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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】異物検査装置及び異物検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/958 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
G01N21/958
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020550189
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2019006548
(87)【国際公開番号】W WO2020170389
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2020-09-17
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597027280
【氏名又は名称】株式会社 エフケー光学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100157118
【弁理士】
【氏名又は名称】南 義明
(72)【発明者】
【氏名】佐野 栄一
(72)【発明者】
【氏名】中村 瑞樹
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-292021(JP,A)
【文献】特開2014-038045(JP,A)
【文献】特開昭60-067845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0044346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
XYZ軸からなる直交座標系において、XY平面に表面を位置させた検査対象に付着した異物を検査する異物検査装置であって、
、前記検査対象の表面にコヒーレント光をXY平面上、Y軸方向に照射する光源部と、
前記検査対象を撮影する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像に基づいて異物を検出する検出部を備え、
前記撮像部の撮像軸は、YZ平面で観察したときに、前記検査対象と前記撮像軸が交わる箇所を境として、前記光源部から離れた位置の表面と鋭角の仰角を形成し、XY平面で観察したときに、前記光源部の光軸と前記撮像軸が交わる箇所を境として、前記光源部から離れた位置の前記光軸と鋭角の傾斜角を形成するように位置し、
前記検出部は、撮影された画像中、異物の検出対象から除外する不感帯領域を指定するマスクを使用して異物を検出し、
前記不感帯領域の外側の輪郭は、前記検査対象の裏面に位置する構造物、あるいは、検査対象に設けられた孔の外側の輪郭の内側に位置する
異物検査装置。
【請求項2】
XYZ軸からなる直交座標系において、XY平面に表面を位置させた検査対象に付着した異物を撮像部で撮像して検査する異物検査方法であって、
前記検査対象の側方から、前記検査対象の表面に光源部からのコヒーレント光をXY平面上、Y軸方向に照射し、
前記撮像部の撮像軸は、YZ平面で観察したときに、前記検査対象と前記撮像軸が交わる箇所を境として、前記光源部から離れた位置の表面と鋭角の仰角を形成し、XY平面で観察したときに、前記光源部の光軸と前記撮像軸が交わる箇所を境として、前記光源部から離れた位置の前記光軸と鋭角の傾斜角を形成するように位置し、
前記撮像部で撮影された画像に基づいて、検出部で異物を検出し、
前記検出部は、撮影された画像中、異物の検出対象から除外する不感帯領域を指定するマスクを使用して異物を検出し、
前記不感帯領域の外側の輪郭は、前記検査対象の裏面に位置する構造物、あるいは、検査対象に設けられた孔の外側の輪郭の内側に位置する
異物検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶カラーフィルタ等、各種基板に付着した異物を検査する異物検査装置、及び、異物検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程、あるいは、液晶表示装置等のフラットディスプレイの製造工程等では、製品の精度向上等を図ることを目的として、製造工程において、ガラス基板に付着する異物を検出することが行われている。
【0003】
特許文献1には、ガラス基板の表面および裏面に付着した異物を高精度で検査しうる異物検査装置が開示されている。この異物検査装置は、ガラス基板の上方に投光部と、受光部を配置し、投光位置と受光位置の相対位置を変化させることで、ガラス基板の表面に付着した異物の検出と、ガラス基板の裏面に付着した異物の検出を切り替えることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-133357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶表示装置に実装されるカラーフィルタの製造工程では、レジストが塗布された状態で、塗布されたレジストに異物が付着していないか検査を行う必要がある。レジストに異物が付着している場合、その後の工程となる露光において、レジスト面に近接配置されるフォトマスクを破損させる、あるいは、カラーフィルタ自体の品質を損なうことになる。特に、フォトマスクは高価であるため、異物により破損が生じた場合、金銭的な被害は大きいものとなる。そのため、カラーフィルタにおける異物の検出は非常に重要である。
【0006】
ところで、カラーフィルタの製造工程では、検査対象となるカラーフィルタは、検査装置の台座上に設置されて行われることが通常である。台座への搬送には、ベルトコンベア等、各種搬送手段が用いられる。搬送手段には、検査対象となるカラーフィルタを、アーム等で掴み、台座の上方から台座上に設置するタイプのものがある。このような場合、台座の上方に、撮像部等、検査を行う各種部材を設置することは困難である。本発明の目的の1つは、異物検査装置あるいは異物検査方法において、検査を行うための各種構成(撮像部、光源)等の高さを低く抑えることである。また、本発明の目的の1つは、異物検査装置あるいは異物検査方法において、異物検査の精度向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明に係る異物検査装置は、以下に記載する第1の構成を採用するものである。
XYZ軸からなる直交座標系において、XY平面に表面を位置させた検査対象に付着した異物を検査する異物検査装置であって、
、前記検査対象の表面にコヒーレント光をXY平面上、Y軸方向に照射する光源部と、
前記検査対象を撮影する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像に基づいて異物を検出する検出部を備え、
前記撮像部の撮像軸は、YZ平面で観察したときに、前記検査対象と前記撮像軸が交わる箇所を境として、前記光源部から離れた位置の表面と鋭角の仰角を形成し、XY平面で観察したときに、前記光源部の光軸と前記撮像軸が交わる箇所を境として、前記光源部から離れた位置の前記光軸と鋭角の傾斜角を形成するように位置し、
前記検出部は、撮影された画像中、異物の検出対象から除外する不感帯領域を指定するマスクを使用して異物を検出し、
前記不感帯領域の外側の輪郭は、前記検査対象の裏面に位置する構造物、あるいは、検査対象に設けられた孔の外側の輪郭の内側に位置する
【0008】
さらに本発明に係る異物検査装置(第2の構成)は、第1の構成において、
前記光源部から照射されるコヒーレント光は、前記検査対象の端部を照明する。
【0009】
さらに本発明に係る異物検査装置(第3の構成)は、第1または第2の構成において、
前記仰角は、5度以上、50度以下である。
【0010】
さらに本発明に係る異物検査装置(第4の構成)は、第1から第3の何れかの構成において、
前記傾斜角の絶対値は、10度以上、50度以下である。
【0011】
さらに本発明に係る異物検査装置(第5の構成)は、第1から第4の何れかの構成において、
前記光源部は、前記コヒーレント光を前記検査対象側に傾ける見下ろし角を有するように配置されている。
【0012】
さらに本発明に係る異物検査装置(第6の構成)は、第5の構成において、
前記見下ろし角は、10度以下である。
【0013】
さらに本発明に係る異物検査装置(第7の構成)は、第1から第6の何れかの構成において、
前記検査対象には、微細パターンが形成されている。
【0014】
さらに本発明に係る異物検査装置(第8の構成)は、第1から第7の何れかの構成において、
前記検査対象が配置される台座と、
前記検査対象を前記台座の上方から、配置する搬送部を備える。
【0015】
さらに本発明に係る異物検査装置(第9の構成)は、第1から第8の何れかの構成において、
前記光源部と、前記撮像部は、測定ユニットに固定されている。
【0016】
また本発明に係る異物検査方法(第9の構成)は、
XYZ軸からなる直交座標系において、XY平面に表面を位置させた検査対象に付着した異物を撮像部で撮像して検査する異物検査方法であって、
前記検査対象の側方から、前記検査対象の表面に光源部からのコヒーレント光をXY平面上、Y軸方向に照射し、
前記撮像部の撮像軸は、YZ平面で観察したときに、前記検査対象と前記撮像軸が交わる箇所を境として、前記光源部から離れた位置の表面と鋭角の仰角を形成し、XY平面で観察したときに、前記光源部の光軸と前記撮像軸が交わる箇所を境として、前記光源部から離れた位置の前記光軸と鋭角の傾斜角を形成するように位置し、
前記撮像部で撮影された画像に基づいて、検出部で異物を検出し、
前記検出部は、撮影された画像中、異物の検出対象から除外する不感帯領域を指定するマスクを使用して異物を検出し、
前記不感帯領域の外側の輪郭は、前記検査対象の裏面に位置する構造物、あるいは、検査対象に設けられた孔の外側の輪郭の内側に位置する
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る異物検査装置、異物検査方法によれば、検査対象の側方から、検査対象の表面にコヒーレント光を照射することで、検査を行うための各種構成の高さを低く抑えることが可能となる。そのため、台座の上方から検査対象を配置する搬送手段を有する異物検査装置にも容易に使用することが可能となる。なお、本発明に係る異物検査装置、異物検査方法は、台座の上方から検査対象を配置する搬送手段以外のタイプ、例えば、ベルトコンベアを使用する搬送手段を使用するタイプにも使用することが可能である。
【0018】
また、検査対象の側方からコヒーレント光を使用した場合、検査対象での干渉により、撮像画像に干渉縞が生じることがある。本発明に係る異物検査装置、異物検査方法では、検査対象に対する撮像部の撮像軸の仰角、傾斜角を鋭角とすることで、撮影に関する構成の高さを抑えるとともに、撮像画像での干渉縞の発生を抑制する等、適切な状態で撮影を可能とし、異物の検出精度向上を図ることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態における異物検査装置の構成を示す側面図
図2】本実施形態における異物検査装置の構成を示す上面図
図3】本実施形態における搬送部の動作を説明するための図
図4】本実施形態の異物検査装置の撮影構成を説明するための側面図
図5】本実施形態の異物検査装置の撮影構成を説明するための上面図
図6】本実施形態で使用する照明光の色とカラーレジスト色(検査対象の表面色)の関係を説明するための色相環
図7】ミー散乱を説明するための模式図
図8】ビーズ球を使用して撮影した撮像画像
図9】本実施形態の画像処理で使用するマスクを説明するための模式図
図10】本実施形態の異物検査工程を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施形態における異物検査装置1の構成を示す側面図であり、図2は、本実施形態における異物検査装置の構成を示す上面図である。図2は、台座上面付近の上面図であって、搬送部20は省略して記載している。
【0021】
本実施形態の異物検査装置1は、台座30の上に設置された検査対象4を照明するレーザー光源12(本発明の「光源部」に相当する)、照明された検査対象4を撮影する撮像部11a、11b、そして、撮像部11a、11bで撮影された画像に対して画像処理を施し、検査対象4の表面に付着した異物を検出する情報処理装置(図示せず、本発明の「検出部」に相当する)を備えて構成されている。
【0022】
また、異物検査装置1は、検査対象となる検査対象4が設置される台座30、台座30の上面に配置された搬送部20を備えている。台座30、搬送部20、異物検査装置1の各種構成は、フレーム5に固定されている。搬送部20は、台座30上への検査対象4の搬送、並びに、台座30から検査対象4の撤去を行う。搬送部20は、昇降部21、伸縮部22、アーム23を含んで構成されている。アーム23は、伸縮部22の先端に設けられ、伸縮部22の伸縮動作(図1ではY軸方向)によって検査対象4を抱えることが可能である。昇降部21には、伸縮部22が固定されており、昇降動作(Z軸方向)を行うことで、アーム23が抱える検査対象4を上げ下ろしすることが可能である。図1の搬送部20は、ちょうど、アーム23で検査対象4を抱えているときの状態である。
【0023】
本実施形態の検査対象4は、例えば、カラーフィルタの製造工程途中において、表面カラーレジストが塗布された透明基板(ガラス基板等)である。カラーフィルタの製造工程については、後で詳細に説明を行う。なお、異物検査装置1は、検査対象4を製造工程途中のカラーフィルタに限られるものではなく、透明基板を使用する各種分野において使用することが可能である。
【0024】
撮像部11a、11b、及び、レーザー光源12は、測定ユニット10に固定されている。レーザー光源12は、ある程度の幅(本実施形態では、20mm)を有した線光源であって、台座30上に設置された検査対象4を側面からコヒーレント光を照明する。一方、撮像部11a、11bは、図1に示されるように、照明された検査対象4の表面を上面から撮影する。また、図2に示されるように、撮像部11a、11bの撮像軸110a、110bは、レーザー光源12の光軸12aから傾斜角θ1傾斜して配置されている。傾斜角θ1を0度にすることで、撮像部11a、11bの撮像範囲を大きくすることは可能であるが、レーザー光源12の直接光が入射してしまうため、異物の検査を行うことができない。また、傾斜角θ1が小さい場合、レーザー光源12の一次反射光の入射、あるいは、検査対象4に形成されている微細パターンで生じる干渉縞により、異物の検査精度が悪化する場合がある。本実施形態では、このような要因を考慮し、傾斜角θ1を10度以上、50度以下の範囲としている。この傾斜角θ1は、15度以上、25度以下の範囲とすることが、上述する要因を改善する上で、更に好ましい。
【0025】
撮像部11a、11b、レーザー光源12が固定されている測定ユニット10は、検査時において、移動レール32上をX軸方向に移動する。移動中、撮像部11a、11bによって、台座30上に設置された検査対象4を撮像することで、検査対象4上の異物検査が行われる。撮像部11a、11b、レーザー光源12は、測定ユニット10に固定されているため、レーザー光源12の光軸12aと撮像部11a、11bの撮像軸110a、110bは、同じ位置関係を適切に維持することになる。
【0026】
図3は、本実施形態における搬送部20の動作を説明するための図である。搬送部20は、台座30上に検査対象4(本実施形態では、ガラス基板)を配置し、検査完了後、台座30上から検査対象4を撤去する。図1の搬送部20は、アーム23で検査対象4を保持した状態であり、搬送部20は、例えば、X軸方向に移動することで、検査対象4を台座30の上方範囲外から、台座30の上方の範囲内(検査対象4の配置位置)に搬送する。検査対象4が台座30の上方に位置すると、図3(A)に示されるように、台座30の表面から、複数の支持針31を突出させ、検査対象4を支持する。支持針31によって検査対象が支持されると、図3(B)に示されるように、アーム23がY軸方向に開くことで、検査対象4がアーム23に阻害されず下降できる配置となる。
【0027】
そして、図3(C)に示されるように、複数の支持針31を下降させ、支持針31を下降させ、台座内に収容することで、台座30上に検査対象4が設置される。その後、測定ユニット10を移動させつつ、レーザー光源12で照明された検査対象4を撮像部11a、11bで撮像することで異物検査が行われる。検査完了後は、検査対象4を台座30に載置した手順と反対の手順を踏むことで、台座30から検査対象が撤去される。
【0028】
以上、説明したように、本実施形態の異物検査装置1は、台座30の上方に検査対象4の搬送を行う搬送部20を備えて構成されている。そのため、異物検査を行うための各種構成(測定ユニット10、撮像部11a、11b、レーザー光源12等)を、台座30の上方に高く配置することが困難な状況にある。そのため、異物検査を行うための各種構成の高さを抑え、搬送部20が配置された状況下においても、異物検査を適切に行うことを一つの目的としている。
【0029】
図4は、本実施形態の異物検査装置1の撮影構成を説明するための側面図であり、図5は、本実施形態の異物検査装置1の撮影構成を説明するための上面図である。図1図2では、2個の撮像部11a、11bが設けられているが、ここでは、1つの撮像部11aを例に取って説明を行う。本実施形態では、異物検査を行うための各種構成の高さを抑えるため、まず、レーザー光源12は、検査対象4の側方から検査対象4の表面を照明する。ここで、検査対象4の側方から照明するとは、図4に示されるように、レーザー光源12から照射される照明光Lの照明光下端Laは、検査対象4の表面よりも下方に位置させることを意味している。このように、検査対象4の側方から照明することで、検査対象端部4aの位置から照明することとなり、レーザー光源12の高さを抑えることが可能となる。したがって、本実施形態のように搬送部20が、検査対象4の上方に位置する形態であっても、レーザー光源12が搬送の障害となることを抑制することが可能となる。また、このように照明した場合、検査対象4における検査対象端部4aまで、異物検査を行うことが可能となる。更に、このような照明を行うことで、観察される撮影像では、検査対象端部4aが輝線となって観察されることになる。例えば、検査対象4上に異物が発見された場合、輝線として撮影された検査対象端部4aを基準位置として、検査対象4上の異物の位置を測定することが可能となる。
【0030】
レーザー光源12の光軸12aは、検査対象4と平行、あるいは、検査対象4側に向かって見下ろすように傾いた僅かな見下ろし角を設けることが好ましい。本実施形態では、レーザー光源12の光軸12aは、検査対象4に向かって0.5度の見下ろし角を設けている。この光軸12aの見下ろし角は、レーザー光源12により照射される範囲、到達距離等を考慮して設定される。この見下ろし角は、10度以下の範囲で設けることが好ましい。さらに好適には、見下ろし角は、0.1度以上、3度以下の範囲にすることが好ましい。図5の上面図に示されるように、レーザー光源12から照射される照明光L(コヒーレント光)は、ある程度の幅(本実施形態では、20mm)をもって検査対象4の表面を照明する。例えば、光軸12aを検査対象4と平行にした場合、レーザー光源12に近い側の照明光幅W1は、レーザー光源12から遠い側の照明光幅W2と等しくなる。一方、本実施形態のように、見下ろし角を設けた場合、照明光幅W2は、照明光幅W1よりも小さくなる。このように、レーザー光源12から出射される照明光は、コヒーレント光(直進光)であるため、光軸12aの見下ろし角が大きくなりすぎると、検査対象4を照明する範囲が狭くなり、1つのレーザー光源12で検査対象4をカバーすることが困難となる。その場合、2台のレーザー光源12を使用し、検査対象4の両側面から検査対象を照明することとしてもよい。
【0031】
図1図2で説明したように、撮像部11aは、検査対象4の上方から、レーザー光源12によって照明された検査対象4の撮像を行う。ここで、撮像部11aは、図4に示されるように、その撮像軸110aが、図中YZ平面において、検査対象4の表面であって、レーザー光源12から離れた側の表面との間で仰角θ2を形成するように配置されている。なお、検査対象4の表面であって、レーザー光源12から離れた側の表面とは、検査対象4と撮像軸110aが交わる箇所を境として、レーザー光源12から離れた位置の表面のことをいう。また、撮像部11aは、図5に示されるように、その撮像軸110aが、図中XY平面において、レーザー光源12の光軸12aにおけるレーザー光源12から離れた側の軸との間で傾斜角θ1を形成するように配置されている。なお、レーザー光源12の光軸12aにおけるレーザー光源12から離れた側の軸とは、レーザー光源12の光軸12aと撮像軸110aが交わる箇所を境として、レーザー光源から離れた位置の光軸のことをいう。ここで、仰角θ2の範囲は、5度以上、50度以下の鋭角の範囲に設定される。図5中、右上から左下に向かう斜線で示す領域は、照明光Lで照明された検査対象4の表面を示す照明範囲Aである。また、図5中、左上から右下に向かう斜線で示す領域は、撮像部11aによる検査対象4上の撮像範囲Bである。したがって、図5中、照明範囲Aと撮像範囲Bが重なる範囲が、検査対象4上の検査範囲Cとなる。図4中、矢印で示された範囲もこの検査範囲Cを示している。また、撮像部11aは、図4に示すように上下画角θ3aを有し、図5に示すように左右画角θ3bを有する。
【0032】
ここで、傾斜角θ1は、10度以上、50度以下の鋭角の範囲に設定される。なお、傾斜角θ1は、負の角度で設置することも可能である。したがって、傾斜角θ1の絶対値は、10度以上、50度以下の鋭角の範囲に設置される。傾斜角θ1の絶対値は、更に好適には、15度以上25度以下にすることが、各種効果の向上を図る上で好ましい。また、仰角θ2は、5度以上、50度以下の鋭角の範囲に設定される。傾斜角θ1、仰角θ2をこのような鋭角の範囲に設定することで、以下に説明する4つの効果を得られることができる。
【0033】
(1)第1の効果は、レーザー光源12の設置形態と同様、撮像部11aの高さを抑えることが可能になることである。このように、撮像部11aの高さを抑えることで、搬送部20が、検査対象4の上方に位置する形態であっても、レーザー光源12が搬送の障害となることを抑制することが可能となる。
(2)第2の効果は、レーザー光源12からの直接光、あるいは、一次反射光が入射することが可能となり、照明光Lを乱反射した異物を撮影することが可能となる。
(3)第3の効果は、傾斜角θ1、仰角θ2の何れか一方が、指定された角度の範囲よりも小さい場合、カラーフィルタに設けられた微細パターンにより生じる干渉縞が撮影されることがある。干渉縞が生じた状態では、異物を適切に観察することが困難となる。本実施形態では、傾斜角θ1、仰角θ2を、干渉縞が観察されない適切な範囲としている。
(4)第4の効果は、検査対象4の側方から照明光Lを入射させるとともに、撮像部11aを傾斜させて配置することで、検査対象4に設けられた孔、あるいは、台座30の表面に設けられた孔、構造物、あるいは、台座30の表面に生じた傷を実物よりも小さく観察することが可能となる。このような孔、構造物、傷等は、検査対象4の表面に付着する異物では無いため、異物と間違えないように、撮影した画像にマスク(検査対象としない部分とする)する必要がある。従来の観察法では、マスクの大きさは、孔、構造物、傷等と同じ大きさ、もしくは、余裕をみてそれ以上の大きさとする必要があった。マスクを設けることで、検査対象としない不感帯領域が大きくなり、マスク部分に異物が付着した場合、検査漏れとなることが考えられる。本実施形態では、孔、構造物、傷等が実際の大きさよりも小さく観察されるため、マスクを小さくすることが可能となる。したがって、不感帯領域の大きさを抑え、検査範囲を拡大することが可能となる。
【0034】
以上、撮像部11a、レーザー光源12(光源部)、検査対象4の配置関係について説明したが、撮像部11bについても同様の配置関係が形成される。
【0035】
本実施形態では、検査対象4として液晶表示装置に使用されるカラーフィルタとしている。特に、製造工程途中のカラーフィルタについて、表面に付着した異物の検出を行うこととしている。図6は、カラーフィルタの製造工程を示す図である。図6(A)に示すように、ガラス基板等の透明基板41上にブラックマトリックス42が形成される。ブラックマトリックス42の形成については、後で説明するカラーレジスト43Rと同様、露光、現像により行われることになるが、ここではその説明は省略する。図6(B)に示すように、ブラックマトリックス42が形成された透明基板41上に赤色のカラーレジスト43Rが塗布される。本実施形態の異物検査装置1は、このカラーレジスト43Rが塗布された状態を検査対象4としている。
【0036】
図6(C)に示すように、カラーレジスト43Rが塗布された後、フォトマスク44を上方に配置して露光を行うことになるが、カラーレジスト43R上に異物が付着した場合、異物がフォトマスク44を破損させてしまうことがある。フォトマスク44は極めて高価であるため、破損による金銭的な被害は大きい。また、異物によるフォトマスク44の破損に気付かず、カラーフィルタの製造を続けた場合、カラーフィルタ自体に欠損を生じることになる。カラーフィルタの欠損は、例えば、液晶表示装置における表示画像の劣化を生じさせることになる。
【0037】
フォトマスク44に設けられた開口44aを介して紫外線を照射し、開口44aの位置におけるカラーレジスト43Rを不活性化させる。その後、現像液でカラーレジスト43Rの不要な部分を除去した後、残ったカラーレジスト43Rをベークして硬化させる。図6(D)は、硬化されたカラーレジスト43Rを示す図である。緑のカラーレジスト43Gについて、図6(B)、図6(C)の行程を行うことで、図6(E)のように、硬化されたカラーレジスト43Gが追加される。そして、青のカラーレジスト43Bについて、図6(B)、図6(C)の行程を行うことで、図6(E)のように、硬化されたカラーレジスト43Bが追加される。本実施形態の異物検査装置1は、緑のカラーレジスト43G、青のカラーレジスト43Bが塗布された状態についても検査対象4とし、その表面に付着した異物の検査を実行する。
【0038】
図1図2等で説明したように、本実施形態では、撮像部11a、11bにおいて、異物による散乱光を受光することで、異物を効果的に検出することが可能である。ここで、異物による光の散乱について説明しておく。異物となる微小粒子に光が入射した場合、微少粒子の大きさに応じて散乱の形態は異なることが知られている。微小粒子による散乱は、微少粒子の大きさと光の波長との関係によって大別され、微小粒子の大きさが光の波長の1/10の場合、レーリー散乱を生じることが、また、微小粒子の大きさがそれ以上の場合、ミー散乱を生じることが知られている。本実施形態で検出対象となる異物は、ガラス基板の破片等であって、ミー散乱を生じる大きさの異物である。
【0039】
図7は、ミー散乱を説明するための模式図であって、球形微小粒子Sに照明光Lが入射したときの散乱の様子を示す模式図である。図7(A)は、散乱光の様子を示す上面図であり、図7(B)は、その側面図である。ここでは、検査対象4の表面をXY平面、検査対象の表面に直交する軸をZ軸、照明光Lの進行方向をY軸負の方向としている。散乱光は、Y軸の正負方向それぞれに弧を描くように現れる。また、散乱光は、球形微小粒子Sの大きさよりも大きく観察されることになるため、散乱光を観察することで、検査対象に付着した異物を効率よく検出することが可能となる。本実施形態の異物検査装置1は、このような異物における光学特性を鑑み、照明光Lを側方から入射させ、ミー散乱において大きな振幅を持つ位置(更には、照明光Lの直接光や一次反射光が入射しない位置)で観察することで、異物を的確に発見することを可能としている。
【0040】
図8は、ミー散乱による散乱光を撮像した撮像画像25(2値化済み)である。ここでは、透明な2つの球形微小粒子S1、S2(微少なビーズ球)を検査対象4の表面に付着させて撮像している。破線で示す円は、球形微小粒子S1、S2の実際の位置を示しており、実際には撮像画像25には写っていない。撮像画像25は、球形微小粒子S1、S2に対し、図7と同様、Y軸負の方向に照明光Lを入射させて撮影し、画像の2値化された画像である。球形微小粒子S1、S2のY軸正負の方向には、黒色で示す散乱光が写されている。このように、球形微小粒子S1、S2による散乱光は、実際の球形微小粒子S1、S2の大きさよりも大きく写されるため、検査対象4の表面に付着した異物の検査には有効である。なお、ここでは、異物として球形微小粒子Sを使用しているが、これは散乱光の観察が球形形状で最も困難であることを理由としている。実際の異物は、ガラス破片等、球形とは異なる形状が一般的であり、そのような形状において散乱光は顕著に現れることになり、その観察は球形微小粒子よりも容易である。
【0041】
図9は、本実施形態の画像処理で使用するマスクを説明するための模式図である。前述したようにマスクとは、撮像画像25中、異物の検査に使用しない不感帯領域を指定するために使用される。不感帯領域は、検査対象4中、予め分かっている構造物、孔、傷等の位置に割り当てられ、これらを異物として誤検出しないことを目的としている。本実施形態では、図4図5で説明したレーザー光源12、撮像部11aの配置を取ることで、特に、検査対象4の裏面に位置する電極等の構造物、検査対象4に設けられた孔、台座30の表面にある傷等を、実寸よりも小さく認識(観察)されることを可能としている。したがって、マスク中の不感帯領域を縮小する、あるいは、不感帯領域を設けなくてもよいこととし、不感帯領域以外の領域、すなわち、異物の検査対象となる領域の拡大を図ることが可能となる。
【0042】
図9(A)は、検査対象4の裏面に設けた電極45b、検査対象4を貫通する孔45aを模式的に示した上面図、及び、孔45aの位置における断面図である。図9で示す座標系は、図1図2と同様であって、照明光Lは、Y軸正の方向から検査対象4の表面に照射される。電極45bは、照明光Lが照射される側とは反対の裏面に位置している。
【0043】
検査対象4を正面から、目視で観察した場合、孔45a、電極45bは、実寸で観察されることになる。そのため、白色光を使用した場合のマスク6aにおける不感帯領域61a、61bは、図9(B)に示すように、図9(A)の孔45a、電極45bと同じ大きさ、あるいは、余裕をみて僅かに大きく設けられる。図9(B)のマスク6a中、不感帯領域61a、61b以外の領域が異物の検査対象として使用される。したがって、これら不感帯領域61a、61bに異物が付着していた場合、当該異物は検出できないことになる。
【0044】
一方、本実施形態の異物検査装置1では、図4図5で説明したように、レーザー光源12、撮像部11aの配置を取ることで、検査対象への照明光Lの透過量を減少させ、検査対象4の裏面に位置する電極45b、検査対象4に設けられた孔45a、台座30に設けられた台座孔30aにおける反射量(輝度)を略0とする、あるいは、反射量を低下させることが可能となる。本実施形態では、撮像画像の各画素に対して閾値を設け、閾値以上の輝度で2値化を行っているが、2値化を行うことで、検査対象4の裏面に位置する電極45b、検査対象4に設けられた孔45a、台座30に設けられた台座孔30aは、その全領域、あるいは、一部領域の輝度が閾値以下となり、全領域、あるいは、一部領域が認識(観察)対象から外れることになる。例えば、図9(A)では、Y軸正の方向から照明光Lが入射することになるが、入射する照明光Lが電極45bの端部(Xの値が大きい側)で反射を起こし、電極45bの他の部分よりも輝度が強くなることが考えられる。そのため、電極45bの照明光が入射する側の端部では、2値化後においても、認識(観察)可能な画像として残ってしまう。
【0045】
本実施形態の異物検査装置1で使用するマスク6bは、図9(C)に示す2値化された撮像画像25に基づいて作成されることになり、図9(D)に示す形態となる。マスク6bでは、図9(C)に示されるように、撮像画像25において孔45aが消去されているため、孔45aに対する不感帯領域61aを必要としない。また、電極45bについては、電極45bの実寸よりも小さい不感帯領域61b’で済むことになる。よって、図9(B)の白色光におけるマスク6aと、図9(D)の本実施形態のマスク6bを比較して分かるように、不感帯領域を小さく抑え、残る領域、すなわち、異物の検査対象となる領域拡大を図ることが可能となっている。なお、異物の検出を行う際の画像処理として、撮像画像25に対する2値化は必ずしも行う必要はなく、2値化に代えてn値化(n≧3)とすることとしてもよい。
【0046】
異物検査装置1の画像処理で使用するマスク6bは、異物が付着していないことを十分に確認した検査対象4を撮影し、その撮像画像を使用して作成される。
【0047】
図10は、本実施形態の異物検査装置1における異物検査工程を示すフロー図である。本実施形態では、図5で説明した製造工程途中のカラーフィルタを検査対象4としている。異物検査工程では、まず、台座30に検査対象4が設置される(S11)。そして、検査対象4の表面に照明光Lを照射し(S12)、撮像部11a、11bで照射された領域の撮像を行う(S13)。なお、本実施形態では、照明光Lとして、波長630nmの赤色光を使用している。撮影後、測定ユニット10を移動レール32上で移動させ(S14)、再度、撮像を行う(S13)。あるいは、測定ユニット10を移動しながら、撮影を行うこととしてもよい。S13~S15の工程を、検査対象4の全域の撮影が完了し、全体の撮像画像25が得られるまで実行する(S15)。完了後、得られた撮像画像25は、2値化された(S16)後、表面色に対応したマスクが施される(S17)。
【0048】
異物の有無の検査は、2値化された撮像画像25に対し、マスクによる不感帯領域以外の領域に対して行われる(S18)。異物の検出は、異物で生じる散乱光を観察することで行われるが、この散乱光の強度が閾値を超える場合、異物ありとして判断される。検査が行われた後、検査対象4は、搬送部20を使用して台座30から移動され(S19)、異物無しの場合(S20:No)は、検査対象4は次の工程に入る(S21)。一方、異物有りの場合(S20:Yes)には、検査対象4は、塗布されたカラーレジストを取り除く等の再処理工程が行われる、あるいは、廃棄処理の対象となる(S22)。なお、異物の有無の検査は、上述する形態以外に、各種形態で行うことが可能である。
【0049】
このように、本実施形態では、検査対象4の側方から、検査対象4の表面にコヒーレント光を入射させ、所定の位置から撮像部11a、11bによる撮像を行うことで、ミー散乱による反射光を効率よく撮影し、異物を適切に検出することが可能となる。また、レーザー光源12、撮像部11a、11bといった異物検査に必要な各種構成の高さを抑え、検査対象4を台座30の上方から搬送する搬送部20であっても使用することが可能となる。さらに、検査対象4の裏面に位置する電極45b、検査対象4に設けられた孔45a、台座30の傷等のための不感帯領域を小さくする、あるいは、不感帯領域を必要としないことが可能となり、異物の検査を行う領域の拡大を図り、検査精度の向上を図ることが可能となる。
【0050】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0051】
1:異物検査装置
4:検査対象
5:フレーム
6a、6b:マスク
10:測定ユニット
11a、11b:撮像部
11b:撮像部
12:レーザー光源(光源部)
12a:光軸
20:搬送部
21:昇降部
22:伸縮部
23:アーム
23b:電極像
25:撮像画像
30:台座
30a:台座孔
31:支持針
32:移動レール
41:透明基板
42:ブラックマトリックス
43B、43G、43R:カラーレジスト
44:フォトマスク
44a:開口
45a:孔
45b:電極
61a、61b、61b’:不感帯領域
110a、110b:撮像軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10