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特許7125589EFEMシステム及びEFEMシステムにおけるガス供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】EFEMシステム及びEFEMシステムにおけるガス供給方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018048072
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2019161097
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】河合 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】小倉 源五郎
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-527732(JP,A)
【文献】特開2002-359180(JP,A)
【文献】特開2005-142185(JP,A)
【文献】特開2010-072624(JP,A)
【文献】特開2000-353738(JP,A)
【文献】特開2015-146349(JP,A)
【文献】特開平11-003867(JP,A)
【文献】特開2016-015435(JP,A)
【文献】特開2005-101185(JP,A)
【文献】特開2002-056643(JP,A)
【文献】楠木喜博,窒素ガス発生装置,膜(MEMBRANE),Vol.19 No.4,日本,一般社団法人日本膜学会,1994年,277-279
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EFEMの内部空間の雰囲気を不活性ガスで置換することによって、前記内部空間の酸素濃度及び湿度を目標値以下に維持するEFEMシステムであって、
前記内部空間に前記不活性ガスを供給可能な不活性ガス供給路と、
前記不活性ガス供給路から前記内部空間に前記不活性ガスを供給する状態と供給しない状態とに切り換える第1切換部と、
前記内部空間に乾燥空気を供給可能な乾燥空気供給路と、
前記乾燥空気供給路から前記内部空間に前記乾燥空気を供給する状態と供給しない状態とに切り換える第2切換部と、
前記内部空間の湿度を測定する湿度計と、
前記第1切換部及び前記第2切換部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
大気開放されていた前記内部空間が密閉された後、前記乾燥空気供給路から前記乾燥空気を前記内部空間に供給し、
前記内部空間の湿度が所定値まで下がると、前記乾燥空気の供給を停止し、前記不活性ガス供給路から前記不活性ガスを供給することを特徴とするEFEMシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記内部空間が大気開放されている間、前記乾燥空気供給路から前記乾燥空気を前記内部空間に供給することを特徴とする請求項に記載のEFEMシステム。
【請求項3】
前記乾燥空気供給路に、前記乾燥空気をさらに除湿するための除湿フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のEFEMシステム。
【請求項4】
前記不活性ガス供給路は、前記不活性ガスとして窒素を供給するものであり、
前記乾燥空気供給路から分岐する分岐路と、
前記分岐路に設けられ、前記乾燥空気から酸素を除去して窒素濃度を高める窒素富化フィルタと、
前記乾燥空気が前記乾燥空気供給路を通るか、前記分岐路を通るかを切り換える第3切換部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のEFEMシステム。
【請求項5】
EFEMの内部空間の雰囲気を不活性ガスで置換することによって、前記内部空間の酸素濃度及び湿度を目標値以下に維持するEFEMシステムにおけるガス供給方法であって、
大気開放されていた前記内部空間が密閉された後、乾燥空気を前記内部空間に供給する乾燥空気供給工程と、
前記内部空間の湿度が所定値まで下がると、前記乾燥空気の供給を停止し、前記不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、
を備えることを特徴とするEFEMシステムにおけるガス供給方法。
【請求項6】
前記内部空間が大気開放されている間、前記乾燥空気を前記内部空間に供給することを特徴とする請求項に記載のEFEMシステムにおけるガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EFEMの内部空間の雰囲気を不活性ガスで置換することによって、内部空間の酸素濃度及び湿度を目標値以下に維持するEFEMシステム、及び、当該EFEMシステムにおけるガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ウェハが格納されているFOUP(Front-Opening Unified Pod)と、ウェハに所定の処理を施す基板処理装置との間で、ウェハを受け渡すためのEFEM(Equipment Front End Module)が知られている。近年、半導体素子の微細化が進んでおり、EFEMの内部空間に存在するパーティクルだけでなく、酸素や水分の影響も見逃せなくなってきている。そこで、特許文献1に記載のEFEMでは、EFEMの内部空間を密閉するとともに、内部空間の雰囲気を窒素(不活性ガス)で置換することによって、内部空間から酸素や水分を除去している。窒素を大量に消費するとランニングコストが高くなるので、特許文献1では、窒素を内部空間で循環させることによって窒素の消費を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-146349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のEFEMにおいて、例えばメンテナンス時に内部空間が一旦大気開放されると、その後に酸素濃度や湿度を目標値まで下げるのに大量の不活性ガス(窒素)を供給しなければならず、ランニングコストが依然として高い。特に、大気開放した際に大気中の水分がEFEM内の装置や配線等に吸着してしまうため、湿度を目標値まで下げるのに大量の不活性ガスが必要であった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、大気開放されていたEFEMの内部空間の湿度を目標値まで下げるのに必要となる不活性ガスの供給量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るEFEMシステムは、EFEMの内部空間の雰囲気を不活性ガスで置換することによって、前記内部空間の酸素濃度及び湿度を目標値以下に維持するEFEMシステムであって、前記内部空間に前記不活性ガスを供給可能な不活性ガス供給路と、前記不活性ガス供給路から前記内部空間に前記不活性ガスを供給する状態と供給しない状態とに切り換える第1切換部と、前記内部空間に乾燥空気を供給可能な乾燥空気供給路と、前記乾燥空気供給路から前記内部空間に前記乾燥空気を供給する状態と供給しない状態とに切り換える第2切換部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成を有するEFEMシステムによれば、大気開放されていたEFEMの内部空間に、不活性ガスの代わりに乾燥空気を供給することによって、内部空間の湿度を下げることができる。したがって、内部空間の湿度を目標値まで下げるのに必要となる不活性ガスの供給量を削減することができる。
【0008】
本発明に係るEFEMシステムにおいて、前記内部空間の湿度を測定する湿度計と、前記第1切換部及び前記第2切換部を制御する制御部と、をさらに備え、前記制御部は、大気開放されていた前記内部空間が密閉された後、前記乾燥空気供給路から前記乾燥空気を前記内部空間に供給し、前記内部空間の湿度が所定値まで下がると、前記乾燥空気の供給を停止し、前記不活性ガス供給路から前記不活性ガスを供給するとよい。
【0009】
このように、乾燥空気によって内部空間の湿度をある程度下げた後に、不活性ガスを供給するようにすれば、湿度を目標値まで下げるのに必要となる不活性ガスの供給量を効果的に削減することができる。
【0010】
本発明に係るEFEMシステムにおいて、前記制御部は、前記内部空間が大気開放されている間、前記乾燥空気供給路から前記乾燥空気を前記内部空間に供給するとよい。
【0011】
メンテナンス等によって内部空間が大気開放されている間に、乾燥空気を内部空間に供給することによって、オペレータが安全に作業を行うことができるとともに、内部空間の湿度が上昇することを抑えることができる。このため、大気開放後に内部空間に残存している水分を少なくすることができ、湿度を目標値まで下げるのに要する時間を短縮できる。したがって、EFEMの稼動率を向上させることができる。
【0012】
本発明に係るEFEMシステムにおいて、前記乾燥空気供給路に、前記乾燥空気をさらに除湿するための除湿フィルタが設けられているとよい。
【0013】
このような除湿フィルタを設けることで、より低湿度の乾燥空気を供給することができるので、乾燥空気によって内部空間の湿度を効率的に下げることができる。
【0014】
本発明に係るEFEMシステムにおいて、前記不活性ガス供給路は、前記不活性ガスとして窒素を供給するものであり、前記乾燥空気供給路から分岐する分岐路と、前記分岐路に設けられ、前記乾燥空気から酸素を除去して窒素濃度を高める窒素富化フィルタと、前記乾燥空気が前記乾燥空気供給路を通るか、前記分岐路を通るかを切り換える第3切換部と、をさらに備えるとよい。
【0015】
このような構成によれば、低湿度且つ低酸素濃度の乾燥空気を内部空間に供給することができるので、内部空間に乾燥空気を供給して湿度を下げている際に、同時に酸素濃度も下げることができる。したがって、酸素濃度及び湿度を目標値まで下げるのに必要となる不活性ガスの供給量をより効果的に削減することができる。
【0016】
本発明に係るEFEMシステムにおけるガス供給方法は、EFEMの内部空間の雰囲気を不活性ガスで置換することによって、前記内部空間の酸素濃度及び湿度を目標値以下に維持するEFEMシステムにおけるガス供給方法であって、大気開放されていた前記内部空間が密閉された後、乾燥空気を前記内部空間に供給する乾燥空気供給工程と、前記内部空間の湿度が所定値まで下がると、前記乾燥空気の供給を停止し、前記不活性ガスを供給する不活性ガス供給工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
このように、乾燥空気によって内部空間の湿度をある程度下げた後に、不活性ガスを供給するようにすれば、湿度を目標値まで下げるのに必要となる不活性ガスの供給量を効果的に削減することができる。
【0018】
本発明に係るEFEMシステムにおけるガス供給方法において、前記内部空間が大気開放されている間、前記乾燥空気を前記内部空間に供給するとよい。
【0019】
メンテナンス等によって内部空間が大気開放されている間に、乾燥空気を内部空間に供給することによって、オペレータが安全に作業を行うことができるとともに、内部空間の湿度が上昇することを抑えることができる。このため、大気開放後に内部空間に残存している水分を少なくすることができ、湿度を目標値まで下げるのに要する時間を短縮できる。したがって、EFEMの稼動率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係るEFEM及びその周辺の概略的な平面図である。
図2】本実施形態に係るEFEMの断面図である。
図3】ガス供給制御を行うためのEFEMシステムの構成を示す模式図である。
図4】メンテナンス時のガス供給制御を示すフローチャートである。
図5】EFEMシステムの変形例を示す模式図である。
図6】EFEMシステムの変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、図1に示す方向を前後左右方向とする。すなわち、EFEM(Equipment Front End Module)1と基板処理装置6とが並べられている方向を前後方向とする。EFEM1側を前方、基板処理装置6側を後方とする。前後方向と直交する、複数のロードポート4が並べられている方向を左右方向とする。また、前後方向及び左右方向の両方と直交する方向を上下方向とする。
【0022】
(EFEM及び周辺の概略構成)
まず、EFEM1及びその周辺の概略構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るEFEM1及びその周辺の概略的な平面図である。図1に示すように、EFEM1は、筐体2と、搬送ロボット3と、複数のロードポート4と、を備える。EFEM1の後方には、ウェハWに所定の処理を施す基板処理装置6が配置されている。EFEM1は、筐体2内に配置された搬送ロボット3によって、ロードポート4に載置されているFOUP(Front-Opening Unified Pod)100と基板処理装置6との間でウェハWの受渡しを行う。
【0023】
FOUP100は、複数のウェハWを上下方向に並べて収容可能な容器であり、後端部(前後方向における筐体2側の端部)に蓋101が取り付けられている。FOUP100は、例えば、ロードポート4の上方に設けられた不図示のレールに吊り下げられて走行する、不図示のOHT(天井走行式無人搬送車)によって搬送される。OHTとロードポート4との間で、FOUP100の受渡しが行われる。
【0024】
筐体2は、複数のロードポート4と基板処理装置6とを接続するためのものである。筐体2の内部には、外部空間に対して略密閉された、ウェハWが搬送される搬送室41が形成されている。EFEM1が稼動しているとき、搬送室41は、窒素で満たされている。筐体2は、搬送室41を含む内部空間を窒素が循環するように構成されている(詳細については後述する)。また、筐体2の後端部にはドア2aが取り付けられ、搬送室41は、ドア2aを隔てて基板処理装置6と接続されている。
【0025】
搬送ロボット3は、搬送室41内に配置され、ウェハWの搬送を行う。搬送ロボット3は、主に、FOUP100内のウェハWを取り出して基板処理装置6に渡す動作や、基板処理装置6によって処理されたウェハWを受け取ってFOUP100に戻す動作を行う。
【0026】
ロードポート4は、FOUP100を載置するためのものである。複数のロードポート4は、それぞれの後端部が筐体2の前側の隔壁に沿うように、左右方向に並べて配置されている。ロードポート4は、FOUP100内の雰囲気を窒素等の不活性ガスに置換可能に構成されている。ロードポート4の後端部には、ドア4aが設けられている。ドア4aは、不図示のドア開閉機構によって開閉される。ドア4aは、FOUP100の蓋101のロックを解除可能、且つ、蓋101を保持可能に構成されている。ロックが解除された蓋101をドア4aが保持している状態で、ドア移動機構がドア4aを開けることで、蓋101が開けられる。これにより、FOUP100内のウェハWが、搬送ロボット3によって取出可能になる。
【0027】
制御装置5は、筐体2内、より詳細には搬送室41内に設置された酸素濃度計55、圧力計56、湿度計57(図3参照)と電気的に接続されている。制御装置5は、これらの計測機器の計測結果を受信して、筐体2内の雰囲気に関する情報を把握し、それに基づいて筐体2の内部空間の雰囲気を適宜調節する。ガス供給制御については、後で詳細に説明する。
【0028】
基板処理装置6は、例えば、ロードロック室6aと、処理室6bとを有する。ロードロック室6aは、筐体2のドア2aを隔てて搬送室41と接続された、ウェハWを一時的に待機させるための部屋である。処理室6bは、ドア6cを隔ててロードロック室6aと接続されている。処理室6bでは、不図示の処理機構によって、ウェハWに対して所定の処理が施される。
【0029】
(EFEMの詳細な構成)
次に、筐体2及びその内部の構成について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係るEFEM1の断面図である。なお、図2においては、搬送ロボット3等の図示を省略している。
【0030】
筐体2は、底壁31、天井壁32、前壁33、後壁34、右壁(図示省略)、及び、左壁(図示省略)によって密閉された、全体として直方体状の構造体である。筐体2の内部空間は、水平方向に延びる支持板37によって、下側の搬送室41と、上側のFFU設置室42とに分かれている。前壁33は、搬送室41に面する下カバー33aと、FFU設置室42に面する上カバー33bとに分割されている。同様に、後壁34は、搬送室41に面する下カバー34aと、FFU設置室42に面する上カバー34bとに分割されている。不図示の右壁及び左壁についても、同様の構成となっている。
【0031】
カバー33a、33b、34a、34b等の各カバーは、筐体2を構成する不図示のフレームに対して着脱自在に構成されている。各カバーを取り付けることで、筐体2の内部空間が密閉状態とされる。一方、各カバーを取り外すことで、筐体2の内部空間を開放し、メンテナンス等を行うことができる。
【0032】
FFU設置室42には、支持板37上に配置されたFFU(ファンフィルタユニット)44と、FFU44上に配置されたケミカルフィルタ45とが設けられている。FFU44は、ファン44aとフィルタ44bとを有する。FFU44は、ファン44aによって下方に向かう気流を生成し、気流に含まれるパーティクルをフィルタ44bによって除去する。ケミカルフィルタ45は、例えば基板処理装置6からEFEM1内に持ち込まれた活性ガス等を除去するためのものである。FFU44及びケミカルフィルタ45によって清浄化された気流が、FFU設置室42から、支持板37に形成された開口37aを介して搬送室41に送り出される。搬送室41に送り出された気流は、層流を形成し、下方へ流れる。
【0033】
EFEM1(筐体2)の内部空間40には、窒素を循環させるための循環路が形成されている。この循環路は、FFU設置室42から下方に送り出された窒素が、搬送室41の下端部から帰還路43を経てFFU設置室42に戻るように構成されている(図2の矢印参照)。帰還路43は、柱23、導入ダクト27、及び、支持板37に形成されている。柱23は、筐体2の構造部材としても用いられており、内部に中空空間23aが形成されている。柱23の下端部には、導入ダクト27が取り付けられている。導入ダクト27内に形成された導入路27aは、柱23の中空空間23aと連通している。また、支持板37には、柱23の中空空間23aとFFU設置室42とを接続する流路37bが形成されている。帰還路43は、導入ダクト27の導入路27aと、柱23の中空空間23aと、支持板37の流路37bとがつながった構成を有する。
【0034】
導入ダクト27内には、ファン46が配置されている。ファン46が駆動されると、搬送室41の下端部に到達した窒素を、帰還路43に吸い込んで上方に送り出し、FFU設置室42に戻す。FFU設置室42に戻された窒素は、FFU44やケミカルフィルタ45によって清浄化され、再び搬送室41へ送り出される。以上のようにして、窒素がEFEM1の内部空間40を循環可能になっている。
【0035】
EFEM1は、内部空間40が窒素雰囲気とされているため、メンテナンス等のためにいきなりカバーを開けて内部空間40を開放すると、オペレータが窒息を起こすおそれがある。これを避けるため、EFEM1にはインターロック58(図3参照)が設けられている。制御装置5がインターロック58を開錠すると、筐体2のカバーを開くことができるが、インターロック58が施錠されているときは、カバーを開けることはできない。
【0036】
(ガス供給制御)
以上のように構成されたEFEM1では、内部空間40の雰囲気を窒素で置換することによって、内部空間40(特に搬送室41)の酸素濃度及び湿度が目標値以下に維持される。本実施形態では、酸素濃度の目標値が100ppm、湿度の目標値として露点温度が-70℃に設定されているものとする。もちろん、これらの目標値は適宜変更が可能であるし、湿度の目標値を露点温度以外の指標で設定してもよい。
【0037】
図3は、ガス供給制御を行うためのEFEMシステム10の構成を示す模式図である。EFEMシステム10は、EFEM1と、EFEM1にガスを供給及び排出するための各手段とによって構成される。EFEM1には窒素供給路61が接続されており、施設に設けられた窒素供給源62から窒素供給路61を介してEFEM1の内部空間40に窒素が供給される。窒素供給路61にはバルブ63が設けられており、制御装置5がバルブ63の開度を制御することで、窒素の供給量が調整される。
【0038】
また、EFEM1にはCDA(Clean Dry Air:乾燥空気)供給路71が接続されており、施設に設けられたCDA供給源72からCDA供給路71を介してEFEM1の内部空間40にCDAが供給される。CDA供給路71にはバルブ73が設けられており、制御装置5がバルブ73の開度を制御することで、CDAの供給量が調整される。CDA供給路71には、さらに除湿フィルタ74が設けられている。CDA供給源72から供給されるCDAを除湿フィルタ74によってさらに除湿することによって、より低湿度のCDAを供給することができる。なお、図3では、窒素供給路61とCDA供給路71とが途中で合流する構成を記載しているが、窒素供給路61及びCDA供給路71がそれぞれ個別にEFEM1に接続される構成でもよい。
【0039】
さらに、EFEM1には排気路81が接続されており、EFEM1の内部空間40からガスを排出することができる。排気路81にはバルブ82が設けられており、制御装置5がバルブ82の開度を制御することで、ガスの排出量が調整される。
【0040】
このように構成されたEFEMシステム10では、EFEM1の通常稼働時(ウェハWの搬送時)には、内部空間40にCDAは供給されず、窒素が供給される。制御装置5は、バルブ73を閉じたままにしておき、酸素濃度計55及び湿度計(露点温度計)57からの出力に応じてバルブ63の開度を制御する。こうして内部空間40への窒素の供給量を調整することで、内部空間40の酸素濃度及び露点温度がそれぞれ目標値以下に維持される。
【0041】
また、EFEM1の通常稼働時には、EFEM1の内部空間40の圧力が大気圧よりもわずかに高い微陽圧に維持される。これによって、EFEM1の外部から内部空間40に空気が流入することを防止している。制御装置5は、圧力計56からの出力に応じてバルブ82の開度を制御する。こうして内部空間40からのガスの排出量を調整することで、内部空間40の圧力が微陽圧に維持される。具体的には、1Pa(G)~3000Pa(G)の範囲内であり、好ましくは、3Pa(G)~500Pa(G)、より好ましくは、5Pa(G)~100Pa(G)である。本実施形態では、10Pa(G)の差圧となるよう調整している。
【0042】
(メンテナンス時のガス供給制御)
メンテナンス等でEFEM1の内部空間40を開放する際や、メンテナンス等の終了後にEFEM1の内部空間40を窒素雰囲気に戻す際には、通常稼働時と異なる制御が行われる。図4は、メンテナンス時のガス供給制御を示すフローチャートである。オペレータによってメンテナンスを行う旨の信号が入力されると、制御装置5は、バルブ63を閉めるとともにバルブ73を開いて、EFEM1の内部空間40にCDAを供給し始める(ステップS11)。その後、内部空間40の酸素濃度が所定値(例えば19.5%)以上となり(ステップS12でYES)、内部空間40を安全に開放できる状態となったら、制御装置5はインターロック58を開錠する(ステップS13)。
【0043】
インターロック58が開錠されると、オペレータはEFEM1のカバーを開いて内部空間40を開放し、必要なメンテナンスを行う(ステップS14)。この間も、内部空間40へのCDAの供給は継続される。これによって、メンテナンス中に内部空間40の湿度が上昇することを抑えることができる。メンテナンスが終了すると、オペレータはEFEM1のカバーを閉じて内部空間40を密閉状態にし、制御装置5にメンテナンスが終了した旨を入力する。これを受けて、制御装置5はインターロック58を施錠する(ステップS15)。
【0044】
EFEM1の内部空間40を密閉した後も、内部空間40へのCDAの供給は継続される。CDAの供給によって内部空間40の水分が除去されるので露点温度は低下するが、内部空間40の酸素濃度は大気とほとんど同じままである。内部空間40の露点温度が所定値(例えば-50℃)まで下がると(ステップS16でYES)、制御装置5は、バルブ73を閉めるとともにバルブ63を開いて、内部空間40に窒素を供給し始める(ステップS17)。その後、内部空間40の露点温度及び酸素濃度がそれぞれ目標値(-70℃、100ppm)まで下がると(ステップS18でYES)、EFEM1の通常稼働が再開される(ステップS19)。
【0045】
ここで、一旦大気開放されたEFEM1の内部空間40の露点温度を目標値まで下げるのは、酸素濃度を目標値まで下げるよりも長い時間を要する。というのも、酸素は窒素で置換すれば済むが、大気開放した際にEFEM1内の装置や配線等に吸着した水分を除去するためには、大量の乾燥ガス(窒素又はCDA)で水分を吸い出す必要があるからである。したがって、本実施形態のように、湿度(露点温度)さえCDAである程度低下させることができれば、窒素の供給量を大幅に削減することが可能である。その結果、EFEM1のランニングコストを抑えることができる。なお、本実施形態では、露点温度が目標値(-70℃)よりも高い所定値(-50℃)まで下がるとCDAの供給を停止して窒素の供給を開始するものとしたが、露点温度が目標値まで下がってから窒素の供給に切り換えてもよい。
【0046】
(効果)
本実施形態に係るEFEMシステム10は、EFEM1の内部空間40の雰囲気を窒素(不活性ガス)で置換することによって、内部空間40の酸素濃度及び湿度(露点温度)を目標値以下に維持するものであって、内部空間40に窒素を供給可能な窒素供給路61(不活性ガス供給路)と、窒素供給路61から内部空間40に窒素を供給する状態と供給しない状態とに切り換えるバルブ63(第1切換部)と、内部空間40にCDA(乾燥空気)を供給可能なCDA供給路71(乾燥空気供給路)と、CDA供給路71から内部空間40にCDAを供給する状態と供給しない状態とに切り換えるバルブ73(第2切換部)と、を備える。このような構成を有するEFEMシステム10によれば、大気開放されていたEFEM1の内部空間40に、窒素の代わりにCDAを供給することによって、内部空間40の湿度を下げることができる。したがって、内部空間40の湿度を目標値まで下げるのに必要となる窒素の供給量を削減することができる。
【0047】
本実施形態では、制御装置5(制御部)は、大気開放されていた内部空間40が密閉された後、CDA供給路71からCDAを内部空間40に供給し(本発明の「乾燥空気供給工程」に相当)、内部空間40の湿度が所定値まで下がると、CDAの供給を停止し、窒素供給路61から窒素を供給する(本発明の「不活性ガス供給工程」に相当)ようにした。このように、CDAによって内部空間40の湿度をある程度下げた後に、窒素を供給するようにすれば、湿度を目標値まで下げるのに必要となる不活性ガスの供給量を効果的に削減することができる。
【0048】
本実施形態では、制御装置5は、内部空間40が大気開放されている間、CDA供給路71からCDAを内部空間40に供給している。このように、メンテナンス等によって内部空間40が大気開放されている間に、CDAを内部空間40に供給することによって、オペレータが安全に作業を行うことができるとともに、内部空間40の湿度が上昇することを抑えることができる。このため、大気開放後に内部空間40に残存している水分を少なくすることができ、湿度を目標値まで下げるのに要する時間を短縮できる。したがって、EFEM1の稼動率を向上させることができる。
【0049】
本実施形態では、CDA供給路71に、CDAをさらに除湿するための除湿フィルタ74が設けられている。このような除湿フィルタ74を設けることで、より低湿度のCDAを供給することができるので、CDAによって内部空間40の湿度を効率的に下げることができる。
【0050】
(他の実施形態)
上記実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0051】
(1)上記実施形態では、制御装置5がバルブ63、73を自動で制御するものとした。しかしながら、オペレータがバルブ63、73を手動で開閉することにより、ガス供給制御を行うようにしてもよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、CDA供給路71に除湿フィルタ74を設けるものとした。しかしながら、除湿フィルタ74をEFEM1の内部空間40(例えば帰還路43)に設けるようにしてもよい。また、除湿フィルタ74を設けることは必須ではなく、除湿フィルタ74を省略してもよい。
【0053】
(3)上記実施形態では、メンテナンス等でEFEM1の内部空間40を大気開放している間、内部空間40にCDAを供給するものとした。しかしながら、内部空間40を大気開放している間にCDAを供給することは必須ではない。
【0054】
(4)図5に示すように、EFEM1の内部空間40にヒータ59を設けるようにしてもよい。ヒータ59を設けることで、EFEM1内の飽和水蒸気量を大きくすることができ、装置や配線等に吸着している水分を蒸発させやすくなる。その結果、内部空間40の湿度を目標値まで下げるのに要する時間を短縮できるとともに、乾燥ガス(窒素又はCDA)の消費量を削減することができる。筐体2の底面に多くの装置や配線等が配置されることを鑑みると、ヒータ59を筐体2の底面近傍に設けるのが好ましいが、他の箇所に設けることももちろん可能である。
【0055】
(5)図6に示すように、CDA供給路71の途中にCDA供給路71から分岐する分岐路75を設け、分岐路75に窒素富化フィルタ76を設けるようにしてもよい。窒素富化フィルタ76とは、空気から酸素を除去して窒素濃度を高めることのできるフィルタである。CDA供給路71と分岐路75との分岐部には、CDAがCDA供給路71を通るか、分岐路75を通るかを切り換えるための切換バルブ77(本発明の「第3切換部」に相当)が設けられている。このような構成によれば、低湿度且つ低酸素濃度のCDAを内部空間40に供給することができるので、内部空間40にCDAを供給して湿度を下げている際に、同時に酸素濃度も下げることができる。したがって、酸素濃度及び湿度を目標値まで下げるのに必要となる窒素の供給量をより効果的に削減することができる。
【0056】
(6)上記実施形態では、本発明の不活性ガスとして窒素が供給されるものとした。しかしながら、不活性ガスは窒素に限定されず、例えばアルゴン等の他の不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1:EFEM
5:制御装置(制御部)
10:EFEMシステム
40:内部空間
57:湿度計
61:窒素供給路(不活性ガス供給路)
63:バルブ(第1切換部)
71:CDA供給路(乾燥空気供給路)
73:バルブ(第2切換部)
74:除湿フィルタ
75:分岐路
76:窒素富化フィルタ
77:切換バルブ(第3切換部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6