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  • 特許-被洗浄物の洗浄方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】被洗浄物の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/04 20060101AFI20220818BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20220818BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
B08B3/04 A
B08B3/10 A
B08B3/10 Z
B08B3/12 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021173585
(22)【出願日】2021-10-25
【審査請求日】2021-10-29
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019884
【氏名又は名称】ジャパン・フィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】翠弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内野 正英
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-246289(JP,A)
【文献】特開2017-213542(JP,A)
【文献】特開2020-093211(JP,A)
【文献】特開2021-104494(JP,A)
【文献】特開2001-340818(JP,A)
【文献】特開2019-013913(JP,A)
【文献】特開2017-047340(JP,A)
【文献】特開平07-100442(JP,A)
【文献】特開平06-015239(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105262(WO,A1)
【文献】特開平07-290014(JP,A)
【文献】特開平07-163955(JP,A)
【文献】実開平06-184778(JP,U)
【文献】特開平06-189979(JP,A)
【文献】特開平03-269100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/04
B08B 3/10
B08B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄溶剤を用いた蒸気洗浄により被洗浄物に付着した油分を除去する第一洗浄を行った後に上記被洗浄物の自熱乾燥を行い、その後この被洗浄物を、脱脂力を伴わない洗浄液に浸漬するとともに当該洗浄液中にて上記被洗浄物に物理力を与えて油分以外の汚れを除去する第二洗浄を行い、上記第二洗浄で使用する洗浄液は、水、純水、HFC、3-メチル―3-メトキシブタノール、またはHFC又は3-メチル―3-メトキシブタノールと水又は純水との混合液であることを特徴とする被洗浄物の洗浄方法。
【請求項2】
上記第一洗浄時には、蒸気洗浄に加えて上記洗浄溶剤によるシャワー洗浄を行うことを特徴とする請求項1の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項3】
上記洗浄溶剤は、石油系溶剤、HFO、臭素系溶剤、または塩素系溶剤であることを特徴とする請求項1または2の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項4】
上記第二洗浄で除去する油分以外の汚れは、切粉、切削粉、またはチリであることを特徴とする請求項1の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項5】
上記第二洗浄の物理力は、超音波、上下揺動、噴流、または回転揺動であることを特徴とする請求項1の被洗浄物の洗浄方法。
【請求項6】
上記第一洗浄は、大気圧下、または減圧下で行うことを特徴とする請求項1、または2の被洗浄物の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品、電子部品、医療機器等の被洗浄物に付着した油分、及び油分以外の汚れの除去を個別に行う洗浄方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開H05-004077号公報 金属やセラミック、樹脂などの工業製品を製造する際には、プレス、切削等の加工を行う際に熱を発するため、加工油により材料を冷やしながら作業を行うのが一般的である。そのため、このような加工を行った場合、本願の被洗浄物となる工業製品には油分や切削くずなどの汚れが付着するためこれらを除去する必要がある。
【0004】
そのため、このような被洗浄物を洗浄する際には、特許文献1に示す如く洗浄溶剤を大量に使用することが一般的であった。しかしこのような大量の洗浄溶剤の使用は、光化学スモッグやオゾン層破壊、土壌汚染、公害の原因となっていた。また1995年のフロン113,1.1.1-トリクロロエタンが世界的に全廃となり、近年では二酸化炭素排出量の削減が世界的な課題となっているため、このような問題を解決するためには、洗浄時に使用する洗浄溶剤の使用量を大幅に減らす必要がある。
【0005】
しかし現在一般的に行われている洗浄方法では、被洗浄物に付着した油分や切粉、切削くずなどの汚れを化学的及び物理的手法によって被洗浄物から同時に除去するものであるため、依然として洗浄溶剤を大量に使用する必要があった。また石油系の洗浄溶剤を使用した場合には可燃物を取り扱う際の安全性を確保する観点から、専用の装置を用いる必要があるためコストが高くなるとともに、法律などで使用の際に多くの規制がかかるものとなる。またフロンの代替として使用する洗浄溶剤は価格が高く、ランニングコストが高くなるため大量に使用することは難しい。そのため、多くの企業はコストを低く抑えるために毒性の強いトリクロロエチレン、メチレンクロライド、臭素溶剤などを使用しなければならないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本願では上述の如き課題を解決しようとするものであって、大量の洗浄溶剤を用いることなく、洗浄溶剤の使用量を低減させて安全や地球環境に配慮した洗浄を可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の如き課題を解決するため、本願発明は洗浄溶剤を用いた蒸気洗浄により被洗浄物に付着した油分を除去する第一洗浄を行った後に上記被洗浄物の自熱乾燥を行い、その後この被洗浄物を、脱脂力を伴わない洗浄液に浸漬するとともに当該洗浄液中にて上記被洗浄物に物理力を与えて油分以外の汚れを除去する第二洗浄を行うことにより、上記洗浄溶剤及び上記洗浄液の使用量を抑えて温室効果ガスの排出を抑制可能としたものである。
【0008】
また、上記第二洗浄で使用する洗浄液は、水、純水、HFC、または3-メチル―3-メトキシブタノール、または、HFC又は3-メチル―3-メトキシブタノールと水又は純水との混合液である。これらの洗浄液は、脱脂力は少ないものの、毒性が低く取り扱いが容易であるとともに第一洗浄の洗浄溶剤よりも環境への負荷が低い。そのため、地球環境への負荷を低減することが可能となる。
【0009】
また、上記第一洗浄時には、蒸気洗浄に加えて上記洗浄溶剤によるシャワー洗浄を行うものであってもよい。
【0010】
また、上記洗浄溶剤は、石油系溶剤、HFO、臭素系溶剤、または塩素系溶剤であってもよい。
【0011】
また、上記第二洗浄で除去する油分以外の汚れは、切粉、切削粉、またはチリであってもよい。
【0012】
また、上記第二洗浄の物理力は、超音波、上下揺動、噴流、または回転揺動であってもよく、更に超音波、上下揺動、噴流、または回転揺動のうちの複数を組み合わせたものであっても良い。
【0013】
また、上記第一洗浄は、大気圧下、または減圧下で行うものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
従来、被洗浄物に油分や切粉、切削くず等が付着している洗浄では、これらの汚れを同時に洗浄するのが一般的であった。その上、このような被洗浄物を大量に洗浄する場合には、複数の槽を備えた、あるいは縦移動多段式の洗浄装置を使用するのが一般的である。そのため、油分の除去と切粉等の除去を同時に行う必要があることから、大量の洗浄溶剤を使用しなければならず、環境への影響が懸念されるものであった。
【0015】
そこで本願発明では上記の如く、油分の除去と油分以外の汚れの除去とを別々の洗浄工程により行うものであるから、油分除去のための第一洗浄では従来の洗浄溶剤を使用するものの、油分以外の汚れの除去には脱脂力を伴わない洗浄液として、水や環境負荷の小さい洗浄液であっても、油分以外の汚れの除去に十分対応可能である。そのため、従来より使用されている環境負荷の大きい洗浄溶剤の使用を極力低減することが可能となる。また第二洗浄では洗浄液中にて物理力を与えることにより、被洗浄物に付着した切粉、切削粉、あるいはチリなどを効果的に取り除くことが可能となる。
【0016】
また、第二洗浄は第一洗浄時に油分を除去した被洗浄物について洗浄を行うため、当該第二洗浄に使用する洗浄液は切粉、切削粉、チリなどが混ざるものとなる。しかし、このような使用後の洗浄液中には油分がほとんど混入されないため、使用済みの洗浄液からこれらの沈殿物を除去することにより、容易に再利用することができるものとなる。そのため、新たな洗浄液を必要とすることなく、何度も再利用を行うことが可能となり環境への負荷を低減することができる。
【0017】
以上の通り、本願発明は被洗浄物の洗浄工程全体における脱脂力が強く環境負荷の大きい洗浄溶剤の使用量を従来よりも低減することが可能となる。このような洗浄方法により、地球環境への負荷を低減することが可能となりカーボンニュートラルの達成に貢献し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願発明を示す実施例1の概念図。
図2】本願発明を示す実施例2の概念図。
図3】従来の洗浄方法に使用する洗浄装置を示す概念図。
【実施例1】
【0019】
まず、プレス加工や切削加工等を行った後の油分や切削くず等の汚れが付着した被洗浄物(51)を洗浄する際の従来の一般的な洗浄方法について以下に説明する。従来の洗浄方法は、被洗浄物(51)の液洗浄を行った後に蒸気洗浄を行うことが一般的であり、図3に示す如く温液洗浄槽(52)、冷液洗浄槽(53)、蒸気洗浄槽(54)が設けられた洗浄装置(56)を使用して洗浄を行う場合が多い。そしてこのような各洗浄槽(52)(53)(54)には全て同じ洗浄溶剤(55)を収納する必要があることから、大量の洗浄溶剤(55)が使用されるものとなり環境への悪影響が懸念されるとともに、当該洗浄溶剤(55)を再利用するための手間がかかるものとなっていた。
【0020】
一方、本実施例1では、図1に示す如く蒸気洗浄槽(1)と液洗浄槽(2)とを備えるとともに、蒸気洗浄槽(1)には油分を除去可能な洗浄溶剤(3)であるHFOを収納するとともに、液洗浄槽(2)には脱脂力を伴わない洗浄液(4)である水を収納している。尚、本実施例及び実施例2では洗浄溶剤(3)としてHFOを使用しているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、石油系溶剤、臭素系溶剤、又は塩素系溶剤であっても良い。また本実施例では洗浄液(4)として水を使用しているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、純水、HFC、3-メチル―3-メトキシブタノール、または、HFC又は3-メチル―3-メトキシブタノールと水又は純水との混合液を使用したものであっても良い。
【0021】
本実施例の洗浄方法に使用する洗浄装置(25)について以下に説明する。まず、蒸気洗浄槽(1)内には、底部側にヒーター(5)と温度センサー(6)とを備えている。更に当該蒸気洗浄槽(1)の開口部(7)側の内周には冷却コイル(8)を巻き回している。また当該蒸気洗浄槽(1)の高さ方向中央部よりもやや上方には、シャワーヘッド(10)を設けている。そしてこのシャワーヘッド(10)は、当該蒸気洗浄槽(1)から外方に延びる流通管(11)を通じてシャワータンク(12)に接続されている。尚、当該流通管(11)にはポンプ(13)が設けられるとともに、上記シャワータンク(12)内には蒸気洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)と同じ洗浄溶剤(3)が収納されている。
【0022】
更にこの蒸気洗浄槽(1)の周壁(30)の底部側には排出口(14)が設けられるとともに、この排出口(14)と上記シャワータンク(12)との間を排出管(15)にて連通可能としている。更に、上記冷却コイル(8)の下方には、当該冷却コイル(8)にて凝縮した洗浄溶剤(3)を回収するための回収トレー(16)が設けられており、この回収トレー(16)は、蒸気洗浄槽(1)の外方に設けた水分分離器(17)に、回収管(18)を通じて接続されている。
【0023】
更に当該水分分離器(17)は、接続管(26)を通じて上記排出管(15)に連結されている。またこの排出管(15)には、上記接続管(26)との連結部(20)よりも蒸気洗浄槽(1)側に第一開閉弁(21)を備えるとともに、シャワータンク(12)側に第二開閉弁(22)を備えている。また図1に示す如く、液洗浄槽(2)は、洗浄液(4)である水を収納するとともに、底部に超音波振動子(23)を固定配置している。
【0024】
上記の如き構成の洗浄装置(25)を用いた本実施例の洗浄方法について、以下に説明する。まず、図1に示す如く被洗浄物(27)を蒸気洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)の上方であってシャワーヘッド(10)よりも下方の位置に配置する。この状態で、流通管(11)のポンプ(13)を作動させてシャワータンク(12)からシャワーヘッド(10)に洗浄溶剤(3)を移送する。これにより、シャワーヘッド(10)から洗浄溶剤(3)が被洗浄物(27)に向けて噴出し、洗浄溶剤(3)によるシャワー洗浄が行われる。
【0025】
このようにシャワー洗浄を行うことにより、被洗浄物(27)を洗浄溶剤(3)により十分に冷やされるものとなるため、次に行う蒸気洗浄の際に効率よく凝縮を行うことができ、洗浄効果を向上させることができる。また、当該シャワー洗浄により使用した洗浄溶剤(3)はそのまま蒸気洗浄槽(1)内に貯留され、次の蒸気洗浄に使用されるものとなる。
【0026】
次に、蒸気洗浄槽(1)内のヒーター(5)を加熱させて蒸気洗浄槽(1)内の洗浄溶剤(3)を沸騰させる。これにより洗浄溶剤(3)の洗浄蒸気(28)が発生し、被洗浄物(27)の蒸気洗浄が行われる。そして、この蒸気洗浄及び上記シャワー洗浄により、被洗浄物(27)に付着した油分が洗浄溶剤(3)によって除去されるものとなり、本願の第一洗浄が終了する。
【0027】
尚、この蒸気洗浄時に冷却コイル(8)にて冷却された凝縮液は、回収トレー(16)を介して水分分離器(17)に移送される。そしてこの水分分離器(17)で水分を分離した洗浄溶剤(3)を蒸気洗浄槽(1)内に回収する場合には、第一開閉弁(21)を開弁するとともに第二開閉弁(22)を閉止することにより、当該洗浄溶剤(3)は、接続管(26)及び排出管(15)を通じて再び蒸気洗浄槽(1)に回収されるものとなる。また水分分離器(17)で水分を分離した洗浄溶剤(3)をシャワータンク(12)内に回収する場合には、第一開閉弁(21)を閉止するとともに第二開閉弁(22)を開弁することにより、当該洗浄溶剤(3)は接続管(26)及び排出管(15)を通じてシャワータンク(12)内に移送されるものとなる。
【0028】
上記第一洗浄を終了した後、本願の第二洗浄である液洗浄が行われる。即ち、まず上記の如く第一洗浄を終えた蒸気洗浄槽(1)内の被洗浄物(27)を当該蒸気洗浄槽(1)内で自熱乾燥する。その後、図1に示す如く液洗浄槽(2)の超音波振動子(23)の上方に配置するとともに、この被洗浄物(27)を洗浄液(4)中に浸漬した状態とする。この状態で超音波振動子(23)を作動させることにより超音波洗浄を行うとともに、上下駆動装置(図示せず。)により被洗浄物(27)を上下に揺動させる。これにより、被洗浄物(27)に超音波及び上下揺動による物理的な外力が加えられるため、当該被洗浄物(27)に付着した切粉や切削粉、チリなどを効果的に除去することが可能となる。
【0029】
尚、本実施例では上記の如く、被洗浄物(27)に物理的外力を与える方法として超音波洗浄や被洗浄物(27)の上下揺動を行っているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、被洗浄物(27)に噴流を与えたり被洗浄物(27)自体を回転揺動させたり、更にはこれら超音波、上下揺動、噴流、回転揺動を適宜組み合わせることにより、被洗浄物(27)に物理的力を付与することも可能である。
【0030】
また、上記の如く第二洗浄を行うことにより、洗浄液(4)中には切粉や切削粉、チリなどが混入するものとなるが、これらは自重により液洗浄槽(2)の底部に沈殿するものとなる。また、油分は第一洗浄時に被洗浄物(27)からほとんど除去されていることから、洗浄液(4)にほとんど混入されていない状態である。従って、当該洗浄液(4)については、特別な装置を用いて油分を分離するという手間を必要とすることなく、液洗浄槽(2)内に収納した状態で繰り返し再利用することができる。
【0031】
尚、本実施例では上記の如く、第一洗浄のみ洗浄溶剤(3)を用いるものであって、第二洗浄には環境負荷の少ない洗浄液(4)を使用し、更に当該洗浄溶剤(3)や洗浄液(4)を容易に再利用することができる。よって、本実施例は地球環境への負荷を低減することができることから、カーボンニュートラルの達成に貢献できる洗浄方法である。
【実施例2】
【0032】
また上記実施例1では大気圧下で第一洗浄を行っているが、本実施例2では洗浄溶剤(33)として石油系溶剤を用いるため、安全性を考慮して減圧下で第一洗浄を行うものである。本実施例について以下に説明すると、図2に示す如く蒸気洗浄槽(31)と液洗浄槽(32)とを備えている。そして、蒸気洗浄槽(31)の底部よりも下方に加熱槽(46)を設けるとともに、この加熱槽(46)と蒸気洗浄槽(31)との間には、連通弁(49)を通じて両者を連通可能とする連通管(50)を設けている。そして上記加熱槽(46)には、油分を除去可能な洗浄溶剤(33)である石油系溶剤を収納するとともに、液洗浄槽(32)には脱脂力を伴わない洗浄液(34)である水を収納している。
【0033】
尚、上記加熱槽(46)の内部は、内部に収納した洗浄溶剤(33)が外部に拡散しないよう密閉状態としている。また本実施例では洗浄液(34)として水を使用しているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、純水、HFC、3-メチル―3-メトキシブタノール、または、HFC又は3-メチル―3-メトキシブタノールと水又は純水との混合液を使用したものであっても良い。
【0034】
また蒸気洗浄槽(31)は、内部に洗浄蒸気(47)を発生させた際に当該洗浄蒸気(47)が外部に漏れ出ないよう、当該蒸気洗浄槽(31)の開口部(37)を上蓋(48)にて密閉可能としている。またこの蒸気洗浄槽(31)には回収管(38)に設けた第一開閉弁(40)を通じて当該蒸気洗浄槽(31)に連通可能な冷却器(43)が接続されるとともに、減圧管(41)を通じて真空解除弁(42)が接続されている。また上記冷却器(43)には真空ポンプ(44)が接続されている。そのため、蒸気洗浄槽(31)の上蓋(48)を密閉するとともに真空ポンプ(44)を作動させることにより、蒸気洗浄槽(31)内を減圧雰囲気下とすることが可能となる。
【0035】
また上記加熱槽(46)内には、加熱管(39)と温度センサー(36)とを備えている。また図2に示す如く、液洗浄槽(32)内には洗浄液(34)として水を収納するとともに、底部に超音波振動子(45)を固定配置している。
【0036】
上記の如き構成の洗浄装置(25)を用いた本実施例の洗浄方法について、以下に説明する。まず、あらかじめ真空解除弁(42) 、及び連通弁(49)を閉弁するとともに第一開閉弁(40)を開弁しておく。加熱槽(46)内の洗浄溶剤(33)を加熱管(39)により加熱し、洗浄蒸気(47)を発生させる。また図2に示す如く、蒸気洗浄槽(31)内に被洗浄物(51)を配置するとともに、当該蒸気洗浄槽(31)の開口部(37)に上蓋(48)を配置しておく。この状態で、真空ポンプ(44)を作動させて蒸気洗浄槽(31)内を減圧状態とする。
【0037】
その後、連通弁(49)を開弁して加熱槽(46)と蒸気洗浄槽(31)とを連通状態とすることにより、当該加熱槽(46)内に発生させた洗浄蒸気(47)が蒸気洗浄槽(31)内に送り込まれる。この状態で、当該蒸気洗浄槽(31)内にて被洗浄物(51)の蒸気洗浄が行われる。そして、この蒸気洗浄により、被洗浄物(51)に付着した油分が洗浄溶剤(33)によって除去されるものとなり、本願の第一洗浄が終了する。尚、この蒸気洗浄時に蒸気洗浄槽(31)内に発生した洗浄蒸気(47)は、第一開閉弁(40)を通じて冷却器(43)に移送されて冷却され、洗浄溶剤(33)として再び回収される。
【0038】
上記の如く第一洗浄を終えた蒸気洗浄槽(31)内の被洗浄物(51)を自熱乾燥した後、本願の第二洗浄である液洗浄が行われる。即ち、蒸気洗浄槽(31)内の洗浄蒸気を全て第一開閉弁(40)を通じて冷却器(43)に移送した後、第一開閉弁(40)を閉弁するとともに真空解除弁(42)を開弁することにより、蒸気洗浄槽(31)内の減圧状態を解除し大気圧とし、蒸気洗浄槽(31)の上蓋(48)を開けて当該蒸気洗浄槽(31)内にて自熱乾燥を終えた被洗浄物を取り出す。そして被洗浄物(51)を、図2に示す如く液洗浄槽(32)の超音波振動子(45)の上方に配置するとともに、この被洗浄物(51)を洗浄液(34)中に浸漬した状態とする。
【0039】
この状態で超音波振動子(23)を作動させることにより超音波洗浄を行うとともに、上下駆動装置(図示せず。)により被洗浄物(51)を上下に揺動させる。これにより、当該被洗浄物(51)に超音波及び上下揺動による物理的な外力が加えられるため、当該被洗浄物(51)に付着した切粉や切削粉、チリなどを効果的に除去することが可能となる。
【0040】
また、上記の如く第二洗浄を行うことにより、洗浄液(34)中には切粉や切削粉、チリなどが混入するものとなるが、これらは自重により液洗浄槽(32)の底部に沈殿するものとなる。また、油分は第一洗浄時に被洗浄物(51)からほとんど除去されていることから、洗浄液(34)にほとんど混入されてない状態である。従って、当該洗浄液(34)については、特別な装置を用いて油分を分離するという手間を必要とすることなく、液洗浄槽(32)内に収納した状態で繰り返し再利用することができる。
【0041】
尚、本実施例では上記の如く、第一洗浄のみ洗浄溶剤(33)を用いるものであって、第二洗浄には環境負荷の少ない洗浄液(34)を使用し、更に当該洗浄溶剤(33)や洗浄液(34)を容易に再利用することができる。よって、本実施例は地球環境への負荷を低減することができることから、カーボンニュートラルの達成に貢献できる洗浄方法である。
【符号の説明】
【0042】
3 洗浄溶剤
4 洗浄液
27 被洗浄物
【要約】
【課題】
大量の洗浄溶剤を用いることなく、安全や地球環境に配慮した洗浄を可能にしようとする。
【解決手段】
洗浄溶剤3を用いた蒸気洗浄により被洗浄物27に付着した油分を除去する第一洗浄を行った後、上記被洗浄物27を、脱脂力を伴わない洗浄液4に浸漬するとともに当該洗浄液中にて上記被洗浄物27に物理力を与えて油分以外の汚れを除去する第二洗浄を行うことにより、上記洗浄溶剤3及び上記洗浄液4の使用量を抑えて温室効果ガスの排出を抑制可能とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3