IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人名古屋大学の特許一覧 ▶ ワシントン大学の特許一覧

<>
  • 特許-植物成長調整剤 図1
  • 特許-植物成長調整剤 図2
  • 特許-植物成長調整剤 図3
  • 特許-植物成長調整剤 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】植物成長調整剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/38 20060101AFI20220818BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20220818BHJP
   C07D 209/18 20060101ALI20220818BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20220818BHJP
   C07D 409/04 20060101ALI20220818BHJP
   C07K 14/415 20060101ALI20220818BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20220818BHJP
   C12N 15/81 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
A01N43/38
A01P21/00
C07D209/18
C07D405/04
C07D409/04
C07K14/415 ZNA
C12N15/29
C12N15/81 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019504659
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2018008921
(87)【国際公開番号】W WO2018164214
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-15
(31)【優先権主張番号】62/468,642
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人科学技術振興機構さきがけ「植物ホルモン受容の可視化技術」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】500357828
【氏名又は名称】ワシントン大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】打田 直行
(72)【発明者】
【氏名】萩原 伸也
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 理恵
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 啓子
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-089886(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073627(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104311469(CN,A)
【文献】英国特許出願公開第2253848(GB,A)
【文献】特開2007-262009(JP,A)
【文献】Journal of biological chemistry,2011年,Vol. 286,PP. 2354-2364
【文献】Natue communications,2016年,PP. 1-8
【文献】REGISTRY(STN)[online],2012年,CAS登録番号 1368656-97-6
【文献】Doklady Akademii Nauk SSSR,1955年,Vol. 101,PP. 103-106
【文献】Doklady Akademii Nauk SSSR,1953年,Vol. 91,PP. 1345-1348
【文献】Journal of Experimental Botany,2015年,Vol. 66,PP. 5055-5065
【文献】Mechanism of auxin perception by the TIR1 ubiquitin Ligase,nature,2007年04月05日,Vol. 446,PP. 640-644
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 43/38
A01P 21/00
C07D 209/18
C07D 405/04
C07D 409/04
C07K 14/415
C12N 15/29
C12N 15/81
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
BIOSIS(STN)
MEDLINE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
[式中、n及びmは同一又は異なって、0又は1を示す。R1及びR2は同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換されていてもよいアダマンチル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロ環基を示す(但し、R1及びR2が全て同時に水素原子である場合を除く)。R3及びR4の片方はカルボキシアルキル基を示し、他方は水素原子を示す。Xは-NH-又は-CH=CH-を示す。]
で表される化合物、又はその農学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する、
オーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1を発現する植物において、前記一般式(1)で表される化合物、又はその農学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物と前記オーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1とを結合させて植物成長調整効果を発揮させるための、成長調整剤であって、
前記オーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1が、オーキシンインドール環中のベンゼン環と相互作用するアミノ酸残基がグリシン、アラニン、又はセリンに置換されてなるオーキシン受容体TIR1である、成長調整剤
【請求項2】
前記オーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1が、オーキシンインドール環中のベンゼン環と相互作用するアミノ酸残基がグリシンに置換されてなるオーキシン受容体TIR1である、請求項1に記載の成長調整剤。
【請求項3】
一般式(1):
【化5】
[式中、n及びmは同一又は異なって、0又は1を示す。
R2-(O)m-は水素原子であり、且つ
nが0である場合はR1
(a)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよいアダマンチル基、
(b)
(b1)アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されたアリール基、又は
(b2)アルキル基、アルコキシ基、若しくはハロゲン原子と、
アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基と
からなる2つ以上の置換基で置換されたアリール基、又は
(c)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数5~20のアルキル基であり;又は
nが1である場合はR1
(d)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよいアダマンチル基、
(e)2つ以下の置換基で置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基、若しくはアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されたベンジル基、又は
(f)シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換された炭素数6~20のアルキル基であり;或いは
R1-(O)n-は水素原子であり、且つ
mが0である場合はR2
(g)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよいアダマンチル基、
(h)
(h1)アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されたアリール基、又は
(h2)アルキル基、若しくはハロゲン原子と、
アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基と
からなる2つ以上の置換基で置換されたアリール基、又は
(i)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数4~20のアルキル基であり;又は
mが1である場合はR2
(j)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよいアダマンチル基、
(k)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはナフチル基、又は
(l)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数4~20のアルキル基である。
R3は水素原子を示し、R4はカルボキシメチル基を示す。Xは-NH-又は-CH=CH-を示す。]
で表される化合物。
【請求項4】
一般式(1):
【化6】
[式中、n及びmは同一又は異なって、0又は1を示す。R1及びR2は同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアルキル基を示す(但し、R1及びR2が全て同時に水素原子である場合を除く)。R3及びR4の片方はカルボキシアルキル基を示し、他方は水素原子を示す。Xは-NH-又は-CH=CH-を示す。]
で表される化合物、又はその農学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1を発現する植物に施用することを含み、前記一般式(1)で表される化合物、又はその農学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物と前記オーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1とを結合させて植物成長調整効果を発揮させる、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1を発現する植物の成長調整方法であって、
前記オーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1が、オーキシンインドール環中のベンゼン環と相互作用するアミノ酸残基がグリシン、アラニン、又はセリンに置換されてなるオーキシン受容体TIR1である、成長調整方法
【請求項5】
オーキシン受容体TIR1において、オーキシンインドール環中のベンゼン環領域と相互作用するアミノ酸残基がグリシン、アラニン、又はセリンに置換されてなる、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1。
【請求項6】
さらに、一般式(1):
【化7】
[式中、n及びmは同一又は異なって、0又は1を示す。R1及びR2は同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換されていてもよいアダマンチル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロ環基を示す(但し、R1及びR2が全て同時に水素原子である場合を除く)。R3及びR4の片方はカルボキシアルキル基を示し、他方は水素原子を示す。Xは-NH-又は-CH=CH-を示す。]
で表される化合物、又はその農学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物に対する結合性を有する、
請求項5に記載のオーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のオーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項5又は6に記載のオーキシン受容性低減型オーキシン受容体TIR1を発現する、細胞。
【請求項9】
請求項8に記載の細胞を含む、植物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物成長調整剤、植物成長調整方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
オーキシンは、多様な生理作用を引き起こす植物ホルモンとして、古くから知られている。近年、オーキシン受容体の発見に伴い、その作用メカニズムがより詳細に明らかになってきている。オーキシンが、細胞内でオーキシン受容体(TIR1:Transport Inhibitor Response 1)に結合すると、そこへさらに転写因子(Aux/IAA)が結合し、これにより、ユビキチン-プロテアソーム経路による該転写因子の分解が促進され、結果として該転写因子により転写制御されている遺伝子群の発現が変化することになる。このようなオーキシン応答シグナルの誘導により、植物において、根の伸長抑制、側根誘導、重力屈性、細胞伸長、頂端分裂組織における側成器官誘導、分枝抑制等の多様な成長調整効果が発揮される。
【0003】
このため、オーキシンは、植物成長調整剤の有効成分として、広く用いられている。また、オーキシンの過剰施用により植物が枯死してしまうという問題(非特許文献1)があるところ、例えば特許文献1では、植物を枯死させる危険性がより低減されたオーキシン誘導体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-089886号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Grossmann K. (2007) Plant Signaling $ Behavior 2: 421-423. “Auxin Herbicide Action”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オーキシンは植物に対して、対象組織等に応じて非常に多様な効果を発揮することから、植物にオーキシンを施用すると、目的の効果以外の効果も引き起こされる可能性、さらには目的の効果の観点からは望ましくない効果や枯死誘導効果が引き起こされる可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、目的外の効果を低減しつつも、目的の効果をより効率的に発揮できる、オーキシン誘導体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進める中で、植物がオーキシンであると認識できないオーキシン誘導体を、オーキシンは認識しないが該オーキシン誘導体は認識してオーキシン応答シグナルを誘導できる変異型オーキシン受容体と組み合わせて用いるという着想を得た。このような組み合わせであれば、例えば、変異型オーキシン受容体を目的の組織でのみ発現する植物に対してオーキシン誘導体を施用することにより、目的の組織で特異的にオーキシン応答シグナルを誘導できると考えられた。
【0009】
そして、この着想に基づいてさらに鋭意研究を進めた結果、オーキシンインドール環の5位及び/又は6位に特定の置換基を有するオーキシン誘導体であれば、内在性のオーキシン受容体に対する結合性が低減されており、且つオーキシン受容性低減型オーキシン受容体に対しては良好な結合性を有することを見出した。そして、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体を特定の組織において発現する植物に対して該オーキシン誘導体を施用することにより、該組織において成長調整効果を効率的に発揮できることを見出した。本発明者はこれらの知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する:
項1. 一般式(1):
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、n及びmは同一又は異なって、0又は1を示す。R1及びR2は同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換されていてもよいアダマンチル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロ環基を示す(但し、R1及びR2が全て同時に水素原子である場合を除く)。R3及びR4の片方はカルボキシアルキル基を示し、他方は水素原子を示す。Xは-NH-又は-CH=CH-を示す。]
で表される化合物、又はその農学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体を発現する植物の成長調整剤。
【0013】
項2. 前記一般式(1)で表される化合物が、一般式(1A):
【0014】
【化2】
【0015】
[式中、n、m、R1、R2、R3、及びR4は前記に同じである。]
で表される化合物である、項1に記載の成長調整剤。
【0016】
項3. 前記R3が水素原子であり、且つ前記R4がカルボキシアルキル基である、項1又は2に記載の成長調整剤。
【0017】
項4. 前記R1が置換されていてもよいアダマンチル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアルキル基である、項1~3のいずれかに記載の成長調整剤。
【0018】
項5. 前記一般式(1)で表される化合物が、一般式(1A1a):
【0019】
【化3】
【0020】
[式中、n及びR1は前記に同じである。R4はカルボキシアルキル基である。]
で表される化合物である、項1~4のいずれかに記載の成長調整剤。
【0021】
項6. 前記アリール基がフェニル基、フェニルアルキル基、又はナフチル基である、項1~5のいずれかに記載の成長調整剤。
【0022】
項7. 前記アルキル基の炭素数が4~20である、項1~6のいずれかに記載の成長調整剤。
【0023】
項8. 前記アダマンチル基、前記アリール基、前記アルキル基、及び前記ヘテロ環基が置換されている場合の置換基が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~7のいずれかに記載の成長調整剤。
【0024】
項9. 前記R1-(O)n-及びR2-(O)m-の片方が
【0025】
【化4】
【0026】
であり、他方が水素原子である、項1~8のいずれかに記載の成長調整剤。
【0027】
項10. 前記オーキシン受容性低減型オーキシン受容体が、オーキシンインドール環中のベンゼン環と相互作用するアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されてなるオーキシン受容体である、項1~9のいずれかに記載の成長調整剤。
【0028】
項11. 前記他のアミノ酸がグリシンである、項10に記載の成長調整剤。
【0029】
項12. 一般式(1):
【0030】
【化5】
【0031】
[式中、n及びmは同一又は異なって、0又は1を示す。
R2-(O)m-は水素原子であり、且つ
nが0である場合はR1
(a)置換されていてもよいアダマンチル基、
(b)アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基、又はアルキル基、アルコキシ基、若しくはハロゲン原子と、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基とで置換されていてもよいアリール基、又は
(c)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数5~20のアルキル基であり;又は
nが1である場合はR1
(d)置換されていてもよいアダマンチル基、
(e)置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基、若しくはアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されたベンジル基、又は
(f)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数6~20のアルキル基であり;或いは
R1-(O)n-は水素原子であり、且つ
mが0である場合はR2
(g)置換されていてもよいアダマンチル基、
(h)アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基、又はアルキル基、若しくはハロゲン原子と、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基とで置換されたアリール基、又は
(i)置換されていてもよい炭素数4~20のアルキル基であり;又は
mが1である場合はR2
(j)置換されていてもよいアダマンチル基、
(k)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはナフチル基、又は
(l)置換されていてもよい炭素数4~20のアルキル基である。
R3及びR4の片方はカルボキシアルキル基を示し、他方は水素原子を示す。Xは-NH-又は-CH=CH-を示す。]
で表される化合物。
【0032】
項13. 一般式(1):
【0033】
【化6】
【0034】
[式中、n及びmは同一又は異なって、0又は1を示す。R1及びR2は同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアルキル基を示す(但し、R1及びR2が全て同時に水素原子である場合を除く)。R3及びR4の片方はカルボキシアルキル基を示し、他方は水素原子を示す。Xは-NH-又は-CH=CH-を示す。]
で表される化合物、又はその農学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体を発現する植物に施用することを含む、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体を発現する植物の成長調整方法。
【0035】
項14. オーキシン受容体において、オーキシンインドール環中のベンゼン環領域と相互作用するアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されてなる、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体。
【0036】
項15. さらに、一般式(1):
【0037】
【化7】
【0038】
[式中、n及びmは同一又は異なって、0又は1を示す。R1及びR2は同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換されていてもよいアダマンチル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロ環基を示す(但し、R1及びR2が全て同時に水素原子である場合を除く)。R3及びR4の片方はカルボキシアルキル基を示し、他方は水素原子を示す。Xは-NH-又は-CH=CH-を示す。]
で表される化合物、又はその農学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物に対する結合性を有する、
オーキシン受容性低減型オーキシン受容体。
【0039】
項16. 前記他のアミノ酸がアラニン、セリン、又はグリシンである、項14又は15に記載のオーキシン受容性低減型オーキシン受容体。
【0040】
項17. 項14~16のいずれかに記載のオーキシン受容性低減型オーキシン受容体をコードする、ポリヌクレオチド。
【0041】
項18. 項14~16のいずれかに記載のオーキシン受容性低減型オーキシン受容体を発現する、細胞。
【0042】
項19. 項18に記載の細胞を含む、植物。
【発明の効果】
【0043】
本発明のオーキシン誘導体は、内在性のオーキシン受容体に対する結合性が低減されており、且つオーキシン受容性低減型オーキシン受容体に対しては良好な結合性を有するので、例えばオーキシン受容性低減型オーキシン受容体を特定の組織において発現する植物に対して該オーキシン誘導体を施用することにより、目的外の効果を低減しつつも、目的の効果を効率的に発揮することができる。このため、本発明のオーキシン誘導体は、オーキシン応答シグナルに基づく植物成長調整剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】試験例2の根伸長アッセイの結果を示す図である。写真左側において、「TIR1F79G」は変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)の発現カセットを有するシロイヌナズナ種子を用いた場合を示し、「Wild type」は該発現カセットを有しない、野生型のシロイヌナズナ種子を用いた場合を示す。写真上側において、「auxin」は被検化合物としてオーキシン(インドール-3-酢酸)を用いた場合を示し、「27B」は、被検化合物として、実施例25で合成したオーキシン誘導体を用いた場合を示し、各数字は培地における被検化合物濃度を示す。各写真中のバーは、1 cmのスケールを表す。
図2】試験例3の側根誘導アッセイの結果を示す図である。写真左側において、「TIR1F79G」は変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)の発現カセットを有するシロイヌナズナ種子を用いた場合を示し、「Wild type」は該発現カセットを有しない、野生型のシロイヌナズナ種子を用いた場合を示す。写真上側において、「auxin」は被検化合物としてオーキシン(インドール-3-酢酸)を用いた場合を示し、「27B」は、被検化合物として、実施例25で合成したオーキシン誘導体を用いた場合を示し、「no-treatment」は被検化合物で処理していない場合を示す。各写真中のバーは、100μmのスケールを表す。
図3】試験例4の側根誘導アッセイの結果を示す図である。写真左側において、「TIR1F79G-GUS」は変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)及びGUSの融合タンパク質の発現カセットを有するシロイヌナズナ種子を用いた場合を示し、「Wild type」は該発現カセットを有しない、野生型のシロイヌナズナ種子を用いた場合を示す。写真上側において、「27B」は、被検化合物として、実施例25で合成したオーキシン誘導体を用いた場合を示し、「no-treatment」は被検化合物で処理していない場合を示す。各写真中のバーは、100μmのスケールを表す。
図4】試験例5の根伸長アッセイの結果を示す図である。写真左側において、「35S:TIR1F79G」は変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)の発現カセットを有するシロイヌナズナ種子を用いた場合を示し、「35S:TIR1WT」は野生型オーキシン受容体(TIR1)を発現するシロイヌナズナ種子を用いた場合を示す。写真上側において、「DMSO」被検化合物で処理していない場合を示し、「IAA(1) 0.1μM」は被検化合物としてオーキシン(インドール-3-酢酸)を用いた場合を示し、「21 0.1μM」は、被検化合物として、実施例30で合成したオーキシン誘導体を用いた場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0046】
1.オーキシン誘導体
本発明は、その一態様として、一般式(1):
【0047】
【化8】
【0048】
[式中、n及びmは同一又は異なって、0又は1を示す。R1及びR2は同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアルキル基を示す(但し、R1及びR2が全て同時に水素原子である場合を除く)。R3及びR4の片方はカルボキシアルキル基を示し、他方は水素原子を示す。Xは-NH-又は-CH=CH-を示す。]
で表される化合物、又はその農学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和物に関する。以下、これについて説明する。
【0049】
nは、好ましくは0である。
【0050】
mは、好ましくは0である。
【0051】
R1又はR2で示されるアリール基は、特に制限されないが、炭素数が6~50のものが好ましく、炭素数が6~30のものがより好ましく、炭素数が6~20のものがさらに好ましく、6~12のものがよりさらに好ましく、6~8のものが特に好ましい。このようなアリール基としては、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、フェニルアルキル基(例えばベンジル基、フェネチル基等)、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基、ナフチル基、フェニルアルキル基、ビフェニル基等が挙げられ、より好ましくはフェニル基、ナフチル基、フェニルアルキル基等が挙げられ、さらに好ましくはフェニル基、ベンジル基等が挙げられ、さらに好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0052】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい置換基は、特に制限されないが、例えば置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子(F、Br、Cl等)、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、水酸基、ヘテロ原子含有基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、-COOR” (R”は水素原子又は炭化水素基)等が挙げられ、好ましくは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基等があげられ、より好ましくは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0053】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい、置換されていてもよいアルキル基としては、特に制限はなく、例えばハロゲン原子(F、Br、Cl、I等)等で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~20、好ましくは1~12、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3、よりさらに好ましくは1のアルキル基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、0~6個が好ましく、0~3個がより好ましく、0個がさらに好ましい。このような置換されていてもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0054】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい、置換されていてもよいアルコキシ基としては、特に制限はなく、例えばハロゲン原子(F、Br、Cl、I等)等で置換されていてもよい直鎖状、又は分岐鎖状の炭素数1~20、好ましくは1~12、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3、よりさらに好ましくは1のアルコキシ基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、0~6個が好ましく、0~3個がより好ましく、0個がさらに好ましい。このような置換されていてもよいアルキル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、パーフルオロメトキシ基、パーフルオロエトキシ基等が挙げられる。
【0055】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい、ハロゲン原子としては、好ましくはF、Cl等が挙げられる。
【0056】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい、置換されていてもよいアリール基としては、特に制限はなく、例えばハロゲン原子(F、Br、Cl、I等)等で置換されていてもよい炭素数6~12、好ましくは6~8のアリール基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、0~6個が好ましく、0~3個がより好ましく、0個がさらに好ましい。このような置換されていてもよいアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0057】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい、置換されていてもよいアリールオキシ基としては、特に制限は無く、例えばハロゲン原子(F、Br、Cl、I等)等で置換されていてもよい炭素数6~12、好ましくは6~8のアリールオキシ基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、0~6個が好ましく、0~3個がより好ましく、0個がさらに好ましいい。このような置換されていてもよいアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ナフトキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等が挙げられる。
【0058】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい、ヘテロ原子含有基としては、ヘテロ原子として窒素原子(N)、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、ホウ素原子(B)、リン原子(P)、ケイ素原子(Si)等の少なくとも1つ、特に窒素原子(N)、酸素原子(O)、硫黄原子(S)等の少なくとも1つを有する直鎖状、分岐鎖状又は環状の基が好ましい。具体的には、例えばシアノ(-CN)基、ニトロ(-NO2)基、アミノ基等や、フラン環、チオフェン環、ピロール環、シロール環、ボロール環、ホスホール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の複素環から水素原子を1つ脱離させてなる基等が挙げられる。また、上記複素環同士又はこれらとベンゼン環等との縮合環(チエノチオフェン環、キノリン環等)から水素原子を1つ脱離させてなる基も使用できる。
【0059】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい、置換されていてもよいアルケニル基としては、特に制限はなく、例えばハロゲン原子(F、Br、Cl、I等)等で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~20、好ましくは2~12、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~3のアルケニル基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、0~6個が好ましく、0~3個がより好ましく、0個がさらに好ましい。このような置換されていてもよいアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
【0060】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい、置換されていてもよいアルキニル基としては、特に制限はなく、例えばハロゲン原子(F、Br、Cl、I等)等で置換されていてもよい直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~20、好ましくは2~12、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~3のアルキニル基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、0~6個が好ましく、0~3個がより好ましく、0個がさらに好ましい。このような置換されていてもよいアルキニル基としては、例えばエチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、フェニルアセチニル基等が挙げられる。
【0061】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい、-COOR”におけるR”は水素原子又は炭化水素基であり、水素原子又は上記説明したアルキル基が好ましい。具体的には、-COOR”としては、例えば-COOH、-COOCH3、-COOC2H5、-COOC3H7、-COOC(CH32、-COOC4H9、-COOCH(CH3)C2H5、-COOCH2CH(CH32、-COOC(CH33等が挙げられる。
【0062】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい置換基の数は、特に制限は無く、例えば0~6個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個である。本発明の好ましい態様において、R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい置換基がアルキル基及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種である場合、該置換基の数は好ましくは2個でり、該置換基がアルコキシ基である場合、該置換基の数は好ましくは1個である。
【0063】
R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい置換基が2以上である場合、隣り合う2つの置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。環を形成するとは、例えばアリール基がフェニル基である場合は、例えば一般式(1)における式:
【0064】
【化9】
【0065】
[式中、R’及びR”はR1で示されるアリール基が有していてもよい置換基を示す。nは前記に同じである。]
で示される基が、例えば式:
【0066】
【化10】
【0067】
[式中、nは前記に同じである。]
で示される基であることを意味する。
【0068】
R1又はR2で示されるアダマンチル基は、特に制限されず、例えば1-アダマンチル基、2-アダマンチル基が挙げられる。これらの中でも、1-アダマンチル基が好ましい。
【0069】
R1又はR2で示されるアダマンチル基が有していてもよい置換基としては、R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい置換基と同様のものを挙げることができる。
【0070】
R1又はR2で示されるアダマンチル基が有していてもよい置換基の数は、特に制限は無く、例えば0~6個、好ましくは0~3個、より好ましくは0個である。
【0071】
R1又はR2で示されるアルキル基は、特に制限されないが、直鎖状、分岐鎖状又は環状(好ましくは環状)の炭素数1~20、好ましくは3~20、より好ましくは4~15、さらに好ましくは6~12のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0072】
R1又はR2で示されるアルキル基が有していてもよい置換基としては、R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい置換基と同様のものを挙げることができる。
【0073】
R1又はR2で示されるアルキル基が有していてもよい置換基の数は、特に制限は無く、例えば0~6個、好ましくは0~3個、より好ましくは0個である。 R1又はR2で示されるヘテロ環基としては、特に制限されないが、例えばフラン環、チオフェン環、ピロール環、シロール環、ボロール環、ホスホール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の複素環から水素原子を1つ脱離させてなる基等が挙げられる。また、上記複素環同士又はこれらとベンゼン環等との縮合環(ベンゾチエフェン環、チエノチオフェン環、キノリン環等)から水素原子を1つ脱離させてなる基も使用できる。
【0074】
R1又はR2で示されるヘテロ環基が有していてもよい置換基としては、R1又はR2で示されるアリール基が有していてもよい置換基と同様のものを挙げることができる。
【0075】
R1又はR2で示されるヘテロ環基が有していてもよい置換基の数は、特に制限は無く、例えば0~6個、好ましくは0~3個、より好ましくは0個である。
【0076】
R1-(O)n-及びR2-(O)m-は、いずれか一方が水素原子であることが好ましい。より好ましくはR2-(O)m-の方が水素原子である。
【0077】
R1-(O)n-、R2-(O)m-としては、具体的には、水素原子の他に、好ましくは
【0078】
【化11】
【0079】
【化12】
【0080】
【化13】
【0081】
等が挙げられ、より好ましくは
【0082】
【化14】
【0083】
等が挙げられる。
【0084】
また、R1-(O)n-としては、好ましくは、水素原子の他に、
【0085】
【化15】
【0086】
【化16】
【0087】
等が挙げられ、R2-(O)m-としては、好ましくは、水素原子の他に、
【0088】
【化17】
【0089】
等が挙げられる。
【0090】
R3及びR4の片方はカルボキシアルキル基であり、他方は水素原子である。好ましい態様においては、R3が水素原子であり、R4がカルボキシアルキル基である。カルボキシアルキル基において、アルキル基は、上記したアルキル基が挙げられる。つまり、カルボキシメチル基(-CH2COOH)、カルボキシエチル基(-C2H4COOH)、カルボキシプロピル基(-C3H6COOH)、カルボキシブチル基(-C4H8COOH)、カルボキシペンチル基(-C5H10COOH)、カルボキシヘキシル基(-C6H12COOH)等が挙げられる。
【0091】
Xは、好ましくは-NH-である。
【0092】
本発明の一態様において、一般式(1)で表される化合物としては、好ましくは一般式(1A):
【0093】
【化18】
【0094】
[式中、n、m、R1、R2、R3、及びR4は前記に同じである。]
で表される化合物が挙げられ、より好ましくは一般式(1A1):
【0095】
【化19】
【0096】
[式中、n、m、R1、R2、及びR3は前記に同じである。R4はカルボキシアルキル基である。]
で表される化合物が挙げられ、さらに好ましくは一般式(1A1a):
【0097】
【化20】
【0098】
[式中、n及びR1は前記に同じである。R4はカルボキシアルキル基である。]
で表される化合物が挙げられる。
【0099】
本発明の別の一態様において、一般式(1)で表される化合物は、下記態様:
R2-(O)m-は水素原子であり、且つ
nが0である場合はR1
(a)置換されていてもよいアダマンチル基、
(b)アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基、又はアルキル基、アルコキシ基、若しくはハロゲン原子と、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基とで置換されていてもよいアリール基、又は
(c)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数5~20のアルキル基であり;又は
nが1である場合はR1
(d)置換されていてもよいアダマンチル基、
(e)置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナフチル基、若しくはアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されたベンジル基、又は
(f)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数6~20のアルキル基であり;或いは
R1-(O)n-は水素原子であり、且つ
mが0である場合はR2
(g)置換されていてもよいアダマンチル基、
(h)アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基、又はアルキル基、若しくはハロゲン原子と、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基とで置換されたアリール基、又は
(i)置換されていてもよい炭素数4~20のアルキル基であり;又は
mが1である場合はR2
(j)置換されていてもよいアダマンチル基、
(k)アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはナフチル基、又は
(l)置換されていてもよい炭素数4~20のアルキル基である、
態様が好ましい。
【0100】
一般式(1)で表される化合物の塩は、農学的に許容される塩である限り、特に制限されるものではない。該塩としては、酸性塩、塩基性塩のいずれも採用することができる。酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、塩基性塩の例としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩; 並びにカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩; アンモニアとの塩; モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ジ(ヒドロキシアルキル)アミン、トリ(ヒドロキシアルキル)アミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。これらの中でも、塩基性塩を好ましく採用できる。具体的には、一般式(1)で表される化合物における末端カルボキシ基に対して、農学的に許容される塩基性化合物と塩を形成することができる。
【0101】
一般式(1)で表される化合物は水和物、溶媒和物とすることもできる。溶媒としては、例えば、農学的に許容される有機溶媒(例えばエタノール、グリセロール、酢酸等)等が挙げられる。
【0102】
2.製造方法
一般式(1)で表される化合物は、様々な方法で合成することができる。例えば、R1-(O)n-が水素原子及び水酸基以外の基である場合の化合物は、例えば以下の工程(I)又は(II):
【0103】
【化21】
【0104】
[式中、X及びR1は前記に同じである。Yはハロゲン原子を示す。R3A及びR4Aの片方はカルボキシアルキル基又はカルボキシアルキル基のアルキルエステルを示し、他方は水素原子を示す。2個のR””は同じか又は異なり、それぞれ水素原子又はアルキル基;2個のR””は互いに結合して、隣接する-O-B-O-とともに環を形成していてもよく、該環は、さらに、芳香環(特にベンゼン環、ナフタレン環等)が縮合していてもよい。R3B及びR4Bの片方はカルボキシアルキル基のアルキルエステルを示し、他方は水素原子を示す。]
を含む方法によって合成することができる。R2-(O)m-が水素原子又は水酸基以外の基である場合の化合物、及びR1-(O)n-及びR2-(O)m-が水素原子又は水酸基以外の基である場合の化合物についても、これらの工程を含む方法に従って又は準じて合成することができる。
【0105】
(2-1)工程I
本工程では、一般式(A)で表される化合物と一般式(B)で表される化合物とを、パラジウム系触媒及び必要に応じて塩基の存在下に反応させることで、一般式(C)で表される化合物を得ることができる。
【0106】
一般式(B)で表される化合物は、
【0107】
【化22】
【0108】
[式中、R1は前記に同じである。]
等が挙げられる。
【0109】
一般式(B)で表される化合物の使用量は、収率の観点から、一般式(A)で表される化合物1モルに対して、通常、0.1~10モルが好ましく、0.3~4モルがより好ましく、0.8~3モルがより好ましい。
【0110】
パラジウム系触媒としては、金属パラジウムをはじめ、有機化合物(高分子化合物を含む)等の合成用触媒として公知のパラジウム化合物等が挙げられる。具体的には、Pd(PPh34(Phはフェニル基)、パラジウム炭素、PdCl2(PPh32(Phはフェニル基)、Pd(OAc)2(Acはアセチル基)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd2(dba)3)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリt-ブチルホスフィノ)パラジウム(0)、(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)ジクロロパラジウム(II)等が挙げられる。が挙げられ、本工程ではPd(PPh34等が好ましい。
【0111】
パラジウム系触媒の使用量は、収率の観点から、一般式(A)で表される化合物1モルに対して、通常、0.001~1モルが好ましく、0.005~0.1モルがより好ましく、0.01~0.07モルがさらに好ましい。
【0112】
塩基としては、塩化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等が挙げられ、本工程では炭酸ナトリウムが好ましい。
【0113】
塩基を使用する場合の使用量は、製造条件等により異なるが、一般式(A)で表される化合物1モルに対して、0.01~10モルが好ましく、0.5~7モルがより好ましく、1~4モルがより好ましい。
【0114】
上記反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。反応溶媒としては、特に制限されないが、芳香族炭化水素類、アルコール類等が好ましく、トルエン、メタノール、エタノール等がより好ましい。
【0115】
本工程においては、上記成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜添加剤を使用することもできる。
【0116】
反応雰囲気は、通常、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)を採用し得る。反応温度は、加熱下、常温下及び冷却下のいずれでも行うことができ、通常、0~150℃(特に60~120℃)で行うことが好ましい。反応時間は特に制限されず、通常、3時間~48時間、特に6時間~24時間とすることができる。
【0117】
反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理をすることもできる。また、精製処理を施さずに次の工程を行うこともできる。
【0118】
(2-2)工程II
本工程では、一般式(D)で表される化合物と一般式(E)で表される化合物とを、塩基の存在下に反応させることで、一般式(F)で表される化合物を得ることができる。
【0119】
一般式(E)で表される化合物の使用量は、収率の観点から、一般式(D)で表される化合物1モルに対して、通常、0.1~10モルが好ましく、0.2~5モルがより好ましく、0.5~2モルがより好ましい。
【0120】
塩基としては、塩化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等が挙げられ、本工程では炭酸セシウムが好ましい。
【0121】
塩基の使用量は、収率の観点から、一般式(D)で表される化合物1モルに対して、通常、0.05~8モルが好ましく、0.1~4モルがより好ましく、0.2~2モルがより好ましい。
【0122】
上記反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。反応溶媒としては、特に制限されないが、N,N-ジメチルホルムアミド等がより好ましい。
【0123】
本工程においては、上記成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜添加剤を使用することもできる。
【0124】
反応雰囲気は、通常、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)を採用し得る。反応温度は、加熱下、常温下及び冷却下のいずれでも行うことができ、通常、0~100℃(特に30~70℃)で行うことが好ましい。反応時間は特に制限されず、通常、4時間~48時間、特に8時間~24時間とすることができる。
【0125】
反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理をすることもできる。また、精製処理を施さずに次の工程を行うこともできる。
【0126】
(2-3)工程III
反応式(I)においてR3A及びR4Aの片方がカルボキシアルキル基のアルキルエステルである場合、並びに反応式(II)の場合は、さらに、一般式(C)又は(F)で表される化合物のアルキルエステルを、塩基を用いて還元する工程(工程III)を行うことによって、一般式(1)で表される化合物が得られる。
【0127】
塩基としては、塩化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等が挙げられ、本工程では水酸化カリウム、水酸化リチウム等が好ましい。
【0128】
塩基の使用量は、製造条件等により異なるが、原料1モルに対して、0.01~10モルが好ましく、0.5~7モルがより好ましく、1~5モルがより好ましい。
【0129】
上記反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。反応溶媒としては、特に制限されないが、テトラヒドロフラン、アルコール類(特にメタノール)、水等が好ましい。
【0130】
本工程においては、上記成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜添加剤を使用することもできる。
【0131】
反応雰囲気は、通常、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)を採用し得る。反応温度は、加熱下、常温下及び冷却下のいずれでも行うことができ、通常、0~100℃(特に10~40℃)で行うことが好ましい。反応時間は特に制限されず、通常、1時間~24時間、特に2時間~12時間とすることができる。
【0132】
反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理をすることもできる。また、精製処理を施さずに次の工程を行うこともできる。
【0133】
3.用途
一般式(1)で表される化合物、その農学的に許容される塩、水和物、及び溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1種(本明細書において、「本発明の有効成分」と示すこともある。)は、野生型の(内在性の)オーキシン受容体に対する結合性が低減されており、且つオーキシン受容性低減型オーキシン受容体に対しては良好な結合性を有する。したがって、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体を発現する植物の成長調整剤(本明細書において、「本発明の植物成長調整剤」と示すこともある。)の有効成分として用いることができる。
【0134】
オーキシン受容性低減型オーキシン受容体は、野生型オーキシン受容体のアミノ酸配列に変異が加えられたものであり、内在性のオーキシン(例えばインドール-3-酢酸)に対する結合性が、野生型オーキシン受容体よりも低減(例えば、1/10以下、1/50以下、1/100以下、1/200以下、1/400以下、1/800以下に低減)している限り、特に制限されない。
【0135】
野生型オーキシン受容体は、TIR1として知られており、各種植物が有している。そのアミノ酸配列は、例えば、シロイヌナズナの場合であれば、配列番号1に示されるアミノ酸配列であることがしられている。また、他の植物種におけるTIR1のアミノ酸配列も公知であり、そのアミノ酸配列はNCBI等のデータベースから入手することが可能である。
【0136】
オーキシン受容性を低減させる変異は、公知の情報に従って、設計することが可能である。例えば、既報の文献(Nature, Vol 446, 5 April 2007, pp640-645.)では、オーキシン(インドール-3-酢酸)とその受容体(TIR1)との相互作用領域について解析されており、TIR1のループ2のフェニルアラニン残基(例えば、配列番号1では、N末端から79及び82番目のアミノ酸残基(フェニルアラニン残基))が、オーキシンインドール環中のベンゼン環と相互作用することが報告されている。このことから、オーキシン受容体の、オーキシンインドール環中のベンゼン環と相互作用するアミノ酸残基(好ましくはTIR1のループ2のフェニルアラニン残基(配列番号1では、N末端から79及び/又は82番目のアミノ酸残基(フェニルアラニン残基)、或いは、配列番号1のTIRIのオルソログ又はパラログにおいて配列番号1のN末端から79及び/又は82番目のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基))を他のアミノ酸残基に置換することにより、オーキシン受容性を低減させることができる。
【0137】
置換後のアミノ酸残基である「他のアミノ酸残基」としては、好ましくは側鎖の分子量がフェニルアラニン残基の側鎖の分子量よりも小さいアミノ酸残基が挙げられる。このようなアミノ酸残基としては、例えばグリシン残基、アラニン残基、バリン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、メチオニン残基、システイン残基等の疎水性アミノ酸残基; セリン残基等が挙げられ、好ましくはグリシン残基、アラニン残基、バリン残基、イソロイシン残基、セリン残基等が挙げられ、より好ましくはグリシン残基、アラニン残基、セリン残基等が挙げられ、さらに好ましくはアラニン残基、セリン残基等が挙げられ、よりさらに好ましくはアラニン残基が挙げられる。
【0138】
オーキシン受容性低減型オーキシン受容体を発現する植物は、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体を、全部又は一部の細胞若しくは組織(好ましくは一部の細胞若しくは組織)で発現する植物である限り、特に制限されない。該受容体を一部の細胞若しくは組織でのみ発現する植物を用いることにより、オーキシン応答シグナルに基づく目的外の効果を低減しつつも、目的の効果をより効率的に発揮することができる。該受容体を一部の細胞若しくは組織で発現させる場合は、例えば根、木質部孔鞘細胞、茎、頂端分裂組織、分枝部、葉、気孔、花芽、花、各器官の原基等が挙げられる。
【0139】
オーキシン受容性低減型オーキシン受容体を発現する植物は、公知の方法に従って得ることができる。例えば、プロモーター、及びその制御下に配置されたオーキシン受容性低減型オーキシン受容体のコード配列を含むポリヌクレオチドを植物に導入することにより、得ることができる。プロモーターとしては、特に制限されないが、一部の細胞若しくは組織でのみ発現させる場合であれば、各種組織又は細胞特異的プロモーターを採用することができる。
【0140】
各種組織又は細胞特異的プロモーターとしては、例えばシロイヌナズナであれば、例えば根に特異的なプロモーターとしてAt5g66390遺伝子プロモーター等、頂端分裂組織に特異的なプロモーターとしてAT1G62360遺伝子プロモーター等、気孔に特異的なプロモーターとしてAT1G08810遺伝子プロモーター等が挙げられる。
【0141】
ポリヌクレオチドの導入方法は、特に制限されず、導入対象に応じて、適宜選択することができる。導入方法としては、例えばリーフディスク法、フローラル・ディップ法、フローラル・スプレー法等のアグロバクテリウム法)、パーティクル・ガン法)、ウイルス媒介性核酸送達)、エレクトロポレーション法等が挙げられる。これらの中でも、簡便性や安全性等の観点から、好ましくはアグロバクテリウム法が挙げられる。
【0142】
本発明の植物成長調整剤の対象植物の種は、特に制限されない。例えば、被子植物(双子葉植物、単子葉植物等)、裸子植物、コケ植物、シダ植物等の植物に対して広く適用できる。具体例としては、トマト、ピーマン、トウガラシ、ナス等のナス類、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ等のウリ類、キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ等の菜類、セルリー、パセリー、レタス等の生菜・香辛菜類、ネギ、タマネギ、ニンニク等のネギ類、ダイズ、ラッカセイ、インゲン、エンドウ、アズキ等の豆類、イチゴ等のその他果菜類、ダイコン、カブ、ニンジン、ゴボウ等の直根類、サトイモ、キャッサバ、バレイショ、サツマイモ、ナガイモ等のイモ類、アスパラガス、ホウレンソウ、ミツバ等の柔菜類、トルコギキョウ、ストック、カーネーション、キク等の花卉類、イネ、トウモロコシ等の穀物類、ベントグラス、コウライシバ等の芝類、ナタネ、ラッカセイ等の油料作物類、サトウキビ、テンサイ等の糖料作物類、ワタ、イグサ等の繊維料作物類、クローバー、ソルガム、デントコーン等の飼料作物類、リンゴ、ナシ、ブドウ、モモ等の落葉性果樹類、ウンシュウミカン、レモン、グレープフルーツといった柑橘類、サツキ、ツツジ、スギ等の木本類等が挙げられる。
【0143】
本発明の植物成長調整剤の対象器官は、植物体を構成する器官である限り特に限定されない。対象器官としては、好ましくは茎、芽、根、子房、及び果実が挙げられ、より好ましくは茎、芽、及び根が挙げられ、さらに好ましくは茎が挙げられる。
【0144】
本発明の植物成長調整剤は、本発明の有効成分のみであってもよいが、これに加えて、剤形、施用態様等に応じて種々の添加剤を含んでいてもよい。植物成長調整剤中の本発明の有効成分の含有割合は、特に限定されない。具体的には、0.0001~100重量%、好ましくは0.01~50重量%程度が例示される。
【0145】
本発明の植物成長調整剤の剤形は、農学的に許容される剤形である限り特に限定されない。例えば、液剤、固形剤、粉剤、顆粒剤、粒剤、水和剤、フロアブル剤、乳剤、ペースト剤、分散剤等が挙げられる。
【0146】
添加剤は、農学的に許容される添加剤である限り特に限定されない。例えば、担体、界面活性剤、増粘剤、増量剤、結合剤、ビタミン類、酸化防止剤、pH調整剤、揮散抑制剤、色素等が挙げられる。
【0147】
本発明の植物成長調整剤の施用態様は、農薬の使用態様として公知の態様(或いは将来開発される態様)である限り特に限定されない。例えば、散布、滴下、塗布、植物生育環境中(土壌中、水中、固形培地中、液体培地中等)への混合や溶解等が挙げられる。
【実施例
【0148】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0149】
特に制約しない限り、乾燥溶媒を含む全ての反応剤及び試薬は、市販品をそのまま使用した。 特に制約しない限り、すべての反応は、空気中で試薬グレードの溶媒を用いて行った。すべての後処理及び精製手順は、空気中で試薬グレードの溶媒を用いて行った。分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)は、E. Merckシリカゲル60 F254プレコートプレート(0.25 mm)を用いて行った。開発したクロマトグラムは、UVランプ(254 nm)で分析した。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、KANTOシリカゲル60N(0.04-0.1 mm)又はBiotage SNAP Ultra 10 g カートリッジを備えたBiotage Isolera(登録商標)装置を用いて行った。分取薄層クロマトグラフィー(PTLC)はあらかじめ準備したWakogel(登録商標) B5-Fのシリカ被覆プレート(0.75 mm)を用いて行った。逆相カラムクロマトグラフィーはKP-C18-HS 12 gカートリッジを備えたBiotage Isolera(登録商標)装置を用いて行った。LC/MS解析はAgilent Technologies 1200シリーズを用いて行った。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、Thermo Fisher Scientific Exactiveにより得た。マイクロ波合成は Biotage(登録商標) Inintiator+を用いて行った。核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、JEOL JNM-ECA-400分光計(1H 400 MHz、13C 100MHz)、JEOL JNM-ECA-500 II分光計(1H 500 MHz, 13C 125 MHz)、及びUltra COOLプローブを備えたJEOL JMN-ECA-600II(1H 600 MHz, 13C 150 MHz)で記録した。1H NMRの化学シフトはテトラメチルシラン(δ0.00 ppm)、CD3ODの残余ピーク(δ 3.30 ppm)及びDMSO-d6の残余ピーク(δ 3.30 ppm)の相対的な百万分率(ppm)で表した。13C NMRの化学シフトはCD3OD(δ 49.0 ppm)、CDCl3(δ 77.0 ppm)、又はDMSO-d6(δ 39.5 ppm)の相対的な百万分率(ppm)で表した。データは、chemical shift, multiplicity (s = singlet, d = doublet, dd = doublet of doublets, t = triplet, m = multiplet, br = broad signal), coupling constant (Hz), integrationの順に報告する。
【0150】
合成例1:2-(5-ブロモ-1H-インドール-3-イル)-2-オキソ酢酸
【0151】
【化23】
【0152】
5-ブロモインドール(5.0 g, 25.5 mmol) をジエチルエーテル(100 mL) に溶解させ、得られた溶液を0℃まで冷却した。フラスコに塩化オキサリル (2.2 mL, 1.0 equiv.) を滴下し、得られた反応混合物を室温に戻した。混合物を室温で2.5時間撹拌した後、反応を水 (2.3 mL, 5.0 equiv.) でクエンチした。反応混合物ろ過して、2-(5-ブロモ-1H-インドール-3-イル)-2-オキソ酢酸を黄色粉末として得た (6.8 g, quant)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.48 (s, 1H), 8.48 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 8.29 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.43 (dd, J = 8.9, 2.1 Hz, 1H)。
【0153】
合成例2:2-(5-ブロモ-1H-インドール-3-イル)酢酸
【0154】
【化24】
【0155】
2-(5-ブロモ-1H-インドール-3-イル)-2-オキソ酢酸 (1.6 g, 7.0 mmol) を2-エトキシエタノール (31 mL) に溶解させ、ヒドラジン一水和物 (5 mL, 5 equiv.) をフラスコに添加した。反応混合物を60℃で40分間撹拌後、NaOMe (3.7 g, 10 equiv.) をフラスコに添加し、150℃でさらに7時間撹拌した。水の添加により反応をクエンチし、水層を酢酸エチルで3回洗浄した。6M塩酸水溶液で水層を酸性化し、生成した沈殿物をジクロロメタンで抽出した。結合有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。得られた残渣を逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製し、再沈殿(CHCl3/hexane)させて、 2-(5-ブロモ-1H-インドール-3-イル)酢酸を淡黄色粉末として得た (1.2 g, 72%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.68 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.26 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.18 (dd, J = 8.9, 1.5 Hz, 2H), 3.69 (s, 2H)。
【0156】
合成手順A
【0157】
【化25】
【0158】
スクリューチューブに5-ブロモ IAA (50.8mg, 0.2 mmol)、ボロン酸 (1.5 equiv.)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (4.6 mg, 2 mol%)、炭酸ナトリウム (42 mg, 2.0 equiv.)、トルエン (1 mL)、エタノール (1 mL)、及び水 (0.5 mL)を添加した。チューブに窒素ガスを充填し、反応混合物を100℃で一晩撹拌した。6M塩酸水溶液で混合物を酸性化し、ジエチルエーテルで抽出し、Mg2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物を逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN)、フラッシュカラムクロマトグラフィー又はPTLCで精製した。
【0159】
合成手順B
【0160】
【化26】
【0161】
スクリューチューブに5-ブロモ IAA (50.8 mg, 0.2 mmol)、ボロン酸 (1.1 equiv.)、10% パラジウム炭素 (2.3 mg, 1 mol%)、炭酸ナトリウム (42 mg, 2.0 equiv.)、及び水を添加した。チューブに窒素ガスを充填し、混合物に水 (2 mL) を添加した。反応混合物を110℃で一晩撹拌した。混合物を水で希釈して、Celite(登録商標)でろ過した。混合物を酢酸エチルで洗浄して、6M塩酸水溶液で混合物を酸性化した。生成した沈殿物をジエチルエーテルで抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過して、真空下で濃縮した。得られた残渣を逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) 又はフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0162】
実施例1:2-(5-(o-トリル)-1H-インドール-3-イル)酢酸 (MK-189)
【0163】
【化27】
【0164】
合成手順Aに従って合成し、PTLC (CHCl3)で精製した。収率: 4.7 mg, 8.8%、白色固体。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.77 (s, 1H), 7.46 (s, 1H), 7.42 (d, J = 6.1 Hz, 1H), 7.39 (s, 1H), 7.37 (dd, J = 8.3, 1.5 Hz, 1H), 7.28 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.20 (s, 1H), 7.08 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 3.77 (s, 2H), 2.40 (s, 3H)。
【0165】
実施例2:2-(5-(m-トリル)-1H-インドール-3-イル)酢酸 (MK-190)
【0166】
【化28】
【0167】
合成手順Aに従って合成し、PTLC (CHCl3) で精製した。収率: 4.2 mg, 8%、白色固体。
1H NMR (600 MHz, CD3OD) δ 7.47 (s, 1H), 7.37 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.24-7.17 (m, 5H), 7.05 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 3.70 (d, J = 25.4 Hz, 2H), 2.26 (s, 3H)。
【0168】
実施例3:2-(5-(3-エトキシフェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-211)
【0169】
【化29】
【0170】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 23.0 mg, 39%、白色固体。
1H NMR (600 MHz, CD3OD) δ 7.78 (s, 1H), 7.40 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.37 (dd, J = 8.2, 1.4 Hz, 1H), 7.29 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.20 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 7.16 (s, 1H), 6.81 (dd, J = 8.2, 2.1 Hz, 1H), 4.09 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 3.76 (s, 2H), 1.41 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0171】
実施例4:2-(5-(4-(tert-ブチル)フェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-198)
【0172】
【化30】
【0173】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 3.4 mg, 4%、白色固体。
1H NMR (600 MHz, CD3OD) δ 7.79 (s, 1H), 7.57 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.44 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.38 (s, 2H), 7.19 (s, 1H), 3.74 (s, 2H), 1.36 (s, 9H)。
【0174】
実施例5:2-(5-(3,4-ジメチルフェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-230)
【0175】
【化31】
【0176】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 29.0 mg, 51%、白色固体。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.93 (s, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.48-7.27 (m, 4H), 7.18 (s, 1H), 7.14 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 3.75 (s, 2H), 2.31 (s, 3H), 2.27 (s, 3H)。
【0177】
実施例6:2-(5-(2,5-ジメチルフェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-221)
【0178】
【化32】
【0179】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 25.1 mg, 45%、白色固体。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.89 (s, 1H), 7.44 (s, 1H), 7.37 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 7.11 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.07-7.03 (m, 2H), 7.01 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 3.74 (s, 2H), 2.32 (s, 3H), 2.21 (s, 3H)。
【0180】
実施例7:2-(5-(3,5-ジメチルフェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-379)
【0181】
【化33】
【0182】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 60.0 mg, 43%、白色固体。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.75 (s, 1H), 7.38 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.23 (s, 2H), 7.18 (s, 1H), 6.90 (s, 1H), 3.76 (s, 2H), 2.35 (s, 6H)。
【0183】
実施例8:2-(5-(2-クロロ-5-メチルフェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-307)
【0184】
【化34】
【0185】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN)及びフラッシュカラムクロマトグラフィー (EtOAc/hexane = 1:1)で精製した。収率: 4.7 mg, 8%、白色固体。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.12 (bs, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.39 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.30 (dd, J = 8.3, 1.5 H, 1H), 7.23-7.18 (m, 2H), 7.06 (dd, J = 7.9, 1.8 Hz, 1H), 3.83 (s, 2H), 2.36 (s, 1H), 2.35 (s, 3H)。
【0186】
実施例9:2-(5-(5-クロロ-2-メチルフェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-309)
【0187】
【化35】
【0188】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 7.8 mg, 13%、白色固体。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.13 (bs, 1H), 7.51 (s, 1H), 7.39 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.24 (s, 1H), 7.20 (dd, J = 8.3, 2.1 Hz, 1H), 7.17 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.14 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 3.82 (s, 2H), 2.23 (s, 3H)。
【0189】
実施例10:2-(5-(2,5-ジクロロフェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-308)
【0190】
【化36】
【0191】
合成手順Aに従って合成し、Flash column chromatography (MeOH/CHCl3= 1:9) で精製した。収率: 5.1 mg, 8%、白色固体。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.19 (bs, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.39 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 7.37 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.27-7.24 (m, 1H), 7.21 (dd, J = 8.6, 2.4 Hz, 1H), 7.19 (s, 1H), 3.80 (s, 2H)。
【0192】
実施例11:2-(5-(4-フルオロ-3-メチルフェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-213)
【0193】
【化37】
【0194】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 25.5 mg, 45%、白色固体。
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 7.83 (d, J = 1.1 Hz, 1H), 7.51 (dd, J = 7.4, 2.3 Hz, 1H), 7.48-7.41 (m, 1H), 7.35 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.29 (dd, J = 8.0, 1.7 Hz, 1H), 7.16 (s, 1H), 7.03 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 3.64 (s, 2H), 2.32 (s, 3H)。
【0195】
実施例12:2-(5-(4-メトキシ-3-メチルフェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-214)
【0196】
【化38】
【0197】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 2.4 mg, 4%、白色固体。
1H NMR (600 MHz, CD3OD) δ 7.80 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.15 (s, 1H), 6.92 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.64 (s, 2H), 2.25 (s, 3H)。
【0198】
実施例13:2-(5-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-209)
【0199】
【化39】
【0200】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 27.1 mg, 46%、白色固体。
1H NMR (600 MHz, CD3OD) δ 7.69 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.31 (dd, J = 8.2, 1.7 Hz, 1H), 7.19 (s, 1H), 7.11 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 7.10 (dd, J = 8.0, 1.9 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 5.96 (s, 2H), 3.76 (s, 2H)。
【0201】
実施例14:2-(5-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-255)
【0202】
【化40】
【0203】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 38.9 mg, 64%、白色固体。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.74 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.70 (dd, J = 7.0, 2.1 Hz, 1H), 7.57 (qd, J = 4.4, 2.3 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.35 (dd, J = 8.6, 1.8 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 3.81 (s, 2H)。
【0204】
合成例3:2-(6-ブロモ-1H-インドール-3-イル)-2-オキソ酢酸
【0205】
【化41】
【0206】
6-ブロモインドール (294.1 mg, 1.5 mmol) をジエチルエーテル (5 mL) に溶解させ、得られた溶液を0℃まで冷却した。フラスコに塩化オキサリル (257.3 μL, 2.0 equiv.) を滴下し、得られた反応混合物を室温に戻した。混合物を室温で2.5時間撹拌した後、反応を水 (60.1 μL, 5.0 equiv.) でクエンチした。反応混合物をろ過して、2-(6-ブロモ-1H-インドール-3-イル)-2-オキソ酢酸を淡黄色粉末として得た (275.0 mg, 68%)。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.53 (s, 1H), 8.19 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.39 (dd, J = 8.6, 1.8 Hz, 1H)。
【0207】
合成例4:2-(6-ブロモ-1H-インドール-3-イル)酢酸
【0208】
【化42】
【0209】
2-(6-ブロモ-1H-インドール-3-イル)-2-オキソ酢酸 (200.0 mg, 746.1 μmol) を2-エトキシエタノール (3.3 mL) に溶解させ、ヒドラジン一水和物 (0.5 mL, 5 equiv.) をフラスコに添加した。反応混合物を60℃で40分間撹拌後、NaOMe (393.3 mg, 10 equiv.) をフラスコに添加し、150℃でさらに7時間撹拌した。水の添加により反応をクエンチし、水層を酢酸エチルで3回洗浄した。6M塩酸水溶液で水層を酸性化し、生成した沈殿物をジクロロメタンで抽出した。結合有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。得られた残渣を逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製し、2-(6-ブロモ-1H-インドール-3-イル)酢酸を淡黄色粉末として得た (128.6 mg, 68%)。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.50 (s, 1H), 7.45 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.17 (s, 1H), 7.12 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 3.71 (s, 2H)。
【0210】
実施例15:2-(6-(m-トリル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-245)
【0211】
【化43】
【0212】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 25.0 mg, 47%、白色固体。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.59 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.57 (s, 1H), 7.45 (s, 1H), 7.42 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.32-7.25 (m, 2H), 7.20 (s, 1H), 7.10 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 3.75 (s, 2H), 2.40 (s, 3H)。
【0213】
実施例16:2-(6-([1,1'-ビフェニル]-2-イル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-232)
【0214】
【化44】
【0215】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製した。収率: 31.9 mg, 49%、白色固体。
1H NMR (600 MHz, CD3OD) δ 7.46-7.39 (m, 1H), 7.38-7.26 (m, 4H), 7.20-6.95 (m, 7H), 6.80 (dd, J = 8.1, 1.5 Hz, 1H), 3.68 (s, 2H)。
【0216】
実施例17:2-(6-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-247)
【0217】
【化45】
【0218】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) 及び 再結晶 (MeOH/CHCl3) によって精製した。収率: 12.4 mg, 18%、茶色固体。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.57 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.49 (s, 1H), 7.23 (dd, J = 8.3, 1.5 Hz, 1H), 7.19 (s, 1H), 7.10 (dd, J = 7.6, 1.5 Hz, 2H), 6.87 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 5.96 (s, 2H), 3.74 (s, 2H)。
【0219】
実施例18:2-(6-(3-フェノキシフェニル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-248)
【0220】
【化46】
【0221】
合成手順Aに従って合成し、逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) 及び 再結晶 (MeOH/CHCl3) によって精製した。収率: 7.8 mg, 13%、黄色固体。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.69-7.59 (m, 3H), 7.56 (s, 1H), 7.41-7.33 (m, 2H), 7.30 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.20 (s, 1H), 7.15-7.08 (m, 1H), 7.07-7.00 (m, 4H), 3.73 (s, 2H)。
【0222】
合成例5:メチル 2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)アセテート
【0223】
【化47】
【0224】
5-ヒドロキシ IAA (303.5mg, 1.57 mmol) メタノール (7.5 mL) 希釈溶液に、塩化チオニル (1.26mL, 10 equiv.) を0℃で滴下した。反応混合物を室温で4時間撹拌した。飽和塩化アンモニウムにより混合物をクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。結合有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過して、真空下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー (hexane/EtOAc = 1:1) で精製して、メチル 2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)アセテートを淡黄色オイルとして得た (256.5 mg, 79%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.08 (s, 1H), 7.06 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.71 (dd, J = 8.6, 2.4 Hz, 1H), 3.66 (s, 2H), 3.65 (s, 3H)。
【0225】
合成手順C
【0226】
【化48】
【0227】
メチル 2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)アセテート (100 mg, 0.5 mmol) のDMF (3 ml) 溶液に炭酸セシウム (162 mg, 0.5 equiv.)、及び対応のヨウ化アルキル又は臭化アリール (1.2 equiv.) 添加し、50℃で4時間撹拌した。得られた溶液に水 (50 mL) を添加して、酢酸エチルで抽出した。結合有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液及び塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー (hexane/EtOAc = 4:1) で精製して、対応の5-アルコキシ-インドール-3-酢酸 メチルエステル(メチルエステルX)を得た。
【0228】
合成例6:メチル 2-(5-((3-メチルベンジル)オキシ)-1H-インドール-3-イル)アセテート
【0229】
【化49】
【0230】
合成手順Cに従って合成した。収率: 7.4 mg, 12%、淡黄色オイル。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.97 (s, 1H), 7.30 (s, 1H), 7.27 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 7.25 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.14 (dd, J = 8.3, 2.8 Hz, 3H), 6.95 (dd, J = 9.2, 2.4 Hz, 1H), 3.74 (s, 2H), 3.68 (s, 3H), 2.38 (s, 3H)。
【0231】
合成例7:メチル 2-(5-((4-メチルベンジル)オキシ)-1H-インドール-3-イル)アセテート
【0232】
【化50】
【0233】
合成手順Cに従って合成した。収率: 2.9 mg, 5%、淡黄色オイル。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.97 (bs, 1H), 7.36 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.25 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.19 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.13 (t, J = 2.1 Hz, 2H), 6.93 (dd, J = 8.6, 2.4 Hz, 1H), 3.73 (s, 2H), 3.68 (s, 3H), 2.36 (s, 3H)。
【0234】
合成手順D
【0235】
【化51】
【0236】
メチルエステルXを水酸化ナトリウムの水メタノール溶液 (2N NaOH : MeOH = 1:2) 中、室温で1時間、加水分解した。6M塩酸水溶液で混合物を酸性化し、酢酸エチルで抽出し、Mg2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物を逆相カラムクロマトグラフィー (MeOH/MeCN) で精製して、対応の5-アルコキシ-インドール 3-酢酸を得た。
【0237】
実施例19:2-(5-(ヘプチルオキシ)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-323)
【0238】
【化52】
【0239】
メチルエステルXは、アルキル化において精製を行わずに、5-ヒドロキシ IAAから合成した。合成手順C及びDに従って合成した。収率: 5.7 mg, 7% (two steps) 、淡黄色オイル。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.12 (bs, 1H), 7.16 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.03 (s, 2H), 6.83 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 3.95 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.70 (s, 2H), 1.83-1.70 (m, 2H), 1.50-1.38 (m, 2H), 1.38-1.19 (m, 6H), 0.88 (t, J= 6.9 Hz, 3H)。
【0240】
実施例20:2-(5-(2-メチルブトキシ)-1H-インドール-3-イル)酢酸 (MK-322)
【0241】
【化53】
【0242】
メチルエステルXは、アルキル化において精製を行わずに、5-ヒドロキシ IAAから合成した。
合成手順C及びDに従って合成した。収率: 7.2 mg, 3% (two steps) 、淡黄色固体。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.75 (s, 1H), 7.21 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.12 (s, 1H), 7.05 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 6.75 (dd, J = 9.2, 2.4 Hz, 1H), 3.86 (q, J = 4.9 Hz, 1H), 3.78 (q, J = 5.1 Hz, 1H), 3.65 (s, 2H), 1.91-1.77 (m, 1H), 1.71-1.53 (m, 1H), 1.38-1.21 (m, 1H), 1.04 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.98 (t, J = 7.6 Hz, 3H)。
【0243】
実施例21:2-(5-(シクロヘキシルメトキシ)-1H-インドール-3-イル)酢酸 (MK-333)
【0244】
【化54】
【0245】
メチルエステルXは、アルキル化において精製を行わずに、5-ヒドロキシ IAAから合成した。
合成手順C及びDに従って合成した。収率: 3.2 mg, 9% (two steps)、白色固体。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.20 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.11 (s, 1H), 7.03 (s, 1H), 6.75 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 3.79 (d, J = 5.5 Hz, 2H), 3.65 (s, 2H), 1.96-1.70 (m, 4H), 1.47-1.01 (m, 6H)。
【0246】
実施例22:2-(5-((3-メチルベンジル)オキシ)-1H-インドール-3-イル)酢酸 (MK-349)
【0247】
【化55】
【0248】
合成手順Dに従って合成した。収率: 9.3 mg, 88%、淡黄色固体。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.86 (bs, 1H), 7.16 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 7.14-7.09 (m, 2H), 7.09-7.01 (m, 2H), 6.95 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.86-6.78 (m, 2H), 4.88 (s, 2H), 3.49 (s, 2H), 2.26 (s, 3H)。
【0249】
実施例23:2-(5-((4-メチルベンジル)オキシ)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-350)
【0250】
【化56】
【0251】
合成手順Dに従って合成した。収率: 2.3 mg, 83%、白色固体。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.34 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 7.16 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.13 (s, 1H), 6.82 (dd, J = 8.6, 2.4 Hz, 1H), 5.03 (s, 2H), 3.64 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 2.34 (s, 3H)。
【0252】
合成手順E
スクリューチューブに5-ブロモインドール-3-酢酸 (100 mg, 0.38 mmol)、ボロン酸 (1.5 equiv.) 及び テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (13.4 mg, 5 mol%) を添加して、チューブに窒素ガスを充填した。混合物に、メタノール (1 mL), トルエン (1 mL) 及び 3M 炭酸ナトリウム水溶液 (0.23 mL, 3.0 equiv.) を添加して、65℃で各実施例に示す時間、撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈して、Cellite(登録商標)でろ過した。ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、及び塩水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過して、真空下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー (EtOAc/hexane = 2:8 to 3:7)で精製した。
【0253】
合成例8:5-(2-メトキシフェニル)-インドール-3-酢酸 メチルエステル
【0254】
【化57】
【0255】
合成手順E(反応時間:16時間)に従って、5-(2-メトキシフェニル)-インドール-3-酢酸 メチルエステルを、淡茶色オイルとして得た (45.8 mg, 41%) 。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.11 (s, 1H), 7.75 (s, 1H), 7.42 (s, 1H), 7.40 (s, 1H), 7.37-7.27 (m, 2H), 7.11 (s, 1H), 7.06 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 3.81 (s, 2H), 3.71 (s, 3H).; 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 172.7, 156.7, 135.4, 132.1, 131.5, 130.3, 128.0, 127.3, 124.5, 123.6, 120.9, 119.7, 111.4, 110.7, 108.7, 55.7, 52.1, 31.3. HRMS (ESI) m/z calcd for C18H17NO3Na [M+Na]+: 318.1101, found 318.1092。
【0256】
合成例9:(5-(3-メトキシフェニル)-インドール-3-酢酸 メチルエステル
【0257】
【化58】
【0258】
合成手順E(反応時間:3時間)に従って、(5-(3-メトキシフェニル)-インドール-3-酢酸 メチルエステルを淡茶色オイルとして得た (70.0 mg, 62%) 。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.20 (s, 1H), 7.82 (s, 1H), 7.45 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.41-7.30 (m, 2H), 7.27 (d, J = 6.1 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 7.14 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 3.89 (s, 3H), 3.83 (s, 2H), 3.72 (s, 3H).; 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 172.7, 160.0, 144.2, 135.5, 129.7, 127.8, 124.2, 122.2, 120.2, 117.5, 113.4, 111.8, 111.8, 111.6, 108.8, HRMS (ESI) m/z calcd for C18H17NO3Na [M+Na]+: 318.1101, found 318.1099。
【0259】
合成例10:(5-(2-ナフチル)-インドール-3-酢酸 メチルエステル
【0260】
【化59】
【0261】
合成手順E(反応時間:8時間)に従って、(5-(2-ナフチル)-インドール-3-酢酸 メチルエステルを淡茶色オイルとして得た (56.6 mg, 48%) 。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.17 (s, 1H), 8.10 (s, 1H), 7.95 (s, 1H), 7.94-7.90 (m, 2H), 7.88 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.85 (dd, J = 8.4, 1.5 Hz, 1H), 7.59 (dd, J = 8.4, 1.5 Hz, 1H), 7.55-7.44 (m, 2H), 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.17 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 3.87 (s, 2H), 3.74 (s, 3H).; 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 172.7, 140.0, 135.8, 134.0, 132.3, 128.3, 128.2, 127.9, 127.8, 126.4, 126.3, 125.7, 125.6, 124.0, 122.5, 117.7, 111.7, 52.2, 31.3.; HRMS (ESI) m/z calcd for C21H17NO2Na [M+Na]+: 338.1151, found 338.1149。
【0262】
合成手順F
メチルエステルのテトラヒドロフラン及び水の溶液 (v/v = 1:1, 0.1 M) 、及び水酸化リチウム水溶液 (5 equiv.) を添加し、反応混合物を室温で7時間撹拌した。混合物をジクロロメタンで洗浄し、6M塩酸水溶液で酸性化した。水層をジクロロメタンで抽出し、結合有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。得られた残渣を順相又は逆相カラムクロマトグラフィーで精製した。
【0263】
実施例24:(5-(2-メトキシフェニル)-インドール-3-酢酸 (27A)
【0264】
【化60】
【0265】
合成手順Fに従って、(5-(2-メトキシフェニル)-インドール-3-酢酸 メチルエステル (45.8 mg, 0.16 mmol) を加水分解した。フラッシュカラムクロマトグラフィー (MeOH/CHCl3 = 1:10) 、及びそれに続く逆相カラムクロマトグラフィー (MeCN/H2O) で精製して、 (5-(2-メトキシフェニル)-インドール-3-酢酸を白色固体として得た (24.3 mg, 56%) 。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.90 (s, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.36 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.33-7.26 (m, 2H), 7.24 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.21 (dd, J = 8.3, 1.5 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.05-6.98 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.63 (s, 2H).; 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 173.3, 156.2, 135.2, 131.6, 130.7, 128.6, 127.8, 127.2, 124.2, 123.0, 120.6, 119.3, 111.7, 110.6, 108.3, 55.4, 31.4.; HRMS (ESI) m/z calcd for C17H14NO3[M-H]-: 280.0979 found 280.0974.; HRMS (ESI) m/z calcd for C17H14NO3[M-H]-: 280.0979, found 280.0976。
【0266】
実施例25:(5-(3-メトキシフェニル)-インドール-3-酢酸(27B)
【0267】
【化61】
【0268】
合成手順Fに従って、(5-(3-メトキシフェニル)-インドール-3-酢酸 メチルエステル (58.8 mg, 0.20 mmol) を加水分解した。Biotage(登録商標) Isoleraを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(MeOH/CHCl3 = 1:10) 及びそれに続く逆相カラムクロマトグラフィー (MeCN/H2O) で精製して、 (5-(3-メトキシフェニル)-インドール-3-酢酸を白色固体として得た (30.1 mg, 56%) 。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.97 (s, 1H), 7.79 (s, 1H), 7.42 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.39 (dd, J = 8.4, 1.5 Hz, 1H), 7.35 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.17 (t, J = 1.9 Hz, 1H), 6.87 (dd, J = 8.4, 2.3 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 3.70 (s, 2H).; 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6) δ 173.2, 159.6, 143.5, 135.8, 130.8, 129.7, 127.8, 124.7, 120.4, 119.1, 117.0, 112.3, 111.7, 111.6, 108.5, 55.0, 31.1. ; HRMS (ESI) m/z calcd for C17H14NO3 [M-H]-: 280.0979, found 280.0976。
【0269】
実施例26:5-(2-ナフチル)-インドール-3-酢酸(27D)
【0270】
【化62】
【0271】
合成手順Fに従って、5-(2-ナフチル)-インドール-3-酢酸 メチルエステル (22.2 mg, 75 μmol) を加水分解した。逆相カラムクロマトグラフィー (MeCN/H2O) で精製して、5-(2-ナフチル)-インドール-3-酢酸を白色固体として得た (34 mg, 63%) 。
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 12.19 (s, 1H), 11.01 (s, 1H), 8.17 (s, 1H), 7.99 (s, 1H), 7.98 (s, 1H), 7.96-7.90 (m, 2H), 7.88 (dd, J = 8.2, 1.4 Hz, 1H), 7.56 (dd, J = 8.6, 1.7 Hz, 1H), 7.52 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 7.50-7.45 (m, 2H), 7.29 (s, 1H), 3.74 (s, 2H).; 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 177.3, 139.8, 135.7, 133.9, 133.2, 132.3, 128.4, 128.2, 127.9, 127.7, 126.3, 126.3, 125.7, 125.6, 124.2, 122.4, 117.7, 111.8, 109.0., 31.6. HRMS (ESI) m/z calcd for C20H14NO2 [M-H]-: 300.1030, found 300.1036。
【0272】
実施例27:5-(2-フェニル)-インドール-3-酢酸(42A)
【0273】
【化63】
【0274】
5-フェニルインドール (146 mg, 0.75 mmol) のジエチルエーテル溶液 (3.4 mL, 0.2 M) に塩化オキサリル (125 mg, 1.3 equiv.) を、0℃でゆっくり添加した。 反応混合物を室温で1時間撹拌した後、ジエチルエーテルト水の混合物 (v/v = 2:1, 3 mL) を0℃で添加した。黄色状沈殿物をろ過により集め、168 mgの生成物を得た。生成物は精製せずに次の反応に用いた。2-(5-フェニルl-1H-インドール-3-イル)-2-オキソ酢酸 (150 mg, 0.56 mmol) の2-エトキシエタノール溶液 (3.0 mL, 0.2 M) に、ナトリウムメトキシド (310 mg, 10.0 equiv.) 及び ヒドラジン一水和物(142 mg, 5.0 equiv.) を、室温で添加した。反応混合物を150℃で10時間撹拌した。反応の終わりに、混合物を水で希釈した。水溶液を酢酸エチルで3回洗浄し、 2 M 塩酸水溶液で酸性化した。水溶液を酢酸エチルで3回抽出した。結合有機層を水で洗浄し、 Na2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー (10% MeOH in CHCl3) で精製して、目的の化合物を白色結晶として得た (101 mg, 60%, 2 steps)。
1H-NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.77 (s, 1H), 7.62 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 7.42-7.37 (m, 4H), 7.42 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 7.20 (s, 1H), 3.76 (s, 2H), N-H proton and O-H proton exhibit exchange with CD3OD.; 13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 176.6, 144.2, 137.6, 133.7, 129.6, 129.2, 128.1, 127.1, 125.4, 122.2, 117.9, 112.5, 109.6, 32.1. HRMS (ESI) m/z calcd for C16H13NO2Na [M+Na]+: 274.0838, found 274.0838。
【0275】
合成手順G
【0276】
【化64】
【0277】
スクリュー管に、S2(102mg、0.38mmol)、アリールボロン酸(1.5当量)およびPdCl 2(PPh 3)2(13.4mg、5.0mol%)を加え、管を排気し、窒素ガスで充填した。 混合物に、MeOH(1.0mL)、トルエン(1.0mL)および3M Na2CO3水溶液(230μL、3.0当量)を加えた。 混合物を80℃で以下の時間撹拌した。 混合物をEtOAcで希釈し、Celite(登録商標)で濾過した。 濾液を飽和NaHCO3水溶液、H2Oおよび塩水で洗浄した。 有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。 残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0278】
合成手順H
【0279】
【化65】
【0280】
THFおよびH 2 O(v / v = 1:1,1.0M)の混合物中のメチルエステルの溶液に、LiOH・H2O(5.0当量)を加え、反応混合物を室温で示された時間 以下。 混合物をCH2Cl2で洗浄し、6M HClで酸性化した。 水層をCH2Cl2で抽出し、合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。 残渣を順相または逆相カラムクロマトグラフィーで精製した。
【0281】
実施例28:2-(5-(ベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(14)
【0282】
【化66】
【0283】
実施例28-1:2-(5-(ベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-1H-インドール-3-イル)酢酸メチル(14')
合成手順G(反応時間:12時間)に従って合成を行った。 フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ EtOAc = 3:1)で精製して14 '(62.5mg、51%)を白色固体として得た。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 8.23 (s, 1H), 7.96 (s, 1H), 7.84 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.53 (s, 1H), 7.36 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.33 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.30 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.14 (s, 1H), 3.84 (s, 2H), 3.76 (s, 3H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 172.6, 146.1, 141.2, 139.4, 136.3, 127.7, 126.4, 124.5, 124.3, 123.9, 123.3, 122.3, 121.5, 118.3, 117.2, 111.8, 109.0, 52.2, 31.2; HRMS (ESI) m/z calcd for C19H15NNaO2S [M+Na]+: 344.0716, found 344.0717.。
【0284】
実施例28-2:2-(5-(ベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(14)
合成手順Hに従って、14 '(62.5mg、0.19mmol)の加水分解を行った(反応時間:17時間)。 逆相カラムクロマトグラフィー(MeCN / H 2 O = 1:4~3:7)で精製して14(48.8mg、82%)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 10.50 (s, 1H), 7.93 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.70 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.52 (dd, J = 8.4, 1.2 Hz, 1H), 7.50 (s, 1H), 7.38 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.28 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 3.78 (s, 2H) One proton was missing due to proton exchange.; 13C NMR (150 MHz, CD3OD) 176.4, 147.5, 142.6, 140.4, 138.1, 129.1, 126.7, 125.9, 125.3, 124.7, 124.1, 122.9, 121.5, 118.8, 117.7, 112.8, 109.7, 32.0; HRMS (ESI) m/z calcd for C18H12NO2S [M-H]-: 306.0594, found 306. 0589.。
【0285】
実施例29:2-(5-シクロヘキシル-1H-インドール-3-イル)酢酸(15)
【0286】
【化67】
【0287】
実施例29-1:メチル(4-シクロヘキシル-2-ヨードフェニル)カルバメート(18)
【0288】
【化68】
【0289】
4-シクロヘキシルアニリン(16)(301mg、1.7mmol)をCH2Cl2(4mL)および飽和NaHCO3水溶液(4mL)の混合物に溶解した。 この混合物に、クロロ蟻酸メチル(160μL、2.0mmol、1.2当量)を0℃で滴下した。 周囲温度で2時間撹拌した後、反応混合物を水で希釈し、CH2Cl2で抽出した。 合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で乾燥させた。 粗生成物17(374mg、粗収率:93%)をさらに精製することなく次の反応に使用した。
【0290】
17のヨード化は改変されたジャファリの条件下で行われた。 攪拌棒を備えた管に、粗17(374mg、1.6mmol)のN-ヨードスクシンイミド(NIS)(402mg、1.1当量)TsOH・H2O(154mg、0.50当量)およびPd(OAc)2 (18.0mg、5.0mol%)を加え、1,2-ジクロロエタン(DCE)(3.2mL)を加えた。 60℃で4時間撹拌した後、反応混合物を周囲温度に冷却し、CHCl3で希釈した。 有機層を1M HCl、飽和NaHCO3水溶液およびブラインで洗浄した。 次いで、有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。 フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン~ヘキサン/ EtOAc = 19:1)で精製して、淡褐色固体として18を得た(520mg、2工程で90%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.88 (s, 1H), 7.59 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.18 (dd, J = 8.6, 1.7 Hz, 1H), 6.84 (s, 1H), 3.79 (s, 3H), 2.43-2.40 (m, 1H), 1.83 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 1.74 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 1.44-1.29 (m, 4H), 1.29-1.15 (m, 1H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 154.2, 145.6, 137.2, 136.2, 128.0, 120.6, 89.6, 52.7, 43.7, 34.5, 26.9, 26.2; HRMS (ESI) m/z calcd for C14H18INNaO2[M+Na]+: 382.0274, found 382.0261.。
【0291】
実施例29-2:5-シクロヘキシル-1H-インドール(20)
【0292】
【化69】
【0293】
フラスコに18(494mg、1.4mmol)、CuI(I)(27.2mg、0.14mmol、10mol%)およびPd(PPh3)4(80.1mg、69μmol、5.0mol%)を加えた。 反応容器を排気し、窒素ガスで再充填した後、無水THF(5.0mL)、トリメチルシリルアセチレン(210μL、1.5mmol、1.1当量)および脱気したEt3N(800μL、5.5mmol、4.0当量)。 反応混合物を周囲温度で2時間撹拌し、続いてEtOAcで希釈した。 混合物をCelite(登録商標)で濾過し、濾液を飽和NH4Cl l水溶液およびブラインで洗浄した。 有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。 残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ EtOAc = 99:1~19:1)で精製し、さらに精製することなく半純粋な19を次の反応に使用した(粗収率:90%)。
【0294】
EtOH(5mL)中の粗19(410mg、1.2mmol)の溶液にNaOEt(423mg、6.2mmol、5.0当量)を加え、混合物を95℃で15時間撹拌した。周囲温度に冷却した後、混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO3水溶液およびブラインで洗浄した。 有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。 フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ EtOAc = 19:1~9:1)で精製して、淡褐色固体として20を得た(148mg、2工程にわたり54%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.94 (s, 1H), 7.55 (s, 1H), 7.32 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.16-7.14 (m, 2H), 6.55 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 2.67 (t, J = 10.7 Hz, 1H), 1.97 (dd, J = 40.2, 11.9 Hz, 4H), 1.83 (d, J = 12.3 Hz, 1H), 1.69-1.42 (m, 4H), 1.42-1.28 (m, 1H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 139.9, 134.5, 128.1, 124.4, 121.8, 118.1, 110.8, 102.4, 44.8, 35.3, 27.3, 26.4; HRMS (ESI) m/z calcd for C14H18N [M+H]+: 200.1434, found 200.1431.。
【0295】
実施例29-3:2-(5-シクロヘキシル-1H-インドール-3-イル)酢酸(15)
【0296】
【化70】
【0297】
Et2O(4mL)中の20(89.3mg、0.45mmol)の溶液に、塩化オキサリル(60.0μL、0.67mmol、1.5当量)を0℃で滴下した。混合物を周囲温度で1時間撹拌した後、Et2O/H2Oを添加して反応を停止させた。 濾過により粗α-ケト酸S4を黄色固体として得た。 それを真空で乾燥させ、さらに精製することなく次の反応に使用した。
【0298】
H2O/1,4-ジオキサン(v / v)中の粗α-ケト酸S4およびNaH2PO2・H2O(475mg、10当量)の溶液に10%Pd/C(47.7mg、10mol% = 1:5,2mL)。 混合物を100℃で9時間撹拌した。 周囲温度に冷却した後、反応混合物をCelite(登録商標)で濾過した。 濾液を1M HClおよびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。 逆相カラムクロマトグラフィー(MeCN / H 2 O = 3:7~1:1)による精製により、淡褐色固体として15を得た(33.6mg、2工程にわたって29%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 9.01 (s, 1H), 7.95 (s, 1H), 7.41 (s, 1H), 7.23 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.14-6.94 (m, 2H), 3.77 (s, 2H), 2.58 (tt, J = 11.6, 3.2 Hz, 1H), 1.86 (dd, J = 33.3, 13.4 Hz, 4H), 1.74 (d, J = 13.0 Hz, 1H), 1.62-1.32 (m, 4H), 1.26 (qt, J = 12.5, 3.4 Hz, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 177.9, 140.0, 134.8, 127.3, 123.5, 122.1, 116.2, 111.1, 107.9, 44.9, 35.3, 31.4, 27.2, 26.4; HRMS (ESI) m/z calcd for [M-H]-: 256.1343, found 256.1343.。
【0299】
実施例30:5-((3r、5r、7r)-アダマンタン-1-イル)-1H-インドール(21)
【0300】
【化71】
【0301】
実施例30-1:N-(4-((3r、5r、7r)-アダマンタン-1-イル)フェニル)アセトアミド(23)
【0302】
【化72】
【0303】
1,1,2,2-テトラフルオロエタン中にアセトアニリド(22)(2.00g、15mmol)、1-ブロモアダマンタン(3.36g、16mmol、1.1当量)および塩化亜鉛(4.03g、30mmol、2.0当量) - テトラクロロエタン(40mL)を加えた。混合物を80℃で12時間撹拌した。 混合物を周囲温度に冷却した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を減少させた。 残渣をEtOAcで希釈し、1M HClおよびブラインで洗浄した。 有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。 フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ EtOAc = 7:3~1:1)で精製して、23を白色固体(1.62g、41%)として得た。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.42 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.13 (s, 1H), 2.16 (s, 3H), 2.09 (s, 3H), 1.89 (s, 6H), 1.79-1.73 (m, 6H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 168.3, 147.8, 135.4, 125.6, 119.9, 43.3, 36.9, 36.0, 29.1, 24.7; HRMS (ESI) m/z calcd for C18H23NNaO [M+Na]+: 292.1672, found 292.1671.。
【0304】
実施例30-2:N-(4-((3r、5r、7r)-アダマンタン-1-イル)-2-ヨードフェニル)アセトアミド(24)
【0305】
【化73】
【0306】
23(500mg、1.9mmol)、NIS(440mg、2.0mmol、1.1当量)およびTsOH・H2O(35.3mg、0.19mmol、0.10当量)をMeCN(18mL)に溶解した。混合物を周囲温度で2日間撹拌し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。 残渣をEtOAcに溶解し、飽和NaHCO3水溶液およびブラインで洗浄した。 有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。 フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ EtOAc = 4:1~7:3)で精製して、淡褐色の固体(603mg、82%)として24を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.97 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.47 (s, 1H), 7.30 (dd, J = 8.6, 1.8 Hz, 1H), 2.19 (s, 3H), 2.07 (s, 3H), 1.84 (d, J = 2.4 Hz, 6H), 1.78-1.69 (m, 6H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 168.2, 149.7, 135.7, 135.3, 125.8, 122.4, 91.2, 43.0, 36.6, 35.8, 28.8, 24.6; HRMS (ESI) m/z calcd for C18H22INNaO [M+Na]+: 418.0638, found 418.0643. 。
【0307】
実施例30-3:5-((3r、5r、7r)-アダマンタン-1-イル)-1H-インドール(26)
【0308】
【化74】
【0309】
フラスコに24(503mg、1.3mmol)、CuI(I)(26.9mg、0.13mmol、10mol%)およびPd(PPh 3)4(76.7mg、64μmol、5.0mol%)を添加した。反応容器を排気し、窒素ガスで充填した後、無水THF(5mL)、トリメチルシリルアセチレン(200μL、1.4mmol、1.1当量)および脱気したトリエチルアミン(710μL、5.1mmol、4.0当量)を溶液に添加した。 反応混合物を周囲温度で2時間撹拌し、続いてEtOAcで希釈した。 混合物をCelite(登録商標)で濾過し、濾液を飽和NH4Cl水溶液およびブラインで洗浄した。 有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。 残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ EtOAc = 19:1~17:3)で精製し、さらに精製することなく半純粋な25を次の反応に用いた(粗収率:定量)。
【0310】
25(465mg、1.3mmol)の無水THF溶液(5.0mL)にフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)(1M THF溶液、1.4mL; 1.4mmol、1.1当量)を加えた。 80℃で6時間撹拌した後、混合物をEtOAcで希釈した。 有機層を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮した。 フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ EtOAc = 19:1~9:1)で精製して、26を白色固体として得た(228mg、2段階で69%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 8.06 (s, 1H), 7.61 (s, 1H), 7.35 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.28 (dd, J = 8.6, 1.7 Hz, 1H), 7.18 (t, J = 2.7 Hz, 1H), 6.52 (s, 1H), 2.11 (s, 3H), 1.99 (d, J = 2.7 Hz, 6H), 1.79 (s, 6H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 143.3, 134.2, 127.9, 124.3, 119.9, 116.4, 110.6, 102.9, 44.0, 37.1, 36.2, 29.3; HRMS (ESI) m/z calcd for C18H20N [M-H]-: 250.1601, found 250.1597.。
【0311】
実施例30-4:2-(5-((3r、5r、7r)-アダマンタン-1-イル)-1H-インドール-3-イル)酢酸(21)
【0312】
【化75】
【0313】
Et2O(2mL)中の26(64.9mg、0.26mmol)の溶液に、塩化オキサリル(35.0μL、0.39mmol、1.5当量)を0℃で滴下した。混合物を周囲温度で1時間撹拌した後、Et2O/MeOHの添加により反応を停止させた。 濾過により粗α-ケトエステルS5を黄色固体として得た。 それを真空で乾燥させ、さらに精製することなく次の反応に使用した。
【0314】
H2O/1,4-ジオキサン(v / v)中の粗α-ケトエステルS5およびNaH2PO2・H2O(274mg、10当量)の溶液に10%Pd/C(27.5mg、10mol% = 1:5,1mL)。 混合物を100℃で9時間撹拌した。 周囲温度に冷却した後、反応混合物をCelite(登録商標)で濾過した。 濾液を1M HClおよびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。 27をさらに精製することなく次の反応に使用した。
【0315】
合成手順Hに従って、粗製物27の加水分解を行った(反応時間:4時間)。 フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ EtOAc = 1:1~2:3)で精製して21を白色固体として得た(36.5mg、3工程にわたって46%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.94 (s, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.35-7.27 (m, 2H), 7.12 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 3.83 (s, 2H), 2.13 (s, 3H), 2.01 (d, J = 2.1 Hz, 6H), 1.83-1.78 (m, 6H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 178.3, 143.4, 134.4, 127.0, 123.4, 120.3, 114.3, 110.9, 107.9, 43.9, 37.1, 36.2, 31.2, 29.3; HRMS (ESI) m/z calcd for C20H22NO2 [M-H]-: 308.1656, found 308.1659.。
【0316】
試験例1:オーキシン受容体に対する結合性の評価(酵母ツーハイブリッドアッセイ)
被検化合物として、実施例で合成したオーキシン誘導体、2-(5-(ベンジルオキシ)-1H-インドール-3-イル)酢酸(MK-348:シグマアルドリッチ等から購入可能)、2-(5-(ブチルオキシ)-1H-インドール-3-イル)酢酸(RY-215:J. Biol. Chem. 2011, 286, 235)、及びオーキシン(インドール-3-酢酸)を含む各種化合物を用いて、野生型オーキシン受容体、及び変異型オーキシン受容体に対する結合性を評価した。具体的には、次のように行った。
【0317】
酵母EGY48株を、LexA-オペロンによって転写制御されるLacZ発現カセット(LexA-オペロン:LacZ レポーター)を含むプラスミド(pSH18-34)、LexA-DNA-結合ドメイン融合型のタンパク質A(野生型オーキシン受容体:配列番号1、又は野生型の79番目のアミノ酸(フェニルアラニン)をグリシンに変異させた変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G):配列番号2)の発現カセットを含むpGLex313由来のプラスミド、及びB42転写アクチベーター融合型のタンパク質B(AUX/IAAタンパク質:配列番号3)の発現カセットを含むpJG4-5由来のプラスミドで形質転換した。形質転換株は酵母生育培地(minimal SD base及び-His/-Trp/-Ura dropout supplement)からなる寒天培地のプレート上で、30℃で培養した。コロニーをピックアップし、液体SD/-His/-Trp/-Ura培地中、30℃で一晩培養し、培地をminimal SD/Gal/Raf base、-His/-Trp/-Ura dropout supplement、50 mM Na-phosphate buffer (pH 7.0)、80 mg/ml X-gal、各種濃度の被検化合物から構成される液体培地に交換した。30℃で3日間インキュベーションした後、酵母を含む培地を白色の96ウェルプレート(平底)に移し替えて、観察した。より低い濃度の被検化合物でもウェルが青色を呈する程、該被検化合物とオーキシン受容体(野生型又は変異型)との結合性がより高いと評価することができ、逆に、より高い濃度の被検化合物で初めてウェルが青色を呈する程、該被検化合物とオーキシン受容体(野生型又は変異型)との結合性がより低いと評価することができる。
【0318】
被検化合物の本明細書における名称、実施例番号、一般式(1)におけるR1、R2、n及びmについて、並びに結果について、表1に示す。表1中、「wt TIR」の濃度は、野生型オーキシン受容体を用いた場合の、ウェルが青色を呈する、被検化合物の最小濃度を示し、「mut」の濃度は、変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)を用いた場合の、ウェルが青色を呈する、被検化合物の最小濃度を示す。
【0319】
【表1】
【0320】
表1に示されるように、本試験で用いた変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)は、オーキシン(インドール-3-酢酸)に対する結合性が野生型オーキシン受容体の1/1000以下であり、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体であるといえる。既報の文献(Nature, Vol 446, 5 April 2007, pp640-645.)ではオーキシン(インドール-3-酢酸)とその受容体(TIR1)との相互作用領域について解析されており、ここでは、野生型オーキシン受容体(配列番号A)が、オーキシンインドール環中のベンゼン環と相互作用するアミノ酸は、N末端から79及び82番目のアミノ酸(フェニルアラニン)であると報告されている。上記結果は、この報告に一致するものである。
【0321】
一方、本試験に用いたオーキシン誘導体は、いずれも野生型オーキシン受容体に対する結合性がオーキシン(インドール-3-酢酸)よりも低く、且つオーキシン受容性が低減した変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)に対する結合性が、野生型オーキシン受容体に対する結合性よりも高かった。この結果より、本試験のオーキシン誘導体は、植物の内在性オーキシン受容体に対する影響をより低減した状態で、特定の組織、細胞でのみ発現させたオーキシン受容性低減型オーキシン受容体に対してより効果的に作用を及ぼすことができ、ひいてはオーキシン施用による悪影響を低減しつつ、目的の組織、細胞でのみオーキシン応答シグナルを誘導できることが示唆された。
【0322】
試験例2:植物成長調整作用の評価1(根伸長アッセイ)
変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)(配列番号B)の発現カセットを有するシロイヌナズナ種子、又は該発現カセットを有しない野生型シロイヌナズナ種子を滅菌処理して、4℃、暗所下で、数日間保存した。種子を0.5 x Murashige and Skoog (MS) 液体培地に移し、22℃、明所下、140 rpmで振盪しながら1日間インキュベーションした。被検化合物を各種濃度になるように培地に添加し、さらに1週間インキュベーションした。インキュベーション終了後、根を、その長さを比較できる状態で観察した。オーキシン応答シグナルが根において誘導されていれば、根の伸長は抑制される。結果を図1に示す。
【0323】
図1に示されるように、実施例で合成したオーキシン誘導体は、野生型のシロイヌナズナ種子からの根伸長を抑制しないが、変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)を発現するシロイヌナズナ種子からの根伸長は抑制した。このことから、実施例のオーキシン誘導体は、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体結合するのみならず、正常なオーキシン応答シグナルを誘導できることが示された。
【0324】
試験例3:植物成長調整作用の評価2(側根誘導アッセイ)
変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)(配列番号B)の発現カセットを有するシロイヌナズナ種子(5日齢)、又は該発現カセットを有しない野生型シロイヌナズナ種子(5日齢)を、被検化合物を1μMの濃度で含有する0.5 x MS プレートに播種した。40時間インキュベーション後、抱水クロラールによって種子を透明化処理してから、種子内の側根原基を観察した。オーキシン応答シグナルが誘導されていれば、側根原基の数が増加する。結果を図2に示す。
【0325】
図2に示されるように、実施例で合成したオーキシン誘導体は、野生型のシロイヌナズナ種子の側根を誘導しないが、変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)を発現するシロイヌナズナ種子の側根は誘導した。このことから、実施例のオーキシン誘導体は、オーキシン受容性低減型オーキシン受容体に結合するのみならず、正常なオーキシン応答シグナルを誘導できることが示された。
【0326】
試験例4:植物成長調整作用の評価3(側根誘導アッセイ)
変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)(配列番号B)及びGUSの融合タンパク質の発現カセット(プロモーターはGAL4応答型プロモーター)を、GAL4発現カセット(プロモーターは、木質部孔鞘細胞(Xylem pole pericycle:側根が出る細胞)特異的プロモーター)を含むシロイヌナズナ植物に導入した。得られた植物の種子(5日齢)、又は融合タンパク質発現カセットを含まず且つGAL4発現カセットを含むシロイヌナズナ植物の種子(5日齢)を用いて、試験例3と同様にアッセイを行った。結果を図3に示す。
【0327】
図3に示されるように、実施例で合成したオーキシン誘導体は、野生型のシロイヌナズナ種子の側根を誘導しないが、木質部孔鞘細胞特異的に変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)を発現するシロイヌナズナ種子の側根を誘導した。このことから、実施例のオーキシン誘導体は、内在性オーキシン受容体に基づくオーキシン応答シグナルを誘導せずに、特定の細胞でのみ発現させたオーキシン受容性低減型オーキシン受容体に作用し、該細胞でのみオーキシン応答シグナルを誘導できることが示された。
【0328】
試験例5:植物成長調整作用の評価4(根伸長アッセイ)
被検化合物として実施例30で得られた化合物(化合物21)を用いる以外は、試験例2と同様にして行った。結果を図4に示す。
【0329】
図4に示されるように、化合物21は、野生型のシロイヌナズナ種子からの根伸長を抑制しないが、変異型オーキシン受容体(TIR1 F79G)を発現するシロイヌナズナ種子からの根伸長は抑制した。
【0330】
試験例6:オーキシン受容体に対する結合性の評価(酵母ツーハイブリッドアッセイ)
化合物14、15及び21(実施例28~30)について、試験例1に準じて、変異型オーキシン受容体に対する結合性を評価した。本試験例では、LexA-DNA-結合ドメイン融合型のタンパク質Aにおける「タンパク質A」として、野生型の79番目のアミノ酸(フェニルアラニン)をアラニンに変異させた変異型オーキシン受容体(TIR1 F79A):配列番号4、及び野生型の79番目のアミノ酸(フェニルアラニン)をセリンに変異させた変異型オーキシン受容体(TIR1 F79S):配列番号5を使用した。
【0331】
結果を表2に示す。表2中、「TIR1 F79A」の濃度は、変異型オーキシン受容体(TIR1 F79A)を用いた場合の、ウェルが青色を呈する、被検化合物の最小濃度を示し、「TIR1 F79S」の濃度は、変異型オーキシン受容体(TIR1 F79S)を用いた場合の、ウェルが青色を呈する、被検化合物の最小濃度を示す。また、比較のために、TIR1 F79Gを用いた場合の結果(試験例1、表1)も示す。
【0332】
【表2】
【0333】
表2に示されるように、TIR1 F79Gに比べて、TIR1 F79A及びTIR1 F79Sの方が、本発明の化合物との結合性が高いことが分かった。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
0007125719000001.app