(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】トンネル用パッケージ型消火装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/02 20060101AFI20220817BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20220817BHJP
A62C 35/20 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A62C35/02 A
A62C3/00 J
A62C35/20
(21)【出願番号】P 2021087296
(22)【出願日】2021-05-25
(62)【分割の表示】P 2017093050の分割
【原出願日】2017-05-09
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】植田 健太郎
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-159950(JP,U)
【文献】特開2003-199841(JP,A)
【文献】特開2006-110167(JP,A)
【文献】特開2014-140430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内の長手方向に所定間隔で配設されるトンネル用パッケージ型消火装置であって、
1台のメインユニットと、1台以上のホースユニットとからなる親子ユニット構成を複数備え、
前記ホースユニットは、ノズル付きホースが格納されて構成されており、
前記メインユニットは、ノズル付きホース、および消火剤ユニットが格納され、前記消火剤ユニット内の消火剤を前記メインユニット内のノズル付きホースおよび前記ホースユニット内のノズル付きホースに供給可能に構成されている
トンネル用パッケージ型消火装置。
【請求項2】
前記ホースユニットは、前記メインユニットの消火剤ユニット内の消火剤を、自己のノズル付きホースに供給可能とする作動スイッチを備える
請求項1に記載のトンネル用パッケージ型消火装置。
【請求項3】
前記メインユニットは、前記消火剤ユニット内の消火剤を前記メインユニット内のノズル付きホースおよび前記ホースユニット内のノズル付きホースのいずれかに選択的に供給する選択弁が格納されて構成されており、
前記メインユニットおよび前記ホースユニットのそれぞれは、前記選択弁の二次側であって自己のノズル付きホースの一次側に、前記自己のノズル付きホースに供給される消火剤の供給圧力を所定の圧力に調整するオリフィスを備える
請求項1または2に記載のトンネル用パッケージ型消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内で火災が発生した際の消火に適したトンネル用パッケージ型消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、トンネル内の長手方向に所定間隔で配置された消火栓装置がある(例えば、特許文献1参照)。このような分散配置を行うことで、トンネル内で火災が発生した際には、火災発生場所の近傍に配置された消火栓装置を用いて、消火を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1に係るような従来の消火栓装置の設置にあたっては、消火栓装置用の配水本管をトンネル全長に亘って配設する必要がある。さらに、従来の消火栓装置は、大型の水槽、ポンプを設置する必要があった。このような制約により、装置構成が複雑、大型化するとともに、施工コストが増大する問題があった。
【0005】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、トンネルにおいて、簡便に設置でき、施工コストの削減を図るとともに、消火に必要な消火剤の放出量を適切に確保することのできるトンネル用パッケージ型消火装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトンネル用パッケージ型消火装置は、トンネル内の長手方向に所定間隔で配設されるトンネル用パッケージ型消火装置であって、1台のメインユニットと、1台以上のホースユニットとからなる親子ユニット構成を複数備え、ホースユニットは、ノズル付きホースが格納されて構成されており、メインユニットは、ノズル付きホース、および消火剤ユニットが格納され、消火剤ユニット内の消火剤をメインユニット内のノズル付きホースおよびホースユニット内のノズル付きホースに供給可能に構成されているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消火栓装置に代えて、1台のメインユニットと1台以上のホースユニットとからなる親子ユニット構成を複数台設置するような配置構成を採用している。この結果、トンネルにおいて、簡便に設置でき、施工コストの削減を図るとともに、消火に必要な消火剤の放出量を適切に確保することのできるトンネル用パッケージ型消火装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1によるパッケージ型消火装置のメインユニットの構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態1によるパッケージ型消火装置のメインユニットの正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1によるパッケージ型消火装置のホースユニットの構成を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態1におけるトンネル用パッケージ型消火装置を構成する各ユニットの配置を示したレイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のトンネル用パッケージ型消火装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0010】
本発明の係るトンネル用パッケージ型消火装置は、ノズル付きホースと消火剤ユニットを備えたメインユニットと、消火剤ユニットがなく、ノズル付きホースを備えたホースユニットとからなる親子ユニット構成を複数台設置する際に、異なる親子ユニット構成に属するユニットが隣接して配置されていることを技術的特徴とするものである。
【0011】
実施の形態1.
まず始めに、パッケージ型消火装置のメインユニットの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1によるパッケージ型消火装置のメインユニットの構成を示す説明図であり、開閉扉を開いた状態の正面図として示している。なお、
図1のパッケージ型消火装置のメインユニットは、泡状の消火剤を噴射する泡消火装置のものを一例と示しているが、本願は、これに限定されない。
【0012】
また、
図2は、本発明の実施の形態1によるパッケージ型消火装置のメインユニットの正面図であり、開閉扉を閉じた状態を示している。
図1において、筐体1は、前面にほぼ全体に渡って広がる開口を有する箱状の筐体である。筐体1の前面の開口は、
図2に示す開閉扉1aによって、開閉自在に覆われている。
【0013】
原液タンク2は、消火剤としての泡原液を充填したタンクである。消火用ホース3は、保形性能を有する、例えば、長さ方向に垂直な断面が中空円形状のゴムホースである。そして、この消火用ホース3は、基端が原液タンク2側に接続されて消火剤の供給を受け、先端に消火用ノズル4が接続されている。ホース格納箱5は、筐体1の左側面側に設けられ、消火用ホース3および消火用ノズル4を収納する。
【0014】
加圧用ガスボンベ6は、加圧ガス(例えば、窒素ガス)を充填したタンクで、ソレノイドバルブ6aが操作されることにより、加圧ガスが放出され、レギュレータ7により加圧ガスの圧力が調整される。
【0015】
水タンク10は、泡原液と混合される水が蓄えられたタンクである。水タンク10内の水は、配管P1を介して供給される加圧ガスにより押し出され、配管P2を経由して混合器11に供給される。そして、混合器11は、配管P3を経由して供給される泡原液と、配管P2を経由して供給される水とを混合して泡水溶液を生成する。生成された泡水溶液は、配管P4を経由して消火用ホース3に供給される。
【0016】
なお、
図1に示すように、配管P1、P2、P3のそれぞれには、メンテナンス時に手動で開閉操作が可能なメンテナンス弁MV1、MV2、MV3がそれぞれ配置されている。また、配管P4には、
図1に示すように、選択弁V1、V2、V3がそれぞれ配置されている。
【0017】
ここで、選択弁V1の出力側は、
図1に示したメインユニットの消火用ホース3に接続されている。従って、選択弁V1を開状態に手動操作することで、消火用ホース3を介して、メインユニットの消火用ノズル4に泡水溶液が供給されて、当該消火用ノズル4から消火用泡を放出することができる。一方、選択弁V2、V3の出力側は、ホースユニットに接続されている。
【0018】
以上の説明において、消火用ホース3および消火用ノズル4は、ノズル付きホースの各構成要素に相当する。また、原液タンク2、加圧用ガスボンベ6、ソレノイドバルブ6a、レギュレータ7、水タンク10、混合器11は、消火剤ユニットの各構成要素に相当する。
【0019】
図3は、本発明の実施の形態1によるパッケージ型消火装置のホースユニット200の構成を示す説明図であり、開閉扉を開いた状態の正面図として示している。なお、ホースユニットに関しては、開閉扉を閉じた状態の図示を省略している。
【0020】
ホースユニット200は、消火用ホース203と、消火用ホース203の一端に接続された消火用ノズル204を備えて構成されている。ここで、ホースユニット200内の消火用ホース203は、メインユニット100内の消火用ホース3と同様の構成、機能を有する。また、消火用ノズル204は、メインユニット100内の消火用ノズル4と同様の構成、機能を有する。
【0021】
従って、ホースユニット200内には、ノズル付きホースの構成要素が設けられている。そして、メインユニット100内の選択弁V2あるいは選択弁V3を開状態に手動操作することで、その先に接続されたホースユニット200内の消火用ホース203を介して、ホースユニット200の消火用ノズル204から消火用泡を放出することができる。
【0022】
次に、
図1に示したメインユニット100と
図3に示したホースユニット200を組み合わせてなるパッケージ型消火装置の親子ユニット構成を複数備えたトンネル用パッケージ型消火装置について、
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の実施の形態1におけるトンネル用パッケージ型消火装置を構成する各ユニットの配置を示したレイアウト図である。
【0023】
図4では、1台のメインユニット100A、2台のホースユニット200A(1)、200A(2)からなる親子ユニット構成Aと、1台のメインユニット100B、2台のホースユニット200B(1)、200B(2)からなる親子ユニット構成Bとを組み合わせて配置した状態を例示している。
【0024】
本実施の形態1におけるトンネル用パッケージ型消火装置は、
図4の構成を例にすると、各ユニットを以下のように配置したことを技術的特徴としている。
・メインユニット100A、ホースユニット200A(1)、200A(2)、メインユニット100B、ホースユニット200B(1)、200B(2)のそれぞれのユニットは、トンネル内の長手方向に所定間隔(例えば、50メートル)で配設されている。
・異なる親子ユニット構成に属するユニット同士が隣接するように、配置されている。なお、各ユニットにおける消火用ホース3、203は、全長40mであり、消火用ノズル4、204による射程は、10mであり、その合計は、前記所定間隔と同一の50mである。
【0025】
このような配置構成とすることで、本実施の形態1におけるトンネル用パッケージ型消火装置は、以下のような効果を得ることができる。
(効果1)簡便な設置構成の実現
トンネルにおいて、消火栓装置に代えて、
図4に示すような構成でパッケージ型消火装置を設置したので、施工コストを大幅に削減することができる。すなわち、原液タンク2および水タンク10の容量によって放出可能な泡消火剤(消火用泡)の量は制限されるものの、消火栓装置用の配水本管をトンネル全長に亘って配設する必要がなく、大型の水槽、ポンプを設置する必要もない。
【0026】
(効果2)放出量の確保
本発明で採用しているパッケージ型消火装置は、上述したように、原液タンク2および水タンク10の容量によって放出可能な泡消火剤の量が制限される。ただし、
図4に示したように、本実施の形態1では、異なる親子ユニット構成に属するユニット同士が隣接するように、配置構成を工夫している。
【0027】
この結果、隣接するユニットから同時に泡消火剤を放出することで、メインユニット内の原液タンク2および水タンク10の容量によって制限される放出量の2倍分を、同一領域の消火に利用することができる。
【0028】
なお、
図4では、2つの親子ユニット構成を配置する場合を例示したが、3つ以上の親子ユニット構成を配置することも可能である。例えば、3つの親子ユニット構成を採用することで、3つのユニットが並んだ領域には、それぞれ個別のメインユニットから泡消火剤を供給することができる。この結果、1台のメインユニット内の原液タンク2および水タンク10の容量によって制限される放出量の3倍分を、同一領域の消火に利用することができる。
【0029】
逆に、例えば、2台の親子ユニット構成を用いる設置環境において、2倍分の放出量までは確保する必要が無い場合には、メインユニット100内の原液タンク2および水タンク10の容量を小さくすることができる。この結果、設置環境に応じて、メインユニットのサイズ、親子ユニット構成の数を適切に設計することで、トンネルにおいて、簡便に設置でき、施工コストの削減を図るとともに、消火に必要な消火剤の放出量を適切に確保することが可能となる。
【0030】
以上のように、実施の形態1によれば、トンネルにおいて、消火装置を簡便に設置でき、かつ、異なるメインユニットで生成可能な泡消火剤を、同一領域に同時に放出できるトンネル用パッケージ型消火装置を実現できる。
【0031】
なお、メインユニットに用いられるタンク(水タンク10)としては、加圧式、蓄圧式のいずれの方式も採用可能である。実施の形態1では、加圧式としたが、蓄圧式を採用した場合には、加圧用ガスボンベ6は不要となる。このとき、蓄圧式タンク内に、泡原液と水とを混合した泡水溶液を予め蓄えるようにした場合、原液タンク2および混合器11が不要となる。
また、消火剤として、上述したように、水と泡原液を混合した消火用泡(泡水溶液)を用いることで、消火用泡として発泡させて放出することができるため、タンク容量が制限されるパッケージ型には有益である。ただし、消火用泡以外の水、強化液などを消火剤として用いる場合にも、
図4に示したレイアウトを採用することで、同様の効果を得ることができる。
【0032】
また、実施の形態1では、選択弁V1、V2、V3を手動操作する場合について説明したが、コントローラ12(
図1)を介して選択弁V1、V2、V3を電動で開閉制御する構成とすることも可能である。
【0033】
例えば、メインユニット100、ホースユニット200のそれぞれに、作動スイッチ15(
図1)、215(
図3)を設け、作動スイッチ15、215の操作による操作信号をコントローラ12が受信し、ソレノイドバルブ6aの開放制御、および操作信号を出力したメインユニット100、ホースユニット200に対応する選択弁V1、V2、V3を開放制御するようにすることも可能である。また、メインユニット100の操作は、手動、ホースユニット200の操作は電動としてもよい。
【0034】
なお、前記実施の形態1において説明しなかったが、各ユニット100、200において、選択弁V1、V2、V3の二次側であって、消火用ホース3、203の一次側に設けられるオリフィス16、216は、消火用ホース3、203に供給される泡水溶液の供給圧力を所定の圧力に調整するものであり、これにより、各ユニット100、200における消火用ノズル4、204による消火用泡の射程距離を略同一とすることができる。
【0035】
また、実施の形態1において説明しなかったが、パッケージ型消火装置として、異なる親子ユニット構成に属するユニット同士が隣接するように配置されていなくてもよく、また、親子ユニット構成を採用せずに、親ユニットのみからなる構成を採用してもよく、その場合であっても、上述した効果1を奏することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 筐体、1a 開閉扉、2 原液タンク、3 消火用ホース、4 消火用ノズル、5 ホース格納箱、6 加圧用ガスボンベ、6a ソレノイドバルブ、7 レギュレータ、10 水タンク、11 混合器、12 コントローラ、15 作動スイッチ、16 オリフィス、100、100A、100B メインユニット、200、200A、200B ホースユニット、203 消火用ホース、204 消火用ノズル、215 作動スイッチ、216 オリフィス、V1、V2、V3 選択弁。