(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】能動的な触覚フィードバックを生成するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20220817BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
G06F3/01 560
(21)【出願番号】P 2020542241
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2019052786
(87)【国際公開番号】W WO2019154810
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-08-04
(31)【優先権主張番号】102018102630.7
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ノイヴィルト, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】プヒライトナー, ローマン
(72)【発明者】
【氏名】ラジャプルカー, アディティア
(72)【発明者】
【氏名】ペンチャー-シュターニ, アンドレアス
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】カナダ国特許出願公開第02996919(CA,A1)
【文献】国際公開第2015/092966(WO,A1)
【文献】特開2017-174220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0241864(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/06
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動的な触覚フィードバックを生成するための装置(1)であって、
複数の圧電層と、それらの間に配置された内部電極と、を備える少なくとも1つの圧電アクチュエータ(4,11)と、
第1の増幅要素(5,13a)及び第2の増幅要素(6,13b)であって、前記圧電アクチュエータ(4,11)は、前記増幅要素(5,6,13a,13b)の間に配置されており、前記圧電アクチュエータ(4,11)は、電圧が印加された場合に、その広がりが第1の方向(R1)において変化するように形成及び配置されており、前記増幅要素(5,6,13a,13b)は、前記圧電アクチュエータ(4,11)の広がりの変化の結果として、それぞれの前記増幅要素(5,6,13a,13b)の部分領域(5b,6b)が、前記圧電アクチュエータ(4)に対して相対的に、前記第1の方向(R1)に対して垂直な第2の方向(R2)に移動させられるように変形するよう形成及び配置されている、第1の増幅要素(5,13a)及び第2の増幅要素(6,13b)と、
前記増幅要素(5,6,13a,13b)が、前記装置(1)に押し付けられる物体に対して力の急変を再現する触覚フィードバックが生成されるように変形されるよう、前記圧電アクチュエータ(4,11)に電圧を印加するように構成された駆動回路(10)と、を備え
、
前記力の急変は、機械的なキーがスイッチングポイントを乗り越える際に慣例的であるように、機械的な抵抗が短時間で減少するという感覚をユーザに与える装置(1)。
【請求項2】
前記駆動回路(10)は、単一の正弦波パルス、単一の矩形パルス、単一の鋸歯状パルス、単一の半正弦波パルス、単一の半矩形パルス、単一の半鋸歯状パルス、複数の正弦波パルス、複数の矩形パルス、複数の鋸歯状パルス、複数の半正弦波パルス、複数の半矩形パルス、又は、複数の半鋸歯状パルスの形態を有する電圧を、前記圧電アクチュエータ(4,11)に印加するように構成されている、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記駆動回路(10)は、前記装置(1)に力が加えられる場合、印加された電圧が最初は連続的に増大し、前記装置(1)に加えられた力が力閾値を超えた場合、印加された電圧が急激に低下するよう、前記電圧を前記圧電アクチュエータ(4,11)に印加するように構成されている、請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記駆動回路(10)は、前記装置(1)に力が加えられ、前記装置(1)に加えられた力が力閾値を超えた場合、単一の電圧パルス又は複数の電圧パルスの形態の前記電圧を、前記圧電アクチュエータ(4,11)に印加するように構成されている、請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記駆動回路(10)は、前記装置(1)に力が加えられ、前記装置(1)に加えられた力が力閾値を超えた場合、前記圧電アクチュエータ(4,11)に印加された電圧が急激に増大し、前記装置(1)に加えられた力が前記力閾値を下回るまで、前記圧電アクチュエータ(4)に印加された電圧を一定に維持するように構成されている、請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記装置(1)は、前記装置(1)に加えられた力を認識するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記装置(1)は、前記装置(1)に加えられた力の結果として生じる、前記圧電アクチュエータ(4,11)の前記内部電極間に生成された電圧を認識するように構成されており、
前記装置(1)は、前記内部電極間に生成された電圧の大きさに基づいて、前記装置(1)に加えられた力を認識するように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記装置(1)は、前記圧電アクチュエータ(4,11)の前記内部電極間に、前記アクチュエータ(4)の長さの変化を引き起こす電圧を印加することにより、能動的な触覚フィードバックを生成するように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記装置(1)は、前記圧電アクチュエータ(4,11)に印加された電圧を急激に変化させることにより、前記圧電アクチュエータ(4,11)を振動状態に移行させることによって、前記力の急変を再現する前記触覚フィードバックを生成するように構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記振動の周波数は10Hz~500Hzの範囲、好ましくは10Hz~100Hzの範囲又は250Hz~500Hzの範囲にある、請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記第1の増幅要素(5)は円錐台状のシートを備え、前記第2の増幅要素(6)は円錐台状のシートを備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記円錐台状のシートは、それぞれ、前記圧電アクチュエータ(4)の上面(4a)又は下面(4b)に固定された縁部領域(5a,6a)を備え、
前記円錐台状のシートは、それぞれ、前記上面(4a)又は前記下面(4b)から隔たっていると共に、前記第2の方向(R2)に移動させられるように構成された前記部分領域を形成する中央領域(5b,6b)を備える、請求項11に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記シートは、それぞれチタンを含む、請求項11又は12に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記機械的な増幅要素(13a,13b)はメタルブラケットである、請求項13に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記機械的な増幅要素(13a,13b)は、切り込み部を有さず一定の壁圧を有する、請求項8又は9に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記機械的な増幅要素(13a,13b)は、前記機械的な増幅要素の変形に対する機械的な抵抗を低減する少なくとも1つの切り込み部を備える、請求項8又は9に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記圧電アクチュエータ(4)は、正方形の底面を備える、又は、
前記圧電アクチュエータ(11)は、その長さ(L)がその幅(B)よりも大きい底面を備える、請求項1~16のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項18】
前記装置(1)は、ベースプレート(7)と、前記物体によって操作されるように構成されたマン・マシン・インターフェース(2)と、を備え、
前記圧電アクチュエータ(4,11)は、前記ベースプレート(7)と前記マン・マシン・インターフェース(2)との間に配置されている、請求項1~17のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の装置(1)を用いて能動的な触覚フィードバックを生成するための方法であって、
前記装置(1)に作用する力が力閾値を超えた場合、前記駆動回路(10)によって、前記圧電アクチュエータ(4,11)に印加される電圧が変えられる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動的な触覚フィードバックを生成するための装置、及び、能動的な触覚フィードバックを生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスを操作するための機械的なキー及びスイッチは、例えばタッチスクリーンのような純粋に電子的な変形例によって、ますます置き換えられている。従来の機械的なスイッチの使用においては、スイッチングポイントを乗り越えると、力の急変(Kraftsprung)を通じて、キーが成功裏に押されたことが知らされる。
【0003】
図1は、機械的なキーの力ー距離図を示している。横軸には、機械的なキーが押される距離がプロットされている。縦軸には、キーに加えられる力がプロットされている。
【0004】
最初に、キーは、ほとんど力を費やすことなく押される。機械的なキーには、バネによってプリテンションを与えることができる。バネのテンションに打ち勝つことができて初めて、費やされるべき力は増大する。最初に、力が一定に維持されるアイドルストローク(Leerhub)があり、その後、力は直線的に増大する。スイッチングポイントSPに達すると、力は、力の急変の形態で減少する。スイッチングポイントSPは、
図1において符号SPで示されている。
【0005】
力の急変は、ユーザによって知覚され、キーが成功裏に操作されたことをユーザに知らせる。スイッチングポイントSPを乗り越えた後及び力の急変の後、加えられるべき力は再び増大する。キーの機械的なエンドストップに達する直前に、加えられるべき力はますます増大する。
【0006】
動作体験にとって決定的なのは、スイッチングポイントを乗り越えた際に生じる力の急変である。ユーザは、キーの機械的な抵抗の減少を知覚し、キーが成功裏に操作されたことを認識する。音響的なフィードバックが知覚され得ないであろう非常に騒がしい環境においてさえ、この触覚的な印象を通じて、ユーザは、キーが押されたことを確実に確認する。
【0007】
純粋に電子的なマン・マシン・インターフェースにおいては、力の急変の形態の触覚フィードバックが欠けている。したがって、そのようなインターフェースが正しく操作されたことを認識するために、ユーザは、積極的にディスプレイを見ることを、しばしば強いられる。それにより、ユーザが注意散漫になる可能性がある。例えば、タッチスクリーンは、車両においてもますます使用されている。ここで、ユーザがスクリーンを見ることを強いられる場合、安全性が損なわれる可能性がある。この欠点を回避するために、タッチスクリーンに触覚フィードバックを装備することが一般的である。
【0008】
触覚フィードバックを生成するための装置の例は、特許文献1及び特許文献2から公知である。
【0009】
しかしながら、これらの装置においては、達成可能な撓みが非常に限定されている。達成可能な撓みが小さなものにすぎないことに起因して、これらは、例えば150Hz~250Hzの狭い周波数帯においてのみ良好に知覚可能である。なぜなら、ここで人間の触覚が最も鋭敏であるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許第246233号明細書
【文献】国際公開第2016/075131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、例えば上述した装置の欠点が克服されるような、触覚フィードバックを生成するための改良された装置及び改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、独立請求項の主題によって解決される。
【0013】
少なくとも1つの圧電アクチュエータと、第1の増幅要素と、第2の増幅要素と、駆動回路と、を備える装置が提案される。圧電アクチュエータは、複数の圧電層と、それらの間に配置された内部電極と、を備える。圧電アクチュエータは増幅要素の間に配置されており、圧電アクチュエータは、電圧が印加された場合に、その広がりが第1の方向において変化するように形成及び配置されており、増幅要素は、圧電アクチュエータの広がりの変化の結果として、それぞれの増幅要素の部分領域が、圧電アクチュエータに対して、第1の方向に対して垂直な第2の方向に移動されるように変形するよう、形成及び配置されている。駆動回路は、圧電アクチュエータに電圧を印加するように構成されており、その結果、増幅要素は、装置に押し付けられる物体に対して、力の急変を再現する触覚フィードバックが生成されるよう、変形される。
【0014】
圧電アクチュエータは、触覚フィードバックを生成するための他の手段、例えばアンバランス・モータ又は線形共振器に対して、応答時間が著しく短いという利点を提供する。短い応答時間は、キーの操作と触覚フィードバックの開始との間の経過時間が長すぎず、したがって、ユーザの苛立ちを引き起こさないという結果をもたらし得る。短い応答時間によってのみ、機械的なキーの触覚挙動を可能な限り正確に再現することができ、ユーザは直感的に期待される感覚を体験することができる。それにより、ユーザの使用体験は一般に改善され得る。
【0015】
2つの増幅要素の使用により、触覚フィードバックの生成に決定的な移動の振幅を大幅に増大させることが可能となり得る。増幅要素は、圧電アクチュエータの第1の方向への移動が、その振幅が第1の方向への移動と比較して少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍大きい第2の方向への移動に変換されるよう、構成することができる。それにより、増幅要素は、圧電アクチュエータ自体の長さの変化が触覚フィードバックを生成するために使用される場合よりも、触覚フィードバックが著しく強いという結果をもたらすことができる。それにより、達成された撓みが、慌ただしい状況においてさえ、ユーザによって確実に知覚され得ることが、保証され得る。したがって、ユーザによって知覚され得る検出閾値をはるかに上回る触覚フィードバックが提供されることが、保証され得る。
【0016】
更に、触覚フィードバックは、増幅要素の使用に起因して、例えば大きなスクリーンのような重いマン・マシン・インターフェースで使用されるのに十分に強くすることもできる。増幅要素を使用しなければ、そのような重いマン・マシン・インターフェースを十分に大きく移動させることはできないであろう。
【0017】
第1の方向における圧電アクチュエータの広がりの変化は、特に、積層方向に対して垂直な方向における長さの変化であってもよく、その場合、圧電層と内部電極は、積層方向において互いに重なって配置されている。したがって、第1の方向における圧電アクチュエータの広がりの変化は、アクチュエータの横方向収縮であり得る。第1及び第2の内部電極の間に印加された電圧によって圧電層内に生じる圧電効果の結果として、第1の方向における圧電アクチュエータの広がりの変化が生じ得る。
【0018】
増幅要素の部分領域が移動する第2の方向は、圧電アクチュエータの積層方向であり得る。
【0019】
触覚フィードバックは、力の急変が再現されるように構成されている。特に、マン・マシン・インターフェースを押すユーザに対して、力の急変の印象が生成され得る。ユーザは、自身の指又はペンのような物体で、インターフェースを押すことができる。力の急変の印象は、非常に短い振動によって発生させることができ、これは、機械的なキーがスイッチングポイントSPを乗り越える際に慣例的であるように、機械的な抵抗が短時間で減少するという感覚をユーザに与える。振動は、ユーザによって特異な事象として知覚される一時的な振動と解釈することができる。
【0020】
駆動回路は、単一の正弦波パルス、単一の矩形パルス、単一の鋸歯状パルス、単一の半正弦波パルス、単一の半矩形パルス、又は、単一の半鋸歯状パルスの形態を有する電圧を、圧電アクチュエータに印加するように構成することができる。代替的に、駆動回路は、複数の正弦波パルス、複数の矩形パルス、複数の鋸歯状パルス、複数の半正弦波パルス、複数の半矩形パルス、又は、複数の半鋸歯状パルスの形態を有する電圧を、圧電アクチュエータに印加するように構成することができる。複数のパルスは、ユーザによって、特異な事象として知覚され得る。複数のパルスは、例えばそれぞれ2つのパルスであることができる。複数のパルスを使用することにより、フィードバックは、単一のパルスと比較して増大され得る。
【0021】
これら全ての形態において、印加電圧を短時間で大きく変化させることができる。鋸歯状及び矩形パルスの場合、大きな変化は急激なものであり得る。正弦波又は半正弦波パルスの場合、大きな変化は、パルスの十分に急峻な側面によってもたらされる。印加電圧の大きな変化によって、アクチュエータは、増幅要素の部分領域の振動を引き起こす振動状態に移行され得る。既に説明したように、短い振動は、ユーザによって力の急変として知覚され、このようにして、スイッチングポイントを乗り越えた印象を与える。
【0022】
更に、印加電圧は、電圧が十分に短い時間内に十分に大きく変化される限り、任意の他の形態を有することもできる。
【0023】
一実施例によれば、駆動回路は、装置に力が加えられ、装置に加えられた力が力閾値を超えた場合、単一の電圧パルス又は複数の電圧パルスの形態の電圧を、圧電アクチュエータに印加するように構成されている。電圧パルスは、特に矩形状又は正弦波状であることができる。電圧パルスによって、ユーザによって力の急変として知覚される圧電アクチュエータの振動が引き起こされる。
【0024】
別の実施例によれば、駆動回路は、装置に力が加えられ、装置に加えられた力が力閾値を超えた場合に、圧電アクチュエータに印加された電圧を急激に高めるように構成することができる。力閾値を予め定義することにより、如何なる力を加えた場合にスイッチングポイントが再現されるかを確定することができる。
【0025】
駆動回路は、更に、装置に加えられた力が力閾値を下回るまで、圧電アクチュエータに印加される電圧を一定に保つように構成することができる。力閾値を下回った場合、電圧を急激に低下させることができる。それにより、圧電アクチュエータが、力閾値を超えた場合及び下回った場合の両方において振動し、それに応じて、触覚フィードバックが2回生成されることが可能となり得る。ユーザには、キーを操作する際及びキーから手を離す際の両方において、力の急変の感覚が与えられる。
【0026】
装置は、当該装置に加えられた力を認識するように構成されることができる。そのために、例えば、マン・マシン・インターフェースに配置され、マン・マシン・インターフェースに加えられた圧力を測定する別個の圧力センサを、使用することができる。
【0027】
装置が、当該装置に加えられた力が所定の力閾値を超えたことを認識した場合、触覚フィードバックを生成することができる。このために、次に、電圧を圧電アクチュエータに印加することができる。
【0028】
一実施例において、装置は、当該装置に加えられた力の結果として生じる、圧電アクチュエータの内部電極間に生成された電圧を認識するように構成されている。更に、装置は、内部電極間に生成された電圧の大きさに基づいて、当該装置に加えられた力を認識するように構成することができる。この場合、圧力センサを省略することができる。それにより、少ない構成要素を備えるコンパクトな構造が得られる。
【0029】
それに応じて、内部電極は、装置内において二重の機能を担うことができる。それらは、一方では、マン・マシン・インターフェースに加えられた力を認識するために利用することができる。なぜなら、この場合、それらの間に電圧が生成されるからである。また他方では、それらの間に電圧が印加される場合、それによって能動的な触覚フィードバックが生成されるアクチュエータの長さの変化が引き起こされる。
【0030】
装置は、圧電アクチュエータの内部電極間に、アクチュエータの長さの変化を引き起こす電圧を印加することにより、能動的な触覚フィードバックを生成するように構成することができる。装置は、圧電アクチュエータに印加された電圧を急激に変化させることにより、圧電アクチュエータを振動状態に移行させることによって、力の急変を再現する触覚フィードバックを生成するように構成することができる。
【0031】
圧電アクチュエータの振動の周波数、及びしたがって増幅要素の部分領域の振動の周波数は、10Hz~500Hzの広い範囲にあることができる。増幅要素の使用に起因して、ユーザの検出閾値をはるかに上回る強い触覚フィードバックを生成することができるため、当該フィードバックは、パチニ小体、及びしたがって人間の触覚が最も鋭敏である150Hz~200Hzの周波数範囲に限定されない。むしろ、10Hz~100Hzの範囲のより低い周波数、又は、250Hz~500Hzの範囲のより高い周波数を有する触覚フィードバックを生成することができ、これは、ユーザによって確実に知覚され得る。増幅要素の部分領域の第2の方向への移動の大きな振幅により、たとえそれらの周波数が150Hz~200Hzの範囲の外にある場合でさえ、ユーザが触覚フィードバックを確実に知覚することが、保証され得る。
【0032】
第1の増幅要素は、円錐台状のシートを備えることができる。第2の増幅要素は、円錐台状のシートを備えることができる。
【0033】
増幅要素は、それぞれ、第1の方向におけるアクチュエータの長さの変化を、第2の方向における長さの変化に変換するように構成することができる。増幅要素は、それぞれ、アクチュエータの横方向収縮の結果として生じるアクチュエータの長さの変化を増幅する機能を果たすことができる。この目的のために、増幅要素は、それぞれ、増幅要素の縁部領域が収縮され又は引き伸ばされた際、増幅要素の中央領域が大幅に持ち上げられ又は下降させられるように成形することができる。増幅要素は、それぞれ、基体の横方向収縮を、アクチュエータの積層方向における大幅な長さの変化に変換することに寄与し得る。
【0034】
円錐台状のシートは、アクチュエータの上面又は下面に固定された縁部領域を備えることができる。縁部領域は、例えば接着、半田付け又は溶接によって、アクチュエータに固定することができる。シートは、更に、積層方向においてアクチュエータの上面又は下面から隔てられた中央領域を備えることができる。アクチュエータが内部電極間に印加された電圧の結果として横方向収縮を受ける場合、シートの中央領域の上面又は下面からの距離は、大幅に変化する可能性がある。
【0035】
シートは、チタンを含むか又はチタンから成ることができる。チタンは、特に、能動的な触覚フィードバックを生成するための本用途に対して、本質的な利点を有する。装置が人によって操作されると、例えば指の汗の形態の湿気がシート上に達する可能性がある。これは、腐食につながる可能性がある。しかしながら、チタンは、特に耐腐食性の材料であり、その結果、チタンは、腐食による長期間の損傷から装置を良好に保護することができる。
【0036】
更に、チタンは高い機械的強度を有するので、部材の寿命を延ばすことができる。
【0037】
更に、チタンは、アクチュエータの熱膨張係数に非常に近い熱膨張係数を有する。それにより、シートのアクチュエータとの接続部は、温度の変化に際して、実質的に機械的な荷重を受けることはない。
【0038】
機械的な増幅要素は、メタルブラケットであることができる。そのような増幅要素は、その幅よりも大きな長さを有する直方体形状の圧電アクチュエータと組み合わせて使用することができる。そのような細長いアクチュエータ及び付随するブラケット状の増幅要素は、正方形の底面及び円錐台状の増幅要素を有するアクチュエータと比較して、改善された小型化を可能とし、付加的に、同一の入力電圧においてより大きな力を生成することができる。
【0039】
機械的な増幅要素は、切り込み部を有さず一定の壁圧を有することができる。代替的に、機械的な増幅要素は、機械的な増幅要素の変形に対する機械的な抵抗を低減する少なくとも1つの切り込み部を備えることができる。切り込み部は、増幅要素が小さな力で変形され得るという結果をもたらすことができる。もっとも、増幅要素が小さな厚さで構成される場合には、切り込み部を省略することが有利であり得る。なぜなら、さもなければ増幅要素が不安定になりすぎる可能性があるからである。
【0040】
圧電アクチュエータは、正方形の底面を備えることができる。代替的に、圧電アクチュエータは、その長さがその幅よりも大きい底面を備えることができる。底面は、その表面法線が、電極及び圧電材料が積層される積層方向を指し示す平面であることができる。長さは、底面の最長の辺の広がりを意味し得る。幅は、底面の最短の辺の広がりを意味し得る。
【0041】
装置は、ベースプレートと、物体によって操作されるように構成されたマン・マシン・インターフェースと、を備えることができ、圧電アクチュエータは、ベースプレートとマン・マシン・インターフェースとの間に配置されている。触覚フィードバックは、特に、増幅要素の部分領域の互いに対する移動が、ベースプレートに対するマン・マシン・インターフェースの移動に変換されることによって、生成され得る。
【0042】
別の態様によれば、本発明は、上述した装置を用いて能動的な触覚フィードバックを生成するための方法に関する。装置に作用する力が力閾値を超えた場合、圧電アクチュエータに印加される電圧が駆動回路によって変えられる。
【0043】
以下において、本発明が、図面に基づいて更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図2】能動的な触覚フィードバックを生成するための装置1を示している。
【
図3】単一の半正弦波状パルスが印加された際に生じる圧電アクチュエータの挙動を示している。
【
図4】電圧としてアクチュエータに印加することができる鋸歯状パルスを示している。
【
図5】ユーザがマン・マシン・インターフェースの操作をどのように知覚するかを示す、力ー距離図である。
【
図6】圧電アクチュエータ及び付随する増幅要素を、斜視図で示している。
【
図7】圧電アクチュエータ及び付随する増幅要素の側面図を示している。
【
図8】アクチュエータの上面の平面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図2は、能動的な触覚フィードバックを生成するための装置1を示している。能動的な触覚フィードバックは、装置1に圧力を加えるユーザに、機械的なキーを押す感覚を生ぜしめるように構成されている。この目的のために、装置1は、生成された触覚フィードバックが力の急変を再現するように構成されている。
【0046】
装置1は、マン・マシン・インターフェース2を備えている。これは、装置1のユーザによって操作され得る駆動要素である。例えば、マン・マシン・インターフェース2は、例えば携帯電話又は他の端末において慣用されているような、タッチスクリーンであることができる。ユーザは、マン・マシン・インターフェース2の操作パネル3を、指又は例えばペンのような物体で押すことにより、当該マン・マシン・インターフェース2を操作することができる。
【0047】
装置1は、更に、圧電アクチュエータ4を備えている。圧電アクチュエータ4は、交互に配置された圧電材料と内部電極の層を備える多層部品である。圧電アクチュエータ4は、印加された電圧の結果として変形するように構成されている。特に、圧電アクチュエータ4は、当該圧電アクチュエータ4に印加された電圧が変化したとき、第1の方向R1におけるその長さが変化するように構成されている。
【0048】
装置1は、更に、第1の増幅要素5及び第2の増幅要素6を備えている。第1の増幅要素5は、マン・マシン・インターフェース2と対向する圧電アクチュエータ4の上面4aに配置されている。第2の増幅要素6は、マン・マシン・インターフェース2とは反対側の圧電アクチュエータ4の下面4bに配置されている。
【0049】
増幅要素5、6の各々は円錐台状のシートであり、当該シートの縁部領域5a、6aは、圧電アクチュエータ4の上面4a又は下面4bに固定されており、それぞれのシートの中央領域5b、6bは、圧電アクチュエータ4から隔てられている。増幅要素5、6は、第1の方向R1における圧電アクチュエータ4の長さの変化を、第1の方向に対して垂直な第2の方向R2における移動に変換するように構成されている。増幅要素は、更に、第2の方向の移動の振幅が第1の方向の移動の振幅よりも大きくなるように構成されている。
【0050】
装置は、更に、ベースプレート7を備えている。第1の増幅要素5の中央領域5bは、マン・マシン・インターフェース2に固定されている。第2の増幅要素6の中央領域6bは、ベースプレート7に固定されている。ここで、増幅要素5、6の中央領域5b、6bが第2の方向R2に互いに相対移動すると、この運動は、ベースプレート7に対するマン・マシン・インターフェース2の移動に転換される。ベースプレート7は、マン・マシン・インターフェース2より何倍も重いので、実質的に不動のままである。マン・マシン・インターフェース2がベースプレート7に対して移動すると、マン・マシン・インターフェース2を押すユーザに対して触覚フィードバックが生成される。
【0051】
マン・マシン・インターフェース2の移動の振幅は、第2の方向R2における2つの増幅要素5、6の移動の振幅によって決定される。この移動は、第1の方向R1における圧電アクチュエータ4の長さの変化よりも大きな振幅を有する。したがって、生成される触覚フィードバックは、圧電アクチュエータ4の移動自体が触覚フィードバックの生成のために使用される場合と比較して、著しく強い。触覚フィードバックの原因となる移動の大きな振幅に起因して、フィードバックは、慌ただしい状況においても、ユーザによって確実に知覚され得る。それに加えて、例えば比較的大きなスクリーンのような重いマン・マシン・インターフェース2を使用することもできる。強力な触覚フィードバックに起因して、装置1のこの構成は、更に、触覚フィードバックを生成するために、非常に広い周波数スペクトルを使用することを可能とする。
【0052】
更に、装置は、少なくとも2つのバネ8を備えている。2つのバネ8は、マン・マシン・インターフェース2とベースプレート7との間に配置されており、マン・マシン・インターフェース2とベースプレート7との間で共に圧迫され、それにより応力が付与される。マン・マシン・インターフェース2は、バネ8によって、ベースプレート7に対して平行な位置において、バネ力が作用した状態で支持される。バネ8は、ベースプレート7に対するマン・マシン・インターフェース2の傾斜移動を阻止する。同時に、バネ8は十分な移動の自由度を提供し、その結果、圧電アクチュエータ4がベースプレート7に対して移動する際、マン・マシン・インターフェース2は第2の方向R2に移動することができる。そのような移動の振幅は、通常、1mm未満、好ましくは500μm未満である。
【0053】
装置1は、更に、測定ユニット9を備えている。測定ユニットは、
図2において概略的に示されている。測定ユニット9は、圧電アクチュエータ4の少なくとも2つの内部電極と接続されており、当該内部電極間に電圧が発生したことを認識することができる。ユーザがマン・マシン・インターフェース2を押すと、この力は、マン・マシン・インターフェース2及び第1の増幅要素5を介して、圧電アクチュエータ4に加えられる。それにより、圧電アクチュエータ4内に電圧が発生し、当該電圧は測定ユニット9によって記録される。測定ユニット9は、この記録された電圧から、装置1に加えられた力を推定することができる。
【0054】
図示されていない代替的な実施例において、装置1は、マン・マシン・インターフェース2に加えられた力を検出する別個の力センサを備えることができる。この場合、アクチュエータ4内で発生した電圧は、力の測定には用いられない。
【0055】
更に、装置1は、能動的な触覚フィードバックを生成するためにアクチュエータ4に電圧を印加するように構成された駆動回路10を備えている。以下において、アクチュエータ4に印加され得る様々な電圧が考察されるが、その各々は、力の急変の印象を生じさせる能動的な触覚フィードバックを生成することを可能とする。
【0056】
電圧がアクチュエータ4に印加されると、アクチュエータ4の長さは第1の方向R1において変化し、この長さの変化は、増幅要素5、6によって、増大された振幅を有する第2の方向R2の移動に変換される。2つの増幅要素5、6の中央領域5b、6bは、互いに離れるように又は互いに向かって移動される。圧電アクチュエータ4に電圧を印加することにより、アクチュエータの短い振動が生成され、当該振動が、マン・マシン・インターフェース2を押すユーザによって、触覚フィードバックとして知覚される。
【0057】
圧電アクチュエータ4に印加された電圧が、短時間で、例えば10ms未満の時間内で著しく変化した場合、常に触覚フィードバックが生成される。圧電アクチュエータ4に印加された電圧の変化により、当該圧電アクチュエータ4は、その長さが変化するため、振動状態に移行される。これは、印加電圧の急激な上昇及び印加電圧の急激な降下の両方において生じる。
【0058】
図3は、単一の半正弦波状パルスが印加された際に生じる圧電アクチュエータ4の挙動を示している。
【0059】
カーブK1は、駆動回路10によって圧電アクチュエータ4に印加された電圧の推移を示している。電圧は、3.3msのパルス幅、即ち約300Hzの周波数を有する単一の半正弦波状パルスである。
図3において、横軸には時間(秒)がプロットされている。縦軸には、カーブK1に関して、印加された電圧の高さ(V)がプロットされている。
【0060】
カーブK2は、アクチュエータ4に印加された電圧の結果としての増幅要素5、6の撓みの推移を示している。
図3において、横軸には時間(秒)がプロットされている。縦軸には、カーブK1に関して、圧電アクチュエータ4に固定された増幅要素5、6の第2の方向R2における撓み(μm)がプロットされている。
【0061】
約5ms後に約250μmの最大撓みに達することが見て取れる。それに応じて、装置1は、非常に短い応答時間を示す。10ms未満の短い応答時間は、触覚フィードバックを生成するための圧電アクチュエータ4の使用に起因する。
【0062】
印加電圧が0Vに低下した後、圧電アクチュエータ4は減衰挙動(Abschwingverhalten)を示す。その長さの変化の振幅、及びしたがって増幅要素5、6の移動の振幅も、連続的に減少する。約0.02秒後、アクチュエータ4の振動は完全に減衰した。
【0063】
全体として、圧電アクチュエータ4は、印加された電圧パルスに応答して、短い振動を実行する。短い振動の振幅は連続的に減少する。アクチュエータ4によって実行される振動は、マン・マシン・インターフェース2を押すユーザによって、触覚フィードバックとして知覚される。特に、マン・マシン・インターフェース2の操作パネル3を押すユーザにとっては、当該マン・マシン・インターフェース2の機械的な抵抗が短時間で減少したかのように思われる。それに応じて、ユーザに対して、力が急変した印象が生じる。
【0064】
図4は、電圧としてアクチュエータ4に印加することができる鋸歯状パルスを示している。横軸には時間(秒)がプロットされており、縦軸にはそれぞれの時刻に印加された電圧(ボルト)がプロットされている。時刻t
0において、マン・マシン・インターフェース2の操作が認識される。例えば、測定ユニット9が、マン・マシン・インターフェース2に力が加えられたことを認識することができる。ここで示された例において、力は、時刻t
0において、所定の力閾値よりも小さい。次に、駆動回路10によって電圧がアクチュエータ4に印加される。
【0065】
ここで示された例において、ユーザによってマン・マシン・インターフェース2に加えられた力は、時刻t0において所定の力閾値を超えるまで、ゆっくりと増大される。駆動回路10によってアクチュエータ4に印加された電圧は、時刻t0とt1との間で連続的に増大される。圧電アクチュエータ4の長さは、低速で変化する。それに応じて、アクチュエータ4は、非常に軽微な振動へと励起されるにすぎない。
【0066】
時刻t
1において、アクチュエータ4に加えられた力は、所定の力閾値を超える。測定ユニット9は、マン・マシン・インターフェース2に加えられる力を監視する。時刻t
1において、駆動回路10によって印加される電圧は、急激にゼロとなる。それにより、
図3に示された短い半正弦波状パルスの場合と同様に、圧電アクチュエータ4の長さの大きな変化、及びそれに関連した増幅要素5、6の明らかに顕著な移動が引き起こされ、それにより、マン・マシン・インターフェース2を押すユーザに対して触覚フィードバックが生成される。
【0067】
図5には、ユーザがマン・マシン・インターフェース2の作動をどのように知覚するかを示す、力ー距離図が示されている。縦軸上には、ユーザが自身の知覚に従ってマン・マシン・インターフェースに加える力が示されている。横軸上には、ユーザの知覚に従ってインターフェースが移動させられる距離が示されている。
【0068】
所定の力閾値は、ここでは25Nである。力閾値に達すると、アクチュエータ4は
短時間で振動状態に移行される。ユーザは、この振動を力の急変として知覚する。ユーザにとっては、自らがマン・マシン・インターフェース2に加えた力が減少しているかのように思われる。次に、ユーザが更にマン・マシン・インターフェース2を押すと、加えられた力が再び増大するように思われる。
図5示された力ー距離図は、機械的なキーを操作した際に生じ、
図1において見て取れる力ー距離図に、非常に類似している。力の急変を通じて、マン・マシン・インターフェース2が操作されたことを、ユーザに明確に知らせることができる。したがって、機械的なキーの触覚的な挙動は、装置1によって正確に再現することができる。ユーザは、自身が直感的に期待する感覚を体験する。したがって、ユーザの苛立ちが防止され、使用体験が全般的に向上する。
【0069】
代替的な実施形態においては、力閾値に達した際、矩形状の電圧がアクチュエータ4に印加され得る。電圧が急激に増大し、その結果、ユーザに対して触覚フィードバックが生成される。印加される電圧は、測定ユニット9が、マン・マシン・インターフェース2に加えられた力が力閾値を下回ったことを認識するまで、連続的に印加された状態を維持する。次いで、電圧が急激に低下され、それにより新たに、アクチュエータ4の振動、及びそれに関連して触覚フィードバックへと至る。それにより、ユーザにとっては、機械的なキーから手を離す感覚がもたらされる。この場合も、力の急変が、触覚フィードバックによって再現される。
【0070】
駆動回路10は、圧電アクチュエータ4に任意の形態で電圧を印加するように設計することができる。触覚フィードバックを生成するためには、印加された電圧を短い時間内で根本的に変化させることが不可欠である。例えば、印加された電圧は、単一の正弦波パルス、単一の矩形パルス、単一の鋸歯状パルス、単一の半正弦波パルス、単一の半矩形パルス、又は、単一の半鋸歯状パルスの形態を有することができる。
【0071】
したがって、ここで説明した装置1は、純粋に機械的なキーの利点と、例えばタッチスクリーンのような純粋に電子的なマン・マシン・インターフェースの利点とを、組み合わせることを可能とする。純粋に機械的なキーの本質的な利点は、キーが操作された際に生じると共に、成功裏の操作の確実なフィードバックをユーザに与える、力の急変にある。純粋に電子的なマン・マシン・インターフェースの利点は、例えば、比較的安価で汎用性がある点にある。更に、手入れが容易で、視覚的に好感を与える操作パネルを実現することができる。本装置は、ユーザが特定のキーを成功裏に操作したか否かが容易には認識し得ないという、純粋に電子的なマン・マシン・インターフェースの欠点を克服することを可能とする。
【0072】
図6及び7は、
図2に示された2つの増幅要素5、6を有する
図2に示されたアクチュエータ4に代えて使用することができる、2つの増幅要素13a、13bを有する代替的な圧電アクチュエータ11を示している。
【0073】
図2に示された圧電アクチュエータ4は、正方形の底面を備えている。付随する増幅要素5,6は円錐台状である。
【0074】
それに対して、
図6及び7に示された圧電アクチュエータ11は、矩形の底面を備えている。その長さLは、その幅Bよりも大きく、ここで、長さLは矩形の底面の長辺を示し、幅Bは矩形の底面の短辺を示す。例えば、長さLと幅Bとの比は、2:1~20:1とすることができる。増幅要素13a、13bはメタルブラケットである。増幅要素13a、13bは、チタンを含むか又はチタンから成ることができる。
【0075】
図6及び7に示された圧電アクチュエータ11は、
図2に示された圧電アクチュエータ4よりも大きな力及び大きな加速度を発生させることを可能とする。以下において、圧電アクチュエータ11及び付随する増幅要素13a、13bが詳細に説明される。
【0076】
図6は、圧電アクチュエータ11及び付随する増幅要素13a、13bを、斜視図で示している。
図7は、圧電アクチュエータ11及び付随する増幅要素13a、13bの側面図を示している。更に、
図8は、増幅要素13a及びアクチュエータ11の上面の平面図を示している。
【0077】
圧電アクチュエータ11は、積層方向Sにおいて交互に重ねて積層された内部電極21及び圧電層22から成る積層体を備えている。圧電アクチュエータ11は、第1の端面24上に配置された第1の外部電極23と、第2の端面上に配置された第2の外部電極23と、を備えている。内部電極21は、積層方向Sにおいて交互に、第1の外部電極23又は第2の外部電極23と接触している。
【0078】
圧電層22は、チタン酸ジルコン酸鉛セラミックス(PZTセラミック)であることができる。PZTセラミックは、更に、付加的にネオジム及びニッケルを含んでいてもよい。代替的に、PZTセラミックは、更に、付加的にネオジム、カリウム、及び場合によっては銅を含んでいてもよい。代替的に、圧電層22は、Pb(ZrxTi1-x)O3 + y Pb(Mn1/3Nb2/3)O3を含む組成を有していてもよい。
【0079】
内部電極21は、銅を含み又は銅から成っている。
【0080】
圧電アクチュエータ11は直方体形状である。その表面法線が積層方向Sを指し示す平面を、底面と称する。底面は矩形である。底面の長辺は圧電アクチュエータ11の長さLを定義し、底面の短辺は圧電アクチュエータ11の幅Bを定義する。
【0081】
圧電アクチュエータ11は、5mm~20mmの長さL、及び、2mm~8mmの幅Bを有する。第1の実施例によれば、圧電アクチュエータ11は、12mmの長さL及び4mmの幅Bを有する。第2の実施例において、圧電アクチュエータ11は、9mmの長さL及び3.75mmの幅Bを有する。
【0082】
積層方向Sにおける圧電アクチュエータの広がりは、圧電アクチュエータ11の高さHを定義する。圧電アクチュエータ11の高さHは、200μm~1000μmであることができる。例えば、高さHは、第1及び第2の実施例において、それぞれ500μmである。
【0083】
アクチュエータ11は、2つの絶縁領域12を備えている。それぞれの絶縁領域12は、アクチュエータ11の端部領域に形成されている。特に、それぞれの絶縁領域12は、アクチュエータの端面24の領域に形成されている。
【0084】
絶縁領域12では、一方の極性の内部電極21のみが、アクチュエータ11の端面24まで達している。絶縁領域12は、アクチュエータ11の接触のために使用することができる。例えば、それぞれの絶縁領域12には、電気的な接触のための外部電極23を設けることができる。
【0085】
アクチュエータ11は、電圧が印加されると、アクチュエータ11の変形(第1の方向R1への膨張)が生じるように構成されている。特に、圧電層22は、内部電極21間に電圧を印加するとアクチュエータ11の長さLが積層方向Sに対して垂直に変化する、アクチュエータ11の横方向収縮が生じるように、分極されている。したがって、アクチュエータは、分極方向及び電界に対して横方向に膨張する(d31効果)。
【0086】
積層方向Sにおける長さの変化の効果を更に強化するために、装置は、2つの増幅要素13a、13bを備えている。アクチュエータ11に電圧が印加されると、増幅要素13a、13bは、後に詳述するように、アクチュエータ11の広がりの変化の結果として、少なくとも部分的に変形する。特に、2つの増幅要素13a、13bは、当該増幅要素13a、13bの部分領域17a、17bが、アクチュエータの長さLの変化の結果として積層方向Sにおいて上昇運動を実行するように寸法決めされていると共にアクチュエータ11と接続されており、当該上昇運動の振幅は、アクチュエータの長さLの変化の振幅よりも大きい。
【0087】
アクチュエータ11は、増幅要素13a、13bの間に配置されている。増幅要素13a、13bは、少なくとも部分的に、アクチュエータ11の上面25又は下面26の上に載置されている。
【0088】
それぞれの増幅要素13a、13bは、一体に形成されている。それぞれの増幅要素13a、13bは、矩形の形状を有する。それぞれの増幅要素13a、13bは、帯状に形成されている。それぞれの増幅要素13a、13bは、湾曲して形成されている。それぞれの増幅要素13a、13bは、ブラケット状である。例えば、それぞれの増幅要素は、メタルストリップを備える。それぞれの増幅要素は、チタンを含むか又はチタンから成る。メタルストリップは、以下において詳細に説明されるように、湾曲している。
【0089】
一体の増幅要素13a、13bの各々は、複数の領域又はセクションに細分されている。したがって、それぞれの増幅要素13a、13bは、部分領域又は第1の領域17a、17bを備える。部分領域17a、17bは、それぞれ、第1のセクション又は中央領域19a、19bを備える。
【0090】
部分領域17a、17bは、更に、それぞれ2つの第2のセクション又は接続領域20a、20bを備える。それぞれの増幅要素13a、13bの2つの接続領域20a、20bは、それぞれの増幅要素13a、13bの中央領域19a、19bに直接的に隣接している。換言すれば、それぞれの増幅要素13a、13bの中央領域19a、19bは、両側において2つの接続領域20a、20bによって取り囲まれている。
【0091】
それぞれの増幅要素13a、13bは、更に、2つの端部領域18a、18bを備える。端部領域18a、18bは、それぞれの増幅要素13a、13bの接続領域20a、20bに、直接的に隣接している。換言すれば、それぞれ1つの接続領域20a、20bが、1つの端部領域18a、18bを、1つの増幅要素13a、13bの中央領域19a、19bと接続している。
【0092】
それぞれの増幅要素の2つの端部領域18a、18bは、アクチュエータ11の表面上に直接的に載置されている。したがって、第1の増幅要素13aの第1及び第2の端部領域18aは、アクチュエータ11の上面25の部分領域の上に載置されている。更に、第2の増幅要素13bの第1及び第2の端部領域18bは、アクチュエータ11の上面25又は下面26の部分領域の上に載置されている。
【0093】
端部領域18a、18bは、好ましくは、アクチュエータ11の表面と着脱不能に接続されている。特に、端部領域18a、18bは、接着接続部15によってアクチュエータ11の表面にと接続されている。
【0094】
それぞれの部分領域17a、17bは、アクチュエータ11の表面から隔てられている。特に、それぞれの部分領域17a、17bと、アクチュエータ11の下面26又は上面25との間には、自由領域16が存在する。自由領域16は、高さhを有する。アクチュエータ11と部分領域17a、17bとの間の自由高さhは0.2mm~2.0mm、第1の実施例では0.75mm、第2の実施例では0.4mmであり、自由高さhは、アクチュエータ11に電圧が印加されず、増幅要素13a、13bに外力が作用しない場合に、部分領域17a、17bと圧電アクチュエータ11との間の最大の間隔を規定する。
【0095】
自由領域16の高さhは、それぞれの部分領域17a、17bに沿って変化する。したがって、それぞれの部分領域17a、17bの中央領域19a、19bは、アクチュエータ11の表面に対して平行に延びるように形成されている。したがって、自由領域16の高さhは、中央領域19a、19bの領域において最大である。それとは逆に、それぞれの接続領域20a、20bは、アクチュエータ11の表面に対して斜めに延びている。換言すれば、それぞれの接続領域20a、20bは、アクチュエータ11の上面25又は下面26との間に、ある角度を成している。当該角度は、好ましくは45°以下である。したがって、自由領域16の高さhは、それぞれの増幅要素13a、13bの中央領域19a、19bから端部領域18a、18bへ向かう方向に減少している。したがって、それぞれの増幅要素13a、13bは、湾曲した形状を有している。
【0096】
ここでは図示されていない代替的な実施形態において、それぞれの増幅要素13a、13bは、増幅要素のそれぞれの領域の間に、少なくとも1つの薄肉化部、好ましくは複数の薄肉化部を備えることができる。
【0097】
機械的な増幅要素13a、13bは、それぞれ、0.1mm~0.4mmの厚さを有するチタンシートであることができる。例えば、シートは0.2mmの厚さを有することができる。ここで挙げた範囲のシート厚さでは、上昇運動の実行のために必要なシートの変形を、小さな力で引き起こすことができる。したがって、薄肉化によってシートの変形性を増大させる必要がない。それに応じて、シートには、薄肉化部又は切り込み部がなくてもよい。
【0098】
それぞれの増幅要素13a、13bの平坦な中央領域19a、19bは、1.5mm~5.0mmの長さを有することができる。第1の実施例では、中央領域19a、19bの長さは3.5mmである。第2の実施例では、中央領域19a、19bの長さは2.5mmである。端部領域18a、18bは、1.0mm~0.5mmの長さを有することができる。第1及び第2の実施例では、端部領域18a、18bの長さは、それぞれ0.7mmである。0.5mm未満の長さは選択されるべきではない。なぜなら、さもなければ、端部領域18a、18bとアクチュエータ11との間の接着接続部15が、場合によっては十分な強度で形成され得ないからである。
【0099】
アクチュエータ11及び2つの増幅要素13a、13bから成る部材の全高は、5.0mm~1.0mmであることができる。第1の実施例では、全高は2.4mmである。第2の実施例では、全高は1.7mmである。
【0100】
圧電アクチュエータ11及び増幅要素13a、13bの電子デバイス内での使用にとって、小型化は重要な観点である。ここで説明された特定の寸法を有する部材を使用することにより、触覚信号を発生させ、その際に非常に小さなスペースしか必要としない部材が提供される。上述した寸法を有する部材は、例えば、携帯電話又は時計ケースの操作パネルの下に配置することができる。
【0101】
60Vの電圧を印加した場合、第1の実施例では、25μmの自由撓み又は上昇、及び、3.5Nのブロッキング力が得られる。その場合、剛性は0.14N/μmである。第2の実施例では、60Vの電圧を印加した場合、15μmの自由撓み又は持ち上げ、及び、2.5Nのブロッキング力が得られる。その場合、剛性は0.16N/μmである。
【0102】
ここで、アクチュエータ11に電圧が印加されると、それぞれの増幅要素13a、13bの部分領域17a、17bは、アクチュエータ11に対して相対的に第2の方向R2に移動する。第2の方向R2は、第1の方向R1に対して垂直である。第2の方向R2は、積層方向Sに沿って延びている。
【0103】
特に、中央領域19a、19bは、第2の方向R2に移動する。その場合、それぞれの増幅要素13a、13bは、中央領域19a、19bと接続領域20a、20bとの間、及び、接続領域20a、20bと端部領域18a、18bとの間の移行部で湾曲する。
【0104】
それとは逆に、端部領域18a、18bの第2の方向R2への移動は、アクチュエータ11との接着接続部15によって阻止される。むしろ、端部領域18a、18bは、アクチュエータ11と共に第1の方向R1に移動する。したがって、端部領域18a、18bと部分領域17a、17bとの間に相対運動が生じる。
【符号の説明】
【0105】
1 装置
2 マン・マシン・インターフェース
3 操作パネル
4 圧電アクチュエータ
4a 圧電アクチュエータの上面
4b 圧電アクチュエータの下面
5 第1の増幅要素
5a 縁部領域
5b 中央領域
6 第2の増幅要素
6a 縁部領域
6b 中央領域
7 ベースプレート
8 バネ
9 測定ユニット
10 駆動回路
11 圧電アクチュエータ
12 絶縁領域
13a 増幅要素
13b 増幅要素
15 接着接続部
16 自由領域
17a,17b 部分領域
18a,18b 端部領域
19a,19b 部分領域の第1のセクション/中央領域
20a,20b 部分領域の第2のセクション/接続領域
21 内部電極
22 圧電層
23 外部電極
24 端面
25 上面
26 下面
SP スイッチングポイント
R1 第1の方向
R2 第2の方向
K1 印加電圧の推移
K2 増幅要素の撓みの推移
B アクチュエータの幅
h 自由領域の高さ
H アクチュエータの高さ
L アクチュエータの長さ
R1 第1の方向
R2 第2の方向
S 積層方向