(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】自動車用内装部品の荷掛用フック構造
(51)【国際特許分類】
B60R 7/08 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
B60R7/08 Z
(21)【出願番号】P 2021524501
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2019021927
(87)【国際公開番号】W WO2020245862
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【氏名又は名称】和田 成則
(72)【発明者】
【氏名】赤木 遥輝
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-166429(JP,A)
【文献】特開2009-107462(JP,A)
【文献】特開2018-103811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用内装部品に開設された開口と、
前記開口から外に少し出た位置に設けられたフックと、を備え、
前記フックは、前記開口の幅方向に延在する引っ掛け部と、該引っ掛け部から前記開口の内側上辺部に繋がった形状の第1の支持部と、前記引っ掛け部から前記開口の内側下辺部に繋がった形状の第2の支持部と、を備え、かつ、前記開口の内側上下両辺部側から前記第1および第2の支持部によって前記引っ掛け部が支持された構造になって
おり、
前記引っ掛け部の上下方向裏面縁部にフランジ部が形成されていること
を特徴とする自動車用内装部品の荷掛用フック構造。
【請求項2】
自動車用内装部品に開設された開口と、
前記開口から外に少し出た位置に設けられたフックと、を備え、
前記フックは、前記開口の幅方向に延在する引っ掛け部と、該引っ掛け部から前記開口の内側上辺部に繋がった形状の第1の支持部と、前記引っ掛け部から前記開口の内側下辺部に繋がった形状の第2の支持部と、を備え、かつ、前記開口の内側上下両辺部側から前記第1および第2の支持部によって前記引っ掛け部が支持された構造になっており、
前記フックの裏面に縦リブが設けられていること
を特徴とする自動車用内装部品の荷掛用フック構造。
【請求項3】
前記縦リブは、前記引っ掛け部、前記第1および第2の支持部を縦断して前記開口の内側上辺部と内側下辺部まで達する形状になっていること
を特徴とする請求項2に記載の自動車用内装部品の荷掛用フック構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用内装部品において買い物袋等を引っ掛けることを可能とする構造(以下「荷掛用フック構造」という)に関し、特にコンパクトで剛性に優れるとともに、自動車用内装部品全体の軽量化や部品点数の削減ならびにコスト低減を図るのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車用内装部品、例えば、ラゲッジルームの内側面を構成するサイドトリムには、荷掛用フック構造が採用されている(例えば、特許文献1で開示された車両用内装部品(1)におけるフック(4)を参照)。
【0003】
図6(a)は従来の荷掛用フック構造の説明図、同図(b)は同図(a)のD矢視断面図である。
【0004】
図6(a)(b)を参照すると、従来の荷掛用フック構造30は、自動車用内装部品1に開設された開口4と、開口4から外に少し出た位置に設けられたフック5と、を備えており、フック5は、開口4の幅方向に延在する引っ掛け部50と、該引っ掛け部50から開口4の内側下辺部に繋がった形状の支持片54とにより構成されている。
【0005】
ところで、前記のような従来の荷掛用フック構造30において、例えば
図7に示したように、支持片54の先端からその根元付近までの直線距離L1が長い場合は、引っ掛け部50に買い物袋等を引っ掛けた場合に、支持片54の根元付近に応力が集中し、支持片54が根元付近から折れやすくなる。
【0006】
前記不具合(支持片54の折れ)を解決するために、従来は、
図8(a)(b)に示したように支持片54全体をクランク形状とする構造(以下「従来の第1構造」という)を採用することにより、支持片54の剛性を高めるとともに、これに加えて
図9(a)(b)に示したように支持片54の根元付近を大きなR形状の円弧部として形成する構造(以下「従来の第2構造」という)を採用することにより、支持片54の根元付近に集中する応力が分散するように構成している。
【0007】
しかしながら、
図7と
図8または
図9との比較からも分かるように、前記のような従来の第1構造および第2構造を採用した場合は、前述のクランク形状やR形状によって、支持片54の根元付近から引っ掛け部50の先端までの縦(上下)方向直線距離寸法が
図9(a)(b)中のH1+H2分長くなる。また、支持片54や引っ掛け部50を金型で成形するのにあたり、その縦(上下)方向直線距離寸法に合わせて開口4の縦(上下)方向長さ寸法も長く設定しなければならないし、さらに、R形状によって支持片54の根元付近の幅が拡がるため、それに合わせて開口4の横(幅)方向長さ寸法も長く設定しなければならない。これらのことから、従来の荷掛用フック構造30において前述した従来の第1および第2構造を採用した場合は、荷掛用フック構造30全体が大型なものとならざるを得ない。
【0008】
また、従来の荷掛用フック構造30において、フック5全体の剛性を高める手段としてフック5の裏面にブラケットのような別部品を配置する構成(以下「別部品設置方式」という)が考えられる(例えば特許文献1で開示している『裏当てフック13』を参照)。しかし、この別部品設置方式では、その別部品や別部品の取付けに必要な更に別の部品を必要する分、自動車用内装部品全体の重量および部品点数が増えるという問題点や、自動車用内装部品のコストアップを招くという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、コンパクトで剛性に優れるとともに、自動車用内装部品全体の軽量化や部品点数の削減ならびにコスト低減を図るのに好適な、自動車用内装部品の荷掛用フック構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、自動車用内装部品に開設された開口と、前記開口から外に少し出た位置に設けられたフックと、を備え、前記フックは、前記開口の幅方向に延在する引っ掛け部と、該引っ掛け部から前記開口の内側上辺部に繋がった形状の第1の支持部と、前記引っ掛け部から前記開口の内側下辺部に繋がった形状の第2の支持部と、を備え、かつ、前記開口の内側上下両辺部側から前記第1および第2の支持部によって前記引っ掛け部が支持された構造になっており、前記引っ掛け部の上下方向裏面縁部にフランジ部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、自動車用内装部品に開設された開口と、前記開口から外に少し出た位置に設けられたフックと、を備え、前記フックは、前記開口の幅方向に延在する引っ掛け部と、該引っ掛け部から前記開口の内側上辺部に繋がった形状の第1の支持部と、前記引っ掛け部から前記開口の内側下辺部に繋がった形状の第2の支持部と、を備え、かつ、前記開口の内側上下両辺部側から前記第1および第2の支持部によって前記引っ掛け部が支持された構造になっており、前記フックの裏面に縦リブが設けられていることを特徴としてもよい。
【0014】
前記本発明において、前記縦リブは、前記引っ掛け部、前記第1および第2の支持部を縦断して前記開口の内側上辺部と内側下辺部まで達する形状になっていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、自動車用内装部品における具体的な荷掛用フック構造として、前述の通り、開口の内側上下両辺部側から第1および第2の支持部によって引っ掛け部を支持した構造のフックを採用したため、以下の作用効果1~3等が奏し得られる。
【0016】
《作用効果1》
本発明によると、フックはその引っ掛け部が第1および第2の支持部によって支持されるから、1つの支持部で引っ掛け部を支持していた従来のフックに比べ、荷掛用フック構造全体を小型化した場合でも、負荷に対するフック全体の剛性を十分に確保することができ、剛性に優れた自動車用内装部品の荷掛用フック構造を提供し得る。
【0017】
《作用効果2》
本発明にあっては、負荷によってフック(引っ掛け部とその支持部)に生じる応力は1カ所に集中せず、第1および第2の支持部の根元付近、すなわち、開口の内側上下両辺部(フックの上下方向)に分散することで緩和されるから、そのような応力に対する従来の対策(例えば、支持部全体をクランク形状としたり、開口の幅方向両辺部付近を大きなR形状の円弧部として形成したりする等)を採る必要がなく、開口の幅と高さを従来に比べて小さく設定することが可能となる点で、荷掛用フック構造全体をコンパクトに構成するのに好適で、また、荷掛用フック構造周辺におけるデザイン設計の自由度を高めるのに好適な、自動車用内装部品の荷掛用フック構造を提供し得る。
【0018】
《作用効果3》
本発明によると、前述の通り、荷掛用フック構造全体を小型化した場合でも、負荷に対するフック全体の剛性を十分に確保することができるので、その剛性を確保するための従来の対策(別部品の追加)を採る必要がない点で、自動車用内装部品全体の軽量化や部品点数の削減、コスト低減を図るのに好適な荷掛用フック構造を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の荷掛用フック構造を適用した自動車用内装部品全体の模式図。
【
図6】
図6(a)は従来の荷掛用フック構造の説明図、同図(b)は同図(a)のD矢視断面図。
【
図7】従来の荷掛用フック構造における応力集中の説明図。
【
図8】
図8(a)はフックの剛性を高める構成の説明図、
図8(b)は同図(a)のE矢視図。
【
図9】
図9(a)はフックの剛性を高める構造の説明図、
図9(b)は同図(a)のF矢視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の荷掛用フック構造を適用した自動車用内装部品全体の模式図、
図2は
図1のA部付近拡大図、
図3は
図2のB矢視断面図、
図4は
図2のC矢視断面図、
図5は
図1のA部付近を拡大した斜視図である。
【0022】
図1の自動車用内装部品1は、ラゲッジルームのサイドトリムとして樹脂で所要の形状に成形されたものであって、ラゲッジルームの側面に位置する車体パネル(図示省略)に取付けられることで、ラゲッジルームの内側面を構成する。
【0023】
図1の自動車用内装部品1には、ラゲッジルーム内で展開した図示しない公知のトノカバーをバタツキなく安定に配置する手段として、台座部2が設けられている。この台座部2は、自動車の前後方向に沿ってレール状に長く延びた形状、および自動車用内装部品1の意匠面(具体的には、ラゲッジルーム内に臨む面。以下「車内意匠面」という)からラゲッジルーム内に向けて所定量突出した形状になっており、ラゲッジルーム内で展開されたトノカバーの縁部が台座部の上面2Aに載置されることで、当該トノカバーは、バタツキなく安定に配置され、ラゲッジルーム全体を覆うことが可能となる。
【0024】
また、この
図1の自動車用内装部品1では、
図2に示した荷掛用フック構造3(買い物袋等を引っ掛けることを可能とする構造)を採用している。
【0025】
自動車用内装部品1に対する荷掛用フック構造3の組込み採用例として、
図1の自動車用内装部品1では、前述の台座部2に対して荷掛用フック構造3を組み込んでいる。すなわち、
図1の自動車用内装部品1では、台座部2の側面に2つの段差2B、2Cを設けることによって凹所21(この凹所21も自動車用内装部品1の車内意匠面を構成する)を形成し、該凹所21の底である平面部21Aに開口4を開設するとともに、開口4の内側縁部からフック5が延びた形状となるように構成しているが、これに限定されることはない。
図1の自動車用内装部品1全体の中で台座部2以外の場所に
図2の荷掛用フック構造3を組み込んでもよいし、また、
図1のようなラゲッジルームのサイドトリム以外の自動車用内装部品に対して
図2の荷掛用フック構造3を組み込んでもよい。
【0026】
図2および
図5を参照すると、
図2の荷掛用フック構造3は、自動車用内装部品1に開設された開口4と、開口4から外(具体的には、車内の方向)に少し出た位置に設けられたフック5と、を備えた構成になっている。前記位置にフック5を設けたのは買い物袋等を引っ掛け易くするためである。
【0027】
フック5は、開口4の幅方向に延在する引っ掛け部50と、引っ掛け部50から開口4の内側上辺部4Aに繋がった形状の第1の支持部51と、同引っ掛け部50から開口4の内側下辺部4Bに繋がった形状の第2の支持部52と、を備えた構造になっている。この構造において、引っ掛け部50は、開口4の内側上下両辺部4A、4B側から第1および第2の支持部51、52によって支持されている。
【0028】
また、フック5の具体的な構成例として、
図1の自動車用内装部品1では、引っ掛け部50の上下方向裏面縁部にフランジ部50A、50B(
図2および
図4を参照)を形成することで、フック5全体の剛性を高めているため、例えば、開口4の幅方向両辺部付近を大きなR形状の円弧部として形成したり、支持部51、52の根元付近に剛性強化フランジを設けたりする等、負荷によってフック5全体に生じる応力に対する従来の対策を採る必要はない。
【0029】
以上説明したように、
図2の荷掛用フック構造3によると、フック5は、その基本構造として、引っ掛け部50が第1および第2の支持部51、52によって支持される構造であるから、1つの支持片54(
図6参照)だけで引っ掛け部を支持していた従来のフックに比べ、荷掛用フック構造3全体を小型化しても、負荷に対するフック5全体の剛性を十分に確保することができる。
【0030】
さらに、フック5全体の剛性を更に高める手段として、
図2の荷掛用フック構造3ではフック5の裏面に縦リブ53(
図3と
図4を参照)を設けている。この縦リブ53は、引っ掛け部50、第1および第2の支持部51、52を縦断して開口4の内側上辺部4Aと内側下辺部4B付近まで達する形状になっている。
【0031】
なお、
図2と
図4では前記縦リブ53を並列に2つ備えた例を示しているが、この例に限定されることはない。縦リブ53の本数や配置間隔等、縦リブ53の構成は必要に応じて適宜増減することができる。
【0032】
また、
図2の荷掛用フック構造3では、2つの支持部51、52が自動車用内装部品1の車内意匠面からラゲッジルーム内に向けて所定量傾斜して飛び出た形状となっていることにより、引っ掛け部50が自動車用内装部品1の車内意匠面より車内方向(
図1の例では「ラゲッジルーム内の方向」)に少し出た位置に配置されるように構成している。これは前述の通りレジ袋等の荷物を引っ掛け易くするためである。
【0033】
また、
図2の荷掛用フック構造3では、そのフック5の構造上、負荷によってフック5全体(引っ掛け部50と第1および第2の支持部51、52)に生じる応力は、1カ所に集中せず、第1および第2の支持部51、52の根元付近、すなわち、開口4の内側上下両辺部(フック5の上下方向)に分散することで緩和されるから、そのような応力に対する従来の対策(例えば、支持部全体をクランク形状としたり、開口の幅方向両辺部付近を大きなR形状の円弧部として形成したりする等)を採る必要がなく、開口4の幅と高さを従来に比べて小さく設定することが可能となる点で、荷掛用フック構造3全体をコンパクトに構成することができ、また、荷掛用フック構造3周辺におけるデザイン設計の自由度も高いという利点がある。
【0034】
さらに、
図2の荷掛用フック構造3は、その構造3全体を小型化した場合でも、負荷に対するフック5全体の剛性を十分に確保することができるので、かかる剛性を確保するための従来の対策(別部品の追加)を採る必要がない点で、自動車用内装部品全体の軽量化や部品点数の削減、コスト低減を図るのに好適である。
【0035】
また、
図2の荷掛用フック構造3では、第1および第2の支持部50、51の断面形状、寸法、材質等によってフック5全体の剛性が略決まり、開口4周縁の平面部21Aに対する引っ掛け部50の傾斜角度(以下「面角度」という)を変更しても、フック5全体において十分な剛性が得られるので、そのような面角度を比較的自由に設定することができるという利点もある。
【0036】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 自動車用内装部品
2 台座部
2A 台座部の上面
2B、2C 段差
21 凹所
21A 平面部
3 荷掛用フック構造
30 従来の荷掛用フック構造
4 開口
5 フック
50 引っ掛け部
50A、50B フランジ部
51 第1の支持部
52 第2の支持部
53 縦リブ
54 支持片