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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】ロードポート及びEFEM
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018072021
(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公開番号】P2019186293
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳志
(72)【発明者】
【氏名】三浦 辰弥
(72)【発明者】
【氏名】谷山 育志
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/022431(WO,A1)
【文献】特開2013-118278(JP,A)
【文献】特表平06-501815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送空間を外部空間から隔離する壁の一部を構成し且つ搬送対象物が通過可能な開口部を有するベースと、
前記搬送対象物を収容した容器が有する容器ドアに係合可能であり且つ前記ベースの前記開口部を開閉可能なロードポートドアと、
前記ベースの前方における所定位置に配置された容器と当該ベースとの間をシールする第1シール部と、
前記開口部を閉止した閉状態にある前記ロードポートドアと前記ベースとの間をシールする第2シール部とを備え、
前記ロードポートドアが前記閉状態にあって且つ前記第1シール部を介して前記容器を前記ベースに当接させた状態において、前記ロードポートドアと前記容器ドアが所定寸法の隙間を隔てて対向する空間を前記第1シール部及び前記第2シール部によって仕切られた密閉空間になるように構成し、
さらに、
前記密閉空間に対してガスを注入するガス注入部とを備え、
前記第1シール部の一部または全部を、前記密閉空間を前記ガスに置換するドアパージ処理時に前記密閉空間を陽圧にすることで前記第2シール部よりも優先して開放される優先開放部分に設定し、当該開放された部分を通じて前記密閉空間の少なくとも前記ガスを排気可能に構成したことを特徴とするロードポート。
【請求項2】
前記密閉空間の気体を排気するガス排出部を備えている請求項1に記載のロードポート。
【請求項3】
搬送空間を外部空間から隔離する壁の一部を構成し且つ搬送対象物が通過可能な開口部を有するベースと、
前記搬送対象物を収容した容器が有する容器ドアに係合可能であり且つ前記ベースの前記開口部を開閉可能なロードポートドアと、
前記ベースの前方における所定位置に配置された容器と当該ベースとの間をシールする第1シール部と、
前記開口部を閉止した閉状態にある前記ロードポートドアと前記ベースとの間をシールする第2シール部とを備え、
前記ロードポートドアが前記閉状態にあって且つ前記第1シール部を介して前記容器を前記ベースに当接させた状態において、前記ロードポートドアと前記容器ドアが所定寸法の隙間を隔てて対向する空間を前記第1シール部及び前記第2シール部によって仕切られた密閉空間になるように構成し、
さらに、
前記密閉空間に対してガスを注入するガス注入部とを備え、
前記第1シール部の一部または全部を、前記密閉空間を前記ガスに置換するドアパージ処理時に前記密閉空間を陽圧にすることで前記第2シール部よりも優先して開放される優先開放部分に設定し、当該開放された部分を通じて前記密閉空間の少なくとも前記ガスを排気可能に構成し、
前記優先開放部分の近傍であって且つ前記密閉空間の外である大気圧下に排気ユニットを設けていることを特徴とするロードポート。
【請求項4】
搬送空間を外部空間から隔離する壁の一部を構成し且つ搬送対象物が通過可能な開口部を有するベースと、
前記搬送対象物を収容した容器が有する容器ドアに係合可能であり且つ前記ベースの前記開口部を開閉可能なロードポートドアと、
前記ベースの前方における所定位置に配置された容器と当該ベースとの間をシールする第1シール部と、
前記開口部を閉止した閉状態にある前記ロードポートドアと前記ベースとの間をシールする第2シール部とを備え、
前記ロードポートドアが前記閉状態にあって且つ前記第1シール部を介して前記容器を前記ベースに当接させた状態において、前記ロードポートドアと前記容器ドアが所定寸法の隙間を隔てて対向する空間を前記第1シール部及び前記第2シール部によって仕切られた密閉空間になるように構成し、
さらに、
前記密閉空間の気体を排気する排出部を備え、
前記第2シール部の一部または全部を、前記密閉空間を排気する密閉空間清浄化処理時に前記密閉空間を負圧にすることで前記第1シール部よりも優先して開放される優先開放部分に設定していることを特徴とするロードポート。
【請求項5】
前記密閉空間に対してガスを注入するガス注入部を備えている請求項4に記載のロードポート。
【請求項6】
前記密閉空間内を吸引する吸引経路の所定箇所に排気ユニットを設けている請求項4又は5に記載のロードポート。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載のロードポートと、
搬送空間に搬送ロボットを配置した搬送室とを備えていることを特徴とするEFEM。
【請求項8】
前記搬送室は、前記搬送空間にガスを循環させる循環ダクトを備えたものであり、
前記搬送空間は、当該搬送空間の外である外部空間に対して3乃至500Pa(G)の差圧がある請求項7に記載のEFEM。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に収容された搬送対象物を搬送空間に受け渡すインターフェース部として機能するロードポート及びロードポートを備えたEFEMに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体の製造工程においては、歩留まりや品質の向上のため、クリーンルーム内でのウェーハの処理がなされている。近年では、ウェーハの周囲の局所的な空間についてのみ清浄度をより向上させる「ミニエンバイロメント方式」を取り入れ、ウェーハの搬送その他の処理を行う手段が採用されている。ミニエンバイロメント方式では、筐体の内部で略閉止されたウェーハ搬送室(以下、搬送室)の壁面の一部を構成するとともに、高清浄な内部空間にウェーハ等の搬送対象物が収納された搬送容器(以下「容器」)を載置し、容器のドア(以下「容器ドア」)を開閉させる機能を有するロードポート(Load Port)が搬送室に隣接して設けられている。以下では、容器ドアに係合可能であって容器ドアを開閉させるロードポートのドアを「ロードポートドア」とする。
【0003】
ロードポートは、搬送室との間で搬送対象物の出し入れを行うための装置であり、搬送室と容器(例えばFOUP(Front-Opening Unified Pod))の間におけるインターフェース部として機能する。そして、FOUPのドア(以下「FOUPドア」)に対してロードポートドアを所定の隙間を介して対向する状態でこれらFOUPドア及びロードポートドアが同時に開けられると、搬送室内に配置された搬送ロボット(ウェーハ搬送装置)によって、FOUP内の搬送対象物を搬送室内に取り出したり、搬送対象物を搬送室内からFOUP内に収納できるように構成されている。
【0004】
ウェーハ周辺の雰囲気を適切に維持するために、容器としてFOUPと呼ばれる密閉式の格納ポッドが用いられ、FOUPの内部にウェーハを収容して管理している。さらに、ウェーハに処理を行う処理装置と、FOUPとの間でウェーハの受け渡しを行うために、搬送室と、ロードポートとを用いて構成されるEFEM(Equipment Front End Module)が利用されている。
【0005】
近年では素子の高集積化や回路の微細化が進められており、ウェーハ表面へのパーティクルや水分の付着が生じないように、ウェーハ周辺を高いクリーン度に維持することが求められている。そこで、ウェーハ表面が酸化するなど表面の性状が変化することがないよう、FOUPの内部に窒素を充填して、ウェーハ周辺を不活性ガスである窒素雰囲気としたり、真空状態としたりすることも行われている。
【0006】
さらに、ウェーハの最先端プロセスにおいては、搬送室上部に配置したファンフィルタユニットから常時流すダウンフローとして用いられる清浄な大気に含まれる酸素、水分などですら、ウェーハの性状を変化させるおそれがある。このため特許文献1のように、不活性ガスをEFEM内に循環させる技術の実用化が求められている。特許文献1に記載のシステムは、容器ドア(FOUPドア)とロードポートドアとの間を密閉空間にすべくロードポートにおける適宜箇所にシール部材を設ける構成である。
【0007】
しかしながら、シール部材を設けた上記構成であれば、密閉空間に大気やパーティクルが残存してしまい、FOUPドアに対してロードポートドアを所定の隙間を介して対向する状態でこれらFOUPドア及びロードポートドアが同時に開けられた際に、密閉空間で残存する大気やパーティクルがFOUP内や搬送室に混入することで、低酸素濃度、低湿度が求められるEFEMにおいてウェーハの性状が変化してしまうおそれがあり得る。
【0008】
そこで、本出願人は、FOUPドアとロードポートドアとの間の密閉空間にガスを注入するガス注入ノズルと、密閉空間のガスを排出するガス排出ノズルとを用いて、密閉空間の大気を除去して窒素ガスを充填(パージ)する構成を案出した(特許文献2)。このように、FOUPドアとロードポートドアとの間に形成される密閉空間の気体を窒素で置換(以下、ドアパージという。)することによって、FOUPドアに付着するパーティクル等がドア開放時にEFEM搬送室内に流入する事態や、FOUPドアとロードポートとの間の微小空間に含まれる酸素がEFEM搬送室内に流入することを抑制することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-112631号公報
【文献】国際公開2017/022431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、タクトタイムの短縮化を図るため、ドアパージ(密閉空間の窒素置換処理)に要する時間は限定される。そこで、密閉空間に対する窒素ガスの供給量を増やすと、密閉空間における圧力が高くなってしまい、その結果、ベースの開口部を閉止した状態にあるロードポートドアに対して密閉空間からEFEM搬送室側に向かう押圧力が作用し、ロードポートドアの閉止力が不足するとロードポートドア側の密閉性を維持することができず、密閉空間の酸素を含む気体やパーティクルがEFEM搬送室内に流入する事態が起こり得る。
【0011】
一方、このような事態の発生を回避するため、密閉空間内の気体雰囲気を吸引する構成も考えられるが、置換ガスの供給と吸引のバランスが崩れて、吸引量が供給量よりも多くなると、密閉空間が陰圧となる。その結果、FOUPドアが密閉空間側に引っ張られて容器本体との密閉性が低下して、FOUP内の気体が密閉空間に流入することが考えられる。ここで、FOUPの底部には、FOUP内をパージ処理(ボトムパージ処理)するために窒素ガス供給ポートと、FOUP内からガスを自然排出する排気ポートが設けられており、ドアパージ処理に用いるガス吸引量がガス供給量よりも多くなれば、ボトムパージ処理用の排気ポートからFOUP内に気体(大気)が吸引されて逆流し、密閉空間、ひいてはEFEM搬送室内に流入するおそれがあり得る。
【0012】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、ドアパージ処理またはドアパージ処理に準じた密閉空間清浄化処理に要する時間の短縮化を図りつつ、搬送対象物(ウェーハ)の性状変化を招来し得る望ましくない気体を搬送室内に流入させない構造のロードポート、及びこのようなロードポートを備えたEFEMを提供することにある。なお、本発明は、FOUP以外の容器に対応可能なロードポート及びEFEMに適用可能な技術である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、搬送空間を外部空間から隔離する壁の一部を構成し且つ搬送対象物が通過可能な開口部を有するベースと、搬送対象物を収容した容器が有する容器ドアに係合可能であり且つベースの開口部を開閉可能なロードポートドアと、ベースの前方における所定位置に配置された容器と当該ベースとの間をシールする第1シール部と、開口部を閉止した閉状態にあるロードポートドアとベースとの間をシールする第2シール部とを備え、ロードポートドアが閉状態にあって且つ第1シール部を介して容器をベースに当接させた状態において、ロードポートドアと容器ドアが所定寸法の隙間を隔てて対向する空間を第1シール部及び第2シール部によって仕切られた密閉空間になるように構成したロードポートを基本構成とするものである。
【0014】
そして、本発明に係るロードポートは、このような基本構成において、密閉空間に対してガスを注入するガス注入部をさらに備え、第1シール部の一部または全部を、ドアパージ処理時に密閉空間を陽圧にすることで第2シール部よりも優先して開放される優先開放部分に設定し、この開放された部分を通じて密閉空間の少なくともガスを排気可能に構成していることを特徴としている。
【0015】
ここで、本発明において、密閉空間が陽圧状態にある場合に第2シール部よりも優先して開放される部分は、第1シール部の一部であってもよいし、第1シール部の全部であってもよい。つまり、密閉空間が陽圧状態にある場合に少なくとも第1シール部の1箇所でシール状態が解除される部分(排気されやすい部分)を設定しておくことが、これまでに着想されることのなかった本発明特有の構成である。また、本発明は、密閉空間が陽圧になったその時点で第1シール部の優先開放部分が第2シール部よりも優先して開放された状態になる構成や、密閉空間が陽圧になったその時点以降の適宜の時点(例えば密閉空間が所定値以上の圧になった時点等)で第1シール部の優先開放部分が第2シール部よりも優先して開放された状態になる構成、これら両方の構成も包含する。
【0016】
本発明に係るロードポートは、容器ドアとロードポートドアの間の隙間であって且つ第1シール部及び第2シール部にシールされた密閉空間を、ガス注入部によってガスに置換可能なドアパージ機能を発揮するものであるため、容器ドアに付着しているパーティクルや、容器ドアとロードポートドアとの間に存在してウェーハを酸化させるなど、ウェーハの性状を変化させるおそれのある酸素、水分、パーティクルなどを含む大気が、ロードポートドアを開放した際に搬送空間及び容器の内部に流入する事態を防止・抑制できる。つまり、容器ドアを開放して密閉空間が開放される前に、密閉空間の酸素、水分、パーティクルを排除できる。
【0017】
さらに、本発明に係るロードポートは、ドアパージ処理時に密閉空間を陽圧にすることで第1シール部の一部または全部に設定した優先開放部分が第2シール部よりも優先して開放され、この開放された部分を通じて密閉空間の少なくともガス(ドアパージ処理実行前に密閉空間に存在する空気やパーティクル等が含まれる場合もある)を排気可能に構成しているため、密閉空間が陽圧になることに起因してロードポートドアの閉止力が弱まり、ドアパージ処理実行前の時点で、容器ドアに付着しているパーティクルや、容器ドアとロードポートドアとの間に存在する酸素、水分、パーティクルなどを含む大気が密閉空間から搬送空間に流入する事態を防止することができる。これにより、容器内、密閉空間及び搬送空間の清浄度を維持できるとともに、密閉空間に対してガスを短時間で大量に供給して密閉空間を陽圧状態することが許容され、密閉空間にガスを少しずつ供給して圧力調整しながら密閉空間内のゴミ等を除去する態様と比較してタクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0018】
加えて、本発明のロードポートであれば、密閉空間の圧力を他の空間の圧力と均等にするといった特別な制御が不要であり、コントロールするための制御機器(バルブや配管類)が不要になることによるコストダウンやタクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0019】
特に、本発明に係るロードポートが、密閉空間の気体を排気するガス排出部を備えたものであれば、ガス排出部を備えていない構成と比較して、密閉空間内にガスが入れ替わり難い場所が生じ得る事態を防止・抑制できる。加えて、このようなロードポートにおいて、優先開放部分の近傍であって且つ密閉空間の外である大気圧下に排気ユニットを設けた構成を採用すれば、密閉空間の圧力が高まった場合に、容器側のシール部材である第1シール部に設定した優先開放部分から密閉空間の外へ漏洩する少なくともドアパージ用ガス等の気体を排気ユニットによって効率良く排気することができる。
【0020】
また、本発明に係るロードポートは、前述した基本構成に加えて密閉空間の気体を排気する排出部を備えた構成において、第2シール部の一部または全部を、排出部によって密閉空間を排気する密閉空間清浄化処理時に密閉空間を負圧にすることで第1シール部よりも優先して開放される優先開放部分に設定していることを特徴としている。
【0021】
ここで、本発明において、密閉空間が負圧状態にある場合に第1シール部よりも優先して開放される部分は、第2シール部の一部であってもよいし、第2シール部の全部であってもよい。つまり、密閉空間が負圧状態にある場合に少なくとも第2シール部の1箇所でシール状態が解除される部分(排気されやすい部分)を設定しておくことが、これまでに着想されることのなかった本発明特有の構成である。また、本発明は、密閉空間が負圧になったその時点で第2シール部の優先開放部分が第1シール部よりも優先して開放された状態になる構成や、密閉空間が負圧になったその時点以降の適宜の時点(例えば密閉空間が所定値以下の圧になった時点等)で第2シール部の優先開放部分が第1シール部よりも優先して開放された状態になる構成、これら両方の構成も包含する。
【0022】
本発明に係るロードポートは、容器ドアとロードポートドアの間の隙間であって且つ第1シール部及び第2シール部にシールされた密閉空間を排出部によって排気して清浄化する機能を発揮するものであるため、容器ドアに付着しているパーティクルや、容器ドアとロードポートドアとの間に存在してウェーハを酸化させるなど、ウェーハの性状を変化させるおそれのある酸素、水分、パーティクルなどを含む大気が、ロードポートドアを開放した際に搬送空間及び容器の内部に流入する事態を防止・抑制できる。つまり、容器ドアを開放して密閉空間が開放される前に、密閉空間の酸素、水分、パーティクルを排除できる。
【0023】
さらに、本発明に係るロードポートは、タクトの短縮化を図るべく、密閉空間から密閉空間外への排気を短時間で大量に行って密閉空間を負圧状態にすると、第2シール部の一部または全部に設定した優先開放部分が第1シール部よりも優先して開放され、この開放部分を通じて搬送空間から密閉空間に気体が流入することになり、密閉空間が負圧になることに起因して容器ドアの閉止力が弱まり、排出部を用いた密閉空間の清浄化処理実行前の時点で、容器ドアに付着しているパーティクルや、容器ドアとロードポートドアとの間に存在する酸素、水分、パーティクルなどを含む大気が密閉空間から容器内に流入する事態や、密閉空間が負圧になることに起因して容器ドアの閉止力が弱まり、容器ドアと容器本体の隙間を通じて容器の内部から密閉空間に向かう気流が形成され、容器底部の排気ポートから気体(大気)が容器内、あるいは密閉空間に逆流してしまう事態を悉く防止することができる。これにより、容器内、密閉空間及び搬送空間の高い清浄度を維持できるとともに、密閉空間に対して短時間で大量に排気して密閉空間を負圧状態することが許容され、密閉空間を少しずつ排気して圧力調整しながら密閉空間内のゴミ等を除去する態様と比較してタクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0024】
加えて、本発明のロードポートであれば、密閉空間の圧力を他の空間の圧力と均等にするといった特別な制御が不要であり、コントロールするための制御機器(バルブや配管類)が不要になることによるコストダウンやタクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0025】
特に、本発明に係るロードポートが、密閉空間に対してガスを注入するガス注入部を備えたものであれば、密閉空間内をガスに置換するドアパージ機能を発揮し、ドアパージ処理時に密閉空間内においてガスが入れ替わり難い場所が生じ得る事態を防止・抑制できる。加えて、本発明に係るロードポートにおいて、密閉空間内を吸引する吸引経路の所定箇所に排気ユニットを設けた構成を採用すれば、密閉空間が負圧状態になった場合に、密閉空間の気体(ガス注入部を備えた構成であればドアパージ用ガスを含む)を排気ユニットによって効率良く密閉空間外に排気することができ、過度の負圧状態になれば生じ得る事態、すなわち、容器ドアによる容器内の密閉度合いが低下して、容器内に設けた排気ポートから大気が容器内に逆流するという事態も解消できる。
【0026】
また、本発明に係るEFEMは、上述の構成を有するロードポートと、搬送空間に搬送ロボットを配置した搬送室とを備えていることを特徴としている。このようなEFEMであれば、ロードポートにセットした容器と搬送室との間でウェーハ等の搬送対象物を搬送ロボットで出し入れすることができ、この出し入れ処理よりも前の時点でドアパージ処理または密閉空間清浄化処理を行う際に、密閉空間を陽圧または負圧にすることで優先開放部分を開放させる構成を採用したことにより、開放部分を通じて密閉空間のガス(ドアパージ用ガス)を密閉空間外へ排気したり、開放部分を通じて搬送空間から密閉空間に気体が流入可能であり、容器内、密閉空間及び搬送空間の高い清浄度を維持した状態で出し入れ処理を行うことができる。特に、本発明に係るEFEMにおいて、搬送室が、搬送空間にガスを循環させる循環ダクトを備えたものであれば、搬送空間に所定のガス(例えば不活性ガスまたは窒素ガス等の環境ガス)を循環させて清浄な状態に維持することができる。この場合、搬送空間の外である外部空間(大気圧下)に対する搬送空間の差圧は、プラス3乃至500Pa(G)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ベースの前方における所定位置に配置された容器の容器ドアとロードポートドアとの隙間を、これらドア同士が対面する前後方向において第1シール部及び第2シール部による二重シール構造で密閉空間に設定し、密閉空間の圧力と大気圧との間で圧力差が生じるように構成し、圧力差が生じた状態で第1シール部または第2シール部の何れか一方の一部または全部が優先的に開放されるように設定しているため、ドアパージ処理または密閉空間清浄化処理に要する時間の短縮化を図りつつ、搬送対象物(ウェーハ等)の性状変化を招来し得る望ましくない気体を搬送室内に流入させない構造のロードポート、及びこのようなロードポートを備えたEFEMを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係るロードポートを備えたEFEMとその周辺装置の相対位置関係を示す模式的に示す側面図。
図2】実施形態に係るロードポートを一部省略して示す斜視図。
図3図2のx方向矢視図。
図4図2のy方向矢視図。
図5】容器がフレームから離間し且つロードポートドアが全閉位置にある状態の同実施形態に係るロードポートの側断面を模式的に示す図。
図6】容器がフレームに第1シール部を介して当接し且つロードポートドアが全閉位置にある状態を図5に対応して示す図。
図7】ロードポートドアが開放位置にある状態を図5に対応して示す図。
図8】同実施形態におけるウインドウユニットの全体斜視図。
図9図6の要部拡大図であって且つ第1シール部及び第2シール部によるシール状態が維持されている時点を模式的に示す図。
図10】同実施形態において第1シール部によるシール状態が解除されている時点を図9に対応して示す図。
図11】本発明の第2実施形態に係るロードポートの要部を図9に対応して示す図。
図12】同実施形態において第2シール部によるシール状態が解除されている時点を図11に対応して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0030】
本実施形態に係るロードポート2は、例えば半導体の製造工程において用いられ、図1に示すように、クリーンルーム内において、搬送室3の壁面の一部を構成し、搬送室3と容器4との間で被搬送物の出し入れを行うためのものである。以下の説明では、本発明に係るEFEM(Equipment Front End Module)の一部を構成するロードポート2であって、被搬送物である例えばウェーハWを容器4(例えば本実施形態ではFOUP)と搬送室3(ウェーハ搬送室)の間で出し入れ処理する態様について説明する。なお、EFEMで取り扱うウェーハのサイズはSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)規格として標準化されているが、生産性向上の観点からウェーハの大径化が進められ、これまでの直径300mmから直径450mm乃至直径500mmのウェーハへの移行が推進されている。
【0031】
以下の説明では、FOUP4、ロードポート2、搬送室3がこの順で並ぶ前後方向Dにおいて、搬送室3側を「後方」と定義し、FOUP4側を「前方」と定義し、前後方向D及び垂直方向Hに直交する方向を「側方」と定義する。したがって、本実施形態において、搬送室3のうちロードポート2を配置した壁面3Aは前壁面と捉えることができる。
本実施形態におけるFOUP4は、図1図5及び図9に示すように、後面42B(ベース21側の面)に形成した搬出入口41を通じて内部空間4Sを後方にのみ開放可能なFOUP本体42と、搬出入口41を開閉可能なFOUPドア43(本発明の「容器ドア」に相当)を備えている。FOUP4は、内部に複数枚の被搬送物であるウェーハWを上下方向Hに多段状に収容し、搬出入口41を介してこれらウェーハWを出し入れ可能に構成された既知のものである。
【0032】
FOUP本体42は、前壁、左右一対の側壁、上壁及び底壁を一体に有する。これら各壁によって囲まれる内部空間4SにウェーハWを複数段所定ピッチで載せることが可能な棚部(ウェーハ載置部)を備えたものである。上壁における上向面の中央部に、容器搬送装置(例えばOHT:Over Head Transport)等に把持されるフランジ部を設けている。FOUP本体42の後端部には、他の部分よりも上方及び両側方に突出させた鍔部45を設けている。つまり、FOUP本体42のうち、FOUPドア43が配置される領域の周囲部分に鍔部45を設けている。
【0033】
FOUPドア43は、ロードポート2の後述する載置台23に載置された状態においてロードポート2のロードポートドア22と対面するものであり、概略板状をなす。FOUPドア43の高さ寸法は、ロードポートドア22のうちFOUPドア43に所定の隙間を介して対向する面の高さ寸法と略等しく設定されている。なお、図5等では、ロードポートドア22のうちFOUPドア43に所定の隙間を介して対向する面の高さ寸法よりも僅かに大きい高さ寸法に設定されたFOUPドア43を模式的に示している。FOUPドア43には、このFOUPドア43をFOUP本体42にロックし得るラッチ部(図示省略)を設けている。FOUPドア43の内向き面431のうち搬出入口41をFOUPドア43で閉止した状態においてFOUP本体42に接触または近接する所定の部分にガスケット(図示省略)を設けている。そして、FOUPドア43の内向き面431よりも優先してガスケットをFOUP本体42に接触させて弾性変形させることで、FOUP4の内部空間4Sを密閉できるように構成されている。
【0034】
本実施形態に係るロードポート2は、図1乃至図4に示すように、搬送室3の前壁面3Aの一部を構成し、且つ搬送室3の内部空間3Sを開放するための開口部21aが形成された板状をなすベース21と、ベース21の開口部21aを開閉するロードポートドア22と、ベース21に略水平姿勢で設けた載置台23とを備えている。ここで、搬送室3の内部空間3Sを開放するための開口部21aは、ベース21によって仕切られる空間である搬送室3の内部空間3Sを開放するためにベース21に形成された開口である。
【0035】
ベース21は、起立姿勢で配置され、載置台23上に載置したFOUP4の搬出入口41と連通し得る大きさの開口部21aを有する略矩形板状のものである。本実施形態のロードポート2は、ベース21を搬送室3に密着させた状態で使用可能なものである。また、ベース21の下端には、キャスタ及び設置脚を有する脚部24を設けている。本実施形態では、両側方に起立させた支柱211と、これら支柱211により支持されたベース本体212と、ベース本体212に略矩形状に開放された窓部213に取り付けられたウインドウユニット214とを備えたベース21を適用している。
【0036】
ウインドウユニット214は、FOUPドア43と対向する位置に設けられており、このウインドウユニット214に設けた開口部215が、本発明における「搬送対象物が通過可能な開口部」に相当する。
【0037】
ここで、本実施形態でいう略矩形とは、四辺を備える長方形を基本形状としながら四隅を円弧によって滑らかにつないだ形状をいう。なお、図示していないが、ベース本体212のうち搬送室3側の面(前面)の外周近傍には、矩形枠状に形成された弾性材としてのガスケットを設け、搬送室3のうちベース21が装着される開口の縁部近傍にガスケットを接触させることで、ベース本体212と搬送室3との隙間を無くし、ベース本体212と搬送室3の隙間を通じて搬送室3の内部空間3Sから外部GSへのガスの漏れを抑制するようにしている。
【0038】
ロードポート2の載置台23は、ベース21のうち高さ方向中央よりもやや上方寄りの位置に略水平姿勢で配置される水平基台25(支持台)の上部に設けられる。この載置台23は、FOUP本体42の内部空間4Sを開閉可能とするFOUPドア43をロードポートドア22に対向させる向きでFOUP4を載置可能なものである。また、載置台23は、図5及び図6に示すように、FOUPドア43がベース21の開口部21aに接近する所定のドッキング位置(図6参照)と、FOUPドア43をドッキング位置よりもベース21から所定距離離間した位置(図5参照)との間で、ベース21に対して進退移動可能に構成されている。載置台23は、図2に示すように、上向きに突出させた複数の突起(ピン)231を有し、これらの突起231をFOUP4の底面に形成された穴(図示省略)に係合させることで、載置台23上におけるFOUP4の位置決めを図っている。なお、図5及び図6等では、載置台23上におけるFOUP4の載置状態として、載置台23の上面にFOUP4の底面が接触している状態を示している。しかしながら、実際には、載置台23の上面よりも上方に突出している複数の位置決め用突起231が、FOUP4の底面に形成された有底の穴に係合することでFOUP4を支持しており、載置台23の上面とFOUP4の底面は相互に接触せず、載置台23の上面とFOUP4の底面の間に所定の隙間が形成されるように規定されている。また、載置台23に対してFOUP4を固定するためのロック爪232を設けている。このロック爪232をFOUP4の底面に設けた被ロック部(図示省略)に引っ掛けて固定したロック状態にすることで、位置決め用の突起231と協働してFOUP4を載置台23上における適正な位置に案内しながら固定することができる。また、FOUP4の底面に設けた被ロック部に対するロック爪232のロック状態を解除することでFOUP4を載置台23から離間可能な状態にすることができる。
【0039】
本実施形態のロードポート2は、載置台23上の所定箇所に複数のノズル261を設けている。これらのノズル261は、FOUP4の底面側から当該FOUP4内に窒素ガスや不活性ガス又はドライエア等の適宜選択された気体である環境ガス(パージガスとも称され、主に窒素ガスやドライエアが用いられる)を注入し、FOUP4内の気体雰囲気を環境ガスに置換可能なボトムパージ部26を構成するものとして備えられたものである。これら複数のノズル261は、環境ガスをFOUP4内に注入するボトムパージ注入用ノズルや、FOUP4内の気体雰囲気を排出するボトムパージ排出用ノズルとして機能するものであり、例えば載置台23の幅方向に沿って離間した位置に対にして設けることができる。また、これら複数のノズル261は、FOUP4の底部に設けた注入口及び排出口(ともに図示省略)に嵌合した状態で連結可能なものである。各ノズル261(ボトムパージ注入用ノズル、ボトムパージ排出用ノズル)又は注入口及び排出口は、気体の逆流を規制する弁機能を有するものである。各ノズル261(ボトムパージ注入用ノズル、ボトムパージ排出用ノズル)とFOUP4の注入口及び排出口との嵌合部分は、ノズル261に設けたパッキン等によって密閉状態になる。なお、本実施形態のロードポート2は、載置台23上にFOUP4が載置されていない状態であれば、各ノズル261(ボトムパージ注入用ノズル、ボトムパージ排出用ノズル)を載置台23の上面よりも下方に位置付けている。そして、載置台23に設けた例えば加圧センサの被押圧部をFOUP4のうち底面部が押圧したことを検出した際に、制御部2Cからの信号によって、各ノズル261(ボトムパージ注入用ノズル、ボトムパージ排出用ノズル)を上方に進出させてFOUP4の注入口と排出口にそれぞれ連結するように構成している。
【0040】
ロードポートドア22は、FOUPドア43に当該ロードポートドア22を連結して、FOUPドア43をFOUP本体42から取り外し可能な蓋連結状態と、FOUPドア43に対する連結状態を解除し、且つFOUPドア43をFOUP本体42に取り付けた蓋連結解除状態との間で切替可能な連結機構221(図4参照)を備えている。ロードポートドア22は、連結機構221によってFOUPドア43を一体化した状態で保持したまま所定の移動経路に沿って移動可能なものである。本実施形態のロードポート2は、図5及び図6に示すように、ロードポートドア22を、当該ロードポートドア22が保持するFOUPドア43によってFOUP本体42の内部空間4Sを密閉する全閉位置(C)と、当該ロードポートドア22が保持するFOUPドア43をFOUP本体42から離間させて当該FOUP本体42の内部空間4Sを搬送室3内に向かって開放させる開放位置(O)との間で少なくとも移動可能に構成している。本実施形態のロードポート2は、図5及び図6に示す全閉位置(C)に位置付けたロードポートドア22の起立姿勢を維持したまま図7に示す開放位置(O)まで移動させることができ、さらに、図7に示す開放位置(O)から図示しない全開位置まで起立姿勢を維持したまま下方向に移動可能に構成している。すなわち、全閉位置(C)と全開位置との間におけるロードポートドア22の移動経路は、全閉位置(C)にあるロードポートドア22をその高さ位置を維持したまま開放位置(O)まで搬送室3側へ移動させた経路(水平経路)と、開放位置(O)にあるロードポートドア22をその前後位置を維持したまま下方へ移動させた経路(鉛直経路)とからなり、水平経路と鉛直経路が交わるポイントである開放位置(O)において、ロードポートドア22の移動方向が水平方向から鉛直方向に、或いは鉛直方向から水平方向に切り替わる。開放位置(O)に位置付けたロードポートドア22が鉛直方向及び水平方向の何れにも移動できるように、開放位置(O)に位置付けたロードポートドア22に保持されるFOUPドア43は、ロードポートドア22と共にベース21よりも後方の位置(FOUP本体42から完全に離間し、搬送室3の内部空間3Sに配置される位置)に位置付けられる。
【0041】
このようなロードポートドア22の移動は、ロードポート2に設けたドア移動機構27によって実現している。ドア移動機構27は、図5乃至図7に示すように、ロードポートドア22を支持する支持フレーム271と、スライド支持部272を介して支持フレーム271を前後方向Dに移動可能に支持する可動ブロック273と、可動ブロック273を上下方向Hに移動可能に支持するスライドレール274と、ロードポートドア22の水平経路に沿った前後方向Dの移動、及び鉛直経路に沿った上下方向Hの移動を行わせるための駆動源(例えば図示しないアクチュエータ)とを備えている。このアクチュエータに対して制御部2Cから駆動指令を与えることで、ロードポートドア22を前後方向D及び上下方向Hに移動させることができる。なお、前後移動用のアクチュエータと、上下移動用のアクチュエータとを別々に備えた態様であってもよいし、共通のアクチュエータを駆動源として前後移動及び上下移動を行う態様であってもよい。
【0042】
支持フレーム271は、ロードポートドア22の後部下方を支持するものである。この支持フレーム271は、下方に向かって延材した後に、ベース21に形成したスリット状の挿通孔21bを通過して搬送室3の外側(載置台23側)に張り出した略クランク状のものである。本実施形態では、支持フレーム271を支持するためのスライド支持部272、可動ブロック273及びスライドレール274を搬送室3の外側に配置している。これらスライド支持部272、可動ブロック273、スライドレール274は、ロードポートドア22を移動させる際の摺動箇所となる。本実施形態では、これらを搬送室3の外側に配置することで、ロードポートドア22の移動時にパーティクルが万が一発生した場合であっても、挿通孔21bを微小なスリット状に設定していることにより、搬送室3内にパーティクルが進入する事態を防止・抑制することができる。また、ドア移動機構27のうち搬送室3の外側に配置されるパーツや部分、具体的には、支持フレーム271の一部、スライド支持部272、可動ブロック273及びスライドレール274を被覆するカバー28を設けている。これにより、ベース21に形成した上述の挿通孔21bを通じて搬送室3内の環境ガスがEFEM1の外部GSに流出しないように設定している。
【0043】
本実施形態に係るロードポート2は、図5及び図9等に示すように、開口部21aの周縁近傍に設けた第1シール部5と、第2シール部6とを備え、ロードポートドア22が閉状態にあって且つ第1シール部5を介してFOUPドア43をベース21に当接させた状態において、FOUPドア43及びロードポートドア22が前後方向Dに所定の隙間を隔てて対向する空間を第1シール部5、第2シール部6によって外部GSから仕切った密閉空間DSが形成されるように構成している。本実施形態では、第1シール部5及び第2シール部6を上述のウインドウユニット214としてユニット化している。
【0044】
ウインドウユニット214は、図2乃至図4及び図8に示すように、当該ウインドウユニット214のうちFOUPドア43と対向する位置(図示例ではウインドウユニット214の中央部分)に略矩形状の開口部215を有する枠形状の窓枠部216を主体として構成されたものである。
【0045】
本実施形態では、窓枠部216の開口部215をFOUPドア43の外周(外寸)よりも僅かに大きい開口寸法に設定し、この開口部215を通じて、FOUPドア43がロードポートドア22に保持された状態で搬送室3内へ移動できるように構成している。窓枠部216の開口部215は、ベース21の開口部21aそのものである。
【0046】
第1シール部5は、ベース21の前面のうち開口部21aの開口縁近傍領域において開口部21aを周回するように設けられ、FOUP4を載置した載置台23をドッキング位置に位置付けた際に、ベース21の開口部21aの周縁とFOUP4との間をシールするものである(図6及び図9等参照)。ベース21にウインドウユニット214を取り付けた構成を採用している本実施形態では、窓枠部216の前面216Aのうち開口部215の開口縁近傍領域において開口部215を周回する位置に第1シール部5を設けている(図8参照)。具体的には、窓枠部216の前面216Aのうち、FOUP本体42の後面42BであるFOUPシール面(FOUP本体42のうちFOUPドア43の周囲部分に設定した面)と対向する位置に第1シール部5を周回させて取り付けている。矩形状をなす開口部215の開口縁近傍において開口部215を周回するように配置された第1シール部5は、FOUP4側から見て略矩形状をなす。したがって、第1シール部5は、図8に示すように、開口部215の開口上縁近傍に配置されている上辺部分5A、開口部215の開口下縁近傍に配置されている下辺部分5B、開口部215の開口両側縁近傍にそれぞれ配置されている側辺部分5Cに大別することができる。これら四つの辺部分5A,5B,5Cを備える長方形を基本形状とした本実施形態の第1シール部5は、四隅を円弧によって滑らかにつないだ形状を有する。
【0047】
そして、本実施形態では、図9に示すように、第1シール部5の大部分を断面形状が略円形の弾性体(円形弾性体D1)で形成し、一部を断面形状が略円形の弾性体よりも弾性変形しやすい弾性体(非円形弾性体D2)で形成している。具体的には、第1シール部5のうち下辺部分5B全体、左右両側辺部分5C全体、及び上辺部分5Aの幅方向両端部を含む所定部分を円形弾性体D1で形成し、第1シール部5のうち上辺部分5Aの幅方向中央部分を非円形弾性体D2で形成している。本実施形態の非円形弾性体D2は、断面形状が棒形状(断面視長手方向の寸法が略円形の弾性体の直径よりも大きい棒形状)であって且つ丸みを帯びた先端部分が前方に向かって漸次上方に変位する姿勢(跳ね上がるような姿勢、先端部分が密閉空間DSの外GSに向かう方向に変位する姿勢)で配置した弾性体である。なお、図5乃至図8では、第1シール部5を円形弾性体D1と非円形弾性体D2に明確に区別せずに模式的に示している。
【0048】
このような第1シール部5は、FOUP4を載置した載置台23をドッキング位置に位置付けた際に、ベース21の開口部21aの周縁とFOUP4との間に介在してシール機能を発揮する。シール機能を発揮する状態において、第1シール部5によるシール領域を含む密閉空間DSと外部GS(大気圧下)との差圧が例えば500Pa(G)以下、好ましくは300Pa(G)以下である場合に、第1シール部5のうち非円形弾性体D2で形成した部分は、図10に示すように、円形弾性体D1で形成した部分よりも優先してシール状態が解除されて開放される。以下では、第1シール部5のうち非円形弾性体D2で形成した部分を優先開放部分Xとし、円形弾性体D1で形成した部分を非開放部分Yとする。
【0049】
図9には、所定のドッキング位置に位置付けた載置台23上に載置されているFOUP4に対して第1シール部5(優先開放部分X及び非開放部分Yの両方)が弾接している状態を示している。本実施形態のロードポート2は、第1シール部5をロードポートドア22のうちFOUP4に最も近い端面よりもFOUP4側に所定寸法L2(例えば0.1mm以上で3mm以下)だけ突出した形態で配置している。したがって、FOUPドア43及びロードポートドア22が相互に接触することなく、ベース21とロードポートドア22の間に形成される密閉空間DSの高い密閉性を第1シール部5によって維持することができる。
【0050】
すなわち、図9に示すように、所定のドッキング位置に位置付けた載置台23上に載置されているFOUP本体42の後面42Bに対して、第1シール部5が弾接する。特に、第1シール部5の優先開放部分Xは、FOUP4に弾接することで、FOUP4に弾接する前の時点よりも先端部分が上方(密閉空間DSの外GSに向かう方向)に押し上げられた形態に弾性変形する。また、第1シール部5のうち非開放部分Yは、所定のドッキング位置に位置付けた載置台23上に載置されているFOUP本体42の後面42Bに対して弾接することで、FOUP4に弾接する前の時点よりも前後方向Dに押し潰された形態に弾性変形する。このような第1シール部5とFOUP4との弾接状態が維持されることで、良好なシール領域を形成することができる。
【0051】
なお、図5乃至図7では、第1シール部5及び第2シール部6を黒く塗りつぶした略楕円形状のマークで模式的に示している。また、図6及び図7では、FOUP本体42の後面42B(シール面)がベース21(ウインドウユニット214)に接触しているが、実際には、FOUP本体42のシール面はベース21(ウインドウユニット214)に接触せず、上述したように、FOUP本体42のシール面とベース21(ウインドウユニット214)の間に第1シール部5が介在している。
【0052】
第2シール部6は、ベース21の後面21Bのうち開口部21aの開口縁近傍領域において開口部21aを周回するように設けられる。ベース21にウインドウユニット214を取り付けた構成を採用している本実施形態では、窓枠部216の後面216Bのうち開口部215の開口縁近傍領域において開口部215を周回する位置に第2シール部6を設けている。具体的には、窓枠部216の後面216Bのうち、ロードポートドア22の前面、つまりベースの全面21Aの所定部分に設定したシール面(ロードポートドア22における外縁部分に設定した面)に対向する位置に第2シール部6を周回させて取り付けている。本実施形態では、ロードポートドア22の外縁部分に鍔状の薄肉部を形成し、この薄肉部をロードポートドア22のシール面に設定している。矩形状をなす開口部215の開口縁近傍において開口部215を周回するように配置された第2シール部6は、搬送室3側から見て略矩形状をなす。
【0053】
本実施形態では、第2シール部6として断面形状が略円形のOリングを適用し、共通のOリングを、第2シール部6の上辺部分6A、下辺部分6B、左右の両側辺部分6Cに亘って配置している。このように、本実施形態では、第2シール部6の全部を断面形状が略円形の弾性体(円形弾性体D1)で形成し、第2シール部6の全部を「非開放部分Y」に設定している。そして、ロードポートドア22を閉位置に位置付けた際に、第2シール部6を介してロードポートドア22(より具体的には薄肉部)が窓枠部216の後面216Bに当接した状態になり、第2シール部6がベース21の開口部21aの周縁とロードポートドア22との間をシールする(図9参照)。その結果、ロードポートドア22を閉位置に位置付けた状態では、搬送室3の内部空間3Sから搬送室3の外部へのガスの流出や、搬送室3の外部から搬送室3の内部空間3Sへのガスの流入を抑制することができる。なお、ロードポートドア22のうち薄肉部を除く部分である中央部分は薄肉部よりも厚みの大きい厚肉部であり、この厚肉部がベース21の開口部21a(窓枠部216の開口部215)から前方に向かって張り出す形態で開口部21a(開口部215)に臨むように設定している。
【0054】
本実施形態のロードポート2では、窓枠部216の前面216A及び後面216Bに、それぞれ開口部215の開口縁近傍を周回するように断面が凹形状となる取付溝(図9及び図10において第1シール部5、第2シール部6が嵌まっている凹部)を形成している。各シール取付溝に第1シール部5、第2シール部6をそれぞれ挿入した状態で緊密に取り付けている。特に、第1シール部5のうち優先開放部分Xが取り付けられるシール取付溝は、溝の奥方に向かって漸次広がる断面台形に設定され、この台形状のシール取付溝に、優先開放部分Xの基端部に設けた差込部を嵌合させた状態で、接着剤等の適宜の手段によって固定している。これにより、第1シール部5の優先開放部分Xがシール取付溝から抜け外れる事態を防止している。この取付状態において、第1シール部5及び第2シール部6のうち取付溝に収容されていない部分は、取付溝の外に露出している。
【0055】
また、本実施形態のロードポート2は、ドッキング位置に位置付けた載置台23上のFOUP4がベース21から離間する方向(後方)に移動することを規制する移動規制部Lを備えている。本実施形態では、移動規制部Lをウインドウユニット214としてユニット化している。
【0056】
移動規制部Lは、ドッキング位置に位置付けた載置台23上のFOUP4がベース21から離間する方向(後方)に移動することを規制する移動規制状態と、ドッキング位置に位置付けた載置台23上のFOUP4がベース21から離間する方向へ移動することを許容する移動許容状態との間で切替可能なものである。すなわち、移動規制部Lは、移動規制状態になることで、所定のドッキング位置に位置付けた載置台23上に載置されているFOUP4を保持することが可能である。
【0057】
本実施形態における移動規制部Lは、図8等に示すように、FOUP本体42のうちFOUPドア43の周囲部分に設けられた鍔部45に係合可能な係合片L1と、係合片L1を鍔部45に係合させた状態でベース21側に移動させる引き込み部L2とを備えている。このような移動規制部Lは、FOUP本体42の鍔部45を係合片L1とベース21との間に挟み込む状態で保持可能なクランプ機能を発揮する。本実施形態では、ベース21にウインドウユニット214を設けている。したがって、移動規制部Lは、FOUP本体42の鍔部45を係合片L1とウインドウユニット214の窓枠部216との間に挟み込む機能を有する。
【0058】
係合片L1は、先端を含む全体が前後方向DにおいてFOUP4に対面しない非対面姿勢と、FOUP4に対面する対面姿勢(図8に示す姿勢)との間で姿勢変更可能なものである。本実施形態に係るロードポート2は、係合片L1を非対面姿勢にすることで、FOUP4を載置している載置台23を、FOUPドア43が開口部215に接近する所定のドッキング位置と、ドッキング位置よりも搬送室3から所定距離離間した位置との間で移動させることができる。すなわち、移動規制部Lは、係合片L1を非対面姿勢にすることで移動許容状態になる。
【0059】
このような移動規制部Lは、係合片L1を非対面姿勢にした状態で、アンドッキング位置にある載置台23を、FOUP4を載置したままドッキング位置に移動させた時点以降に、非対面姿勢にある係合片L1を搬送室3側に引き込む方向に移動させて非対面姿勢から対面姿勢に変更する。すると、係合片L1をFOUP本体42の後面42Bにおいて外側方に張り出した鍔部45に係合させることができる。そして、係合片L1を引き込み部L2によって搬送室3側引き込むことで、係合片L1とFOUP4の鍔部45との係合状態を維持したまま係合片L1が搬送室3側(後方)に引き込まれる。その結果、FOUP4の鍔部45を係合片L1とベース21の間に挟み込む状態になり、ドッキング位置に位置付けた載置台23上のFOUP4がベース21から離間する方向に移動することを規制することができる。すなわち、移動規制部Lは、係合片L1を非対面姿勢から対面姿勢に変更させて、その係合片L1を引き込み部L2によってベース21側に引き込むことで移動規制状態(図8に示す状態)になる。
【0060】
本実施形態のロードポート2では、このような移動規制部Lを、図2及び図8に示すように、ベース21のうち略矩形状をなす開口部21aの両サイドにおける上端近傍及び下端近傍の合計4箇所にそれぞれ配置している。具体的には、ウインドウユニット214のうち窓枠部216のうち略矩形状をなす開口部215の両側部において上下方向に離間させた合計4箇所に移動規制部Lを配置している。
【0061】
本実施形態では、図9に示すように、ドッキング位置に位置付けた載置台23に載置されているFOUP4のうちFOUP本体42の後面42Bが、所定寸法の隙間を隔ててベース21の前面21A(窓枠部216の前面216A)に接近し、その隙間を第1シール部5によってシール可能に構成している。また、本実施形態のロードポート2は、載置台23を所定のドッキング位置に位置付けた時点以降、ロードポートドア22が閉状態にあれば、FOUPドア43とロードポートドア22が所定寸法の隙間を隔てて接近するとともに、ロードポートドア22とベース21との間を第2シール部6でシール可能に構成している。したがって、ロードポートドア22とFOUPドア43が所定寸法の隙間を隔てて対向する空間は、第1シール部5及び第2シール部6によって仕切られた密閉空間DSになる。
【0062】
本実施形態に係るロードポートドア22は、図5及び図9等に示すように、密閉空間DSに対してガスを注入するガス注入部71と、密閉空間DSの気体を排気するガス排出部72とを備えている。ガス注入部71は、例えば長尺のノズルを用いて構成したものであり、ノズルの一端(ガス注入方向下流端)をロードポートドア22の外表面まで到達させるとともに、ノズルの他端(ガス注入方向上流端)近傍にガス注入バルブ71aを接続している。同様に、ガス排出部72は、例えばノズルを用いて構成したものであり、ノズルの一端(ガス排出方向上流端)をロードポートドア22の外表面まで到達させるとともに、ノズルの他端(ガス排出方向下流端)近傍にガス排出バルブ72aを接続している。このような構成により、ガス注入部71によって密閉空間DSに環境ガス(本実施形態では窒素ガス)を供給し、ガス排出部72によって密閉空間DSを排気することで、密閉空間DSをガスパージすることが可能である。FOUPドア43及びロードポートドア22が所定隙間を隔てて対向する密閉空間DSをガスに置換するガスパージ処理が本発明における「ドアパージ処理」である。
【0063】
図5に示すように、ガス注入部71のガス注入方向上流端、ガス注入バルブ71a、ガス排出部72のガス排出方向下流端、ガス排出バルブ72aは、上述のカバー28によって被覆されている。なお、ガス注入部71及びガス排出部72を構成する各ノズルの所定部分は、ロードポートドア22を厚み方向(前後方向D)に貫通している。ロードポートドア22のうちノズルが貫通する部分に適宜のシール処理を施している。本実施形態では、フレキシブル性或いは伸縮性(蛇腹タイプも含む)に優れたノズルを適用している。ノズルの一部または全部をチューブで代用することもできる。図5等においてガス注入部71及びガス排出部72のうち搬送空間3Sに露出している部分は、実際には、ロードポートドア22を搬送室3側から被覆するドアカバー(図示省略)内に収められている。
【0064】
このように構成したロードポート2は、制御部2Cから各部に駆動指令を与えることで所定の動作を実行する。本実施形態のEFEM1は、このようなロードポート2を搬送室3の前壁面3Aに複数(例えば3台)並べて配置している。
【0065】
EFEM1は、図1に示すように、共通のクリーンルーム内に相互に隣接する位置に設けたロードポート2及び搬送室3を主体として構成されたものである。EFEM1の作動は、ロードポート2のコントローラ(図2に示す制御部2C)や、EFEM1全体のコントローラ(図1に示す制御部3C)によって制御される。
【0066】
搬送室3のうちロードポート2を配置した前壁面3Aに対向する後壁面3Bには例えば処理装置M(半導体処理装置)が隣接して設けられる。クリーンルームにおいて、処理装置Mの内部空間MS、搬送室3の内部空間3S及びロードポート2上に載置されるFOUP4の内部空間4Sは高清浄度に維持される。一方、ロードポート2を配置した空間、換言すれば処理装置M外、EFEM1外は比較的低清浄度となる。なお、図1は、ロードポート2及び搬送室3の相対位置関係、及びこれらロードポート2及び搬送室3を備えたEFEM1と、処理装置Mとの相対位置関係を模式的に示した側面図である。
【0067】
処理装置Mは、相対的に搬送室3に近い位置に配置したロードロック室と、相対的に搬送室3から遠い位置に配置した処理装置本体とを備えたものである。本実施形態では、図1に示すように、EFEM1の前後方向Dにおいてロードポート2、搬送室3、処理装置Mをこの順で相互に密接させて配置している。なお、処理装置Mの作動は、処理装置Mのコントローラ(図1に示す制御部MC)によって制御される。ここで、処理装置M全体のコントローラである制御部MCや、EFEM1全体のコントローラである制御部3Cは、ロードポート2の制御部2Cの上位コントローラである。
【0068】
搬送室3は、被搬送物であるウェーハWをFOUP4と処理装置Mとの間で搬送可能な搬送ロボット31を内部空間3Sに設けている。搬送ロボット31は、例えば複数のリンク要素を相互に水平旋回可能に連結し、先端部にハンドを設けたアームと、アームの基端部を構成するアームベースを旋回可能に支持し且つ搬送室3の幅方向(ロードポート2の並列方向)に走行する走行部とを備え、アーム長が最小になる折畳状態と、アーム長が折畳状態時よりも長くなる伸長状態との間で形状が変わるリンク構造(多関節構造)のものである。なお、搬送室3の側面にバッファステーション、アライナの何れか一方または両方を配置したEFEMを構成することも可能である。
【0069】
搬送室3は、ロードポート2及び処理装置Mが接続されることによって、内部空間3Sが略密閉された状態となる。搬送室3内は、図示しないガス供給口及びガス排出口を用いて所定のガス(不活性ガスまたは窒素ガス等の環境ガス)によるパージ処理を行うことで、環境ガス濃度を高めることが可能となっている。そして、ウェーハ搬送室3の上部にファンフィルタユニット32を設けて下方に向けてガスを送出し、下部に設けたケミカルフィルタよりガスの吸引を行う。吸引したガスは、循環ダクト321を介して上部のファンフィルタユニット32に向けて戻される。こうすることで、搬送室3の内部空間3Sで上方から下方に向かう気流であるダウンフローを形成する。したがって、搬送室3内の環境ガスを循環させて清浄な状態に維持することができる。また、搬送室3の内部空間3SにウェーハWの表面を汚染するパーティクルが存在した場合であっても、ダウンフローによってパーティクルを下方に押し下げ、搬送中のウェーハWの表面へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。図1には、ファンフィルタユニット32によるガスの流れを矢印で模式的に示している。
【0070】
本実施形態に係るロードポート2は、制御部2Cから各部に駆動指令を与えることで所定の動作を実行する。本実施形態では、ロードポート2が有する制御部2Cから各部に駆動指令を与えるように構成している。制御部2Cは、CPU、メモリ及びインターフェースを備えた通常のマイクロプロセッサ等により構成されるもので、メモリには予め処理に必要なプログラムが格納してあり、CPUは逐次必要なプログラムを取り出して実行し、周辺ハードリソースと協働して所期の機能を実現するものとなっている。
【0071】
次に、ロードポート2を備えたEFEM1の使用方法及び作用と併せて、EFEM1の動作フローを説明する。
【0072】
先ず、搬送室3のうちロードポート2を配置した共通の前壁面3Aに沿って延伸する直線上の搬送ライン(動線)で作動するOHT等の容器搬送装置によりFOUP4がロードポート2の上方まで搬送され、載置台23上に載置される。この際、例えば載置台23に設けた位置決め用突起231がFOUP4の位置決め用凹部に嵌まる。また、制御部2Cが、載置台23上のロック爪232をロック状態にする(ロック処理)。具体的には、FOUP4の底面に設けた被ロック部(図示省略)に対して、載置台23上のロック爪232を引っ掛けて固定することでロック状態になる。これにより、FOUP4を載置台23上の所定の正規位置に載置して固定することができる。本実施形態では、搬送室3の幅方向に3台並べて配置したロードポート2の載置台23にそれぞれFOUP4を載置することができる。また、FOUP4が載置台23上に所定の位置に載置されているか否かを検出する着座センサ(図示省略)によりFOUP4が載置台23上の正規位置に載置されたことを検出するように構成することもできる。
【0073】
次いで、本実施形態のロードポート2では、制御部2Cが、図5に示す位置にある載置台23を図6に示すドッキング位置まで移動させる(ドッキング処理)。すなわち、図5に示す位置にある載置台23をベース21に向かって移動させて、ベース21のうち開口部21aの周縁における最もFOUP本体42に近いベース最前面21AにFOUP4の後面(相互に面一なFOUP本体42の後面42B及びFOUPドア43の外向き面)を所定距離まで接近させる。このドッキング処理を実行するまでは、移動規制部Lが、係合片L1を非対面姿勢にした移動許容状態に維持されている。なお、図5等における符号21Bが指す面は、ベース21のうち開口部21a(窓枠部216の開口部215)の周縁においてFOUP本体42から最も遠いベース最後面である。
【0074】
そして、載置台23を所定のドッキング位置まで移動させると、本実施形態のロードポート2では、制御部2Cが、移動規制部Lを用いてFOUP4の少なくとも両サイドを保持して固定する処理を行う。具体的には、移動規制部Lの引き込み部L2によって係合片L1をベース21側に引き込む。すると、係合片L1は非対面姿勢から対面姿勢に切り替わり、FOUP本体42の鍔部45に係合した状態になる。この状態で、ドッキング位置に位置付けた載置台23上のFOUP4の鍔部45を、移動規制部Lの係合片L1とベース最前面21A(窓枠部216の前面216A)との間で挟み込むことができる。すなわち、容器クランプ処理は、移動規制部Lを移動許容状態から移動規制状態に切り替える処理で実現できる。
【0075】
なお、移動規制部Lを移動許容状態から移動規制状態に切り替えるタイミングは、載置台23をドッキング位置に位置付けた時点以降であればよく、載置台23をドッキング位置に位置付けた直後に、移動規制部Lを移動許容状態から移動規制状態に切り替える構成にしてもよい。また、載置台23をドッキング位置に位置付けてから所定時間経過後に、移動規制部Lを移動許容状態から移動規制状態に切り替える構成にしてもよい。
【0076】
そして、本実施形態のロードポート2では、容器クランプ処理を終了した時点で、ベース21の開口部21a(窓枠部216の開口部215)の近傍において、ドッキング位置に位置付けた載置台23上に載置されているFOUP4のうちシール面に設定したFOUP本体42の後面42Bが、ベース21の第1シール部5に弾接し、第1シール部5の弾性変形によりFOUP4とベース21の間に良好なシール領域を形成することができる。すなわち、本実施形態のロードポート2では、容器クランプ処理を実施することによって、FOUP4とベース21の間に良好なシール領域を形成する処理(シール処理)を同時に実施することができる。
【0077】
具体的に、第1シール部5が弾接する部分は、FOUP本体42の後面42BのうちFOUP4の搬出入口41の近傍を周回する部分である。本実施形態のロードポート2では、FOUP本体42の後面42Bをシール面とし、振動等によってシール面が変動した場合にも直ちに追随することが可能なシール領域を形成している。本実施形態のロードポート2では、容器クランプ処理を経ることによって、ドッキング位置に位置付けた載置台23上のFOUP4を移動規制部Lで固定した状態を維持することができる。このため、第1シール部5に弾接するFOUP4がベース21から離間する方向に移動したり、傾動する事態を防止することができる。特に、本実施形態では、略矩形状をなす開口部215の両サイドにおける上端近傍及び下端近傍の合計4箇所に配置した移動規制部Lによって、FOUP本体42の前端部における両サイドの上端近傍及び下端近傍の合計4箇所を固定することができる。
【0078】
本実施形態のロードポート2では、制御部2Cが、容器クランプ処理及びシール処理に続いて、密閉空間DSに窒素ガスを供給するとともに、それまで密閉空間DSに留まっていたガス(大気)をガス排出部72よって排出する処理を行う(ドアパージ処理)。ドアパージ処理は、適宜のガス供給源から供給される窒素ガスを密閉空間DS内に注入して、密閉空間DS内を窒素ガスに置換する処理である。具体的には、ドアパージ用ガス注入バルブ71aを開くことで、ガス注入部71から窒素ガスを密閉空間DSに供給すると同時に、ドアパージ用ガス排出バルブ72aを開くことで、それまで密閉空間DSに留まっていたガス(大気)をガス排出部72より排出する処理である。ここで、大気とは、ウェーハWを酸化させるなど、ウェーハWの性状を変化させるおそれのある酸素、水分、パーティクルなどを包含する。なお、FOUPドア43の内部が中空であり、FOUPドア43の後面に形成した孔(ドア保持用孔等)を通じてFOUPドア43の内部空間が密閉空間DSと連通する構成であれば、本実施形態のドアパージ処理によってFOUPドア43の内部空間を窒素ガスに置換することが可能である。
【0079】
本実施形態では、ドアパージ処理時に窒素ガスの供給量を窒素ガスの排出量よりも多くすることで、密閉空間DSを陽圧にするように設定している。そして、図10に示すように、密閉空間DSが陽圧になった時点以降の適宜のタイミングで、第1シール部5のうち優先開放部分X(本実施形態では上辺部分5Aの幅方向中央部分)が、第1シール部5の他の部分及び第2シール部6、つまり非開放部分Yよりも優先して開放された状態になる。すなわち、第1シール部5のうち先端部分を跳ね上げた形態でFOUP4のシール面に弾接している優先開放部分Xが、密閉空間DSに充満した窒素ガスに押圧されて弾性変形し、優先開放部分Xの先端部が跳ね上がる方向に変形することで、FOUP4のシール面に対する弾接状態が解除される。その結果、本実施形態に係るロードポート2は、第1シール部5のうち開放された(弾接状態が解除された)部分、すなわち優先開放部分Xから密閉空間DS内の窒素ガスを排気することが可能である(図10に排気方向を矢印で模式的に示す)。第1シール部5の優先開放部分Xから窒素ガスを排気可能になった時点以降も密閉空間DSに対する窒素ガスの供給及び窒素ガスの排出を継続して行い、密閉空間DSへガスを充填し続ける。ドアパージ処理開始から所定時間の経過後、ドアパージ用ガス注入バルブ71a及びドアパージ用ガス排出バルブ72aを閉じることで、密閉空間DSへのガスの充填を終了する。なお、ガス注入部71から密閉空間DSにガスを注入するガス注入動作と、ガス排出部72によって密閉空間DSからガスを排出する排出動作を繰り返してもよい。本実施形態のロードポート2は、ドアパージ処理中も第1シール部5の非開放部分Y及び第2シール部6の非開放部分Yのシール状態を維持することができる。
【0080】
本実施形態のロードポート2は、第1シール部5のうち優先開放部分Xの近傍であって且つ密閉空間DSの外GSである大気圧下に排気ユニット8を設けている(図9及び図10に二点鎖線で示す)。排気ユニット8は、第1シール部5のうち密閉空間DSの陽圧時に開放される部分(優先開放部分X)を被覆し得る開口寸法に設定した排気口81と、排気口81を通過する気体を吸引する吸引タンク82とを備えたものである。また、排気ユニット8は、EFEM1が設置されている工場の排気ブロア等の排気系(図示省略)に接続されて余剰気体を強制的に吸引及び排気可能に構成されている。なお、排気ブロアと排気ユニット8との間に適宜の流量調整弁または遮蔽弁を配置することにより、排気ユニット8の吸引力或いは排出量を調整可能に構成している。
【0081】
したがって、本実施形態に係るロードポート2は、第1シール部5のうち開放された(弾接状態が解除された)優先開放部分Xを通じて密閉空間DS内から密閉空間DSの外GSに漏れる窒素ガスを排気ユニット8内に誘導して排気、吸引することができる。なお、ドアパージ処理の実行中、密閉空間DS内が陽圧になった時点よりも後の適宜のタイミングで、密閉空間DSに対する窒素ガスの供給量を、密閉空間DSの陽圧を維持できる限りにおいて(密閉空間DSを陽圧から大気圧に近付くように減圧しながら)低減することによりガス使用量及びガス使用時間を制限し、コストの削減を図ることが可能である。また、排気ユニット8内の酸素濃度を計測する酸素濃度計を設けておくことにより、排気ユニット8内の酸素濃度を把握することができる。酸素濃度計の検出値を制御部に入力可能に構成した場合には、酸素濃度計の検出値に応じた適宜の制御を行うことが可能である。
【0082】
本実施形態のロードポート2では、制御部2Cが、ドアパージ処理に続いて、連結機構221を蓋連結状態に切り替える(蓋連結処理)。この処理により、予め全閉位置(C)で待機させているロードポートドア22にFOUPドア43を連結機構221で連結して所定の隙間を介して対向する状態で保持することができる。また、FOUP本体42からFOUPドア43を取り外し可能な状態になる。また、本実施形態のロードポート2では、載置台23上の正規位置にFOUP4が載置された時点で、制御部2Cが、載置台23に設けた例えば加圧センサの被押圧部をFOUP4のうち底面部が押圧したことを検出する。これをきっかけに、制御部2Cが、載置台23に設けたノズル261(ガス導入部として機能するノズルを含む全てのノズル261)を載置台23の上面よりも上方へ進出させる駆動命令(信号)を与える。その結果、これら各ノズル261をFOUP4の注入口と排出口にそれぞれ連結し、FOUP4の内部空間4Sに窒素ガスを供給するとともに、FOUP4内の気体雰囲気を排出し、FOUP4の内部空間4Sを窒素ガスに置換して、FOUP4内の水分濃度及び酸素濃度をそれぞれ所定値以下にまで低下させてFOUP4内におけるウェーハWの周囲環境を低湿度環境及び低酸素環境にする(ボトムパージ処理)。
【0083】
そして、本実施形態のロードポート2では、制御部2Cが、蓋連結処理に続いて、FOUPドア43をロードポートドア22とともに移動させて、ベース21の開口部21a及びFOUP4の搬出入口41を開放して、FOUP4内の密閉状態を解除する処理(容器密閉解除処理)を実行する。具体的には、制御部2Cが、図7に示すように、ロードポートドア22をドア移動機構27により全閉位置(C)からチャンバ5の内部空間5Sにおいて搬送室3側に向かって上述の水平経路に沿って上述の開放位置(O)まで移動させ、さらに、上述の開放位置(O)に到達したロードポートドア22を上述の鉛直経路に沿って所定距離降下させて全開位置(図示省略)に位置付ける。この容器密閉解除処理の実行開始時点では、上述のドアパージ処理及びボトムパージ処理(容器内パージ処理)によって密閉空間DS及びFOUP4の内部空間4Sは窒素ガスで充填されているため、ロードポートドア22を搬送室3の内部空間3S側に移動させる処理時に、ドアパージ処理実行前の時点でFOUPドア43に付着しているパーティクル等が舞うことを防止することができる。
【0084】
これにより、FOUP本体42の内部空間4S及び搬送室3の内部空間3Sが相互に連通した状態になる。搬送空間3S内で生じている下降気流の窒素も清浄に維持されている。ここで、容器密閉解除処理を実施する際、密閉空間DSの体積(容積)が増加すると密閉空間DSは負圧になり易く、外部空間GSから密閉空間DSに大気が入り込むおそれがある。そこで、本実施形態では、外部空間GSに対して密閉空間DSが陽圧の状態で容器密閉解除処理を実施する。具体的には、容器密閉解除処理を実行する時点においてもガス注入部71から窒素ガスを供給し続ける。このようにして、本実施形態では、密閉空間DSが少なくとも負圧でない状態で容器密閉解除処理を行うように設定している。また、容器密閉解除処理は、搬送空間3Sに対して密閉空間DSが同程度の圧で開放することが好ましい。なお、外部空間GSと搬送空間3Sの差圧は、3乃至500Pa(G)であり、好ましくは5乃至100Pa(G)である。容器密閉解除処理によってFOUP本体42の内部空間4Sと搬送室3の内部空間3Sとを連通させた状態で、搬送室3の内部空間3Sに設けた搬送ロボット31がFOUP4内にアクセスして、ウェーハWに対する搬送処理を実施する(搬送処理)。搬送処理において実施可能な搬送処理内容は、搬送ロボット31がハンドでFOUP4内のウェーハWを取り出す処理や、処理装置Mによる適宜の処理を終えた処理済みのウェーハWをハンドでFOUP4内に入れる処理である。例えば搬送処理によってFOUP4内のウェーハWを搬送室3内に搬送した場合、搬送室3内に搬送されたウェーハWは、搬送ロボット31によって処理装置M(具体的にはロードロック室)に搬送したり、バッファステーション又はアライナに搬送される。また、処理装置Mによる適宜の処理を終えた処理済みのウェーハWは、搬送ロボット31によって処理装置Mの内部空間MSからFOUP4の内部空間4Sに直接収納されたり、バッファステーションを経由してからFOUP4の内部空間4Sに順次収納される。
【0085】
そして、本実施形態に係るロードポート2では、FOUP4に対する搬送ロボット31の次のアクセスを実行する場合、搬送処理を繰り返し行う。本実施形態に係るロードポート2では、FOUP4内のウェーハWが全て処理装置Mによる処理工程を終えたものになると、制御部2Cが、ドア移動機構27によりロードポートドア22を全閉位置(C)に移動させて、ベース21の開口部21a及びFOUP4の搬出入口41を閉止して、FOUP4の内部空間4Sを密閉する処理(容器密閉処理)を実行する。
【0086】
続いて、制御部2Cが、連結機構221を蓋連結状態から蓋連結解除状態に切り替える処理(蓋連結解除処理)を実行する。この処理により、連結機構221によるロードポートドア22とFOUPドア43の連結状態(蓋連結状態)を解除して、FOUP本体42にFOUPドア43を取り付けることができる。その結果、ベース21の開口部21a及びFOUP4の搬出入口41はそれぞれロードポートドア22、FOUPドア43によって閉止されて、FOUP4の内部空間4Sは密閉状態になる。
【0087】
本実施形態に係るロードポート2では、ドアパージ処理を停止すると、密閉空間DSは陽圧状態ではなくなり、第1シール部5のうちドアパージ処理時に開放されていた部分(優先開放部分X)が弾性復帰し、FOUP4のシール面に弾接する。しなしながら、上述した密閉空間DSの陽圧状態ではないことに起因する不具合の発生を回避するためには、密閉空間DSの陽圧状態を維持することが肝要である。
【0088】
続いて、本実施形態に係るロードポート2では、制御部2Cが、移動規制部LによるFOUP4の固定状態(クランプ状態)を解除する容器クランプ解除処理を行う。具体的には、移動規制部Lの引き込み部L2によってベース21側に引き込まれた位置にある係合片L1をベース21から離間する方向に移動させる。すると、係合片L1が対面姿勢から非対面姿勢に自動的に切り替わり、FOUP本体42の鍔部45に対する係合片L1の係合状態が解除され、移動規制部LによるFOUP4の固定状態を解除することができる。すなわち、容器クランプ解除処理は、移動規制部Lを移動規制状態から移動許容状態に切り替える処理で実現できる。
【0089】
次いで、本実施形態のロードポート2では、制御部2Cが、載置台23をベース21から離間する方向に移動させる処理(ドッキング解除処理)を実行する。また、制御部2Cが、載置台23上のロック爪232でFOUP4をロックしている状態を解除する(ロック解除処理)。具体的には、FOUP4の底面に設けた被ロック部に対するロック爪232のロック状態を解除する。これにより、所定の処理を終えたウェーハWを格納したFOUP4は、各ロードポート2の載置台23上から容器搬送装置に引き渡され、次工程へと運び出される。
【0090】
以上のように、本実施形態に係るロードポート2は、ロードポートドア22が閉状態にあって且つ第1シール部5を介して容器4をベース21に当接させた状態において、ロードポートドア22とFOUPドア43が所定寸法の隙間を隔てて対向する空間を第1シール部5及び第2シール部6によって仕切られた密閉空間DSになるように構成し、この密閉空間DSに対してガスを注入するガス注入部71をさらに備え、密閉空間DSをガスに置換するドアパージ処理を実行可能なものであるため、FOUPドア43に付着しているパーティクルや、FOUPドア43とロードポートドア22との間に存在してウェーハWを酸化させるなど、ウェーハWの性状を変化させるおそれのある酸素、水分、パーティクルなどを含む大気が、ロードポートドア22を開放した際に搬送空間3S及びFOUP4の内部に流入する事態を防止・抑制できる。つまり、FOUPドア43を開放して密閉空間DSが開放される前に、密閉空間DSの酸素、水分、パーティクルを排除できる。
【0091】
加えて、本実施形態に係るロードポート2は、第1シール部5及び第2シール部6のうちFOUP4側のシール部である第1シール部5の一部または全部を、ドアパージ処理時に密閉空間DSを陽圧にすることで第2シール部6よりも優先して開放される優先開放部分Xに設定し、この開放された部分を通じて密閉空間DSの少なくともガス(ドアパージ処理実行前に密閉空間DSに存在する空気やパーティクル等が含まれる場合もある)を外部GSに排気可能に構成しているため、密閉空間DSが陽圧になることに起因してロードポートドア22の閉止力が弱まり、ドアパージ処理実行前の時点で、FOUPドア43に付着しているパーティクルや、FOUPドア43とロードポートドア22との間に存在する酸素、水分、パーティクルなどを含む大気が密閉空間DSから搬送空間3Sに流入する事態を防止することができる。これにより、FOUP4内、密閉空間DS及び搬送空間3Sの高い清浄度を維持できるとともに、密閉空間DSに対してガスを短時間で大量に供給して密閉空間DSを陽圧状態することが許容され、密閉空間DSにガスを少しずつ供給して圧力調整しながら密閉空間DS内のゴミ等を除去する態様と比較してタクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0092】
さらに、本実施形態に係るロードポート2によれば、密閉空間DSの圧力を他の空間(FOUP4の内部空間4S、搬送空間3S等)の圧力と均等にするといった特別な制御が不要であり、コントロールするための制御機器(バルブや配管類)が不要になることによるコストダウンやタクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0093】
特に、本実施形態に係るロードポート2は、優先開放部分Xの近傍であって且つ密閉空間DSの外GSである大気圧下に排気ユニット8を設けた構成であるため、密閉空間DSの圧力が高まった場合に、FOUP4側のシール部である第1シール部5に設定した優先開放部分Xから密閉空間DSの外GSへ漏洩する少なくともドアパージ用ガス等の気体を排気ユニット8によって効率良く排気することができる。特に、本実施形態では、密閉空間DS内の気体の流れを形成すべく、密閉空間DSの気体を排気するガス排出部72をガス注入部71とセットで設けている。ここで、密閉空間DSのガスを排気するガス排出部72を設けていない構成を採用した場合、密閉空間DSのうちシール状態が開放される部分(優先開放部分X)からのみ密閉空間DS内の気体が抜けていくことになり、密閉空間DS内にガスの入れ替わり難い場所ができるおそれがある。一方、本実施形態では、密閉空間DSの気体を積極的に排気するガス排出部72を備えた構成を採用しているため、ガス排出部72を備えていない構成と比較して、密閉空間DS内にガスが入れ替わり難い場所が生じる事態を防止・抑制できる。なお、ガス排出部72は、吸引するものであることが必須要件ではなく、大気開放するものであってもよい。大気開放する場合には、ガス排出部72を形成する配管(排気管)の径を大きくすることが好ましく、より具体的には、ガス注入部71を形成する配管(供給管)よりも径を大きくすることが望ましい。また、ガス注入部71やガス排出部72を複数設けた態様を採用することで、密閉空間DS内にガスが入れ替わり難い場所が生じる事態をより高い確率で防止・抑制できる。なお、本発明には、本実施形態に係るEFEMの一例として、敢えてガス排出部72を備えていない構成も含まれる。
【0094】
以上に説明した実施形態を第1実施形態とした場合、以下に、本発明の第2実施形態に係るロードポート2について説明する。
【0095】
第2実施形態に係るロードポート2は、第1実施形態に係るロードポート2と略同様の構成であり、第2シール部6の一部または全部を、密閉空間DSをガスに置換するドアパージ処理時に密閉空間DSを負圧にすることで第2シール部6よりも優先して開放される優先開放部分Xに設定している点が相違する。以下の説明及び図11図12において、第1実施形態に係るロードポート2の各部、各部分に対応する箇所には同じ符号を付している。
【0096】
第2実施形態に係るロードポート2が備える第1シール部5は、ベース21の前面21Aのうち開口部21aの開口縁近傍領域において開口部21aを周回するように設けられ、FOUP4をベース2の前方の所定位置に位置付けた際に、ベース21の開口部21aの周縁とFOUP4との間をシールするものである(図11参照)。ベース21にウインドウユニット214を取り付けた構成を採用している本実施形態では、窓枠部216の前面216Aのうち開口部215の開口縁近傍領域において開口部215を周回する位置に第1シール部5を設けている。具体的には、窓枠部216の前面216Aのうち、FOUP本体42の後面42BであるFOUPシール面(FOUP本体42のうちFOUPドア43の周囲部分に設定した面)と対向する位置に第1シール部5を周回させて取り付けている。矩形状をなす開口部215の開口縁近傍において開口部215を周回するように配置された第1シール部5は、FOUP4側から見て略矩形状をなす。したがって、第1シール部5は、開口部215の開口上縁近傍に配置されている上辺部分5A、開口部215の開口下縁近傍に配置されている下辺部分5B、開口部215の開口両側縁近傍にそれぞれ配置されている側辺部分5Cに大別することができる。これら四つの辺部分を備える長方形を基本形状とした本実施形態の第1シール部5は、四隅を円弧によって滑らかにつないだ形状を有する。
【0097】
そして、本実施形態では、第1シール部5として断面形状が略円形のOリングを適用し、共通のOリングを、第1シール部5の上辺部分5A、下辺部分5B、左右の両側辺部分5Cに亘って配置している。このように、本実施形態では、第1シール部5の全部を断面形状が略円形の弾性体(円形弾性体D1)で形成し、第1シール部5の全部を「非開放部分Y」に設定している。
【0098】
このような第1シール部5は、ドッキング位置に位置付けた載置台23に載置されているFOUP4とベース21の開口部21aの周縁との間に介在してシール機能を発揮する。
【0099】
図11には、所定のドッキング位置に位置付けた載置台23上に載置されているFOUP4に対して第1シール部5が弾接している状態を示している。本実施形態のロードポート2は、第1シール部5をロードポートドア22のうちFOUP4に最も近い端面よりもFOUP4側に所定寸法L2(例えば0.1mm以上で3mm以下)だけ突出した形態で配置している。したがって、FOUPドア43及びロードポートドア22が相互に接触することなく、ベース21とロードポートドア22の間に形成される密閉空間DSの高い密閉性を第1シール部5によって維持することができる。
【0100】
すなわち、図11に示すように、所定のドッキング位置に位置付けた載置台23上に載置されているFOUP本体42の後面42Bに対して、第1シール部5が弾接する。具体的には、第1シール部5の全体が、所定のドッキング位置に位置付けた載置台23上に載置されているFOUP本体42の後面42Bに対して弾接することで、FOUP4に弾接する前の時点よりも前後方向Dに押し潰された形態に弾性変形する。このような第1シール部5とFOUP4との弾接状態が維持されることで、良好なシール領域を形成することができる。
【0101】
第2シール部6は、ベース21の後面21Bのうち開口部21aの開口縁近傍領域において開口部21aを周回するように設けられる。ベース21にウインドウユニット214を取り付けた構成を採用している本実施形態では、窓枠部216の後面216Bのうち開口部215の開口縁近傍領域において開口部215を周回する位置に第2シール部6を設けている。具体的には、窓枠部216の後面216Bのうち、ロードポートドア22の前面、つまりベースの全面21Aの所定部分に設定したシール面(ロードポートドア22における外縁部分に設定した面)に対向する位置に第2シール部6を周回させて取り付けている。本実施形態では、ロードポートドア22の外周縁部に形成した鍔状の薄肉部をロードポートドア22のシール面に設定している。矩形状をなす開口部215の開口縁近傍において開口部215を周回するように配置された第2シール部6は、搬送室3側から見て略矩形状をなす。
【0102】
本実施形態では、第2シール部6の大部分を断面形状が略円形の弾性体(円形弾性体D1)で形成し、一部を断面形状が略円形の弾性体よりも弾性変形しやすい弾性体(非円形弾性体D2)で形成している。具体的には、第2シール部6のうち下辺部分6B全体、左右両側辺部分6C全体、及び上辺部分6Aの幅方向両端部を含む所定部分を円形弾性体D1で形成し、第2シール部6のうち上辺部分6Aの幅方向中央部分を非円形弾性体D2で形成している。本実施形態の非円形弾性体D2は、断面形状が棒形状(断面視長手方向の寸法が略円形の弾性体の直径よりも大きい棒形状)であって且つ丸みを帯びた先端部分が後方(搬送室3側)に向かって漸次下方に変位する姿勢(垂れ下がるような姿勢、先端部分が密閉空間DS内に向かって変形する姿勢)で配置した弾性体である。
【0103】
そして、ロードポートドア22を閉位置に位置付けた際に、第2シール部6を介してロードポートドア22(より具体的には薄肉部)が窓枠部216の後面216Bに当接した状態になり、第2シール部6がベース21の開口部21aの周縁とロードポートドア22との間をシールする(図11参照)。特に、第2シール部6の優先開放部分Xは、ロードポートドア22に弾接することで、ロードポートドア22に弾接する前の時点よりも先端部分が下方(密閉空間DS内に向かう方向)に押し下げられた形態に弾性変形する。その結果、ロードポートドア22を閉位置に位置付けた状態では、搬送室3の内部空間3Sから搬送室3の外部へのガスの流出や、搬送室3の外部から搬送室3の内部空間3Sへのガスの流入を抑制することができる。第2シール部6がシール機能を発揮する状態において、第2シール部6によるシール領域を含む密閉空間DSと搬送室3の内部空間3Sとの間で第2シール部6が所定の圧力を受けることで、第2シール部6のうち優先開放部分Xは、図12に示すように、非開放部分Yよりも優先してシール状態が解除されて開放される。
【0104】
本実施形態のロードポート2では、窓枠部216の前面216A及び後面216Bに、それぞれ開口部215の開口縁近傍を周回するように断面が凹形状となる取付溝(図11及び図12において第1シール部5、第2シール部6が嵌まっている凹部)を形成している。各シール取付溝に第1シール部5、第2シール部6をそれぞれ挿入した状態で緊密に取り付けている。特に、第2シール部6のうち優先開放部分Xが取り付けられるシール取付溝は、溝の奥方に向かって漸次広がる断面台形に設定され、この台形状のシール取付溝に、優先開放部分Xの基端部に設けた差込部を嵌合させた状態で、接着剤等の適宜の手段によって固定している。これにより、第2シール部6の優先開放部分Xがシール取付溝から抜け外れる事態を防止している。この取付状態において、第1シール部5及び第2シール部6のうち取付溝に収容されていない部分は、取付溝の外に露出している。
【0105】
本実施形態では、載置台23を所定のドッキング位置に位置付けた際に、FOUP本体42の後面42Bが所定寸法の隙間を隔ててベース21の前面21A(窓枠部216の前面216A)に接近し、その隙間を第1シール部5によってシール可能に構成している。また、本実施形態のロードポート2は、載置台23を所定のドッキング位置に位置付けた時点以降、ロードポートドア22が閉状態にあれば、FOUPドア43とロードポートドア22が所定寸法の隙間を隔てて接近するとともに、ロードポートドア22とベース21との間を第2シール部6でシール可能に構成している。したがって、ロードポートドア22とFOUPドア43が所定寸法の隙間を隔てて対向する空間は、第1シール部5及び第2シール部6によって仕切られた密閉空間DSになる。
【0106】
第2実施形態に係るロードポートドア22は、密閉空間DSに対してガスを注入するガス注入部71と、密閉空間DSの気体を排気するガス排出部72(本発明の「排出部」に相当)とを備え、ガス注入部71によって密閉空間DSに乾燥窒素ガス等のガスを供給し、ガス排出部72によって密閉空間DSの気体(ガスを含む)を排出することで、密閉空間DSをガスパージすることが可能である。
【0107】
そして、本実施形態のロードポート2では、容器クランプ処理を終了した時点で、ベース21の開口部21a(窓枠部216の開口部215)の近傍において、ドッキング位置に位置付けた載置台23上に載置されているFOUP4のうちシール面に設定したFOUP本体42の後面42Bが、ベース21の第1シール部5に弾接し、第1シール部5の弾性変形によりFOUP4とベース21の間に良好なシール領域を形成することができる。すなわち、本実施形態のロードポート2では、容器クランプ処理を実施することによって、FOUP4とベース21の間に良好なシール領域を形成する処理(シール処理)を同時に実施することができる。
【0108】
本実施形態のロードポート2では、制御部2Cが、容器クランプ処理及びシール処理に続いて、密閉空間DSに窒素ガスを供給するとともに、それまで密閉空間DSに留まっていたガス(大気)をガス排出部72よって排出する処理を行う(ドアパージ処理)。本実施形態では、ドアパージ処理時に窒素ガスの排出量を窒素ガスの供給量よりも多くすることで、密閉空間DSを負圧にするように設定している。
【0109】
そして、図12に示すように、密閉空間DSが負圧になった時点以降の適宜のタイミングで、第2シール部6のうち優先開放部分X(本実施形態では上辺部分6Aの幅方向中央部分)が、第2シール部6の他の部分及び第1シール部5、つまり非開放部分Yよりも優先して開放された状態になる。すなわち、第2シール部6のうち先端部分が垂れ下がった形態でロードポートドア22のシール面に弾接している優先開放部分Xが、密閉空間DSに充満した窒素ガスに押圧されて弾性変形し、優先開放部分Xの先端部が押し下げられる方向(密閉空間DS内に向かう方向)に変形することで、ロードポートドア22のシール面に対する弾接状態が解除される。その結果、本実施形態に係るロードポート2は、第2シール部6のうち開放された(弾接状態が解除された)部分、すなわち優先開放部分Xを通じて搬送室3の内部空間3Sから密閉空間DSに向かう気流を形成する(図12に搬送室3の内部空間3Sから密閉空間DSに向かう気流を矢印で模式的に示す)。第2シール部6の優先開放部分Xを通過する気流が形成された時点以降も密閉空間DSに対する窒素ガスの供給及び窒素ガスの排出を継続して行い、密閉空間DSへガスを充填し続ける。ドアパージ処理開始から所定時間の経過後、ドアパージ用ガス注入バルブ及びドアパージ用ガス排出バルブを閉じることで、密閉空間DSへのガスの充填を終了する。なお、ガス注入部71から密閉空間DSにガスを注入するガス注入動作と、ガス排出部72によって密閉空間DSからガスを排出する排出動作を繰り返してもよい。
【0110】
本実施形態のロードポート2では、ガス排出部72によって密閉空間DS内を吸引する吸引経路を構成し、排出部72を排気ユニットとして機能させている。排気ユニットは、EFEM1が設置されている工場の排気ブロア等の排気系(図示省略)に接続されて余剰気体を強制的に吸引及び排気可能に構成されている。なお、排気ブロアと排気ユニットとの間に適宜の流量調整弁または遮蔽弁を配置することにより、排気ユニットの吸引力或いは排出量を調整可能に構成している。
【0111】
本実施形態に係るロードポート2は、ドアパージ処理の実行中、密閉空間DS内が負圧になった時点よりも後の適宜のタイミングで、密閉空間DSの負圧状態を維持できる限りにおいて、密閉空間DSに対する窒素ガスの供給量を低減することによりガス使用量及びガス使用時間を制限し、コストの削減を図ることが可能である。また、排気ユニット内の酸素濃度を計測する酸素濃度計を設けておくことにより、排気ユニット内の酸素濃度を把握することができ、酸素濃度計の検出値を制御部に入力可能に構成した場合には、酸素濃度計の検出値に応じた適宜の制御を行うことが可能である。なお、容器密閉解除処理を実施する際に、密閉空間DSが負圧状態であることに起因して、外部空間GSから密閉空間DSに大気が入り込むおそれがある。そこで、本実施形態においても、外部空間GSに対して密閉空間DSが陽圧の状態で容器密閉解除処理を実施することが好ましい。具体的には、容器密閉解除処理を実行する時点においてもガス注入部71から窒素ガスを供給し続けることで、密閉空間DSが少なくとも負圧でない状態で容器密閉解除処理を行うことができる。
【0112】
このような第2実施形態に係るロードポート2は、ドアパージ機能を発揮することにより、FOUPドア43に付着しているパーティクルや、FOUPドア43とロードポートドア22との間に存在してウェーハWを酸化させるなど、ウェーハWの性状を変化させるおそれのある酸素、水分、パーティクルなどを含む大気が、ロードポートドア22を開放した際に搬送空間3S及びFOUP4の内部に流入する事態を防止・抑制できる。つまり、FOUPドア43を開放して密閉空間DSが開放される前に、密閉空間DSの酸素、水分、パーティクルを排除できる。
【0113】
さらに、第2実施形態に係るロードポート2は、第1シール部5及び第2シール部6のうち搬送室3側のシール部である第2シール部6の一部または全部を、ドアパージ処理時に密閉空間DSを負圧にすることで第1シール部5よりも優先して開放される優先開放部分Xに設定し、この開放された部分を通じて搬送空間3Sから密閉空間DSに向かう気流を形成することができ、密閉空間DSが負圧になることに起因してFOUPドア43の閉止力が弱まり、ドアパージ処理実行前の時点で、FOUPドア43に付着しているパーティクルや、FOUPドア43とロードポートドア22との間に存在する酸素、水分、パーティクルなどを含む大気が密閉空間DSからFOUP4内に流入する事態や、密閉空間DSが負圧になることに起因してFOUPドア43の閉止力が弱まり、FOUPドア43とFOUP本体42の隙間を通じてFOUP4の内部から密閉空間DSに向かう気流が形成され、FOUP底部の排気ポートから気体(大気)がFOUP4内、あるいは密閉空間DSに逆流してしまう事態を悉く防止することができる。これにより、FOUP4内、密閉空間DS及び搬送空間3Sの高い清浄度を維持できるとともに、密閉空間DSに対してガスを短時間で大量に排気して密閉空間DSを負圧状態することが許容され、密閉空間DSにガスを少しずつ供給して圧力調整しながら密閉空間DS内のゴミ等を除去する態様と比較してタクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0114】
加えて、第2実施形態に係るロードポート2によれば、密閉空間DSの圧力を他の空間(FOUP4の内部空間4Sや搬送空間3S)の圧力と均等にするといった特別な制御が不要であり、コントロールするための制御機器(バルブや配管類)が不要になることによるコストダウンやタクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0115】
特に、第2実施形態に係るロードポート2は、密閉空間DS内を吸引する吸引経路の所定箇所に排気ユニットを設けた構成を採用しているため、密閉空間DSが負圧状態になった場合に、密閉空間DSのガス(ドアパージ用ガス)を排気ユニットによって効率良く密閉空間DSの外GSに排気することができ、過度の負圧状態になれば生じ得る事態、すなわち、FOUPドア43によるFOUP4内の密閉度合いが低下して、FOUP4内に設けた排気ポートから大気がFOUP4内に逆流するという事態も解消できる。
【0116】
また、第1本実施形態及び第2実施形態に係るEFEM1は、上述の構成を有するロードポート2と、搬送空間3Sに搬送ロボットを配置した搬送室3とを備えているため、ロードポート2にセットしたFOUP4と搬送室3との間でウェーハW等の搬送対象物を搬送ロボットで出し入れすることができ、この出し入れ処理よりも前の時点でドアパージ処理を行うことで、FOUP4内、密閉空間DS及び搬送空間3Sの高い清浄度を維持した状態で出し入れ処理を行うことが可能である。また、ロードポート2が奏する上述の作用効果を得て、密閉空間DSが陽圧状態または負圧状態になることに起因する不具合(ロードポートドア22の閉止力の低下、FOUPドア43の閉止力の低下、ひいては搬送室3内の汚染、FOUP4内の汚染)を解消することができるとともに、ドアパージ処理時間の短縮化、タクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0117】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。
【0118】
密閉空間が陽圧状態にある場合に第2シール部よりも優先して開放される部分(優先開放部分)は、第1シール部の一部であってもよいし、第1シール部の全部であってもよい。つまり、密閉空間が陽圧状態にある場合に密閉空間内から密閉空間外へ向かう圧力を受けて少なくとも第1シール部の1箇所でシール状態が解除される部分(シールが破れやすい部分)を設定しておくことで、上述の第1実施形態に係るロードポートと略同様の作用効果を得ることができる。したがって、第1シール部の複数箇所に優先開放部分を設定した構成を採用することも可能である。
【0119】
また、本発明は、密閉空間が陽圧になったその時点で第1シール部の優先開放部分が第2シール部よりも優先して開放された状態になる構成や、密閉空間が陽圧になった時点以降の適宜の時点(例えば密閉空間が所定値以上の圧になった時点等)で第1シール部の優先開放部分が第2シール部よりも優先して開放された状態になる構成、これら何れの構成であってもよい。
【0120】
同様に、密閉空間が負圧状態にある場合に第1シール部よりも優先して開放される部分は、第2シール部の一部であってもよいし、第2シール部の全部であってもよい。つまり、密閉空間が負圧状態にある場合に密閉空間内に吸引される力を受けて少なくとも第2シール部の箇所でシール状態が解除される部分(シールが破れやすい部分)を設定しておくことで上述の第2実施形態に係るロードポートと略同様の作用効果を得ることができる。したがって、第2シール部の複数箇所に優先開放部分を設定した構成を採用することも可能である。
【0121】
また、本発明は、密閉空間が負圧になったその時点で第2シール部の優先開放部分が第1シール部よりも優先して開放された状態になる構成や、密閉空間が負圧になったその時点以降の適宜の時点(例えば密閉空間が所定値以下の圧になった時点等)で第2シール部の優先開放部分が第1シール部よりも優先して開放された状態になる構成、これら何れの構成であってよい。
【0122】
第1シール部及び第2シール部の優先開放部分や非開放部分の断面形状や素材も上述の実施形態のものに限らず、シール性(密閉性)を担保する部材であれば良く、適宜変更・選択することが可能である。一例として、流体の導入或いは排出によって膨張或いは収縮する中空シール部を用いて優先開放部分または非開放部分の両方または何れか一方を構成した態様を挙げることができる。
【0123】
第1シール部や第2シールが取り付けられるシール取付溝の形状もシール部の基端部(取付端部)の形状等に応じて適宜変更することができる。
【0124】
排気ユニットは、自然排気タイプまたは吸引排気(負圧排気)タイプの何れかを適宜選択することができる。第1シール部のうち密閉空間が陽圧状態にある場合に第2シール部よりも優先して開放される部分(優先開放部分)の位置、サイズ、数等に応じて排気ユニットの排気口の位置、サイズ、数等を設定すればよい。
【0125】
上述の実施形態では、容器としてウェーハ搬送に用いられるFOUPを採用した。しかし本発明における容器はこれに限定されず、MAC(Multi Application Carrier)、H-MAC(Horizontal-MAC)、FOSB(Front Open Shipping Box)などを採用することが可能である。また、容器はウェーハ収容容器に限定されず、不活性ガスを充填した状態で搬送される電子部品のような収容物(搬送対象物)を収容する密閉容器であってもよい。
【0126】
上述の実施形態では、ロードポートをEFEMに取り付けた態様を例示したが、ロードポートに載置された容器内の搬送対象物の並べ替えや他のロードポートに載置された容器の搬送対象物とを交換するための搬送室を備えるソータや、プロセス装置自体を搬送室として、プロセス装置自体にロードポートを取り付ける装置にも適用できる。
【0127】
実施形態ではドアパージ処理等に用いる環境ガスとして窒素ガスを例にしたが、これに限定されず、乾燥ガス、アルゴンガスなど所望のガス(不活性ガス)を用いることができる。
【0128】
実施形態では、第1シール部と第2シール部を個別に備えた態様を例示したが、ベースの前面に配置される第1シール部と、ベースの後面に配置される第2シール部と、ベースを厚み方向に貫通する姿勢で配置されて第1シール部及び第2シール部を連結する連結部分とを一体に有する共通のシール部を備えたロードポートであってもよい。
【0129】
シールが破れた箇所(優先開放部分)から排気ユニットにガスを導くガイドを設けることも可能である。また、ドアパージ処理実行中に陽圧状態にある密閉空間から優先開放部分を通じて密閉空間外へ漏洩するガス量が微量(作業者の危険とならない程度の量)であれば排気ユニットを省略することができる。
【0130】
上述の実施形態では第2シール部をベースの後面に設けた態様を例示したが、第2シール部をロードポートドアの前面(例えば上述の実施形態における薄肉部の前面)に設け、ベースの開口部を閉止した閉状態にあるロードポートドアとベースとの間を第2シール部でシールする態様を採用してもよい。
【0131】
ベースの厚み方向(容器、ベース、搬送室が並ぶ前後方向)に沿った第1シール部によってシール可能な隙間寸法、つまりベースの前方における所定位置に配置された容器とベースとの隙間と、ベースの厚み方向に沿った第2シール部によってシール可能な隙間寸法、つまり開口部を閉止した閉状態にあるロードポートドアとベースとの隙間は同程度であってもよいし、大きく異なっていてもよい。シール可能な隙間寸法に応じてシール部の形状や素材等を適宜変更することで対応できる。
【0132】
ロードポートドアが、閉位置から全開位置に移動する過程で一時的に傾斜姿勢となる(部分円弧状の軌跡を描くような動作を伴う)ものであっても構わない。
【0133】
また、上述の第1実施形態では、ロードポートとして、ガス供給部及びガス排出部を備えた構成を例示したが、同実施形態に係るロードポートの変形例として、ガス排出部を備えていないものを挙げることができる。このような構成のロードポートであってもガス供給部によるドアパージ処理またはドアパージ処理に準じた密閉空間清浄化処理を実行することができ、第1実施形態に係るロードポートに準じた作用効果を奏する。
【0134】
また、上述の第2実施形態では、ロードポートとして、ガス供給部及びガス排出部を備えた構成を例示したが、同実施形態に係るロードポートの変形例として、ガス供給部を備えていないものを挙げることができる。このような構成のロードポートであっても排出部(ガス外出部)によって密閉空間の気体を排出することで、密閉空間を清浄化する処理(密閉空間清浄化処理)を実行することができ、第2実施形態に係るロードポートに準じた作用効果を奏する。
【0135】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0136】
1…EFEM
2…ロードポート
21…ベース
21a…開口部
22…ロードポートドア
3…搬送室
31…搬送ロボット
3S…搬送空間
4…容器(FOUP)
43…容器ドア(FOUPドア)
5…第1シール部
6…第2シール部
71…ガス注入部
72…ガス排出部(排出部)
8…排気ユニット
DS…密閉空間
W…搬送対象物(ウェーハ)
X…優先開放部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12