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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】接続具
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018137814
(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2020016031
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】391041822
【氏名又は名称】株式会社内外
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】南浦 陽一
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3167437(JP,U)
【文献】特開2006-336224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0153844(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1手摺りの端部に固定される第1部材と、第2手摺りの端部に固定される第2部材とを含み、前記第1部材と前記第2部材との係合により前記両手摺りを互いに接続する接続具であって、
前記第1部材は、一端に前記第1手摺りの端部が差し込み固定される差し込み部を有しかつ他端に前記第2部材に対向する第1対向面を備えた第1部材本体と、前記第1対向面に沿って配置されて前記第1部材本体に支持され、係合用凸部を備えた係合部材と、前記係合部材を付勢する付勢部材とを含み、
前記第2部材は、一端に前記第2手摺りの端部が差し込み固定される差し込み部を有しかつ他端に、前記第1対向面に対向し、前記係合用凸部に対応する係合用凹部を備えた第2対向面を有し、
前記係合部材は、前記第1対向面に直交する仮想軸の方向、および前記仮想軸に対して傾倒する方向に変位自在となるように前記第1部材本体に支持され、かつ、前記付勢部材によって前記第2対向面の側に向かって弾性的に付勢されており、
前記係合部材は、円盤状の本体部と、その中心から延びる軸部と、前記軸部に設けられた抜止部とを有し、
前記第1対向面に、前記係合用凸部の軸部が貫通される孔部が設けられ、
前記孔部の径は、前記軸部が前記第1対向面に沿った方向に変位自在となりかつ前記軸部の傾倒を許容する大きさに設定され、
前記付勢部材は、前記係合部材の本体部と前記第1対向面との間に配設されている、ことを特徴とする接続具。
【請求項2】
前記孔部は、前記第1対向面からの深さが深くなるに従って漸次径が大きく又は小さくなるテーパ状に形成されている、ことを特徴とする請求項記載の接続具。
【請求項3】
前記付勢部材は、コイルスプリングであり、
前記軸部は、前記コイルスプリングを貫通するように配設されている、ことを特徴とする請求項又はに記載の接続具。
【請求項4】
前記第1部材は、前記第1対向面と前記係合部材との間に介在し前記第1対向面に沿って前記係合部材と共に変位可能なスリーブを備えている、ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の接続具。
【請求項5】
前記スリーブは、筒状部と、前記筒状部から外周方向に延ばされた鍔部とを備え、
前記鍔部は、前記第1対向面と前記第2対向面との当接を阻止するように、前記第1対向面と前記第2対向面との間に介在している、ことを特徴とする請求項に記載の接続具。
【請求項6】
前記第1部材本体は、前記スリーブが前記第1対向面に沿った方向に変位自在となるように前記筒状部を受容する受容凹部を備えている、ことを特徴とする請求項に記載の接続具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば手摺り同士を互いに接続する手摺り用の接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図7に示すように、下階段100と踊り場102と上階段103の壁面104に手摺り105a~105dを連続的に取付ける場合、次のように行われる場合が多い。
【0003】
即ち、手摺り105aは、下階段100の傾斜角度に合わせて壁面104に複数のブラケット(手摺り取付け具)109で固定する。また、手摺り105bと手摺り105cは、踊り場102と平行となるように壁面104に複数のブラケット109で固定する。さらに、手摺り105dは、上階段103の傾斜角度に合わせて壁面104に複数のブラケット109で固定する。
【0004】
そして、手摺り105aと手摺り105b、手摺り105bと手摺り105c、手摺り105cと手摺り105dの各対向する端部は、各接続具110の両側にそれぞれ差し込み、ねじ(固定ボルト)でそれぞれ固定することで接続して隙間ができないようにしている。
【0005】
ところで、新築現場では、壁用クロスを貼る前の壁面104の下地面にブラケット109を仮固定し、長さをカットしながら各手摺り105a~105dを各ブラケット109に仮固定し、各手摺り105a~105dの各対向する端部を各接続具110で接続して、全体の仕上がり具合を調整している。
【0006】
その後、壁面104の下地面に壁用クロスを貼るために、各手摺り105a~105dを各ブラケット109から取外し、各ブラケット109を壁面104の下地面から取外す。そして、壁面104の下地面に壁用クロスが貼り終わると、再び、各ブラケット109を壁面104に本固定し、各手摺り105a~105dを各ブラケット109に本固定するようになっている。
【0007】
この各手摺り105a~105dの取外し作業と本固定作業に際して、各手摺り105a~105dが各接続具110で一連に接続された状態であると、施工作業性が非常に悪くなる。また、その場合に、各接続具110のねじを外して、各手摺り105a~105dを軸方向に抜き外す作業を行うにしても、施工作業性はやはり悪くなる。
【0008】
このような課題を解決し得る手摺りの接続具として、例えば特許文献1が開示されている。この特許文献1に開示された手摺りの接続具110は、第1手摺り(例えば手摺り105a)の端部を差し込み固定する差し込み部を有する第1可動部材と、第2手摺り(例えば手摺り105b)の端部を差し込み固定する差し込み部を有する第2可動部材とを備え、前記各差し込み部の反対側の第1可動部材と第2可動部材の接続面は、略面対面で対向するように形成され、一方の接続面の略軸心には、軸方向に出没可能で、常時は弾力で突出位置に突出する嵌合凸部が設けられるとともに、他方の接続面の略軸心には、前記嵌合凸部が軸方向から嵌合可能な嵌合凹部が設けられている。
【0009】
このように構成することで、第1手摺りに対して第2手摺りを軸直交方向に強く引けば、嵌合凸部の外縁が嵌合凹部の内縁で押され、嵌合凸部が弾力に抗して没入方向に押し下げられて嵌合凹部から抜き出ることで、第1手摺りに対して第2手摺りを単独で軸直交方向に取外すことができる。一方、第2手摺りを軸直交方向から強く押せば、弾力で突出位置に復帰している嵌合凸部の外縁が接続面の外縁で押されることで、嵌合凸部が弾力に抗して没入方向に押し下げられることができ、第1手摺りの端部と第2手摺りの端部とが接続具で再接続されるようになる。このようにして、施工作業性を良好にするとともに、構造を簡単にして部品コストを安くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実用新案登録第3167437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1では、嵌合凸部が出没するだけの構造であり、嵌合凸部の可動の自由度が低く、手摺り同士の様々なずれ具合(ずれ態様)に充分に対応できない場合があった。
【0012】
本発明は、手摺り同士の様々なずれ具合にも充分に対応できる接続具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1手摺りの端部に固定される第1部材と、第2手摺りの端部に固定される第2部材とを含み、前記第1部材と前記第2部材との係合により前記両手摺りを互いに接続する接続具であって、前記第1部材は、一端に前記第1手摺りの端部が差し込み固定される差し込み部を有しかつ他端に前記第2部材に対向する第1対向面を備えた第1部材本体と、前記第1対向面に沿って配置されて前記第1部材本体に支持され、係合用凸部を備えた係合部材と、前記係合部材を付勢する付勢部材とを含み、前記第2部材は、一端に前記第2手摺りの端部が差し込み固定される差し込み部を有しかつ他端に、前記第1対向面に対向し、前記係合用凸部に対応する係合用凹部を備えた第2対向面を有し、前記係合部材は、前記第1対向面に直交する仮想軸の方向、および前記仮想軸に対して傾倒する方向に変位自在となるように前記第1部材本体に支持され、かつ、前記付勢部材によって前記第2対向面の側に向かって弾性的に付勢されており、前記係合部材は、円盤状の本体部と、その中心から延びる軸部と、前記軸部に設けられた抜止部とを有し、前記第1対向面に、前記係合用凸部の軸部が貫通される孔部が設けられ、前記孔部の径は、前記軸部が前記第1対向面に沿った方向に変位自在となりかつ前記軸部の傾倒を許容する大きさに設定され、前記付勢部材は、前記係合部材の本体部と前記第1対向面との間に配設されている、ことを特徴とする接続具を提供することにより、上記課題を解決する。
【0014】
これによれば、係合部材は、第1対向面に直交する仮想軸の方向、仮想軸に対して傾倒する方向、及び第1対向面に沿った方向に変位自在となるように第1部材本体に支持され、かつ、付勢部材によって第2対向面の側に向かって弾性的に付勢されているため、第2部材が第1部材に対して第1対向面に直交する仮想軸の方向、仮想軸に対して傾倒する方向、或いは第1対向面に沿った方向にずれを生じている場合でも、それらのずれに応じて係合部材が変位してそれらのずれを吸収でき、手摺り同士の様々なずれ具合にも充分に対応して円滑に接続できる。
【0019】
前記接続具において、前記孔部は、前記第1対向面からの深さが深くなるに従って漸次径が大きく又は小さくなるテーパ状に形成されている構成とできる。
【0020】
これによれば、係合部材を仮想軸に対して傾倒する方向に、変位し易くでき、かつ確実に変位させることができる。
【0021】
前記接続具において、前記付勢部材は、コイルスプリングであり、前記軸部は、前記コイルスプリングを貫通するように配設されている構成とできる。
【0022】
これによれば、係合部材が、第2対向面の側に向かって安定的にかつ確実に付勢される。
【0023】
前記接続具において、前記第1部材は、前記第1対向面と前記係合部材との間に介在し前記第1対向面に沿って前記係合部材と共に変位可能なスリーブを備えている構成とできる。
【0024】
これによれば、スリーブによって係合部材を第1対向面に沿って円滑にかつ確実に変位させることができる。
【0025】
前記接続具において、前記スリーブは、筒状部と、前記筒状部から外周方向に延ばされた鍔部とを備え、前記鍔部は、前記第1対向面と前記第2対向面との当接を阻止するように、前記第1対向面と前記第2対向面との間に介在している構成とできる。
【0026】
これによれば、第1部材の第1対向面と第2部材の第2対向面との接触を防止できる。これにより、例えば第1部材の第1対向面と第2部材の第2対向面との互いの接触によるキズ、或いは第1対向面や第2対向面に施された表面処理のはがれを防ぐことができる。
【0027】
前記接続具において、前記第1部材本体は、前記スリーブが前記第1対向面に沿った方向に変位自在となるように前記筒状部を受容する受容凹部を備えている構成とできる。
【0028】
これによれば、第1部材本体がスリーブの筒状部を受容する受容凹部を備えているため、スリーブが第1対向面に沿った方向に変位した場合に、受容凹部の内周面でスリーブの筒状部を受けることができ、第1対向面に沿う方向のスリーブの変位を確実に受け止めることができる。これにより、第1対向面に沿う方向のスリーブの変位に際して第1部材の各部材が破壊等するようなことを防止できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の接続具は、手摺り同士の様々なずれ具合にも充分に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施の形態に係る接続具であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
図2図1(b)のII-II線断面図である。
図3図1の接続具の、第1部材側から見た分解斜視図である。
図4図1の接続具の、第2部材側から見た分解斜視図である。
図5】接続具に設けられた係合部材とスリーブとが第1部材本体に対して第1対向面に沿った方向に変位した状態の断面図である。
図6】接続具に設けられた係合部材が第1部材本体の第1対向面に直交する仮想軸に対して傾倒する方向に変位した状態の断面図である。
図7】従来の接続具によって階段の壁面に手摺りを連続的に取付けた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、背景技術と同一構成・作用の箇所は、同一番号を付して詳細な説明を省略する。図1は、本発明の一実施の形態に係る接続具であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。また、図2は、図1(b)のII-II線断面図、図3は、図1の接続具の、第1部材側から見た分解斜視図であり、図4は、図1の接続具の、第2部材側から見た分解斜視図である。
【0032】
本発明の接続具1は、図1図4に示すように、第1手摺り105aの端部106aに固定される第1部材2と、第2手摺り105bの端部106bに固定される第2部材7とを含み、第1部材2と第2部材7との係合により前記両手摺り105a、105bを互いに接続する手摺り接続用のものである。本実施形態では、接続具1は、第1手摺り105aと第2手摺り105bとの角度を90度に接続する。
【0033】
第1部材2は、第1部材本体3と、第1部材本体3と第2部材7との間に配設される係合部材4及びスリーブ5と、係合部材4を付勢する付勢部材6とを備えている。
【0034】
第1部材本体3は、一端に第1手摺り105aの端部106aが差し込み固定される差し込み部31を有しており、この差し込み部31に第1手摺り105aの端部106aが差し込まれ、第1部材本体3に設けられた固定ボルト挿入孔33から挿入された固定ボルト(図示しない)を介して第1手摺り105aの端部106aに固定される。尚、第1部材本体3は、この実施形態では、金属から構成されている。
【0035】
また、第1部材本体3は、他端に第2部材7に対向する第1対向面321を備えている。この実施形態では、第1部材本体3は、他端側全体を塞ぐようにかつ第2部材7に対向する所定厚さの第1対向壁32を備えており、第1対向面321は、第1対向壁32における第2部材7に対向する側の面に形成されている。
【0036】
また、第1対向面321には、スリーブ5を受容する受容凹部322が設けられているとともに、係合部材4を保持する保持部としての孔部323が設けられている。
【0037】
受容凹部322は、第1対向面321の中央部に、第1対向面321から差し込み部31側に円柱状に凹むように形成されている。
【0038】
孔部323は、受容凹部322の中心部に、受容凹部322から差し込み部31側に貫通するように形成されている。
【0039】
また、孔部323は、第1対向壁32の厚さ方向に漸次径が小さくなるテーパ状に形成されている。この実施形態では、孔部323は、第1対向面321側から差し込み部31側、即ち第1対向面321から深さが深くなるに従って、漸次径が小さくなるテーパ状に形成されており、第1対向面321側に最も径が大きい径大部324を備え、差し込み部31側に最も径が小さい径小部325を備えている。尚、孔部323は、上記とは反対に、第1対向面321から深さが深くなるに従って漸次径が大きくなるテーパ状のものでもよく、適宜変更できる。
【0040】
係合部材4は、この実施形態では、合成樹脂から形成されており、円盤状の本体部41と、その中心から延びる軸部42と、軸部42の先端に設けられた抜止部43とを有する。
【0041】
本体部41は、係合用凸部411と、付勢部材6を保持する付勢部材保持部412とを備えている。係合用凸部411は、この実施形態では、径内側に行くに従って漸次第2部材7側(図2のX2方向)に突出すように形成されている。
【0042】
付勢部材保持部412は、係合用凸部411の径内側となる本体部41の中心部に、係合用凸部411から第1部材本体3の差し込み部31側(図2のX1方向)に円筒状に突出するように形成されている。
【0043】
軸部42は、第1部材本体3の孔部323の径小部325内を第1対向面321に沿った方向(Y1-Y2方向/正確にはY1-Y2方向に限らず、Y1-Y2方向に直交する方向も含むが、便宜上Y1-Y2方向としている)に変位(移動)できるように、孔部323の径小部325よりも小さい幅(径)に形成されている。
【0044】
抜止部43は、孔部323に挿通した軸部42の抜止めをするためのもので、軸部42と一体成形によって軸部42の外周の両側に薄板片状に突出するように形成されており、幅Lが無負荷状態で第1部材本体3の孔部323の径小部325よりも大きく形成されている。また、抜止部43は、弾性を有しており、抜止部43が第1部材本体3の孔部323に第1対向面321側から押し入れられると、弾性によって幅Lが第1部材本体3の孔部323の径小部325よりも小さくなって差し込み部31に入り込む。抜止部43が差し込み部31側に入り込んで押し入れる際の力が除去された後は、図2に示すように弾性によって復元して幅Lが第1部材本体3の孔部323の径小部325よりも大きくなり、抜止部43が第1部材本体3の孔部323から抜け止めされる。
【0045】
また、この抜け止めされた状態で、係合部材4は、第1部材本体3の第1対向面321に直交する仮想軸の方向(X1-X2方向)、仮想軸に対して傾倒する方向、及び第1対向面321に沿った方向(Y1-Y2方向)に変位自在となるように第1部材本体3に支持されている。また、この係合部材4が第1部材本体3に支持された状態で、係合用凸部411が第1部材本体3の第1対向面321から第2部材7側(X2方向)に突出している。
【0046】
スリーブ5は、この実施形態では、合成樹脂から形成されており、底部511と筒部512とを有する有底筒状(円盤状)のスリーブ本体51と、スリーブ本体51の筒部512から径外方向(外周方向)に延びる鍔部52とを備えている。
【0047】
スリーブ本体51の底部511は、孔部323の径大部324と略同じ大きさに形成された貫通孔511aを備えている。
【0048】
筒部512は、第1部材本体3の受容凹部322内を第1対向面321に沿った方向(Y1-Y2方向)に変位できるように、外径R1が第1部材本体3の受容凹部322の内径R2よりも小さく形成されており(図4参照)、図2に示すように第1部材本体3の受容凹部322の内周と筒部512の外周との間に、全周にわたって所定量の隙間t1ができるようになっている。
【0049】
この実施形態では、第1部材本体3の受容凹部322の内径R2に対して筒部512の外径R1が2mm程度、小さく形成されている。
【0050】
鍔部52は、外径R3が第1部材本体3の受容凹部322の内径R2よりも大きく形成されている。
【0051】
そして、このように形成されたスリーブ5の筒部512が第1部材本体3の受容凹部322内に、第1対向面321に沿った方向(Y1-Y2方向)に変位できるように配設され、鍔部52が第1対向面321における受容凹部322の外周縁の全周に当接しており、スリーブ5は、第1部材本体3の第1対向面321と係合部材4との間に介在するように位置している。
【0052】
付勢部材6は、この実施形態では、円筒形のコイルスプリングから構成されている。この付勢部材6は、内径が付勢部材保持部412の外径と同程度の大きさのものから構成され、付勢部材6の内周に付勢部材保持部412の外周がちょうどはまり込むように形成されている。
【0053】
そして、付勢部材6は、その一端側がスリーブ本体51の底部511に当接し、他端側が係合部材4の付勢部材保持部412の外周に嵌め込められた状態で、係合部材4とスリーブ本体51との間に配設されている。これにより、係合部材4は、付勢部材6によって、後述の第2部材7の第2対向面72の側に向かって弾性的に付勢されている。
【0054】
第2部材7は、一端に第2手摺り105bの端部106bが差し込み固定される差し込み部71を有しており、この差し込み部71に、第2手摺り105bの端部106bが差し込まれ、第2部材7に設けられた固定ボルト挿入孔73から挿入された固定ボルト(図示しない)を介して第2手摺り105bの端部106bに固定される。
【0055】
また、第2部材7は、他端に、第1部材2の第1対向面321に対向する第2対向面72を有している。
【0056】
第2対向面72は、係合部材4の係合用凸部411と係合する係合用凹部721を備えている。係合用凹部721は、係合用凸部411にほぼ対応する形状に、第2対向面72から凹むように形成されている。
【0057】
なお、第2部材7は、この実施形態では、第1部材2と同様に金属から構成されている。
【0058】
以上のように構成された接続具1によって、例えば第1手摺り105aと第2手摺り105bとの2つの手摺りを接続するには、以下のようにして行うことができる。
【0059】
第1部材2の差し込み部31に第1手摺り105aの端部106aを差し込んで固定ボルト(図示しない)で固定し、第2部材7の差し込み部71に第2手摺り105bの端部106bを差し込んで固定ボルト(図示しない)で固定する。
【0060】
そして、第1部材2の第1対向面321と第2部材7の第2対向面72同士を略面対面で対向させると、第1部材2の係合部材4の係合用凸部411が第2部材7の第2対向面72の係合用凹部721に、弾力で仮想軸の方向(X1-X2方向)ら嵌合する。
【0061】
これにより、図1図2に示すように、第1手摺り105aの端部106aと第2手摺り105bの端部106bとが接続具1で接続される。
【0062】
この接続状態では、第1部材2の第1対向面321と第2部材7の第2対向面72との間に鍔部52が介在し、第1部材2の第1対向面321と第2部材7の第2対向面72とが直接的に接することがない。これにより、第1部材2の第1対向面321と第2部材7の第2対向面72とが互いに擦れて傷がつき、或いは、第1部材2の第1対向面321や第2部材7の第2対向面72に施された塗装が剥がれるようなことが防止される。
【0063】
また、この接続状態において、第1手摺り105aと第2手摺り105bとが互いにほとんどずれを生じていない場合には、図2に示すように、第1部材本体3の受容凹部322の内周と筒部512の外周との間に、全周にわたってほぼ同均等に隙間t1ができている。
【0064】
一方、例えば図5に示すように、第1手摺り105aに対して第2手摺り105bが第1対向面321に沿ったY1-Y2方向にずれを生じている場合には(この図5では、Y1方向にずれている場合を例示)、第2部材7の係合用凹部721に嵌合した係合部材4がスリーブ5と共に、第1手摺り105aに対する第2手摺り105bのずれ量だけ第1部材本体3に対して第1対向面321に沿った方向(この図5では、Y1方向)に移動する。その結果、第1部材本体3の受容凹部322の内周と筒部512の外周との間における一方側の隙間が狭くなり、他方側の隙間が広がる(図5では、Y1方向の隙間がなくなってY2方向の隙間がt2に広がっている)。これにより、係合部材4が第1対向面321に沿ったY1-Y2方向のずれに応じて変位(移動)してずれを吸収でき、第1手摺り105aと第2手摺り105bとを円滑に接続できる。
【0065】
この場合においても、第1部材2の第1対向面321と第2部材7の第2対向面72との間に鍔部52が介在しているため、第1部材2の第1対向面321と第2部材7の第2対向面72とが直接的に接することがなく、第1部材2の第1対向面321と第2部材7の第2対向面72とが互いに擦れて傷がつき、或いは、第1部材2の第1対向面321や第2部材7の第2対向面72に施した塗装が剥がれるようなことが防止される。
【0066】
また、第1手摺り105aに対して第2手摺り105bが第1対向面に直交する仮想軸に対して傾倒する方向にずれを生じている場合には、例えば図6に示すように、第2部材7の係合用凹部721に嵌合した係合部材4が、第1手摺り105aに対する第2手摺り105bの傾き量だけ第1部材本体3に対して係合部材4の軸部42が傾く。これにより、第1対向面に直交する仮想軸の方向X1-X2方向に対して傾倒する方向のずれに応じて係合部材4の軸部42が傾いてずれを吸収でき、第1手摺り105aと第2手摺り105bとを円滑に接続できる。
【0067】
なお、図6では、係合部材4がスリーブ5と共に、第1部材本体3に対して第1対向面321に沿ってY1方向に移動した状態を示している。
【0068】
係合部材4の軸部42が傾く際、孔部323が第1対向面321側から差し込み部31側に、漸次径が小さくなるテーパ状に形成されているため、軸部42が変位し易く、かつ確実に変位でき、円滑に傾くことができる。
【0069】
また、この場合においても、鍔部52によって第1部材2の第1対向面321と第2部材7の第2対向面72とが擦れて傷がつき、或いは、第1部材2の第1対向面321や第2部材7の第2対向面72に施した塗装が剥がれるようなことが防止される。
【0070】
なお、この実施形態では、各手摺り105a、105bは、壁面104に固定されたブラケット(図7参照)に仮固定された状態では、それぞれ仮想軸の方向(X1-X2方向)に移動できないから、接続状態が維持されるが、例えば、第2手摺り105bをブラケットによる仮固定状態から解除した後、第1部材2を第1手摺り105aに、第2部材7を第2手摺り105bにそれぞれ、固定ボルトで固定した状態で、第1手摺り105aに対して第2手摺り105bを第1対向面321に沿ってY1又はY2方向に強く引くと、係合部材4の係合用凸部411が弾力に抗して第1部材本体3側(X1方向)に押し込められて係合用凹部721から抜き出て、第1手摺り105aに対して第2手摺り105bを単独で第1対向面321に沿ってY1又はY2方向に取外すことができるようになっている。
【0071】
また、逆に、上記と反対方向に、第2手摺り105bを第1対向面321に沿ってY2又はY1方向に沿って強く押すと、弾力で突出位置に復帰している係合部材4の係合用凸部411が第2部材7の第2対向面72で押されることで、係合用凸部411が弾力に抗して第1部材本体3側(X1方向)に押し込められ、そして、係合用凸部411と係合用凹部721とが合致すると、弾力で嵌合する。これにより、図1に示すように、第1手摺り105aの端部106aと第2手摺り105bの端部106bとが接続具1で再接続されるようになる。
【0072】
以上、本発明によれば、係合部材4が第1対向面321に直交する仮想軸の方向(X1-X2方向)、仮想軸に対して傾倒する方向、及び第1対向面に沿った方向(Y1-Y2方向)に変位自在となるように第1部材本体3に支持され、かつ、付勢部材6によって第2対向面72の側に向かって弾性的に付勢されている。これにより、第2部材7が第1部材2に対して仮想軸の方向(X1-X2方向)、仮想軸に対して傾倒する方向、或いは、第1対向面に沿った方向(Y1-Y2方向)にずれを生じている場合でも、それらのずれに応じて係合部材が変位してずれを吸収でき、手摺り同士の様々なずれ具合にも充分に対応でき、容易かつ円滑に接続できるものになる。
【0073】
また、付勢部材6が係合部材4の本体部41と第1対向面321との間に配設されていることにより、第1対向面321に直交する仮想軸の方向、仮想軸に対して傾倒する方向、および第1対向面に沿った方向に変位自在となるように係合部材4を第1部材本体3に容易に支持できる。
【0074】
また、付勢部材6がコイルスプリングから構成されることにより、係合部材4が、第2対向面72の側に向かって安定的にかつ確実に付勢される。
【0075】
また、第1部材本体3が、第1対向面321と係合部材4との間に介在し第1対向面321に沿って係合部材4と共に変位可能なスリーブ5を備えているため、スリーブ5によって係合部材4を第1対向面321に沿って円滑にかつ確実に変位させることができる。
【0076】
第1対向壁がスリーブ5の筒部512を受容する受容凹部322を備えているため、スリーブ5が第1対向面321に沿った方向に変位した場合に、受容凹部322の内周面でスリーブ5の筒部512を受けることができ、第1対向面321に沿う方向のスリーブ5の変位を確実に止めることができる。これにより、第1対向面321に沿う方向のスリーブ5の変位に際して係合部材等の各部材が破壊等するようなことを防止できる。
【0077】
尚、上記実施形態では、係合部材4は、第1対向面に直交する仮想軸の方向、仮想軸に対して傾倒する方向及び第1対向面に沿った方向に変位自在とされたが、少なくとも係合部材4は仮想軸の方向及び仮想軸に対して傾倒する方向に変位自在であればよく、適宜変更できる。
【0078】
また、上記実施形態では、付勢部材は、コイルスプリングから構成されたが、この形態
のものに限らず、例えば板ばねや波スプリング等であってもよく、適宜変更できる。
【0079】
また、上記実施形態では、第1部材は、第1対向面に沿って係合部材と共に変位可能なスリーブ5を備えているが、スリーブ5を有しない形態のものでもよく、適宜変更できる。
【符号の説明】
【0080】
1 接続具
2 第1部材
3 第1部材本体
4 係合部材
5 スリーブ
6 付勢部材
7 第2部材
32 第1対向壁
321 第1対向面
323 孔部
42 軸部
43 抜止部
411 係合用凸部
52 鍔部
72 第2対向面
721 係合用凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7