(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】発熱体
(51)【国際特許分類】
A61F 7/03 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
A61F7/08 334T
(21)【出願番号】P 2019165361
(22)【出願日】2019-09-11
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】397007011
【氏名又は名称】株式会社オーシンエムエルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【氏名又は名称】小川 泰州
(74)【代理人】
【識別番号】100084630
【氏名又は名称】澤 喜代治
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲広
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-236725(JP,A)
【文献】登録実用新案第3175240(JP,U)
【文献】特開平2-29248(JP,A)
【文献】特開2009-291319(JP,A)
【文献】特開2010-57819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱剤が袋材内に封入されてなる発熱体であって、
前記袋材が、
前記発熱剤を封入するための主室と、
前記主室から独立した副室と、
を具備してなり、
前記副室内にカプセル剤が封入されてなることを特徴とする発熱体。
【請求項2】
請求項1に記載の発熱体において、
前記カプセル剤がシームレスカプセル剤となされた発熱体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発熱体において、
前記カプセル剤内に、冷却剤、芳香剤又は消臭剤のいずれかの薬剤が充填されてなる発熱体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発熱体において、
前記カプセル剤のカプセル強度が5~50Nとなされた発熱体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発熱体において、
前記カプセル剤の三軸平均径が0.5~10mmとなされた発熱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱剤が袋材内に封入されてなる発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に「使い捨てカイロ」と称される発熱体は、鉄粉を主成分とする発熱剤が通気性を有する袋材内に封入されたものであり、鉄粉の酸化反応による発熱を利用した温熱具の一種である。
【0003】
現在市場に流通している発熱体としては、矩形の通気性シートを二枚重ね、周縁をヒートシールすることによって形成した四方シール包装の袋材内に発熱剤が封入された構造のものが一般的である。最近では、発熱剤と共に芳香剤(香料)を袋材内に封入したり、袋材を構成する通気性シートに芳香剤を染み込ませたりすることによって、使用中に温熱と共に香気が生じる仕組みとなされたものも開発されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、温熱と共に香気が生じる仕組みとなされた発熱体は、使用時に必ず香気が生じるため、例えば、飛行機や電車等の公共交通機関を利用中における使用に不都合が生じることがある。
【0006】
本発明は、前記技術的課題に鑑みて開発されたものであり、香気等の温熱とは異なる機能の発生のタイミングを任意に選択することができる新規な発熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するための本発明の発熱体は、発熱剤が袋材内に封入されてなる発熱体であって、前記袋材が、前記発熱剤を封入するための主室と、前記主室から独立した副室と、を具備してなり、前記副室内にカプセル剤が封入されてなることを特徴とする(以下、「本発明発熱体」と称する。)。
【0008】
前記本発明発熱体においては、前記カプセル剤がシームレスカプセル剤となされたものが好ましい態様となる。
【0009】
前記本発明発熱体においては、前記カプセル剤内に、冷却剤、芳香剤又は消臭剤のいずれかの薬剤が充填されてなるものが好ましい態様となる。
【0010】
前記本発明発熱体においては、前記カプセル剤のカプセル強度が5~50Nとなされたものが好ましい態様となる。
【0011】
前記本発明発熱体においては、前記カプセル剤の三軸平均径が0.5~10mmとなされたものが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明発熱体は、カプセル剤に封入された薬剤に応じた機能の発生のタイミングを任意に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明発熱体の一実施形態を示す斜視図(a)と、A‐A断面図(b)である。
【
図2】
図2は、前記本発明発熱体に備えられたカプセル剤を潰している様子を示す正面図である。
【
図3】
図3は、本発明発熱体の別の実施形態を示す斜視図(a)と、B‐B断面図である。
【
図4】
図4は、本発明発熱体の更に別の実施形態を示す斜視図(a)と、分解斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<本発明発熱体(1)>
図1に、本発明発熱体1の一実施形態を示す。前記本発明発熱体1は、「発熱剤(2)」が「袋材(3)」内に封入された構造を有する。
【0016】
‐発熱剤2‐
本発明において前記発熱剤2は、粉末状、ペースト状、或いは定形状の各種剤型となされる。本実施形態においては、前記発熱剤2につき、鉄粉の酸化反応による発熱を利用した粉末状の発熱組成物を用いた。
【0017】
‐袋材3‐
本発明において前記袋材3は、「主室(31)」と、前記主室31から独立した「副室(32)」と、を具備する。前記主室31は、前記発熱剤2を封入するための空間であり、前記副室32は、後述するカプセル剤4を封入するための空間である。本実施形態においては、ポリエチレン製の通気性フィルムの一面にポリエステル製不織布が積層された二層構造の通気性シート30(30A、30B)を二枚重ね合わせ、前記主室31と前記副室32を形成する領域以外にヒートシールを施すことによって前記袋材3を得た。なお、前記副室32が前記主室31から「独立」している状態とは、前記主室31内の空間と前記副室32内の空間とが連続していないことを意味する。
【0018】
‐カプセル剤4‐
前記カプセル剤4は、何らかの機能を有する薬剤41がカプセル40によって封入された剤型を意味する。本実施形態においては前記薬剤41として液状の芳香剤(テルペン系芳香剤)を用い、この薬剤41を球形(直径3mm)のカプセル(ゼラチン系シームレスカプセル)40に封入させたシームレスカプセル剤を前記カプセル剤4として用いた。又、前記カプセル剤4は、そのカプセル強度が10Nになるように調整されている。なお、本発明において、「シームレスカプセル」とは、液体がその界面張力によって球形になる性質を利用して製造される継ぎ目のないカプセルを意味する。又、本発明において、「カプセル強度」とは、転がらないように台座に固定されたカプセル剤4に対して、鉛直下方に向かう負荷を加え、前記カプセル剤4が圧壊された時点の荷重(圧縮強度)を意味する。本実施形態においては、前記カプセル強度を測定するための測定器として、株式会社今田製作所製の引張圧縮試験機(型式:SV‐55CA)を用いた。
【0019】
前記構成を有する本発明発熱体1は、非通気性の外袋内に密封され、外気と隔離された状態で流通や保存に供される。そして、前記本発明発熱体1は、前記外袋を開封することによって、前記主室31内において前記発熱剤2と前記袋材3を通過した酸素とが接触し、発熱を開始する。
【0020】
一方、前記副室32内に存する前記カプセル剤4には、この開封作業による影響が与えられない。本実施形態において、前記カプセル剤4内に封入された薬剤41の有する機能(この場合、芳香)は、
図2に示すように、使用者が前記副室32越しに前記カプセル剤4に圧力を加えてカプセル40を押しつぶすことによって発現する。
【0021】
即ち、前記本発明発熱体1は、前記カプセル剤4に封入された薬剤41の有する機能の発生のタイミングを、前記発熱剤2による温熱の発生とは別のタイミングで任意に選択することができる。もちろん、前記本発明発熱体1においては、温熱の発生と同時に薬剤41の有する機能を発生させても良いし、発熱剤の酸化反応が終了し温熱の発生がなくなった時点で薬剤41の有する機能を発生させても良い。
【0022】
ところで、本実施形態においては、前記カプセル剤4につきシームレスカプセル剤を用いたが、本発明においては、前記カプセル剤4につき、軟カプセル剤や硬カプセル剤を用いても良い。又、前記カプセル剤4の外殻をなすカプセル40の素材についても特に限定されず、ゼラチンの他、例えば、デンプンや寒天或いはカラギーナン等の高分子材料を任意に選択することができる。
【0023】
又、本実施形態においては、前記カプセル剤4のカプセル強度を10Nに調整しているが、本発明においては、前記カプセル剤4のカプセル強度につき特に限定されない。前記カプセル剤4のカプセル強度としては、手指による押圧によって容易に潰れる程度に調整すれば良く、又、潰した際に心地よい感触が得られるように5~50Nとすることが好ましい。
【0024】
なお、本実施形態においては、使用者が前記副室32越しに前記カプセル剤4に圧力を加えてカプセル40を押しつぶすことによって前記カプセル剤4内に封入された薬剤41の有する機能を発現させているが、前記カプセル剤4の開封(薬剤41の開放)は、圧力による場合のみに限られない。例えば、前記カプセル剤4の外殻をなすカプセル40につきパラフィンワックス等の熱可塑性の素材にて構築し、圧力が加えられなくても前記発熱剤2の発熱発生から一定時間経過すれば前記カプセル40が溶け出すような仕組みとしても良い。
【0025】
更に、本実施形態においては、前記カプセル剤4につき直径3mmの球形としているが、本発明においては前記カプセル剤4の形状及び寸法について特に限定されない。前記カプセル剤4の寸法としては、三軸平均径0.5~10mmとすることが好ましい。
【0026】
加えて、本実施形態においては、前記カプセル剤4に封入される薬剤41として、液状の芳香剤を用いたが、本発明においては、前記カプセル剤4に封入される薬剤41の種類や剤型につき特に限定されない。前記薬剤41としては、芳香剤の他、メントールやハッカ油等の冷却剤やシリカゲルや活性炭等の消臭剤など、各種の機能性組成物を任意に選択することができる。又、剤型については、液状、粉末状、顆粒状等の各種剤型を適宜選択することができる。
【0027】
そして、本実施形態においては、前記袋材3に副室32を二箇所設け、各副室32にそれぞれカプセル剤4を一個ずつ封入しているが、本発明において、前記副室32の数や前記副室32に封入するカプセル剤4の数は特に限定されない。例えば、
図3に示すように、前記副室32内に複数のカプセル剤4を封入しても良い。この場合、各カプセル剤4内に封入する薬剤41の種類を同一とする必要はなく、異なる機能を有する薬剤41を封入した各種カプセル剤4を前記副室32内に同封しても良い。
【0028】
又、本実施形態においては、前記袋材3として、矩形の全体形状を有する四方シール構造の包装体を用いたが、本発明においては、前記袋材3の形状や構造、素材につき特に限定されない。前記袋材3としては、例えば、
図4に示すようなアイマスクとして使用し得る形状としても良い。なお、
図4に示すアイマスク形状の本発明発熱体1は、一の通気性シート30Aの片側面(内面)に塗布した粘着剤5を介して、他の通気性シート30Bを積層したものであり、積層の際に二枚の通気性シート(30A、30B)間に発熱剤2とカプセル剤4を介在させることによって、前記発熱剤2が封入された主室31と、前記カプセル剤4が封入された副室32を形成している。
【0029】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明発熱体は、香気等の温熱とは異なる機能の発生のタイミングを任意に選択することができる温熱具として利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 本発明発熱体(発熱体)
2 発熱剤
3 袋材
31 主室
32 副室
4 カプセル剤
40 カプセル
41 薬剤
5 粘着剤