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特許7125567非水性インク組成物、インクセット、それを用いた記録方法、記録物の製造方法、記録物、及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】非水性インク組成物、インクセット、それを用いた記録方法、記録物の製造方法、記録物、及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20220817BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20220817BHJP
   C09B 47/10 20060101ALI20220817BHJP
   C09B 47/14 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C09D11/322
C09D11/38
C09B47/10
C09B47/14
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022082185
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2022058297の分割
【原出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2021062455
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021062476
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021062477
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】折笠 由佳
(72)【発明者】
【氏名】吉森 圭士郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴生
(72)【発明者】
【氏名】宇高 公淳
(72)【発明者】
【氏名】田村 充功
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177597(JP,A)
【文献】特開2009-227812(JP,A)
【文献】特開2009-227813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00-201/10
C09B1/00-69/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物であって、
前記顔料は、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を含有し、
前記ハロゲン化フタロシアニン顔料A3の体積基準累積50%粒子径(D50)は、30nm以上150nm以下であり、
前記有機溶剤は、下記有機溶剤Bを含有する、
非水性インク組成物。
有機溶剤B:アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ
【請求項2】
前記ラクトン系溶剤(b3)は、一般式(4)で表されるラクトン系溶剤を含有する
請求項1に記載の非水性インク組成物。
【化1】
(式(4)中、R は、炭素数4以上5以下のアルキレン基であり、R は、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記ラクトン系溶剤(b3)は、ε-カプロラクトンを含有する
請求項2に記載の非水性インク組成物。
【請求項4】
前記顔料A3の体積基準累積90%粒子径(D90)は、50nm以上300nm以下である、
請求項1から3のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項5】
前記顔料A3の含有量は、前記非水性インク組成物全量中0.1質量%以上8.0質量%以下である、
請求項1から4のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項6】
前記顔料A3は、塩素化フタロシアニン顔料、臭素化フタロシアニン顔料、及び塩素臭素化フタロシアニン顔料からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項1からのいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項7】
前記顔料A3は、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料、及びハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項1からのいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項8】
前記有機溶剤は、グリコールエーテル系溶剤を含有する、
請求項1からのいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項9】
水分の含有量は、非水性インク組成物全量中1.0質量%以下の範囲である、
請求項1からのいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項10】
前記有機溶剤は、ラクトン系溶剤(b3)を含有する、
請求項1からのいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項11】
前記顔料分散剤は塩基性基を有する、
請求項1から10のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項12】
前記顔料分散剤のアミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲である、
請求項1から11のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項13】
前記顔料分散剤の含有量は、前記非水性インク組成物中の顔料100質量部に対して5質量部以上150質量部以下の範囲である、
請求項1から12のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項14】
さらに樹脂を含有し、
前記樹脂は、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂が樹脂全量中5質量%以下の範囲である、
請求項1から13のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【請求項15】
前記樹脂は、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種以上を含有する、
請求項14に記載の非水性インク組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の非水性インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する
記録方法。
【請求項17】
請求項1から15のいずれかに記載の非水性インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する
記録物の製造方法。
【請求項18】
請求項1から15のいずれかに記載の非水性インク組成物を少なくとも備えるインクセット。
【請求項19】
請求項1から15のいずれかに記載の非水性インク組成物の印刷層が基材の表面に形成された
記録物。
【請求項20】
請求項1から15のいずれかに記載の非水性インク組成物をインクジェット法により吐出するインクジェット記録装置であって、
前記非水性インク組成物を貯蔵する貯蔵機構と、
インクジェット吐出口と、
前記非水性インク組成物を流通させるチューブと、
を備え、
前記チューブは、前記貯蔵機構と前記インクジェット吐出口とに接続され、且つ前記非水性インク組成物の流路を調整する弁機構を備える、
インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水性インク組成物、インクセット、それを用いた記録方法、記録物の製造方法、記録物、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク組成物として、水、又は水と有機溶剤との混合液に色材を溶解又は分散させた水性インク組成物や水を含有しない有機溶剤に色材を溶解又は分散させた非水性インク組成物が広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、顔料としてペリノン系顔料と、アゾ化合物と、を含有する水性顔料及びこれを用いたインクジェット記録用の水性インク組成物が記載されている。特許文献1によれば、この非水性インク組成物は、ペリノン系顔料と、アゾ化合物とを含有することで、良好な貯蔵安定性を有することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、顔料としてジケトピロロピロール顔料を含有する顔料と有機溶剤と無機金属とを含む非水性インク組成物であって、所定量の金属元素を含む非水性インク組成物が開示されている。特許文献1によれば、この非水性インク組成物は、得られる記録物の彩度に優れ、かつ優れた保存安定性を有することが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、銅錯体染料(銅フタロシアニン)を含んでなるインクジェット記録用インク組成物であって、インク組成物中の遊離銅イオン濃度が10ppm以下であるインク組成物が開示されている。特許文献1によれば、このインク組成物は、析出物のない、インクジェット記録用インク組成物に求められる種々の特性を高いことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-172070号公報
【文献】特開2017-132891号公報
【文献】特開2000-355665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、ペリノン系顔料は耐候性を有することから、ペリノン系顔料を含有するインク組成物は、特に屋外で用いられる記録物の製造に適している。
【0008】
ところが、ペリノン系顔料は非水性インク組成物中において凝集しやすいことが本発明者らの研究により明らかとなった。すると、インクジェットプリンターのインクを吐出するノズルが目詰まりし、インクジェット吐出性等が低下等の不具合が生じること等のインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物として要求される特性を満たさなくなることがある。
【0009】
また、インクジェット法によって吐出するに際して、インクジェットヘッドを通じてインク組成物を吐出すると、非水性インク組成物に含まれる樹脂等の固形成分によりインクジェットヘッドでのノズル内に詰まりが発生することがある。
【0010】
そこで、インクジェット記録装置には、このようなインクジェットヘッドでのノズルの詰まりを解消するクリーニング回復機能が備わっている。
【0011】
ところが、ジケトピロロピロール顔料を含有する非水性インク組成物をインクジェット法によって吐出し、その後クリーニング回復機能によりインクジェットヘッドでのノズルの詰まりを解消しようとしてもノズルの詰まりを十分に解消することができないことが本発明者らの研究により明らかとなった。なお、本明細書ではクリーニング回復機能によりインクジェットヘッドでのノズルの詰まりを解消できる性能をクリーニング回復性と表記する。
【0012】
また、フタロシアニン構造を有する顔料の水素の一部がハロゲンに置換されたハロゲン化フタロシアニン顔料が知られている。フタロシアニン顔料がハロゲン化されることにより、緑色に呈する顔料となる。通常の4色のカラーインクに加えて緑色に呈する顔料を含むグリーンインクを使用することで、イエローインクとシアンインクとの2色で緑色を再現する場合に比べて彩度が向上するので、色再現性を向上させることができる。また、フタロシアニン系顔料は、一般にイエローインクに使用されるイエロー系顔料に比べて耐候性が高い。このため、ハロゲン化フタロシアニン顔料を含むグリーンインクを使用することにより、イエローインクとシアンインクとの2色を使用した場合と比較して得られる記録物の耐候性も向上させることができる。
【0013】
ところが、ハロゲン化フタロシアニン顔料を含む非水性インク組成物は、非水性インク組成物中で顔料が沈殿しやすく、保存安定性が悪いという問題が本発明者らの研究により明らかとなった。そして、このような保存安定性が悪い非水性インク組成物は、インクジェット記録装置のクリーニング回復機能によりインクジェットヘッドでのノズルの詰まりを解消しようとしてもノズルの詰まりを十分に解消することができないことがある。
【0014】
また、ハロゲン化フタロシアニン顔料を含む非水性インク組成物を長時間放置すると、顔料が沈殿することで色調が変化してしまい、色調安定性が低下するという問題が本発明者らの研究により明らかとなった。
【0015】
本発明は、ペリノン系顔料を含む非水性インク組成物であってもインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物として好適に使用することのできる非水性インク組成物を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、ジケトピロロピロール顔料を含有する非水性インク組成物であっても保存安定性が高く、クリーニング回復性の高い非水性インク組成物を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、ハロゲン化フタロシアニン顔料を含む非水性インク組成物であっても保存安定性、色調安定性、及びクリーニング回復性の高い非水性インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、所定のpHの範囲内のペリノン系顔料を含有する非水性インク組成物であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
また、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、所定のpHの範囲内のジケトピロロピロール顔料を含有する非水性インク組成物であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
また、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、ハロゲン化フタロシアニン顔料を含有し、所定の有機溶剤を含有する非水性インク組成物であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0021】
(1)顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物であって、
前記顔料は、下記式(1-1)で示される顔料A1又は下記式(1-2)で示される顔料A2の少なくとも1つを含有し、
前記顔料A1及びA2のpHは3以上9以下の範囲内である、
非水性インク組成物。
【化1】
(式(1-1)中、X1~X12はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐しても良いアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【化2】
(式(1-2)中、X1~X10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐しても良いアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【0022】
(2)前記顔料A1及びA2の体積基準累積90%粒子径(D90)は500nm以下である、(1)に記載の非水性インク組成物。
【0023】
(3)前記顔料A1及びA2の含有量は、前記非水性インク組成物全量中0.1質量%以上8.0質量%以下である、(1)又は(2)に記載の非水性インク組成物。
【0024】
(4)前記有機溶剤は、下記有機溶剤Bを含有する、(1)から(3)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
有機溶剤B:アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ
【0025】
(5)顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物であって、前記顔料は、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を含有し、前記有機溶剤は、下記有機溶剤Bを含有する、非水性インク組成物。
有機溶剤B:アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ
【0026】
(6)前記顔料A3の体積基準累積50%粒子径(D50)は、30nm以上150nm以下である、(5)に記載の非水性インク組成物。
【0027】
(7)前記顔料A3の体積基準累積90%粒子径(D90)は、50nm以上300nm以下である、(5)又は(6)に記載の非水性インク組成物。
【0028】
(8)前記顔料A3の含有量は、前記非水性インク組成物全量中0.1質量%以上8.0質量%以下である、(5)から(7)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0029】
(9)前記顔料A3は、塩素化フタロシアニン顔料、臭素化フタロシアニン顔料、及び塩素臭素化フタロシアニン顔料からなる群より選択される少なくとも1つである、(5)から(8)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0030】
(10)前記顔料A3は、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料、及びハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料からなる群より選択される少なくとも1つである、(5)から(9)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0031】
(11)前記有機溶剤は、グリコールエーテル系溶剤を含有する、(5)から(10)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0032】
(12)水分の含有量は、非水性インク組成物全量中1.0質量%以下の範囲である、(5)から11のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0033】
(13)前記有機溶剤Bは、アルキルアミド系溶剤(b1)を含有する、(4)から(12)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0034】
(14)前記アルキルアミド系溶剤(b1)は、下記一般式(2)で表される(13)に記載の非水性インク組成物。
【化3】
(式(2)中、Rは、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R、Rは、それぞれ独立して水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。
【0035】
(15)前記アルキルアミド系溶剤(b1)は、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、及びN,N-ジエチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有する(14)に記載の非水性インク組成物。
【0036】
(16)前記有機溶剤は、環状アミド系溶剤(b2)を含有する、(4)から(12)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0037】
(17)前記環状アミド系溶剤(b2)は、下記一般式(3)で表される(16)に記載の非水性インク組成物。
【化4】
(式(3)中、Rは、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、Rは、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基または不飽和炭化水素基を表す。)
【0038】
(18)
前記環状アミド系溶剤(b2)は、ε-カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、及びN-ビニルカプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1つを含有する(17)に記載の非水性インク組成物。
【0039】
(19)前記有機溶剤は、ラクトン系溶剤(b3)を含有する、(4)から(12)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0040】
(20)前記ラクトン系溶剤(b3)は、下記一般式(4)で表される(19)に記載の非水性インク組成物。
【化5】
(式(4)中、Rは、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、Rは、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)
【0041】
(21)前記ラクトン系溶剤(b3)は、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、及びε-カプロラクトンからなる群より選択される少なくとも1つを含有する(20)に記載の非水性インク組成物。
【0042】
(22)前記有機溶剤Bの含有量は、前記非水性インク組成物全量中1質量%以上90質量%以下の範囲である、(4)から(21)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0043】
(23)前記顔料分散剤は塩基性基を有する、(1)から(22)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0044】
(24)前記顔料分散剤のアミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲である、(1)から(23)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0045】
(25)前記顔料分散剤の含有量は、前記非水性インク組成物中の顔料100質量部に対して5質量部以上150質量部以下の範囲である、(1)から(24)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0046】
(26)さらに樹脂を含有し、前記樹脂は、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂が樹脂全量中5質量%以下の範囲である、(1)から(25)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0047】
(27)前記樹脂は、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種以上を含有する、(26)に記載の非水性インク組成物。
【0048】
(28)さらに界面活性剤を含有し、前記界面活性剤は、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有する、(1)から(27)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0049】
(29)非水性インク組成物を貯蔵する貯蔵機構と、インクジェット吐出口と、前記非水性インク組成物を流通させるチューブと、を備え、前記チューブは、前記貯蔵機構と前記インクジェット吐出口とに接続され、且つ前記非水性インク組成物の流路を調整する弁機構を備えるインクジェット記録装置に用いられる(1)から(28)のいずれかに記載の非水性インク組成物。
【0050】
(30)(1)から(29)のいずれかに記載の非水性インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する
記録方法。
【0051】
(31)(1)から(29)のいずれかに記載の非水性インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する記録物の製造方法。
【0052】
(32)(1)から(29)のいずれかに記載の非水性インク組成物を少なくとも備えるインクセット。
【0053】
(33)(1)から(29)のいずれかに記載の非水性インク組成物の印刷層が基材の表面に形成された記録物。
【0054】
(34)(1)から(29)のいずれかに記載の非水性インク組成物をインクジェット法により吐出するインクジェット記録装置であって、前記非水性インク組成物を貯蔵する貯蔵機構と、インクジェット吐出口と、前記非水性インク組成物を流通させるチューブと、を備え、前記チューブは、前記貯蔵機構と前記インクジェット吐出口とに接続され、且つ前記非水性インク組成物の流路を調整する弁機構を備える、インクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0055】
本発明の非水性インク組成物は、顔料としてペリノン系顔料を含む顔料を使用してもインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物として好適に使用することができる。
【0056】
また、本発明の非水性インク組成物は、顔料としてジケトピロロピロール顔料を含む顔料を使用しても保存安定性が高く、クリーニング回復性が高い。
【0057】
また、本発明の非水性インク組成物はハロゲン化フタロシアニン顔料を含んでいても保存安定性、色調安定性、及びクリーニング回復性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0059】
≪1.概要≫
本発明の1つの実施形態(例えば、第1、第2、第3実施形態の非水性インク組成物)の非水性インク組成物は、顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物である。ここで、本明細書において、「非水性インク組成物」とは、水を主成分とする水性インク組成物とは異なり、水を意図的に含有させずに製造された有機溶剤を含むインク組成物であることを意味する。
【0060】
また、本実施の形態に係るインク組成物(下記の第1、第2、及び第3の実施形態の非水性インク組成物を含む)は、有機溶剤が乾燥(揮発)することで記録物を得ることのできるインク組成物であることが好ましい。このようなインク組成物は、具体的には、インク組成物に含まれる有機溶剤等の揮発成分が乾燥(揮発)することでその残留物が基材の表面に堆積して、記録物を形成する。このインク組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより基材上で重合して硬化する活性エネルギー線硬化型のインク組成物とは異なる。活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、重合性化合物を必須成分として含むが、有機溶剤が乾燥(揮発)することで記録物を得ることのできるインク組成物は、有機溶剤を含有するが、重合性化合物を含有することを必須成分とはしておらず、重合性化合物を含有しても、重合性化合物を含有していなくともよい。
【0061】
そしてこの非水性インク組成物に含有される顔料は、下記式(1-1)で示される顔料A1又は下記式(1-2)で示される顔料A2の少なくとも1つを含有し、顔料A1及びA2のpHは3以上9以下の範囲内であることを特徴としている。
【0062】
【化6】
(式(1-1)中、X1~X12は水素を含む置換基である。X1~X12はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐しても良いアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【化7】
(式(1-2)中、X1~X10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐しても良いアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【0063】
また、本発明の1つの実施形態の非水性インク組成物は、顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物である。そして、この非水性インク組成物に含有される顔料は、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を含有し、有機溶剤は、下記有機溶剤Bを含有することを特徴としている。
【0064】
有機溶剤B:アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ
【0065】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明する。
≪1-1.第1実施形態の非水性インク組成物≫
本実施の形態に係る第1実施形態の非水性インク組成物は、顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物である。ここで、「非水性インク組成物」とは、水を主成分とする水性インク組成物とは異なり、水を意図的に含有させずに製造された有機溶剤を含むインク組成物であることを意味する。
【0066】
そしてこの非水性インク組成物に含有される顔料は、下記式(1-1)で示される顔料A1を含有し、顔料A1のpHは3以上9以下の範囲内であることを特徴としている。
【0067】
【化8】
(式(1-1)中、X1~X12は水素を含む置換基である。X1~X12はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐しても良いアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【0068】
pHが3以上9以下の範囲内に制御された顔料A1を含有することにより非水性インク組成物において顔料同士の凝集を抑制することができる。これにより、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物において要求される種々の特性を満たすようになる。
【0069】
pHが3以上9以下の顔料A1は、例えば顔料A1を溶液(酸溶液、アルカリ溶液、若しくは中性の溶液)で洗浄することにより、顔料の表面を処理するか、若しくは式(1-1)の構造中のベンゼン環中の置換基(X1~X12)の種類を変更するか、又はその両方の処理を施すことにより得られる。
【0070】
ベンゼン環中の置換基(X1~X12)の種類を変更する方法は、顔料を有機溶剤中に分散させ、特定の置換基を導入可能な添加剤により所望の置換基を導入する方法が挙げられる。例えば、特許2993392号に記載された方法により顔料のpHを調製することもできる。
【0071】
なお、ベンゼン環中の置換基(X1~X12)の種類を変更する場合、置換基X1~X12が置換される位置は顔料A1のpHは3以上9以下の範囲内であれば、ベンゼン環の12個のいずれの置換位置であればよく特に限定されず、置換基の数も特に限定されない。
【0072】
本明細書において、顔料A1のpHとは、JIS K5101-17-1:2004の試験方法により測定されるpHである。後述する顔料A2のpHの測定方法も同様である。
【0073】
顔料A1のpHの上限は、9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。顔料A1のpHの下限は、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。特に顔料A1のpHが9以下であることで顔料分散剤がより付着されやすくなるので、非水性インク組成物中での顔料A1の凝集をより効果的に抑制することが可能となる。これにより、非水性インク組成物の吐出安定性、及び色調安定性を向上させることができる。
【0074】
本実施の形態に係る非水性インク組成物における水分の含有量は、非水性インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量以下であることがより好ましい。顔料A1は疎水性が高いため、この顔料を含む非水系インクジェット組成物は、水との接触により比較的容易に顔料の分散性が悪化しやすく、保存安定性が悪化しやすい。非水性インク組成物中に水分の含有量を低減してできるだけ水分を含まないようにすること(水分を意図的に含まないようにすること)で、保存安定性、クリーニング回復性等を向上させることが可能となる。後述する第2、第3実施形態の非水性インク組成物についても同様である。
【0075】
顔料A1の平均粒子径は、特に限定されないが、体積基準累積90%粒子径(D90)の上限は、500nm以下であることが好ましく、450nm以下であることが好ましく、400nmであることがより好ましい。これにより、非水性インク組成物中における顔料A1の凝集をより効果的に抑制できるようになり、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物としてより好適に使用することができるものとなる。体積基準累積90%粒子径(D90)の下限は、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることが好ましい。顔料A1の体積基準累積90%粒子径(D90)がこのような範囲であることで、非水性インク組成物の保存安定性を向上させることができる。後述する第2実施形態の非水性インク組成物における顔料A2の好ましい平均粒子径についても同様である。
【0076】
なお、本明細書において「体積基準累積50%粒子径(D50)」とは、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を意味する。「体積基準累積50%粒子径(D50)」は、「体積平均粒子径D50」または「メジアン(メディアン)径」ともいう場合がある。「体積基準累積90%粒子径(D90)」とは、小径側から計算した累積体積が90%となる粒子径を意味する。「体積基準累積50%粒子径(D50)」及び「体積基準累積90%粒子径(D90)」の測定は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いることができる。後述する第2、第3実施形態の非水性インク組成物においても同様である。
【0077】
顔料A1の含有量は、特に制限されないが、顔料A1の含有量の下限は、非水性インク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。顔料A1の含有量が非水性インク組成物全量中0.1質量%以上であることで、印字濃度を向上させることが可能となり、他の色の非水性インク組成物と組み合わせることで得られる記録物の色再現域を高くすることができる。また、顔料A1の含有量の上限は、8.0質量%以下であることが好ましく、6.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。顔料A1の含有量が非水性インク組成物全量中8.0質量%以下であることで、相対的に他の添加材の含有量を増やすことが可能となり、さらに顔料A1の含有量を増加することによる粘度の上昇を抑制できるのでインクジェットヘッドのノズル目詰まりを抑制することができる。
【0078】
式(1-1)で示される顔料A1としては、C.I.ピグメントオレンジ43を挙げることができる。式(1-1)で示される顔料A1は、合成してもよく、例えば、市販品のC.I.ピグメントオレンジ43を溶液(酸溶液、アルカリ溶液、若しくは中性の溶液)で洗浄することにより、顔料の表面を処理するか、若しくは式(1-1)の構造中のベンゼン環中の置換基(X1~X12)の種類を変更するか、又はその両方の処理を施すことにより入手してもよい。市販品としては、有本化学社製のA-76やクラリアント社製のHostaperm Orange GR、PV Gast Orange GRL、DIC社製のFasogen Super Orange 6200、東洋インキ社製のLionogen Orange GR-F等が挙げられる。
【0079】
また、本実施の形態に係る非水性インク組成物は、上述の顔料A1以外の色材(顔料・染料を含む)をさらに含有してもよい。そのような色材としては顔料A1と類似する色相(例えば、オレンジ、マゼンタ、イエロー、レッド)の顔料及び染料が挙げられる。
【0080】
上述の顔料A1以外の有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214、C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57:1、97、112、122、123、146、149、150、168、177、180、184、192、202、206、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、269、291、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、71、73、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0081】
また、顔料分散剤とともに、後述する分散助剤(顔料誘導体)を使用してもよい。これにより、顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0082】
次に、本実施の形態に係る非水性インク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0083】
[有機溶剤]
有機溶剤は、本実施の形態に係る非水性インク組成物に含有される各成分を分散又は溶解することができるものである。有機溶剤は、特に限定されないが、顔料A1を含有する顔料を分散させて、本発明の効果をより効果的に奏する観点から、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有することが好ましい。
【0084】
以下、有機溶剤Bに含有されるアルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)についてそれぞれ説明する。
【0085】
(1)アルキルアミド系溶剤
アルキルアミド系溶剤とは、アルキル基(C2n+1-)と-C(=O)-N-基(アミド結合)を有する化合物であって、水素若しくはアルキル基と-C(=O)-N-基から構成された化合物からなる溶剤である。アルキルアミド系溶剤は、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0086】
【化9】
(式(2)中、Rは、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基であり、R、Rは、それぞれ独立して水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。
【0087】
なお、式(2)中のR及びRは、炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数2以上4以下のアルキル基であることがより好ましい。
【0088】
アルキルアミド系溶剤としては、具体的には、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、N,N-ジプロピルプロパンアミド、N-エチルホルムアミド、N-エチルアセトアミド等が挙げられる。この中でも、本発明の効果を特に奏するという観点から、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド及びN,N-ジエチルアセトアミドからなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0089】
アルキルアミド系溶剤(b1)の含有量は、特に限定されないが、アルキルアミド系溶剤(b1)の含有量の下限は、非水性インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、8質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0090】
アルキルアミド系溶剤(b1)の含有量の上限は、非水性インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
【0091】
(2)環状アミド系溶剤
環状アミド系溶剤(b2)とは、環状構造を有し、その環状構造に-C(=O)-N-基を有する溶剤である。環状アミド系溶剤は、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0092】
【化10】
(式(3)中、Rは、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、Rは、水素若しくは炭素数1以上4以下のアルキル基または不飽和炭化水素基を表す。)
【0093】
環状アミド系溶剤(b2)としては、具体的には、N-メチルカプロラクタム、N-アセチルカプロラクタム、ε-カプロラクタム、N-ビニルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-エチル-ε-カプロラクタム、N-プロピル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム等が挙げられる。この中でも、ε-カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、及びN-ビニルカプロラクタムからなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0094】
環状アミド系溶剤(b2)の含有量は、特に限定されないが、環状アミド系溶剤(b2)の含有量の下限は、非水性インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、8質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0095】
環状アミド系溶剤(b2)の含有量の上限は、非水性インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
【0096】
(3)ラクトン系溶剤
ラクトン系溶剤とは、環状エステル構造を有する溶剤である。ラクトン系溶剤は、例えば以下の構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0097】
【化11】
(式(4)中、Rは、炭素数3以上5以下のアルキレン基であり、Rは、水素若しくは炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。)なおRは、炭素数4以上5以下のアルキレン基がより好ましく、炭素数5のアルキレン基がより好ましい。
【0098】
ラクトン系溶剤(b3)としては、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン等が挙げられる。これらのなかでも、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンがより好ましく、ε-カプロラクトンがより好ましい。
【0099】
ラクトン系溶剤(b3)の含有量は、特に限定されないが、ラクトン系溶剤(b3)の含有量の下限は、非水性インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、8質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。
【0100】
ラクトン系溶剤(b3)の含有量の上限は、非水性インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下あることがさらに好ましい。
【0101】
有機溶剤Bの中でも、「アルキルアミド系溶剤(b1)を含むもの」又は「環状アミド系溶剤(b2)を含むもの」であることが好ましく、その中でも「アルキルアミド系溶剤(b1)を含むもの」がより好ましい。これにより、顔料A1を含有する顔料をより効果的に分散させることが可能となり、非水性インク組成物の保存安定性やクリーニング回復性を向上させることができる。さらに、基材上での表面乾燥性の高い非水性インク組成物となって印字の滲みが少なくなり印字が鮮明となる。
【0102】
有機溶剤Bは、アルキルアミド系溶剤(b1)環状アミド系溶剤(b2)ラクトン系溶剤(b3)のうち少なくとも1種類を含むと十分効果を発揮するものであるが、有機溶剤Bの溶剤の中から2種類以上を混合してもよい。2種類以上混合することによって、保存安定性、部材適正、表面乾燥性、クリーニング回復性のバランスを任意のものとすることができる。2種類以上を混合する場合は、有機溶剤Bの合計含有量の下限は、非水性インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、5質量%以上の範囲であることがより好ましく、10質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。有機溶剤Bの合計含有量の上限は、非水性インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましい。
【0103】
[その他の有機溶剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は、上記の有機溶剤B以外の有機溶剤を含有していてもよい。具体的には、グリコールの両末端のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルジアルキルやグリコールの片方のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルモノアルキルや炭酸エステルなどが挙げられる。
【0104】
グリコールエーテル系溶剤は、グリコールの両末端のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルジアルキルやグリコールの片方のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルモノアルキルを挙げられる。グリコールエーテル系溶剤は、例えば、下記式(5)で表されるグリコールエーテルジアルキル、およびグリコールエーテルモノアルキル少なくとも一つ以上を含むものを挙げることができる。
【0105】
-(-O-R-O-R10・・・(5)
(式(5)中、R、R10は、それぞれ独立して、水素または炭素数1以上8以下の分岐しても良いアルキル基であり、Rは炭素数1以上4以下の分岐しても良いアルキレン基を表す。nは1以上6以下の整数を表す。)
【0106】
このようなグリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-イソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-イソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)エーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーエル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル)、等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0107】
この中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールメチル-2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等が、好ましいものとして挙げられる。
【0108】
また、これらのグリコールエーテル系溶剤のうち引火点が異なる2種類以上のグリコールエーテル系溶剤を組み合わせることが好ましい。引火点の高い(例えば引火点が70℃以上)のグリコールエーテル系溶剤を含有させることにより、高いクリーニング回復性を有する非水性インク組成物となる。引火点の低い(例えば引火点が70℃未満)のグリコールエーテル系溶剤を含有させることにより、基材上での表面乾燥性の高い非水性インク組成物となる。引火点が70℃以上のグリコールエーテル系溶剤と引火点が70℃未満のグリコールエーテル系溶剤を含有することにより、高いクリーニング回復性と基材上での表面乾燥性とを両立させることが可能となり、本発明の効果を特に効果的に奏する非水性インク組成物となる。
【0109】
また、グリコールエーテル系溶剤以外のその他の溶剤を含有してもよい。具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステルや、3-メチル-2-オキサゾリジノン、3-エチル-2-オキサゾリジノン、N-ビニルメチルオキサゾリジノン等のオキサゾリジノン系溶剤やトリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテ-ト等のアセテート系溶剤や3-メトキシプロパンアミド、3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-ブトキシプロパンアミド等のアルキルアミド系溶剤(b1)や環状アミド系溶剤(b2)とは異なるアミド系溶剤やメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンタノール等の炭素数1~5のアルキルアルコール類;3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-n-ブタノール等の1価のアルコール系溶剤やアセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、イソブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール類:メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。組み合わせる樹脂や分散剤などに応じて、適切なHLB値の溶剤を選択することが好ましい。
【0110】
その他の有機溶剤の含有量は、特に制限はされないが、その他の有機溶剤の含有量の下限は、10質量%以上の範囲であることが好ましく、20質量%以上の範囲であることがより好ましく、30質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。その他の有機溶剤の含有量の上限は、85質量%以下の範囲であることが好ましく、80質量%以下の範囲であることがより好ましく、75質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0111】
[顔料分散剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物において必要に応じて分散剤を用いてもよい。分散剤としては、非水性インク組成物において用いられている任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては、高分子分散剤を用いるとよい。こうした分散剤としては、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有するものである。ポリアクリル系分散剤では、例えば、Disperbyk-2000、2001、2008、2009、2010、2020、2020N、2022、2025、2050、2070、2095、2150、2151、2155、2163、2164、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151(ビック・ケミー社製)、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PA4401、4402、PA4403、4570、7411、7477、PX4700、PX4701(BASF社製)、TREPLUS D-1200、D-1410、D-1420、MD-1000(大塚化学社製)、フローレンDOPA-15BHFS、17HF、22、G-700、900、NC-500、GW-1500(共栄社化学(株)製)、などが用いられる。ポリカプロラクトン系分散剤では、例えば、アジスパーPB821、PB822、PB881(味の素ファインテクノ(株)製)、ヒノアクトKF-1000、T-6000、T-7000、T-8000、T-8000E、T-9050(川研ファインケミカル(株)製)、Solsperse20000、24000、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34000、35200、36000、37500、39000、71000、76400、76500、86000、88000、J180、J200(ルーブリゾール社製)、TEGO Dispers652、655、685、688、690(エボニック・ジャパン社製)などが用いられる。好ましい分散剤としては、BYKJET-9130、9131,9132,9133,9151、EfkaPX4310、PX4320、PX4330、PX4700、PX4701、Solsperse20000、24000、32000、33000、33500、34000、35200、39000、71000、76500、86000、88000、J180、J200、TEGO Dispers655、685、688、690などが用いられる。これらの単独、又はそれらの混合物を用いることができる。
【0112】
特に、pHが3以上9以下の顔料A1を含有する本実施の形態に係る非水性インク組成物において、上記の中でも塩基性基を有する顔料分散剤を使用することが好ましい。顔料A1のpHは3以上9以下の範囲内であるため、塩基性基を有する顔料分散剤を使用することで非水性インク組成物中での顔料A1の凝集をより効果的に抑制することができる。後述するpHが3以上9以下の顔料A2を含有する非水性インク組成物においても同様である。
【0113】
特に顔料A1のpHが8以下であることで、顔料A1の表面に塩基性基を有する顔料分散剤がより付着されやすくなるので、非水性インク組成物中での顔料A1の凝集をより効果的に抑制することが可能となる。
【0114】
この中でもアミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲アミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲の顔料分散剤を使用することが好ましい。非水性インク組成物中での顔料A1の凝集をさらに効果的に抑制することができる。特に顔料A1のpHが8以下であることで、顔料A1の表面にアミン価が所定範囲の顔料分散剤がより付着されやすくなるので、非水性インク組成物中での顔料A1の凝集をさらに効果的に抑制することが可能となる。後述するpHが3以上9以下の顔料A2を含有する非水性インク組成物においても同様である。
【0115】
顔料分散剤の含有量は、特に制限されないが、顔料分散剤の含有量の下限は、非水性インク組成物中の顔料100質量部に対して5質量部以上であることが好ましいく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。顔料分散剤の含有量の上限は、非水性インク組成物中の顔料100質量部に対して150質量部以下であることが好ましく、125質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましい。
【0116】
[分散助剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物において必要に応じて分散助剤を用いてもよい。分散助剤は色材(顔料)の表面に吸着し、官能基が非水性インク組成物中の有機溶剤や分散剤との親和力を高め、分散安定性を向上させる。分散助剤としては、上記に記載された顔料の誘導体が好ましく、有機顔料残基に酸性基、塩基性基、中性基などの官能基を有する公知の顔料誘導体を用いることができる。後述する第2、第3実施形態の非水性インク組成物においても同様である。
【0117】
[樹脂]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は樹脂を含有しなくともよいが、樹脂を含有していてもよい。樹脂を含有することにより、非水性インク組成物により形成される記録層の定着性、耐水性並びに延伸性を向上させることができる。さらに、得られる記録物の光沢性を向上させることができる。後述する第2、第3実施形態の非水性インク組成物においても同様である。
【0118】
樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シリコーン(シリコン)系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂や混合物を用いることができる。この中でも、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂を含むものが好ましい。
【0119】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成するモノマーの主成分として含むものであれば特に限定されるものではない。アクリル系樹脂は、1種のラジカル重合性モノマーの単独重合体であってもよいし、ラジカル重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであってもよく、特に、本実施の形態に係る非水性インク組成物として好ましいアクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル単独の重合体、或いは、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エトキシエチル、及びメタクリル酸ベンジルよりなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物との共重合体である。又、市販の(メタ)アクリル樹脂としては、例えばロームアンドハース社の「パラロイドB99N」「パラロイドB60」「パラロイドB66」「パラロイドB82」等が例示される。
【0120】
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルモノマーからなる単独重合体であっても重合性モノマーを2種以上選択して用いた共重合体のいずれであってもよい。塩化ビニル系樹脂の共重合体としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂が挙げられる。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂は、塩化ビニル単量体及び酢酸ビニル単量体の重合物である。塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、例えば、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル/ヒドロキシアルキルアクリレート共重合体など、及びそれらの混合物が挙げられる。上記の塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂としては、日信化学工業(株)社から「ソルバインC」、「ソルバインCL」、「ソルバインCNL」、「ソルバインCLL」、「ソルバインCLL2」、「ソルバインC5R」、「ソルバインTA2」、「ソルバインTA3」、「ソルバインA」、「ソルバインAL」、「ソルバインTA5R」、「ソルバインM5」等の商品名で入手して使用することができる。
【0121】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂は塩化ビニル単量体及び酢酸ビニル単量体の重合することにより得ることができる。重合する方法は、従来公知の重合方法であればよい。重合する方法は、乳化重合または懸濁重合であることが好ましく、懸濁重合であることがより好ましい。
【0122】
セルロース系樹脂とは、セルロースを原料として生物的または化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する樹脂である。例えば、セルロース系樹脂としては、例えばセルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂などのセルロースアセテートアルキレート樹脂、セルロースアセテート樹脂、ニトロセルロース樹脂及びそれらの混合物が挙げられる。上記セルロース樹脂としてはEASTMAN社の「CAB551-0.01」「CAB551-0.2」、「CAB553-0.4」、「CAB531-1」、「CAB381-0.1」、「CAB381-0.5」、「CAB381-2」、「CAB381-20」「CAP504」、「CAP482-0.5」等の商品名で入手して使用することができる。
【0123】
ポリエステル系樹脂とは、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる構成単位を少なくとも含むものである。ポリエステル系樹脂は、変性されたポリエステル系樹脂を含んでもよい。ポリエステル系樹脂としては、東洋紡社の「VYLON226」、「VYLON270」、「VYLON560」、「VYLON600」、「VYLON630、「VYLON660」、「VYLON885」、「VYLONGK250」、「VYLONGK810」、「VYLON GK890」等やユニチカ社の「elitleUE-3200」「elitleUE-3285」、「elitleUE-3320」、「elitleUE-9800」、「elitleUE-9885」等の商品名で入手して使用することができる。
【0124】
ポリウレタン系樹脂とは、アルコール成分とイソシアネート成分を共重合させて得られる構成単位を少なくとも含むものである。ポリウレタン系樹脂は、ポリエステルやポリエーテルやカプロラクトンにより変性されたポリウレタン系樹脂を含んでもよい。上記のポリウレタン系樹脂としては、荒川化学工業社の「ユリアーノKL-424」、「ユリアーノKL-564」、「ユリアーノKL-593」、「ユリアーノ3262」等やDIC社の「パンデックス372E」、「パンデックス390E」、「パンデックス394E」、「パンデックス304」、「パンデックス305E」、「パンデックスP-870」、「パンデックスP-910」、「パンデックスP-895」、「パンデックス4030」、「パンデックス4110」等の商品名で入手して使用することができる。
【0125】
また、これらのアクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリウレタン系樹脂は、単独で使用してもよいが、2種を混合して使用することが好ましく、アクリル系樹脂と塩化ビニル系樹脂と、を混合した樹脂を使用することがより好ましい。アクリル系樹脂と塩化ビニル系樹脂との含有比率により、非水性インク組成物に要求される発色、乾燥性、塗膜物性、印字適性などの要求を満たすように制御することができる。アクリル系樹脂と塩化ビニル系樹脂と、を混合する場合、混合比は特に制限されるものではなく、適宜変更することができる。
【0126】
非水性インク組成物に含有される樹脂は、特に限定されないが、非水性インク組成物全量中0.05質量%以上の範囲で含有することが好ましく、0.1質量%以上の範囲で含有することがより好ましく、0.5質量%以上の範囲で含有することがさらに好ましい。これにより、得られる記録物の表面乾燥性をさらに向上させることができる。非水性インク組成物に含有される樹脂は、非水性インク組成物全量中20.0質量%以下の範囲で含有することが好ましく、15.0質量%以下の範囲で含有することがより好ましく、10.0質量%以下の範囲で含有することがさらに好ましい。これにより、インクジェットヘッドのノズル内での詰まりをより効果的に解消し、非水性インク組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0127】
また、本実施の形態に係る非水性インク組成物に含有される樹脂は、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂が樹脂全量中5質量%以下の範囲であることが好ましい。これにより、ベタ印字を行った部分に白抜けが発生することを抑制すること(ベタ埋まりが良好となる。)ができる。さらに、本実施の形態に係る非水性インク組成物は、所定のpHの範囲内のペリノン系顔料を含有することで保存安定性が高く、クリーニング回復性の高いものであり、さらに固有粘度が90mL/g以上の樹脂が樹脂全量中5質量%以下の範囲であることにより、インクジェットヘッドのノズル内での詰まりをより効果的に解消し、非水性インク組成物の保存安定性、クリーニング回復性及び吐出安定性を極めて向上させることができる。
【0128】
なお、本明細書において、固有粘度とは、対象となる樹脂を展開溶媒に分散させGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)における粒状ゲルを充填したカラムにより樹脂に含まれる分子を分離した後の比粘度〔ηSP〕((η-η)/η(η:溶媒粘度、η:溶液粘度))及び濃度Cを求め、式Lim(〔ηSP〕/C)において、濃度Cを0に外挿(C→0)することにより求めることができる。なお、展開溶媒は特に限定されるものではないが、例えばテトラヒドロフランを使用することができる。後述する第2、第3実施形態の非水性インク組成物においても同様である。
【0129】
なお、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂の含有量は樹脂全量中5.0質量%以下の範囲であることが好ましく、4.0質量%以下の範囲であることがより好ましく、3.0質量%以下の範囲であることがさらになお好ましい。
【0130】
[界面活性剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物においては、ノズル部やチューブ内等の機器内での非水性インク組成物の揮発抑制、固化防止、又、固化した際の再溶解性を目的として、又、表面張力を低下させ記録媒体(基材)との濡れ性を向上させる目的で、また、インク組成物の基材上でのにじみ抑制を目的として、また、塗膜の耐擦性向上を目的として、また、記録物の更なる光沢性の向上を目的として、界面活性剤を添加してもよい。後述する第2、第3実施形態の非水性インク組成物においても同様である。
【0131】
この中でも界面活性剤は、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有することが好ましい。顔料A1は非水性インク組成物中において凝集しやすく、体積平均粒子径が大きくなる傾向がある。すると、得られる記録物の光沢性が低下することがある。本実施の形態に係る非水性インク組成物においてシロキサン骨格を有する界面活性剤を含有することで、顔料A1を含有していても得られる記録物の光沢性を向上させることができる。さらに、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有した非水性インクであれば、印字の滲みが少なくなり、耐擦性が向上した記録物が得られる。
【0132】
シロキサン骨格を有する界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-313、315N、322、326、331、347、348、BYK-UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)等を使用することができる。
【0133】
また、本実施の形態に係る非水性インク組成物には、シロキサン骨格を有する界面活性剤とは異なる界面活性剤を含有してもよい。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるノニオンP-208、P-210、P-213、E-202S、E-205S、E-215、K-204、K-220、S-207、S-215、A-10R、A-13P、NC-203、NC-207(日本油脂(株)製)、エマルゲン106、108、707、709、A-90、A-60(花王(株)製)、フローレンG-70、D-90、TG-740W(共栄社化学(株)製)、ポエムJ-0081HV(理研ビタミン(株)製)、アデカトールNP-620、NP-650、NP-660、NP-675、NP-683、NP-686、アデカコールCS-141E、TS-230E((株)アデカ製)等、ソルゲン30V、40、TW-20、TW-80、ノイゲンCX-100(第一工業製薬(株)製)等、フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-340(ビックケミー・ジャパン社製)等、アセチレングリコール系界面活性剤としては、具体例として、サーフィノール(登録商標)82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィン(登録商標)STG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)等が例示される。界面活性剤としては、上記に限られずアニオン系、カチオン系、両性又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができる。
【0134】
本実施の形態に係る非水性インク組成物は、シロキサン骨格を有する界面活性剤とともにこれらの界面活性剤を含有してもよく、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有せずに、これらの界面活性剤を含有してもよい。
【0135】
本実施の形態に係る非水性インク組成物において、界面活性剤の含有量としては、特に限定されないが、界面活性剤の含有量の下限としては、0.01質量%以上の範囲であることが好ましく、0.05質量%以上の範囲であることがより好ましく、0.1質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。界面活性剤の含有量の下限としては、5.0質量%以下の範囲であることが好ましく、4.0質量%以下の範囲であることがより好ましく、3.0質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0136】
[その他の成分]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、エポキシ化物等、多価カルボン酸、表面調整剤、レベリング剤(アクリル系やシリコン系等)、消泡剤、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤等の公知の添加剤を任意成分として含んでもよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられる。具体的には、BHA(2,3-ブチル-4-オキシアニソール)、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)等が例示される。また、紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系化合物、又はベンゾトリアゾール系化合物を用いることができる。また、エポキシ化物の具体例としては、エポキシグリセリド、エポキシ脂肪酸モノエステル、およびエポキシヘキサヒドロフタレートなどが例示され、具体的にはアデカサイザーO-130P、アデカサイザーO-180A(ADEKA社製)等が例示される。多価カルボン酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸などが例示される。
【0137】
≪1-2.第2実施形態の非水性インク組成物≫
本実施の形態に係る第2実施形態の非水性インク組成物は、顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物である。
【0138】
そしてこの非水性インク組成物に含有される顔料は、下記式(1-2)で示される顔料A2を含有し、顔料A2のpHは3以上9以下の範囲内であることを特徴としている。
【0139】
【化12】
(式(1-2)中、X1~X10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐しても良いアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【0140】
pHが3以上9以下の範囲内に制御された顔料A2を含有することにより非水性インク組成物において顔料同士の凝集を抑制することができ、保存安定性及びクリーニング回復性を向上させることができる。
【0141】
pHが3以上9以下の顔料A2は、上述した顔料A1と同様に溶液で洗浄することにより、顔料の表面を処理するか、若しくは式(1-2)の構造中のベンゼン環中の置換基(X1~X10)の種類を変更するか、又はその両方の処理を施すことにより得られる。ベンゼン環中の置換基(X1~X10)の種類を変更する方法は上述した顔料A1と同様である。置換基X1~X10が置換される位置は顔料A2のpHは3以上9以下の範囲内であれば、ベンゼン環の10個のいずれの置換位置であればよく特に限定されず、置換基の数も特に限定されない。
【0142】
顔料A2のpHの上限は、9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましく、6以下であることがさらになお好ましい。顔料A2のpHの下限は、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。特に顔料A2のpHが9以下であることで顔料分散剤がより付着されやすくなるので、非水性インク組成物中での顔料A2の凝集をより効果的に抑制することが可能となる。これにより、非水性インク組成物の吐出安定性、及び色調安定性を向上させることができる。
【0143】
本実施の形態に係る非水性インク組成物における水分の含有量や顔料A2の平均粒子径の好ましい範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物における水分の含有量の好ましい範囲や顔料A1の平均粒子径の好ましい範囲と同様である。
【0144】
本実施の形態に係る非水性インク組成物に含有される顔料A2の含有量の好ましい範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物における顔料A1の含有量の好ましい範囲と同様である。顔料A2の含有量が非水性インク組成物全量中8.0質量%以下であることで、非水性インク組成物中での顔料A2の凝集をより効果的に抑制することができる。これにより、相対的に他の添加材の含有量を増やすことが可能となり、さらに顔料A2の含有量を増加することによる粘度の上昇を抑制できるのでインクジェットヘッドのノズル目詰まりを抑制することができ、クリーニング回復性をさらに向上させることができる。
【0145】
式(1-2)で示される顔料A2としては、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド283、C.I.ピグメントレッド291、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントオレンジ81等を挙げることができる。
【0146】
また、式(1-2)で示される顔料A2は、合成してもよく、例えば、市販品のジケトピロロピロール顔料を溶液(酸溶液、アルカリ溶液、若しくは中性の溶液)で洗浄することにより、顔料の表面を処理するか、若しくは式(1-2)の構造中のベンゼン環中の置換基(X1~X10)の種類を変更するか、又はその両方の処理を施すことにより入手してもよい。市販品としては、BASF社製のIRGAPHOR RED BT-CF、CROMOPHTAL DPP Red BP(いずれもC.I.ピグメントレッド254)、大日精化工業社製のクロモファインレッド6156EC(いずれもC.I.ピグメントレッド254)、東京化成工業社製のPigment Red 254 (C.I.ピグメントレッド254)、CINIC社製のCinilex DPP Red SR-2P(C.I.ピグメントレッド254)、BASF社製のCROMOPHTAL DPP ORANGE TR、IRAGIN ORANGE D2905、(C.I.ピグメントオレンジ71)、BASF社製のIrgazin Orange L 2990 HD(C.I.ピグメントオレンジ73)等が挙げられる。
【0147】
なお、本実施の形態に係る非水性インク組成物は、上述の顔料A2以外の色材(顔料・染料を含む)をさらに含有してもよい。そのような色材としては顔料A2と類似する色相(例えば、オレンジ、マゼンタ、イエロー、レッド)の顔料及び染料が挙げられる。
【0148】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214、C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57:1、97、112、122、123、146、149、150、168、177、180、184、192、202、206、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、269、291、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0149】
また、顔料分散剤とともに、後述する分散助剤(顔料誘導体)を使用してもよい。これにより、顔料の分散安定性を向上させることができる。
【0150】
次に、本実施の形態に係る非水性インク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0151】
[有機溶剤]
有機溶剤は、本実施の形態に係る非水性インク組成物に含有される各成分を分散又は溶解することができるものである。有機溶剤は、特に限定されないが、顔料A2を含有する顔料を分散させて、本発明の効果をより効果的に奏する観点から、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有することが好ましい。
【0152】
例えば、有機溶剤として後述するようなグリコールエーテル系溶剤を含有させると、グリコールエーテル系溶剤と「顔料A2」との親和性が悪いため非水性インク組成物内で顔料A2が凝集してしまいクリーニング回復性が悪化することがある。そこで、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有させることで、顔料A2が凝集することによるクリーニング回復性の悪化を効果的に抑制することができる。このため、本発明の非水性インク組成物に含まれる有機溶剤は特に限定されるものではないが、特にグリコールエーテル系溶剤を含有させた場合にはグリコールエーテル系溶剤とともに有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有させることで、保存安定性が高く、クリーニング回復性の高い非水性インク組成物となる。
【0153】
アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)における好ましい溶剤の種類は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物におけるアルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)と同様である。
【0154】
環状アミド系溶剤(b2)の含有量は、特に限定されないが、環状アミド系溶剤(b2)の含有量の下限は、非水性インク組成物全量中1質量%以上の範囲であることが好ましく、10質量%以上の範囲であることがより好ましく、15質量%以上の範囲であることがさらに好ましい。「環状アミド系溶剤(b2)の含有量の下限」以外の非水性インク組成物に含有されるアルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)における好ましい含有量の範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物におけるアルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)と同様である。
【0155】
有機溶剤Bの中でも、「アルキルアミド系溶剤(b1)を含むもの」又は「環状アミド系溶剤(b2)を含むもの」であることが好ましく、その中でも「アルキルアミド系溶剤(b1)を含むもの」がより好ましい。有機溶剤Bは、アルキルアミド系溶剤(b1)環状アミド系溶剤(b2)ラクトン系溶剤(b3)のうち少なくとも1種類を含むと十分効果を発揮するものであるが、有機溶剤Bの溶剤の中から2種類以上を混合してもよい。有機溶剤Bを2種類以上混合する場合、非水性インク組成物に含有される有機溶剤Bの合計含有量の好ましい範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0156】
[その他の有機溶剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は、上記の有機溶剤B以外の有機溶剤を含有していてもよい。具体的には、グリコールの両末端のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルジアルキルやグリコールの片方のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルモノアルキルや炭酸エステルやその他の溶剤(オキサゾリジノン系溶剤、アセテート系溶剤、アルキルアミド系溶剤(b1)や環状アミド系溶剤(b2)とは異なるアミド系溶剤、アルキルアルコール類、ケトン又はケトアルコール類、エーテル類、オキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体、ジオール類、4価アルコール類、アルカノールアミン類等)が挙げられる。その他の有機溶剤における好ましい溶剤の種類は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物におけるグリコールエーテルジアルキルやグリコールエーテルモノアルキルや炭酸エステルと同様である。非水性インク組成物に含有されるその他の有機溶剤の合計含有量の好ましい範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0157】
[顔料分散剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物において必要に応じて分散剤を用いてもよい。好ましい顔料分散剤の種類は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物における顔料分散剤と同様である。
【0158】
特に、pHが3以上9以下の顔料A2を含有する本実施の形態に係る非水性インク組成物において、上記の中でも塩基性基を有する顔料分散剤を使用することが好ましい。この中でもアミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲アミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲の顔料分散剤を使用することが好ましい。
【0159】
非水性インク組成物に含有される顔料分散剤の含有量の好ましい範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0160】
[分散助剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物において必要に応じて分散助剤を用いてもよい。
【0161】
[樹脂]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は樹脂を含有しなくともよいが、樹脂を含有していてもよい。好ましい樹脂の種類は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物における樹脂と同様である。非水性インク組成物に含有される樹脂の含有量や5℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂の好ましい範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0162】
[界面活性剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は界面活性剤を添加してもよい。
【0163】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であるノニオンP-208、P-210、P-213、E-202S、E-205S、E-215、K-204、K-220、S-207、S-215、A-10R、A-13P、NC-203、NC-207(日本油脂(株)製)、エマルゲン106、108、707、709、A-90、A-60(花王(株)製)、フローレンG-70、D-90、TG-740W(共栄社化学(株)製)、ポエムJ-0081HV(理研ビタミン(株)製)、アデカトールNP-620、NP-650、NP-660、NP-675、NP-683、NP-686、アデカコールCS-141E、TS-230E((株)アデカ製)等、ソルゲン30V、40、TW-20、TW-80、ノイゲンCX-100(第一工業製薬(株)製)等、フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-340(ビックケミー・ジャパン社製)等、シロキサン骨格を有するシリコン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましく、を用いることが好ましく、具体例としては、BYK-313、315N、322、326、331、347、348、BYK-UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)等、アセチレングリコール系界面活性剤としては、具体例として、サーフィノール(登録商標)82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィン(登録商標)STG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)等が例示される。
【0164】
界面活性剤としては、上記に限られずアニオン系、カチオン系、両性又は非イオン系のいずれの界面活性剤も用いることができる。この中でも界面活性剤は、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有することが好ましい。シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有した非水性インクであれば、印字の滲みが少なくなり、耐擦性が向上した記録物が得られる。後述する第3実施形態の非水性インク組成物についても同様である。
【0165】
非水性インク組成物に含有される界面活性剤の含有量の範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0166】
[その他の成分]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は、その他の成分を任意成分として含んでもよい。非水性インク組成物に含有されるその他の成分の種類は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0167】
≪1-3.第3実施形態の非水性インク組成物≫
本実施の形態に係る非水性インク組成物は、顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物である。
【0168】
そしてこの非水性インク組成物に含有される顔料は、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を含有し、有機溶剤は、下記有機溶剤Bを含有することを特徴としている。
【0169】
有機溶剤B:アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ
【0170】
ハロゲン化フタロシアニン顔料A3とは、フタロシアニン骨格におけるベンゼン環の水素の少なくとも一部がハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)に置換された化合物である。
【0171】
【化13】
(式(1-3)中、X1~X16は、いずれも独立にハロゲン原子または水素原子を表す。Mは2つの水素原子又は配位子を有していてもよい金属原子を表す。)
【0172】
ハロゲン化フタロシアニン顔料は、フタロシアニン分子1個あたり、ハロゲン原子の合計が、最大でも16個結合した構造の顔料である。
【0173】
フタロシアニン顔料がハロゲン化されることにより、緑色に呈する顔料となる。一般的に得られる記録物に緑色を表現するには、(I)緑色顔料を用いたグリーンインクを使用するか、(II)黄色顔料と青色顔料を用いたグリーンインクを使用するか、または(III)黄色顔料を用いたイエローインクと青色顔料を用いたシアンインクとの2色で緑色を表現するかのいずれかの方法が考えられる。このうち、複数の顔料を使用する、(II)や複数のインクを使用する(III)では結果的に黄色顔料と青色顔料により緑色を表現していることから、彩度が低下しやすい。一方で、(I)では、複数の顔料や複数のインクを使用せずに、元々緑色に呈する緑色顔料を用いたグリーンインクを使用するため、(II)や(III)の方法と比較して彩度が向上し、色再現性を向上させることができる。
【0174】
さらに、フタロシアニン系顔料は、一般に黄色顔料に比べて耐候性が高い。このため、ハロゲン化フタロシアニン顔料を含むグリーンインクを使用することにより、(II)や(III)の方法のような黄色顔料と青色顔料を使用した場合と比較して得られる記録物の耐候性も向上させることができる。
【0175】
ところが、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3は、ハロゲン元素が置換されていることから顔料全体の密度(単位体積あたりの重量)が高くなってしまい、非水性インク組成物中で長期間分散させることが困難となる。このため、ハロゲン化フタロシアニン顔料を含む非水性インク組成物を長期間保管すると、顔料が非水性インク組成物内で顔料が沈殿して保存安定性や色調安定性、及びクリーニング回復性が低下することが本発明者らの研究により明らかとなった。
【0176】
そこで、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有することで、保存安定性及び色調安定性、及びクリーニング回復性を向上させることができる。
【0177】
本実施の形態に係る非水性インク組成物における水分の含有量の好ましい範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物における水分の含有量の好ましい範囲と同様である。顔料A3は疎水性が高いため、この顔料を含む非水系インクジェット組成物は、水との接触により比較的容易に顔料の分散性が悪化しやすく、保存安定性が悪化しやすい。有機溶剤Bを含有することに加え、非水性インク組成物中に水分の含有量を低減してできるだけ水分を含まないようにすること(水分を意図的に含まないようにすること)で、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3の沈殿をより効果的に抑制することが可能となって、保存安定性や吐出安定性をより効果的に向上させることができる。
【0178】
以下、本実施の形態に係る非水性インク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0179】
[顔料]
本実施の形態に係る非水性インク組成物に含有される顔料は、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を含有する。ハロゲン化フタロシアニン顔料A3は、下記式のようなフタロシアニン骨格を有する化合物である。
【0180】
【化14】
(式(1-3)中、X1~X16は、いずれも独立にハロゲン原子または水素原子を表す。Mは2つの水素原子又は配位子を有していてもよい金属原子を表す。)
【0181】
ハロゲン化フタロシアニン顔料とは、X1~X16のうち、少なくとも1つ以上がハロゲン原子に置き換わったものをいう。すなわち、ハロゲン化フタロシアニン顔料は、フタロシアニン分子1個あたり、ハロゲン原子の合計が、最小で1個結合し、最大でも16個結合した構造の顔料である。なお、ハロゲン基が多いハロゲン化フタロシアニン顔料であるほどより緑色に近い顔料となる。ハロゲン化フタロシアニン顔料に置換されているハロゲン原子の個数は、緑色の色相を呈すために、1個以上が好ましく、8個以上がより好ましく、12個以上がより好ましく、14個以上がより好ましい。
【0182】
ハロゲン化フタロシアニン顔料A3はそのフタロシアニン骨格の中心Mが2つの水素原子であっても良く、Mが金属原子であるハロゲン化金属フタロシアニン顔料であってもよい。Mが金属原子であるとき、金属の種類は特に限定されないが、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、又はアルミニウム(Al)であれば特に望ましい。また、Mが金属原子であるとき、Mは配位子を有していても良い。
【0183】
このようなハロゲン化フタロシアニン顔料A3(ハロゲン化金属フタロシアニン顔料を含む)としては、具体的には、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、63等が挙げられる。ハロゲン化フタロシアニン顔料A3は、従来公知の方法で製造する方法であってもよく、DIC社製のFASTGEN GREEN 2YK(C.I.ピグメントグリーン36)、大日精化工業社製のシアニングリーン5370(C.I.ピグメントグリーン36)、DIC社製のFASTGEN GREEN 5740(C.I.ピグメントグリーン7)、DIC社製のFastogen GREEN A110(C.I.ピグメントグリーン58)等の市販品であってもよい。
【0184】
顔料A3の体積基準累積50%粒子径(D50)は特に限定されないが、体積基準累積50%粒子径(D50)の下限は、30nm以上であることが好ましく、40nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。これにより、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3の耐候性が向上する。体積基準累積50%粒子径(D50)の上限は、150nm以下であることが好ましく、140nm以下であることがより好ましく、130nm以下であることがさらに好ましい。これにより、非水性インク組成物中におけるハロゲン化フタロシアニン顔料A3の沈殿をより効果的に抑制できるようになり、色調安定性が向上する。
【0185】
顔料A3の体積基準累積90%粒子径(D90)は、特に限定されないが、体積基準累積90%粒子径(D90)の下限は、50nm以上であることが好ましく、60nm以上であることがより好ましく、70nm以上であることがさらに好ましい。これにより、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3の耐候性が向上する。体積基準累積90%粒子径(D90)の上限は、300nm以下であることが好ましく、290nm以下であることがより好ましく、280nm以下であることがさらに好ましい。これにより、非水性インク組成物中におけるハロゲン化フタロシアニン顔料A3の沈殿をより効果的に抑制できるようになり、色調安定性が向上する。
【0186】
顔料A3の含有量は、特に制限されないが、顔料A3の含有量の下限は、非水性インク組成物全量中0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、印字濃度が十分となり、記録物の色再現性を高くすることができる。顔料A3の含有量の上限は、非水性インク組成物全量中8.0質量%以下であることが好ましく、6.0質量%以下であることがさらに好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、相対的に他の添加材の含有量を増やすことが可能となり、さらに顔料(ハロゲン化フタロシアニン顔料)の含有量を増加することによる粘度の上昇を抑制できるのでインクジェットヘッドのノズル目詰まりを抑制することができ、クリーニング回復性をさらに向上させることができる。
【0187】
なお、本実施の形態に係る非水性インク組成物は、上述のハロゲン化フタロシアニン顔料A3以外の色材(顔料・染料を含む)をさらに含有してもよい。そのような色材としてはハロゲン化フタロシアニン顔料A3と類似する骨格や色相(シアン、グリーン、イエロー)の顔料及び染料が挙げられる。
【0188】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214等の顔料等が挙げられる。
【0189】
また、顔料分散剤とともに、後述する分散助剤(顔料誘導体)を使用してもよい。これにより、顔料の分散安定性を向上させて、非水性インク組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0190】
次に、本実施の形態に係る非水性インク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0191】
[有機溶剤]
有機溶剤は、本実施の形態に係る非水性インク組成物に含有される各成分を分散又は溶解することができるものである。有機溶剤は、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有する。
【0192】
本発明者らの研究により、アルキルアミド系溶剤(b1)を含有することにより、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を非水性インク組成物中で長期間分散させることが可能となり、保存安定性及び色調安定性、及びクリーニング回復性を向上できることが明らかとなった。この理由は必ずしも明らかではないが、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を分散させる顔料分散剤との親和性が向上し、アルキルアミド系溶剤を含有する非水性インク組成物中で効果的に分散させることが可能となってハロゲン化フタロシアニン顔料A3の沈殿を抑制できるようになったためであると考えられる。
【0193】
また、本発明者らの研究により環状アミド系溶剤(b2)又はラクトン系溶剤(b3)含有することにより、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を非水性インク組成物中で長期間分散させることが可能となり、保存安定性及び色調安定性、及びクリーニング回復性を向上できることが明らかとなった。
【0194】
アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)における好ましい溶剤の種類は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物におけるアルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)と同様である。
【0195】
有機溶剤Bの中でも、「アルキルアミド系溶剤(b1)を含むもの」又は「環状アミド系溶剤(b2)を含むもの」であることが好ましく、その中でも「アルキルアミド系溶剤(b1)を含むもの」がより好ましい。有機溶剤Bは、アルキルアミド系溶剤(b1)環状アミド系溶剤(b2)ラクトン系溶剤(b3)のうち少なくとも1種類を含むと十分効果を発揮するものであるが、有機溶剤Bの溶剤の中から2種類以上を混合してもよい。有機溶剤Bを2種類以上混合する場合、非水性インク組成物に含有される有機溶剤Bの合計含有量の好ましい範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0196】
[その他の有機溶剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は、上記の有機溶剤B以外の有機溶剤を含有していてもよい。具体的には、グリコールの両末端のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルジアルキルやグリコールの片方のOH基がアルキル置換されたグリコールエーテルモノアルキルや炭酸エステルやその他の溶剤(オキサゾリジノン系溶剤、アセテート系溶剤、アルキルアミド系溶剤(b1)や環状アミド系溶剤(b2)とは異なるアミド系溶剤、アルキルアルコール類、ケトン又はケトアルコール類、エーテル類、オキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体、ジオール類、4価アルコール類、アルカノールアミン類等)が挙げられる。その他の有機溶剤における好ましい溶剤の種類は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物におけるグリコールエーテルジアルキルやグリコールエーテルモノアルキルや炭酸エステルと同様である。非水性インク組成物に含有されるその他の有機溶剤の合計含有量の好ましい範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0197】
[顔料分散剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物において必要に応じて顔料分散剤を用いてもよい。特に、顔料A3を含有する本実施の形態に係る非水性インク組成物において、塩基性基を有する顔料分散剤を使用することが好ましい。また、塩基性基を有する顔料分散剤を使用することで非水性インク組成物中でのハロゲン化フタロシアニン顔料A3の凝集をより効果的に抑制することができる。好ましい顔料分散剤の種類は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物における顔料分散剤と同様である。
【0198】
この中でもアミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲の顔料分散剤を使用することが好ましい。非水性インク組成物中での顔料A3の凝集をさらに効果的に抑制することができる。
【0199】
非水性インク組成物に含有される顔料分散剤の含有量の好ましい範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0200】
[分散助剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物において必要に応じて分散助剤を用いてもよい。
【0201】
[樹脂]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は樹脂を含有しなくともよいが、樹脂を含有していてもよい。好ましい樹脂の種類は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物における樹脂と同様である。非水性インク組成物に含有される樹脂の含有量の好ましい範囲は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0202】
また、本実施の形態に係る非水性インク組成物に含有される樹脂は、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂が樹脂全量中5質量%以下の範囲であることが好ましい。これにより、連続吐出安定性等の印刷性能に優れるようになり、得られる記録物のクリーニング回復性をさらに効果的に向上させることができる。
【0203】
なお、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂の含有量は樹脂全量中4.0質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以下であることがさらになお好ましい。
【0204】
[界面活性剤]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は界面活性剤を添加してもよい。好ましい界面活性剤の種類は、上述した第2実施形態の非水性インク組成物における界面活性剤と同様である。非水性インク組成物に含有される界面活性剤の含有量の好ましい範囲は、上述した第2実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0205】
[その他の成分]
本実施の形態に係る非水性インク組成物は、その他の成分を任意成分として含んでもよい。非水性インク組成物に含有されるその他の成分の種類は、上述した第1実施形態の非水性インク組成物と同様である。
【0206】
≪2.非水性インク組成物の製造方法≫
本実施の形態に係る非水性インク組成物の製造方法は、有機溶剤と、顔料A1、又A2を含有する顔料と他成分(例えば樹脂等)をペイントシェイカーを用いて混合することにより製造することができる。この際、ジルコニアビーズにて各成分を分散させてもよい。また、得られた非水性インク組成物は、必要に応じて脱気処理するなどして所望の溶存酸素量や溶存窒素量に調整してもよい。
【0207】
また、顔料A3を含有する顔料を使用する場合には、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含む有機溶剤と、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を含有する顔料と他成分(例えば樹脂等)をペイントシェイカーを用いて混合することにより製造することができる。
【0208】
本実施の形態に係る非水性インク組成物(第1、第2、及び第3実施形態の非水性インク組成物)は、水を意図的に含有させない非水性インク組成物であるが、原料由来および製造過程で水分が混入する場合がある。非水性インク組成物中における水分含有量は、できるだけ少ない方が望ましい。水分を過剰に含むと、保存安定性や吐出性が悪く、さらに固形成分等が発生するリスクが高くなる。非水性インク組成物中の水分含有量の上限は非水性インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0209】
この際、有機溶剤を予め乾燥させておくことが好ましい。有機溶剤を予め乾燥させておくことで、非水性組成物に含まれる水分量を軽減することができる。有機溶剤を乾燥させる方法としては、例えば窒素等の不活性ガス雰囲気下で乾燥させた不活性ガス(例えば、窒素ガス)を所定時間吹き付ける方法や、有機溶剤を蒸留精製する方法や、水を選択的に透過する半透過膜に有機溶剤を透過させる方法や、水を吸着する水吸着剤に有機溶剤に混入した水を選択的に吸着させる方法等を挙げることができる。
【0210】
≪3.インク組成物を用いた記録方法≫
本実施の形態に係る記録方法は、上記の非水性インク組成物を、インクジェット方式にて基材の表面に吐出する記録方法である。上記の非水性インク組成物のうち第1及び第2実施形態の非水性インク組成物は、pHは3以上9以下の範囲内になるように構造中の置換基が変更された顔料A1、又はA2を含有することで、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される特性を満たすものであり、本実施の形態に係る記録方法においても、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される特性を満たすものである。上記の非水性インク組成物のうち第3実施形態の非水性インク組成物は、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を含んでいても保存安定性及び色調安定性が高いものであり、本実施の形態に係る記録方法を使用して得られた記録物においても色調安定性が高いものである。インクジェット法により吐出する方式は、圧電素子を用いたピエゾ方式であっても、発熱体を用いたサーマル方式であってもよく、特に限定されない。
【0211】
≪4.記録物の製造方法≫
上記のインク組成物を用いた記録方法は、記録物の製造方法と定義することもできる。上記の非水性インク組成物のうち第1実施形態の非水性インク組成物を使用して記録物を製造することにより、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される特性を満たした状態で記録物を製造することができる。また、上記の非水性インク組成物のうち第2実施形態の非水性インク組成物を使用して記録物を製造することにより、保存安定性が高く、クリーニング回復性が高い特性を満たした状態で記録物を製造することができる。また、上記の非水性インク組成物のうち第3実施形態の非水性インク組成物を使用して記録物を製造することにより、色調安定性が高い記録物が得られる。
【0212】
≪5.記録物≫
上述した実施形態の記録物の製造方法により製造された記録物を構成する各層について説明する。
【0213】
[媒体(記録媒体)]
本実施の形態に係る記録方法に使用することのできる基材(記録媒体)としては、特に限定はされず、樹脂基材、金属、板ガラスなどの非吸収性基材であっても、紙や布帛などの吸収性基材であっても、受容層を備える基材のような表面塗工が施された基材であってもよく、種々の基材を使用することができる。
【0214】
これらの中でも、上記非水性インク組成物は、水を含有しない非水性インク組成物であるため、表面が主として樹脂からなるものが好ましい。特に、上記の非水性インク組成物が樹脂基材に対して浸透性を示すアルキルアミド系溶剤(b)を含む場合には、表面が樹脂からなる媒体(記録媒体)での印字の滲みが少なくなり印字が鮮明となる。樹脂としては、ポリ塩化ビニル系重合体やアクリル、PET、ポリカーボネート、PE、PP等が挙げられる。また、 記録物の記録表面に対してフィルムを張り合わせことを前提とするような樹脂基材(いわゆるラミネート用の樹脂基材)に用いられてもよい。特に、表面が硬質又は軟質ポリ塩化ビニル系重合体からなる基材(記録媒体)が好ましい。表面がポリ塩化ビニル重合体からなる基材(記録媒体)としては、ポリ塩化ビニル基材(フィルム又はシート)等が例示できる。
【0215】
[記録層]
記録層(印刷層ともいう。)とは、上記の非水性インク組成物に含まれる溶媒が揮発することにより形成される層であり、所望の画像を形成する層である。上記の非水性インク組成物のうち第1実施形態の非水性インク組成物を吐出することでインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される特性を満たすものとなる。上記の非水性インク組成物のうち第2実施形態の非水性インク組成物は保存安定性が高く、クリーニング回復性が高いものであるので、長期間保存された非水性インク組成物であっても所望の画像を形成することが可能である。上記の非水性インク組成物のうち第3実施形態の非水性インク組成物を吐出することで色調安定性が高い記録層となる。また、上記の非水性インク組成物は保存安定性が高いものであるので、長期間保存された非水性インク組成物であっても所望の画像を形成することが可能である。
【0216】
[その他の層]
本実施の形態に係る記録物は、さらに記録層(印刷層)の上表面に所望の機能を有する層を備えてもよい。例えば、記録物に耐擦性や光沢性をさらに付与する目的で、樹脂、ワックスの少なくとも1つを含有するオーバーコート層が形成されていてもよい。また、フィラーを含有させ、又は膜厚をピクセル単位で変化させること等により、表面に凹凸感(マット面)を表現された層が形成されていてもよい。また、記録物に耐候性を付与するために、紫外線吸収剤や光安定化剤等を含む耐候層や光輝性顔料を含む光輝性層等が形成されていてもよい。
【0217】
≪6.インクセット≫
本実施の形態に係るインクセットは、上記の非水性インク組成物を少なくとも備えるインクセットである。例えば、上記の非水性インク組成物がレッドインク、オレンジインク又はグリーンインクである場合には、従来公知のイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクと、を組み合わせることで、本発明の効果を奏することに加えて、色再現性を拡げることが可能となる。
【0218】
また、上記の非水性インク組成物と、白インクや、メタリックインク、パールインクなどの光輝性インクを含むインクセットとしてもよく、顔料を含まないクリアインクを含むインクセットとしてもよい。
【0219】
≪7.インクジェット記録装置≫
上記の非水性インク組成物をインクジェット法により吐出するインクジェット記録装置は、従来公知のものを使用することができる。例えば、VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製のようなインクジェットプリンターなどを使用することができる。
【0220】
インクジェット記録装置の構成の一例として、オンキャリッジタイプであってシリアルプリンタータイプのインクジェット記録装置を説明するが、本実施の形態に係る記録方法を実施することのできるインクジェット記録装置は、インクカートリッジが外部に固定されたオフキャリッジタイプのインクジェット記録装置であってもよく、インクジェットヘッドヘッドが移動せずに記録媒体(基材)上にインク組成物を吐出するラインプリンタータイプのインクジェット記録装置であってもよい。
【0221】
また、インクジェット記録装置は、加温機構と、基材を固定する固定機構と、を備えていることが好ましい。インクジェット記録装置に備えられる加温機構によって基材表面温度を制御して、基材(記録媒体)に着弾した非水性インク組成物を乾燥させることで、非水性インク組成物に含有される有機溶剤を揮発させることが可能となる。
【0222】
さらに、基材を固定する固定機構によって、基材(記録媒体)を固定した状態で非水性インク組成物を乾燥させることが可能となり、加温により基材がたわむことにより熱のかかり方が不均一になることを抑制できる。これにより、基材(記録媒体)に着弾した非水性インク組成物を効果的に乾燥させることが可能となる。
【0223】
インクジェット記録装置に備えられる加温機構は、プレヒーター、プラテンヒーター、アフターヒーター等であってもよく、記録物に温風を送風する機構であってもよい。また、これらの加温機構を複数組み合わせるものであってもよい。
【0224】
加温機構により加温される基材の表面温度としては、非水性インク組成物に含まれる有機溶剤を揮発させることができれば特に制限はされず、基材の表面温度の下限は、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることがさらに好ましい。基材の表面温度の上限は、70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることがさらに好ましい。
【0225】
基材を固定する固定機構としては、基材を所定の治具により固定する固定機構であっても、負圧により基材を吸引して吸着する固定機構であってもよく特に制限されない。
【0226】
上記の非水性インク組成物を吐出するインクジェットヘッドは、圧電素子を用いたピエゾ方式のインクジェットヘッドであっても、発熱体を用いたサーマル方式のインクジェットヘッドであってもよく、特に制限はされない。
【0227】
また、インクジェット記録装置は、上記の非水性インク組成物を貯蔵する容器(インクカートリッジやボトル等)と上記の非水性インク組成物を吐出するインクジェット吐出口とを接続し、非水性インク組成物を流通させるプラスティックチューブを備え、上記の非水性インク組成物がこのプラスティックチューブを通じてインクジェットヘッドに供給され、インクジェット法によって吐出されるように構成されていてもよい。
【0228】
上記の非水性インク組成物に含有される顔料A1(ペリノン系顔料)や顔料A2(ジケトピロロピロール顔料)や顔料A3(ハロゲン化フタロシアニン顔料)がプラスティックチューブ内で凝集するとノズルが詰まり、吐出安定性が低下することがある。そこで、本実施の形態に係るインクジェット記録装置は、ノズル詰まりを解消できる機構を備えることが好ましい。所定のpHの範囲内のペリノン系顔料又はジケトピロロピロール顔料としたことに加えて、ノズル詰まりを解消できる機構を備えることにより、本発明の効果をさらに効果的に奏するものとなる。
【0229】
具体的には、貯蔵機構とインクジェット吐出口とに接続されたチューブには、非水性インク組成物の流路を調整する弁機構を備えていることが好ましい。貯蔵機構から弁機構を介してインクジェット吐出口に上記の非水性インク組成物を供給することにより、非水性インク組成物の吐出安定性をさらに向上させることができる。
【0230】
プラスティックチューブの材質としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム、ナイロン、ポリウレタン、PTFE等が挙げられる。この中でも、ポリエチレン系樹脂及びエチレンプロピレンジエンゴムであることが好ましい。
【0231】
また、本実施の形態に係るインクジェット記録装置は、上述したようにイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの各色のインクや、ライトマゼンタ、ライトシアン、ライトブラック、オレンジ、グリーン、レッド、ホワイトなどにも使用することができ、印刷する色の順序やヘッドの位置や構成は特に制限されない。また、本実施の形態に係るインクジェット記録装置は、記録媒体(基材)の巻き取り機構や基材表面を乾燥させる乾燥機構、インクの循環機構を備えていても備えていなくともよい。
【実施例
【0232】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0233】
(第1実施形態)
1.樹脂の作製
(1)アクリル系樹脂
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル150g及びメタクリル酸ブチル50gと所定量のt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤)との混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルの重合体溶液を得た。その後、この重合体溶液から溶媒を十分に留去して、メタクリル酸メチルの重合体を得た。このとき重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートの量を変更して、メタクリル酸メチル(アクリル系樹脂)の重合平均分子量を30000~105000になるように制御した(このとき使用した重合開始剤の質量を下記表1に記載した。表1中「開始剤量」と表記した。)。
【0234】
(2)塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル32部、酢酸ビニル5部、グリシジルメタクリレート0.2部、ヒドロキシプロピルアクリレート3.55部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(懸濁剤)を0.1部、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(重合開始剤)を0.026部、ジ-3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド(重合開始剤)を所定量仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、63℃に到達直後に塩化ビニル48部を6時間で、グリシジルメタクリレート0.6部、ヒドロキシプロピルアクリレート10.65部を混合したものを5.4時間で連続圧入し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。このとき重合開始剤であるジ-3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイドの量を変更して、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂の重合平均分子量を40000~75000になるように制御した(このとき使用した重合開始剤の質量を下記表1に記載した。表1中「開始剤量」と表記した。)。
【0235】
(3)セルロース系樹脂
市販品のセルロース系樹脂(EASTMAN CHEMICAL社のCAB551-0.01、CAB553-0.4、CAP482-0.5)を用いた。
【0236】
(4)ポリエステル系樹脂
テレフタル酸104質量部、イソフタル酸104質量部、エチレングリコール79質量部、ネオペンチルグリコール89質量部、テトラブチルチタネート0.1質量部を丸底フラスコに仕込み、4時間かけて240℃まで徐々に昇温し、留出物を系外に除きながらエステル化反応を行った。エステル化反応終了後30分かけて10mmHgまで減圧、温度を250℃まで昇温し初期重合を行った。その後1mmHg以下で1時間後期重合を行い、ポリエステル系樹脂を得た。
【0237】
(5)ポリウレタン系樹脂
ポリカーボネートジオール(プラクセルCD―220:ダイセル製)192.5質量部とイソホロンジイソシアネート(IPDI:エボニック製)41.6質量部、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)100質量部を丸底フラスコに入れ均一に混合後、T100BHJ(触媒)0.01質量部とN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)0.09質量部の混合液を入れ75℃で3時間反応させて末端にイソシアネート基をもつプレポリマーを得た。これにN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)を250質量部投入し均一に溶解後、3アミノメチル3,5,5トリメチルシクロヘキシルアミン(IPD:エボニック製)12質量部をDEF100質量部に溶解した鎖伸長剤溶液を添加し60℃でさらに40分撹拌した。その後モノイソプロパノールアミン(MIPA:ダイセル製)3.8質量部をN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)50質量部に溶解した反応停止剤を添加し、最後にN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)を250質量部添加して固形分25.0質量%のポリウレタン溶液を得た。
【0238】
表1に各樹脂(アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂)の重量平均分子量(相対分子質量)、並びに25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂の割合を示す。なお、重量平均分子量(相対分子質量)はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。また、固有粘度が90mL/g以上の樹脂の割合は、島津製作所SEC(GPC)システムに粘度検出器(WYATT社製ViscoStarIII)と屈折率検出器(WYATT社製Optilab T-rEX)を接続し、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いて、まず島津製作所SEC(GPC)システムでは試料を40℃に加温したカラムを通過させ、その後25℃に冷却した通過物を粘度検出器により比粘度〔ηSP〕を求め、屈折率検出器により濃度Cを求めLim(〔ηSP〕/C)において、濃度Cを0に外挿することにより固有粘度を求めた。
【0239】
【表1】
【0240】
2.顔料A1の合成
表2に記載の条件により顔料A1の合成品1~6を合成した。具体的には表2の(a1)のペリノン系顔料2質量部を表2の(a2)の溶媒に分散させて、表2の(a3)を(表2の(a4)部添加した。表2の(a5)の温度条件で表2の(a6)時間撹拌後、合成品1、2についてはエタノール、水洗し、合成品3、4、6は水洗して顔料A1の合成品1~6を得た。表2中顔料Ap(合成品5)とは特許第3076738に記載の方法で合成された顔料であって式(1―1)で示される顔料A1である。なお、合成品5については溶媒に分散させる処理を行わなかった。
【0241】
【表2】
(表中の(a3)、(a4)における「なし」とは、置換基導入剤を添加しなかったことを意味する。)
【0242】
顔料A1の合成品1~6についてJIS K5101-17-1:2004の試験方法によりpHを測定した(表2の(a7)に記載)。
【0243】
3.非水性インク組成物の調製
それぞれの有機溶剤、樹脂、分散剤、顔料(色材)下記表の割合になるように各成分のように実施例及び比較例の非水性インク組成物を作製した。具体的には、ペイントシェイカーを用いてジルコニアビーズにて各成分を分散させて非水性インク組成物を調製した。単位は質量%である。なお、下記表3~10にジルコニアビーズの粒径、分散時間を記載する。
【0244】
また、非水性インク組成物に含まれる顔料の体積基準累積90%粒子径(D90)は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いて測定した。
【0245】
4.評価
(保存安定性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について保存安定性を評価した。具体的には、非水性インク組成物を60℃で1ヶ月間保存し、試験前後の粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化を観察し、下記の基準で、保存安定性を評価した。なお、インクの粘度は、落球式粘度計(アントンパール社製AMVn)を用いて、20℃の条件下で測定され、顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いて25℃の条件下で測定した。なお、下記の評価は「粘度」及び「体積基準累積50%粒子径(D50)」のうち、変化率が大きかった方をその非水性インク組成物の評価とした(表中、「保存安定性」と表記)。
評価基準
評価5:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれも3%未満である。
評価4:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが3%以上5%未満である。
評価3:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが5%以上8%未満である。
評価2:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが8%以上10%未満である。
評価1:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが10%以上である。
【0246】
(吐出安定性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について吐出安定性を評価した。具体的には、インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)に非水性インク組成物を充填して、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に双方向の高速印刷モード(360x720dpi)で、基材表面温度40℃にて連続印刷でベタ及び細線を印刷し、ドット抜け、飛行曲がり、インクの飛び散りの有無を目視により観察し、発生回数を計測した(表中、「吐出安定性」と表記)。
評価基準
評価5:細線が正しく再現できている。
評価4:細線がおおむね正しく再現できている。
評価3:わずかに細線に曲がりがみられる。
評価2:着弾位置がずれており、曲がりが見られる。
評価1:着弾位置のずれが酷く、細線を再現できない。
【0247】
(間欠吐出性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について間欠吐出性を評価した。具体的には、インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)にて、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に双方向の高速印刷モード(360x720dpi)で、基材表面温度40℃にて長期間に亘り、常温下で、上記記録媒体に断続的な印刷を実施し、ドット抜け、飛行曲がり及びインクの飛び散りの有無を観察し、発生回数を計数し評価した(表中、「間欠吐出性」と表記)。
評価基準
評価5:24時間の試験期間内で、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りの発生が10回未満であった。
評価4:24時間の試験期間内で、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りの発生が10回以上20回未満であった。
評価3:24時間の試験期間内で、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りの発生が20回以上30回未満であった。
評価2:24時間の試験期間内で、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りの発生が30回以上40回未満であった。
評価1:24時間の試験期間内で、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りの発生が40回以上であった。
【0248】
(ベタ埋まり)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物についてベタ埋まりを評価した。具体的には、上記インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)にて、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に双方向の高速印刷モード(360x720dpi)で、基材表面温度40℃にて印刷を実施し、ベタ印字を行った部分の埋まり(白抜け)を確認した(表中、「ベタ埋まり」と表記)。
評価5:均一なベタが形成できている
評価4:目視で白抜けは確認できないが、わずかに色ムラが確認できるが意匠性は損なわれていない
評価3:目視で白抜けは確認できないが、色ムラが確認できる
評価2:白抜けが確認できる
評価1:顕著に白抜けが確認でき、濃度感の低下がみられる。
【0249】
(表面乾燥性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について表面乾燥性を評価した。具体的には、実施例及び比較例の非水性インク組成物をインクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)を用いたインクジェット方式にて記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)でベタ画像の印刷を行い、40℃で乾燥するまでの時間を計測した(表中、「表面乾燥性」と表記)。
評価基準
評価5:2分未満で乾燥する。
評価4:2分以上4分未満で乾燥する。
評価3:4分以上6分未満で乾燥する。
評価2:6分以上8分未満で乾燥する。
評価1:8分以上で乾燥する。
【0250】
(滲み性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について滲み性を評価した。具体的には、上記インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)にて、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)で、基材表面温度50℃で各色のベタ部中にベタ部と異なる色の6ptの文字がある画像を印刷し、得られた印字物を60℃のオーブンで5分間乾燥後、当該印字物の滲みを目視、ルーペ(x10)で観察した。
評価基準
評価5:ルーペでインクの滲みが観察されなかった。
評価4:目視でインクの滲みが観察されず、6ptの文字が鮮明である。
評価3:目視でインクの滲みがわずかに観察されたが、意匠性は損なわれない。
評価2:目視でインクの滲みが観察されたが、6ptの文字は識別可能である。
評価1:目視でインクの滲みが顕著に観察され、6ptの文字は視認できなかった。
【0251】
(発色性)
実施例及び比較例の非水性インク組成物について発色性を評価した。具体的には、上記インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)にて、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)でベタ画像を印字した。彩度は、JIS Z 8721に基づき、X-Rite eXact(エックスライト社製)を用い、視野角2°、測定範囲 4mmφ、D65光源の条件で測定を行うことにより求めた。(表中、「発色性」と表記)。
評価基準
評価5:彩度が100以上である。
評価4:彩度が90以上、100未満である。
評価3:彩度が80以上、90未満である。
評価2:彩度が70以上、80未満である。
評価1:彩度が70未満である。
【0252】
(耐候性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物を使用して作製された印字物の耐候性を評価した。実施例及び比較例の非水性インク組成物をインクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)を用いたインクジェット方式にて記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)でベタ画像の印刷を行い、40℃で1時間乾燥させた。
得られた記録物をキセノンウェザーメーター(ATLAS Ci4000:東洋精機製)内に投入し、サイクル試験を行った。試験条件はJIS K―5600-7-7に基づき、ブラックパネル温度:63℃、キセノンランプの放射照度:60W/m、試験層内温度:38℃、に保ち、セグメント1では湿度を50%に保った状態で102分間、セグメント2では水照射を18分間行い、これを1サイクルとした。50サイクルを1セットとし、このサイクル試験を継続して10セット行った。 試験前後の色相変化ΔEの値を評価した、色相は以下の条件で評価した。X-Rite eXact(エックスライト社製)を用い、視野角2°、測定範囲 4mmφ、D65光源の条件でL*、a、bの値を測定した(表中、「耐候性」と表記)。
色相変化ΔEは、試験前L*1、a*1、b*1、試験後L*2、a*2、b*2の値を使用し、以下の式で求められる
ΔE=((L*1-L*2+(a*1-a*2+(b*1-b*2(1/2)
評価基準
評価5:ΔEが10.0未満である。
評価4:ΔEが20.0未満、10.0以上である。
評価3:ΔEが30.0未満、20.0以上である。
評価2:ΔEが40.0未満、30.0以上である。
評価1:ΔEが50.0以上である。
【0253】
(光沢性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について光沢性を評価した。具体的には、実施例及び比較例の非水性インク組成物をインクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)を用いたインクジェット方式にて、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)で、基材表面温度40℃でベタ部の印刷を行い、60℃オーブンで5分乾燥させた後、当該印字物の20°光沢度を測定した。光沢度はハンディタイプの光沢度計PhopointIQ-S(コニカミノルタ社製)で測定した(表中、「光沢性」と表記)。
評価基準
評価5:20°光沢が70以上
評価4:20°光沢が65以上70未満
評価3:20°光沢が55以上65未満
評価2:20°光沢が50以上55未満
評価1:20°光沢が50未満
【0254】
(色調安定性(沈降性))
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物の沈降性の評価を行った。具体的には、非水性インク組成物30gを室温で1ヶ月間保存し、試験全後のインクの上澄み1gを取り、バーコーター#8で記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に展色し40℃オーブンで乾燥させた。試験前後の色相変化ΔEの値を評価した、色相は以下の条件で評価した。X-Rite eXact(エックスライト社製)を用い、視野角2°、測定範囲 4mmφ、D65光源の条件でL、a、bの値を測定した(表中、「色調安定性(沈降性)」と表記」)。
色相変化ΔEは、試験前L*1、a*1、b*1、試験後L*2、a*2、b*2の値を使用し、以下の式で求められる。
ΔE=((L*1-L*2+(a*1-a*2+(b*1-b*2(1/2)
評価基準
評価5:ΔEが2.0未満である。
評価4:ΔEが2.5未満、2.0以上である。
評価3:ΔEが3.0未満、2.5以上である。
評価2:ΔEが3.5未満、3.0以上である。
評価1:ΔEが3.5以上である。
【0255】
【表3】
【0256】
【表4】
【0257】
【表5】
【0258】
【表6】
【0259】
【表7】
【0260】
【表8】
【0261】
【表9】
【0262】
【表10】
【0263】
表3~10から分かるように、式(1-1)で示される顔料A1を含有し、顔料A1のpHは3以上9以下の範囲内である実施例の非水性インク組成物であれば、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される種々の特性が良好であることが分かる。
【0264】
特に、顔料A1のpHを変更した実施例1-10~1-13の非水性インク組成物において、顔料A1のpHが4以上8以下の範囲にある実施例1-10~1-12の非水性インク組成物は、実施例1-13と比較しても保存安定性が良好であった。
【0265】
また、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂の含有量を変更した実施例1-14~1-30、1-72~1-75の非水性インク組成物において、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂が樹脂全量中5質量%以下の範囲にある実施例の非水性インク組成物は、5質量%超の範囲にある実施例の非水性インク組成物と比べても、ベタ埋まりや間欠吐出性が向上した。
【0266】
また、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有する実施例1-1の非水性インク組成物は、有機溶剤Bを含有しない実施例1-31~1-33の非水性インク組成物と比較してもインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される種々の特性がより良好であった。
【0267】
また、有機溶剤Bの含有量を変更した実施例1-34~1-41において、有機溶剤Bの含有量が1質量%以上90質量%以下の範囲である実施例1-34~1-40の非水性インク組成物は実施例1-41の非水性インク組成物と比較して、発色性及び耐候性が良好であり、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される種々の特性がより良好であった。
【0268】
また、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3))の種類を変更した実施例1-42~1-51、1-74、1-75においても同様にインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される種々の特性がより良好でとなっており、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有する非水性インク組成物であれば、本発明の効果を特に効果的に奏するものであった。
【0269】
また、顔料A1の含有量を変更させた実施例1-52~1-55において、顔料A1の含有量は、前記非水性インク組成物全量中0.1質量%以上8.0質量%以下である実施例1-52~1-54の非水性インク組成物は、実施例1-55と比べても保存安定性が良好であり、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される種々の特性がより良好であることが分かる。
【0270】
また、顔料A1の体積基準累積90%粒子径(D90)を変更させた実施例1-56~1-59において、体積基準累積90%粒子径(D90)が小さいほど吐出安定性が向上する傾向が見られた。
【0271】
また、顔料分散剤の種類を変更させた実施例1-60~1-65において、塩基性基を有する顔料分散剤を使用した実施例1-61~1-65の非水性インク組成物は、実施例60の非水性インク組成物と比較しても吐出安定性が向上していた。その中でも、アミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲である実施例1-62~1-64の非水性インク組成物は特に吐出安定性が向上していた。
【0272】
また、顔料分散剤の含有量を変更させた実施例1-66~1-69において、非水性インク組成物中の顔料100質量部に対して5質量部以上150質量部以下の範囲である実施例1-66~1-68のインク組成物は、実施例1-69の非水性インク組成物と比較しても、発色評価、表面乾燥性が向上していた。
【0273】
また、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有しない実施例1-70、1-71のインク組成物は、実施例1-1のインク組成物と比較して、光沢性が低下していた。
【0274】
一方、pHが3未満の顔料A1を含有する比較例1-1の非水性インク組成物は、保存安定性及びベタ埋まりが低下しており、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される種々の特性を満たすものとはなっていない。そして、pHが9超の顔料A1を含有する比較例1-2の非水性インク組成物は、保存安定性及び吐出安定性が低下しており、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される種々の特性を満たすものとはなっていない。
【0275】
なお、式(1-1)で示される顔料A1を含有せず、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメント64を含有する参考例1-1、1-2は、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物として要求される特性を満たしており、非水性インク組成物中において凝集しやすいということがペリノン系顔料を含む非水性インク組成物独自の課題であることが確認された。
【0276】
(第2実施形態)
1.樹脂の作製
(1)アクリル系樹脂
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル150g及びメタクリル酸ブチル50gと所定量のt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤)との混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルの重合体溶液を得た。その後、この重合体溶液から溶媒を十分に留去して、メタクリル酸メチルの重合体を得た。このとき重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートの量を変更して、メタクリル酸メチル(アクリル系樹脂)の重合平均分子量を30000~105000になるように制御した(このとき使用した重合開始剤の質量を下記表11に記載した。表11中「開始剤量」と表記した。)。
【0277】
(2)塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル32部、酢酸ビニル5部、グリシジルメタクリレート0.2部、ヒドロキシプロピルアクリレート3.55部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(懸濁剤)を0.1部、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(重合開始剤)を0.026部、ジ-3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド(重合開始剤)を所定量仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、63℃に到達直後に塩化ビニル48部を6時間で、グリシジルメタクリレート0.6部、ヒドロキシプロピルアクリレート10.65部を混合したものを5.4時間で連続圧入し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。このとき重合開始剤であるジ-3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイドの量を変更して、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂の重合平均分子量を40000~75000になるように制御した(このとき使用した重合開始剤の質量を下記表11に記載した。表11中「開始剤量」と表記した。)。
【0278】
(3)セルロース系樹脂
市販品のセルロース系樹脂(EASTMAN CHEMICAL社のCAB551-0.01、CAB553-0.4)を用いた。
【0279】
(4)ポリエステル系樹脂
テレフタル酸104質量部、イソフタル酸104質量部、エチレングリコール79質量部、ネオペンチルグリコール89質量部、テトラブチルチタネート0.1質量部を丸底フラスコに仕込み、4時間かけて240℃まで徐々に昇温し、留出物を系外に除きながらエステル化反応を行った。エステル化反応終了後30分かけて10mmHgまで減圧、温度を250℃まで昇温し初期重合を行った。その後1mmHg以下で1時間後期重合を行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0280】
(5)ポリウレタン系樹脂
ポリカーボネートジオール(プラクセルCD―220:ダイセル製)192.5質量部とイソホロンジイソシアネート(IPDI:エボニック製)41.6質量部、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)100質量部を丸底フラスコに入れ均一に混合後、T100BHJ(触媒)0.01部とN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)0.09部の混合液を入れ75℃で3時間反応させて末端にイソシアネート基をもつプレポリマーを得た。これにN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)を250質量部投入し均一に溶解後、3アミノメチル3,5,5トリメチルシクロヘキシルアミン(IPD:エボニック製)12質量部をN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)100質量部に溶解した鎖伸長剤溶液を添加し60℃でさらに40分撹拌した。その後モノイソプロパノールアミン(MIPA:ダイセル製)3.8部をN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)50質量部に溶解した反応停止剤を添加し、最後にN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)を250質量部添加して固形分25.0質量%のポリウレタン溶液を得た。
【0281】
表11に各樹脂(アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂)の重量平均分子量(相対分子質量)、並びに25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂の割合を示す。なお、重量平均分子量(相対分子質量)はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。また、固有粘度が90mL/g以上の樹脂の割合は、島津製作所SEC(GPC)システムに粘度検出器(WYATT社製ViscoStarIII)と屈折率検出器(WYATT社製Optilab T-rEX)を接続し、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いて、まず島津製作所SEC(GPC)システムでは試料を40℃に加温したカラムを通過させ、その後25℃に冷却した通過物を粘度検出器により比粘度〔ηSP〕を求め、屈折率検出器により濃度Cを求めLim(〔ηSP〕/C)において、濃度Cを0に外挿することにより固有粘度を求めた。
【0282】
【表11】
【0283】
2.顔料A2の合成
表12に記載の条件により顔料A2の合成品1~3を合成した。具体的には表12の(a8)のジケトピロロピロール顔料2質量部を表12の(a9)の溶媒に分散させて、表12の(a10)を表12の(a11)部添加した。表12の(a12)の温度条件で表12の(a13)時間撹拌後、水洗して顔料A2の合成品1、2、3を得た。
【0284】
【表12】
(表中の(a10)、(a11)における「なし」とは、置換基導入剤を添加しなかったことを意味する。)
【0285】
顔料A2の合成品1、2、3についてJIS K5101-17-1:2004の試験方法によりpHを測定した(表12の(a14))。
【0286】
3.非水性インク組成物の調製
それぞれの有機溶剤、樹脂、分散剤、顔料(色材)下記表の割合になるように各成分のように実施例及び比較例の非水性インク組成物を作製した。具体的には、ペイントシェイカーを用いてジルコニアビーズにて各成分を分散させて非水性インク組成物を調製した。単位は質量%である。なお、下記表13~20にジルコニアビーズの粒径、分散時間を記載する。
【0287】
また、非水性インク組成物に含まれる顔料の体積基準累積90%粒子径(D90)は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いて測定した。
【0288】
4.評価1
(保存安定性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について保存安定性を評価した。具体的には、非水性インク組成物を60℃で1ヶ月間保存し、試験前後の粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化を観察し、下記の基準で、保存安定性を評価した。なお、インクの粘度は、落球式粘度計(アントンパール社製AMVn)を用いて、20℃の条件下で測定され、顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いて25℃の条件下で測定した。なお、下記の評価は「粘度」及び「体積基準累積50%粒子径(D50)」のうち、変化率が大きかった方をその非水性インク組成物の評価とした(表中、「保存安定性」と表記)。
評価基準
評価5:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれも3%未満である。
評価4:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが3%以上5%未満である。
評価3:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが5%以上8%未満である。
評価2:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが8%以上10%未満である。
評価1:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが10%以上である。
【0289】
(吐出安定性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について吐出安定性を評価した。具体的には、インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)に非水性インク組成物を充填して、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に双方向の高速印刷モード(360x720dpi)で、基材表面温度40℃にて連続印刷でベタ及び細線を印刷し、ドット抜け、飛行曲がり、インクの飛び散りの有無を目視により観察し、発生回数を計測した(表中、「吐出安定性」と表記)。
評価基準
評価5:細線が正しく再現できている。
評価4:細線がおおむね正しく再現できている。
評価3:わずかに細線に曲がりがみられる。
評価2:着弾位置がずれており、曲がりが見られる。
評価1:着弾位置のずれが酷く、細線を再現できない。
【0290】
(間欠吐出性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について間欠吐出性を評価した。具体的には、インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)にて、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に双方向の高速印刷モード(360x720dpi)で、基材表面温度40℃にて長期間に亘り、常温下で、上記記録媒体に断続的な印刷を実施し、ドット抜け、飛行曲がり及びインクの飛び散りの有無を観察し、発生回数を計数し評価した(表中、「間欠吐出性」と表記)。
評価基準
評価5:24時間の試験期間内で、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りの発生が10回未満であった。
評価4:24時間の試験期間内で、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りの発生が10回以上20回未満であった。
評価3:24時間の試験期間内で、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りの発生が20回以上30回未満であった。
評価2:24時間の試験期間内で、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りの発生が30回以上40回未満であった。
評価1:24時間の試験期間内で、ドット抜け、飛行曲がり又はインクの飛び散りの発生が40回以上であった。"
【0291】
(ベタ埋まり)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物についてベタ埋まりを評価した。具体的には、上記インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)にて、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に双方向の高速印刷モード(360x720dpi)で、基材表面温度40℃にて印刷を実施し、ベタ印字を行った部分の埋まり(白抜け)を確認した(表中、「ベタ埋まり」と表記)。
評価基準
評価5:均一なベタが形成できている
評価4:目視で白抜けは確認できないが、わずかに色ムラが確認できるが意匠性は損なわれていない
評価3:目視で白抜けは確認できないが、色ムラが確認できる
評価2:白抜けが確認できる
評価1:顕著に白抜けが確認でき、濃度感の低下がみられる。"
【0292】
(表面乾燥性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について表面乾燥性を評価した。具体的には、実施例及び比較例の非水性インク組成物をインクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)を用いたインクジェット方式にて記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)でベタ画像の印刷を行い、40℃で乾燥するまでの時間を計測した(表中、「表面乾燥性」と表記)。
評価基準
評価5:2分未満で乾燥する。
評価4:2分以上4分未満で乾燥する。
評価3:4分以上6分未満で乾燥する。
評価2:6分以上8分未満で乾燥する。
評価1:8分以上で乾燥する。
【0293】
(滲み性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について滲み性を評価した。具体的には、上記インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)にて、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)、基材表面温度50℃で各色のベタ部中にベタ部と異なる色の6ptの文字がある画像を印刷し、得られた印字物を60℃のオーブンで5分間乾燥後、当該印字物の滲みを目視、ルーペ(x10)で観察した。
評価基準
評価5:ルーペでインクの滲みが観察されなかった。
評価4:目視でインクの滲みが観察されず、6ptの文字が鮮明である。
評価3:目視でインクの滲みがわずかに観察されたが、意匠性は損なわれない。
評価2:目視でインクの滲みが観察されたが、6ptの文字は識別可能である。
評価1:目視でインクの滲みが顕著に観察され、6ptの文字は視認できなかった。
【0294】
(塗膜耐擦性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について塗膜耐擦性を評価した。具体的には、実施例及び比較例の非水性インク組成物をインクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)を用いたインクジェット方式にて記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)でベタ画像の印刷を行い、40℃で乾燥させた。印刷物の印刷面を試験用布片にて荷重200g、50往復で擦り、目視で耐擦過性を評価した。(表中、「塗膜耐擦性」と表記。)
評価基準
評価5:インク膜が剥がれず、試験用布片にもインクの付着がなかった。
評価4:インク膜が剥がれなかったが、試験用布片にはインクの付着があった。
評価3:インク膜がわずかに剥がれ、試験用布片にインク膜が付着した。
評価2:インク膜がやや剥がれ、試験用布片にインク膜が付着した。
評価1:インク膜の殆どが剥がれ、試験用布片にインク膜が付着した。
【0295】
(クリーニング回復性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について、ヘッドでのノズル詰まりが発生した際に、プリンターのクリーニング動作によりノズル詰まりの解消が行えるかを評価した。具体的には、クリーニングシステムを備えた上記インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)を用いて、実施例及び比較例のインク組成物を充填して印刷高品質印刷モード(1440x720dpi)で1.80mのベタ画像の印刷を行い、室温25℃にて1週間放置し、その後ノズルチェックパターンを印刷し、抜けが無くなるまでクリーニングを行った(表中、「クリーニング回復性」と表記)。
評価基準
評価5:抜けがない
評価4:ノーマルクリーニング1回でノズル詰まりを解消する。
評価3:ノーマルクリーニング2~3回でノズル詰まりを解消する。
評価2:ノーマルクリーニング4~5回でノズル詰まりを解消する。
評価1:ノーマルクリーニング6回でもノズル詰まりを解消しない。
【0296】
(耐候性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物を使用して作製された印字物の耐候性を評価した。実施例及び比較例の非水性インク組成物をインクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)を用いたインクジェット方式にて記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)でベタ画像の印刷を行い、40℃で1時間乾燥させた。
得られた記録物をキセノンウェザーメーター(ATLAS Ci4000:東洋精機製)内に投入し、サイクル試験を行った。試験条件はJIS K―5600-7-7に基づき、ブラックパネル温度:63℃、キセノンランプの放射照度:60W/m、試験層内温度:38℃、に保ち、セグメント1では湿度を50%に保った状態で102分間、セグメント2では水照射を18分間行い、これを1サイクルとした。50サイクルを1セットとし、このサイクル試験を継続して10セット行った。
試験前後の色相変化ΔEの値を評価した、色相は以下の条件で評価した。X-Rite eXact(エックスライト社製)を用い、視野角2°、測定範囲 4mmφ、D65光源の条件でL*、a*、b*の値を測定した(表中、「耐候性」と表記)。
色相変化ΔEは、試験前L*1、a*1、b*1、試験後L*2、a*2、b*2の値を使用し、以下の式で求められる
ΔE=((L*1-L*2+(a*1-a*2+(b*1-b*2(1/2)
評価基準
評価5:ΔEが10.0未満である。
評価4:ΔEが20.0未満、10.0以上である。
評価3:ΔEが30.0未満、20.0以上である。
評価2:ΔEが40.0未満、30.0以上である。
評価1:ΔEが50.0以上である。
【0297】
【表13】
【0298】
【表14】
【0299】
【表15】
【0300】
【表16】
【0301】
【表17】
【0302】
【表18】
【0303】
【表19】
【0304】
【表20】
【0305】
表13~20から分かるように、式(1-2)で示される顔料A2を含有し、顔料A2のpHは3以上9以下の範囲内である実施例の非水性インク組成物であれば、顔料としてジケトピロロピロール顔料を含む顔料を使用しても保存安定性が高く、クリーニング回復性が高いことが分かる。
【0306】
特に、顔料A2のpHを変更した実施例2-9~2-12の非水性インク組成物において、顔料A2のpHが6以上8以下の範囲にある実施例2-10~2-11の非水性インク組成物は、実施例9、12と比較しても保存安定性が良好であった。
【0307】
また、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂の含有量を変更した実施例2-14~2-29の非水性インク組成物において、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂が樹脂全量中5質量%以下の範囲にある実施例の非水性インク組成物は、5質量%超の範囲にある実施例の非水性インク組成物と比べても、ベタ埋まりや間欠吐出性が向上していた。
【0308】
また、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有する実施例2-1の非水性インク組成物は、有機溶剤Bを含有しない実施例2-30~2-32の非水性インク組成物と比較しても、保存安定性・クリーニング回復性が高く、本発明の効果を特に効果的に奏するものであることが分かる。
【0309】
また、有機溶剤Bの含有量を変更した実施例2-33~2-40において、有機溶剤Bの含有量が1質量%以上90質量%以下の範囲である実施例2-33~2-39の非水性インク組成物は実施例2-40の非水性インク組成物と比較して保存安定性・クリーニング回復性が高く、本発明の効果を特に効果的に奏するものであることが分かる。
【0310】
また、有機溶剤Bの種類をアルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)それぞれに変更した実施例2-41~2-50、2-71、2-72においても同様にインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物に要求される種々の特性がより良好でとなっており、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有する非水性インク組成物であれば、本発明の効果を特に効果的に奏するものであることが分かる。
【0311】
また、顔料A2の含有量を変更させた実施例2-51~2-54において、顔料A2の含有量は、前記非水性インク組成物全量中0.1質量%以上8.0質量%以下である実施例2-51~2-53の非水性インク組成物は、実施例2-54と比べても保存安定性が良好であった。
【0312】
また、顔料A2の体積基準累積90%粒子径(D90)を変更させた実施例2-55~2-57において、体積基準累積90%粒子径(D90)が小さいほど保存安定性や吐出安定性が向上する傾向が見られた。
【0313】
また、顔料分散剤の種類を変更させた実施例2-59~2-64、2-70において、塩基性基を有する顔料分散剤を使用した実施例2-60~2-64、2-70の非水性インク組成物は、実施例2-60の非水性インク組成物と比較しても吐出安定性が向上していた。その中でも、アミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲である実施例2-60~2-63の非水性インク組成物は特に吐出安定性が向上していた。
【0314】
また、顔料分散剤の含有量を変更させた実施例2-65~2-68において、非水性インク組成物中の顔料100質量部に対して5質量部以上150質量部以下の範囲である実施例2-65~2-67のインク組成物は、実施例2-68のインク組成物と比較して、表面乾燥性、塗膜耐擦性が向上していた。
【0315】
また、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有しない実施例2-69のインク組成物は、塗膜耐擦性が相対的に若干低下した。
【0316】
一方のpHは3以上9以下の範囲外の、顔料A2を含有する比較例2-1、2-2のインク組成物は、本発明の効果を奏するものとはなっていない。
【0317】
なお、式(1-2)で示される顔料A2(ジケトピロロピロール顔料)を含有せず、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド188を含有する参考例2-1、2-2は、インクジェット法によって吐出される非水性インク組成物として要求される特性を満たしており、非水性インク組成物中において凝集しやすいということがジケトピロロピロール顔料を含む非水性インク組成物独自の課題であることが確認された。
【0318】
(第3実施形態)
1.樹脂の作製
(1)アクリル系樹脂
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル150g及びメタクリル酸ブチル50gと所定量のt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤)との混合物を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後冷却して、無色透明のメタクリル酸メチルの重合体溶液を得た。その後、この重合体溶液から溶媒を十分に留去して、メタクリル酸メチルの重合体を得た。このとき重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートの量を変更して、メタクリル酸メチル(アクリル系樹脂)の重合平均分子量を30000~105000になるように制御した(このとき使用した重合開始剤の質量を下記表1に記載した。表21中「開始剤量」と表記した。)。
【0319】
(2)塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル32部、酢酸ビニル5部、グリシジルメタクリレート0.2部、ヒドロキシプロピルアクリレート3.55部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(懸濁剤)を0.1部、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(重合開始剤)を0.026部、ジ-3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド(重合開始剤)を所定量仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、63℃に到達直後に塩化ビニル48部を6時間で、グリシジルメタクリレート0.6部、ヒドロキシプロピルアクリレート10.65部を混合したものを5.4時間で連続圧入し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。このとき重合開始剤であるジ-3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイドの量を変更して、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂の重合平均分子量を40000~75000になるように制御した(このとき使用した重合開始剤の質量を下記表21に記載した。表21中「開始剤量」と表記した。)。
【0320】
(3)セルロース系樹脂
市販品のセルロース系樹脂(EASTMAN CHEMICAL社のCAB551-0.01、CAB553-0.4)を用いた。
【0321】
(4)ポリエステル系樹脂
テレフタル酸104質量部、イソフタル酸104質量部、エチレングリコール79部、ネオペンチルグリコール89質量部、テトラブチルチタネート0.1質量部を丸底フラスコに仕込み、4時間かけて240℃まで徐々に昇温し、留出物を系外に除きながらエステル化反応を行った。エステル化反応終了後30分かけて10mmHgまで減圧、温度を250℃まで昇温し初期重合を行った。その後1mmHg以下で1時間後期重合を行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0322】
(5)ポリウレタン系樹脂
ポリカーボネートジオール(プラクセルCD―220:ダイセル製)192.5質量部とイソホロンジイソシアネート(IPDI:エボニック製)41.6質量部、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)100質量部を丸底フラスコに入れ均一に混合後、T100BHJ(触媒)0.01質量部とN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)0.09質量部の混合液を入れ75℃で3時間反応させて末端にイソシアネート基をもつプレポリマーを得た。これにN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)を250質量部投入し均一に溶解後、3アミノメチル3,5,5トリメチルシクロヘキシルアミン(IPD:エボニック製)12質量部をDEF100質量部に溶解した鎖伸長剤溶液を添加し60℃でさらに40分撹拌した。その後モノイソプロパノールアミン(MIPA:ダイセル製)3.8質量部をN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)50質量部に溶解した反応停止剤を添加し、最後にN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)を250質量部添加して固形分25.0質量%のポリウレタン溶液を得た。
【0323】
表21に各樹脂(アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂)の重量平均分子量(相対分子質量)、並びに25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂の割合を示す。なお、重量平均分子量(相対分子質量)はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。また、固有粘度が90mL/g以上の樹脂の割合は、島津製作所SEC(GPC)システムに粘度検出器(WYATT社製ViscoStarIII)と屈折率検出器(WYATT社製Optilab T-rEX)を接続し、展開溶媒にテトラヒヂロフランを用いて、まず島津製作所SEC(GPC)システムでは試料を40℃に加温したカラムを通過させ、その後25℃に冷却した通過物を粘度検出器により比粘度〔ηSP〕を求め、屈折率検出器により濃度Cを求めLim(〔ηSP〕/C)において、濃度Cを0に外挿することにより固有粘度を求めた。
【0324】
【表21】
【0325】
2.非水性インク組成物の調製
それぞれの有機溶剤、樹脂、分散剤、顔料(色材)下記表の割合になるように各成分のように実施例及び比較例の非水性インク組成物を作製した。具体的には、ペイントシェイカーを用いてジルコニアビーズにて各成分を分散させて非水性インク組成物を調製した。単位は質量%である。なお、下記表22~29にジルコニアビーズの粒径、分散時間を記載する。
【0326】
また、非水性インク組成物に含まれる顔料の体積基準累積90%粒子径(D90)は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いて測定した。
【0327】
3.評価1
(保存安定性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について保存安定性を評価した。具体的には、非水性インク組成物を60℃で1ヶ月間保存し、試験前後の粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化を観察し、下記の基準で、保存安定性を評価した。なお、インクの粘度は、落球式粘度計(アントンパール社製AMVn)を用いて、20℃の条件下で測定され、顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル(株)製粒度分析計NANOTRACWAVE)を用いて25℃の条件下で測定した。なお、下記の評価は「粘度」及び「顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)」のうち、変化率が大きかった方をその非水性インク組成物の評価とした(表中、「保存安定性」と表記)。
評価基準
評価5:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれも3%未満である。
評価4:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが3%以上5%未満である。
評価3:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが5%以上8%未満である。
評価2:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが8%以上10%未満である。
評価1:粘度及び顔料の体積基準累積50%粒子径(D50)の変化率がいずれかが10%以上である。
【0328】
(吐出安定性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について吐出安定性を評価した。具体的には、インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)に非水性インク組成物を充填して、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に双方向の高速印刷モード(360x720dpi)で、基材表面温度40℃にて連続印刷でベタ及び細線を印刷し、ドット抜け、飛行曲がり、インクの飛び散りの有無を目視により観察し、発生回数を計測した(表中、「吐出安定性」と表記)。
評価基準
評価5:細線が正しく再現できている。
評価4:細線がおおむね正しく再現できている。
評価3:わずかに細線に曲がりがみられる。
評価2:着弾位置がずれており、曲がりが見られる。
評価1:着弾位置のずれが酷く、細線を再現できない。
【0329】
(クリーニング回復性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について、ヘッドでのノズル詰まりが発生した際に、プリンターのクリーニング動作によりノズル詰まりの解消が行えるかを評価した。
具体的には、クリーニングシステムを備えた上記インクジェットプリンター((商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)を用いて、実施例及び比較例のインク組成物を充填して高品質印刷モード(1440x720dpi)で1.80mのベタ画像を印刷後、室温25℃にて1週間放置し、その後ノズルチェックパターンを印刷し、抜けが無くなるまでクリーニングを行った(表中、「クリーニング回復性」と表記)。
評価基準
評価5:抜けがない
評価4:クリーニング1回でノズル詰まりを解消する。
評価3:クリーニング2~3回でノズル詰まりを解消する。
評価2:クリーニング4~5回でノズル詰まりを解消する。
評価1:クリーニング6回でもノズル詰まりを解消しない。
【0330】
(色調安定性(沈降性))
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物の沈降性の評価を行った。具体的には、非水性インク組成物30gを室温で1ヶ月間保存し、試験前後のインクの上澄み1gを取り、バーコーター#8で記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に展色し40℃オーブンで乾燥させた。試験前後の色相変化ΔEの値を評価した、色相は以下の条件で評価した。X-Rite eXact(エックスライト社製)を用い、視野角2°、測定範囲 4mmφ、D65光源の条件でL、a、bの値を測定した(表中、「色調安定性(沈降性)」と表記」)。
色相変化ΔEは、試験前L*1、a*1、b*1、試験後L*2、a*2、b*2の値を使用し、以下の式で求められる
ΔE=((L*1-L*2+(a*1-a*2+(b*1-b*2(1/2)
評価基準
評価5:ΔEが2.0未満である。
評価4:ΔEが2.5未満、2.0以上である。
評価3:ΔEが3.0未満、2.5以上である。
評価2:ΔEが3.5未満、3.0以上である。
評価1:ΔEが3.5以上である。
【0331】
(表面乾燥性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について表面乾燥性を評価した。具体的には、実施例及び比較例の非水性インク組成物をインクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)を用いたインクジェット方式にて記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)でベタ画像の印刷を行い、40℃で乾燥するまでの時間を計測した(表中、「表面乾燥性」と表記)。
評価基準
評価5:2分未満で乾燥する。
評価4:2分以上4分未満で乾燥する。
評価3:4分以上6分未満で乾燥する。
評価2:6分以上8分未満で乾燥する。
評価1:8分以上で乾燥する。
【0332】
(滲み性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物について滲み性を評価した。具体的には、上記インクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)にて、記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)、基材表面温度50℃で各色のベタ部中にベタ部と異なる色の6ptの文字がある画像を印刷し、得られた印字物を60℃のオーブンで5分間乾燥後、当該印字物の滲みを目視、ルーペ(x10)で観察した。
評価基準
評価5:ルーペでインクの滲みが観察されなかった。
評価4:目視でインクの滲みが観察されず、6ptの文字が鮮明である。
評価3:目視でインクの滲みがわずかに観察されたが、意匠性は損なわれない。
評価2:目視でインクの滲みが観察されたが、6ptの文字は識別可能である。
評価1:目視でインクの滲みが顕著に観察され、6ptの文字は視認できなかった。
【0333】
(耐候性)
実施例、比較例および参考例の非水性インク組成物を使用して作製された印字物の耐候性を評価した。実施例及び比較例の非水性インク組成物をインクジェットプリンター(商品名 VersaArt RE-640、ローランドDG(株)製を使用)を用いたインクジェット方式にて記録媒体(糊付きポリ塩化ビニルフィルム(IMAGin JT5829R:MACtac社製))に高品質印刷モード(1440x720dpi)でベタ画像の印刷を行い、40℃で1時間乾燥させた。
得られた記録物をキセノンウェザーメーター(ATLAS Ci4000:東洋精機製)内に投入し、サイクル試験を行った。試験条件はJIS K―5600-7-7に基づき、ブラックパネル温度:63℃、キセノンランプの放射照度:60W/m、試験層内温度:38℃、に保ち、セグメント1では湿度を50%に保った状態で102分間、セグメント2では水照射を18分間行い、これを1サイクルとした。50サイクルを1セットとし、このサイクル試験を継続して10セット行った。
試験前後の色相変化ΔEの値を評価した、色相は以下の条件で評価した。X-Rite eXact(エックスライト社製)を用い、視野角2°、測定範囲 4mmφ、D65光源の条件でL*、a*、b*の値を測定した。
色相変化ΔEは、試験前L*1、a*1、b*1、試験後L*2、a*2、b*2の値を使用し、以下の式で求められる
ΔE=((L*1-L*2+(a*1-a*2+(b*1-b*2(1/2)
評価基準
評価5:ΔEが5.0未満である。
評価4:ΔEが10.0未満、5.0以上である。
評価3:ΔEが15.0未満、10.0以上である。
評価2:ΔEが20.0未満、15.0以上である。
評価1:ΔEが20.0以上である。
【0334】
【表22】
【0335】
【表23】
【0336】
【表24】
【0337】
【表25】
【0338】
【表26】
【0339】
【表27】
【0340】
【表28】
【0341】
【表29】
【0342】
表中、「C.I.ピグメントグリーン7」は塩素化銅フタロシアニンであり、ハロゲン化フタロシアニン顔料(密度:2.0g/cm)に該当する。
【0343】
表中、「C.I.ピグメントグリーン36」は、臭素化塩素化銅フタロシアニンであり、ハロゲン化フタロシアニン顔料(密度:2.7g/cm)に該当する。
【0344】
表中、「C.I.ピグメントグリーン58」は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンであり、ハロゲン化フタロシアニン顔料に該当する。
【0345】
表中、C.I.ピグメントブルー15:4」(密度:1.6g/cm)「C.I.ピグメントイエロー155」(密度:1.45g/cm)は、ハロゲン化フタロシアニン顔料ではない顔料に該当する。
【0346】
表21~29から分かるように、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を含有し、有機溶剤は、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有する実施例の非水性インク組成物であれば、ハロゲン化フタロシアニン顔料を含んでいても保存安定性及び色調安定性、及びクリーニング回復性が高いことが分かる。
【0347】
特に、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤)含有量を変更した実施例3-8~3-14の非水性インク組成物において、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤)含有量が5質量%以上である実施例3-9~3-14の非水性インク組成物は、実施例3-8と比較しても色調安定性がより良好であった。
【0348】
また、有機溶剤Bの種類をアルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)それぞれに変更した実施例3-15~3-24、3-67、3-68の非水性インク組成物において、保存安定性・色調安定性が良好となっていた。
【0349】
また、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3の種類を変更した実施例3-25~3-27の非水性インク組成物において、実施例3-1の非水性インク組成物と同様に保存安定性・色調安定性が良好となっていた。
【0350】
また、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3の体積基準累積50%粒子径(D50)、体積基準累積90%粒子径(D90)を変更した実施例3-28~3-33の非水性インク組成物において、D50が150nm以下であって、D90が300nm以下である実施例3-28~3-31は実施例3-33の非水性インク組成物と比較して、保存安定性・色調安定性が良好となっていた。
【0351】
また、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3の含有量を変更した実施例3-34~3-37の非水性インク組成物において、顔料A3の含有量が0.1質量%以上8.0質量%以下である実施例3-36~3-36の非水性インク組成物は、実施例3-37の非水性インク組成物と比較して、保存安定性・色調安定性が良好となっていた。
【0352】
また、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂の含有量を変更した実施例3-39~3-54の非水性インク組成物において、25℃における固有粘度が90mL/g以上の樹脂が樹脂全量中5質量%以下の範囲にある実施例の非水性インク組成物は、5質量%超の範囲にある実施例の非水性インク組成物と比べても、ベタ埋まりや吐出性安定性が向上していた。
【0353】
また、顔料分散剤の種類を変更させた実施例3-55~3-60、3-66において、塩基性基を有する顔料分散剤を使用した実施例3-56~3-60、3-66の非水性インク組成物は、実施例3-55の非水性インク組成物と比較しても保存安定性や吐出安定性が向上していた。その中でも、アミン価が20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲である実施例3-57~3-60、3-66の非水性インク組成物は特に保存安定性や吐出安定性が向上していた。
【0354】
また、顔料分散剤の含有量を変更させた実施例3-61~3-64において、非水性インク組成物中の顔料100質量部に対して5質量部以上150質量部以下の範囲である実施例3-61~3-63のインク組成物は、実施例3-64のインク組成物と比較して、表面乾燥性が向上していた。
【0355】
また、シロキサン骨格を有する界面活性剤を含有しない実施例3-68のインク組成物は、滲み性が相対的に若干低下した。
【0356】
一方、有機溶剤B(アルキルアミド系溶剤(b1)、環状アミド系溶剤(b2)、及びラクトン系溶剤(b3)からなる群より選択される少なくとも1つ)を含有しない比較例3-1~3-3の非水性インク組成物では、本発明の効果を奏するものとはなっていない。
【0357】
さらに、ハロゲン化フタロシアニン顔料A3を含有しない参考例3-1の非水性インク組成物は、有機溶剤Bを含有していなくとも、保存安定性・色調安定性が良好なものとなっていた。
【0358】
4.評価2
上記で製造した実施例3-1の非水性インク組成物を使用して水分量の違いによる評価を行った。具体的には、上記で製造した実施例3-1の非水性インク組成物に下記表に示した量(非水性インク組成物100質量部に対する質量部)の水(イオン交換水)を添加し、水添加後の非水性インク組成物について上記と同様に評価を行った。なお、表中の「水分含有量」とは、カールフィッシャー水分計901(メトロームジャパン社製)を用いて求めた値である。
【0359】
【表30】
【0360】
表30から分かるように水分の含有量が少ないほど保存安定性や吐出安定性をより効果的に向上できていることが分かる。
【要約】
【課題】ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、及びハロゲン化フタロシアニン顔料からなる群より選択される少なくとも1つを含む非水性インク組成物であってもインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物として好適に使用することのできる非水性インク組成物を提供する。
【解決手段】顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤と、を含有するインクジェット法によって吐出される非水性インク組成物であって、顔料は、下記式(1-1)で示される顔料A1、下記式(1-2)で示される顔料A2、及びハロゲン化フタロシアニン顔料A3の少なくとも1つで示される顔料を含有し、顔料A1、顔料A2のpHは3以上9以下の範囲内である、非水性インク組成物である。
【化1】
(式(1-1)中、X1~X12はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐しても良いアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【化2】
(式(1-2)中、X1~X10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下の分岐しても良いアルキル基、水素原子が置換されていてもよい芳香族炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、-OH、-COOH、-COO、-SOH、-SO 、水素原子が置換されていてもよいフタルイミド基、フタルイミドメチル基、又は複素環化合物を示し、Mはカチオンを示す。)
【選択図】なし