫組織染色、MT染色、及びPicorosirius染色などを介して確認した。
【0073】
図13に示すように、MIA PaCa-2及びPANC-1細胞の全部で、対照群又はgemcitabine単独投与群に比べて、RdB/IL-12/RLX単独、又はRdB/IL-12/RLX及びgemcitabine併用投与群で腫瘍細胞の死滅が著しく増加されることを観察し、RdB/IL-12/RLX及びgemcitabineを併用投与した群でその効果が最も顕著であった。ヒト膵臓がん細胞株であるMIA PaCa-2及びPANC-1にRdB/IL-12/RLXを1 MOIで感染させた後、72時間目、コラーゲンI及びコラーゲンIIIのmRNA発現量を比較した結果、図14に示すように、RdB/IL-12/RLX単独、又はRdB/IL-12/RLX及びgemcitabine併用投与群では、前記mRNA発現量が他の群に比べて著しく減少した。これと同様に、図15a、図15b、図16a及び図16bに示すように、RdB/IL-12/RLX単独、又はRdB/IL-12/RLX及びgemcitabine併用投与群で、コラーゲンI、コラーゲンIII、ピブロネクチン、及びエラスチンの発現量が大きく減少されることを確認し、これによって、腫瘍細胞の死滅が大きく向上されることを確認した。
【0074】
これらの結果を総合してみると、relaxinによって細胞外基質の発現が減少し、これによって、腫瘍選択的殺傷アデノウイルス及び併用投与された抗がん剤の効能を増進させて抗腫瘍効果を極大化させることが分かる。
【0075】
4-3.膵臓がん皮下動物モデルにおける抗腫瘍効果の確認
RdB/IL-12/RLXとgemcitabineの併用投与による抗腫瘍効果を膵臓がん皮下動物モデルで検証した。PANC-1、MIA PaCa-2、又はBxPC-3細胞をマウスの皮下に注入して腫瘍の形成を誘導した後、RdB/IL-12/RLXを単独、又はgemcitabine(10mg/kg)とともに併用投与(腫瘍内に投与)しつつ、これによる腫瘍のサイズの変化を観察した。一方、陰性対照群としてはPBS単独投与群を使用した。
【0076】
図17a~図17cに示すように、膵臓がん皮下動物モデル(PANC-1、MIAPaCa-2、又はBxPC-3)の全部で共通して、陰性対照群(PBS)及びgemcitabine単独投与群(Gemcitabine)では、腫瘍サイズの急激な増加が観察された反面、RdB/IL-12/RLXを単独又はRdB/IL-12/RLXとgemcitabineを併用投与した群では、腫瘍の成長が大きく鈍化したことを確認し、特に、このような効果は、併用投与した場合、非常に顕著である。前記実験の結果は、既存の抗がん剤とRdB/IL-12/RLXの併用投与による抗腫瘍効果は、これらそれぞれの単独投与に比べて非常に顕著であることを示すものである。
【0077】
4-4.膵臓がん異種移植動物モデルにおける抗腫瘍効果の確認
膵臓がん異種移植動物モデルを構築するために、マウス皮下にMIA PaCa-2を5×10で注入した後、腫瘍のサイズが50-100mmに到達したとき、2×10pfuのRdB/IL-12/RLXを単独、又は1.5mg/kgのgemcitabineとともに併用投与しつつ、これによる細胞外基質の変化及び細胞死滅効果を観察した。併用投与時、RdB/IL-12/RLXは、2日おきに総3回腫瘍内に投与し、gemcitabineは、1回腹腔内に投与した。以後、免疫組織染色及びHematoxylin-eosin(H&E)染色を行い、細胞死滅の程度を確認するために、TUNEL assay及びcleaved caspase3の免疫染色を行った。一方、陰性対照群としては、PBS単独投与群を使用した。
【0078】
図18に示すように、RdB/IL-12/RLXとgemcitabineを併用投与した群では、他の群に比べて、MIA PaCa-2腫瘍組織内のコラーゲンI、コラーゲンIV、ピブロネクチン、及びエラスチンの全部が著しく減少した。また、図19に示すように、陰性対照群、gemcitabine又はRdB/IL-12/RLX単独投与群では、腫瘍内の細胞の壊死又は死滅がほとんど進行しなかったり、微弱だった反面、RdB/IL-12/RLXとgemcitabineを併用投与した群では、細胞壊死又は死滅が活発に進行されることが分かった。すなわち、前記実験結果は、前記抗がん剤と本発明によるRdB/IL-12/RLXの併用投与による抗腫瘍効果を再度検証するものである。
【0079】
実施例5.Relaxinを発現する腫瘍選択的殺傷アデノウイルスと免疫チェックポイント阻害剤の併用
5-1.黒色腫皮下動物モデルにおける抗腫瘍効果の確認
黒色腫細胞株であるB16-F10マウス皮下に1匹あたり5×10cells/50μLを注入した後、約7-14日後、腫瘍のサイズが100-150mmに到達したとき、5×10VPのRdB/IL-12/RLXを単独、又は200μgの力価で免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-L1又は抗-PD1)とともに併用投与しつつ、これによる腫瘍のサイズの変化及び前記動物モデルの生存率を評価した。併用投与時、RdB/IL-12/RLXを1日、3日、及び5日目に総3回腫瘍内に投与し、免疫チェックポイント阻害剤は、3日、6日、及び9日目に総3回腹腔内に投与した。一方、陰性対照群としては、PBS単独投与群を使用した。
【0080】
図20図23に示すように、腫瘍選択的殺傷アデノウイルス(RdB/IL-12/RLX)を免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-L1又は抗-PD1)と併用投与した結果、RdB/IL-12/RLX又は免疫チェックポイント阻害剤の単独投与群よりも腫瘍サイズの増加が著しく減少され、黒色腫皮下動物モデルの生存率が大幅に向上されることを確認した。また、前記実験において、腫瘍選択的殺傷アデノウイルスであるRdB/IL-12/RLX単独投与による抗腫瘍効果が非常に強力で、併用投与の優れた効果を証明することに困難性があった。したがって、RdB/IL-12/RLX投与濃度を5倍減少させ(1×10VP)、再実験を行った結果、図24に示すように、RdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD1)を併用投与した群の抗腫瘍効果がRdB/IL-12/RLX単独投与群に比べて顕著であることを確認できた。したがって、前記実験結果は、本発明によるRdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤の併用投与は、より強力で効果的な抗がん治療剤として用いられることを示すものである。
【0081】
5-2.黒色腫皮下動物モデルにおけるメモリー免疫反応の確認
腫瘍選択的殺傷アデノウイルスと免疫チェックポイント阻害剤の併用投与による抗腫瘍メモリー免疫反応を検証した。最初に腫瘍が生成されてから50日後、腫瘍が完全に消えたマウス(RdB/IL-12/RLX及び免疫チェックポイント阻害剤の併用投与群)を対象に、以前と同じ条件でB16-F10細胞を注入して、腫瘍を再度形成した。以後、RdB/IL-12/RLXを単独、又は免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1、及び抗-PD-L1)とともに併用投与しつつ、以前と同様に腫瘍の成長を観察した。
【0082】
図25に示すように、RdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤(抗-PD-1、抗-PD-L1)を併用投与した場合には、腫瘍の成長が格段に減少されることを確認した。したがって、前記実験結果は、本発明によるRdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤の併用投与は、強力な抗腫瘍メモリー免疫反応を誘導して、再発がんの治療にも効果的であることを示す。
【0083】
5-3.抗がん剤耐性誘導動物モデルにおける抗腫瘍効果の確認
抗がん剤耐性などにより抗がん剤による抗腫瘍効果が微々たる条件で、RdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体;αPD-1)の併用投与による生体内抗腫瘍効果を検証した。B16-F10マウス黒色腫細胞株をC57BL/6マウスの脇腹皮下に注射(5×10cells)した後、形成された腫瘍(day1、約50mm)にtaxol(day1、2、3;10mg/kg)を腹腔内に注射し、RdB/IL-12/DCN単独(day3、5、7、9;5×10VP)、αPD-1単独(day4、7、8、10;200μg)、又はRdB/IL-12/DCN及びαPD-1併用投与(それぞれ同じ条件)した後、腫瘍の成長を観察した。一方、陰性対照群としては、PBS単独投与群を使用した。
【0084】
図26に示すように、抗がん剤を最初に投与した後、15日目(day 16)、PBS、taxol、又はαPD-1のみ単独投与した場合、腫瘍のサイズがそれぞれ7649.0±798.5mm、5394.5±288.2mm、又は5814.2±471.6mmで腫瘍の急激な成長を確認した反面、RdB/IL-12/RLX単独、又はRdB/IL-12/RLX及びαPD-1併用投与群では、腫瘍のサイズがそれぞれ2817.1±776.2mm又は633.9±141.9mmで有意的な抗腫瘍効果を示した。特に、RdB/IL-12/RLX及びαPD-1の併用投与群は、RdB/IL-12/RLX単独投与群に比べて、腫瘍のサイズが約77.5%減少されたため、その効果が非常に顕著であった(P<0.01)。これらの実験の結果は、本発明によるRdB/IL-12/RLXと免疫チェックポイント阻害剤の併用投与は、従来の抗がん剤の抗腫瘍効果をより向上させるレベルにとどまるものではなく、抗がん剤耐性などの生体内の要因により抗がん剤の効果が微々たる場合でも、有意的な抗腫瘍効果を付与する、顕著な効果を示すものである。
【0085】
実施例6.Relaxinを発現する腫瘍選択的殺傷アデノウイルスの腫瘍組織内浸透効果の確認
免疫蛍光染色を行って腫瘍組織内の治療物質の浸透及び拡散程度を確認した。NCIN87胃腫瘍組織にPBS、PBS及びtrastuzumab(150μg/mice)、又はRdB/IL-12/RLX(2.5×1010VP)及びtrastuzumabを併用投与した後、Alexa488で標識されたtrastuzumabの腫瘍組織内浸透及び分布様相を比較した。
【0086】
図27に示すように、PBS及びtrastuzumabを投与した腫瘍組織の場合、trastuzumabの分布が腫瘍組織の中心部よりも枠の部位で集中的に分布していた反面、RdB/IL-12/RLX及びtrastuzumabを併用投与した場合、trastuzumabが腫瘍全体にかけて均等に分布されることを確認し、特に、腫瘍組織の中心部まで拡散されていることが分かる。また、図27に示された領域を拡大して観察してみると、図28a~図28cに示すように、PBS及びtrastuzumabを投与した腫瘍組織の場合、陰性対照群に比べてtrastuzumabの浸透が増加されたが、腫瘍組織のmargin部位から離れるほどtrastuzumabの蛍光が陰性対照群の水準に減少した。しかし、RdB/IL-12/RLX及びtrastuzumabを併用投与した腫瘍組織の場合、margin部位だけでなく、margin部位から遠く離れた中心部でもtrastuzumabの浸透が高い水準で維持されることを確認した。併せて、腫瘍組織の血管を中心に拡大して観察してみると、図29a~図29cに示すように、PBS及びtrastuzumabを投与した腫瘍組織の場合、trastuzumabが血管周囲でのみ増加している反面、RdB/IL-12/RLX及びtrastuzumabを併用投与した腫瘍組織の場合、血管周囲だけでなく、血管から遠く離れた地域にもtrastuzumabが浸透していることを確認した。最後に、trastuzumabの腫瘍組織内の標的と滞在時間を調べるために、trastuzumabを64Cu-DOTAで標識した後、PETイメージングを行った。その結果、図30a及び図30bに示すように、PBS及びtrastuzumab(150μg/mice)を投与した場合に比べて、RdB/IL-12/RLX(2.5×1010VP)及びtrastuzumabを併用投与した場合、投与後15時間が経過し始めつつ、生体内に分布するtrastuzumabが腫瘍組織に集中され、投与後60時間が経過するまでtrastuzumabが腫瘍組織に依然として残っていることを確認した。
【0087】
これらの結果を総合してみると、RdB/IL-12/RLXによる腫瘍組織内の細胞外基質の発現阻害は、trastuzumabの腫瘍内の浸透及び拡散効果をより増進させて抗腫瘍効果を向上させることができるため、RdB/IL-12/RLXは、既存の抗がん剤などと併用投与する形態で用いることにより、より強力な抗腫瘍効果を提供する。
【0088】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せずに、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることが理解できるだろう。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15a
図15b
図16a
図16b
図17a
図17b
図17c
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28a
図28b
図28c
図29a
図29b
図29c
図30a
図30b
【配列表】
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