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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
B60N2/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020022383
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021126993
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝宣
(72)【発明者】
【氏名】古田 容造
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 忍
(72)【発明者】
【氏名】堀江 弘人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩久
(72)【発明者】
【氏名】新妻 健一
(72)【発明者】
【氏名】古田 将也
(72)【発明者】
【氏名】日向野 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】細川 祐貴
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0218843(US,A1)
【文献】特開2017-035914(JP,A)
【文献】特開2018-070032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定され、長手方向に沿って等間隔に複数の係合用凹部が形成されるロアレール部材と、
シートに固定されるとともに前記ロアレール部材に対して前記長手方向に摺動自在に設けられるアッパーレール部材と、
前記アッパーレール部材に支持され、前記複数の係合用凹部の一部のそれぞれに係脱可能な複数の係合用片部を有するロック部材と、
前記係合用片部および前記係合用凹部の係脱を制御する操作部材と、
を備えるシートスライド装置であって、
複数の前記係合用凹部は、対向する側壁と該側壁間の上壁とからなる下側を開口する断面略コ字状に形成され、
前記上壁には、下側を指向し前記側壁の上端よりも下側に先端が位置する突部が形成され
複数の前記係合用片部は、板状部材に形成された複数の矩形の貫通孔間の片状部から構成され、
前記係合用片部が前記係合用凹部の突部先端に接する時、前記係合用片部の上面が前記係合用凹部の側壁の上端よりも低い位置にあり、
前記係合用片部が前記係合用凹部の突部先端に接する時、前記突部の両側に隙間が、保持され、
前記係合用凹部には、前記側壁と前記上壁との間に断面半円状のコーナー部が設けられ、
前記突部を形成する曲線の曲率は、コーナー部を形成する曲線の曲率の2倍以上、3倍以下であることを特徴とするシートスライド装置。
【請求項2】
車体に固定され、長手方向に沿って等間隔に複数の係合用凹部が形成されるロアレール部材と、
シートに固定されるとともに前記ロアレール部材に対して前記長手方向に摺動自在に設けられるアッパーレール部材と、
前記アッパーレール部材に支持され、前記複数の係合用凹部の一部のそれぞれに係脱可能な複数の係合用片部を有するロック部材と、
前記係合用片部および前記係合用凹部の係脱を制御する操作部材と、
を備えるシートスライド装置であって、
複数の前記係合用凹部は、対向する側壁と該側壁間の上壁とからなる下側を開口する断面略コ字状に形成され、
前記上壁には、下側を指向し前記側壁の上端よりも下側に先端が位置する突部が形成され、
複数の前記係合用片部は、板状部材に形成された複数の矩形の貫通孔間の片状部から構成され、
前記係合用片部が前記係合用凹部の突部先端に接する時、前記係合用片部の上面が前記係合用凹部の側壁の上端よりも低い位置にあり、
前記係合用片部が前記係合用凹部の突部先端に接する時、前記突部の両側に隙間が、保持され、
前記係合用凹部には、前記側壁と前記上壁との間に断面半円状のコーナー部が設けられ、
前記コーナー部を形成する曲率の円弧の中心が、前記係合用凹部の側壁の上端よりも低い位置にあることを特徴とすシートスライド装置。
【請求項3】
前記コーナー部を形成する曲率の円弧の中心が、前記係合用凹部の突部の先端より高い位置にあることを特徴とする請求項に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記コーナー部を形成する曲率の円弧の半径が、前記係合用凹部の突部を形成する曲率の円弧の半径よりも小さいことを特徴とする請求項に記載のシートスライド装置。
【請求項5】
前記係合用凹部の突部を形成する曲率の円弧の半径の2倍よりも、前記係合用片部のシートスライド方向への幅が大きいことを特徴とする請求項に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用のシートを前後に調整するためのシートスライド装置として、下記特許文献1に示すシートスライド装置が知られている。このシートスライド装置は、車体に固定されるロアレール部材と、シートに固定されるとともにロアレール部材に対し摺動自在に設けられるアッパーレール部材と、を備えている。また、シートスライド装置は、アッパーレール部材に固定され、ロアレール部材に係合することでスライド状態をロックするロック部材と、ロック部材を傾動させることでロック状態およびロック解除状態を切り替える操作レバーと、を備えている。そして、ロック状態では、ロック部材に形成された複数の係合用凸部が、ロアレール部材において長手方向に沿って並ぶように形成された複数の係合用凹部に係合することで、アッパーレール部材のロアレール部材に対する摺動を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-70032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるようなシートスライド装置では、係合用凹部は、下側に開口する断面略U字状に形成されている。ここで、板状片から成る係合用凸部がU字の狭くなっている上端近傍に填まり込むことを避け、安定した噛み合いと、設定された強度を保つためには、係合用凹部の上端と係合用凸部とが所定範囲のクリアランスに位置決めされる必要がある。このため、高い部品精度が必要になる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、部品管理精度を緩和しながら、ロック状態とアンロック状態と円滑に切り換え得る構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のシートスライド装置は、車体に固定され、長手方向に沿って等間隔に複数の係合用凹部(36)が形成されるロアレール部材(30)と、
シート(S)に固定されるとともに前記ロアレール部材に対して前記長手方向に摺動自在に設けられるアッパーレール部材(20)と、
前記アッパーレール部材に支持され、前記複数の係合用凹部の一部のそれぞれに係脱可能な複数の係合用片部(53)を有するロック部材(40)と、
前記係合用片部および前記係合用凹部の係脱を制御する操作部材(70)と、
を備える。そして、
複数の前記係合用凹部(36)は、対向する側壁(36S)と該側壁間の上壁(36T)とからなる下側を開口する断面略コ字状に形成され、
前記上壁には、下側を指向し前記側壁の上端(36SU)よりも下側に先端(36Tt)が位置する突部(36TT)が形成され
複数の前記係合用片部は、板状部材に形成された複数の矩形の貫通孔間の片状部から構成され、
前記係合用片部が前記係合用凹部の突部先端に接する時、前記係合用片部の上面が前記係合用凹部の側壁の上端よりも低い位置にあり、
前記係合用片部が前記係合用凹部の突部先端に接する時、前記突部の両側に隙間が、保持され、
前記係合用凹部には、前記側壁と前記上壁との間に断面半円状のコーナー部が設けられ、
前記突部を形成する曲線の曲率は、コーナー部を形成する曲線の曲率の2倍以上、3倍以下である
ことを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、係合用凹部は、対向する側壁と該側壁間の上壁とからなる下側を開口する断面略コ字状に形成される。上壁には、下側を指向し側壁の上端よりも下側に先端が位置する突部が形成されている。
【0008】
このため、部品管理精度を緩和し、係合用片部が係合用凹部、即ち、突部の先端に接しても、係合用凹部の側壁の上端よりも低い位置にある。このため、係合用片部が係合用凹部に填まり込むことが無い。衝突時に設定された強度を保つことができる。また、部品管理精度を緩和しても、ロック状態とアンロック状態と円滑に切り換え得る。高い部品精度が要求されない。
【0009】
請求項の発明では、複数の前記係合用片部は、板状部材に形成された複数の矩形の貫通孔間の片状部から構成される。これにより、車体の衝突等によってロック部材に対して荷重が加えられた場合であっても、貫通孔間の片状部から構成される係合用片部は変形し難く、係合用片部が係合用凹部から抜け出ることを防ぐことができ、ロック状態をより一層安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るシートスライド装置が設置される車両用シートの構成概要を示す側面図である。
図2】シートスライド装置を示す斜視図である。
図3】シートスライド装置の分解斜視図である。
図4】アッパーレールを示す平面図である。
図5】アッパーレールの断面図である。
図6】ロック部材を示す斜視図である。
図7】ロック部材の平面図である。
図8】ロック部材の側面図である。
図9図9(A)は、ロック状態におけるシートスライド装置の一部を示す断面図であり、図9(B)は、ロック解除状態におけるシートスライド装置の一部を示す断面図である。
図10図10(A)、図10(B)は、ロック状態においてロアレールの係合凹部とロックレバーの係合片部との係合状態を説明するための説明図であり、図10(C)は、ロアレールの係合凹部とロックレバーの係合片部との拡大図である。
図11図11(A)、図11(B)は、従来技術に係るシートスライド装置において、ロック状態におけるロアレールとロック部材の係合状態を説明するための説明図であり、図11(C)は、ロアレールの係合凹部とロックレバーの係合片部との拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。
図1図3に示すように、シートスライド装置10は、車両用シートSを前後摺動可能に車両フロアBに固定するもので、主に、車両用シートSに固定されるアッパーレール20と、前後フット31を介して車体(車両フロアB)に固定されるロアレール30と、アッパーレール20とロアレール30とを相対移動不能に固定(ロック)可能なロック部材40と、をそれぞれ一対備えるとともに(図1図3には一方のみを記載する)、上記一対のロック部材40によるアッパーレール20とロアレール30とのロック状態とそのロック状態を解除するロック解除状態とを切り替えるために操作される操作レバー70とを備えている。以下、シートスライド装置10を構成する各要素について詳述する。
【0012】
アッパーレール(アッパーレール部材)20は、ロアレール30に対して摺動自在に設けられる。また、アッパーレール20は、図3図5に示すように、アッパーレール20は車両フロアBに略水平で車両用シートSが図略のブラケット等を介して取り付けられる上壁21とこの上壁21の両端から垂設される側壁22と、各側壁22の下端からそれぞれ上方に屈曲して折れ曲がっている連結部23と、リテーナ(図示略)によって保持されるスチールボール(図示略)をロアレール30との間の空間に保持する傾斜部24と、を備えている。
【0013】
また、図4図5に示すように、一方の側壁22と、この側壁22に連結する連結部23とには、ロック部材40の一部が入り込むことが可能な長孔状の切欠き22aが形成されている。また、側壁22側の切欠き22aの一部には、ロック部材40のロック片50(後述する)が係合する係合用凹部22bが、アッパーレール20の長手方向に沿って等間隔に3つ設けられている。また、アッパーレール20の一端側において、一方の側壁22と連結部23とに、後述するロック部材40の突出部61b,61cがそれぞれ嵌合する略長孔状の切欠き22c,22dが形成されている。また、切欠き22cにおける上壁21側に、上壁21側とは反対側に突出する突出片22eが形成され、切欠き22cにおける上壁21側とは反対側に、他方の側壁22側に突出する突出片22fが形成されている。また、切欠き22dにおける上壁21側とは反対側に、他方の側壁22側に突出する突出片22gが形成されている。
【0014】
ロアレール(ロアレール部材)30は、図3に示すように、車両フロアBに略水平でアッパーレール20の上壁21に対向し前後フット31を介して車両フロアBに固定される底壁32と、この底壁32の両端から上方に延出する第1側部33と、各第1側部33の上端から中央に向かい底壁32と略平行に設けられる鍔部34と、各鍔部34の端末から底壁32に向かい第1側部33と略平行に延出する第2側部35とを備えている。
【0015】
また、図3に示すように、側壁22の各係合用凹部22bに対応する第2側部35には、係合用凹部22bと同様に形成される4つ以上の係合用凹部36が設けられている。
【0016】
アッパーレール20はその上壁21がロアレール30の底壁32と対向し、ロアレール30の第1側部33と第2側部35の間の空間にアッパーレール20の傾斜部24が入り込むように配置されている。なお、図示を省略するが、例えば、ロアレール30の第1側部33から鍔部34との間のコーナー部分とアッパーレール20の傾斜部24の間と、ロアレール30の底壁32と第1側部33との間のコーナー部分とアッパーレールの連結部23の間には、リテーナ(図示略)によって保持されるスチールボール(図示略)が配置されている。このように、リテーナに保持されるスチールボールにより、アッパーレール20とロアレール30は車両前後方向に円滑に摺動できるようになる。
【0017】
次に、ロック部材40について詳しく説明する。図6図8に示すように、ロック部材40は、略長手板状に形成され、アッパーレール20とロアレール30とを相対移動不能にロックするためのロック片50と、アッパーレール20に対してロック片50を支持する支持部60と、を備えている。このロック部材40は、全体が板状部材によって一体形成されてなる構成である。
【0018】
図6図8に示すように、ロック片50は、ロック部材40の一端側において、略矩形板状に形成されている。また、ロック片50には、短手方向の両端部のそれぞれに沿って板厚方向に貫通する矩形のロック穴(貫通孔)52が2つ形成されている。これにより、係合用片部53が構成される。また、これら係合用片部53は、長板片状に形成され、所定の配列方向に沿い配列されて隣り合う係合用片部間の距離が一定となるように配列される構成である。具体的には、図10(A)に示すように、係合用片部53において上記配列方向にて隣り合う係合用片部間の距離はそれぞれL1で一定である。
【0019】
また、ロック片50の板面上における中心部分において、板厚方向に略矩形状で貫通する貫通孔54が形成されている。また、ロック片50には、貫通孔54を構成する壁部から板厚方向に立ち上がる突出片55が形成されている。また、ロック片50の支持部60側の端部には、ロック片50の一側における後述する連結部62の接続位置に隣接する位置から連結部62に沿って延出し、連結部62を挟むように連結部62と平行な一対の延出部56,56が形成されている。この延出部56は、操作レバー70からの押圧力を受ける部分である。
【0020】
図6図8に示すように、ロック部材40の支持部60は、アッパーレール20に嵌合してロック片50を間接的に支持する一対の支持片61,61と、ロック片50と支持片61とを連結する連結部62と、一対の支持片61,61の間に形成されて支持片61の内側への変形を規制する規制部63と、を備えている。
【0021】
図6図8に示すように、一対の支持片61,61は、それぞれ長手板状に形成され、一端が連結部62と接続されている。また、支持片61の他端側には、アッパーレール20に固定される固定部61aが形成されている。固定部61aは、アッパーレール20の切欠き22c,22dにそれぞれ入り込む突出部61b,61cを備えている。突出部61bは、支持部60の一端に位置し、支持片61の長手方向に直交する方向において、他方の固定部61aとは反対側に突出するように板状に形成されている。また、突出部61cは、突出部61bと離間した支持片61側の位置に、支持片61の長手方向に直交する方向において、他方の固定部61aとは反対側に突出するように略台形板状に形成されている。
【0022】
図6図8に示すように、連結部62は、長手板状に形成され、ロック片50の一側の中心部分と一対の支持片61,61とに接続されている。また、連結部62は、延出部56と同様の厚さの長手板状に形成され、延出長さが延出部56の長さのよりも長くなっている。また、連結部62は、一対の延出部56,56のそれぞれと所定間隔をおいて並列するように形成されている。
【0023】
図6図8に示すように、規制部63は、連結部62の一端に対して一対の支持片61,61と共に接続され、長手板状に形成されている。すなわち、規制部63、連結部62、及び一対の支持片61,61によって構成される部分がフォーク形状となっている。また、規制部63は、連結部62の一端に接続されて一対の支持片61,61に平行に延出する平板部63aと、平板部63aと連なる屈曲板部63bと、を備えている。屈曲板部63bは、図6図8に示すように、略逆U字状に折り曲がった形状であり、一対の支持片61,61の間から離れて位置するようになっている。
【0024】
操作レバー70は、係合用片部53および係合用凹部36の係脱を制御する操作部材として機能するもので、図3に示すように、棒状に形成される把持部71と、この把持部71の両端から互いに平行に略直線状にそれぞれ延出する連結部72と、両連結部72にそれぞれ連結されてアッパーレール20とロック部材40との間に配置される操作部73とを備えている。また、操作部73は、略長板状に形成され、この操作部73の先端部分には、板面の一方側に突出する凸部73aが形成されている。また、操作部73における長手方向の中心付近には当該長手方向に直交する方向に貫通する切欠き73bが形成されている。また、操作部73には、凸部73aが形成される側とは反対側において、切欠き73bを挟むように、凸部73aの突出方向とは反対方向に突出する凸部73c,73dが形成されている。
【0025】
次に、ロック部材40のアッパーレール20への組み付けについて説明する。ロック部材40の一対の支持片61を外側から挟み押圧することで、一対の支持片61がそれぞれ他方の支持片61側に弾性変形することになる。この状態で、ロック部材40をアッパーレール20の一対の側壁22,22の間に入り込ませ、支持片61の押圧状態を解除することで、図9(A)に示すように、一対の突出部61b,61bがそれぞれ一対の切欠き22c,22cに向けて付勢されるように当該切欠き22c,22cに圧入されて嵌合する。具体的には、突出部61bは、切欠き22cから側壁22と連結部23との間に入り込んで、突出片22eと突出片22fとに挟まれる状態となる。また、突出部61cは、切欠き22dから側壁22と連結部23との間に入り込んで、突出片22gの側面に当接する状態となる。これにより、ロック部材40は、アッパーレール20に傾動可能に支持されることになる。
【0026】
次に、アッパーレール20及びロック部材40への操作レバー70の組み付けについて説明する。ロック部材40をアッパーレール20に組み付けた状態において、図9(A)に示すように、操作レバー70の操作部73をアッパーレール20とロック部材40との間に差し込むようにして、操作レバー70を組み付ける。このとき、操作部73の先端がロック部材40の突出片55の近傍に位置し、凸部73aが延出部56と対向するように位置する。また、図9(A)に示すように、ロック部材40の屈曲板部63bが操作レバー70の切欠き73bに入り込む状態となる。また、図9(A)に示すように、操作レバー70の凸部73c,73dが、アッパーレール20の上壁21に形成された突起部21a,21bにそれぞれ当接する。
【0027】
次に、シートスライド装置10における操作レバー70によるロック状態とロック解除状態の切り替え操作について説明する。操作レバー70が操作されない場合には、図9(A)に示すように、操作レバー70及びロック部材が一定の姿勢を保持している。また、操作レバー70はロック部材40の延出部56を押圧することなく、支持片61などが弾性変形せず、ロック片50は変位することがない。そして、ロック片50の係合用片部53は、図9(A)に示すようにアッパーレール20の係合用凹部22bに係合するとともに、ロアレール30の係合用凹部36に係合している。これにより、アッパーレール20とロアレール30とが相対移動不能なロック状態となる。
【0028】
このようなロック部材40によるロック状態において、操作レバー70の把持部71が上方向に移動するように操作されると、図9(B)に示すように、操作レバー70の操作部73は、先端側が下方に向かうように傾動する。具体的には、操作レバー70の凸部73dがアッパーレール20の突起部21bに支持され、切欠き73bを構成する壁部がロック部材40の規制部63に支持された状態で操作部73が下方に傾動することになる。そして、このように傾動する操作部73の凸部73aがロック部材40の延出部56を下方に押圧することにより、支持片61は、ロック片50を介してロック片50側が下方に向かうように弾性変形することになる。また、このように支持片61が弾性変形することによって、図9(B)に示すように、ロック片50が下方に移動することになり、ロック片50と、アッパーレール20の係合用凹部22b、及びロアレール30の係合用凹部36との係合が解除されて、アッパーレール20とロアレール30とが相対移動可能なロック解除状態になる。
【0029】
そして、アッパーレール20とロアレール30との相対位置を調整した後に操作レバー70の把持部71を解放すると、支持片61の弾性変形が元に戻り、ロック片50が上方に移動することになる。そして、ロック片50と、アッパーレール20の係合用凹部22b、及びロアレール30の係合用凹部36とが係合されて、アッパーレール20とロアレール30とが再び相対移動不能なロック状態になる(図9(A)、図10(A)参照)。
【0030】
次に、シートスライド装置10のロック状態におけるロック部材40とロアレール30との係合状態について、従来技術の構成と比較し、図10図11を用いて説明する。図10は、本実施形態に係るシートスライド装置10におけるロック状態を説明する説明図であり、図11は、従来技術に係るシートスライド装置におけるロック状態を説明する説明図である。
【0031】
図11に示す従来技術のシートスライド装置は、本実施形態に係るシートスライド装置10とは異なり、図11(C)に示されるように、係合用凹部136は、対向する側壁136Sと、側壁136S-側壁136S間の上壁136Tと、側壁136Sと上壁136Tとの間の半円弧状のコーナー部136Lと、からなる下側を開口する断面略U字状に形成される。このような構成において、図11(B)、図11(C)に示されるように部品管理精度を高めないと、板状片から成る係合用凸部153がU字の狭くなっている上端(上壁136T)近傍のコーナー部136Lに填まり込むことが考えられる。係合用凸部153が係合用凹部136のコーナー部136Lに填まり込むと、ロック状態からアンロック状態への切り換えが円滑に行えず、安定した噛み合いが行い得ない。また、設定された強度を保つためには、係合用凹部136の側壁136Sと、係合用凸部153の側壁153Sとの間の横方向クリアランスが各係合用凸部153においてばらつく必要がある。図11(B)に示されるように、全ての係合用凸部153が係合用凹部136のコーナー部136Lに填まり込むと、横方向クリアランスがゼロとなり、設定された強度を保つことができなくなる。即ち、従来技術のシートスライド装置は、上述した係合用凸部153の係合用凹部136のコーナー部136Lに填まり込むことを避けるためには、係合用凹部136の上端(上壁136T)と係合用凸部とが図11(A)中に示す所定範囲C2に位置決めされる必要がある。このため、高い部品精度が必要になる。
【0032】
本実施形態に係るシートスライド装置10では、図10(C)に示されるように係合用凹部36は、対向する側壁36Sと側壁36S-側壁36S間の上壁36Tとからなる下側を開口する断面略コ字状に形成される。上壁36Tには、側壁36Sの上端36SUよりも下側に先端36Ttが位置する突部36TTが形成されている。突部36TTは下側を指向し突出している。上壁36Tは半楕円弧状の突部36TTから構成される。側壁36Sの上端36SUと突部36TTの先端36Ttとの間に距離c1が設けられている。側壁36Sの上端36SUと上壁36Tとの間には半円弧状のコーナー部36Lが設けられている。なお、側壁36Sの上端36SUとは、平面状の側壁36Sの上限を意味し、上端36SUより上の部分は曲面状(コーナー部36L)になっている。
【0033】
このため、本実施形態に係るシートスライド装置10では、部品管理精度を緩和し、図10(B)に示すように、係合用片部53が係合用凹部36、即ち、突部36TTの先端36Ttに接しても、図10(C)に示される係合用片部53の上面53Tが係合用凹部36の側壁36Sの上端36SUよりも低い位置にある。このため、係合用片部53が係合用凹部36に填まり込むことが無い。衝突時に設定された強度を保つことができる。また、部品管理精度を緩和しても、ロック状態とアンロック状態と円滑に切り換え得る。高い部品精度が要求されない。
【0034】
本実施形態に係るシートスライド装置10では、図10(C)に示されるように、係合用片部53が係合用凹部36の突部36TTの先端36Ttに接する時、係合用片部53の上面53Tが係合用凹部36の側壁36Sの上端36SUよりも低い位置にある。このため、係合用片部53が係合用凹部36に填まり込むことが無い。
【0035】
本実施形態に係るシートスライド装置10では、図10(C)に示されるように、係合用片部53が係合用凹部36の突部36TTの先端36Ttに接する時、突部36TTの両側にコーナー部36Lにより形成される隙間が保持される。車両衝突の際に係合用片部53が変形しても、側壁36Sと当接するため、ロック状態を保つことができる。ロック状態を保つことができる。
【0036】
本実施形態に係るシートスライド装置10では、図10(C)に示されるように、係合用片部53が係合用凹部36の突部36TTの先端36Ttに接する時、1点での接触となる。面接触或いは複数点での接触よりも1点での接触の方が動作の信頼性が高い。
【0037】
本実施形態に係るシートスライド装置10では、図10(C)に示されるように、係合用片部53が係合用凹部36の突部36TTの先端36Ttに接する時、係合用片部53の上面53Tと係合用凹部36の上壁36Tまでの最大距離t1は、係合用片部53の厚みt2よりも小さい。車両衝突の際に係合用片部53が変形しても、隙間に入り込まず、側壁36Sと当接するため、ロック状態を保つことができる。
【0038】
本実施形態に係るシートスライド装置10では、図10(C)に示されるように、突部36TTを形成する曲線の曲率は、コーナー部36Lを形成する曲線の曲率の2倍以上、3倍以下であることが望ましい。例えば、突部36TTを形成する曲線の曲率は1.3mm、コーナー部36Lを形成する曲線の曲率は0.5±0.1mmである。
【0039】
本実施形態に係るシートスライド装置10では、図10(C)に示されるように、コーナー部36Lを形成する曲率の円弧CR2の中心c2が、係合用凹部36の側壁36Sの上端36SUよりも低い位置にある。このため、係合用片部53が係合用凹部36に填まり込むことが無い。
【0040】
本実施形態に係るシートスライド装置10では、図10(C)に示されるように、コーナー部36Lを形成する曲率の円弧CR2の中心c2が、係合用凹部36の突部36TTの先端36Ttより高い位置にある。係合用凹部36の剛性の低下を抑制できる。
【0041】
本実施形態に係るシートスライド装置10では、図10(C)に示されるように、コーナー部36Lを形成する曲率の円弧CR2の半径rが、係合用凹部36の突部36TTを形成する曲率の円弧CR1の半径Rよりも小さい。このため、係合用片部53が係合用凹部36に填まり込むことを確実に抑制できる。
【0042】
本実施形態に係るシートスライド装置10では、図10(C)に示されるように、係合用凹部36の突部36TTを形成する曲率の円弧CR1の半径2倍よりも、係合用片部53のシートスライド方向への幅Bが大きい。係合用凹部36の剛性の低下を抑制でき、係合用片部53の剛性を高めることができる。
【0043】
本実施形態に係るシートスライド装置10では、図10(A)、図10(C)に示されるように、係合用凹部36と係合用凹部36との間の側壁37の底面は、車両後方に向かって水平方向に対して5°乃至20°程度上がるの勾配があることが、ロックへの移行が容易になり好適である。また、係合用凹部36の側壁36Sも、下側に向かって開く1°乃至3°程度のテーパが設けられることが、ロックへの移行が容易になり好適である。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)係合用凹部36の上壁36Tは半楕円弧状の突部36TTから構成されなくとも、上壁が下方を指向する突部を備える構成であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…シートスライド装置
20…アッパーレール(アッパーレール部材)
30…ロアレール(ロアレール部材)
36…係合用凹部
36S…側壁
36SU…上端
36T…上壁
36Tt…先端
36TT…突部
40…ロック部材
53…係合用片部
70…操作レバー(操作部材)
図1
図2
図3
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図6
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図8
図9
図10
図11