(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】心臓ペーシング用の要求駆動型キャパシタ充電
(51)【国際特許分類】
A61N 1/365 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
A61N1/365
(21)【出願番号】P 2020508338
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 US2018045934
(87)【国際公開番号】W WO2019036266
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-05
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】ソーチャック,ロバート・ティー
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0279425(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228718(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0157399(US,A1)
【文献】特表平8-507240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 ― 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持(holding)キャパシタ、および前記保持キャパシタをペーシング電圧振幅にまで充電するように構成された充電回路を備える治療送達回路と、
患者の心臓から心臓電気信号を受信するように構成された検知回路と、
前記検知回路および前記治療送達回路に結合され、
前記治療送達回路を制御してペーシングパルスを送達し、
前記送達されたペーシングパルスに応答して、ペーシングレートに対応する第1のペーシング間隔を開始し、
前記治療送達回路を制御して、前記第1のペーシング間隔中に、第1の充電モードに従って前記保持キャパシタを充電し、
少なくとも前記ペーシングレートよりも速い閾値レートである、上昇した内因性(intrinsic)心拍数を、前記心臓電気信号から検出し、
前記上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して、前記第1の充電モードから第2の充電モードに切り替え、
前記第2の充電モードで動作している間に、第1の内因性心臓事象が前記心臓電気信号から検知されるのに応答して、第2のペーシング間隔を開始し、
前記治療送達回路を制御して、前記第2の充電モードに従って前記第2のペーシング間隔の少なくとも一部分において前記保持キャパシタの充電を保留する
ように構成された制御回路と
を備える、埋込み医療装置システム。
【請求項2】
前記制御回路が、前記ペーシングレートよりも高いヒステリシスレートで、検知された少なくとも1つの心臓事象を前記心臓電気信号から検出することによって、前記上昇した内因性心拍数を検出するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御回路が、前記第2の充電モードで動作している間、
検知された前記第1の内因性心臓事象に応答して、キャパシタ充電遅延間隔を開始し、
前記キャパシタ充電遅延間隔が終了するまで前記保持キャパシタの充電を保留し、
前記治療送達回路を制御して、前記キャパシタ充電遅延間隔が終了するのに応答して前記保持キャパシタを充電する
ようにさらに構成される、請求項1または2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御回路が、前記第2の充電モードで動作している間、(a)前記第2のペーシング間隔中、および前記キャパシタ充電遅延間隔終了後に、検知された第2の内因性心臓事象に応答して、前記キャパシタ充電を終了するか、かつ/または(b)前記キャパシタ充電遅延間隔中に第2の内因性心臓事象を検出し、前記キャパシタ充電遅延間隔中に前記第2の内因性心臓事象を検出するのに応答して、前記保持キャパシタを充電することなく、前記キャパシタ充電遅延間隔を再始動するか、その少なくとも一方をおこなうようにさらに構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御回路が、
キャパシタ充電時間を決定し、
前記第2のペーシング間隔と前記キャパシタ充電時間との差に基づいて、前記キャパシタ充電遅延間隔を設定する
ようにさらに構成される、請求項3または4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御回路が、
前記検知回路によって前記心臓電気信号から検知された、所定の数の連続した内因性心臓事象に応答して、前記上昇した内因性心拍数を検出し、
前記第2の充電モードで動作している間、前記上昇したこの内因性心拍数を検出するのに応答して、キャパシタ充電遅延間隔を開始し、
前記キャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、前記保持キャパシタの充電を保留する
ようにさらに構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御回路が、
ヒステリシス間隔(hysteresis interval)を開始し、
前記ヒステリシス間隔中に、前記第1の内因性心臓事象を検出するのに応答して、前記上昇した内因性心拍数を検出し、
前記第2の充電モードで動作している間、前記上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して、キャパシタ充電遅延間隔を開始し、
前記キャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、前記保持キャパシタの充電を保留する
ように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御回路が、
前記第2の充電モードで動作している間、低下した内因性心拍数を検出し、
前記治療送達回路を制御して、前記低下した内因性心拍数を検出するのに応答して、前記治療送達回路による前記キャパシタ充電の保留を無効化する
ようにさらに構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御回路が、
第1のペーシング治療に対応する前記第1のペーシング間隔を設定し、
前記第1のペーシング治療とは異なる第2のペーシング治療に対応する第3のペーシング間隔を設定し、
前記第3のペーシング間隔を設定するのに応答して、前記保持キャパシタの前記充電の保留を無効化する
ようにさらに構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御回路が、
心室性期外収縮を検出し、
前記心室性期外収縮を検出するのに応答して、前記保持キャパシタの前記充電の前記保留を無効化する
ようにさらに構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御回路が、
前記治療送達回路を制御して、前記第1の充電モードと前記第2の充電モードの間の切替えを無効化した状態で、前記第1の充電モードまたは前記第2の充電モードのうちの一方のみに従って、前記保持キャパシタを充電し、
所定の時間間隔にわたって実際のペーシング負担(pacing burden)を決定し、
前記実際のペーシング負担とペーシング負担閾値とを比較し、
前記実際のペーシング負担が前記ペーシング負担閾値に到達するのに応答して、前記第1の充電モードと前記第2の充電モードの間の切替えを有効化する
ようにさらに構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
患者の状態に相関関係のある信号を生成するように構成されたセンサをさらに備え、
前記制御回路が、
前記センサ信号を監視し、
前記センサ信号に基づいて、予想されるペーシング負担の変化を検出し、
予想されるペーシング負担の変化を検出するのに応答して、前記第1の充電モードと前記第2の充電モードの間の切替えを有効化する
ようにさらに構成される、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
患者の状態に相関関係のある信号を生成するように構成されたセンサをさらに備え、
前記制御回路が、
前記センサ信号を監視し、
前記センサ信号に基づいて、ペーシング負担の前記予想される増加を検出し、
ペーシング負担の予想される増加を検出するのに応答して、前記第2の充電モードから前記第1の充電モードに切り替える
ようにさらに構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御回路が、
前記検知回路によって前記心臓電気信号から検知された、内因性心臓事象の速度の変化の傾斜を決定し、
前記傾斜と傾斜閾値とを比較し、
前記傾斜が前記傾斜閾値に到達するのに応答して、前記第1の充電モードと前記第2の充電モードとを切り替える
ようにさらに構成される、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御回路が、
時刻に基づいて前記第1の充電モードと前記第2の充電モードとの間の前記切替えを有効化する
ようにさらに構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、心臓ペーシングパルスを送達する埋込み医療装置(IMD)のシステムおよび方法に関し、詳細には、ペーシングの要求に基づいて心臓ペーシングパルスを生成および送達するのに使用されるキャパシタの充電を制御するIMDのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓ペースメーカや植込み型除細動器(ICD)などの医療装置は、1つまたは複数の医療用電気リード線によって支持された電極、および/または医療装置のハウジング上の電極を介して、患者の心臓に治療用電気刺激を与える。この電気刺激には、心臓ペーシングパルスまたは電気的除細動/除細動(CV/DF)ショックが含まれ得る。
【0003】
この医療装置は、異常な内因性心拍リズムを検出するように、内因性の心臓活動に付随する心臓の電気的事象を検知してもよい。徐脈、頻脈、または細動などの異常なリズムを検出すると、適切な電気刺激治療を施して、心臓のさらに正常なリズムを回復または維持することができる。たとえば、ICDは、徐脈もしくは頻脈を検出すると、ペーシングパルスを患者の心臓に送達してもよく、または頻脈もしくは細動を検出すると、CV/DFショックを心臓に与えてもよい。
【0004】
ICDは、心腔からの心臓電気信号を検知し、経静脈医療用電気リード線によって支持された心内膜電極を使用して、電気刺激治療を心腔に施すことができる。他の場合では、非経静脈リード線をICDに結合してもよく、この場合、ICDは心臓の電気信号を検知し、心血管外電極を使用して電気刺激治療を心臓に施してもよい。心血管外電極を使用して効果的に心臓を刺激するのに必要な治療用電気刺激パルスのエネルギーは、通常、心内膜電極を使用して心臓を刺激するのに必要なエネルギーよりも高い。ペーシング回路は、利用可能なペーシング電極ベクトルを使用して、拍動している心臓を捕捉するのに必要なペーシングパルスのエネルギーに従ってペーシングパルスを生成するための、ペーシング電圧振幅まで充電される保持キャパシタを備えてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明の一実施例は、例えば、心臓ペーシング用の要求駆動型キャパシタ充電に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、本開示は、埋込み医療装置の治療送達回路によって心臓電気刺激パルスを送達するのに使用される、少なくとも1つの保持キャパシタの充電を制御するための技法を対象とする。これらの技法に従って動作するIMDは、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされると、キャパシタの充電を保留してもよい。たとえば、遅延間隔が終了になった後に充電することにより、ペーシング間隔の少なくとも一部分においてキャパシタの充電を保留してもよい。この充電遅延間隔は、ペーシング間隔に等しくてもよく、それより長くても短くてもよい。低下した心拍数の判定基準が満たされることに応答して、IMDは、たとえば、必要に応じてペーシング間隔の最初に、またはその全体を通して、遅延なし保持キャパシタの充電に切り替えて戻して、ペーシングパルスを送達するために準備状態においてペーシング電圧振幅で保持キャパシタの充電を維持してもよい。例によっては、IMDは、2つの異なる充電モード、たとえば遅延ありキャパシタ充電モードと遅延なしキャパシタ充電モードとの間で切り替える機能を、いつ有効化(オン)または無効化(オフ)するのかを制御するように構成されてもよい。この充電モード切替え機能が無効になっていると、IMDは、ある1つのデフォルト充電モードに従って保持キャパシタを充電するように動作してもよい。充電モード切替え機能が有効になっていると、IMDは、内因性心拍数の判定基準および/または他のペーシング要求判定基準に基づいて、2つの異なる充電モードを切り替えるように動作してもよい。
【0007】
一例では、本開示は、治療送達回路と、検知回路と、この治療送達回路および検知回路に結合された制御回路とを備えるIMDシステムを提供する。この治療送達回路は、保持キャパシタと、この保持キャパシタをペーシング電圧振幅にまで充電するように構成された充電回路とを有する。検知回路は、患者の心臓から心臓電気信号を受信するように構成される。制御回路は、治療送達回路を制御してペーシングパルスを送達し、送達されたこのペーシングパルスに応答して、ペーシングレートに対応する第1のペーシング間隔を開始し、治療送達回路を制御して、この第1のペーシング間隔中に、第1の充電モードに従って保持キャパシタを充電し、少なくともペーシングレートよりも速い閾値レートである、上昇した内因性心拍数を、心臓電気信号から検出し、この上昇した内因性心拍数を検出することに応答して、第1の充電モードから第2の充電モードに切り替え、内因性心臓事象が心臓電気信号から検知されるのに応答して、第2のペーシング間隔を開始し、治療送達回路を制御して、第2の充電モードに従って第2のペーシング間隔の少なくとも一部分において保持キャパシタの充電を保留するように構成される。
【0008】
別の例では、本開示は、保持キャパシタ、およびこの保持キャパシタをペーシング電圧振幅にまで充電するように構成された充電回路を有する治療送達回路によってペーシングパルスを送達するステップと、送達されたこのペーシングパルスに応答して、ペーシングレートに対応する第1のペーシング間隔を開始するステップとを含む方法を提供する。この方法はさらに、第1のペーシング間隔中に、第1の充電モードに従って保持キャパシタを充電するステップと、少なくともペーシングレートよりも速い閾値レートである、上昇した内因性心拍数を、検知回路が受信した心臓電気信号から検出するステップと、この上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して、第1の充電モードから第2の充電モードに切り替えるステップと、第1の内因性心臓事象が心臓電気信号から検知されるのに応答して、第2のペーシング間隔を開始するステップと、第2の充電モードに従って第2のペーシング間隔の少なくとも一部分において保持キャパシタの充電を保留するステップとを含む。
【0009】
別の例では、本開示は、埋込み医療装置の制御回路によって実行されると、この装置が、保持キャパシタ、およびこの保持キャパシタをペーシング電圧振幅にまで充電するように構成された充電回路を有する治療送達回路によってペーシングパルスを送達し、送達されたこのペーシングパルスに応答して、ペーシングレートに対応する第1のペーシング間隔を開始できるようにする1組の命令を含む、持続的でコンピュータ読取り可能な記憶媒体を提供する。この命令はさらに、この装置が、第1のペーシング間隔中に、第1の充電モードに従って保持キャパシタを充電し、少なくともペーシングレートよりも速い閾値レートである、上昇した内因性心拍数を、検知回路が受信した心臓電気信号から検出し、この上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して、第1の充電モードから第2の充電モードに切り替え、第1の内因性心臓事象が心臓電気信号から検知されるのに応答して、第2のペーシング間隔を開始し、第2の充電モードに従って第2のペーシング間隔の少なくとも一部分において保持キャパシタの充電を保留できるようにする。
【0010】
この概要は、本開示に記載する主題の概要を提示するものである。以下の添付図面および記述において詳細に記述される機器および方法の、排他的または網羅的な説明を提示するものではない。添付図面および以下の記述において、1つまたは複数の例のさらなる詳細を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】一例による、心血管外ICDシステムの概念図である。
【
図1B】一例による、心血管外ICDシステムの概念図である。
【
図2A】互いに異なる埋込み構成での、
図1Aの心血管外ICDシステムが埋め込まれた患者の概念図である。
【
図2B】互いに異なる埋込み構成での、
図1Aの心血管外ICDシステムが埋め込まれた患者の概念図である。
【
図2C】互いに異なる埋込み構成での、
図1Aの心血管外ICDシステムが埋め込まれた患者の概念図である。
【
図4】一例による、
図3のICDの高電圧治療回路の図である。
【
図5】一例による、
図3のICDの低電圧治療回路の図である。
【
図6】一例による、ペーシングパルス送達のためのキャパシタ充電を制御する方法の流れ図である。
【
図7】一例による、内因性心拍数の判定基準に基づいて保持キャパシタの充電を制御する方法の流れ図である。
【
図8A】検知された内因性事象のタイミングに基づいて保持キャパシタの充電を制御する際に、ICDによって実行される動作を示すタイミング図である。
【
図8B】検知された内因性事象のタイミングに基づいて保持キャパシタの充電を制御する際に、ICDによって実行される動作を示すタイミング図である。
【
図8C】検知された内因性事象のタイミングに基づいて保持キャパシタの充電を制御する際に、ICDによって実行される動作を示すタイミング図である。
【
図8D】検知された内因性事象のタイミングに基づいて保持キャパシタの充電を制御する際に、ICDによって実行される動作を示すタイミング図である。
【
図9A】遅延ありキャパシタ充電モードに従ってキャパシタ充電を保留し、遅延なし充電に切り替えて戻すように、ICDまたはペースメーカによって実行される動作を示すタイミング図である。
【
図9B】遅延ありキャパシタ充電モードに従ってキャパシタ充電を保留し、遅延なし充電に切り替えて戻すように、ICDまたはペースメーカによって実行される動作を示すタイミング図である。
【
図9C】遅延ありキャパシタ充電モードに従ってキャパシタ充電を保留し、遅延なし充電に切り替えて戻すように、ICDまたはペースメーカによって実行される動作を示すタイミング図である。
【
図10】さらに別の例による、キャパシタ充電を制御する方法の流れ図である。
【
図11】心拍数の変化の速度または傾斜に基づいてキャパシタ充電モードを制御する方法の流れ図である。
【
図12】別の例による、心臓ペーシングのためのキャパシタ充電を制御する方法の流れ図である。
【
図13】一例による、様々なペーシング治療に基づいてキャパシタ充電を制御する方法の流れ図である。
【
図14】本明細書に開示された技法を使用してペーシング治療を施すためのキャパシタ充電を制御するように構成されてもよい、別のIMDシステムの図である。
【
図15】さらに別の例による、キャパシタ充電の保持を制御する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般に、本開示は、心臓医療の装置またはシステムの治療送達回路での保持キャパシタの充電を制御するための技法を説明する。1つの保持キャパシタ、または複数の保持キャパシタの組合せは、一般に、心臓ペーシングパルスを生成および送達するために、充電回路によってペーシング電圧振幅にまで充電される。保持キャパシタは、必要に応じて、ペーシングパルス、またはR波やP波など検知された内因性心臓事象の直後に開始されるペーシング間隔の最初に、またはこのペーシング間隔を通して充電されてもよい。このようにして、保持キャパシタは、ペーシングタイミング間隔が終了するまで、準備状態でペーシング電圧振幅に維持される。しかし、1つの保持キャパシタまたは複数のキャパシタの組合せの充電をペーシング電圧振幅に維持すると、IMDの電源によって供給されるエネルギーを消費する。上昇した心拍数の判定基準が満たされると、かつ/または低いペーシング要求判定基準が満たされると、ペーシング間隔の少なくとも一部分またはそのすべての期間においてキャパシタ充電を保留することにより、心臓ペーシングパルスを送達するための準備状態に保持キャパシタを充電および維持するのに通常必要とされるエネルギーを節約するために、本明細書に開示された各技法を使用してもよい。
【0013】
例によっては、本明細書に開示された各技法を実装する心臓医療装置システムは、心血管外ICDシステムでもよい。本明細書では、「心血管外」という用語は、患者の血管および心臓の外側の位置を指す。心血管外リード線によって支持される埋込み可能電極は、胸部外に(胸郭および胸骨の外側、たとえば皮下に)または胸部内に(胸郭または胸骨の下、たとえば胸骨下に)配置されてもよいが、一般に、心筋組織とは密接に接触しない。本明細書に開示された、キャパシタ充電を制御するための各技法は、心血管外電極に結合され、心内膜または心外膜の電極に結合された心臓医療装置よりも相対的に高いペーシング電圧振幅および/またはそれよりも長いパルス幅を必要とする可能性の高い治療送達回路に適用されてもよい。
【0014】
したがって、本明細書に開示された各技法は、ICDおよび心外血管電極を支持する埋込み可能な医療用リード線とともに説明されるが、本明細書に開示された各態様は、他の心臓医療の装置またはシステムとともに利用されてもよい。たとえば、添付の図面とともに説明されるキャパシタ充電を制御するための各技法は、検知電極および治療送達電極を支持する、経静脈、心膜、もしくは心外膜のリード線に結合された埋込み可能なペースメーカもしくはICD、ハウジングベースの電極を有する心臓内すなわちリード線なしのペースメーカもしくはICD、または、外部、表面、もしくは皮膚の電極に結合された外部もしくはウェアラブルのペースメーカもしくは除細動器を含む、心臓電気刺激パルスを送達することのできる、任意の埋込み可能または外部の医療装置に実装してもよい。
【0015】
図1Aおよび
図1Bは、一例による、心血管外ICDシステム10の概念図である。
図1Aは、患者12内に埋め込まれたICDシステム10の正面図である。
図1Bは、患者12内に埋め込まれたICDシステム10の側面図である。ICDシステム10は、心血管外電気刺激および検知リード線16に結合されたICD14を備える。
図1Aおよび
図1Bは、除細動および/または電気的除細動のショック、ならびにペーシングパルスを供給できるICDシステム10との関連で説明される。
【0016】
ICD14は、ICD14の内部構成部品を保護する気密シールを形成するハウジング15を備える。ICD14のハウジング15は、チタニウムまたはチタニウム合金などの導体材料で形成されてもよい。ハウジング15は、電極(「缶」電極と呼ばれることがある)の役割を果たしてもよい。ハウジング1は、電気的除細動/除細動(CV/DF)ショック、または高電圧治療回路を使用して送達されてもよいペーシングパルスを含む他の電気パルスを送達する際に使用するための、能動的な缶電極として使用されてもよい。他の例では、ハウジング15は、低電圧治療回路から単極心臓ペーシングパルスを送達する際に使用するために、かつ/またはリード線16によって支持される電極と組み合わせて心臓電気信号を検知するために利用可能でもよい。他の例では、ICD14のハウジング15は、このハウジングの外側部分に複数の電極を備えてもよい。(1つまたは複数の)電極として機能するハウジング15の(1つまたは複数の)外側部分は、たとえば、刺激後の分極アーティファクトを低減するために、窒化チタンなどの材料でコーティングされてもよい。
【0017】
ICD14は、ハウジング15を横断する電気フィードスルーを含むコネクタアセンブリ17(コネクタブロックまたはヘッダとも呼ばれる)を備え、リード線16のリード本体18内に延在する導体と、ICD14のハウジング15内に含まれる電子構成部品との間の電気接続を実現する。本明細書においてさらに詳細に説明するように、ハウジング15は、1つまたは複数のプロセッサ、メモリ、送受信機、電気心臓信号検知回路、治療送達回路、電源、および、心臓電気信号を検知し、心拍リズムを検出し、異常な心拍リズムを処置するために電気刺激パルスを制御し、これを送達するための他の構成部品を収容してもよい。
【0018】
細長いリード本体18は、ICDコネクタアセンブリ17に接続されるように構成されたリードコネクタ(図示せず)を含む近位端27と、1つまたは複数の電極を含む遠位部分25とを有する。
図1Aおよび
図1Bに示す例では、リード本体18の遠位部分25は、除細動電極24および26と、ペース/検知電極28および30とを備える。場合によっては、除細動電極24および26は、同時に起動するように構成されてもよいという点で、ともに除細動電極を形成してもよい。あるいは、除細動電極24および26は、別々の除細動電極を形成してもよく、この場合、電極24および26のそれぞれは、独立して起動されてもよい。
【0019】
電極24および26(ならびに、いくつかの例ではハウジング15)は、高電圧刺激治療(たとえば、電気的除細動または除細動のショック)を送達するために、別々にまたはまとめて利用されるので、本明細書において除細動電極と呼ばれる。電極24および26は、細長いコイル電極でもよく、ペーシングおよび検知の電極28および30と比較して、一般に、高電圧の電気刺激パルスを送達するための表面積が相対的に広い。しかし、電極24および26、ならびにハウジング15はまた、高電圧刺激治療に加えて、またはその代わりに、ペーシング機能、検知機能、またはペーシング機能と検知機能の両方を提供するために利用されてもよい。この意味では、本明細書における「除細動電極」という用語の使用は、高電圧電気的除細動/除細動のショック治療用途での使用のみに電極24および26を制限すると考えるべきではない。たとえば、電極24および26は、心臓の電気信号を検知し、心停止、徐脈、非洞性の頻脈もしくは細動などの異常なリズムを検出および区別するのに使用される検知ベクトルにおいて使用されてもよく、かつ/または心臓ペーシングパルスを心臓8に送達するためのペーシング電極ベクトルにおいて使用されてもよい。
【0020】
電極28および30は、相対的に表面積が狭い電極であり、この電極は、心臓の電気信号を検知するための検知電極ベクトルで使用可能であり、いくつかの構成においてペーシングパルスを送達するのに使用されてもよい。電極28および30は、一般に低電圧用途で使用するように構成されるので、たとえば、高電圧の電気的除細動/除細動のショックを送達するのとは対照的に、ペーシングパルスの送達用および/または心臓電気信号の検知用のカソードまたはアノードとして使用されるので、ペース/センス電極と呼ばれる。場合によっては、電極28および30は、ペーシング機能のみ、検知機能のみ、またはその両方を実現してもよい。ICD14は、電極24、26、28、および/または30の組合せを含む、1つまたは複数の検知ベクトルを介して、心臓8の電気活動に対応する心臓電気信号を取得してもよい。例によっては、ICD14のハウジング15は、検知電極ベクトルでの電極24、26、28、および/または30のうち1つまたは複数の電極と組み合わせて使用される。
【0021】
図1Aおよび
図1Bに示す例では、電極28は除細動電極24の近位に配置され、電極30は除細動電極24と26の間に配置される。電極28および30は、リード本体18に沿った他の位置に配置されてもよく、図に示す位置に限定されない。相対的に少ないか、または相対的に多いペース/センス電極が、リード線16によって支持されてもよい。たとえば、例によっては、第3のペース/センス電極が、除細動電極26の遠位に配置されてもよい。電極28および30は、リング電極として示してある。しかし、電極28および30は、リング電極、短コイル電極、半球状電極、指向性電極、セグメント化電極などを含め、いくつかの異なるタイプの電極のいずれかを備えてもよい。
【0022】
図に示した例では、リード線16は、ICD14のコネクタアセンブリ27から、患者12の胴体の中央に向かって、たとえば患者12の剣状突起20に向かって内側へ、胸郭32上で皮下に、または筋肉下に延在する。剣状突起20の近くの位置において、リード線16は、胸骨22に実質的に平行に、胸郭および/または胸骨の上で皮下に、または筋肉下に屈曲または回転し、また上に延在する。
図1Aでは、胸骨22から横方向にオフセットし、胸骨22にほぼ平行に延在するように示してあるが、リード線16の遠位部分25は、胸骨22の上部に、胸骨22の右側もしくは左側へオフセットして、または胸骨22から左右に向かって横方向へ角度を付けてなど、他の位置に埋め込まれてもよい。あるいは、リード線16は、他の皮下経路または筋肉下経路に沿って配置されてもよい。心血管外リード線16の経路は、ICD14の位置、リード本体18によって支持される電極の配置および位置、ならびに/または他の要因に依存する場合がある。
【0023】
導電体(図示せず)は、リード線16の細長いリード本体18の1つまたは複数の内腔を通って、近位リード端27でのリードコネクタから、リード線本体18の遠位部分25に沿って配置された電極24、26、28、および30まで延在する。リード本体18内に含まれる細長い導電体はそれぞれ、除細動電極24および26、ならびにペース/センス電極28および30とそれぞれ電気的に結合され、これらはリード本体18内でのそれぞれ別々の絶縁導体でもよい。それぞれの導体は、ハウジング15を横断する関連付けられた電気フィードスルーを含む、コネクタアセンブリ17での接続を介して、電極24、26、28、および30を、ICD14の治療送達回路および/または検知回路などの回路に電気的に結合する。導電体は、ICD14内の治療送達回路から、1つもしくは複数の除細動電極24および26、ならびに/またはペース/センス電極28および30に治療を送出し、除細動電極24および26、ならびに/またはペース/センス電極28および30のうちの1つもしくは複数からの検知済み電気信号をICD14内の検知回路に送信する。
【0024】
リード線16のリード本体18は、シリコーン、ポリウレタン、フルオロポリマー、それらの混合物、および他の適切な材料を含む非導電性材料から形成され、1つまたは複数の導体が延在する1つまたは複数の内腔を形成するように成形されてもよい。リード本体18は、形状が管状または円筒形でもよい。他の例では、細長いリード本体18の遠位部分25(またはそのすべて)は、形状が、平坦、リボン状、またはパドル状でもよい。リード本体18は、ほぼ直線、湾曲、屈曲、蛇行、起伏、またはジグザグの状態である、予め形成された遠位部分25を有するように形成されてもよい。
【0025】
図に示した例では、リード本体18は、ギリシャ文字イプシロン「ε」にともに似ていることのある2つの「C」字型曲線を有する、予め形成された湾曲遠位部分25を含む。除細動電極24および26はそれぞれ、リード本体遠位部分25の、それぞれ2つのC字型部分のうちの一方によって支持される。2つのC字型曲線は、リード本体18の中心軸から離れて同じ方向に延在するか、または湾曲しているように見え、これに沿ってペース/センス電極28および30が配置される。ペース/センス電極28および30は、場合によっては、除細動電極24および26の中点がペース/センス電極28および30から横方向にオフセットされるように、リード本体18の直線の近位部分の中心軸とほぼ位置が揃っていてもよい。
【0026】
本明細書に記載の各技法を用いて実施されてもよいリード本体18の湾曲、蛇行、起伏、またはジグザグの状態の遠位部分によって支持される1つまたは複数の除細動電極、ならびに1つまたは複数のペーシング電極および検知電極を含む、心血管外リード線の他の例が全体として、係属中の米国特許公報第2016/0158567号(Marshallら)に開示されている。本明細書で開示された各技法は、どんな特定のリード本体設計にも限定されないが、他の例では、リード本体18は、予め形成された任意の形状、屈曲、または曲線のない可撓性のある細長いリード本体である。本明細書に開示された各技法を採用するIMDシステムで実施されてもよい心血管外リード線および電極、ならびに寸法の様々な例示的構成は、係属中の米国公報第2015/0306375号(Marshallら)、および係属中の米国公報第2015/0306410号(Marshallら)に記載されている。
【0027】
ICD14は、1つまたは複数の検知電極ベクトルから受信した心臓電気信号を分析して、心停止、徐脈、または頻脈性不整脈などの異常なリズムを監視する。ICD14は、プログラムされたペーシング治療制御パラメータに従って、心臓ペーシングパルスの送達のタイミングを調節するためのペーシング間隔を設定するように構成されてもよい。ICD14は、複数のペーシングモード、たとえば、VVI(R)、VDI(R)、VVO(R)などに従って動作し、それに応じてペーシングタイミング間隔を設定するように構成されてもよい。ICD14は、ペーシングタイミング間隔が終了するのに応答して心臓ペーシングパルスを送達する。たとえば、ペーシング間隔中に内因性のR波を検知することなく心室のペーシング間隔が終了すると、ICD14は、ペーシングパルスを送達して、プログラムされた最少心拍数を少なくとも維持するか、または、たとえばCV/DFショック後の心停止中にバックアップペーシングを提供する。除細動電極24と26をアノードとカソードのペアとして使用して、ペーシングおよび検知の電極28と30をアノードとカソードのペアとして使用して、またはペース/センス電極28もしくは30の一方が除細動電極24もしくは26の一方とペアになって、または電極24、26、28、もしくは30のいずれか1つがハウジング15とペアになって、心臓ペーシングパルスを送達してもよい。
【0028】
ICD14は、利用可能な電極24、26、28、30、および/またはハウジング15のいずれかから選択されてもよい治療送達電極ベクトルを使用して、頻脈性不整脈(たとえば、VTまたはVF)を検出するのに応答して、電気刺激治療を送達するように構成されてもよい。ICD14は、心臓電気信号の心拍数および形態を分析して、いくつかの頻脈性不整脈検出技法のいずれかに従って頻脈性不整脈を監視してもよい。頻脈性不整脈を検出するためのある例示的な技法が、米国特許第7,761,150号(Ghanemら)に記載されている。ICD14は、VT検出に応答して抗頻脈ペーシング(ATP)を送達してもよく、場合によっては、CV/DFショックを送達する必要性を回避しようとして、CV/DFショックに先立って、または高電圧キャパシタ充電中にATPを送達してもよい。ATPがVTを正常に終了しない場合、またはVFが検出されたとき、ICD14は、除細動電極24および26、ならびに/またはハウジング15のうち一方または両方を介して、1つまたは複数のCV/DFショックを送達してもよい。
【0029】
図1Aおよび
図1Bは、本質的に例示的であり、本明細書に開示された各技法の実施を制限するものとみなされるべきではない。胸郭32に沿って患者12の左側の皮下に埋め込まれたICD14が示してある。ICD14は、場合によっては、患者12の左後腋窩線と左前腋窩線の間に埋め込まれてもよい。しかし、ICD14は、患者12において他の皮下の位置または筋肉下の位置に埋め込まれてもよい。たとえば、ICD14は、胸部領域の皮下ポケットに埋め込まれてもよい。この場合、リード線16は、ICD14から胸骨柄22へ向かって皮下または筋肉下に延在し、屈曲または回転し、この胸骨柄から皮下または筋肉下の所望の位置まで下方へ延在してもよい。さらに別の例では、ICD14は、腹部に配置されてもよい。リード線16は、同様に他の心血管外の位置に埋め込まれてもよい。たとえば、
図2A~
図2Cについて説明するように、リード線16の遠位部分25は、胸骨下腔の胸骨/胸郭の下に埋め込まれてもよい。
【0030】
通信リンク42によって、ICD14と遠隔測定通信する外部装置40が示してある。外部装置40は、通信リンク42を介して、データを送受信するようにICD14と通信するための、プロセッサ、表示装置、ユーザインターフェース、遠隔測定ユニット、および他の構成要素を備えてもよい。通信リンク42は、BLUETOOTH(登録商標)、Wi-Fi、もしくは医療インプラント通信サービス(MICS)、または他のRFもしくは通信周波数帯域幅もしくはプロトコルなど、無線周波数(RF)リンクを使用してICD14と外部装置40との間で確立されてもよい。
【0031】
外部装置40は、ICD14からデータを検索し、ICDの機能を制御するようにICD14での動作パラメータおよびアルゴリズムをプログラムするために、病院、クリニック、または診療所で使用されるプログラマとして具体化されてもよい。外部装置40を使用して、心臓事象検知パラメータ(たとえば、R波検知パラメータ)、心臓リズム検出パラメータ(たとえば、VTおよびVF検知パラメータ、ならびにSVT区別パラメータ)ならびにICD14によって使用される治療制御パラメータをプログラムしてもよい。生理学的信号またはそれに由来する関連データ、装置診断の結果、ならびに検出されたリズムエピソードおよび送達された治療の履歴を含む、ICD14によって記憶または取得されたデータは、問合せコマンドに続いて、外部装置40によってICD14から取得されてもよい。あるいは、外部装置40は、ホームモニタまたはハンドヘルド装置として具現化されてもよい。
【0032】
図2A~
図2Cは、
図1A~
図1Bに示す配置とは異なる埋込み構成で心血管外ICDシステム10が埋め込まれた患者12の概念図である。
図2Aは、ICDシステム10が埋め込まれた患者12の正面図である。
図2Bは、ICDシステム10が埋め込まれた患者12の側面図である。
図2Cは、ICDシステム10が埋め込まれた患者12の横断面図である。この構成では、システム10の心血管外リード線16は、患者12の胸骨22の下に少なくとも部分的に埋め込まれている。リード線16は、ICD14から剣状突起20に向かって皮下に、または筋肉下に延在し、剣状突起20に近い位置で屈曲または回転し、胸骨下の位置での前縦隔36内で上方に延在する。
【0033】
前縦隔36は、胸膜39によって横方向に、心膜38によって後方に、また胸骨22によって前方に境界付けられていると見てもよい(
図2C参照)。リード線16の遠位部分25は、実質上、前縦隔36の緩い結合組織および/または胸骨下筋組織内で胸骨22の後側に沿って延在してもよい。遠位部分25が実質的に前縦隔36内にあるように埋め込まれたリード線は、「胸骨下リード線」と呼ばれることがある。
【0034】
図2A~
図2Cに示す例では、リード線16は、胸骨22の下のほぼ中央に配置される。しかし、他の例では、リード線16は、胸骨22の中央から横方向にオフセットされるように埋め込まれてもよい。場合によっては、リード線16は、このリード線16の遠位部分25が、胸骨22に加えて、またはその代わりに、胸郭32の下部/下方になるように横方向に延在してもよい。他の例では、リード線16の遠位部分25は、胸膜腔を含む、または心臓8の心膜38の周囲の周りもしくはその内部にある他の心血管外の胸腔内位置に埋め込まれてもよい。本明細書に記載のキャパシタ充電技法とともに使用されてもよい、他の埋込み位置、ならびにリード線および電極の構成は、上述の参照文献に全体として開示される。
【0035】
図3は、一例によるICD14の概略図である。ハウジング15内に格納された電子回路(
図3に電極として概略的に示してある)は、協働して心臓電気信号を監視し、電気刺激治療がいつ必要かを決定し、プログラムされた治療送達アルゴリズムおよび制御パラメータによって必要に応じて電気刺激治療を送達する、ソフトウェア、ファームウェア、およびハードウェアを含む。ICD14は、心血管外電極24、26、28、および30を支持するリード線16など、心血管外リード線に結合されて、患者の心臓に電気刺激パルスを送達し、心臓電気信号を検知する。
【0036】
ICD14は、制御回路80、メモリ82、治療送達回路84、検知回路86、および遠隔測定回路88を備える。例によっては、ICD14は、患者の生理機能、状態、または症状に相関関係のある信号を生成するための、1つまたは複数のセンサ90を備える。電源98は、必要に応じて、各構成要素80、82、84、86、88、および90のそれぞれを含む、ICD14の回路に電力を供給する。電源98は、1つまたは複数の再充電可能な電池または再充電不可能な電池など、1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置を備えてもよい。電源98と他の構成要素80、82、84、86、および88のそれぞれとの間の接続は、
図3の全体的なブロック図から理解されるべきであるが、明確にするために図示されていない。たとえば、電源98は、治療送達回路84に含まれる1つまたは複数の充電回路に結合されて、この治療送達回路84に含まれる保持キャパシタを充電するのに必要な電力を供給し、この保持キャパシタは、制御回路80の制御下で適切な時点に放電されて、徐脈ペーシング、ショック後ペーシング、ATPおよびCV/DFショックパルスなど、治療プロトコルによる電気刺激パルスを生成する。電源98はまた、センス増幅器、アナログデジタル変換器、スイッチング回路など、検知回路86の各構成要素、センサ90、遠隔測定回路88、およびメモリ82に結合されて、必要に応じて様々な回路または構成要素に電力を供給する。
【0037】
図3に示す機能ブロックは、ICD14に含まれる機能を表し、本明細書におけるICD14に起因する各機能を生成することができるアナログ回路および/またはデジタル回路を実装する、任意のディスクリート回路および/または集積電子回路の構成要素を備えてもよい。様々な構成要素には、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、1つもしくは複数のソフトウェアもしくはファームウェアのプログラムを実行するプロセッサ(共用、専用、もしくはグループ)およびメモリ、組合せ論理回路、状態機械、または説明された機能を提供する他の適切な構成要素もしくは構成要素の組合せが含まれ得る。本明細書に開示された機能を実装するために使用されるソフトウェア、ハードウェア、および/またはファームウェアの特定の形態は、主にICDにおいて利用される特定のシステムアーキテクチャ、およびICDによって利用される特定の検出および治療送達の方法によって決定されることになる。本明細書における開示を考慮すれば、現代の任意の心臓医療装置システムのコンテキストにおける説明された機能を遂行するためのソフトウェア、ハードウェア、および/またはファームウェアの実現は、当業者の能力の範囲内にある。
【0038】
メモリ82は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、または他の任意のメモリデバイスなど、任意の揮発性、不揮発性、磁気または電気の持続的なコンピュータ読取り可能な記憶媒体を含んでもよい。さらに、メモリ82は、1つまたは複数の処理回路によって実行されると、制御回路80および/または他のICD構成要素が、ICD14またはそれらのICD構成要素に起因する様々な機能を実行できるようにさせる命令を記憶する、持続的でコンピュータ読取り可能な媒体を含んでもよい。各命令を記憶する持続的なコンピュータ読取り可能な媒体は、上記に掲載された媒体のいずれかを含んでもよい。
【0039】
本明細書のICD14に起因する各機能は、1つまたは複数の集積回路として具体化されてもよい。回路としての様々な特徴の説明は、様々な機能的側面を強調するものであり、そうした回路を別々のハードウェアまたはソフトウェアのコンポーネントによって実現しなければならないことを必ずしも意味するものでない。むしろ、1つまたは複数の回路に関連付けられた機能は、別々のハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアのコンポーネントによって実行されてもよく、あるいは共通のハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアのコンポーネント内に一体化されてもよい。たとえば、電気刺激パルスを送達するための治療制御動作は、治療送達回路84および制御回路80によって協働して実行されてもよく、またメモリ82に記憶された命令を実行する制御回路80に含まれるプロセッサまたは他の信号処理回路に実装される動作を含んでもよい。これらの治療制御動作は、キャパシタ充電をペーシング電圧振幅にまで保持することが、本明細書に開示されたキャパシタ充電管理技法によっていつ実行されるかを制御することを含んでもよい。
【0040】
制御回路80は、固定された機能回路および/またはプログラム可能な処理回路を備えてもよい。制御回路80は、マイクロプロセッサ、制御装置、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または同等のディスクリートまたはアナログの論理回路のうち、任意の1つまたは複数を含んでもよい。例によっては、制御回路80は、1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、1つもしくは複数の制御装置、1つもしくは複数のDSP、1つもしくは複数のASIC、または1つもしくは複数のFPGA、ならびに他のディスクリートもしくは集積された論理回路の任意の組合せなど、複数の構成要素を含んでもよい。本明細書の制御回路80に起因する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組合せとして具体化されてもよい。
【0041】
制御回路80は、心臓電気活動を検知し、心臓リズムを検出し、検知された心臓信号に応答して、心臓電気刺激治療の送達を制御するための治療送達回路84および検知回路86と、たとえば、データバスを介して通信する。治療送達回路84および検知回路86は、リード線16およびハウジング15によって支持される電極24、26、28、30に電気的に結合され、これらの電極は、共通電極もしくは接地電極として、またはCV/DFショックパルスもしくは心臓ペーシングパルスを送達するための能動缶電極としての役割を果たしてもよい。
【0042】
患者の心臓の電気活動を監視するために、検知回路86は、電極28、30、および/またはハウジング15に選択的に結合されてもよい。検知回路86は、さらに電極28、30および/またはハウジング15のうちの1つまたは複数と一緒にまたは組み合わせて検知電極ベクトルで使用するために、除細動電極24および/または26に選択的に結合されてもよい。検知回路86は、利用可能な電極24、26、28、30、およびハウジング15から、1つまたは複数の検知電極ベクトルからの心臓電気信号を選択的に受信できてもよい。検知回路86は、たとえば、心房心筋の脱分極に付随するP波、および/または心室心筋の脱分極に付随するR波など、心臓の電気的事象を検知するために、また制御回路80による分析のためにデジタル化された心臓信号波形を提供するために、一度に1つまたは複数の心臓電気信号を監視してもよい。たとえば、検知回路86は、電極24、26、28、30、およびハウジング15のいずれが心臓事象検出回路に結合されるかを選択するためのスイッチング回路を備えてもよい。スイッチング回路は、スイッチアレイ、スイッチマトリクス、マルチプレクサ、または選択された電極に検知回路86の構成要素を選択的に結合するのに適した他の任意のタイプのスイッチング装置を備えてもよい。
【0043】
心臓事象検出回路は、選択された電極から受信した心臓電気信号を増幅し、フィルタリングし、デジタル化して、R波などの心臓電気事象を検出するために、または他の信号分析を実行するために、信号品質を改善するように構成されてもよい。検知回路86内の心臓事象検出回路は、1つまたは複数の検知増幅器、フィルタ、整流器、閾値検出器、比較器、アナログデジタル変換器(ADC)、タイマ、または他のアナログまたはデジタルの構成要素を備えてもよい。制御回路80によって決定され、メモリ82に記憶され、かつ/または制御回路80および/もしくは検知回路86のハードウェア、ファームウェア、および/もしくはソフトウェアによって制御される、タイミング間隔および検知閾値に基づいて、制御回路80の制御下で検知回路86によって、心臓事象検知閾値が自動的に調整されてもよい。
【0044】
検知閾値に到達するのに基づいて心臓電気事象を検知すると、検知回路86は、R波検知事象信号などの検知事象信号を生成してもよく、この信号が制御回路80に渡される。R波検知事象信号は、制御回路80によって使用されて、心臓ペーシングパルスをスケジューリングするのに使用される基本時間間隔を制御するペーシング補充収縮間隔タイマを再始動する。たとえば、VVIペーシングモードでは、ブランキング期間外に受信された各R波検知事象信号に応答して、心室ペーシング間隔(またはVV間隔)が再始動されて、スケジューリングされたペーシングパルスを抑制してもよい。治療送達回路84によって送達されるペーシングパルスの最少心拍数およびタイミングを制御するように、各ペーシングパルスが送達されるのに応答して、心室ペーシング間隔が開始される。
【0045】
制御回路80は、内因性(非ペーシング)心臓脱分極に対応するR波検知事象信号を使用して、頻脈性不整脈を検出し、治療の必要性を決定するためのRR間隔(RRI)を決定してもよい。RRIは、連続して検知される2つの内因性R波間の時間間隔であり、検知回路86から受信された2つの連続したR波検知事象信号間で決定されてもよい。制御回路80は、RRIおよび/または検知回路86からマルチビットのデジタル化信号として受信されたQRS波形の形態に基づいて、頻脈性不整脈を検出するように構成されてもよい。治療送達回路84は、心室の頻脈または細動を検出するのに応答して、プログラムされた治療プロトコルによってATPおよび/またはCV/DFショックパルスを送達するように制御される。
【0046】
この例では、治療送達回路84は、高電圧(HV)治療回路83を備え、低電圧(LV)治療回路85を備えてもよい。各治療回路83および85は、充電回路と、それぞれ1つまたは複数の高電圧保持キャパシタまたは低電圧保持キャパシタなど、1つまたは複数の電荷蓄積装置と、選択されたCV/DFショックベクトルまたはペーシング電極ベクトルにわたって(1つもしくは複数の)キャパシタが、いつ充電され、いつ放電されるかを制御するスイッチング回路とを備える。プログラムされたペーシング電圧振幅へのキャパシタの充電、およびプログラムされたペーシングパルス幅でのキャパシタの放電は、制御回路80から受信した制御信号に従って、治療送達回路84によって実行されてもよい。たとえば、制御回路80に含まれるペースタイミング回路は、ICD14によって送達される様々なペーシングモードまたはATPシーケンスに関連付けられた基本ペーシング時間間隔を制御するために、制御回路80のマイクロプロセッサによって設定されるプログラム可能なデジタルカウンタを備えてもよい。制御回路80のマイクロプロセッサは、心臓ペーシングパルスの振幅、パルス幅、極性、または他の特性を設定してもよく、これらはメモリ82に記憶されたプログラム値に基づいていてもよい。
【0047】
治療送達回路84は、制御回路80によって制御されて、キャパシタ充電モードに従って1つまたは複数の保持キャパシタを充電する。本明細書に記載の通り、治療送達回路84は、ペーシング間隔の少なくとも一部分またはそのすべてにおいてキャパシタ充電が保留される遅延あり充電モードに従って、1つまたは複数の保持キャパシタを充電するように構成されてもよい。保持キャパシタ電圧は、再充電されることなく、ペーシング間隔中にペーシング電圧振幅を下回ることができてもよい。またあるときには、治療送達回路84は、遅延なし充電モードに従って1つまたは複数の保持キャパシタを充電するように制御されてもよく、その間にキャパシタの充電は保留されず、またペーシング電圧振幅で保持キャパシタの充電を維持するために、必要に応じてペーシング間隔の最初から、またはその全体を通して実行されてもよい。制御回路80は、治療送達回路を制御して、検知回路86によって受信された(1つまたは複数の)心臓電気信号および/または(1つまたは複数の)センサ90から受信された他の信号から決定された内因性心拍数の判定基準に基づいて、遅延ありキャパシタ充電モードと遅延なしキャパシタ充電モードとの間で切り替えるように構成されてもよい。
【0048】
HV治療回路83およびLV治療回路85に含まれてもよい構成要素についてが、それぞれ
図4および
図5とともに以下に説明してある。ペーシング治療のためにキャパシタ充電を制御するための、本明細書に開示された方法は、高電圧CV/DFショック送達能力に加えてもよい心臓ペーシングパルスを送達するように構成された、HV治療回路83のみを備えるIMDシステムにおいて、またはCV/DFショック治療能力のないLV治療回路85のみを備えるIMDシステムにおいて実施されてもよいことが認識される。システムによっては、HV治療回路83は、高電圧CV/DFショックパルスのみを送達し、LV治療回路85は、相対的に低い電圧ペーシングパルスを送達する。他の例では、制御回路80は、ペーシング治療のタイプ、心臓を捕捉するのに必要なペーシング閾値電圧振幅、または他の要因に基づいて、心臓ペーシングパルスを生成および送達するために、HV治療回路83またはLV治療回路85のうちどちらが利用されるかを選択的に制御してもよい。
【0049】
ICD14は、治療送達回路84によって送達される電気刺激治療の必要性を決定し、かつ/またはこの治療を制御する際に使用するために、患者からの信号を検知するための他のセンサ90を備えてもよい。例によっては、組織酸素センサ、インピーダンスセンサ、または圧力センサなど、心拍出量の増加が必要であることを示すセンサがICD14に含まれてもよい。心拍出量の増加が必要であることを示すセンサは、加速度計などの患者活動センサ、または毎分呼吸量または他の呼吸測定基準を決定するためのインピーダンスセンサを備えてもよい。ペーシングの必要性またはペーシング速度上昇の必要性を判定する際に使用するために、センサ90から受信されたセンサ信号から制御回路80によって、活動の増加に起因する患者の代謝要求の増加が判定されてもよい。同様に、ペーシングの必要性がもはや存在しないとき、またはペーシング速度が低下してもよいときを決定するために、制御回路80によってセンサ信号が使用されてもよい。
【0050】
制御回路80は、センサ90からのセンサ信号を使用して、ペーシングの必要性および/または予想されるペーシングの負担増加を検出するように構成されてもよい。本明細書で使用される「ペーシングの負担」は、患者の心拍リズムが、所定の期間にわたる(内因性リズムとは対照的な)ペーシングされたリズムである時間の割合として定義されてもよい。たとえば、患者は、24時間にわたる時間のうち10%においてペーシングされてもよい。他の例では、ペーシングの負担は、検知された内因性事象に対するペーシングされた事象の比率として、または所定の期間もしくは心臓事象の総数にわたって組み合わされた、ペーシングおよび検知されたすべての内因性事象に対するペーシングされた事象の比率として決定されてもよい。制御回路80は、心拍出量の減少、患者活動の増加、組織酸素化の低下、またはペーシングの頻度および/もしくは速度の上昇が改善もしくは軽減すると予想される他の状態など、患者の生理的状態に基づいてペーシングの負担の予想される増加を検出するように構成されてもよい。
【0051】
制御回路80は、様々なキャパシタ充電モードの間での切替えを可能にすることによって、ペーシングの負担の予想される変化を検出することに対処してもよい。たとえば、制御回路80は、上昇した内因性心拍数の判定基準および/または低下した内因性心拍数の判定基準が満たされるかどうかに基づいて、治療送達回路84が、遅延なしキャパシタ充電と遅延ありキャパシタ充電とを切り替えることができるようにすることにより、予想されるペーシングの負担の増加に対処してもよい。キャパシタの充電モードを切り替える機能を有効にする(オンにする)には、必ずしも、ある充電モードから別の充電モードへ直ちに切り替える必要はない。むしろ、キャパシタ充電モードを切り替える機能を有効にするのに必要な判定基準が満たされた後、あるキャパシタ充電モードから別の充電モードへの切替えを実際に実行する前に、内因性心拍数および/またはセンサ信号に関連する追加の判定基準を満たす必要があってもよい。
【0052】
他の例では、制御回路80は、キャパシタ充電モードを直接切り替えることによって、センサ90からの信号に基づいて、予想されるペーシングの負担の変化を検出することに対応してもよい。たとえば、心拍出量の回復、組織酸素化、血圧、または患者の活動低下に起因して、ペーシングの負担が減少すると予想されると、制御回路80は、治療送達回路84を制御して、電源98のエネルギーを節約するために、キャパシタ充電ペーシングモードを遅延ありキャパシタ充電モードに切り替えてもよい。キャパシタ充電モード間の自動切替えの機能を有効にする方法、および切替え機能が有効になった後のキャパシタ充電モード間の切替えのタイミングを制御する方法が、本明細書において提示される流れ図およびタイミング図とともに以下でさらに詳細に説明される。
【0053】
本明細書に開示されるようなキャパシタ充電技法を制御することを含め、心臓事象を検知し、不整脈を検出し、治療送達を制御するために制御回路80によって利用される制御パラメータは、遠隔測定回路88を介してメモリ82にプログラムされてもよい。遠隔測定回路88は、前述の通り、RF通信プロトコルまたは他の通信プロトコルを使用して、外部装置40(
図1Aに示してある)と通信するための送受信機およびアンテナを備える。制御回路80の制御下で、遠隔測定回路88は、外部装置40からダウンリンク遠隔測定値を受信し、外部装置40にアップリンク遠隔測定値を送信してもよい。場合によっては、患者12に埋め込まれた別の医療装置との間で通信信号を送受信するために、遠隔測定回路88を使用してもよい。
【0054】
図4は、一例による、ICD14に含まれるHV治療回路83の概略
図150である。HV治療回路83は、HV充電回路154、HV充電蓄積出力回路160を備える。HV充電回路154およびHV充電蓄積出力回路160を制御するための制御回路80に含まれてもよいプロセッサおよびHV治療制御回路152に結合されたHV治療回路83が示してある。HV充電蓄積出力回路160は、HV保持キャパシタ162を電極24、26、および/またはハウジング15に結合して、所望の電気刺激パルスを送達するためのパルス制御スイッチ164を介して、スイッチング回路166に結合されたHV保持キャパシタ162を含み、この電気刺激パルスは、患者の心臓8へのペーシングパルスまたはCV/DFショックパルスでもよい。他の例では、ペーシング電極28および検知電極30(
図4には図示せず)は、ペーシング電極ベクトル内での電極28と電極30のうちの一方または両方を使用して、HV治療モジュール83からのペーシングパルスを送達するためのスイッチング回路166を介して、HV保持キャパシタ162に選択的に結合されてもよい。
【0055】
HV保持キャパシタ162は単一のキャパシタとして概略的に示してあるが、心臓8に送達される電気信号を生成するためのエネルギーを蓄積するのに、ひとそろいの2つ以上のキャパシタまたは他のエネルギー蓄積装置が使用されてもよいことが認識される。一例では、HVキャパシタ162は、実効キャパシタンスが148マイクロファラッドの直列の3つのキャパシタである。HV保持キャパシタ162は、プロセッサおよびHV治療制御装置152の制御下で、HV充電回路154によって所望のペーシングパルス電圧振幅(またはCV/DFショック送達の場合のショック電圧振幅)にまで充電される。ペーシング電圧振幅にまで充電することは、ペーシング電圧振幅内またはそれよりも高い指定された許容範囲まで充電することを含んでもよいことを理解されたい。たとえば、ペーシング電圧振幅までの充電は、プログラムされたペーシング電圧振幅の113%(または別の所定の割合)までの充電を含んでもよい。
【0056】
HV充電回路154は、電源98(
図3)から電圧調整済み信号を受信する。HV充電回路154は、HV保持キャパシタ162を電池電圧よりもはるかに高い電圧にまで充電を遂行するために、電源98の電池電圧を昇圧するトランス156を備える。HV充電回路154によるキャパシタ162の充電は、プロセッサおよびHV治療制御装置152の制御下で実行され、この制御装置は、HV充電蓄積出力回路160からフィードバック信号を受信して、プログラムされた電圧にまでキャパシタ162がいつ充電されるかを決定する。充電完了信号がHV充電回路154に渡されて、プロセッサおよびHV治療制御モジュール152による充電が終了する。高電圧充電回路およびその動作の一例が、全体として米国特許第8,195,291号(Nortonら)に開示されている。
【0057】
遅延なしキャパシタ充電モードにおいてキャパシタ充電が制御されていると、HV保持キャパシタ162の充電は、送達されたペーシングパルスまたは検知された内因性事象に応答して開始されるペーシング間隔全体を通して、連続してまたは半連続的に発生してもよい。ペーシング間隔中の連続充電は、HV充電蓄積出力回路160からのフィードバック信号と、目標となるペーシング電圧振幅(プラスマイナスの任意の許容範囲)とを比較すること、および必要に応じて所望の電圧でキャパシタを維持するためにキャパシタ162の満タン充電を実行することによって実現されてもよい。たとえば、キャパシタ充電フィードバック信号は、制御回路80からのあらゆる割込み信号またはペーシング間隔中の他の所定の周波数で、目標となるペーシング電圧振幅と比較されてもよい。充電がペーシング電圧振幅を下回るたびに、必要に応じてキャパシタ162が充電されて、ペーシング間隔全体を通して、プログラムされたペーシング電圧振幅での充電を維持する。
【0058】
遅延なし充電モードの他の例では、キャパシタ162の充電は、ペーシング間隔の開始時に、目標となるペーシング電圧振幅と比較され、ペーシング間隔全体を通して監視/充電することなく、ペーシング間隔中に1度、ペーシング電圧振幅(プラス、指定された任意の許容範囲)にまで充電されてもよい。ペーシングパルスが送達されるか、または充電後のペーシング間隔中にキャパシタ充電の漏れが発生する場合、次のペーシング間隔の初めにキャパシタ充電が満タンにされる。
【0059】
本明細書において提示されるタイミング図および流れ図とともに説明されるように、プロセッサおよびHV治療制御装置152は、上昇した心拍数の判定基準および/または減少したペーシング負担の判定基準が満たされるとき、HV保持キャパシタ162の充電を保留するように構成されてもよい。キャパシタの充電は、ペーシング間隔が終了するまで、またはキャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、プロセッサおよびHV治療制御装置152によって遅延または保留されてもよい。
【0060】
HV保持キャパシタ162が所望のペーシング電圧振幅まで充電され、ペーシング間隔が終了すると、HV保持キャパシタ162は、パルス制御スイッチ164およびスイッチング回路166を介して所望のペーシング電極ベクトルにわたって結合されて、ペーシングパルスを送達する。スイッチング回路166は、Hブリッジの形式でもよく、プロセッサおよびHV制御回路152からの信号によって制御されるスイッチ180a~180cおよび182a~182cを備えてもよい。スイッチ180a~180cおよび182a~182cは、シリコン制御整流器(SCR)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、および/または他のスイッチング回路構成要素として実装してもよい。スイッチ180a~180cおよび182a~182cは、心臓8および選択されたペーシング電極ベクトルによって提示されるペーシング負荷にわたってキャパシタ162を放電することにより、単相、二相、または他の所望のペーシングパルスを送達するためのプロセッサおよびHV治療制御回路152によって、適切な時間に開閉されるように制御される。HV保持キャパシタ162は、パルス制御スイッチ164を介して、プログラムされたペーシングパルス幅での選択されたペーシング電極ベクトルにわたって結合される。
【0061】
たとえば、選択された電極24、26、および/またはハウジング15は、スイッチング回路166の適切なスイッチを開くこと(すなわち、オフにするか、または無効にすること)、および閉じること(すなわち、オンにするか、または有効にすること)によってHV保持キャパシタ162に結合されて、所望の電気信号を治療送達電極ベクトルに渡してもよい。この電気信号は、単相、二相、または他の形状の信号でもよい。この信号は、VVIペーシング間隔、ショック後ペーシング間隔、またはATP間隔など、ペーシング間隔が終了するのに応答して送達される単相または二相のペーシングパルスでもよい。またあるときには、この信号は、VTまたはVFが検出されたときに心室頻脈性不整脈を終了させるためのCV/DFショックでもよい。
【0062】
ペーシングパルスを送達するには、たとえば、所与の電極24、26、またはハウジング15にわたって、それぞれ、「a」、「b」、または「c」のスイッチの両方を同時に閉じることなく、スイッチ180a、180b、または180cのうちの1つが、スイッチ182a、182b、または182cのうちの1つと同時に閉じられてもよい。たとえば、電極24およびハウジング15を使用して二相パルスを送達するには、スイッチ180aおよび182cを閉じて、二相パルスの第1の相を送達してもよい。スイッチ180aおよび182cは、第1の相の後に開かれ、スイッチ180cおよび182aは、二相パルスの第2の相を送達するように閉じられる。この例では、スイッチ180bおよび182bは、電極26が治療送達ベクトルにおいて選択または使用されていない状態で、開いたまままたは無効のままである。他の例では、電極26が、電極24の代わりに備えられてもよく、または電極24と同時に起動されてもよい。
【0063】
ペーシングパルスを送達した後、上昇した内因性心拍数の検出判定基準が満たされない場合、プログラムされたペーシングパルス振幅までHV保持キャパシタ162が再充電されてもよい。しかし、プロセッサおよびHV治療制御装置152は、本明細書に開示された各技法を使用して、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされていると判定したことに応答して、HV保持キャパシタ162をペーシング電圧振幅にまで充電することを保留してもよい。ICD14の検知回路86によって検知される内因性事象の速度、内因性事象の速度の傾斜、および/または他の判定基準が、上昇した内因性心拍数の検出判定基準および/または減少したペーシング負担の判定基準を満たすと、ペーシング間隔が終了するまで、または所定の充電遅延間隔が終了するまで、HV保持キャパシタ162の充電が保留されてもよい。プロセッサおよびHV治療制御回路152は、以下に述べるように、低下した内因性心拍数の判定基準および/または減少したペーシング負担の判定基準が満たされていると判定するのに応答して、たとえば、ペーシング間隔の初めに、または必要に応じてペーシングパルスまたは検知されたイベント信号に応答して開始されるペーシング間隔全体を通して、遅延なしHV保持キャパシタ162の充電に復帰してもよい。
【0064】
図5は、一例によるLV治療回路85の概念図である。LV治療回路85は、LV充電回路330、キャパシタ選択制御回路332、およびキャパシタアレイ350を備えてもよい。キャパシタアレイ350は、LV充電回路350によってプログラムされたペーシング電圧振幅までそれぞれ充電することのできる複数のLV保持キャパシタ352、354、356、および358を含んでもよい。LV保持キャパシタ352、354、356、および358は、それぞれのスイッチ362、364、366、および368を介して、それぞれの出力キャパシタ372a~372d(まとめて372)、376、または378に結合されて、ペーシングパルスを送達する。LV保持キャパシタ352、354、356、および358のそれぞれは、HV治療回路83のHV保持キャパシタ162の実効キャパシタンスよりも少ないキャパシタンスを有してもよい。たとえば、保持キャパシタ352、354、356、および358のそれぞれは、6マイクロファラッドまで、10マイクロファラッドまで、20マイクロファラッドまでのキャパシタンス、または選択された他のキャパシタンスを有してもよいが、そのすべては、HV保持キャパシタ162の実効キャパシタンスよりも著しく少ないキャパシタンスを有してもよく、HV保持キャパシタ162よりも低い電圧定格を有してもよい。
【0065】
電源98(
図3)は、調整された電力をLV充電回路330に供給してもよい。LV充電回路330は、キャパシタ選択制御回路332の状態機械によって制御されて、電源98の電池電圧の倍数、たとえば電池電圧の4倍を使用して、すべての、または選択されたLV保持キャパシタ352、354、356、および358を充電してもよい。LV充電回路330は、選択されたペーシング電極ベクトルを介して、患者の心臓にペーシングパルスを送達するのに必要なキャパシタ352、354、356、および358のうち1つまたは複数を充電する。ペーシングパルスは、プログラムされたパルス幅において単一のLV保持キャパシタを放電することによって送達される単一のペーシングパルスでもよい。他の例では、2つ以上のLV保持キャパシタ352、354、356、および358が順次放電されて、ペーシングパルス幅内で、融合した2つ以上のパルスを送達して、複合ペーシングパルスを送達してもよい。
【0066】
例によっては、LV治療回路85は、3つのペーシングチャネル342、344、および346を含む。各ペーシングチャネルは、それぞれのLV保持キャパシタ352、356、または358が、それぞれ出力キャパシタ372、376、または378にわたって放電されるとき、単一のペーシングパルスを生成することができる。ペーシングチャネル342は、バックアップペーシングパルスを送達するのに使用されてもよいバックアップ保持キャパシタ354を備える。バックアップ保持キャパシタ354を使用して、複合ペーシングパルスの個々のパルスを送達してもよい。ICD14に結合された心血管外電極の数に応じて、1つまたは複数のチャネルが、選択可能な複数の出力信号線を備えてもよい。たとえば、電極選択スイッチ374a~374dのうちの1つまたは複数を閉じることによって、LV保持キャパシタ352およびバックアップ保持キャパシタ354に選択的に結合されてもよい、選択可能な複数のペーシング出力信号線382a~382dを含むためのチャネル342が、この例で示してある。たとえば、リード線16によって支持される複数の電極が、ペーシングチャネル342に結合されてもよく、ペーシング電極ベクトルが、スイッチ374a~374dのうち特定のスイッチを閉じることによって、複数の電極から選択されてもよい。
【0067】
それぞれのスイッチ366および368を介して、それぞれのLV保持キャパシタ366および368に結合された単一の出力信号線386および388を有する、ペーシングチャネル344および346が示してある。他の例では、3つのペーシングチャネル342、344、および346すべてに、単一の出力信号線または複数の出力信号線を設けて、ICD14に結合された複数の心血管外電極、たとえば
図1Aに示すリード線16の電極24、26、28、または30のいずれかの中から、ペーシング電極ベクトルを選択できるようにしてもよい。
【0068】
ペーシング治療が必要となると、制御回路80が、LV治療回路85を制御して、ペーシングチャネル342、344、および346のいずれか1つまたはその組合せを選択して、ペーシングパルスを送達してもよい。ペーシングパルスは、それぞれのスイッチ362、364、366、または368が閉じているとき、それぞれの出力キャパシタ374、376、または378を介して、選択されたペーシング電極ベクトルにわたって保持キャパシタ352、354、356、または358のうちの1つを放電することによって送達される単一パルのペーシングパルスでもよい。ペーシングチャネル342からペーシング電流を送達するのに使用される出力線382a、382b、382c、または382dは、それぞれの電極選択スイッチ372a~372dを介して選択されてもよい。保持キャパシタ352、354、356、または358の放電をそれぞれ可能にするスイッチ362、364、366、または368は、ペーシングパルスが必要となり、単一パルスのペーシングパルス幅が終了するまで、能動状態にある有効化された(閉じられた)状態に維持される適切な時点に、キャパシタ選択制御回路332によって有効化されてもよい。
【0069】
患者によっては、LV治療回路85によって生成される単一パルスのペーシングパルスは、この患者の心臓を捕捉するのに必要となるパルスのエネルギーをもたない場合がある。制御回路80は、LV治療回路85を制御して、マルチパルスの複合ペーシングパルスで融合パルスを送達してもよい。2つまたは3つすべてのペーシングチャネル342、344、および346は、スイッチ360a~dおよび370によってともに結合されて、単一の出力信号線344から、選択されたペーシング電極ベクトルにわたって個々のパルスを送達できるようにする。たとえば、制御回路80は、LV治療回路85を制御して、スイッチ360a~dおよびスイッチ370のうち少なくとも1つを起動することによって、マルチパルスの複合ペーシングパルスを送達して、ペーシング出力線382a~dおよびペーシング出力線388のうち少なくとも1つをペーシングチャネル344に結合してもよい。制御回路80は、キャパシタ選択制御回路332を制御して、ペーシングチャネルスイッチ362、364、366、および368(および、ペーシングチャネル342の少なくとも1つの電極選択スイッチ372a~d)を順次有効化して、それぞれの保持キャパシタ352、354、356、または358のうち2つ以上を出力信号線386に順次結合して、少なくとも2つの融合された個々の一連のパルスを送達して、複合ペーシングパルスを生成する。
【0070】
様々な例では、ICD14とともに使用される、特定のペーシングチャネルとリード線と電極の構成によっては、
図5に示すいくつかの電極選択スイッチを必要としなくてもよい。さらに、LV治療回路85がペーシングパルスを送達するように制御されると、複合ペーシングパルスにおける一連の融合パルスを送達する際に使用するために、キャパシタアレイ350には4つ未満または5つ以上の保持キャパシタが含まれてもよいことが認識される。
【0071】
キャパシタ選択制御回路332は、スイッチ362、364、366、および368それぞれを制御することによって、保持キャパシタ352、354、356、または358のどれが、どの順番で、出力線386に結合されるか選択する。スイッチ362、364、366、または368それぞれを順次有効にし、または閉じることにより、出力キャパシタ372、376、または378それぞれの両端で、保持キャパシタ352、354、356、または358を、一度に1つ(または一度に1つの組合せを)順次放電することによって複合ペーシングパルスを生成するように、一連のパルスは送達されてもよい。たとえば、保持キャパシタ352、354、356、または358のうちの少なくとも2つは、順次放電されて、少なくとも2つの個々の融合パルスによって生成される複合ペーシングパルスを生成する。出力線386は、リード線16によって支持されるペーシングカソード電極に電気的に結合されてもよく、リード線16(またはハウジング15)によって支持されるリターンアノード電極は、アースに結合されてもよい。一例では、ペーシングカソード電極およびリターンアノード電極は、
図1Aに示すように、電極28および24にそれぞれ対応してもよいが、
図1Aに示す電極24、26、28、および30、ならびに/またはハウジング15から、任意のペーシング電極ベクトルが選択されてもよい。
【0072】
例によっては、ペーシングチャネル344および346から個々のパルスを順次送達することによって、低電圧の融合ペーシングパルスが送達された後に、キャパシタ352と354の両方を同時に放電することによって、相対的に長い個々の第3のパルスが、ペーシングチャネル342によって送達される。複合ペーシングパルスの幅が8msの場合、2つの個々の第1のパルスはパルス幅が2.0msでもよく、第3のパルスはパルス幅が4.0msでもよい。並列なキャパシタ312と314のキャパシタンスが高くなると、心臓を正常に捕捉するパルス振幅を維持しながら、個々の第3のパルスのパルス幅を長くすることが可能になる。出力構成スイッチ360および370を制御して、キャパシタ352、354、および358を出力線386に結合することによって、個々の3つのパルスすべてが、この出力線386を介して送達される。本明細書に開示された技法とともに使用されてもよいLV治療回路およびペーシングパルスの生成技法の他の例が、全体として米国特許出願第62/262,412号(依頼人整理番号C00012192.USP1)、および対応する米国特許出願第15/368,197号(依頼人整理番号C00012192.USU2)に開示されている。
【0073】
単一パルスのペーシングパルスまたは複数パルスの複合ペーシングパルスを生成する際に使用するために選択されるLV保持キャパシタ352、354、356および/または358は、本明細書に開示されたキャパシタ充電制御技法によるLV充電回路330によって充電されてもよい。上昇した内因性心拍数を検出するための判定基準が満たされると、ペーシングパルスを生成するのに使用されるLV保持キャパシタ352、354、356および/または358の充電が、遅延ありキャパシタ充電のペーシングモードに従って、保留または遅延されてもよい。例によっては、ペーシング間隔が終了するまで、または他の例では、キャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、充電は遅延される。低下した内因性心拍数を検出するための判定基準が満たされた場合、
図4とともに全体として先に説明したように、ペーシングパルスを生成および送達するのに使用されるLV保持キャパシタ352、354、356、または358の充電は、たとえば、ペーシング間隔の初めに、またはペーシング間隔の全体を通して、遅滞なく実行される。
【0074】
本明細書でさらに詳細に説明するように、制御回路80は、例によってはペーシング負荷判定基準に基づいて、キャパシタ充電モードの自動切替え機能を有効化してもよい。実際の、または予想されるペーシング負荷の変化に基づいて、充電モードの自動切替えが有効化された後、制御回路80は、遅延あり充電モードと遅延なし充電モードに従って、LV充電回路330の制御の間で切り替わってもよい。充電モードの切替えは、内因性心拍数の判定基準および/またはペーシング負荷の判定基準に基づいて制御されてもよい。
【0075】
図6は、ペーシングパルスを送達するために保持キャパシタ充電を制御する1つの方法の流れ
図100である。ブロック101では、制御回路80は、第1のキャパシタ充電モードと第2のキャパシタ充電モードの自動切替えを有効化する。例によっては、遠隔測定回路88を介して外部装置40からユーザコマンドが受信されるのに応答して、充電モードの切替えが有効化される。他の例では、たとえば、以下で
図12とともに説明するように、制御回路80は、ペーシング負荷の実際の、または予想される変化を決定することに基づいて、充電モードの切替えを自動で有効化および/または無効化してもよい。2つの充電モードには、遅延あり充電モードおよび遅延なし充電モードが含まれ得る。
【0076】
図6に示す例では、ICD14は、初めに遅延なしキャパシタ充電モードで動作していてもよい。この充電モードでは、選択されたペーシング出力構成に従って、たとえば、前述のHV治療回路83またはLV治療回路85を使用して、1つまたは複数の保持キャパシタが、各ペーシング間隔中にペーシング電圧振幅にまで充電される。ペーシング間隔は、送達されたペーシングパルス、または検知された心臓事象、たとえば、内因性のR波に応答して、たとえばVVIまたは他のペーシングモードに従ってペーシングパルスのタイミングを制御するように、制御回路80によって設定される。充電が、ペーシング間隔の開始時に始まってもよく、かつ/または保持キャパシタの充電と、プログラムされたペーシング電圧とを比較することに応答して、ペーシング間隔中の任意の時刻に行われてもよいように、保持キャパシタの充電が遅延なく実行される。保持キャパシタの充電が、プログラムされたペーシング電圧振幅未満(または、ペーシング電圧振幅を下回る許容範囲未満)の場合、制御回路80は、治療送達回路84を制御して、プログラムされたペーシング電圧振幅にまで保持キャパシタを充電する。
【0077】
遅延なしキャパシタ充電モードで動作している間、制御回路80は、ブロック104において、検知回路86が受信した心臓電気信号を監視して、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされるかどうか判定する。上昇した内因性心拍数の判定基準は、内因性心拍数が所定のモード切替え心拍数の閾値に等しいか、またはそれよりも高いことを必要としてもよい。1つまたは複数の検知された事象が、ペーシング間隔よりも短い事象間隔で発生し、その結果、1つまたは複数の抑制されたペーシングパルスが生じることに応答して、モード切替えが必ずしも発生するわけではないように、モード切替え心拍数の閾値が、現状のペーシングレートよりも高くなるように定められてもよい。たとえば、心拍数がペーシングレートとモード切替え心拍数閾値の間にある場合、充電モード切替えは発生しなくてもよい。上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされるかどうか判定するための様々な技法が、たとえば、
図7および
図12とともに以下に説明される。
【0078】
ブロック104において、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされた場合、制御回路80は、ブロック106において、この例では遅延ありキャパシタ充電モードである第2の充電モードに切り替える。このモードでは、制御回路80は、保持キャパシタの充電と、プログラムされたペーシング電圧振幅との比較を保留してもよく、かつ/またはキャパシタの充電がペーシング電圧振幅未満の場合でも、1つまたは複数の保持キャパシタの充電を保留してもよい。キャパシタ充電は、心臓事象、送達されたペーシングパルス、または検知された内因性事象に応答して開始されたペーシング間隔の少なくとも一部分で保留される。例によっては、ペーシング間隔全体で充電が保留されてもよい。他の例では、充電遅延間隔が終了するまで充電が保留される。充電遅延間隔が終了する前に内因性事象が検知された場合、充電は発生せず、ペーシング間隔が再始動される。
【0079】
遅延キャパシタ充電モード中、制御回路80は、ブロック108において、心臓電気信号を監視して、低下した内因性心拍数の判定基準が満たされるかどうか判定する。1つもしくは複数のペーシング間隔が終了し、かつ/または1つもしくは複数の充電遅延間隔が終了するのに応答して、低下した内因性心拍数の判定基準が満たされてもよい。したがって、例によっては、ペーシング間隔が終了する前において、内因性心拍数がペーシングレートを下回る前に低下する内因性心拍数に応答して、低下した内因性心拍数の判定基準が満たされてもよい。この低下した内因性心拍数の判定基準が満たされるのに応答して、制御回路80は、ブロック102において、遅延なしキャパシタ充電モードに切り替えて戻す。低下した内因性心拍数の判定基準か満たされたかどうか判定するための方法が、たとえば、
図7、
図8A~
図8D、および
図12とともに以下でより詳細に説明される。
【0080】
このようにして、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされ、ペーシングパルスの潜在的な必要性が低くなると予想された後、キャパシタ充電が、遅延ありキャパシタ充電モードに従って制御される。低下した内因性心拍数の判定基準が満たされ、ペーシングパルスの潜在的な必要性が相対的に高くなった後、キャパシタ充電は、遅延なし充電モードに従って制御される。例によっては、制御回路80は、検知回路86によって検知された内因性心臓電気事象に加えて、またはその代わりに、センサ90からの1つまたは複数の信号を監視して、ブロック104および108において、上昇した内因性心拍数の判定基準および/または低下した内因性心拍数の判定基準がそれぞれ満たされるかどうか判定してもよい。
【0081】
図7は、一例による、内因性心拍数の判定基準に基づいて保持キャパシタの充電を制御する方法の流れ
図110である。
図7の方法は、HV治療回路83またはLV治療回路85によってペーシング治療を送達するように実施されてもよい。流れ
図110の方法は、保持キャパシタ充電のタイミングを制御し、この保持キャパシタは、ペーシング治療を送達するのに、HV治療回路83またはLV治療回路85のいずれが選択されるかに応じて、HV治療回路83のHV保持キャパシタ162、またはLV治療回路85のLV保持キャパシタ352、354、356、もしくは358のうちの1つもしくは複数でもよい。
【0082】
ブロック112において、選択されたHV治療回路83またはLV治療回路85によって、ペーシングパルスが送達される。ペーシングパルスは、ペーシング間隔が終了すると送達され、このペーシング間隔は、VVIペーシング中、または別のペーシング治療もしくはペーシングモードに従った別のペーシング間隔中での、心室のペーシング間隔でもよい。制御回路80は、ペーシングパルスの送達に応答して、ブロック114でペーシング間隔を再始動する。制御回路80は、選択されたHV治療回路83またはLV治療回路85の充電回路を制御して、遅延なしのペーシング間隔中に、ブロック115において、(1つまたは複数の)保持キャパシタをペーシング電圧振幅にまで充電して戻す。このようにして、検知された事象なしでペーシング間隔が終了する場合、治療回路83または85は、ペーシング間隔が終了すると、次のペーシングパルスを送達するように準備される。
【0083】
ブロック116において、制御回路80は、ペーシング間隔が終了するのを待つ。ブロック116において、検知回路86が、内因性心臓事象、たとえばR波を検知することなくペーシング間隔が終了した場合、ブロック112において、終了したペーシング間隔に応答して、スケジューリングされたペーシングパルスが送達される。制御回路80は、ブロック114においてペーシング間隔を再始動する。
【0084】
ブロック118において、ペーシング間隔中に検知回路86が内因性心臓事象を検知した場合、検知事象信号を検知回路86から制御回路80に渡されてもよい。ペーシング間隔が終了する前に、検知事象信号、たとえば、R波検知事象信号を検知回路86から受信するのに応答して(ブロック116の「はい」分岐)、制御回路80は、ブロック118においてペーシング間隔を再始動することによって、スケジューリングされたペーシングパルスを抑制する。
【0085】
制御回路80は、キャパシタ充電モード切替えを制御するようにプログラムされたペーシングレートよりも所定のレートが高い、上昇した内因性心拍数を監視するように構成されてもよい。一例では、制御回路80は、ブロック118において、ペーシング間隔が開始されるのと同時に、ヒステリシス間隔を開始することによって、内因性心拍数の上昇を検出してもよい。このヒステリシス間隔は、ペーシング間隔に等しく、またはそれよりも短く設定されてもよい。たとえば、ヒステリシス間隔は、ペーシング間隔よりも少なくとも10~30ms短くてもよい。このようにして、上昇した内因性心拍数を検出して、遅延ありキャパシタ充電モードに切り替えるには、ペーシングを保留するのに必要な内因性心拍数よりも高い内因性心拍数が必要となる場合がある。
【0086】
一例では、ヒステリシス間隔は、ペーシング間隔よりも15ms短く、このとき、ペーシング間隔は1秒であり、これは毎分60パルスのペーシングレートに対応する。ほぼ0.985msのヒステリシス間隔は、毎分65回の拍動の心拍数に対応し、ペーシングレートよりも毎分約5パルスだけ速い。ヒステリシス間隔は、現在有効なペーシング間隔よりも短い固定間隔として、制御回路80によって決定されてもよい。他の例では、現在有効なペーシングレートよりも低い固定レート、たとえば現在のペーシングレートよりも5~15回だけ拍動が少ない内因性心拍数に対応する、検知された事象間隔を決定することによって、制御回路80がヒステリシス間隔を決定してもよい。他の例では、ヒステリシス間隔は、ペーシング間隔と同じでもよい。
【0087】
制御回路80は、スケジューリングされたペーシングパルスを抑制した後、ブロック112において、プログラムされたペーシング電圧振幅で保持キャパシタの充電を維持するように、治療送達回路84を制御してもよい。キャパシタの充電は、検知された事象に応答して設定されたペーシング間隔中に監視されてもよく、充電が、ペーシング電圧振幅を下回って、電圧許容範囲を超えて低下する場合、保持キャパシタの充電がペーシング電圧振幅にまで満タンにして戻されてもよい。
【0088】
様々なプロトコルまたは技法を使用して、ペーシング間隔中にキャパシタ充電を満タンにし、またはこの充電を維持するように制御してもよい。一例では、LV治療回路85を使用してペーシングパルスを送達する場合、1つまたは複数のLV保持キャパシタが、各ペーシング間隔の開始時に、ペーシング電圧振幅にまで充電されてもよい。場合によっては、ペーシング電圧振幅にまで充電することは、ペーシング電圧振幅プラス許容範囲、たとえば、プログラムされたペーシング電圧振幅の110%~115%にまで充電することによって制御される。一例では、ペーシングパルスを送達するのに使用される(1つまたは複数の)LV保持キャパシタは、送達されたペーシングパルスまたは検知された内因性事象に応答してリセットされる各ペーシング間隔の開始時に、プログラムされたペーシング電圧振幅の113%にまで充電される。
【0089】
他の例では、たとえば、HV治療回路83が、ペーシングパルスを送達するように制御される場合、HV保持キャパシタ162は、ペーシング電圧振幅(または、ペーシング電圧振幅プラス許容範囲)にまで充電され、ブロック120において、ペーシング間隔が終了し、ペーシングパルスが送達されるまで、満タン充電が連続的に実行される。この例では、プロセッサおよびHV治療制御装置152は、たとえば、各割込みクロック信号上で、HV保持キャパシタ162の両端間の電圧を示すキャパシタ充電信号をHV治療回路83から受信してもよい。プロセッサおよびHV治療制御装置152は、キャパシタ充電信号とキャパシタ充電閾値を比較し、HV充電回路154を制御して、必要に応じてペーシング電圧振幅(プラスマイナス許容範囲)でHV保持キャパシタ充電を維持するように、終了していないペーシング間隔中に、任意の割込みクロック信号に続いて満タン充電を実行してもよい。ペーシングパルスを送達するための準備状態において、保持キャパシタをペーシング電圧振幅に維持するのに使用される特定のプロトコルは、各装置間で異なってもよいが、一般に、保持キャパシタ充電をペーシング電圧振幅に維持するように、必要に応じて、各ペーシング間隔中にペーシング電圧振幅(または、ペーシング電圧振幅プラス許容範囲)にまで満タン充電することを含む。
【0090】
検知回路86が、ブロック118において開始されたペーシング間隔中に内因性事象を検知しない場合(ブロック122の「いいえ」分岐)、ペーシング間隔が終了するのに応答して、ブロック112において、制御回路80が治療送達回路84を制御して、スケジューリングされたペーシングパルスを送達する。送達されたペーシングパルスおよび検知された心臓事象それぞれに応答して設定された各ペーシング間隔中に、遅延なし充電モードに従って、制御回路80が(1つまたは複数の)保持キャパシタを充電し続ける。
【0091】
ブロック118において開始されたペーシング間隔中に、検知回路86によって内因性事象が検知される場合(ブロック122の「はい」分岐)、ブロック124において、ヒステリシス間隔が終了する前に検知事象が発生したかどうか制御回路80が判定する。ヒステリシス間隔が終了した後に、ただしペーシング間隔が終了する前に、検知事象が発生した場合(ブロック124の「いいえ」分岐)、ブロック118において、制御回路80は、ペーシング間隔およびヒステリシス間隔を再始動することによって、スケジューリングされたペーシングパルスを抑制する。保持キャパシタ充電は、遅延なし充電モードに従って、ブロック120においてペーシング電圧振幅に維持される。
【0092】
ヒステリシス間隔が終了する前に、検知回路86によって内因性事象が検知される場合(ブロック124の「はい」分岐)、ブロック125において、制御回路80がカウンタの値を上げてもよい。カウンタは、予めゼロに初期設定されていてもよく、ヒステリシス間隔が終了する前に内因性事象が検知される際の心臓周期数を数えるのに使用される。制御回路80は、ヒステリシス間隔中に発生する検知事象を有する心臓周期の閾値数に基づいて、上昇した内因性心拍数を検出するように構成されてもよい。カウンタが、上昇した内因性心拍数を検出するための心臓周期閾値数に達しなかった場合(ブロック126の「いいえ」分岐)、制御回路80は、ブロック118において、ペーシング間隔およびヒステリシス間隔を再始動し、遅延なし充電モードに従って、ペーシングパルスを送達するための準備状態において、保持キャパシタの充電をペーシング電圧振幅に維持し続ける。
【0093】
ブロック126において判定されるように、カウンタが、ヒステリシス間隔中に検知事象を有する心臓周期の閾値数に達する場合、ヒステリシス間隔に対応するレートに等しい、またはこのレートよりも高い、上昇した内因性心拍数を制御回路80が検出する。上昇した内因性心拍数を検出するのに必要とされる、ヒステリシス間隔内で検知された内因性事象を有する心臓周期の閾値数は1つまたは複数でもよい。例によっては、上昇した内因性心拍数を検出するように、少なくとも5つの心臓周期でのヒステリシス間隔内で内因性事象が検知されることが必要となる場合がある。例によっては、心臓周期の閾値数は、連続的であることが必要となる場合があり、たとえば、ヒステリシス間隔に対応するヒステリシスレートで、またはそのレートを上回って、連続的に検知される少なくとも3つの内因性事象であることが必要となる場合がある。
【0094】
他の例では、制御回路80は、YのうちのXのカウンタを含んでもよく、したがって、それぞれのヒステリシス間隔内で検知された内因性事象を有する心臓周期が、連続的であることを必要としなくてもよく、たとえば、5つの心臓周期のうちの3つ、6つの心臓周期のうちの4つ、10の心臓周期のうちの8つ、または他の比率もしくは割合でもよい。例によっては、あらゆるYの心臓周期は、心臓周期がペーシングされない、検知された心臓周期であることが必要となる場合がある。たとえば、6つの心臓周期のうちの4つに、ヒステリシス間隔内で検知された内因性事象を含む必要がある場合、その他の2つの心臓周期には、ペーシング間隔内で検知された内因性事象を含む必要があってもよい。6つの心臓周期は、どれもペーシングされた心臓周期ではない。他の例では、Yの心臓周期は、ペーシングされた心臓周期と検知された心臓周期の両方を含んでもよいが、少なくともXの心臓周期には、上昇した内因性心拍数が検出されるように、ヒステリシス間隔中に検知された内因性事象を含むことが必要とされる。
【0095】
ブロック127において、それぞれのヒステリシス間隔中に、内因性検知事象をそれぞれが含む心臓周期の閾値数にカウンタが達するのに応答して、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされていると制御回路80が判定する。上昇した内因性心拍数を検出できるようにする、ヒステリシス間隔内での最新の内因性事象を検知することに応答して、ブロック128において、ペーシングパルスを送達することなく、ペーシング間隔を再始動することによって、スケジューリングされた次のペーシングパルスが抑制される。ブロック128においてヒステリシス間隔を開始せず、ブロック129においてキャパシタ充電を保留することによって、制御回路80が、遅延ありキャパシタ充電モードに切り替える。心拍数が、心臓周期の閾値数でのヒステリシス間隔に対応するレートに達し、またはそのレートを超えた後、保持キャパシタ充電は、ペーシング間隔中にペーシング電圧振幅に維持されない。
【0096】
ブロック130において判定されるように、ブロック128で開始されたペーシング間隔中に検知回路86によって内因性事象が検知される場合、制御回路80は、ブロック128においてペーシング間隔を再始動することによって、スケジューリングされたペーシングパルスを抑制し、ブロック129においてキャパシタ充電を保留し続ける。ブロック130において、内因性事象が検知回路86によって検知されることなく、ペーシング間隔が終了する場合、ヒステリシス間隔内で事象の数を数えるのに使用されるカウンタが、ブロック132においてゼロにリセットされてもよい。ブロック130において、内因性事象が検知されることなくペーシング間隔が終了するのに応答して、制御回路80は、治療送達回路84を制御して、ブロック130において保持キャパシタを充電し、ブロック112において、選択された保持キャパシタが、プログラムされたペーシング電圧振幅に達すると、スケジューリングされたペーシングパルスを送達する。ペーシング間隔が終了した後に、ブロック136において(1つまたは複数の)保持キャパシタを充電するのに必要な時間によって、ブロック112においてペーシングパルスの送達を遅延してもよい。ペーシングパルスが送達された後、ブロック114においてペーシング間隔が再始動され、制御回路80は、治療送達回路84を制御して、遅延なし充電モードに従って、ブロック115においてペーシング間隔中に(1つまたは複数の)保持キャパシタを充電する。
【0097】
図示した例では、ブロック130において、遅延ありキャパシタ充電モード中にペーシング間隔が1回終了すると、制御回路80が、遅延なし充電モードに戻って、ペーシングパルスまたは検知事象それぞれの後にペーシング間隔の開始時点で始まり、必要に応じてペーシング間隔中にペーシング電圧振幅で保持キャパシタの充電を維持する、(1つまたは複数の)保持キャパシタの充電を制御できるようになってもよい。他の例では、各ペーシングパルスが送達された後、遅延なし保持キャパシタの充電に戻す前に、遅延あり充電モード中にペーシング間隔が終了したことに起因して、2つ以上のペーシングパルスが送達される必要があってもよい。その結果、ペーシング間隔が終了した後に保持キャパシタをペーシング電圧振幅にまで充電するのに必要な時間に起因して、ペーシング間隔が終了した後に、2つ以上のペーシングパルスが、遅延あり時間間隔で送達されてもよい。
【0098】
ブロック112に戻った後、ペーシング間隔が終了するまで、ペーシング電圧振幅にまで充電し、必要に応じて満タン充電にすることによって、保持キャパシタを「準備」状態に維持することは、上昇した内因性心拍数が再び検出されるまで続いてもよい。上昇した内因性心拍数は所定の判定基準に従って検出され、この判定基準は、ヒステリシス間隔、およびヒステリシス間隔内で検知された内因性事象を有する心臓周期の必要数を含んでもよく、この場合、ヒステリシス間隔はペーシング間隔よりも短くてもよい。
【0099】
図8A~
図9Cは、検知された内因性事象のタイミングに基づいて保持キャパシタの充電を制御する際に、ICD14によって実行される動作を示すタイミング図である。
図8Aおよび
図8Bは、遅延なしキャパシタ充電モード中に、ICD14によって実行される動作を示すタイミング図である。
図8Aでは、ペーシング間隔205によって時間が隔てられ、ICD14によって送達される2つのペーシングパルス201および203がタイミング
図200に示してある。ペーシング中、制御回路80は、治療送達回路84を制御して、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされるまで、各ペーシング間隔中に保持キャパシタを充電してもよく、この判定基準はペーシング間隔205よりも短いヒステリシス間隔206に基づいてもよい。
【0100】
ペーシングパルス201を送達すると、治療送達回路84は、遅延なし充電モードに従って、キャパシタ充電時間204中にペーシングパルス201を送達するのに使用される、(1つまたは複数の)保持キャパシタを充電するように制御されてもよい。前述の通り、充電時間204中に充電されるキャパシタは、HV保持キャパシタ162(
図4)、またはLV保持キャパシタ352、354、356、および/もしくは358の任意の組合せ(
図5)でもよい。充電時間204は、必ずしも固定の時間間隔とは限らない。むしろ、充電時間204は、ペーシングパルス201が送達された後、(1つまたは複数の)保持キャパシタをペーシング電圧振幅にまで再充電して戻すのに必要な時間であり、ペーシング電圧振幅、ペーシングパルスが送達された後に保持キャパシタに残された残留充電、保持キャパシタのキャパシタンス、および他の要因に依存することになる。充電時間204は、ペーシング間隔206の初めでの単一の離散時間間隔として示してあり、キャパシタ充電は、ペーシング間隔205の全体を通して監視されてもよく、またICD回路での漏れ電流に起因してキャパシタ充電がペーシング電圧振幅を下回る場合、必要に応じて満タンにされてもよいことが認識される。時間のブロックとして表された充電時間204は、遅延なしキャパシタ充電モードを表すものであり、この充電時間は、必要に応じて、ペーシング間隔中に保持キャパシタをペーシング電圧振幅にまで再充電するように、ペーシング間隔の初めに、および/またはその全体を通して充電することを含んでもよい。
【0101】
ペーシング間隔205は、たとえばVVIペーシング中のVV間隔でもよく、第1のペーシングパルス201を送達すると開始される。ペーシング間隔205中に内因性事象が検知されない場合、ペーシング間隔205が終了するのに応答して、ペーシングパルス203が治療送達回路84によって送達される。遅延なし充電モードに従って、ペーシングパルス203に続いて、充電時間208中に保持キャパシタが再充電される。
【0102】
図8Bは、ペーシング間隔205中に内因性事象が検知されるのに応答して、ペーシングパルスを抑制する様子を示すタイミング
図210である。ペーシングパルス211が送達され、キャパシタ充電時間214に示すように、遅延なくペーシング間隔205中にペーシング電圧振幅にまで保持キャパシタが再充電される。ペーシング間隔205中に内因性事象が検知される場合、スケジューリングされたペーシングパルス213が(破線で示すように)保留される。検知回路86は、検知事象信号216、たとえば、R波検知事象信号を生成するように構成されてもよく、この信号が制御回路80に渡される。検知事象信号216に応答して、ペーシング間隔205が新規なペーシング間隔215として再始動され、スケジューリングされたペーシングパルス213が抑制される。
【0103】
制御回路80は、ペーシング間隔215中にペーシング電圧振幅(または、ペーシング電圧振幅の指定された許容範囲の電圧内)で保持キャパシタの電圧を維持する必要がある場合、再充電時間218中に保持キャパシタの充電を監視し、キャパシタ充電を満タンにしてもよい。ペーシング間隔205内にあり、ただしヒステリシス間隔206内にない検知事象信号216は、この例では、キャパシタ充電の制御を変更しない。保持キャパシタは、ペーシング電圧振幅で保持キャパシタを準備および維持するように、必要に応じて、遅延なし充電モードに従って、各ペーシング間隔205(または215)中に再充電され続ける。キャパシタ充電をペーシング電圧振幅にまで満タンにするための充電が必要な場合、ペーシングパルス211に続いてペーシング間隔205中に、ならびに検知事象信号216に続いてペーシング間隔215中に、保持キャパシタが充電されてもよい。ペーシングパルスが送達されていなくても、ICD回路での固有の漏洩電流に起因して、保持キャパシタの充電は、ペーシング電圧振幅を下回ってもよい。あらゆる事象が検知された直後に、満タンのキャパシタ充電は必要でなくてもよい。制御回路80は、各ペーシング間隔の開始時および/または各ペーシング間隔の全体を通して、保持キャパシタの電圧を監視し、電圧がペーシング電圧振幅よりも小さい許容範囲未満の場合に充電を開始し、充電がペーシング電圧振幅にまで戻されると充電を終了するように構成されてもよい。
【0104】
内因性心拍数が、ヒステリシス間隔206に対応するヒステリシスレートよりも低く、ただしペーシング間隔205に対応するペーシングレートよりも高い場合、遅延なし充電モードに従って、保持キャパシタ充電が監視され、ペーシング電圧振幅に維持され続ける。したがって、ヒステリシス間隔206が終了した後に、検知事象信号216が発生する場合、キャパシタ充電が、必要に応じて遅延なく実行される。
【0105】
図8Cおよび
図8Dは、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされるのに応答して、遅延なし充電モードから遅延あり充電モードに切り替えるように実行される、ICD14の動作を示すタイミング図である。
図8Cは、遅延なし充電モードに従った、ペーシングパルス221と、その後に続くキャパシタ充電時間214を示すタイミング図である。送達されたペーシングパルス221に応答して、ペーシング間隔205とヒステリシス間隔206が同時に開始される。ペーシング間隔205中に制御回路80によって検知回路86から受信される、検知された内因性事象信号226に起因して、スケジューリングされた次のペーシングパルス223が抑制される。検知事象信号226に応答して、新規のペーシング間隔225としてペーシング間隔205が再始動される。
【0106】
遅延なし充電モード中、制御回路80は、ヒステリシス間隔206中に検知された内因性事象を有する心臓周期数を数えることによって、ペーシング間隔205に対応するペーシングレートよりも速い、心拍数の上昇を監視してもよい。図に示す例では、ヒステリシス間隔206内で発生する検知事象信号226に応答して、制御回路80が、上昇した内因性心拍数を検出する。次のペーシング間隔225中にキャパシタ充電を保留することによって、上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して、制御回路80が、遅延なし充電モードから遅延あり充電モードに切り替わる。
【0107】
キャパシタ充電のこの保留は、破線のキャパシタ充電時間ブロック224によって概略的に示してあり、実際には、この充電時間ブロック中にキャパシタ充電は発生しない。
図8Bとともに説明するように、検知事象信号226がヒステリシス間隔206の後に発生した場合、必要に応じてペーシング電圧振幅で保持キャパシタの充電を維持するように、ペーシング間隔225中にキャパシタ充電時間224が発生することになる。ペーシング間隔225中にキャパシタ充電の監視を保留することによって、またはキャパシタ充電がペーシング電圧振幅を下回るときでも充電を保留することによって、ペーシング間隔225中に、キャパシタ充電が保留されてもよい。
図8Cの例では、単一のヒステリシス間隔206中の検知事象信号226が、制御回路80に、遅延なし充電から遅延ありキャパシタ充電モードに切り替え、キャパシタの充電を保留できるようにしているのが示されている。他の例では、
図7とともに前述したように、各2つ以上のヒステリシス間隔それぞれの間の検知事象信号が、上昇した内因性心拍数の判断基準が満たされて、遅延あり充電モードに切り替えるために必要でもよい。たとえば、検知事象信号226は、上昇した内因性心拍数の判定基準を満たすことになる、Yの心臓周期のうちのXのヒステリシス間隔それぞれの数において検知されたX番目の事象でもよい。
【0108】
図8Dは、別の例による、ヒステリシス間隔206に基づいて、上昇した心拍数を検出するのに応答して保持キャパシタの充電を制御する際に、ICD14によって実行される動作を示すタイミング
図230である。
図8Dの例では、上昇した内因性心拍数を検出し、キャパシタ充電モードを遅延あり充電モードに切り替えるように、連続した3つの検知事象信号226、227、および228が、各ヒステリシス間隔206、207、および209内でそれぞれ検知される必要がある。先行する心臓事象、ペーシングパルス221、検知事象信号226、および検知事象信号227それぞれに応答して、各ヒステリシス間隔206、207、および209が開始される。この例では、連続して検知された3つの事象226、227、および228が、それぞれの心周期に設定されたヒステリシス間隔206、207、および208内で検知されるまで、上昇した内因性心拍数を検出するための判定基準が満たされない。したがって、制御回路80は、上昇した心拍数の検出判定基準が満たされるまで、キャパシタの充電を保留または遅延しない。制御回路80は、治療送達回路84の充電回路を制御して、検知事象信号226および227それぞれが、各ヒステリシス間隔206および207内でヒステリシスレートを上回って発生しても、検知事象信号226および227に応答して開始される各ペーシング間隔225および229中に、必要に応じて、ペーシングパルスを生成するのに使用される(1つまたは複数の)保持キャパシタを、ペーシング電圧振幅にまで充電する。
【0109】
ペーシング間隔225および229それぞれの初めに、またはペーシング間隔225および229の全体を通して、充電時間232および234中に(1つまたは複数の)保持キャパシタの再充電が発生して、必要に応じて、ペーシング電圧振幅の許容範囲内で保持キャパシタの充電を満タンにしてもよい。ペーシング間隔の持続時間、固有の漏洩電流、および他の要因に応じて、ペーシング電圧振幅の指定された許容範囲内でキャパシタの充電を維持するように、あらゆるペーシング間隔中に、(1つまたは複数の)保持キャパシタの充電が必要とされなくてもよいことが認識される。しかし、心拍数の上昇を検出するための判定基準が満たされるまで、検知事象信号226および227それぞれに応答して開始される各ペーシング間隔225および229中に、制御回路80が、保持キャパシタの充電を監視または検査してもよい。
【0110】
この例では、ヒステリシス間隔209内で第3の検知事象信号228を検出すると、ヒステリシスレートよりも速い、またはこのレートに等しい、上昇した内因性心拍数が検出される。それに応じて、次のペーシング間隔231中にキャパシタ充電を保留することによって、制御回路80が、遅延あり充電モードに切り替える。ペーシングパルスを生成するのに使用される治療送達回路84のHVまたはLVの充電回路は、保持キャパシタを充電するための充電回路に電力が供給されるのを保留することによって、「オフ」にされてもよい。キャパシタ充電の保留は、破線の枠236によって示してある。上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされた後、第1のペーシング間隔231中には、検知事象信号228に続いての充電は発生しない。普通は、ペーシング間隔中に保持キャパシタの満タン充電を制御するように実行されてもよい、たとえば、キャパシタ電圧とプログラムされたペーシング電圧振幅とを比較する比較器による保持キャパシタ電圧の監視は、少なくとも1つのペーシング間隔が終了するまで、または他の低下した内因性心拍数の判定基準が次に満たされるまで保持キャパシタの充電が再び実行されないので、上昇した心拍数を検出するのに応答して無効化されてもよい。
【0111】
図9A~
図9Cは、遅延ありキャパシタ充電モードに従ってキャパシタ充電を保留し、低下した内因性心拍数の判定基準が満たされるのに応答して、遅延なし充電モードに切り替えて戻すように、ICD14によって実行される動作を示すタイミング図である。
図8Cおよび
図8Dとともに前述されるように、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされた後、保持キャパシタの充電が保留される。
図9Aに示すように、検知事象信号242に応答してペーシング間隔245が開始される。上昇した内因性心拍数の判定基準が予め満たされていることに起因して、遅延あり充電モードに従ってキャパシタの充電が保留されているので、キャパシタの充電はペーシング間隔245中に実行されない。ペーシング間隔245は、内因性事象が検知されることなく終了する。制御回路80は、治療送達回路84を制御して、充電時間244によって示されるように、ペーシング間隔245が終了するのに応答して、(1つまたは複数の)保持キャパシタを充電する。保持キャパシタの電圧がペーシング電圧振幅に達すると、ペーシングパルス243が送達される。ペーシング電圧振幅にまで保持キャパシタを充電するのに必要な充電時間244に等しいペーシング間隔245が終了した後、ペーシングパルス243が遅延して送達されてもよい。
【0112】
制御回路80は、内因性事象が検知されることなく単一のペーシング間隔245が終了するのに応答して、低下した内因性心拍数を検出するように構成されてもよい。ペーシング間隔245中に内因性事象が検知されないことに基づいて、ペーシングレートよりも遅い低下した心拍数を検出するのに応答して、制御回路80は、各ペーシング間隔中に保持キャパシタを充電することによって遅延なし充電に切り替えて、必要に応じて、ペーシングパルスを送達するための準備状態に、(1つまたは複数の)保持キャパシタを維持する。ペーシングパルス243を送達するのに応答して、ペーシング間隔246が開始される。終了した少なくとも1つのペーシング間隔245に基づいて、低下した内因性心拍数を検出した後、ペーシング間隔246の初めに、またはその開始時にキャパシタの充電が始動されてもよい。制御回路80は、治療送達回路84を制御して、ペーシングパルス243に続いて、充電時間247中にペーシング電圧にまで保持キャパシタを再充電してもよい。
【0113】
図8C~
図8Dとともに前述されるように、制御回路80は、ペーシング間隔246を開始することに加え、ヒステリシス間隔206を開始して、上昇した内因性心拍数を監視し始めてもよい。制御回路80は、上昇した内因性心拍数が検出されるまで、各ペーシング間隔中に、ペーシング電圧振幅の指定された許容範囲内にキャパシタの充電を維持するように、必要に応じて、遅延なし充電モードに従って、各ペーシング間隔中に(1つまたは複数の)保持キャパシタを充電し続ける。制御回路80は、HV治療回路83またはLV治療回路85に電力を供給するように電源98を有効にして、上昇した内因性心拍数が検出されるまで、(1つまたは複数の)選択された保持キャパシタを充電してもよい。制御回路80は、上昇した内因性心拍数が再び検出されるまで、ペーシング間隔246の開始時、およびその後の各ペーシング間隔に、選択されたHV治療回路83またはLV治療回路85からのキャパシタ充電信号を比較してもよい。保持キャパシタの充電が、ペーシング電圧振幅を下回る許容範囲未満であることをキャパシタ充電信号が示す場合、制御回路80は、ペーシング間隔246中に、必要に応じて(1つまたは複数の)選択された保持キャパシタの充電を有効にする。
【0114】
図9Aでは、遅延なし充電に切り替えて戻すように、単一のペーシング間隔が終了するのに応答して、低下した内因性心拍数が制御回路80によって検出される。他の例では、低下した内因性心拍数を検出して、制御回路80がキャパシタ充電のタイミングを変更できるようにするのに、終了したペーシング間隔が2つ以上必要とされることがある。たとえば、2つ以上のペーシング周期でペーシング間隔が終了し、その結果、2つ以上のペーシング周期に必要な充電時間に等しい、ペーシング間隔プラス遅延間隔でペーシングパルスが送達されると、キャパシタの充電が発生してもよい。連続した、または(YのうちのXである)非連続的な所定の数のペーシング間隔が終了するのに応答して、低下した内因性心拍数が検出されてもよい。
【0115】
図に示すように、ペーシング間隔が3つ連続して終了するのに応答して、低下した内因性心拍数が検出される場合、ペーシング間隔245に対応するペーシングレート未満のレートで、ペーシングパルスが3つまで送達されてもよい。第1の3つペーシングパルスでの実際のペーシングレートは、保持キャパシタをペーシング電圧振幅にまで充電するのに必要とされる、ペーシング間隔245プラス充電時間244に対応するレートでもよい。たとえば、毎分40パルスの相対的に遅いペーシングレートでは、ペーシング間隔245は1.5秒に設定されてもよい。充電時間244は平均0.5秒でもよく、その結果、3つのペーシング周期において実際のペーシングレートが毎分30パルスになり、低下した心拍数の検出判定基準を満たすことになる。第3のペーシングパルスの後、制御回路80は、低下した心拍数の判定基準に基づいて、低下した内因性心拍数を検出し、治療送達回路84を再度有効にして、遅延なく各ペーシング間隔中に保持キャパシタを充電し、その結果、それに続くペーシングパルスがそれぞれ、プログラムされたペーシング間隔が終了したときに遅延なく送達されてもよい。
【0116】
例によっては、検知事象信号は、充電時間244中に制御回路80によって受信することもできる。この場合、ペーシングパルス243は抑制されることになり、キャパシタの充電を終了することもでき、または継続することも可能にできる。低下した内因性心拍数の判定基準が満たされるように、終了したペーシング間隔の必要数に達した場合、ペーシング間隔が終了した後に、充電時間中に検知事象信号が受信された場合でも、制御回路80は、遅延なし充電モードに切り替えて戻し、したがってペーシングパルスが抑制されることになってもよい。したがって、低下した内因性心拍数を検出するためのペーシング間隔の必要数と同じ数のペーシングパルスが送達される必要なく、低下した内因性心拍数を検出するためのペーシング間隔のこの必要数に達してもよい。検知事象信号がキャパシタ充電中に受信されるのに起因して、送達されたペーシングパルスの数は、終了したペーシング間隔の数を下回ってもよい。
【0117】
図9Bは、別の例による、内因性心拍数の低下中に保持キャパシタ充電を制御する方法のタイミング図である。例によっては、
図9Aに示すように、遅延ありキャパシタ充電モードに従って、ペーシング間隔全体においてキャパシタ充電が保留される。他の例では、キャパシタ充電は、ペーシング間隔の一部分で保留され、ただし充電遅延間隔の後、ペーシング間隔中に開始されてもよい。
図9Bの例では、検知事象信号251に応答して、ペーシング間隔255の開始とともに、キャパシタ充電遅延間隔256が設定される。
図8Cまたは
図8Dとともに前述されるように、ヒステリシス間隔に基づいて、上昇した心拍数を検出するのに応答して、制御回路80は、遅延あり充電モードに従って、キャパシタ充電遅延間隔256が終了した後まで、ペーシング間隔255中にキャパシタ充電を保留してもよい。検知された事象252がキャパシタ遅延間隔256中に発生する場合、保持キャパシタ充電が保留され、キャパシタ充電遅延間隔が間隔258として再始動される。検知事象信号252に応答して、ペーシング間隔が間隔257として再始動される。
【0118】
次の検知事象信号253の前に、充電遅延間隔258が終了する。充電遅延間隔258が終了するのに応答して、充電時間254によって示されるようにキャパシタ充電が始動される。スケジューリングされたペーシングパルスが抑制され、ペーシング間隔がペーシング間隔259として再始動されるので、検知事象信号253を受信するのに応答して、キャパシタ充電254が終了されてもよい。他の例では、(検知事象信号253を過ぎて、次のペーシング間隔259に至ってもよい)充電時間254中に、ペーシング電圧振幅にまで充電することが完了されてもよい。検知事象信号253に応答して、ペーシング間隔259とともに、次の充電遅延間隔260が開始される。
【0119】
充電遅延間隔260が終了する場合、制御回路80は、治療送達回路80を制御して、キャパシタ充電254を始動するように構成される。ペーシング間隔259が終了する場合、ペーシングパルス264が送達される。たとえば、
図7Cまたは
図7Dとともに前述されるように、上昇した内因性心拍数を再び検出する際に使用するように送達されたペーシングパルス264に応答して、新規のペーシング間隔261が開始され、ヒステリシス間隔270が設定されてもよい。例によっては、ペーシング間隔259が終了する時間までに保持キャパシタがペーシング電圧振幅にまで完全に充電される場合、遅延なくペーシング間隔が終了すると、ペーシングパルス264が送達されてもよい。他の例では、ペーシング間隔259が終了するのと同時にキャパシタ充電が完了されていなくてもよく、キャパシタ充電を完了するのに必要なペーシング間隔259が終了した後に、短時間の遅延でペーシングパルス264が送達されてもよい。
【0120】
例によっては、制御回路80は、ペーシング電圧振幅、および保持キャパシタのキャパシタンスに基づいて、推定キャパシタ充電時間を決定するように構成されてもよい。他の例では、制御回路80は、充電履歴に基づいてキャパシタ充電時間を決定するように構成されてもよい。たとえば、送達されたペーシングパルスに続いてキャパシタ充電が開始してから、充電完了信号が治療送達回路84から受信されるまでの時間間隔が、制御回路80によって決定されてもよい。この時間間隔、たとえば
図9Aの充電間隔247、または複数のキャパシタ充電が発生している間に、このようにして取得される複数の充電完了時間間隔の平均が、キャパシタ充電時間として決定されてもよい。
【0121】
制御回路80は、ペーシング間隔259、および計算または測定されたキャパシタ充電時間に基づいて、キャパシタ充電遅延間隔260を設定するように構成されてもよい。キャパシタ充電遅延間隔260は、ペーシング間隔259と、決定されたキャパシタ充電時間との差として決定されてもよい。例によっては、キャパシタ充電遅延間隔260は、ペーシング間隔259が終了するのに先立って充電を完了させて、ペーシングパルス264のいかなる遅延も回避するように、(ゼロに設定されてもよい)ペーシング安全間隔よりも短い、ペーシング間隔259と、決定されたキャパシタ充電時間との差でもよい。
【0122】
図9Bに示す例では、制御回路80は、治療送達回路84を制御して、ペーシングパルス264が送達された後に充電時間266中に保持キャパシタを再充電する。単一のペーシング間隔259が終了することによって、制御回路80は、遅延なし充電モードに切り替えて、キャパシタ充電遅延間隔が終了するのを待つことなく、各ペーシング間隔中に、ペーシング電圧にまで保持キャパシタ充電を回復することができるようになってもよい。他の例では、各ペーシング間隔中に遅延なし充電に復帰して戻す前に、所定の数のペーシング間隔が必要になることがある。たとえば、連続的または非連続的な2つ以上のペーシングパルスの後に、たとえば、連続した3つのペーシングパルス、または連続した5つの心臓周期のうちの3つのペーシングパルスの後のキャパシタ充電遅延間隔の後に、キャパシタ充電遅延間隔を設定することなく充電が実行されて、その後に、遅延なし充電に切り替えてもよい。
【0123】
図9Cは、別の例による、内因性心拍数の低下中に保持キャパシタ充電を制御する方法のタイミング図である。
図9Bの例では、制御回路80は、所定の数の終了したペーシング間隔に基づいて、低下した内因性心拍数を検出する。他の例では、制御回路80は、所定の数のキャパシタ充電遅延間隔が終了するのに応答して、低下した内因性心拍数を検出するように構成されてもよい。ペーシング間隔が終了しなかった場合であっても、終了したキャパシタ充電遅延間隔に基づいて、低下した内因性心拍数の検出判定基準が満たされると判定されてもよい。
【0124】
図9Cに示すように、また
図9Bとともに前述されるように、キャパシタ充電遅延間隔256中に検知された事象252によって、キャパシタ充電が保留されることになる。内因性事象が検知されることなくキャパシタ充電間隔258および260が終了すると、キャパシタ充電254が、保持キャパシタの充電をペーシング電圧振幅にまで満タンにする。
図9Bの例では、キャパシタ充電中に検知された事象信号253に応答して、キャパシタ充電254が終了された。
図9Cの例では、ペーシング電圧振幅にまで充電が完了するように、検知事象信号253の後、キャパシタ充電254が継続する。
【0125】
検知された事象253および282がキャパシタ充電254中で、かつそれぞれペーシング間隔257および288が終了するより前だと、スケジューリングされたペーシングパルスが抑制されることになる。この例では(258および260)2つの、所定の数の充電遅延間隔が終了するのに応答して、制御回路80は、検知事象信号282の後に、低下した内因性心拍数を検出し、キャパシタ充電モードを遅延なし充電に切り替える。キャパシタ充電遅延間隔が、ペーシング間隔290と同時に開始されることはない。検知された事象282の後に、またそれに続くペーシング間隔290中に、必要に応じてキャパシタ充電を満タンにするように、キャパシタ充電が完了されてもよい。次の事象は、ペーシング間隔290中に検知された事象284である。充電時間286によって示すように、ペーシング間隔292中にキャパシタ充電が遅延なく発生する。上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされていることを検出しやすくするように、検知された事象284に続いて、ペーシング間隔292と同時にヒステリシス間隔270が開始されてもよい。
【0126】
この例では、検知された内因性事象がキャパシタ充電遅延間隔中に発生する場合、内因性心拍数が、キャパシタ充電遅延間隔に対応するレートよりも速いので、充電は保留される。しかし、所定の数のキャパシタ充電遅延間隔が終了する場合、内因性心拍数は、ペーシングの潜在的に必要な状態にまで低下することがある。制御回路80は、所定の数のキャパシタ充電遅延間隔が終了するのに応答して、低下した内因性心拍数を検出し、低下した内因性心拍数を検出するのに応答して、遅延なし充電に切り替えてもよい。したがって、内因性心拍数が、プログラムされたペーシングレートを下回る前に、また任意のペーシングパルスが送達される前に、遅延なしキャパシタ充電への切替えが発生してもよい。
【0127】
図10は、別の例による、保持キャパシタ充電を制御する方法の流れ
図300である。ブロック302において、制御回路80は、治療送達回路84を制御して、ペーシングパルスをスケジューリングするのに現在使用されているペーシング間隔以下でもよいキャパシタ充電遅延間隔の後にペーシングパルスを送達するように、(1つまたは複数の)選択された保持キャパシタを充電する。ブロック302において実行される各動作は、キャパシタ充電遅延間隔を設定するのに使用される、計算または測定されたキャパシタ充電完了時間間隔を決定することを含んでもよい。たとえば、
図9Bおよび
図9Cに示すように、キャパシタ充電遅延間隔中に検知事象信号を受信するのに応答して、制御回路80がキャパシタ充電を保留し、スケジューリングされたペーシングパルスが抑制される。キャパシタ充電遅延間隔、およびペーシング間隔が再始動される。他の例では、たとえば
図9Aに示すように、各ペーシングパルスおよび検知事象信号の後にペーシング間隔が再始動され、別々のキャパシタ充電遅延間隔を設定することなくペーシング間隔が終了するまで、キャパシタの充電が遅延される。
【0128】
制御回路80は、たとえば、
図9Aおよび
図9Bと同様に、終了したペーシング間隔の閾値数に基づいて、ブロック304において、低下した内因性心拍数を検出してもよい。ペーシング間隔が終了した後に検知される事象が、遅延あり充電中に発生し、その結果、ペーシングパルスが抑制されることがあるので、終了したペーシング間隔の数は、送達されたペーシングパルスの数より多くてもよい。他の例では、たとえば
図9Cに示すように、所定の数の充電遅延間隔が終了するのに応答して、制御回路80が、低下した内因性心拍数を検出してもよい。低下した内因性心拍数を検出するのに応答して、ブロック306において、たとえばキャパシタ充電遅延間隔を設定することなく、制御回路80は、治療送達回路84を制御して、遅延なくペーシングするのに使用される保持キャパシタを充電するように切り替える。送達されたペーシングパルスもしくは検知された事象の後に設定されたペーシング間隔の初めに、またはその全体を通して、ペーシング間隔中に、保持キャパシタ充電をペーシング電圧振幅に維持するように、再充電または満タン充電が発生することがある。
【0129】
ブロック308において、制御回路80は、内因性心拍数の低下の速度または傾斜を決定してもよい。たとえば、制御回路80は、低下した心拍数の判定基準が満たされた時点にまで至る、所定の数の心拍、または所定の時間間隔にわたる、低下の速度を決定してもよい。心拍数の低下が不意に発生する場合、この低下した内因性心拍数の検出判定基準は、ブロック310において、相対的に少ない心臓周期、たとえばわずか1つの心臓周期で、低下した心拍数の検出を有効にするように調整されてもよい。低下の速度が相対的に遅い場合、遅延ありキャパシタ充電から、(1つまたは複数の)遅延なし保持キャパシタ充電に切り替える前に、低下した内因性心拍数を検出するのに必要とされる、終了したキャパシタ充電遅延間隔および/または終了したペーシング間隔の数を増やすことによって、ブロック310において、低下した内因性心拍数の検出判定基準が調整されてもよい。
【0130】
制御回路80は、治療送達回路84の制御を継続して、ブロック312において、上昇した内因性心拍数が検出されるまで、保持キャパシタを準備状態に維持するように、各ペーシング間隔中に遅延なく保持キャパシタを充電する。前述の通り、上昇した内因性心拍数を検出するための判定基準が、ヒステリシス間隔内で発生する検知事象信号を有する、1つまたは複数の心臓周期を必要とすることがある。
【0131】
ブロック312において、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされると、制御回路80は、ブロック314において、内因性心拍数の上昇の速度または傾斜を決定するように構成されてもよい。この上昇の速度は、所定の時間間隔または心臓周期数にわたって決定されてもよい。上昇の速度に基づいて、ブロック316において、上昇した内因性心拍数を検出するための判定基準を制御回路80が調整してもよい。上昇の速度が急激に発生する場合、制御回路は、上昇した内因性心拍数を検出するための要求条件として、ヒステリシス間隔レートで、またはそれを上回って発生する検知事象の数を相対的に減らして設定してもよい。別法として、またはさらに、上昇する内因性心拍数の検出を早めるように、ペーシング間隔までの相対的に長い間隔にヒステリシス間隔が設定されてもよい。心拍数が急激に回復する患者において、上昇した内因性速度の判定基準を調整することにより、早く遅延ありキャパシタ充電に切り替えて戻すことによって電池充電が節約される。
【0132】
たとえば、断続的にペーシングおよび検知し、または持続した時間間隔においてペーシングレートの近くで検知している状態で、上昇の速度が徐々に発生する場合、ヒステリシス間隔が相対的に短い間隔に調整されてもよく、かつ/または検知されたヒステリシス間隔事象の必要数が減らされてもよい。上昇した内因性速度の検出判定基準を調整することによって、心拍数が徐々に上昇している間に、遅延ありキャパシタ充電と遅延なし充電を交互に切り替えることが回避され、遅延ありキャパシタ充電に起因するいかなるペーシング遅延も回避されてよい。
【0133】
上昇の速度に基づいて、上昇した速度の検出判定基準を調整した後、制御回路80は、治療送達回路84を制御して、検知された事象およびペーシングパルスの後のペーシング間隔中に、保持キャパシタの充電を遅延させるように動作する。たとえば
図9Aに示すようにペーシング間隔が終了するまで、または、たとえば
図9Bまたは
図9Cに示すようにキャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、キャパシタ充電を保留することによってキャパシタ充電が遅延される。調整済みの低下した速度の検出判定基準に従って、低下した内因性心拍数が検出されるまで、キャパシタ充電が遅延される。内因性心拍数の変化の低下速度および上昇速度をそれぞれ決定することに基づいて、低下した速度の検出判定基準と、上昇した速度の検出判定基準とを両方とも調整することが、
図10に示してあり、制御回路80は、自動的に、低下した内因性心拍数の検出判定基準だけを調整するか、上昇した内因性心拍数の検出判定基準だけを調整するか、両方調整するか、またはそのどちらも調整しないように構成されてもよいことを理解されたい。
【0134】
図11は、心拍数の変化の速度または傾斜に基づいて、キャパシタの充電モードを制御する方法の流れ
図320である。ブロック321において、内因性事象が検知されることなく終了したペーシング間隔に起因して持続的にペーシングを実行している間に、ICD14がペーシングパルスを送達してもよい。制御回路80は、治療送達回路84を制御して、(1つまたは複数の)保持キャパシタを遅延なく充電する。
【0135】
ブロック322において、内因性事象が検知されて、スケジューリングされたペーシングパルスが抑制されることになる。ブロック323において、検知事象間隔が決定される。ブロック324において、所定の時間間隔、または所定の数の心臓周期にわたる心拍数の傾斜が決定される。たとえば、ブロック324において、直近の検知事象間隔のうちの5つから10を使用して、心拍数の変化の傾斜を決定してもよい。たとえば、患者活動の増加に起因して、内因性心拍数が急速に上昇する場合、次にペーシング間隔の終了する可能性が非常に低下するので、キャパシタ充電が保留されてもよい。制御回路80は、ブロック325において、所定の時間間隔または検知された内因性事象の数にわたる内因性心拍数の変化の傾斜と、閾値の傾斜とを比較する。この閾値の傾斜は、内因性心拍数が比較的急速に上昇することに対応する正の傾斜である。
【0136】
ブロック324において、傾斜を決定するのに必要な時間間隔、または検知事象間隔の数に達しなかった場合、ブロック325において、内因性心拍数の変化の傾斜が傾斜閾値を下回ることになる。その場合、ブロック326において、遅延なしキャパシタ充電が継続する。このプロセスは、ブロック322に戻って、検知される次の事象を待つ。
【0137】
必要とされる時間間隔、または検知事象間隔の数に達して、ブロック324において傾斜の決定が有効化され、ただしブロック325において傾斜が傾斜閾値を下回る場合、制御回路80が、ブロック326において遅延なしキャパシタ充電を制御し続ける。遅延なし充電モードから遅延あり充電モードに切り替えることを正当化するために、内因性心拍数は上昇してもよく、ただし十分急激に上昇しなくてもよく、または単調に上昇しなくてもよい。ペーシング間隔が終了する確率は依然として十分に高くて、ペーシングするための準備状態に保持キャパシタを維持することができる。
【0138】
ブロック324において決定された内因性心拍数の変化の傾斜が、ブロック325において、傾斜閾値に等しいか、またはそれを上回る場合、たとえば、前述の通り、キャパシタ充電遅延間隔を設定し、または次のペーシング間隔のすべて、もしくはその一部分の間でキャパシタ充電を保留することによって、制御回路80は、ブロック327において、キャパシタ充電モードを遅延ありキャパシタ充電に切り替える。たとえば、ブロック325において適用された傾斜閾値は、現在のペーシングレートから、1分以内のペーシングレートよりも毎分20回速く内因性心拍数が上昇することを必要としてもよいが、患者の要求に従って他の傾斜閾値が定められてもよい。
【0139】
遅延ありキャパシタ充電に切り替えた後、ブロック328において、制御回路80は、内因性心拍数の変化の傾斜を監視し続けてもよい。ブロック329において、この傾斜が、速度低下閾値と比較されてもよい。この速度低下閾値が、所定の時間間隔、または検知事象間隔の所定の数(Y)にわたる内因性心拍数の傾斜に適用されて、内因性心拍数が急激に低下し、それによってペーシング間隔が終了する可能性が高くなるかどうか判定してもよい。たとえば、この速度低下閾値は、内因性心拍数の傾斜が1分以内に毎分30回心拍数が低下することを必要とする場合がある。この速度低下閾値は、心拍数が比較的速く低下することに対応する、負の傾斜閾値である。低下閾値と比較された傾斜を決定するための、低下閾値、および必要とされる時間間隔、または検知事象間隔の数が、ブロック324および325において、心拍数の急激な上昇を検出するように決定および使用される、それぞれの傾斜および閾値と異なるように定められてもよい。
【0140】
内因性心拍数の変化の傾斜が、低下閾値よりも高い(たとえば、それよりも負ではない)場合、ブロック327において、(1つまたは複数の)保持キャパシタの遅延あり充電が継続する。この心拍数は、上昇していても(正の傾斜)、安定していても(傾斜ゼロ)、または緩やかに低下していてもよく(低下閾値よりも負の傾斜が小さい)、したがって、ペーシング間隔が終了することになる確率が相対的に低くなる。ブロック329において、傾斜が低下閾値より低い(それよりも負が大きい)場合、これは、心拍数が急激に低下し、ペーシング間隔が終了する可能性が高くなることを示しており、制御回路80は、ブロック328において、(1つまたは複数の)保持キャパシタの遅延なし充電に切り替えてもよい。
【0141】
他の上昇した内因性心拍数の検出判定基準、または低下した内因性心拍数の検出判定基準が満たされる前に、たとえば、ブロック325において、上昇する正の傾斜閾値よりも大きく、かつ/またはブロック329において低下する負の傾斜閾値よりも小さい傾斜閾値にまで、心拍数の変化の傾斜が到達するのに応答して、制御回路80がキャパシタ充電の制御を切り替えることができるように、流れ
図320のプロセスのすべて、またはその一部分が、
図6~
図9Cとともに前述される技法と組み合わされてもよいことを理解されたい。他の上昇した内因性心拍数の検出判定基準、および低下した内因性心拍数の検出判定基準に基づいて、キャパシタ充電モードを切り替えるための技法と組み合わせると、ペーシング間隔が終了する可能性が低い場合は、電源98の電池エネルギーを節約し、ペーシング間隔が終了する可能性が比較的高い場合は、準備状態に保持キャパシタの充電を維持するようにして、キャパシタ充電モードを切り替えることによって、制御回路80は、内因性心拍数の急速な変化と比較的遅い変化の両方へ適切に応答することができる。
【0142】
図12は、一例による、ペーシングの負担の変化を検出することに基づいて、キャパシタ充電モードの切替え機能を有効化および無効化する方法の流れ
図400である。ICD14は、
図6~
図11のいずれかとともに前述される各技法に従って、継続的に動作してもよい。すなわち、制御回路80は、一日のうちいつでも、または他の生理的状態とは無関係に、内因性心拍数の判定基準に基づいて、遅延なし充電モードと遅延あり充電モードを自動的に切り替えるように有効化されてもよい。他の例では、制御回路80は、遅延なし充電と遅延あり充電のモードを切り替える機能が無効化(オフ)される、デフォルトのキャパシタ充電モード、たとえば遅延なし充電においてのみ動作してもよい。ペーシング負担の実際の変化または予測される変化に応答して、制御回路80によって、充電モードの切替え機能が有効化(オン)されても、無効化(オフ)されてもよい。
【0143】
図12では、ブロック402において、ICD14は、初めにデフォルトのキャパシタ充電モードで動作する。図に示す例では、次にペーシング間隔が終了するときに、ペーシングパルスを送達するための準備状態にキャパシタ充電を維持するように、デフォルトのモードが、各ペーシング間隔中に遅延なく充電する。規定の判定基準に基づいて内因性心拍数の変化を検出し、キャパシタ充電モードを切り替える機能が、このデフォルト充電モード中に、無効化すなわちオフにされてもよい。
【0144】
ブロック404において、制御回路80は、減少したペーシング負担の判定基準が満たされるかどうか判定するための、1つまたは複数のパラメータを監視してもよい。ペーシング履歴、時刻、および/またはセンサ90から受信される他の生理学的信号に基づいて、減少したペーシング負担が決定または予測されてもよい。一例では、この時刻が、夜間、または患者が通常は安静にしていて、ベッドに入るかまたは就寝中である、プログラム可能な時刻であると判定されると、減少したペーシング負担の判定基準が満たされる。時刻が、プログラムされた「夜」の時点になるのに応答して、ブロック406において、制御回路80は、キャパシタ充電モードを切り替える機能を有効化すなわちオンにしてもよい。充電モードを自動的に切り替える機能を有効にすることは、一方の充電モードから他方の充電モードへの切替えが直ちに発生することを必ずしも意味するとは限らない。むしろ、切替えモード機能をオンにした後、内因性心拍数の変化を検出するように監視することが実行されて、2つの充電モードの切替えを制御してもよい。現在、能動状態である遅延なし充電モードから、遅延あり充電モードに実際に切り替えるには、たとえば、
図8Cおよび
図8Dとともに前述されるように、少なくとも1つのヒステリシス間隔中に検知された内因性事象に基づいて、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされる必要がある。
【0145】
ブロック406において、充電モードの切替え機能を有効にした後、制御回路80は、ブロック408において、増加したペーシング負担の判定基準が満たされるかどうか判定するための、1つまたは複数のパラメータを監視してもよい。増加したペーシング負担の判定基準が満たされる場合、ブロック410において、切替え機能が再びオフすなわち無効化されてもよい。ブロック404において、時刻が「夜」であると判定するのに応答して、ブロック406において、充電モードの切替えを有効化し、ペーシング要求の予想される減少に対応することの説明に役立つ実例では、朝、または患者が起床し、もしくは活動的になると予想されるプログラムされた時刻に達するのに応答して、ブロック408において、増加したペーシング負担の判定基準が満たされるかどうか制御回路80が判定してもよい。所与の患者においては、夜の時間よりも活動的な日中の時間において、ペーシングの負担が相対的に高いと予想されてもよい。時刻、および相対的に高いと予想される日中でのペーシング頻度に基づいて、ブロック408において、増加したペーシング負担の判定基準が満たされる。減少したペーシング負担の判定基準を満たすと検出される時刻、および減少したペーシング負担の判定基準を満たすと検出される時刻は、患者の個々の習慣および日課に従って調整してもよいことが認識される。
【0146】
他の例では、たとえば、少なくとも1時間以上におよぶ所定の期間中に送達されたペーシングパルスの数または割合として決定された、実際のペーシング負担の増加に基づいて、ブロック408において、増加したペーシング負担の判定基準が満たされると判定されてもよい。ブロック408において、増加したペーシング負担の判定基準が満たされるのに応答して、制御回路80は、ブロック410において、充電モードの切替え機能を無効にする。制御回路80は、治療送達回路84を制御して、ブロック402において示される遅延なし充電ペーシングモードでもよいデフォルトのペーシングモードに従って、内因性心拍数の変化を監視することなく、また充電モードを切り替えることなく、(1つまたは複数の)保持キャパシタを充電するように動作する。
【0147】
ブロック404において、減少したペーシング負担を検出するための他の判定基準は、所定の閾値を下回る実際のペーシング負担を含んでもよい。たとえば、所定の時間間隔、たとえば1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、1週間、または他の時間間隔での、ペーシングパルスの数、あらゆる心臓事象から送達されるペーシングパルスの割合、または検知された内因性事象に対するペーシングされた事象の比率として、ペーシングの負担が決定されてもよい。ペーシング負担がペーシング負担閾値を下回る場合、ブロック404において、減少したペーシング負担の判定基準が満たされる。図に示すように、検知およびペーシングされた、あらゆる事象のうちの10%未満が、過去24時間にわたって送達されたペーシングパルスである場合、制御回路80は、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされると、遅延ありキャパシタ充電が実行されてもよいように、ブロック406において充電モード切替えを有効にしてもよい。
【0148】
ブロック404において、減少したペーシング負担の判定基準が満たされると判定するための判定基準の他の例は、センサ90から受信されるセンサ信号に基づいてもよい。たとえば、活動センサ信号、または毎分呼吸量の減少など代謝要求の減少を示す他の指標から決定される、患者活動の減少、またはセンサによって示されるペーシングレートの低下が、減少したペーシング負担の指標となる場合がある。同様にして、代謝要求の増加を示すものとして、加速度計、または毎分呼吸量を追跡するのに使用されるインピーダンスセンサなど、患者活動センサから決定される、患者活動の増加、またはセンサによって示されるレートの上昇を検出するのに応答して、増加したペーシング負担を検出するための判定基準が、ブロック408において満たされてもよい。
【0149】
患者の血行動態機能と関連する他の生理学的センサ信号を使用して、ブロック404において、減少したペーシング負担の判定基準が満たされ、かつ/またはブロック408において、増加したペーシング負担の判定基準が満たされると判定してもよい。たとえば、圧力センサ、酸素飽和度センサ、インピーダンスセンサ、または他の生理学的センサから得られる信号または測定項目が決定され、心拍出量を増加する必要性を決定するための閾値と比較されてもよい。心拍出量を増加させる必要性に基づいて、増加したペーシング負担の判定基準が満たされてもよい。たとえば、ブロック408において、心拍出量と関連する血圧、組織または血中の酸素飽和度、または他のパラメータが、制御回路80によって、センサ信号から決定され、閾値と比較されてもよい。たとえば、所定の閾値を下回るといった、心拍出量が少ない状態をパラメータが示し、その結果、心拍出量の増加が必要になる場合、ブロック408において、増加したペーシング負担の判定基準が満たされると判定され、ブロック410において、充電モードの切替えが無効化されてもよい。
【0150】
減少したペーシング負担の判定基準、および増加したペーシング負担の判定基準が異なるように定められてもよく、したがって、様々なパラメータ、および/または各パラメータに適用される様々な閾値を含んでもよい様々な判定基準を使用して、充電モードを切り替える機能をいつ有効化および無効化すべきかを決定する。たとえば、時刻を使用して、キャパシタ充電モードの切替えを有効にするように、減少したペーシング負担の判定基準が満たされることを検出してもよく、たとえば、代謝要求の増加、または心拍出量を増加する必要性を示すセンサ信号パラメータを使用して、ブロック410において、充電モードの切替えを無効化するように、ブロック408において、増加したペーシング負担の判定基準が満たされることを検出してもよい。
【0151】
ブロック406において、充電モードの切替えが有効化された後、制御回路80は、前述の技法のいずれかに従って、上昇した心拍数を検出し、遅延ありキャパシタ充電に切り替えるように動作してもよい。遅延ありキャパシタ充電に切り替えた後、増加したペーシング負担の判定基準が満たされることに起因して切替え機能が無効化されない限り、制御回路は、低下した内因性心拍数を監視し、遅延なしキャパシタ充電に切り替えて戻してもよい。
【0152】
図12に示すように、デフォルトの充電モードは、遅延なし充電モードではなく、遅延あり充電モードであることがさらに企図される。ペーシング負担閾値に到達するペーシング負担の、実際のまたは予測される変化に基づいて、キャパシタ充電モードの切替え機能が有効化および/または無効化されてもよい。ICD14を受信する患者は、ペーシングをほとんど必要としないと予想される場合がある。その場合、制御回路80は、治療送達回路84を制御して、内因性事象が検知されることなく、充電遅延間隔またはペーシング間隔が終了するまで、キャパシタ充電を遅延してもよい。充電モード切替え機能が無効化されたままである限り、ペーシングモードなしの充電に切り替えることなく、ペーシングを必要とする遅い内因性心拍数が発生することがある。制御回路80は、たとえば、ブロック408とともに前述されるように、増加したペーシング負担の判定基準が満たされるかどうか判定するために、送達されたペーシングパルスの頻度、時刻、および/またはセンサ90からの1つもしくは複数の生理学的信号に基づいて、実際のペーシング負担を監視してもよい。増加したペーシング負担の判定基準が満たされるのに応答して、制御回路80は、キャパシタ充電モードの切替えを有効にしてもよい。キャパシタ充電モードの切替えが有効化された後、制御回路80は、内因性心拍数の変化を監視し、低下した内因性心拍数の判定基準が満たされるのに応答して、遅延ありキャパシタ充電から遅延なし充電に切り替えてもよい。
【0153】
例によっては、充電モードの切替えを有効化した後、切替え機能が再び無効化されることは決してなくてもよい。たとえば、最初に埋め込まれると、患者の予測されたペーシングの必要性に基づいて2つのモードの切替えが無効化された状態で、遅延なし充電または遅延あり充電であるデフォルトのキャパシタ充電モードに従って、ICD14が動作してもよい。ペーシング負担の変化が発生したこと、または発生すると予想されることを検出すると、前述される判定基準の任意の1つまたはその組合せを使用して、キャパシタ充電モードの切替えが有効化される。有効化された後、制御回路80は、本明細書に提示される任意の例を使用して、所定の判定基準に従って、上昇および低下した内因性心拍数を検出することに基づいて、2つの充電モードを切り替える。制御回路80によって一度も自動的に無効化されることなく、たとえば、ICD14の残りの寿命において、または使用者によって手動でプログラムされるまで、キャパシタ充電モードの切替えが有効化されたままでもよい。
【0154】
図13は、一例による様々なペーシング治療に基づいて、ICD14によってキャパシタ充電を制御する方法の流れ
図450である。制御回路80は、検知事象信号、または送達された電気刺激パルス、またはペーシング治療の必要性があるという他の決定に応答して、ブロック452においてペーシング間隔を開始してもよい。場合によっては、送達された刺激パルスは、CV/DFショックパルスでもよく、この場合、ペーシング間隔は、ショック後心停止を回避するように、ショック後ペーシング間隔でもよい。ブロック454において決定されるように、ペーシング間隔がショック後ペーシング間隔の場合、制御回路80は、遅延なくペーシングする必要が潜在的に重要であると予測して、ブロック460において、遅延ありキャパシタ充電を無効にするように構成されてもよい。制御回路80は、治療送達回路84を制御して、必要に応じて、プログラムされたペーシング電圧振幅に保持キャパシタ充電を維持するように、各ショック後ペーシング間隔中に、たとえば、各ペーシング間隔の初めに開始し、例によっては、ペーシング間隔の全体を通して、ペーシング電圧振幅にまで、選択されたLVまたはHVの(1つまたは複数の)保持キャパシタを充電することによって、ショック後ペーシングを送達するように構成されてもよい。
【0155】
他の場合では、頻脈性不整脈を検出したときの検知事象信号に応答して、ブロック452において開始されたペーシング間隔が開始されてもよい。この場合、ペーシング間隔は、一連のATPパルスの送達を制御するように設定されたATP間隔でもよい。ペーシング間隔がATPペーシング間隔の場合、制御回路80は、ブロック460において保持キャパシタの遅延あり充電を無効にするように構成されてもよい。正確にATPペーシングパルスのタイミングをとり、頻脈性不整脈を正常に終了させるように、遅延なく各ATPペーシング間隔中にキャパシタ充電が実行される。
【0156】
またあるときには、ブロック452において開始されたペーシング間隔は、送達された徐脈ペーシングパルス、またはR波検知事象信号に応答して開始された徐脈ペーシング間隔、たとえば、VVIペーシング間隔でもよい。ペーシング間隔が、徐脈ペーシング間隔として開始され(ブロック454の「いいえ」分岐)、誘発事象が、心室性期外収縮(PVC)として制御回路80によって検出される検知事象信号の場合、制御回路80は、1つの周期でブロック460において、遅延ありキャパシタ充電を無効にしてもよい。検知された事象が、遅延なくPVCとして識別されるのに応答して、必要に応じて、ペーシング電圧振幅にまでキャパシタ充電を満タンにするように、開始したペーシング間隔中に、キャパシタ充電が実行されてもよい。このようにして、治療送達回路84は、PVCの後に続く、長い補償ポーズを予測して、ペーシングパルスを送達できる状態にある。制御回路80は、(ペーシングまたは検知された)直近の先行する心室事象からの、検知された事象間隔(RR間隔)および/またはRR間隔中に、R波が検知されるのに先立って、心房P波が検知され、検知されたR波で終わるかどうかに基づいて、PVCとして検知されたR波を検出するように構成されてもよい。たとえば、ブロック406において、PVC検出閾値間隔を下回るRRIで受信されるR波検知事象信号が、PVCとして検出されてもよい。
【0157】
他の例では、PVCは、キャパシタ充電状態の変化を制御する目的で無視されてもよい。たとえば、PVCとして識別された検知事象信号で終了すると判定された短い検知事象間隔は、上昇した内因性心拍数を検出する際に無視されてもよい。PVCとして識別された検知事象信号の後の長い検知事象間隔(補償ポーズ)が、低下した内因性心拍数を検出する際に無視されてもよい。このようにして、1つのPVC、または一連のPVCは、キャパシタ充電モードの切替えを引き起こすことによって、キャパシタ充電状態を変更することにはならない。遅延なくペーシングパルスを生成するのに使用される(1つまたは複数の)保持キャパシタを充電するように、制御回路80が現在動作する場合、PVCの直前および直後の検知事象間隔が、内因性心拍数の変化を検出するように無視される。遅延なしキャパシタ充電に変更がなされることはない。同様にして、制御回路80が、遅延あり充電モードで現在動作する場合、PVCとして識別された検知事象の直前の検知事象間隔、およびPVCの直後の検知事象間隔は、内因性心拍数の変化を検出するように無視される。
【0158】
ブロック452において、開始されたペーシング間隔が、ATPペーシング間隔、またはショック後ペーシング間隔でなく、PVCとして検出される検知事象信号に応答して開始されない場合(ブロック456の「いいえ」分岐)、制御回路80は、ブロック458において、現在のキャパシタ充電制御モードに従って動作してもよい。キャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、またはペーシング間隔が終了するまで、キャパシタ充電を遅延するように制御回路80が動作する場合、遅延あり充電モードに従って、ブロック452において開始されたペーシング間隔中にキャパシタ充電が保留される。
図9a~
図9cとともに前述されるように、ペーシング間隔、またはキャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、キャパシタ充電が遅延される。制御回路80が、低下した内因性心拍数を直近に検出し、遅延なく充電するように動作する場合、必要に応じて、ペーシングパルスを送達するための準備状態に保持キャパシタを維持するように、たとえば、ブロック452おいて開始されたペーシング間隔の初めに、かつ/またはその全体を通して、キャパシタ充電が遅延なく実行されてもよい。
【0159】
制御回路80は、選択されたペーシング治療中、たとえばVVIペーシング中だけ、遅延ありキャパシタ充電を有効化して、ペーシングパルスのタイミングが重要になることがあるとき、ショック後ペーシングやATPなど、他のペーシング治療中に、ペーシングパルスが遅延なく送達されるように構成されてもよい。本明細書に開示された技法を実装するICD14、または他のIMDによって可能な電気刺激治療のタイプに応じて、制御回路80は、1つまたは複数の治療において遅延ありキャパシタ充電を無効にし、1つまたは複数の治療において遅延ありキャパシタ充電を有効にするように構成されてもよい。
【0160】
図14は、別の例による、ペーシング治療を施すための遅延ありキャパシタ充電を制御するように構成されてもよい、IMDシステム500の図である。IMDシステム500は、ICD514、および心臓内ペースメーカ550を備えてもよい。心臓508の右心房(RA)502および右心室(RV)504それぞれと通信する、経静脈リード線510および520に結合されたICD514が示してある。RA502およびRV504において、心臓信号を検知し、電気刺激パルスを送達するように構成されたデュアルチャンバのペースメーカ、および電気除細動器/除細動器として、ICD514が示してある。全体として
図3とともに前述されるように、ICD514は、電子回路、たとえば、検知回路、治療送達回路、制御回路、メモリ、遠隔測定回路、他の任意選択のセンサ、および電源を格納するハウジング515を備える。
図14には、右胸の位置に埋め込まれたICD514が示してあるが、特に、能動電極としてハウジング515を使用する、電気的除細動および除細動の機能をICD514が含むとき、ICD514は、他の位置、たとえば左胸の位置に埋め込まれてもよいことが認識される。
【0161】
ICD514は、RAリード線510、およびRVリード線520の近位コネクタを収容するためのコネクタアセンブリ517を有する。RAリード線510は、心房信号、たとえば心房の脱分極に付随するP波を検知し、RAペーシングパルスを送達するように、遠位端電極512、およびリング電極514を支持してもよい。RVリード線520は、心室信号、たとえばRV脱分極に付随するR波を検知し、RVペーシングパルスを送達するように、ペーシング電極522、および検知電極524を支持してもよい。RVリード線520はまた、RV除細動電極526、および上大静脈(SVC)除細動電極528を支持してもよい。除細動電極526および528は、遠位のペーシング電極522および検知電極524から、近位に間隔が空けてあるコイル電極として示してあり、高電圧のCV/DFショックパルスを送達するのに使用されてもよい。
【0162】
ICD514は、RA502およびRV504において、デュアルチャンバペーシングを提供するように構成されてもよい。例によっては、IMDシステム500は、左心室信号、たとえば左心室脱分極に付随するR波を検知し、左心室506にペーシングパルスを送達するように、左心室506に配置された心臓内ペースメーカ550を備えてもよい。IMDシステム500は、心臓再同期治療(CRT)など、複数チャンバペーシング治療を施すように構成されてもよい。心臓内ペースメーカ550は、左心室ペーシングパルスを送達して、左心室収縮をRAおよびRVの収縮と同期して、正常な房室間隔、および協働される心室収縮を促進するように構成されてもよい。ICD514は、必要に応じて、心拍数が、プログラムされた相対的に低いペーシングレートを下回るのを回避するように、RAペーシングパルスおよびRVペーシングパルスを送達するように構成されてもよい。患者によっては、不定期の心房徐脈、またはAV伝導ブロックによって、内因性速度が遅くなり、RA502および/またはRV504のペーシングが必要になることがある。しかし、CRTにおいて、RA502およびRV504がペーシングまたは検知されているかどうかにかかわらず、最適な心腔同調性を促すように、心臓内ペースメーカ550による左心室ペーシングが、拍動ごとに発生することがある。
【0163】
心臓内ペースメーカ500は、左心室506の心臓信号を検知し、左心室ペーシングパルスを送達するための、ハウジングベースの電極552および554を備えてもよい。たとえば、全体として
図5とともに説明されるように、ペーシングパルスを生成し、このパルスを左心室に送達するように、ペースメーカ500は、検知回路、ならびに低電圧充電回路、保持キャパシタ、および出力キャパシタを含む低電圧治療回路に少なくとも1つのペーシングチャネルを含む治療送達回路を備えてもよい。例によっては、心臓内ペースメーカ550は、添付の流れ図とともに本明細書に開示された方法を実施して、保持キャパシタ充電を制御するように構成された制御回路を備える。たとえば、心臓内ペースメーカ550は、前述の通り、上昇した内因性心拍数の検出に続く遅延あり保持キャパシタ充電と、低下した内因性心拍数の検出に続くペーシング間隔中の遅延なし充電とをそれぞれ切り替えてもよい。患者によっては、心腔同調性を促すように、持続または延長された、左心室ペーシングのエピソードが必要になることがある。この場合、心臓内ペースメーカ550は、各ペーシング間隔中に、遅延なくキャパシタ充電を実行するように構成されてもよい。
【0164】
たとえば、患者512は、心腔同調性を促すための心臓内ペースメーカ550によるLVペーシングに依存していてもよく、ただし、RAペーシングおよびRVペーシングが必要になることはめったになくてもよい。このような状況において、ICD514は、電池充電を節約するように、ICD514のRAペーシングチャネルとRVペーシングチャネルのうちの一方、またはその両方において、遅延ありキャパシタ充電と遅延なし充電のモードを切り替えるように構成されてもよい。たとえば、RAの検知された事象(P波)および/またはRVの検知された事象(R波)によって、上昇した内因性速度の判定基準が満たされるとき、RAペーシングチャネルおよびRVペーシングチャネルに対応する保持キャパシタが、遅延あり充電モードに従って充電されてもよい。
【0165】
ICD514は、ペーシングをRA502およびRV504に提供するように、低電圧治療回路の少なくとも2つのペーシングチャネル、たとえば、
図5に示すように、低電圧治療モジュール85のチャネル342、344、および346のうちの任意の2つを備えてもよい。たとえば、RA電極516および518が、低電圧治療回路85のペーシングチャネル346に結合されて、RAペーシングパルスを送達してもよい。RV電極522および524が、低電圧治療回路85のペーシングチャネル344に結合されて、RVペーシングパルスを送達してもよい。ICD514の制御回路は、上昇した内因性速度の判定基準が各心腔で満たされることに基づいて、RAペーシングチャネルとRVペーシングチャネルのうちの一方、またはその両方のキャパシタ充電を遅延するように構成されてもよい。
【0166】
たとえば、
図5の低電圧治療回路85を参照すると、ICD514の検知回路によって検知されたP波の速度に基づいて、上昇した内因性心房速度を検出するのに応答して、低電圧保持キャパシタ358の充電が遅延されてもよい。ヒステリシス間隔中に、検知されたP波が発生する、閾値数の心臓周期に応答して、上昇した内因性心房速度を検出するように、検知されたP波それぞれの後にヒステリシス間隔が設定されてもよい。ICD514は、終了した1つまたは複数の心房ペーシング間隔に基づいて、低下した内因性心房速度を検出するのに応答して、心房ペーシングチャネルとして使用されるペーシングチャネル346の保持キャパシタ358の充電を、遅延なし充電モードに切り替えてもよい。
【0167】
ICD514の制御回路は、電極522および524に結合されるRVペーシングチャネルとして使用されるペーシングチャネル344によって、RV504に送達されるペーシングパルスのタイミングを制御するように、各心房ペーシングパルス、およびRA502で検知されたP波の後に、AVペーシング間隔を設定してもよい。さらに、または別法として、ICD514の制御回路は、ペーシングチャネル344によって送達されるRVペーシングパルスのタイミングを制御するように、各RVペーシングパルス、およびRV504で検知された各R波の後に、VVペーシング間隔を設定してもよい。ICD514の制御回路は、ヒステリシス間隔中にRV504において検知されたR波を有する心臓周期の閾値数に基づいて、上昇した内因性心室速度を検出するのに応答して、キャパシタ充電遅延間隔の後、または終了したAVもしくはVVのペーシング間隔が終了した後まで、低電圧保持キャパシタ356の充電を遅延してもよい。ICD514の制御回路は、閾値数のペーシング間隔および/または充電遅延間隔が終了するのに応答して、遅延なし充電に切り替えてもよい。例によっては、上昇した内因性速度を検出した後に、遅延あり充電を使用するキャパシタ充電の制御は、AAまたはVVのペーシング間隔中に、充電を制御するためだけに使用される。AVペーシング間隔は、AAおよびVVのペーシング間隔よりも相対的に短く、また遅延ありキャパシタ充電に起因して、長いAV間隔で送達される心室ペーシングパルスは望ましくないことがあるので、AVペーシング間隔に関連するキャパシタ充電を制御するために、遅延ありキャパシタ充電が使用されなくてもよい。
【0168】
他の例では、本明細書に開示された技法を組み込むペースメーカまたはICDは、単一の経静脈リード線に結合される単一チャンバペースメーカもしくはICD、あるいはRA502、RV504、およびLV506それぞれにおいて、検知および刺激するためのRAリード線、RVリード線、および冠静脈リード線を含む3つの経静脈リード線に結合された、複数チャンバペースメーカまたはICDでもよい。本明細書に開示された技法を実施するIMDシステムの他の例では、
図1Aに示されるICD14、および心血管外リード線16を備える埋込み可能なシステムに、心臓内ペースメーカ550が含まれてもよい。心臓内ペースメーカ550は、心房腔または心室腔のいずれかに配置され、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされるのに応答して、前述される、キャパシタ充電を遅延する方法を使用して、キャパシタ充電を制御してもよい。
【0169】
図15は、さらに別の例による、保持キャパシタの充電を制御する方法の流れ
図600である。制御回路80は、治療送達回路84を制御して、遅延ありキャパシタ充電モード中に、ブロック602においてペーシング間隔が終了するのに応答して、ペーシングパルスを送達するのに使用される(1つまたは複数の)保持キャパシタを充電してもよい。ペーシング間隔が終了した後まで充電を遅延することによって、ペーシング間隔において、キャパシタ充電が保留される。
【0170】
たとえば、終了したペーシング間隔、または心拍数変化の傾斜の閾値数が低下閾値より低い(それよりも負が大きい)ような、前述の低下した内因性心拍数の判定基準のいずれかを使用して、ブロック604において、低下した内因性心拍数の判定基準が満たされる場合、制御回路80は、ブロック606において、ペーシング間隔中に、ただしキャパシタ充電遅延間隔が終了した後に、(1つまたは複数の)保持キャパシタの充電に切り替えてもよい。このようにして、内因性心拍数が、キャパシタ充電遅延間隔に対応する速度よりも遅いときにのみ、充電が実行される。キャパシタ充電遅延間隔中に検知された事象によって、ペーシングパルスが抑制されることになり、充電が保留される。ブロック608において判定されるように、上昇した内因性心拍数の検出判定基準が満たされると、制御回路80は、ブロック602において、遅延あり充電に切り替えて戻し、ペーシング間隔が終了するまでキャパシタ充電を保留する。心拍数がペーシングレートよりも遅いときに、充電が発生する。
【0171】
内因性速度が、キャパシタ充電遅延間隔に対応する速度を下回るときだけ充電するこの方法は、比較的低いペーシング捕捉閾値を有するIMDおよび電極システムに使用されてもよい。たとえば、心内膜に近接した、もしくは心内膜と密接に接触したハウジングベースの電極を有する心臓内ペースメーカ550、または心内膜電極を備える経静脈リード線を有するICD514のペーシング捕捉閾値は、比較的低いと予想される。低下した内因性速度の判定基準が満たされることに基づいて、ペーシング間隔が終了する見込みが高くなるときでも、充電遅延間隔の後に充電が発生することがあるように、プログラムされたペーシング電圧振幅にまで保持キャパシタを充電するのに必要となる時間は、相対的に短くてもよい。上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされることに基づいて、ペーシング間隔が終了する見込みが比較的低いとき、ペーシングパルスを送達するのに臨床的に著しい遅延をもたらすことなく、ペーシング間隔が終了した後に充電が発生することがある。この例では、ペーシング間隔中に、依然として充電が実行されているので、キャパシタ充電遅延間隔後の充電は「遅延なし充電モード」であるとみなされてもよい。ペーシング間隔が終了した後まで充電が保留および遅延されるので、ペーシング間隔が終了した後の充電は「遅延あり充電モード」であるとみなされてもよい。
【0172】
本明細書に提示された流れ図とともに説明される各方法は、この説明される方法を、プログラム可能なプロセッサに実行させるための命令を含む、持続的でコンピュータ読取り可能な媒体に実装されてもよい。持続的でコンピュータ読取り可能な媒体は、一過性の伝搬信号であることを唯一の例外として、RAM、ROM、CD-ROM、NVRAM、EEPROM、フラッシュメモリ、または他のコンピュータ読取り可能な媒体など、揮発性または不揮発性の媒体のいずれかを含むが、これに限定されない。ソフトウェアモジュール自体によって、または他のソフトウェアと組み合わせて実行されてもよい、1つまたは複数のソフトウェアモジュールを実行するものとして、処理回路ハードウェアによって各命令が実施されてもよい。
【0173】
医師もしくは患者のプログラマなどのプログラマ、電気刺激装置、または他の装置に具体化される、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または他の任意の同等な集積論理回路もしくはディスクリート論理回路、ならびに、そうした構成要素の任意の組合せを含む1つまたは複数のプロセッサ内に、様々な態様の各技法が実装されてもよい。「プロセッサ」または「処理回路」という用語は一般に、単体の、もしくは他の論理回路と組み合わせた前述の論理回路のいずれか、または他の任意の同等な回路を指してもよい。
【0174】
1つまたは複数の例では、本発明の開示に説明される機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組合せで実装されてもよい。ソフトウェアで実装される場合、各機能は、1つまたは複数の命令またはコードとして、コンピュータ読取り可能な媒体に記憶されてもよく、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行されてもよい。コンピュータ読取り可能な媒体は、持続的な有形媒体を形成する、コンピュータ読取り可能な記憶媒体を備えてもよい。1つまたは複数のDSP、ASIC、FPGA、汎用マイクロプロセッサ、または他の同等の集積論理回路もしくはディスクリート論理回路など、1つまたは複数のプロセッサによって各命令が実行されてもよい。したがって、本明細書で使用される「プロセッサ」という用語は、本明細書に記載の各技法を実装するのに適した、前述の構造体のいずれか、または他の任意の構造体のうちの1つもしくは複数を指してもよい。
【0175】
さらに、態様によっては、専用のハードウェアおよび/またはソフトウェアのモジュール内に、本明細書に記載の機能が実現されてもよい。モジュールまたはユニットとしての様々な特徴の説明は、様々な機能的側面を強調するものであり、そうしたモジュールまたはユニットを、別々のハードウェアまたはソフトウェアのコンポーネントによって実現しなければならないことを必ずしも意味するものではない。むしろ、1つまたは複数のモジュールまたはユニットに関連付けられた機能は、別々のハードウェアもしくはソフトウェアのコンポーネントによって実行されてもよく、または共通もしくは別々のハードウェアもしくはソフトウェアのコンポーネント内に一体化されてもよい。また、1つまたは複数の回路または論理素子に、各技法を完全に実装することもできる。本発明の開示の各技法は、IMD、外部プログラマ、IMDと外部プログラマの組合せ、集積回路(IC)もしくはICのセット、ならびに/またはIMDおよび/もしくは外部プログラマに常駐するディスクリート電気回路を含む、多種多様な装置または機器に実装されてもよい。
【0176】
したがって、保持キャパシタの充電を制御して、ペーシング治療を送達するためのIMDシステムおよび方法が、特定の実施形態を参照して前述することによって提示されてきた。他の例では、本明細書に記載の様々な方法は、本明細書に図示され、記載される、説明に役立つ実例とは異なる順序、または異なる組合せで実行されるステップを含んでもよい。本開示の範囲および添付特許請求の範囲から逸脱することなく、参照された各実施形態に対して、様々な修正が加えられてもよいことが理解される。
【0177】
例1。保持キャパシタ、およびこの保持キャパシタをペーシング電圧振幅にまで充電するように構成された充電回路を備える治療送達回路と、患者の心臓から心臓電気信号を受信するように構成された検知回路と、この検知回路および治療送達回路に結合され、治療送達回路を制御してペーシングパルスを送達し、送達されたこのペーシングパルスに応答して、ペーシングレートに対応する第1のペーシング間隔を開始し、治療送達回路を制御して、この第1のペーシング間隔中に、第1の充電モードに従って保持キャパシタを充電し、少なくともペーシングレートよりも速い閾値レートである、上昇した内因性心拍数を、心臓電気信号から検出し、この上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して、第1の充電モードから第2の充電モードに切り替え、第2の充電モードで動作している間に、第1の内因性心臓事象が心臓電気信号から検知されるのに応答して、第2のペーシング間隔を開始し、治療送達回路を制御して、第2の充電モードに従って第2のペーシング間隔の少なくとも一部分において保持キャパシタの充電を保留するように構成された制御回路とを備える、埋込み医療装置システム。
【0178】
例2。制御回路が、ペーシングレートよりも高いヒステリシスレートで、検知された少なくとも1つの心臓事象を心臓電気信号から検出することによって、上昇した内因性心拍数を検出するようにさらに構成される、例1のシステム。
【0179】
例3。制御回路が、第2の充電モードで動作している間、検知された第1の内因性心臓事象に応答して、キャパシタ充電遅延間隔を開始し、このキャパシタ充電遅延間隔が終了するまで保持キャパシタの充電を保留し、治療送達回路を制御して、キャパシタ充電遅延間隔が終了するのに応答して保持キャパシタを充電するようにさらに構成される、例1または2のいずれか1つのシステム。
【0180】
例4。制御回路が、第2の充電モードで動作している間、第2のペーシング間隔中、およびキャパシタ充電遅延間隔が終了した後、検知された第2の内因性心臓事象に応答してキャパシタ充電を終了するようにさらに構成される、例3のシステム。
【0181】
例5。制御回路が、第2の充電モードで動作している間、キャパシタ充電遅延期間中に第2の内因性心臓事象を検出し、このキャパシタ充電遅延期間中に第2の内因性心臓事象を検出するのに応答して、保持キャパシタを充電することなく、キャパシタ充電遅延間隔を再始動するようにさらに構成される、例3または例4のいずれか1つのシステム。
【0182】
例6。制御回路が、キャパシタ充電時間を決定し、第2のペーシング間隔とキャパシタ充電時間との差に基づいて、キャパシタ充電遅延間隔を設定するようにさらに構成される、例3~6のいずれか1つのシステム。
【0183】
例7。制御回路が、検知回路によって心臓電気信号から検知された、所定の数の連続した内因性心臓事象に応答して、上昇した内因性心拍数を検出し、第2の充電モードで動作している間、上昇したこの内因性心拍数を検出するのに応答して、キャパシタ充電遅延間隔を開始し、このキャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、保持キャパシタの充電を保留するようにさらに構成される、例1~6のいずれか1つのシステム。
【0184】
例8。制御回路が、ヒステリシス間隔を開始し、このヒステリシス間隔中に、第1の内因性心臓事象を検出するのに応答して、上昇した内因性心拍数を検出し、第2の充電モードで動作している間、上昇したこの内因性心拍数を検出するのに応答して、キャパシタ充電遅延間隔を開始し、このキャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、保持キャパシタの充電を保留するように構成される、例1~7のいずれか1つのシステム。
【0185】
例9。制御回路が、第2の充電モードで動作している間、低下した内因性心拍数を検出し、治療送達回路を制御して、低下した内因性心拍数を検出するのに応答して、治療送達回路によるキャパシタ充電の保留を無効化するようにさらに構成される、例1~8のいずれか1つのシステム。
【0186】
例10。制御回路が、第1の内因性心臓事象に応答して、キャパシタ充電遅延間隔を、第2のペーシング間隔よりも短いキャパシタ充電遅延間隔に設定することによって、保持キャパシタの充電を保留し、所定の数のキャパシタ充電遅延間隔中に心臓電気信号から心臓事象を検知することなく、この所定の数のキャパシタ充電遅延間隔が終了するのに応答して、低下した内因性心拍数を検出するようにさらに構成される、例9のシステム。
【0187】
例11。制御回路が、低下した内因性心拍数の判定基準が満たされるのに応答して、この低下した内因性心拍数を検出し、低下した内因性心拍数の低下率を決定し、この低下率に基づいて、低下した内因性心拍数の判定基準を調整するようにさらに構成される、例9または10のいずれか1つのシステム。
【0188】
例12。制御回路が、第1のペーシング治療に対応する第1のペーシング間隔を設定し、第1のペーシング治療とは異なる第2のペーシング治療に対応する第3のペーシング間隔を設定し、第3のペーシング間隔を設定するのに応答して、保持キャパシタの充電の保留を無効化するようにさらに構成される、例1~11のいずれか1つのシステム。
【0189】
例13。制御回路が、心室性期外収縮を検出し、この心室性期外収縮を検出するのに応答して、保持キャパシタの充電の保留を無効化するようにさらに構成される、例1~12のいずれか1つのシステム。
【0190】
例14。制御回路が、心臓電気信号から心室性期外収縮を検出するように構成され、上昇した内因性心拍数を検出することが、この心室性期外収縮を無視することを含む、例1~13のいずれか1つのシステム。
【0191】
例15。制御回路が、上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされるのに応答して、この上昇した内因性心拍数を検出し、上昇した内因性心拍数の上昇率を決定し、この上昇率に基づいて、上昇した内因性心拍数の判定基準を調整するようにさらに構成される、例1~14のいずれか1つのシステム。
【0192】
例16。制御回路が、治療送達回路を制御して、第1の充電モードと第2の充電モードの間の切替えを無効化した状態で、第1の充電モードまたは第2の充電モードのうちの一方のみに従って、保持キャパシタを充電し、所定の時間間隔にわたって実際のペーシング負担を決定し、この実際のペーシング負担とペーシング負担閾値とを比較し、実際のペーシング負担がペーシング負担閾値に到達するのに応答して、第1の充電モードと第2の充電モードの間の切替えを有効化するようにさらに構成される、例1~15のいずれか1つのシステム。
【0193】
例17。患者の状態に相関関係のある信号を生成するように構成されたセンサをさらに備え、制御回路が、センサ信号を監視し、このセンサ信号に基づいて、予想されるペーシング負担の変化を検出し、予想されるペーシング負担の変化を検出するのに応答して、第1の充電モードと第2の充電モードの間の切替えを有効化するようにさらに構成される、例1~16のいずれか1つのシステム。
【0194】
例18。患者の状態に相関関係のある信号を生成するように構成されたセンサをさらに備え、制御回路が、センサ信号を監視し、このセンサ信号に基づいて、ペーシング負担の予想される増加を検出し、ペーシング負担の予想される増加を検出するのに応答して、第2の充電モードから第1の充電モードに切り替えるようにさらに構成される、例1~17のいずれか1つのシステム。
【0195】
例19。制御回路が、検知回路によって心臓電気信号から検知された、内因性心臓事象の速度の変化の傾斜を決定し、この傾斜と傾斜閾値とを比較し、この傾斜が傾斜閾値に到達するのに応答して、第1の充電モードと第2の充電モードとを切り替えるようにさらに構成される、例1~18のいずれか1つのシステム。
【0196】
例20。制御回路が、時刻に基づいて第1の充電モードと第2の充電モードとの間の切替えを有効化するようにさらに構成される、例1~19のいずれか1つのシステム。
例21。治療送達回路が、電気的除細動/除細動のショック電圧振幅にまで充電可能な少なくとも1つの高電圧保持キャパシタを含む高電圧治療回路を備え、制御回路が、治療送達回路を制御して、ペーシングパルスを送達するためのペーシング電圧振幅にまで高電圧保持キャパシタを充電し、上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して、高電圧保持キャパシタの充電を保留するように構成される、例1~20のいずれか1つのシステム。
【0197】
例22。治療送達回路が、複数の低電圧保持キャパシタを含む低電圧治療回路を備え、制御回路が、治療送達回路を制御して、ペーシングパルスを送達するためのペーシング電圧振幅にまで複数の低電圧保持キャパシタのうちの少なくとも2つを充電し、上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して、この少なくとも2つの低電圧保持キャパシタの充電を保留するように構成される、例1~21のいずれか1つのシステム。
【0198】
例23。制御回路が、治療送達回路を制御して、第2のペーシング間隔の開始時に、保持キャパシタの充電とペーシング電圧振幅とを比較することを保留することによって、第2の充電モードに従って保持キャパシタの充電を保留し、低下した内因性心拍数を検出し、この低下した内因性心拍数を検出するのに応答して、第2の充電モードから第1の充電モードに切り替えて戻し、心臓電気信号から検知された第2の内因性心臓事象に応答して第3のペーシング間隔を開始し、第3のペーシング間隔の開始時に、保持キャパシタの充電とペーシング電圧振幅とを比較し、保持キャパシタ電圧がペーシング電圧振幅よりも低いのに応答して保持キャパシタを充電することによって、治療送達回路を制御して、第3のペーシング間隔中に、第1の充電モードに従って保持キャパシタを充電するように構成される、例1~22のいずれか1つのシステム。
【0199】
例24。制御回路が、キャパシタ充電遅延間隔を開始し、治療送達回路を制御して、このキャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、保持キャパシタの充電とペーシング電圧振幅とを比較することを保留することによって、第2の充電モードに従って保持キャパシタの充電を保留し、低下した内因性心拍数を検出し、この低下した内因性心拍数を検出するのに応答して、第2の充電モードから第1の充電モードに切り替えて戻し、心臓電気信号から検知された第2の内因性心臓事象に応答して第3のペーシング間隔を開始し、第3のペーシング間隔全体を通して、保持キャパシタの充電とペーシング電圧振幅とを比較し、保持キャパシタ電圧がペーシング電圧振幅よりも低いのに応答して保持キャパシタを充電することによって、治療送達回路を制御して、第3のペーシング間隔中に、第1の充電モードに従って保持キャパシタを充電するように構成される、例1~23のいずれか1つのシステム。
【0200】
例25。制御回路が、充電遅延間隔後の第1のペーシング間隔中に保持キャパシタを充電し、上昇した内因性心拍数の検出に応答して、第2のペーシング間隔が終了するまでキャパシタの充電を保留するように構成される、例1~24のいずれか1つのシステム。
【0201】
例26。ペーシングパルスを送達するステップと、この送達されたペーシングパルスに応答して、ペーシングレートに対応する第1のペーシング間隔を開始するステップと、第1のペーシング間隔中に、第1の充電モードに従って保持キャパシタを充電するステップと、少なくともペーシングレートよりも速い閾値レートである、上昇した内因性心拍数を、検知された心臓電気信号から検出するステップと、この上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して、第1の充電モードから第2の充電モードに切り替えるステップと、第1の内因性心臓事象が心臓電気信号から検知されるのに応答して、第2のペーシング間隔を開始するステップと、第2の充電モードに従って第2のペーシング間隔の少なくとも一部分において保持キャパシタの充電を保留するステップとを含む、方法。
【0202】
例27。上昇した内因性心拍数を検出するステップが、ペーシングレートよりも高いヒステリシスレートで、検知された少なくとも1つの心臓事象を心臓電気信号から検出するステップを含む、例26の方法。
【0203】
例28。検知された第1の内因性心臓事象に応答して、キャパシタ充電遅延間隔を開始するステップと、このキャパシタ充電遅延間隔が終了するまで保持キャパシタの充電を保留するステップと、キャパシタ充電遅延間隔が終了するのに応答して、保持キャパシタを充電するステップとをさらに含む、例26または27のいずれか1つの方法。
【0204】
例29。第2のペーシング間隔中、およびキャパシタ充電遅延間隔が終了した後に、検知された第2の内因性心臓事象に応答して、キャパシタ充電を終了するステップをさらに含む、例28の方法。
【0205】
例30。キャパシタ充電遅延間隔中に第2の内因性心臓事象を検出するステップと、キャパシタ充電遅延間隔中に第2の内因性心臓事象を検出するのに応答して、保持キャパシタを充電することなくキャパシタ充電遅延間隔を再始動するステップとをさらに含む、例29の方法。
【0206】
例31。キャパシタ充電時間を決定するステップと、第2のペーシング間隔とキャパシタ充電時間との間の差に基づいて、キャパシタ充電遅延間隔を設定するステップとをさらに含む、例29または30のいずれか1つの方法。
【0207】
例32。検知回路によって心臓電気信号から検知された、所定の数の連続した内因性心臓事象に応答して、上昇した内因性心拍数を検出するステップと、上昇したこの内因性心拍数を検出するのに応答して、キャパシタ充電遅延間隔を再始動するステップと、このキャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、保持キャパシタの充電を保留するステップとをさらに含む、例26~31のいずれか1つの方法。
【0208】
例33。ヒステリシス間隔を開始するステップと、このヒステリシス間隔中に、第1の内因性心臓事象を検出するのに応答して、上昇した内因性心拍数を検出するステップと、上昇したこの内因性心拍数を検出するのに応答して、キャパシタ充電遅延間隔を開始するステップと、このキャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、保持キャパシタの充電を保留するステップとをさらに含む、例26~32のいずれか1つの方法。
【0209】
例34。低下した内因性心拍数を検出するステップと、低下したこの内因性心拍数を検出するのに応答して、キャパシタ充電の保留を無効化するステップとをさらに含む、例26~33のいずれか1つの方法。
【0210】
例35。第1の内因性心臓事象に応答して、キャパシタ充電遅延間隔を、第2のペーシング間隔よりも短いキャパシタ充電遅延間隔に設定することによって、保持キャパシタの充電を保留するステップと、所定の数のキャパシタ充電遅延間隔中に心臓電気信号から心臓事象を検知することなく、この所定の数のキャパシタ充電遅延間隔が終了するのに応答して、低下した内因性心拍数を検出するステップとをさらに含む、例34の方法。
【0211】
例36。低下した内因性心拍数を検出するステップが、低下した内因性心拍数の判定基準が満たされるのに応答して、この低下した内因性心拍数を検出するステップと、低下した内因性心拍数の低下率を決定するステップと、この低下率に基づいて、低下した内因性心拍数の判定基準を調整するステップとを含む、例34または35のいずれか1つの方法。
【0212】
例37。第1のペーシング治療に対応する第1のペーシング間隔を設定するステップと、第1のペーシング治療とは異なる第2のペーシング治療に対応する第3のペーシング間隔を設定するステップと、第3のペーシング間隔を設定するのに応答して、保持キャパシタの充電の保留を無効化するステップとをさらに含む、例26~36のいずれか1つの方法。
【0213】
例38。心室性期外収縮を検出するステップと、この心室性期外収縮を検出するのに応答して、保持キャパシタの充電の保留を無効化するステップとをさらに含む、例26~37のいずれか1つの方法。
【0214】
例39。心臓電気信号から心室性期外収縮を検出するステップをさらに含み、上昇した内因性心拍数を検出するステップが、この心室性期外収縮を無視するステップを含む、例26~38のいずれか1つの方法。
【0215】
例40。上昇した内因性心拍数の判定基準が満たされるのに応答して、この上昇した内因性心拍数を検出するステップと、上昇した内因性心拍数の上昇率を決定するステップと、この上昇率に基づいて、上昇した内因性心拍数の判定基準を調整するステップとをさらに含む、例26~39のいずれか1つの方法。
【0216】
例41。第1の充電モードと第2の充電モードの間の切替えを無効化した状態で、第1の充電モードまたは第2の充電モードのうちの一方のみに従って、保持キャパシタの充電を制御するステップと、所定の時間間隔にわたって実際のペーシング負担を決定するステップと、この実際のペーシング負担とペーシング負担閾値とを比較するステップと、実際のペーシング負担がペーシング負担閾値に到達するのに応答して、第1の充電モードと第2の充電モードの間の切替えを有効化するステップとをさらに含む、例26~40のいずれか1つの方法。
【0217】
例42。患者の状態に相関関係のあるセンサ信号を監視するステップと、このセンサ信号に基づいて、予想されるペーシング負担の変化を検出するステップと、予想されるペーシング負担の変化を検出するのに応答して、第1の充電モードと第2の充電モードの間の切替えを有効化するするステップとをさらに含む、例26~41のいずれか1つの方法。
【0218】
例43。患者の状態に相関関係のある信号を生成するように構成されたセンサをさらに備え、患者の状態に相関関係のあるセンサ信号を監視するステップと、このセンサ信号に基づいて、ペーシング負担の予想される増加を検出するステップと、ペーシング負担の予想される増加を検出するのに応答して、第2の充電モードから第1の充電モードに切り替えるステップとを含む、例26~42のいずれか1つの方法。
【0219】
例44。心臓電気信号から検知された、内因性心臓事象の速度の変化の傾斜を決定するステップと、この傾斜と傾斜閾値とを比較するステップと、この傾斜が傾斜閾値に到達するのに応答して、第1の充電モードと第2の充電モードとを切り替えるステップとをさらに含む、例26~43のいずれか1つの方法。
【0220】
例45。制御回路が、時刻に基づいて第1の充電モードと第2の充電モードとの間の切替えを有効化するようにさらに構成される、例26~44のいずれか1つの方法。
例46。保持キャパシタを充電するステップが、電気的除細動/除細動のショック電圧振幅にまで充電可能な高電圧保持キャパシタを、ペーシングパルスを送達するためのペーシング電圧振幅にまで充電するステップと、上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して高電圧保持キャパシタの充電を保留することを含む充電を保留するステップとを含む、例26~45のいずれか1つの方法。
【0221】
例47。保持キャパシタを充電するステップが、少なくとも2つの低電圧保持キャパシタを、ペーシングパルスを送達するためのペーシング電圧振幅にまで充電するステップと、上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して、少なくとも2つの低電圧保持キャパシタの充電を保留することを含む充電を保留するステップとを含む、例26~46のいずれか1つの方法。
【0222】
例48。第2のペーシング間隔の開始時に、保持キャパシタの充電とペーシング電圧振幅とを比較することを保留することによって、第2の充電モードに従って保持キャパシタの充電を保留するステップと、低下した内因性心拍数を検出するステップと、この低下した内因性心拍数を検出するのに応答して、第2の充電モードから第1の充電モードに切り替えて戻すステップと、心臓電気信号から検知された第2の内因性心臓事象に応答して第3のペーシング間隔を開始するステップと、第3のペーシング間隔の開始時に、保持キャパシタの充電とペーシング電圧振幅とを比較し、保持キャパシタ電圧がペーシング電圧振幅よりも低いのに応答して保持キャパシタを充電することによって、第3のペーシング間隔中に、第1の充電モードに従って保持キャパシタを充電するステップとをさらに含む、例26~47のいずれか1つの方法システム。
【0223】
例49。キャパシタ充電遅延間隔を開始するステップと、このキャパシタ充電遅延間隔が終了するまで、保持キャパシタの充電とペーシング電圧振幅とを比較することを保留することによって、第2の充電モードに従って保持キャパシタの充電を保留するステップと、低下した内因性心拍数を検出するステップと、この低下した内因性心拍数を検出するのに応答して、第2の充電モードから第1の充電モードに切り替えて戻すステップと、心臓電気信号から検知された第2の内因性心臓事象に応答して第3のペーシング間隔を開始するステップと、第3のペーシング間隔全体を通して、保持キャパシタの充電とペーシング電圧振幅とを比較し、保持キャパシタ電圧がペーシング電圧振幅よりも低いのに応答して保持キャパシタを充電することによって、第3のペーシング間隔中に、第1の充電モードに従って保持キャパシタを充電するステップとをさらに含む、例26~48のいずれか1つの方法。
【0224】
例50。充電遅延間隔後の第1のペーシング間隔中に保持キャパシタを充電するステップと、上昇した内因性心拍数の検出に応答して、第2のペーシング間隔が終了するまでキャパシタの充電を保留するステップとをさらに含む、例26~49のいずれか1つの方法。
【0225】
例51。埋込み医療装置の制御回路によって実行されると、前記装置が、保持キャパシタ、およびこの保持キャパシタをペーシング電圧振幅にまで充電するように構成された充電回路を備える治療送達回路によって、ペーシングパルスを送達し、送達されたこのペーシングパルスに応答して、ペーシングレートに対応する第1のペーシング間隔を開始し、治療送達回路を制御して、この第1のペーシング間隔中に、第1の充電モードに従って保持キャパシタを充電し、少なくともペーシングレートよりも速い閾値レートである、上昇した内因性心拍数を、検知回路によって受信された心臓電気信号から検出し、この上昇した内因性心拍数を検出するのに応答して、第1の充電モードから第2の充電モードに切り替え、第1の内因性心臓事象が心臓電気信号から検知されるのに応答して、第2のペーシング間隔を開始し、治療送達回路を制御して、第2の充電モードに従って第2のペーシング間隔の少なくとも一部分において保持キャパシタの充電を保留するようになる、1組の命令を含む、持続的でコンピュータ読取り可能な記憶媒体。