(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】液晶性組成物、高分子液晶化合物、光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220817BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220817BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20220817BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20220817BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20220817BHJP
C08F 20/30 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/1337 520
G02F1/1337 515
G02F1/1337 525
C08L101/12
C09K19/38
C08F20/30
(21)【出願番号】P 2020191491
(22)【出願日】2020-11-18
(62)【分割の表示】P 2018559590の分割
【原出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2016255956
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017145568
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】松山 拓史
(72)【発明者】
【氏名】星野 渉
(72)【発明者】
【氏名】新居 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 直弥
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-237513(JP,A)
【文献】特開2009-229524(JP,A)
【文献】特開2009-098596(JP,A)
【文献】特開2007-272185(JP,A)
【文献】特開2010-138283(JP,A)
【文献】特開2004-012929(JP,A)
【文献】米国特許第10527758(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
G02F 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子液晶化合物と、二色性物質と、界面改良剤と、を含有し、
前記界面改良剤の含有量が、前記高分子液晶化合物と前記二色性物質との合計100質量部に対し、0.001~5質量部であり、
下記式(1)において、P1、L1およびSP1総体のlogP値と、M1のlogP値との差が、4.12以上である、液晶性組成物。
【化1】
前記式(1)中、P1は繰り返し単位の主鎖であって下記式(P1-A)で表される基を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
【化2】
前記式(P1-A)中、R
1は水素原子を表し、*は前記式(1)におけるL1との結合位置を表す。
【請求項2】
前記式(1)におけるSP1が、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む、請求項1に記載の液晶性組成物。
【請求項3】
前記高分子液晶化合物が、さらに、下記式(2)で表される繰り返し単位を含み、
下記式(2)において、P2、L2およびSP2総体のlogP値と、M2のlogP値との差が、4未満である、請求項1または2に記載の液晶性組成物。
【化3】
前記式(2)中、P2は繰り返し単位の主鎖を表し、L2は単結合または2価の連結基を表し、SP2はスペーサー基を表し、M2はメソゲン基を表し、T2は末端基を表す。
【請求項4】
前記高分子液晶化合物が、さらに、下記式(3)で表される繰り返し単位を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶性組成物。
【化4】
前記式(3)中、P3は繰り返し単位の主鎖を表し、L3は単結合または2価の連結基を表し、SP3はスペーサー基を表し、T3は末端基を表す。
【請求項5】
前記高分子液晶化合物が、前記式(1)で表される繰り返し単位を2種以上含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶性組成物。
【請求項6】
前記高分子液晶化合物の重量平均分子量が10000以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶性組成物。
【請求項7】
前記高分子液晶化合物の重量平均分子量が10000未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶性組成物。
【請求項8】
前記高分子液晶化合物が、下記式(4)で表される星型ポリマーである、請求項1
または2に記載の液晶性組成物。
【化5】
前記式(4)中、n
Aは3以上の整数を表し、複数のPIはそれぞれ独立に前記式(1
)で表される繰り返し単
位を含むポリマー鎖を表し、Aは星型ポリマーの核となる原子団を表す
。
【請求項9】
前記高分子液晶化合物が、さらに、下記式(2)で表される繰り返し単位および下記式(3)で表される繰り返し単位の少なくとも一方を含み、
下記式(2)において、P2、L2およびSP2総体のlogP値と、M2のlogP値との差が、4未満であり、
前記高分子液晶化合物が、下記式(4)で表される星型ポリマーである、請求項1または2に記載の液晶性組成物。
【化6】
前記式(2)中、P2は繰り返し単位の主鎖を表し、L2は単結合または2価の連結基を表し、SP2はスペーサー基を表し、M2はメソゲン基を表し、T2は末端基を表す。
【化7】
前記式(3)中、P3は繰り返し単位の主鎖を表し、L3は単結合または2価の連結基を表し、SP3はスペーサー基を表し、T3は末端基を表す。
【化8】
前記式(4)中、n
A
は3以上の整数を表し、複数のPIはそれぞれ独立に前記式(1)~(3)で表される繰り返し単位のいずれかを含むポリマー鎖を表し、Aは星型ポリマーの核となる原子団を表す。ただし、複数のPIのうちの少なくとも1つは、前記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー鎖を表す。
【請求項10】
前記二色性物質が架橋性基を有する、請求項1~
9のいずれか1項に記載の液晶性組成物。
【請求項11】
前記二色性物質が、ジスアゾまたはトリスアゾ化合物である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の液晶性組成物。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の液晶性組成物を用いて形成される、光吸収異方性膜。
【請求項13】
基材と、前記基材上に設けられる請求項
12に記載の光吸収異方性膜とを有する、積層体。
【請求項14】
さらに、前記光吸収異方性膜上に設けられるλ/4板を有する、請求項
13に記載の積層体。
【請求項15】
請求項
12に記載の光吸収異方性膜、または、請求項
13もしくは請求項
14に記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性組成物、高分子液晶化合物、光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光や自然光を含む照射光の減衰機能、偏光機能、散乱機能、遮光機能などが必要となった際には、それぞれの機能ごとに異なった原理によって作動する装置を利用していた。そのため、上記の機能に対応する製品も、それぞれの機能別に異なった製造工程によって製造されていた。
例えば、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)では、表示における旋光性および複屈折性を制御するために直線偏光板および円偏光板が用いられている。また、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)においても、外光の反射防止のために円偏光板が使用されている。
【0003】
従来、これらの偏光板(偏光素子)には、ヨウ素が二色性物質として広く使用されてきたが、ヨウ素の代わりに有機色素を二色性物質として使用する偏光素子についても検討されている。
例えば、特許文献1には、「少なくとも1種のサーモトロピック液晶性二色性色素、及び少なくとも1種のサーモトロピック液晶性高分子を含有し、上記サーモトロピック液晶性二色性色素の光吸収異方性膜中における質量含有率が30%以上であることを特徴とする光吸収異方性膜。」が記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載された光吸収異方性膜について検討したところ、光吸収異方性膜の形成に用いられるサーモトロピック液晶性高分子の種類によっては、二色性物質の配向度の低下に伴って、光吸収異方性膜の配向度が不十分となる場合があり、改善の余地があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、高い配向度の光吸収異方性膜を形成できる高分子液晶化合物、液晶性組成物、それを用いた光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、二色性物質とともに配合する高分子液晶化合物として、主鎖からスペーサー基までのlogP値と、メソゲン基のlogP値との差が4以上となる繰り返し単位を有する高分子液晶化合物を用いることで、配向度が高い光吸収異方性膜を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
[1]
後述する式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子液晶化合物と、二色性物質と、を含有し、
後述する式(1)において、P1、L1およびSP1のlogP値と、M1のlogP値との差が、4以上である、液晶性組成物。
後述する式(1)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
[2]
後述する式(1)におけるSP1が、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む、[1]に記載の液晶性組成物。
[3]
上記高分子液晶化合物が、さらに、後述する式(2)で表される繰り返し単位を含み、
下記式(2)において、P2、L2およびSP2のlogP値と、M2のlogP値との差が、4未満である、[1]または[2]に記載の液晶性組成物。
後述する式(2)中、P2は繰り返し単位の主鎖を表し、L2は単結合または2価の連結基を表し、SP2はスペーサー基を表し、M2はメソゲン基を表し、T2は末端基を表す。
[4]
上記高分子液晶化合物が、さらに、後述する式(3)で表される繰り返し単位を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の液晶性組成物。
後述する式(3)中、P3は繰り返し単位の主鎖を表し、L3は単結合または2価の連結基を表し、SP3はスペーサー基を表し、T3は末端基を表す。
[5]
上記高分子液晶化合物が、後述する式(1)で表される繰り返し単位を2種以上含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の液晶性組成物。
[6]
上記高分子液晶化合物の重量平均分子量が10000以上である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の液晶性組成物。
[7]
上記高分子液晶化合物の重量平均分子量が10000未満である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の液晶性組成物。
[8]
上記高分子液晶化合物が、後述する式(4)で表される星型ポリマーである、[1]~[7]のいずれか1つに記載の液晶性組成物。
後述する式(4)中、nAは3以上の整数を表し、複数のPIはそれぞれ独立に後述する式(1)~(3)で表される繰り返し単位のいずれかを含むポリマー鎖を表し、Aは星型ポリマーの核となる原子団を表す。ただし、複数のPIのうちの少なくとも1つは、後述する式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー鎖を表す。
[9]
後述する式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子液晶化合物であって、
後述する式(1)において、P1、L1およびSP1のlogP値と、M1のlogP値との差が、4以上である、高分子液晶化合物。
後述する式(1)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
[10]
後述する式(1)におけるSP1が、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む、[9]に記載の高分子液晶化合物。
[11]
上記高分子液晶化合物が、さらに、後述する式(2)で表される繰り返し単位を含み、
後述する式(2)において、P2、L2およびSP2のlogP値と、M2のlogP値との差が、4未満である、[9]または[10]に記載の高分子液晶化合物。
後述する式(2)中、P2は繰り返し単位の主鎖を表し、L2は単結合または2価の連結基を表し、SP2はスペーサー基を表し、M2はメソゲン基を表し、T2は末端基を表す。
[12]
上記高分子液晶化合物が、さらに、後述する式(3)で表される繰り返し単位を含む、[9]~[11]のいずれか1つに記載の高分子液晶化合物。
後述する式(3)中、P3は繰り返し単位の主鎖を表し、L3は単結合または2価の連結基を表し、SP3はスペーサー基を表し、T3は末端基を表す。
[13]
上記高分子液晶化合物が、後述する式(1)で表される繰り返し単位を2種以上含む、[6]~[9]のいずれか1つに記載の高分子液晶化合物。
[14]
上記高分子液晶化合物の重量平均分子量が10000以上である、[9]~[13]のいずれか1つに記載の高分子液晶化合物。
[15]
上記高分子液晶化合物の重量平均分子量が10000未満である、[9]~[13]のいずれか1つに記載の高分子液晶化合物。
[16]
上記高分子液晶化合物が、後述する式(4)で表される星型ポリマーである、[9]~[15]のいずれか1つに記載の高分子液晶化合物。
後述する式(4)中、nAは3以上の整数を表し、複数のPIはそれぞれ独立に後述する式(1)~(3)で表される繰り返し単位のいずれかを含むポリマー鎖を表し、Aは星型ポリマーの核となる原子団を表す。ただし、複数のPIのうちの少なくとも1つは、後述する式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー鎖を表す。
[17]
[1]~[8]のいずれか1つに記載の液晶性組成物を用いて形成される、光吸収異方性膜。
[18]
基材と、上記基材上に設けられる[17]に記載の光吸収異方性膜とを有する、積層体。
[19]
さらに、上記光吸収異方性膜上に設けられるλ/4板を有する、[18]に記載の積層体。
[20]
[17]に記載の光吸収異方性膜、または、[18]もしくは[19]に記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い配向度の光吸収異方性膜を形成できる高分子液晶化合物、液晶性組成物、それを用いた光吸収異方性膜、積層体および画像表示装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、「アクリル酸」および「メタクリル酸」の総称であり、(メタ)アクリロイルとは、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の総称である。
【0011】
[液晶性組成物]
本発明の液晶性組成物は、後述する式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子液晶化合物と、二色性物質と、を含有し、後述する式(1)において、P1(以下、「主鎖」ともいう。)、L1、およびSP1(以下、「スペーサー基」ともいう。)のlogP値と、M1(以下、「メソゲン基」ともいう。)のlogP値との差が、4以上である。
本発明の液晶性組成物によれば、配向度の高い光吸収異方性膜を形成できる。この理由の詳細は明らかではないが、概ね以下のように推定している。
logP値は、化学構造の親水性および疎水性の性質を表現する指標である。後述する式(1)で表される繰り返し単位は、主鎖、L1およびスペーサー基のlogP値と、メソゲン基のlog値と、が所定値以上離れているので、主鎖からスペーサー基までの構造とメソゲン基との相溶性が低い状態にある。これにより、高分子液晶化合物の結晶性が高くなり、高分子液晶化合物の配向度が高い状態にあると推測される。このように、高分子液晶化合物の配向度が高いと、高分子液晶化合物と二色性物質との相溶性が低下して(すなわち、二色性物質の結晶性が向上する)、二色性物質の配向度が向上すると推測される。その結果、得られる光吸収異方性膜の配向度が高くなったと考えられる。
【0012】
〔高分子液晶化合物〕
<繰り返し単位(1)>
本発明の高分子液晶化合物は、下記式(1)で表される繰り返し単位(本明細書において、「繰り返し単位(1)」ともいう。)を含む。また、繰り返し単位(1)において、P1、L1およびSP1のlogP値と、M1のlogP値との差が4以上である。
【0013】
【0014】
式(1)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
【0015】
P1が表す繰り返し単位の主鎖としては、具体的には、例えば、下記式(P1-A)~(P1-D)で表される基が挙げられ、なかでも、原料となる単量体の多様性および取り扱いが容易である観点から、下記式(P1-A)で表される基が好ましい。
【0016】
【0017】
式(P1-A)~(P1-D)において、「*」は、式(1)におけるL1との結合位置を表す。式(P1-A)において、R1は水素原子またはメチル基を表す。式(P1-D)において、R2はアルキル基を表す。
式(P1-A)で表される基は、(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルの部分構造の一単位であることが好ましい。
式(P1-B)で表される基は、エチレングリコールを重合して得られるポリエチレングリコールにおけるエチレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-C)で表される基は、プロピレングリコールを重合して得られるプロピレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-D)で表される基は、シラノールの縮重合によって得られるポリシロキサンのシロキサン単位であることが好ましい。ここで、シラノールは、式Si(R2)3(OH)で表される化合物である。式中、複数のR2はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。ただし、複数のR2の少なくとも1つはアルキル基を表す。
【0018】
L1は、単結合または2価の連結基である。
L1が表す2価の連結基としては、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-C(O)NR3-、-NR3C(O)-、-S(O)2-、および、-NR3R4-などが挙げられる。式中、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表わす。上記2価の連結基の具体例において、左側の結合手がP1と結合し、右側の結合手がSP1と結合する。
P1が式(P1-A)で表される基である場合には、L1は-C(O)O-で表される基が好ましい。
P1が式(P1-B)~(P1-D)で表される基である場合には、L1は単結合が好ましい。
【0019】
SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいことや、原材料の入手性などの理由から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことが好ましい。
ここで、SP1が表すオキシエチレン構造は、*-(CH2-CH2O)n1-*で表される基が好ましい。式中、n1は1~20の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。n1は、本発明の効果がより優れる理由から、2~10の整数であることが好ましく、2~4の整数がより好ましく、3であることが最も好ましい。
また、SP1が表すオキシプロピレン構造は、*-(CH(CH3)-CH2O)n2-*で表される基が好ましい。式中、n2は1~3の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すポリシロキサン構造は、*-(Si(CH3)2-O)n3-*で表される基が好ましい。式中、n3は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すフッ化アルキレン構造は、*-(CF2-CF2)n4-*で表される基が好ましい。式中、n4は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
【0020】
M1が表すメソゲン基とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基である。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態の中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。メソゲン基については特に制限はなく、例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」(VEB Deutsche Verlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊)、特に第7頁~第16頁の記載、および、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)、特に第3章の記載、を参照することができる。
メソゲン基としては、例えば、芳香族炭化水素基、複素環基、および脂環式基からなる群より選択される少なくとも1種の環状構造を有する基が好ましい。
メソゲン基は、本発明の効果がより優れる理由から、芳香族炭化水素基を有するのが好ましく、2~4個の芳香族炭化水素基を有するのがより好ましく、3個の芳香族炭化水素基を有するのがさらに好ましい。
【0021】
メソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性および合成適性という観点、ならびに、本発明の効果がより優れるから、下記式(M1-A)または下記式(M1-B)で表される基が好ましく、式(M1-B)で表される基がより好ましい。
【0022】
【0023】
式(M1-A)中、A1は、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。これらの基は、アルキル基、フッ化アルキル基またはアルコキシ基などの置換基で置換されていてもよい。
A1で表される2価の基は、4~6員環であることが好ましい。また、A1で表される2価の基は、単環でも、縮環であってもよい。
*は、SP1またはT1との結合位置を表す。
【0024】
A1が表す2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、メソゲン骨格の設計の多様性や原材料の入手性などの観点から、フェニレン基またはナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0025】
A1が表す2価の複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよいが、配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
2価の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
2価の芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基などが挙げられる。
【0026】
A1が表す2価の脂環式基の具体例としては、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基などが挙げられる。
【0027】
式(M1-A)中、a1は1~10の整数を表す。a1が2以上である場合には、複数のA1は同一でも異なっていてもよい。
【0028】
式(M1-B)中、A2およびA3はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。A2およびA3の具体例および好適態様は、式(M1-A)のA1と同様であるので、その説明を省略する。
式(M1-B)中、a2は1~10の整数を表し、a2が2以上である場合には、複数のA2は同一でも異なっていてもよく、複数のA3は同一でも異なっていてもよく、複数のLA1は同一でも異なっていてもよい。a2は、本発明の効果がより優れる理由から、2以上の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(M1-B)中、a2が1である場合には、LA1は2価の連結基である。a2が2以上である場合には、複数のLA1はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基であり、複数のLA1のうち少なくとも1つが2価の連結基である。a2が2である場合、本発明の効果がより優れる理由から、2つのLA1のうち、一方が2価の連結基であり、他方が単結合であることが好ましい。
【0029】
式(M1-B)中、LA1が表す2価の連結基としては、-O-、-(CH2)g-、-(CF2)g-、-Si(CH3)2-、-(Si(CH3)2O)g-、-(OSi(CH3)2)g-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)2-C(Z’)2-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z”は独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、および、-C(O)S-などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、-C(O)O-が好ましい。LA1は、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
【0030】
M1の具体例としては、例えば以下の構造が挙げられる。なお、下記具体例において、「Ac」は、アセチル基を表す。
【0031】
【0032】
【0033】
T1が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基(ROC(O)-:Rはアルキル基)、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、および、炭素数1~10のウレイド基、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基などが挙げられる。上記(メタ)アクリロイルオキシ基含有基としては、例えば、-L-A(Lは単結合又は連結基を表す。連結基の具体例は上述したL1及びSP1と同じである。Aは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す)で表される基が挙げられる。
T1は、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシがより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。これらの末端基は、これらの基、または、特開2010-244038号公報に記載の重合性基によって、さらに置換されていてもよい。
T1の主鎖の原子数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~7が特に好ましい。T1の主鎖の原子数が20以下であることで、光吸収異方性膜の配向度がより向上する。ここで、T1おける「主鎖」とは、M1と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT1の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T1がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T1がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
【0034】
繰り返し単位(1)の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、高分子液晶化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、20~100質量%が好ましく、30~99.9質量%がより好ましく、40~99.0質量%がさらに好ましい。
本発明において、高分子液晶化合物に含まれる各繰り返し単位の含有量は、各繰り返し単位を得るために使用される各単量体の仕込み量(質量)に基づいて算出される。
繰り返し単位(1)は、高分子液晶化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。高分子液晶化合物が繰り返し単位(1)を2種以上含むと、高分子液晶化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。繰り返し単位(1)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0035】
繰り返し単位(1)を2種以上含む場合には、T1に重合性基を含まない繰り返し単位(1)と、T1に重合性基を含む繰り返し単位(1)と、を併用してもよい。これにより、光吸収異方性膜の硬化性がより向上する。
この場合、高分子液晶化合物中における、T1に重合性基を含まない繰り返し単位(1)に対する、T1に重合性基を含む繰り返し単位(1)の割合(T1に重合性基を含む繰り返し単位(1)/T1に重合性基を含まない繰り返し単位(1))が、質量比で0.005~4が好ましく、0.01~2.4がより好ましい。質量比が4以下であると、配向度に優れるという利点がある。質量比が0.05以上であると、光吸収異方性膜の硬化性がより向上する。
【0036】
(logP値)
式(1)において、P1、L1およびSP1のlogP値(以下、「logP1」ともいう。)と、M1のlogP値(以下、「logP2」ともいう。)との差(|logP1-logP2|)が4以上であり、光吸収異方性膜の配向度がより向上する観点から、4.25以上が好ましく、4.5以上がより好ましい。
また、上記差の上限値は、液晶相転移温度の調整および合成適性という観点から、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。
ここで、logP値は、化学構造の親水性および疎水性の性質を表現する指標であり、親疎水パラメータと呼ばれることがある。logP値は、ChemBioDraw UltraまたはHSPiP(Ver.4.1.07)などのソフトウェアを用いて計算できる。また、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Sections 1,Test No.117の方法などにより、実験的に求めることもできる。本発明では特に断りのない限り、HSPiP(Ver.4.1.07)に化合物の構造式を入力して算出される値をlogP値として採用する。
【0037】
上記logP1は、上述したように、P1、L1およびSP1のlogP値を意味する。「P1、L1およびSP1のlogP値」とは、P1、L1およびSP1を一体とした構造のlogP値を意味しており、P1、L1およびSP1のそれぞれのlogP値を合計したものではない。具体的には、logP1は、式(1)におけるP1~SP1までの一連の構造式を上記ソフトウェアに入力することで算出される。
ただし、logP1の算出にあたって、P1~SP1までの一連の構造式のうち、P1で表される基の部分に関しては、P1で表される基そのものの構造(例えば、上述した式(P1-A)~式(P1-D)など)を用いてもよいし、式(1)で表される繰り返し単位を得るために使用する単量体を重合した後にP1になりうる基の構造を用いてもよい。
ここで、後者(P1になりうる基)の具体例は、次の通りである。P1が(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られる場合には、CH2=C(R1)-で表される基(R1は、水素原子またはメチル基を表す。)である。また、P1がエチレングリコールの重合によって得られる場合にはエチレングリコールであり、P1がプロピレングリコールの重合により得られる場合にはプロピレングリコールである。また、P1がシラノールの重縮合により得られる場合にはシラノール(式Si(R2)3(OH)で表される化合物。複数のR2はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。ただし、複数のR2の少なくとも1つはアルキル基を表す。)である。
【0038】
logP1は、上述したlogP2との差が4以上であれば、logP2よりも低くてもよいし、logP2よりも高くてもよい。
ここで、一般的なメソゲン基のlogP値(上述したlogP2)は、4~6の範囲内になる傾向がある。このとき、logP1がlogP2よりも低い場合には、logP1の値は、1以下が好ましく、0以下がより好ましい。一方で、logP1がlogP2よりも高い場合には、logP1の値は、8以上が好ましく、9以上がより好ましい。
上記式(1)におけるP1が(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られ、かつ、logP1がlogP2よりも低い場合には、上記式(1)におけるSP1のlogP値は、0.7以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。一方、上記式(1)におけるP1が(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られ、かつ、logP1がlogP2よりも高い場合には、上記式(1)におけるSP1のlogP値は、3.7以上が好ましく、4.2以上がより好ましい。
なお、logP値が1以下の構造としては、例えば、オキシエチレン構造およびオキシプロピレン構造などが挙げられる。logP値が6以上の構造としては、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造などが挙げられる。
【0039】
<繰り返し単位(2)>
本発明の高分子液晶化合物は、さらに、下記式(2)で表される繰り返し単位(本明細書において、「繰り返し単位(2)」ともいう。)を含んでいてもよい。これにより、高分子液晶化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。
式(2)において、P2、L2およびSP2のlogP値と、M2のlogP値との差が、4未満である。すなわち、繰り返し単位(2)は、少なくとも構造中のlogP値の差の点において、上記繰り返し単位(1)と異なる。
なお、「P2、L2およびSP2のlogP値」の定義は、上述したlogP1と同様であるので、その説明を省略する。
高分子液晶化合物が繰り返し単位(2)を含む場合には、高分子液晶化合物は、繰り返し単位(1)と繰り返し単位(2)との共重合体であり、ブロック重合体、交互重合体、ランダム重合体、および、グラフト重合体など、いずれの重合体であってもよい。
【0040】
【0041】
式(2)中、P2は繰り返し単位の主鎖を表し、L2は単結合または2価の連結基を表し、SP2はスペーサー基を表し、M2はメソゲン基を表し、T2は末端基を表す。
式(2)におけるP2、L2、SP2、M2およびT2の具体例はそれぞれ、上記式(1)におけるP1、L1、SP1、M1およびT1と同様である。
ここで、式(2)におけるT2は、光吸収異方性膜の強度が向上する観点から、重合性基を有することが好ましい。
【0042】
繰り返し単位(2)を含有する場合の含有量は、高分子液晶化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0.5~50質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましい。
繰り返し単位(2)は、高分子液晶化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(2)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
特に、繰り返し単位(2)におけるT2が重合性基を有する場合、T2が重合性基を有する繰り返し単位(2)の含有量は、高分子液晶化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0.5~60質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましい。T2が重合性基を有する繰り返し単位(2)の含有量が0.5質量%以上であると、光吸収異方性膜の強度がより向上する。T2が重合性基を有する繰り返し単位(2)の含有量が60質量%以下であると、配向度により優れるという利点がある。
【0043】
<繰り返し単位(3)>
本発明の高分子液晶化合物は、さらに、下記式(3)で表される繰り返し単位(本明細書において、「繰り返し単位(3)」ともいう。)を含んでいてもよい。これにより、高分子液晶化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。
繰り返し単位(3)は、少なくともメソゲン基を有しないという点で、上記繰り返し単位(1)および上記繰り返し単位(2)と異なる。
高分子液晶化合物が繰り返し単位(3)を含む場合には、高分子液晶化合物は、繰り返し単位(1)と繰り返し単位(3)との共重合体であり(さらに、繰り返し単位(2)を含む共重合体であってもよい)、ブロック重合体、交互重合体、ランダム重合体、および、グラフト重合体など、いずれの重合体であってもよい。
【0044】
【0045】
式(3)中、P3は繰り返し単位の主鎖を表し、L3は単結合または2価の連結基を表し、SP3はスペーサー基を表し、T3は末端基を表す。
式(3)におけるP3、L3、SP3およびT3の具体例はそれぞれ、上記式(1)におけるP1、L1、SP1およびT1と同様である。
ここで、式(3)におけるT3は、光吸収異方性膜の強度が向上する観点から、重合性基を有することが好ましい。
【0046】
繰り返し単位(3)を含有する場合の含有量は、高分子液晶化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0.5~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
繰り返し単位(3)は、高分子液晶化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(3)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
特に、繰り返し単位(3)におけるT3が重合性基を有する場合、T3が重合性基を有する繰り返し単位(3)の含有量は、高分子液晶化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0.5~60質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましい。T3が重合性基を有する繰り返し単位(3)の含有量が0.5質量%以上であると、光吸収異方性膜の強度がより向上する。T3が重合性基を有する繰り返し単位(3)の含有量が60質量%以下であると、配向度に優れるという利点がある。
【0047】
<星型ポリマー>
本発明の高分子液晶化合物は、星型ポリマーであってもよい。本発明における星型ポリマーとは、核を起点として延びるポリマー鎖を3つ以上有するポリマーを意味し、具体的には、下記式(4)で表わされる。
高分子液晶化合物として式(4)で表される星型ポリマーは、高溶解性(溶媒に対する溶解性が優れること)でありながら、配向度の高い光吸収異方膜を形成できる。
【0048】
【0049】
式(4)中、nAは、3以上の整数を表し、4以上の整数が好ましい。nAの上限値は、これに限定されないが、通常12以下であり、6以下が好ましい。
複数のPIはそれぞれ独立に、上記式(1)~(3)で表される繰り返し単位のいずれかを含むポリマー鎖を表す。ただし、複数のPIのうちの少なくとも1つは、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー鎖を表す。
複数のPIの全てが、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー鎖であるのが好ましい。
Aは、星型ポリマーの核となる原子団を表す。Aの具体例としては、特開2011-074280号公報の[0052]~[0058]段落、特開2012-189847号公報の[0017]~[0021]段落、特開2013-031986号公報の[0012]~[0024]段落、特開2014-104631号公報の[0118]~[0142]段落等に記載の多官能チオール化合物のチオール基から水素原子を取り除いた構造が挙げられる。この場合、AとPIは、スルフィド結合によって結合される。
【0050】
Aの由来となる上記多官能チオール化合物のチオール基の数は、3つ以上が好ましく、4以上がより好ましい。多官能チオール化合物のチオール基の数の上限値は、通常12以下であり、6以下が好ましい。
多官能チオール化合物の具体例を以下に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
<物性>
高分子液晶化合物の重量平均分子量(Mw)は、1000~500000が好ましく、2000~300000がより好ましい。高分子液晶化合物のMwが上記範囲内にあれば、高分子液晶化合物の取り扱いが容易になる。
特に、塗布時のクラック抑制の観点から、高分子液晶化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000以上が好ましく、10000~300000がより好ましい。
また、配向度の温度ラチチュードの観点から、高分子液晶化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000未満が好ましく、2000以上10000未満が好ましい。
ここで、本発明における重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):N-メチルピロリドン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgelSuperAWM-H(6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35mL/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0054】
高分子液晶化合物の液晶性は、ネマチック性およびスメクチック性のいずれを示してもよいが、少なくともネマチック性を示すことが好ましい。
ネマチック相を示す温度範囲は、室温(23℃)~450℃であることが好ましく、取り扱いや製造適性の観点から、50℃~400℃であることが好ましい。
【0055】
〔二色性物質〕
本発明の液晶性組成物が含有する二色性物質は、特に限定されず、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、無機物質(例えば量子ロッド)、などが挙げられ、従来公知の二色性物質(二色性色素)を使用することができる。
具体的には、例えば、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-14883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-37353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-63387号公報の[0049]~[0073]段落、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特願2015-001425号公報の[0022]~[0080]段落、特願2016-006502号公報の[0005]~[0051段落]、WO2016/060173号公報の[0005]~[0041]段落、WO2016/136561号公報の[0008]~[0062]段落、特願2016-044909号公報の[0014]~[0033]段落、特願2016-044910号公報の[0014]~[0033]段落、特願2016-095907号公報の[0013]~[0037]段落、特願2017-045296号公報の[0014]~[0034]段落などに記載されたものが挙げられる。
【0056】
本発明においては、2種以上の二色性物質を併用してもよく、例えば、光吸収異方性膜を黒色に近づける観点から、波長370~550nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物と、波長500~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物とを併用することが好ましい。
【0057】
本発明においては、耐押圧性がより良好となる理由から、二色性物質が架橋性基を有していることが好ましい。
架橋性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、スチリル基などが挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0058】
本発明においては、二色性物質の含有量は、光吸収異方性膜の配向度および均一性のバランスが良好となる観点から、高分子化合物100質量部に対して2~400質量部であることが好ましく、3~300質量部であることがより好ましく、4~200質量部であることがさらに好ましい。
【0059】
〔重合開始剤〕
本発明に用いられる液晶性組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報および特開平10-29997号公報)などが挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア(IRGACURE)184、907、369、651、819、OXE-01およびOXE-02などが挙げられる。
本発明の液晶性組成物が重合開始剤を含有する場合、重合開始剤の含有量は、液晶性組成物中の上記二色性物質と上記高分子液晶化合物との合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部が好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であることで、光吸収異方性膜の耐久性が良好となり、30質量部以下であることで、光吸収異方性膜の配向が良好となる。
【0060】
〔溶媒〕
本発明の液晶性組成物は、作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペタンタノン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピラン、ジオキソランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,2-ジメトキシエタンなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなど)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジンなど)などの有機溶媒、ならびに、水が挙げられる。これの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒のうち、溶解性に優れるという効果を活かす観点から、ケトン類(特にシクロペンタノン、シクロヘキサノン)、エーテル類(特にテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピラン、ジオキソラン)、および、アミド類(特に、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン)が好ましい。
本発明の液晶性組成物が溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、液晶性組成物の全質量に対して、80~99質量%が好ましく、83~98質量%がより好ましく、85~96質量%がさらに好ましい。
【0061】
〔界面改良剤〕
本発明の液晶性組成物は、界面改良剤を含むことが好ましい。界面改良剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、配向度が向上したり、ハジキおよびムラを抑制して、面内の均一性の向上が見込まれる。
界面改良剤としては、液晶化合物を塗布表面側で水平にさせるものが好ましく、特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。また、特開2007-272185号公報の[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーも用いることができる。界面改良剤としては、これら以外の化合物を用いてもよい。
本発明の液晶性組成物が界面改良剤を含有する場合、界面改良剤の含有量は、液晶性組成物中の上記二色性物質と上記高分子液晶化合物との合計100質量部に対し、0.001~5質量部が好ましく、0.01~3質量部が好ましい。
【0062】
[光吸収異方性膜]
本発明の光吸収異方性膜は、上述した本発明の液晶性組成物を用いて形成される光吸収異方性膜である。
本発明の光吸収異方性膜の製造方法の一例としては、上記液晶性組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、塗布膜に含まれる二色性物質を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。
以下、本発明の光吸収異方性膜を作製する製造方法の各工程について説明する。
【0063】
〔塗布膜形成工程〕
塗布膜形成工程は、上記液晶性組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程である。
上述した溶媒を含有する液晶性組成物を用いたり、液晶性組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、基材上に液晶性組成物を塗布することが容易になる。
液晶性組成物の塗布方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
本態様では、液晶性組成物が基材上に塗布されている例を示したが、これに限定されず、例えば、基材上に設けられた配向膜上に液晶性組成物を塗布してもよい。基材および配向膜の詳細については後述する。
【0064】
〔配向工程〕
配向工程は、塗布膜に含まれる二色性物質を配向させる工程である。これにより、光吸収異方性膜が得られる。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、液晶性組成物に含まれる二色性物質は、上述した塗布膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、液晶性組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶媒を除去することで、光吸収異方性を持つ塗布膜(すなわち、光吸収異方性膜)が得られる。
【0065】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる二色性物質を配向させることができるため、加熱処理後の塗布膜を光吸収異方性膜として好適に使用できる。
加熱処理は、製造適性などの面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0066】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる二色性物質の配向を固定することができる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、光吸収異方性膜を得ることができる。
なお、本態様では、塗布膜に含まれる二色性物質を配向する方法として、乾燥処理および加熱処理などを挙げているが、これに限定されず、公知の配向処理によって実施できる。
【0067】
〔他の工程〕
光吸収異方性膜の製造方法は、上記配向工程後に、光吸収異方性膜を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルターを介して紫外線を照射してもよい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって光吸収異方性膜の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0068】
光吸収異方性膜の膜厚は、0.1~5.0μmが好ましく、0.3~1.5μmであることがより好ましい。液晶性組成物中の二色性物質の濃度によるが、膜厚が0.1μm以上であると、優れた吸光度の光吸収異方性膜が得られ、膜厚が5.0μm以下であると、優れた透過率の光吸収異方性膜が得られる。
【0069】
[積層体]
本発明の積層体は、基材と、基材上に設けられる本発明の光吸収異方性膜とを有する。
また、本発明の積層体は、上記光吸収異方性膜上に、λ/4板を有していてもよい。
さらに、本発明の積層体は、上記基材と上記光吸収異方性膜との間に、配向膜を有していてもよい。
さらに、本発明の積層体は、上記光吸収異方性膜とλ/4板との間に、バリア層を有していてもよい。
以下、本発明の積層体を構成する各層について説明する。
【0070】
〔基材〕
基材としては、光吸収異方性膜の用途に応じて選択することができ、例えば、ガラスおよびポリマーフィルムが挙げられる。基材の光透過率は、80%以上であるのが好ましい。
基材としてポリマーフィルムを用いる場合には、光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。ポリマーの具体例および好ましい態様は、特開2002-22942号公報の[0013]段落の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開第2000/26705号公報に記載の分子を修飾することで発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0071】
〔光吸収異方性膜〕
光吸収異方性膜については、上述した通りであるので、その説明を省略する。
【0072】
〔λ/4板〕
「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
例えば、λ/4板が単層構造である態様としては、具体的には、延伸ポリマーフィルムや、支持体上にλ/4機能を有する光学異方性層を設けた位相差フィルムなどが挙げられ、また、λ/4板が複層構造である態様としては、具体的には、λ/4板とλ/2板とを積層してなる広帯域λ/4板が挙げられる。
λ/4板と光吸収異方性膜とは、接して設けられていてもよいし、λ/4板と光吸収異方性膜との間に、他の層が設けられていてもよい。このような層としては、密着性担保のための粘着層または接着層、およびバリア層が挙げられる。
【0073】
〔バリア層〕
本発明の積層体がバリア層を有する場合、バリア層は、光吸収異方性膜とλ/4板との間に設けられる。なお、光吸収異方性膜とλ/4板との間に、バリア層以外の他の層(例えば、粘着層または接着層)を有する場合には、バリア層は、例えば、光吸収異方性膜と他の層との間に設けることができる。
バリア層は、ガス遮断層(酸素遮断層)とも呼ばれ、大気中の酸素等のガス、水分、または、隣接する層に含まれる化合物等から光吸収異方性膜を保護する機能を有する。
バリア層については、特開2014-159124号公報の[0014]~[0054]段落、特開2017-121721号公報の[0042]~[0075]段落、特開2017-115076号公報の[0045]~[0054]段落、特開2012-213938号公報の[0010]~[0061]段落、特開2005-169994号公報の[0021]~[0031]段落の記載を参照できる。
【0074】
〔配向膜〕
本発明の積層体は、基材と光吸収異方性膜との間に、配向膜を有していてもよい。
配向膜は、配向膜上において本発明の液晶性組成物に含まれる二色性物質を所望の配向状態とすることができるのであれば、どのような層でもよい。
有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。なかでも、本発明では、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点からはラビング処理により形成する配向膜が好ましく、配向の均一性の点からは光照射により形成する光配向膜も好ましい。
【0075】
<ラビング処理配向膜>
ラビング処理により形成される配向膜に用いられるポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明においては、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、およびその誘導体が好ましく用いられる。配向膜については国際公開第2001/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行の記載を参照することができる。配向膜の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることがさらに好ましい。
【0076】
<光配向膜>
光照射により形成される配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献などに記載がある。本発明においては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、または、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドもしくはエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、または、エステルである。
【0077】
上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向膜を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm~700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0078】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプなどのランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、ならびに、陰極線管などを挙げることができる。
【0079】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、および、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルターまたは波長変換素子などを用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0080】
照射する光は、直線偏光の場合には、配向膜に対して上面、または裏面から配向膜表面に対して垂直、または斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°が好ましい。
非偏光の場合には、配向膜に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°がさらに好ましい。
照射時間は、1分~60分が好ましく、1分~10分がより好ましい。
【0081】
パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、または、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
【0082】
〔用途〕
本発明の積層体は、偏光素子(偏光板)として使用でき、例えば、直線偏光板または円偏光板として使用できる。
本発明の積層体が上記λ/4板などの光学異方性層を有さない場合には、積層体は直線偏光板として使用できる。
一方、本発明の積層体が上記λ/4板を有する場合には、積層体は円偏光板として使用できる。
【0083】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述した光吸収異方性膜または上述した積層体を有する。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネルなどが挙げられる。
これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、液晶表示装置であるのがより好ましい。
【0084】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置としては、上述した光吸収異方性膜と、液晶セルと、を有する態様が好ましく挙げられる。より好適には、上述した積層体(ただし、λ/4板を含まない)と、液晶セルと、を有する液晶表示装置である。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる光吸収異方性膜(積層体)のうち、フロント側の偏光素子として本発明の光吸収異方性膜(積層体)を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光素子として本発明の光吸収異方性膜(積層体)を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0085】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0086】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、光吸収異方性膜と、λ/4板と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。
より好適には、視認側から、λ/4板を有する上述した積層体と、有機EL表示パネルと、をこの順に有する態様である。この場合には、積層体は、視認側から、基材、必要に応じて設けられる配向膜、光吸収異方性膜、必要に応じて設けられるバリア層、および、λ/4板の順に配置されている。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例】
【0087】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容および処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0088】
[合成例1]
〔高分子液晶化合物P1の合成〕
高分子液晶化合物P1は、以下の手順により作製した。
【0089】
<P1-1の合成>
【0090】
【0091】
2-クロロエトキシエトキシエタノール(14.05g)のジメチルアセトアミド(DMAc)溶液(60mL)にジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(100mg)を加え、氷冷下においてアクリル酸クロリド(7.54g)、および、トリエチルアミン(8.89g)を滴下した。1時間攪拌した後、反応液を濾過した。次に、炭酸カリウム(15.7g)、ヨウ化カリウム(0.57g)、p-ヒドロキシベンズアルデヒド(9.25g)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(100mg)を添加し、110℃にて4時間攪拌した後、酢酸エチルと水を加え、分液操作により反応液を洗浄した。さらに、反応液をエバポレーターにより濃縮した後、室温に戻して25mLのアセトニトリル、2.36gのリン酸二水素ナトリウム二水和物を8mLの水に溶解したリン酸緩衝液、および11.2mLの過酸化水素水(30質量%)を添加し、続けて33.4gの25質量%亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加した。6時間室温で攪拌して8時間静置した後、水を加え、得られた沈殿を集め、白色固体の化合物(P1-1)を16.9g(収率69%)得た。
【0092】
<P1-2の合成>
【0093】
【0094】
メタンスルホニルクロリド(MsCl)(73.4mmol,5.7mL)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(70mL)にジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(200mg)を加え、内温を-5℃まで冷却した。そこに、化合物(P1-1)(66.7mmol,21.6g)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(75.6mmol,13.0mL)のTHF溶液を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。-5℃で30分撹拌した後、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)(200mg)を加え、ジイソプロピルエチルアミン(75.6mmol,13.0mL)と、4-ヒドロキシ-4’-メトキシビフェニル(60.6mmol,12.1g)のテトラヒドロフラン(THF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)溶液を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。その後、室温で4時間撹拌した。メタノール(5mL)を加えて反応を停止した後に、水と酢酸エチルを加えた。酢酸エチルで抽出した有機層を、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、酢酸エチルおよびヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体である化合物(P1-2)18.7g(収率61%)を得た。
1H-NMR(溶媒:CDCl3)δ(ppm):3.65-3.82(m,6H),3.85(s,3H),3.85-3.95(m,2H),4.18-4.28(m,2H),4.28-4.40(m,2H),5.82(dd,1H),6.15(dd,1H),6.43(dd,1H),6.90-7.05(m,4H),7.20-7.30(m,2H),7.45-7.65(m,4H),8.10-8.20(m,2H)
【0095】
<P1の合成>
【0096】
【0097】
化合物(P1-2)(1.0g)のDMAc溶液(3.3mL)を、窒素気流下、内温が80℃まで加熱した。そこに、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(0.054mmol,0.012g)(商品名「V-601」、和光純薬社製)のDMAc溶液(0.5mL)を加え、80℃で2時間撹拌した。その後、1H-NMRスペクトル測定にて重合性基の消失を確認し、室温まで冷却した。メタノールを加えてろ過を行い、残渣をメタノールで洗浄することで白色固体である化合物(P1)を0.95g得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は10000であった。
なお、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、カラムはTSKgel SuperHZM-H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ2000(東ソー社製))、溶媒はN-メチルピロリドンを使用した。
【0098】
[合成例2]
〔高分子液晶化合物P9の合成〕
下記ステップ1~3に従い、高分子液晶化合物P9を合成した。
【0099】
<ステップ1>
【0100】
【0101】
水酸化ナトリウム(34.2g)を1Lの水に溶解させ、窒素雰囲気下で、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(40.6g)およびブロモエタノール(37.2g)を添加し、95℃で10時間攪拌した。
その後、室温まで冷却し、濃塩酸を加えて反応系を酸性に調整してから濾過および乾燥を行い、化合物P9-Aを含む白色固体を得た。
得られた白色固体を400mLのジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させ、氷冷下、3-クロロプロピオニルクロリド(62.0g)を滴下し、5時間攪拌した。メタノール(40mL)を加えて反応を停止した後に、水と酢酸エチルを加えた。
分液操作により洗浄した有機層を、ロータリーエバポレーターで溶媒除去し、得られた濃縮物にクロロホルムを加えた。析出した固体を濾過により取り除いた後、ロータリーエバポレーターで溶媒除去をし、酢酸エチル/クロロホルムを用いたカラムクロマトグラフィーによるに精製を行い、白色固体である化合物P9-Aを20.3g(収率29%)得た。
1H-NMR(溶媒:DMSO-d6)δ(ppm):2.80-2.90(t,2H),3.75-3.85(t,2H),4.15-4.25(m,2H),4.35-4.45(m,2H),6.75-6.85(m,2H),6.90-7.00(m,2H),7.30-7.50(m,4H),9.40(br s,1H)
【0102】
<ステップ2>
【0103】
【0104】
化合物P9-Aの4.0gと、合成例1で調製した化合物P1-1の8.08gと、ジクロロメタン100mLとを混合し、室温で撹拌した。混合物に、N,N-ジメチルアミノピリジン152mg、および、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)9.56gを加え、室温で12時間撹拌した。
その後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、メタノール120mLと1M、塩酸水120mLを加えて濾過を行い、白色固体を得た。得られた白色固体を酢酸エチルと水を加えて分液を行い、集めた有機層を1N塩酸水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾別して、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、シリカゲルクロマトグラフィによる精製を行うことで化合物P9-Bを5.4g得た(収率69%)。
1H-NMR(溶媒:CDCl3)δ(ppm):2.87(t,2H)、3.68-3.82(m,8H),3.90(t,2H),4.18-4.28(m,4H),4.28-4.38(m,2H),4.46-4.54(m,2H),5.84(dd,1H),6.16(dd,1H),6.43(dd,1H),6.90-7.05(m,4H),7.20-7.30(m,2H),7.48-7.65(m,4H),8.10-8.20(m,2H)
【0105】
<ステップ3>
【0106】
【0107】
化合物P1-2(0.8g)および化合物P9-B(0.2g)のDMAc溶液(3.3mL)を、窒素気流下、内温が80℃まで加熱した。そこに、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(0.054mmol,0.012g)のDMAc溶液(0.5mL)を加え、80℃で2時間撹拌した。その後、1H-NMRスペクトル測定にて重合性基の消失を確認し、室温まで冷却した。メタノールを加えてろ過を行い、残渣をメタノールで洗浄することで白色固体である化合物P9-Cを0.90g得た。得られた化合物P9-Cのクロロホルム溶液(7mL)に、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(50mg)、および、トリエチルアミン(0.7mL)を加え、内温を50℃まで加熱した。50℃で9時間撹拌した後、1H-NMRスペクトル測定にて原料の消失を確認し、室温へと冷却した。そこに、メタノールを加えてろ過を行い、残渣をメタノールで洗浄することで白色固体である高分子液晶化合物P9を0.8g得た。得られた高分子液晶化合物P9をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で分析したところ、重量平均分子量(Mw)は17000(ポリスチレン換算)であった。
【0108】
〔高分子液晶化合物P2~P8、P10~P11〕
高分子液晶化合物P2~P8、P10~P11は、高分子液晶化合物P1もしくはP9と同様または公知の方法にしたがって合成した。
【0109】
〔高分子液晶化合物P12の合成〕
下記ステップ1~2に従い、高分子液晶化合物P12を合成した。
【0110】
<ステップ1>
【0111】
【0112】
4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸メチルは、Jornal of Polymer Science,Part A:PolymerChemistry,2012,vol.50,p.3936-3943に記載の方法で合成を行った。
【0113】
メタンスルホニルクロリド(MsCl)(54.8mmol,6.27g)の酢酸エチル溶液(44mL)に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(68mg)を加え、内温を-5℃まで冷却した。そこに、化合物(P1-1)(52.6mmol,17.1g)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(57.0mol,7.36g)のTHF溶液を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。-5℃で30分撹拌した後、4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸メチル(43.8mmol,10.0g)のDMAc溶液、N-メチル-イミダゾール(NMI)(1.8g)を加え、ジイソプロピルエチルアミン(75.6mmol,13.0mL)を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。その後、室温で4時間撹拌した。水と酢酸エチルを加えて反応を停止した。分液を行い、酢酸エチルで抽出した有機層を、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、酢酸エチルおよびヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体である化合物(P12-A)20.4g(収率87%)を得た。
1H-NMR(溶媒:CDCl3)δ(ppm):3.68-3.80(m,6H),3.87-3.95(m,2H),3.95(s,3H),4.20-4.27(m,2H),4.31-4.37(m,2H),5.83(dd,1H),6.16(dd,1H),6.43(dd,1H),6.97-7.05(m,2H),7.28-7.35(m,2H),7.64-7.72(m,4H),8.08-8.20(m,4H)
【0114】
<ステップ2>
【0115】
【0116】
化合物P1-2(0.8g)および化合物P12-A(0.2g)のDMAc溶液(3.3mL)を、窒素気流下、内温80℃まで加熱した。そこに、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(0.054mmol,0.012g)(商品名「V-601」、和光純薬社製)のDMAc溶液(0.5mL)を加え、80℃で2時間撹拌した。その後、1H-NMRスペクトル測定にて重合性基の消失を確認し、室温まで冷却した。メタノールを加えてろ過を行い、残渣をメタノールで洗浄することで白色固体である化合物(P12)を0.95g得た。得られた高分子液晶化合物P12をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で分析したところ、重量平均分子量(Mw)は15000(ポリスチレン換算)であった。
【0117】
〔高分子液晶化合物P13の合成〕
下記ステップ1~2に従い、高分子液晶化合物P13を合成した。
【0118】
<ステップ1>
【0119】
【0120】
4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸エチルは、Macromolecules,2002,35,1663-1671に記載の方法で合成した。
【0121】
メタンスルホニルクロリド(MsCl)(54.8mmol,6.27g)の酢酸エチル溶液(44mL)に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(68mg)を加え、内温を-5℃まで冷却した。そこに、化合物(P1-1)(52.6mmol,17.1g)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(57.0mol,7.36g)のTHF溶液を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。-5℃で30分撹拌した後、4-(4-ヒドロキシフェニル)安息香酸エチル(43.8mmol,10.6g)のDMAc溶液、N-メチル-イミダゾール(NMI)(1.8g)を加え、ジイソプロピルエチルアミン(75.6mmol,13.0mL)を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。その後、室温で4時間撹拌した。水と酢酸エチルを加えて反応を停止した。分液を行い、酢酸エチルで抽出した有機層を、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、酢酸エチルおよびヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体である化合物(P13-A)20.6g(収率86%)を得た。
1H-NMR(溶媒:CDCl3)δ(ppm):1.41(t,3H),3.68-3.80(m,6H),3.88-3.95(m,2H),4.20-4.27(m,2H),4.31-4.38(m,2H),4.41(q,2H),5.83(dd,1H),6.16(dd,1H),6.43(dd,1H),6.97-7.05(m,2H),7.28-7.35(m,2H),7.64-7.72(m,4H),8.08-8.20(m,4H)
【0122】
<ステップ2>
【0123】
【0124】
化合物P1-2(0.8g)および化合物P13-A(0.2g)のDMAc溶液(3.3mL)を、窒素気流下、内温が80℃まで加熱した。そこに、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(0.054mmol,0.012g)(商品名「V-601」、和光純薬社製)のDMAc溶液(0.5mL)を加え、80℃で2時間撹拌した。その後、1H-NMRスペクトル測定にて重合性基の消失を確認し、室温まで冷却した。メタノールを加えてろ過を行い、残渣をメタノールで洗浄することで白色固体である化合物(P13)を0.96g得た。得られた高分子液晶化合物P13をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で分析したところ、重量平均分子量(Mw)は16000(ポリスチレン換算)であった。
【0125】
〔高分子液晶化合物P14の合成〕
下記ステップ1~2に従い、高分子液晶化合物P14を合成した。
【0126】
<ステップ1>
【0127】
【0128】
メタンスルホニルクロリド(MsCl)(54.8mmol,6.27g)の酢酸エチル溶液(44mL)に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(68mg)を加え、内温を-5℃まで冷却した。そこに、化合物(P1-1)(52.6mmol,17.1g)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(57.0mol,7.36g)のTHF溶液を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。-5℃で30分撹拌した後、4-シアノ-4’-ヒドロキシビフェニル(43.8mmol,8.55g)のDMAc溶液、N-メチル-イミダゾール(NMI)(1.8g)を加え、ジイソプロピルエチルアミン(75.6mmol,13.0mL)を内温が0℃以上に上昇しないように滴下した。その後、室温で4時間撹拌した。水と酢酸エチルを加えて反応を停止した。分液を行い、酢酸エチルで抽出した有機層を、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、酢酸エチルおよびヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、白色固体である化合物(P14-A)19.0g(収率87%)を得た。
1H-NMR(溶媒:CDCl3)δ(ppm):3.68-3.80(m,6H),3.87-3.95(m,2H),4.20-4.27(m,2H),4.32-4.37(m,2H),5.84(dd,1H),6.16(dd,1H),6.43(dd,1H),6.98-7.05(m,2H),7.30-7.37(m,2H),7.60-7.78(m,6H),8.13-8.20(m,2H)
【0129】
<ステップ2>
【0130】
【0131】
化合物P1-2(0.9g)および化合物P14-A(0.1g)のDMAc溶液(3.3mL)を、窒素気流下、内温80℃まで加熱した。そこに、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(0.054mmol,0.012g)(商品名「V-601」、和光純薬社製)のDMAc溶液(0.5mL)を加え、80℃で2時間撹拌した。その後、1H-NMRスペクトル測定にて重合性基の消失を確認し、室温まで冷却した。メタノールを加えてろ過を行い、残渣をメタノールで洗浄することで白色固体である化合物(P14)を0.96g得た。得られた高分子液晶化合物P12をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)で分析したところ、重量平均分子量(Mw)は14000(ポリスチレン換算)であった。
【0132】
以下において、高分子液晶化合物P1~P14の構造とともに、主鎖からスペーサー基までのlogP1値と、メソゲン基のlogP2値との差をあわせて示す。
【0133】
【0134】
【0135】
〔二色性物質〕
以下に示す二色性物質D1~D4を準備した。
【0136】
【0137】
上記式中、「Me」はメチル基を意味する。
【0138】
[実施例1]
〔配向膜の作製〕
ガラス基材(セントラル硝子社製、青板ガラス、サイズ300mm×300mm、厚み1.1mm)をアルカリ洗剤で洗浄し、次いで純水を注いだ後、ガラス基材を乾燥させた。
下記の配向膜形成用組成物1を#12のバーを用いて乾燥後のガラス基材上に塗布し、塗布した配向膜形成用組成物1を110℃で2分間乾燥して、ガラス基材上に塗布膜を形成した。
得られた塗布膜にラビング処理(ローラーの回転数:1000回転/スペーサー厚2.9mm、ステージ速度1.8m/分)を1回施して、ガラス基材上に配向膜1を作製した。
【0139】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用組成物1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・変性ビニルアルコール(下記式(PVA-1)参照) 2.00質量部
・水 74.08質量部
・メタノール 23.86質量部
・光重合開始剤
(IRGACURE2959、BASF社製) 0.06質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0140】
【0141】
〔光吸収異方性膜の作製〕
得られた配向膜1上に、下記の液晶性組成物1を1000回転でスピンコートして、塗布膜を形成した。
塗布膜を室温で30秒間乾燥させた後、さらに180℃で15秒間加熱した。
次いで、塗布膜を室温になるまで冷却した後、80℃にて高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、配向膜1上に光吸収異方性膜1を作製した。
【0142】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記高分子液晶化合物P1 4.12質量部
・上記二色性物質D1 0.82質量部
・重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 0.04質量部
・下記界面改良剤F1 0.02質量部
・クロロホルム 95.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0143】
【0144】
[実施例2~19、比較例1~4]
液晶性組成物における高分子液晶化合物、二色性物質、重合開始剤、界面改良剤および溶媒の種類または含有量を下記第1表に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、配向膜1上に光吸収異方性膜を作製した。
なお、実施例15~19および比較例3~4の光吸収異方性膜の作製に用いた液晶性組成物には、2種類の二色性物質を用いた。
また、下記第1表中、界面改良剤F2は、以下の通りである。
【0145】
【0146】
[評価]
〔配向度〕
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に実施例および比較例の各光吸収異方性膜をセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて第1表に記載の波長域における光吸収異方性膜の吸光度を測定し、以下の式により配向度を算出した。結果を下記第1表に示す。
配向度:S=[(Az0/Ay0)-1]/[(Az0/Ay0)+2]
Az0:光吸収異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay0:光吸収異方性膜の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
【0147】
【0148】
第1表に示すように、主鎖からスペーサー基までのlogP1値と、メソゲン基のlogP2値との差が4以上である繰り返し単位を含む液晶性組成物を用いれば、配向度の高い光吸収異方性膜が得られることが示された(実施例)。
これに対して、主鎖からスペーサー基までのlogP1値と、メソゲン基のlogP2値との差が4以上である繰り返し単位を含んでいない液晶性組成物を用いると、得られる光吸収異方性膜の配向度が劣ることが示された(比較例)。
【0149】
[高分子液晶化合物P9-1~P9-6の合成]
上記高分子液晶化合物P9の合成の「ステップ3」において、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチルの量を変えた以外は、上記高分子液晶化合物P9の合成と同様にして、互いに異なる重量平均分子量(Mw)の高分子液晶化合物P9-1~P9-6を得た。以下に、高分子液晶化合物P9および高分子液晶化合物P9-1~P9-6の重量平均分子量(Mw)を示す。
P9 :Mw= 17000
P9-1:Mw=234000
P9-2:Mw= 38300
P9-3:Mw= 23200
P9-4:Mw= 10900
P9-5:Mw= 9500
P9-6:Mw= 6100
【0150】
[実施例20]
上記実施例1で用いた配向膜1上に、下記液晶性組成物20を1000回転でスピンコートし、塗布膜20を形成した。
【0151】
〔クラック評価〕
得られた塗布膜20を目視にて観察し、以下の基準でクラックを評価した。結果を下記第2表に示す。
A:クラックが全く見られない。
B:細いクラックが少数見られる。
C:太いクラックが多数見られる。
【0152】
この塗布膜20を室温で30秒乾燥させた後、さらに150℃で100秒加熱した。次いで塗布膜20を室温になるまで冷却した後、80℃で1分間加熱して、再度室温になるまで冷却して、室温にて高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で50秒間照射することにより、光吸収異方性膜20を形成した。
実施例1と同様の方法で、下記第2表に記載の波長域毎の配向度を評価した。結果を下記第2表に示す。
【0153】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物20の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記高分子液晶化合物P9-1 6.383質量部
・上記二色性物質D1 0.447質量部
・上記二色性物質D3 0.574質量部
・重合開始剤IRGACURE819(BASF社製)0.074質量部
・上記界面改良剤F2 0.022質量部
・クロロホルム 92.50質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0154】
[実施例21~26]
液晶性組成物における高分子液晶化合物の種類を下記第2表に示すように変更した以外は、実施例20と同様の方法で、配向膜1上に塗布膜を形成した後、光吸収異方性膜を得た。塗布膜のクラック評価および光吸収異方性膜の配向度の評価を、実施例20と同様の方法で行った。結果を下記第2表に示す。
【0155】
【0156】
[実施例27]
〔配向膜27の作製〕
表面にケン化処理を施した透明フィルム(セルロースアシレートフィルム、フジタックTG40UL、富士フイルム社製)上に、上記配向膜形成用組成物1を#17のバーを用いて塗布し、110℃で2分間乾燥し、塗布膜を形成した。
得られた塗布膜にラビング処理(ローラーの回転数:1000回転/スペーサー厚1.9mm、ステージ速度1.8m/分)を1回施して、透明フィルム上に配向膜27を作製した。
【0157】
〔光吸収異方性膜27の作製〕
得られた配向膜27上に、下記液晶性組成物27を#15のバーを用いて塗布し、塗布膜27を形成して、実施例20と同様の方法にてクラックを評価した。評価結果を下記第3表に示す。
この塗布膜27を150℃で100秒加熱した。次いで塗布膜27を室温になるまで冷却した後、80℃で1分間加熱、再度室温になるまで冷却して、室温にて高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で50秒間照射することにより、光吸収異方性膜27を形成した。実施例20と同様の方法で、光吸収異方性膜27の波長域毎の配向度を評価した。結果を下記第3表に示す。
【0158】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物27の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記高分子液晶化合物P9-1 9.438質量部
・上記二色性物質D1 0.661質量部
・上記二色性物質D3 0.849質量部
・重合開始剤IRGACURE819(BASF社製)0.109質量部
・上記界面改良剤F2 0.033質量部
・テトラヒドロフラン 62.24質量部
・シクロペンタノン 26.67質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0159】
[実施例28~29]
液晶性組成物における高分子液晶化合物の種類を下記第3表に示すように変更した以外は、実施例27と同様の方法で、配向膜27上に塗布膜を形成した後、光吸収異方性膜を得た。塗布膜のクラック評価および光吸収異方性膜の配向度の評価を、実施例27と同様の方法で行った。結果を下記第3表に示す。
【0160】
【0161】
第2表および第3表に示すように、重量平均分子量が10000以上の液晶性高分子化合物を用いれば(実施例20~24、実施例27~28)、クラックの少ない光吸収異方性膜が得られることがわかった。また、第2表および第3表に示すように、重量平均分子量が10000未満の高分子液晶化合物を用いれば(実施例25~26、実施例29)、配向度の高い光吸収異方性膜が得られることがわかった。
【0162】
[高分子液晶化合物(P1-A)の合成]
以下のようにして、星型ポリマーである高分子液晶化合物(P1-A)を合成した。なお、下記式(P1-A)において、「S」原子と「PL」の主鎖とが直接結合している。
【0163】
【0164】
化合物(P1-2)1.00gおよび化合物(P-A)57mgのDMAc溶液(2.9mL)を窒素気流下80℃に加熱した。そこに2,2’-アゾビス(2-メチルプロピレン酸)ジメチルを9.1mg加え、80℃で2時間加熱した。その後、1H-NMRスペクトル測定にて重合性基の消失を確認し、室温まで冷却した。メタノール300mLを加えて濾過を行い、残渣をメタノールで洗浄することで白色固体である高分子液晶化合物(P1-A)0.96gを得た。
得られた高分子液晶化合物(P1-A)の重量平均分子量(Mw)は11300であった。
【0165】
[高分子液晶化合物(P1-B)の合成]
以下のようにして、星型ポリマーである高分子液晶化合物(P1-B)を合成した。なお、下記式(P1-B)において、「S」原子と「PL」の主鎖とが直接結合している。
【0166】
【0167】
化合物(P1-2)1.00gおよび化合物(P-B)92mgのDMAc溶液(2.9mL)を窒素気流下80℃に加熱した。そこに2,2’-アゾビス(2-メチルプロピレン酸)ジメチルを9.1mg加え、80℃で2時間加熱した。その後、1H-NMRスペクトル測定にて重合性基の消失を確認し、室温まで冷却した。メタノール300mLを加えて濾過を行い、残渣をメタノールで洗浄することで白色固体である高分子液晶化合物(P1-B)0.96gを得た。
得られた高分子液晶化合物(P1-B)の重量平均分子量(Mw)は11800であった。
【0168】
[溶解性の評価]
下記第4表に示す溶媒中に、高分子液晶化合物(高分子液晶化合物(P1)、高分子液晶化合物(P1-A)、または、高分子液晶化合物(P1-B))を所定濃度になるように添加して、以下の評価基準にしたがって、高分子液晶化合物の溶解性を評価した。結果を下記第4表に示す。
AA :45℃10分の撹拌で溶解し、透明になる。室温で6日放置後も透明のままである。
A :45℃10分の撹拌で溶解し、透明になる。室温で2日放置後は透明のままだが、室温で6日放置すると白濁する。
B :45℃10分の撹拌で溶解し、透明になる。室温で1日放置後は透明のままだが、室温で2日放置すると白濁する。
C :45℃10分の撹拌で溶解し、透明になる。室温で60分放置後は透明のままだが、室温で1日放置すると白濁する。
D :45℃10分の撹拌で溶解し、透明になる。室温で5分放置後は透明のままだが、室温で60分放置すると白濁する。
E :45℃10分の撹拌で溶解し、透明になる。室温で1分放置後は透明のままだが、室温で5分放置すると白濁する。
F :45℃10分の撹拌で溶解しない。
【0169】
【0170】
[実施例30]
液晶性組成物20に代えて、下記液晶性組成物30を用いた以外は実施例20と同様にして光吸収異方性膜を得た。光吸収異方性膜の配向度の評価を実施例20と同様の方法で行った。結果を下記第5表に示す。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物30の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記高分子液晶化合物P1 6.383質量部
・上記二色性物質D1 0.447質量部
・上記二色性物質D3 0.574質量部
・重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 0.074質量部
・上記界面改良剤F2 0.022質量部
・クロロホルム 92.50質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0171】
[実施例31~32]
液晶性組成物30における高分子液晶化合物の種類を星型ポリマーである高分子液晶化合物P1-AまたはP1-Bに変更した以外は、実施例30と同様にして、光吸収異方性膜を得た。光吸収異方性膜の配向度の評価を実施例30と同様の方法で行った。結果を下記第5表に示す。
【0172】
【0173】
第4表および第5表に示すように、星型ポリマーである高分子液晶化合物(P1-AおよびP1-B)は、溶解性に優れつつ、配向度の高い光吸収異方性膜を形成できるのがわかった(実施例31および32)。
【0174】
[実施例33]
〔配向膜33の作製〕
表面にケン化処理を施した透明フィルム(セルロースアシレートフィルム、フジタックTG40UL、富士フイルム社製)上に、上記配向膜形成用組成物1を#17のバーを用いて塗布し、110℃で2分間乾燥し、塗布膜を形成した。
続いて、下記構造の光配向材料E-1の1質量部に、ブトキシエタノール41.6質量部、及びジプロピレングリコールモノメチル41.6質量部、純水15.8質量部を加え、得られた溶液を0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過することで光配向膜用塗布液33を調製した。得られた光配向膜用塗布液33を上記塗布膜上に塗布し、60℃で1分間乾燥した。光配向膜用塗布液を用いて得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度4.5mW、照射量500mJ/cm2)を照射し、配向膜33を作製した。
【0175】
【0176】
〔偏光素子33の作製〕
得られた配向膜33上に、下記液晶性組成物33を#15のバーを用いて塗布し、塗布膜を形成して、この塗布膜を140℃で90秒加熱した。次いで塗布膜33を室温になるまで冷却した後、80℃で1分間加熱、再度室温になるまで冷却して、室温にて高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、光吸収異方性膜33を形成した。
【0177】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物33の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記高分子液晶化合物P12 10.20質量部
・上記二色性物質D1 0.71質量部
・上記二色性物質D3 0.92質量部
・重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 0.06質量部
・上記界面改良剤F2 0.02質量部
・シクロペンタノン 61.66質量部
・テトラヒドロフラン 26.43質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0178】
続いて、光吸収異方性膜33上に、下記バリア層形成用組成物33を#30のワイヤーバーで連続的に塗布し、60℃で5分間乾燥を行うことで、光吸収異方性膜33上にバリア層33が形成された偏光素子33を得た。
【0179】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
バリア層形成用組成物33
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・化合物BA-1(下記) 29質量部
・重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 1質量部
・エタノール 70質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0180】
【0181】
〔λ/4位相差フィルム1の作製〕
<液晶配向剤の調製>
下記組成の光学異方性層用塗布液を調製した。酢酸ブチルに対して、光学異方性層用塗布液を添加して、攪拌した後、孔径1μmのフィルターでろ過することにより、固形分濃度7.5重量%の液晶配向剤を調製した。なお、得られた液晶配向剤では、重合体A-1および他の成分は添加した量どおりに溶媒に十分に溶解していた。
【0182】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層用塗布液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶性化合物L-3 42.00質量部
・下記液晶性化合物L-4 42.00質量部
・下記重合性化合物A-1 16.00質量部
・下記低分子化合物B-2 6.00質量部
・下記重合開始剤S-1(オキシム型) 0.50質量部
・下記レベリング剤G-1 0.20質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、下記液晶性化合物L-3およびL-4のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記液晶性化合物L-3およびL-4はそれぞれ、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0183】
【0184】
【0185】
<セルロースアシレートフィルム1の作製>
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート
100質量部
・特開2015-227955号公報実施例に記載のポリエステル化合物B
12質量部
・下記の化合物F 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
・メタノール(第2溶媒) 64質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0186】
【0187】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
・メタノール(第2溶媒) 11質量部
・上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0188】
(セルロースアシレートフィルム1の作製)
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した(バンド流延機)。溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み40μmのセルロースアシレートフィルム1を得た。得られたセルロースアシレートフィルム1の面内レターデーションは0nmであった。
【0189】
<λ/4位相差フィルム1の作製>
作製したセルロースアシレートフィルム1の片側の面に、配向膜33の作製と同様に、配向膜形成用組成物1および光配向膜用塗布液33を用いて、配向膜33を形成した。次いで、配向膜33上に、先に調製した液晶配向剤をバーコーターで塗布し、組成物層を形成した。形成した組成物層をホットプレート上でいったん110℃まで加熱した後、60℃に冷却させて配向を安定化させた。その後、60℃に保ち、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で紫外線照射(500mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)によって配向を固定化し、厚さ2.3μmの光学異方性層を形成し、λ/4位相差フィルム1を作製した。得られたλ/4位相差フィルム1の面内レターデーションは140nmであった。
【0190】
〔ポジティブCプレート膜2の作製〕
仮支持体として、市販されているトリアセチルセルロースフィルム「Z-TAC」(富士フイルム社製)を用いた(これをセルロースアシレートフィルム2とする)。セルロースアシレートフィルム2を温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14mL/m2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3mL/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルム2を作製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
アルカリ溶液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・水酸化カリウム 4.7質量部
・水 15.8質量部
・イソプロパノール 63.7質量部
・界面活性剤SF-1
(C14H29O(CH2CH2O)20H) 1.0質量部
・プロピレングリコール 14.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0191】
上記アルカリ鹸化処理されたセルロースアシレートフィルム2を用い、下記の組成の配向膜形成用塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用塗布液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA103) 2.4質量部
・イソプロピルアルコール 1.6質量部
・メタノール 36質量部
・水 60質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0192】
上記で作製した配向膜を有するセルロースアシレートフィルム2上に、下記光学異方性膜用塗布液Nを塗布し、60℃60秒間熟成させた後に、空気下にて70mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより、重合性棒状液晶化合物を垂直配向させ、ポジティブCプレート膜2を作製した。波長550nmにおいてRthが-60nmであった。
【0193】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性膜用塗布液Nの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶化合物L-1 80質量部
・下記液晶化合物L-2 20質量部
・下記垂直配向剤S01 1.5質量部
・エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 8質量部
・イルガキュア907(BASF製) 3質量部
・カヤキュアDETX(日本化薬(株)製) 1質量部
・下記化合物B03 0.4質量部
・メチルエチルケトン 170質量部
・シクロヘキサノン 30質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0194】
【0195】
式(B03)中、a:b=90:10(質量比)である。
【0196】
〔円偏光板の作製〕
λ/4位相差フィルム1の光学異方性層側に、粘着剤を介して上記で作製したポジティブCプレート膜2を転写し、セルロースアシレートフィルム2を除去した。次いで、λ/4位相差フィルム1のセルロースアシレートフィルム1側を、粘着剤を介して偏光素子33のバリア層33側に貼り合わせて円偏光板33を得た。
【0197】
実施例20と同様の方法で、円偏光板33の波長域毎の配向度を評価した。結果を下記第6表に示す。
【0198】
[実施例34~35]
液晶性組成物における高分子液晶化合物の種類を下記第6表に示すように変更した以外は、実施例33と同様にして、偏光素子34~35、次いで円偏光板34~35を作製した。円偏光板の配向度の評価を、実施例33と同様の方法で行った。結果を下記第6表に示す。
【0199】
[実施例36]
〔配向膜36の作製〕
上記光配向材料E-1の0.67質量部に、ナガセケムテックス(株)社製のデコナールアクリレートDA-212の0.33質量部、ブトキシエタノール41.6質量部、ジプロピレングリコールモノメチル41.6質量部、および純水15.8質量部を加えて得られた溶液を、0.45μmメンブレンフィルターで加圧ろ過することで、光配向膜用塗布液36を作製した。配向膜33で用いたケン化処理を施したTG40UL上に設けられた上記配向膜形成用組成物1の塗布膜上に、得られた光配向膜用塗布液36を塗布し、60℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度4.5mW、照射量500mJ/cm2)を照射し、配向膜36を作製した。
【0200】
配向膜36を用い、液晶性組成物における高分子液晶化合物の種類を下記第6表に示すように変更した以外は実施例33と同様にして、偏光素子36、次いで円偏光板36を形成した。円偏光板36の配向度の評価を、実施例33と同様の方法で行った。結果を下記第6表に示す。
【0201】
[実施例37]
〔配向膜37の作製〕
<重合体C-2の合成>
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0質量部、メチルイソブチルケトン500質量部、および、トリエチルアミン10.0質量部を仕込み、室温で混合物を撹拌した。次に、脱イオン水100質量部を滴下漏斗より30分かけて得られた混合物に滴下した後、還流下で混合物を混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機相を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで有機相を洗浄した。その後、得られた有機相から減圧下で溶媒および水を留去し、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを粘調な透明液体として得た。
このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて、1H-NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にオキシラニル基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。このエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwは2,200、エポキシ当量は186g/モルであった。
次に、100mLの三口フラスコに、上記で得たエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン10.1質量部、アクリル基含有カルボン酸(東亜合成株式会社、商品名「アロニックスM-5300」、アクリル酸ω-カルボキシポリカプロラクトン(重合度n≒2))0.5質量部、酢酸ブチル20質量部、特開2015-26050号公報の合成例1の方法で得られた桂皮酸誘導体1.5質量部、および、テトラブチルアンモニウムブロミド0.3質量部を仕込み、得られた混合物を90℃で12時間撹拌した。撹拌後、得られた混合物と等量(質量)の酢酸ブチルで混合物を希釈し、さらに希釈された混合物を3回水洗した。得られた混合物を濃縮し、酢酸ブチルで希釈する操作を2回繰り返し、最終的に、光配向性基を有するポリオルガノシロキサン(下記重合体C-2)を含む溶液を得た。この重合体C-2の重量平均分子量Mwは9,000であった。また、1H-NMR分析の結果、重合体C-2中のシンナメート基を有する成分は23.7質量%であった。
【0202】
【0203】
<配向層形成用組成物37の調製>
以下の成分を混合して、配向層形成用組成物37を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記重合体C-2 10.67質量部
・低分子化合物R-1 5.17質量部
・添加剤(B-1) 0.53質量部
・酢酸ブチル 8287.37質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
2071.85質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0204】
【0205】
添加剤(B-1):サンアプロ社製TA-60B(下記の構造式参照)
【0206】
【0207】
配向膜33で用いたケン化処理を施したTG40UL上に設けられた上記配向膜形成用組成物1の塗布膜上に、配向層形成用組成物37をスピンコート法により塗布し、配向層形成用組成物37が塗布された支持体を80℃のホットプレート上で5分間乾燥して溶剤を除去し、塗膜を形成した。
得られた塗膜に対して、偏光紫外線照射(25mJ/cm2、超高圧水銀ランプ)することで配向膜37を作製した。
【0208】
配向膜37を用いた以外は実施例34と同様にして、偏光素子37、次いで円偏光板37を形成した。円偏光板37の配向度の評価を、実施例33と同様の方法で行った。結果を下記第6表に示す。
【0209】
[実施例38]
〔配向膜38の作製〕
下記配向膜形成用組成物38を#15のバーを用いてガラス上に塗布し、塗布した配向膜形成用組成物38を80℃で15分間乾燥後、250℃で1時間加熱して、ガラス上に塗布膜を形成した。
得られた塗布膜に偏光紫外線照射(1J/cm2、超高圧水銀ランプ)を1回施して、ガラス基材上に配向膜38を作製した。
【0210】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用組成物38の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・SE-130(製品名、日産化学社製) 2.0質量部
・N-メチルピロリドン 98.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0211】
配向膜38を用いること以外は実施例34と同様にして、偏光素子38、次いで円偏光板38を形成した。円偏光板38の配向度の評価を、実施例33と同様の方法で行った。結果を下記第6表に示す。
【0212】
[実施例39]
液晶性組成物における高分子液晶化合物の種類を下記第6表に示すように変更した以外は、実施例33と同様にして、偏光素子39、次いで円偏光板39を作製した。円偏光板39の配向度の評価を、実施例33と同様の方法で行った。結果を下記第6表に示す。
【0213】
[実施例40]
実施例39の光異方性吸収膜上に、下記バリア層形成用組成物40を#17のワイヤーバーで連続的に塗布し、60℃5分間乾燥を行うことで、光異方性吸収膜上にバリア層が形成された偏光素子40を作製した。偏光素子40を用いた以外は実施例39と同様にして、円偏光板40を形成した。円偏光板40の配向度の評価を、実施例33と同様の方法で行った。結果を下記第6表に示す。
【0214】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
バリア層形成用組成物40
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・変性ポリビニルアルコール(上記式(PVA-1)) 7質量部
・水 72質量部
・メタノール 21質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0215】
[実施例41~42]
液晶性組成物における二色性物質の量(質量部)を下記第6表に示すように変更した以外は、実施例33と同様にして、偏光素子41~42、次いで円偏光板41~42を作製した。各円偏光板の配向度の評価を、実施例33と同様の方法で行った。結果を下記第6表に示す。
【0216】
【0217】
第6表に示すように、主鎖からスペーサー基までのlogP1値と、メソゲン基のlogP2値との差が4以上である繰り返し単位を含む液晶性組成物を用いれば、配向度の高い光吸収異方性膜(偏光素子)が得られることが示された(実施例)。
【0218】
[実施例43]
〔偏光素子43の作製〕
実施例33の配向膜33上に、下記液晶性組成物43を#4のバーを用いて塗布し、塗布膜を形成して、この塗布膜を140℃で90秒加熱した。次いで塗布膜を室温になるまで冷却した後、80℃で1分間加熱、再度室温になるまで冷却して、室温にて高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、光吸収異方性膜43を形成した。これ以外は、実施例33と同様にして、偏光素子43、次いで円偏光板43を作製した。
【0219】
実施例20と同様の方法で、円偏光板43の波長域毎の配向度を評価した。結果を下記第7表に示す。
【0220】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性組成物43の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記高分子液晶化合物P13 10.18質量部
・上記二色性物質D1 0.71質量部
・上記二色性物質D3 0.92質量部
・重合開始剤IRGACURE819(BASF社製) 0.06質量部
・上記界面改良剤F2 0.04質量部
・シクロペンタノン 61.66質量部
・テトラヒドロフラン 26.43質量部
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【0221】
[実施例44~46]
光吸収異方性膜の作製に用いる組成物を、下記第7表に示した組成物に変更した以外は実施例43と同様にして、偏光素子44~46、次いで円偏光板44~46を作製した。
実施例20と同様の方法で、円偏光板44~46の波長域毎の配向度を評価した。結果を下記第7表に示す。
【0222】
【0223】
第7表に示すように、主鎖からスペーサー基までのlogP1値と、メソゲン基のlogP2値との差が4以上である繰り返し単位を含む液晶性組成物を用いれば、配向度の高い光吸収異方性膜(偏光素子)が得られることが示された(実施例)。