(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】衝撃吸収部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 7/12 20060101AFI20220818BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20220818BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20220818BHJP
B60R 19/18 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
F16F7/12
F16F7/00 A
F16F7/00 K
B62D21/15 B
B60R19/18 N
(21)【出願番号】P 2019026415
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 寿久
(72)【発明者】
【氏名】高柳 旬一
(72)【発明者】
【氏名】小椎尾 一成
(72)【発明者】
【氏名】早川 宗孝
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/164931(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/100791(WO,A1)
【文献】特開2018-158671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/12
F16F 7/00
B62D 21/15
B60R 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製で中空の外側部材と、前記外側部材の内部に保持されている内側部材とによって、前記外側部材に入力された荷重を吸収可能な衝撃吸収部材において、
前記内側部材は、木材と、ソリッドな樹脂又は金属製のブラケットとを一体化することで構成されており、
前記外側部材に対して前記ブラケットを位置決めして保持している保持構造が設けられて
おり、
中空柱状又は中空筒状の前記外側部材は、前記木材が配置された状態で所定方向に延びる一般部と、前記一般部に対して適宜の向きに曲げ変形されている曲げ変形部とを有し、
前記保持構造は、前記曲げ変形部に対して密着するように曲げ変形しているブラケット部分を位置決めして保持している衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記木材は、長尺な柱状又は板状に形成されて、前記木材の長尺方向に延びる外面部を有し、前記外面部に一体化されたブラケット部分は、外面部以上の長さ寸法を有して、前記保持構造を介して前記外側部材に位置決めして保持されている請求項1に記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
前記ブラケットは、前記木材を包み込むように設けられている請求項1又は2に記載の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前
記ブラケットは、可撓性を備えたソリッドな樹脂で構成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材。
【請求項5】
金属製で中空の外側部材と、前記外側部材の内部に保持されている内側部材とによって、前記外側部材に入力された荷重を吸収可能な衝撃吸収部材の製造方法において、
前記内側部材は、木材と、ソリッドな樹脂又は金属製のブラケットとを一体化することで構成されており、
前記外側部材となる基材の内部に前記内側部材を配置したのち、前記基材の少なくとも一部を前記ブラケットとともに曲げ変形させて曲げ変形部を形成する曲げ工程を経て、前記外側部材を形成しつつ、前記外側部材に対して前記ブラケットを位置決めして保持し、
前記曲げ変形部とともに曲げ変形しているブラケット部分は、前記木材から突出して配置されている衝撃吸収部材の製造方法。
【請求項6】
前記曲げ変形部とともに曲げ変形しているブラケット部分を、曲げ工程ののちに設けられる保持構造によって前記曲げ変形部に位置決めして保持する請求項5に記載の衝撃吸収部材の製造方法。
【請求項7】
中空柱状又は中空筒状の前記基材に、曲げ工程を経て、前記木材が配置された状態で所定方向に延びる一般部と、前記一般部に対して適宜の向きに曲げ変形する曲げ変形部とを形成し、
前記曲げ変形部は、前記曲げ変形部とともに曲げ変形しているブラケット部分とともに、前記一般部の延長方向の両端側にそれぞれ形成される請求項5又は6に記載の衝撃吸収部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製で中空の外側部材と、外側部材の内部に保持されている内側部材とを備えた衝撃吸収部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両には、車両外装品や車両内装品として、本発明の外側部材に相当する金属製の中空部材が用いられることが多く、例えば車両前部のバンパリインフォースを一例に挙げることができる。そして金属製の中空部材には、外部からの荷重入力が想定されるのであるが、この荷重入力によって金属製の中空部材が局所的に大きく折れ曲がるといった事態(局所折れの発生)は極力回避すべきである。このため良好な衝撃吸収性能を有する木材を用いるなどして、金属製の中空部材に入力された荷重を吸収することにより、意図しない局所折れの発生を極力阻止することが考えられる。
【0003】
ここで特許文献1に開示の衝撃吸収用部材は、金属強度部材と、芯材と、支え部材を有している。金属強度部材は、金属製で中空柱状の部材であり、本発明の外側部材に相当する。また芯材は、繊維強化プラスチック(FRP)製の部材であり、本発明の内側部材に相当する。この芯材は、金属強度部材よりも小さな外形寸法を有しており、金属強度部材の内壁との間に適度な隙を設けて配置することができる。公知技術では、金属強度部材と芯材の間の隙に、発泡ウレタン樹脂製の支え部材を充填することにより、この支え部材を介して、金属強度部材内に短寸な芯材を保持している。そして金属強度部材に荷重が入力された際に、金属強度部材がまず変形し、つづいて芯材が変形することにより、入力された荷重を吸収することができる。そこで公知技術の構成を適用して、金属製の中空部材(外側部材)の内部に木材(内側部材)を位置決めして保持しておくことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで公知技術の構成を適用した場合、木材(内側部材)が、発泡ウレタン樹脂製の支え部材を介して金属製の中空部材(外側部材)の内部に保持される。しかし発泡ウレタン樹脂製の支え部材は、木材に比して柔軟で且つ経年劣化しやすい部材であるため、金属製の中空部材に対して木材を性能良く保持するには不向きの部材であった。すなわち柔軟な支え部材を用いる構成では木材の位置決め精度が出しづらく、また経年劣化しやすい支え部材は、耐久性等を考慮するとすんなり採用できる構成ではない。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、外側部材に対して内側部材を性能良く保持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の衝撃吸収部材は、金属製で中空の外側部材と、外側部材の内部に保持されている内側部材とによって、外側部材に入力された荷重を吸収可能な衝撃吸収部材である。この種の衝撃吸収部材では、外側部材に対して内側部材を性能良く(例えば優れた位置決め性を維持しつつ)保持できることが望ましい。そこで本発明の内側部材は、木材と、ソリッドな樹脂又は金属製のブラケットとを一体化することで構成されている。そして衝撃吸収部材には、外側部材に対してブラケットを位置決めして保持している保持構造が設けられている。本発明の内側部材では、発泡樹脂よりも硬く且つ耐久性に優れるブラケットを木材に一体化している。そして保持構造によって、ブラケットを外側部材に対して位置決めして保持したことにより、外側部材に対して内側部材を優れた位置決め性を維持しつつ保持しておくことが可能となる。
【0007】
第1発明の衝撃吸収部材は、中空柱状又は中空筒状の外側部材は、木材が配置された状態で所定方向に延びる一般部と、一般部に対して適宜の向きに曲げ変形されている曲げ変形部とを有している。そして保持構造は、曲げ変形部に対して密着するように曲げ変形しているブラケット部分を位置決めして保持している。本発明では、外側部材に曲げ変形部を設けたことにより、一般部に対する内側部材の相対移動を極力阻止することが可能となる。さらにブラケットを、保持構造にて曲げ変形部に密着させた状態で位置決めして保持しておくことにより、内側部材の優れた位置決め性の確保に資する構成となっている。
【0008】
第2発明の衝撃吸収部材は、第1発明の衝撃吸収部材において、木材は、長尺な柱状又は板状に形成されて、木材の長尺方向に延びる外面部を有している。そして外面部に一体化されたブラケット部分は、外面部以上の長さ寸法を有して、保持構造を介して外側部材に位置決めして保持されている。本発明では、保持構造を設けるべきブラケット部分の寸法を確保したことで、内側部材の優れた位置決め性の確保に更に資する構成となっている。
【0009】
第3発明の衝撃吸収部材は、第1発明又は第2発明の衝撃吸収部材において、ブラケットは、木材を包み込むように設けられている。本発明では、木材の周囲に配置されたブラケットによって、木材の外部刺激による劣化を極力阻止することができる。
【0010】
第4発明の衝撃吸収部材は、第1発明~第3発明のいずれかの衝撃吸収部材において、ブラケットは、可撓性を備えたソリッドな樹脂で構成されている。本発明では、ブラケットを、金属に比して軽量であるソリッドな樹脂で構成することで、衝撃吸収部材の軽量化に資する構成となっている。
【0011】
第5発明の衝撃吸収部材の製造方法は、金属製で中空の外側部材と、外側部材の内部に保持されている内側部材とによって、外側部材に入力された荷重を吸収可能な衝撃吸収部材の製造方法である。本発明の内側部材は、木材と、ソリッドな樹脂又は金属製のブラケットとを一体化することで構成されている。そして外側部材となる基材の内部に内側部材を配置したのち、基材の少なくとも一部をブラケットとともに曲げ変形させて曲げ変形部を形成する曲げ工程を経て、外側部材を形成しつつ、外側部材に対してブラケットを位置決めして保持することとした。本発明では、曲げ工程を経て外側部材に曲げ変形部を設けたことにより、外側部材に対する内側部材の相対移動を極力阻止することができる。そしてブラケットを、曲げ変形部とともに曲げ変形して密着させることにより、外側部材に対して内側部材を優れた位置決め性を維持しつつ保持することが可能となる。
また第5発明の衝撃吸収部材の製造方法は、曲げ変形部とともに曲げ変形しているブラケット部分は、木材から突出して配置されている。本発明では、突出状態の所定のブラケット部分を、木材からの影響を極力受けることなくスムーズに曲げ変形させることができ、外側部材に対してより適切に位置決めして保持させることが可能となっている。
【0012】
第6発明の衝撃吸収部材の製造方法は、第5発明の衝撃吸収部材の製造方法において、曲げ変形部とともに曲げ変形しているブラケット部分を、曲げ工程ののちに設けられる保持構造によって曲げ変形部に位置決めして保持する。本発明では、所定のブラケット部分を、曲げ変形部とともに曲げ変形して密着させ、さらに曲げ工程後に設けられる保持構造にてより確実に位置決めして保持することができる。
【0014】
第7発明の衝撃吸収部材の製造方法は、第5発明又は第6発明の衝撃吸収部材の製造方法において、中空柱状又は中空筒状の基材に、曲げ工程を経て、木材が配置された状態で所定方向に延びる一般部と、一般部に対して適宜の向きに曲げ変形する曲げ変形部とを形成する。そして曲げ変形部は、曲げ変形部とともに曲げ変形しているブラケット部分とともに、一般部の延長方向の両端側にそれぞれ形成される。本発明では、一般部の両端にそれぞれ設けられた曲げ変形部によって、一般部に対する内側部材の相対移動をより確実に阻止することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る第1発明によれば、外側部材に対して内側部材を性能良く保持することができる。また第1発明によれば、内側部材の優れた位置決め性の確保に資する構成とすることができる。また第2発明によれば、内側部材の優れた位置決め性の確保に更に資する構成とすることができる。また第3発明によれば、外側部材に対して内側部材をより性能良く保持することができる。また第4発明によれば、外側部材に対して内側部材を更に性能良く保持することができる。また第5発明によれば、外側部材に対して内側部材を性能良く保持することができる。また第5発明によれば、内側部材の優れた位置決め性の確保に更に資する構成とすることができる。また第6発明によれば、内側部材の優れた位置決め性の確保に資する構成とすることができる。そして第7発明によれば、内側部材の優れた位置決め性の確保に一層資する構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】衝撃吸収部材を示す車両前部の概略透視斜視図である。
【
図2】ブラケットを部分的に破断して示す衝撃吸収部材の斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線断面に相当する衝撃吸収部材の概略断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線断面に相当する衝撃吸収部材の概略断面図である。
【
図6】曲げ工程後の外側部材と内側部材の概略断面図である。
【
図8】変形例1の衝撃吸収部材の概略断面図である。
【
図9】変形例2の衝撃吸収部材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図9を参照して説明する。
図1には、便宜上、車両の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示する。また
図2~
図9では、便宜上、衝撃吸収部材及びその構成が車両に取付けられている状態を基準として、これらの前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示する。
【0018】
図1に示す車両2は、外形をなす車両ボディ4と、車両ボディ4の下部で前後に延びる左右一対のサイドメンバ6,8と、衝撃吸収部材10とを有している。この衝撃吸収部材10は、バンパリインフォースとして機能する部材であり、左右一対のサイドメンバ6,8に支持されて車両ボディ4の前部側に配設されている。そして衝撃吸収部材10によって、車両衝突時等に前方から入力される衝撃荷重Fを吸収するのであるが、このとき衝撃吸収部材10に局所折れが発生し、意図しない箇所で大きく折れ曲がることは極力回避すべきである。このため本実施例の衝撃吸収部材10では、外形をなしている外側部材20の内部に内側部材30を保持させ、外側部材20と内側部材30とで入力された衝撃荷重Fを吸収する構成となっている。そしてこの種の衝撃吸収部材10では、外側部材20に対して内側部材30を性能良く保持しておくことが望ましく、とりわけ内側部材30の優れた位置決め性を維持できることが望まれる。そこで本実施例では、後述する構成(保持構造40等)によって、外側部材20に対して内側部材30を性能良く保持することとした。以下、各構成について詳述する。
【0019】
[衝撃吸収部材(外側部材)]
図1に示す衝撃吸収部材10は、左右方向(車幅方向)に長尺な中空部材であり、外側部材20と、内側部材30と、保持構造40を有している。ここで衝撃吸収部材10の外形をなす外側部材20は、
図1~
図3に示すように左右方向に長尺とされた金属製で中空柱状の部材であり、バンパリインフォースとして使用可能な外形を有している。なお外側部材20の素材として、塑性変形可能な各種の金属や合金を用いることができ、車両ボディ4と同種の金属(鋼鉄等)でもよく異種の金属でもよい。
【0020】
そして
図1~
図3に示す外側部材20は、上方視において概ね弓なりに湾曲しており、一般部21と、右側曲げ変形部22と、左側曲げ変形部23とを有している。一般部21は、左右方向に(所定方向に)概ね直線的に延びている四角柱状の部位であり、後述する内側部材30の木材31を配置しておくことができる。この一般部21は、外側部材20の左右方向中央に適宜の長さ寸法を有して設けられており、衝撃荷重Fの入力が想定されている箇所である。また右側曲げ変形部22は、一般部21の右端側から後方に曲げ変形している箇所であり、右側に向かうにつれて次第に後方に湾曲している。また左側曲げ変形部23は、一般部21の左端側から後方に曲げ変形している箇所であり、左側に向かうにつれて次第に後方に湾曲している。そして本実施例では、後述する曲げ工程を経て、右側曲げ変形部22と左側曲げ変形部23とが概ね左右対称に設けられている。これら各曲げ変形部22,23は、後述する保持構造40の一部(曲げ構造)をなしており、内側部材30のブラケット34の一部が位置決めされて保持されている。
【0021】
[内側部材(木材)]
また外側部材20の内部に配置されている内側部材30は、
図2~
図4に示すように左右方向に長尺に形成されており、木材31と、ブラケット34(詳細後述)とを一体化することで構成されている。木材31は、内側部材30の芯部となる部材であり、車両衝突時にかかる衝撃荷重Fを圧縮しつつ潰れる(圧壊する)ことで吸収することができる。そして木材31は、外側部材20の一般部21の内部に収容可能な四角柱形状に形成されており、右端部31aと、左端部31bと、四つの側面部(前側面部31c,後側面部31d,上側面部31e,下側面部31f)とを有している。右端部31aは、外側部材20内に配置された状態を基準として右側曲げ変形部22を臨む位置に配置されており、木材31の左端部31bは、左側曲げ変形部23を臨む位置に配置されている。また各側面部31c~31fは、右端部31aと左端部31bの間で左右方向に延びている長尺な外面部分であり、上側面部31eと下側面部31fとが上下に対向配置され、前側面部31cと後側面部31dとが前後に対向配置されている。そして木材31の前外面をなす前側面部31cは、本発明の木材の長尺方向に延びる外面部に相当する箇所であり、外側部材20に入力された衝撃荷重Fを受止めることができる。
【0022】
ここで
図2~
図4に示す木材31は、スギやヒノキやマツなどの針葉樹、ケヤキやブナなどの広葉樹から採取することが可能であり、なかでも相対的に年輪32がはっきりしている針葉樹から採取することが望ましい(
図3では、便宜上、一部の年輪にのみ符号32を付す)。そして木材31は、
図3に示す年輪32の軸心方向を、一般部21の延長方向に沿って配置させてもよく、一般部21の延長方向に直交するように配置させてもよい。例えば本実施例の木材31は、その年輪32の軸心方向が一般部21の延長方向(左右方向)に沿って配置されており、比較的加工が容易な構成となっている。なお衝撃吸収性を優先して、木材31の年輪32の軸心方向を、一般部21の延長方向に直交する方向(前後方向)に向けて、衝撃荷重Fの入力方向に一致させることもできる。
【0023】
また木材31の密度は、衝撃吸収性や軽量性などを考慮して設定でき、典型的には密度0.2g/cm3~1.0g/cm3の範囲で設定できる。そして木材31の含水率は、所望の衝撃吸収性を備える限り特に限定しないが、典型的に含水率を5~16%の範囲に調整することができ、概ね10%を目安とすることが望ましく、概ね8%に設定することがより好ましい。なお木材31の含水率を概ね8%~10%とする方法として、室温約30度且つ湿度約90%の室内に木材31を予め決められた時間だけ載置する方法を例示できる。また木材31の含水率を測定する方法として、上記の手法で乾燥させた木材31の重量と、乾燥前の木材31の重量との差から含水率を測定する方法を例示できる。
【0024】
[ブラケット]
図2~
図4に示すブラケット34は、内側部材30の外形をなすソリッドな樹脂製の部材であり、備え付け部35(左右一対の突出部36,37)を有している(
図3及び
図4では、便宜上、備え付け部に相当するブラケットのハッチをその他の部分と異ならせている)。このブラケット34は、インサート成形や接着や融着などの手法で木材31の外側に一体化されており、本実施例では、概ね四角柱状に形成されて木材31を包み込むように一体化されている。すなわちブラケット34は、木材31の各端部31a,31bと各側面部31c~31fとを覆うように設けられ、さらにブラケット34の前側をなす備え付け部35(詳細後述)が、木材31の前側面部31cを被覆するように設けられている。このようにブラケット34にて木材31の周囲を被覆することで、木材31の光や水等(外部刺激)による劣化を極力回避することができ、耐久性向上に資する構成となる。
【0025】
またブラケット34の前側をなす備え付け部35は、
図2~
図4に示すように前側面部31cに沿うように左右に長尺となっている。この備え付け部35は、本発明の外面部に一体化されたブラケット部分に相当するとともに、外側部材20に保持される(備え付けられる)部分である。そして備え付け部35は、前側面部31cを超える左右の長さ寸法を有し、右側突出部36と左側突出部37とが設けられている。右側突出部36は、
図3に示すように木材31の右端部31aから右方に突出している備え付け部35の部位であり、外側部材20の右側曲げ変形部22に対して密着するように同じ方向に曲げ変形している。また左側突出部37は、木材31の左端部31bから左方に突出している備え付け部35の部位であり、外側部材20の左側曲げ変形部23に対して密着するように同じ方向に曲げ変形している。これら右側突出部36と左側突出部37とは概ね左右対称となるように設けられて、後述する保持構造40の一部(曲げ構造)をなし、さらに後述する保持構造40の締結構造が設けられる箇所である。そして本実施例では、保持構造40を設けるべき備え付け部35の長さ寸法を確保したことで、内側部材30の優れた位置決め性の確保に資する構成となっている。
【0026】
そして
図3及び
図4に示すブラケット34の外形寸法によって、内側部材30の長さ寸法Lと高さ寸法Hと幅寸法Wとを規定することができる。例えば
図3に示す木材31が配置する内側部材30部分の左右の寸法(長さ寸法L)は、ブラケット34の備え付け部35を除く左右の寸法で規定されている。この内側部材30部分の長さ寸法Lは、外側部材20の一般部21に収まる寸法に設定されており、本実施例では一般部21と概ね同一に設定されている。
【0027】
また
図4に示す内側部材30の上下の寸法(高さ寸法H)は、ブラケット34の上下の寸法で規定されており、内側部材30の前後の寸法(幅寸法W)は、ブラケット34の前後の寸法で規定されている。この内側部材30の高さ寸法Hと幅寸法Wとは、外側部材20の内部スペースISに応じて適宜設定することが可能である。例えば本実施例では、内側部材30の高さ寸法Hと幅寸法Wとを調節して、外側部材20の内部に内側部材30が実質的に隙の無い状態で収容されている。このように外側部材20の内部に内側部材30を配置することで、衝撃吸収部材10が概ね中実な状態となり、優れた衝撃吸収性を維持することが可能となる。なお実質的に隙の無い状態とは、外側部材20に対する内側部材30の挿入(押し込み)が可能なように、内側部材30の外面と外側部材20の内面の間に若干の隙(上下又は前後の隙)があることを許容する趣旨である。すなわち内側部材30の外形形状は、外側部材20への挿入を許容できる範囲でその内部スペースISに倣って形成されるが、完全に隙の無い状態とすることは困難な場合があり、また設計誤差にて若干の隙ができることも避けられない。そして挿入作業の関係や設計誤差によって外側部材20と内側部材30の間に若干の隙が生じたとしても、その隙は意図的なものではないため実質的に隙の無い状態とみなすことができる。
【0028】
ここでブラケット34を構成するソリッドな樹脂として、各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができ、適度な可撓性を備えた樹脂を用いることが望ましい。この種の熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(エチレン-2,6-ナフタレート)、ナイロン(ポリアミド)等のポリエステル樹脂、プロピレン-エチレン共重合体、ポリスチレン樹脂、芳香族ビニル系単量体と低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体、テレフタル酸-エチレングリコール-シクロヘキサンジメタノール共重合体、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂を例示することができる。また熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂を例示できる。そして熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂は単独で使用することができ、また二種以上を混合して使用することもできる。
【0029】
[外側部材に対する内側部材の保持]
図1~
図3に示す衝撃吸収部材10は、外側部材20の内部に内側部材30を保持した状態とされて車両ボディ4の前部側に設置される。そして車両衝突時に外側部材20に入力される衝撃荷重Fを、外側部材20と内側部材30の双方で吸収可能な状態としておく。この種の衝撃吸収部材10では、外側部材20に対して内側部材30を性能良く保持できることが望ましく、とりわけ優れた位置決め性を維持しつつ保持できることが望ましい。そこで本実施例の内側部材30は、木材31と、ソリッドな樹脂製のブラケット34とを一体化することで構成されている。そして衝撃吸収部材10には、外側部材20に対してブラケット34を位置決めして保持している後述の保持構造40が設けられている。
【0030】
[保持構造]
図3に示す保持構造40は、外側部材20に対してブラケット34を位置決めして保持している構造である。この保持構造40として、外側部材20と内側部材30の曲げ構造や、樹脂と金属とを固定する固定構造を採用でき、この種の固定構造として、締結構造、カシメ付け構造、接着や融着等の接着構造などの各種の構造を採用できる。そして本実施例の保持構造40では、後述するように、外側部材20と内側部材30の曲げ構造と、ボルト状の締結具41とナット42を用いた締結構造とを併用している。
【0031】
そして
図3に示す保持構造40としての曲げ構造(22と36,23と37)は、衝撃吸収部材10の一般部21の右側と左側とにそれぞれ設けられている。すなわち本実施例では、外側部材20の内部に内側部材30が配置された状態において、一般部21には、木材31とそれを包み込むブラケット34部分が配置されている。そして右側の曲げ構造は、右側曲げ変形部22と、木材31から右方に突出する右側突出部36とで構成され、これら両部22,36は互いに密着しつつ同じ向きに曲げ変形している。また左側の曲げ構造は、左側曲げ変形部23と、木材31から左方に突出する左側突出部37とで構成され、これら両部23,37は互いに密着しつつ同じ向きに曲げ変形している。このように本実施例では、一般部21が、その右側と左側とに設けられた保持構造40としての曲げ構造によって挟み付けられた状態となっている。そして保持構造40としての曲げ構造では、各曲げ変形部22(23)に対して各突出部36(37)が密着して適度に位置決めされて保持された状態となっている。このため一般部21に対して木材31とそれを包み込むブラケット34部分が左右方向に相対移動しようとしても、その左右方向移動が、左右の各曲げ構造(36等,37等)にてより確実に阻止されることとなる。
【0032】
さらに本実施例では、
図3に示す保持構造40としての締結構造によって、各曲げ変形部22(23)に対して各突出部36(37)が位置決めされて保持されている。すなわち衝撃吸収部材10では、右側曲げ変形部22に設けられた締結孔H1と、右側突出部36に設けられた締結孔H2とが同軸上に形成されている。これら両締結孔H1,H2に、締結構造をなす締結具41が挿通されてナット42で留められている。そして保持構造40としての締結構造(締結具41)は、
図1に示すように右側曲げ変形部22と右側突出部36の上下に設けられており、右側曲げ変形部22に対して右側突出部36を上下にバランスよく保持することができる。また
図1及び
図3を参照して、左側曲げ変形部23と左側突出部37にもそれぞれ締結孔H1,H2が同軸上に形成されており、これら各締結孔H1,H2に、締結構造をなす締結具41が挿通されてナット42で留められている。このように本実施例の保持構造40では、上述の曲げ構造と締結構造とで、ブラケット34の各突出部36(37)を、対応する曲げ変形部22(23)に位置決めして保持しておくことで、内側部材30の優れた位置決め性の確保に資する構成となっている。
【0033】
[衝撃吸収部材の製造方法]
ここで
図1~
図3に示す衝撃吸収部材10は、後述の製造方法(曲げ工程)を経て製造することができる。この衝撃吸収部材10の製造方法では、
図5に示すように、木材31とブラケット34とを一体化することで構成されている内側部材30を用意する。この内側部材30の各突出部36,37にはそれぞれ締結孔H2が適所に設けられている。また概ね直線的に形成されている基材20Xを用意し、この基材20Xにも締結孔H1が適所に設けられている。なお基材20Xの形成手法は特に限定しないが、典型的には単数又は複数の金属板を用いて形成しておくことができる。例えば基材20Xは、概ねコ字をなすように曲げ変形させた二枚の金属板を溶接や締結などで中空柱状となるように接合等することで形成でき、一枚の金属板を中空柱状に曲げ変形させて溶接等で固定することでも形成できる。
【0034】
そして内側部材30を、
図5に示すように基材20Xの内部に挿入しつつ(押し込みつつ)、基材20Xの適所に配置しておく。すなわち木材31とそれを包み込むブラケット34部分を、基材20Xの一般部となるべき箇所(21)に配置し、ブラケット34の各突出部36,37を、基材20Xの曲げ変形部となるべき箇所(22),(23)に配置しておく。つぎに
図6を参照して、基材20Xの少なくとも一部をブラケット34とともに曲げ変形させて曲げ変形部を形成する曲げ工程を経て外側部材20を形成する。このとき本実施例では、基材20Xの右側と左側を曲げ変形させることで、外側部材20に、一般部21と、右側曲げ変形部22と、左側曲げ変形部23とを形成する。この曲げ工程では、ブラケット34の右側突出部36が、右側曲げ変形部22と同方向に曲げ変形し、ブラケット34の左側突出部37が、左側曲げ変形部23とともに同方向に曲げ変形する。これら右側突出部36と左側突出部37は、本発明の曲げ変形部とともに曲げ変形しているブラケット部分に相当する。そして本実施例では、各突出部36,37を木材31から適宜の向きに突出させたため、曲げ工程の際に、各突出部36,37を、木材31からの影響を極力受けることなくスムーズに曲げ変形させることができる。さらに各突出部36,37だけを曲げ変形させて、木材31に意図しない応力が生じることを極力回避することで、木材31の優れた衝撃吸収性の維持に資する構成となっている。
【0035】
こうして本実施例では、保持構造40としての曲げ構造を設けたことで、各曲げ変形部22(23)に対して各突出部36(37)が密着して適度に位置決めされて保持された状態となる。また一般部21の左右方向(長尺方向)の両端側にそれぞれ曲げ構造(36等,37等)を設けることにより、外側部材20に対する内側部材30の移動をより確実に阻止することが可能となり、位置決め性の向上等に資する構成となる。そして
図6に示す外側部材20の各曲げ変形部22(23)に対して、これらに密着して配置された各突出部36(37)を、曲げ工程ののちに、保持構造40としての締結構造を介して位置決めして保持させる。すなわち右側曲げ変形部22の締結孔H1と、右側突出部36の締結孔H2とに、保持構造40(締結構造)をなす締結具41を挿通してナット42で留める。また同様に左側曲げ変形部23の締結孔H1と、左側突出部37の締結孔H2とに、保持構造40(締結構造)をなす締結具41を挿通してナット42で留める。こうして衝撃吸収部材10に、曲げ工程ののちに締結構造を更に設けることで、各曲げ変形部22(23)に対して各突出部36(37)をより確実に位置決めして保持することができる。
【0036】
[衝撃吸収部材の使用例]
図1~
図3を参照して、衝撃吸収部材10を、車両ボディ4の前部側にバンパリインフォースとして設置しておく。この状態の衝撃吸収部材10は、光や水などの外部刺激に晒されることがあり、この外部刺激によって木材31が過度に劣化するおそれがある。そこで本実施例では、ブラケット34で木材31を包み込んでおくことにより、外部刺激による木材31の劣化を極力回避でき、優れた耐久性の維持に資する構成となっている。さらに本実施例では、ブラケット34を、比較的軽量な樹脂で構成したことにより、車両2の軽量化に資する構成となっている。
【0037】
そして車両衝突時には、バンパリインフォースとしての衝撃吸収部材10によって、車両2に入力された衝撃荷重Fを吸収する。例えば本実施例では、地上から起立している柱状部材(図示省略)に車両2が衝突した場合を想定する。なお柱状部材の直径は、一般的に一般部21の左右の寸法よりも小さくなっている。そして衝撃吸収部材10には、柱状部材からの衝撃荷重Fが外側部材20の一般部21に入力され、この衝撃荷重Fを、一般部21の適度な圧縮変形と、内側部材30内の木材31の圧壊によって吸収することができる。このとき一般部21には局所的に大きな衝撃荷重Fが入力されるが、この入力された衝撃荷重Fは、一般部21の内部の木材31によって左右に分散されながら吸収されていく。こうして本実施例では、外側部材20と内側部材30とで衝撃荷重Fを分散させながら吸収して、一般部21の局所折れを極力回避することにより、衝撃吸収部材10が、意図しない箇所で大きく折れ曲がるといった事態を極力回避することが可能となる。
【0038】
以上説明したとおり、本実施例の衝撃吸収部材10の内側部材30では、発泡樹脂よりも硬く且つ耐久性に優れるブラケット34を木材31に一体化している。そして保持構造40によって、ブラケット34を外側部材20に対して位置決めして保持したことにより、外側部材20に対して内側部材30を優れた位置決め性を維持しつつ保持しておくことが可能となる。また本実施例では、外側部材20に各曲げ変形部22,23を設けたことにより、一般部21に対する内側部材30の相対移動を極力阻止することが可能となる。さらにブラケット34を、保持構造40にて各曲げ変形部22,23に密着させた状態で位置決めして保持しておくことにより、内側部材30の優れた位置決め性の確保に資する構成となっている。また本実施例では、保持構造40を設けるべきブラケット34(備え付け部35)の寸法を確保したことで、内側部材30の優れた位置決め性の確保に更に資する構成となっている。また本実施例では、木材31の周囲に配置されたブラケット34によって、木材31の外部刺激による劣化を極力阻止することができる。そして本実施例では、ブラケット34を、金属に比して軽量であるソリッドな樹脂で構成することで、衝撃吸収部材10の軽量化に資する構成となっている。このため本実施例によれば、外側部材20に対して内側部材30を性能良く保持することができる。
【0039】
また本実施例の衝撃吸収部材10の製造方法では、曲げ工程を経て外側部材20に各曲げ変形部22,23を設けたことにより、外側部材20に対する内側部材30の相対移動を極力阻止することができる。そしてブラケット34を、各曲げ変形部22,23とともに曲げ変形して密着させることにより、外側部材20に対して内側部材30を優れた位置決め性を維持しつつ保持することが可能となる。また本実施例では、所定のブラケット部分(各突出部36,37)を、各曲げ変形部22,23とともに曲げ変形して密着させ、さらに曲げ工程後に設けられる保持構造40(締結構造)にてより確実に位置決めして保持することができる。また本実施例では、突出状態の所定のブラケット部分(各突出部36,37)を、木材31からの影響を極力受けることなくスムーズに曲げ変形させることができ、外側部材20に対してより適切に位置決めして保持させることが可能となっている。そして本実施例では、一般部21の両端にそれぞれ設けられた各曲げ変形部22,23によって、一般部21に対する内側部材30の相対移動をより確実に阻止することが可能となる。
【0040】
[内側部材の別例]
ここで内側部材の構成は、上述の構成のほか、各種の構成を取り得る。例えば
図7に示す別例の衝撃吸収部材10Aでは、内側部材30Aが、木材31Aとブラケット34Aとを一体化することで構成されている。そして本別例では、実施例と同一の木材31Aを用いるのであるが、ブラケット34Aが、発泡樹脂よりも硬く且つ耐久性に優れる金属製の部材である点が実施例と異なっている。このブラケット34Aは、実施例の対応する部材と概ね同一の外形を有し、備え付け部35Aと、左右の突出部36A,37Aとを有している。この種のブラケット34Aの素材として、外側部材20とともに塑性変形可能な各種の金属を用いることができ、外側部材20と同種又異種の金属を用いることが可能である。また金属として、鋼鉄などの鉄系の金属のほか、アルミニウム合金系、マグネシウム合金系、チタン合金系等の金属を例示でき、さらに金属の厚みは、木材31Aの圧壊を許容するように設定することができる。
【0041】
なおブラケット34Aの形成手法は特に限定しないが、例えば備え付け部35Aをなす金属板を、その他の部分をなす断面コ字状の別の金属板MPに溶接等で固定することで形成できる。またブラケット34Aの内面に、締結や接着や融着などの手法で木材31Aを一体化しておくことが可能である。例えば図示しないボルト状の締結具を、ブラケット34Aと木材31Aの双方を前後に貫通するように設けることで、これらをより強固に一体化しておくことができる。なおこの場合には、図示しないボルト状の締結具を、衝撃荷重Fの入力が想定される箇所の左右にそれぞれ配置しておくことが望ましい。
【0042】
そして本別例の衝撃吸収部材10Aにおいても、外側部材20に対してブラケット34Aの各突出部36A,37Aを位置決めして保持している保持構造40が設けられている。この本別例の保持構造40として、外側部材20と内側部材30Aの曲げ構造や、金属同士を固定する固定構造を採用できる。そして本別例の保持構造40では、実施例と同様に、曲げ構造と、固定構造としての締結構造を併用しているが、その他の固定構造として、溶接構造、半田付けなどのろう接構造、カシメ付け構造、接着構造などの各種の構造を採用できる。こうして本別例においても、保持構造40によって各突出部36A,37Aを外側部材20に対して位置決めして保持したことにより、外側部材20に対して内側部材30Aを優れた位置決め性を維持しつつ保持しておくことが可能となる。
【0043】
[変形例1]
また衝撃吸収部材の構成は、上述の構成のほか、各種の構成を取り得る。例えば
図8に示す変形例1の衝撃吸収部材10Bは、外側部材20と内側部材30Bとを有しているが、内側部材30Bの外形が実施例と異なっている。すなわち内側部材30Bの外形をなすブラケット34Bは、木材を包み込むように概ね四角柱状に形成されており、突出部に相当する部分が省略されている(
図8では、便宜上、木材の図示を省略する)。そしてブラケット34Bの右側と左側とが、対応する曲げ変形部22,23とともに曲げ変形されることで、保持構造40としての曲げ構造が形成されている。さらにブラケット34Bの右側と左側とが、対応する曲げ変形部22,23に対して、保持構造40としての締結構造によって位置決めして保持されている。そして保持構造40をなす締結具41の先端は、各曲げ変形部22,23の締結孔H1を通じて、ブラケット34Bに設けられたネジ孔H3に螺合している。このように本変形例の内側部材30Bは、ブラケット34Bが、木材を包み込みつつ左右に長尺となっているため、衝撃吸収部材10Bの局所折れを広範囲にわたって極力回避することが可能となっている。
【0044】
なお変形例1では、各曲げ変形部22,23に、木材の右側と左側を若干圧縮変形させて配置しているが、ブラケット34Bだけを配置することも可能である。また本変形例では、保持構造40をなす締結具41を、外側部材20の前側に配置する構成とした。これとは異なり、締結具41を、外側部材20の後側に配置することもでき、外側部材20と内側部材30Bを前後に貫通させておくこともできる。すなわち本変形例のブラケット34Bは、前面側と後面側の双方が外側部材20とともに曲げ変形しているため、保持構造40としての固定構造の配設位置を比較的自由に設定することが可能である。このため本変形例では、保持構造40の配設位置の自由度が広がるなどして、車種に合わせた衝撃吸収部材10Bの設計変更等が容易な構成となっている。
【0045】
[変形例2]
また
図9に示す変形例2の衝撃吸収部材10Cは、外側部材20と内側部材30Cとを有しているが、内側部材30Cの構成が実施例と異なっている。すなわち本変形例では、実施例と同一の木材31Cを用いるのであるが、ブラケット34Cには、前側の備え付け部35と、後側備え付け部351とが設けられている。ここで前側の備え付け部35は、実施例の備え付け部と同一構成の部位であり、右側突出部36と左側突出部37とが設けられている。そして前側の備え付け部35では、実施例と同様に曲げ構造と締結構造(前側の保持構造40)とで、各突出部36(37)を、対応する曲げ変形部22(23)の前側内面に位置決めして保持しておくことができる。
【0046】
また後側備え付け部351は、ブラケット34Cの後側をなす部分であり、木材31Cの後側面部31dを被覆している。この後側備え付け部351は、後側面部31dを超える左右の長さ寸法を有し、前側の備え付け部35と同様に右後側突出部361と左後側突出部371とが設けられている。そして後側備え付け部351では、後側の保持構造40Xとしての締結構造で、各突出部361(371)を、対応する曲げ変形部22(23)の後側内面に位置決めして保持しておくことができる。すなわち右後側突出部361を、右側曲げ変形部22の後側内面に密着させるように同じ向きに曲げ変形させる。この状態で右側曲げ変形部22と右後側突出部361の各締結孔(符号省略)に、後側の保持構造40Xをなす締結具41が挿通されてナット42で留められている。また同様に左後側突出部371を、左側曲げ変形部23の後側内面に密着させるように同じ向きに曲げ変形させる。この状態で左側曲げ変形部23と左後側突出部371の各締結孔(符号省略)に、後側の保持構造40Xをなす締結具41が挿通されてナット42で留められている。こうして本変形例では、ブラケット34Cの左右側を、各保持構造40,40Xを介して外側部材20に対して前後にバランスよく位置決めして保持できるため、内側部材30Cの優れた位置決め性の確保に一層資する構成となっている。
【0047】
本実施形態の衝撃吸収部材10等は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、外側部材20の構成(形状,寸法,配置数,配置位置など)を例示したが、外側部材の構成を限定する趣旨ではない。例えば外側部材は、曲げ変形部を複数又は単数設けることが可能であり、一般部と曲げ変形部の形成位置も、衝撃吸収部材の用途等に応じて適宜設定することができる。また一般部は、衝撃吸収部材の用途に応じて左右方向や前後方向や上下方向や斜め方向などの各種の所定方向に延長させておくことが可能であり、直線的である場合のほか、内側部材の挿入後などに若干曲げておくこともできる。すなわち曲げ工程によって、木材の衝撃吸収性能が確保されるならば、基材を全体的に曲げ変形させることが可能である。また曲げ変形部は、外側部材を、前後左右上下の適宜の向きに曲げる(湾曲又は屈曲させる)ことで形成でき、例えば後方且つ上方などの二方向に曲げることもできる。なお外側部材に複数の曲げ変形部を設ける場合には曲げ変形部毎に曲げ方向を設定することが可能である。また曲げ変形部は、
図1に示すように外側部材の左右側を全体的に曲げ変形させることで形成する場合のほか、外側部材の前面等の一部を凹状に変形させることでも形成できる。そして外側部材の形状も適宜変更可能であり、三角柱状や四角柱状などの中空柱状や、円筒や楕円筒などの中空筒状とすることも可能であり、その断面は、全てが閉断面であってもよく一部に開断面が設けられていてもよい。
【0048】
また本実施形態では、内側部材30等の構成(形状,寸法,配置数,配置位置など)を例示したが、内側部材の構成を限定する趣旨ではない。本実施形態では、単数の内側部材を外側部材の内部に配置したが、複数の内側部材を配置することもできる。また一般部の局所折れを回避すべき箇所(折れ防止部位)に内側部材を配置し、一般部の折れや曲がりが許容できる箇所(折れ許容部位)に内側部材を意図的に配置しない(又は木材に凹部などの脆弱部を設ける)構成とすることもできる。このように折れ許容部位を脆弱化して意図的に折れ又は曲がり変形させることで、折れ防止部位の意図しない折れや曲がりをより確実に回避することが可能となる。また複数の内側部材を用いる場合には、年輪の軸心方向を木材毎に設定可能であり、例えば折れ防止部位において、木材の年輪の軸心方向を荷重の入力方向に一致させることもできる。また木材は、外側部材の内部スペースを考慮して、角柱や円柱などの柱状や板状などの各種の外形形状を取ることができ、例えば柱状や板状の木材を複数枚重ねたり並列させたりして用いることも可能である。
【0049】
またブラケットは、外側部材の構成に応じた突出部を有することができ、外側部材を直角又は鋭角的に屈曲させる場合には、突出部の折れの基点となるべき箇所にヒンジ構造(例えばインテグラルヒンジ等)を設けておくことができる。またブラケットとして、金属製の部材と、ソリッドな樹脂製の部材を組み合わせて用いることも可能である。またブラケットは、外側部材に保持可能な状態で、木材の少なくとも一部を覆うように配置されておればよい。すなわちブラケットは、木材を包み込むように設けられる場合のほか、木材の一部(各端部と各側面部の少なくとも一つ)に一体的に設けることができる。例えばブラケットを、木材の前側面部と後側面部(又は上側面部と下側面部)にのみ設けることもできる。このような場合には前側面部と後側面部に跨って配置するボルト状の締結具や板状の拘束具によって、ブラケットと木材を一体化しておくことができる。またブラケットの備え付け部は、対応する木材の外面部以上の長さ寸法を有していればよいが、一対又は単数の突出部を有していることが望ましい。そして実施例と別例と各変形例の内側部材の構成は適宜組み合わせて用いることができる。
【0050】
また本実施形態では、保持構造40の構成(形状,寸法,配置数,配置位置など)を例示したが、保持構造の構成を限定する趣旨ではない。例えば保持構造は、外側部材と内側部材の曲げ構造のみで形成することができ、金属と樹脂又は金属同士を固定する固定構造のみで形成することも可能である。そして保持構造として、接着構造を用いる場合には、外側部材とブラケットの一方に凸部位を設け、他方に凹部位を設けておくことが望ましい。例えばブラケットの外面の凸部位を、外側部材の内面の凹部位に挿入した状態で接着又は融着することで、これらの位置決め性が向上し、さらに接着構造に対してせん断方向(例えば
図3の左右方向)から力がかかった際にもこの力に強く抗することが可能となる。また実施例と各変形例の保持構造の構成は適宜組み合わせて用いることができる。
【0051】
また本実施形態では、衝撃吸収部材10の用途として、車両の前側に設置されるバンパリインフォースを例示したが、衝撃吸収部材は、車両外装材や車両内装材として幅広く使用することが可能である。例えば衝撃吸収部材は、車両の後面や側面に設置されるバンパリインフォースや、車両ボディの一部(ピラーやサイドメンバなど)として使用することができる。また衝撃吸収部材は、ドアや天井などの車室内の構造体の一部として使用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
2 車両
4 車両ボディ
6,8 サイドメンバ
10 衝撃吸収部材
20 外側部材
20X 基材
21 一般部
22 右側曲げ変形部
23 左側曲げ変形部
30 内側部材
31 木材
31a 右端部
31b 左端部
31c 前側面部(本発明の外面部)
31d 後側面部
31e 上側面部
31f 下側面部
32 年輪
34 ブラケット
IS ブラケットの内部スペース
35 備え付け部(本発明の木材の外面部に一体化されたブラケット部分)
36 右側突出部(本発明の曲げ変形部とともに曲げ変形しているブラケット部分)
37 左側突出部(本発明の曲げ変形部とともに曲げ変形しているブラケット部分)
40 保持構造
41 締結具
42 ナット
H1,H2 締結孔
L 内側部材の長さ寸法
W 内側部材の幅寸法
H 内側部材の高さ寸法
F 衝撃荷重
10A 別例の衝撃吸収部材
30A 別例の内側部材
31A 別例の木材
34A 別例のブラケット
MP 金属板
10B 変形例1の衝撃吸収部材
30B 変形例1の内側部材
34B 変形例1のブラケット
H3 ネジ孔
10C 変形例2の衝撃吸収部材
30C 変形例2の内側部材
31C 変形例2の木材
34C 変形例2のブラケット
35A 前側の備え付け部
351 後側備え付け部
361 右後側突出部
371 左後側突出部
40X 後側の保持構造