(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】運動補助具
(51)【国際特許分類】
A63B 71/08 20060101AFI20220818BHJP
A61H 3/00 20060101ALI20220818BHJP
A61F 5/02 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
A63B71/08 Z
A61H3/00 B
A61F5/02 N
(21)【出願番号】P 2020043519
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】595044328
【氏名又は名称】池田 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 俊幸
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-057787(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042752(US,A1)
【文献】特開2006-212398(JP,A)
【文献】実開昭63-018172(JP,U)
【文献】特開平10-179662(JP,A)
【文献】実開平06-009632(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/08
A63B 71/12
A41D 17/02
A61F 5/02
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
プラスチックで作成した十分な面積と耐性のあるプレート(
8)にリング状の引っかけ部分を設けた装具を、紐靴の間に差し入れる、あるいは、履き物に横の動きに若干の遊びを持たせたポケット(
10)を設けて差し込み弾性体の先に取り付けたフック(7)
を連結することを特徴とする
請求項1に記載された運動補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱が容易でありながら歩行時だけに止まらず、各種球技など複雑で激しい動きを伴うスポーツ於いても常に足関節を背屈位に引き寄せる強度の起点を生み出すサポーター様の運動用品の製造法及び、サポーターから伸びた弾性体を履き物に連結する為に好適な連結器具の形態とその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の運動補助具としては、脳血管障害による片麻痺に伴う尖足の歩行補助を目的とするものなど多くの企業が製品化を試みたが、機能性や安全面に課題が多く広く普及した製品は今日まで開発されてこなかった。また、激しい運動時の使用を可能にしたものは無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-057787
【文献】特開2006-212398
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願人は、本特許出願に当り徹底した実施検証を行なった結果、この種の運動補助具を福祉用具やスポーツ用品として実用化するためには従来の技術では課題が多く、更に沢山の改良と新規の技術要素を兼備する事が不可欠である事が確認出来た。以下列記する。
第1:足関節を背屈位に保持する装具においては、弾性体の張力の方向が脛の上部を起点にして靴の甲部の爪先寄りの中心部に真っ直ぐに向かうことが不可欠で有り、例えば特許第2869485号の
図1のように下腿の下部を起点とした場合は足の甲を足首に方向に引き寄せる作用が主で、足関節を背屈位に持ち上げ保つ作用は軽微であった。
第2:布やゴム素材のサポーターやゴムベルト本体などを起点とした構成では、弾性体の張力に耐えられないため起点としての強度が足りず、耐性に勝れた硬性の脛当てパッド様の物を起点とする必要があった。
第3:脛当てパッドを起点とする場合においては、歩行や運動時に弾性体の張力に引かれても下にずり落ちないための十分な摩擦係数を生じさせる必要があった。
第4:脛当てパッド2を取り付けるサポーターの仕様については、着脱が簡単なマジックテープで装着するものなど様々なタイプの物を比較検証した結果、激しい運動にも耐える起点の強度を保つためには筒状の形状が最も優れていたが、、特開2004-057787や特開2006-212398のように硬いパッドを内蔵すると着脱の際にパッドが足首で引っかかり着脱が困難であった。
第5:張力の調整においては、特許第2869485号の装具の装着位置を変える方式では利便性と起点としての耐性に課題が認められ、弾性体にストッパーを取り付けて長さを調整する方式がもっとも好適であったが競技中にレシーブなどで膝を突いた際などに硬いストッパーが脛に当って怪我をするリスクが見つかった。
第6:履き物への連結法においては、例えば靴紐にフックを引っかけた場合はたるみで張力が十分に伝わらず靴の変形破損の要因に、また、靴に縫い付ける方法では張力が一点に集中して靴の損傷に繋がり、引っ張る方向が中心からずれて足首に捻れが生じれるなどの課題が見つかった。
【0004】
本発明は、従来の技術の課題を解消して福祉や医療などの福祉現場での歩行補助具に止まらず、バレーボールやバスケットなど激しい動きを伴う競技の怪我の予防及び、競技能力を向上させる運動補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の筒状のサポーターの前面の高い位置に上部が大きく下部が小さい開口部を設けたポケットを設け、プラスチックなどで脛に向かってカーブを描くように形成されたパッドに弾性体に取り付けたストッパーが、パッドの表面上部に位置するように構成された脛当てパッドを差し入れて締め付けベルトで補強して張力の起点とする事を特徴とする運動補助具を下腿に装着して、請求項2のプラスチックなどで十分な面積と耐性のあるプレートにリング状の引っかけ部分を設けた装具を、紐靴の間に差し入れる、あるいは、履き物に横の動きに若干の遊びを持たせたポケットを設ける等して差し込み、弾性体の先に取り付けたフック等に連結する。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、筒状のサポーター1の上部に大きめ、下部に小さめの開口部を持つポケット5を設ける事により装着する際には先にサポーターを履いてから脛当てパッド差し入れ、取り外す際にはパッドを抜き取ってから外す事が出来るので着脱が容易に行える。また、大きめの脛の形状にフィットするように脛の方向にカーブを描くように成形された脛当てパッド2がサポーター1とベルト4の圧迫により強固な摩擦力が生まれ、激しいスポーツ中でも弾性体6の張力に勝って下にずれ落ちない。弾性体にストッパーが付いているので長さが自在に変えられ、張力の調整の幅が大きくかつ容易に行え、ストッパーがパッドの表面に位置することで転んで膝を着いた際の怪我のリスクが軽減される。
靴への連結方法についてはプレート8の取り付けに横方向への可動域を持たせることで弾性体6の張力によってプレート8が自然に中央部分に位置するようにリセットされる。十分な面積のプレート8よって張力が一点に集中するのを防いで面で分散して支持することで靴の損傷を防ぎつつ、張力をしっかりと足関節に伝え、フック7への連結部9が角のないリングの形状であることで、フックが常に中央部に位置するように作用する。
【0007】
本発明は、このような構成であることから、脳血管の疾患による片麻痺性尖足の歩行補助具として従来にない安定した足関節の背屈保持力を発揮して歩行を楽にする。また、高齢化によって急増する脊柱管の狭窄などを起因とする躓き転倒のリスク軽減など福祉用具として有効である。
【0008】
本発明は福祉用具としてだけでなく、バスケットやバレーボール、テニスなど、走る、ジャンプ着地する、左右前後へのフットワークを行なう球技など複雑な動きを伴うあらゆるスポーツに於いて、常に弾性体の起点の中心に向かって足関節が捻れなく背屈するように作用するので、例えば、足関節の捻挫癖のある人や、座骨神経の圧迫や脳血管障害によって麻痺性尖足がある人が競技中に足首を内反、あるいは躓いて怪我をするリスクを軽減する。
【0009】
本発明は実施検証の結果により運動中の怪我の予防だけでなく、例えばバレーボールのアタックの際の踏み込みがスムーズに行えるなど、競技能力が高まる効果も認められた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】 サポーター様の装具を正面から見た図である。
【
図3】 靴への連結装具を靴の甲部にポケットを設けて取り付け上から見た図である。
【
図4】 これらの装具一式を下肢に装着して斜め横から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について発明が解決しようとする課題の項で列記した各課題に対する解決手段を示して解説する。課題の第1、第2、第3対しては、筒状のサポーター1にポケット5を設け、脛の形状にフィットするように脛の方向にカーブを描くように成形された脛当てパッド2を差し入れてサポーターとベルトで圧迫固定することで強固な摩擦力を生じさせ、通常の歩行だけでなく激しい運動でもずれない張力の起点を下腿の高い部分に位置させることを可能にした上で、履き物の弾性体の連結部を甲の爪先寄りに設けることで足関節が常に背屈位に保持される。
また、プレート8が靴紐の下や靴のポケット10に横方向への動きに遊びのある可動性を持たせたことで弾性体6の張力によってプレート8が自然に中央部分に位置するようにリセットされるので、複雑な動きの最中でも張力の方向が捻れなく真っ直ぐに作用する。
第4の課題に対してはポケット5の構成を上部に脛当てパッド2が差し込める大きめの開口部、下部に滑り落ちない為に小さめの開口部を設けた仕様にする事で、筒状のサポーター1を下腿に装着してから脛当てパッド2を差し入れる、また外す際には脛当てパッド2を抜き取ってから差し入れる手順で行なうことで解決した。
第5の課題に対しては、ストッパーを脛当てパッドの表面に位置するようにする事で、歩行中や競技中に膝を着いた場合でもパッドが緩衝材として働き怪我を免れる。
第6の課題に対しては、十分な面積のプレート8よって張力が一点に集中するのを防いで面で分散して支持することで靴の損傷を防ぎつつ、張力をしっかりと足関節に伝え、フック7への連結部9が角のないリングの形状であることで、フックが常に中央部に位置するように作用する
【符号の説明】
【0012】
1 サポーター
2 脛当てパッド
3 張力調整ストッパー
4 締め付けベルト
5 サポーター用ポケット
6 弾性連結体
7 フック
8 靴用プレート
9 連結リング
10靴用ポケット