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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】印刷用メタルマスク
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/24 20060101AFI20220817BHJP
   B41C 1/14 20060101ALI20220817BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B41N1/24
B41C1/14 101
H05K3/12 610P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021215540
(22)【出願日】2021-12-17
【審査請求日】2022-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220170
【氏名又は名称】東京プロセスサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】茂木 正
(72)【発明者】
【氏名】大田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】木村 幹
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-008662(JP,A)
【文献】特開2015-217641(JP,A)
【文献】特開2021-066067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/24
B41C 1/14
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の平板であるマスク母材と、
前記マスク母材の片側の面内に、印刷パターンに対応した大きさと形状で形成された複数の印刷用開口と、
前記マスク母材の反対側の面内に、前記印刷用開口より小さく、前記印刷用開口の一部または全部を覆う様に形成された複数のメッシュ開口と、を備え、
前記印刷用開口は前記メッシュ開口と連結して貫通孔を形成し、
前記メッシュ開口は、その一部または全部が互いに略同形状をしており、前記印刷パターンの内側に対応する前記メッシュ開口の一部または全部の開口率が、周辺部に対応するものに比べて高くなるように形成されており、
前記マスク母材は、第一金属層と第二金属層が一体的に形成された二層構造をなし、
前記第二金属層に前記印刷用開口が形成され、前記第一金属層に前記メッシュ開口が形成されている、
ことを特徴とする、印刷用メタルマスク。
【請求項2】
前記第一金属層は、前記メッシュ開口の前記印刷パターンの内側に対応する部分が、周辺部に対応する部分に比べて厚く形成されている、
ことを特徴とする、請求項に記載の印刷用メタルマスク。
【請求項3】
前記メッシュ開口は、略四辺形状である、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の印刷用メタルマスク。
【請求項4】
導電性基板上に、フォトリソグラフィ法により、所定の印刷パターンで第一レジスト層を形成する工程と、
前記導電性基板上に電気めっきにより、第一レジスト層に対応するメッシュ開口を有する第一金属層を形成する工程と、
前記第一金属層の上に、フォトリソグラフィ法により、前記印刷パターンに対応する大きさと形状で、第二レジスト層を形成する工程と、
前記第一金属層の上に、電気めっきにより、第二レジスト層に対応する印刷用開口を有する第二金属層を、前記第一金属層と一体的に形成する工程と、
前記第一レジスト層と前記第二レジスト層を除去して、前記メッシュ開口と前記印刷用開口を露出させ、前記第一金属層と前記第二金属層を前記導電性基板から剥離する工程と、を備え、
前記メッシュ開口は、前記印刷用開口より小さく、前記印刷用開口の一部または全部を覆う様に形成されるとともに、その一部または全部が互いに略同形状をしており、前記印刷パターンの内側に対応する前記メッシュ開口の一部または全部の開口率が、周辺部に対応するものに比べて高くなるように形成されている、
ことを特徴とする、印刷用メタルマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板やウエハー、グリーンシートなどのワーク上に、銀ペースト等の導電性ペーストや、ガラスペースト等の絶縁性ペースト(以下「導電性ペースト等」という)を印刷するための印刷用メタルマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に導電性ペースト等を印刷することで電子回路や電子部品を形成するプリンテッドエレクトロニクスには、一般に、図9のように金属製の薄板であるマスク母材の面内に、印刷パターンに対応した形状と大きさで印刷用開口102が形成された印刷用メタルマスク101を、スクリーンメッシュSにより金属枠Fに張設した、印刷版100が従来から使用されてきた。
【0003】
ここで、プリンテッドエレクトロニクスに代表されるような、屈曲や中空の部分を含むような、複雑で微細な印刷パターンを形成する場合には、それに対応して印刷用開口102も複雑な形状となるため、それを保持するための構造が必要となる。
【0004】
そこで、図10の様に、ステンレス製のスクリーンメッシュSに印刷用メタルマスク101を電気ニッケルめっきで固着したものが広く用いられてきた(例えば特許文献1参照)。図10は、印刷用メタルマスク101の、印刷面(被印刷物に対向する側)から見た印刷用開口102である。
【0005】
この形態では、スクリーンメッシュSの張力により、印刷用開口102の形状を保持しており、導電性ペースト等は、スクリーンメッシュSの網目の隙間であるメッシュ開口103を通じて被印刷物に転写される。
【0006】
この場合、スクリーンメッシュSは一定のパターンで編まれている一方で、印刷用開口102は多様で複雑な形状をしており、屈曲部分を有する印刷パターンを形成するような場合、それに対応する印刷用開口102の特に屈曲部分や印刷用開口102の端近傍では、図10の様に、局所的にメッシュ開口103が極めて小さくなり、導電性ペースト等が適正に印刷できなくなるという問題があった。これは、印刷パターンが微小になり、メッシュスクリーンSの線の太さが印刷用開口102の大きさに対して無視できないような場合に特に顕著である。
【0007】
一方で、図11の様に、印刷用メタルマスク201を第一金属層M1と第二金属層M2が密着して一体化した多層構造とし、第一金属層M1に架橋部204を、第二金属層M2に印刷用開口202形成して、架橋部204で印刷用開口202を保持する方法も用いられている(例えば特許文献2参照)。
【0008】
なお、この場合、スクリーンメッシュSは、印刷用メタルマスク201にテンションを与えて金属枠Fに張設して印刷版(図示略)を形成しているが、印刷用メタルマスク201の四辺に固着しており、印刷用メタルマスク201の内側に被る部分は、製造工程において切除されており、印刷用メタルマスク101と異なり、印刷用開口202を覆うような構造にはなっていない。
【0009】
ここで、図12に示すように、従来の印刷用メタルマスク201を用いて、導電性ペースト等Pを印刷する場合、スキージSQを第一金属層M1の表面を滑動させて、導電性ペースト等Pをメッシュ開口203に押し出して、印刷用開口202を介して被印刷物Wに転写させる。この際、図12(b)のように、スキージSQがメッシュ開口203を押圧して、印刷パターンの内側に対応する部分を被印刷物W側に変形させるため、これにより、図12(c)の様に、スキージSQが通過してメッシュ開口204が初期の形状に復帰した後に、印刷パターンの内側に対応する部分の導電性ペースト等Pが周辺のそれよりも少なくて、陥没したような形状になる現象(サドル現象)が発生する場合がある。これは、従来の印刷用メタルマスク101、201に共通の現象である。
【0010】
このサドル現象は、印刷パターン内の導電性ペースト等の厚さが不均一になることで、物性(光の透過率や電気電導性)の安定性に影響を及ぼすことが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2015-217641
【文献】特開2021-066067
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、上記の事情に鑑み、メッシュ開口を有する印刷用メタルマスクにおいて、サドル現象を抑制し、印刷パターン内での導電性ペースト等の厚さを均一にすることで、製品の物性(光の透過率や電気電導性)を安定化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、金属製の平板であるマスク母材と、前記マスク母材の片側の面内に、印刷パターンに対応した大きさと形状で形成された複数の印刷用開口と、前記マスク母材の反対側の面内に、前記印刷用開口より小さく、前記印刷用開口の一部または全部を覆う様に形成された複数のメッシュ開口と、を備え、前記印刷用開口は前記メッシュ開口と連結して貫通孔を形成し、前記メッシュ開口は、その一部または全部が互いに略同形状をしており、前記印刷パターンの内側に対応する前記メッシュ開口の一部または全部の開口率が、周辺部に対応するものに比べて高くなるように形成されており、前記マスク母材は、第一金属層と第二金属層が一体的に形成された二層構造をなし、前記第二金属層に前記印刷用開口が形成され、前記第一金属層に前記メッシュ開口が形成されている、ことを特徴とする、印刷用メタルマスクである。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の印刷用メタルマスクであって、前記第一金属層は、前記メッシュ開口の前記印刷パターンの内側に対応する部分が、周辺部に対応する部分に比べて厚く形成されている、ことを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1または2に記載の印刷用メタルマスクであって、前記メッシュ開口は、略四辺形状である、ことを特徴とする。
請求項に記載の発明は、導電性基板上に、フォトリソグラフィ法により、所定の印刷パターンで第一レジスト層を形成する工程と、前記導電性基板上に電気めっきにより、第一レジスト層に対応するメッシュ開口を有する第一金属層を形成する工程と、前記第一金属層の上に、フォトリソグラフィ法により、前記印刷パターンに対応する大きさと形状で、第二レジスト層を形成する工程と、前記第一金属層の上に、電気めっきにより、第二レジスト層に対応する印刷用開口を有する第二金属層を、前記第一金属層と一体的に形成する工程と、前記第一レジスト層と前記第二レジスト層を除去して、前記メッシュ開口と前記印刷用開口を露出させ、前記第一金属層と前記第二金属層を前記導電性基板から剥離する工程と、を備え、前記メッシュ開口は、前記印刷用開口より小さく、前記印刷用開口の一部または全部を覆う様に形成されるとともに、その一部または全部が互いに略同形状をしており、前記印刷パターンの内側に対応する前記メッシュ開口の一部または全部の開口率が、周辺部に対応するものに比べて高くなるように形成されている、ことを特徴とする、印刷用メタルマスクの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1からの発明によれば、メッシュ開口を有する印刷用メタルマスクにおいて、印刷パターンの内側に対応するメッシュ開口の方が、周辺部に対応するメッシュ開口よりも開口率が高いため、導電性ペースト等印刷時に、より多くの導電性ペースト等が吐出され、これにより印刷パターンの内側が落ち込むサドル現象を抑制することが可能となり、導電性ペースト等で形成されたパターンの物性(光の透過率や電気電導性)を安定させることが可能となる
【0015】
また、メッシュ開口の一部または全部を略同形状としているため、メッシュ開口の設計と導電性ペースト等の吐出量の予測を容易にすることが可能となる。
【0016】
請求項に記載の発明によれば、印刷パターンの内側に対応するメッシュ開口の方が、周辺部に対応するものよりも厚く形成されているため、導電性ペースト等の吐出量が周辺部に比較して多くなり、さらにサドル現象を抑制することに効果がある。
【0017】
請求項の発明によれば、メッシュ開口が略四辺形であるので、さらにメッシュ開口の設計とペーストの吐出量の予測を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1に係る、印刷用メタルマスクの概略の正面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る、印刷用メタルマスクの印刷用開口とメッシュ開口の概略の正面図(a)と側面(X-X)断面図(b)である。
図3】本発明の実施の形態1に係る、印刷用メタルマスクのメッシュ開口と架橋部周辺の概略の拡大図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る、印刷用メタルマスクの製造方法を示す概略の工程フロー図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る、印刷用メタルマスクの製造方法を示す概略の工程フロー図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る、印刷用メタルマスクの印刷用開口とメッシュ開口の概略の正面図である。
図7】本発明の別の実施の形態に係る、印刷用メタルマスクの印刷用開口とメッシュ開口の概略の正面図である。
図8】本発明の別の実施の形態に係る、印刷用メタルマスクの印刷用開口とメッシュ開口の概略の正面図(a)と側面(X-X)断面図(b)である。
図9】従来の印刷版の概略の正面図である。
図10】従来の印刷用メタルマスクの印刷用開口と、メッシュ開口の概略の正面図(a)と側面(X-X)断面図(b)である。
図11】従来の印刷用メタルマスクの印刷用開口と、メッシュ開口の概略の正面図(a)と側面(X-X)断面図(b)である。
図12】従来の印刷版の使用状態を示す、概略のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面において、図面中の各部の構成の大きさ、間隔、数、その他詳細は、視認と理解の助けのために、実際の物に比べて大幅に簡略化して表現している。
【0020】
発明の実施の形態1
図1は発明の実施の形態1に係る、印刷用メタルマスク1の概略の正面図である。印刷用メタルマスク1は、図2に示すように、平板状のマスク母材11と、マスク母材11の面内に形成された印刷用開口12と、同様に形成されたメッシュ開口13を備えている。メッシュ開口13は、印刷用開口12と連結して、貫通孔を形成している。ここで、図1、2は、印刷用メタルマスク1と印刷用開口12を、被印刷物と対向する側から見たものであり、以降の図と実施の形態においても同様とする。
【0021】
マスク母材11は、一辺が200~800mmの四辺形(正方形または長方形)の金属製の平板であり、本実施の形態1では従来の印刷版の場合と同様に、使用時にスキージを滑動させる面(スキージ面)となる第一金属層M1と、印刷物に対向する面(印刷面)となる第二金属層M2が、密着して一体化された二層構造をしている。厚さは第一金属層M1が5~100μm、第二金属層M2が1~200μmに設定されている。
【0022】
印刷用開口12は、マスク母材11の片側(本実施の形態では、第二金属層M2)の面内に、印刷パターンに対応した大きさと形状で、第二金属層M2を貫通するように形成されている。また、本実施の形態1では、略ロの字形状をしている。
【0023】
また、印刷用開口12は、最大寸法が0.05~10mm程度の大きさであり、図のようにマスク母材11の面内に複数個形成されている。
【0024】
メッシュ開口13は、マスク母材11の、印刷用開口11と反対側(本実施の形態では第一金属層M1)の面内に、印刷用開口12より小さく、印刷用開口12の全部と同じ領域に、印刷用開口12を覆う様に複数形成されており、その寸法は一辺が0.01~0.1mm程度である。
【0025】
また、メッシュ開口13が形成されている領域は、従来の印刷版の場合と同様に、印刷用開口12の形状と相似的に小さく設定されており、図2(b)のように、第一金属層M1が印刷用開口12の内側に0.001~0.03mm程度せり出す形になっている。
【0026】
メッシュ開口13は、印刷用開口12の内側のメッシュ開口13bが周辺部のメッシュ開口13aより、開口率が高くなるように形成されている。以下では、内側と周辺部を区別するときはメッシュ開口13aまたは13bといい、区別しないときは単にメッシュ開口13という。ここで、本実施の形態1では、メッシュ開口13aと13bは、大きさが異なる略同形状(四辺形状)である。
【0027】
メッシュ開口13の外形は、印刷用開口12の形状を保持するために、第一金属層M1の印刷用開口12の全部と同じ領域に、印刷用開口12を覆う様に形成された、架橋部14により形作られている。ここで、メッシュ開口13と同様に、内側と周辺部を区別するときは架橋部14aまたは14bといい、区別しないときは単に架橋部14という。
【0028】
本実施の形態1では、架橋部14は、印刷用開口12の内側にせり出した第一金属層M1の辺同士、架橋部14同士、または架橋部14と第一金属層M1の辺とを接続して、メッシュ開口13を形成している。架橋部14の幅は、印刷中に破断しない強度を確保できるとともに、隣接するメッシュ開口13から吐出された導電性ペースト等が、隔離せずに接続されうる程度の範囲である必要があり、本実施の形態1では、0.01~0.1mm程度に設定されている。
【0029】
ここで、本実施の形態1における開口率の意義について説明する。図3は、図2における印刷用メタルマスク1の、メッシュ開口13bと架橋部14b周辺(A部)の概略の拡大図である。
【0030】
そして、図3において、架橋部14bの中央線である一点鎖線L1、L2、L3、L4に囲まれた領域15の面積に対する、メッシュ開口13bの面積の割合を開口率とする。例えば、架橋部14bの幅は一定で、メッシュ開口13bの面積を大きくした場合には開口率は高くなる。一方、メッシュ開口13bの面積は一定で、架橋部14bの幅を狭くしても同様に開口率は高くなる。
【0031】
また、これは、周辺部のメッシュ開口13aについても同様である。さらに、本実施の形態1では、メッシュ開口13は四辺形状であるが、他の形状の場合でも同様に考える。
【0032】
次に、図4、5を参照しながら、印刷用メタルマスク1の製造方法について説明する。本実施の形態1において、印刷用メタルマスク1は、フォトリソグラフィ法と電気めっき法を用いて製造される。
【0033】
先ず、電気めっきの電極であり、めっきを析出させるめっき基材となる導電性基板Sbを準備する(a)。導電性基板は、取り扱い性と、めっき中のめっき液内での安定性を考慮して好適な厚さと素材を選択するが、本実施の形態では、0.3mmの長方形状のステンレス材を使用している。また、長方形の寸法は、製造する印刷用メタルマスク1の大きさを考慮して、適切なサイズの物を選択する。本実施の形態1では、長辺650mm、短辺550mmのものを使用している。
【0034】
次に、導電性基板上に、フォトレジストFRのドライフィルムを被覆して(b)、露光機により、メッシュ開口13のパターンに対応してフォトレジストFRを露光し(c)、現像機で未露光部分を溶融させ除去して、第一レジスト層R1を形成する(d)。ここで、露光機はフォトマスクを使用せずにフォトレジストFRに所定のパターンで直接光を照射する、直描型を用いた。ここで、第一レジスト層R1の大きさ、形状、配置は、メッシュ開口13に対応している。
【0035】
次に、第一レジスト層R1が形成された導電性基板上に、電気めっき法により、第一金属層M1を形成する(e)。第一金属層M1には、第一レジスト層R1に対応するメッシュ開口13が形成される。ここで、本実施の形態1では、電気めっき法は、スルファミン酸ニッケルをベースとしためっき液を用いた。
【0036】
次に、第一金属層M1と第一レジスト層R1の上に、フォトレジストFRのドライフィルムを被覆して(f)、露光・現像を行い、印刷パターンすなわち印刷用開口12に対応する大きさと形状と配置で、第二レジスト層を形成する(g、h)。ここで、第二レジスト層R2は、メッシュ開口13が形成されている領域よりも、0.001~0.03mm外側にまで形成され、これにより第一金属層M1が印刷用開口12の内側にせり出す構造が形成される。
【0037】
次に、第一金属層M1の上に電気めっき法により、第二金属層M2を形成する。第二金属層M2には、第二レジスト層R2に対応する印刷用開口12が形成される(i)。第二金属層M2は、第一金属層M1と密着して一体的に形成され、マスク母材11を形成している。ここで、前述のように、メッシュ開口13は、印刷用開口12より小さく、印刷用開口12の一部または全部を覆う様に形成されるとともに、印刷用開口12の内側に配置されるものの一部または全部が、周辺部に配置されるものに比べて開口率が高くなるように形成されている。
【0038】
次に、レジスト剥離液中に、導電性基板を浸漬して第一レジスト層R1と第二レジスト層R2を除去し、メッシュ開口13と印刷用開口12を露出させる。本実施の形態1では、レジスト剥離液は苛性ソーダ水溶液を使用した。
【0039】
次に、マスク母材11を導電性基板から剥離することで、印刷用メタルマスク1が完成する(j)。
【0040】
本実施の形態1では、印刷用メタルマスク1は前述の印刷版と同様に、金属枠Fに、ポリエステルメッシュMを介して張設して印刷版として用いられる。
【0041】
この発明によれば、メッシュ開口を有する印刷用メタルマスクにおいて、印刷パターンの内側に対応するメッシュ開口13bの方が、周辺部に対応するメッシュ開口13aよりも開口率が高いため、導電性ペースト等印刷時に、より多くの導電性ペースト等が吐出され、これにより印刷パターンの内側が落ち込むサドル現象を抑制することが可能となり、導電性ペースト等で形成されたパターンの物性(光の透過率や電気電導性)を安定させることが可能となる。
【0042】
また、メッシュ開口13を略同形状としているため、メッシュ開口13の設計と導電性ペースト等の吐出量の予測を容易にすることが可能となる。
【0043】
また、メッシュ開口13が略四辺形であるので、さらにメッシュ開口13の設計と、導電性ペースト等の吐出量の予測を容易にすることが可能となる。
【0044】
発明の実施の形態2
図6は、発明の実施の形態2に係る、印刷用メタルマスク2(図示略)の印刷用開口22とメッシュ開口23a、23b、23c、の概略の正面図である。ここで、本実施の形態2において、実施の形態1と共通の要素は図示や説明を省略する。また、その製造方法についても、実施の形態1と同様である。
【0045】
印刷用開口22は、円形状をしており、直径は0.5~3.0mmに設定されている。
【0046】
また、印刷パターンの周辺部に対応するメッシュ開口23a、内側のメッシュ開口23bは、上底と下底が湾曲した略台形状であり、大きさの異なる略同形状であり、印刷用開口22と連結して、貫通孔を形成している。本実施の形態2においては、印刷パターンの内側のメッシュ開口23bの開口率は、メッシュ開口23aの開口率より高く設定されている。
【0047】
また、印刷パターンの中央に対応するメッシュ開口23cは、印刷用開口22と相似な円形状をしており、その開口率は、メッシュ開口23aよりも高く、かつメッシュ開口23bと同等以上に設定されている。
【0048】
この発明によれば、メッシュ開口を有する印刷用メタルマスクにおいて、印刷パターンの内側に対応するメッシュ開口23bの方が、周辺部に対応するメッシュ開口23aよりも開口率が高いため、導電性ペースト等印刷時に、より多くの導電性ペースト等が吐出され、これにより印刷パターンの内側が落ち込むサドル現象を抑制することが可能となり、導電性ペースト等で形成されたパターンの物性(光の透過率や電気電導性)を安定させることが可能となる。
【0049】
また、中央のメッシュ開口23cを除くメッシュ開口23a、23bを略同形状としているため、メッシュ開口13の設計と導電性ペースト等の吐出量の予測を容易にすることが可能となる。
【0050】
また、中央のメッシュ開口23cを除くメッシュ開口23a、23bが略四辺形であるので、さらにメッシュ開口23a、23bの設計と導電性ペースト等の吐出量の予測を容易にすることが可能となる。
【0051】
以上、本実施の形態1、2について説明したが、本願発明の範囲は以上の実施の形態に限られるものではなく、これと同視しうる他の形態に対しても及ぶ。
【0052】
例えば、図7のように、内側のメッシュ開口33bを、隣接する二つの周辺部のメッシュ開口33a間の架橋部34aを取り除いて連結させた形状にして、開口率を高くしてもよい。ここで、実施の形態と同一の構成については、特に必要のない限り、説明を省略する。このような形態でも、サドル現象の抑制とメッシュ開口33a、33bの設計を容易にするといった、同様の効果を得ることが可能となる。
【0053】
さらに、図8のように、周辺部のメッシュ開口43aと内側のメッシュ開口43bを同一の形状とする一方、隣接する周辺部のメッシュ開口43aの一個を間引いて、間隔を広げて、その開口率を下げることでも、同様の効果が得られる。この場合、架橋部44aの幅は、周辺部において、隣接するメッシュ開口43aから吐出された導電性ペースト等が隔離しないで接続する程度に設定されている。
【0054】
さらに、印刷用メタルマスク1の製造方法は、電気めっき法に限られず、エッチング法、レーザ加工法、無電解めっき法なども用いてもよい。例えば、第一金属層M1と第二金属層M2を別個にエッチング法またはレーザ加工法で作製して、これらを電気めっき法で接合しても、製造が可能である。また、無電解めっき法を用いることで、電気めっき法を用いた場合に発生しがちな、めっき皮膜の厚さのバラツキをなくすことができるので、厚さ精度の良い、印刷用メタルマスク1を得ることが可能となる。
【0055】
また、上記の実施の形態では、メッシュ開口13は、印刷用開口12の全体に渡って設けていたが、必ずしもこれに限られず、印刷用開口12の形状保持ができるのであれば、印刷用開口12の一部にだけ設けても良い。これにより、設計や製造の簡略化が図れるので、生産性を向上させることが可能となる。
【0056】
さらに、第一金属層M1は、メッシュ開口13bの部分が、メッシュ開口13bに対応する部分に比べて、厚く形成されてもよい。これにより、メッシュ開口13bからの導電性ペースト等の吐出量が比較的多くなり、さらにサドル現象を抑制することが可能となる。
【0057】
また、メッシュ開口13bは、必ずしも全てが、周辺部のメッシュ開口13aより開口率を高くする必要はなく、周辺部に比較的近い場所では、メッシュ開口13aと同様の開口率として、一部のメッシュ開口13bだけ高くしてもよい場合がある。これにより、さらなる設計や製造の簡略化が図れるので、より生産性を向上させることが可能となる。
【0058】
また、細線状、ドーナツ状、円状、多角形状、またはこれらの組み合わせである、印刷パターンの印刷に対応した、印刷用開口12、メッシュ開口13を設定しても良い。
【0059】
また、必ずしも金属枠Fに張設してコンビネーション版としなくとも、印刷用メタルマスク1を湾曲し、対辺を接合させてロール形状にして使用してもよい。
【0060】
また、製造方法において使用するフォトレジストFRは、ドライフィルムに限られず、液状レジストを用いてもよい。
【0061】
また、フォトレジストFRの露光は、直描型に限られず、フォトマスク(Crマスク、ガラスマスクなど)を使用した露光法を使用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 印刷用メタルマスク
11 マスク母材
12、22、32、42 印刷用開口
13、23、33、43 メッシュ開口
14、24、34、44 架橋部
【要約】
【課題】 複雑かつ微細な印刷パターンを、高品質で印刷することができ、印刷用開口の形状を適正に保持することが可能な印刷用メタルマスクを提供する。
【解決手段】 印刷用メタルマスクは、第一金属層と第二金属層の二層構造で形成され、第二金属層には印刷パターンに対応した印刷用開口が、第一金属層には、印刷用開口を保持するための複数のメッシュ開口が形成され、メッシュ開口は、印刷用開口と連結して、貫通孔を形成するとともに、印刷用開口の内側に対応するものが、周辺部に対応するものに比べて、開口率が高く設定されている。
【選択図】図2
図1
図2
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図12