(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】車両用シート昇降装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/02 20060101AFI20220818BHJP
B60N 2/42 20060101ALN20220818BHJP
【FI】
B60N2/02
B60N2/42
(21)【出願番号】P 2019028471
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】阿部 友貴
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-196738(JP,U)
【文献】特開2006-282019(JP,A)
【文献】特開2010-000960(JP,A)
【文献】特開2017-105408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/02,7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シートのクッションベースと、前記クッションベースに回転可能に設けられ、前記車両シートの少なくとも一部を昇降させるリンク部材と
、前記リンク部材に回転可能に連結される連結部材とを備え、
前記リンク部材において回転中心よりも前部には、
前記リンク部材に対する前記連結部材の回転角度を制限することによって前記リンク部材の回転を制限する前側制限部が設けられ、
前記リンク部材において回転中心よりも後部には、前記リンク部材の回転を制限する後側制限部が設けら
れ、
前記前側制限部は、前記連結部材および前記リンク部材の少なくとも一方に設けられる第1当接部を含み、
前記連結部材と前記リンク部材とは、前記リンク部材の前記前部が上昇する方向に前記リンク部材が所定角度まで回転するとき前記第1当接部を介して互いに接触する
車両用シート昇降装置。
【請求項2】
前記前側制限部は、前記連結部材および前記リンク部材の少なくとも一方に設けられる第2当接部を含み、
前記連結部材と前記リンク部材とは、前記リンク部材の前記前部が下降する方向に前記リンク部材が所定角度まで回転するとき前記第2当接部を介して互いに接触する
請求項1に記載の車両用シート昇降装置。
【請求項3】
車両シートのクッションベースと、前記クッションベースに回転可能に設けられ、前記車両シートの少なくとも一部を昇降させるリンク部材と
、前記リンク部材に回転可能に連結される連結部材とを備え、
前記リンク部材において回転中心よりも前部には、
前記リンク部材に対する前記連結部材の回転角度を制限することによって前記リンク部材の回転を制限する前側制限部が設けられ、
前記リンク部材において回転中心よりも後部には、前記リンク部材の回転を制限する後側制限部が設けら
れ、
前記前側制限部は、前記連結部材および前記リンク部材の少なくとも一方に設けられる第2当接部を含み、
前記連結部材と前記リンク部材とは、前記リンク部材の前記前部が下降する方向に前記リンク部材が所定角度まで回転するとき前記第2当接部を介して互いに接触する
車両用シート昇降装置。
【請求項4】
車幅方向に離れて配置されて連結シャフトによって繋がれる複数の前記リンク部材を備え、
前記第2当接部は、前記連結シャフトによって構成される
請求項2または3に記載の車両用シート昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両シートのシートクッションを傾ける車両用シート昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シート昇降装置の一例として、特許文献1に記載のチルト装置の技術が知られている。
チルト装置(同文献では、前側クッションリフト機構)は、シートの前側を上下に移動させる。チルト装置は、リフトフレームと、リンク部材と、リンク部材とリフトフレームとを連結する連結リンクとを備える。リンク部材は、ベースに対して回転可能に取り付けられている。リンク部材の前側は、連結リンクを介してリフトフレームに連結される。リンク部材の前側が上下動することによって、リフトフレームが上下に移動する。リンク部材の後端には、駆動ギアに噛み合うギアが設けられている。リンク部材において回転中心よりも後側には、リンク部材の回転を制限するための長孔が設けられている。長孔には、ベースに設けられるピンが挿通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両衝突によって強い力がチルト装置に加わると、リンク部材またはその周辺部材が変形する虞がある。車両衝突によって、リンク部材の後側が変形すると、長孔とピンとの係合が外れる虞がある。このような事態によって、リンク部材の回転を制限する手段が機能しなくなると、リンク部材が所定範囲を超えて回転可能になり、リンク部材の前部が大きく上昇(または下降)し、それとともに、リフトフレームが跳ね上がる虞(または、リフトフレームの前部が落ちる虞)がある。そこで、車両シートの回転制限について、その回転制限が掛からなくなることを抑制できる車両用シート昇降装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する車両用シート昇降装置は、車両シートのクッションベースと、前記クッションベースに回転可能に設けられ、前記車両シートの少なくとも一部を昇降させるリンク部材とを備え、前記リンク部材において回転中心よりも前部には、前記リンク部材の回転を制限する前側制限部が設けられ、前記リンク部材において回転中心よりも後部には、前記リンク部材の回転を制限する後側制限部が設けられる。
【0006】
この構成によれば、前側制限部および後側制限部によってリンク部材の回転が制限される。このように2つの制限部が設けられることによって、リング部材の回転制限が全く無くなるといった事態の発生を抑制できる。このようにして、車両衝突等において、車両シートの回転制限が掛からなくなることを抑制できる。
【0007】
(2)上記車両用シート昇降装置において、前記リンク部材に回転可能に連結される連結部材を備え、前記前側制限部は、前記リンク部材に対する前記連結部材の回転角度を制限する。この構成によれば、リンク部材に対する連結部材の回転が制限されることによって、リンク部材の回転が制限される。
【0008】
(3)上記車両用シート昇降装置において、前記前側制限部は、前記連結部材および前記リンク部材の少なくとも一方に設けられる第1当接部を含み、前記連結部材と前記リンク部材とは、前記リンク部材の前記前部が上昇する方向に前記リンク部材が所定角度まで回転するとき前記第1当接部を介して互いに接触する。この構成によれば、前側制限部の第1当接部の構造を簡潔にできる。
【0009】
(4)上記車両用シート昇降装置において、前記前側制限部は、前記連結部材および前記リンク部材の少なくとも一方に設けられる第2当接部を含み、前記連結部材と前記リンク部材とは、前記リンク部材の前記前部が下降する方向に前記リンク部材が所定角度まで回転するとき前記第2当接部を介して互いに接触する。この構成によれば、前側制限部の第2当接部の構造を簡潔にできる。
【0010】
(5)上記車両用シート昇降装置において、車幅方向に離れて配置されて連結シャフトによって繋がれる複数の前記リンク部材を備え、前記第2当接部は、前記連結シャフトによって構成される。この構成によれば、連結シャフトが第2当接部の機能を有するため、車両用シート昇降装置の構造を簡潔にできる。
【発明の効果】
【0011】
車両用シート昇降装置によれば、車両シートの回転制限について、その回転制限が掛からなくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】リフトフレームの前部が基準位置に配置されるときの、チルト装置の側面図。
【
図3】リフトフレームの前部が基準位置よりも高い位置に配置されるときの、チルト装置の側面図。
【
図4】リフトフレームの前部が基準位置よりも低い位置に配置されるときの、チルト装置の側面図。
【
図5】リフトフレームの前部が上昇する場合において、前側制限部によってリフトフレームの回転が制限されたときの、チルト装置の側面図。
【
図6】リフトフレームの前部が下降する場合において、前側制限部によってリフトフレームの回転が制限されたときの、チルト装置の側面図。
【
図7】前側制限部の変形例を含む、チルト装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~
図6を参照して、車両用シート昇降装置の一例であるチルト装置について説明する。
チルト装置4は、車両シート1に設けられる。チルト装置4は、車両を上下動させるシートリフト装置5とともに車両シート1に設けられてもよい。また、チルト装置4は、シートスライド装置6とともに車両シート1に設けられてもよい。本実施形態に示される車両シート1には、シートスライド装置6、シートリフト装置5、およびチルト装置4が設けられる。
【0014】
図1は、車両シート1の側面図を示す。シートスライド装置6は、一対のロアレール7と、ロアレール7に沿って移動するアッパレール8とを備える。一対のロアレール7それぞれに、アッパレール8が配置される。一対のロアレール7は、車両幅方向に並べられる。一対のロアレール7それぞれは、ロアレール7の長手方向が車両前後方向DAに沿うように、配置される。アッパレール8は、ロアレール7に対して手動または電動によって移動する。
【0015】
シートリフト装置5は、クッションベース10と、前側リンク11と、後側リンク12と、駆動機構14とを備える。クッションベース10は、シートクッション2のフレームに固定される。クッションベース10は、その長手方向が車両前後方向DAに沿うように配置される。
【0016】
図1に示されるように、前側リンク11の上部11aは、クッションベース10の前部に、回転可能に連結される。前側リンク11の下部11bは、アッパレール8の前部のブラケット8aに、回転可能に連結される。後側リンク12の上部12aは、クッションベース10の後部に、回転可能に連結される。後側リンク12の下部12bは、アッパレール8の後部のブラケット8bに、回転可能に連結される。後側リンク12の上部には、セクターギア13が設けられる。後側リンク12において、セクターギア13は、後側リンク12の上部12aの回転軸12cよりも前側に設けられる。
【0017】
駆動機構14は、駆動ギア14a含む。駆動ギア14aは、電動モータの動力で回転する。駆動ギア14aは、後側リンク12のセクターギア13に噛み合う。駆動ギア14aが、
図1に示される側面視で第1方向に回転すると、後側リンク12の上部12a及び前側リンク11の上部11aが後方斜め下方向に移動する。これにより、クッションベース10が下方に移動する。駆動ギア14aが、
図1に示される側面視で第1方向と反対に回転すると、後側リンク12の上部12a及び前側リンク11の上部11aが前方斜め上方向に移動する。これにより、クッションベース10が上方に移動する。
【0018】
チルト装置4は、少なくとも、車両シート1のクッションベース10と、リンク部材22とを備える。本実施形態では、クッションベース10は、シートリフト装置5の構成要素であり、かつ、チルト装置4の構成要素でもある。リンク部材22は、クッションベース10に回転可能に設けられ、車両シート1の少なくとも一部を昇降させる。本実施形態では、チルト装置4は、クッションベース10と、リンク部材22と、車両シート1のリフトフレーム20に連結される連結部材25と、駆動機構26とを備える。チルト装置4は、車両シート1のシートクッション2の前部を傾斜させる。
【0019】
車両シート1のリフトフレーム20は、クッションベース10の前部を上下動させるための部品である。リフトフレーム20は、クッションベース10の前側に回転可能に設けられる。好ましくは、リフトフレーム20は、クッションベース10の左右両側それぞれに設けられる。リフトフレーム20の後部は、第1回転軸20aを介してクッションベース10に回転可能に連結される。
【0020】
図2に示されるように、リンク部材22は、リフトフレーム20よりも下側に配置される。本実施形態では、リンク部材22は、クッションベース10の左右両側それぞれに設けられる。2つのリンク部材22は、車幅方向に離れて配置されて連結シャフト24によって繋がれる。連結シャフト24の車幅方向における中間部(図示略)は、リンク部材22の回転範囲においてクッションベース10およびリフトフレーム20と干渉しないところを通る。連結シャフト24の端部は、リンク部材22がクッションベース10に対して所定角度に配置されるときに、連結シャフト24の端部の前側が連結部材25に接触するような位置に、配置される(
図6参照)。リンク部材22は、連結シャフト24が接続される接続部22dを有する。接続部22dは、リンク部材22において回転中心CAよりも前側の前部22aに設けられて、上方に突出する。
【0021】
リンク部材22は、クッションベース10に回転可能に設けられる。リンク部材22は、電動モータを含む駆動機構26の動力によって回転する。リンク部材22の中間部は、第2回転軸22cを介してクッションベース10に回転可能に連結される。
【0022】
リンク部材22において回転中心CAよりも前側の前部22aは、連結部材25を介してリフトフレーム20の前部に連結される。リンク部材22において回転中心CAよりも前部22aには、前記リンク部材22の回転を制限する前側制限部31が設けられる。リンク部材22において回転中心よりも後部22bには、リンク部材22の回転を制限する後側制限部35が設けられる。リンク部材22の後部22bには、駆動ギア26aに噛み合うセクターギア23が設けられる。セクターギア23の歯面は、後方に向く。
【0023】
連結部材25は、リフトフレーム20とリンク部材22とを連結する。クッションベース10の左右両側にリンク部材22が設けられる場合には、2つのリンク部材22それぞれに連結部材25が設けられる。連結部材25の上部25aは、第3回転軸25cを介してリフトフレーム20の前部に回転可能に連結される。連結部材25の下部25bは、第4回転軸25dを介してリンク部材22の前部22aに回転可能に連結される。
【0024】
駆動機構26は、駆動ギア26aを含む。駆動ギア26aは、電動モータの動力で回転する。駆動ギア26aが、
図2に示される側面視で左回転すると、リンク部材22の前部22aが上昇するように回転する。これにより、リフトフレーム20の前部が上がる。駆動ギア26aが、
図2に示される側面視で右回転すると、リンク部材22の前部22aが下降する。これにより、リフトフレーム20の前部が下がる。
【0025】
シートリフト装置5の駆動機構14とチルト装置4の駆動機構26とは、両者が連動するように制御される。例えば、車両衝突時において使用者の頭部が車両天井に衝突することを回避する目的で、車両衝突時に車両シート1の座高を低くする制御では、シートリフト装置5の駆動機構14とチルト装置4の駆動機構26とが連動する。他の例では、シートリフト装置5の駆動機構14とチルト装置4の駆動機構26とは、独立制御される。例えば、シートクッション2の位置や傾きを使用者の好みに合わせる場合、シートリフト装置5の駆動機構14とチルト装置4の駆動機構26とは、使用者の操作によって独立して制御される。
【0026】
前側制限部31は、クッションベース10に対するリンク部材22の回転角度の範囲を制限する。本実施形態では、前側制限部31は、リンク部材22に対する連結部材25の回転角度を制限することによって、クッションベース10に対するリンク部材22の回転角度の範囲を制限する。前側制限部31は、第1当接部32を含む。第1当接部32は、連結部材25およびリンク部材22の少なくとも一方に設けられる。本実施形態では、第1当接部32は、連結部材25の下端部に設けられる。連結部材25の下端部は、リンク部材22の前部22aの下端部よりも下側に配置される。連結部材25とリンク部材22とは、リンク部材22の前部22aが上昇する方向にリンク部材22が所定角度まで回転するとき、第1当接部32を介して互いに接触する。
【0027】
好ましくは、前側制限部31は、第2当接部33を含む。第2当接部33は、連結部材25およびリンク部材22の少なくとも一方に設けられる。本実施形態では、第2当接部33は、リンク部材22に設けられる。具体的には、第2当接部33は、連結シャフト24によって構成される。連結部材25とリンク部材22とは、リンク部材22の前部22aが下降する方向にリンク部材22が所定角度まで回転するとき、第2当接部33を介して互いに接触する。
【0028】
後側制限部35は、クッションベース10に対するリンク部材22の回転角度の範囲を制限する。本実施形態では、後側制限部35の回転角度の制限範囲は、前側制限部31の回転角度の制限範囲内に入る。この場合、車両衝突に起因してリンク部材22が変形することによって、後側制限部35によるリンク部材22の回転制限が掛からなくなったときに、前側制限部31によってリンク部材22の回転が制限される。他の例では、前側制限部31の回転角度の制限範囲は、後側制限部35の回転角度の制限範囲内に入る。この場合、車両衝突に起因してリンク部材22が変形することによって、前側制限部31によるリンク部材22の回転制限が掛からなくなったときに、後側制限部35によってリンク部材22の回転が制限される。
【0029】
後側制限部35は、例えば、セクターギア23の両端の設けられるストッパとして構成される。ストッパは、駆動ギア26aとセクターギア23との噛合い時において駆動ギア26aに加わる荷重よりも大きい荷重を駆動ギア26aに加えて、駆動ギア26aの回転を止める。ストッパの高さは、セクターギア23の歯の高さ(全歯たけ)よりも大きい。本実施形態では、セクターギア23の上側に、上側ストッパ36が設けられる。セクターギア23の下側に、下側ストッパ37が設けられる。
【0030】
図2~
図4において、通常のチルト装置4の動作を説明する。
図2は、リフトフレーム20の前部が基準位置に配置されるときの、チルト装置4の側面図である。基準位置は、車両シート1において予め設定される位置である。基準位置は、使用者によって設定されてもよい。リフトフレーム20の前部が基準位置に配置されているとき、使用者の操作に基づいて駆動ギア26aが左回転すると、
図3に示されるように、リンク部材22の前部22aが上昇して、リフトフレーム20の前部が上昇する。駆動ギア26aが回転し続けている場合において、駆動ギア26aが、リンク部材22のセクターギア23に設けられている上側ストッパ36に接触すると、上側ストッパ36によって駆動ギア26aの回転が制限されて、上限位置でリンク部材22の前部22aの上昇が止まる(
図3参照)。
【0031】
リフトフレーム20の前部が基準位置に配置されているとき、使用者の操作に基づいて駆動ギア26aが右回転すると、リンク部材22の前部22aが下降して、リフトフレーム20の前部が下降する。駆動ギア26aが回転し続けている場合において、駆動ギア26aが、リンク部材22のセクターギア23に設けられている下側ストッパ37に接触すると、下側ストッパ37によって駆動ギア26aの回転が制限されて、下限位置でリンク部材22の前部22aの下降が止まる(
図4参照)。
【0032】
図5および
図6を参照して、後側制限部35によるリンク部材22の回転制限が掛からないときの、チルト装置4の動作を説明する。例えば、車両衝突等によって、リンク部材22のセクターギア23の上端または下端が変形すると、後側制限部35によるリンク部材22の回転制限が掛からなくなる虞がある。例えば、車両衝突等に起因してセクターギア23の変形によって上側ストッパ36が駆動ギア26aに係合しない場合、
図5に示されるように、リンク部材22の前部22aは、後側制限部35による上限位置よりもさらに上昇する。この場合、
図5に示されるように、前側制限部31の第1当接部32によってリンク部材22の回転が制限されて、リンク部材22の前部22aが、後側制限部35による上限位置よりも少し上の位置で止まる。このようにして、リンク部材22の前部22aの上昇が制限される。車両衝突等に起因してセクターギア23の変形によって下側ストッパ37が駆動ギア26aに係合しない場合、
図6に示されるように、リンク部材22の前部22aは、後側制限部35による下限位置よりもさらに下降する。この場合、
図6に示されるように、前側制限部31の第2当接部33によってリンク部材22の回転が制限されて、リンク部材22の前部22aが、後側制限部35による下限位置よりも少し下の位置で止まる。このようにして、リンク部材22の前部22aの下降が制限される。
【0033】
本実施形態の作用を説明する。
チルト装置4のリンク部材22は、リンク部材22の後側で後側制限部35によってリンク部材22の回転範囲が所定範囲に入るように回転制限され、かつ、リンク部材22の前側で前側制限部31によってリンク部材22の回転範囲が所定範囲に入るように回転制限される。このように、リンク部材22が複数の制限部によって回転制限される。これにより、一方の制限部が仮に機能しなくなる場合でも、他方の制限部によってリンク部材22の回転を制限できる。
【0034】
本実施形態の効果を説明する。
(1)チルト装置4のリンク部材22において回転中心よりも前部22aには、リンク部材22の回転を制限する前側制限部31が設けられる。リンク部材22において回転中心よりも後部22bには、リンク部材22の回転を制限する後側制限部35が設けられる。この構成によれば、前側制限部31および後側制限部35によってリンク部材22の回転が制限される。このように2つの制限部が設けられることによって、リング部材の回転制限が全く無くなるといった事態の発生を抑制できる。このようにして、車両衝突等において、車両シート1の一部であるリフトフレーム20の回転制限が掛からなくなることを抑制できる。
【0035】
(2)チルト装置4は連結部材25を備える。連結部材25は、リンク部材22に回転可能に連結される。前側制限部31は、リンク部材22に対する連結部材25の回転角度を制限する。この構成によれば、リンク部材22に対して連結部材25の回転が制限されることによって、リンク部材22の回転が制限される。
【0036】
リンク部材22に対して連結部材25の回転が制限される構成によれば、リンク部材22に連結部材25を取り付けるときの組み立て工程において、連結部材25の取り付け易さを向上させるといった効果もある。具体的には、チルト装置4の組み立て工程では、リンク部材22に連結部材25を取り付けて、その後に、連結部材25とリフトフレーム20とを連結する。リンク部材22に対して連結部材25が自由に回転する場合、リンク部材22に連結部材25を取り付けると、連結部材25の上部25aが垂れ下がって揺れ動く。このため、連結部材25をリフトフレーム20に連結し難い。この点において、上記の構成によれば、リンク部材22に対して連結部材25の回転が制限されるため、連結部材25をリフトフレーム20に連結し易い。
【0037】
(3)前側制限部31は、連結部材25およびリンク部材22の少なくとも一方に設けられる第1当接部32を含む。連結部材25とリンク部材22とは、リンク部材22の前部22aが上昇する方向にリンク部材22が所定角度まで回転するとき第1当接部32を介して互いに接触する。この構成によれば、前側制限部31の第1当接部32の構造を簡潔にできる。
【0038】
(4)好ましくは、前側制限部31は、連結部材25およびリンク部材22の少なくとも一方に設けられる第2当接部33を含む。連結部材25とリンク部材22とは、リンク部材22の前部22aが下降する方向にリンク部材22が所定角度まで回転するとき第2当接部33を介して互いに接触する。この構成によれば、前側制限部31の第2当接部33の構造を簡潔にできる。
【0039】
(5)車幅方向に離れて配置されて連結シャフト24によって繋がれる複数のリンク部材22を備える。第2当接部33は、連結シャフト24によって構成される。この構成によれば、連結シャフト24が第2当接部33の機能を有するため、チルト装置4の構造を簡潔にできる。
【0040】
<その他の実施形態>
上記実施形態は、上記構成の例に限定されない。上記実施形態は、以下のように変更され得る。なお、以下の変形例では、上記実施形態の構成と実質的に変更のない構成については、上記実施形態の構成と同一の符号をつけて説明する。
【0041】
・前側制限部31および後側制限部35の構造は、実施形態の例に制限されない。前側制限部31および後側制限部35それぞれは、リンク部材22に設けられるガイドと、ガイドに係合する突起とによって構成されてもよい。ガイドは、リンク部材22の回転中心を中心とする円に沿う円弧の溝として構成される。リンク部材22の回転範囲は、円弧状のガイドの長さによって設定される。
【0042】
・
図7には、前側制限部31の第1変形例が実線で示される。
図7に示されるように、前側制限部31は、リンク部材22に設けられる第3当接部41として構成されてもよい。第3当接部41は、リンク部材22の下端に設けられる突起として構成される。第3当接部41は、リンク部材22の前部22aが上昇する方向にリンク部材22が所定角度まで回転するとき、連結部材25とリンク部材22とが第3当接部41を介して接触するように、構成される。
【0043】
・
図7には、前側制限部31の第2変形例が2点鎖線で示される。
図7に示されるように、前側制限部31は、リンク部材22の前端部に設けられる第4当接部42として構成されてもよい。第4当接部42は、リンク部材22の前端部に設けられる突起として構成される。リンク部材22の前端部は、連結部材25よりも前側に配置される。第4当接部42は、リンク部材22の前部22aが上昇する方向にリンク部材22が所定角度まで回転するとき、連結部材25とリンク部材22とが第4当接部42を介して接触するように、構成される。
【0044】
・本実施形態では、前側制限部31は、チルト装置4のリンク部材22に配置されているが、これに代えて、前側制限部31をシートリフト装置5の構成部品に配置してもよい。また、本実施形態では、後側制限部35は、チルト装置4のリンク部材22に設けられるセクターギア23に配置されているが、これに代えて、後側制限部35をシートリフト装置5の構成部品に配置してもよい。
【0045】
・本実施形態では、リンク部材22は、電動モータを含む駆動機構26の動力によって回転する。これに対して、駆動機構26は、人力によって動く構造であってもよい。一例では、駆動機構26の駆動ギア26aは、人の力によって回転するレバーに接続される。
【0046】
・本実施形態では、後側リンク12は、電動モータを含む駆動機構14の動力によって回転する。これに対して、駆動機構14は、人力によって動く構造であってもよい。一例では、駆動機構14の駆動ギア14aは、人の力によって回転するレバーに接続される。
【符号の説明】
【0047】
CA…回転中心、DA…車両前後方向、1…車両シート、2…シートクッション、4…チルト装置、5…シートリフト装置、6…シートスライド装置、7…ロアレール、8…アッパレール、8a…ブラケット、8b…ブラケット、10…クッションベース、11…前側リンク、11a…上部、11b…下部、12…後側リンク、12a…上部、12b…下部、12c…回転軸、13…セクターギア、14…駆動機構、14a…駆動ギア、20…リフトフレーム、20a…第1回転軸、22…リンク部材、22a…前部、22b…後部、22c…第2回転軸、22d…接続部、23…セクターギア、24…連結シャフト、25…連結部材、25a…上部、25b…下部、25c…第3回転軸、25d…第4回転軸、26…駆動機構、26a…駆動ギア、31…前側制限部、32…第1当接部、33…第2当接部、35…後側制限部、36…上側ストッパ、37…下側ストッパ、41…第3当接部、42…第4当接部。