(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】印刷用メタルマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/24 20060101AFI20220817BHJP
B41C 1/14 20060101ALI20220817BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B41N1/24
B41C1/14 101
H05K3/12 610P
(21)【出願番号】P 2021215539
(22)【出願日】2021-12-17
【審査請求日】2022-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220170
【氏名又は名称】東京プロセスサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】茂木 正
(72)【発明者】
【氏名】池上 洋一
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-168255(JP,A)
【文献】特開2015-217641(JP,A)
【文献】特開2021-066067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/24
B41C 1/14
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲線部分を有する印刷パターンを形成するための印刷用メタルマスクの製造方法であって、
導電性基板上に、フォトリソグラフィ法により、所定のパターンで第一レジスト層を形成する工程と、
前記導電性基板上に電気めっきにより、第一レジスト層に対応するメッシュ開口を有する第一金属層を形成する工程と、
前記第一金属層の上に、フォトリソグラフィ法により、前記印刷パターンに対応する大きさと形状で、第二レジスト層を形成する工程と、
前記第一金属層の上に、電気めっきにより、第二レジスト層に対応する印刷用開口を有する第二金属層を、前記第一金属層と一体的に形成する工程と、
前記第一レジスト層と前記第二レジスト層を除去して、前記メッシュ開口と前記印刷用開口を露出させ、前記第一金属層と前記第二金属層を前記導電性基板から剥離する工程と、を備え、
前記メッシュ開口は、前記印刷用開口より小さく、前記曲線部分に対応する部分を含む前記印刷用開口の一部または全部を覆う様に形成されるとともに、前記曲線部分の内側に配置されるものが、外側に配置されるものに比べて同等または大きく形成されている、
ことを特徴とする、印刷用メタルマスクの製造方法。
【請求項2】
前記印刷パターンは、細線状、ドーナツ状、円状、多角形状、またはこれらの組み合わせである、
ことを特徴とする、請求項1に記載の印刷用メタルマスク
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板やウエハー、グリーンシートなどのワーク上に、銀ペースト等の導電性ペーストや、ガラスペースト等の絶縁性ペースト(以下「導電性ペースト等」という)を印刷するための印刷用メタルマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に導電性ペースト等を印刷することで電子回路や電子部品を形成するプリンテッドエレクトロニクスには、一般に、
図9のように金属製の薄板であるマスク母材の面内に、印刷パターンに対応した形状と大きさで印刷用開口102が形成された印刷用メタルマスク101を、スクリーンメッシュSにより金属枠Fに張設した、印刷版100が従来から使用されてきた。
【0003】
ここで、プリンテッドエレクトロニクスに代表されるような、曲線部分を含むような、複雑で微細な印刷パターンを形成する場合には、それに対応して印刷用開口102も複雑な形状となるため、それを保持するための構造が必要となる。
【0004】
そこで、
図10の様に、ステンレス製のスクリーンメッシュSに印刷用メタルマスク101を電気ニッケルめっきで固着したものが広く用いられてきた(例えば特許文献1参照)。
図10は、印刷用メタルマスク101の、印刷面(被印刷物に対向する側)から見た印刷用開口102である。
【0005】
この形態では、スクリーンメッシュSの張力により、印刷用開口102の形状を保持しており、導電性ペースト等は、スクリーンメッシュSの網目の隙間であるメッシュ開口103を通じて被印刷物に転写される。
【0006】
この場合、スクリーンメッシュSは一定のパターンで編まれている一方で、印刷用開口102は多様で複雑な形状をしており、曲線部分を有する印刷パターンを形成するような場合、それに対応する印刷用開口102の特に曲線部分では、
図10の様に、局所的にメッシュ開口103が極めて小さくなり、導電性ペースト等が適正に印刷できなくなるという問題があった。これは、印刷パターンが微小になり、メッシュスクリーンSの線の太さが印刷用開口102の大きさに対して無視できないような場合に特に顕著である。
【0007】
一方で、
図11の様に、印刷用メタルマスク201を第一金属層M1と第二金属層M2が密着して一体化した多層構造とし、第一金属層M1に架橋部204を、第二金属層M2に印刷用開口202を形成して、架橋部204で印刷用開口202を保持する方法も用いられている(例えば特許文献2参照)。
【0008】
なお、この場合、スクリーンメッシュSは、印刷用メタルマスク201にテンションを与えて金属枠Fに張設して印刷版(図示略)を形成しているが、印刷用メタルマスク201の四辺に固着しており、印刷用メタルマスク201の内部に被る部分は、製造工程において切除されており、印刷用メタルマスク101と異なり、印刷用開口202を覆うような構造にはなっていない。
【0009】
ここで、導電性ペースト等は、架橋部204により形成されたメッシュ開口203(必要に応じて非曲線部分をメッシュ開口203a、曲線部分の内側をメッシュ開口203b、曲線部分の外側をメッシュ開口203cとして区別する)を通じて被印刷物に転写されるが、印刷用開口202が微小で曲線部を持つような構造の場合には、やはり曲線部分の内側のメッシュ開口203bが極端に小さくなり、導電性ペースト等が通過しづらくなり、印刷品質の低下の原因となっていた。
【0010】
一方で、導電性ペースト等の通過性を向上させるために、架橋部204を細くしたり、間隔を広げたり、本数を減らしたりすると、スクリーンメッシュSによる張力や、印刷時のスキージによる圧力により個々の架橋部204にかかる荷重が増えるため、破断しやすくなり、印刷用メタルマスク201の構造強度の低下を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2015-217641
【文献】特開2021-066067
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、上記の事情に鑑み、曲線部分を有する微細で複雑な印刷パターンを、高品質で印刷することができる印刷用メタルマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、このような印刷パターンに対応した印刷用開口を保持するためのメッシュ開口の破断を抑制して、構造強度の高い印刷用メタルマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、曲線部分を含む複雑な形状の印刷パターンでも印刷用開口の形状を適正に保持することが可能な印刷用メタルマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、曲線部分を有する印刷パターンを形成するための印刷用メタルマスクの製造方法であって、導電性基板上に、フォトリソグラフィ法により、所定のパターンで第一レジスト層を形成する工程と、前記導電性基板上に電気めっきにより、第一レジスト層に対応するメッシュ開口を有する第一金属層を形成する工程と、前記第一金属層の上に、フォトリソグラフィ法により、前記印刷パターンに対応する大きさと形状で、第二レジスト層を形成する工程と、前記第一金属層の上に、電気めっきにより、第二レジスト層に対応する印刷用開口を有する第二金属層を、前記第一金属層と一体的に形成する工程と、前記第一レジスト層と前記第二レジスト層を除去して、前記メッシュ開口と前記印刷用開口を露出させ、前記第一金属層と前記第二金属層を前記導電性基板から剥離する工程と、を備え、前記メッシュ開口は、前記印刷用開口より小さく、前記曲線部分に対応する部分を含む前記印刷用開口の一部または全部を覆う様に形成されるとともに、前記曲線部分の内側に配置されるものが、外側に配置されるものに比べて同等または大きく形成されている、ことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の印刷用メタルマスクの製造方法であって、前記印刷パターンは、細線状、ドーナツ状、円状、多角形状、またはこれらの組み合わせである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から2の発明によれば、印刷用開口の形状の保持のために、一定のパターンで編まれたメッシュの代わりに、任意に設計されたメッシュ開口が設置されているため、導電性ペースト等が通過する空間の部分的なバラつきが少なく、印刷品質を向上させることが可能となる。
【0017】
また、曲線部分のメッシュ開口が、その内側に対応するものの一部または全部が、外側に対応するものに比べて同等または大きく形成されているために、曲線部分を有する微細な印刷パターンを形成する場合においても、印刷品質を向上させることが可能となる。
【0018】
また、曲線部分の外側に対応するメッシュ開口には、内側に比べて架橋部が多く配置されているため、メッシュ開口の破断を抑制して、印刷用メタルマスクの構造強度を高めることが可能となる。
【0019】
請求項2の発明によれば、細線状、ドーナツ状、円状、多角形状、またはこれらの組み合わせからなる複雑で微細な形状の印刷パターンを形成する場合でも、印刷用開口の形状を適正に保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る、印刷用メタルマスクの概略の正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る、印刷用メタルマスクの印刷用開口とメッシュ開口の概略の正面図(a)と側面(X
1-X
1)断面図(b)である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る、印刷用メタルマスクの製造方法を示す概略の工程フロー図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る、印刷用メタルマスクの製造方法を示す概略の工程フロー図である。
【
図5】本発明の実施の形態2に係る、印刷用メタルマスクの印刷用開口とメッシュ開口の概略の正面図である。
【
図6】本発明の別の実施の形態に係る、印刷用メタルマスクの印刷用開口とメッシュ開口の概略の正面図である。
【
図7】本発明の別の実施の形態に係る、印刷用メタルマスクの印刷用開口とメッシュ開口の概略の正面図である。
【
図8】本発明の別の実施の形態に係る、印刷用メタルマスクの印刷用開口とメッシュ開口の概略の正面図(a)と側面(X
2-X
2)断面図(b)である。
【
図10】従来の印刷用メタルマスクの印刷用開口と、メッシュ開口の概略の正面図(a)と側面(X
3-X
3)断面図(b)である。
【
図11】従来の印刷用メタルマスクの印刷用開口と、メッシュ開口の概略の正面図(a)と側面(X
4-X
4)断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面において、図面中の各部の構成の大きさ、間隔、数、その他詳細は、視認と理解の助けのために、実際の物に比べて大幅に簡略化して表現している。
【0022】
発明の実施の形態1
図1は発明の実施の形態1に係る、印刷用メタルマスク1の概略の正面図である。印刷用メタルマスク1は、
図1、
図2に示すように、平板状のマスク母材11と、マスク母材11の面内に形成された印刷用開口12と、同様に形成されたメッシュ開口13を備えている。メッシュ開口13は、印刷用開口12と連結して、貫通孔を形成している。ここで、
図1、2は、印刷用メタルマスク1と印刷用開口12を、被印刷物と対向する側から見たものであり、以降の図と実施の形態においても同様とする。
【0023】
マスク母材11は、一辺が200~800mmの四辺形(正方形または長方形)の金属製の平板であり、本実施の形態1では従来の印刷用メタルマスク201の場合と同様に、使用時にスキージを滑動させる面(スキージ面)となる第一金属層M1と、印刷物に対向する面(印刷面)となる第二金属層M2が、密着して一体化された二層構造をしている。厚さは第一金属層M1が5~100μm、第二金属層M2が1~200μmに設定されている。
【0024】
印刷用開口12は、マスク母材11の片側(本実施の形態では、第二金属層M2)の面内に、印刷パターンに対応した大きさと形状で、第二金属層M2を貫通するように形成されている。また、本実施の形態1では、略J字形状をしており、その一部に曲線部分を有している。
【0025】
また、印刷用開口12は、最大寸法が0.03~1.0mm程度の大きさであり、図のようにマスク母材11の面内に複数個形成されている。
【0026】
メッシュ開口13は、マスク母材11の、印刷用開口11と反対側(本実施の形態では第一金属層M1)の面内に、印刷用開口12より小さく、印刷用開口12の曲線部分に対応する部分を含む印刷用開口12の全部と同じ領域に、印刷用開口12を覆う様に複数形成されており、その寸法は一辺が0.01~0.1mm程度である。
【0027】
また、メッシュ開口13が形成されている領域は、従来の印刷版の場合と同様に、印刷用開口12の形状と相似的に小さく設定されており、
図2(b)のように、第一金属層M1が印刷用開口12の内側に0.001~0.03mm程度せり出す形になっている。
【0028】
メッシュ開口13(以下、必要に応じて非曲線部分をメッシュ開口13a、曲線部分の内側をメッシュ開口13b、曲線部分の外側をメッシュ開口13cとして区別する)は、印刷用開口12の非曲線部分のメッシュ開口13aでは、その大きさは略同一に設定されているが、曲線部分では、曲線の内側(曲率が大きい側)のメッシュ開口13bは、曲線の外側(曲率の小さい側)のメッシュ開口13cより大きく形成されている。
【0029】
ここで、本実施の形態1では、二つのメッシュ開口13の大小の比較は、単純な面積の大小ではなく、実際の印刷時における導電性ペースト等の通過性を鑑みて、一方が他方の内部に収まるように重ね合わせることができるかどうかで判定している。すなわち、本実施の形態1では、曲線の外側のメッシュ開口13cと内側の13bを重ねた場合、メッシュ開口13cは13bの内部に収まるので、メッシュ開口13bの方が13cより大きいと判定される。一方、メッシュ開口13を形成する全ての辺が略一致する場合、大きさは同一と判定する。さらに、一部の辺が略重なり合うが、一方の残りの辺が他方の内部に位置するような場合も、後者が前者より大きいとする。
【0030】
メッシュ開口13の外形は、印刷用開口12の形状を保持するために、第一金属層M1の印刷用開口12の曲線部分に対応する部分を含む印刷用開口12の全部と同じ領域に、印刷用開口12を覆う様に形成された、架橋部14により形作られている。
【0031】
本実施の形態1では、架橋部14は、印刷用開口12の曲線部に沿って伸長し、印刷用開口12の内側にせり出した第一金属層M1の短辺同士を接続する架橋部14aと、これと交差する方向に伸長し、同様に第一金属層M1の長辺同士を接続する架橋部14bと、架橋部14a同士または架橋部14aと第一金属層M1の長辺とを接続する、架橋部14cにより構成されている。架橋部14の幅は,印刷中に破断しない強度を確保できるとともに、隣接するメッシュ開口13から吐出された導電性ペースト等が,隔離せずに接続されうる程度の範囲である必要があり、本実施の形態1では、0.01~0.1mm程度である。
【0032】
架橋部14cは、14aと14bにより形成されたメッシュ開口13を分割し、曲線部の外側のメッシュ開口13cが内側のメッシュ開口13bより小さくするように配置されている。
【0033】
次に、
図3、4を参照しながら、印刷用メタルマスク1の製造方法について説明する。本実施の形態1において、印刷用メタルマスク1は、フォトリソグラフィ法と電気めっき法を用いて製造される。
【0034】
先ず、電気めっきの電極であり、めっきを析出させるめっき基材となる導電性基板Sbを準備する(a)。導電性基板は、取り扱い性と、めっき中のめっき液内での安定性を考慮して好適な厚さと素材を選択するが、本実施の形態では、1mmの長方形状のステンレス材を使用している。また、長方形の寸法は、製造する印刷用メタルマスク1の大きさを考慮して、適切なサイズの物を選択する。本実施の形態1では、長辺650mm、短辺550mmのものを使用している。
【0035】
次に、導電性基板上に、フォトレジストFRのドライフィルムを被覆して(b)、露光機により、メッシュ開口13のパターンに対応してフォトレジストFRを露光し(c)、現像機で未露光部分を溶融させ除去して、第一レジスト層R1を形成する(d)。ここで、露光機はフォトマスクを使用せずにフォトレジストFRに所定のパターンで直接光を照射する、直描型を用いた。ここで、第一レジスト層R1の大きさ、形状、配置は、メッシュ開口13に対応している。
【0036】
次に、第一レジスト層R1が形成された導電性基板上に、電気めっき法により、第一金属層M1を形成する(e)。第一金属層M1には、第一レジスト層R1に対応するメッシュ開口13が形成される。ここで、本実施の形態1では、電気めっき法は、スルファミン酸ニッケルをベースとしためっき液を用いた。
【0037】
次に、第一金属層M1と第一レジスト層R1の上に、フォトレジストFRのドライフィルムを被覆して(f)、露光・現像を行い、印刷パターンすなわち印刷用開口12に対応する大きさと形状と配置で、第二レジスト層を形成する(g、h)。ここで、第二レジスト層R2は、メッシュ開口13が形成されている領域よりも、0.001~0.03mm外側にまで形成され、これにより第一金属層M1が印刷用開口12の内側にせり出す構造が形成される。
【0038】
次に、第一金属層M1の上に電気めっき法により、第二金属層M2を形成する。第二金属層M2には、第二レジスト層R2に対応する印刷用開口12が形成される(i)。第二金属層M2は、第一金属層M1と密着して一体的に形成され、マスク母材11を形成している。ここで、前述のように、メッシュ開口13は、印刷用開口12より小さく、印刷用開口の曲線部分に対応する部分を含む印刷用開口12の一部または全部を覆う様に形成されるとともに、曲線部分の内側に配置されるものの一部または全部が、外側に配置されるものに比べて同等または大きく形成されている。
【0039】
次に、レジスト剥離液中に、導電性基板を浸漬して第一レジスト層R1と第二レジスト層R2を除去し、メッシュ開口13と印刷用開口12を露出させる。本実施の形態1では、レジスト剥離液は苛性ソーダ水溶液を使用した。
【0040】
次に、マスク母材11を導電性基板から剥離することで、印刷用メタルマスク1が完成する(j)。
【0041】
本実施の形態1では、印刷用メタルマスク1は前述の印刷版と同様に、金属枠Fに、ポリエステルメッシュMを介して張設して印刷版として用いられる。
【0042】
この発明によれば、印刷用開口12の形状の保持のために、一定のパターンで編まれたメッシュMの代わりに、任意に設計されたメッシュ開口13が設置されているため、導電性ペースト等が通過する空間の部分的なバラつきが少なく、印刷品質を向上させることが可能となる。
【0043】
また、曲線部分のメッシュ開口13が、その内側に対応するメッシュ開口13bの一部または全部が、外側に対応するメッシュ開口13cに比べて同等または大きく形成されているために、曲線部分を有する微細な印刷パターンを形成する場合においても、印刷品質を向上させることが可能となる。
【0044】
また、曲線部分の外側に対応するメッシュ開口13cには、内側に比べて架橋部14が多く配置されているため、メッシュ開口13cの破断を抑制して、印刷用メタルマスク1の構造強度を高めることが可能となる。
【0045】
さらに、細線状、ドーナツ状、円状、多角形状、またはこれらの組み合わせからなる複雑で微細な印刷パターンを形成する場合でも、印刷用開口12の形状を適正に保持することが可能である。
【0046】
発明の実施の形態2
図5は、発明の実施の形態2に係る、印刷用メタルマスク2(図示略)の印刷用開口22とメッシュ開口23の概略の正面図である。ここで、本実施の形態2において、実施の形態1と共通の要素は図示や説明を省略する。また、その製造方法についても、実施の形態1と同様である。
【0047】
印刷用開口22は、大小2つの同心円から構成されるドーナツ状の形状をしており、内円の直径が0.5~1.0mm、外円の直径が1.5~3.0mmに設定されている。
【0048】
また、メッシュ開口23は、略楕円形状をしており、印刷用開口22と連結して、貫通孔を形成している。本実施の形態2においては、メッシュ開口23の大きさは、印刷用開口22の曲線部の内側(すなわち内円の近傍)と外側(外円の近傍)とで同等としており、長軸が0.01~0.2mmであり、短軸が0.005~0.1mmである。
【0049】
また、メッシュ開口23が形成されている領域は、実施の形態1と同様に、印刷用開口22の形状と相似的に小さく設定されており、内円及び外円と同心円状に配置されている。
【0050】
印刷用開口22は、ドーナツ形状であり、全体が曲線から構成されており、メッシュ開口23は、全体的に曲線の内側(曲率が大きい側)のメッシュ開口23と、曲線の外側(曲率の小さい側)と同等の大きさに形成されている。
【0051】
架橋部24は、印刷用開口22の外円及び内円と略同心円の方向には切れ目なく形成されているが、一方で、その直径方向には特段の方向性を持たずに、不規則に配置されている。
【0052】
この発明によれば、印刷用開口22の形状の保持のために、一定のパターンで編まれたメッシュMの代わりに、任意に設計されたメッシュ開口23が設置されているため、導電性ペースト等が通過する空間の部分的なバラつきが少なく、印刷品質を向上させることが可能となる。
【0053】
また、曲線部分のメッシュ開口23が、その内側に対応するものの全部が、外側に対応するものに比べて同等の大きさに形成されているために、曲線部分を有する印刷パターンを形成する場合においても、印刷品質を向上させることが可能となる。
【0054】
さらに、細線状、ドーナツ状、円状、多角形状、またはこれらの組み合わせからなる印刷パターンを形成する場合でも、印刷用開口22の形状を適正に保持することが可能である。
【0055】
以上、本実施の形態1、2について説明したが、本願発明の範囲は以上の実施の形態に限られるものではなく、これと同視しうる他の形態に対しても及ぶ。
【0056】
例えば、架橋部14は、
図6、7の様な形態もとりうる。ここで、実施の形態と同一の構成については、特に必要のない限り、説明を省略する。
【0057】
図6において、メッシュ開口33(以下、必要に応じて非曲線部分をメッシュ開口33a、曲線部分の内側をメッシュ開口33b、曲線部分の外側をメッシュ開口33cとして区別する)は、曲線部の内側のメッシュ開口33bと、外側のメッシュ開口33cとで、略同じ大きさに設定している。そのため、長辺同士を接続する架橋部14bのようなものを設けずに、架橋部34cを適宜配置して、メッシュ開口33b、33cの大きさを調節している(曲線部の中間の領域についても同様である)。これにより、さらに曲線部の内側と外側による印刷量のバラツキを低減して、印刷品質を向上させることが可能となる。
【0058】
また、
図7のように、曲線の部分の方向に沿った架橋部44dの配置を、非等間隔にすることで、さらにメッシュ開口43b、43cの大きさの微妙な調整が可能となり、より微小な印刷用開口44や、曲線部の曲率が大きい印刷用開口44に対しても、良好な印刷品質を保つことが可能となる。
【0059】
また、実施の形態2において、印刷用開口52の内円及び外円と同心円状に、第一金属層の架橋部54に、第二金属層M2と同じ厚さでリブ部55を形成することで、より、微細な曲線を印刷することが可能となる。
【0060】
さらに、印刷用メタルマスク1の製造方法は、電気めっき法に限られず、エッチング法、レーザ加工法、無電解めっき法なども用いてもよい。例えば、第一金属層M1と第二金属層M2を別個にエッチング法またはレーザ加工法で作製して、これらを電気めっき法で接合しても、製造が可能である。また、無電解めっき法を用いることで、電気めっき法を用いた場合に発生しがちな、めっき皮膜の厚さのバラツキをなくすことができるので、厚さ精度の良い、印刷用メタルマスク1を得ることが可能となる。
【0061】
また、上記の実施の形態では、メッシュ開口13は、印刷用開口12の全体に渡って設けていたが、必ずしもこれに限られず、印刷用開口12の曲線部分の形状保持ができるのであれば、印刷用開口12の一部にだけ設けても良い。これにより、設計や製造の簡略化が図れるので、生産性を向上させることが可能となる。
【0062】
また、メッシュ開口13は、曲線部分の曲率が小さい場合(すなわち曲がり方が緩い場合)は、必ずしも曲線部分の内側に対応するもの全てが外側に対応するものより同等または大きく形成されていなくてもよく、必要に応じて一部のメッシュ開口13だけであってもよい。これにより、さらなる設計や製造の簡略化が図れるので、より生産性を向上させることが可能となる。
【0063】
また、細線状、ドーナツ状、円状、多角形状、またはこれらの組み合わせである、印刷パターンの印刷に対応した、印刷用開口12、メッシュ開口13を設定しても良い。
【0064】
また、必ずしも金属枠Fに張設してコンビネーション版としなくとも、印刷用メタルマスク1を湾曲し、対辺を接合させてロール形状にして使用してもよい。
【0065】
また、製造方法において使用するフォトレジストFRは、ドライフィルムに限られず、液状レジストを用いてもよい。
【0066】
また、フォトレジストFRの露光は、直描型に限られず、フォトマスク(Crマスク、ガラスマスクなど)を使用した、露光法を使用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 印刷用メタルマスク
11 マスク母材
12、22、32、42、52 印刷用開口
13、23、33、43、53 メッシュ開口
14、24、34、44、54 架橋部
【要約】
【課題】 曲線部分を有する微細な印刷パターンを、高品質で印刷することができ、印刷用開口を保持するためのメッシュ開口の破断を抑制して、構造強度が高く、曲線部分を含む複雑な形状の印刷パターンでも印刷用開口の形状を適正に保持することが可能な印刷用メタルマスクを提供する。
【解決手段】 印刷用メタルマスクは、第一金属層と第二金属層の二層構造で形成され、第二金属層には印刷パターンに対応した印刷用開口が、第一金属層には、印刷用開口を保持するための複数のメッシュ開口が形成され、メッシュ開口は、印刷用開口と連結して、貫通孔を形成するとともに、曲線部分の内側に対応するものが、外側に対応するものに比べて同等または大きく形成されている、
【選択図】
図2