(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
G21F 9/36 20060101AFI20220818BHJP
G21C 19/32 20060101ALI20220818BHJP
G21F 5/14 20060101ALI20220818BHJP
B66C 1/42 20060101ALN20220818BHJP
【FI】
G21F9/36 531D
G21C19/32 060
G21F5/14 H
B66C1/42 K
(21)【出願番号】P 2019058041
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 正行
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-331359(JP,A)
【文献】実開昭52-021400(JP,U)
【文献】特開昭52-059299(JP,A)
【文献】特開2003-057388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0045070(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/36
G21C 19/32
G21F 5/00-5/14
B66C 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵容器の下部トラニオンに係合す
る固定アームと、
前記下部トラニオンに取り付けられた前記固定アームを、前記貯蔵容器が転倒する方向に抗する方向に移動させる駆動装置と、
前記駆動装置を稼動させる制御装置と、
前記貯蔵容器が転倒することを検知する転倒検知センサとを備え、
前記制御装置は、前記転倒検知センサにより前記貯蔵容器が転倒することを検知された際に前記駆動装置を稼動させる
ことを特徴とする転倒防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転倒防止装置において、
スイッチを備え、
前記制御装置は、前記スイッチが操作された際に前記駆動装置を稼動させる
ことを特徴とする転倒防止装置。
【請求項3】
貯蔵容器の下部トラニオンに係合する固定アームと、
前記下部トラニオンに取り付けられた前記固定アームに対して、前記貯蔵容器が転倒する方向に抗する方向に力を加える転倒阻止装置と、
前記転倒阻止装置を稼動させる制御装置と、
前記貯蔵容器が転倒することを検知する転倒検知センサとを備え、
前記制御装置は、前記転倒検知センサにより前記貯蔵容器が転倒することを検知された際に前記転倒阻止装置を稼動させる
ことを特徴とする転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の使用済み燃料を運搬、貯蔵するために貯蔵容器が用いられる。
貯蔵容器は、運搬に際して吊上げられ、横置きの姿勢から縦置きの姿勢にされる。
【0003】
従来、貯蔵容器を吊上げる場合、専用吊具のアームと貯蔵容器上部のトラニオン2対を接続し、架台に支持された貯蔵容器下部のトラニオンを支点として縦起こしするのが一般的である。
仮に専用吊具と貯蔵容器との接続が切断され、貯蔵容器(金属キャスク)が転倒した際の対策として特許文献1がある。
【0004】
特許文献1には、貯蔵容器が衝突した際の衝撃加速度を抑制する手段として、貯蔵容器が仮置きされる架台にハニカム構造を設けること、マット等を架台に敷設することが記載されている。
特許文献1には、ハニカム構造について、「架台1の底盤部1aの一半部(図中右半部)がハニカム構造4で構成され、金属キャスク2との衝突の際に、当該金属キャスク2の加速度を抑制し得るようになっている(加速度抑制手段)。」と記載されている。
【0005】
また、マット等の敷設について、「架台1のスティ部1c内面には、同じく加速度抑制手段として、
図3に示すようなバルンマット5や
図4に示すようなウレタンマット6や
図5に示すスプリングマット7が適宜選択して敷設されている。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-178259号公報(
図2、
図3、段落0032等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1には、貯蔵容器が転倒した際の衝突時に貯蔵容器の衝撃加速度を抑制するため、架台にハニカム構造を設けること、マット等を敷設することが記載されている。しかし、特許文献1に記載された方法では、貯蔵容器の衝撃加速度を抑制することはできるが、貯蔵容器の転倒自体を防止することはできないという問題がある。
【0008】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、貯蔵容器の転倒を抑制できる転倒防止装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の転倒防止装置は、貯蔵容器の下部トラニオンに係合する固定アームと、前記下部トラニオンに取り付けられた前記固定アームを、前記貯蔵容器が転倒する方向に抗する方向に移動させる駆動装置と、前記駆動装置を稼動させる制御装置と、前記貯蔵容器が転倒することを検知する転倒検知センサとを備え、前記制御装置は、前記転倒検知センサにより前記貯蔵容器が転倒することを検知された際に前記駆動装置を稼動させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貯蔵容器の転倒を抑制できる転倒防止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】貯蔵容器と架台に設けられる本発明の実施形態に係る転倒防止装置の正面図。
【
図3】(a)は専用吊具、固定用アームを貯蔵容器に取り付けた時の正面図、(b)は貯蔵容器の下部トラニオンに固定用アームの係合部の係合孔を係合させる様子を示した拡大斜視図。
【
図6】(a)は貯蔵容器の縦起こし後の正面図、(b)は貯蔵容器を垂直に吊上げた状態の正面図。
【
図7】変形例の固定用アームの係合部を回転する構成とした場合の拡大斜視図。
【
図8】(a)はラッチ機構の動作開始前の正面図、(b)はラッチ機構の動作開始後の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
貯蔵容器は、原子力発電所で使用された使用済み核燃料を貯蔵する容器である。貯蔵容器の内部には、使用済み核燃料が収納されている。
本発明は、貯蔵容器を縦起こしする際に貯蔵容器が転倒することを抑制するために、架台に設置される転倒防止装置に関する。
【0013】
転倒防止装置は、貯蔵容器の下部トラニオンに固定するための固定用アームを持ち、固定用アームが下部トラニオンに係合される。転倒防止装置は、内部に固定アームの回転を制御する駆動装置をもつ。また、転倒防止装置は、移動手段により、架台の上部を水平方向に移動することができる。
【0014】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、貯蔵容器1と架台3に設けられる本発明の実施形態に係る転倒防止装置Sの正面図である。
貯蔵容器1は、底部に底板1dが貯蔵容器1と一体(溶接又は一体鍛造等)となっており、頂部に蓋1cが取り付けられている。
【0015】
貯蔵容器1の上部には、貯蔵容器1を支持するための上部トラニオン1aが約90度間隔で4つ設置されている。換言すれば、貯蔵容器1の上部には、一方の約180度間隔を空けて設けられる一対の上部トラニオン1aと、他方の約180度間隔を空けて設けられる一対の上部トラニオン1aとが設置されている。
【0016】
貯蔵容器1の下部には、貯蔵容器1を支持するための下部トラニオン1bが約90度間隔で4つ設置されている。換言すれば、貯蔵容器1の下部には、一方の約180度間隔を空けて設けられる一対の下部トラニオン1bと、他方の約180度間隔を空けて設けられる一対の下部トラニオン1bとが設置されている。
【0017】
貯蔵容器1の上部および下部には貯蔵容器1の落下による衝撃加速度を抑制するために、緩衝体2が装着されている。緩衝体2は貯蔵容器1の上部の蓋1cと下部の底板1dに装着されている。緩衝体2は、貯蔵容器1の蓋1cと底板1dに設けられた雌ねじにボルト締めされている。緩衝体2は、木材が薄い鉄板で覆われ構成されている。
【0018】
<架台3>
貯蔵容器1を水平に支持する架台3には、貯蔵容器1の両サイドの一対の上部トラニオン1aと両サイドの一対の下部トラニオン1bを支持するトラニオン受け部3aが4つ立設されている。トラニオン受け部3aは、上部トラニオン1aと下部トラニオン1bとの間隔をもつとともに、両サイドの一対の上部トラニオン1a間の間膈と、一対の下部トラニオン1b間の間膈をもって、架台3に設置されている。
【0019】
図1に示すように、貯蔵容器1は、緩衝体2が上下部に装着された状態で、架台3のトラニオン受け部3aで、両サイドの1対の上部トラニオン1aと1対の下部トラニオン1bとが支持されている。すなわち、貯蔵容器1の上部トラニオン1aと下部トラニオン1bは、架台3のトラニオン受け部3aに、それぞれ嵌合して、貯蔵容器1が水平に支持されている。
【0020】
架台3には、ベース5を有した水平方向に移動可能な転倒防止装置4が設置されている。
【0021】
<転倒防止装置S>
図2は、転倒防止装置Sの左側面模式図である。
図3(a)は、専用吊具7、固定用アーム4aを貯蔵容器1に取り付けた時の正面図であり、
図3(b)は、貯蔵容器1の下部トラニオン1bに固定用アーム4aの係合部4k1の係合孔4i1を係合させる様子を示した拡大斜視図である。
【0022】
図1に示す転倒防止装置Sは、本体部4と、本体部4が取り付けられるベース5とを備えている。
【0023】
図2に示すように、本体部4は、制御装置4fと電源4gとを有している。
本体部4には、固定アーム4aと第1ギア4b1、第2ギア4b2と、第3ギア4cとが設けられている。
【0024】
固定アーム4aは、略半円状の形状を有している。固定アーム4aは、貯蔵容器1の下部トラニオン1bに係合するためのアームである(
図3(a)参照)。固定用アーム4aの一方端部には、
図3(b)に示すように、係合孔4i1をもつ係合部4k1が形成され、固定用アーム4aの他方端部には係合孔(図示せず)をもつ係合部4k2が形成されている。
【0025】
第1ギア4b1と第2ギア4b2とは、固定アーム4aを下方から支持するとともに、固定用アーム4aの回転を制御する。そのため、固定アーム4aは、第1ギア4b1と第2ギア4b2とが噛み合う歯4a1が形成されている。
【0026】
第3ギア4cは、固定用アーム4aの回転を制御する。そのため、固定アーム4aは、第3ギア4cが噛み合う歯4a2が形成されている。
【0027】
図2に示すように、第1ギア4b1は、第1支持軸4d1に連結されている。第1支持軸4d1はモータ4m1にダイレクトドライブされるか、または、モータ4m1によって図示しない減速機構を介して稼動される。モータ4m1は制御装置4fに電気的に接続されている。
第2ギア4b2は、第2支持軸4d2に連結されている。第2支持軸4d2はモータ4m2にダイレクトドライブされるか、または、モータ4m2によって図示しない減速機構を介して稼動される。モータ4m2は制御装置4fに電気的に接続されている。
【0028】
第3ギア4cは、第3支持軸4eに連結されている。第3支持軸4eはモータ4m3にダイレクトドライブされるか、または、モータ4m3によって図示しない減速機構を介して稼動される。モータ4m3は制御装置4fに電気的に接続されている。
制御装置4fは、電源4gに接続されている。
【0029】
図1に示すように、固定用アーム4aの両側には、加速度センサ4s1、4s2が取り付けられている。加速度センサ4s1、4s2は、
図2に示すように、制御装置4fと接続されている。加速度センサ4s1、4s2は、安全性向上のために2重化している。つまり、加速度センサ4s1、4s2の何れか一方が故障した場合にも、何れか他方で貯蔵容器1の転倒を検出し、安全に転倒防止装置Sが起動するようにしている。
【0030】
図5の矢印β1に示すように、貯蔵容器1が転倒すると、固定用アーム4aは
図5の矢印β2方向に回転する。
貯蔵容器1の転倒方向への固定用アーム4aの回転(
図5の矢印β2方向)の加速度が、加速度センサ4s1、4s2によって検出される。これを契機に制御装置4fが起動する。
【0031】
すると、制御装置4fの制御により、モータ4m1、4m2が稼働し、第1・第2支持軸4d1、4d2および第1・第2ギア4b1、4b2は、貯蔵容器1の転倒方向(
図5の矢印β1方向)による固定用アーム4aの回転(
図5矢印β2方向)を妨げる方向に回転する(
図5の矢印α1、α2方向)。また、モータ4m3が稼働し、第3支持軸4eおよび第3ギア4cは、貯蔵容器1の転倒方向(
図5の矢印β1方向)による固定用アーム4aの回転(
図5矢印β2方向)を妨げる方向に回転する(
図5の矢印α2方向)。これにより、固定用アーム4aを貯蔵容器1の転倒と逆方向(
図5の矢印β3)に回転させ、貯蔵容器1を支持して貯蔵容器1が転倒するのを抑制する。
【0032】
また、制御装置4f(
図2参照)には、転倒防止装置Sが起動するための起動スイッチ4f1が設けられている。起動スイッチ4f1を作業員が押下することでも、制御装置4fは起動し、貯蔵容器1の転倒を抑制できる。
【0033】
図1に示すように、ベース5の下部には、転倒防止装置Sを移動させる移動手段6Sとして、駆動輪6aと、駆動輪6aを駆動制御する駆動装置6kと、車輪6bとが設置されている。車輪6bは、本体部4に対して回転自在である。駆動装置6kは、図示しないモータと減速機構とで構成される。なお、駆動輪6aをモータでダイレクトドライブしてもよい。
【0034】
駆動装置6kは、制御装置4fにより制御される。
駆動輪6aの稼動により、ベース5は、架台3に対して、γ1方向およびγ2方向に移動する。つまり、ベース5が取り付けられた転倒防止装置Sは、架台3に対して、γ1方向およびγ2方向に移動することができる。
【0035】
これにより、貯蔵容器1の運搬工程に際して、転倒防止装置Sを、
図1に示す待機位置のA位置から
図3(a)に示す稼動位置のB位置に、移動させることができる。
【0036】
図3(a)に示すように、転倒防止装置Sのベース5には、固定手段として、ベース5に固定用ボルト6が挿通するための挿通孔5hが形成され、架台3に固定用ボルト6が螺着する雌ねじ3nが形成されている。
専用吊具7は、クレーン等に取付けて貯蔵容器1を縦起こしするための吊具である。専用吊具7は、上部トラニオン1aと係合するための一対のアーム7aと、一対のアーム7bとを持つ。
【0037】
<貯蔵容器1の運搬>
次に、貯蔵容器1の運搬作業について説明する。
まず、
図1に示す貯蔵容器1からその上部および下部に取り付けられた緩衝体2を取り外す。
【0038】
その後、移動手段6Sによって、
図1に示すA位置にある転倒防止装置Sを、貯蔵容器1の近くまで(
図3(a)のB位置)移動させる(
図1の矢印γ1方向)。その際、
図3(b)に示すように、転倒防止装置Sの固定用アーム4aの係合部4k1、4k2の係合孔4i1を、貯蔵容器1における一方の一対の下部トラニオン1bに係合する。これにより、貯蔵容器1に、固定用アーム4aが係合される。
【0039】
なお、貯蔵容器1における他方の一対の下部トラニオン1bは、架台3のトラニオン受け部3aに係合されている。
転倒防止装置Sのベース5を
図3(a)のB位置まで移動させた(
図1の矢印γ1)後、固定用ボルト6をベース5に形成された挿通孔5hを挿通させ、架台3に設けられた架台3の雌ねじ3nに螺着し、転倒防止装置Sを
図3(a)のB位置に固定する。
【0040】
これにより、転倒防止装置Sが架台3の所定位置(
図3(a)のB位置)に固定される。
【0041】
図3(a)に示すように、貯蔵容器1の一対の上部トラニオン1aと専用吊具7の一対のアーム7aの係合孔7a1をそれぞれ係合する。
図4は、貯蔵容器1の縦起こし動作の開始した際の正面図である。
【0042】
図4に示すように、専用吊具7の一対のアーム7aの係合孔7a1を、貯蔵容器1の一対の上部トラニオン1aとそれぞれ係合するとともに、貯蔵容器1の一対の下部トラニオン1bと固定用アーム4aの係合部4k1、4k2の各係合孔4i1とそれぞれ係合することで、貯蔵容器1は縦起こし動作可能な状態となる。
そして、専用吊具7で貯蔵容器1の一対の上部トラニオン1aを引き上げ、貯蔵容器1の一対の上部トラニオン1aと架台3の一対のトラニオン受け台3aとの各係合を解除する。
【0043】
図5は、貯蔵容器1の縦起こし動作中の正面図である。
図5に示すように、専用吊具7の一対のアーム7aによって、貯蔵容器1の一対の上部トラニオン1aが上方に引き上げられ、貯蔵容器1は縦起こしの姿勢にされる。
この際、貯蔵容器1の一方の一対の下部トラニオン1bは、固定用アーム4aの係合部4k1、4k2の各係合孔4i1と係合されている。また、貯蔵容器1の他方の一対の下部トラニオン1bは、一対のトラニオン受け部3aに係合されており、二重の支持状態となっている。
【0044】
仮に専用吊具7と貯蔵容器1との接続が切断されるおそれがある場合には、作業員が起動スイッチ4f1を押下して制御装置4fを起動させる。
或いは、貯蔵容器1が転倒を開始した際には、加速度センサ4s1、4s2が検出して、制御装置4fを起動させる。
【0045】
制御装置4fの起動後、第1・第2支持軸4d1と第1・第2ギア4b1、4b2が貯蔵容器1の転倒(
図5の矢印β1)を妨げる方向に回転する(
図5の矢印α1)。また、第3支持軸4eと第3ギア4cが貯蔵容器1の転倒(
図5の矢印β1)を妨げる方向に回転する(
図5の矢印α2)。これにより、固定用アーム4aが貯蔵容器1の転倒が妨げられる方向に回転し(
図5の矢印β3)、貯蔵容器1の転倒が抑制される(
図5の矢印β4)。
【0046】
図6(a)は、貯蔵容器1の縦起こし後の正面図であり、
図6(b)は、貯蔵容器1を垂直に吊上げた状態の正面図である。
【0047】
図6(a)に示すように、貯蔵容器1の縦起こし完了後、専用吊具7のアーム7bの係合孔7b1と貯蔵容器1の上部トラニオン1bとを係合する。また、貯蔵容器1の一対の下部トラニオン1bとトラニオン受け部3aとの係合を解除し、かつ、貯蔵容器1の一対の下部トラニオン1bと固定用アーム4aの係合部4k1の各係合孔4i1との係合を解除する。
【0048】
その後、
図6(b)に示すように、専用吊具7のアーム7aの係合孔7a1と、アーム7bの係合孔7b1とで貯蔵容器1の上部トラニオン1aを保持して、貯蔵容器1を垂直に吊上げて移動することが可能となる。
架台3から貯蔵容器1を専用吊具7のアーム7a、7bによって吊り上げた後、ベース5を架台3に固定した固定用ボルト6を取り外す。そして、転倒防止装置Sを、移動手段6SによりB位置(
図6(a)参照)からA位置(
図1参照)に移動させる(
図6(a)の矢印γ2)。
【0049】
上記構成によれば、架台3に転倒防止装置Sを設けることにより、貯蔵容器1の転倒抑制が可能となる。そのため、貯蔵容器1の運搬に際して、従来よりも安全に貯蔵容器1を縦起こしすることができる。
【0050】
<<その他の実施形態>>
1.前記実施形態では、固定用アーム4aの係合部4k1、4k2が固定用アーム4aに一体に形成されている構成を示したが、
図7に示すように、固定用アーム4aの係合部4k3が回転する(
図7の矢印α11)ことで、係合部4k3の係合孔4i3が貯蔵容器1の下部トラニオン1bに係合する。また、固定用アーム4aの係合部4k3を回転させる(
図7の矢印α12)ことで下部トラニオン1bとの係合を解除する構成としてもよい。
図7は、変形例の固定用アーム4aの係合部4k3を回転する構成とした場合の拡大斜視図である。
【0051】
ここで、固定用アーム4aの係合部4k3は制御装置4fの制御によりモータで自動的に回転する構成としてもよいし、作業員が手動操作する構成としてもよい。
なお、係合部4k3を下部トラニオン1bとの係合位置と、下部トラニオン1bとの非係合位置とに固定する固定手段が、係合部4k3と固定用アーム4aとに設けられている。固定手段として、例えばボルト、磁石等が挙げられるがこれら以外のものを用いてもよい。
【0052】
2.なお、前記実施形態では、貯蔵容器1の転倒を検知するセンサとして、加速度センサ4s1、4s2を例示して説明したが、加速度センサ4s1、4s2以外の回転センサ、光センサ等のセンサを適宜選択して用いてもよい。
【0053】
3.前記実施形態では、スイッチとして、押しボタン式の起動スイッチ4f1を例に挙げて説明したが、レバー式のスイッチ、タッチパネル式のスイッチでもよく、作業員に操作されるスイッチであれば、任意に選択でき限定されない。
【0054】
4.前記実施形態では、貯蔵容器1の転倒を防止する方法として、第一・第二・第三ギア4b1、4b2、4cが固定用アーム4aの回転を妨げる方向に回転する方法を例示して説明したが、さらに/または、ラッチ機構9を設けてもよい。
図8に示すように、ラッチ機構9は、転倒防止装置Sの内部に取り付けられ、ラッチ9a、支持部9bを有している。さらにラッチ9aは、第二ギア4b2の歯4l2と噛み合うための歯9cを備える。歯9cは、図示されていないばね等の装置により、第二ギアの歯4l2に押しつけられる。貯蔵容器1を縦起こす際に第二ギア4b2が矢印α1の方向に回転し、貯蔵容器1が転倒する際に矢印α3の方向に回転するとした時、歯9cの形状を適切にすることで、矢印α1の方向には自由に回転するが、矢印α3の方向には回転しない構造とすることで、貯蔵容器1の縦起こしを妨げずに貯蔵容器1の転倒を防止することができる。また、ラッチ機構9は、電気的に制御してもよい。この時、ラッチ機構9は、制御装置4fと電気的に接続される。
図8(a)に示すように、通常は、ラッチ9aは、第二ギア4b2と離れている。固定用アーム4aの逆回転を加速度センサ4s1、4s2等で検知した場合または/および起動スイッチ4f1が操作された場合に、
図8(b)に示すように制御装置4fの電気信号を通じて、支持部9bを支点として、ラッチ9aが回転し、第二ギア4b2の歯4l2とラッチ9aの歯9cがかみ合うことで、第二ギア4b2の回転を防止する。なお、本実施例は、第二ギア4b2を例に挙げて説明したが、第一・第三ギア・固定用アーム4b1、4c、4aに用いてもよい。
【0055】
5.前記実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換することが可能である。
【0056】
6.また、本発明は、特許請求の範囲に記載した範囲内で様々な変形形態、具体的形態が可能であり、説明した実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0057】
1 貯蔵容器
1b 下部トラニオン
3 架台
3n 雌ねじ(固定装置)
4a 固定用アーム
4b1 第1ギア(駆動装置)
4b2 第2ギア(駆動装置)
4c 第3ギア(駆動装置)
4d1 第1支持軸(駆動装置)
4d2 第2支持軸(駆動装置)
4e 第3支持軸(駆動装置)
4f 制御装置
4f1 起動スイッチ(スイッチ)
4g 電源
4m1 モータ(駆動装置)
4m2 モータ(駆動装置)
4m3 モータ(駆動装置)
4s1、4s2 加速度センサ(転倒検知センサ)
5h 挿通孔(固定装置)
6 固定用ボルト(固定装置)
6a 駆動輪(移動装置)
6b 車輪(移動装置)
6k 駆動装置(移動装置)
9 ラッチ機構(転倒阻止装置)
S 転倒防止装置