(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】ストレーナ
(51)【国際特許分類】
B01D 35/16 20060101AFI20220818BHJP
B01D 35/02 20060101ALI20220818BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20220818BHJP
B01D 29/64 20060101ALI20220818BHJP
B01D 29/48 20060101ALI20220818BHJP
B02C 18/00 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
B01D35/16
B01D35/02 A
B01D29/10 501Z
B01D29/10 510D
B01D29/10 510F
B01D29/10 510G
B01D29/10 520C
B01D29/10 520Z
B01D29/10 530A
B01D29/38 550A
B01D29/38 550C
B01D29/38 550D
B01D29/48 A
B02C18/00 103Z
(21)【出願番号】P 2017233475
(22)【出願日】2017-12-05
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】594182993
【氏名又は名称】大同工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】荻野 幸久
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-113680(JP,A)
【文献】特開2007-275862(JP,A)
【文献】特開2013-126613(JP,A)
【文献】特開2014-117644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0136683(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D24/00-37/04
B02C1/00-25/00
C02F1/00
C02F11/00-11/20
B09B1/00-5/00
E03C1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のストレーナ本体には、被処理水が流入口から流入して濾過する円筒状の濾過エレメントと、この濾過エレメントから外周側に濾過する濾過室と、この濾過室から濾過水を流出させる流出口を有するストレーナにおいて、前記濾過エレメントの底部に小枝等の異物を破砕する破砕器を備え、前記破砕器は、回動軸を介して回動する上部破砕刃と、この上部破砕刃と所定の間隔を有し空間部を隔てて設けた下部破砕刃と、前記空間部に回動軸を中心に放射方向に固定した隔壁と、両端部を前記隔壁同士に連接した連接棒とを備えたことを特徴とするストレーナ。
【請求項2】
前記破砕器は、前記濾過エレメントの底部に開けた開口部に、ストレーナ本体用に軸装した回動軸を介して回動自在に設けるとともに、この破砕器は、ストレーナ本体の下部に設けた排出室に臨ませ、ストレーナ本体の下部に設けた排出口と連通させた請求項1に記載のストレーナ。
【請求項3】
前記上部破砕刃は回転翼刃であり、前記下部破砕刃は多数の挿入穴を開けた円盤破砕刃である
請求項1に記載のストレーナ。
【請求項4】
前記上部破砕刃と前記下部破砕刃は、小枝等の異物の破砕に対応して任意の破砕刃を交換自在に設けた
請求項1に記載のストレーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の異物(以下、スラッジという。)等を含んだ被処理水を濾過してスラッジを除去するストレーナに関し、更に詳細には、スラッジに混入して流入してくる小枝等の異物を破砕する破砕器を底部に備えたストレーナに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの工業施設では河川水を工業用水として使用するが、水力発電所でも、水車発電機の軸受や圧油・潤滑油装置の冷却には一般に水冷方式が採用されているため、河川や野外の貯水槽から取水した水を冷却水として使用している。この冷却水には清浄水を必要とするものの、河川や野外の貯水槽から取水した水には塵芥や落葉等のスラッジが含まれており、このスラッジが冷却系統に侵入するのを防止するため、冷却水系統の途中にストレーナを設けている。
【0003】
ストレーナは、被処理水が流れるストレーナ本体内に濾過エレメントを設け、この濾過エレメントが、水の通過を許容するとともに、被処理水中のスラッジを捕捉する構成であり、ストレーナの下流側には濾過エレメントにより濾過されてスラッジが除去された水が供給される。
【0004】
これにより、ストレーナ本体内の濾過エレメントには捕捉されたスラッジが付着し、そのままにしておくと圧力損失が大きくなって所要の流量が得られなくなる。この様な事態を防止するためには、濾過エレメントに付着しているスラッジを除去して、濾過エレメントの濾過能力を回復させる必要がある。
【0005】
このため、ストレーナの稼動中に自動的に濾過エレメントに付着したスラッジを除去して濾過エレメントの濾過能力を回復させるストレーナが提案されており、例えば、特許文献1には、濾過エレメントの内周側又は外周側に駆動羽根を配設し、この駆動羽根を濾過エレメントの周回り方向に回転駆動した際の駆動力により濾過槽内の濾過処理された水で濾過エレメントを逆洗し、濾過エレメントに付着したスラッジ除去するストレーナが提案されている。
【0006】
特許文献2には、濾過エレメントの内側に先端部に掻取り部材を取り付けた掻取り体が回転可能に設けられ、濾過エレメントの内周面と掻取り部材との間に僅かな隙間を設定して掻取り体を回転させることにより濾過エレメントの内周面付近に水流を発生させ、この水流により濾過エレメントに付着したスラッジ除去するストレーナが提案されている。
【0007】
また、特許文献3には、濾過エレメントの内側に回転軸で回動駆動する逆洗管を設け、逆洗管を大気圧に開放することにより、濾過エレメントに付着したスラッジとストレーナの底部に沈殿したスラッジを除去するストレーナが提案されている。
【0008】
さらに、特許文献4には、濾過エレメントの内周及び外周面に沿って濾過エレメントの軸方向の長さ略全長に亘って接触するブラシを設けるとともに、濾過エレメントが中心の回転軸に連動して回転するように構成し、濾過エレメントに付着したスラッジ除去するストレーナが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-181214号公報
【文献】特開平8-80405号公報
【文献】特開平7-136421号公報
【文献】特開平1-94908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1乃至特許文献4のストレーナは、濾過エレメントに付着したスラッジを自動的に除去するとともに除去したスラッジをストレーナ外に排出し、濾過エレメントの濾過能力を回復させることができる。
【0011】
しかしながら、河川や野外の貯水槽から取水した水(以下、被処理水という。)には、スラッジの他に小枝や剥落した樹皮(以下、小枝等という。)の異物が含まれており、ストレーナ内に流れ込んで濾過エレメント下部のストレーナ底部に沈み込む場合がある。
【0012】
特に比較的に長い小枝等がストレーナ本体の底部に沈み込んだ場合には、ストレーナ本体の底部に設けたスラッジの排出口から排出することができず、底部に残留する場合があるが、このような小枝等の異物については、前記文献で提案されている濾過エレメントに付着したスラッジを自動的に除去、排出するストレーナでは、対応することができない。
【0013】
ストレーナ本体の底部に小枝等が沈み込んで残留すると、掻取り部材等により掻取られたスラッジがこの小枝等に絡み付いてストレーナ本体の底部に溜まる結果、スラッジが排出しにくくなるだけでなく、小枝等に絡み付いた状態から分離したスラッジが再び濾過エレメントに付着して濾過エレメントの濾過能力を早期に低下させることがある。
【0014】
そのため、濾過エレメントに付着したスラッジの除去と排出が自動的に可能であり、本来は長期間メンテナンスフリーで使用可能なストレーナでありながら、随時ストレーナの使用を停止して濾過エレメントをストレーナ本体の外部に取出し、ストレーナ本体の底部に沈み込んで溜まったスラッジや小枝等を除去する面倒な清掃作業が必要になる。
【0015】
また、ストレーナ本体の底部に沈み込んだ小枝等が何らかの理由によりそのままストレーナ本体の外部に流出した場合には、ストレーナの二次側に設けた重要機器に損傷を与えるおそれがある。
【0016】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、スラッジに混入して流入してくる小枝等の異物を自動的に破砕して外部に排出し、掻取り部材等により掻取ったスラッジが内部に滞留して濾過エレメントの濾過能力が低下することを防止するとともに、二次側に設けた重要機器に損傷を与えることがないストレーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、円筒状のストレーナ本体には、被処理水が流入口から流入して濾過する円筒状の濾過エレメントと、この濾過エレメントから外周側に濾過する濾過室と、この濾過室から濾過水を流出させる流出口を有するストレーナにおいて、濾過エレメントの底部に小枝等の異物を破砕する破砕器を備え、破砕器は、回動軸を介して回動する上部破砕刃と、この上部破砕刃と所定の間隔を有し空間部を隔てて設けた下部破砕刃と、前記空間部に回動軸を中心に放射方向に固定した隔壁と、両端部を前記隔壁同士に連接した連接棒とを備えたストレーナである。
【0018】
請求項2に係る発明は、破砕器は、濾過エレメントの底部に開けた開口部に、ストレーナ本体用に軸装した回動軸を介して回動自在に設けるとともに、この破砕器は、ストレーナ本体の下部に設けた排出室に臨ませ、ストレーナ本体の下部に設けた排出口と連通させたストレーナである。
【0020】
請求項3に係る発明は、上部破砕刃は回転翼刃であり、下部破砕刃は多数の挿入穴を開けた円盤破砕刃であるストレーナである。
【0021】
請求項4に係る発明は上部破砕刃と下部破砕刃は、小枝等の異物の破砕に対応して任意の破砕刃を交換自在に設けたストレーナである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明によると、濾過エレメントの底部に小枝等の異物を破砕する破砕器を備えているので、スラッジに混入して流入してくる小枝等の異物を排出口から排出可能な長さに破砕し、排出口からストレーナ本体の外部に排出することができる。
【0023】
また、小枝等の異物が排出室に残留しないため、掻取り部材等により掻取ったスラッジが排出室に溜まることがないので、排出室に溜まったスラッジが再び濾過エレメントに付着することによる濾過エレメントの濾過能力の低下が生じない。
【0024】
従って、随時ストレーナの使用を停止して濾過エレメントをストレーナの外部に取出し、ストレーナの排出室に溜まったスラッジや小枝等を除去する面倒な清掃作業が不要になる。さらには、小枝等の異物を上部破砕刃と下部破砕刃の二箇所で破砕することができ、小枝等の異物を最長でも上部破砕刃と下部破砕刃の間隔の長さに破砕し、速やかに排出口を介してトレーナ本体の外部に排出することができると共に、隔壁と連接棒により回動する破砕刃に押されて移動する小枝等の異物の動きを拘束し、回動する上部破砕刃と下部破砕刃の切断力を確実に異物に作用させ、小枝等の異物を確実に破砕することができる。
【0025】
請求項2に係る発明によると、破砕器が、濾過エレメントの底部に開けた開口部にストレーナ本体用に軸装した回動軸を介して回動自在に設けられているので、専用の駆動機構を設けることなく、ストレーナ本体用に軸装した回動軸を介して破砕器を駆動させ、小枝等の異物を破砕することができる。
【0026】
また、破砕器が排出室に面して設けられるとともに、排出室は排出口と連通しているので、破砕器が破砕した小枝等の異物を排出室に残留させることなく、直ちに排出口を介してストレーナ本体の外部に排出することができる。
【0029】
請求項3に係る発明によると、上部破砕刃を回転翼刃に、下部破砕刃を多数の挿入穴を開けた円盤破砕刃にして上部と下部の破砕刃の形状を変えているので、各破砕刃の特性に応じて小枝等の異物を効率的に破砕することができる。
【0030】
すなわち、上部の回転翼刃は、直線状の刃部を鋭利に形成することができるので、隔壁と連接棒により拘束された小枝等の異物を容易に切断して破砕することができ、下部の円盤破砕刃は、円盤状の表面に多数開けた挿入穴に小枝等の異物の下端を落とし込んで保持しながら、隔壁と連接棒により拘束された異物を挿入穴の周囲に形成した刃部により切断して破砕することができる。
【0031】
請求項4に係る発明によると、上部破砕刃と下部破砕刃を小枝等の異物の破砕に対応して任意の破砕刃を交換自在に設けることができるので、スラッジに混入して流入してくる小枝等の異物の種類が変化した場合には、上部破砕刃と下部破砕刃とを適具交換することにより、容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明におけるストレーナの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】破砕器に設けた隔壁と両端部を隔壁同士に連接した連接棒をA-A方向から見た状況を示す図である。
【
図4】上部破砕刃が回転翼刃、下部破砕刃が円盤破砕刃である破砕器をA-A方向から見た図である。
【
図5】上部破砕刃、下部破砕刃ともに回転翼刃である破砕器をA-A方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明におけるストレーナの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明におけるストレーナの一実施形態を示す模式断面図であり、
図2及び
図3は本発明におけるストレーナの破砕器部分を示す部分拡大図である。
【0034】
図1によると、本発明に係るストレーナ11は、円筒状のストレーナ本体12に、被処理水が流入する流入口13と、流入口13から流入した被処理水を濾過する濾過エレメント14を収納する濾過室15と、濾過エレメント14が濾過した被処理水(清浄水)を濾過室15からストレーナ本体12の外部に流出させる流出口16と、濾過室15の下部に設けた排出室17と、排出室17に連通した排出口18とを有するとともに、濾過エレメント14の底部には、小枝等の異物を破砕する破砕器19を排出室17に面して備えている。
【0035】
濾過エレメント14は上部と底部に開口部21、22を有する縦型の円筒形に構成されており、上部の開口部21から内側に流入した被処理水を外側の濾過室15に向けて通過させ、スラッジを除去するように構成されている。なお、濾過エレメント14は、濾過対象のスラッジに応じ、パンチングプレート、ウェッジワイヤー、金網等を適宜に選択して製作することができる。本実施例では、SUS304材のパンチングプレート(φ3mm)を使用して濾過エレメントを製作している。
【0036】
破砕器19は、濾過エレメント14の底部に開けた開口部22に、ストレーナ本体12用に軸装した回動軸23を介して回動自在に、かつ排出室17に面して設けられている。回動軸23はストレーナ本体12に軸装し、濾過エレメント14の内周に付着したスラッジを掻き取るためのブラシ24とスクレーパー25を取付けて回動させるためのものであり、この回動軸23を介して破砕器19を回動自在に設けることにより、破砕器19の専用の駆動機構を設けることなく破砕器19を回動させることができる。
【0037】
なお、
図1では、回動軸23にブラシ24とスクレーパー25を取付けているが、組合せはこれに限定されるわけでなく、ブラシとブラシ、スクレーパーとスクレーパー、ブラシと吸込管、スクレーパーと吸込管等を濾過対象のスラッジに応じて適宜選定して組合せることができる。
【0038】
回動軸23は、ストレーナ本体12の上部を被蓋する蓋体27の上部に搭載したモータ28に減速機構29、回動伝達金具30を介して接続されており、モータ28の駆動力により回動する。
【0039】
続いて、
図2および
図3により、本発明におけるストレーナに設けた破砕器19を詳細に説明する。破砕器19は、回動しながら小枝等の異物を切断して破砕する上部破砕刃32及び下部破砕刃33と、小枝等の異物を拘束して上部破砕刃32及び下部破砕刃33が切断し易くする隔壁34及び連接棒35とから構成されている。
【0040】
このように破砕刃を上部破砕刃32と下部破砕刃33の二段構成として設けることにより、上部破砕刃32と下部破砕刃33によって、小枝等の異物を同時に濾過エレメント14の内周側や排出室17内に留まることがない長さに切断、破砕し、排出口18を介してストレーナ本体12の外部に排出することができる。
【0041】
このため、上部破砕刃32と下部破砕刃33との間隔L1と、下部破砕刃33とストレーナ本体12の底板36との間隔L2は、小枝等の異物を濾過エレメント14の内周側や排出室17内に留まることがない長さに切断、破砕することができるように設定する必要がある。これにより、上部破砕刃32の位置には届かず、上部破砕刃32で破砕できない長さの小枝等の異物であっても、下部破砕刃33で切断、破砕すれば、排出口18を介してストレーナ本体12の外部に排出することができる。
【0042】
上部破砕刃32は、
図4に示すように、直線状の翼部37を有する回転翼刃に形成され、中心に回動軸23を挿通する挿通孔38を有し、直線状に形成された翼部37には鋭利な刃部が形成されている。また、中心の挿通孔38の周囲には、取付ボルト39を螺着するためのボルト穴40が形成されている。本実施例では、SUS304材で上部破砕刃32を製作している。
【0043】
下部破砕刃33は、
図4に示すように、円盤破砕刃に形成され、中心に延長軸42を挿通する挿通孔43を有し、円盤状の表面に多数の挿入穴44が形成されていて、全ての挿通穴44の内周には刃部が形成されている。中心の挿通孔43の周囲には、取付ボルト45を螺着するボルト穴46が形成されている。本実施例では、SUS304材で下部破砕刃33を製作している。
【0044】
なお、下部破砕刃33の挿入穴44の直径及び形成パターンに特に基準はないが、本実施例では、
図4に示すように、半径が異なる複数の円周上に同一直径の挿入穴44を略等間隔で形成した。挿入穴44の直径は破砕対象の枝等の異物に応じて適宜決定する必要があるが、同一直径の挿入穴だけでなく、直径の異なる挿入穴を混在させることもできる。
【0045】
このように、形状が異なる上部破砕刃32と下部破砕刃33を採用したのは、次の理由による。すなわち、上下とも回転翼刃を使用した場合には、ストレーナ本体12の排出室17に沈み込んだ小枝等の異物の長さが、下部破砕刃33には届くが上部破砕刃32には届かない場合には、小枝等の異物が下部破砕刃33により足払いにように蹴り倒されてしまい、破砕できなくなることがある。蹴り倒された小枝等の異物は、隔壁34と下部破砕刃33の間に挟まり、下部破砕刃33等が変形する原因となる。このため、短い小枝等の異物の場合には、下部破砕刃33の挿入穴44に小枝等の異物の下端を入り込ませ、挿入穴44により小枝等の異物を支えて倒れない状態とした後、確実に小枝等の異物を切断、破砕するためである。
【0046】
図2に示すように、上部破砕刃32は回動軸23に直接取り付けられ、下部破砕刃33は、回動軸23の下端に連結ボルト48により取り付けた延長軸42に取り付けられている。このように、破砕器19では、濾過エレメント14の内周側に付着したスラッジを掻き取るためのブラシ24とスクレーパー25を回動させるためにストレーナ本体12に軸装している回動軸23を介して、上部破砕刃32と下部破砕刃33とを回動させるように構成したので、破砕器19用の回動機構を別途設ける必要がなく、ストレーナ11を簡単、コンパクトかつ安価に構成することができる。
【0047】
回動軸23の上部破砕刃32の取付位置には、回動軸23の軸心を中心として対称に平行な一対の溝部51、52が軸表面から形成されている。この溝部51、52に破砕刃取付板53、53を嵌め込み、破砕刃取付板53のボルト挿通穴54に取付ボルト39を挿通した後、挿通孔38に回動軸23を挿通させ、上部破砕刃32のボルト穴40に取付ボルト39を螺着すると、上部破砕刃32を回動軸23に取付けることができる。
【0048】
延長軸42の下端には、延長軸42の軸心を中心として対称に平行な一対の段部56、57が形成されており、この段部56、57と連結ボルト48の頭部との間にワッシャ58を介して挟み込み、下部破砕刃33用の破砕刃取付板59、59を挟持する。破砕刃取付板59のボルト挿通穴60に取付ボルト45を挿通した後、下部破砕刃32のボルト穴46に取付ボルト45を螺着すると、延長軸42に下部破砕刃33を取付けることができる。
【0049】
このような簡易な方法によって上部破砕刃32を回動軸23に、下部破砕刃33を延長軸に42に取り付けているので、破砕刃の着脱は容易に行うことができ、小枝等の異物の破砕要求に対応して任意の形状の破砕刃を自在に交換することができる。
【0050】
上部破砕刃32及び下部破砕刃33が切断、破砕する際に小枝等の異物を拘束する隔壁34は、
図2に示すように、上部を濾過エレメント14下端の保持リング62と回動軸23の挿通穴63を有する隔壁保持リング64とに固定され、
図3に示すように、回動軸23を中心とする放射状に配置されている。本実施例では、8枚の隔壁34を角度45°毎に取付けているが、配置する隔壁の枚数及び取付け角度は任意であり破砕対象の小枝等の異物の性状により適宜変更することができる。
【0051】
これに加え、
図3に示すように、隔壁保持リング64を中心に放射状に配置した8枚の隔壁34は、外周側で連接棒35により一対の隔壁34、34同士が連結されている。
【0052】
連接棒35は、このように一対の隔壁34、34同士を連結して隔壁全体の強度と剛性を高めるとともに、一対の隔壁34、34と連接棒35により形成される空間65内に枝等の異物を捕捉する役割を果たしている。
【0053】
隔壁34の上部の一端は濾過エレメント14下端の保持リング62に固定され、他端は回動軸23を挿通させて回動軸23の回動を許容する隔壁保持リング64に固定されているため、回動軸23の回動に伴って上部破砕刃32と下部破砕刃33が回動しても、隔壁34と隔壁34同士を連結する連接棒35は停止状態を維持する。従って、回動する上部破砕刃32又は下部破砕刃33により押されて移動してきた枝等の異物は、隔壁34により動きを規制されるが、上部破砕刃32又は下部破砕刃33は回動を続けるので、上部破砕刃32又は下部破砕刃33の刃部により枝等の異物が切断、破砕されることになる。
【0054】
また、連接棒35は、枝等の異物が上部破砕刃32又は下部破砕刃33に押されて移動する際に、外周方向に逃げることを防止して一対の隔壁34、34と連接棒35により形成される空間65内に捕捉し続けることにより、確実に隔壁34により枝等の異物の動きを規制させ、上部破砕刃32又は下部破砕刃33により切断、破砕できるようしている。
【0055】
この隔壁34の高さは、
図2に示すように、上部破砕刃32と下部破砕刃33との間隔と略等しく設定することにより、上部破砕刃32で切断、破砕が可能な長さの枝等の異物に対しても、上部破砕刃32には届かない短い長さの枝等の異物に対しても、破砕刃が枝等の異物を切断、破砕する際に枝等の異物の動きを規制し、拘束する効果を奏する。
【0056】
濾過エレメント14下端の保持リング62に対する隔壁34の固定方法は、種々の方法で行うことができるが、上部破砕刃32の整備、交換を考慮した場合には、永久的な結合方法ではなく、取り外し可能な方法によることが好ましい。取り外し可能な方法としては、例えば、隔壁34に取付金具を設け、この取付金具と濾過エレメント14下端の保持リング62とをボルト止めしたり、又は各隔壁の上部外周を連接する取付リングを設け、この取付リングを濾過エレメント14下端の保持リング62に螺着して固定するようにしたり、バヨネット方式で固定するようにしたりする等の方法を採ることができる。
【0057】
以上のように構成された破砕器19は、
図2に示すように、略全体が排出室17内に突出した状態で濾過ユニット14の底部に備えられているので、上部破砕刃32と下部破砕刃33が切断、破砕した異物68を排出室17に連接する排出口18から直ちに排出することができる。
【0058】
前述したように、下部破砕刃は円盤破砕刃であることが枝等の異物を確実に切断、破砕するためには有利であると考えられるが、ストレーナの設置施設によっては切断、破砕対象となる異物が異なるため、
図5に示すように、下部破砕刃67にも回転翼刃を使用しても良い。本図では、上部破砕刃32と下部破砕刃67とが直交した状態で取付けられているが、上部破砕刃32と下部破砕刃67の取付は直交状態に限られるわけではなく、破砕対象となる異物の性状により任意に設定することができる。
【0059】
続いて、本発明のストレーナの作用及び効果を以下に説明する。
ストレーナ11の流入口13には、図示しない取水ポンプにより加圧、送水された被処理水が連続的に流入する。流入口13を介して、ストレーナ本体12内に流入した被処理水は、濾過エレメント14上部の開口部21から濾過エレメント14の内周側に流入し、濾過エレメント14を内側から外側に通過する際にスラッジが濾過された清浄水となり、濾過室15へと流出する。
【0060】
このとき、ストレーナ本体12の底部に設けた排出口18の下流に設けた図示しないドレイン弁は閉状態であるので、濾過室15内の清浄水は濾過室15に連接する流出口16を介してストレーナ本体12から流出し、清浄水を使用する冷却系統等に給水される。
【0061】
ストレーナ11の運転を続けていると、被処理水を濾過する際に濾過エレメント14の内周側に付着するスラッジ量が増加して目詰まりして濾過能力が低下し、流入口13と流出口16間の差圧が増加する。この差圧の増加が一定の基準を超えると、濾過エレメント14の内周側に付着するスラッジを掻き取って濾過能力を回復するため、モータ28を駆動して回動軸23に取り付けたブラシ24とスクレーパー25を回動させ、付着したスラッジを除去する。
【0062】
また、ブラシ24とスクレーパー25を回動させるのと同時に、排出口18の下流に設けた図示しないドレイン弁を開いて大気圧に開放すると、ストレーナ本体12内は取水ポンプが加圧して送水した被処理水で満たされているため、大気圧との差圧により、ストレーナ本体12内の被処理水は排出口18から外部に排出され、この排出される被処理水と一緒にブラシ24とスクレーパー25が掻き取ったスラッジも外部に排出される。
【0063】
なお、この濾過エレメント14の内周側に付着したスラッジをブラシ24とスクレーパー25により掻き取って除去し、ストレーナ本体12の外部に排出するタイミングは、前述したように、流入口13と流出口16間の差圧を基準に設定することもできるし、ストレーナ11の運転時間を基準に設定することもできる。また、ブラシ24とスクレーパー25を回動させる駆動力として、モータの他に手動ハンドルを使用することもできる。
【0064】
以上が基本的なストレーナ11の運転であるが、ストレーナ11に送水された被処理水にスラッジにとともに小枝等の異物が混入していた場合、異物68が濾過エレメント14の底部の開口部22から排出室17へ沈み込むことがある。
【0065】
この異物の長さが排出口18から排出可能な程度に短い場合には、異物は濾過エレメント14の底部の開口部22から排出室17内に沈み込んで滞留するが、前述のように、濾過エレメント14の内周側に付着したスラッジを掻き取り除去する際に、排出口18の下流に設けたドレイン弁を開放すると、ストレーナ本体12から排出される被処理水とともに排出される。
【0066】
これに対し、異物68がある程度の長さを有している場合には、異物68は濾過エレメント14の底部の開口部22から排出室17内に沈み込むが、
図2に示すように、一方の先端は底板36の表面に接触しても、他方の先端は濾過エレメント14の内周側に留まることになる。
【0067】
このような状態では、ストレーナに破砕器を設けていないと、ブラシ24とスクレーパー25を回動させても異物68には何の影響を及ぼすことができず、また、排出口18下流のドレイン弁を開いても、排出口18を通過することができない長さの異物68はストレーナ本体12の内部に残留する。さらには、ブラシ24とスクレーパー25により掻き取られ、被処理水と一緒に排出口18から流れ出ようとするスラッジが異物68に絡み付き、スラッジの掻き取りを実施する毎に異物に絡み付くスラッジは成長することになる。
【0068】
異物68に絡み付いたスラッジが成長すると、スラッジの排出が十分に行えないだけでなく、異物から分離したスラッジが再び濾過エレメント14に付着して、濾過エレメント14の濾過能力の低下が早期に生じることになる。
【0069】
これに対し、濾過エレメント14の底部に破砕器19を備える本発明のストレーナ11では、一方の先端が底板36に接触し、他方の先端が濾過エレメント14の内周側に留まる長さの異物68であっても、排出口18から流出可能な長さに切断、破砕し、排出口18からストレーナ本体12の外部に排出することができる。
【0070】
すなわち、異物68が濾過エレメント14の底部の開口部22から排出室17内に沈み込み、
図2に示すように、異物68が下部破砕刃33の挿入穴44に挿入された場合には、回動軸23を回動させるとブラシ24とスクレーパー25と一緒に上部破砕刃32と下部破砕刃33も回動する。この上部破砕刃32と下部破砕刃33の回動に伴って、異物68は上部破砕刃32と下部破砕刃33に押されて回動軸23周りを移動する。
【0071】
一方で、隔壁34は静止しているため、上部破砕刃32と下部破砕刃33に押されて回動軸23周りを移動する異物68は、隔壁34に当接した時点で移動できなくなって拘束される結果、回動を続ける上部破砕刃32と下部破砕刃33の刃部が異物68と接触する部位に食い込み、最終的にはその部位で異物68を切断、破砕する。
【0072】
これにより、排出口18から排出可能な長さに切断、破砕された異物68は、排出口18から流出する被処理水とともにストレーナ本体12の外部に排出され、排出室17に異物が残留することがない。
【0073】
このように、本発明のストレーナでは、従来の破砕器を有しないストレーナの運転方法に何ら特別な操作を付け加えない運転方法により、濾過エレメント14の内周面に付着したスラッジをブラシ24とスクレーパー25によって掻き取り除去するとともに、ストレーナ本体12に流入して排出室17に沈み込んだ小枝等の異物を破砕器19によって排出口18からに排出可能な長さに切断、破砕し、掻き取ったスラッジと一緒に排出口18からストレーナ本体12の外部に排出することができる。
【0074】
なお、
図2では、異物68が下部破砕刃33の挿入穴44の一つに挿入された状態を示しているが、破砕器19で異物を切断、破砕する際には、異物68が下部破砕刃33の挿入穴44に挿入されていることは必須の要件ではない。異物68の下端部が下部破砕刃33の上側表面に載った状態であっても、上部破砕刃32のみでも異物68の切断、破砕は可能であり、順次これを繰り返すことで異物68を排出口18から排出可能な長さに切断、破砕することもできる。
【0075】
また、異物68の下端部が下部破砕刃33の上側表面に載った状態であっても、上部破砕刃32と下部破砕刃33の回動に伴い、異物68が隔壁34に当接して拘束された際に、異物68の下端部が下部破砕刃33に多数開けた挿入孔44の何れか一つに落ち込み、下部破砕刃33により切断、破砕される可能性は大きい。
【0076】
このようにして、本発明のストレーナでは、排出室内に枝等の異物が留まることがないので、掻取り部材等により掻取ったスラッジが排出室内に沈み込んだ枝等の異物に絡み付いて成長し、この成長したスラッジが再び濾過エレメントに付着することによる濾過エレメントの濾過能力の低下が発生しない。
【0077】
また、本来はメンテナンス間隔が非常に長い自動ストレーナでありながら、排出口から排出することができない異物がストレーナ内に流れ込むため、随時ストレーナの使用を停止して濾過エレメントをストレーナの外部に取出し、ストレーナの排出室に溜まったスラッジや異物を除去する面倒な清掃作業を行う必要がなくなり、ストレーナの稼働率を大幅に向上させることができる。
【0078】
以上の説明で明らかなように、本発明に係るストレーナでは、従来からストレーナ本体に軸装している回動軸を介して、破砕器の上部破砕刃と下部破砕刃を回動させるように構成したので、破砕器用の回動機構を別途設ける必要がなく、ストレーナを簡単、コンパクトかつ安価に構成することができる。また、従来のストレーナの運転方法と同じ運転方法により、濾過エレメントの内周面に付着したスラッジを掻き取り除去するのと同時にストレーナ本体に流入して底部に沈み込んだ異物を破砕器によって切断、破砕し、掻き取ったスラッジと切断、破砕した異物を排出口から外部に排出することができる。
【符号の説明】
【0079】
11 ストレーナ
12 ストレーナ本体
13 流入口
14 濾過エレメント
15 濾過室
16 流出口
17 排出室
18 排出口
19 破砕器
23 回動軸
32 上部破砕刃
33 下部破砕刃
34 隔壁
35 連接棒
42 延長軸
48 連結ボルト