(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】電力システムの監視方法及びエネルギ監視システム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2020506316
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 US2018046135
(87)【国際公開番号】W WO2019032914
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-28
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520038770
【氏名又は名称】ヴェルディグリス テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VERDIGRIS TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】NASA Ames Research Park, Building 19, #1077, Mountain View, California 94035, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】チュー ジョナサン
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-018284(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109403(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190535(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0180137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J13/00
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークのプロトコルを用いた電力システムの監視方法であって、
電力イベントを含む波形データを入力として受信するステップと、
前記電力イベントに近い前記波形データのウィンドウのペアを取得するステップと、
前記波形データのウィンドウの各ペアについてハッシュを決定するステップと、
前記ウィンドウのペアの決定された各ハッシュを、既に発生したイベントのハッシュのライブラリと比較するステップと、
前記ウィンドウの各ペアの決定された各ハッシュの比較に基づいて、前記ウィンドウのペアの少なくとも1つの生波形を、前記無線ネットワークのプロトコルを用いてイベント検出システムに送信するステップと
を含む、電力システムの監視方法。
【請求項2】
前記ウィンドウのペアの少なくとも1つの生波形を、前記無線ネットワーク
のプロトコルを用いて送信するステップは、
決定されたハッシュが前記ライブラリ内の全てのハッシュと異なるとの決定に応じて、前記生波形を、前記無線ネットワークのプロトコルを用いて送信するステップを含む、請求項1に記載の電力システムの監視方法。
【請求項3】
既に発生したイベントの保存されているハッシュが、前記ウィンドウのペアの少なくとも1つの波形データの決定されたハッシュと一致するとの決定に応じて、前記既に発生したイベントの保存されているハッシュと、前記ウィンドウのペアの少なくとも1つの波形データの少なくとも1つの波形の特徴を送信するステップをさらに含む、請求項1
又は2に記載の電力システムの監視方法。
【請求項4】
前記ウィンドウのペアを取得するステップは、
前記イベントまでの第1の波形データのウィンドウを取得するステップと、
前記イベントまでの第2の波形データのウィンドウを取得するステップと
を含む、請求項1
~3のいずれか1項に記載の電力システムの監視方法。
【請求項5】
前記電力イベントは、前記波形データの統計的な変化に基づいて検出される、請求項1
~4のいずれか1項に記載の電力システムの監視方法。
【請求項6】
前記電力イベントに近い前記波形データの前記ウィンドウのペアを取得するステップは、前記ウィンドウの各ペアについて前記波形データの統計的な特徴を検出するステップを含む、請求項1
~5のいずれか1項に記載の電力システムの監視方法。
【請求項7】
前記電力イベントに近い前記波形データのウィンドウのペアを取得するステップは、ウィンドウの各ペアについて取得された全ての波形の重畳統計サンプルを生成するステップを含み、
各重畳統計サンプルは、前記ウィンドウのペアの各ウィンドウの波形データを表すハートビート信号を提供する、請求項1
~6のいずれか1項に記載の電力システムの監視方法。
【請求項8】
前記ウィンドウのペアの決定された一方のハッシュを、前記ウィンドウのペアの決定された他方のハッシュと比較するステップと、
前記ウィンドウのペアの決定された一方のハッシュと、前記ウィンドウのペアの決定された他方のハッシュとの比較に基づいて、波形の統計値を算出するステップをさらに含む、請求項1
~7のいずれか1項に記載の電力システムの監視方法。
【請求項9】
前記ウィンドウのペアの決定された一方のハッシュと前記ウィンドウのペアの決定された他方のハッシュとの比較に基づいて、算出された前記波形の統計値を、前記無線ネットワークのプロトコルを用いて、イベント検出システムに送信するステップをさらに含む、請求項8に記載の電力システムの監視方法。
【請求項10】
前記ウィンドウのペアの決定された一方のハッシュが、前記ウィンドウのペアの決定された他方のハッシュから変化していないとの決定に基づいて、前記ウィンドウのペアのうちの一方のウィンドウの波形を送信しないと決定するステップをさらに含む、請求項8
又は9に記載の電力システムの監視方法。
【請求項11】
エネルギ監視システムであって、
電力システムに接続されたセンサアレイと、
プロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
前記センサアレイから電力イベントを含む波形データを入力として受信し、
前記電力イベントに近い前記波形データのウィンドウのペアを取得し、
前記波形データの前記ウィンドウの各ペアについてハッシュを決定し、
前記ウィンドウの各ペアの決定された各ハッシュを、既に発生したイベントのハッシュのライブラリと比較し、
前記ウィンドウの各ペアの決定された各ハッシュの比較に基づいて、前記ウィンドウのペアの少なくとも1つの生波形を、無線ネットワークのプロトコルを用いてイベント検出システムに送信するように構成された
エネルギ監視システム。
【請求項12】
前記ウィンドウのペアの少なくとも1つの生波形を、前記無線ネットワークを介して送信することは、
決定されたハッシュが前記ライブラリの全てのハッシュと異なるとの決定に応じて、前記生波形を、前記無線ネットワークのプロトコルを用いて送信することを含む、請求項11に記載のエネルギ監視システム。
【請求項13】
前記プロセッサはさらに、
既に発生したイベントの保存されているハッシュが、前記ウィンドウのペアの少なくとも1つの波形データの決定されたハッシュと一致するとの決定に応じて、既に発生したイベントの保存されているハッシュと、前記ウィンドウのペアの少なくとも1つの波形データの少なくとも1つの波形の特徴を送信する
ように構成される、請求項
11又は12に記載のエネルギ監視システム。
【請求項14】
前記ウィンドウのペアを取得することは、
前記イベントまでの波形データの第1のウィンドウを取得し、
前記イベントまでの波形データの第2のウィンドウを取得することを含む、請求項
11~13
のいずれか1項に記載のエネルギ監視システム。
【請求項15】
前記電力イベントは、前記波形データの統計的な変化に基づいて検出される、請求項
11~14
のいずれか1項に記載のエネルギ監視システム。
【請求項16】
前記電力イベントに近い前記波形データの前記ウィンドウのペアを取得することは、前記ウィンドウの各ペアについて前記波形データの統計的な特徴を検出することを含む、請求項
11~15
のいずれか1項に記載のエネルギ監視システム。
【請求項17】
前記電力イベントに近い前記波形データの前記ウィンドウのペアを取得することは、前記ウィンドウの各ペアについて取得された全ての波形の重畳統計サンプルを生成することを含み、
各重畳統計サンプルは、前記ウィンドウのペアの各ウィンドウの波形データを表すハートビート信号を提供する、請求項
11~16
のいずれか1項に記載のエネルギ監視システム。
【請求項18】
前記プロセッサはさらに、
前記ウィンドウのペアの決定された一方のハッシュを、前記ウィンドウのペアの決定された他方のハッシュと比較
し、
前記ウィンドウのペアの決定された一方のハッシュと、前記ウィンドウのペアの決定された他方のハッシュとの比較に基づいて、波形の統計値を算出する
ように構成される、請求項
11~17
のいずれか1項に記載のエネルギ監視システム。
【請求項19】
前記プロセッサはさらに、
前記ウィンドウのペアの決定された一方のハッシュと、前記ウィンドウのペアの決定された他方のハッシュとの比較に基づいて、算出された前記波形の統計値を、前記無線ネットワークのプロトコルを用いて、イベント検出システムに送信する
ように構成される、請求項18に記載のエネルギ監視システム。
【請求項20】
前記プロセッサはさらに、
前記ウィンドウのペアの決定された一方のハッシュが、前記ウィンドウのペアの決定された他方のハッシュから変化していないとの決定に基づいて、前記ウィンドウのペアの一方のウィンドウの波形を送信しないと決定する
ように構成される、請求項
18又は19に記載のエネルギ監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システムに関し、特に、LTE等の無線システムを介して、波形を送信するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
関連技術
関連技術の実施形態では、スマートメータは、電気エネルギの消費を記録し、インターバルメータや使用時間メータ等の従来の電気機械式のメータに急速に取って代わりつつある。スマートメータは、従来の電気メータが提供できない機能、例えば、自動メータ読み取り、リアルタイムセンサ又は実質的にリアルタイムのセンサ、停電通知、遠隔通知、電力品質の監視等を提供できるため、様々な分野の顧客(住宅、商業、産業)にとって魅力的である。さらに、スマートメータは、メータと電力会社の間の双方向の無線通信により、エネルギ消費に関する情報を通信できるため、監視及び請求の両方を容易にすることができる。しかしながら、一般的なスマートメータは、ストラクチャ全体の電力消費(ワット数)のみ算出するように設計されている点で制限がある。
【0003】
関連技術の実施形態では、スマートメータは、電圧及び電力の測定値を生成し、これらは、波形として記録され、情報処理システムに送信される。このような波形には、イベントに関する情報も含まれていることがあるため、監視対象の電力システムに関する異常や他の問題をデータ処理システムに通知することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LTE等の無線通信システムにおける最近の進展により、スマートメータによるデータの無線通信が可能になった。しかしながら、このような無線システムの帯域幅のコストは、有線システムのコストと比べて非常に高い。特に、スマートメータによって記録された波形を、LTE等のシステムを介して無線送信するコストは非常に高い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載した実施形態は、無線通信を効率的に利用し、スマートメータによって記録された波形を、費用対効果の高い方法で情報処理システムに送信することができる波形処理及び通信システムを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、例示的な一実装形態に係るスマートメータの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、例示的な一実装形態に係る波形ディクショナリの管理情報の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、例示的な一実装形態に係るフローチャートである。
【
図4】
図4は、例示的な実施形態が適用されたシステムの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、いくつかの例示的な実施形態における使用に適した例示的なコンピュータデバイスを備えたコンピュータ環境の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本出願の図面及び例示的な実施形態の詳細について説明する。明確にするために、図の冗長な要素の参照番号及び説明は省略されている。説明で使用する用語は例であり、限定するものではない。例えば、「自動」という用語を用いる場合、本出願の実施形態を実施する当業者が所望する実装に応じて、全自動の実施形態、又は、特定の態様に係るユーザ又は管理者の制御を要する半自動の実施形態が含まれる。ユーザは、ユーザインタフェース又は他の入力手段を用いて選択でき、又は、所望のアルゴリズムによって選択できる。本明細書で説明する例示的な実施形態は、単独又は組み合わせて利用することができ、例示的な実施形態の機能は、所望の実施形態に係る任意の手段によって実現することができる。
【0008】
図1は、例示的な実施形態に係るエネルギモニタを示す。エネルギモニタは、四角形のフォームファクタを備え、また、CPU101
、センサアレイ102、ベースバンドプロセッサ103、及びメモリ104を備える通信/デジタル層100を含む。エネルギモニタの第2のレベル120からのデータは、デジタル信号の形式で
センサアレイ102に送信され、メモリ10
4に送信され、CPU10
1によって処理され、電力監視システム等の受信装置が使用するフォーマットに変換される。次いで、処理されたデータは、ベースバンドプロセッサ103によって受信装置に送信され、LTE等の無線プロトコルを用いて、ストリーミングデータ又はバッチデータとして実現することができる。
センサアレイ102から受信したデータには、特定のサンプリングレート、例えば、60ヘルツ(Hz)等で通知された周波数データ、電圧データ、電力データが含まれる。いくつかの実装形態では、代替的に、電流データを通知してよく、また、受信した電圧及び電流データに基づいて算出された電力データを通知してよい。データは、履歴データ、ストリーミングデータ、又はその両方でもよい。
【0009】
通信/デジタル層100は、プリント回路基板(PCB)110に接続され、また、当該PCBは、受信した異なる信号と、通信/デジタル層100から取得した状態に応じて、LEDを起動するように構成されたLED照明リング111を備える。
【0010】
第2のレベル120は、アナログ/デジタルコンバータ121を介して、通信/デジタル層100にデジタル信号を提供するように構成されたアナログ信号システムを備えることができる。第2のレベル120は、残りのエネルギモニタから高電圧を分離する高電圧分離部122と、電力線/電力グリッド/電力システムから電圧測定値及び他の測定値を受信するように構成された電力管理部123とを備える。コネクタ124は、電力線/電力グリッド/電力システムに接続されたセンサアレイ用のコネクタポートであり、HDMI(登録商標)コネクタポートとすることができる。
【0011】
例示的な実施形態では、記録された波形の大部分が、予想される種々の動作パラメータの範囲内である傾向を有する点において、スマートメータの動作環境を利用する。そのため、予想される波形を、波形の特定のパラメータ(平均や分散等)に基づくディクショナリ形式で表現することがある。いくつかの実施形態では、線形ソルバを用いて、波形をディクショナリと比較し、ディクショナリのエントリを、LTEを用いて、ストリーミングによってデータ処理システムに送信することができる。
【0012】
図2は、例示的な実施形態に係る波形ディクショナリの管理情報の一例を示す。例示的な実施形態では、エネルギモニタが受信すると予想される様々な波形が、ハッシュに関連付けられる。
図2のデータは、エネルギモニタのメモリ10
4に格納することができる。
【0013】
図3は、例示的な実施形態に係るフローチャートを示す。301では、エネルギモニタは、センサアレイ102から波形(例えば、電力、周波数、電圧)の形式で入力を受信する。例えば、入力は、8キロヘルツの生のADC出力である。302では、イベントの波形が、スライディングウィンドウを用いて取得される。このイベントは、ADC出力の挙動の統計的な変化を示すことがある。スライディングウィンドウの長さは、所望の実施形態に応じて調整することができる。
【0014】
303では、特徴(例えば、平均、分散等)が、各スライディングウィンドウから抽出される。換言すると、303では、スライディングウィンドウを比較できるように、スライディングウィンドウの特徴の種類が決定される。304では、エネルギモニタの各ハートビートについて、スライディングウィンドウが線形ソルバによって処理され、
図2の管理情報に基づいて波形の適切なハッシュを決定する。換言すると、処理が304に進むと、イベントが発生したと判断されたときにハートビートが追加される。これらのハートビートを用いて、そのイベントまでの間に取得された全ての波形の重畳統計サンプル(folded statistical sample)を生成し、その波形サンプルを、所定の波形の標準偏差である1つの波形モデル記述にパッケージ化する。
【0015】
スライディングウィンドウは、基本的に2つのウィンドウ(例えば、イベントの最初のウィンドウ及び最後のウィンドウ)であり、これらは、いくつかのスペースによって分離された波形を取得し、独自の統計モデルが重畳されている。最初のウィンドウ及び最後のウィンドウは互いに比較され、これらの2つのウィンドウが、所定の時間(例えば、延長された期間)において一致しない場合、現在と直近の統計的な違いが、304において、この波形のトリガとなるイベント検出である。
【0016】
この処理は、圧縮の第1の段階を示しており、データを約1万分の1に減らすことができる。さらに、第2の段階では、大きさを100分の1に減らし、これは、波形のキャッシングに相当する。したがって、最初のモデルからハートビート波形が出力された後、ハートビート波形がソルバに提供され、特定の特徴が抽出される。いくつかの例示的な実施形態では、波形の形状を特徴として使用することができ、又は、フーリエ変換による周波数のピークも、特徴として使用することができる。他の特徴又は主成分分析処理を使用してもよい。波形の識別に関する任意の特徴抽出を用いることができ、生成された波形を比較し、それらの特徴が、既に送信又は取得した波形ライブラリのハッシュと、どの程度類似するか判断することができる。
【0017】
305では、ハッシュが有効なハッシュであるか否か判断される。これら全ての特徴が十分に一致する場合、305において、当該処理は、ハッシュが基本的に有効であると判断する(Yes)。これらの全ての特徴が、既に送信して保存されたライブラリ内のいずれかと一致する場合、処理300は、306に進み、ハッシュと、既に送信した特徴の記述子を送信し、又は、通常、クラウドに送信する予定だったデータのほとんどを基本的に保存する。このように、処理は306に進み、LTE等の無線プロトコルを用いて、波形の特徴とハッシュを送信する。
【0018】
一方、ライブラリ内のいずれにも一致しない場合、新たな波形がライブラリに保存され、307で、その新たな波形がサーバに送信される。換言すると、305でNOの場合、処理300は307に進み、対応するスライディングウィンドウの生波形を送信する。
【0019】
図3の処理を採用することにより、波形とハッシュディクショナリとの比較処理に基づいて、イベント検出を容易にすることができる。検出された波形がディクショナリ内の波形と一致しない場合、その波形は、データ処理システムのオペレータが確認する必要があるイベントと見なされる。したがって、例示的な実施形態では、スライディングウィンドウの生波形を送信する必要がある場合、先行する波形の過去の特徴、生波形の情報、及び波形の特徴をデータ処理システムに転送することができる。
【0020】
このように、生波形は、常にデータ処理システムに送信する必要はないが、代わりに、対応するハッシュに基づいて圧縮することができる。LTE等のプロトコルを用いた無線通信は、長期間に亘って非常に高額になる可能性があるため、
図3に示す圧縮スキームは、エネルギモニタが送信する必要のあるデータを減らすことにより、コストを大幅に削減することができる。また、このようなスキームは、無線プロトコルで利用可能な帯域幅が制限されている場合にも役立つ。この方法で生波形を保存しようとする既存の技術は、ほぼ存在しない。
【0021】
さらに、このフローを通じて、波形が変化していない場合、エネルギモニタは、次のサイクルの送信帯域幅を節約するため、波形のハッシュを省略してもよい。例示的な実施形態では、後続のウィンドウで検出された波形が、既に送信されたハッシュから変更されていない場合、エネルギモニタは、代替的に、統計値(例えば、平均、分散、先行する波形から増加した値等)を算出し、その統計値をデータ処理センタに送信するように構成することができる。
【0022】
いくつかの関連技術は、細かなタイムスタンプのように電力を合計する場合がある。しかしながら、これらの関連技術は、所望の1つの厳密な日時(例えば、細かな電力)を単に抽出し、送信するだけである。これらの関連技術では、キャッシングが効果的ではない。
【0023】
本願の例示的な実施形態では、機械学習のためにクラウドで必要とされる特徴を保存することにより、根本的に異なるデータの定義を提供する。したがって、例示的な実施形態では、より深いレベルのデータを提供することができる。感度のレベルが異なる2段階の圧縮を提供することにより、データの統計的な特徴を保存できると共に、圧縮による伝送効率を実現することができる。
【0024】
例えば、第1の段階では、例示的な実施形態は、真の統計的サンプルを取得することができる。この段階では、イベントに境界を設けることと、イベントに対するシステムの感度に重点が置かれる。いくつかの実施形態では、イベントが検知されなかった場合、エネルギは、次のイベントに重畳され、エネルギシグネチャーのロスがないため、より低いレベルの感度が必要とされ得る。したがって、この段階では、3~5%の類似度を閾値としてもよい。この段階では、平均で10,000個の波形サンプルが、単一のハッシュ化されたサンプルに重畳される。
【0025】
第2の段階では、波形がハッシュに一致する場合、波形が破棄されるため、感度の高いハッシュ化が使用される。この場合、感度は0.5~1%とすることができる。本出願に係るシステムの例示的な実施形態では、ハッシュとヒットする波形の数が98%であるのに対し、ミスは2%である。
【0026】
他の例示的な実施形態では、波形がディクショナリのハッシュの一つに対応する場合でも、波形の特徴(例えば、平均や分散)が閾値パラメータを超えた場合、イベント検出を実行できる。波形の特徴は、ウィンドウと共に転送できるため、データ処理システムは、波形がパラメータ内であるか否か判断できる。
【0027】
さらに、波形が正確に記録され、ディクショナリ内の正しい波形のハッシュと一致するために、各エネルギモニタは、キャリブレーション処理を実行する必要があることがある。このため、メモリ104はまた、CPU101によって使用されるキャリブレーションオフセットを格納し、センサアレイ102によって提供される測定値にオフセットを提供することができる。キャリブレーションオフセットは、製造時に予めメモリ104に組み込むことができる。
【0028】
他の例示的な実施形態では、メモリ104は、最長時間未使用(LRU)形式のキャッシュで実現することができ、これにより、波形を保持し、波形を線形ソルバと比較し、ハッシュディクショナリに従って波形を圧縮することができる。このようにして、波形をリアルタイムでハッシュ化し、ストリーミング処理できる。
【0029】
図4は、例示的な実施形態が適用されたシステムの一例を示す。このシステムは、建物又はエリアの電力線に沿って配置されるエネルギモニタと、電気バス(Bで示す)とを含む。イベント検出システムは、所望の実施形態に従って任意のシステムとすることができる(例えば、コンピュータやデータセンタ等)。イベント検出システムは、電力システム内の複数のエネルギモニタを管理するように構成でき、物理的な中央処理装置(CPU)400と、データベース401と、出力インタフェース(I/F)402と、通信プロセッサ403と、入力I/F404と、短期メモリ405(キャッシュ等)とを含むことができる。データベース401は、エネルギモニタによって提供されるデータ測定値を管理するように構成された1以上のストレージデバイスとすることができる。出力I/F402は、波形やイベント等の外部出力を、イベント検出システムのオペレータに提供する。通信プロセッサ403は、エネルギモニタからネットワーク410を介してデータを受信し、初期処理を実行するインタフェースとして機能する。入力I/F404は、キーボードやタッチスクリーン、マウス等の、オペレータからの入力を受け付けるインタフェースを提供する。短期メモリ405は、エネルギモニタから送信されたデータの一時的に記憶するためのキャッシュとして機能する。
【0030】
例示的な実施形態では、CPU400は、対応する波形のハッシュと当該波形に対応する統計値を受信することにより、管理対象の各エネルギモニタからの測定値を処理する。これにより、CPU400は、無線帯域幅を消費し、かつ、非常に高額となり得るエネルギモニタに対応する全ての生波形を受信する必要がない。代替的には、CPU400は、所定の期間の波形のハッシュと波形の統計値(例えば、平均や分散等)を受信し、波形の特徴を決定することができる(例えば、エネルギモニタは、時間tにおける波形xと、平均yと、+/-z%の分散を検出する。したがって、予想されるパラメータを用いて処理する場合、すなわち、予想される波形を検出する場合、CPU400は、要約を受信することができ、エネルギモニタによるLTE等の無線プロトコルを用いた送信が可能になる。
【0031】
CPU400は、受信した波形のハッシュ及び統計値と、予想される基準値とを統計的に比較することにより、イベント検出を実行するように構成できる。波形が基準パラメータから外れる場合、オペレータのために、イベントにフラグを立てることができる。
【0032】
いくつかの例示的な実施形態では、イベント検出システムの一部の構成要素は、他の構成要素から離れて配置してもよい。さらに、いくつかの構成要素は、他の構成要素とは異なるエンティティによって管理され得る。例えば、サービスプロバイダが、或る構成要素を管理し、顧客が、他の構成要素を管理することができる。
【0033】
詳細な説明の一部は、コンピュータにおけるアルゴリズム及び処理の象徴的な表現に関するものである。
図5は、いくつかの例示的な実施形態における使用に適した例示的なコンピュータデバイス505を備えたコンピュータ環境500の一例を示す。これらのアルゴリズムの説明及び象徴的な表現は、情報処理技術分野の当業者が、その新しいアイデアの本質を他の当業者に伝えるために使用する手段である。アルゴリズムは、目的とする最終的な状態又は結果をもたらす定義された一連のステップである。例示的な実施形態では、実行されるステップは、具体的な結果を得るために、具体的な数の物理的な処理を必要とする。
【0034】
コンピュータ環境500内のコンピュータデバイス505は、1以上の処理部、コア若しくはプロセッサ510、メモリ515(例えば、RAM及び/又はROM等)、内部記憶装置520(例えば、磁気記憶装置、光学記憶装置、ソリッドステートストレージ、及び/又はオーガニックストレージ)、及び/又は入出力インタフェース525を含みことができ、これらは、情報を通信する通信機構又はバス530に接続することができ、又はコンピュータデバイス505に組み込むことができる。
【0035】
コンピュータデバイス505は、入力/インタフェース535及び出力装置/インタフェース540と通信可能に接続することができる。入力/インタフェース535及び出力装置/インタフェース540の一方又は双方は、有線インタフェース又は無線インタフェースとすることができ、また、取り外しできる。入力/インタフェース535には、入力データを提供することができるデバイス、構成要素、センサ、又は、物理的若しくは仮想的なインタフェースが含まれる(例えば、ボタン、タッチスクリーンインタフェース、キーボード、ポインティング/カーソルコントロール、マイク、カメラ、ブライユ、モーションセンサ、及び/又は光学式リーダ等)。
【0036】
出力装置/インタフェース540には、ディスプレイ、テレビ、モニタ、プリンタ、スピーカ、ブライユ等が含まれる。いくつかの例示的な実施形態では、入力/インタフェース535(例えば、ユーザインタフェース)及び出力装置/インタフェース540は、コンピュータデバイス505に組み込み、又は物理的に接続することができる。他の例示的な実施形態では、他のコンピュータデバイスが、コンピュータデバイス505のために、入力/インタフェース535及び出力装置/インタフェース540として機能し、又は、これらの機能を提供してもよい。これらの構成要素には、ユーザがAR環境と相互作用することが可能な周知のARハードウェア入力が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
コンピュータデバイス505の例には、高度なモバイル装置(例えば、スマートフォン、車両及び他の機械に設置された装置、人間及び動物によって運ばれる装置等)、モバイル装置(例えば、タブレット、ノートブック、ラップトップ、パーソナルコンピュータ、ポータブルテレビ、ラジオ等)、及び、携帯用として設計されていない装置(デスクトップコンピュータ、サーバ装置、他のコンピュータ、インフォメーションセンタ、1以上のプロセッサが組み込まれ及び/又は接続されたテレビ、ラジオ等)が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
コンピュータデバイス505は、同じ構成又は異なる構成を有する1以上のコンピュータデバイスを含む、ネットワーク接続された任意の数の構成要素、装置、及びシステムと通信するために、(例えば、入出力インタフェース525を介して)外部記憶装置545及びネットワーク550に通信可能に接続することができる。コンピュータデバイス505又は任意の接続されたコンピュータデバイスは、サーバ、クライアント、シンサーバ、汎用マシン、専用マシン、又は別のラベルとして機能し、これらの機能を提供し、又は、これらとして参照される。
【0039】
入出力インタフェース525には、少なくともコンピュータ環境500の全ての接続された構成要素、デバイス、及びネットワークと情報を通信するための任意の通信、又は入出力プロトコル若しくは標準(例えば、イーサネット(登録商標)、802.11xs、ユニバーサルシステムバス、WiMAX(登録商標)、モデム、及び携帯ネットワークプロトコル等)を用いた有線インタフェース及び/又は無線インタフェースが含まれるが、これらに限定されない。ネットワーク550は、任意のネットワーク又はネットワークの組み合わせとすることができる(例えば、インターネット、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワーク、電話ネットワーク、携帯電話ネットワーク、衛星ネットワーク等)。
【0040】
コンピュータデバイス505は、一時的な媒体及び非一時的な媒体を含むコンピュータが使用可能な媒体又はコンピュータ可読の媒体を使用し、及び/又はこれらを用いて通信することができる。一時的な媒体には、伝送媒体(金属ケーブル、光ファイバ等)、信号、搬送波等が含まれる。非一時的な媒体には、磁気媒体(ディスクやテープ等)、光学媒体(CD ROM、デジタルビデオディスク、ブルーレイディスク等)、ソリッドステートメディア(RAM、ROM、フラッシュメモリ、ソリッドステートストレージ等)、及び他の不揮発性ストレージ又はメモリが含まれる。
【0041】
コンピュータデバイス505を用いて、いくつかの例示的なコンピュータ環境の技術、方法、アプリケーション、処理、又はコンピュータ実行可能命令を実行することができる。コンピュータ実行可能な命令は、一時的な媒体から読み出され、非一時的な媒体に格納され、非一時的な媒体から読み出すことができる。実行可能命令は、1以上のプログラミング言語、スクリプト言語、及び機械言語(C、C++、C#、Java(登録商標)、VisualBasic(登録商標)、Python、Perl、JavaScript(登録商標)等)を用いて生成することができる。
【0042】
1以上のプロセッサ510は、現実の環境又は仮想環境において、任意のオペレーティングシステム(OS)(図示せず)の制御下で実行できる。1以上のアプリケーションを配置することができ、1以上のアプリケーションは、論理部555と、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)部560と、入力部565と、出力部570と、ウィンドウ取得部575と、ハッシュ化部580と、ハッシュ比較部585と、異なる機能部が互いに通信し、OSと通信し、及び他のアプリケーション(図示せず)と通信するための機能部の間の通信機構595とを備える。
【0043】
例えば、ウィンドウ取得部575、ハッシュ化部580及びハッシュ比較部585は、
図3に示す1以上の処理を実行し、
図1及び
図4に示すシステムの一部として機能し得る。説明した機能部及び構成要素は、設計、機能、構成又は実装を変更することができ、上述した説明に限定されない。
【0044】
いくつかの例示的な実施形態では、API部560によって情報又は実行命令が受信された場合、1以上の他の機能部(ウィンドウ取得部575、ハッシュ化部580、及びハッシュ比較部585等)と通信してもよい。例えば、ウィンドウ取得部575は、受信した波形データを解析して、1つのイベントを含むウィンドウの1つのペア又はウィンドウの複数のペアを得ることができる。これらのウィンドウは、ハッシュ化部580に提供され、各ウィンドウのハッシュが生成される。さらに、各ウィンドウのハッシュは、ハッシュ比較部585に提供され、生成されたハッシュと、ディクショナリのライブラリに格納されている既に発生したイベントのハッシュと比較される。さらに、ハッシュ比較部585は、各ペアの各ウィンドウのハッシュを互いに比較することもできる。出力部570は、比較結果に基づき、波形データ及び/又はハッシュを、無線通信プロトコルを用いて送信することができる。
【0045】
いくつかの例では、論理部555は、機能部の間の情報の流れを制御するように構成でき、また、上述した実施形態のAPI部560、入力部565、ウィンドウ取得部575、ハッシュ化部580、及びハッシュ比較部585によって提供されるサービスを管理するように構成できる。例えば、1以上の処理又は実装のフローを、論理部555のみにより、又はAPI部560と協働して制御してもよい。
【0046】
いくつかの例示的な実施形態を示して説明してきたが、これらの例示的な実施形態は、本明細書に記載した内容を当業者に伝えるためのものである。本明細書で説明した内容は、説明した実施形態に限定されるものではなく、様々な態様で実施できることに留意すべきである。本明細書に記載した内容は、具体的に定義又は説明された事項を採用することなく、又は、説明されていない他の要素若しくは事項、若しくは異なる要素又は事項を用いて実施することができる。添付した特許請求の範囲及びこれに均等なものによって定義されるように、本明細書に記載した内容から逸脱することなく、これらの例示的な実施形態において変更が可能であることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0047】
特に断らない限り、上記説明から明らかなように、本明細書全体を通して、「処理」、「演算」、「算出」、「決定」、「表示」等の用語を用いた説明には、コンピュータシステム又は他の情報処理装置の動作及び処理が含まれることが理解され、コンピュータシステム又は他の情報処理装置は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理(電子)量として表される情報を処理及び変換して、コンピュータシステムのメモリ、レジスタ若しくは他の情報記憶装置、通信装置、又は表示装置内の物理量として同様に表される他の情報に変換する。
【0048】
例示的な実施形態は、本明細書に記載した処理を実行する装置にも関連する。この装置は、所望の目的のために特別に構築してもよく、また、この装置には、1以上のコンピュータプログラムによって選択的に起動又は再構成される1以上の汎用コンピュータが含まれ得る。そのようなコンピュータプログラムは、コンピュータ可読の記憶媒体又はコンピュータ可読の信号媒体等のコンピュータ可読の媒体に格納することができる。コンピュータ可読の記憶媒体には、光ディスク、磁気ディスク、ROM、RAM、ソリッドステートデバイス及びドライブ、又は、電子情報の保存に適した他の種類の有形媒体又は非一時的な媒体が含まれるが、これらには限定されない。コンピュータ可読の信号媒体には、搬送波等の媒体が含まれる。本明細書で開示されたアルゴリズム及び表示は、特定のコンピュータ又は他の装置に固有のものではない。コンピュータプログラムには、所望の実施形態の処理を実行する命令を含む純粋なソフトウェアの実装が含まれ得る。
【0049】
様々な汎用システムは、本明細書に記載した実施形態に係るプログラム及びモジュールと共に用いることができ、または、所望の方法のステップを実行するための専用の装置を構築することが有用な場合もある。さらに、例示的な実施形態は、特定のプログラミング言語に関連して説明していない。様々なプログラミング言語を用いて、本明細書で説明した例示的な実施形態の教示を実現できることは理解できるであろう。プログラミング言語の命令は、1以上の処理装置、例えば、中央処理装置(CPU)、プロセッサ、又はコントローラによって実行してもよい。
【0050】
本技術分野で知られているように、上述した処理は、ハードウェア、ソフトウェア、又はソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実行することができる。例示的な実施形態の様々な態様は、回路及び論理装置(ハードウェア)を用いて実施することができる一方、他の態様は、機械可読媒体に格納された命令(ソフトウェア)を用いて実施することができ、プロセッサによって実行されると、プロセッサは、本出願の実施形態を実現する方法を実行する。さらに、本出願のいくつかの例示的な実施形態は、ハードウェアのみによって実施することができる一方、他の例示的な実施形態は、ソフトウェアのみによって実施できる。さらに、説明した様々な機能は、単一の機能部によって実現することができ、または、様々な方法で多数の構成要素に機能を分散してもよい。ソフトウェアによって実行される場合、これらの方法は、汎用コンピュータ等のプロセッサが、コンピュータ可読の媒体に格納された命令に基づいて実行することができる。これらの命令は、必要に応じて、圧縮し、及び/又は暗号化して媒体に保存することができる。
【0051】
さらに、本出願の他の実施形態は、本出願の教示に関する本明細書及び実施形態を考慮することによって当業者に明らかであろう。説明した例示的な実施形態の様々な態様及び/又は構成要素は、単独で使用し、又は組み合わせて使用することができる。本明細書及び上記実施形態は、単なる例示であり、本出願の真の範囲及び精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。