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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】複合粘着剤組成物及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20220818BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220818BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20220818BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220818BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220818BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/08
C09J133/14
C09J11/06
C09J7/38
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022035430
(22)【出願日】2022-03-08
【審査請求日】2022-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105877
【氏名又は名称】サイデン化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大前 仁史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】柴田 翔太郎
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-183503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有エチレン性不飽和単量体を構成単位として含む(メタ)アクリル系共重合体と、疎水化セルロースナノファイバーと、を含む複合粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、前記疎水化セルロースナノファイバー0.1質量部以上、14質量部以下を含有し、
前記複合粘着剤組成物は、ポリイソシアネート化合物を更に含む、
複合粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、帯電防止剤1質量部以上、20質量部以下で含有し、
前記(メタ)アクリル系共重合体は、前記水酸基含有エチレン性不飽和単量体1質量部以上、4質量部以下と、アルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸エステル100質量部と、を含む単量体成分の共重合体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合粘着剤組成物。
【請求項3】
前記水酸基含有エチレン性不飽和単量体は、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)、および(ヒドロキシエチル)メタクリレート(HEMA)の少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の複合粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、前記ポリイソシアネート化合物0.05質量部以上、3質量部以下で含有し、
前記ポリイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等とトリメチロールプロパン等とのアダクト体、イソシアヌレート化合物、ビュレット型化合物、トリレンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネートの化合物の少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の複合粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、グリシジル基、アミド基、カルボキシ基の少なくともいずれかを有するエチレン性不飽和単量体の少なくともいずれかを構成単位として含有する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の複合粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、100万以上、250万以下である、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の複合粘着剤組成物。
【請求項7】
前記疎水化セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、1以上、150以下である、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の複合粘着剤組成物。
【請求項8】
常温常圧で揮発性の有機媒体を更に含む、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の複合粘着剤組成物。
【請求項9】
第1層と、
前記第1層の少なくとも一方の表面に塗布される、請求項1から8のいずれか一項に記載の複合粘着剤組成物を有する第2層と、を備える粘着シート。
【請求項10】
前記第2層のHaze値は0.1以上、1.5以下である、
ことを特徴とする請求項9に記載の粘着シート。
【請求項11】
異種被着材間を接着する、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粘着剤組成物及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤は、情報通信機器、家電、建材、自動車、生活用品等の分野で利用されている。長期間、被着材同士を接着させたままとする用途に対応するために、粘着剤、例えば、永久接着タイプの粘着剤では被着材同士が剥離しにくい接着力が求められる。
【0003】
しかし、永久接着タイプの粘着剤が適用された被着材同士が、例えば、高温・高湿等の環境に曝されると、被着材間の熱膨張率の差異等により被着材から接着剤が剥離し、被着材が非接着状態となってしまうことがあった。特許文献1では厳しい条件下での耐久性を示す、離型フィルム又は離型紙と粘着剤層とを有してなる偏光板貼着用の粘着剤シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6564995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高温・高湿等の環境において、さらに被着材間の接着力を向上させたいとの要望があった。
【0006】
本発明は、被着材間の接着力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために、本発明の複合粘着剤組成物は、水酸基含有エチレン性不飽和単量体を構成単位として含む(メタ)アクリル系共重合体と、疎水化セルロースナノファイバーと、を含む複合粘着剤組成物であって、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、前記疎水化セルロースナノファイバー0.1質量部以上、14質量部以下を含有し、前記複合粘着剤組成物は、ポリイソシアネート化合物を更に含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被着材間の接着力を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。
【0010】
<複合粘着剤組成物>
本発明の複合粘着剤組成物は、水酸基含有エチレン性不飽和単量体を構成単位として含む(メタ)アクリル系共重合体(以下、アクリル系共重合体(A))と、疎水化セルロースナノファイバー(以下、疎水化CNF(B))と、を含む。複合粘着剤組成物において、疎水化セルロースナノファイバーが(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上、14質量部以下を含有する。
【0011】
一実施形態に係る複合粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)との相溶性の観点から、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、疎水化CNF(B)を0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、14質量部以下、12質量部以下、10質量部以下、7質量部以下、5質量部以下で含有する。
【0012】
複合粘着剤組成物が、上記質量部の範囲の疎水化CNF(B)を含有することと、疎水化CNF(B)が疎水性を有することにより、アクリル系共重合体(A)内で疎水化CNF(B)が均一に分散する。これにより、複合粘着剤組成物を硬化乾燥させた粘着剤層の機械特性(例えば、破断強度、破断伸度)が向上する。本発明の複合粘着剤組成物によれば、被着材間の接着力を向上させることができる。
【0013】
一方、複合粘着剤組成物が上記質量部の範囲よりも多い疎水化CNF(B)を含有する場合、アクリル系共重合体(A)内で疎水化CNF(B)が均一に分散せず凝集が起こるため、粘着剤層の機械特性が所定の特性とならないことがある。また、複合粘着剤組成物が上記質量部の範囲よりも少ない疎水化CNF(B)を含有する場合、アクリル系共重合体(A)内で疎水化CNF(B)のネットワーク形成が不十分となり、粘着剤層の機械特性が所定の特性とならないことがある。
【0014】
複合粘着剤組成物は、その他の添加剤として、硬化剤(C)、シランカップリング剤(D)、帯電防止剤(E)、溶剤を更に含有してもよい。
【0015】
(アクリル系共重合体(A))
アクリル系共重合体(A)は、後述の硬化剤(C)(例えば、イソシアネート系化合物)との反応によりアクリル系共重合体(A)の架橋を形成し、粘着剤層の機械特性を向上させる必須の単量体として、水酸基含有エチレン性不飽和単量体(a1)(以下、単量体(a1))を構成単位として含む。ここで、アクリル系共重合体(A)が単量体(a1)を含まない場合、アクリル系共重合体(A)の架橋が形成されず、粘着剤層の機械特性が所定の特性とならないことがある。
【0016】
さらに、アクリル系共重合体(A)は、アルキル基の炭素数が1~18のエチレン性不飽和単量体(a2)(以下、単量体(a2))を構成単位として含むことができる。また、アクリル系共重合体(A)は、反応性官能基を有するエチレン性不飽和単量体(a3)(以下、単量体(a3))を構成単位として更に含むことができる。
【0017】
単量体(a1)から(a3)の少なくともいずれかを構成単位として含むアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、粘着剤層の耐久性と複合粘着剤組成物の基材への塗工性の観点から、100万以上、120万以上、250万以下、210万以下、150万以下である。重量平均分子量は後述のGPC測定により測定される。
【0018】
一実施形態において、アクリル系共重合体(A)は、単量体(a1)1質量部以上、1.5質量部以上、2質量部以上、2.5質量部以上、4質量部以下、3質量部以下、2.7質量部以下と、単量体(a2)100質量部と、を含む単量体成分の共重合体である。
【0019】
一実施形態において、単量体(a3)は、単量体(a1)と単量体(a2)とを合算した101~104質量部に対して、0.3質量部以上、0.5質量部以上、0.7質量部以上、2質量部以下、1.5質量部以下、1質量部以下で含有することができる。
【0020】
(単量体(a1))
単量体(a1)は、水酸基含有エチレン性不飽和単量体である。単量体(a1)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEA)、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(4HBA)、(ヒドロキシエチル)メタクリレート(HEMA)等を含む。単量体(a1)は、上記のうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。単量体(a1)は、硬化剤(C)と反応することによりアクリル系共重合体(A)の架橋(ネットワーク)を形成し、粘着剤層の機械特性として、例えば、凝集力を向上させることができる。
【0021】
(単量体(a2))
単量体(a2)は、アルキル基の炭素数が1~18のエチレン性不飽和単量体である。単量体(a2)は、(メタ)アクリル酸エステルであり、例えば、ブチル(メタ)アクリレート(BA)、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート(2EHA)、メチル(メタ)アクリレート(MA)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(BzA)、フェノキシエチルアクリレート(P2H-A)、フェノキシエチルアクリレート(PO-A)、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等を含む。単量体(a2)は、上記のうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0022】
ブチル(メタ)アクリレート(BA)及び2-エチルへキシル(メタ)アクリレート(2EHA)は、一般的に粘着剤の構成単位である単量体として使用される。フェノキシジエチレングリコールアクリレート(BzA)、フェノキシエチルアクリレート(P2H-A)、フェノキシエチルアクリレート(PO-A)は、それらがベンゼン環を有することで複屈折を制御できるため、一般的に、光学用粘着剤の構成単位である単量体として使用される。
【0023】
(単量体(a3))
単量体(a3)は、種々の反応性官能基として、例えば、グリシジル基、アミド基、カルボキシ基の少なくともいずれかを有するエチレン性不飽和単量体である。単量体(a3)は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート(GMA)、(メタ)アクリルアミド(mAM)、(メタ)アクリル酸(AAC)を含む。単量体(a3)は、上記のうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0024】
グリシジル(メタ)アクリレート(GMA)、(メタ)アクリルアミド(mAM)、(メタ)アクリル酸(AAC)は、アクリル系共重合体(A)の構成単位として必須となる単量体ではないが、粘着剤層の凝集力を向上させるために使用される。これらの単量体は、アクリル系共重合体(A)の極性を高くすることができるため、例えば、金属やガラス等の高極性を有する被着材に対する粘着剤層の接着力を向上させることができる。
【0025】
(疎水化CNF(B))
疎水化CNF(B)は、疎水基を含むセルロースナノファイバー(以下、CNF)であり、例えば、CNFの末端に疎水基を有するものである。また、疎水基は、CNFの末端に存在するカルボキシ基又は水酸基を介してCNFに結合されている。アクリル系共重合体(A)と疎水化CNF(B)との相溶性は、疎水化CNF(B)の親水性表面を疎水表面へと表面改質(疎水化)することで向上する。すなわち、疎水化CNF(B)の末端に付加する疎水基の種類を調整することにより、アクリル系共重合体(A)内の疎水化CNF(B)の分散性はより向上させることができる。
【0026】
一実施形態において、疎水基は炭化水素基又はシリコーン基であり、炭化水素基は例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び芳香族炭化水素基等を含むことができる。疎水化CNF(B)が疎水基を有することにより、疎水化CNF(B)はアクリル系共重合体(A)中に均一に分散することができる。
【0027】
一実施形態において、疎水化CNF(B)は、カルボキシ基含有量が0.1mmol/g以上の微細セルロース繊維において、微細セルロース繊維のカルボキシ基にエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合部(EO/PO共重合部)を有するアミンが、塩としてイオン結合されたものである(特許5823599号公報を参照)。また、EO/PO共重合部が特定の分子量を有し、かつ、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの構成割合が特定である。なお、「カルボキシ基にEO/PO共重合部を有するアミンが塩として結合」とは、カルボキシ基が脱プロトン化するとともに、EO/PO共重合部を有するアミンがアンモニウム塩となり、イオン結合した状態を意味する。
【0028】
疎水化CNF(B)は、微細セルロース繊維が有するカルボキシ基又は水酸基を、公知の疎水化剤の疎水基で修飾処理して得られるものである。微細セルロース繊維が末端のカルボキシ基又は水酸基に対する疎水基の修飾は公知の方法で行われてよい。
【0029】
鎖式飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状である。鎖式飽和炭化水素基の炭素数は、1以上、2以上、3以上、6以上、8以上、30以下、24以下、18以下、16以下である。
【0030】
鎖式不飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状である。鎖式不飽和炭化水素基の炭素数は、1以上、2以上、3以上、30以下、18以下、12以下、8以下である。
【0031】
環式飽和炭化水素基の炭素数は、3以上、4以上、5以上、20以下、16以下、12以下、8以下である。
【0032】
芳香族炭化水素基は、例えば、アリール基及びアラルキル基を含む群から選ばれる。アリール基及びアラルキル基は、芳香族環自身が置換されたものでもあってよく、又は非置換のものであってもよい。アリール基の総炭素数は6以上、24以下、20以下、14以下、12以下、10以下である。アラルキル基の総炭素数は7以上、8以上、24以下、20以下、14以下、13以下、11以下である。
【0033】
疎水化CNF(B)のカルボキシ基含有量は、安定な微細化及びアミンを塩として結合させる観点から、0.1mmol/g以上、0.4mmol/g以上、0.6mmol/g以上、0.8mmol/g以上である。また、疎水化CNF(B)のカルボキシ基含有量は、アクリル系共重合体(A)との相溶性の観点から、3mmol/g以下、2mmol/g以下、1.8mmol/g以下、1.5mmol/g以下である。なお、「カルボキシ基含有量」とは、疎水化CNF(B)を構成する微細セルロース中のカルボキシ基の総量を意味する。
【0034】
疎水化CNF(B)の疎水基の導入率とは、疎水化CNF(B)のカルボキシ基含有量又は水酸基含有量に対して、それらの基のいずれかに導入された(又は結合した)疎水基の結合量の割合のことをいう(数1を参照)。疎水基の導入率は、アクリル系共重合体(A)との相溶性の観点から、5%以上、10%以上、15%以上、70%以下、60%以下、50%以下であってよい。なお、疎水基の結合量及びカルボキシ基又は水酸基の含有量は、公知の方法(例えば、IR測定)に基づいて求められる。それらの測定値に基づいて、疎水基の導入率が求められる(特開2020-195932号公報を参照)。ここで、疎水基として鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、及び環式飽和炭化水素基から選ばれる炭化水素基と、芳香族炭化水素基とが同時に導入されている場合には、導入率の合計が上限の100%を超えない範囲において、上記範囲内となることが好ましい。
【0035】
(数1)
疎水基の導入率(%)=100×疎水基の結合量(mmol/g)/疎水化CNF(B)中のカルボキシ基又は水酸基の含有量(mmol/g)
【0036】
疎水化CNF(B)の平均繊維径は、0.1nm以上、0.5nm以上、1nm以上、2nm以上、3nm以上、100nm以下、50nm以下、20nm以下、10nm以下、6nm以下、5nm以下である。
【0037】
疎水化CNF(B)の平均繊維長は、150nm以上、200nm以上、1000nm以下、750nm以下、500nm以下、400nm以下である。
【0038】
なお、疎水化CNF(B)の平均繊維径及び平均繊維長は、以下の方法で測定され得る。疎水化CNF(B)に水を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製する。分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM)(Digital instrument社製、Nanoscope II Tappingmode AFM;プローブはナノセンサーズ社製、Point Probe(NCH)を使用)を用いて、試料中の疎水化CNF(B)の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定する。その際、疎水化CNF(B)が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出する。
【0039】
また、疎水化CNF(B)の平均アスペクト比(=平均繊維長/平均繊維径)は、アクリル系共重合体(A)との相溶性の観点から、1以上、10以上、20以上、40以上、50以上、150以下、140以下、130以下、100以下、95以下、90以下である。
【0040】
なお、平均アスペクト比は以下の方法で測定され得る。原子間力顕微鏡(Veeco Dimension 3100 Tapping mode)によって撮影されたセルロース繊維の直径が確認できる画像において、50点以上抽出し、繊維径及び繊維長を測定して算出される。低アスペクト比(1以上、150以下)の疎水化CNF(B)は、分散体中での分散性に優れるため、それを用いてアクリル系共重合体(A)中での相溶性を高めることができる。
【0041】
(硬化剤(C))
複合粘着剤組成物は、硬化剤(C)を含有してもよい。なお、硬化剤(C)は、後述の実施例等に記載の硬化剤(C1)と硬化剤(C2)のいずれかを表すものとする。硬化剤(C)は、イソシアネート系化合物を含むことができる。また、複合粘着剤組成物は、イソシアネート系化合物と、以下の硬化剤、例えば、金属キレート化合物、エポキシ系化合物とを併用することができる。複合粘着剤組成物への硬化剤(C)の配合量は、アクリル系共重合体(A)の構成単位として含む単量体(a3)の配合量及び種類に応じて変更されてもよい。なお、硬化剤(C)と架橋剤とが併用されてもよく、架橋剤はアジリジン系化合物、メラミン系化合物等を含む。
【0042】
硬化剤(C)のイソシアネート系化合物として、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物が用いられてもよい。ポリイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等とトリメチロールプロパン等とのアダクト体、イソシアヌレート化合物、ビュレット型化合物等を含む。ポリイソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートの化合物を更に含む。硬化剤(C)は、上記のうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0043】
ここで、本発明の複合粘着剤組成物は、それを硬化乾燥させた粘着剤層により被着材間を永久接着させるものである。硬化剤(C)のイソシアネートと、単量体(a1)の水酸基とが架橋反応してアクリル系共重合体(A)にネットワークが形成されるため、粘着剤層は被着材間の永久接着に必要な凝集力を得ることができる。
【0044】
金属キレート化合物は、例えば、アルミニウムキレート、ジルコニウムキレート、チタニウムキレート等の金属キレート化合物を含む。
【0045】
エポキシ系化合物は、例えば、ビスフェノール型化合物、脂肪族グリシジルエーテル化合物、ビフェニル型化合物の他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂を含む。
【0046】
一実施形態において、硬化剤(C)は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.5質量部以上、3質量部以下、2質量部以下、1質量部以下で含有することができる。
【0047】
(シランカップリング剤(D))
複合粘着剤組成物はシランカップリング剤(D)を含有してもよい。シランカップリング剤(D)は、公知のシランカップリング剤として、アルコキシオリゴマー型カップリング剤を含む。
【0048】
一実施形態において、シランカップリング剤(D)は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上、0.05質量部以上、2質量部以下、1質量部以下で含有することができる。
【0049】
(帯電防止剤(E))
複合粘着剤組成物は帯電防止剤(E)を含有してもよい。帯電防止剤(E)は、アクリル系共重合体(A)に優れた帯電防止性能と、厳しい環境条件下での耐久性能とを付与することが可能である。帯電防止剤(E)は、その構造中にフッ素又はケイ素を含有する化合物(但し、アルカリ金属塩は含まない)を含むことができる。
【0050】
帯電防止剤(E)は、例えば、エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチルメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、4-メチル-1-オクチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、4-メチル-1-オクチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルベンジルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ラウリルトリメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート等を含む。
【0051】
一実施形態において、帯電防止剤(E)はアクリル系共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以上、10質量部以下、20質量部以下、15質量部以下で含有することができる。
【0052】
(溶剤)
複合粘着剤組成物は、溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合等により合成される。特に、溶液重合は、アクリル系共重合体(A)を溶液として合成することができるので、その溶液と上記の疎水化CNF(B)を配合することで得られる複合粘着剤組成物の合成に適している。アクリル系共重合体(A)の重合で使用する溶剤は、常温常圧で揮発性の有機媒体である。溶剤は例えば、酢酸エチル、トルエン、n-ヘキサン、アセトン及びメチルエチルケトン等の有機溶剤を含む。
【0053】
一実施形態において、溶剤は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、100質量部以上、140質量部以上、160質量部以上、300質量部以下、200質量部以下、170質量部以下で含有することができる。
【0054】
(その他の添加剤)
複合粘着剤組成物は、粘着力の調整等の要求性能に応じて、以下の種々の添加剤を更に含有してもよい。添加剤は、例えば、テルペン系、テルペン-フェノール系、クマロンインデン系、スチレン系、ロジン系、キシレン系、フェノール系又は石油系等の粘着性付与樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料等を含む。
【0055】
<粘着シート>
粘着シートは、第1層と、第1層の少なくとも一方の表面に塗布される本発明に係る複合粘着剤組成物を有する第2層と、を備える。以下、第1層と、第2層についてそれぞれ説明する。
【0056】
(第1層)
第1層は本発明に係る複合粘着剤組成物が塗布される基材である。基材は、有機材料および無機材料のいずれでもよい。有機材料は、プラスチック、樹脂、繊維、ゴム、木材等を含む。無機材料は、ガラス、セラミックス、シリカ、金属等を含む。
【0057】
プラスチックは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PETフィルム)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等を含む。
【0058】
第1層の基材の厚さは、100以上、150μm以上、300μm以下、200μm以下である。第1層の少なくとも一方の表面に対して剥離剤が塗布される。剥離剤は、例えば、シリコーン樹脂等を含む。
【0059】
(第2層)
第2層は、本発明に係る複合粘着剤組成物を含むものである。複合粘着剤組成物の態様は、液体状又は固体状であってよい。第1層の少なくとも一方の表面に塗布する複合粘着剤組成物の塗工量は、乾燥後の複合粘着剤層の厚さ(すなわち、第2層の厚さ)に応じて変更されてよい。第2層の厚さは10以上、20μm以上、30μm以上、50μm以上、200μm以下、150μm以下、100μm以下、60μm以下を含む。なお、第1層の少なくとも一方の表面には、第1層から第2層を剥離させるか否かの用途に応じて、剥離剤が塗布される。例えば、第1層から第2層を剥離させない場合、第1層に剥離剤が塗布されない。あるいは、第1層から第2層を剥離させる場合、第1層に剥離剤が塗布される。したがって、複合粘着剤組成物は、第1層の剥離剤が塗布された表面に塗布されてもよいし、第1層の剥離剤が塗布されていない表面に塗布されてもよい。
【0060】
第1層の少なくとも一方の表面に複合粘着剤組成物を塗布する方法は、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を含む。上記の方法のいずれかにより複合粘着剤組成物を第1層に塗布して、塗膜を形成した後、50℃以上、100℃以上、200℃以下、150℃以下で硬化乾燥する。
【0061】
第2層の皮膜のHaze値は、アクリル系共重合体(A)と疎水化CNF(B)との相溶性を確認する観点から、0.1以上、0.2以上、0.4以上、1.5以下、1.0以下、0.5以下である。Haze値はJIS7361-1に準拠したヘイズメーター(日本電色工業社製、商品名:NDH5000)により測定され得る。
【0062】
本発明の粘着シートの適用対象である被着材は、特に限定されるものでないが、例えば、有機材料および無機材料のいずれでもよい。有機材料は、プラスチック、樹脂、繊維、ゴム、木材等を含む。無機材料は、ガラス、セラミックス、シリカ、金属(例えば、アルミニウム)等を含む。第1層の両面に第2層が形成される場合、第2層の一方の表面が金属に、第2層の他方の表面がガラスに接着され得る。あるいは、第2層の両面に金属が接着されてもよいし、又は、ガラスが接着されてもよい。
【0063】
ここで、一般的な粘着シートでは、粘着シートの粘着剤層(皮膜)の破断伸度と破断強度のトレードオフの関係により、寸法変化率がそれぞれ異なる被着材間の接着において、それぞれの被着材の収縮又は膨張挙動に追従することができず、被着材間の剥がれが起きていた。トレードオフの関係とは、皮膜の破断強度を高くすると、皮膜が硬化することにより破断伸度が低下し、皮膜の破断強度を低くすると、皮膜が軟化することにより破断強度が低下する関係をいう。寸法変化率がそれぞれ異なる被着材間を接着させるための従来の方法の一例を以下に示す。
【0064】
皮膜の破断強度を高くする方法では、皮膜の破断伸度が小さくなるため、各被着材の膨張又は収縮に追従することができず、皮膜が被着材から剥がれる。
【0065】
皮膜の破断伸度を高くする方法では、皮膜の破断強度が小さくなるため、接着強度及び保持力(被着材間を接着する皮膜のせん断方向の抵抗力)の低下を起こし、皮膜が被着材から剥がれる。
【0066】
他の方法の一例として、アクリル系共重合体(A)に後述する通常のCNF(B')を配合した複合粘着剤組成物を用いて、上記の寸法変化率がそれぞれ異なる被着材間を接着させる方法が挙げられる。通常のCNF(B')は、親水性の表面を有していることから、アクリル系共重合体(A)との相溶性が良くないことがある。上記で説明した通り、アクリル系共重合体(A)内にCNFが均一に分散することで双方の相互作用が生じるため、この複合粘着剤組成物を硬化乾燥させた皮膜は、均一な機械特性を有さないことがある。また、本皮膜はその表面にCNFが析出してしまうため、被着材に対する接着力と透明性の低下を引き起こす。
【0067】
上記方法に係る問題を踏まえて、本発明の複合粘着剤組成物では、疎水化CNF(B)をアクリル系共重合体(A)中に均一に分散させることで、均一な機械特性を有する第2層を得ることとした。これにより、例えば、第2層の皮膜が力を受けて変形すると、アクリル系共重合体(A)が変形して伸びる。さらに、第2層の皮膜の変形が大きくなるにつれて、疎水化CNF(B)の配向・疑似凝集が起こり、皮膜内に疎水化CNF(B)のネットワークが形成される。皮膜内の疎水化CNF(B)のネットワーク形成によって高い張力が発現するので、本皮膜は、疎水化CNF(B)を含有しないアクリル系共重合体(A)のみの場合、あるいは、通常のCNF(B')を用いた場合よりも大きな破断強度等を得ることができる。すなわち、第2層の皮膜では、破断強度と破断伸度の両方がバランスよく向上するため、寸法変化率がそれぞれ異なる被着材間の永久接着において、被着材から剥離しにくいという顕著な効果を有する。
【0068】
以上の通り、本発明の粘着シートは、寸法変化率の異なる被着材間の膨張及び収縮といった挙動に追従し、剥がれを起こすことなく被着材間を永久接着することができる。本発明の粘着シートによれば、例えば、収縮率の異なるフィルム部材間(偏光板とマスキングフィルムとの間等)の他に、スマートフォン等の躯体に使用されるアルミとポリマー以外(例えば、ガラス)との間の接着にも適用可能である。このように、本粘着シートは、異種被着材間及び同種被着材間を永久接着することができる。
【0069】
<アクリル系共重合体(A)溶液の製造>
以下、複合粘着剤組成物に用いるアクリル系共重合体(A)溶液の製造例について説明する。
【0070】
(製造例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、この反応装置内の空気を窒素ガスに置換した。その後、この反応装置中に、ブチルアクリレート(BA)100部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)2.0部、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.05部及び酢酸エチル140部を加えた。これらを攪拌させながら、窒素ガス気流中において、60℃で8時間反応させ、重量平均分子量200万のアクリル共重合体A1の溶液を得た。重合反応終了後、酢酸エチルで希釈し、固形分14.0%、重量平均分子量200万のアクリル共重合体溶液A1を得た。なお、本文中の「部」及び「%」は、質量基準を示す。
【0071】
(重合開始剤)
単量体(a1)~単量体(a3)を共重合させる際に用いられる重合開始剤は、公知の重合開始剤であってよい。重合開始剤は、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾビス化合物、高分子アゾ重合開始剤等を含む。重合開始剤は、上記のうち単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。また、合成するアクリル系共重合体(A)の分子量を調整するために、公知の連鎖移動剤を更に使用してもよい。
【0072】
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量は、島津製作所社製高速液体クロマトグラフを用いて測定を行い、標準物質としてポリスチレンの換算値により決定した。以下、重量平均分子量の測定条件を示す。
装置名:島津製作所社製、高速液体クロマトグラフシステム
カラム:ショデックス社製KF―G 1本、ショデックス社製KF-806 2本を直列に連結した。
移動相溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
【0073】
(製造例2~10)
表1は、製造例1~10のそれぞれで得られるアクリル共重合体溶液A1~A10の原料配合を示す。製造例2~10では、表1の原料配合に基づいて、製造例1と同様の工程を行うことで、アクリル共重合体溶液A2~A10を得た。なお、表1の数字の単位は質量部であり、単量体(a1)~(a3)の略語は表1の下部に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
<複合粘着剤組成物の製造>
(実施例1)
製造例1~10で得られたアクリル系共重合体(A)溶液、疎水化CNF(B)、硬化剤(C1)、シランカップリング剤(D)を用いて、複合粘着剤組成物を製造した。アクリル共重合体溶液A1の固形分100部に、疎水化CNF1部(花王社製、商品名:ルナフレックス)、硬化剤0.1部(三井化学社製、商品名:タケネートD-204)、シランカップリング剤0.06部(信越化学社製、商品名:X-41-1810)、を加え、十分に混合して複合粘着剤組成物を得た。
【0076】
(実施例2~13、比較例1~4)
表2は、実施例1~13のそれぞれで得られた複合粘着剤組成物1~13の原料配合を示す。表3は、製造例1のアクリル系共重合体溶液A1を用いて、比較例1~4のそれぞれで得られた複合粘着剤組成物1~4の原料配合を示す。実施例2~13及び比較例1~4は、表2及び表3に示すそれぞれの原料配合に基づいて、実施例1と同様の工程を行うことにより、複合粘着剤組成物を得た。なお、帯電防止剤(E)は、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(3M社製:FC-4400)を用いた。
【0077】
ここで、比較例1は、疎水化CNF(B)をアクリル系共重合体(A1)に配合しない場合である。比較例2は、通常のCNF(B')(中越パルプ社製、商品名:nanoforest-S(BB-C))をアクリル系共重合体(A1)に配合する場合である。通常のCNF(B')は、疎水化CNF(B)とは異なり、セルロース繊維のカルボキシ基又は水酸基に疎水基が導入されていないものであり、有機媒体への分散性が低い。比較例3は、多量の疎水化CNF(B)をアクリル系共重合体(A1)に配合する場合である。比較例4は、少量の疎水化CNF(B)をアクリル系共重合体(A1)に配合する場合を示す。なお、表2及び表3の数字の単位は質量部であり、A1~A10は製造例1~10のそれぞれで得られたアクリル共重合体(A)溶液を示す。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
<粘着シートの作製>
塗布装置(例えば、ロール塗布装置)を用いて、実施例1~13及び比較例1~4でそれぞれ得られた複合粘着剤組成物を、シリコーン樹脂等の剥離剤を表面にコートしたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の離型フィルム(第1層)に塗布した。これを130℃で乾燥させ、溶媒を除去することにより、厚さ20μmの複合粘着剤層(第2層)を有する粘着シートが得られた。この粘着シートを用いて、偏光板又は皮膜を作製した。
【0081】
(偏光板の作製)
粘着シートの複合粘着層(第2層)に、厚さ110μmの偏向フィルムを接着した。その後、粘着シートを接着した偏向フィルムを23℃、50%RHの雰囲気で7日間養生させることにより、80mm×150mmの偏光板が得られた。偏光板に接着された粘着シートの離型フィルム(第1層)を剥がした側にガラスを接着することにより、ガラス付偏光板を作製した。
【0082】
(Haze測定用皮膜の作製)
粘着シートの複合粘着層(第2層)に、厚さ100μmのPETフィルムを接着した。その後、粘着シートが接着されたPETフィルムを23℃、50%RHの雰囲気で7日間養生させ、粘着シートから離型フィルム(第1層)を除去することにより皮膜を作製した。
【0083】
(強伸度測定用皮膜の作製)
粘着シートの複合粘着層(第2層)に、更に別の離型フィルム(第3層)を接着した。その後、第1層から第3層を含む積層体を23℃、50%RHの雰囲気で7日間養生させることにより、皮膜を作製した。JIS K 6251に記載の方法に準拠して3号ダンベルの大きさになるように、この皮膜を打ち抜いて強伸度測定用皮膜を作製した。
【0084】
(試験例1 耐久性の測定)
ガラス付偏光板を以下の環境条件A、Bで所定の時間保持した。
条件A:115℃、DRYの雰囲気で500時間保持
条件B:65℃、90%RHの雰囲気で500時間保持
【0085】
その後、それぞれの環境条件で保持したガラス付偏光板において、偏光板に発砲があるか否か及び偏光板がガラスから剥がれているか否かを目視で確認した。この際の評価基準を以下に示す。評価結果を表4~5に示す。
(1)発泡
○:偏光板に発泡が確認されない。
△:偏光板に発泡が僅かに確認された。
×:偏光板に発泡が確認された。
(2)剥れ
○:偏光板とガラスとの間の剥れが確認されない。
△:偏光板とガラスとの間の剥れが僅かに確認された。
×:偏光板とガラスとの間の剥れが確認された。
【0086】
(試験例2 Haze値の測定)
JIS7361-1に準拠したヘイズメーター(日本電色工業社製、商品名:NDH5000)を用いて、Haze測定用の皮膜(厚さ20μm)の全光線透過率を測定し、Haze値を求めた。この際の評価基準を以下に示す。これにより、アクリル系共重合体(A1)中の疎水化CNF(B)又は通常のCNF(B')の相溶状態を確認した。評価結果を表4~5に示す。なお、表4及び表5のHaze値は、上段に測定値を、下段に評価結果をそれぞれ示す。
○:Haze値が1.5以下
×:Haze値が1.6以上
【0087】
(試験例3 機械特性測定)
23℃、50%RHの雰囲気で、引張り速度100mm/分の条件で、強伸度測定用の皮膜の引張試験を行い、皮膜破断強度及び皮膜破断伸度を測定した。評価結果を表4~5に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
表4~5の結果から以下のことが判明した。実施例1は、比較例1~4と比べて、ガラス付偏光板においてガラスと偏光板との間の接着に係る耐久性が高く、被着材間の接着力が向上していることが判明した。これは、アクリル系共重合体(A)中の疎水化CNF(B)が配向・疑似凝集することと、アクリル系共重合体(A)の構成単位である水酸基含有エチレン性不飽和単量体(a1)の水酸基が硬化剤(C)のイソシアネートと反応してアクリル系共重合体(A)の架橋を形成すること、のいずれか又はそれらの組み合わせで、被着材間の接着力が高められるためであると推定される。
【0091】
以上の通り、本発明の複合粘着剤組成物は、アクリル系共重合体に対して通常のCNF、及び、多量又は少量の疎水化CNFをそれぞれ配合する場合と比較して、最適な量の疎水化CNF及び水酸基含有エチレン性不飽和単量体をアクリル系共重合体に配合することにより、被着材間の接着力を向上させる顕著な効果を有する。
【0092】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【要約】
【課題】本発明は被着材間の接着力を向上させることを目的とする。
【解決手段】
水酸基含有エチレン性不飽和単量体を構成単位として含む(メタ)アクリル系共重合体と、疎水化セルロースナノファイバーと、を含む複合粘着剤組成物であって、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、前記疎水化セルロースナノファイバー0.1質量部以上、14質量部以下を含有し、前記複合粘着剤組成物は、ポリイソシアネート化合物を更に含む。
【選択図】なし