(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】プッシュスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/20 20060101AFI20220817BHJP
H01H 13/48 20060101ALI20220817BHJP
H01H 13/52 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H01H13/20 A
H01H13/48
H01H13/52 F
(21)【出願番号】P 2020541160
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019033862
(87)【国際公開番号】W WO2020050122
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2018167073
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小原 啓志
(72)【発明者】
【氏名】前岑 健二
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-059962(JP,A)
【文献】特開2002-124153(JP,A)
【文献】実開昭62-157026(JP,U)
【文献】特開2010-192410(JP,A)
【文献】特開2010-072096(JP,A)
【文献】実開昭60-133440(JP,U)
【文献】特公平06-085288(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と、前記開口部に連通する収納部とを有する筐体と、
前記筐体に取り付けられ、前記収納部の内部に配置される固定接点部材と、
前記収納部の内部で前記固定接点部材よりも前記開口部側に配置され、前記開口部側にドーム状に突出し、反転動作可能なドーム部を有する可動接点部材と、
前記収納部の内部で前記可動接点部材よりも前記開口部側に配置される第1押圧部材であって、一端側に設けられ前記筐体に接する第1支点部、他端側に設けられ前記可動接点部材を押圧する第1作用点部、及び、前記第1支点部と前記第1作用点部との間に設けられる第1力点部とを有する
金属製の剛体で構成される第1押圧部材と
を含み、
前記第1力点部は、押圧方向と反対側に突出する力点凸部を有し、
前記第1作用点部は、前記可動接点部材側に突出する第1凸部を有し、
前記開口部を介して前記第1力点部が
前記可動接点部材の反転動作の方向に押圧されると、前記第1作用点部の
前記第1凸部が前記可動接点部材のドーム部を押圧して反転させて、前記可動接点部材が前記固定接点部材に接触する、プッシュスイッチ。
【請求項2】
開口部と、前記開口部に連通する収納部とを有する筐体と、
前記筐体に取り付けられ、前記収納部の内部に配置される固定接点部材と、
前記収納部の内部で前記固定接点部材よりも前記開口部側に配置され、前記開口部側にドーム状に突出し、反転動作可能なドーム部を有する可動接点部材と、
前記収納部の内部で前記可動接点部材よりも前記開口部側に配置される第1押圧部材であって、一端側に設けられ前記筐体に接する第1支点部、他端側に設けられ前記可動接点部材を押圧する第1作用点部、及び、前記第1支点部と前記第1作用点部との間に設けられる第1力点部とを有
し、導電性を有する第1押圧部材と
を含み、前記開口部を介して前記第1力点部が押圧されると、前記第1作用点部の第1凸部が前記可動接点部材のドーム部を押圧して反転させて、前記可動接点部材が前記固定接点部材に接触
し、
前記第1押圧部材は、前記開口部とは反対側に突出する第1弾性片部を有し、
前記固定接点部材は、前記可動接点部材と接離可能な第1固定接点部と、前記第1弾性片部と接離可能な第2固定接点部とを有し、
前記開口部を介して前記第1力点部が押圧されると、前記第1弾性片部と前記第2固定接点部とが接触した後に、前記第1作用点部の第1凸部が前記可動接点部材のドーム部を押圧して反転させて、前記可動接点部材と前記第1固定接点部とが接触する、プッシュスイッチ。
【請求項3】
前記第1支点部は、前記第1力点部に対して、前記開口部とは反対側に突出している、請求項1又は2記載のプッシュスイッチ。
【請求項4】
前記第1支点部は、前記第1支点部、前記第1作用点部、及び前記第1力点部が配置される第1方向に
平面視で直交する第2方向において、所定の長さを有するリブ形状を有する、請求項1乃至3のいずれか一項記載のプッシュスイッチ。
【請求項5】
前記第1支点部は、前記第1支点部、前記第1作用点部、及び前記第1力点部が配置される第1方向に
平面視で直交する第2方向において、所定の長さの区間にわたって複数設けられる、請求項1乃至3のいずれか一項記載のプッシュスイッチ。
【請求項6】
前記開口部を覆うように配置されるインシュレータをさらに含む、請求項1乃至
5のいずれか一項記載のプッシュスイッチ。
【請求項7】
前記インシュレータは、平面視で前記第1力点部と重なる位置に配置され、前記筐体から離れる方向に突出し、前記第1力点部に接触するように撓み変形可能な突出部であって、撓み変形していない状態では、前記第1力点部とは離間する突出部を有する、請求項
6記載のプッシュスイッチ。
【請求項8】
前記突出部は、平面視で前記筐体の中央に位置し、
前記第1押圧部材の前記第1作用点部は、前記第1支点部と前記第1作用点部とを結ぶ方向において、平面視で前記筐体の中央よりも前記第1支点部とは反対側に位置する、請求項7記載のプッシュスイッチ。
【請求項9】
開口部と、前記開口部に連通する収納部とを有する筐体と、
前記筐体に取り付けられ、前記収納部の内部に配置される固定接点部材と、
前記収納部の内部で前記固定接点部材よりも前記開口部側に配置され、前記開口部側にドーム状に突出し、反転動作可能なドーム部を有する可動接点部材と、
前記収納部の内部で前記可動接点部材よりも前記開口部側に配置される第1押圧部材であって、一端側に設けられ前記筐体に接する第1支点部、他端側に設けられ前記可動接点部材を押圧する第1作用点部、及び、前記第1支点部と前記第1作用点部との間に設けられる第1力点部とを有
し、導電性を有する第1押圧部材と
、
前記収納部の内部で前記第1押圧部材よりも前記開口部側に配置される第2押圧部材であって、一端側に設けられ前記筐体に接する第2支点部、他端側に設けられ前記第1押圧部材の前記第1力点部を押圧する第2作用点部、及び、前記第2支点部と前記第2作用点部との間に設けられる第2力点部とを有する第2押圧部材と
を含み、前記開口部を介して前記第1力点部が押圧されると、前記第1作用点部の第1凸部が前記可動接点部材のドーム部を押圧して反転させて、前記可動接点部材が前記固定接点部材に接触
し、
前記開口部を介して前記第2力点部が押圧されると、前記第2作用点部が前記第1力点部を押圧し、前記第1作用点部の第1凸部が前記可動接点部材のドーム部を押圧して反転させて、前記可動接点部材が前記固定接点部材に接触する、プッシュスイッチ。
【請求項10】
前記第2作用点部は、前記第1力点部を押圧する第2凸部を有する第2作用点部を有する、請求項
9記載のプッシュスイッチ。
【請求項11】
前記第2押圧部材の前記第2支点部は、前記可動接点部材のドーム部に対して、前記第1押圧部材の前記第1支点部とは反対側に配置され、
前記第1押圧部材の前記第1作用点部と、前記第2押圧部材の前記第2力点部とは、平面視で前記可動接点部材のドーム部と重なる位置に配置される、請求項
10記載のプッシュスイッチ。
【請求項12】
前記収納部の内部に一部が収納され、前記第2押圧部材よりも前記開口部側に配置されるステム部材であって、前記第2押圧部材の前記第2力点部を押圧するステム部材をさらに含み、
前記ステム部材が押圧されると、前記ステム部材が前記第2力点部を押圧し、前記第2作用点部が前記第1力点部を押圧し、前記第1作用点部が前記可動接点部材のドーム部を押圧して反転させて、前記可動接点部材が前記固定接点部材に接触する、請求項
10又は11記載のプッシュスイッチ。
【請求項13】
前記ステム部材は、前記第2力点部を押圧する第3凸部を有する、請求項
12記載のプッシュスイッチ。
【請求項14】
前記第2押圧部材は、前記第2力点部において、前記開口部側に突出する第2弾性片部を有し、前記第2弾性片部が前記ステム部材の前記第2凸部によって前記第1押圧部材側に押圧されることによって、前記第2力点部が押圧される、請求項
13記載のプッシュスイッチ。
【請求項15】
前記ステム部材は、前記第3凸部とは反対側に突出するボタン部を有する、請求項
13又は
14記載のプッシュスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、接点が露出した絶縁体と、一方の接点上に接置された電気接点部材と、電気接点部材に載置された押圧部材からなり、押圧部材を押圧することにより電気接点部材が変形して他方の接点と接触し、接点と接点とが導通状態となるプッシュスイッチにおいて、電気接点部材はステンレス鋼からなる薄板状の基板表面に、ニッケルメッキ層を形成し、ニッケルメッキ層上にフラッシュメッキによって銅メッキ層を形成し、銅メッキ層上には銀メッキ層を形成した金属板を加工した電気接点部材であることを特徴とするプッシュスイッチがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで従来のプッシュスイッチにおいて、ショートストローク化を図るためにドーム状の可動接点のストロークを小さくすると、プッシュスイッチがオフの絶縁状態における固定接点と可動接点との距離が近づくため、耐電圧及び絶縁抵抗が小さくなり、絶縁状態を保持することが困難になるおそれがある。
【0005】
そこで、ショートストローク化と、電気的な安定性とを両立したプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態のプッシュスイッチは、開口部と、前記開口部に連通する収納部とを有する筐体と、前記筐体に取り付けられ、前記収納部の内部に配置される固定接点部材と、前記収納部の内部で前記固定接点部材よりも前記開口部側に配置され、前記開口部側にドーム状に突出し、反転動作可能なドーム部を有する可動接点部材と、前記収納部の内部で前記可動接点部材よりも前記開口部側に配置される第1押圧部材であって、一端側に設けられ前記筐体に接する第1支点部、他端側に設けられ前記可動接点部材を押圧する第1作用点部、及び、前記第1支点部と前記第1作用点部との間に設けられる第1力点部とを有する金属製の剛体で構成される第1押圧部材とを含み、前記第1力点部は、押圧方向と反対側に突出する力点凸部を有し、前記第1作用点部は、前記可動接点部材側に突出する第1凸部を有し、前記開口部を介して前記第1力点部が前記可動接点部材の反転動作の方向に押圧されると、前記第1作用点部の前記第1凸部が前記可動接点部材のドーム部を押圧して反転させて、前記可動接点部材が前記固定接点部材に接触する。
【発明の効果】
【0007】
ショートストローク化と、電気的な安定性とを両立したプッシュスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1のプッシュスイッチ100を示す斜視図である。
【
図4】
図1におけるA1-A1矢視断面を示す図である。
【
図5】
図1におけるB1-B1矢視断面を示す図である。
【
図6】プッシュスイッチ100のFS特性を示す図である。
【
図7】実施の形態2のプッシュスイッチ200を示す斜視図である。
【
図10】金属プレート220A、220B、220Cの構造を示す図である。
【
図13】プッシュスイッチ200のFS特性を示す図である。
【
図14】実施の形態3のプッシュスイッチ300を示す斜視図である。
【
図16A】押圧部材340B及びステム350を示す図である。
【
図16B】押圧部材340B及びステム350を示す図である。
【
図19】プッシュスイッチ300のFS(Force-Stroke)特性を示す図である。
【
図20】実施の形態3の変形例のプッシュスイッチ300Aを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のプッシュスイッチを適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1のプッシュスイッチ100を示す斜視図である。
図2は、プッシュスイッチ100の分解図である。以下では、XYZ座標系を定義して説明する。また、以下では、説明の便宜上、Z軸負方向側を下側又は下、Z軸正方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。
【0011】
プッシュスイッチ100は、筐体110、金属プレート120A、120B、メタルコンタクト130A、リーフスプリング130B、押圧部材140、及びインシュレータ150を含む。
【0012】
以下では、押圧部材140については、
図2に加えて
図3を用いて説明する。
図3は、押圧部材140の裏面側を示す図である。また、断面構造については、
図1におけるA1-A1矢視断面を示す
図4と、B1-B1矢視断面を示す
図5とを用いて説明する。
【0013】
プッシュスイッチ100は、オフ(非導通状態)の時には、メタルコンタクト130Aは金属プレート120B(周辺固定接点121B)には接触しているが、金属プレート120A(中央固定接点121A)には接触していない。すなわち、金属プレート120Aと金属プレート120Bとは電気的に接続されていない状態である。また、プッシュスイッチ100は、インシュレータ150を下方向に押圧することによって、押圧部材140およびリーフスプリング130Bを介してメタルコンタクト130Aを押圧し、メタルコンタクト130Aが反転動作を行い金属プレート120Aに接触して、金属プレート120Aと金属プレート120Bとはメタルコンタクト130Aを介して電気的に接続され、オン(導通状態)になるスイッチである。メタルコンタクト130Aを金属プレート120Aに接触させるためにインシュレータ150を押すストロークは、非常に短く、0.05mmである。また、メタルコンタクト130Aを反転動作させるのに必要な操作荷重は、一例として3.3Nである。この操作荷重は、誤ってインシュレータ150に接触した程度では、プッシュスイッチ100をオンにすることが困難な程度の荷重である。すなわち、誤操作を抑制できる荷重である。
【0014】
筐体110は、樹脂製であり、金属プレート120A、120Bを保持する。筐体110と金属プレート120A、120Bは、インサート成型によって一体的に作製される。筐体110は、開口部111と、開口部111に連通する収納部112とを有する。開口部111は、Z軸正方向側の面に形成されている。
【0015】
収納部112は、開口部から下側に向かって形成されており、X軸負方向側の収納部112Aと、X軸正方向側の収納部112Bとを有する。収納部112Bは、収納部112Aよりも深く、収納部112Aおよび収納部112Bの底面部は段差を形成している。
【0016】
収納部112Bの底部には金属プレート120Aの中央固定接点121Aと、金属プレート120Bの周辺固定接点121Bとが配置され、収納部112Bに表出している。収納部112Bには、中央固定接点121Aと周辺固定接点121Bの上側に、メタルコンタクト130Aとリーフスプリング130Bがこの順に重ねて配置され(
図4参照)、その上に押圧部材140が収納部112A及び112Bにわたって収納される。
【0017】
金属プレート120Aは、中央固定接点121Aと、端子122Aとを有する。金属プレート120Aは、一例として銅製である。中央固定接点121Aは、インシュレータ150が下方向に押圧されていない状態(
図4参照)では、メタルコンタクト130Aには接触しておらず、インシュレータ150が下方向に押圧された状態(
図5参照)では、メタルコンタクト130Aに接触する。端子122Aは、筐体110のX軸負方向側に突出している。
【0018】
金属プレート120Bは、周辺固定接点121Bと、端子122Bとを有する。金属プレート120Bは、一例として銅製である。周辺固定接点121Bは、インシュレータ150が下方向に押圧されていない状態(
図4参照)において、メタルコンタクト130AのX軸正方向側の端部に接触しており、インシュレータ150が下方向に押圧された状態(
図5参照)においてもメタルコンタクト130Aに接触する。端子122Bは、筐体110のX軸正方向側に突出している。
【0019】
メタルコンタクト130Aは、金属部材からなる金属ばねであり、中央部に上側にドーム状に突出し反転動作可能なドーム部131Aを有する(
図2、4参照)。メタルコンタクト130Aは、可動接点部材の一例である。メタルコンタクト130Aは、一例として、ステンレス製である。
【0020】
ドーム部131Aは、上側から押圧されるとドーム部131Aが反転動作して、下側に凸になる(
図5参照)。この状態で、メタルコンタクト130Aは、中央固定接点121Aに接触し、中央固定接点121Aと周辺固定接点121Bを導通させる。メタルコンタクト130Aは、下面に銀めっきが施されている。下面は、電流が流れる中央固定接点121A及び周辺固定接点121Bと接触するからである。また、ドーム部131Aが反転動作することで、操作者に操作感触を与えることができる。
【0021】
メタルコンタクト130Aは、平面視で円形に成型された板金をパンチング処理でドーム部131Aを作製してから、Y軸正方向側とY軸負方向側とをX軸に沿って切除することによって作製される。このため、メタルコンタクト130Aは、Y軸正方向側とY軸負方向側とをX軸に沿った切除部132Aを有する。切除部132Aは、プッシュスイッチ100をY軸方向に小型化するために形成されている。
【0022】
リーフスプリング130Bは、メタルコンタクト130Aから銀めっきを取り除いた構成を有する。このため、リーフスプリング130Bは、ドーム部131Bと切除部132Bを有する。
【0023】
押圧部材140は、収納部112の収納部112A及び112Bの内部にわたって収納される(
図4参照)。押圧部材140は、第1押圧部材の一例である。押圧部材140は、平板状の金属部材であり(
図2、3、4参照)、本体部141、支点部142(第1支点部の一例)、作用点部143(第1作用点部の一例)、及び、力点部144(第1力点部の一例)を有する。押圧部材140は、梃子の様な動作が可能な部材であり、支点部142、作用点部143、及び力点部144は、それぞれ、梃子の支点、作用点、及び力点として機能する。押圧部材140は、一例として板金加工で作製される。押圧部材140は、一例としてステンレス製である。
【0024】
押圧部材140は、梃子の原理を利用するため、撓みが少なく、ある程度の高い剛性を有することが必要である。このため、押圧部材140は、金属で構成され、Y軸方向にある程度広い幅を有するとともに、Z軸方向の厚さもある程度厚くされている。
【0025】
本体部141は、作用点部143の下側への変位を得やすくするために、力点部144に対して、支点部142及び作用点部143が下側に湾曲するように反った形状を有する。
【0026】
支点部142は、X軸負方向側に設けられ、収納部112Aの底面に接する。支点部142は、十分なY軸方向の幅を有する。これは、押圧部材140が動くときに支点部142がY軸方向において傾きにくくすることで、リーフスプリング130B及びメタルコンタクト130Aに効率的に力を伝達できるようにするためである。なお、ここでは、支点部142は、押圧部材140のY軸方向の幅の全体に設けられているが、何本かに分割されていてもよい。
【0027】
また、支点部142は、Z軸負方向側に突出している。このように支点部142をZ軸負方向側に突出させることにより、押圧部材140を収納部112の底面からZ軸正方向側に離すことができ、押圧部材140を動かし易くなる。
【0028】
作用点部143は、X軸正方向側に設けられ、メタルコンタクト130Aを押圧する凸部143A(第1凸部の一例)を有する。凸部143Aは、
図3に示すように、平面視で円形で、下面が平坦であり、円錐台状の形状を有する。
【0029】
凸部143Aは、リーフスプリング130Bの上面に接触するように配置されており、押圧部材140が梃子の原理で動作して作用点部143が下方向に押圧されると、リーフスプリング130B及びメタルコンタクト130Aを下側に押圧する。リーフスプリング130B及びメタルコンタクト130Aが反転動作すると、メタルコンタクト130Aは、中央固定接点121Aに接触する。
【0030】
力点部144は、支点部142と作用点部143との間に設けられ、凸部144Aを有する。凸部144Aは、半球体状に突出している。インシュレータ150が押圧されていない状態では、凸部144Aとインシュレータ150は接触しておらず、間には空隙があるが、インシュレータ150が下側に押圧されると、凸部144Aに接触し、凸部144Aが下側に押圧される。これは、梃子の原理を利用した押圧部材140の力点に力が加えられた状態である。
【0031】
インシュレータ150は、樹脂シートからなり筐体110の上面に接着され、開口部111を覆っている。インシュレータ150は、平面視における中央に位置する突出部151を有する(
図1、2、4参照)。突出部151は、樹脂シートを加熱加工することによって形成される。
【0032】
筐体110の収納部112に、金属プレート120A、120B、メタルコンタクト130A、リーフスプリング130B、及び押圧部材140が収納されて、インシュレータ150が筐体110に接着される。インシュレータ150が筐体110に接着されることで、金属プレート120A、120B、メタルコンタクト130A、リーフスプリング130B、押圧部材140は、収納部112内にガタつかないように保持される。
【0033】
突出部151は、平面視で力点部144と重なる位置に配置され、力点部144に接触するように撓み変形可能であり(
図5参照)、
図4に示すように撓み変形していない状態では、力点部144とは離間している。
【0034】
図6は、プッシュスイッチ100のFS(Force-Stroke)特性を示す図である。横軸がインシュレータ150を下方に押し込むストローク(S)であり、縦軸がインシュレータ150を下方に押し込む際に必要な力(F)である。力(F)は操作荷重である。
【0035】
図6に示すように、ストロークがゼロの位置からインシュレータ150を押し込むと、S1までは操作荷重は緩やかに立ち上がり、非常に小さな値になる。これは、インシュレータ150の突出部151を押し込むために必要な操作荷重が非常に小さいことを表している。
【0036】
S1は、0.1mmである。プッシュスイッチ100は、インシュレータ150の上にさらにボタン等を取り付けることを想定している。ボタンとは、例えば車室内の押しボタン型スイッチや、電子機器等の押しボタンスイッチ等の実際に押圧操作される部品である。
【0037】
例えば、携帯機器のように振動が加わりやすい製品において、インシュレータ150とボタンとの間に隙間があると、製品に振動が加わるとボタンにも振動が伝わり異音が発生する恐れがある。そのため、未操作時にはボタンを他部品に押し付けることで異音の発生を抑えることがある。その様な製品に用いられる場合には、ボタンと他部品との間に隙間が生じないように、ボタンで予めインシュレータ150を少し押圧した状態(プリテンションが掛かった状態)で取り付けられることがある。この様な場合には、インシュレータ150がS1以下のストロークだけ押された状態にされる。このため、押しボタンスイッチを操作する際には、ストロークがS1から始まる場合もある。
【0038】
ストロークがS1に到達すると、インシュレータ150が力点部144の凸部144Aに接触し、ストロークがS1を越えると、押圧部材140がメタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bを押圧し、ストロークがS2に到達した時点で操作荷重はF3(極大値)になり、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bが反転する。この時に急激に操作荷重が低下し始めることで、利用者の指先にはクリック感が提供される。さらにインシュレータ150を押し続けると、ストロークがS3に達したところで操作荷重はF2に低下する。このときに、メタルコンタクト130Aは中央固定接点121Aに接触し、プッシュスイッチ100はオン状態に切り替わる。
【0039】
プッシュスイッチ100は、梃子の原理を利用するために、
図4及び
図5に示すように、一例として、支点部142と作用点部143との間が1mm、作用点部143と力点部144との間が1mmに設定されている。
【0040】
このため、プッシュスイッチ100をオンにするためにインシュレータ150を押圧するストロークは、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bを単独で押圧して反転させるために必要なストロークの1/2になる。単独でとは、押圧部材140を用いずに、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bを直接押圧することを意味する。
【0041】
また、プッシュスイッチ100をオンにするためにインシュレータ150を押圧するのに必要な操作荷重は、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bを単独で押圧して反転させるために必要な操作荷重の2倍になる。
【0042】
ここで、メタルコンタクト130Aを単独で押圧して反転させるために必要なストロークは、0.1mmである。これは、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bを重ねた状態でも同一である。
【0043】
メタルコンタクト130Aは、プッシュスイッチ100がオフの状態では、中央固定接点121Aに接続されておらず、絶縁状態を保っている。この状態での中央固定接点121Aとメタルコンタクト130Aの間隔は、0.1mmである。0.1mmあれば、メタルコンタクト130Aと中央固定接点121Aとの絶縁状態を保持できることが分かっている。メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bが反転して0.1mm下方に動くと、メタルコンタクト130Aが中央固定接点121Aに接触する。
【0044】
これに対して、プッシュスイッチ100をオンにするためにインシュレータ150を押圧するストロークは、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bを単独で押圧して反転させるために必要なストロークの1/2になるため、0.05mmである。
【0045】
すなわち、プッシュスイッチ100は、梃子の原理を利用することにより、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bのストロークを0.1mmだけ確保しつつ、オンするのに必要なストロークを短縮することができる。
【0046】
ここで、このような梃子の原理を利用せずに、メタルコンタクト130Aを単独で押圧して反転させるために必要なストロークを0.05mmにすると、プッシュスイッチ100がオフの状態での中央固定接点121Aとメタルコンタクト130Aの間隔は、0.05mmになり、耐電圧及び絶縁抵抗が小さくなるため、絶縁状態を保持するのが困難になるおそれがある。
【0047】
また、メタルコンタクト130Aのストロークを0.05mmにすると、インシュレータ150のプリテンションを掛けた状態の設定が困難になるおそれがある。
【0048】
また、プッシュスイッチ100をオンにするためにインシュレータ150を押圧するのに必要な操作荷重は、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bを単独で押圧して反転させるために必要な操作荷重の2倍になるため、プッシュスイッチ100を操作する際のクリック感を2倍にすることができる。
【0049】
したがって、実施の形態1によれば、ショートストローク化と、電気的な安定性とを両立したプッシュスイッチを提供することができる。また、操作時のクリック感を増大させることができるので、操作感の向上を図ることができる。
【0050】
また、梃子の原理を利用することにより、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bは操作荷重が小さいものを使用してもプッシュスイッチとして必要な操作荷重に対応しやすくなる。一般的に操作荷重が重いメタルコンタクト130Aよりも、操作荷重が軽いメタルコンタクト130Aよりも動作寿命が長い傾向にある。すなわち、プッシュスイッチ100の動作寿命を長くすることができる。
【0051】
また、本実施形態においては、所定の操作荷重を確保するために、メタルコンタクト130Aにリーフスプリング130Bを重ねることで対応しているが、求められる操作荷重が軽くてもよい場合には、枚数を少なくする(リーフスプリング130Bを省く)ことも可能となる。
【0052】
また、押圧部材140は金属板金をプレス加工することで作製できるので、支点部142、作用点部143、力点部144等の各部を容易に形成することができる。
【0053】
なお、以上では、支点部142と作用点部143との間を1mm、作用点部143と力点部144との間を1mmに設定する形態について説明したが、これらの距離を調整することにより、インシュレータ150のストロークと押圧荷重を自在に設定することができる。
【0054】
また、以上では、プッシュスイッチ100がメタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bを含む形態について説明したが、メタルコンタクト130Aのみを含む構成であってもよい。
【0055】
また、以上では、押圧部材140が凸部143A及び凸部144Aを含む形態について説明したが、押圧部材140は、凸部143A及び/又は凸部144Aを含まなくてもよい。
【0056】
<実施の形態2>
図7は、実施の形態2のプッシュスイッチ200を示す斜視図である。
図8は、プッシュスイッチ200の分解図である。
【0057】
プッシュスイッチ200は、筐体210、金属プレート220A、220B、220C、メタルコンタクト130A、リーフスプリング130B、押圧部材240、及びインシュレータ150を含む。
【0058】
以下では、押圧部材240については、
図8に加えて
図9を用いて説明し、金属プレート220A、220B、220Cについては、
図8に加えて
図10を用いて説明する。
図9は、押圧部材240の裏面側を示す図であり、
図10は、金属プレート220A、220B、220Cの構造を示す図である。
図10では筐体210を透過的に示す。また、断面構造については、
図7におけるA-A矢視断面を示す
図11A~
図11Cと、B-B矢視断面を示す
図12A~
図12Cとを用いて説明する。
【0059】
実施の形態2のプッシュスイッチ200は、実施の形態1のプッシュスイッチ100の押圧部材140に、ばね接点245を追加した構成を有する。このため、実施の形態1のプッシュスイッチ100と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
筐体210は、樹脂製であり、金属プレート220A、220B、220Cを保持する。筐体210と金属プレート220A、220B、220Cは、インサート成型によって一体的に作製される。筐体210は、開口部111と、開口部111に連通する収納部212とを有する。開口部111は、Z軸正方向側の面に形成されている。
【0061】
収納部212は、開口部から下側に向かって形成されており、X軸負方向側の収納部212Aと、X軸正方向側の収納部212Bとを有する。収納部212Bは、収納部212Aよりも深い。
【0062】
収納部212Bの底部には金属プレート220Aの中央固定接点221Aと、金属プレート220Bの周辺固定接点221Bと、プリセンス端子223Bとが配置され、収納部212Bに表出している。収納部212Bには、中央固定接点221Aと周辺固定接点221Bの上側に、メタルコンタクト130Aとリーフスプリング130Bがこの順に重ねて配置され(
図11A参照)、その上に押圧部材240が収納部212A及び212Bにわたって収納される。また、押圧部材240のばね接点245は、プリセンス端子223Bの上に位置している。
【0063】
金属プレート220Aは、中央固定接点221Aと、端子222Aとを有する。金属プレート220Aは、実施の形態1の金属プレート120Aと比べると、金属プレート220Cが追加されたことによって平面的な形状が異なるが、機能的には実施の形態1の金属プレート120Aと同様であり、中央固定接点221Aと端子222Aは、実施の形態1の中央固定接点121Aと端子122Aにそれぞれ対応する。
【0064】
金属プレート220Bは、周辺固定接点221Bと、端子222Bと、プリセンス端子223Bとを有する。金属プレート220Bは、実施の形態1の金属プレート120Bの形状を変更し、端子222Bを2個に増やすとともに、2個のプリセンス端子223Bを追加した構成を有する。このため、周辺固定接点221Bと端子222Bとは、機能的には、それぞれ、実施の形態1の周辺固定接点221Bと端子222Bに相当する。
【0065】
2個の端子222Bは、周辺固定接点221BのY軸正方向側の端部とY軸負方向側の端部とから、それぞれ、X軸正方向側に伸延するように延在している。また、2個のプリセンス端子223Bは、周辺固定接点221BのY軸正方向側の端部とY軸負方向側の端部とから、それぞれ、X軸負方向側に伸延するように延在している。このため、金属プレート220Bは、平面視でH型の形状を有する。
【0066】
金属プレート220Cは、端子221Cと端子222Cとを有する。金属プレート220Cは、一例として銅製である。端子221Cは、収納部212Aの底面に露出し、収納部212Aの内部で押圧部材240の支点部142の下面に接触している。端子222Cは、筐体210のX軸負方向側から突出している。端子221Cは、端子222CよりもZ軸正方向側に位置する。
【0067】
押圧部材240は、収納部212の収納部212A及び212Bの内部にわたって収納される(
図11A参照)。押圧部材240は、第1押圧部材の一例である。本体部241、支点部142、作用点部143、力点部144、及びばね接点245を有する。押圧部材240は、梃子の様な動作が可能な部材である。押圧部材240は、一例として板金加工で作製される。
【0068】
本体部241は、実施の形態1の押圧部材140の本体部141と同様であるが、X軸方向における中央部のY軸正方向側とY軸負方向側とに、ばね接点245が設けられている。また、本体部241は、作用点部143の下側への変位を得やすくするために、力点部144に対して、支点部142及び作用点部143が下側に湾曲するように反った形状を有する。
【0069】
ばね接点245は、本体部241のX軸方向における中央部のY軸正方向側とY軸負方向側とから、X軸正方向側かつZ軸負方向側に(斜め下方向に)延在している。ばね接点245は、Z軸方向に変位可能であり、Z軸方向の変位に対して復元力を発揮する。ばね接点245は、第1弾性片部の一例である。
【0070】
【0071】
図11B及び
図12Bは、インシュレータ150が少し押されて、ばね接点245の先端が金属プレート220Bのプリセンス端子223Bに接続され、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bは反転しておらず、メタルコンタクト130Aは、金属プレート220Aの中央固定接点221Aに接触していない状態である。
【0072】
押圧部材240の支点部142は、金属プレート220Cの端子221Cに接触しているため、この状態では、押圧部材240によって金属プレート220Bのプリセンス端子223Bと、金属プレート220Cの端子221Cとが接続された状態である。すなわち、端子222Bと端子222Cとが導通することになる。
【0073】
このように、メタルコンタクト130Aが金属プレート220Aの中央固定接点221Aに接触する前に、ばね接点245の先端が金属プレート220Bのプリセンス端子223Bに接続されることにより、インシュレータ150が少し押されているが、メタルコンタクト130Aが中央固定接点221Aに接触していない状態を検出することができる。
【0074】
このような構成により、プッシュスイッチ200の端子222A、222B、及び222Cに接続された電子機器では、インシュレータ150が少し押されて端子222Bと端子222Cとが導通しているが、端子222Aと端子222Cとが接続されていない状態(メタルコンタクト130Aが中央固定接点221Aに接触する前の状態)を検出(プリセンス)できるようになっている。
【0075】
図11C及び
図12Cは、インシュレータ150がさらに押し込まれて、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bが反転し、メタルコンタクト130Aが金属プレート220Aの中央固定接点221Aに接触した状態である。この状態では、ばね接点245の先端は、金属プレート220Bのプリセンス端子223Bに接続された状態に保持される。この状態では、端子222Aと端子222Cとが導通することになる。
【0076】
従って、プッシュスイッチ200は、
図11B及び
図12Bに示すように、インシュレータ150が少し押されて端子222Bと端子222Cとが導通した状態と、インシュレータ150がさらに押し込まれて、端子222Aと端子222Cとが導通した状態との2段階の状態を実現することができる。
【0077】
図13は、プッシュスイッチ200のFS(Force-Stroke)特性を示す図である。ストロークがゼロの位置からS21までの区間は、実施の形態1のプッシュスイッチ100におけるストロークがゼロの位置からS1までの区間(
図6参照)と同一である。すなわち、ストロークS1とS21は等しく、操作荷重F21とF1は等しい。
【0078】
ストロークがS21を越えてS22に達すると、ばね接点245がプリセンス端子223Bに接触し、端子222Bと端子222Cとが導通する。このときの操作荷重はF23である。
【0079】
インシュレータ150がさらに押し込まれると、押圧部材240がメタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bを押圧し、ストロークがS23に到達した時点で操作荷重はF24(極大値)になり、メタルコンタクト130A及びリーフスプリング130Bが反転する。この時に急激に操作荷重が低下し始めることで、利用者の指先にはクリック感が提供される。さらにインシュレータ150を押し続けると、ストロークがS24に達したところで操作荷重はF22に低下する。このときに、メタルコンタクト130Aは中央固定接点221Aに接触し、プッシュスイッチ100はオン状態に切り替わる。
【0080】
なお、ばね接点245の変位量を調整することにより、ストロークS22を調整可能であり、ばね接点245の弾性力を調整することにより、操作荷重F23を調整可能である。
【0081】
以上より、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、ショートストローク化と、電気的な安定性とを両立したプッシュスイッチ200を提供することができる。また、操作時のクリック感を増大させることができるので、操作感の向上を図ることができる。
【0082】
また、ばね接点245を用いることにより、2段階の接続状態を実現したプッシュスイッチ200を提供することができる。また、実施の形態2のプッシュスイッチ200は、実施の形態1のプッシュスイッチ100と同様に上記以外の効果も奏し、同様の変形が可能である。
【0083】
なお、ばね接点245は、少なくとも1個あればよく、3個以上設けてもよい。
【0084】
<実施の形態3>
図14は、実施の形態3のプッシュスイッチ300を示す斜視図である。
図15は、プッシュスイッチ300の分解図である。
【0085】
プッシュスイッチ300は、筐体310、金属プレート320A、320B、メタルコンタクト130A、押圧部材340A、340B、ステム350、及びフレーム360を含む。以下では、押圧部材340B及びステム350については、
図14、
図15に加えて
図16A及び
図16Bを用いて説明する。また、断面構造と動作については、
図14におけるA3-A3矢視断面を示す
図17、
図18を用いて説明する。
【0086】
プッシュスイッチ300は、ステム350を下方向に押圧することによって、メタルコンタクト130Aが金属プレート320Aに接触して、オン(導通状態)になるスイッチである。メタルコンタクト130Aを金属プレート320Aに接触させるためのステム350を押すストロークは、非常に短く、0.1mmである。また、ステム350を押すのに必要な操作荷重は、一例として9Nである。なお、メタルコンタクト130Aは、実施の形態1、2のものに比べてサイズが大きく、メタルコンタクト130A自体のストロークは0.3mmである。すなわち、メタルコンタクト130A自体のストロークに対して、ステム350を押すストロークは1/3に減らされている。
【0087】
プッシュスイッチ300は、ショートストローク化と、操作荷重の増大化とを実現した構成を有する。
【0088】
筐体310は、樹脂製であり、金属プレート320A、320Bを保持する。筐体310と金属プレート320A、320Bは、インサート成型によって一体的に作製される。筐体310は、開口部311と、開口部311に連通する収納部312とを有する。開口部311は、Z軸正方向側の面に形成されている。
【0089】
収納部312は、開口部311から下側に向かって形成されており、押圧部材340Aの支点部342Aを支持する支持部312Aと、押圧部材340Bの支点部342Bを支持する支持部312Bとを有する。支持部312A、312Bは、収納部312の周りの筐体310の壁が内側に突出した部分である。支持部312Aは、X軸正方向側にあり、支持部312Bは、X軸負方向側にある。支持部312Aは、支持部312Bよりも低い位置にある。
【0090】
収納部312の底部には金属プレート320Aの中央固定接点321Aと、金属プレート320Bの周辺固定接点321Bとが配置され、収納部312に表出している。なお、中央固定接点321Aは収納部312の底部の中央位置に、周辺固定接点321Bは収納部312の底部の四隅位置に、配置されている。収納部312には、中央固定接点321Aと周辺固定接点321Bの上側に、メタルコンタクト130A、押圧部材340A、340Bが収納される。
【0091】
金属プレート320Aは、中央固定接点321Aと、端子322Aとを有する。金属プレート320Aは、一例として銅製である。中央固定接点321Aは、ステム350が下方向に押圧されていない状態(
図17参照)では、メタルコンタクト130Aには接触しておらず、ステム350が下方向に押圧された状態(
図18参照)では、メタルコンタクト130Aに接触する。端子322Aは、筐体310のX軸負方向側に突出している。
【0092】
金属プレート320Bは、周辺固定接点321Bと、端子322Bとを有する。金属プレート320Bは、一例として銅製である。周辺固定接点321Bは、平面視で中央固定接点321Aを囲むようにC字型に延設された周辺固定接点321Bの一部が収納部312の底部の四隅に露出して設けられている。周辺固定接点321Bは、ステム350が下方向に押圧されていない状態において、メタルコンタクト130Aの端部に接触しており、ステム350が下方向に押圧された状態(
図18参照)においてもメタルコンタクト130Aに接触する。これは、実施の形態1における周辺固定接点121Bとメタルコンタクト130Aとの関係と同様である。端子322Bは、筐体310のX軸正方向側に突出している。
【0093】
押圧部材340Aは、収納部312に収納される(
図17参照)。押圧部材340Aは、第1押圧部材の一例である。押圧部材340Aは、平板状の金属部材であり(
図15、17、18参照)、本体部341、支点部342A(第1支点部の一例)、作用点部343A(第1作用点部の一例)、及び、力点部344A(第1力点部の一例)を有する。押圧部材340Aは、梃子の様な動作が可能な部材であり、支点部342A、作用点部343A、及び力点部344Aは、それぞれ、梃子の支点、作用点、及び力点として機能する。押圧部材340Aは、一例として板金加工で作製される。
【0094】
押圧部材340Aは、梃子の様な動作をさせるため、撓みが少なく、ある程度の高い剛性を有することが必要である。このため、押圧部材340Aは、金属で構成され、Y軸方向にある程度広い幅を有するとともに、Z軸方向の厚さもある程度厚くされている。
【0095】
支点部342Aは、X軸正方向側に設けられ、収納部312の支持部312Aによって支持される。支点部342Aは、Y軸方向の十分な幅を有する。これは、押圧部材340Aが動くときに支点部342AがY軸方向において傾きにくくすることで、メタルコンタクト130Aに効率的に力を伝達できるようにするためである。
【0096】
作用点部343Aは、X軸負方向側に設けられ、メタルコンタクト130Aを押圧する凸部343A1(第1凸部の一例)を有する。凸部343A1は、平面視で円形で、下面が平坦であり、円錐台状の形状を有する。凸部343A1は、実施の形態1の凸部143Aと同様である。
【0097】
凸部343A1は、押圧部材340Aが梃子の原理で動作して作用点部343Aが下方向に押圧されると、メタルコンタクト130Aを下側に押圧する。メタルコンタクト130Aは、反転動作して中央固定接点321Aに接触する。
【0098】
力点部344Aは、支点部342Aと作用点部343Aとの間に設けられる。ステム350が下側に押圧されると、押圧部材340Bの作用点部343Bによって力点部344Aが押圧される。これは、梃子の原理を利用した押圧部材340Aの力点に力が加えられた状態である。
【0099】
押圧部材340Bは、押圧部材340Aの上に重ねられた状態で、収納部312に収納される(
図17参照)。押圧部材340Bは、第2押圧部材の一例である。押圧部材340Bは、平板状の金属部材であり(
図15、16A、16B、17、18参照)、本体部341、支点部342B(第2支点部の一例)、作用点部343B(第2作用点部の一例)、及び、力点部344B(第2力点部の一例)を有する。押圧部材340Bは、梃子の原理を利用した部材であり、支点部342B、作用点部343B、及び力点部344Bは、それぞれ、梃子の支点、作用点、及び力点として機能する。押圧部材340Bは、一例として板金加工で作製される。
【0100】
押圧部材340Bは、梃子の原理を利用するため、撓みが少なく、ある程度の高い剛性を有することが必要である。このため、押圧部材340Bは、金属で構成され、Y軸方向にある程度広い幅を有するとともに、Z軸方向の厚さもある程度厚くされている。
【0101】
支点部342Bは、X軸負方向側に設けられ、収納部312の支持部312Bによって支持される。支点部342Bは、十分なY軸方向の幅を有する。これは、押圧部材340Bが動くときに支点部342BがY軸方向において傾きにくくすることで、押圧部材340Aに効率的に力を伝達できるようにするためである。
【0102】
作用点部343Bは、X軸正方向側に設けられ、押圧部材340Aの力点部344Aを押圧する凸部343B1(第2凸部の一例)を有する。凸部343B1は、Y軸負方向側の端部からY軸正方向側の端部にわかって設けられている。
【0103】
凸部343B1は、押圧部材340Bが梃子の原理で動作して作用点部343Bが下方向に押圧されると、押圧部材340Aの力点部344Aの上面に接触し、押圧部材340Aの力点部344Aを下側に押圧する。
【0104】
力点部344Bは、支点部342Bと作用点部343Bとの間に設けられる。力点部344Bには、ばね部344B1が設けられている。ばね部344B1は、X軸負方向側が本体部341に接続されており、本体部341に対して斜め上方向に延在している。ばね部344B1は、ステム350が下向きに押圧されていない状態において、ステム350の凸部352に当接し、ステム350を上方向に付勢しフレーム360に押し付けている。ばね部344B1は、プリテンションを実現するために設けられている。
【0105】
ステム350が下側に押圧されると、
図18に示すように、ばね部344B1が弾性変形し、作用点部343Bが凸部352に押圧されることによって、力点部344Bが下方向に押圧される。これは、梃子の原理を利用した押圧部材340Bの力点に力が加えられた状態である。
【0106】
ステム350は、板状の本体部351と凸部352、353を有する。ステム350は、樹脂製である。凸部352は、本体部351の下面に設けられ、下向きに突出している。凸部352は、Y軸負方向側の端部からY軸正方向側の端部にわたって設けられている。凸部352は、
図17に示すように、ステム350が下向きに押圧されていない状態では、押圧部材340Bのばね部344B1に当接している。
【0107】
凸部353は、本体部351の上面に設けられ、上向きに突出している。凸部353は、平面視で楕円状であり、平坦な上面を有する。凸部353は、フレーム360の開口部361から表出する。
【0108】
フレーム360は、金属製であり、上面に設けられる開口部361と、Y軸方向の両側に設けられる側壁362とを有する。側壁362の下端には、内側(Y軸方向)に折り曲げられた係合部362Aが設けられている。係合部362Aは、フレーム360の四隅の下端に設けられている。
【0109】
フレーム360は、筐体310の収納部312に、金属プレート320A、320B、メタルコンタクト130A、押圧部材340A、340Bが収納され、ステム350が重ねられた状態で、係合部362Aを筐体310の四隅の下端にある凹部313に係合させることで、
図14に示すように、筐体310、金属プレート320A、320B、メタルコンタクト130A、押圧部材340A、340B、ステム350を保持する。
【0110】
この状態で、筐体310、金属プレート320A、320B、メタルコンタクト130A、押圧部材340A、340B、ステム350は、ガタつかないように構成されている。
【0111】
図19は、プッシュスイッチ300のFS(Force-Stroke)特性を示す図である。横軸がステム350を下方に押し込むストローク(S)であり、縦軸がステム350を下方に押し込む際に必要な力(F)である。力(F)は操作荷重である。
【0112】
図19に示すように、ストロークがゼロの位置からステム350を押し込むと、S31までは操作荷重は緩やかに立ち上がり、非常に小さな値になる。これは、押圧部材340Bのばね部344B1を押し込むために必要な操作荷重が非常に小さいことを表している。
【0113】
S31は、0.1mmである。プッシュスイッチ300は、ステム350の上にさらにボタン等を取り付けることを想定している。ボタンとは、例えば車室内の押しボタン型スイッチや、電子機器等の実際に押圧される部品である。例えば、携帯機器のように振動が加わりやすい製品において、ステム350とボタンとの間に隙間があると、製品に振動が加わるとボタンにも振動が伝わり異音が発生する恐れがある。そのため、未操作時にはボタンを他部品に押し付けることで異音の発生を抑えることがある。その様な製品に用いられる場合には、ステム350とボタンとの間に隙間が生じないように、ボタンで予めステム350を少し押圧した状態(プリテンションが掛かった状態)で取り付けられることがある。この様な場合には、ステム350がS31以下のストロークだけ押された状態にされる。このため、ボタンを操作する際には、ストロークがS31から始まる場合もある。
【0114】
ストロークがS31に到達すると、ステム350が力点部344Bに接触し、ストロークがS31を越えると、押圧部材340Bが押圧部材340Aを押圧し、押圧部材340Aがメタルコンタクト130Aを押圧し、ストロークがS32に到達した時点で操作荷重はF33(極大値)になり、メタルコンタクト130Aが反転する。さらにステム350を押し続けると、ストロークがS33に達したところで操作荷重はF32に低下する。このときに、
図18に示すようにメタルコンタクト130Aは中央固定接点321Aに接触し、プッシュスイッチ300はオン状態に切り替わる。
【0115】
以上のようなプッシュスイッチ300は、押圧部材340A、340Bという2つの梃子を含み、ステム350を下向きに押圧すると、押圧部材340Bの作用点部343Bが押圧部材340Aの力点部344Aを下側に押圧し、押圧部材340Aの作用点部343Aがメタルコンタクト130Aを押圧する。そして、メタルコンタクト130Aが中央固定接点321Aに接触することによって、中央固定接点321Aと周辺固定接点321Bが導通する。この状態は、プッシュスイッチ300がオンになった状態である。
【0116】
このように、2つの梃子を構成する押圧部材340A、340Bを含むので、プッシュスイッチ300のショートストローク化を実現できるとともに、操作荷重の増大化とを実現できる。
【0117】
したがって、実施の形態3によれば、メタルコンタクト130Aの動作ストロークを短くすること無く、スイッチとしての操作ストロークをショートストローク化でき、電気的な安定性とを両立したプッシュスイッチ300を提供することができる。また、操作荷重の増大化によって、操作時のクリック感を増大させることができるので、操作感の向上を図ることができる。
【0118】
また、2個の梃子(押圧部材340A、340B)を利用することにより、メタルコンタクト130Aは操作荷重が小さいものを使用してもプッシュスイッチとして必要な操作荷重に対応しやすくなる。一般的に操作荷重が重いメタルコンタクト130Aよりも、操作荷重が軽いメタルコンタクト130Aよりも動作寿命が長い傾向にある。すなわち、プッシュスイッチ300の動作寿命を長くすることができる。
【0119】
また、実施の形態3においては、2個の梃子(押圧部材340A、340B)を利用することで所定の操作荷重を確保できるため、リーフスプリング130Bを重ねることなく、メタルコンタクト130Aのみで所定の操作荷重を実現できる。すなわち、枚数を少なくする(リーフスプリング130Bを省く)ことが可能となっている。
【0120】
また、押圧部材340A、340Bは金属板金をプレス加工することで作製できるので、支点部342A、作用点部343A、力点部344A等の各部を容易に形成することができる。
【0121】
なお、以上では、プッシュスイッチ300がフレーム360を含む構成について説明した。しかしながら、
図20に示すプッシュスイッチ300Aのような構成であってもよい。プッシュスイッチ300Aは、フレーム360を含まず、筐体310Aに金属プレート320A、320B、メタルコンタクト130A、押圧部材340A、340B、ステム350(
図14参照)を収容した状態で、筐体310Aの上面にインシュレータ360Aを接着した構成である。インシュレータ360Aは、実施の形態1のインシュレータ150(
図1参照)と同様である。
【0122】
金属プレート320A、320B、メタルコンタクト130A、押圧部材340A、340B、ステム350は、筐体310Aに収納され、インシュレータ360Aが接着された状態で、ガタつかないように固定されている。このような構成のプッシュスイッチ300Aは、プッシュスイッチ300と同様に、ショートストローク化を実現できるとともに、操作荷重の増大化とを実現できる。
【0123】
以上、本発明の例示的な実施の形態のプッシュスイッチについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0124】
なお、本国際出願は、2018年9月6日に出願した日本国特許出願2018-167073に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【符号の説明】
【0125】
100、200、300 プッシュスイッチ
110、210、310、310A 筐体
112、212、312 収納部
120A、120B、220A、220B、220C、320A、320B 金属プレート
121A、221A、321A 中央固定接点
121B、221B、321B 周辺固定接点
130A メタルコンタクト
130B リーフスプリング
131A、131B ドーム部
140、240、340A、340B 押圧部材
142、342A、342B 支点部
143、343A、343B 作用点部
143A 凸部
144、344A、344B 力点部
144A 凸部
150、360A インシュレータ
245 ばね接点
350 ステム
360 フレーム