(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ナノ材料の製造方法および装置{Method for preparing nano-materials and apparatus thereof}
(51)【国際特許分類】
B22F 9/00 20060101AFI20220817BHJP
C01B 21/064 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B22F9/00 B
C01B21/064 D
(21)【出願番号】P 2020192857
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0103857
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517134560
【氏名又は名称】ナイール テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】NAiEEL Technology
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェウ
(72)【発明者】
【氏名】パク ウンクァン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェフン
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0035662(KR,A)
【文献】特開2001-115077(JP,A)
【文献】特開2006-153638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00
C01B 21/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素を含む第1材料と
触媒物質を含む第2材料を含む粉末を用意するステップと、
前記粉末を含む分散溶液を形成するステップと、
前記分散溶液をモールドに注入し、前記モールドを加熱してナノ材料の合成のための前駆体である構造体を成形するステップと、
前記構造体に気孔を生成するステップと、
前記構造体
に窒素を含む反応ガスを供給し、前記第1材料と反応させて前記ナノ材料を合成するステップとを含み、
前記分散溶液は、前記粉末の支持体および前記気孔の形成に使用される第3材料と、前記気孔の形成に使用される第4材料をさらに含み、
前記第3材料は、スクロースまたは水溶性高分子を含み、前記第4材料は発泡剤を含み、
前記加熱により前記第3材料と前記第4材料は熱解離し、前記気孔を形成する、ナノ材料の製造方法。
【請求項2】
前記粉末を用意するステップは、
前記第1材料および前記第2材料を含む第1粉末を用意するステップと、
空気によって形成される粉砕領域に前記第1粉末を投入し、第2粉末を形成するステップと、
前記第2粉末を捕集するステップとを含む、請求項1に記載のナノ材料の製造方法。
【請求項3】
前記第4材料は、前記第2粉末に対する0.05~0.3倍の範囲で含まれる、請求項2に記載のナノ材料の製造方法。
【請求項4】
前記構造体を酸化処理するステップをさらに含む、請求項1に記載のナノ材料の製造方法。
【請求項5】
前記構造体を反応チャンバの反応ゾーンに移送するステップと、
前記反応ゾーンを駆動させ、前記構造体を利用してナノ材料を合成するステップとを含む、請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載のナノ材料の製造方法。
【請求項6】
第1材料を含む第1粉末をナノ化し、第1材料および第2材料を含む第2粉末を形成する粉末形成機と、
前記第2粉末を含む分散溶液を形成する溶液形成機と、
前記分散溶液が注入されるモールドと、
前記モールド内に注入された分散溶液を、ナノ材料の合成のための前駆体を含み、かつ気孔を有する多孔性構造体として成形する成形機と、
前記構造体
に窒素を含む反応ガスを供給し、前記第1材料と反応させてナノ材料を形成する反応器とを含み、
前記第1材料はホウ素を含み、前記第2材料は触媒物質を含み、
前記溶液形成機は、前記気孔の形成と前記第2粉末の支持体として使用される第3材料および前記気孔の形成に使用される第4材料を前記分散溶液がさらに含むように形成し、
前記成形機は、前記分散溶液が注入された前記モールドを加熱するように備えられた加熱炉をさらに含み、前記加熱により前記第3材料と前記第4材料は熱解離して前記気孔を形成
し、
前記第3材料は、スクロースまたは水溶性高分子を含み、前記第4材料は発泡剤を含むナノ材料の製造装置。
【請求項7】
前記粉末形成機は、空気によって形成された粉砕領域を含み、ナノ化領域に前記第1粉末を投入し、前記第2粉末を形成するように設けられる、請求項
6に記載のナノ材料の製造装置。
【請求項8】
前記第4材料は、前記第2粉末に対する0.05~0.3倍の範囲で含まれる、請求項
6に記載のナノ材料の製造装置。
【請求項9】
前記成形された構造体を酸化処理する酸化処理機をさらに含む、請求項
6に記載のナノ材料の製造装置。
【請求項10】
前記構造体にナノ材料を形成するように設けられた反応ゾーンを含む反応チャンバをさらに含む、請求項
6~請求項
9のいずれか一項に記載のナノ材料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、ナノ材料の製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノスケールの材料は、様々な優れた特性を有し、電子産業を含めて、多様な産業で大きな注目を集めているが、高品質のナノ素材を大量生産することに限界があるなど、製造工程においてさまざまな問題があることによって、実際の産業に適用するためには限界があった。
【0003】
様々なナノスケールの材料中に、特に窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT(Boron Nitride Nano-Tubes))は、一般的に知られているカーボンナノチューブ(CNT(Carbon Nano-Tubes))と機械的な特性および熱伝導特性は同様である一方、電気絶縁性、耐熱特性、および化学安定性などが優れている。また、BNNTを構成しているホウ素は、CNTを構成している炭素に比して熱中性子の吸収能が約20万倍も高く、中性子の遮蔽材としても有用な物質である。
【0004】
しかし、BNNTは、1000℃以上の高温で合成されるなど、工程の難しさにより、現在は、全世界的に大量生産技術が開発されていない状態である。これは、単にBNNTに限定されるものではなく、他のナノ材料においても高品質かつ大量生産できる技術の開発が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施例は、大量生産が可能であり、かつ生産時間を短縮することができ、製造歩留まりの高いナノ材料を製造することができる製造方法およびその装置を提供する。
また、本発明の実施例は、高純度のナノ材料を製造することができる製造方法およびその装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例において、第1材料を含む粉末を用意するステップと、前記粉末を含む分散溶液を形成するステップと、前記分散溶液を用いてナノ材料の合成のための前駆体である構造体を成形するステップと、前記構造体に気孔を生成するステップと、前記構造体を利用し、ナノ材料を合成するステップとを含む、ナノ材料の製造方法が開示される。
【0007】
前記粉末を用意するステップは、第1材料および第2材料を含む第1粉末を用意するステップと、空気によって形成される粉砕領域に前記第1粉末を投入し、第2粉末を形成するステップと、前記第2粉末を捕集するステップとを含んでもよい。
【0008】
前記分散溶液は、前記粉末の支持体だけでなく、前記気孔の形成にも使用される第3材料を含んでもよい。
【0009】
前記分散溶液をモールドに注入するステップと、前記モールドを加熱するステップとをさらに含んでもよい。
【0010】
前記構造体を酸化処理するステップをさらに含んでもよい。
【0011】
前記構造体を反応チャンバの反応ゾーンに移送するステップと、前記反応ゾーンを駆動させ、前記構造体を利用してナノ材料を合成するステップとを含んでもよい。
【0012】
他の一実施例によると、第1材料を含む第1粉末をナノ化し、第1材料および第2材料を含む第2粉末を形成する粉末形成機と、前記第2粉末を含む分散溶液を形成する溶液形成機と、前記分散溶液が注入されるモールドと、前記モールド内に注入された分散溶液を、ナノ材料の合成のための前駆体を含み、かつ気孔を有する多孔性構造体として成形する成形機と、前記構造体を利用してナノ材料を形成する反応器とを含む、ナノ材料の製造装置を開示する。
【0013】
前記粉末形成機は、空気によって形成された粉砕領域を含み、前記ナノ化領域に前記第1粉末を投入し、前記第2粉末を形成するように設けられてもよい。
【0014】
前記溶液形成機は、前記第2粉末の支持体および前記気孔形成に使用される第3材料が前記分散溶液にさらに含まれるように形成してもよい。
【0015】
前記成形機は、前記分散溶液が注入された前記モールドを加熱するように設けられた加熱炉をさらに含んでもよい。
【0016】
前記成形された構造体を酸化処理する酸化処理機をさらに含んでもよい。
【0017】
前記構造体にナノ材料を形成するように設けられた反応ゾーンを含む反応チャンバをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本実施例に係るナノ材料の製造方法および装置は、大量生産が可能であり、生産時間を短縮し、歩留まりを高めることができる。
また、高純度のナノ材料、特にBNNTを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係るナノ材料の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図2】一実施形態に係る第1粉末の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図3】一実施形態に係る分散溶液の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図4】他の一実施形態に係る分散溶液の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図5】他の一実施形態に係る分散溶液の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係る前駆体およびナノ材料の製造装置を概略的に示すブロック図である。
【
図7】一実施形態に係る第2粉末の製造装置を概略的に示すブロック図である。
【
図8】他の実施形態に係るナノ材料の製造装置を概略的に示すブロック図である。
【
図9】前駆体の構造体成形用モールドの一実施例を概略的に示す断面図である。
【
図10a】ナノ材料の合成のための反応器の一実施例を示す図である。
【
図10b】ナノ材料の合成のための反応器の他の一実施例を示す図である。
【
図11】ナノ材料合成反応のための反応モジュールの一実施例を示す図である。
【
図12a】本発明の一実施例に基づいて製造された前駆体のSEM写真である。
【
図12b】比較例に基づいて製造された前駆体のSEM写真である。
【
図13a】本発明の一実施例に基づいて製造されたBNNTのSEM写真である。
【
図13b】比較例に基づいて製造されたBNNTのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、様々な変形を加えることができる上に、様々な実施例を有することができ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳細に説明する。本発明の効果および特徴、さらに、それらを達成する方法は、図面と共に詳細に後述されている実施例を参照することで明確になるであろう。しかしながら、本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、様々な形態で実現することができる。
【0021】
以下に添付された図面を参照し、本発明の実施例を詳細に説明する。図面を参照して説明するときには、同一または対応する構成要素は、同一の図面符号を付与し、これに対する重複説明は省略する。
【0022】
以下の実施例において、第1および第2などの用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用する。
【0023】
以下の実施例において、単数の表現は、文脈上、明確に別の意味を意図しない限り、複数の表現を含む。
【0024】
以下の実施例において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書に記載の特徴、または構成要素が存在することを意味し、1つ以上の他の特徴、または構成要素が付加される可能性を事前に排除するものではない。
【0025】
図面において、説明の便宜のために、構成要素の大きさは拡大または縮小され得る。例えば、図面に示された各構成の大きさおよび厚さは、説明の便宜のために任意に示すものであり、本発明は、図示に必ず限定されるものではない。
【0026】
以下の実施例において、x軸、y軸、およびz軸は、直交座標系の3つの軸に限定されず、これを含めた広い意味で解釈されることができる。例えば、x軸、y軸、およびz軸は、互いに直交することもできるが、互いに直交していない別の方向を指すこともできる。
【0027】
ある実施例が他の方法で実現可能である場合、特定の工程の順序は、説明される順序とは異なる順序で実行することもできる。例えば、連続して説明する2つの工程は、実質的には同時に実行することもあり、説明される順序とは逆の順序で行うことができる。
【0028】
以下、本発明の一実施例に係るナノ材料の製造方法を説明する。
【0029】
まず、第1材料を含む粉末を用意することができる。
【0030】
一実施例によると、上記の粉末は、微細に粉砕処理されてもよいものであり、第1材料を含むことができる。
【0031】
必要に応じて、
図1に示すように、上記粉末の用意は、まず、第1粉末を形成し(S1)、この第1粉末を粉砕処理し(S2)、第2粉末を形成および捕集することができる(S3)。
【0032】
一実施例によると、上記第1粉末は、第1材料を含むことができる。
【0033】
図2を参照して、第1粉末の形成過程をより具体的に説明する。
【0034】
一実施例によると、上記第1材料を用意し(S11)、第2材料を用意する(S12)。
【0035】
必要に応じて、第1材料は、ホウ素を含んでもよく、例えば、上記ホウ素は、約3~5μmの直径を有するものであってもよい。しかし、必ずしもこれに限定されるものではなく、0.01~7μmの直径を有するものであってもよい。
上記ホウ素は、結晶性および/または非晶質ホウ素であってもよい。
【0036】
結晶性ホウ素は、その硬度が高いので、粉砕ステップ、例えば空気の渦流を利用した粉砕工程時に、容器から生成される触媒金属粒子の破片の粉砕に貢献するだけでなく、同時にナノサイズのホウ素が触媒金属ナノ粒子の表面にコーティングまたは埋め込まれ、効率の高いシードナノ粒子を得ることができる。ただし、結晶性ホウ素を使用する場合には、粉砕するのに長い時間がかかることがあり、これによりナノ材料、例えばBNNTの製造工程における時間が全体的に長くなり、生産性が低減され得る。また、結晶性ホウ素を使用する場合、触媒金属ナノ粒子が必要以上に生成される可能性があり、これは、最終的に製造されるナノ材料であるBNNTの不純物として作用し、不純物の含有量の増大を招き、結果的には、BNNTの純度を低下させる原因となる。さらに、上記不純物を低減するために精密な精製工程が追加的に必要となり、製造コストを高める問題を引き起こす可能性がある。
【0037】
これにより、本発明の実施例によると、上記ホウ素は、結晶性ホウ素よりも非晶質ホウ素を使用してもよい。非晶質ホウ素を使用する場合は、ナノ化工程の時間が短縮されてもホウ素ナノ粉末を得ることができる。さらに、高い歩留まりでBNNTを生成することができる。
【0038】
一方、前記第1粉末は、第2材料をさらに含んでもよく、必要に応じて、前記第2材料は、触媒物質であってもよい。必要に応じて、上記触媒は、粉末状に提供されてもよい。上記触媒は、非晶質ホウ素に対してより効果的である。これは非晶質ホウ素を使用する場合、空気の渦流による粉砕過程で結晶質ホウ素を使用する場合とは異なって、不純物金属ナノ粒子が生成されず、非常に短い時間に大量の前駆体ナノ粉末を製造することができる。これらの触媒は、第1粉末の粉砕工程中に、ホウ素の粒子と混在して前駆体粒子を形成し、この前駆体粒子は、BNNTの合成時に、シードとしての役割を行い、窒素と反応することで、BNNTの合成に寄与することができる。上記触媒物質は、Fe、Mg、Ni、Cr、Co、Zr、Mo、W、および/またはTiを含んでもよい。選択的に前記触媒物質は、MgO、Fe、FeO、Fe2O3、Li2O、およびMgB2からなる群より選択される少なくとも1つ以上の物質であってもよい。
【0039】
上記ホウ素および触媒は、9.9:0.1~7:3の割合で混合してもよい。上記触媒が1%未満であれば、BNNTの製造に必要な十分な触媒粒子を得ることができず、30%を超えると、空気の渦流による粉砕工程でのホウ素-触媒粒子の複合化を通したシード粒子の製造が効率ではなく、むしろ生成されたBNNTの不純物として作用する可能性がある。
【0040】
このように、第1材料と第2材料とを互いに混合した後(S13)、この混合物を均質化処理する(S14)。
【0041】
選択的な一実施例によると、上記均質化処理は、前記混合粉末に対するメッシュふるい(Sieving)を含んでもよい。上記ふるいとしは、攪拌機(agitator)を利用してもよい。
【0042】
このように混合粉末を均質化処理することにより、第1粉末を形成する(S15)。
【0043】
次に、
図1に示すように、第1粉末を粉砕する(S2)。
【0044】
選択的な実施例によると、上記第1粉末を粉砕することには、空気渦流を利用することができる。すなわち、第1粉末を高圧で回転する空気渦流に第1粉末を投入することにより、粉砕作業を進行する。一実施例によると、冷たい空気を高圧で回転させて使用することも可能である。一実施例によると、前記第1粉末は、ホウ素粉末と触媒粉末とが混合された状態である場合があり、上記空気渦流による粉砕によって、ホウ素粉末と最適量の触媒粉末とが組み込まれ、後述するBNNTの合成および成長に最適の条件および/または粒子サイズを提供することができる。
【0045】
このように高圧の空気渦流を利用し、第1粉末を粉砕することにより、第2粉末を形成し、この第2粉末を捕集する(S3)。
【0046】
第2粉末の捕集において、第2粉末が含まれた空気を膜に通過させながら、第2粉末が膜にかけられて捕集部に捕集されるようにしてもよい。このような捕集は、複数のステップに分けて行ってもよい。
【0047】
このように第2粉末を形成し、捕集した以後、この第2粉末を用いて分散溶液を形成し(S4)、前駆体としての役割を有する多孔性構造体に成形し、かつ気孔を生成する(S5、S6)。上記構造体の成形および気孔の生成は、必ずしも順次的に行われるものではなく、構造体が形成される過程で、気孔が生成されるようにしてもよい。
【0048】
図3は、分散溶液の製造方法における一実施例を示したものである。
【0049】
まず、第1予備溶液を形成する(S41)。上記第1予備溶液は、上記第2粉末および脱イオン水を含む。第2粉末および脱イオン水の割合は、重量比で約1:2にすることができるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第2粉末に対する脱イオン水の重量比は、1.5倍~4倍の範囲であってもよい。
【0050】
続いて、上記第1予備溶液に対して第1処理を行う(S51)。上記第1処理によって、第1予備溶液の第2粉末と脱イオン水とをよく混合する。一実施例によると、上記第1処理は、ホーン・ソニーケーション(Horn sonication)であってもよい。
【0051】
選択的な一実施例によると、第3材料および第4材料を上記第1予備溶液に添加し、分散溶液を形成する(S42)。一実施例によると、上記第3材料は、スクロース(sucrose)を含んでもよく、第4材料は、発泡剤であってもよい。
【0052】
スクロースは、脱イオン水によく溶解され、多孔性構造体を成形する時(
図1のS5を参照)に、熱解離(thermal dissociation)を通して上記構造体に気泡および/または気孔が生成されるようにしてもよく、および/または解離の後、残留する炭素は、第1材料であるホウ素の支持体の役割を行ってもよい。
【0053】
選択的に、上記第3材料として、水溶性高分子を使用してもよいが、でんぷん(starch)、糖液(molasses)、マルトース(maltose)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリビニルアルコール(PVA)、またはポリビニルブチラル(PVB)などのビニル系、およびエチルセルロース(EC)などのセルロース系などを含んでもよい。上記第3材料は、熱解離の過程で構造体に気泡および/または気孔が生成されるようにし、および/または解離の後に残留する炭素は、第1材料であるホウ素の支持体の役割を行ってもよい。
【0054】
発泡剤は、構造体の成形時に、気泡および/または気孔の生成を大幅に促進することができる。上記発泡剤として、ADCA(Azodicarbonamide)が使用されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、必要に応じて、水溶性であり、かつ200℃以下で分解可能な発泡剤が使用されてもよい。
【0055】
第3材料および発泡剤の機能は、後述する実施例においても同様である。
【0056】
これらの気泡および/または気孔の生成過程は、
図6の成形機4で進行されてもよい。
【0057】
一実施例によると、第2粉末およびスクロースの割合は、重量比で約1:2にすることができるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第2粉末に対するスクロースの重量比は、0.5倍~4倍の範囲であってもよい。
【0058】
第2粉末および発泡剤の割合は、重量比で約1:0.15にすることができるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第2粉末に対する発泡剤の重量比は、0.05倍~0.3倍の範囲であってもよい。
【0059】
上記のように製造された溶液に、第2処理を行う(S52)。上記第2処理は、バス・ソニーケーション(Bath sonication)であってもよい。このように第2処理を行うことにより、溶液内のスクロースの溶解度を向上させ、第2粉末の分散性を向上させることができる。
【0060】
続いて、溶液について攪拌(S53)を行うことにより、分散溶液を形成する。
【0061】
図4は、分散溶液の製造方法における他の一実施例を示したものである。
【0062】
まず、第2予備溶液を形成する(S43)。前記第2予備溶液は、第3材料であるスクロース(sucrose)が溶解された脱イオン水を含み、これに第2粉末を混合して製造することができる。
【0063】
続いて、上記第2予備溶液に対して第1処理を行う(S51)。前記第1処理によって、第2予備溶液の第2粉末および第3材料であるスクロースが、脱イオン水とよく混合され、第3材料の溶解度および第2粉末の分散性を向上させることができる。一実施例によると、上記第1処理は、ホーン・ソニーケーション(Horn sonication)であってもよい。
【0064】
選択的な一実施例によると、第4材料である発泡剤を上記第2予備溶液に添加し、溶液を形成する(S44)。
続いて、溶液について攪拌(S53)を行うことにより、分散溶液を形成する。
【0065】
最終的に形成された分散溶液の成分割合は、前述の実施例と同様にしてもよい。
【0066】
図5は、分散溶液の製造方法におけるまた他の一実施例を示したものである。
【0067】
まず第3予備溶液を形成する(S45)。上記第3予備溶液は、第3材料であるスクロース(sucrose)の所定量が溶解された脱イオン水を含んでもよい。この第3予備溶液に第2粉末を混合させ、第4予備溶液を形成する(S46)。
【0068】
また、第3処理を実施し(S54)、ここで第3処理は、チップ・ソニーケーション(tip sonication)であってもよい。一実施例によると、上記第3処理(S54)は、上記第4予備溶液の形成(S46)と同時に行ってもよい。これに加えて、上記第4予備溶液は、第3予備溶液に所定量の第2粉末を一度に混合して形成するものに限定されず、第2粉末を第3予備溶液に少量ずつ複数回にかけて投入しながら、同時に第3処理を進行してもよい。これは、前述した実施例の各予備溶液および溶液の形成にも、同様に適用してもよい。
【0069】
次に、第3材料であるスクロースの残りと第4材料である発泡剤とを第4予備溶液に添加し、溶液を形成した(S47)後、この溶液を攪拌(S53)することにより、分散溶液を形成する。
【0070】
最終的に形成された分散溶液の成分割合は、前述の実施例と同様にしてもよい。
【0071】
このように、前述した実施形態によると、第1処理、第2処理、および/または第3処理によってスクロースが脱イオン水によく溶解され、第2粉末の表面をスクロース成分でコーティングし、第2粉末の分散性を向上することができ、これに加え、第4材料の添加することで、構造体の成形時に気泡および/または気孔形成の効果をさらに高めることができる。
【0072】
これに加えて、第3材料であるスクロースは、モールド内における分散溶液の温度上昇に伴い、溶解されて粘度が上昇し、さらに温度が上昇しながら熱解離によって気泡および/または気孔が発生し、構造体内部の気孔度を増加させ、熱解離の残留物である炭素は、構造体の第2粉末の支持体の役割を行うことができる。
【0073】
上記のような溶液の製造後には、これを利用して前駆体であるブロック構造体を成形し、これを窒素雰囲気で反応させ、ナノ材料を形成することができる(S7)。
【0074】
構造体の成形は、前述した分散溶液を特定のモールドに収容した状態に加熱炉内でベーキング・ステップを経て行われる。ベーキングは150℃~250℃の範囲で行ってもよい。この時、分散溶液内のスクロースは、加熱炉の温度が上昇することにつれて溶融し始め、200℃付近で熱解離され、水(水蒸気)および炭素に分解される。水蒸気は、構造体の内部に気孔を形成する役割を行い、炭素は残留物として残り、構造体内部の支持体としての役割を行う。また、200℃付近の分散溶液内の発泡剤は、熱解離し、二酸化炭素を発生させ、構造体の内部に均一な気孔を形成する役割を行う。このような過程を通して構造体の内部に十分な気孔が形成された前駆体を成形することができる。ここで、発泡剤の種類に応じて熱解離温度は異なる可能性がある。
【0075】
選択的な一実施例によると、ブロック形態の多孔性前駆体の構造体は、ベーキング・ステップに加えてベーキングされた構造体を酸化処理するステップをさらに含んでもよい。
【0076】
酸化処理は、300℃~600℃の炉内で行われてもよい。
【0077】
これらの酸化処理により、構造体の中に残っていた炭素の少なくとも30%~60%を除去することができ、これにより、純度の高い良質のナノ材料を製造することができる。
構造体の成形が終わった後は、上記構造体を利用してナノ材料を形成する(S7)。
【0078】
このようなナノ材料において、ブロック形の前駆体の構造体を反応チャンバの反応ゾーンで反応ガスを用いてナノ材料が成長されるようにしてもよい。より具体的な内容は、後述する。
【0079】
一方、上記のような前駆体の構造体を成形するための製造装置を説明する。
【0080】
一実施形態に係るナノ材料の製造装置は、
図6を参照するように、粉末形成機1と、溶液形成機2と、溶液処理機3と、成形機4と、反応器6とを含んでもよい。
【0081】
粉末形成機1は、
図7に示すように、第1材料投入機11および第2材料投入機12と、混合機13と、均質化処理機14と、粉砕処理機15と、第2粉末捕集機16とを含んでもよい。
【0082】
第1材料投入機11は、第1材料を保管し、自動および/または手動で投入するように設けられてもよい。第2材料投入機12は、第2材料を保管し、自動および/または手動で投入するように設けられてもよい。
【0083】
第1材料投入機11および第2材料投入機12から提供された第1材料および第2材料は、混合機13に供給され、互いに混合される。混合は、予め設定された比率で行ってもよい。
【0084】
この後、混合された材料は、均質化処理機14を経て、均質化されることができる。一実施例によると、上記均質化処理機14は、ふるい機および/または撹拌機を含んでもよい。したがって、均質化処理機14を通して混合された材料は、一定の粒度の範囲で均質化され、第1粉末を形成することができる。
【0085】
次に、均質化処理された第1粉末は、粉砕処理機15に移送され、粉砕処理機15を通して粉砕されて第2粉末を形成し、第2粉末捕集機16を通して捕集される。
【0086】
一実施例によると、粉砕処理機15は、空気渦流を利用してもよい。高圧の空気渦流に第1粉末を提供することにより、第1粉末が粉砕され、これによって、第2粉末が形成されてもよい。
【0087】
このように形成された第2粉末は、第2粉末捕集機16を通して捕集してもよい。
【0088】
第2粉末捕集機16は、膜と、捕集部とを含んでもよく、第2粉末が含まれた空気を膜に通過させながら、第2粉末が膜にかけられて捕集部に捕集されるようにしてもよい。このような捕集は、複数のステップに分けて行ってもよい。
【0089】
溶液形成機2および溶液処理機3は、互いに複合的に設けられてもよい。溶液形成機2は、第2粉末、第3材料、第4材料、および脱イオン水を一定の割合で混合容器に投入し、混合することができる装置であってもよい。
このような溶液形成機2と共に、製造された溶液および/または各ステップの予備溶液に対し、溶液処理機3を連携して動作させてもよい。
【0090】
上記溶液処理機3は、ホーン・ソニーケータ、バス・ソニーケータ、および/またはチップ・ソニーケータを含んでもよい。および/または上記溶液処理機3は、攪拌機をさらに含んでもよい。
【0091】
一実施例によると、溶液形成機2を通して、第1予備溶液を形成する。上記第1予備溶液は、上記第2粉末および脱イオン水を含む。第2粉末および脱イオン水の割合は、重量比で約1:2にすることができるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第2粉末に対する脱イオン水の重量比は、0.5倍~4倍の範囲であってもよい。
【0092】
続いて、溶液処理機3の第1処理機を通して上記第1予備溶液に第1処理を行う。上記第1処理により、第2粉末は、脱イオン水内でよく分散され得る。一実施例によると、上記第1処理機は、ホーン・ソニーケータであってもよい。
【0093】
溶液形成機2を通して、第3材料および第4材料を上記第1予備溶液に添加し、分散溶液を形成する。一実施例によると、上記第3材料は、スクロース(sucrose)を含んでもよく、第4材料は、発泡剤であってもよい。一実施例によると、第2粉末およびスクロースの割合は、重量比で約1:2にすることができるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第2粉末に対するスクロースの重量比は、0.5倍~4倍の範囲であってもよい。第2粉末および発泡剤の割合は、重量比で約1:0.15にすることができるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、第2粉末に対する発泡剤の重量比は、0.05倍~0.3倍の範囲であってもよい。
【0094】
上記のように製造された溶液に対し、溶液処理機3の第2処理機を通してさらに第2処理を行う。上記第2処理機は、バス・ソニーケータであってもよい。このように第2処理を行うことにより、溶液の第3材料であるスクロースをよく溶解させることができ、さらに混合物を均一に分散させることができる。
【0095】
続いて、溶液処理機3の攪拌機を用いて溶液を攪拌する。
【0096】
他の一実施例によると、溶液形成機2を通して、第2予備溶液を形成する。上記第2予備溶液は、第3材料であるスクロース(sucrose)の一部および脱イオン水を含む。この第2予備溶液に第2粉末を混合する。
【0097】
続いて、溶液処理機3の第1処理機を通して上記第2予備溶液に第1処理を行う。上記第1処理により、第2粉末および脱イオン水は、よく混合され、スクロースはよく溶解されることができる。一実施例によると、上記第1処理機は、ホーン・ソニーケータであってもよい。
【0098】
溶液形成機2を用いて、第3材料の残りおよび第4材料である発泡剤を上記第2予備溶液に添加し、溶液を形成する。
【0099】
続いて、溶液処理機3の攪拌機を用いて溶液を攪拌する。
【0100】
また他の一実施例によると、溶液形成機2を用いて、第3予備溶液を形成する。上記第3予備溶液は、第3材料であるスクロース(sucrose)の一部および脱イオン水を含んでもよい。この第3予備溶液に第2粉末を混合させ、第4予備溶液を形成する。
【0101】
また、溶液処理機3の第3処理機を通して第4予備溶液に第3処理を行い、ここで第3処理機は、チップ・ソニーケータであってもよい。一実施例によると、上記第3処理は、上記第4予備溶液の形成と同時に行ってもよい。これに加えて、上記第4予備溶液は、第3予備溶液に所定量の第2粉末を一度に混合して形成するものに限定されず、第2粉末を第3予備溶液に少量ずつ複数回にかけて投入しながら、同時に第3処理を進行してもよい。これは、前述した実施例の各予備溶液および溶液の形成にも、同様に適用してもよい。
【0102】
次に、次に、溶液形成機2を用いて、第3材料であるスクロースの残りと第4材料である発泡剤とを第4予備溶液に添加し、溶液を形成した後、溶液処理機3の撹拌機を用いて溶液を攪拌する。最終的な溶液の成分割合は、前述の実施例と同様にしてもよい。
【0103】
このように溶液を形成した後、モールド21に溶液を注入し、成形機4を通して成形する。モールド21は、
図9に示すように、複数のモールドを並列に接続した構造を有してもよい。モールド21の内壁に、コーティング層22を形成してもよい。上記コーティング層22は、耐熱性(heat resistance)、耐薬品性(chemical resistance)、非粘着性(non-stick)、非湿潤性(non-wetting)を有するように設けられてもよい。
【0104】
モールド21内に注入された分散溶液23は、温度上昇につれ、ある程度の気泡24を含む可能性がある。
【0105】
成形機4は、上記のような複数のモールド21を収容するように設けられたベーキング炉を含んでもよい。ベーキングは150℃~250℃の温度範囲で動作されてもよい。
【0106】
他の一実施形態に係るナノ材料の製造装置には、
図8に示すように、成形機4と、別の酸化処理機5とが配置されてもよい。上記酸化処理機5は、成形機4に隣接して位置する炉であってもよい。上記酸化処理機5は、成形された構造体の炭素を酸化させるために、空気または酸素が注入され、300℃~600℃の温度範囲で動作されてもよい。
【0107】
上記成形機4および酸化処理機5は、必ずしも分離して備えなければならないものではなく、一つの装置に対して温度範囲の設定を変えることで、互いに異なる動作が行われるようにしてもよい。このとき、酸化処理機5には、酸化を促すために、ガス環境が異なって、すなわち、空気または酸素が注入されるようにしてもよい。
【0108】
上記のように成形および/または酸化処理が完了した後は、前駆体の構造体が得られる。
【0109】
これらの前駆体の構造体は、ブロック形態またはディスク形態で形成することができ、またはパレット形態で形成することもできる。
【0110】
これらの前駆体の構造体を加熱された反応器内に移動させ、反応ガスを提供することで、ナノ材料を形成する。一実施例として、BNNTの成長は、窒素反応ガスにより前駆体の構造体を反応させて製造してもよい。
【0111】
上記反応器の一実施例を
図10aに示しており、当該反応器は、反応チャンバ31と、投入チャンバ321と、排出チャンバ322とを含んでもよい。
【0112】
反応チャンバ31は、前述した前駆体の構造体が収容されるものであり、反応チャンバ31には、前駆体の構造体を収容した反応モジュール38を移送する移送経路が形成され、移送経路上の一部には、前駆体の構造体を用いて反応ガスを提供し、ナノ材料を成長させる反応ゾーンを含んでいる。
【0113】
反応ゾーン311は、反応のために適切な温度が維持される領域であり、ガス供給管33によって反応ガスが提供される領域である。一実施例によると、上記反応ガスは、窒素含有反応ガスであってもよく、これにより、前駆体の構造体からBNNTが成長してもよい。具体的に、反応チャンバ31に供給される反応ガスは、特に限定されないが、窒素(N2)やアンモニア(NH3)を使用してもよいことはもちろんであり、これらを混合し、混合ガスとして反応チャンバ31に供給してもよい。または、さらに水素(H2)を混合して使用してもよい。
【0114】
上記反応ガスは、反応チャンバ31に、10~1,000sccmの速度で供給されてもよい。反応ガスが10sccm未満で供給されると、窒素元素の供給量が少なく、ホウ素の窒化反応の効率が低下し、これによって長時間に反応を行う必要があり、1,000sccmを超えると、反応ガスの移動速度が速いことによって前駆体の構造体内のホウ素粉末がアブレーション(ablation)され、BNNTの生産歩留まりが少なくなる可能性がある。
【0115】
前記反応チャンバ31内での熱処理は、1,050℃~1,450℃の温度範囲で、0.5時間~6時間の間に行われ、BNNTが得られる。
【0116】
これらの反応チャンバ31として、アルミナ管を利用してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、およそ1500℃までの温度に耐えることができる耐熱材料で形成してもよい。
【0117】
このような反応チャンバ31の前端および後端には、投入チャンバ321と排出チャンバ322とをそれぞれ接続してもよく、反応チャンバ31と投入チャンバ321との間および反応チャンバ31と排出チャンバ322との間には、ゲート323および323’が設置され、チャンバ内の環境を分離することができる。
【0118】
真空処理部(図示せず)は、反応チャンバ31に接続され、反応チャンバ31の内部の真空度を調節することができ、そのために真空ポンプとコントローラとを含んでもよい。上記真空処理部は、投入チャンバ321に接続されているが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではなく、さらに排出チャンバ322に接続されてもよい。
【0119】
上記反応チャンバ31には、温度調節部(図示せず)が接続されてもよく、図面に示されていないが、上記反応チャンバ31の内部温度を直接に調節する加熱部および加熱部をコントロールするコントローラを含んでもよい。
【0120】
投入チャンバ321は、反応チャンバ31の前端に設けられる。投入チャンバ321は、複数の反応モジュール38を収容し、複数の反応モジュール中のN個の反応モジュールを反応チャンバ31に移送する。投入チャンバ321には、反応モジュール38を押し込むための押し込み装置が設けられてもよい。投入チャンバ321は、これにより、収容されている反応モジュールを反応チャンバ31に押し込むことができる。
【0121】
排出チャンバ322は、反応チャンバ31の後端に設けられる。排出チャンバ322には、反応チャンバ31からN個の反応モジュール38が移送される。
【0122】
反応モジュール38を反応チャンバ31に連続的に投入するために、投入チャンバ321と、反応チャンバ31と、排出チャンバ322と、連携的に動作してもよい。
【0123】
具体的に、投入チャンバ321は、反応チャンバ31に連続してN個の反応モジュール38を供給するために、反応チャンバ31からN個の反応モジュール38を排出チャンバ322に移送すると、複数の反応モジュールの中で新しいN個の反応モジュールを反応チャンバ31に移送する。
【0124】
このような過程を通して、上記投入チャンバ321に収容されていた複数の反応モジュール38の全てが反応チャンバ31に移送された場合、投入チャンバ321は、これ以上に反応チャンバ31に反応モジュールを移送せず、動作は終了される。
【0125】
図10aに示すように、投入チャンバ321は、複数の反応モジュール38を反応チャンバ31に連続的に供給するための多様な形態のリフトを設けてもよい。例えば、投入チャンバ321が垂直形態で複数の反応モジュール38を収容する場合、複数の反応モジュールを実装するための複数の反応モジュール保持部が投入チャンバ321内に垂直に配置されてもよい。複数の反応モジュール保持部の各々には、反応モジュール38が実装されており、投入チャンバ321内でリフトを用いることで、複数の反応モジュールを投入チャンバ321の長手方向に沿って昇降移動させることができる。
【0126】
または、
図10bのように、投入チャンバ321は、循環軌道上に配列された形態で複数の反応モジュールを収容する場合がある。このとき、投入チャンバ321内には、複数の反応モジュール38を実装するための複数の反応モジュール保持部が循環軌道上に配置されており、複数の反応モジュール保持部の各々に実装された反応モジュールは、リフトを用いて循環軌道に沿って循環移動することができる。
【0127】
上記のように、投入チャンバ321と、反応チャンバ31と、排出チャンバ322との連携的な動作を制御するための制御部が用意されてもよい。
【0128】
以下に、反応モジュール38が連続して反応チャンバ31に投入される工程を説明する。
【0129】
まず、反応チャンバ31内の温度およびガス雰囲気を最適化した後、前駆体の構造体が収容された反応モジュール38を投入チャンバ321を通して反応チャンバ31内に収容する。このとき、投入チャンバ321と反応チャンバ31との間には、ゲート323が位置することで反応チャンバ31の内部の雰囲気を最大限に維持しながら、反応モジュール38を反応チャンバ31に収容することができる。
【0130】
投入チャンバ321内には、反応モジュール38を反応チャンバ31の方向に移送することができる、上述したリフトと、さらにゲート323と、真空ポンプとが設けられてもよく、反応チャンバ31のゲート323が開いたときに、投入チャンバ321と反応チャンバ31との反応ガスの雰囲気および圧力が一致するように動作し、反応モジュール38を投入チャンバ321から反応チャンバ31へ移送し、移送した後には、ゲート323が閉じられるようにする。
【0131】
ゲート323が閉じられると、投入チャンバ321の付属ゲートが再び開き、新しい反応モジュールが投入され、ゲートが閉じられる動作を実行し、これを前述した工程を通して反応チャンバ31内に移送する。このような動作を行うときに、投入チャンバ321は、付属ゲートおよび真空ポンプを利用し、反応モジュールの前駆体の構造体が汚染されないようにし、投入チャンバ321の内部が反応チャンバ31の雰囲気と同様になるようにする。
【0132】
このような方法に応じて順次に反応モジュール38が排出チャンバ322の方向に移送され、反応チャンバ31内で反応モジュールが水平に積層された状態になる可能性がある。
【0133】
反応チャンバ31は、設定された時間の間に反応ゾーン311を駆動させ、反応ゾーン311に位置する反応モジュールから反応ガスを提供し、前駆体の構造体に窒化ホウ素ナノチューブを成長させる工程を行う。
【0134】
このような過程において、反応モジュール38が反応ゾーン311の中央に置かれた時に、反応ガスとの反応が最大に維持されるように反応ガスの供給量を調節することができる。
【0135】
上記のような連続的な動作は、投入チャンバ321に少なくとも一つ以上の反応モジュールを収容するための収容空間が設けられている場合、次のように応用することができる。
【0136】
投入チャンバ321の収容空間から反応チャンバ31に向かって反応モジュールを連続的に移送する移送装置は、投入チャンバ321に収容されている反応モジュールを支持しながら、投入チャンバ321の長手方向に沿って反応チャンバ31の前端に向かって反応モジュールを移送することができる。
【0137】
これにより、投入チャンバ321内に少なくとも一つ以上の反応モジュールを収容して置くことができるので、反応モジュールが反応チャンバ31に移送されるたびに投入チャンバ321の付属ゲートに新しい反応モジュール38を個別に投入する必要がなくなる。
【0138】
以後、投入チャンバ321と反応チャンバ31との間に位置するゲート323は、反応モジュールが移送装置(図示せず)によって反応チャンバ31の前端に搬送されると開放される動作を行う。
【0139】
上記投入チャンバ321と反応チャンバ31との間に位置するゲート323は、反応モジュールが移送装置によって反応チャンバ31内に移送されると、閉鎖される動作を行う。
【0140】
ただし、好ましくは、上記投入チャンバ321と反応チャンバ31との間に位置するゲート323が閉鎖される動作は、反応チャンバ31内に収容可能な反応モジュールの数である所定の数だけの反応モジュールが、投入チャンバ321から反応チャンバ31内へ連続的に移送された後に行われ得る。
【0141】
これにより、少なくとも一つ以上の反応モジュールが同時に反応チャンバ31内に収容され、上記反応ガスと反応することができる。
【0142】
一方、排出チャンバ322は、投入チャンバ321が反応モジュールを反応チャンバ31へ移送する動作を逆に行い、反応モジュールを反応チャンバ31から排出する動作を行ってもよい。
【0143】
図面に示してはいないが、排出チャンバ322内には、反応モジュールを反応チャンバ31から吐出することができる別の移送装置と、さらにゲート323’と、真空ポンプとが設けられてもよく、反応チャンバ31と排出チャンバ322との間のゲート323’が開いたときに、排出チャンバ322と反応チャンバ31との反応ガスの雰囲気および圧力が一致するように動作し、反応モジュールを排出チャンバ322に移送し、移送した後には、ゲート323’が閉じられるようにする。
【0144】
ゲート323’が閉じられると、排出チャンバ322の付属ゲートが再び開き、反応が完了した反応モジュールを取り出した後、ゲートが閉じられる動作を実行し、これを前述した工程を通して反応チャンバ31から反応が完了した反応モジュールを吐出させる。このような動作を行うときに、排出チャンバ322は、付属ゲートを開く前に真空ポンプを利用して大気と同様の窒素雰囲気に置換し、反応モジュールの吐出した後には、ゲート323’が開く前に反応チャンバ31の前駆体ブロックが汚染されないようにし、排出チャンバ322の内部が反応チャンバ31の雰囲気と同様になるようにする。
【0145】
このような方法に応じて順次に反応が完了した反応モジュールを外部に吐出することができる。
【0146】
以後、ゲート323’が開き、排出チャンバ322に反応モジュールが移動し、ゲート323’が閉じられた後に、排出チャンバ322から反応モジュールが吐出され得る。
【0147】
上記のような連続的な動作は、排出チャンバ322に少なくとも一つ以上の反応モジュールを収容するための収容空間が設けられている場合、次のように応用することができる。
【0148】
反応チャンバ31から排出チャンバ322の収容空間に向かって反応が完了した反応モジュールを連続的に移送する移送装置は、排出チャンバ322に収容されている反応モジュール38を支持しながら、排出チャンバ322の長手方向に沿って排出チャンバ322の付属ゲートに向かって反応モジュールを移送することができる。
【0149】
これにより、排出チャンバ322内に少なくとも一つ以上の反応モジュールを収容して置くことができるので、反応モジュールが反応チャンバ31に移送されるたびに排出チャンバ322の付属ゲートを通して反応が完了した反応モジュールを個別に取り出す必要がなくなる。
【0150】
以後、排出チャンバ322と反応チャンバ31との間に位置するゲート323’は、反応モジュールが移送装置(図示せず)によって反応チャンバ31の後端に搬送されると開放される動作を行う。
【0151】
再度、排出チャンバ322と反応チャンバ31との間に位置するゲート323’は、反応モジュールが反応チャンバ31内に移送されると、閉鎖される動作を行う。
【0152】
ただし、好ましくは、上記排出チャンバ322と反応チャンバ31との間に位置するゲート323’が閉鎖される動作は、反応チャンバ31内に収容可能な反応モジュールの数である所定の数だけの反応モジュールが、投入チャンバ321から反応チャンバ31内へ連続的に移送された後に行われ得る。
【0153】
一般に使用されるバッチ・タイプの方法により粉末を熱処理し、BNNTを成長させる場合、単数形の反応モジュールを取り付けた後、熱処理装置の温度上昇-温度維持-BN合成-BNNT成長-温度下降-常温冷却-反応物の回収のステップを経るべきであるので、単数形の反応モジュールによって一回の生産量に限界があり、エネルギー、時間などのコスト上昇から経済性の確保に困難がある。
【0154】
しかし、本発明の実施例によると、上記のような方法で、インライン上で連続的に動作することでBNNTを製造するため、BNNTの製造の歩留まりおよび生産性を最大にすることができる。
【0155】
上記のような反応チャンバ31内において、前述した反応モジュール38の内部に前駆体の構造体7に配置してもよいが、
図11に示すように、受け台37が少なくとも一つ以上の複数の前駆体の構造体7を貫通するようにした後、この受け台37を反応チャンバ31内の少なくとも反応ゾーン311に位置するようにしてもよい。上記受け台37は、反応チャンバ31の長手方向に水平な方向に配置してもよい。
【0156】
本発明の一実施例によると、上記の前駆体の構造体7を収容するために、
図11に示すような反応モジュールを設けてもよい。
【0157】
反応モジュールには、少なくとも一つ以上の複数の前駆体の構造体7が貫通するように設置され、上述した受け台37を収容する。
【0158】
すなわち、
図11に示すように、反応モジュール38を利用し、前駆体の構造体7を収容し、
図10aおよび10bに示すように、この反応モジュールを反応チャンバ31内に連続的に供給することができる。
【0159】
上記反応モジュールは、互いに対向する一対の支持部381と、これらの支持部381の間に、上記受け台37が収容される収容空間を有する筺体382とを含む。上記受け台37は、上記支持部381と結合されるようにしてもよい。支持部381および受け台37は、支持部381に形成された孔に、互いに着脱自在に上記受け台37が貫通して設けられ、前述したように、前駆体の構造体7が上記受け台37に配列されるようにしてもよい。上記支持部381は、耐熱材料であるアルミナからなることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0160】
図示してはいないが、支持部381には、少なくとも一つ以上の孔が形成されてもよい。上記孔を通して、反応モジュール内における反応ガスの圧力が支持部381によって過剰に維持されることを防止し、反応チャンバ31内の反応ガスの圧力を適度に維持することができる。一対の支持部381において、この孔を対称的な位置に位置するようにすることで、反応ガスが両側でスムーズに均一な流れを有するようにしてもよい。
【0161】
このように、本発明の実施例によると、受け台37に少なくとも一つ以上、または複数の前駆体の構造体7が配置されるようにすることと共に、少なくとも一つ以上、または複数の前駆体の構造体7を用いてBNNTを合成-成長させることができる。したがって反応チャンバ31内の反応空間を最大限に活用することができ、生産性および/または大量生産を最大にすることができる。
【0162】
前駆体の構造体7は、受け台37に一定の間隔を置いて離隔されるように配置され、前駆体の構造体7間の間隔を調節することにより、反応チャンバ31内に投入される前駆体ブロックの数を調節してもよい。
【0163】
上記受け台37には、少なくとも一つのノッチ(図示せず)を形成し、このノッチ(図示せず)に沿って前駆体の構造体7が受け台37に固定されるようにしてもよい。したがって、このノッチ(図示せず)の間隔を調節することにより、取り付けられる前駆体の構造体の間隔および/または数を調節してもよい。
【0164】
図12aは、
図3~
図5の少なくとも一つに示す方法で形成された溶液を用いて作製された前駆体の構造体のSEM写真であり、
図12bは、溶液を使用せず、第2粉末とバインダとを混合し、焼結させて形成した前駆体の構造体のSEM写真である。また、
図13aは、
図12aの前駆体の構造体を反応させて形成したBNNTナノ材料のSEM写真であり、
図13bは、
図12bの前駆体の構造体を反応させて形成したBNNTナノ材料のSEM写真である。上記バインダは、前駆体の粉末である第2粉末を焼成して窒化反応させる高温の熱処理ステップで、ほとんどが昇華され、気相式に除去され得る。
【0165】
図12aのように、本発明の溶液を用いる方法により形成された前駆体の構造体は、
図12bに示すように、第2粉末とバインダとを混合し、焼結させて得られた前駆体の構造体に比べ、気孔が小さく、均質に配置されていることが分かる。また、このように得られたBNNTナノ材料も、
図13aに示される構造体の組織におけるBNNT合成が
図13bに示される構造体の組織におけるBNNT合成よりも均質であり、かつ微細な不純物が少ない高品質のBNNTをなしていることが分かる。
【0166】
このように、本発明の分散溶液を利用して用意された多孔性前駆体の構造体にナノ材料を形成することが、高品質のナノ材料を得ることに有利である。これに加えて、分散溶液を利用して構造体を成形する場合、ナノ前駆体の粉末粒子の分散性を向上することができ、モールドを利用することで、容易かつ迅速な成形が可能であるので、大量の前駆体の構造体を得ることに有利であることから生産性をより一層高めることになる。
【0167】
このように、本発明は、図面に示された実施例を参考に説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、様々な変形および同様な他の実施例が可能であることを理解するであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付された請求の範囲の技術的思想によって定められなければならないであろう。
【0168】
実施例において説明される特定の実行は、一実施例であって、いかなる方法も実施例の範囲を限定するものではない。明細書を簡潔にするために、従来の電子的な構成、制御システム、ソフトウェア、上記システムの他の機能的な側面に関する記載は省略する場合がある。また、図面に示された構成要素間の線の接続または接続部材は、機能的な接続および/または物理的または回路的な接続を例示的に示したものであり、実際の装置では、代替可能であるか、または、さらに様々な機能的な接続、物理的な接続、または回路接続として示される場合がある。また、「必須的な」、「重要な」などのように具体的な言及がない場合は、本発明を適用するための必要構成要素ではないと言える。
【0169】
実施例の明細書(特に、請求の範囲)で「前記」の用語およびそれと同様な指示用語の使用は、単数および複数の両方に該当すると言える。また、実施例において、範囲(range)を記載した場合、上記の範囲に属する個別の値を適用した発明を含むことであり(これに反する記載がない場合)、詳細な説明に、上記の範囲を構成する各々の個別値を記載したものと同等である。最後に、実施例に係る方法を構成するステップについて明確に順序を記載したり、それに反する記載がない場合は、上記のステップは、適切な順序で行われる。必ずしも上記のステップの記載順序に従うように実施例を限定するものではない。実施例において、全ての例または例示的な用語(例えば、など)の使用は、単に実施例を詳細に説明するためのものであり、請求の範囲によって限定しない限り、上記の例または例示的な用語によって実施例の範囲を限定するものではない。さらに、当業者は、様々な修正、組み合わせ、および変形が付加された請求の範囲またはその同等物のカテゴリ内で設計条件およびファクターに基づいて構成できることを理解するであろう。