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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】消音器
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/02 20060101AFI20220817BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20220817BHJP
【FI】
F01N1/02 F
F01N13/08 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020034995
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021139295
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正也
(72)【発明者】
【氏名】梶川 正博
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特公昭41-5207(JP,B1)
【文献】特公昭41-5325(JP,B1)
【文献】独国特許出願公開第102008020721(DE,A1)
【文献】特開平7-158529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に排気を通過させる流路を有する筒状の排気管と、
前記流路から分岐し、前記排気管との間に前記流路に隣接する複数の閉空間を形成する空間形成部材と、
を備え、
前記複数の閉空間と、前記流路とは、それぞれ1つの連通孔を介して連通するように構成され、
前記複数の閉空間は、前記排気管を前記流路における排気の流れ方向と直交する断面で切断したときに、前記排気管の径方向に並べて配置される
消音器。
【請求項2】
請求項1に記載の消音器であって、
前記それぞれ1つの連通孔は、前記排気管の軸方向に離間した位置に配置され、
前記複数の閉空間は、長手方向での長さが概ね等しくなる
ように構成される消音器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の消音器であって、
前記空間形成部材は、前記排気管の周囲において排気の流れ方向に沿って延びる前記複数の閉空間を形成するように配置され、前記排気管とともに多重管を構成する消音器。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の消音器であって、
前記連通孔は、前記複数の閉空間における長手方向の端部にそれぞれ備えられる消音器。
【請求項5】
請求項4に記載の消音器であって、
前記長手方向は、前記排気管における排気の流れ方向と一致するように構成される消音器。
【請求項6】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の消音器であって、
前記複数の閉空間は、前記排気管における排気の流れ方向を長手方向とする空間が、前記排気管の周方向に沿って複数並べて配置されて構成される消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の排気システムとして、排気流路の上流側に配置される触媒と、排気流路の下流側に配置されるメインマフラとの間に、サブマフラを設けたものが知られている。例えば、下記特許文献1には、サブマフラに用いられる消音器として、内管と外管とを備える二重管構造であり、内管に連通孔を設けることで内管と外管との間の空間と内管の内側とが連通し、空間を内管の分岐管として機能する構成が開示されている。このとき連通孔が、空間における長手方向の中間に位置するように設定し、複数の周波数の音波の消音を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭61-138813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成では、分岐管として機能する空間の容積が不足しやすく、特定の周波数の音波を低減することが不十分になりやすいという問題がある。
本開示の1つの局面は、消音器において、特定の周波数の音波を良好に低減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、消音器であって、排気管と、空間形成部材と、を備える。排気管は、内部に排気を通過させる流路を有し、筒状に構成される。空間形成部材は、流路から分岐し、排気管との間に流路に隣接する複数の閉空間を形成する。複数の閉空間と流路とは、それぞれ1つの連通孔を介して連通する。
【0006】
このような構成によれば、サイドブランチ型の消音器が構成され、複数の閉空間を共鳴室として機能させることができる。また、複数の閉空間を設けることで容積を確保しやすくすることができるので、特定の周波数の音波の消音性能を向上させることができる。
【0007】
本開示の一態様では、複数の閉空間は、排気管を流路における排気の流れ方向と直交する断面で切断したときに、排気管の径方向又は周方向に並べて配置されてもよい。
このような構成によれば、ブランチ管として機能する独立した複数の閉空間を配置することができる。
【0008】
本開示の一態様では、空間形成部材は、排気管の周囲において排気の流れ方向に沿って延びる複数の閉空間を形成するように配置され、排気管とともに多重管を構成してもよい。
このような構成によれば、消音器を多重管で構成することができるので、排気管から周方向に延びる分岐管を有する消音器と比較して、消音器を小型化することができる。
【0009】
本開示の一態様では、連通孔は、複数の閉空間における長手方向の端部にそれぞれ備えられてもよい。
このような構成によれば、より閉空間の長手方向の長さを確保しやすくすることができるので、低周波の消音を効果的に行うことができる。
【0010】
本開示の一態様では、長手方向は、排気管における排気の流れ方向と一致するように構成されてもよい。なお、上記の一致には略一致を含む。
このような構成によれば、閉空間の長さを確保しやすくすることができる。
【0011】
本開示の一態様では、複数の閉空間は、排気管における排気の流れ方向を長手方向とする空間が、排気管の周方向に沿って複数並べて配置されて構成されてもよい。
このような構成によれば、排気管に隣接する複数の閉空間を効率的に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】排気システムの概略構成を示す平面図である。
図2】消音器のII-II断面図である。
図3図2に示す消音器の拡大図である。
図4】消音器のIV-IV断面図である。
図5】周波数と透過損失(TL)との関係を示すグラフである。
図6】他の実施形態の消音器である。
図7】他の実施形態の消音器におけるVII-VII断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す排気システム1は、内燃機関の排気流路を構成する。排気システム1は、触媒コンバータ2と、サブマフラとしての消音器3と、メインマフラ4とを備える。
【0014】
排気システム1が適用される内燃機関としては、特に限定されないが、自動車、鉄道、船舶、建機等の輸送機器、発電施設などで駆動用又は発電用として用いられるものが挙げられる。
【0015】
触媒コンバータ2は、排気G中の環境汚染物質を改質又は捕集する。触媒コンバータ2は、触媒等を有する。メインマフラ4は、消音器3を通過した排気Gをさらに消音する。
触媒コンバータ2と消音器3とは第1配管5Aによって接続されている。消音器3とメインマフラ4とは第2配管5Bによって接続されている。メインマフラ4を通過した排気Gは、第3配管5Cから排出される。
【0016】
<消音器>
消音器3は、図2乃至図4に示すように、それぞれ筒状に形成された、内管7、中管8、及び外管9を備える。なお、図3は消音器3の拡大図であり、特に、図2における破線円の部分の拡大図である。消音器3は、内管7、中管8、及び外管9による三重管構造である。なお、内管7は本開示での排気管に相当し、中管8及び外管9は本開示での空間形成部材に相当する。
【0017】
(内管)
内管7は、内部を排気Gが通過するように円筒状に構成されている。具体的には、触媒コンバータ2を通過した排気Gが上流側の端部(図2及び図3では左側)から内管7の内部に導入され、図2の矢印の方向に沿って流通し、下流側の端部から排出される。
【0018】
(中管及び外管)
中管8は、図2乃至図4に示すように、内管7の外周面を囲うように配置されている。中管8の全長は、内管7よりも短く設定され、軸方向の上流側端部にて縮径し、内管7に隙間なく接合される。
【0019】
外管9は、図2乃至図4に示すように、中管8のさらに外周面を囲うように配置されている。つまり、外管9は、内周側に中管8及び内管7が配置される。なお、外管9の軸方向の両端部は、内管7の両端部よりも軸方向外側に延伸している。
【0020】
また、外管9は、両端部にて縮径し、それぞれ内管7に隙間なく接合される。また、図2において、消音器3の下流側での、中管8及び内管7の接合部位を8X、外管9及び内管7の接合部位を9Xで示す。
【0021】
特に、外管9の上流側では、内管7との接合部位よりも下流側で、中管8と隙間なく接合される。また、外管9の下流側では、中管8及び内管7の接合部位8Xよりも軸方向の下流側で縮径し、中管8及び内管7の接合部位8Xよりも下流側で、内管7との接合部位9Xを形成する。つまり、外管9の下流側では、外管9と中管8との間、及び外管9内管7との間に空隙が形成される。
【0022】
内管7、中管8、及び外管9の断面は、中心軸を同一とする同心円を構成し、外管9の内径は、中管8の外形よりも大きく、また、中管8の内径は内管7の外径よりも大きく設定される。
【0023】
この構成によって、中管8及び外管9は、内管7の周囲において、内管7との間に流路に隣接し、かつ排気Gの流れ方向に沿って延びる複数の閉空間11,12を形成する。換言すれば、複数の閉空間11,12における長手方向は、内管7における排気Gの流れ方向と一致するように構成される。
【0024】
また、複数の閉空間11,12は、内管7を流路における排気Gの流れ方向と直交する断面で切断したときに、内管7の径方向に並べて配置される。
(連通孔)
内管7は、複数の連通孔71,72を有する。複数の連通孔71,72は、何れも内管7の下流側の端部付近に配置されている。複数の連通孔71,72は、内管7の軸方向に離間した位置、すなわち内管7の軸方向においてずれて設けられている。
【0025】
上流側の連通孔71は、中管8と内管7との接合部位8X付近であって、この接合部位8Xよりも上流側に配置される。上流側の連通孔71は、中管8と内管7との間に設けられた空隙である閉空間11に、内管7の内部を連通させている。
【0026】
また、下流側の連通孔72は、中管8と内管7との接合部位8Xの下流側、かつ外管9と内管7との接合部位9Xの上流側に配置される。下流側の連通孔72は、外管9と中管8との間に設けられた空隙である閉空間12に、内管7の内部を連通させている。
【0027】
複数の閉空間11,12と内管7における排気Gの流路とは、それぞれ1つの連通孔71,72のみを介して連通する。連通孔71,72は、複数の閉空間11,12における長手方向の端部、本実施形態では下流側の端部にそれぞれ備えられる。ただし、連通孔71,72の位置は、複数の閉空間11,12における厳密な端部である必要はなく、閉空間11,12が単一の周波数(厳密には当該単一の周波数の倍数を含む)の音波を減衰させる機能を備える程度の位置であればよい。
【0028】
複数の閉空間11,12は、図4に示すように、内管7を流路における排気Gの流れ方向と直交する断面で切断したときに、互いに直接連通することがないように配置される。つまり、複数の閉空間11,12は、連通孔71,72及び内管7の流路を介してのみ連通する独立した閉空間を構成する。
【0029】
各連通孔71,72の形状は、例えば、真円(図6及び図7参照)とされる。なお、各連通孔71,72の形状には、楕円形、多角形等、任意の形状を採用できる。
消音器3を含む排気流路構成部材によって構成される排気流路(つまり図1の排気システム1全体における排気流路)において気柱共鳴が発生する場合、排気流路内で発生する定在波の腹部に対応する位置に、各連通孔71,72が配置される。これらの構成により、連通孔71,72によって定在波の音圧の低減を図ることが可能となる。
【0030】
一方で、消音器3は、複数の連通孔71,72を介して排気流路と閉空間11,12とが連通されていることにより、サイドブランチ型消音器としても機能する。つまり、消音器3は、定在波の音圧の低減とサイドブランチによる消音とを両立させることができる。
【0031】
特に、本実施形態の閉空間11,12は、内管7等の軸方向が長手方向となるように構成され、図2に示すように、閉空間11,12の長手方向の長さL11及びL12は、概ね同じ長さになるように構成される。つまり、閉空間11,12は、重ね合わせの原理により、同じ周波数の音波を効果的に減衰させる。また、消音器3では、2つの連通孔71,72の位置を軸方向にずらして配置しているので、閉空間11,12の長手方向の長さL11,L12を長く調整することが可能となる。
【0032】
ここで、図5は、排気Gにて生じる音波の周波数と消音器における透過損失(TL:Transmission Loss)との関係を示すグラフである。透過損失とは、消音器の入口及び出口の平均入射音エネルギと平均通過音エネルギとの比で定まる、消音器本体での減衰量であり、図5では、TLが大きいほど消音効果が高いことを示している。図5において、太い実線は上記の消音器3を示し、細い実線及び粗い破線は二重管として構成された消音器を示す。また、細かい破線は、内管7のみのパイプである。
【0033】
図5を参照すると、太い実線で示す消音器3の透過損失は、二重管として構成された消音器、或いは内管7のみのパイプよりも充分大きく、消音器3は、良好に消音効果を得られることが分かる。
【0034】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)本開示の一態様は、消音器3であって、内管7と、中管8及び外管9と、を備える。内管7は、内部に排気Gを通過させる流路を有する筒状である。
【0035】
中管8及び外管9は、流路から分岐し、内管7との間に流路に隣接する複数の閉空間11,12を形成する。複数の閉空間11,12と流路とは、それぞれ1つの連通孔71,72を介して連通する。
【0036】
このような構成によれば、サイドブランチ型の消音器3が構成され、複数の閉空間11,12を共鳴室として機能させることができる。また、複数の閉空間11,12を設けることで容積を確保しやすくすることができるので、特定の周波数の音波の消音性能を向上させることができる。
【0037】
(1b)本開示の一態様では、複数の閉空間11,12は、内管7を流路における排気Gの流れ方向と直交する断面で切断したときに、内管7の径方向又は周方向に並べて配置される。
【0038】
このような構成によれば、独立した複数の閉空間11,12を確実に配置することができる。
(1c)本開示の一態様では、中管8及び外管9は、内管7の周囲において排気Gの流れ方向に沿って延びる複数の閉空間11,12を形成するように配置され、内管7とともに多重管を構成する。
【0039】
このような構成によれば、消音器3を多重管で構成することができるので、内管7から周方向に延びる分岐管を有する消音器3と比較して、消音器3を小型化することができる。
(1d)本開示の一態様では、連通孔71,72は、複数の閉空間11,12における長手方向の端部にそれぞれ備えられてもよい。
【0040】
このような構成によれば、より閉空間11,12の長手方向の長さを確保しやすくすることができるので、サイドブランチによる消音を図る場合において、低周波の消音を効果的に行うことができる。
(1e)本開示の一態様では、長手方向は、内管7における排気Gの流れ方向と一致するように構成される。
【0041】
このような構成によれば、閉空間11,12の長さを確保しやすくすることができる。
(1f)本開示の一態様では、複数の閉空間11,12は、内管7における排気Gの流れ方向を長手方向とする空間が、内管7の周方向に沿って複数並べて配置されて構成される。
【0042】
このような構成によれば、内管7に隣接する複数の閉空間11,12を効率的に配置することができる。
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0043】
(2a)上記実施形態では、実施形態では本開示の排気管が内管7である場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、本開示の排気管は中管8又は外管9であってもよい。このような構成の場合、この中管8又は外管9の内側に複数の閉空間11,12を構成する内管を備えるとよい。
【0044】
(2b)上記実施形態の消音器3では、複数の閉空間11,12を内管7の径方向外側に隣接して並べて配置したが、これに限定されるものではない。例えば、図6及び図7に示す消音器3Aように、複数の閉空間11A,12A、13A,14A,15A,16A(11A~16A)を内管7の周方向に並べて配置してもよい。
特に、図6及び図7に示す例では、消音器3Aを内管7及び外管9の二重構造とし、内管7の外側にて外管9を軸方向に沿って複数個所にて折り曲げることで閉空間11A~16Aを形成する。閉空間11A~16Aは内管7の内部を介してのみ、互いに連通するように構成してもよい。つまり、内管7には、閉空間11A~16Aに対応して、それぞれ、1つずつの連通孔81,84等が設けられてもよい。なお、外管9は、周方向に複数に分割した部品を合わせて構成すると製造しやすい。
【0045】
(2c)上記実施形態では、複数の閉空間11,12の下流側に連通孔71,72を配置したが、複数の閉空間11,12の上流側に連通孔71,72を配置してもよい。この場合、消音器3の上流側と下流側とを反転して配置してもよい。
(2d)上記実施形態では、消音器3を三重管として構成したが、三重管以外の多重管として構成してもよい。
【0046】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…排気システム、2…触媒コンバータ、3,3A…消音器、4…メインマフラ、5A…第1配管、5B…第2配管、5C…第3配管、7…内管、8…中管、9…外管、8X,9X…接合部位、10…空隙、11,12,11A~16A…閉空間、71,72,81,84…連通孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7