(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】原子力施設の解体方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/30 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
G21F9/30 535A
G21F9/30 535Z
(21)【出願番号】P 2020557269
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 KR2019004665
(87)【国際公開番号】W WO2019203582
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0045649
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518442000
【氏名又は名称】コリア ハイドロ アンド ニュークリアー パワー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ソク-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒョン-ジェ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ-フン
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョン-ウ
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-230084(JP,A)
【文献】特開2017-067754(JP,A)
【文献】特開2014-055824(JP,A)
【文献】特開昭64-66371(JP,A)
【文献】特開平04-158297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器、前記原子炉圧力容器を包み込む生体保護コンクリート、及び、前記原子炉圧力容器と離隔して前記生体保護コンクリートと隣り合うコンクリート構造物を含む原子力施設の解体方法において、
前記原子炉圧力容器を前記生体保護コンクリートから分離する段階;
前記コンクリート構造物を解体する段階;
前記生体保護コンクリートをカバーする段階;および
前記生体保護コンクリートを解体する段階
を
この順に含み、
前記生体保護コンクリートをカバーする段階は、前記生体保護コンクリートを包装容器で密閉して行い、
前記原子力施設は、前記原子炉圧力容器、前記生体保護コンクリート、及び前記コンクリート構造物を格納する、格納容器をさらに含み、
前記コンクリート構造物の解体および前記生体保護コンクリートの解体は、前記格納容器の内部で行い、
前記生体保護コンクリートを解体する段階は、前記包装容器の内部空気を吸引(suction)して行い、この際、吸引部が、前記格納容器中に設置されて、前記包装容器と接続される、原子力施設の解体方法。
【請求項2】
前記コンクリート構造物は、順次に積層された第1層コンクリート、第1フロア、第2層コンクリート、第2フロア、第3層コンクリート、第3フロア、及び第4層コンクリートを含む、請求項1に記載の原子力施設の解体方法。
【請求項3】
前記コンクリート構造物を解体する段階は、
前記第4層コンクリートを解体する段階;
前記第3フロアおよび前記第3層コンクリートを解体する段階;
前記第2フロアおよび前記第2層コンクリートを解体する段階;および
前記第1フロアおよび前記第1層コンクリートを解体する段階
を含む、請求項
2に記載の原子力施設の解体方法。
【請求項4】
前記コンクリート構造物の解体、及び、前記生体保護コンクリートの解体が、いずれも
ワイヤソー(wire saw)により行われる請求項1~3のいずれかに記載の原子力施設の解体方法。
【請求項5】
前記原子炉圧力容器は、加圧軽水炉型である、請求項1に記載の原子力施設の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は原子力施設の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、原子力発電に利用される原子力施設のうち加圧軽水炉型原子力発電所は、原子炉圧力容器、原子炉圧力容器を支持する生体保護コンクリート(コンクリート製生体遮蔽体)、原子炉圧力容器と連結された蒸気発生器などの周辺施設、及び、生体保護コンクリートと隣り合って周辺施設を支持するコンクリート構造物を含む。
【0003】
原子力施設の解体時、原子炉圧力容器を支持する生体保護コンクリートは放射化された状態であるため、生体保護コンクリートを解体する場合、生体保護コンクリートと隣り合う非放射化されたコンクリート構造物が汚染されるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一実施形態は、生体保護コンクリートの解体時に周辺が汚染されることが抑制された原子力施設の解体方法を提供する。
【0005】
また、解体時間が最小化された原子力施設の解体方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面は、原子炉圧力容器、前記原子炉圧力容器を包み込む生体保護コンクリート、及び、前記原子炉圧力容器と離隔して前記生体保護コンクリートと隣り合うコンクリート構造物を含む原子力施設の解体方法において、前記原子炉圧力容器を前記生体保護コンクリートから分離する段階、前記コンクリート構造物を解体する段階、前記生体保護コンクリートをカバーする段階、および、前記生体保護コンクリートを解体する段階を含む原子力施設の解体方法を提供する。
【0007】
前記原子力施設は、前記原子炉圧力容器、前記生体保護コンクリート、前記コンクリート構造物を格納する格納容器をさらに含み、前記コンクリート構造物の解体および前記生体保護コンクリートの解体は、前記格納容器の内部で行い得る。
【0008】
前記コンクリート構造物は、順次積層された、第1層コンクリート、第1フロア、第2層コンクリート、第2フロア、第3層コンクリート、第3フロア、及び第4層コンクリートを含み得る。
【0009】
前記コンクリート構造物を解体する段階は、前記第4層コンクリートを解体する段階、前記第3フロアおよび前記第3層コンクリートを解体する段階、前記第2フロアおよび前記第2層コンクリートを解体する段階、および、前記第1フロアおよび前記第1層コンクリートを解体する段階を含み得る。
【0010】
前記生体保護コンクリートをカバーする段階は、前記生体保護コンクリートを包装容器で密閉して行い得る。
【0011】
前記生体保護コンクリートを解体する段階は、前記包装容器の内部空気を吸引(suction)して行い得る。
【0012】
前記原子炉圧力容器は加圧軽水炉型であり得る。
【発明の効果】
【0013】
一実施形態によれば、生体保護コンクリートの解体時に周辺が汚染されることが抑制された原子力施設の解体方法が提供される。
【0014】
また、解体時間が最小化された原子力施設の解体方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態による原子力施設の解体方法を示すフローチャートである。
【
図2】一実施形態による原子力施設の解体方法を説明するための図面である。
【
図3】一実施形態による原子力施設の解体方法を説明するための図面である。
【
図4】一実施形態による原子力施設の解体方法を説明するための図面である。
【
図5】一実施形態による原子力施設の解体方法を説明するための図面である。
【
図6】一実施形態による原子力施設の解体方法を説明するための図面である。
【
図7】一実施形態による原子力施設の解体方法を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付する図面を参照して本発明の一実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は様々な異なる形態で実現することができ、ここで説明する一実施形態に限定されない。
【0017】
また、明細書全体で、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0018】
以下、
図1ないし
図7を参照して一実施形態による原子力施設の解体方法を説明する。
【0019】
以下では、原子力施設として加圧軽水炉型(PWR)原子力発電所を一例として説明するが、これに限定されず原子力施設は沸騰軽水炉型(BWR)原子力発電所であり得る。
【0020】
加圧軽水炉型原子力発電所は、冷却材及び減速材として軽水を使用して、核燃料としてはウラニウム235を約2%ないし4%に濃縮して使用する。
【0021】
加圧軽水炉型原子力発電所は、原子炉内にて核分裂により発生する熱を蒸気発生器に送って熱交換させる原子炉系統に関連する施設と、蒸気発生器にて発生した蒸気でタービンを回し、その後に復水器を経て水に還元させてから、蒸気発生器へと戻して循環させる、タービンおよび発電機の系統に関連する施設とに区分されうる。
【0022】
一般的に原子炉系統の熱伝達媒体である冷却材(軽水)は、原子炉で約320℃まで加熱されるのであり、沸騰しないように約153気圧に加圧される。
【0023】
系統を構成する機器としては、一定のエンタルピーを維持するために圧力を調整する加圧器、及び、原子炉と蒸気発生器との間に冷却材を循環させる冷却材ポンプがある。
【0024】
蒸気発生器にて発生した蒸気がタービンを回して、タービン軸に連結された発電機にて電力を生産する系統は、一般火力発電所の原理と同一であり得る。
【0025】
図1は一実施形態による原子力施設の解体方法を示すフローチャートである。
図2ないし
図7は一実施形態による原子力施設の解体方法を説明するための図面である。
【0026】
まず、
図1および
図2を参照すると、原子炉圧力容器100を生体保護コンクリート300から分離する(S100)。
【0027】
【0028】
具体的には、
図2を参照すると、原子力施設1000は、原子炉圧力容器100、原子炉圧力容器100を包み込み原子炉圧力容器100を支持する生体保護コンクリート300、原子炉圧力容器100および生体保護コンクリート300と離隔して原子炉圧力容器100と連結された蒸気発生器などの周辺施設200、原子炉圧力容器100と離隔して生体保護コンクリート300と隣り合って蒸気発生器などの周辺施設200を支持するコンクリート構造物400、および、原子炉圧力容器100、生体保護コンクリート300、周辺施設200およびコンクリート構造物400を格納する格納容器500を含む。
【0029】
原子力施設1000に含まれた、原子炉圧力容器100、生体保護コンクリート300、周辺施設200、コンクリート構造物400、及び、格納容器500は、公知された多様な構造を有することができる。
【0030】
原子炉圧力容器100は加圧軽水炉型であり得るが、これに限定されない。
【0031】
一例として、原子炉圧力容器100は沸騰軽水炉型であり得る。
【0032】
原子力施設1000は、原子炉圧力容器100、生体保護コンクリート300、およびコンクリート構造物400を含む場合、多様な形態であり得る。
【0033】
まず、原子力施設1000の解体のために、格納容器500の内部に位置する原子炉圧力容器100を生体保護コンクリート300から分離する。
【0034】
原子炉圧力容器100を生体保護コンクリート300から分離する前に、原子炉圧力容器100に連結された配管などを、まず切断し得る。
【0035】
そして、格納容器500の内部に位置する蒸気発生器などの周辺施設200を、コンクリート構造物400から分離する。
【0036】
周辺施設200をコンクリート構造物400から分離する前に、周辺施設200に連結された配管などをまず切断し得る。
【0037】
原子炉圧力容器100および周辺施設200を、生体保護コンクリート300およびコンクリート構造物400からそれぞれ分離するために、生体保護コンクリート300およびコンクリート構造物400のそれぞれの一部を切断し得る。
【0038】
次に、
図3ないし
図6を参照すると、コンクリート構造物400を解体する(S200)。
【0039】
具体的には、
図3を参照すると、格納容器500の内部に位置して生体保護コンクリート300と隣り合うコンクリート構造物400は、格納容器500の底部から順次積層された、第1層コンクリート410、第1フロア420、第2層コンクリート430、第2フロア440、第3層コンクリート450、第3フロア460、及び、第4層コンクリート470を含む。
【0040】
コンクリート構造物400の解体は、格納容器500の内部で行う。コンクリート構造物400の解体は、ワイヤソー(wire saw)等のコンクリート切断手段を利用して行い得る。
【0041】
まず、生体保護コンクリート300の周辺の第4層コンクリート470を除染および解体する。
【0042】
次に、
図4を参照すると、生体保護コンクリート300の周辺の第3フロア460および第3層コンクリート450を除染および解体する。
【0043】
次に、
図5を参照すると、生体保護コンクリート300の周辺の第2フロア440および第2層コンクリート430を除染および解体する。
【0044】
次に、
図6を参照すると、生体保護コンクリート300の周辺の第1フロア420および第1層コンクリート410を除染および解体する。
【0045】
このように、コンクリート構造物400を解体する際、高放射化領域である生体保護コンクリート300は残し、生体保護コンクリート300の周辺に位置するコンクリート構造物400をまず解体することによって、生体保護コンクリート300の解体によるコンクリート構造物400の汚染が防止される。
【0046】
すなわち、格納容器500内部のコンクリート構造物400および生体保護コンクリート300を解体する際に、低放射化領域であるコンクリート構造物400から解体を始めることによって、高放射化領域である生体保護コンクリート300の解体時に発生する粉塵拡散により他の構造物が汚染されるということが防止される。
【0047】
また、コンクリート構造物400を解体する際、生体保護コンクリート300が柱の役割をする状態で、コンクリート構造物400に含まれた第1層コンクリート410、第1フロア420、第2層コンクリート430、第2フロア440、第3層コンクリート450、第3フロア460、及び、第4層コンクリート470を、最上層から低層への順に解体することによって、追加の安全性補強構造物の設置が不要であるため、原子力施設1000の解体時間が最小化される。
【0048】
次に、
図7を参照すると、生体保護コンクリート300をカバーする(S300)。
【0049】
具体的には、格納容器500の内部に位置する生体保護コンクリート300を、包装容器10で密閉する。包装容器10は、生体保護コンクリート300を密閉できるものであれば、公知された多様な材料を含み得る。包装容器10は、ポンプなどを含む吸引部20と連結されている。
【0050】
次に、生体保護コンクリート300を解体する(S400)。
【0051】
具体的には、吸引部20を利用して包装容器10の内部空気を吸引(suction)する状態で、生体保護コンクリート300を除染および解体する。
【0052】
生体保護コンクリート300の解体は、格納容器500の内部に位置する包装容器10の内部で行う。
【0053】
生体保護コンクリート300の解体は、ワイヤソー(wire saw)等のコンクリート切断手段を利用して行い得る。
【0054】
生体保護コンクリート300が包装容器10により密閉され、包装容器10の内部空気が吸引される状態で生体保護コンクリート300が解体されることによって、高放射化領域である生体保護コンクリート300の解体時に発生する粉塵の拡散により格納容器500の内部が汚染されるということが防止される。
【0055】
以上のように、一実施形態による原子力施設の解体方法は、格納容器500の内部に位置するコンクリート構造物400を解体する際、高放射化領域である生体保護コンクリート300は残し、生体保護コンクリート300の周辺に位置するコンクリート構造物400をまず解体することによって、生体保護コンクリート300の解体にともなう粉塵の拡散による、コンクリート構造物400の汚染および格納容器500の内部の汚染を防止する。
【0056】
また、一実施形態による原子力施設の解体方法は、格納容器500の内部に位置する生体保護コンクリート300を解体する際、生体保護コンクリート300の周辺のコンクリート構造物400をまず解体し、生体保護コンクリート300を包装容器10で密閉し、包装容器10の内部空気を吸引する状態で、生体保護コンクリート300を解体することによって、高放射化領域である生体保護コンクリート300の解体時に発生する粉塵の拡散により格納容器500内部が汚染されるということを防止する。
【0057】
すなわち、生体保護コンクリート300の解体時に周辺が汚染されることが抑制された原子力施設の解体方法が提供される。
【0058】
また、一実施形態による原子力施設の解体方法は、コンクリート構造物400を解体する際、解体しない生体保護コンクリート300が柱の役割をする状態で、コンクリート構造物400を最上層から低層への順に解体することによって、追加の安全性補強構造物設置が不必要であるため、原子力施設1000の解体時間を最小化する。
【0059】
すなわち、原子力施設1000の解体時間が最小化された原子力施設の解体方法が提供される。
【0060】
以上で本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の請求範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0061】
原子炉圧力容器100、生体保護コンクリート300、コンクリート構造物400