(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】送風手段および空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20220818BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20220818BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20220818BHJP
【FI】
F04D29/28 J
F04D29/44 Q
F24F7/003
(21)【出願番号】P 2018129165
(22)【出願日】2018-07-06
(62)【分割の表示】P 2018124018の分割
【原出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-04-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月15日にプレスリリースゼロという情報公開ウェブサイト(http://pressrelease-zero.jp/archives/129191)で公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月15日に千葉テレビ放送の”ナイツのHIT商品会議室”という番組で公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月19日付け岩手日報朝刊で公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月20日付けデーリー東北朝刊で公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月22日付け日本経済新聞朝刊で公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年7月4日付け日刊工業新聞朝刊で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】591269712
【氏名又は名称】アンデス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】是川 天一
(72)【発明者】
【氏名】細川 進
【審査官】大瀬 円
【協議】
この出願については、下記の出願人と特許法第39条の規定による協議が成立した。
協議により定めた1の特許出願人以外の出願人
上記の出願人の出願に係る発明の発明者
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-042632(JP,A)
【文献】実開昭54-119005(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0068650(KR,A)
【文献】アンデスオンラインショップ,ANDES バイオミクロンサークル BM-H701A,YouTube,2018年06月21日,https://www.youtube.com/watch?v=Cx0M9FE_rR8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 29/28
F24F 7/003
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンの回転により、ファンの外周より空気を吹き出す送風手段において、
ファンの外周を囲む位置に、ファンの回転軸を中心とする放射状に複数配置され、ファンの外周より吹き出された空気を、その旋回流と同一方向に旋回させながらファンの回転軸方向に導く螺旋状の通風路を備え
、
前記ファンは、その回転軸方向の一端面を成し、円周方向に一定間隔で並ぶ複数の羽根の一端が接続された主壁を備え、
前記主壁に複数のネジ孔が設けられ、各ネジ孔の何れかに前記ファンの偏重心を修正するバランス調整用のネジが螺合され、
前記複数のネジ孔は、
前記主壁の外面側で外周縁に沿って円周方向に配列され、かつ前記複数の羽根の一端に沿って配置されると共に、
前記主壁の内面側で前記外面側のネジ孔が並ぶ周半径よりも小さな同心円上に沿った円周方向にも配列されたことを特徴とする送風手段。
【請求項2】
前記通風路は、ファンの外周に連通する上流側が、ファンの外周より空気が吹き出される方向に沿って傾斜して設けられたことを特徴とする請求項1に記載の送風手段。
【請求項3】
前記通風路は、その上流側から下流側にかけて断面積が連続的に小さくなることを特徴とする請求項1または2に記載の送風手段。
【請求項4】
前記通風路を形成するガイド部材を備え、
前記ガイド部材は、ファンの回転軸方向の一端面を覆うドーム状の内殻部と、ファンの外周から内殻部の頂部を除く外周を取り囲む筒状の外殻部とから成り、
前記内殻部の外周と前記外殻部の内周との間の環状の空間において、内殻部および外殻部の少なくとも一方に設けられ、互いに対向する外周と内周が近接する方向に出っ張る複数のリブにより、前記通風路が区画形成されたことを特徴とする請求項1,2または3に記載の送風手段。
【請求項5】
縦型の筒状に形成されたケースの内部に、請求項1から
4の何れかに記載の送風手段と、空気中の塵挨を捕集する集塵手段とが収納された空気清浄装置において、
前記ケースには、前記集塵手段に送る空気を外部から吸い込む吸込部と、該吸込部より上方で前記集塵手段を通過した空気を外部に吹き出す吹出部とが設けられ、
前記送風手段は、前記ケースの中心軸に沿って前記集塵手段と前記吹出部との間に配置されたことを特徴とする空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンの回転により、ファンの外周より空気を吹き出す送風手段、および該送風手段を備えた空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気の流れを発生させる送風手段には様々な種類があり、送風手段は各種の装置に用いられている。例えば、空気清浄装置を構成する送風手段には、軸流タイプのファンや遠心タイプのファンが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の空気清浄装置では、空気を本体ケーシング内に吸い込んで集塵用のフィルターを通過させる送風手段として、例えば、遠心タイプのシロッコファンも採用されている。
【0003】
ここでシロッコファンは、本体ケーシングの円筒内で回転軸が円筒中心上に配置され、ファンの外周の周囲が、そのままケーシング内壁に沿って上方に連通する空気流通路となっていた。そのため、シロッコファンが回転すると、ファンの外周より吹き出された空気は、ケーシング内壁にぶつかって上方へ略直角に向きを変えて送風される。このようなファンとは別に、空気を積極的に排出するための排気用のファンも別途設けられていた。
【0004】
また、一般にシロッコファンでは、その回転軸に対する質量分布に不揃いがあると偏重心(アンバランス)となり、シロッコファンの回転時に余計な振動が生じてしまう。そのため、ファンの偏重心を修正する必要があった。この修正の仕方として、例えば、ファンを構成する各羽根にバランサーを取り付けて、質量不足の部分に重さを追加することが知られている(例えば、特許文献2参照。)。ここでバランサーは、金属板を羽根の断面形状に沿ってU字型に折り曲げたクリップ構造であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-217580号公報
【文献】特開2006-17057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の空気清浄装置におけるシロッコファンでは、吹き出された後の空気の流れについては特に考慮されていなかった。すなわち、シロッコファンの外周より側方(遠心方向)に吹き出された空気は、旋回しながら本体ケーシングの円筒内で方向性のない内壁にそのままぶつかり、流れ方向が大きく変えられて内壁に沿って上方へ向かっていた。
【0007】
このような本体ケーシング内における空気の流れでは、抵抗が大きく流速は減殺され、またフィルターによる圧力損失もあるため、シロッコファンだけではフィルターを通過した空気を効率良く上方へ送って循環させることができなかった。従って、前述のシロッコファンだけでは性能に直結する風量を確保できないため、もう一つ別に排出用ファンも設けなければならず、コスト高の要因となっていた。
【0008】
また、前述した特許文献2に記載のバランサーでは、羽根の表面上に出っ張る構成であるため、羽根の表面に沿った空気の流れの抵抗となって気流が乱れ、送風効率の低下を招いてしまう。さらに、バランサーを羽根の内側端縁に取り付けるため、限られたスペース内での取り付け作業が面倒であった。そこで、バランサーの取り付け作業が容易な羽根の外側端縁に取り付けることも考えられる。しかしながら、バランサーの取り付けは、クリップ構造の弾発的な挟む力に頼るものであり、遠心力によって外れる虞があった。
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題点に着目してなされたものであり、ファンの外周より吹き出された空気をファンの回転軸方向に効率良く送ることができ、各種装置で必要な風量を確保することが可能となり、コスト高を招くことなく十分な性能を発揮させることができ、また、ファンの偏重心の修正を、送風効率の低下を招くことなく容易かつ確実に行うことができる送風手段および空気清浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]ファン(110)の回転により、ファン(110)の外周より空気を吹き出す送風手段(100)において、
ファン(110)の外周を囲む位置に、ファン(110)の回転軸を中心とする放射状に複数配置され、ファン(110)の外周より吹き出された空気を、その旋回流と同一方向に旋回させながらファン(110)の回転軸方向に導く螺旋状の通風路(130)を備え、
前記ファン(110)は、その回転軸方向の一端面を成し、円周方向に一定間隔で並ぶ複数の羽根(120)の一端が接続された主壁(112)を備え、
前記主壁(112)に複数のネジ孔(112d,112e)が設けられ、各ネジ孔(112d,112e)の何れかに前記ファン(110)の偏重心を修正するバランス調整用のネジが螺合され、
前記複数のネジ孔(112d,112e)は、
前記主壁(112)の外面側で外周縁に沿って円周方向に配列され、かつ前記複数の羽根(120)の一端に沿って配置されると共に、
前記主壁(112)の内面側で前記外面側のネジ孔(112e)が並ぶ周半径よりも小さな同心円上に沿った円周方向にも配列されたことを特徴とする送風手段(100)。
【0011】
[2]前記通風路(130)は、ファン(110)の外周に連通する上流側が、ファン(110)の外周より空気が吹き出される方向に沿って傾斜して設けられたことを特徴とする前記[1]に記載の送風手段(100)。
【0012】
[3]前記通風路(130)は、その上流側から下流側にかけて断面積が連続的に小さくなることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の送風手段(100)。
【0013】
[4]前記通風路(130)を形成するガイド部材(140)を備え、
前記ガイド部材(140)は、ファン(110)の回転軸方向の一端面(112)を覆うドーム状の内殻部(141)と、ファン(110)の外周から内殻部(141)の頂部を除く外周を取り囲む筒状の外殻部(151)とから成り、
前記内殻部(141)の外周と前記外殻部(151)の内周との間の環状の空間において、内殻部(141)および外殻部(151)の少なくとも一方に設けられ、互いに対向する外周と内周が近接する方向に出っ張る複数のリブ(154)により、前記通風路(130)が区画形成されたことを特徴とする前記[1],[2]または[3]に記載の送風手段(100)。
【0016】
[5]縦型の筒状に形成されたケース(11)の内部に、前記[1]から[4]の何れかに記載の送風手段(100)と、空気中の塵挨を捕集する集塵手段(20)とが収納された空気清浄装置(10)において、
前記ケース(11)には、前記集塵手段(20)に送る空気を外部から吸い込む吸込部(14)と、該吸込部(14)より上方で前記集塵手段(20)を通過した空気を外部に吹き出す吹出部(15)とが設けられ、
前記送風手段(100)は、前記ケース(11)の中心軸に沿って前記集塵手段(20)と前記吹出部(15)との間に配置されたことを特徴とする空気清浄装置(10)。
【0017】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の送風手段(100)によれば、ファン(110)の外周より吹き出された空気を、その旋回流と同一方向に旋回させながらファン(110)の回転軸方向に導く螺旋状の通風路(130)を備える。この通風路(130)によって、ファン(110)の外周から吹き出された空気を、その旋回流の勢いを残しながらほぼそのままの風量で回転軸方向に効率良く送ることができる。このような送風手段(100)によれば、空気の流れの途中での圧力損失を防いで送風効率を高めることができ、各種装置で必要な風量を確実に確保することができる。
また、ファン(110)の偏重心を修正するネジを、ファン(110)の羽根(120)ではなく回転軸方向の一端面を成す主壁(112)に設けた複数のネジ孔(112d,112e)の何れかに螺合させる。これにより、従来の羽根に設けるバランサーのように、空気の流れの抵抗となって乱流を生じさせることがなく、また遠心力の影響も軽減される。
ファン(110)の主壁(112)は外側に露出する部位であり、外部よりネジ止めの作業を容易に行うことができる。しかも、バランサーであるネジはネジ孔(112d,112e)に螺合させるため、その取り付け作業自体も容易であり、確実に固定されて外れる可能性も低減され、脱落したり位置ズレする虞もない。
また、ネジ孔(112d,112e)を、主壁(112)の外面側で外周縁に沿って円周方向に配列させ、かつ複数の羽根(120)の一端に沿って配置すると共に、主壁(112)の内面側で前記外面側のネジ孔(112e)が並ぶ周半径よりも小さな同心円上に沿った円周方向にも配列させたことにより、ファン(110)の広い範囲で高精度なバランス調整が可能となる。
【0018】
前記[2]に記載の送風手段(100)によれば、前記通風路(130)の上流側を、ファン(110)の外周より空気が吹き出される方向に沿って傾斜させる。これにより、乱流を発生させることなく、よりいっそう効率良く空気を送ることができる。
【0019】
前記[3]に記載の送風手段(100)によれば、通風路(130)の断面積を、上流側から下流側にかけて連続的に小さくしている。このように、通風路(130)が上流側から下流側に向かって絞られることにより、通風路(130)を流れる空気は徐々に集中して風速が高まり、さらに空気の送風効率を高めることができる。
【0020】
前記[4]に記載の送風手段(100)によれば、通風路(130)はガイド部材(140)によって形成される。ガイド部材(140)は、ドーム状の内殻部(141)と、ファン(110)の外周から内殻部(141)の外周を取り囲む筒状の外殻部(151)とから成る。内殻部(141)の外周と外殻部(151)の内周との間の環状の空間において、複数のリブ(154)により通風路(130)が区画形成される。
【0021】
複数のリブ(154)は、内殻部(141)および外殻部(151)の少なくとも一方において、互いに対向する外周と内周が近接する方向に出っ張るように設ける。このように2つの部材を組み合わせる構成により、複雑な形状の通風路(130)であっても形成することが可能となる。ここでリブ(154)は、例えば、内殻部(141)や外殻部(151)の周壁の一部をそのまま出っ張らせた凹凸形状に一体成形すれば容易に設けることができる。
【0025】
前記[5]に記載の空気清浄装置(10)によれば、送風手段(100)のファン(110)が回転すると、ケース(11)の吸込部(14)より外部の空気が取り込まれる。ケース(11)内において空気は、集塵手段(20)を通過することで塵埃が捕集され、送風手段(100)を経由した後、ケース(11)の吹出部(15)より外部に吹き出される。
【0026】
このような空気清浄装置(10)において、前記送風手段(100)を用いたことにより、ファン(110)の外周より吹き出された空気を、その旋回流の勢いを残しながらほぼそのままの風量で、吹出部(15)に向けて回転軸方向に効率良く送ることができる。従って、空気清浄装置(10)で必要な風量を、一つの送風手段(100)だけで確保することが可能となり、十分な空気浄化能力を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る送風手段によれば、ファンの外周より吹き出された空気を、その旋回流の勢いを残しながらほぼそのままの風量で、ファンの回転軸方向に効率良く送ることができる。従って、各種装置で必要な風量を確保することが可能となり、コスト高を招くことなく十分な性能を発揮させることができる。また、ファンの偏重心の修正を、送風効率の低下を招くことなく容易かつ確実に行うことができる。
【0028】
また、本発明に係る送風手段を備えた空気清浄装置によれば、前記送風手段を用いたことにより、ファンの外周より吹き出された空気を、その旋回流の勢いを残しながらほぼそのままの風量で、吹出部に向けて回転軸方向に効率良く送ることができる。従って、空気清浄装置で必要な風量を、一つの送風手段だけで確保することが可能となり、コスト高を招くことなく十分な空気浄化能力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置の前面カバーを外した状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置を示す背面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置を示す右側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置を示す底面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置の操作パネルを拡大して示す平面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置を拡大して示す縦断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置で前面カバーを外す動作を説明する斜視図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置で内部にフィルターを挿入する動作を説明する斜視図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置のガード部材を拡大して示す斜視図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置のガード部材を拡大して示す平面図である。
【
図14】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置のガード部材を拡大して示す縦断面図(
図13中のXIV-XIV線断面図)である。
【
図15】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置のケースを外した状態を示す斜視図である。
【
図16】本発明の実施の形態に係る空気清浄装置のケースとフィルターを外した状態を示す斜視図である。
【
図17】本発明の実施の形態に係る送風手段を示す斜視図である。
【
図18】本発明の実施の形態に係る送風手段を示す平面図である。
【
図19】本発明の実施の形態に係る送風手段を示す縦断面図(
図18中のXIX-XIX線断面図)である。
【
図20】本発明の実施の形態に係る送風手段のうち外殻部を透過させて示す斜視図である。
【
図21】本発明の実施の形態に係る送風手段のファンを示す斜視図である。
【
図22】本発明の実施の形態に係る送風手段のファンを示す側面図である。
【
図23】本発明の実施の形態に係る送風手段のファンを示す縦断面図(
図22中のXXIII-XXIII線断面図)である。
【
図24】本発明の実施の形態に係る送風手段のファンを示す平面図である。
【
図25】本発明の実施の形態に係る送風手段のファンを示す底面図である。
【
図26】本発明の実施の形態に係る送風手段のファンの羽根の位置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施の形態を説明する。
本実施の形態に係る送風手段100は、ファン110の回転により、ファン110の外周より空気を吹き出すものである。かかる送風手段100は、各種の装置に用いることができるものであるが、本実施の形態では、空気中の塵挨を捕集する空気清浄装置10に適用した場合を例にして説明する。
【0031】
<空気清浄装置10の概要>
図1~
図7に示すように、空気清浄装置10は、縦型の円筒状に形成されたケース11の内部に、送風手段100や集塵手段等の関連部品を含む本体が収納されて構成されている。本実施の形態に係る空気清浄装置10は、主として一般家庭で用いられるものであり、全体的にコンパクトな大きさに構成されているが、商業施設等で用いる業務用の場合には大型化して構成してもかまわない。
【0032】
ケース11は、上下に2分割された下部ケース12と上部ケース13とが組み合わされて成る。
図10に示すように、下部ケース12のうち円周方向の一区画(略半周分)は、その上下端に亘り開閉可能な前面カバー12aとして取り外し可能に構成されている。
図3に示すように、前面カバー12aの両端には取っ手12bが設けられており、この取っ手12bを掴み手前に引くことで、前面カバー12aを本体から外すことができる。前面カバー12aの両端内側にある穴(図示せず)に対して、本体側の両端に設けられたクリップ12cが着脱自在であり、このクリップ12cと穴との係合によって前面カバー12aは固定される。
【0033】
ケース11は全体的に円筒状であるが、より詳しくは、下部ケース12の下端より上部ケース13の上端にかけて、水平方向の円形横断面が緩やかに縮径した砲弾形状となっている。特に上部ケース13では、その下端より上端にかけて見た目でも分かる程度に縮径した形状となっている。このようなケース11の形状により、コンパクトな印象を与えるデザインとなっている。なお、ケース11の材質として、下部ケース12は、例えば合成樹脂で形成され、上部ケース13も、例えば合成樹脂で形成される。
【0034】
下部ケース12には、外部から空気を吸い込む吸込部14が設けられている。また、上部ケース13には、空気を外部に吹き出す吹出部15が設けられている。後述する送風手段100の駆動によって、吸込部14から外部の空気がケース11の内部に吸い込まれる。ケース11の内部で空気は、後述する集塵手段を通過することで浄化された後、吹出部15から外部に吹き出される。このようにケース11の内部で空気は、吸込部14から吹出部15に向かって流れてその途中で浄化される。
【0035】
吸込部14は、下部ケース12のほぼ全域に亘って多数設けられた小孔14aから成る。ここで小孔14aは密な配置で円形にパンチングされており、下部ケース12は網目状に形成されている。このような吸込部14によれば、空気の吸込面積をより広く確保することができ、空気抵抗も少ない。また、吸込部14自体が、その小孔14aの径よりも大きい異物の侵入を防ぐフィルターの役目も果たす。なお、吸込部14の具体的な形態は、多数の円形の小孔14aのパンチングに限られることなく、他に例えば、六角形の小孔を前後左右に密に並べて穿設したハニカムパンチングとしたり、あるいは、細幅状のスリットを多数並べるようにして構成しても良い。
【0036】
吹出部15は、上部ケース13の上端の周縁に沿って連設された多数のスリット溝15aから成る。スリット溝15aのある上部ケース13の上端側は、別体として後付けされたドーナツ状のガード部材13aであり、ガード部材13aだけ例えば金属により形成すると良い。
図12~
図14に示すように、ガード部材13aは、その外周縁より上方に立ち上がり、中央開口に向かい略水平に少しだけ延出してから、さらに中央開口に向かって斜め下方に傾斜するように形成されている。
【0037】
各スリット溝15aは、ガード部材13aの外周縁から内周縁にかけて、吹き出される空気の旋回流に沿った方向に湾曲しながら斜めに延びる状態で密に並設されている。各スリット溝15aは、それぞれ途中が随所でリブにより分断されており、ガード部材13a全体としての強度が確保されている。なお、吹出部15の具体的な形態は、多数の湾曲したスリット溝15aに限られることなく、他に例えば、多数の小孔を空気の旋回流に沿った方向に密に並べて構成しても良い。
【0038】
図11に示すように、下部ケース12の下端は、床面に載置する本体の台座16上に取り付けられている。台座16は円板状に形成されており、台座16の周縁には、本体の下部フレーム17が下部ケース12の内側に沿って立設されている。また、台座16の一端には、電源コードの差込口16a(
図4参照)が設けられている。この台座16上の内部空間に集塵手段を成すフィルター20が収納されている。フィルター20は円筒状に形成されており、前記吸込部14から吸い込まれた空気が外周側より内周側に向けて通過するときに空気中の塵埃を捕集するものである。ここで塵挨とは、綿ゴミ、糸屑、その他、除去されるべき粒子を広く含むものである。
【0039】
フィルター20は、例えば、不織布や樹脂製の網目状のシート等から円筒状に形成されており、その上端と下端はフランジ21,22で閉じられている。フィルター20の上端フランジ21にある中央開口21aは、後述する連通部材30を介して送風手段100と連通する。一方、フィルター20の下端フランジ22にある中央開口(図示せず)は、台座16の上面に対接して閉じられている。
図11に示すように、フィルター20は、下部ケース12の前面カバー12aを取り外した状態で、ケース11の内部に出し入れ可能である。なお、フィルター20は、目詰まりを防ぐために定期的に清掃する必要があり、劣化した場合には新品と交換される。
【0040】
空気清浄装置10における集塵手段は、前記フィルター20だけに限らず、他に電気集塵機や脱臭フィルター等を組み合わせても良い。電気集塵機は、前記フィルター20で捕集しきれなかった細かな塵埃を放電により帯電させて、帯電した塵埃を吸着するものである。脱臭フィルターは、空気中の臭気成分を吸着して分解する触媒を含有させたフィルターである。さらに、集塵手段には必要に応じて、光触媒ユニット、マイナスイオン発生機、紫外線を照射する殺菌灯等も付加すれば、空気の脱臭・除菌効果を高めることができる。
【0041】
図9に示すように、ケース11の内部の本体において、フィルター20の収納空間の上側には略筒状の連通部材30が配設されている。連通部材30の下端開口は、フィルター20の上端フランジ21にある中央開口21aと対接して連通している。また、連通部材30の上側に送風手段100が配設されている。連通部材30の上端開口は、送風手段100の後述するファン110と連通している。送風手段100は、吸込部14から外部の空気を吸い込み、かつ吹出部15から清浄した空気を吹き出すための空気の流れを発生させるものである。
【0042】
<送風手段100について>
本発明の根幹を成す送風手段100は、ファン110と、ファン110を回転させるモーター101の他、ファン110の回転により吹き出された空気を導く通風路130を形成するガイド部材140を備えている。本実施の形態では、送風手段100は遠心送風機として構成されており、ファン110は、円周方向に並ぶ複数の羽根120を備えた遠心式ファンである。特にファン110は、遠心式ファンのうち複数の羽根120がそれぞれ回転方向と逆方向を向くように構成されており、静圧が高く大風量のターボファンに相当する。
【0043】
図21~
図26に示すように、ファン110は、円周方向に一定間隔で並ぶ複数の羽根120がケーシング111に支持されている。ケーシング111は、ファン110の回転軸方向の一端面を成し、各羽根120の一端が周方向に立設された主壁112と、ファン110の回転軸方向の他端面を成して主壁112と対向し、各羽根120の他端が周方向に接続された隔壁113とから成る。主壁112は、その中央壁部112aに向かって内側に凹むように傾斜する略漏斗状に形成されている。隔壁113は、その中央開口113aに向かって下方に傾斜する略漏斗状に形成されている。ここで隔壁113の中央開口113aはファン吸込口となり、前記連通部材30の上端開口と連通接続される。
【0044】
主壁112の中央壁部112aの中心には、モーター101の回転軸102を固定するためのボス状の固定部112bが設けられている。また、中央壁部112aには、固定部112bを中心として放射状に延びる補強用のリブ112cが設けられている。さらに、中央壁部112aには、回転軸を中心とする周方向に並ぶ複数のネジ孔112dが設けられている。
図9に示すように、主壁112は、全体的には漏斗状に内側に凹んでおり、この凹みの部分にモーター101の一部が収納される。なお、ファン110は、例えば合成樹脂で形成されている。
【0045】
図22,
図24~
図26に示すように、主壁112の中央壁部112aに設けられたネジ孔112dは、ファン110の偏重心を修正するバランス調整用のネジを螺合させるものである。各ネジ孔112dは、回転軸を中心として周方向に等間隔で並ぶように配列している。詳しく言えばネジ孔112dは、中央壁部112aの内面側から外面側へと上方に向かって回転軸方向と平行に突出したボスに設けられている。ここでネジ孔112dの一端は中央壁部112aの内面側に開口し、他端はボス内で閉塞されている。
【0046】
ネジ孔112dに対して図示省略したネジは、ケーシング111の内側からネジ止めされる。よって、ネジは中央壁部112aの内面側にはほとんど突出しないため、空気の流れの抵抗とならず乱流を生じさせることもない。ネジの材質は、特に限定されるものではないが、バランスの微修正を行う場合には、アルミニウム等の比重の小さな金属製のネジを用いれば良く、逆に大きなバランス修正を行う場合には、鉄やステンレス等の比重の大きな金属製のネジを用いれば良い。なお、ネジ止め用のドライバーは、隔壁113の中央開口113aよりケーシング111の内側に挿入して操作することができる。
【0047】
また、
図22~
図25に示すように、主壁112の外周縁にも、回転軸を中心とする周方向に並ぶ複数のネジ孔112eが設けられている。各ネジ孔112eも、前記ネジ孔112dと同様に回転軸を中心として周方向に等間隔で並ぶように配列されている。ここで各ネジ孔112e間のピッチは、前記ネジ孔112d間のピッチよりも広く設定されている。
【0048】
詳しく言えばネジ孔112eは、主壁112の外周縁の外面側から内面側へと下方に向かって回転軸方向と平行に突出したボスに設けられている。ここでボスは、次述する各羽根120の外側端縁の上端に沿って余り突出しないように配置されている。よって、ネジ孔112eの数は羽根120と同数の12個となる。このネジ孔112eの数に対して、前記ネジ孔112dは8個と少なく設定されている。また、ボス内のネジ孔112eの一端は、主壁112の外周縁の外面側に開口し、他端はボス内で閉塞されている。
【0049】
ネジ孔112eに対して図示省略したネジは、ケーシング111の外側からそのままネジ止めされる。このように主壁112において外側に露出する部位に対するネジ止め作業は、極めて容易に行うことができる。また、ネジ孔112eのあるボスは、各羽根120の外側端縁の上端に沿って余り突出しないため、前記ネジ孔112dのあるボスと同様に空気の流れの抵抗とはならない。なお、ネジの材質については、前述したネジ孔112dに螺合させるものと同様である。
【0050】
各羽根120は、主壁112および隔壁113の外周側に沿って立設され、これらの中央に向かう傾斜に合わせて上下端縁は斜め平行に傾斜している。また、各羽根120は、それぞれ主壁112の中央寄りの内側端縁から外側を向く外側端縁にかけて、ファン110の回転方向と逆方向へ延びている。ここで各羽根120の外周側の側面は、外周側に凸の円弧形断面に湾曲している。このような羽根120の向きから前述したように、ファン110はターボファンに分類されるものである。なお、羽根120の数は適宜定め得る設計事項であるが、本実施の形態では12枚に設定されている。
【0051】
ファン110の外周、すなわち主壁112および隔壁113の外周の間で、かつ各羽根120の外側端縁同士の間がファン吹出口となっている。よって、ファン110が回転すると、隔壁113の中央開口113a(ファン吸込口)より空気が吸い込まれ、ファン110の外周(ファン吹出口)より空気は遠心方向に吹き出される。ここでファン110の外周より空気は、ファン110の回転方向に向かう旋回流を伴って遠心方向に吹き出されるが、ファン110の回転軸と直交する放射状ではなく、主壁112および隔壁113の傾斜に沿って上方にも向かうものとなる。
【0052】
モーター101は、給電された電力によって回転駆動するものであり、その回転軸102に固定された前記ファン110を回転させる。モーター101は、その回転数を調整できるものが適している。モーター101は、前述したようにファン110の主壁112の凹みの部分に収納された状態で、ファン110と組み合わされて一つのユニットとして構成されている。なお、ファン110の回転軸とは、本実施の形態ではモーター101の回転軸102と同義である。
【0053】
<送風手段100のガイド部材140について>
図9,
図17に示すように、ファン110の外周を囲む位置には、ファン110の回転軸を中心とする放射状に複数配置された螺旋状の通風路130が備わっている。通風路130は、ファン110の外周より吹き出された空気を、その旋回流と同一方向に旋回させながらファン110の回転軸方向に導くものである。通風路130は、本実施の形態ではガイド部材140によって形成されている。ガイド部材140は、ケース11の内部の本体において、ファン110の外周を取り囲むようにして、ファン110と吹出部15の間に配設されている。
【0054】
ガイド部材140は、ファン110の回転軸方向の一端面である主壁112を覆うドーム状の内殻部141と、ファン110の外周から内殻部141の頂部を除く外周を全周方向から取り囲む筒状の外殻部151とから成る。内殻部141の外周と外殻部151の内周との間の環状の空間において、内殻部141および外殻部151の少なくとも一方に形成された複数のリブ154により、通風路130が区画形成されている。ここでリブ154は、互いに対向する内殻部141の外周と外殻部151の内周が近接する方向に出っ張るように形成されている。なお、内殻部141および外殻部151は、例えば合成樹脂で形成されている。
【0055】
詳しく言えば、内殻部141は、略半球形のドーム形状に形成されており、ファン110の主壁112を覆うように配設されている。ただし、内殻部141は本体側に固定されるものであり、回転するファン110の主壁112との間には隙間が設けられている。
図9に示すように、ファン110の主壁112上には、この主壁112の凹みに合致するほぼ同形状の座板150が所定間隔を空けて本体側に固定されている。ここで座板150は、主壁112と近接しているが、主壁112との間に隙間を空けて配設されており、内殻部141は、座板150に対して外周同士が合わさる状態で固定されている。
【0056】
内殻部141の内側と、ファン110の主壁112の凹みに沿った座板150とが合わさった空間内に、モーター101は収納されている。また、内殻部141の外周における頂部は開口しており、この頂部開口142を覆うように操作パネル40が設けられている。操作パネル40は、上部ケース13の上端にあるガード部材13aの中央開口より外部に露出している。操作パネル40について詳しくは後述する。なお、内殻部141は、金型を上下方向に型抜きできる形状であるため、例えば合成樹脂により一体成形すると良い。
【0057】
図17に示すように、外殻部151は、ファン110の外周から内殻部141の頂部を除く外周を全周方向から取り囲む筒状に形成されており、内殻部141と同様に本体側に固定されるものである。
図9に示すように、外殻部151の下半部152は、ファン110の外周との間に通風路130の上流側(図中で下側)における径方向の間隔を空けて配置され、ファン110の下側の隔壁113にまで近接して沿うように下方に延出している。外殻部151の上半部153は、内殻部141の外周を取り囲みつつ、上方の頂部開口142に向かって徐々に縮径しながら延出している。
【0058】
本実施の形態では外殻部151に、その径方向内側に出っ張るリブ154が放射状に設けられている。各リブ154は、周方向に均等に並ぶように同形状に設けられており、隣り合うリブ154同士の間の空間が通風路130となる。よって、リブ154と通風路130の数は同じとなる。なお、外殻部151においてリブ154のある箇所には、配線用の切欠154aが設けられている。切欠154aは、ガイド部材140の内側に配されるモーター101や操作パネル40の制御基板等からのケーブルを外部に引き出すものである。
【0059】
各リブ154は、外殻部151の周壁の一部が径方向内側に向かって略三角の断面形状に出っ張るものである。各リブ154は、ファン110の外周より吹き出される空気の旋回流と同一方向に湾曲しながら上流側(外殻部151の下側)から下流側(外殻部151の上側)にかけて螺旋状に延びている。ここで各リブ154は、その下流側から上流側にかけて断面積が連続的に大きくなっている。すなわち、各リブ154の径方向内側に出っ張る略三角形の高さと底辺の幅は、上流側から下流側に向かうにつれて徐々に大きくなるように設計されている。
【0060】
したがって、各リブ154の間の通風路130の断面積は、逆に上流側から下流側にかけて連続的に小さくなるように設計されている。通風路130の上流端(図中で下側)は、ファン110の外周に側方から連通しており、通風路130の下流端(図中で上側)は、上部ケース13の上端にある吹出部15に向かって開口している。なお、通風路130の下流端、すなわちリブ154の下端は、ファン110の外周より吹き出される空気の整流始まりにおいて、乱流および騒音が発生しにくい位置として、
図20に示すように、羽根120の上下高さの中央よりやや下寄りに配置されている。
【0061】
さらに、各リブ154、すなわち通風路130において、ファン110の回転軸方向(外殻部151の軸方向)に対する螺旋のねじれ角は、上流側(図中で下側)ではファン110の外周より吹き出される空気の旋回流と同一方向の角度に設定されている。よって、ファン110の外周からの空気の吹出方向と、通風路130の上流側(図中で下側)での空気の導入方向とは、互いに同一方向となり180度の直線状に連なることになる。
【0062】
ただし、各リブ154、すなわち通風路130は、
図20に示すように、下流側(図中で上側)に向かうにつれて前記ねじれ角が徐々に小さくなり、下流端では回転軸方向と平行な角度に近づくように設計されている。通風路130の下流端は、
図17および
図18に示すように、内殻部141の頂部開口142を中心とする放射状に台形に開口している。なお、隣り合う通風路130同士は、互いに完全に分断されている必要はなく、例えば、上流端や下流端、あるいは上下に亘り内殻部141の外周に沿った一面側等の一部において、互いに連通していてもかまわない。
【0063】
通風路130(リブ154)の具体的な数は、適宜定め得る設計事項であり、ファン110の構成等に応じて最適な空気の整流が得られるように設計すると良い。このようなリブ154を備えた外殻部151を合成樹脂で成形する場合、リブ154の凹凸形状により全体を一つの金型で一体成形することは難しい。そこで、本実施の形態では外殻部151を、アンダーカット無しで上下に型抜き可能とするには、周方向に均等に4分割したものが最大単位となり、4分割した成形品を後から一体に組み合わせて構成している。
【0064】
したがって、本実施の形態では、通風路130(リブ154)の数を4の倍数とする必要がある。ここで通風路130の数を4つとすると、各通風路130の上流側の断面積が大きすぎるため、ファン110の外周より受け入れた空気に乱流が生じやすい。また、通風路130の数を12とすると、各通風路130の上流側の断面積が小さすぎるため、ファン110の外周より受け入れる空気の流れの抵抗となりやすく、また、リブ154が密に並ぶので必要なねじり角を形成するためのスペースも乏しい。
【0065】
そのため、本実施の形態では、通風路130(リブ154)の数を8つに設定している。なお、リブ154の数が、ファン110の羽根120の数と同一あるいは倍数である場合には、ファン110回転時に特定の周波数の音が伸びる等の共振が生じる虞がある。かかる共振を抑制するためにも、リブ154の数は、ファン110の羽根120の数よりも少なく設定すると良い。
【0066】
<空気清浄装置10の制御系について>
空気清浄装置10は、前述した送風手段100の駆動を制御するための制御装置を備えている。制御装置は図示省略したが、送風手段100のモーター101の他、操作パネル40や各種センサ50等に信号線を介して電気的に接続されており、モーター101の回転駆動や操作パネル40の表示等を制御する。制御装置は、具体的には例えば制御基板から成り、CPU(中央処理装置)と、CPUの実行するプログラムや各種の固定的データを記憶するROMと、プログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶するためのRAM等で構成されている。
【0067】
本実施の形態では制御装置は、主としてモーター101の回転駆動を制御するメインの制御基板と、操作パネル40における操作を検出するサブの制御基板とを備えている。メインの制御基板は、ケース11の内部の本体においてファン110とモーター101が配設されている部位の下側に配設されている。また、サブの制御基板は、操作パネル40の下側に配設されている。これら2種類の制御基板によって、空気清浄装置10は全体が制御されることになる。
【0068】
操作パネル40は前述したが、
図3に示すように、上部ケース13の上端にあるガード部材13aの中央開口より外部に露出しており、使用者(ユーザー)が操作しやすい位置にある。操作パネル40は、前記内殻部141の頂部開口142を覆う円盤状に形成されている。操作パネル40の周囲に沿って、前記通風路130の上流端が等間隔に開口している。
図8に示すように、操作パネル40の上面には、空気清浄装置10を操作するスイッチを成すボタン41~46と共に、各種情報を表示する情報表示部47や警告表示部48が設けられている。
【0069】
詳しく言えば操作パネル40には、使用者が操作するスイッチとして、電源ボタン41、モードボタン42、タイマーボタン43、表示パターン切替ボタン44、情報切替ボタン45、風量レベル切替ボタン46が設けられている。
電源ボタン41は、空気清浄装置10を稼動・停止させるためのスイッチである。
モードボタン42は、空気清浄装置10の稼動状態をマニュアル、オート、カスタムの各モードに切り替えるスイッチである。なお、各モードの詳細については後述する。
【0070】
タイマーボタン43は、空気清浄装置10の稼動時間を1、2、4時間で切れるタイマー運転を行うためのスイッチである。
表示パターン切替ボタン44は、風量レベル切替ボタン46の発光色を各表示色パターンに切り替えるスイッチである。本実施の形態の表示色パターンは、8色カラーと単色青色の2パターンが用意されている。
情報切替ボタン45は、情報表示部47に表示する情報を温度、湿度、PM2.5の何れかに切り替えるスイッチである。
【0071】
風量レベル切替ボタン46は、空気清浄装置10で吹き出す風量を調整するためのスイッチである。風量レベル切替ボタン46は、円弧形に延びるインジゲーター仕様のタッチパネルとして構成されており、スワイプ操作によって風量を調整することができる。風量レベル切替ボタン46は、インジゲーター仕様の左端から右端に向かって徐々に風量レベルが高くなるように設定されている。このインジゲーターは発光色が色分けされており、例えば左端から順に、青(風量レベル1)、水(風量レベル2)、緑(風量レベル3)、黄緑(風量レベル4)、黄(風量レベル5)、橙(風量レベル6)、赤(風量レベル7)、そして右端が桃(風量レベル8)というようにグラデーションカラーとなっている。
【0072】
ここで風量レベルの数値が高いほど、ファン110の回転数が高く風量が増すが、数値自体は表示されない。従来品における風量レベルの調整は、一般に数値をみて切り替えを行っていたが、本実施の形態では、色による視覚的な操作により切り替わった風量レベルが分かるように構成している。具体的な色については、寒色系を風量弱として設定し、風量レベルが高くなるにつれて暖色系になることで、視覚的に風量がイメージできるようにしている。なお、前記表示パターン切替ボタン44で単色青色のパターンが選択されている場合、風量レベル切替ボタン46は全て青色に表示されるように設定されている。
【0073】
情報表示部47は、例えば、7セグメントLEDや液晶パネルから構成されており、空気清浄装置10の運転状態や各種センサ50の検出結果を表示するものである。ここでセンサ50とは、例えば、温度センサ、PM2.5センサ、ガスセンサ等が該当し、情報表示部47には、各種情報として温度、湿度、PM2.5等が表示される。これらのセンサ50は、ケース11の内部の本体において連通部材30の外側等に配設されている。
【0074】
PM2.5センサが検知するPM2.5とは、粒径2.5μm以下の粒子状物質であり、例えばハウスダスト(ホコリ・ダニの死骸やフン・花粉・カビの胞子)、タバコや線香の煙、ペットの毛等が該当する。また、ガスセンサは、VOC(接着剤・油性ニス・塗料・消臭剤)、タバコや線香の煙、調理臭、アンモニア等を検知するものである。これらのセンサ50による検知結果は、情報表示部47に表示することができる。
【0075】
警告表示部48は、例えば、LEDランプや液晶パネルから構成されており、各種の異常事態を発光色により表示して報知するものである。例えば、空気清浄装置10が傾いていたり、前面カバー12aが開いているときに、警告表示部48は赤色に点灯する。また、フィルター20の交換が必要なときに、警告表示部48は黄色に点滅する。その他、前記ガスセンサによる検知結果を警告するように点灯表示しても良い。
【0076】
<送風手段100の作用>
次に、送風手段100の作用について説明する。
送風手段100が駆動すると、モーター101は給電されて回転し、これに伴いファン110が回転する。ファン110の回転により、隔壁113の中央開口113a(ファン吸込口)より空気が吸い込まれ、ファン110の外周(ファン吹出口)より空気は吹き出される。ここでファン110の外周より空気は、ファン110の回転方向に向かう旋回流を伴って遠心方向に吹き出されるが、ファン110の回転軸と直交する放射状ではなく、主壁112および隔壁113の傾斜に沿って上方にも向かうものとなり、ファン110の外周を囲む通風路130の上流側にそのまま導入される。
【0077】
通風路130の上流側は、ファン110の外周より空気が吹き出される方向に沿って斜めに延び上がっている。従って、ファン110の外周からの空気の吹出方向と、通風路130の上流側での空気の導入方向とが、互いに同一方向で180度の直線状に連続する。これにより、ファン110の外周より吹き出された空気が通風路130に導入されるときに、空気の旋回流に乱れが生じることはなく、効率良く空気を送ることができる。
【0078】
通風路130に導入された空気は、その旋回流と同一方向に湾曲しながら螺旋状に延びる通風路130の下流側へ向かいつつ、その旋回流の勢いを残しながらほぼそのままの風量で、ファン110の回転軸方向に効率良く送られる。ここで通風路130の断面積は、上流側から下流側にかけて連続的に小さくなるため、空気の流れは下流側に向かうに連れて徐々に絞られて風速が高まり、よりいっそう空気の送風効率を高めることができる。
【0079】
各通風路130の下流端は、
図18に示すように、回転軸(
図18の中心だが図示せず)を中心とした放射状に並んで開口している。この通風路130の下流端まで到達した空気は、
図18中に矢印で示すように、平面視で回転軸を中心とする時計回りの方向へ旋回しながら、回転軸方向の上方(
図18の紙面上方)に向かう直進性の旋回流として吹き出される。このような送風手段100によれば、空気の流れの途中での圧力損失を防いで送風効率を高めることができ、各種装置で必要な風量を確実に確保することができる。
【0080】
また、本実施の形態の送風手段100では、通風路130はガイド部材140によって形成され、ガイド部材140は、内側の内殻部141と外側の外殻部151とを組み合わせて構成する。この内殻部141の外周と外殻部151の内周との間の環状の空間において、複数のリブ154により通風路130を区画形成する。このように2つの部材を組み合わせる構成により、複雑な形状の通風路130であっても形成することが可能となる。特にリブ154は、外殻部151の周壁の一部をそのまま出っ張らせた凹凸形状に一体成形したものであり、容易に形成することができる。
【0081】
ところで、前記送風手段100の組み立て前に、ファン110のバランス検査によりアンバランスな部分が発見された場合には、ファン110の偏重心を修正する必要がある。すなわち、ファン110のアンバランスな箇所にあるネジ孔112d,112eにバランス調整用のネジを螺合させて重さを追加する。ここでバランスの微修正を行う場合には、アルミニウム等の比重の小さな金属製のネジを使用し、逆に大きなバランス修正を行う場合には、鉄やステンレス等の比重の大きな金属製のネジを使用する。
【0082】
ファン110の各ネジ孔112d,112eのうち、主壁112の中央壁部112aにおける小さな円周上に並ぶネジ孔112dにネジ止めする場合には、隔壁113の中央開口113aよりネジをネジ孔112dに差し込み、同じく中央開口113aより挿入したドライバーによって螺合させる。また、主壁112の外周縁に沿った大きな円周上に並ぶネジ孔112eにネジ止めする場合には、主壁112の外側からそのままネジをネジ孔112eに差し込み、ドライバーによって螺合させる。
【0083】
このようにバランサーであるネジは、何れかのネジ孔112d,112eに螺合させるため、その取り付け作業は容易であり、確実に固定されて外れる可能性も低減され、脱落したり位置ズレする虞もない。しかも、ネジをネジ孔112d,112eに螺合させる方向は、ファン110の回転軸に対して平行となる。よって、ファン110の回転によりネジに大きな遠心力がかかっても、ネジの螺合方向は遠心力のかかる方向と直交するため、なおさらネジがネジ孔112d,112eから外れる虞はない。
【0084】
各ネジ孔112d,112eを設けた主壁112は、ファン110の外側に露出する部位であり、特にネジ孔112eに対しては外部よりネジ止めの作業を容易に行うことができる。このように、ネジはファン110の羽根120ではなく主壁112に取り付けるため、従来の羽根に設けるバランサーのように、空気の流れの抵抗となることがなく、遠心力の影響も軽減される。特に、ネジ孔112dに螺合させたネジは、中央壁部112aの内面側にはほとんど突出せず、ネジ孔112eに螺合させたネジも、各羽根120の外側端縁の上端に沿って余り突出しないため、乱流を生じさせることもなく、ファン110の回転時における送風効率の低下や騒音の増加を抑制できる。
【0085】
また、各ネジ孔112d,112eは、それぞれ主壁112において周方向に等間隔に配列されているため、正確なバランス調整が可能となる。ここで主壁112の内側のネジ孔112dと外側のネジ孔112eとで、それぞれネジ孔間のピッチを異ならせているため、いっそう精密なバランス調整が可能となる。このようにネジ孔112dとネジ孔112eの数を異ならせることは、前述したファン110の羽根120の数とリブ154の数を異ならせることと同様に、ファン110の回転時の共振を抑制する観点からも適している。
【0086】
しかも、ネジ孔112d,112eは一つの円周上だけに並ぶものではなく、周半径が互いに異なる同心円上に並ぶように設けられている。これにより、ファン110の広い範囲で高精度なバランス調整が可能となる。なお、ネジ孔112d,112eは、ファン110の回転軸方向の一端面を成す主壁112だけに限らず、他端面を成す隔壁113にも、同様に周方向に一または複数の同心円に並ぶように設けても良い。
【0087】
<空気清浄装置10の作用>
次に、空気清浄装置10の作用について説明する。
前述したように送風手段100が駆動すると、ファン110の回転により、ファン110のケーシング111内の空気は遠心力によってファン110の外周より吹き出され、ケーシング111内は負圧となり隔壁113の中央開口113aからファン110に吸い込まれる空気の流れが発生する。これにより、下部ケース12の全域にある吸込部14からケース11の外部の空気が吸い込まれる。ケース11の内部に吸い込まれた空気は、先ずフィルター20の外側から内側に取り込まれ、フィルター20を通過するときに空気中の塵埃が除去される。
【0088】
フィルター20を通過することで浄化された空気は、フィルター20の内側から連通部材30を通って上方の送風手段100に引き込まれ、ファン110の外周より遠心方向へ吹き出される。そして、ファン110の外周より吹き出された空気は、前述した通風路130を経由して、上部ケース13の上端側にある吹出部15から外部に吹き出される。このように、送風手段100の駆動により、ケース11内部では吸込口14から吸い込まれた空気が、吹出部15から吹き出される空気流が生じる。
【0089】
このような空気清浄装置10において、前記送風手段100を用いたことにより、ファン110の外周より吹き出された空気を、その旋回流の勢いを残しながらほぼそのままの風量で、吹出部15に向けて回転軸方向に効率良く送ることができる。従って、空気清浄装置10で必要な風量を、一つの送風手段100だけで確保することができ、コスト高を招くことなく十分な空気浄化能力を得ることができる。
【0090】
<空気清浄装置10の運転>
次に、空気清浄装置10の具体的な運転についても説明する。
空気清浄装置10の使用に際して、本体にある差込口16aに図示省略した電源コードを接続した状態で、
図8に示す操作パネル40にある電源ボタン41に使用者が触れると、空気清浄装置10の運転が開始する。このとき、各ボタン41~46や表示部47,48を含む全ての表示ライトは点灯する。空気清浄装置10の運転中に電源ボタン41を押すと、空気清浄装置10の運転が停止し、点灯していた表示ライトは消灯する。
【0091】
空気清浄装置10の運転モードを選びたいとき、使用者はモードボタン42を押す。このモードボタン42を押すたびに、運転モードは、マニュアル,オート,カスタムに順次切り替わる。マニュアルは、任意の風量レベルで運転できるモードである。風量レベルの変更をしたいときは、風量レベル切替ボタン46に触れてスワイプさせることにより調整することができる。ここで選択された風量レベルに対応する色は明るくなり、点滅を繰り返す。
【0092】
また、オートは、空気清浄装置10の使用環境に応じて、風量レベルが自動で変化するモードである。
さらに、カスタムは、任意の風量レベル範囲で運転するためのモードである。ここで設定された風量レベル範囲内での動作は、前記オートと同じ動作である。
風量レベルの範囲を決めるときは、例えば、風量レベル切替ボタン46を2回押すと範囲が決定される。
【0093】
より具体的には例えば、風量レベル切替ボタン46を1回目に押すと、そのインジケーター仕様の表示は白色に点灯し、情報表示部47に押したボタンのレベルが表示され、そのレベルに対応する発光色のみ点灯する。
続けて、風量レベル切替ボタン46を2回目に押すと、風量インジケーター仕様の表示は設定された範囲内の色になる。そして、情報表示部47には、範囲内の最小値から最大値が表示される。
【0094】
このように、風量レベル切替ボタン46によって、任意の風量レベル範囲に設定できるようにしたことで、例えば、使用者が常に空気を綺麗にしたいところであれば、風量下限レベルを高めに設定して、風量中~高レベルを維持するようにしたり、逆に風量上限レベルを低めに設定して、風量レベルを弱~中を維持するようにして、ゆっくりと部屋を清浄するような使い方が可能となる。
【0095】
空気清浄装置10の運転時間を設定したいときは、タイマーボタン43を押す。このタイマーボタン43を押すたびに、例えば、1、2、4時間と順に設定時間が変更される。
情報表示部47における表示内容を変えたいときは、情報切替ボタン45を押す。この情報切替ボタン45を押すたびに、例えば、温度、湿度、PM2.5の順に表示される情報が変更される。
また、風量レベル切替ボタン46の表示色を変えたいときは、表示パターン切替ボタン44を押す。この表示パターン切替ボタン44を押すたびに、例えば、表示パターン切替ボタン44の表示色は、8色カラーと単色青色に順に変更される。
【0096】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、送風手段100を適用する装置は、空気清浄装置10に限られることなく、他に例えば、扇風機や掃除機等と送風が必要となる様々な装置に適用することができる。
【0097】
また、送風手段100のファン110は、遠心式ファンであって各羽根120が回転方向と逆方向を向くターボファンを例に説明したが、これに限られるものではない。例えば、同じ遠心ファンであって、各羽根が回転方向と同方向を向くシロッコファンや、各羽根が半径方向に直線状に延びるラジアルファン等も使用することができる。
【0098】
また、ガイド部材140を成す内殻部141と外殻部151のうち、外殻部151に径方向内側に出っ張るリブ154を設けて通風路130を区画形成したが、逆の態様として、内殻部141の方に径方向外側に出っ張るリブを設けて通風路を区画形成しても良い。さらに、内殻部141に径方向外側に出っ張るリブを設けると共に、外殻部151に径方向内側に出っ張るリブを設け、これらのリブで通風路を区画形成することもできる。
【0099】
さらに、空気清浄装置10は、一般家庭で用いられるものに限られず、他に例えば、商業施設等で用いる業務用の大型なものとして構成してもかまわない。また、ケース11は、図示した円筒状に限定されるものではなく、他に例えば、四角筒形や六角筒形等の各種筒状に選択できるが、省スペース化の要請等を考慮すると円筒形が最も好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係る送風手段は、空気清浄装置に限られることなく、他に例えば、扇風機や掃除機等と送風が必要となる様々な装置に適用することができる。また、本発明に係る空気清浄装置は、一般家庭で用いられるものに限られず、他に例えば、商業施設等の様々な施設において幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
10…空気清浄装置
11…ケース
12…下部ケース
13…上部ケース
14…吸込部
14a…小孔
15…吹出部
15a…スリット溝
16…台座
20…フィルター
30…連通部材
40…操作パネル
100…送風手段
101…モーター
102…回転軸
110…ファン
111…ケーシング
112…主壁
112d,112e…ネジ孔
113…隔壁
120…羽根
130…通風路
140…ガイド部材
141…内殻部
151…外殻部
154…リブ