(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】フラーレン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 209/56 20060101AFI20220818BHJP
H01L 51/46 20060101ALI20220818BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220818BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
C07D209/56 CSP
H01L31/04 154F
H01L29/28 100A
H01L29/28 250E
(21)【出願番号】P 2017213205
(22)【出願日】2017-11-02
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 隆文
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光信
(72)【発明者】
【氏名】辛川 誠
(72)【発明者】
【氏名】桑原 貴之
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/003316(WO,A1)
【文献】特開2009-137932(JP,A)
【文献】国際公開第2008/004635(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/185536(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、
R
11は、フェニル基であり、
R
12は、各オルト位に、同一又は異なって
、C3-12アルコキシ基を有し、及び更に1~3個の置換基を有していてもよい、フェニル基であり、
R
13は、
(1)水素、又は
(2)1個以上の置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状の脂肪族基であり、及び環Aは、C60フラーレン環を表す。]
で表されるフラーレン誘導体を含有する、フラーレン誘導体。
【請求項2】
R
12は、各オルト位に
、C3-12アルコキシ基を有し、及び更に1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基である、請求項1に記載のフラーレン誘導体。
【請求項3】
R
12は、各オルト位に
、C3-12アルコキシ基を有し、及び更に1~3個の置換基を有するフェニル基である、請求項1又は2に記載のフラーレン誘導体。
【請求項4】
R
12は、各オルト位に、互いに同一の置換基を有するフェニル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体。
【請求項5】
450~550nmの全波長領域にわたって2000以上の光吸収係数を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体を含有するn型半導体材料。
【請求項7】
光電変換用である、請求項6に記載のn型半導体材料。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の型半導体材料を含有する光電変換層。
【請求項9】
請求項8に記載の光電変換層を含有する光電変換素子。
【請求項10】
請求項8に記載の光電変換層を含有する有機薄膜太陽電池。
【請求項11】
請求項8に記載の光電変換層を含有する光センサー。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体を含有するペロブスカイト太陽電池。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体を含有する組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池は、光電変換材料として有機化合物を用い、溶液からの塗布法によって形成されるものであり、
1)デバイス作製時のコストが低いこと、
2)大面積化が容易であること、
3)シリコン等の無機材料と比較してフレキシブルであり使用できる場所が広がること、及び
4)資源枯渇の心配が少ないこと
等の各種の利点を有する。
【0003】
従って、これまでも、有機薄膜太陽電池の研究開発が盛んに行われてきた。
しかしながら、前記の利点を考慮しても、有機薄膜太陽電池は、現在市場に普及している無機薄膜太陽電池と比較して、その性能(例:光電変換効率)、及び製造コストの点で、いまだ改善の余地があり、従って、様々なアプローチにより、新たな有機薄膜太陽電池の盛んな研究開発が継続されている。
このようなアプローチの代表的な一例として、特許文献1では、C60フラーレンに比べて太陽光のより長波長側のエネルギーを吸収できるC70フラーレンの誘導体を用いた太陽電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、C70フラーレンの誘導体は、主にC70フラーレンの価格の高さに起因して、その製造コストが高い。
従って、本発明な製造コストの点で有利なC60誘導体を用いて製造が可能であり、且つ光電変換効率の高い有機薄膜太陽電池の製造を可能とする、新たなC60フラーレン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、式(1):
【化1】
[式中、
R
11は、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基であり、
R
12は、各オルト位に、同一又は異なって、C3-C12アルキル基、又はC3-12アルコキシ基を有し、及び更に1~3個の置換基を有していてもよい、フェニル基であり、
R
13は、
(1)水素、又は
(2)1個以上の置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状の脂肪族基であり、及び
環Aは、C60フラーレン環を表す。]
で表されるフラーレン誘導体を含有する、フラーレン誘導体
によって、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、次の態様を含む。
【0008】
項1.
式(1):
【化2】
[式中、
R
11は、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基であり、
R
12は、各オルト位に、同一又は異なって、C3-C12アルキル基、又はC3-12アルコキシ基を有し、及び更に1~3個の置換基を有していてもよい、フェニル基であり、
R
13は、
(1)水素、又は
(2)1個以上の置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状の脂肪族基であり、及び
環Aは、C60フラーレン環を表す。]
で表されるフラーレン誘導体を含有する、フラーレン誘導体。
項2.
R
11は、フェニル基である、項1に記載のフラーレン誘導体。
項3.
R
12は、各オルト位に、C3-C12アルキル基、又はC3-12アルコキシ基を有し、及び更に1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基である、項1又は2に記載のフラーレン誘導体。
項4.
R
12は、各オルト位に、C3-C12アルキル基、又はC3-12アルコキシ基を有し、及び更に1~3個の置換基を有するフェニル基である、項1又は2に記載のフラーレン誘導体。
項5.
R
12は、各オルト位に、互いに同一の置換基を有するフェニル基である、項1~4のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体。
項6.
450~550nmの全波長領域にわたって2000以上の光吸収係数を有する、項1~4のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体。
項7.
項1~6のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体を含有するn型半導体材料。
項8.
光電変換用である、項7に記載のn型半導体材料。
項9.
項8に記載の型半導体材料を含有する光電変換層。
項10.
項9に記載の光電変換層を含有する光電変換素子。
項11.
項9に記載の光電変換層を含有する有機薄膜太陽電池。
項12.
項9に記載の光電変換層を含有する光センサー。
項13.
項1~6のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体を含有するペロブスカイト太陽電池。
項14.
項1~6のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体を含有する組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明な製造コストの点で有利なC60誘導体を用いて製造が可能であり、且つ光電変換効率の高い有機薄膜太陽電池の製造を可能とする、新たなC60フラーレン誘導体を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】フラーレン誘導体(合成例1)の紫外可視吸収スペクトルチャートである。
【
図2】フラーレン誘導体(合成例2)の紫外可視吸収スペクトルチャートである。
【
図3】フラーレン誘導体(合成例3)(比較例)の紫外可視吸収スペクトルチャートである。
【
図4】フラーレン誘導体(合成例4)(比較例)の紫外可視吸収スペクトルチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定の無い限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味することができる。
本明細書中、表記「Cn-Cm」(ここで、n、及びmは、それぞれ、数である。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0012】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「ハロ(基)」の例は、
フルオロ(基)、クロロ(基)、ブロモ(基)、及びヨード(基)
を包含し得る。
本明細書中、特に限定の無い限り、
「ハロゲン(原子)」の例は、フッ素(原子)、塩素(原子)、臭素(原子)、及びヨウ素(原子)
を包含し得る。
【0013】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「有機基」とは、
1個以上の炭素原子を含有する基(又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基)
を意味し得る。
【0014】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「ヘテロ原子」は、
水素及び炭素以外の原子
を意味し得る。
【0015】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「ヘテロ原子」の例は、
窒素(原子)、酸素(原子)、及び硫黄(原子)
を包含し得る。
【0016】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「有機基」は、
その構成原子として1個以上の炭素原子を含有する基
を意味し得る。
【0017】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「有機基」の例は、
(1)炭化水素基(これは、1個以上の置換基を有していてもよい。)、
(2)1個以上のヘテロ原子が挿入された炭化水素基(これは、1個以上の置換基を有していてもよい。)
を包含し得る。
【0018】
本明細書中、特に限定の無い限り、
当該置換基の例は、
ハロ、ニトロ、シアノ、オキソ、チオキソ、スルホ、スルファモイル、スルフィナモイル、スルフェナモイル、及び1個又は2個の置換基を有していてもよいアミノ
を包含し得る。
【0019】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「炭化水素基」(又はヒドロカルビル基)は、
その構成原子として、1個以上の炭素原子、及び1個以上の水素原子を含有する基
を意味し得る。
【0020】
本明細書中、特に限定の無い限り、
炭化水素基へのヘテロ原子等の「挿入」は、その内部又は母核との結合末端における挿入
を意味し得る。
【0021】
本明細書中、特に限定の無い限り、
前記「(1)炭化水素基」の例は、
1個以上の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基(例:ベンジル基)、及び
1個以上の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基(アリール基)を包含し得る。
【0022】
本明細書中、特に限定の無い限り、
前記「(2)1個以上のヘテロ原子が挿入された炭化水素基」の例は、
アルコキシ基、エーテル基、及び複素環基
を包含し得る。
【0023】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「脂肪族炭化水素基」の構造は、
直鎖状、分岐状、環状、又はそれらの組み合わせ
を包含し得る。
【0024】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「脂肪族炭化水素基」は、
飽和又は不飽和であることができる。
【0025】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「脂肪族炭化水素基」の例は、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルキル基
を包含し得る。
【0026】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「アルキル基」の例は、
直鎖状又は分岐状の炭素数1~10のアルキル基(例:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びヘキシル)
を包含し得る。
【0027】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「アルケニル基」の例は、
直鎖状又は分岐状の炭素数1~10のアルケニル基(例:ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、及び5-ヘキセニル等)
を包含し得る。
【0028】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「アルキニル基」の例は、
直鎖状又は分岐状の炭素数2~6のアルキニル基(例:エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、及び5-ヘキシニル)
を包含し得る。
【0029】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「シクロアルキル基」の例は、
炭素数3~8のシクロアルキル基(例:シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル)
を包含し得る。
【0030】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「芳香族炭化水素基(アリール基)」の例は、
フェニル基、ナフチル基、フェナンスリル基、アンスリル基、及びピレニル基
を包含し得る。
【0031】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「アルコキシ基」の例は、
RO-(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基
を包含し得る。
【0032】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「エステル基」は、
エステル結合(すなわち、-C(=O)-O-、または-O-C(=O)-)を有する有機基
を意味し得る。
【0033】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「エステル基」の例は、
(1)式:RCO2-(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基、及び
(2)式:Ra-CO2-Rb-(当該式中、Raはアルキル基であり、及びRbはアルキレン基である。)で表される基
を包含し得る。
【0034】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「エーテル基」は、
1個以上のエーテル結合(-O-)を有する基(好ましくは有機基)
を意味し得る。
【0035】
すなわち、本明細書中、特に限定の無い限り、
「エーテル基」の例は、
ヒドロカルビル-O-ヒドロカルビル基、及び
ポリエーテル基
を包含し得る。
【0036】
本明細書中、特に限定の無い限り、
ポリエーテル基は、2個以上のエーテル結合(-O-)を有する基(好ましくは有機基)を意味し、
及びその例は、
(1)1価である、式:Ra-(O-Rb)n-(当該式中、Raはアルキル基であり、Rbは各出現において同一又は異なって、アルキレン基であり、及びnは2以上の整数である。)で表される基、及び
(2)2価である、式:-Rb-(O-Rb)n-(当該式中、Rbは各出現において同一又は異なって、アルキレン基であり、及びnは2以上の整数である。)で表される基
を包含し得る。
【0037】
本明細書中、特に限定の無い限り、
アルキレン基は、
前記アルキル基から水素原子を1個除去して形成される2価の基
であり得る。
【0038】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「エーテル基」の例は、
また、ハイドロカルビルエーテル基を包含する。
【0039】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「ハイドロカルビルエーテル基」は、
1個以上のエーテル結合を有する炭化水素基
を意味し得る。
【0040】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「1個以上のエーテル結合を有するハイドロカルビル基」は、
1個以上のエーテル結合が挿入されているハイドロカルビル基であることができる。
【0041】
本明細書中、特に限定の無い限り、
その例は、ベンジルオキシ基
を包含し得る。
【0042】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「1個以上のエーテル結合を有する炭化水素基」の例は、
1個以上のエーテル結合を有するアルキル基
を包含し得る。
【0043】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「1個以上のエーテル結合を有するアルキル基」は、
1個以上のエーテル結合が挿入されているアルキル基
であり得る。
本明細書中、このような基をアルキルエーテル基と称する場合がある。
【0044】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「アシル基」の例は、
アルカノイル基
を包含し得る。
【0045】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「アルカノイル基」の例は、
RCO-(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基
を包含し得る。
【0046】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「5員ヘテロアリール基」の例は、
環構成原子として、酸素、硫黄、及び窒素からなる群より選択される1個以上(例:1個、2個、又は3個)のヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール基
[例:
ピロリル(例:1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル)、
フリル(例:2-フリル、3-フリル)、
チエニル(例:2-チエニル、3-チエニル)、
ピラゾリル(例:1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル)、
イミダゾリル(例:1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル)、
イソキサゾリル(例:3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル)、
オキサゾリル(例:2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、
イソチアゾリル(例:3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル)、
チアゾリル(例:2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、
トリアゾリル(例:1,2,3-トリアゾール-4-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル)、
オキサジアゾリル(例:1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)、
チアジアゾリル(例:1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル)]
を包含し得る。
【0047】
本明細書中、脂肪族基の例は、
(1)脂肪族炭化水素基、及び
(2)1個以上のヘテロ原子が挿入された脂肪族炭化水素基
を包含し得る。
【0048】
フラーレン誘導体
本発明のフラーレン誘導体は、
式(1):
【化3】
[式中、
R
11は、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基であり、
R
12は、各オルト位に、同一又は異なって、C3-C12アルキル基、又はC3-12アルコキシ基を有し、及び更に1~3個の置換基を有していてもよい、フェニル基であり、
R
13は、
(1)水素、又は
(2)1個以上の置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状の脂肪族基
であり、及び
環Aは、C60フラーレン環を表す。]
で表されるフラーレン誘導体
である。
【0049】
なお、本明細書中、C60フラーレン環を、当該技術分野において、しばしば行われるように、次のような構造式:
【化4】
で表す場合がある。
【0050】
R11は、好ましくは
ハロ;
ニトロ;
シアノ;
オキソ;
チオキソ;
スルホ;
スルファモイル;
スルフィナモイル;
スルフェナモイル;及び
有機基
からなる群より選択される1個以上の置換基を有していてもよいフェニルである。
当該置換基の数は、1個、2個、3個、4個、又は5個であることができる。
当該1個以上の置換基の位置は、独立して、オルト位、メタ位、又はパラ位であることができる。
【0051】
R11は、より好ましくはフェニル基である。
【0052】
R12は、好ましくは、各オルト位に、C3-C12アルキル基、又はC3-12アルコキシ基を有し、及び更に1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0053】
R12は、より好ましくは、各オルト位に、C6-C12アルキル基、又はC8-C12アルコキシ基を有し、及び更に1~3個の置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0054】
R12は、好ましくは、オルト位以外には無置換を有さない。
すなわち、R12は、好ましくは、各オルト位に、C3-C12アルキル基、又はC3-12アルコキシ基を有し、及び更に1~3個の置換基を有するフェニル基である。
【0055】
R12は、好ましくは、各オルト位に、互いに同一の置換基を有するフェニル基である
【0056】
本発明のフラーレン誘導体は、好ましくは450~550nmの全波長領域にわたって2000以上の光吸収係数を有する。
本発明のフラーレン誘導体は、より好ましくは450~550nmの全波長領域にわたって2200以上の光吸収係数を有する。
【0057】
R13は、
(1)水素又は、又は
(2)1個以上の置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状の脂肪族基
である。
当該置換基の好適な例は、ハロゲン原子、及びヒドロキシ基、エーテル基を包含する。
当該置換基の好適な数及び種類は、
例えば、
1~8個(好ましくは2~4個)のハロゲン原子、
1~4個(好ましくは0~1個)ヒドロキシ基、若しくは
1~4個(好ましくは1~2個)のエーテル基、又は
これらの組合せ
であることができる。
フラーレン誘導体の製造方法
本発明のフラーレン誘導体は、公知のフラーレン誘導体の製造方法、又はこれに準じた方法によって製造することができる。
本発明のフラーレン誘導体は、具体的には、例えば、後記のスキームの方法に従って、合成できる。
スキーム中の記号は前記と同意義を表し、及び、当業者に明らかなように、式(a)、及び式(b)における各記号は、式(1)における各記号に対応する。
【0058】
【0059】
<工程A>
工程Aでは、グリシン誘導体[化合物(b)]をアルデヒド化合物[化合物(a)]及びC60フラーレン[化合物(c)]と反応させて、式(1)で表されるフラーレン誘導体(化合物(1))を得る。
【0060】
アルデヒド化合物[化合物(a)]、グリシン誘導体[化合物(b)]及びフラーレン[化合物(c)]の量比は任意だが、収率を高くする観点から、通常、フラーレン[化合物(c)]1モルに対して、アルデヒド化合物[化合物(a)]及びグリシン誘導体[化合物(b)]をそれぞれ0.1~10モル、好ましくは0.5~2モルの量で用いる。
【0061】
当該反応は、無溶媒又は溶媒中で行われる。
当該溶媒としては、例えば、二硫化炭素、クロロホルム、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が例示される。なかでも、クロロホルム、トルエン、キシレン、及びクロロベンゼン等が好ましい。これらの溶媒は、適当な割合で混合して用いてもよい。
【0062】
反応温度は、通常、室温~約150℃の範囲内であり、好ましくは約80~約120℃の範囲内である。ここで、室温は、好ましくは15~30℃の範囲内であることができる。
【0063】
反応時間は、通常約1時間~約4日間の範囲内であり、好ましくは約10~約48時間の範囲内である。
【0064】
得られた化合物(1)を、必要に応じて慣用の精製方法で精製できる。
例えば、得られた化合物(1)を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒としては、例えば、ヘキサン-クロロホルム、ヘキサン-トルエン、又はヘキサン-二硫化炭素が好ましい。)で精製し、その後、更にHPLC(分取GPC)(展開溶媒としては、例えば、クロロホルム、又はトルエンが好ましい。)で精製できる。
【0065】
当該工程Aで用いられる、アルデヒド化合物[化合物(a)]、グリシン誘導体[化合物(b)]及びフラーレン[化合物(c)]は、それぞれ公知の化合物であり、公知の方法、又はこれに準じた方法によって合成するか、商業的に入手可能である。
【0066】
<原料アルデヒド化合物[化合物(a)]の合成方法>
アルデヒド化合物[化合物(a)]は、具体的には、例えば、後記の方法(a1)、(a2)、又は(a3)で合成することができる。
これらの方法を示す反応式において、R12は前記式(1)におけるR12と同義であり、目的とするフラーレン誘導体のR12に対応する。
【0067】
方法(a1):R
12
-CH
2
OHで表されるアルコールの酸化
この方法における酸化には、公知の方法、例えば、(i)酸化剤としてクロム酸、酸化マンガン等を用いる方法、(ii)ジメチルスルホキシドを酸化剤として用いるスワーン(swern)酸化、又は(iii)触媒共存下に過酸化水素、酸素、空気等を用いて酸化する方法などを適用できる。
【0068】
方法(a2):R
12
-COOHで表されるカルボン酸、その酸ハライド、そのエステル、又はその酸アミドなどの還元
この方法における還元には、公知の方法、例えば、(i)還元剤として金属水素化物を用いる方法、(ii)触媒存在下に水素還元する方法、又は(iii)ヒドラジンを還元剤とする方法などを適用できる。
【0069】
方法(a3):R
12
-X(Xは、ハロゲンを表す。)で表されるハロゲン化物のカルボニル化
この方法におけるカルボニル化には、例えば、n-BuLiを用いて前記ハロゲン化物からアニオンを形成させ、これにカルボニル基を導入化する方法を適用できる。ここでのカルボニル基導入試薬としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF);又はピペリジン、モルホリン、ピペラジン若しくはピロリジンのN-ホルミル誘導体等のアミド化合物が用いられる。
【0070】
特に、オルト位にアルコキシ基を有するベンズアルデヒド誘導体は、公知の方法(F. Diederich ら,Chem. Eur. J., 2009年, 15巻, 125頁)に従って、容易に合成できる。
【0071】
<原料グリシン誘導体[化合物(b)]の合成方法>
グリシン誘導体[化合物(b)]は、具体的には、例えば、後記の方法(b1)、方法(b2)、又は方法(b3)によって合成することができる。
これらの方法を示す反応式において、R11及びR13はそれぞれ前記式(1)におけるR11及びR13はと同義であり、目的とするフラーレン誘導体のR11及びR13はに対応する。
【0072】
方法(b1):アニリン誘導体とハロゲン化酢酸との反応
【化6】
当該反応は、水、メタノール、エタノール、又はそれらの混合物などを溶媒として用い、及び必要に応じて塩基の存在下で実施できる。
【0073】
方法(b2):アニリン誘導体とハロゲン化酢酸エステルとの反応、及び当該反応で得られたグリシン誘導体エステルの加水分解
【化7】
この方法において、アニリン誘導体とハロゲン化酢酸エステルの反応は、例えば、メタノール、エタノールなどを溶媒として用い、酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩、3級アミンなどの塩基の存在下に行うことができる。
グリシン誘導体エステルの加水分解は、通常、水溶性アルカリの存在下に、室温で行うことができる。
【0074】
方法(b3):芳香族ハロゲン化物とグリシンとの反応
【化8】
この反応は、例えば、触媒として一価銅を用い、及びバルキーなアミン、アミノ酸、又はアミノアルコールなどの存在下で行うことができる。反応溶媒としては、水、メタノール、エタノール、又はこれらの混合物が好ましく用いられる。
反応温度は、室温~100℃程度である。
【0075】
本発明のフラーレン誘導体は、このように、C60フラーレン、グリシン誘導体、及びアルデヒド化合物を原料として簡単な方法で合成できるので、低コストで製造可能である。
【0076】
本発明のフラーレン誘導体の用途
本発明のフラーレン誘導体は、n型半導体材料、特に有機薄膜太陽電池等の光電変換素子用のn型半導体材料として好適に使用できる。
本発明のフラーレン誘導体は、また、電子輸送材料として、トランジスタ、及びペロブスカイト太陽電池などにも用いることができる。
これらの使用は、技術常識に基づいて実施できる。
【0077】
本発明のフラーレン誘導体をn型半導体材料として使用する場合、通常、有機p型半導体材料(有機p型半導体化合物)と組み合わせて用いられる。
【0078】
当該有機p型半導体材料としては、例えば、ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリ-p-フェニレンビニレン、ポリ-アルコキシ-p-フェニレンビニレン、ポリ-9,9-ジアルキルフルオレン、ポリ-p-フェニレンビニレンなどが例示される。
【0079】
これらは太陽電池としての検討例が多く、かつ入手が容易であるので、容易に安定した性能のデバイスを得ることができる。
【0080】
また、より高い変換効率を得るためには、バンドギャップを狭くすることで(ローバンドギャップ)長波長光の吸収を可能にした、ドナーアクセプター型π共役高分子が有効である。
【0081】
これらドナーアクセプター型π共役高分子は、ドナーユニットとアクセプターユニットとを有し、これらが交互に配置された構造を有する。
【0082】
ここで用いられるドナーユニットとしては、ベンゾジチオフェン、ジチエノシロール、N-アルキルカルバゾールが、またアクセプターユニットとしては、ベンゾチアジアゾール、チエノチオフェン、チオフェンピロールジオンなどが例示される。
具体的には、これらのユニットを組み合わせた、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン-co-ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]チオフェン)(PTBxシリーズ)、ポリ(ジチエノ[1,2-b:4,5-b’][3,2-b:2’,3’-d]シロール-alt-(2,1,3-ベンゾチアジアゾール)類などの高分子化合物が例示される。
【0083】
これらのうちでも、好ましいものとしては、
(1)ポリ({4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル}{3-フルオロ-2-[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェンジイル})(PTB7、構造式を以下に示す)、
(2)ポリ[(4,8-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン)-2,6-ジイル-alt-((5-オクチルチエノ[3,4-c]ピロール-4,6-ジオン)-1,3-ジイル)(PBDTTPD、構造式を以下に示す)、
(3)ポリ[(4,4’-ビス(2-エチルヘキシル)ジチエノ[3,2-b:2’,3’-d]シロール)-2,6-ジイル-alt-(2,1,3-ベンゾチアジアゾール)-4,7-ジイル](PSBTBT、構造式を以下に示す)、
(4)ポリ[N-9’’-ヘプタデカニル-2,7-カルバゾール-アルト-5,5-(4’,7’-ジ-2-チエニル-2’,1’,3’-ベンゾチアジアゾール)](PCDTBT、構造式を以下に示す)、及び
(5)ポリ[1-(6-{4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]-6-メチルベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2-イル}{3-フルオロ-4-メチルチエノ[3,4-b]チオフェン-2-イル}-1-オクタノン)(PBDTTT-CF、構造式を以下に示す)
などが例示される。
【0084】
【化9】
(式中、nは繰り返し数を表す。)
【化10】
(式中、nは繰り返し数を表す。)
【化11】
(式中、nは繰り返し数を表す。)
【化12】
(式中、nは繰り返し数を表す。)
【化13】
(式中、nは繰り返し数を表す。)
【0085】
なかでも、より好ましい例としては、アクセプターユニットとしてチエノ[3,4-b]チオフェンの3位にフッ素原子を有するPTB系化合物が挙げられ、特に好ましい例としては、PBDTTT-CF及びPTB7が例示される。
【0086】
本発明のフラーレン誘導体を、有機p型半導体材料との組み合わせにおいて、n型半導体材料として用いて調製された有機発電層は、高い変換効率を発現できる。
本発明のフラーレン誘導体は、各種の有機溶媒に対して良好な溶解性を示すので、これをn型半導体材料として使用した場合、塗布法による有機発電層の調製が可能であり、大面積の有機発電層の調製も容易である。
【0087】
また、本発明のフラーレン誘導体は、有機p型半導体材料との相溶性が良好であって、且つ適度な自己凝集性を有する化合物である。このため、当該フラーレン誘導体をn型半導体材料(有機n型半導体材料)としてバルクジャンクション構造の有機発電層を容易に形成する。この有機発電層を用いることによって、高い変換効率を有する有機薄膜太陽電池、或いは光センサーを得ることができる。
【0088】
よって、本発明のフラーレン誘導体をn型半導体材料として用いることによって、低コストで優れた性能を有する有機薄膜太陽電池を作製することが可能となる。
【0089】
また、本発明のn型半導体材料を含有する(又は、からなる)有機発電層の別の応用として、デジタルカメラ用イメージセンサーがある。
【0090】
デジタルカメラの高機能化(高精細化)の要求に対して、既存のシリコン半導体からなるイメージセンサーには、感度低下の課題が指摘されている。これに対して、光感度の高い有機材料からなるイメージセンサーにより、高感度と高精細化が可能になると期待されている。
【0091】
このようなセンサーの受光部を構築する材料には、光を感度良く吸収し、ここから電気信号を高効率で発生させることが求められる。
【0092】
このような要求に対して、本発明のn型半導体材料を含有する(又は、からなる)有機発電層は、可視光を効率良く電気エネルギーに変換できるので、前記イメージセンサー受光部材料としても、高い機能を発現できる。
【0093】
n型半導体材料
本発明のn型半導体材料は、本発明のフラーレン誘導体を含有する。
本発明のn型半導体材料は、好適に本発明のフラーレン誘導体からなることができる。
【0094】
本発明のn型半導体材料及びその用途は、本明細書の記載、及び技術常識から理解可能である。
本発明のn型半導体材料は、好適に光電変換用であることができる。
【0095】
光電変換層
本発明はまた、光電変換層も提供する。
本発明の光電変換層は、n型半導体材料(n型半導体化合物)として、本発明のフラーレン誘導体を含有する。
本発明の光電変換層は、好適に有機発電層であることができる。
【0096】
また、本発明の光電変換層は、通常、本発明のフラーレン誘導体、すなわち本発明のn型半導体材料との組み合わせにおいて、前記有機p型半導体材料(有機p型半導体化合物)を含有する。
【0097】
また、本発明の光電変換層は、通常、本発明のn型半導体材料及び前記有機p型半導体からなる。
【0098】
本発明の光電変換層においては、好ましくは、本発明のn型半導体材料と前記有機p型半導体材料とがバルクヘテロジャンクション構造を形成している。
【0099】
本発明の光電変換層は、例えば、本発明のn型半導体材料及び前記有機p型半導体材料を有機溶媒に溶解させ、得られた溶液から、スピンコート法、キャスト法、ディッピング法、インクジェット法、ドクターブレード法、及びスクリーン印刷法等の公知の薄膜形成方法を採用して、基板上に薄膜を形成することにより、調製できる。
【0100】
当該光電変換層の薄膜形成において、本発明のフラーレン誘導体は、有機p型半導体材料(好ましくは、P3HT、又はPTB7)との相溶性が良好であって、且つ適度な自己凝集性を有するので、n型半導体材料としての本発明のフラーレン誘導体及び有機p型半導体材料を含有し、かつバルクヘテロジャンクション構造を有する光電変換層を容易に得ることができる。
【0101】
光電変換素子
本発明は、また光電変換素子を提供する。
本発明の光電変換素子は、本発明の光電変換層を含有する。
【0102】
当該光電変換素子は、前記フラーレン誘導体についての説明を含む本明細書の説明、及び技術常識から理解可能である
【0103】
有機薄膜太陽電池
本発明の有機薄膜太陽電池は、前記で説明した本発明の光電変換層(又は、有機発電層)を含有する。
これから理解される通り、本発明の有機薄膜太陽電池は、本発明の光電変換素子を含有してもよい。
これに基づき、本発明の有機薄膜太陽電池は、高い変換効率を有することができる。
【0104】
当該有機薄膜太陽電池の構造は、特に限定されず、公知の有機薄膜太陽電池と同様の構造であることができ、及び本発明の有機薄膜太陽電池は、公知の有機薄膜太陽電池の製造方法に従って製造できる。
【0105】
当該有機薄膜太陽電池の一例としては、例えば、基板上に、透明電極(陰極)、陰極側電荷輸送層、有機発電層、陽極側電荷輸送層及び対極(陽極)が順次積層された構造の太陽電池を例示できる。当該有機発電層は、好ましくは、有機p型半導体材料、及びn型半導体材料としての本発明のフラーレン誘導体を含有し、バルクヘテロジャンクション構造を有する半導体薄膜層[すなわち、光電変換層(有機発電層)]である。
【0106】
このような構造の太陽電池において、有機発電層以外の各層の材料としては、公知の材料を適宜使用できる。具体的には、電極の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、及び酸化インジウム(ITO)等が例示される。電荷輸送層の材料としては、例えば、PFN(ポリ[9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル-2,7-フルオレン)-alt-2,7-(9,9-ジオクチルフルオレン)])及びMoO3(酸化モリブデン)等が例示される。
【0107】
光センサー
本発明の光センサーは、前記で説明した本発明の光電変換層(又は、有機発電層)を含有する。
これから理解される通り、本発明の光センサーは、本発明の光電変換素子を含有してもよい。
本発明の光センサーは、当該光電変換層に電気的に連結した電極を有することができる。
【0108】
前記のように、本発明で得られる光電変換層は、デジタルカメラの高機能製品における、イメージセンサー用受光部として有効に機能する。従来のシリコンフォトダイオードを用いた光センサーに比較して、明るいところで白トビが起こらず、また暗いところでもはっきりした映像を得ることができる。このため、従来のカメラより高品位の映像を得ることができる。
【0109】
本発明の光センサーは、シリコン基板、電極、及び光電変換層からなる光受光部、カラーフィルター、並びにマイクロレンズから構築され得る。
当該受光部の厚さは数100nm程度であることができ、従来のシリコンフォトダイオードの数分の1の厚さで構成され得る。
【0110】
ペロブスカイト太陽電池
本発明は、またペロブスカイト太陽電池を提供する。
本発明のペロブスカイト太陽電池は、本発明のフラーレン誘導体を含有する。
本発明のペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト層を含有でき、これとの組合せにおいて、本発明のフラーレン誘導体を電子輸送層用に使用できる。
【0111】
組成物
本発明の組成物は、本発明のフラーレン誘導体を含有する。
本発明の組成物は、その用途に応じて、本発明の目的を著しく損なわない限りにおいて、他の成分(例:溶媒、添加剤)を含有できる。
当該組成物は、前記フラーレン誘導体についての説明を含む本明細書の説明を参照して理解可能である。
【実施例】
【0112】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。
EH: 2-ethylhexyl
Me:methyl
n-Bu:n-Butyl
n-Pr:n-Propyl
【0113】
実施例中、吸光度は、以下の装置、及び条件を用いて測定した。
装置:Shimadzu UV-3600紫外可視分光光度計(島津製作所)
測定セル:セル長原子(石英);
測定溶媒:トルエン
【0114】
1.1wt%トルエン溶液を調製し、前記紫外可視吸光光度計にて吸光度測定を実施した。
各合成例に、測定した、吸光波長500nm及び550nmの各吸光係数を示した。
【0115】
【0116】
N-フェニルグリシン(151mg, 1.0mmol), 2,6-ジ(n-プロポキシ)ベンツアルデヒド(447mg, 1.9mmol), フラーレン(720mg, 1.0mmol)のクロロベンゼン溶液(200mL)を、120℃で48時間加熱撹拌した。
反応生成液を減圧下に濃縮し、反応物をカラムクロマトグラフィー(SiO2, ヘキサン-トルエン=10:1~4:1)
さらにHPLC(Buckyprep: トルエン)で精製し、目的物を220mg(21%)得た。
【0117】
1H-NMR (CDCl3)δ: 0.89 (6H, t, J=7.2 Hz), 1.70 - 1.90 (4H, m), 3.85 - 3.95 (2H, m), 4.05 - 4.15 (2H, m), 5.40 (1H, d, J=9.6 Hz), 5.77 (1H, d, J=9.6 Hz), 6.48 (1H, d, J=8.7 Hz), 6.57 (1H, d, J=8.7 Hz), 6.81 (1H, t, J=8.7 Hz), 7.00 (2H, d, J=8.2 Hz), 7.14 (1H, t, J=8.2 Hz), 7.30 (2H, t, J = 8.2 Hz), 7.63 (1H, s).
MS (FAB) m/z 1031 (M-1). HRMS calcd for C80H25NO2 1031.1885; found 1031.1858.
【0118】
【0119】
N-フェニルグリシン(76mg, 0.5mmol), 2,6-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)ベンツアルデヒド(427mg, 1.0mmol), フラーレン(360mg, 0.5mmol)のクロロベンゼン溶液(200mL)を、120℃で48時間加熱撹拌した。
反応生成液を減圧下に濃縮し、反応物をカラムクロマトグラフィー(SiO2, ヘキサン-トルエン=50:1~10:1)
さらにHPLC(Buckyprep: トルエン)で精製し、目的物を266mg(45%)得た。
【0120】
1H-NMR (CDCl3)δ: 0.78 - 1.01 (12H, m), 1.16 - 1.73 (17H, m), 2.00 - 2.12 (1H, m), 3.85 - 4.07 (4H, m), 5.37 (1H, d, J=9.6 Hz), 5.76 (1H, d, J=9.6 Hz), 6.52 (1H, d, J=8.7 Hz), 6.59 (1H, d, J=8.7 Hz), 6.81 (1H, t, J=8.7 Hz), 7.02 (2H, d, J=7.8 Hz), 7.16 (1H, t, J=7.8 Hz), 7.29 (2H, t, J = 7.8 Hz), 7.54 (1H, s).
MS (FAB) m/z 1172 (M+). HRMS calcd for C90H45NO2 1171.3450; found 1171.3426.
【0121】
【0122】
N-フェニルグリシン(151mg, 1.0mmol), 2-ブトキシベンツアルデヒド(2mL, 過剰量), フラーレン(720mg, 1.0mmol)のクロロベンゼン溶液(300mL)を、120℃で48時間加熱撹拌した。
反応生成液を減圧下に濃縮し、反応物をカラムクロマトグラフィー(SiO2, ヘキサン-トルエン=20:1~5:1)で精製し、さらにHPLC(Buckyprep: トルエン)で精製し、目的物を407mg(41%)得た。
【0123】
1H-NMR (CDCl3)δ: 0.93 (3H, t, J=7.3 Hz), 1.40 - 1.53 (2H, m), 1.55 - 1.80 (2H, m), 3.74 - 3.85 (1H, m), 4.05 - 4.14 (1H, m), 5.07 (1H, d, J=10.1 Hz), 5.67 (1H, d, J=10.1 Hz), 6.73 (1H, s), 6.89 (2H, d, J=7.8 Hz), 7.15 - 7.40 (6H, m), 7.77 (1H, d, J=7.8 Hz).
MS (FAB) m/z 988 (M+). HRMS calcd for C78H21NO 987.1623; found 987.1611.
【0124】
【0125】
N-フェニルグリシン(151mg, 1.0mmol), 2-エトキシベンツアルデヒド(1mL, 過剰量), フラーレン(720mg, 1.0mmol)のクロロベンゼン溶液(200mL)を、120℃で48時間加熱撹拌した。
反応生成液を減圧下に濃縮し、反応物をカラムクロマトグラフィー(SiO2, ヘキサン-トルエン=10:1~3:1)で精製し、さらにHPLC(Buckyprep: トルエン)で精製し、目的物を326mg(34%)得た。
【0126】
1H-NMR (CDCl3)δ: 1.29 (3H, t, J=6.9 Hz), 3.70 - 3.89 (1H, m), 4.12 - 4.24 (1H, m), 5.09 (1H, d, J=10.1 Hz), 5.66 (1H, d, J=10.1 Hz), 6.76 (1H, s), 6.80 - 6.95 (2H, m), 7.10 - 7.40 (6H, m), 7.74 (1H, d, J=7.3 Hz).
MS (FAB) m/z 959 (M-1). HRMS calcd for C76H17NO 959.1310; found 987.1311.
【0127】
実施例1
以下の方法により、各合成例のフラーレン誘導体の紫外可視吸収スペクトルチャートを取得した。チャートを図に示した。更に、各合成例のフラーレン誘導体のモル吸光係数(500nm、及び550nm。トルエン溶液)を得た。これは、後記に示した。
<方法>
一定量の化合物をメスフラスコ中に秤量し、トルエンを溶媒として均一溶液を調製した。前記トルエン溶液を、石英製セル(セル長10mm)を用いて吸光度を測定した。
モル吸光係数は濃度と吸光度より、下式で算出して求めた。
モル吸光係数(ε)=吸光度(abs)/モル濃度×セル長(mm)
各図に当該チャートを示した。縦軸の数字は、吸光度の値である。
比較例の化合物の吸光スペクトルデータと見くらべれば、2位のフェニル基のオルト位に2つの置換基を有するフラーレン誘導体は、450nm~550nm領域の吸収が有意に大きくなっていることが判る。
【0128】
<モル吸光係数>
合成例1のフラーレン誘導体
500nm:2430
550nm:2260
合成例2のフラーレン誘導体
500nm:2400
550nm:2200
合成例3(比較例)のフラーレン誘導体
500nm:1650
550nm:1120
合成例4(比較例)のフラーレン誘導体
500nm:1650
550nm:1110