(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】穀稈の刈取作業方法
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20220818BHJP
A01D 41/127 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
A01B69/00 303K
A01D41/127
(21)【出願番号】P 2021074644
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 健豪
(72)【発明者】
【氏名】三宅 浩喜
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-066980(JP,A)
【文献】特開2021-026674(JP,A)
【文献】特開2018-185671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 -69/08
A01D 41/127
G05D 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に植立された穀稈の刈取りを行う刈取装置(3)と、該刈取装置(3)の後方左側に穀稈の脱穀を行う脱穀装置(4)と、前記刈取装置(3)の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部(5)を設けたコンバインを使用して圃場に植立する穀稈を刈取る穀稈の刈取作業方法であって、
前記コンバインのコントローラ(20)は、前記コンバインを自動走行させる反時計方向に周回する矩形状の走行経路(52)を設定し、
前記コンバインを走行経路(52)の第1経路(53)の終端部で後進旋回して、前記走行経路(52)の第2経路(54)の延在方向にコンバインの前進方向を転向する走行切返し操作を行い、
前記走行切返し操作中のコンバインの後進時に、前記コンバインの第2経路(54)に対する直交方向の偏差(Y)と、前記第2経路(54)の始端部から所定の距離離れた遠位部(X1)の第1許容値(Y1)とを比較して、前記コンバインの偏差(Y)が第1許容値(Y1)以下の場合には、前記コンバインを前進させ、前記コンバインの偏差(Y)が第1許容値(Y1)よりも大きい場合には、前記コンバインをさらに後進させ、
前記走行切返し操作中のコンバイン前進時に、
前記第2経路(54)の始端部から所定の距離離れた近位部(X2)に到達したコンバインの偏差(Y)と、
該近位部(X2)の第2許容値(Y2)とを比較して、前記コンバインの偏差(Y)が第2許容値(Y2)以下の場合には、前記コンバインを第1経路(53)の延長線(53A)上まで前進させた後に、前記コンバインを走行経路(52)に沿って自動走行させ、前記コンバインの偏差(Y)が第2許容値(Y2)よりも大きい場合には、前記コンバインを後進させ、前記コンバインの偏差(Y)と、前記遠位部(X1)の第3許容値(Y3)とを比較して、前記コンバインの偏差(Y)が第3許容値(Y3)以下の場合には、前記コンバインを前進させ、前記コンバインの偏差(Y)が第3許容値(Y3)よりも大きい場合には、前記コンバインをさらに後進させることを特徴とする穀稈の刈取作業方法。
【請求項2】
前記コントローラ(20)は、前記コンバインが遠位部(X1)に到達した場合には、前記コンバインの後進を停止させる請求項1記載の穀稈の刈取作業方法。
【請求項3】
前記コントローラ(20)は、前記第3許容値(Y3)を第1許容値(Y1)よりも小さく、且つ、第2許容値(Y2)よりも大きく設定した請求項1又は2記載の穀稈の刈取作業方法。
【請求項4】
前記コントローラ(20)は、前記コンバインが第1経路(53)の延長線(53A)上に到達した場合には、前記コンバインを自動走行させる新たな走行経路(52A)を設定して、前記コンバインを新たな走行経路(52A)に沿って自動走行させる請求項1~3のいずれか1項に記載の穀稈の刈取作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者がコンバインを操縦して圃場の外周部の穀稈の刈取りを行った後、コンバインが自動走行して圃場の内周部の穀稈の刈取りを行う穀稈の刈取作業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の穀稈の刈取作業方法では、圃場内に搬入されたコンバインが、測位衛星の信号に基づいて設定された刈取経路を走行しながら穀稈の刈取作業を行う方法が知られている。(特許文献1)
【0003】
また、従来の穀稈の刈取作業方法では、反時計方向の矩形状の走行経路を形成する経路の終端部でコンバインを後進旋回して次の経路の延在方向にコンバインの前進方向を転向する走行切返し(αターン)操作を行いながら穀稈の刈取作業を行う方法が知られている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-162373号公報
【文献】特開2009-240205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の穀稈の刈取作業方法では、自動走行するコンバインを作業領域の外側に設けられた枕地でUターンさせて作業領域内に植立する穀稈の刈取作業を行なわせるので、コンバインの走行距離が長くなり穀稈の刈取作業効率が低くなるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2の穀稈の刈取作業方法では、走行切返し操作時にコンバインを後進させる距離が長くなり穀稈の刈取作業効率が低くなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、コンバインの走行距離、特に、走行切返し操作のコンバインが後進する距離を短くして、穀稈の刈取作業の効率を高くすることができる穀稈の刈取作業方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、圃場に植立された穀稈の刈取りを行う刈取装置(3)と、該刈取装置(3)の後方左側に穀稈の脱穀を行う脱穀装置(4)と、前記刈取装置(3)の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部(5)を設けたコンバインを使用して圃場に植立する穀稈を刈取る穀稈の刈取作業方法であって、
前記コンバインのコントローラ(20)は、前記コンバインを自動走行させる反時計方向に周回する矩形状の走行経路(52)を設定し、前記コンバインを走行経路(52)の第1経路(53)の終端部で後進旋回して、前記走行経路(52)の第2経路(54)の延在方向にコンバインの前進方向を転向する走行切返し操作を行い、前記走行切返し操作中のコンバインの後進時に、前記コンバインの第2経路(54)に対する直交方向の偏差(Y)と、前記第2経路(54)の始端部から所定の距離離れた遠位部(X1)の第1許容値(Y1)とを比較して、前記コンバインの偏差(Y)が第1許容値(Y1)以下の場合には、前記コンバインを前進させ、前記コンバインの偏差(Y)が第1許容値(Y1)よりも大きい場合には、前記コンバインをさらに後進させ、前記走行切返し操作中のコンバイン前進時に、前記第2経路(54)の始端部から所定の距離離れた近位部(X2)に到達したコンバインの偏差(Y)と、該近位部(X2)の第2許容値(Y2)とを比較して、前記コンバインの偏差(Y)が第2許容値(Y2)以下の場合には、前記コンバインを第1経路(53)の延長線(53A)上まで前進させた後に、前記コンバインを走行経路(52)に沿って自動走行させ、前記コンバインの偏差(Y)が第2許容値(Y2)よりも大きい場合には、前記コンバインを後進させ、前記コンバインの偏差(Y)と、前記遠位部(X1)の第3許容値(Y3)とを比較して、前記コンバインの偏差(Y)が第3許容値(Y3)以下の場合には、前記コンバインを前進させ、前記コンバインの偏差(Y)が第3許容値(Y3)よりも大きい場合には、前記コンバインをさらに後進させることを特徴とする穀稈の刈取作業方法である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記コントローラ(20)は、前記コンバインが遠位部(X1)に到達した場合には、前記コンバインの後進を停止させる請求項1記載の穀稈の刈取作業方法である。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記コントローラ(20)は、前記第3許容値(Y3)を第1許容値(Y1)よりも小さく、且つ、第2許容値(Y2)よりも大きく設定した請求項1又は2記載の穀稈の刈取作業方法である。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記コントローラ(20)は、前記コンバインが第1経路(53)の延長線(53A)上に到達した場合には、前記コンバインを自動走行させる新たな走行経路(52A)を設定して、前記コンバインを新たな走行経路(52A)に沿って自動走行させる請求項1~3のいずれか1項に記載の穀稈の刈取作業方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、コンバインのコントローラ(20)は、コンバインを自動走行させる反時計方向に周回する矩形状の走行経路(52)を設定し、コンバインを走行経路(52)の第1経路(53)の終端部で後進旋回して、走行経路(52)の第2経路(54)の延在方向にコンバインの前進方向を転向する走行切返し操作を行い、走行切返し操作中のコンバインの後進時に、コンバインの第2経路(54)に対する直交方向の偏差(Y)と、第2経路(54)の始端部から所定の距離離れた遠位部(X1)の第1許容値(Y1)とを比較して、コンバインの偏差(Y)が第1許容値(Y1)以下の場合には、コンバインを前進させ、コンバインの偏差(Y)が第1許容値(Y1)よりも大きい場合には、コンバインをさらに後進させ、走行切返し操作中のコンバイン前進時に、第2経路(54)の始端部から所定の距離離れた近位部(X2)に到達したコンバインの偏差(Y)と、近位部(X2)の第2許容値(Y2)とを比較して、コンバインの偏差(Y)が第2許容値(Y2)以下の場合には、コンバインを第1経路(53)の延長線(53A)上まで前進させた後に、コンバインを走行経路(52)に沿って自動走行させ、コンバインの偏差(Y)が第2許容値(Y2)よりも大きい場合には、コンバインを後進させ、コンバインの偏差(Y)と、遠位部(X1)の第3許容値(Y3)とを比較して、コンバインの偏差(Y)が第3許容値(Y3)以下の場合には、コンバインを前進させ、コンバインの偏差(Y)が第3許容値(Y3)よりも大きい場合には、コンバインをさらに後進させるので、走行切返し操作中のコンバインを後進させる距離が短くして、穀稈の刈取作業の効率を高くすることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、コントローラ(20)は、コンバインが遠位部(X1)に到達した場合には、コンバインの後進を停止させるので、コンバインが圃場の畦等に衝突するのを防止することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、コントローラ(20)は、第3許容値(Y3)を第1許容値(Y1)よりも小さく、且つ、第2許容値(Y2)よりも大きく設定したので、圃場内の同一場所でコンバインが後進と前進を過度に繰り返すのを防止することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、コントローラ(20)は、コンバインが第1経路(53)の延長線(53A)上に到達した場合には、コンバインを自動走行させる新たな走行経路(52A)を設定して、コンバインを新たな走行経路(52A)に沿って自動走行させるので、圃場の状況に応じてコンバインが自動走行する新たな走行経路(52A)を再設定して穀稈の刈残しを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図8】後進時にコンバインの偏差が許容値よりも大きい場合の説明図である。
【
図9】近位部でコンバインの偏差が許容値よりも大きい場合の説明図である。
【
図12】コンバインを再度後進させる説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1,2に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を刈取る刈取装置3が設けられ、刈取装置3の後方左側に刈取られた穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0018】
操縦部5の下側にはエンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側に穀粒を外部に排出する上下方向に延在する揚穀部と前後方向に延在する横排出からなる排出オーガ8が設けられている。また、操縦部5の前部にはエンジンEの回転速度を示すモニタ30が設けられ、モニタ30のタッチパネルを操作して後述する遠位部X1、近位部X2、遠位部X1での許容値(請求項の「第1許容値」)Y1、近位部X2での許容値(請求項の「第2許容値」)Y2、許容繰返し回数Mを設定することができる。
【0019】
図3に示すように、RTK-GPS測位方式である測位ユニット10は、測位衛星11と、既知の位置に設けられた基地局12と、コンバインに設けられた移動局16で構成されている。これにより、測位衛星11から移動局16に送信されてくる位置情報と基地局12から移動局16に送信されてくる補正用の位置情報から移動局16の位置、すなわちコンバインの位置を正確に得ることができる。
【0020】
基地局12は、固定用通信機13と、測位衛星11からの位置情報を受信する固定用GPSアンテナ14と、移動局16に補正用の位置情報を送信する固定用データ送信アンテナ15で構成されている。
【0021】
移動局16は、移動用通信機17と、測位衛星11からの位置情報を受信する移動用GPSアンテナ18と、基地局12からの補正用の位置情報を受信する移動用データ送信アンテナ19で構成されている。
【0022】
図4に示すように、コンバインのコントローラ20は、CPU等からなる処理部21と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部22と、外部とのデータ通信用の通信部23から形成されている。
【0023】
処理部21は、後述する遠位部X1での偏差A1が許容値Y1未満であるか否か判断したり、近位部X2での偏差A2が許容値Y2未満であるか否か判断したり、走行経路に復帰時に走行経路の再設定等を行う。
【0024】
記憶部22は、処理部21で設定された走行経路や、近位部X2での偏差A2が許容値Y2以上であるために再後進した回数N等を保存している。
【0025】
コントローラ20の入力側には、測位衛星11からの位置情報を受信する移動用GPSアンテナ18と、基地局12からの補正用の位置情報を受信する移動用データ送信アンテナ19と、遠位部X1、許容値Y1等を入力するモニタ30と、刈取装置3の昇降状態を検出する接地センサ31と、刈取装置3の後部を搬送される刈取穀稈を検出する穀稈センサ32が所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0026】
コントローラ20に入力される接地センサ31の入力信号は、刈取装置3が下降して刈取駆動状態にある場合にはONになり、刈取装置3が上方の待機位置に上昇している場合にはOFFになる。また、コントローラ20に入力される穀稈センサ32の入力信号は、刈取装置3の後部に脱穀装置4に搬送される刈取穀稈が有る場合にはONになり、刈取装置3の後部に脱穀装置4に搬送される刈取穀稈が無い場合にはOFFになる。
【0027】
コントローラ20の出力側には、走行経路に沿ってコンバインを自動走行させる走行スイッチ40と、走行経路を形成する1辺の終端部でコンバインを後進旋回させて次の辺の延在方向にコンバインの前進方向を転向する走行切返し(αターン)操作を行わせる走行切返しスイッチ41と、コンバインを自動後進させる後進スイッチ42と、コンバインを自動前進させる前進スイッチ43と、コンバインを走行経路に復帰させる復帰スイッチ44と、走行経路を再設定する走行経路設定スイッチ45が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0028】
<穀稈の刈取作業方法>
図5に示すように、操縦部5に搭乗した作業者がコンバインを操作してコンバインを手動走行させて圃場50の外周部の刈取作業を行う。次に、コントローラ20の処理部21は、走行経路設定スイッチ45をONにして手動走行経路51の終端部からコンバインを自動走行させる走行経路52を設定した後に、走行スイッチ40をONにしてコンバインを走行経路52に沿って自動走行させる。なお、
図5では、作業者がコンバインを操作してコンバインを手動走行させた手動走行経路51を破線で示し、コンバインを自動走行させる走行経路52を実線で示している。
【0029】
図6に示すように、ステップS1で、コントローラ20の処理部21は、コンバインが走行経路52を形成する1辺の終端部に到達しているか否か判断する。コンバインが走行経路52を形成する1辺の終端部に到達していると判断した場合には、ステップS2に進み、コンバインが走行経路52を形成する1辺の終端部に到達していないと判断した場合には、ステップS1に戻る。
【0030】
コンバインが走行経路52を形成する1辺の終端部に到達しているか否かは、移動用GPSアンテナ18と、移動用データ送信アンテナ19の入力信号に基づいて判断する。また、コンバインが走行経路52を形成する1辺の終端部に到達した場合には、刈取装置3は待機位置に上昇して接地センサ31と穀稈センサ32の入力信号はOFFになる。
【0031】
ステップS2で、処理部21は、走行スイッチ40をOFFにし、走行切返しスイッチ41をONにしてコンバインの走行切返しを行い、ステップS3に進む。以下では、理解を容易にするために
図7等を参酌しながら説明する。
【0032】
図7(a)に示すように、コンバインの走行切返しは、コンバインを走行経路52の1辺である経路(請求項の「第1経路」)53の終端部から前方左側に向かって前進させた後、後方右側に向かって後進させて後進開始位置60に移動させる。
【0033】
ステップS3で、処理部21は、
図7(b)に示すように、後進スイッチ42をONにし、コンバインを後進開始位置60から走行経路52を形成する1辺である経路53に続く1辺である経路(請求項の「第2経路」)54の延長線54Aに近づく様に後進させて、ステップS4に進む。
【0034】
ステップS4で、処理部21は、コンバインが経路54の始端部から所定の距離後方に位置する遠位部X1に到達したか否か判断する。コンバインが遠位部X1に到達したと判断した場合には、ステップS5に進み、コンバインが遠位部X1に到達していないと判断した場合には、ステップS6に進む。なお、コンバインが遠位部X1に到達したか否かは、移動用GPSアンテナ18と、移動用データ送信アンテナ19の入力信号に基づいて判断する。
【0035】
ステップS5で、処理部21は、後進スイッチ42をOFFにしてコンバインの後進を停止させる。これにより、コンバインの後部が圃場の畦等に衝突するのを防止することができる。なお、コンバインが停止した後は、作業者が操縦部5に搭乗してコンバインを自動走行を停止し手動走行を行う。
【0036】
ステップS6で、処理部21は、コンバインの偏差Yが遠位部X1での許容値Y1以内であるか否か判断する。
図7(b)に示すように、コンバインの偏差Yが許容値Y1以内であると判断した場合には、ステップS7に進む。一方、
図8に示すように、コンバインの偏差Yが許容値Y1よりも大きいと判断した場合には、ステップS3に戻る。本明細書では、コンバインの偏差Yとは、
図7(B)に示すようにコンバインと経路54の延長線54Aの隔たりをいうものとする。なお、コンバインの偏差Yに替えてコンバインと延長線54Aの交差角度である方位を判断基準に使用することもできる。
【0037】
ステップS7で、処理部21は、後進スイッチ42をOFFにしてコンバインの後進を停止させてステップS8に進む。これにより、コンバインが遠位部X1に到達する前にコンバインを停止させて、コンバインの後進距離を短くして走行切返しに要する時間を短くすることができる。
【0038】
ステップS8で、処理部21は、前進スイッチ43をONにしてコンバインを経路54の延長線54Aに近づく様に前進させてステップS9に進む。
【0039】
ステップS9で、処理部21は、コンバインが経路54の始端部から所定の距離後方に位置する近位部X2に到達したか否か判断する。コンバインが近位部X2に到達したと判断した場合には、ステップS10に進み、コンバインが近位部X2に到達していないと判断した場合には、ステップS8に戻る。なお、コンバインが近位部X2に到達したか否かは、移動用GPSアンテナ18と、移動用データ送信アンテナ19の入力信号に基づいて判断する。
【0040】
ステップS10で、処理部21は、コンバインの偏差Yが近位部X2での許容値Y2以内であるか否か判断する。
図7(c)に示すように、コンバインの偏差Yが許容値Y2以内であると判断した場合には、ステップS11に進む。一方、
図9に示すように、コンバインの偏差Yが許容値Y2よりも大きいと判断した場合には、ステップS15に進む。また、近位部X2での許容値Y2は、遠位部X1の許容値Y1よりも小さい値に設定するのが好ましい。これにより、コンバインの後進時にコンバインを経路54の延長線54Aに大まかに近づけて、コンバインの前進時にコンバインを経路54の延長線54Aに細かく近づけることができ、走行切返しに要する時間を短くすることができる。
【0041】
ステップS11で 処理部21は、走行切返しスイッチ41と前進スイッチ43をOFFにし、復帰スイッチ44をONにしてコンバインを近位部X2から前進させてステップS12に進む。
【0042】
ステップS12で 処理部21は、
図7(d)に示すように、コンバインが経路53の延長線53A上に到達したか否か判断する。コンバインが経路53の延長線53A上に到達したと判断した場合には、ステップS13に進み、コンバインが経路53の延長線53A上に到達していないと判断した場合には、ステップS11に戻る。なお、コンバインの偏差Yがゼロの場合には、コンバインは経路54の始端部に到達する。
【0043】
ステップS13で 処理部21は、走行経路設定スイッチ45をONにして、
図10に示すように、延長線53A上の復帰位置から新たな走行経路52Aを設定して、ステップS14に進む。これにより、圃場の状況に応じてコンバインを自動走行させる新たな走行経路52Aが設定して穀稈の刈残しを抑制することができる。
【0044】
図11に示すように、コンバインの偏差Yがゼロでない場合には、新たな走行経路52Aは、コンバインの偏差Y分だけ走行経路52と相違する。なお、
図11では、走行経路52を実線で示し、新たな走行経路52Aを太い実線で示している。
【0045】
ステップS14で 処理部21は、走行経路設定スイッチ45をOFFにし、走行スイッチ40をONにしてコンバインを新たな走行経路52Aに沿って走行させてステップS1に戻る。なお、コンバインが新たな走行経路52Aに沿って走行している場合には、刈取装置3は下降して接地センサ31と穀稈センサ32の入力信号はONになる。
【0046】
ステップS15で 処理部21は、
図12に示すように、後進スイッチ42をONにしてコンバインを近位部X2から経路54の延長線54Aに近づく様に後進させてステップS16に進む。
【0047】
ステップS16で、処理部21は、コンバインが遠位部X1に到達したか否か判断する。コンバインが遠位部X1に到達したと判断した場合には、ステップS5に戻り、コンバインが遠位部X1に到達していないと判断した場合には、ステップS17に進む。
【0048】
ステップS17で、処理部21は、
図12に示すように、コンバインの偏差Yが遠位部X1での許容値Y3以内であるか否か判断する。コンバインの偏差Yが許容値Y3以内であると判断した場合には、ステップS7に戻り、コンバインの偏差Yが許容値Y1よりも大きいと判断した場合には、ステップS15に戻る。また、再度のコンバインを後進させた場合の遠位部X1の許容値(請求項の「第3許容値」)Y3は、一回目のコンバインの後進時の遠位部X1の許容値Y1よりも小さく、近位部X2の許容値Y2よりも大きく設定するのが好ましい。これにより、同一場所でコンバインの後進と前進を過度に繰り返すのを防止することができる。なお、遠位部X1の許容値Y3は、コンバインの後進回数に増加に応じて小さくするのがより好ましい。
【符号の説明】
【0049】
3 刈取装置
4 脱穀装置
5 操縦部
20 コントローラ
52 走行経路
52A 新たな走行経路
53 経路(第1経路)
53A 延長線
54 経路(第2経路)
X1 遠位部
X2 近位部
Y 偏差
Y1 許容値(第1許容値)
Y2 許容値(第2許容値)
Y3 許容値(第3許容値)
【要約】 (修正有)
【課題】コンバインの走行距離、特に、走行切返し操作中のコンバインが後進する距離を短くして、穀稈の刈取作業の効率を高くすることができる穀稈の刈取作業方法を提供する。
【解決手段】走行切返し操作中のコンバインの後進時に、コンバインの偏差(Y)と、第2経路(54)の始端部から所定の距離離れた遠位部(X1)の第1許容値(Y1)とを比較して、コンバインの偏差(Y)が第1許容値(Y1)以下の場合には、コンバインを前進させ、コンバインの偏差(Y)が第1許容値(Y1)よりも大きい場合には、コンバインをさらに後進させる。
【選択図】
図6