(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/22 20060101AFI20220818BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20220818BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
C08G18/22
C08G18/67
C08G18/08 095
C08G18/08 042
(21)【出願番号】P 2018176638
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 和博
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222068(JP,A)
【文献】国際公開第96/020967(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/113608(WO,A1)
【文献】特開2008-266579(JP,A)
【文献】特開2011-153177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法であって、
有機ビスマス化合物及び有機コバルト化合物の組合せを含む
触媒の存在下において、少なくともa)イソシアネート化合物とb)水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させる工程
を含むことを特徴とするウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項2】
前記工程が温度80℃以下及び圧力0.2MPa以下で実施される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
有機ビスマス化合物がカルボン酸ビスマス塩であり、有機コバルト化合物がカルボン酸コバルト
塩である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程が、有機溶剤を含む液相中にて実施される、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程が、
(1)A液として少なくともイソシアネート化合物が有機溶剤に溶解した溶液と、B液として少なくとも水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物が有機溶剤に溶解した溶液と前記触媒とを含む混合液とを混合する工程、又は
(2)A液として少なくともイソシアネート化合物が有機溶剤に溶解した溶液と前記触媒とを含む混合液と、B液として少なくとも水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物が有機溶剤に溶解した溶液とを混合する工程
により実施される、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
A液及びB液を一定の流量で連続的に供給しながら混合する、請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレートの新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合とアクリル基とを有する材料(オリゴマーを含む。)であり、硬質から軟質のものまで自由に設計することができる。このため、ウレタン(メタ)アクリレートは、ハードコート材をはじめとして、粘着剤、レジスト材料等の各種の用途に幅広く用いられている。
【0003】
特に、ウレタン(メタ)アクリレートは、高伸度・可撓性を有する材料をコーティング液から作製できるという点でも有望な材料であり、かかる見地からも様々な用途に使用されている。
【0004】
ウレタン(メタ)アクリレートは、様々な方法により合成されているが、その合成時には発熱を伴うため、分子量等の制御という見地より、その発熱を効果的に除去することが重要である。その点において、いわゆるフロー法による合成が、バッチ法に比して発熱制御を確実に行うことができるので有利である。
【0005】
このため、最近では、フロー法でポリマーを合成する方法も提案されている。例えば、分子末端に反応性官能基を有するプレポリマーを含有する流体(I)と前記反応性官能基と反応する官能基を分子内に2つ以上有する化合物を含有する流体(II)とを、前記の流体(I)と(II)が混合可能な構造を有するマイクロミキサーを用いて、該流路内で液密の加圧状態で混合した後、さらに流れ方向で流路断面積が縮小された流路に供給しながら流通させることを特徴とするポリマーの製造方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウレタン(メタ)アクリレートをバッチ法と同様の反応条件でフロー法にて合成しようする場合、分子量を制御すべく高い除熱効果を得るためにフロー法を実施するためのリアクター(配管チューブ)を長くする必要が生じる。その結果、歩留まりが低くなるほか、圧損が発生したり、反応途中において配管チューブ内で閉塞が生じたり、生産時間も長くなるおそれがある。
【0008】
上記のような問題を克服するためには、滞留時間の短縮が必要である。この場合、例えばイソシアネート類とアルコール類との付加重合をフローマイクロリアクター技術で実施することにより、滞留時間を短くする方法も考えられる。
【0009】
しかしながら、フローマイクロリアクターによる合成では、例えばリアクター内部を2MPaという高圧下かつ高温という厳しい条件で実施する必要がある。このため、製造装置が大掛かりになるだけでなく、製造コスト上の問題もあり、さらには副反応が生じる可能性も高くなる。そのため、比較的低温かつ常圧付近で合成する方法が求められるが、そのような方法が提案されるに至っていないのが現状である。
【0010】
従って、本発明の主な目的は、比較的マイルドな条件下でウレタン(メタ)アクリレートを合成できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の条件下でウレタン(メタ)アクリレートを合成する場合に上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記のウレタン(メタ)アクリレートの製造方法に係る。
1. ウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法であって、
(a)有機ビスマス化合物及び有機コバルト化合物の組合せを含む触媒又は(b)有機ビスマス化合物及び有機亜鉛化合物の組合せを含む触媒の存在下において、少なくともa)イソシアネート化合物とb)水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させる工程
を含むことを特徴とするウレタン(メタ)アクリレートの製造方法。
2. 前記工程が温度80℃以下及び圧力0.2MPa以下で実施される、前記項1に記載の製造方法。
3. 有機ビスマス化合物がカルボン酸ビスマス塩であり、有機コバルト化合物がカルボン酸コバルト塩であり、有機亜鉛化合物がカルボン酸亜鉛塩である、前記項1又は2に記載の製造方法。
4. 前記工程が、有機溶剤を含む液相中にて実施される、前記項1~3のいずれかに記載の製造方法。
5. 前記工程が、
(1)A液として少なくともイソシアネート化合物が有機溶剤に溶解した溶液と、B液として少なくとも水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物が有機溶剤に溶解した溶液と前記触媒とを含む混合液とを混合する工程、又は
(2)A液として少なくともイソシアネート化合物が有機溶剤に溶解した溶液と前記触媒とを含む混合液と、B液として少なくとも水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物が有機溶剤に溶解した溶液とを混合する工程
により実施される、前記項1~4のいずれかに記載の製造方法。
6. A液及びB液を一定の流量で連続的に供給しながら混合する、前記項5に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的マイルドな条件下でウレタン(メタ)アクリレートを合成できる方法を提供することができる。特に、本発明の製造方法では、特定の触媒の組合せの存在下で反応させるので、比較的マイルドな条件下の反応であっても、理論分子量に近い分子量をもつウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。例えば、数平均分子量が2300以上の高分子量のウレタン(メタ)アクリレートも効率的に製造することができる。
【0014】
このような特徴を有する本発明の製造方法により得られるウレタン(メタ)アクリレートは、各種の樹脂製品として用いることができる。特に、表面保護用フィルムとして、例えば携帯電話、タッチパネル、コンパクトディスク、オーディオ機器等のように、製品の表面に耐擦傷性が要求される物品に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例で用いたマイクロリアクターの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法
本発明の製造方法は、ウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法であって、
(a)有機ビスマス化合物及び有機コバルト化合物の組合せを含む触媒又は(b)有機ビスマス化合物及び有機亜鉛化合物の組合せを含む触媒の存在下において、少なくともa)イソシアネート化合物とb)水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させる工程
を含むことを特徴とする。
【0017】
なお、本明細書においては、特にことわりのない限り、ウレタンアクリレートとウレタンメタクリレートとを「ウレタン(メタ)アクリレート」と総称し、ウレタンアクリレートとウレタンメタクリレートとを「ウレタン(メタ)アクリレート」と総称する。また、特にことわりのない限り、アクリレート又はメタクリレートを「(メタ)アクリレート」と総称し、アクリル酸又はメタクリル酸を「(メタ)アクリル酸」と総称する。アクリロイル基又はメタクリロイル基を「(メタ)アクリロイル基」と総称する。アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を「(メタ)アクリロイルオキシ基」と総称する。
【0018】
また、本明細書においては、イソシアネート化合物を「a成分」、水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物を「b成分」、有機ビスマス化合物及び有機コバルト化合物の組合せを含む触媒を「触媒A」、有機ビスマス化合物及び有機亜鉛化合物の組合せを含む触媒を「触媒B」と称することがある。
【0019】
(1)反応系
a成分とb成分とを反応させる系としては、本発明の効果を妨げない限りは特に制限されず、液相、気相等のいずれであっても良いが、特に液相を採用することが好ましい。
【0020】
液相の形成に用いる溶媒としては、用いるa成分等の種類に応じて適宜設定できる。例えば、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等の各種の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
反応系を構成(調製)する方法としては、特に限定されず、例えばa)1つの溶媒に各成分及び触媒A又はBを添加する方法、b)a成分の溶液、b成分の溶液、触媒A又は触媒Bの溶液を溶媒を用いてそれぞれ調製した後、これらを混合する方法、c)a成分と触媒A又は触媒Bを含む混合液、b成分の溶液を溶媒を用いてそれぞれ調製した後、これらを混合する方法、d)a成分の溶液、b成分と触媒A又は触媒Bを含む混合液を溶媒を用いてそれぞれ調製した後、これらを混合する方法、e)a成分とb成分とを含む溶液、触媒A又は触媒Bの溶液を溶媒を用いてそれぞれ調製した後、これらを混合する方法等のいずれであっても良い。この場合、上記の各混合液は、触媒A又は触媒Bが溶媒に溶解していることが好ましい。また、上記b)~上記d)における各液の溶媒の種類は、同一又は異なっても良いが、同じであることが好ましい。すなわち、同じ種類の溶媒を用いて、各溶液を調製したうえでこれらを混合することが好ましい。
【0022】
本発明では、a成分及びb成分は、それぞれ溶媒に溶解させることが好ましいが、本発明の効果を妨げない限り、その一部が溶解せずに分散している状態であっても良い。また、触媒A又はBは、その粉末を構成する粒子が各溶液に分散していることが好ましい。
【0023】
a成分及びb成分の溶液における各濃度は、特に反応に支障がない限りは制限されないが、通常は20~80重量%の範囲内(好ましくは30~70重量%の範囲内)で適宜調整すれば良い。
【0024】
(2)反応条件
本発明の製造方法では、a成分とb成分とを触媒A又はBの存在下で反応させるので、比較的温和な条件下で実施することができる。
【0025】
反応温度は、限定的ではないが、通常80℃以下とすることが好ましく、特に60℃以下とすることがより好ましい。反応温度の下限値は、特に限定されないが、通常は10℃程度とすれば良い。
【0026】
圧力は、大気圧下でも良いが、減圧下又は加圧下であっても実施することができる。圧力は、例えばマイクロリアクターによる方法では、一定の流量で流れ出すと、比較的少ない圧力で出発材料を圧入することができる。圧入する場合の圧力としては、大気圧~0.2MPa程度の範囲内とすれば良いが、これに限定されない。
【0027】
反応形式としては、バッチ法、フロー法等のいずれであっても良いが、本発明の製造方法は、特にフロー法も好適に採用することができる。本発明では触媒A又は触媒Bの存在下で反応させるため、高温・高圧に設定する必要がないので、フロー法(特にマイクロリアクター装置を用いるフロー法)でも比較的温和な条件下で所望の分子量をもつウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成することができる。
【0028】
(2)触媒
触媒としては、(a)有機ビスマス化合物及び有機コバルト化合物の組合せを含む触媒(触媒A)又は(b)有機ビスマス化合物及び有機亜鉛化合物の組合せを含む触媒(触媒B)を用いる。本発明では、このような特定の組合せを含む触媒A又は触媒Bを用いることにより、効率的に高分子量のウレタン(メタ)アクリレートを合成することができる。
【0029】
有機ビスマス化合物としては、ビスマスを含む有機金属化合物であれば良く、例えばビスマスのカルボン酸塩、アルコキシド、アセチルアセトナート等が挙げられる。これらの中でも、ビスマスのカルボン酸塩を好適に用いることができる。前記カルボン酸塩としては、例えばナフテン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩等が挙げられる。これらのカルボン酸塩は、特に配位子を有する金属錯体(中心金属がビスマス)として存在するので、ウレタン(メタ)アクリレートの高分子量化に寄与することができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。また、これらの有機ビスマス化合物は、市販品を用いることもできる。
【0030】
有機コバルト化合物としては、コバルトを含む有機金属化合物であれば良く、例えばコバルトのカルボン酸塩、アルコキシド、アセチルアセトナート等が挙げられる。これらの中でも、コバルトのカルボン酸塩を好適に用いることができる。前記カルボン酸塩としては、例えばナフテン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩等が挙げられる。これらのカルボン酸塩は、特に配位子を有する金属錯体(中心金属がコバルト)として存在するので、ウレタン(メタ)アクリレートの高分子量化に寄与することができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。また、これらの有機コバルト化合物は、市販品を用いることもできる。
【0031】
有機亜鉛化合物としては、亜鉛を含む有機金属化合物であれば良く、例えば亜鉛のカルボン酸塩、アルコキシド、アセチルアセトナート等が挙げられる。これらの中でも、亜鉛のカルボン酸塩を好適に用いることができる。前記カルボン酸塩としては、例えばナフテン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩等が挙げられる。これらのカルボン酸塩は、特に配位子を有する金属錯体(中心金属が亜鉛)として存在するので、ウレタン(メタ)アクリレートの高分子量化に寄与することができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。また、これらの有機亜鉛化合物は、市販品を用いることもできる。
【0032】
触媒A、触媒Bの性状としては、通常は溶液で使用することができる。但し、本発明の効果を妨げない範囲内でその一部が溶解せずに分散していても良い。
【0033】
触媒Aにおける有機ビスマス化合物及び有機コバルト化合物の使用量は、用いる有機ビスマス化合物等の種類に応じて適宜設定でき、限定的ではない。一般的には、有機ビスマス化合物は、出発材料として用いるイソシアネート化合物(a成分)100重量部に対して0.5~20重量部程度とし、特に1~10重量部程度とすることが好ましい。また、有機コバルト化合物は、出発材料として用いるイソシアネート化合物(a成分)100重量部に対して0.1~10重量部程度とし、特に0.2~5重量部程度とすることが好ましい。また、有機ビスマス化合物及び有機コバルト化合物の割合は、特に制限されないが、通常は重量比で有機ビスマス化合物:有機コバルト化合物=100:10~50程度とし、好ましくは有機ビスマス化合物:有機コバルト化合物=100:20~40とすれば良い。
【0034】
触媒Bにおける有機ビスマス化合物及び有機亜鉛化合物の使用量は、用いる有機ビスマス化合物等の種類に応じて適宜設定でき、限定的ではない。一般的には、有機ビスマス化合物は、出発材料として用いるイソシアネート化合物(a成分)100重量部に対して0.5~20重量部程度とし、特に1~10重量部程度とすることが好ましい。また、有機亜鉛化合物は、出発材料として用いるイソシアネート化合物(a成分)100重量部に対して0.1~10重量部程度とし、特に0.2~5重量部程度とすることが好ましい。また、有機ビスマス化合物及び有機亜鉛化合物の割合は、特に制限されないが、通常は重量比で有機ビスマス化合物:有機亜鉛化合物=100:10~50程度とし、好ましくは有機ビスマス化合物:有機亜鉛化合物=100:15~30とすれば良い。
【0035】
なお、触媒Aにおいては、本発明の効果を妨げない範囲内において、有機ビスマス化合物及び有機コバルト化合物以外の物質が含まれていても良い。触媒Bにおいては、本発明の効果を妨げない範囲内において、有機ビスマス化合物及び有機亜鉛化合物以外の物質が含まれていても良い。
【0036】
(3)出発材料
本発明では、少なくとも上記a成分及び上記b成分を出発材料として採用し、これらを反応させることにより重合体を調製する。これらの出発材料自体は、公知のウレタン(メタ)アクリレート(あるいはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)の製造方法で使用されている出発材料と同様のもの用いることができる。従って、必要に応じてポリオール化合物(c成分)等も併用することができる。以下、これらの出発材料となる各成分について説明する。
【0037】
イソシアネート化合物(a成分)
イソシアネート化合物としては、例えばブチルイソシアネート、オクチルイソシアネート、フェニルイソシアネート等のモノイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ポリイソシアネートのほか、イソシアネートの3量体又は多量体(アダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体、アロファネート体)が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0038】
上記のように、これらa成分は、単官能性、2官能性、多官能性等のいずれのイソシアネート化合物を用いることができる。従って、例えば後記の実施例のように2官能性のイソシアネート化合物も好適に用いることができる。
【0039】
水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物(b成分)
水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物として、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1~16(好ましくは1~12)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を1個有する化合物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイル-オキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を2個有する化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を3個以上有する化合物等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0040】
上記のように、これらb成分は、単官能性、2官能性、多官能性等のいずれの(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。従って、例えば後記の実施例のように2官能性の(メタ)アクリレート化合物も好適に用いることができる。
【0041】
ポリオール化合物(c成分)
ポリオール化合物としては、例えば脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0042】
出発材料の配合比率
出発材料を用いる割合は、所望のウレタン(メタ)アクリレートの構造・特性に応じて適宜設定することができる。例えば、イソシアネート化合物(a成分)1モルに対し、水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物(b成分)を0.3~1.5モル(好ましくは0.5~1.2モル)を用いることができる。また、ポリオール化合物(c成分)も用いる場合は、ソシアネート化合物(a成分)1モルに対し、ポリオール化合物(c成分)を0.3~1.5モル(好ましくは0.5~1.2モル)を用いることができる。
【0043】
(4)反応生成物
反応生成物として得られるウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を1個以上有するものであれば良く、モノマー、オリゴマー又はポリマーのように所望の分子量に応じた反応生成物が得られる。
【0044】
特に、本発明では、オリゴマー又はポリマーにおいては、十分な分子量をもつウレタン(メタ)アクリレートをより確実に得ることができる。例えば、理論分子量が2500以上(好ましくは3000~5000)の高分子を設計することができる。そして、理論分子量に対し、例えば70~110%程度であり、好ましくは85~105%である高分子量のウレタン(メタ)アクリレートを製造することもできる。従って、例えば数平均分子量(Mn)が1750(2500×70%)以上のウレタン(メタ)アクリレートを製造することもできる。また例えば、後記の実施例のように、数平均分子量(Mn)が2000~4000(特に2300~4000、さらには2400~3800)のウレタン(メタ)アクリレートを効率的に製造することもできる。分子量分布(Mw/Mn)も、特に限定されないが、例えば1.1~1.4程度の範囲内のものを製造することもできる。
【0045】
反応によって得られた反応生成物は、このように十分な分子量を有しているので、そのまま各種の用途に用いることができる。特に液相反応による場合は、反応生成物が液状であるので、そのままで又は粘度・濃度調整した上で液体(コーティング液等)として各種の用途に用いることができる。また、必要に応じて一般的な固液分離方法により触媒を分離することもできる。さらに、必要に応じてウレタン(メタ)アクリレートの精製工程を実施することもできる。
【0046】
2.本発明の製造方法の実施の形態
フロー法により本発明の製造方法を実施する形態について説明する。フロー法による製造方法では、反応装置としてマイクロリアクター(フローリアクターとも呼ばれている。)を用いて好適に実施することができる。マイクロリアクター(装置)自体は、公知又は市販のものを用いることができる。
【0047】
本発明の実施形態で使用するマイクロリアクターの概略図を
図1に示す。マイクロリアクター10は、(1)出発材料(特に液状の出発材料)の供給部11a,11b、(2)各供給部からの出発材料を合流させるマイクロミキサー13、(3)各供給部とマイクロミキサーをつなぐ導入路12a,12b、(4)マイクロミキサー13で混合された混合物を反応させるリアクター14、(5)少なくともマイクロミキサー13及びリアクター14の温度制御を行う温度制御部15及び(6)反応生成物を取り出すための排出部16を含む。
【0048】
図1に示す装置では、供給部11a,11bは、一定の容量の出発材料を収容できるシリンジと、出発材料を一定の流量で供給できるシリンジポンプを組み合わせたものが採用されている。供給部は、必要に応じて2個又は3個以上設置することもできる。シリンジポンプにおける圧力を制御することにより、供給部からリアクターに供給する出発材料の流量を適宜変更することができる。1つのシリンジポンプにおける出発材料の容量は、限定的ではないが、例えば10~100ml程度とすることができる。
【0049】
マイクロミキサー13は、金属製のT字管を用いているが、必要に応じて他の材質(合成樹脂等)を用いることもできる。他の形状(例えばY字)のマイクロミキサー等も使用することができる。また、供給部が3個以上である場合は、その個数に対応したマイクロミキサーを採用すれば良い。マイクロミキサーの管の内径は、例えば0.5~20mm程度とすることができるが、これに限定されない。
【0050】
導入路12a,12bも、金属製のパイプを採用することができるが、必要に応じて他の材質(合成樹脂等)を用いることもできる。導入路の内径は、例えば0.5~10mm程度とすることができるが、これに限定されない。また、導入路の長さも、出発材料の種類、反応条件等に応じて適宜設定することができる。
【0051】
図1の装置におけるリアクター14は、コイル状に成形されており、そのコイルの長さによって反応時間を制御することもできる。例えば、リアクターの管の長さは5~100cm程度の範囲内で設定することができる。形状は、コイル状に限定されず、それ以外の形状のリアクターも採用することができる。リアクターの管の内径は、例えば0.5~10mm程度とすることができるが、これに限定されない。
【0052】
温度制御部15は、主にリアクターでの反応温度を制御するために作動させ、例えばリアクターでの反応が発熱反応である場合は、温度制御部により除熱することもできる。
図1では、温度制御部15として恒温室が採用されているが、他の加熱装置(例えば電熱ヒーター等)又は冷却装置(例えば冷風装置)を適宜用いることもできる。
【0053】
本発明の製造方法では、上記のような装置を用い、例えば1)一方の供給部11aに出発材料であるイソシアネート化合物を含む溶液を装填し、他方の供給部11bに出発材料である水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物を含む溶液を装填する工程、2)各出発材料をリアクター14に向けて圧入する工程、3)圧入された出発材料をマイクロミキサー13で合流させる工程、4)合流した混合物をリアクター14で反応させる工程、5)反応生成物を取り出す工程を含む方法を経て、ウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0054】
上記1)の工程では、予め調製した溶液を各供給部に充填する。この場合、触媒A又はBは、いずれの供給部に含有させても良い。例えば、水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物を含む溶液に触媒A又はBを溶解又は分散させることができる。また、各溶液の粘度は、限定されないが、各配管を円滑に流れるのに十分な粘度とすれば良く、例えば5~50mPa・s(25℃)程度に設定することができる。
【0055】
上記2)の工程では、各溶液をリアクター方向に圧入する。圧入は、例えばポンプ等の公知の加圧手段を採用することができる。圧入する際の圧力は、溶液の流量等に応じて適宜設定することができ、例えば大気圧~0.2MPa程度の範囲内とすれば良いが、これに限定されない。また、溶液の流量は、限定的ではないが、通常は0.1~10ml/hour程度の範囲内で適宜設定することができる。この場合、各溶液の流量は、互いに同じであっても良いし、異なる流量としても良い。
【0056】
上記3)の工程では、各溶液を合流させる。
図1では、1ヶ所で合流しているが、必要に応じて2ヶ所以上で合流させることもできる。また、反応は、基本的にはリアクター14で進行させるが、合流時に多少の反応が生じていても良い。
【0057】
上記4)の工程では、合流した混合物がリアクターの管内を通過しながら反応する。前記のとおり、リアクター14の管の長さを変更することにより反応時間を調節することができる。従って、一般に、リアクター14の管の長さは、出発材料が反応して所望の分子量をもつポリマーが得られるのに十分な長さに設定することができる。
【0058】
上記5)の工程では、液状の反応生成物を取り出す。反応初期に排出部16から取り出される反応生成物は反応が十分でない場合があるので、一定時間経過後に得られる反応生成物を回収することが好ましい。
【0059】
なお、実施の形態では、マイクロリアクターを1機用いているが、複数機を用いることによってより大量にウレタン(メタ)アクリレートを製造することが可能となる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0061】
実施例1
図1に示すマイクロリアクターを用いてウレタン(メタ)アクリレートを製造した。
図1に示すマイクロリアクター10は、T字型の管継手からなるマイクロミキサー13と、前記マイクロミキサー13の下流に連結されたリアクター14とを含んで構成される。
マイクロミキサー13は、株式会社ワイエムシー製(型番YMC-P-0019、SUS製T字リアクター、内径0.5mm)を使用した 。また、マイクロミキサー13には、その内部に第一の導入路12a、第二の導入路12b及びこれらが合流する流路が連結されている。マイクロミキサー13内においては、そのいずれの内径も同じである。
リアクター14としては、株式会社ワイエムシー製PTFEチューブ(内径=1mm、長さ=14cm)を使用した。送液用のポンプとしては、株式会社ワイエムシー製シリンジポンプ(型番YSP-101)を使用した。反応温度の調節は、マイクロリアクター全体を恒温乾燥器内(50℃)に設置することにより実施した。
イソホロンジイソシアネート(IPDI)(4.47g,20.1mmol,東京化成工業社製)を酢酸エチル(3.33g,純正化学社製)に溶解し、IPDIの酢酸エチル溶液(A)を調製した。また、グリセリンモノメタクリレート(3.6g,22.5mmol, 日油社製、製品名「ブレンマーGLM」)、ナフテン酸コバルト(23mg,0.056mmol、東京化成工業社製)、ナフテン酸ビスマス(91mg,0.88wt%, 楠本化成株式会社製、製品名「K-KAT XK-640」)を酢酸エチル(6.66g)に溶解し、ブレンマーGLM/触媒溶液(B)を調製した。IPDI溶液(A)とブレンマーGLM/触媒溶液(B)は、各々シリンジ(ディスポーザブルシリンジ)に吸い上げた後、T字型マイクロミキサーにそれぞれ流量0.286mL/hour及び0.374mL/hour、圧力0.1MPaでシリンジポンプを用いて送液した。チューブリアクター(内径1mm、長さ14cm)における滞留時間は10分間である。混合した反応溶液は、反応が安定化するまでの数分間は廃棄した。このようにしてウレタン(メタ)アクリレートを合成した。
【0062】
実施例2
基本的な操作は実施例1と同じであるが、滞留時間、リアクターの長さ等が異なるため、異なる点を中心に以下に示す(以下の実施例及び比較例についても同様である。)。IPDI(4.47g,20.1mmol)を酢酸エチル(3.33g)に溶解し、IPDIの酢酸エチル溶液(A)を調製した。また、ブレンマーGLM(3.6g,22.5mmol)、ナフテン酸コバルト(23mg,0.056mmol)、ナフテン酸ビスマス(91mg,0.88wt%)を酢酸エチル(6.66g)に溶解し、ブレンマーGLM/触媒溶液(B)を調製した。IPDI溶液(A)とブレンマーGLM/触媒溶液(B)は、各々シリンジに吸い上げた後、T字型マイクロミキサーにそれぞれ流量0.286mL/hour及び0.374mL/hour、圧力0.1MPaでシリンジポンプを用いて送液した。リアクター(内径1mm、長さ21cm)における滞留時間は15分間である。混合した反応溶液は、反応が安定化するまでの数分間は廃棄した。このようにしてウレタン(メタ)アクリレートを合成した。
【0063】
実施例3
IPDI(4.47g,20.1mmol)を酢酸エチル(3.33g)に溶解し、IPDIの酢酸エチル溶液(A)を調製した。また、ブレンマーGLM(3.6g,22.5mmol)、ナフテン酸亜鉛(18mg,0.056mmol,東京化成工業社製)、ナフテン酸ビスマス(91mg,0.88wt%)を酢酸エチル (6.66g)に溶解し、ブレンマーGLM/触媒溶液(B)を調製した。IPDI溶液(A)とブレンマーGLM/触媒溶液(B)は、各々シリンジに吸い上げた後、T字型マイクロミキサーにそれぞれ流量0.286mL/hour及び0.374mL/hour、圧力0.1MPaでシリンジポンプを用いて送液した。リアクター(内径1mm、長さ14cm)における滞留時間は10分間である。混合した反応溶液は、反応が安定化するまでの数分間は廃棄した。このようにしてウレタン(メタ)アクリレートを合成した。
【0064】
比較例1
IPDI(4.47g,20.1mmol)を酢酸エチル(3.33g)に溶解し、IPDIの酢酸エチル溶液(A)を調製した。また、ブレンマーGLM(3.6g,22.5mmol)、ナフテン酸コバルト(23mg,0.056mmol、東京化成工業社製)、ナフテン酸亜鉛(18mg,0.056mmol)を酢酸エチル(6.66g)に溶解し、ブレンマーGLM/触媒溶液(B)を調製した。IPDI溶液(A)とブレンマーGLM/触媒溶液(B)は、各々シリンジに吸い上げた後、T字型マイクロミキサーにそれぞれ流量0.286mL/hour及び0.374mL/hour、圧力0.1MPaでシリンジポンプを用いて送液した。リアクター(内径1mm、長さ14cm)における滞留時間は10分間である。混合した反応溶液は、反応が安定化するまでの数分間は廃棄した。このようにしてウレタン(メタ)アクリレートを合成した。
【0065】
比較例2
IPDI(4.47g,20.1mmol)を酢酸エチル(3.33g)に溶解し、IPDIの酢酸エチル溶液(A)を調製した。また、ブレンマーGLM(3.6g,22.5mmol)、ナフテン酸ビスマス(182mg,1.77wt%)を酢酸エチル(6.66g)に溶解し、ブレンマーGLM/触媒溶液(B)を調製した。IPDI溶液(A)とブレンマーGLM/触媒溶液(B)は、各々シリンジに吸い上げた後、T字型マイクロミキサーにそれぞれ流量0.286mL/hour及び0.374mL/hourの流量、圧力0.1MPaでシリンジポンプを用いて送液した。リアクター(内径1mm、長さ14cm)における滞留時間は10分間である。混合した反応溶液は、反応が安定化するまでの数分間は廃棄した。このようにしてウレタン(メタ)アクリレートを合成した。
【0066】
比較例3
IPDI(4.47g,20.1mmol)を酢酸エチル(3.33g)に溶解し、IPDIの酢酸エチル溶液(A)を調製した。また、ブレンマーGLM(3.6g,22.5mmol)、ナフテン酸コバルト(45mg,0.112mmol)を酢酸エチル(6.66g)に溶解し、ブレンマーGLM/触媒溶液(B)を調製した。IPDI溶液(A)とブレンマーGLM/触媒溶液(B)は、各々シリンジに吸い上げた後、T字型マイクロミキサーにそれぞれ流量0.286mL/hour及び0.374mL/hour、圧力0.1MPaでシリンジポンプを用いて送液した。リアクター(内径1mm、長さ14cm)における滞留時間は10分間である。混合した反応溶液は、反応が安定化するまでの数分間は廃棄した。このようにしてウレタン(メタ)アクリレートを合成した。
【0067】
比較例4
IPDI(4.47g,20.1mmol)を酢酸エチル(3.33g)に溶解し、IPDIの酢酸エチル溶液(A)を調製した。また、ブレンマーGLM(3.6g,22.5mmol)、ナフテン酸亜鉛(36mg,0.112mmol)を酢酸エチル(6.66g,純正化学社製)に溶解し、ブレンマーGLM/触媒溶液(B)を調製した。IPDI溶液(A)とブレンマーGLM/触媒溶液(B)は、各々シリンジに吸い上げた後、T字型マイクロミキサーにそれぞれ流量0.286mL/hour及び0.374mL/hour、圧力0.1MPaでシリンジポンプを用いて送液した。リアクター(内径1mm、長さ14cm)における滞留時間は10分間である。混合した反応溶液は、反応が安定化するまでの数分間は廃棄した。このようにしてウレタン(メタ)アクリレートを合成した。
【0068】
試験例1
各実施例及び比較例で得られた反応溶液中のウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。その結果を表1に示す。
測定方法は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により実施した。より具体的には、メタクリレートゲルカラム(TOSOH製、α-3000)を1本配置し、温度40℃、展開溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、蒸発光散乱検出器(ELSD-LTII)検出器により測定した。キャリブレーションは、市販のPEG重合体を標準サンプルとして用いて行った。
また、ウレタン(メタ)アクリレートの理論分子量(MWc)は、下記の式によって定義し、算出した。
MWc=1/(1-p)×(MOH+MNCO)
p=2官能性イソシアネートのモル数/2官能性アルコールのモル数
MOH:2官能性アルコール(ブレンマーGML(グリセリンモノメタクリレート))の分子量
MNCO:2官能性イソシアネート(イソホロンジイソシアネート)の分子量
【0069】
【0070】
表1の結果からも明らかなように、ビスマス系触媒とコバルト系触媒との組合せ、あるいはビスマス系触媒と亜鉛系触媒との組合せを採用した実施例1~3では、比較例よりも高い分子量を有するウレタン(メタ)アクリレートが得られることがわかる。
【0071】
本実施例では、ウレタン(メタ)アクリレートを含む反応液を用いて形成するコーティング膜の乾燥工程を考慮し、コーティング液の溶剤の沸点を下回り、かつ、常圧で滞留時間の短縮を検討した。目標とする滞留時間は、歩留まりを高くするために、10分間~15分間に設定した。特に、マイクロリアクター内での滞留時間の短縮のために、各種な触媒を用いて検討したところ、特定の触媒を2種類組合せることにより、滞留時間10~15分で低分散度かつ理論分子量(3641)相当のウレタン(メタ)アクリレートを製造することができた。
【0072】
本実施例で目的とするウレタン(メタ)アクリレートにおける理論分子量は、上記のとおり3641である。比較例1~3では、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))1.12~1.37と低い分散度を示すものの、単一の触媒であるカルボン酸ビスマス(比較例1)、ナフテン酸コバルト(比較例2)、ナフテン酸亜鉛(比較例3)の場合は分子量が700~2000であり、理論分子量よりも大幅に小さくなっていた。また、ナフテン酸亜鉛とナフテン酸コバルトの組合せの場合(比較例4)も、分子量が1513であり、理論分子量よりも大幅に小さかった。
【0073】
これに対し、各実施例1~3では、カルボン酸ビスマスを特定の金属を含むカルボン酸金属塩を組み合わせることにより、カルボン酸ビスマス単独で反応させたときの分子量と比較して、分子量の増大が確認され、分子量分布(Mw/Mn)1.19~1.39と低い分散度を示し、理論分子量の70~110%の数平均分子量が得られることがわかる。その理由は、定かではないが、成長過程のウレタン(メタ)アクリレートの分子量の大きさによって、触媒へのイソシアネート基又はアルコール基(水酸基)の配位のしやすさが変わるため、各々の触媒を組み合わせることで高分子量となったと考えられる。