(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】光学ビームディレクタ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20220818BHJP
G02B 3/06 20060101ALI20220818BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20220818BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B3/06
G02B5/08 A
G01S7/481 A
(21)【出願番号】P 2019525995
(86)(22)【出願日】2017-11-15
(86)【国際出願番号】 AU2017051255
(87)【国際公開番号】W WO2018090085
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-13
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518090546
【氏名又は名称】バラハ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】コラルテ ボンディー,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】プリッカセリル,シビー
(72)【発明者】
【氏名】ロディン,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】タバッキーニ,アンドレア
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0222574(US,A1)
【文献】米国特許第09103992(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0213877(US,A1)
【文献】特開2000-347065(JP,A)
【文献】米国特許第09435957(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0199621(US,A1)
【文献】特開2009-222616(JP,A)
【文献】特表2018-529955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 3/06
G02B 5/08 - 5/10
G02B26/08 -26/10
G01S 7/481
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を2次元にわたって差し向けるための光学システム
であって、
複数の波長
のうちの少なくとも1つを含む光を受け取り、前記複数の波長
を空間的に分散させるように配置された少なくとも1つの第1の分散素子
と、
前記複数の波長の全て
よりは少ない、前記複数の波長のうちの第1の複数
を有する第1の波長範囲を含む第1の光信号を、前記第1の分散素子
から受け取り、前記複数の波長のうちの前記第1の複数
を、機械的移動なしに空間的に差し向けることにより、第1の投射
を形成するように配置された第1のステアリング素子
と、
前記複数の波長の全て
よりは少なく、前記複数の波長のうちの前記第1の複数
とは異なる、前記複数の波長のうちの第2の複数
を有する第2の波長範囲を含む第2の光信号を、前記第1の分散素子
から受け取り、前記複数の波長のうちの第2の複数
を、機械的移動なしに空間的に差し向けることにより、第2の投射
を形成するように配置された第2のステアリング素子
と、
を含み、
前記第1の投射
及び前記第2の投射
は、結合して2次元にわたって広がり
、
前記第1の分散素子
は、光源光
を前記第1の光信号及び前記第2の光信号に分散させるように配置され、
前記光源光
は、前記第1の波長範囲及び前記第2の波長範囲を通して走査するように、調整によって配置されることにより、前記第1及び第2の光信号が、それぞれ、前記第1及び第2の投射
の方向にステアリングされる、
光学システム。
【請求項2】
前記第1の投射
及び前記第2の投射
は、第1の次元
の方向に相互に配置され、各々が、前記第1の次元
に対して直角の第2の次元
の方向に延びている、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記第1の投射
によって形成される第1の出力光及び前記第2の投射
によって形成される第2の出力光は、各々が線形であり、相互に平行である、請求項2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記第1及び第2のステアリング素子
は、第1の次元
に沿って置かれた第2の分散素子
であり、前記第1の投射
によって形成される第1の出力光及び前記第2の投射
によって形成される第2の出力光は、前記第1の次元
に対して斜方に整列している、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項5】
前記第1及び第2のステアリング素子
は、第1の次元
に沿って置かれた反射素子
であり、前記第1の投射
によって形成される第1の出力光及び前記第2の投射
によって形成される第2の出力光は、各々が前記第1の次元
に沿って延びており、前記第1の次元
に対して直角な第2の次元
の方向において、互いに間隔をあけて整列されている、請求項1に記載の光学システム。
【請求項6】
前記第1及び第2のステアリング素子
は、第1の次元
に沿って置かれた反射素子
であり、前記第1の投射
によって形成される第1の出力光及び前記第2の投射
によって形成される第2の出力光は、前記第1の次元
に直角な第2の次元
に沿って延びており、前記第1の次元の方向において、互いに間隔をあけて整列されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項7】
前記第1の分散素子
によって受け取られる前記光を生成するように配置された光源
を含み、前記光源
は、第1の期間中に、前記複数の波長のうちの前記第1の複数を生成し、前記複数の波長のうちの前記第2の複数
を生成せず、前記第1の期間とは異なる第2の期間中に、前記複数の波長のうちの前記第2の複数
を生成し、前記複数の波長のうちの前記第1の複数
を生成しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項8】
2次元にわたって光を差し向ける方法であって、
第1のステアリング素子
において、前記第1のステアリング素子
を横切って分布する第1の波長範囲
を含む第1の光信号を受け取るステップ、及び、前記第1のステアリング素子
により、前記第1の光信号を空間的に差し向けることにより、第1の投射
を形成するステップと、
第2のステアリング素子
において、前記第2のステアリング素子
を横切って分布する第2の波長範囲
を含み、前記第2の波長範囲
は前記第1の波長範囲
とは異なる、第2の光信号を受け取るステップ、及び、前記第2のステアリング素子
により、前記第2の光信号を空間的に差し向けることにより、第2の投射
を形成するステップと、
光源光
を、第1の分散素子
を通過させることによって前記第1の光信号及び前記第2の光信号を生成するステップと、
前記第1の波長範囲
及び前記第2の波長範囲
を通して走査するように前記光源光
を調整するステップと
を含み、
前記第1の投射
及び前記第2の投射
は、結合して2次元にわたって広がり
、
前記第1の分散素子
は前記光源光
を前記第1の光信号及び前記第2の光信号に分散させるように配置され、
前記第1及び第2の光信号が、それぞれ、前記第1及び第2の投射
の方向にステアリングされる
方法。
【請求項9】
前記第1のステアリング素子
及び前記第2のステアリング素子
は、各々、前記受け取った光を回折して、前記空間的な差し向けを生じさせる可変線間隔回折格子
か、あるいは、反射表面を含
み、前記反射表面の法線ベクトルが、前記空間的な差し向けを生じさせる
べく、前記反射表面の位置とともに変化する反射素子
か、である
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの
前記第1の分散素子
は、線形次元に沿って複数の波長を空間的に分散するように配置されている
請求項1に記載の光学システム。
【請求項11】
前記第1及び第2のステアリング素子
は、前記線形次元に沿って配置された反射素子
であり、前記反射素子は、前記反射素子のアレイを形成する
請求項10に記載の光学システム。
【請求項12】
前記第1及び第2のステアリング素子
は、前記線形次元に沿って配置され
た第2
の分散素子
であり、前記第2の分散素子は、前記第2の分散素子のアレイを形成する
請求項10に記載の光学システム。
【請求項13】
前記第1及び第2のステアリング素子
は、それぞれ、可変線間隔回折格子
を含み、前記可変線間隔回折格子
は、前記可変線間隔回折格子
に沿った異なる位置で、異なる格子周期を含む
請求項1に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、光学ビームを差し向けるためのシステム及び方法に関する。より具体的には、本開示は、2次元において光学ビームを差し向けるためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学ビーム差し向けは、光がマッピングの目的で或る環境内に送られるLiDAR(light detection and ranging:光検知測距)用途を含むがそれに限定されない幾つかの使用法を有する。3次元マッピングにおいて、次元のうちの1つは光学ビームの源からの或る点の範囲に関係し、他方、他の2つの次元は、光学ビームが横切ってステアリングされる2次元空間(例えば、デカルト座標(x,y)又は極座標(r,シータ))に関係する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の一態様により、2次元にわたって光を差し向けるための光学システムが提供され、その光は波長帯域内にグループ化される複数の波長チャネルのうちの選択された1つを含み、そのシステムは、
複数の波長チャネルのうちの選択された1つに基づく初期次元にわたる第1の方向のうちの1つに向けて光を差し向けるように配置された分散素子と、
差し向けられた光を受け取るために初期次元に沿って配置されたステアリング素子のアレイと、
を含み、ステアリング素子のアレイは、受け取った光を、初期次元に沿ったそれの位置に基づく第2の方向のうちの1つに向けてさらに差し向けるように構成され、第2の方向は、それぞれの波長帯域に基づくそれぞれの平面に沿って整列され、その平面は初期次元に関連付けられる第1の次元にわたって分布し、各々の平面は第1の次元に実質的に垂直な第2の次元を横切って延びる。
【0004】
本開示の別の態様により、2次元にわたって光を差し向ける方法が提供され、その光は波長帯域内にグループ化される複数の波長チャネルのうちの選択された1つを含み、その方法は、
分散素子を使用し、複数の波長チャネルのうちの選択された1つに基づく初期次元に沿って配置されたステアリング素子のアレイにおいて、初期次元にわたる第1の方向のうちの1つに向けて、光を差し向けるステップと、
差し向けられた光を、ステアリング素子のアレイを用いて、初期次元に沿った位置に基づく第2の方向のうちの1つに向けて、さらに差し向けるステップと、
を含み、第2の方向はそれぞれの波長帯域に基づくそれぞれの平面に沿って整列され、その平面は、初期次元に関連付けられる第1の次元にわたって分布し、各々の平面は第1の次元に実質的に垂直な第2の次元を横切って延びる。
【0005】
本開示の別の態様により、2次元にわたって光を差し向けるための光学システムが提供され、この光学システムは、
複数の波長のうちの少なくとも1つを含む光を受け取り、複数の波長を空間的に分散させるように配置された少なくとも1つの分散素子と、
複数の波長の全てよりは少ない、複数の波長のうちの第1の複数を、分散素子から受け取り、複数の波長のうちの第1の複数を、第1の投射を横切って空間的に差し向けるように配置された第1のステアリング素子と、
複数の波長の全てよりは少なく、複数の波長のうちの第1の複数とは異なる、複数の波長のうちの第2の複数を、分散素子から受け取り、複数の波長のうちの第2の複数を、第2の投射を横切って空間的に差し向けるように配置された第2のステアリング素子と、
を含み、
第1の投射及び第2の投射は、結合して2次元にわたって広がる。
【0006】
本開示の別の態様により、2次元にわたって光を差し向ける方法が提供され、この方法は、
第1のステアリング素子において、第1の範囲の波長を含む第1の光信号を受け取るステップ、及び、第1のステアリング素子により、第1の光信号を第1の投射を横切って空間的に差し向けるステップと、
第2のステアリング素子において、第1の範囲の波長とは異なる第2の範囲の波長を含む第2の光信号を受け取るステップ、及び、第2のステアリング素子により、第2の光信号を、第2の投射を横切って空間的に差し向けるステップと、
を含み、
第1の投射及び第2の投射は、結合して2次元にわたって広がる。
【0007】
本開示のさらに別の態様、及び上記のパラグラフにおいて説明された態様のさらに別の実施形態が、例として与えられる以下の説明及び添付の図面を参照することにより明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】環境を空間的にプロファイルするためのモジュールを示す。
【
図2】光学ビームを差し向けるためのシステムの配置を概略的に示す。
【
図3】
図3A及び3Bは、光学ビームディレクタの配置、及び掃引される波長チャネルにわたる光学ビームの空間的分布を概略的に示す。
【
図4】
図4A及び4Bは、光学ビームディレクタの別の配置、及び掃引される波長チャネルにわたる光学ビームの空間的分布を概略的に示す。
【
図5】
図5A及び5Bは、光学ビームディレクタのさらに別の配置、及び掃引される波長チャネルにわたる光学ビームの空間的分布を概略的に示す。
【
図6】
図6A及び6Bは、光学ビームディレクタのさらに別の配置、及び掃引される波長チャネルにわたる光学ビームの空間的分布を概略的に示す。
【
図7】
図7A及び7Bは、光学ビームディレクタのさらに別の配置、及び掃引される波長チャネルにわたる光学ビームの空間的分布を概略的に示す。
【
図8】光学ビームを差し向けるためのシステムの配置を概略的に示す。
【
図9】
図9A及び9Bは、可変線間隔回折格子の異なる配置を示す。
【
図10A】第2の分散素子のアレイの別の配置を示す。
【
図10B】第2の分散素子のアレイの別の配置を示す。
【
図10C】第2の分散素子のアレイのさらに別の配置を示す。
【
図11】
図8のシステムの遮られた出力の像を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で説明されるのは、2次元にわたって光を差し向けるための光学システムである。説明されるシステムは、1つ又はそれ以上の選択された波長チャネルに基づき、且つ機械的に動く部分なしに、光をステアリングすることができる。本明細書における説明は、単一の選択された波長チャネルに焦点を合わせる(例えば、単一の波長可変光源を使用する)が、当然のことながら、些細な修正により、複数の選択された波長チャネルにも当てはまる(例えば、多色光源を用いて又は複数の単一波長可変光源を組み合わせて)。走査速度によるステアリング性、方向安定性及び空間的解像度は、それ故に、それぞれ、波長調整速度、波長安定性及び波長解像度に依存する。説明されるシステムは、その静的特性のために、機械的性能に対する依存性を減らす点、例えば、機械的故障又は機械的疲労の発生又は影響を減らす点で有用であり得る。
【0010】
説明されるシステムは、例えば、環境の空間的プロファイルを推定するための空間的プロファイリング配置において、ビームディレクタを使用することができる。ビーム差し向けの他の例示的な用途は、分光法、光学的通視線通信、製造ラインについての2D走査、プロジェクタ、2Dプリンタ、適応性照明などを含む。以下の説明は、空間的プロファイル推定に焦点を合わせるが、当業者であれば、その説明は、些細な修正により、他のビーム差し向け用途にも適用可能であることを認識するであろう。
【0011】
図1は、空間的プロファイリング配置100の一例を示す。配置100Aは、光源102、ビームディレクタ103、受光器104及び処理ユニット105を含む。
図1の配置において、光源102からの出射光は、ビームディレクタ103により、2次元の方向において、空間的プロファイルを有する環境110に差し向けられる。出射光が物体又は反射表面に当たる場合、出射光の少なくとも一部は、物体又は反射表面により、反射(実線矢印で表される)、例えば、散乱されてビームディレクタ103に戻り、受光器104で受け取られることができる。処理ユニット105は、光源102に動作可能に結合されてその動作を制御する。処理ユニット105は、反射表面までの距離を、反射光が進む往復距離を決定することによって決定するために、受光器104にも動作可能に結合される。
【0012】
光源102、ビームディレクタ103、受光器104は、自由空間光通信、及び/又は光ファイバなどの光学導波路、或いは、2D又は3D導波路の形態の光学回路を介して互いに光学的に結合することができる。光源102からの出射光は、環境内に差し向けるためのビームディレクタ103に与えられる。ビームディレクタ103によって集められるいずれの反射光も受光器104に差し向けることができる。一例において、光源102からの光は、光学的処理の目的で、光源102から受光器104への直接光路(図示せず)を介して、受光器104にも与えられる。例えば、光源102からの光は、最初にサンプラ(例えば、90/10光ファイバカップラ)に入ることができ、この場合、光の大部分(例えば、90%)がビームディレクタ103に与えられ、残りの光のサンプル部分(例えば、10%)が、直接光路を介して受光器104に与えられる。別の例において、光源102からの光は、最初に、光学スイッチの入口ポートに入り、そして2つの出口ポートのうちの1つから出ることができ、この場合、1つの出口ポートが光をビームディレクタ103に差し向け、もう1つの出口ポートは、処理ユニット105によって決定された時間に、光を受光器104に差し向け直す。
【0013】
光源102からの光は、M個の波長帯域にグループ化されるN個の波長チャネルのうちの選択された1つを含む。光源102は、波長可変レーザとすることができ、電子制御信号を介して所望の波長チャネルの選択を可能にする。M個の波長帯域は、連続する波長チャネルを含むことができる。例えば、N個の波長チャネルは、それらの中心波長λ1、λ2、...λNによって指定され、M個の波長帯域は、{λ1、λ2、...λk}、{λk+1、λk+2、...λ2k}、...{λN-k+1、λN-k+2、...λN}であり、ここでk=N/Mである。
【0014】
第1の配置
図2を参照すると、説明されるシステム203は、
図1内のビームディレクタ103の役割を果たす。説明されるシステム203は、光源102からの光201を初期次元(線形又は非線形次元とすることができる)にわたって差し向けるように配置された分散素子202を含む。分散素子202は、1つ若しくはそれ以上の回折格子及び/又は1つ若しくはそれ以上のプリズムとすることができる。
図2に描かれた初期次元は、光路210a(例えば、波長チャネルλ
1に対応する)と光路210b(例えば、波長チャネルλ
Nに対応する)との間の連続面のように見えるが、システム203は、実際には、一般的に複数の波長チャネルのうちの選択された1つに基づく任意の時間に、波長チャネルλ
1、λ
2、...λ
Nのうちの選択された1つを受け取る。
【0015】
説明されるシステム203は、差し向けられた光210を受け取るための、初期次元に沿って配置された反射素子(
図2には集合的に204と符号付けされている)のアレイを含む。説明のために、説明されるシステム203の部分ではないスクリーン208が、
図2に、選択された波長がλ
1とλ
Nとの間で掃引されるとき、差し向けられた光学ビーム212の空間分布を示すように、描かれる。
図2に描かれているように、反射素子204が単一の平面鏡の形態をとる場合、差し向けられた光210の光路210aは、反射光212の光路212bに沿って反射される。同様に、差し向けられた光210の光路210bは、反射光212の光路212aに沿って反射される。単一の平面鏡の場合、像206は連続線の形となる。再び、システム203は、実際には、一般に、任意の時間に、波長チャネルλ
1、λ
2、...λ
Nのうちの選択された1つを受け取るので、像206は、実際には、説明のために
図2に描かれているような連続線ではなく、点を形成する。差し向けられた光学ビーム206の空間的分布は、分散素子202によって生じる初期次元に関連付けられる第1の次元214に沿う。差し向けられた光学ビーム206は、第1の次元214に実質的に直交する第2の次元216に沿って分布しない。
【0016】
図3~7は、反射素子の種々のアレイを採用することの結果を示す。
図3A及び3Bは、比較のために
図2の単一の平面鏡の場合を再現する。反射素子204が単一の平面鏡304である場合、選択された波長がλ
1とλ
Nとの間で掃引される場合には像206は連続線306の形になる。差し向けられた光学ビーム212の空間的分布は、分散素子202によって生じる初期次元に関連付けられる、第1の次元214に沿う。差し向けられた光学ビーム206は、第2の次元216に沿って分布しない。
【0017】
図4A及び4Bは、反射素子204が、各々、隣接する鏡から小さい間隔で分離された、単一平面鏡404のアレイである場合を表す。像206は、選択された波長がλ
1とλ
Nとの間で掃引される場合、破線406の形になる。破線の各々の破れた部分は、波長チャネル(例えば、{λ
1、λ
2、...λ
k}、{λ
k+1、λ
k+2、...λ
2k}、...又は{λ
N-k+1、λ
N-k+2、...λ
N})の帯域を横切る波長掃引を表す。この場合、差し向けられた光学ビーム212の空間的分布は、やはり、分散素子202によって生じる初期次元に関連付けられる第1の次元214に沿う。差し向けられた光学ビーム206は、第2の次元216に沿って分布しない。
【0018】
図5A及び5Bは、反射素子204が平面鏡504のアレイである場合の、説明されるシステム203の配置を表し、各々の平面鏡は、隣接する鏡から小さい間隔で分離され、平面鏡の各々を通る第1の次元214に沿って延びる直線軸502の周りで互いに傾けられるか、或いは角度オフセットされる。像206は、選択された波長がλ
1とλ
Nとの間で掃引される場合、段のある線506の形になる。各々の段は、波長チャネル(例えば、{λ
1、λ
2、...λ
k}、{λ
k+1、λ
k+2、...λ
2k}、...又は{λ
N-k+1、λ
N-k+2、...λ
N})の帯域を横切る波長掃引を表す。角度オフセットの効果は、受け取った光212を、第2の次元216にわたって分布する種々の実質的に平坦な表面(又は本明細書においては「平面」)に向けて反射することであり、この場合、各々の平面は第1の次元214を横切って延びる。差し向けられた光学ビーム206は、第1の次元214及び第2の次元216の両方に沿って分布する。しかし、異なる平面の広がりは第1の次元214内では重ならない。図示されていないが、軸502に直交し、第2の次元216に沿って延びる軸の周りで、平面鏡504が互いにさらに傾けられるか、或いはさらに角度オフセットされる場合には、異なる平面を少なくとも部分的に重なるように構成することができる。この直交する傾きの、像206に対する効果は、段のある線506を第1の次元214に沿って移動させることである。各々の平面鏡504の適切な量の直交する傾きは、段のある線を、互いに十分に重なって2次元ステアリンググリッドを形成するように、移動させることになろう。
【0019】
図6A及び6Bは、反射素子204が発散鏡504(例えば、反射型シリンダ又は凸表面の形態におけるような)のアレイである場合の、説明されるシステム203の配置を表し、各々の発散鏡は、隣接する鏡から小さい間隔で分離され、発散鏡の各々の中心を通る直線軸602の周りで、互いに傾けられるか又は角度オフセットされる。像206は、選択された波長がλ
1とλ
Nとの間で掃引される場合、段のある線606の形になる。各々の段は、波長チャネル(例えば、{λ
1、λ
2、...λ
k}、{λ
k+1、λ
k+2、...λ
2k}、...又は{λ
N-k+1、λ
N-k+2、...λ
N})の帯域を横切る波長掃引を表す。
図5A及び5Bに示される場合のように、角度オフセットの効果は、受け取った光212を第2の次元216にわたって分布する種々の平面に向けて反射することであり、この場合、各々の平面は第1の次元214を横切って延びる。発散鏡の使用は、第1の次元214における各々の平面の広がりを拡張するためであり、これは、異なる曲率の発散鏡を使用することによって制御することができる。一般に、発散鏡のより大きい曲率が、第1の次元214に沿って広がる平面のより大きな広がりをもたらす。差し向けられた光学ビーム206は、第1の次元214及び第2の次元216の両方に沿って分布する。
【0020】
図7A及び7Bは、反射素子204が発散鏡704(例えば、反射型シリンダ又は凸表面の形態におけるような)のアレイである場合の、説明されるシステム203の配置を表し、各々の発散鏡は、隣接する鏡から小さい間隔で分離され、互いに傾けられるか或いは角度オフセットされ、反射素子の各々を通る湾曲軸702の周りに配置される。像206は、選択された波長がλ
1とλ
Nとの間で掃引される場合、積層線706の形になる。各々の積層は、波長チャネル(例えば、{λ
1、λ
2、...λ
k}、{λ
k+1、λ
k+2、...λ
2k}、...又は{λ
N-k+1、λ
N-k+2、...λ
N})の帯域を横切る波長掃引を表す。
図5A及び5Bに示される場合のように、角度オフセットの効果は、受け取った光212を第2の次元216にわたって分布する種々の平面に向けて反射することであり、この場合、各々の平面は第1の次元214を横切って延びる。角度オフセットは、積層の間隔を調節するように調整することができる。発散鏡の使用は、第1の次元214における各々の平面の広がりを拡張するためであり、これは、異なる曲率の発散鏡を使用することによって制御することができる。一般に、発散鏡のより大きい曲率が、第1の次元214に沿って広がる平面のより大きな広がりをもたらす。一配置において、湾曲軸702は、それぞれの平面を横切る第1の次元214の広がりを均等にするか又は整列させるように、初期次元内の湾曲経路に従う。別の配置において、湾曲軸は放物線状にすることができる。湾曲軸702の曲率は、それぞれの平面を横切る範囲を調節するように調整することができる。差し向けられた光学ビーム206は、第1の次元214及び第2の次元216の両方に沿って分布する。
【0021】
図7Aの配置を用いて、説明されるシステム203は、出射光を、2つの次元214及び216の中の複数の方向(106a、106b、106c...)のうちの1つにおいて、環境110中に空間的に差し向けるように構成することができる。出射光が差し向けられる方向は、複数の波長チャネル(λ
1、λ
2...λ
Nに中心を有する)の選択された1つに、対応するか、又は基づく。
【0022】
例
一構成において、複数のスペクトル成分を有するか又は可変波長を有する(例えば、可変波長レーザのCバンド 43nm調整範囲)光源が、波長チャネルの選択を1次元角度分散に変換する回折素子、例えばプリズム又は複合プリズムなどの上に又はそれを通して入射する。この構成において、0.25°/nmの角度分散をもたらすプリズムは、43nmスペクトル範囲を10°の角度分離に変換する。この構成は、角度分散された光を拡大するための拡大望遠鏡(例えば、15X)又は凸面鏡(例えば、半円の)を含む。15Xの拡大望遠鏡を用いると、角度分散は約150°に拡大される。角度拡大器の出力は、凹面鏡の曲率中心に置かれ、出力光が凸面鏡の半径に沿って差し向けられるように配置される。この場合、入射光線は、鏡面に入射することになる際に、伝搬方向が鏡面に垂直であるので、同じであるが反対の方向に沿って反射されることになろう。
【0023】
この構成において、凸面鏡の半径が0.05mと仮定すると、入射光によって照射される150°をカバーする弧は0.13m=(0.05×π×150°/180°)となる。一例において、この0.13mの弧は、50個の小部分に分割され、これらの各々は、半径0.0013mの半円凸面鏡を置くように構成される。50個の凸半円の各々への入射光は3°の角度(即ち、150°/50)に対することになるが、小さい半円は、各々の小部分の反射された光が、3°×38.19=114.59°の角度分散を有することになるように角度拡大効果を有することになり、この場合、38.19×の拡大は、半径の比から生じる(即ち、0.05/0.0013=38.19×)。
【0024】
次に、この構成は
図7Aに従って配置することができる。これらの小さい凸半円の各々は、環状部分から構築される。各々の環状部分をZ軸内で前の部分に対して+0.5°傾けることにより、各々の反射光が異なるz軸角度分散(0.5°の増分による)に投射される。この反射光は波長チャネルに基づいて2D像を生成する。この例において、2D像は、0.5°の解像度及び25°(50×0.5°)の垂直視野による、縦の50本の線を含む。水平方向では、この例示的な構成は、光源の波長の最小変化によって制限される解像度で、114.59°をカバーする。
【0025】
前述に基づいて、光を2次元にわたって差し向けるための光学システムが提供される。その光は、波長帯域にグループ化される複数の波長チャネルのうちの選択された1つを含む。そのシステムは、複数の波長チャネルのうちの選択された1つに基づく初期次元にわたって、光を差し向けるように配置された分散素子と、差し向けられた光を受け取るように、初期次元に沿って配置された反射素子のアレイとを含み、その反射素子は、受け取った光を、それぞれの波長帯域に基づくそれぞれの平面に向けて、反射するように配置され、各々それぞれの平面は、初期次元に関連付けられる第1の次元を横切って延び、それぞれの平面は、第1の次元に実質的に垂直な第2の次元にわたって分布する。
【0026】
光を2次元にわたって差し向ける、対応する方法も提供される。その方法は、光を、分散素子を用いて、複数の波長チャネルのうちの選択された1つに基づく初期次元に沿って配置された反射素子のアレイに、初期次元にわたって差し向けるステップと、この差し向けられた光を、反射素子のアレイを用いて、それぞれの波長帯域に基づくそれぞれの平面に向けて、反射するステップと、を含み、各々それぞれの平面は初期次元に関連付けられる第1の次元を横切って延び、それぞれの平面は、第1の次元に実質的に垂直な第2の次元にわたって分布する。
【0027】
第2の配置
図8を参照すると、説明されるシステム803は、
図1におけるビームディレクタ103の役割を果たす。説明されるシステム803は、光源102からの光801を初期次元にわたる第1の方向のうちの1つに向けて(例えば、
図8のx軸に沿って)差し向けるように配置された、第1の分散素子を含む。第1の方向の各々は、差し向けられた光810の可能な光路に対応し、次いで、波長チャネルに対応する。例えば、
図8に示すように、光路810aは波長チャネルλ
1に対応し、光路810bは波長チャネルλ
Nに対応する。第1の方向の幾つかが、
図8に、開いた三角形811a及び811bとして表されている。第1の分散素子802は、1つ若しくはそれ以上の回折格子及び/又は1つ若しくはそれ以上のプリズムとすることができる。差し向けられた光810の角度広がりは、波長チャネルの範囲及び分散素子802の分散特性に依存する。説明のための1つの非限定的な例において、光源102は、遠距離通信グレードのレーザを含むことができる。遠距離通信グレードのレーザは、最大40nmまで、例えば、凡そ1527nmから凡そ1567nmまでの、波長調整範囲を有することができる。分散素子802は、均一な線間隔を有する回折格子(透過型回折格子など)を含むことができる。一変形において、回折格子は1000線/mm~1100線/mmの間の格子周期を有することができ、凡そ5~10度の角度広がりを容易にする。別の変形において、回折格子は約600線/mmの格子周期を有することができる。
【0028】
説明されるシステム803は、差し向けられた光810を受け取るための初期次元に沿って配置された第2の分散素子804?1...804-M(集合的に804として言及される)のアレイをさらに含む。この例においては、M個の波長帯域に対応するM個の第2の分散素子が存在する。第2の分散素子のアレイは、受け取った光を第2の方向のうちの1つに向けてさらに差し向けるように構成される。幾つかの、しかし全てではない第2の方向が、
図8に、閉じた三角形813a、813b、813c及び813dとして表されている。
図8に示すように、第2の方向は、それぞれの波長帯域に基づくそれぞれの実質的に平坦な表面(又は、本明細書では「平面」)に沿って整列される。例えば、分散素子804-1に向けて差し向けられた、波長チャネル{λ
1、λ
2、...λ
k}における光は、アレイ804(特に分散素子804-1)により、M個の波長帯域のうちの第1のものに対応する最左端の平面812-1に沿って並べられた方向に向けてさらに差し向けられる。同様に、図示されていないが、分散素子804‐2に向けて差し向けられた、波長チャネル{λ
k+1、λ
k+2...λ
2k}における光は、アレイ804(特に分散素子804-2)により、M個の波長帯域のうちの第2のものに対応する平面に沿って整列された方向に向けて、さらに差し向けられる、などであり、分散素子804-Mに向けて差し向けられた波長チャネル{λ
N-k+1、λ
N-k+2、...λ
N}における光は、アレイ804(特に分散素子804-M)により、M個の波長帯域のうちのM番目に対応する最右端の平面812-Mに沿って整列された方向に向けて差し向けられる。
【0029】
実際には、システム803は、出力ビームとして差し向けられる光の平面を生じない。むしろ、各々が対応する中心波長に関連付けられる、光の1つ又は少数のビームが、常時、出力ビームとして差し向けられる。
図8における平面の図は、説明のためだけに描かれている。即ち、
図8に描かれた差し向けられた光810は、光路810a(例えば、波長チャネルλ
1に対応する)と光路810b(例えば、波長チャネルλ
Nに対応する)との間の初期次元内の連続的な平面のように見え、他方、
図8に描かれた別の差し向けられた光812は、連続的平面812-1、...812-Mのように見えるが、システム803は一般に、常時、波長チャネルλ
1、λ
2...λ
Nのうちの選択された1つを受け入れる。代替的に、
図8における平面の図は、λ
1からλ
Nまでの迅速な波長走査を捉えるように見ることができる。
【0030】
さらに、システム803は単一の選択された波長チャネルを用いて説明されているが、当業者であれば、システムは、波長チャネルのうちの少数の選択されたものを同時に又はほぼ同時に受け入れるように適合させることができることを認識するであろう。一例において、光源102は、各々が異なる波長を放射するように調整された複数の波長可変レーザを含む。
【0031】
説明のために、説明されるシステム803の一部ではないスクリーン808が、選択された波長がλ
1とλ
Nとの間で掃引されるとき、出力光学ビーム812の空間的分布1000(
図10及び以下の説明を参照されたい)を描くために
図8に描かれている。第2の分散素子804のアレイは、各々、受け取った光を、個々の第2の分散素子804内に光が入射する位置に応じて、第2の方向のうちの1つに向けて差し向けるように構成される。別々の分散素子804を有するアレイが、説明のために、
図8に描かれている。分散素子804は、図示されているように線による間隔で分離されても分離されなくても良い。
【0032】
一配置において、第2の分散素子804のアレイは、各々、受け取った光を第2の次元を横切って回折するように、可変線間隔回折格子(例えば、透過型の)を含む。可変線間隔回折格子は、可変線間隔回折格子上の初期次元に沿った(例えば、x軸に沿った)位置群に基づく、複数の格子周期を含む。一配置において、可変線間隔回折格子904aは、第1の端部において、より短い格子周期908を有し、第2の反対側の端部において、より長い格子周期910を有する。格子周期は第1の端部から第2の端部まで増加することができる。一配置において、複数の格子周期における変化は、第2の分散素子のアレイ804を横切って実質的に繰り返す。換言すれば、格子周期は、第2の分散素子の各々の第1の端部から第2の端部まで増加することができる。
【0033】
図9A及び9Bは、可変線間隔回折格子の2つの配置を示す。
図9Aの配置において、格子周期は第1の端部から第2の端部(例えば、間隔1060線/mmを有する)まで連続的に変化する。複数の格子周期の連続的な変化は、滑らかな格子線906aに現れる。この配置の一例において、第1の端部における線間隔908は800線/mmであり、他方、第2の端部における線間隔910は1050線/mmである。波長の変化がない場合にも、線間隔のそのような範囲は凡そ30~35度のビーム発散を引き起こすのに十分である。他の線間隔を使用することもできる。アレイは40mmの長さにすることができる。この例において、各々の可変線間隔回折格子の幅(即ち、第1の端部から第2の端部までの距離)は1mmとすることができ、それによりアレイ804内の約40個の分散素子が可能になる。
【0034】
回折格子の長さを20mmとすることができ、それにより凡そ少なくとも18,000本の格子線が可能になる。
図9Bの配置において、格子周期は第1の端部から第2の端部まで不連続に変化する。複数の格子周期の不連続な変化は、段のある格子線906bに現れる。説明のためだけに、x軸に沿った段はy軸に沿った線で繋がれているが、実際にはy軸に沿った格子線はなくても良いことに留意されたい。
【0035】
図9Aに示したような、連続的可変の線間隔回折格子を使用する場合、システム903は、初期次元内に、可変線間隔回折格子で受け取られた光を閉じ込める(例えば、収束させる)収束素子(図示せず)をさらに含むことができる。収束作用は、光学ビームの空間的広がりを、初期次元に沿って十分に小さく保ち、凡そ均一に間隔をあけられた格子を基本的に見る又は照射することを目標とする。一例において、収束素子は初期次元内で(即ち、x軸に沿って)湾曲した円筒型レンズである。光が、可変線間隔回折格子において受け取られるとき、収束素子によって収束され、閉じ込められた後、可変線間隔回折格子から出る光は発散する可能性があり、コリメーションを必要とする。一配置において、システム803は収束された光をコリメートするためのコリメート素子を含む。システム803は、コリメートされた光を整形し、差し向け、フィルタするか又は影響を及ぼすための別の光学素子含むことができるが、コリメートされた光は、最後に、環境110に差し向けられる。
【0036】
代替的配置において、第2の分散素子は各々、
図9A又は9Bの可変線間隔回折格子として機能する、位置依存反射素子を含むことができる。第1の構成において、
図9Bの不連続可変線間隔回折格子に類似して、各々の分散素子804-Xは一組の反射素子(例えば、平面鏡又はMEM)を含み、各々の反射素子は、初期次元に沿って位置決めされ、光を第2の方向のそれぞれ1つに反射するように配置される。例えば、この代替的配置をもたらすために、受け取られた光によって局所均一な格子周期を有するように見られる
図9Bにおける不連続可変線間隔回折格子の各部分を、第1の分散素子から、平面812-1、812-2...812-Mの中の対応する平面に沿って整列されたそれぞれの方向に、光を反射するように角度を調整された平面鏡で置き換えることができ、ここで、それぞれの方向は、初期次元に沿ったそれぞれの平面鏡の位置に関連付けられる。第2の構成において、
図9Aの連続可変線間隔回折格子に類似して、第1の構成の一組の反射素子を、湾曲した反射表面として一体的に形成することができる。換言すれば、この代替的配置の両方の構成は、可変線間隔回折格子のそれぞれの部分として、同じ差し向け効果を達成する。厳密に言えば、この代替的配置における反射素子だけが、波長に基づいて光を差し向けるのではないが、それらは、第1の分散素子による初期分散の集合的効果及び反射の空間依存角度に基づく、第2の分散素子の全体的な分散効果を達成する。換言すれば、反射素子のアレイがそれら自体で分散的ではない場合にも、各々、異なる波長チャネルを受け取り、受け取った光を異なるように反射するように角度を付けられた反射素子は、反射素子が波長対応可能なステアリングをもたらすので、第2の分散素子の機能を達成すると考えられる。
【0037】
図10Aは、そのような代替的配置の第2の構成1000Aを示す。構成1000Aは、各々、湾曲した反射表面1006を含む、第2の分散素子(この図においては、1004-1、1004-2、...1004-11)のアレイ1004を含む。
図10Bに概略的に描かれるように、各々の第2の分散素子(例えば、1004-1)の湾曲した反射表面1006は、x-y面内で、x軸に平行な軸1008の周りに平坦な表面1006Aを「ねじる」ことによって形成されると理解することができる。例えば、
図10B(a)及び(b)を参照すると、平坦な反射表面1006Aから開始し、素子1004-1の第1の端部1010を、軸1008の周りに、一方向に(例えば、時計回りに)変形可能に回転させ、他方、素子1004-1の第2の反対側の端部1012を、軸1008の周りに、反対の方向に(例えば、反時計回りに)変形可能に回転させる。実際には、湾曲表面1006の形成は変形による必要はなく、例えば、高精度ミリングとそれに続く表面研磨及び被覆(例えば、金を用いた)によることができる。
【0038】
結果として得られる表面輪郭を破線で示す
図10B(c)を参照すると、第1の分散素子802によって差し向けられ、第1の端部1010の近くに入射する光(
図10B(c)におけるλ
1)は、1つのy方向(例えば、正のy方向)に向けて反射され、他方、第1の分散素子802によって差し向けられ、第2の端部1012の近くに入射する光(
図10Bにおけるλ
k)は、異なるy方向(例えば、負のy方向)に向けて反射される。換言すれば、反射表面の法線ベクトルは、x軸に沿った位置に基づいて変化する。法線ベクトルの変化は連続的とするか、又は位置と共に不連続とすることができる。x軸に沿って位置決めされた、各々の付加的な第2の分散素子1004-Xは、第1及び第2の端部と同様に、反対方向に「ねじられる」ように構成され、波長が変化する際にラスタービームのステアリングを容易にする。例えば、光が波長帯域λ
1~λ
k内で波長を変化させる際(即ち、1つの第2の分散素子を横切って入射するとき)光は正のy方向から負のy方向まで掃引され、光が波長を次の波長帯域λ
k+1~λ
2kに変化させる際(即ち、次の第2の分散素子に入射するとき)x軸に沿って段を付けられる、などである。前述のように、一構成において、各々の第2の分散素子1004-Xの湾曲表面1006は、各々が、例えば、正のy方向から負のy方向まで光を反射するように、徐々に増加する角度を付けられた一組の平坦な反射素子によって代替的に形成することができる。
【0039】
図10Aの配置1000Aには、隣接する分散素子1004-Xの間の境界に急な段が存在する。ここで、急な段は、x-y平面に直行し、隣接する分散素子1004-Xの湾曲表面1006に隣接する隣接表面1014を含む。
図10Cに示される代替的な配置1000Cにおいて、急な段は、x方向にジグザグ様式で現れる。ここで、隣接表面1014Cは、入射光を受け取る湾曲表面1006Cの鏡像である。配置1000Cの上端部1018及び下端部1020に沿ったジグザグパターンは、互いの反転バージョンである。
図11は、出射光を遮るように、システム803の出力部に置かれたスクリーン808の像1100を概略的に示す。
図11の各々の点は、波長チャネルλ
1、λ
2、...λ
Nのうちの選択された1つを表す。各々の点は、実際には、選択された波長チャネルに基づいて、自然に現れるが、説明のために
図11には全ての点が、それらが同時に捕捉できるかのように、描かれていることに留意されたい。像1100は、光出力のM個のグループ(1102-1、1102-2...1102-M)を含む。光出力のM個のグループは、M個の第2の分散素子(804-1...M)、M個の波長帯域及びM個の平面(812-1...M)に対応する。これらの平面は第1の次元にわたって分布し、各々は、第1の次元に実質的に垂直な第2の次元を横切って延びる。第1の次元は、必ずしも正確に初期次元(即ち、
図8におけるx軸)と一致する必要はなく、第2の次元は、必ずしも正確に初期次元に直交する次元(即ち、
図8におけるy軸)と一致する必要はない。
図11に示されるように、光出力の各々のグループは、y軸から小さい角度で傾けられるように表されている。小さい角度の傾きは、第1の分散素子202によって生成される小さい波長依存分散から生じ、第2の次元の中に位置依存分散をもたらすために各々の第2の分散素子の初期次元に沿った種々異なる位置を照射するのに必要である。この傾きは、実際には、些細なものであり、及び/又は、例えば、平面812-1、812-2...812-Mが、物理的な世界フレーム内の真の垂直軸(即ち、経線)に整列するように、取り付け角度を物理的に調節することによって、容易に補正若しくは適合される。
【0040】
図8の配置を用いると、説明されるシステム803は、出射光を、環境110内への2次元814及び816における複数の方向(106a、106b、106c...)のうちの1つの中へ、空間的に差し向けるように構成することができる。出射光が差し向けられる方向は、複数の波長チャネル(λ
1、λ
2、...λ
Nに中心を有する)のうちの選択された1つに対応するか、又はそれに基づく。
【0041】
一般的配置
上記の開示は、光の波長依存の2次元ステアリングを容易にするための、1つ又はそれ以上の反射、屈折及び回折素子を含む配置を説明する。より一般的には、ステアリングは、複数の波長チャネルのうちの選択された1つに基づく1次元に沿った種々異なる位置に光を差し向け、さらに、種々異なる位置に基づく別の次元に沿った種々異なる方向に、光をステアリングするための1つ又はそれ以上のステアリング素子を用いて、光を差し向けることによって達成され得る。波長依存の方向は、例えば、1つ又はそれ以上のプリズム、1つ又はそれ以上の回折格子及び1つ又はそれ以上のグリズムの任意の組み合わせなどの分散素子を用いて達成することができる。ステアリング素子は、位置依存方向性影響を、例えば、反射、屈折又は回折を介して、光に及ぼす。例えば、
図7A及び7Bの配置において、ステアリング素子は、その法線ベクトルが位置と共に変化する、凸型反射表面のアレイである。別の例として、
図9A及び9Bの配置において、ステアリング素子は、その格子周期が位置と共に変化する、可変線間隔回折格子のアレイである。さらに別の例として、
図10A及び10Bの配置において、ステアリング素子は、その法線ベクトルが位置と共に変化する、湾曲した又は「ねじられた」反射表面のアレイである。
【0042】
当業者であれば、反射、屈折及び回折素子のいずれも、位置依存方向性影響を及ぼすための他の2つの素子のいずれか又は両方に基づく類似の相当物を有することが多いことを認識するであろう。例えば、凹面(凸面)鏡及び凸(凹)レンズは、収束(収束ぼかし)素子の反射-屈折相当物であり、前者は反射モードで使用され、後者は透過モードで使用される。一例として、
図7A及び7Bの配置において、凸型反射表面のアレイは、ステアリング素子としての凹レンズのアレイで置き換えることができる。既に上述した別の例として、
図9A及び9Bの配置における可変線間隔回折格子は、ステアリング素子としての
図10A及び10Bの湾曲した又は「ねじられた」反射表面のアレイによって置き換えることができる。従って、ステアリング素子は、1つ又はそれ以上の反射、屈折又は回折素子の形態にすることができる。1つのタイプの素子の説明は、鏡の修正物により、別のタイプの素子にも当てはまり得る。
【0043】
次に、本開示のその配置を説明するが、当業者には、説明する配置のうちの少なくとも1つは、以下の利点を有することが明白であろう:
・ 波長依存のビームディレクタの使用は、ビームの再差し向けの速度を改善するための慣性無しに又はほとんど無しに、出射光を波長に基づく方向に差し向ける。
・ 一次元における指向性ステアリングに現れる波長可変性は、1つ又はそれ以上の反射、屈折及び回折素子などの多数の類似のステアリング素子を用いで2次元に変換することができる。
【0044】
この明細書において開示され定められる本開示は、本文又は図面により言及された又は明白な2つ又はそれ以上の個々の特徴の全ての代替的組み合わせに及ぶことを理解されたい。これらの種々異なる組み合わせの全ては、本開示の種々の代替的態様を構成する。例えば、以下の記述による開示が提供される。
【0045】
i. 2次元にわたって光を差し向けるための光学システムであって、その光は、波長帯域にグループ化される複数の波長チャネルのうちの選択された1つを含み、そのシステムは、
光を、複数の波長チャネルのうちの選択された1つに基づく初期次元にわたって、差し向けるように配置された分散素子と、
差し向けられた光を受け取るように初期次元に沿って配置されたステアリング素子のアレイと、
を含み、ステアリング素子は受け取った光をそれぞれの波長帯域に基づくそれぞれの平面に向けてさらに差し向けるように配置され、各々それぞれの平面は初期次元に関連付けられる第1の次元を横切って延び、それぞれの平面は、第1の次元に実質的に垂直な第2の次元にわたって分布する、
光学システム。
【0046】
ii. ステアリング素子のアレイの各々が反射素子、屈折及び回折素子のいずれか1つを含む、記述iの光学システム。
【0047】
iii. 反射素子のアレイが、それぞれの平面を横切る第1の次元の範囲を均等化するか又は整列させるため凹型経路に従うように、初期次元に沿って配置される、記述iiの光学システム。
【0048】
iv. 反射素子のアレイが、受け取った光をそれぞれの平面に向けて反射するように、互いに角度オフセットされる、記述iiiの光学システム。
【0049】
v. 分散素子が、初期次元にわたって光を差し向けるための1つ又はそれ以上の回折格子及び1つ又はそれ以上のプリズムを含む、記述iの光学システム。
【0050】
vi. 2次元にわたって光を差し向ける方法であって、その光は、波長帯域にグループ化される複数の波長チャネルのうちの選択された1つを含み、その方法は、
分散素子を用いて、複数の波長チャネルのうちの選択された1つに基づく初期次元に沿って配置された反射素子のアレイにおいて、初期次元にわたって光を差し向けるステップと、
差し向けられた光を、反射素子のアレイを用いて、それぞれの波長帯域に基づくそれぞれの平面に向けて反射するステップと、
を含み、各々それぞれの平面は初期次元に関連付けられる第1の次元を横切って延び、それぞれの平面は、第1の次元に実質的に垂直な第2の次元にわたって分布する、
方法。
【0051】
vii. 2次元にわたって光を差し向けるための光学システムであって、その光は、波長帯域にグループ化される複数の波長チャネルのうちの選択された1つを含み、そのシステムは、
複数の波長チャネルのうちの選択された1つに基づく初期次元にわたり、第1の方向のうちの1つに向けて光を差し向けるように配置された第1の分散素子と、
差し向けられた光を受け取るように初期次元に沿って配置された第2の分散素子のアレイと、
を含み、第2の分散素子のアレイは受け取った光を第2の方向のうちに1つに向けてさらに差し向けるように構成され、第2の方向はそれぞれの波長帯域に基づくそれぞれの平面に沿って整列され、その平面は初期次元に関連付けられる第1の次元にわたって分布し、各々の平面は、第1の次元に実質的に垂直な第2の次元を横切って延びる、
光学システム。
【0052】
viii. 第2の分散素子のアレイは、各々、受け取った光を第2の次元を横切って回折するための可変線間隔回折格子を含む、記述viiの光学システム。
【0053】
ix. 可変線間隔回折格子は、可変線間隔回折格子上の初期次元に沿った位置群に基づく複数の格子周期を含む、記述viiiの光学システム。
【0054】
x. 複数の格子周期は初期次元に沿って連続的に変化する、記述ixの光学システム。
【0055】
xi. 複数の格子周期は初期次元に沿って不連続に変化する、記述xの光学システム。
【0056】
xii. 複数の格子周期の変化は、第2の分散素子のアレイを横切って実質的に繰り返す、記述ix~xiのいずれか1つの光学システム。
【0057】
xiii. 第2の方向は、可変線間隔回折格子上の初期次元に沿った位置群に対応する、記述ix~xiiのいずれか1つの光学システム。
【0058】
xiv. 可変線間隔回折格子において受け取られた差し向けられた光を初期次元内に閉じ込めるための収束素子をさらに含む、記述ix~xiiiのいずれか1つの光学システム。
【0059】
xv. 収束素子は円筒型レンズである、記述xivの光学システム。
【0060】
xvi. 収束素子によって収束された光をコリメートするためのコリメート素子をさらに含む、記述xiv又はxvの光学システム。
【0061】
xvii. 第1の分散素子は、光を初期次元にわたって差し向けるための、1つ又はそれ以上の回折格子及び1つ又はそれ以上のプリズムの任意の組み合わせを含む、記述viiの光学システム。
【0062】
xviii. 2次元にわたって光を差し向ける方法であって、その光は、波長帯域にグループ化される複数の波長チャネルのうちの選択された1つを含み、その方法は、
第1の分散素子を用いて、複数の波長チャネルのうちの選択された1つに基づく初期次元に沿って配置された第2の分散素子のアレイにおいて、初期次元にわたる第1の方向のうちの1つに向けて、光を差し向けるステップと、
差し向けられた光を、第2の分散素子のアレイを用いて、第2の方向のうちの1つに向けてさらに差し向けるステップと、
を含み、第2の方向はそれぞれの波長帯域に基づくそれぞれの平面に沿って整列され、平面は、初期次元に関連付けられる第1の次元にわたって分布し、各々の平面は、第1の次元に実質的に垂直な第2の次元を横切って延びる、
方法。