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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】導電性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20220818BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220818BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20220818BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20220818BHJP
   C08K 5/02 20060101ALI20220818BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20220818BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
C08L33/04
C08L63/00 C
C08K3/08
C08K9/02
C08K5/02
H01B1/22 A
H01B1/00 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019050887
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020152778
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2020-12-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】藤川 良太
(72)【発明者】
【氏名】山本 政弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 範博
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/050252(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/136204(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/102080(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/181625(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/013336(WO,A1)
【文献】特開2001-143529(JP,A)
【文献】特開2017-152221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00~101/14
H01B 1/00~ 1/24
C08G59/00~ 59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性化合物を含むバインダー成分、金属粒子、及びフッ素系界面活性剤を含有し、
前記金属粒子は、融点240℃以下の低融点金属粒子及び融点800℃以上の高融点金属粒子を含有し、
前記熱硬化性化合物はエポキシ化合物及びアクリレート化合物の両方を含み、
前記バインダー成分100質量部に対し、前記金属粒子の含有量が1000~2000質量部、前記低融点金属粒子の含有量が10~900質量部、前記フッ素系界面活性剤の含有量が0.1~10質量部である導電性組成物。
【請求項2】
前記低融点金属粒子と前記高融点金属粒子の質量比[低融点金属粒子/高融点金属粒子]が0.005~2.0である請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記エポキシ化合物が液状エポキシ化合物及び固体エポキシ化合物の少なくとも一方を含有する請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
さらにフラックスを含有する請求項1~のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記高融点金属粒子が銀粒子、銅粒子、銀被覆銅粒子、及び銀被覆銅合金粒子からなる群より選択される1以上の金属粒子を含有する請求項1~のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項6】
さらに硬化剤を含有する請求項1~のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高密度実装を目的として、複数の導電層と絶縁層を積層させた多層基板が用いられている。多層基板のホール充填等に用いられる導電性ペーストとして、硬化剤、熱硬化性樹脂、及び金属粉を配合したものが知られている。上記導電性ペーストは、まず配線基板にビアやスルーホールを形成し、ビアもしくはスルーホール内壁面をめっきして基板上下の導通を取り、次いで形成されたスルーホールに導電性ペーストを充填し、次いで充填されたペーストを熱硬化させて使用される(例えば特許文献1、2)。このようなペーストにおいては、熱硬化後において、導電性フィラー同士が互いに接触することで導電性が得られる。
【0003】
また、近年、スマートフォン、タブレット端末(タブレットPC)などの小型の高機能携帯端末の需要が増大している。このような高機能携帯端末を機能させるために用いられる半導体装置などについて、さらなる小型化及び高機能化が求められている。このような半導体装置の構造として、半導体パッケージ同士を積層することで、配線層の高密度化を可能とする、いわゆるパッケージオンパッケージ(POP:Package On Package)構造が知られている。
【0004】
例えば、図2に示すように、導電層21とモールド樹脂22とを用いた半導体パッケージ同士を積層した従来のPOP構造2は、下側の半導体パッケージP1のビアに充填され硬化した硬化物23上に、蓋めっき25を施し、この蓋めっき25上にはんだ等によってバンプ24を形成し、当該バンプ24を介して上側の半導体パッケージP2を積層して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-100546号公報
【文献】特開2015-122386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、上述のように小型化及び高機能化が求められていることから、蓋めっきを施すことなくPOP構造の半導体パッケージを形成する技術が求められる。蓋めっきが不要となれば、製造工程の簡略化にもつながり、製造容易性にも優れることとなる。
【0007】
しかしながら、従来の導電性ペーストでは、ビア等に充填及び硬化した後にはんだを搭載しようとした際、はんだの濡れ性が悪く、ペーストの硬化物上ではじかれるためバンプを良好に形成できないという問題があった。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、はんだの濡れ性が良好である硬化物を形成可能な導電性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、熱硬化性化合物を含むバインダー成分、低融点金属粒子、高融点金属粒子、及びフッ素系界面活性剤を含有する導電性組成物によれば、はんだの濡れ性が良好である硬化物を形成可能であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、熱硬化性化合物を含むバインダー成分、金属粒子、及びフッ素系界面活性剤を含有し、上記金属粒子は、融点240℃以下の低融点金属粒子及び融点800℃以上の高融点金属粒子を含有し、上記バインダー成分100質量部に対し、上記金属粒子の含有量が1000~2000質量部、上記低融点金属粒子の含有量が10~900質量部である導電性組成物を提供する。
【0011】
上記低融点金属粒子と上記高融点金属粒子の質量比[低融点金属粒子/高融点金属粒子]は0.005~2.0であることが好ましい。
【0012】
上記熱硬化性化合物はエポキシ化合物及びアクリレート化合物の少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0013】
上記エポキシ化合物は液状エポキシ化合物及び固体エポキシ化合物の少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0014】
上記導電性組成物は、さらにフラックスを含有することが好ましい。
【0015】
上記高融点金属粒子は、銀粒子、銅粒子、銀被覆銅粒子、及び銀被覆銅合金粒子からなる群より選択される1以上の金属粒子を含有することが好ましい。
【0016】
上記導電性組成物は、さらに硬化剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性組成物によれば、はんだの濡れ性が良好である硬化物を形成することができる。このため、本発明の導電性組成物によれば、蓋めっきを施すこと無くPOP構造を形成することができ、さらなる小型化が可能であり、さらに製造容易性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の導電性組成物を用いたパッケージオンパッケージ構造の一実施形態を示す拡大断面図である。
図2】蓋めっきを用いた従来のパッケージオンパッケージ構造の一実施形態を示す拡大断面図である。
図3】導電性組成物の硬化物上にはんだがはじかれずに搭載されている状態を示す拡大断面図である。
図4】導電性組成物の硬化物上ではんだがはじかれている状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の導電性組成物は、バインダー成分、金属粒子、フッ素系界面活性剤を少なくとも含む。本発明の導電性組成物は、上記各成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。
【0020】
[バインダー成分]
上記バインダー成分は、熱硬化性化合物を少なくとも含む。バインダー成分は、導電性組成物を充填した後少なくとも一種の熱硬化性化合物が熱硬化することで形成される硬化物(導電性組成物の硬化物)において他の成分をバインドし、硬化物のマトリックスを形成する役割を有する。上記バインダー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0021】
上記熱硬化性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、アクリレート化合物、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂などが挙げられる。中でも、熱硬化後に形成するバインダー樹脂が硬化物のスルーホール壁面への密着性に優れる観点から、エポキシ化合物及びアクリレート化合物の少なくとも一方を用いることが好ましく、エポキシ化合物及びアクリレート化合物の両方を用いることがより好ましい。上記熱硬化性化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0022】
上記エポキシ化合物は、分子内(一分子中)に1以上のエポキシ基(オキシラニル基)を少なくとも有する化合物である。上記エポキシ化合物は、常温で固体のエポキシ化合物であってもよく、常温で液体のエポキシ化合物であってもよい。上記エポキシ化合物としてはスルーホール充填用に適した粘度とする観点から、常温で固体のエポキシ化合物及び常温で液体のエポキシ化合物の両方を含んでいてもよい。上記エポキシ化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0023】
なお、本明細書において、常温で固体のエポキシ化合物を「固体エポキシ化合物」と称する場合がある。また、常温で液体のエポキシ化合物を「液体エポキシ化合物」と称する場合がある。また、本明細書において、「常温で固体」とは、25℃において無溶媒状態で流動性を示さない状態であることを意味するものとする。また、「常温で液体」とは、25℃において無溶媒状態で流動性を示す状態であることを意味するものとする。
【0024】
上記エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、ゴム変性エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0025】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0026】
上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0027】
上記ダイマー酸変性エポキシ樹脂とは、ダイマー酸で変性したエポキシ樹脂、すなわちダイマー酸構造中の少なくとも一つのカルボキシル基と多官能エポキシ樹脂が反応したものである。ここでダイマー酸とは不飽和脂肪酸の二量体である。原料の不飽和脂肪酸は、特に限定されないが、例えば、オレイン酸やリノール酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸を主成分とする植物由来油脂が使用可能である。ダイマー酸の構造は、環状、非環状のいずれでもよい。
【0028】
ダイマー酸変性を行うエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、上記エポキシ化合物として例示されたエポキシ樹脂などが挙げられる。上記ダイマー酸変性エポキシ樹脂に含まれるエポキシ樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。例えば、ビスフェノール型、エーテルエステル型、ノボラックエポキシ型、エステル型、脂肪族型、芳香族型等の各種エポキシ樹脂をダイマー酸で変性した公知のダイマー酸変性エポキシ樹脂を用いることができる。
【0029】
上記ダイマー酸変性エポキシ樹脂の市販品としては、三菱ケミカル(株)製の「jER871」(商品名、以下同様)、「jER872」、新日鐵住金化学(株)製の「YD-171」、「YD-172」などが挙げられる。
【0030】
上記グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン等のアミノフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0031】
上記グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、グリシジルアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0032】
上記ゴム変性エポキシ樹脂は、導電性組成物の硬化物に柔軟性を付与し、エポキシ化合物による耐熱性を維持しつつ、硬化物のスルーホール壁面への密着性を向上させ、またクラックの発生を抑制することができる。
【0033】
上記ゴム変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂中にゴム成分を含む。上記ゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、NBR、SBR、IR、EPRなどが挙げられる。上記ゴム成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。上記ゴム変性エポキシ樹脂は、中でも、NBRにより変性されたエポキシ樹脂(NBR変性エポキシ樹脂)が好ましい。
【0034】
ゴム変性を行うエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、上記エポキシ化合物として例示されたエポキシ樹脂などが挙げられる。上記ゴム変性エポキシ樹脂に含まれるエポキシ樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0035】
上記エポキシ化合物のエポキシ当量は、特に限定されないが、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(エポキシ当量)として、40~800g/eqが好ましく、80~500g/eqがより好ましい。上記エポキシ当量が40g/eq以上であると、導電性組成物の硬化物のスルーホール壁面への密着性により優れる。また、エポキシ当量が800g/eq以下であると、耐熱性がより優れる。
【0036】
上記ダイマー酸変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100~800g/eqが好ましく、300~600g/eqがより好ましい。また、ダイマー酸変性エポキシ樹脂の分子量は、特に限定されるものではなく用途に応じて適宜選択可能であるが、例えばホール充填用途では質量平均分子量で100~5000が好ましい。
【0037】
上記ゴム変性エポキシ樹脂は、エポキシ当量が40~500g/eqであることが好ましく、より好ましくは70~400である。エポキシ当量が40g/eq以上であると、導電性組成物の硬化物のスルーホール壁面への密着性により優れる。また、エポキシ当量が500g/eq以下であると、耐熱性がより優れる。
【0038】
上記エポキシ化合物としては、中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物が好ましい。上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0039】
上記バインダー成分中の上記エポキシ化合物の含有割合は、特に限定されないが、バインダー成分の総量100質量%に対して、40~100質量%であることが好ましく、より好ましくは50~90質量%、さらに好ましくは60~80質量%である。上記含有割合が40質量%以上であると、導電性組成物の硬化物の耐熱性が優れる。なお、上記含有割合が90質量%以下であると、アクリレート化合物を充分に含有することができ、これによる効果を充分に得ることができる。上記エポキシ化合物の含有割合は、本発明の導電性組成物中の全てのエポキシ化合物の合計の含有割合である。
【0040】
上記バインダー成分中のゴム変性エポキシ樹脂の含有割合は、特に限定されないが、バインダー成分の総量100質量%に対して、0~30質量%であることが好ましく、より好ましくは5~15質量%である。上記含有割合が5質量%以上であると、導電性組成物の硬化物の柔軟性がより優れる。上記含有割合が30質量%以下であると、他のエポキシ化合物やアクリレート化合物を充分に含有することができ、これらバインダー成分の効果を充分に得ることができる。上記ゴム変性エポキシ樹脂の含有割合は、本発明の導電性組成物中の全てのゴム変性エポキシ樹脂の合計の含有割合である。
【0041】
上記バインダー成分中の固体エポキシ化合物の含有割合は、特に限定されないが、バインダー成分の総量100質量%に対して、0~30質量%であることが好ましく、より好ましくは1~20質量%である。また、上記バインダー成分中の液体エポキシ化合物の含有割合は、特に限定されないが、バインダー成分の総量100質量%に対して、30~100質量%であることが好ましく、より好ましくは40~90質量%である。上記含有割合であると、固体エポキシ化合物と液体エポキシ化合物のバランスが良好となり、スルーホール充填用により適した粘度とすることができる。
【0042】
上記アクリレート化合物は、CH2=CR-C(=O)-O-で表される構造を有する化合物(式中、Rは水素原子又はアルキル基(特に炭素数1~3のアルキル基)を示す)であり、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」についても同様である。上記アクリレート化合物としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(多官能アクリレート化合物)が好ましい。上記アクリレート化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0043】
上記アクリレート化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸;カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル;2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド誘導体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル類などが挙げられる。さらに、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物なども挙げられる。
【0044】
上記多官能アクリレート化合物としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0045】
上記バインダー成分中の上記アクリレート化合物の含有割合は、特に限定されないが、バインダー成分の総量100質量%に対して、0~60質量%であることが好ましく、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは20~40質量%である。上記含有割合が60質量%以下であると、エポキシ化合物を充分に含有することができ、これによる効果を充分に得ることができる。なお、上記含有割合が10質量%以上であると、導電性組成物の硬化物の密着性がより優れる。特に、上記バインダー成分中の上記多官能アクリレート化合物の含有割合が上述の範囲内であることが好ましい。上記アクリレート化合物の含有割合は、本発明の導電性組成物中の全てのアクリレート化合物の合計の含有割合である。
【0046】
本発明の導電性組成物中の上記バインダー成分(特に、エポキシ化合物及びアクリレート化合物の合計)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の導電性組成物100質量%に対し、3~15質量%であることが好ましく、より好ましくは4~12質量%、さらに好ましくは5~10質量%である。
【0047】
[金属粒子]
上記金属粒子は、融点240℃以下の低融点金属粒子及び融点800℃以上の高融点金属粒子を含有する。なお、本明細書において、「融点240℃以下の低融点金属粒子」を単に「低融点金属粒子」、「融点800℃以上の高融点金属粒子」を単に「高融点金属粒子」とそれぞれ称する場合がある。本発明の導電性組成物が金属粒子として上記低融点金属粒子及び上記高融点金属粒子を含むことにより、加熱により金属粒子がメタライズ化し、形成される硬化物は優れた導電性を付与する。なお、メタライズ化とは、二種以上の金属の少なくとも一部が融解して一体化することをいう。上記の各金属粒子は、単一の金属からなるものであってもよく、二種以上の金属の合金からなるものであってもよい。
【0048】
上記低融点金属粒子としては、例えば、インジウム(融点:156℃)、スズ(融点:232℃)、合金であって融点240℃以下であるものが挙げられる。上記合金としては、インジウム、スズ、鉛、及びビスマスからなる群より選択される一種以上(好ましくは二種以上)を含む合金が挙げられる。このような合金としては、例えば、SnPb、SnBi、SnPbBiなどが挙げられる。上記低融点金属粒子は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0049】
上記低融点金属粒子は、スズを含む金属粒子であることが好ましく、例えば、スズとビスマスの合金、スズと鉛の合金、スズとビスマスと鉛の合金などが挙げられる。中でも、スズとビスマスの合金が好ましい。その合金における金属比率[Sn:Bi]は80:20~35:65であることが特に好ましい。
【0050】
上記高融点金属粒子としては、例えば、金(融点:1064℃)、銀(融点:961℃)、銅(融点:1083℃)、ニッケル(融点:1455℃)、亜鉛(融点:420℃)、又はこれらのうちの一種以上を含む合金であって融点800℃以上であるものが挙げられる。上記高融点金属粒子は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0051】
また、上記高融点金属粒子は、金属被覆金属粒子であってもよく、例えば、銀被覆銅粒子、金被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、金被覆ニッケル粒子、銀被覆合金粒子などが挙げられる。上記銀被覆合金粒子としては、例えば、銅を含む合金粒子(例えば、銅とニッケルと亜鉛との合金からなる銅合金粒子)が銀により被覆された銀被覆銅合金粒子などが挙げられる。
【0052】
上記高融点金属粒子としては、中でも、導電性に優れる観点から、銀含有金属粒子、銅含有金属粒子が好ましく、より好ましくは銀粒子、銅粒子である。また、導電性に優れ、低コストである観点から、銅含有金属粒子であることが好ましく、より好ましくは銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子である。表面が銀である金属粒子は導電性組成物のポットライフが長くなる。
【0053】
上記銀被覆銅合金粒子における銅合金は、ニッケル及び/又は亜鉛を含むことが好ましい。特に亜鉛は導電性の向上に寄与し、ニッケルは長期信頼性の向上に寄与するので、導電性組成物の用途等に応じて両者の割合を調整するのが好ましい。また、低融点金属粒子としてスズを使用した場合、メタライズ化によりCu6Sn5の合金層が形成されるが、Cu6Sn5は過剰に形成されると、引張強度等の機械的特性が低下する。そこで、銅合金粉にニッケルを添加すると、(Cu,Ni)6Sn5が形成され、Cu6Sn5の過剰形成を抑制し、導電性組成物の硬化物の弾性率が上昇するため、機械的特性の長期信頼性が向上すると考えられる。ニッケル及び亜鉛の含有割合は、それぞれ、1~40質量%であることが好ましく、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは1~15質量%である。
【0054】
上記金属粒子の形状としては、球状、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、繊維状、不定形(多面体)などが挙げられる。中でも、導電性組成物の塗布安定性がより高く、導電性により優れる観点から、球状が好ましい。上記金属粒子の平均粒径(D50)は、0.5~30μmであることが好ましく、より好ましくは1~10μmである。
【0055】
上記金属粒子の含有量は、上記バインダー成分の総量100質量部に対して、1000~2000質量部であり、好ましくは1100~1900質量部、より好ましくは1200~1800質量部である。上記含有量が1000質量部以上であることにより、導電性組成物の硬化物の導電性が良好となる。上記含有量が2000質量部以下であることにより、硬化物のスルーホール壁面との密着性が良好となる。また、上記範囲内であることにより、導電性組成物の粘度、ポットライフ、及び長期信頼性が良好となる。
【0056】
上記低融点金属粒子の含有量は、上記バインダー成分の総量100質量部に対して、10~900質量部であり、好ましくは20~800質量部、より好ましくは50~600質量部、さらに好ましくは150~350質量部である。上記含有量が10質量部以上であることにより、メタライズ化が促進される。上記含有量が900質量部以下であることにより、導電性組成物の硬化物に対するはんだの濡れ性が良好となる。
【0057】
上記高融点金属粒子の含有量は、特に限定されないが、上記バインダー成分の総量100質量部に対して、900~1990質量部であることが好ましく、より好ましくは1000~1800質量部、さらに好ましくは1100~1300質量部である。
【0058】
低融点金属粒子と高融点金属粒子の質量比[低融点金属粒子/高融点金属粒子]は、特に限定されないが、0.005~2.0であることが好ましく、より好ましくは0.01~1.0、さらに好ましくは0.1~0.6、特に好ましくは0.15~0.32である。上記質量比が0.005以上であると、メタライズ化がより促進される。上記質量比が2.0以下であると、導電性組成物の硬化物に対するはんだの濡れ性がより良好となる。
【0059】
[フッ素系界面活性剤]
上記フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、フルオロ脂肪族炭化水素骨格を有する化合物が挙げられる。上記フルオロ脂肪族炭化水素骨格は、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていればよいが、導電性組成物の硬化物に対するはんだの濡れ性がより良好となる観点から、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロ脂肪族炭化水素骨格であることが好ましい。上記フッ素系界面活性剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0060】
上記フルオロ脂肪族炭化水素骨格としては、下記一般式(I)で表される化合物、上記一般式(I)で表される化合物のオリゴマー、上記一般式(I)で表される化合物のオリゴマーを主骨格とする化合物が好ましい。上記一般式(I)で表される化合物としては、ヘキサフルオロプロペンが特に好ましい。上記一般式(I)で表される化合物オリゴマーは、一般式(I)で表される化合物が例えば2~100個結合した重合体が挙げられ、ヘキサフルオロプロペントリマーが特に好ましい。
【0061】
【化1】
上記式(I)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ、同一又は異なって、F、CF3、C25、又はC37を示す。
【0062】
上記フッ素系界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、上記バインダー成分の総量100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~8質量部、さらに好ましくは0.3~6質量部、さらに好ましくは1~5質量部、特に好ましくは2~4質量部である。上記含有量が0.1質量部以上であると、導電性組成物の硬化物に対するはんだの濡れ性がより良好となる。上記含有量が10質量部以下であると、エポキシ化合物の硬化阻害をよりいっそう起こりにくくすることができ、導電性組成物の硬化性がより良好となる。
【0063】
[硬化剤]
本発明の導電性組成物は、さらに、硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤は、少なくとも一種の熱硬化性化合物を硬化させる役割を有する。上記硬化剤は、エポキシ基と反応性を有する官能基を有することが好ましい。上記硬化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0064】
上記硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、カチオン系硬化剤、ラジカル系硬化剤などが挙げられる。上記硬化剤としては、中でも、フェノール系硬化剤、カチオン系硬化剤が好ましい。
【0065】
上記イソシアネート系硬化剤としては、例えば、1,2-エチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。
【0066】
上記フェノール系硬化剤としては、例えば、ノボラックフェノール、ナフトール系化合物などが挙げられる。
【0067】
上記イミダゾール系硬化剤としては、例えば、イミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチル-イミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0068】
上記アミン系硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-3,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、トリレン-2,4-ジアミン、トリレン-2,6-ジアミン、メシチレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,6-ジアミン等の単核ポリアミン、ビフェニレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、2,5-ナフチレンジアミン、2,6-ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0069】
上記カチオン系硬化剤としては、例えば、三フッ化ホウ素のアミン塩、p-メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルイオドニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム、テトラ-n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ-n-ブチルホスホニウム-o,o-ジエチルホスホロジチオエート等のオニウム系化合物などが挙げられる。
【0070】
ラジカル系硬化剤(重合開始剤)としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。
【0071】
上記硬化剤の含有量は、上記バインダー成分の総量100質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましく、より好ましくは1~8質量部、さらに好ましくは2~6質量部である。上記含有量が0.5質量部以上であると、バインダー成分中の熱硬化性成分の硬化が充分となる。上記含有量が10質量部以下であると、導電性組成物の硬化物の導電性が良好となる。
【0072】
[フラックス]
本発明の導電性組成物は、さらに、フラックスを含むことが好ましい。上記フラックスは、金属粒子のメタライズ化を促進させる役割を有する。上記フラックスとしては、例えば、塩化亜鉛、乳酸、クエン酸、オレイン酸、ステアリン酸、グルタミン酸、安息香酸、シュウ酸、グルタミン酸塩酸塩、アニリン塩酸塩、臭化セチルピリジン、尿素、トリエタノールアミン、グリセリン、ヒドラジン、ロジンなどが挙げられる。上記フラックスは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0073】
上記フラックスの含有量は、上記バインダー成分の総量100質量部に対して、5~100質量部であることが好ましく、より好ましくは10~80質量部、さらに好ましくは15~60質量部である。上記含有量が5質量部以上であると、金属粒子のメタライズ化を充分に促進することができる。上記含有量が100質量部以下であると、導電性組成物の硬化物の密着性等の物理的特性がより良好となる。
【0074】
本発明の導電性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述の各成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、公知乃至慣用の組成物に含まれる成分が挙げられる。上記その他の成分としては、例えば、溶剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、粘着剤、充填剤、難燃剤、着色剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0075】
上記溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、アセトフェノン等のケトン;メチルセロソルブ、メチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;メチルセロソルブアセテート、酢酸ブチル、酢酸メチル等のエステルなどの公知乃至慣用の有機溶剤が挙げられる。
【0076】
本発明の導電性組成物における溶剤の含有割合は、特に限定されないが、本発明の導電性組成物100質量%に対し、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。
【0077】
本発明の導電性組成物は、ペースト状であることが好ましい。本発明の導電性組成物の、BH型粘度計ローターNo.7(回転速度:10rpm)により測定される25℃における粘度は、特に限定されないが、300~2500dPa・sであることが好ましく、より好ましくは500~2000dPa・sである。上記粘度が上記範囲内であると、ホールビア充填用に好ましく用いることができる。
【0078】
本発明の導電性組成物は、半導体パッケージのビアやスルーホールなどのホール充填用とすることができる。特に、POP構造の半導体パッケージ作製に際し、導電性組成物の硬化物に対するはんだの濡れ性に優れる観点から、多層基板のホール充填用とすることができる。
【0079】
本発明の導電性組成物は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、3本ロールミル、遊星式撹拌装置、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、パドルミキサーなどで撹拌して製造することができる。
【0080】
本発明の導電性組成物を多層基板のスルーホール充填に用いた場合、熱硬化によりバインダー成分中の熱硬化性化合物が硬化するとともに、金属粒子が融解してメタライズ化し、低融点金属粒子と高融点金属粒子が一体化して、金属粒子とスルーホール内の導電層端部とが一体化する。また、本発明の導電性組成物は、スルーホール充填用に用いられる場合、得られる硬化物が、スルーホール内の導電層端部や多層基板を構成する絶縁層に対する密着性に優れる観点から、スルーホール内壁面にめっきを施さずに使用可能である。さらに、はんだの濡れ性に優れる硬化物を形成可能である観点から、導電性組成物の硬化物上に金属めっき層等の蓋めっきを施さずに直接はんだを搭載することができる。従って、本発明の導電性組成物を用いた場合、スルーホールめっき及び蓋めっき等の金属めっきを施さなくても、金属粒子相互間、又は金属粒子と上記導電層端部とが単に接触しているだけの場合と比較して高い導電性が得られ、導電層端部での接合の信頼性が顕著に向上し、さらに、直接はんだを搭載することも可能である。また、本発明の導電性組成物は、多層基板の絶縁層との接着性にも優れるので、高い長期信頼性を有する多層基板が得られる。
【0081】
次に、本発明の導電性組成物を用いたPOP構造を有する半導体パッケージ、及びその製造方法について説明する。
【0082】
図1は、本発明の導電性組成物を用いたPOP構造を有する半導体パッケージの例を示す模式拡大断面図である。図1に示すPOP構造1は、プリント配線板Bと、プリント配線板Bの一方の面に設けられたモールド樹脂12と、モールド樹脂12に複数形成されたビアの底部に設けられた導電層11と、当該ビアに充填された導電性組成物の硬化物13と、を有する半導体パッケージP1を有する。そして、導電性組成物の硬化物13上に、はんだ等により形成されたバンプ14を介して半導体パッケージP1における硬化物13と半導体パッケージP2における硬化物13とが接合するように積層されている。半導体パッケージP1及びP2が積層された構造自体は例えば図2に示した従来技術のものと類似しているが、半導体パッケージP1における導電性組成物の硬化物上に蓋めっきが施されずにバンプが形成されている点で図2のものと異なる。
【0083】
本図に示したPOP構造を得るには、例えばドリルやレーザーによりモールド樹脂にビアを形成したのち、プリント配線板表面に形成された導電層が上記ビアの底部を覆うように、半導体パッケージをプリント配線板上に設置する。次いで、上記ビアに導電性組成物を充填して、加熱により熱硬化性化合物を硬化させるとともに金属粒子のメタライズ化を進行させる。硬化後には、基板表面から突出した余分な硬化物を、研磨等により除去する。
【0084】
導電性組成物の加熱条件としては、熱硬化性化合物の硬化と金属粒子のメタライズ化の双方に適した条件を選択するので、具体的な条件は導電性組成物の組成により異なるが、おおよその目安としては、約140~180℃の温度範囲内で、約30~120分間程度加熱すればよい。
【実施例
【0085】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表1に記載の配合量はバインダー成分(純分)を100質量部としたときの各成分の相対的な配合量(純分)であり、特記しない限り「質量部」で表す。また、「-」はその成分を配合しないことを示す。
【0086】
実施例1~11、比較例1~3
表に記した各成分を配合して混合し、実施例及び比較例の各導電性組成物を調製した。使用した各成分の詳細は以下の通りである。
【0087】
<バインダー成分>
アクリレート化合物:トリメチロールプロパントリアクリレート
液体エポキシ化合物A:グリシジルエーテル型エポキシ化合物(300g/eq)
固体エポキシ化合物B:NBR変性エポキシ樹脂(400g/eq)
固体エポキシ化合物C:キレート変性エポキシ樹脂(200g/eq)
液体エポキシ化合物D:アミノフェノール型エポキシ樹脂(100g/eq)
<金属粒子>
高融点金属粒子A:銀被覆銅粒子
高融点金属粒子B:銀被覆銅合金粒子(銅合金は、銅、ニッケル、及び亜鉛の合金からなる)
低融点金属粒子:Sn-Bi合金金属粒子(Sn:Bi=42:58、融点139℃)
<硬化剤>
カチオン系硬化剤:テトラ-n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート
フェノール系硬化剤:フェノールナフトール系アラルキル樹脂
<フッ素系界面活性剤>
フッ素系界面活性剤A:(株)ネオス製、商品名「フタージェント FTX-218」
フッ素系界面活性剤B:DIC(株)製、商品名「メガファック F-444」
フッ素系界面活性剤C:AGCセイミケミカル(株)製、商品名「サーフロン S-243」
<フラックス>
フラックス:トリエタノールアミン
【0088】
(評価)
実施例及び比較例で得られた各導電性組成物について以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。
【0089】
(1)はんだ濡れ性
ガラスエポキシ基板上にメタル版を用いて実施例及び比較例で得られた各導電性組成物を印刷した。印刷後、エアーオーブンで加熱硬化し(180℃で60分間)、室温まで冷却し、導電性組成物の硬化物を形成した。その後、導電性組成物の硬化物上にはんだペースト(SAC305)を印刷し、リフロー装置へ投入した。リフロー後、導電性組成物の硬化物の表面積に対してはんだがどの程度のっているか確認した。そして、「はんだ濡れ性」を以下の基準で評価した。
◎:はんだ濡れ面積80%以上
○:はんだ濡れ面積50%以上、80%未満
△:はんだ濡れ面積20%以上、50%未満
×:はんだ濡れ面積20%未満
【0090】
(2)抵抗値
比抵抗(×10-4Ω・cm):ガラスエポキシ基板上にメタル版を用いて実施例及び比較例で得られた各導電性組成物をライン印刷(長さ60mm、幅1mm、厚さ約100μm)し、180℃で60分間加熱することにより本硬化させ、導電性パターンが形成された評価用基板を作製した。次いで、テスターを用いて導電性パターンの両端間の抵抗値を測定し、断面積(S、cm2)と長さ(L、cm)から次式(1)により比抵抗を計算した。なお、ガラスエポキシ基板3枚に各5本のライン印刷を施して導電性パターンを合計15本形成し、それらの比抵抗の平均値を求めた。
比抵抗=(S/L)×R (1)
【0091】
【表1】
【0092】
本発明の導電性組成物(実施例)は、熱硬化により得られる硬化物に対するはんだの濡れ性が良好であり、硬化物上ではんだがはじかれずに搭載できた(図3)。また、抵抗値も低かった。一方、フッ素系界面活性剤を配合しない場合(比較例1)、硬化物に対するはんだ濡れ性が劣っていた。また、フッ素系界面活性剤を配合した場合であっても、低融点金属粒子の配合量が多い場合(比較例2)及び低融点金属粒子を配合しない場合(比較例3)も、硬化物に対するはんだ濡れ性が劣っており、導電性組成物の硬化物上にはんだを搭載しようとした際、はんだがはじかれてうまく搭載できなかった(図4)。
【符号の説明】
【0093】
1,2 POP構造
11,21 導電層
12,22 モールド樹脂
13,23 導電性組成物の硬化物
14,24 はんだバンプ
25 蓋めっき
B プリント配線板
P1,P2 半導体パッケージ
X 導電性組成物の硬化物
Y はんだ
図1
図2
図3
図4