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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】押圧具
(51)【国際特許分類】
   A61H 39/04 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
A61H39/04 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022059399
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-03-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522129834
【氏名又は名称】千葉 正勝
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正勝
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130421(JP,A)
【文献】登録実用新案第3093963(JP,U)
【文献】実開昭51-071088(JP,U)
【文献】特開2011-182908(JP,A)
【文献】特開2017-192517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長細く形成され手で掴むグリップ本体と、このグリップ本体の先端部に進退可能に設けられ施術部を押圧する棒状の押圧部材と、前記グリップ本体の内部に設けられ前記押圧部材を施術部へ付勢する付勢部材とを備えた押圧具であって、
前記グリップ本体は、このグリップ本体の先端部に形成され施術時に施術部の周辺に接して移動を制限するとともに前記押圧部材が施術部に垂直に進退するようにガイドするガイドストッパと、施術時に前記ガイドストッパが施術部の周辺に接する位置まで前記押圧部材が押し込まれてから所定の時間経過したことを知らせるタイマー機構とを備え、
前記押圧部材の施術部に対する投影面積は0.5cm2以上、1.5cm2以下であり、
施術時に前記ガイドストッパが前記施術部の周辺に接した状態で、前記押圧部材は前記施術部を400gf/cm2以上、600gf/cm2以下の圧力で押圧するように設定されていることを特徴とする押圧具。
【請求項2】
請求項1記載の押圧具であって、
前記ガイドストッパは、前記押圧部材の進退方向に対して垂直方向に広がるとともに施術部に対向するように形成された平面であり、
前記ガイドストッパの外径は2cm以上、4cm以下であることを特徴とする押圧具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の押圧具であって、
前記グリップ本体は、前記ガイドストッパの後方に形成され徐々に外径が狭まる縮径部と、この縮径部の後方に形成され前記ガイドストッパの外径よりも小さい外径のくびれ部と、このくびれ部の後方に形成され前記くびれ部の外径よりも大きい外径の膨らみ部とを備えていることを特徴とする押圧具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項記載の押圧具であって、
前記押圧部材は、この押圧部材の先端部に半球状に形成された半球部を備えていることを特徴とする押圧具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項記載の押圧具であって、
前記タイマー機構は、前記押圧部材の後端部に設けられた可動接片と、前記グリップ本体に設けられ移動した前記可動接片と接触する固定接片と、前記可動接片及び前記固定接片に電気配線を介して接続された光源と、前記可動接片が前記固定接片に接触してスイッチがONになってから所定の時間経過後に前記光源が光るように制御する制御部と、この制御部及び前記光源に給電する電池とを備えていることを特徴とする押圧具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリップ本体に進退可能に設けられ施術部を押圧する押圧部材を備えた押圧具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の身体に点在しているツボや筋肉の所定部位を指や道具により押圧することで、筋肉をほぐしてリラックスさせるなど、身体に医療的、健康的な効果を与える施術が行われている。このような施術部を押圧する道具として特許文献1、特許文献2の押圧具が知られている。
【0003】
特許文献1の押圧具は、ほぼ球状に形成され手で把持する把持体と、内部が中空のパイプ状に形成された本体と、その本体内に収容されたコイルバネと、その上半部が本体の内部に収容され、且つその下半部が本体の下方に遊嵌状に突設された形態の押圧軸とを備え、本体下部の内壁と押圧軸とが相対向する部位に、押圧軸の左右方向への回動を防止するための回動防止手段を設けられている。
【0004】
特許文献2の押圧補助装置は、例えばユーザが手で持ってその先端部から患者に押圧を加えるための押圧スティックであり、押圧時に変形しない硬さをもつ合成樹脂製の細長い筒状本体と、筒状本体の先端近傍の開口内にスライド可能に挿入され患者の身体に直接当てられる押圧子と、押圧子の後端部を弾性的に支えるコイルバネとを備えている。
【0005】
ところで近年、マッサージにより筋肉を効果的に緩めるために、指又は押圧部材の先端部の押圧面積を1cm程度とし、且つ、約500gf/cmで施術部を垂直に押圧することで、筋肉を緩める効果が飛躍的に向上することが知られている。
【0006】
しかし、特許文献1の押圧具は、押圧軸をコイルバネで施術部へ付勢するものの、手で把持体を把持して押圧具を施術部に押し付けるだけであるため、施術時にコイルバネの縮み量を一定に調整することが難しく、押圧軸により約500gf/cmで施術部を押圧し続けることができない。さらには、押圧軸のみを施術部に押し付けるため軸が揺れやすく、施術部に押圧軸を垂直に押し付けることが難しい。
【0007】
また、特許文献2の押圧補助装置も、押圧子をコイルバネで施術部へ付勢するものの、手で筒状本体を把持して押圧補助装置を施術部に押し付けるだけであるため、施術時にコイルバネの縮み量を一定に調整することが難しく、押圧軸により約500gf/cmで施術部を押圧し続けることができない。
【0008】
一方、特許文献2の押圧補助装置は、特許文献1の押圧具と異なり、押圧子を筒状本体の先端と面一になるまで押し込むことが可能であるため、施術時に筒状本体の先端が施術部の周辺に接触するまで押し込み、そのときのコイルバネの縮み量により約500gf/cmで施術部を押圧するように設定することも考えられる。しかし、押圧子の外径に対して筒状本体の先端の外径がそれほど大きくなく、筒状本体の先端は単に押圧子を支持する程度の大きさしかないため、押圧子を筒状本体の先端と面一になるまで押し込むと、押圧子と共に筒状本体の先端まで施術部に食い込む状態となり、結果として約500gf/cmで施術部を押圧することが難しい。さらには、押圧子の外径に対して筒状本体の先端の外径がそれほど大きくないため、筒状本体の先端を施術部に接触させても軸が揺れやすく、施術部に押圧子を垂直に押し付けることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】登録実用新案第3191340号公報
【文献】特許第6356284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、押圧部材の先端部の押圧面積を所定の面積とし、且つ、所定の力で施術部を垂直に押圧することができる押圧具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]長細く形成され手で掴むグリップ本体と、このグリップ本体の先端部に進退可能に設けられ施術部を押圧する棒状の押圧部材と、前記グリップ本体の内部に設けられ前記押圧部材を施術部へ付勢する付勢部材とを備えた押圧具であって、
前記グリップ本体は、このグリップ本体の先端部に形成され施術時に施術部の周辺に接して移動を制限するとともに前記押圧部材が施術部に垂直に進退するようにガイドするガイドストッパを備え、
前記押圧部材の施術部に対する投影面積は0.5cm以上、1.5cm以下であり、
施術時に前記ガイドストッパが前記施術部の周辺に接した状態で、前記押圧部材は前記施術部を400gf/cm以上、600gf/cm以下の圧力で押圧するように設定されていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、グリップ本体は、このグリップ本体の先端部に形成され押圧部材が施術部に垂直に進退するようにガイドするガイドストッパを備えているので、押圧部材が施術部に垂直に押圧させることができる。さらにガイドストッパは、グリップ本体の先端部に形成され施術時に施術部の周辺に接して移動を制限するので、施術時にガイドストッパが施術部に食い込むことがなく移動が制限されるので、押圧部材のみで且つ適正な圧力で施術部を押圧することができる。さらに、押圧部材の施術部に対する投影面積は0.5cm以上、1.5cm以下であり、施術時にガイドストッパが施術部の周辺に接した状態で、押圧部材は施術部を400gf/cm以上、600gf/cm以下の圧力で押圧するように設定されているので、押圧部材の先端部の押圧面積を所定の面積とし、且つ、所定の力で施術部を垂直に押圧することができる。
【0013】
[2]好ましくは、前記ガイドストッパは、前記押圧部材の進退方向に対して垂直方向に広がるとともに施術部に対向するように形成された平面であり、
前記ガイドストッパの外径は2cm以上、4cm以下である。
【0014】
かかる構成によれば、ガイドストッパは、押圧部材の進退方向に対して垂直方向に広がるとともに施術部に対向するように形成された平面であるので簡単な構成とすることができる。仮にガイドストッパの外径を2cmよりも小さくすると施術部との接触面が少ないために施術時にグリップ本体がぐらつき易くなるところ、本発明の実施例ではガイドストッパの外径は2cm以上としたのでグリップ本体を施術部に対してぐらつくことなく垂直に状態を維持することができる。また、ガイドストッパの外径を4cmよりも大きくすると、患者が椅子に座った状態のときに足と胴の間の股関節付近などの狭い施術部にガイドストッパが入らなくなり施術がし難くなるところ、本発明の実施例ではガイドストッパの外径を4cm以下としたので狭い施術部に対してもガイドストッパを接触させて施術部を垂直に押圧することができる。
【0015】
[3]好ましくは、前記グリップ本体は、前記ガイドストッパの後方に形成され徐々に外径が狭まる縮径部と、この縮径部の後方に形成され前記ガイドストッパの外径よりも小さい外径のくびれ部と、このくびれ部の後方に形成され前記くびれ部の外径よりも大きい外径の膨らみ部とを備えている。
【0016】
かかる構成によれば、グリップ本体は、ガイドストッパの後方に形成され徐々に外径が狭まる縮径部と、この縮径部の後方に形成されガイドストッパの外径よりも小さい外径のくびれ部とを備えているので、施術時にグリップ本体を掴んだ手がグリップ本体の前方に滑ることを防止して好適に押圧することができる。さらに、グリップ本体は、くびれ部の後方に形成されくびれ部の外径よりも大きい外径の膨らみ部を備えているので、手の平で膨らみ部を包むように掴むことでき、グリップ本体が握り易くなり、押圧具を扱い易くできる。
【0017】
[4]好ましくは、前記押圧部材は、この押圧部材の先端部に半球状に形成された半球部を備えている。
【0018】
ツボや筋膜の境目など施術部の場所によっては、平面で押圧するよりも球面で押圧する方が適している場合がある。かかる構成によれば、押圧部材の先端部に半球状に形成された半球部を備えているので、球面で押圧するほうが適した施術部であっても好適に押圧することができる。
【0019】
]好ましくは、前記グリップ本体は、施術時に前記ガイドストッパが施術部の周辺に接する位置まで前記押圧部材が押し込まれてから所定の時間経過したことを知らせるタイマー機構を備えている。
【0020】
押圧面積を1cm程度とし、約500gf/cmで施術部を垂直に押圧する工程において、押圧部材を施術部に垂直に押し当て、押圧した状態のまま例えば2秒間で筋肉を伸縮させることを3回繰り返すことで、筋肉をより効果的にほぐすことができるところ、かかる構成によれば、タイマー機構により施術開始から正確に2秒間を知らせることができ、施術効果をより向上させることができる。
【0021】
]好ましくは、前記タイマー機構は、前記押圧部材の後端部に設けられた可動接片と、前記グリップ本体に設けられ移動した前記可動接片と接触する固定接片と、前記可動接片及び前記固定接片に電気配線を介して接続された光源と、前記可動接片が前記固定接片に接触してスイッチがONになってから所定の時間経過後に前記光源が光るように制御する制御部と、この制御部及び前記光源に給電する電池とを備えている。
【0022】
かかる構成によれば、押圧部材の後端部に設けられた可動接片が固定接片に接触してスイッチがONになるような構成のため、構成を簡単にすることができる。さらに、スイッチがONになってから所定の時間経過後に光源が光るように制御する制御部を備えているので、例えば施術開始から2秒後に光源が光るように設定することで、確実に押圧する工程を2秒間行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
押圧部材の先端部の押圧面積を所定の面積とし、且つ、所定の力で施術部を垂直に押圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例に係る押圧具の斜視図である。
図2図2(a)の押圧具の右側面図である。図2(b)は押圧具の正面図である。
図3図3(a)は押圧具の分解断面図である。図3(b)は押圧具の断面図である。
図4図4(a)~(c)は本発明の実施例の作用図である。図4(d)は比較例の作用図である。
図5】別態様の実施例に係る押圧具の要部断面である。
図6】図で5に係る押圧具の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、作用図は、押圧具を概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例
【0026】
図1図3に示されるように、押圧具10は、例えば腕91や肩などの施術部にグリップ本体20に進退可能に設けられた押圧部材50を垂直に押し当て、押圧した状態のまま2秒間隔で筋肉を伸縮させることを3回繰り返すことで、筋肉をほぐすのに好適な道具である。
【0027】
押圧具10は、長細く形成され手90(図4参照)で掴むグリップ本体20と、このグリップ本体20の先端部に進退可能に設けられ施術部を押圧する棒状の押圧部材50と、グリップ本体20の内部に設けられ押圧部材50を施術部へ付勢する付勢部材60とを備えている。
【0028】
グリップ本体20は、このグリップ本体20の先端部に形成され施術時に施術部の周辺に接して移動を制限するとともに押圧部材50が施術部に垂直に進退するようにガイドするガイドストッパ26を備えている。ガイドストッパ26は、押圧部材50の進退方向に対して垂直方向に広がるとともに施術部に対向するように形成された平面である。
【0029】
外面において、グリップ本体20は、平面で円形に形成された外径D1のガイドストッパ26と、このガイドストッパ26の外周から後方へ真っすぐ延びるように形成された段部25と、この段部25から後方に形成され徐々に外径が狭まる縮径部24と、この縮径部24の後方に形成されガイドストッパ26の外径D1よりも小さい外径D4のくびれ部23と、このくびれ部23の後方に形成されくびれ部23の外径D4よりも大きい外径D3の膨らみ部22と、この膨らみ部22から後方に窄むように形成された窄み部21とを備えている。
【0030】
各部の寸法については、例えば、ガイドストッパの外径D1は3.0cmであり、くびれ部23の外径D4は2.2cmであり、膨らみ部の外径D3は3.0cmであり、押圧部材の外径D2は略1.13cmである。また、押圧具10の長手方向の各部の寸法は、例えば、グリップ本体10の長さL1は13.0cmであり、段部25の長さL2は0.5cmである。また、使用していない状態における押圧部材50のガイドストッパ26からの取出量は1.2cmである。
【0031】
なお、実施例では各部の寸法と時間を前述のように設定したが、これに限定されず、ガイドストッパの外径D1をガイドストッパの外径は2cm以上、4cm以下としてもよい。ガイドストッパ26の外径D1を2cmよりも小さくすると施術部との接触面が少ないために施術時にグリップ本体20がぐらつき易くなるところ、本発明の実施例ではガイドストッパ26の外径D1は2cm以上としたのでグリップ本体を施術部に対してぐらつくことなく垂直に状態を維持することができる。また、ガイドストッパ26の外径D1を4cmよりも大きくすると、患者が椅子に座った状態のときに足と胴の間の股関節付近などの狭い施術部にガイドストッパ26が入らなくなり施術がし難くなるところ、本発明の実施例ではガイドストッパ26の外径D1を4cm以下としたので狭い施術部に対してもガイドストッパを接触させて施術部を垂直に押圧することができる。
【0032】
また、実施例では、くびれ部23の外径D4は2.2cmとしたが、1.8cm、2.0cm、2.5cmなど、ガイドストッパ26の外径D1および膨らみ部の外径D3よりも小さければ他の値であっても差し支えない。また、実施例では、膨らみ部の外径D3を3.0cmとしがたが、2.7cm、3.3cm、3.6cmなどとしてもよく、2.7cm以上、3.6cm以下であれば手で掴みやすく好ましい。また、実施例では、グリップ本体10の長さL1を13.0cmとしたが、10.0cm、12.0cm、15.0cmなど他の長さにしてもよい。また、実施例では、段部25の長さL2は0.5cmとしたが、0.3cm、0.7cmなど他の長さにしてもよい。
【0033】
押圧部材50は、この押圧部材50の先端部に半球状に形成された半球部51を備えている。押圧部材50の施術部に対する投影面積(押圧面積)は、1.0cmである。この場合の押圧部材50の外径D2は略1.13cmである。
【0034】
なお、実施例では、押圧部材50の施術部に対する投影面積(押圧面積)を、1.0cmとしたが、これに限定されず、押圧部材50の施術部に対する投影面積(押圧面積)は、0.5cm以上、1.5cm以下であればよい。押圧部材50の施術部に対する投影面積(押圧面積)を0.5cm未満にすると施術部への食い込みが大きくなり、他方、1.5cmより大きくすると人体のあばら骨の間のツボなど狭い施術部に押圧部材50が入り難くなる。このため押圧部材50の投影面積(押圧面積)は、0.5cm以上、1.5cm以下が好ましく、投影面積(押圧面積)が1.0cmであればより好ましく、筋肉のほぐし効果や使い勝手を向上させることができる。この場合の押圧部材50の外径D2は0.80cm以上、1.38cm以下であればよい。
【0035】
なお、押圧部材50の施術部に対する投影面積(押圧面積)を0.5cm未満や1.5cmより大きくしても構わない。また、実施例では、使用していない状態における押圧部材50のガイドストッパ26からの取出量を1.2cmとしたが、これに限定されず、0.8cm、1.0cm、1.4cmなど他の値であってもよい。
【0036】
図3(a)に示されるように、グリップ本体20は、先端側を構成する第1グリップ部材30と、後端側を構成する第2グリップ部材40とからなる。
【0037】
第1グリップ部材30は、後端37に設けられた大径穴31と、この大径穴31に設けられた雌ねじ部32と、大径穴31の底部33と、この底部33に設けられ大径穴31よりも内径の小さい収納穴34と、収納穴34の底部35と、この底部35に設けられ押圧部材50を摺動可能に支持する支持穴36とを備えている。
【0038】
第2グリップ部材40は、この第2グリップ部材40の本体から先端側へ突出して大径穴に挿通される突出部41と、この突出部41に設けられた雄ねじ部42と、突出部41の先端に設けられた受け面43と、突出部41の基端側に設けられた合わせ面44と、受け面43に設けられた小径穴45と、小径穴45の奥に設けられた窪み穴46とを備えている。なお、成形方法については、突出部41を本体とは別体で成形した後に本体に一体的に取り付けてもよく、成形方法は問わない。
【0039】
押圧部材は、先端部に半球状に形成された半球部51と、この半球部51から後方に延び支持穴36に摺動可能に支持される円柱部52と、この円柱部52の外径よりも大きい外径に形成されたフランジ部53と、このフランジ部53から後方に延びるばね支持部54とを備えている。付勢部材60は、コイルばねであり、ばね支持部54に支持されている。
【0040】
図3(b)に示されるように、第1グリップ部材30の雌ねじ部32に、第2グリップ部材40の雄ねじ部42が螺合され、付勢部材60の後端は受け面43に接し、付勢部材60の先端はフランジ部53に接した状態である。付勢部材60は、施術時にガイドストッパ26が施術部の周辺に接した状態で、押圧部材50は施術部を略500gf/cmの圧力で押圧するように設定されている。施術時にガイドストッパ26が施術部の周辺に接した状態とは、押圧部材50がグリップ本体20内に押し込まれ、押圧部材50の先端がガイドストッパ26と略面一又は押圧部材50の先端がガイドストッパ26の近傍まで後退した状態をいう。
【0041】
なお、実施例では、付勢部材60は、施術時にガイドストッパ26が施術部の周辺に接した状態で、押圧部材50は施術部を略500gf/cmの圧力で押圧するように設定したが、これに限定されず、押圧部材50は施術部を400gf/cm以上、600gf/cm以下の圧力で押圧するように設定してもよい。マッサージにより筋肉を効果的に緩めるために、押圧部材50により略500gf/cmで施術部を垂直に押圧することで、筋肉を緩める効果が飛躍的に向上するところ、500gf/cmから値がそれほど離れていない400gf/cm以上、600gf/cm以下の圧力で押圧することで筋肉を緩める効果が500gf/cmで押圧するのと同程度の筋肉を緩める効果が得られる。押圧部材50により略500gf/cmで施術部を垂直に押圧するのであればより筋肉のほぐし効果を向上させことができる。
【0042】
また、第1グリップ部材30の雌ねじ部32に、第2グリップ部材40の雄ねじ部42が螺合されているが、螺合の度合いを変えることで受け面43を移動させて付勢部材60の縮む長さを変えて押圧部材50による押圧する力を変えることができる。なお、実施例では、雌ねじ部32と雄ねじ部42の螺合により第1グリップ部材30と第2グリップ部材40を接続したが、これに限定されず、第1グリップ部材30と第2グリップ部材40を接着、溶着、圧入、別体のねじによるねじ止めなどの方法によって接続してもよい。また、実施例では、雌ねじ部32と雄ねじ部42の螺合の度合いを変えることで受け面43を移動させて付勢部材60の縮む長さを調整したが、これに限定されず、付勢部材60と受け面43の間に厚さの異なるスペーサーを設けることで付勢部材60の縮む長さを調整してもよい。
【0043】
次に以上に述べた押圧具10の作用を説明する。
図4(a)は実施例の押圧具10による施術開始前の状態を示す図であり、施術する者が手90で押圧具10を持っている。押圧部材50が腕91の施術部に接するように、押圧具10を矢印(1)のように移動させる。
【0044】
図4(b)は実施例の押圧具10による施術途中の状態を示す図であり、押圧部材50を施術部に接触させた状態で、ガイドストッパ26が施術部の周辺に接触するまで押圧具10を施術部にさらに移動させ、矢印(2)のように押圧部材50で施術部を押圧する。
【0045】
図4(c)は実施例の押圧具10の押圧状態を示す図であり、押圧部材50が腕91の施術部を押圧している。ここで、ガイドストッパ26の外径D1は例えば3.0cmと大きいため、ガイドストッパ26が施術部の周辺に接して移動を制限し、施術時にガイドストッパ26が施術部に食い込むことがない。このため、押圧部材50のみで且つ適正な圧力で施術部を押圧することができる。さらに、ガイドストッパ26の外径D1は例えば3.0cmと大きいので、押圧具10が施術部に対して傾くことを防ぎ、所定の力で施術部を垂直に押圧することができる。
【0046】
さらに、実施例の押圧具10では、段部25が腕91の表面上に位置することを目安とすることで、ガイドストッパ26が施術部に食い込んでいないことを目視で確認することができる。押圧具10で施術部を押圧する動作と押圧具10を施術部から離す動作を2秒間隔で繰り返すことで、筋肉を緩めてリラックスさせることができる。さらに、押圧具10は、くびれ部23(図2参照)及び縮径部24を備えているので、繰り返し動作で手90が汗ばんでも、手90がグリップ本体20の先端よりも先端側に滑って移動し施術部の周辺に接触することを防止でき、繰り返し動作によっても常に適切な圧力で押圧することができる。また、施術部の位置により、筋肉を緩めるだけでなく、筋膜を剥がす、いわゆる筋膜リリースに使用することもできる。
【0047】
図4(d)は比較例の押圧具100の押圧状態を示す図であり、押圧子101の外径に対して筒状本体の先端102の外径がそれほど大きくはない。筒状本体の先端102は単に押圧子101を支持する程度の大きさしかないため、施術時に押圧子101を筒状本体の先端102と面一になるまで押し込むと、押圧子101と共に筒状本体の先端102まで腕91の施術部に食い込む状態となり、結果として適切な圧力で施術部を押圧することができない。さらには、押圧子101の外径に対して筒状本体の先端102の外径がそれほど大きくないため、筒状本体の先端102を施術部に接触させても軸が傾き易く、施術部に押圧子101を垂直に押し付けることが難しい。
【0048】
次に別態様の実施例について説明する。なお、図1図4と同様の構成については符号を振り詳細な説明を省略する。
図5及び図6に示されるように、グリップ本体20は、長手方向に2つに分かれて構成されており、一方を構成する第1グリップ部材30aと、他方を構成する第2グリップ部材40aとからなる。
【0049】
押圧具10は、施術時にガイドストッパ26が施術部の周辺に接する位置まで押圧部材50が押し込まれてから所定の時間経過したことを知らせるタイマー機構70を備えている。
【0050】
タイマー機構70は、押圧部材50の後端部にねじ74で係止された可動接片73と、グリップ本体20の第1グリップ部材30aにねじ77で係止された係止片75と、この係止片75に設けられ移動した可動接片73と接触する固定接片76と、可動接片73及び固定接片76に電気配線72、78を介して接続された光源79と、光源79を囲うように設けられ光源79からの光を拡散させる拡散部材81と、可動接片73が固定接片76に接触してスイッチがONになってから所定の時間経過後に光源79が光るように制御する制御部71と、この制御部71及び光源79に給電する電池80と、を備えている。
【0051】
施術部を垂直に押圧する工程において、押圧部材50を施術部に垂直に押し当て、押圧した状態のまま例えば2秒間で筋肉を伸縮させることを3回繰り返すことで筋肉をより効果的にほぐすことができるところ、かかる構成によれば、タイマー機構70により施術開始から正確に2秒間を知らせることができ、筋肉の伸縮運動をさせるリズムを与えて施術効果をより向上させることができる。なお、秒数間隔を自由に設定してもよい。
【0052】
なお、実施例では、タイマー機構70は光源79を備え、光源79が光ることで所定の時間経過を施術者に知らせる構成としたが、これに限定されず、ブザーや振動で時間経過を施術者に知らせる構成としてもよい。また、光源79は、LEDが好ましく、LEDであれば省電力にすることができる。
【0053】
次に以上に述べた押圧具10の効果を説明する。
本発明の実施例では、グリップ本体20は、このグリップ本体20の先端部に形成され押圧部材50が施術部に垂直に進退するようにガイドするガイドストッパ26を備えているので、押圧部材50が施術部に垂直に押圧させることができる。さらにガイドストッパ26は、グリップ本体20の先端部に形成され施術時に施術部の周辺に接して移動を制限するので、施術時にガイドストッパ26が施術部に食い込むことがなく移動が制限されるので、押圧部材50のみで且つ適正な圧力で施術部を押圧することができる。さらに、押圧部材50の施術部に対する投影面積は0.5cm以上、1.5cm以下であり、施術時にガイドストッパ26が施術部の周辺に接した状態で、押圧部材50は施術部を400gf/cm以上、600gf/cm以下の圧力で押圧するように設定されているので、押圧部材50の先端部の押圧面積を所定の面積とし、且つ、所定の力で施術部を垂直に押圧することができる。
【0054】
さらに、本発明の実施例では、ガイドストッパ26は、押圧部材50の進退方向に対して垂直方向に広がるとともに施術部に対向するように形成された平面であるので簡単な構成とすることができる。仮にガイドストッパ26の外径を2cmよりも小さくすると施術部との接触面が少ないために施術時にグリップ本体20がぐらつき易くなるところ、本発明の実施例ではガイドストッパ26の外径は2cm以上としたのでグリップ本体20を施術部に対してぐらつくことなく垂直に状態を維持することができる。また、ガイドストッパ26の外径を4cmよりも大きくすると、患者が椅子に座った状態のときに足と胴の間の股関節付近などの狭い施術部にガイドストッパ26が入らなくなり施術がし難くなるところ、本発明の実施例ではガイドストッパ26の外径を4cm以下としたので狭い施術部に対してもガイドストッパ26を接触させて施術部を垂直に押圧することができる。
【0055】
さらに、グリップ本体20は、ガイドストッパ26の後方に形成され徐々に外径が狭まる縮径部24と、この縮径部24の後方に形成されガイドストッパ26の外径よりも小さい外径のくびれ部23とを備えているので、施術時にグリップ本体20を掴んだ手90がグリップ本体20の前方に滑ることを防止して好適に押圧することができる。さらに、グリップ本体20は、くびれ部23の後方に形成されくびれ部23の外径よりも大きい外径の膨らみ部22を備えているので、手の平で膨らみ部を包むように掴むことでき、グリップ本体20が握り易くなり、押圧具10を扱い易くできる。
【0056】
さらに、ツボや筋膜の境目など施術部の場所によっては、平面で押圧するよりも球面で押圧する方が適している場合がある。かかる構成によれば、押圧部材50の先端部に半球状に形成された半球部51を備えているので、球面で押圧するほうが適した施術部であっても好適に押圧することができる。
【0057】
さらに、押圧面積を1cm程度とし、約500gf/cmで施術部を垂直に押圧する工程おいて、押圧部材50を施術部に垂直に押し当て、押圧した状態のまま例えば2秒間で筋肉を伸縮させることを3回繰り返すことで、筋肉をより効果的にほぐすことができるところ、かかる構成によれば、タイマー機構70により施術開始から正確に2秒間を知らせることができ、施術効果をより向上させることができる。
【0058】
さらに、押圧部材50の後端部に設けられた可動接片73が固定接片76に接触してスイッチがONになるような構成のため、構成を簡単にすることができる。さらに、スイッチがONになってから所定の時間経過後に光源79が光るように制御する制御部71を備えているので、例えば施術開始から2秒後に光源が光るように設定することで、確実に押圧する工程を2秒間行うことができる。
【0059】
尚、実施例では、グリップ本体20の断面形状を円形としたが、これに限定されず、グリップ本体20の断面形状を楕円形としてもよい。楕円形にすることにより手90で掴み易くすることができる。また、実施例では、グリップ本体20を、第1グリップ部材30、30aと、第2グリップ部材40、40aとで構成したが、これに限定されず、グリップ本体20の分割数は1つ、3つ、4つでもよく、分割か所は、長手方向の前寄り、後寄り、長手方向断面など他の位置で分割してもよい。
【0060】
また、実施例では、タイマー機構70の設定を2秒間隔としたが、これに限定されず、1.5秒間隔、3秒間隔、異なる秒数の組み合せなど、2秒間隔以外の秒数であってもよい。
【0061】
また、実施例では、押圧部材50の先端部を半球部51としたが、これに限定されず、押圧部材50の先端部を平面、平面とこの平面の周囲の面取り、平面とこの周囲のいわゆるR、長方形の面など、押圧部材50の先端部の形状は他の形状でもよい。さらには、他の形状に交換可能なアタッチメントとしてもよい。
【0062】
また、実施例では、グリップ本体20を手90で把持する態様としたが、これに限定されず、グリップ本体20にベルトを装着し、背中など直接手90が届かない部位にもベルトを使用することで届くようにしてもよい。
【0063】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の押圧具は、腕、肩、腰、背中などの施術部の筋膜を緩めてリラックスさせる道具に好適である。
【符号の説明】
【0065】
10…押圧具、20…グリップ本体、21…窄み部、22…膨らみ部、23…くびれ部、24…縮径部、25…段部、26…ガイドストッパ、30、30a…第1グリップ部材、40、40a…第2グリップ部材、32…雌ねじ部、42…雄ねじ部、50…押圧部材、51…半球部、60…付勢部材(コイルバネ、ゴム、弾性部材)、70…タイマー機構、71…制御部、73…可動接片、76…固定接片、79…光源(LED)、80…電池、81…拡散部材、90…手、91…腕。

【要約】
【課題】押圧部材の先端部の押圧面積を所定の面積とし、且つ、所定の力で施術部を垂直に押圧することができる押圧具を提供する。
【解決手段】押圧具10は、例えば腕91や肩などの施術部にグリップ本体20に進退可能に設けられた押圧部材50を垂直に押し当て、押圧して筋肉をほぐすのに好適な道具である。押圧具10は、長細く形成され手で掴むグリップ本体20と、このグリップ本体20の先端部に進退可能に設けられ施術部を押圧する棒状の押圧部材50と、グリップ本体20の内部に設けられ押圧部材50を施術部へ付勢する付勢部材60とを備えている。グリップ本体20は、このグリップ本体20の先端部に形成され施術時に施術部の周辺に接して移動を制限するとともに押圧部材50が施術部に垂直に進退するようにガイドするガイドストッパ26を備えている。
【選択図】図3

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図3
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図6